(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】軸継手及び軸継手用シャフト
(51)【国際特許分類】
F16D 1/02 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
F16D1/02 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519660
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2021077153
(87)【国際公開番号】W WO2023051938
(87)【国際公開日】2023-04-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハウプト,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】アベンハウス,モーリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッカーリング,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルクハウゼン,マクシミリアン
(57)【要約】
互いに同軸上に配置された第1シャフト(2)と第2シャフト(3)とを切換え可能に接続するための軸継手(1)である。軸継手(1)は、第1シャフト(2)を少なくとも備え、第1シャフト(2)は、周面(4)に、複数の第1ボールトラック(8)を有している。各第1ボールトラック(8)は、少なくとも第1区域(6)及び第2区域(7)にわたって、回転軸(5)に沿って延在している。各第1ボールトラック(8)は、第1区域(6)では複数の第1ウェブ(10)によって、第2区域(7)では複数の第2ウェブ(11)によって、周方向(9)に沿って互いに間隔を置いて配置されている。軸継手(1)は、第1区域(6)に配置された複数の第1ボール(12)と、第2区域(7)に配置された複数の第2ボール(13)とをさらに備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同軸上に配置された第1シャフト(2)と第2シャフト(3)とを切換え可能に接続するための軸継手(1)であって、
該軸継手(1)は、前記第1シャフト(2)を少なくとも備え、
前記第1シャフト(2)は、周面(4)に、複数の第1ボールトラック(8)を有しており、
前記各第1ボールトラック(8)は、少なくとも第1区域(6)及び第2区域(7)にわたって、回転軸(5)に沿って延在しており、
前記各第1ボールトラック(8)は、前記第1区域(6)では複数の第1ウェブ(10)によって、前記第2区域(7)では複数の第2ウェブ(11)によって、周方向(9)に沿って互いに間隔を置いて配置されており、
該軸継手(1)は、
前記第1区域(6)に配置された複数の第1ボール(12)と、
前記第2区域(7)に配置された複数の第2ボール(13)とを
さらに備え、
前記各第1ボールトラック(8)は、
前記第1区域(6)では、前記周方向(9)に沿って互いに並んで配置された複数の第1開放部(14)を介して、前記周方向(9)に沿って互いに接続されており、且つ、
前記第2区域(7)では、前記周方向(9)に沿って互いに並んで配置された複数の第2開放部(15)を介して、前記周方向(9)に沿って互いに接続されており、
前記軸継手(1)は、少なくとも2つの位置の間で切り換え可能であり、
前記各ボール(12、13)は、それぞれの前記区域(6、7)内において、前記各ボールトラック(8)に沿って前記2つの位置の間で変位可能であり、
前記ボール(12、13)は、前記周方向(9)においては、
連結位置では前記各ウェブ(10、11)に並んで配置されており、且つ、
分離位置では前記各開放部(14、15)に並んで配置されており、
前記第1区域(6)における、前記各第1開放部(14)に面する前記各第1ウェブ(10)の第1端面(16)は、前記第2区域(7)における、前記各第2開放部(15)に面する第2端面(17)よりも小さい、
ことを特徴とする軸継手。
【請求項2】
請求項1に記載の軸継手(1)であって、
前記第1ウェブ(10)に隣接して配置された前記第1ボールトラック(8)のうちの少なくとも1つに向かって、面取り部(18)は、前記第1端面(16)に隣接しており、
前記面取り部(18)によって、前記複数の第1ボールトラック(8)のうちの少なくとも1つの第1ボールトラック(8)の第1入口開口(19)が形成されており、
前記第1入口開口(19)は、前記周方向(9)に拡大されており、
前記第1ボールトラック(8)の幅(20)は、前記面取り部(18)によって、前記回転軸(5)に沿って前記第1入口開口(19)から徐々に細くなっていく、
ことを特徴とする軸継手。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の軸継手(1)であって、
前記第1ウェブ(10)に隣接して配置された前記第1ボールトラック(8)の両方に向かって、面取り部(18)は、前記第1端面(16)に隣接しており、
前記面取り部(18)によって、前記複数の第1ボールトラック(8)の第1入口開口(19)が形成されており、
前記第1入口開口(19)は、前記周方向(9)に拡大されており、
前記複数の第1ボールトラック(8)の幅(20)は、複数の前記面取り部(18)によって、前記回転軸(5)に沿って前記第1入口開口(19)から徐々に細くなっていく、
ことを特徴とする軸継手。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の軸継手(1)であって、
前記第1端面(16)は、大きくとも、前記第2端面(17)の95%である、
ことを特徴とする軸継手。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の軸継手(1)であって、
前記分離位置において、
前記複数の第1ボール(12)は、前記回転軸(5)に沿って複数の前記第1端面(16)から第1距離(21)のところに配置されており、且つ、
前記複数の第2ボール(13)は、前記回転軸(5)に沿って複数の前記第2端面(17)から第2距離(22)のところに配置されており、
前記第1距離(21)は、前記第2距離(22)よりも小さい、
ことを特徴とする軸継手。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の軸継手(1)であって、
前記軸継手(1)は、
前記回転軸(5)に沿って延在する複数の第2ボールトラック(23)を有する前記第2シャフト(3)と、
前記回転軸(5)に沿って前記複数の第1ボールトラック(8)及び前記複数の第2ボールトラック(23)を少なくとも部分的に覆うスリーブ(24)と
を少なくとも備え、
前記スリーブ(24)は、複数の第3ボールトラック(25)と、複数の第3ボール(26)を有しており、
前記複数の第1及び第2ボール(12、13)は、前記各第1ボールトラック(8)と前記各第3ボールトラック(25)とによって形成される第1トラック対(27)に配置されており、
前記複数の第3ボール(26)は、前記各第2ボールトラック(23)と前記各第3ボールトラック(25)とによって形成される第2トラック対(28)に配置されており、
前記各ボール(12、13、26)は、前記スリーブ(24)の前記回転軸(5)に沿った変位(29)によって、前記各ボールトラック(8、23、25)に沿って前記2つの位置の間で変位可能であり、
その結果、前記連結位置では前記シャフト(2、3)は互いに回転不能に接続され、前記分離位置では相対的に回転可能である、
ことを特徴とする、軸継手。
【請求項7】
請求項6に記載の軸継手(1)であって、
前記シャフト(2、3)は、前記回転軸(5)に沿って並んで配置されており、
前記スリーブ(24)は、半径方向(30)外側に前記第1ボールトラック(8)及び前記第2ボールトラック(23)を超えて延在しており、
前記各第3ボールトラック(25)は、
外側の複数のボールトラックをなしており、
内側の前記各第1ボールトラック(8)とともに前記各第1トラック対(27)を形成しており、
内側の前記各第2ボールトラック(23)とともに前記各第2トラック対(28)を形成している、
ことを特徴とする、軸継手。
【請求項8】
請求項6に記載の軸継手(1)であって、
前記複数の第1ボールトラック(8)と前記複数の第2ボールトラック(23)は、前記回転軸(5)に沿って重なり合っており、
前記スリーブ(24)は、半径方向(30)に沿って、前記複数の第1ボールトラック(8)と前記複数の第2ボールトラック(23)との間に配置されており、
前記シャフト(2、3)の一方は、複数の内側のボールトラックを有し、
前記シャフト(3、2)のもう一方は、複数の外側のボールトラックを有し、
前記スリーブ(24)は、複数の内側の第3ボールトラック(25)と、複数の外側の第3ボールトラック(25)とを有する、
ことを特徴とする軸継手。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の軸継手(1)であって、
前記第1シャフト(2)は、前記回転軸(5)に沿って互いに隣り合って配置された複数の第2区域(7)を有する、
ことを特徴とする軸継手。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の軸継手(1)であって、
ケージ(31)が、スリーブ(24)とシャフト(2、3)それぞれとの間に配置されており、
前記各ボール(12、13、26)は、少なくとも前記回転軸(5)に沿って延びる軸方向(32)に関して、前記ケージ(31)を介して互いに対して決まった距離(33)で配置されている、
ことを特徴とする軸継手。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の軸継手用のシャフトであって、
該シャフトは、周面(4)に、複数の第1ボールトラック(8)を有しており、
前記各第1ボールトラック(8)は、少なくとも第1区域(6)及び第2区域(7)にわたって、回転軸(5)に沿って延在しており、
前記各第1ボールトラック(8)は、前記第1区域(6)では複数の第1ウェブ(10)によって、前記第2区域(7)では複数の第2ウェブ(11)によって、周方向(9)に沿って互いに間隔を置いて配置されており、
前記各第1ボールトラック(8)は、
前記第1区域(6)では、前記周方向(9)に沿って互いに並んで配置された複数の第1開放部(14)を介して、前記周方向(9)に沿って互いに接続されており、且つ、
前記第2区域(7)では、前記周方向(9)に沿って互いに並んで配置された複数の第2開放部(15)を介して、前記周方向(9)に沿って互いに接続されており、
前記第1区域(6)における、前記各第1開放部(14)に面する前記各第1ウェブ(10)の第1端面(16)は、前記第2区域(7)における、前記各第2開放部(15)に面する第2端面(17)よりも小さい、
ことを特徴とするシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに同軸上に配置されており且つ共通の回転軸を有する第1シャフトと第2シャフトとを切換え可能に接続させるための軸継手に関する。また、本発明は、軸継手のシャフトに関する。軸継手を介して、シャフト同士は、トルクを伝達するために回転不能に互いに接続されているか(すなわち、互いに相対的に回転できない)(連結位置)、又は、互いに分離されている(分離位置)のいずれかである。分離位置では、シャフトは互いに独立して回転することができ、トルクは伝達されない。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1シャフトと第2シャフトとを切換え可能に接続するための軸継手が開示されている。各シャフトは、スリーブのボールトラックと対となるトラックをなるボールトラックを有する。各ボールは、スリーブを回転軸に沿って移動させることによって変位する。各シャフトの一方には、ボールトラック同士の間に開放部が設けられており、この中で各ボールを変位させることができる。各ボールが開放部の領域に配置されている場合、各シャフトは互いに独立して回転することができる。各ボールが開放部の外側に配置されている、すなわちボールトラックのウェブ同士の間に配置されている場合、シャフトは互いに連結されている。
【0003】
この種類の軸継手では、シャフトの個々のボールトラックは、周方向に沿って、互いに対してある角度距離を置いて配置される。従って、分離位置から連結位置に変更するためには、これらの角度距離を橋渡ししなければならず、その結果、各ボールトラック内に又はウェブ間の領域内に、各ボールを移動させることができる。角度距離が比較的大きい場合は、連結位置となるために長い切り換え時間を必要とする。切り換えは、非常に小さい角度範囲でのみ可能であり、この角度範囲は、ボールに対するボールトラックの入口開口の(余剰)サイズによって決定される。さらに、これは、連結される対象であるシャフト同士の、切り換えのために許容される回転速度の差を、厳しく制限する。
【0004】
しかし、入口開口を広げるか又はボールトラックの幅を広げるかすると、軸継手のNVH(騒音・振動・ハーシュネス)挙動が悪化するため(周方向に関して、ボールトラック内のボールの遊びが大きくなるため)、これを行うことはできない。角度距離を縮小させる、例えばボールトラックの数を増加させると、伝達可能なトルクの減少を引き起こす。有効直径が大きい場合に角度距離を縮小させる(ボールトラックはシャフトのより大きな直径上に配置される)と、設置スペースの要件が増大し、設置できなくなることがしばしばある。
【0005】
特許文献2には、切り換えスリーブを備えた継手が開示されている。
【0006】
特許文献3には、2つのシャフトを接続するための長手方向変位ユニットが開示されている。
【0007】
特許文献4には、2つのシャフト間に、回転方向については固定された接続を生成し且つ解除するための装置が開示されている。
【0008】
特許文献5には、2つのシャフトを互いに接続することができる振動分離装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2019 129818号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第37 01898号明細書
【特許文献3】国際公開第WO2006/018096号
【特許文献4】独国特許出願公開第10 2010 051949号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10 2016 110389号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、先行技術に関して詳述した問題を少なくとも部分的に解決することである。特に、大きなトルクを伝達可能な小型の軸継手を提案する。特に、作動距離を短くし且つ切り換え力を小さくすることを実現するものである。さらに、各シャフトの回転速度に大きな違いがある場合でも、軸継手を切り換え可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る特徴を有する軸継手及び請求項11に係る特徴を有するシャフトは、これらの課題の解決に寄与する。従属請求項では、有利な展開を詳述する。請求項において個々に詳述する特徴は、技術的に好適な態様で組み合わせ可能であり、本発明の更なる変形例を詳述している、本明細書の説明的な技術内容及び図の詳細によって補完されうる。
【0012】
第1シャフトと第2シャフトとを切換え可能に接続するための軸継手を提案する。これらのシャフトは、互いに同軸上に配置されており、共通の回転軸を有する。
【0013】
軸継手は、少なくとも、第1シャフトと、複数の第1ボールと、複数の第2ボールとを備える。第1シャフトは、周面に、複数の第1ボールトラックを有しており、これらの第1ボールトラックは、少なくとも第1区域及び第2区域にわたって、回転軸に沿って延在している。各第1ボールトラックは、第1区域では第1ウェブによって、第2区域では第2ウェブによって、周方向に沿って互いに間隔を置いて配置されている。複数の第1ボールは、(軸継手のいずれの位置においても)第1区域に配置されている。複数の第2ボールは、(軸継手のいずれの位置においても)第2区域に配置されている。第1ボールトラック同士は互いに接続されている。第1区域では、周方向に沿って互いに並んで配置されている複数の第1開放部を介して接続されている。第2区域では、周方向に沿って互いに並んで配置されている複数の第2開放部を介して接続されている。
【0014】
軸継手は、2つの位置の間でのみ切り換え可能である。各ボールは、それぞれの区域内において、各ボールトラックに沿って、前述の位置の間で変位可能である。各ボールは、周方向においては、連結位置にあるときは各ウェブに並んで配置されており、分離位置にあるときは各開放部に並んで配置されている。第1区域における、各第1開放部に面する各第1ウェブの第1端面は、第2区域における、各第2開放部に面する第2端面よりも小さい。
【0015】
提案する軸継手は、小型でありながら、高いトルクの伝達を可能にする。トルクは、多数のボールを介して伝達することができる。
【0016】
各ボールトラックは、特に回転軸に平行に延在しており、好ましくは、周方向に垂直に延在している。各ボールトラックは、ウェブによって形成されたトラック側壁によって両側で挟まれたトラック基部を有する。トラック基部は、特に、回転軸からの一定の距離で延在しており、好ましくは、回転軸に平行に延在する。トラック基部は、ボールトラックの最小直径又は最大直径のいずれかに配置される。トラックの各側壁は、周方向に関して、各ボールを支持する。端面を有するウェブは、隣り合うボールトラックの側壁の間に配置される。
【0017】
特に、それぞれの第1ボールトラックには、いくつかのボールが配置されており、好ましくは、ボールが2つ以上配置されている。
【0018】
軸継手の動作中においては、各第1ボールは、特に、常に第1区域に配置されており、第2ボールは、常に第2区域に配置されている。軸継手が切り換えられると、各ボールは、回転軸に沿ってそれぞれの区域内で変位する。従って、各ボールが、軸継手の分離位置においてそれぞれの開放部に配置されている場合、各ボールは、第1シャフトに対して相対的に周方向に沿って移動させることができる。従って、第1シャフトは各ボールに対して自由に回転させることができる。軸継手を連結位置に切り換えるために、各ボールはそれぞれの区域のボールトラックに入る。連結位置では、各ボールは、周方向においてウェブと並んでいるため、各ボールに対して第1シャフトが回転することは不可能である。
【0019】
第1端面のサイズを第2端面に比べて小さくしたことにより、各第1ボールは第1ボールトラックに入りやすくなる。特に、2つの第1ボールトラック間の角度距離は、このように実際に小さくなる。また、それによって、第1ボールトラックの各ウェブと各第1ボールとの間の、周方向に関するクリアランスが、少なくとも第1端面の領域で増加する。
【0020】
一方では、これにより、シャフト同士を連結する際に、連結される対象であるシャフト同士の回転速度の差がより大きくなってもよい。他方では、角度距離が小さくなったことにより、連結位置にするための切り換え時間は短くなる。
【0021】
各第1ウェブの第1端面は、特に、第1ボールトラックの入口開口が拡大されるように小さくされる。特に、第1ボールトラックの入口開口は、周方向に拡大される。第2区域における第1ボールトラックの第2入口開口と比較して、第1入口開口は、特に少なくとも2%、好ましくは少なくとも4%、特に好ましくは少なくとも8%拡大される。
【0022】
特に、面取り部は、第1ウェブの第1端面に隣接している。特に、面取り部は、第1ウェブに隣接して配置された第1ボールトラックのうちの1つに向かって傾斜している。面取り部は、第1ボールトラックの第1入口開口を形成する。この第1入口開口は、周方向に拡大されている。面取り部によって、第1ボールトラックの幅は、回転軸に沿って第1入口開口から徐々に細くなっていく。従って、第1ボールトラックの、周方向に広がる幅は、回転軸に沿う方向に関して、第1端面がある位置で最大となり、そこから第1ボールトラックの(その後一定となる)最小幅まで徐々に細くなっていく。
【0023】
特に、面取り部は、第1端面それぞれに配置されている。これは、特に各第1ウェブの同じ側壁に配置されている。
【0024】
第1区域における第1ボールトラックの最小幅は、特に、第2区域における第1ボールトラックの(最小)幅と等しい。特に、第2区域における第1ボールトラックは一定の幅を有する。
【0025】
特に、面取り部は、端面とウェブの側壁との間の移行部を形成する、エッジの凹部からなる。回転軸に沿った位置に存在する端面は、特に、第1ボールトラックの入口開口のサイズ又は幅を定める。
【0026】
特に、2つの面取り部が、第1ウェブの第1端面に隣接している。特に、面取り部はそれぞれ、第1ウェブに隣接して配置された第1ボールトラックのうちの異なる1つに向かって傾斜している。各面取り部は、各第1ボールトラックの第1入口開口を形成する。この第1入口開口は、周方向に拡大されている。各面取り部によって、各第1ボールトラックの幅は、回転軸に沿って第1入口開口から徐々に細くなっていく。
【0027】
特に、2つの面取り部は、第1端面それぞれに配置されている。
【0028】
特に、第1端面(すなわち、第1端面の面積)は、大きくとも第2端面(すなわち、第2端面の面積)の95%であり、好ましくは大きくとも85%であり、特に好ましくは大きくとも75%である。
【0029】
特に、分離位置において、各第1ボールは、回転軸に沿って各第1端面から第1距離に配置されており、各第2ボールは、回転軸に沿って各第2端面から第2距離に配置されている。特に、第1距離は、第2距離よりも小さい。
【0030】
第1距離と第2距離との間の差は、特に、各第1ボールが最初に回転軸に沿って第1開放部から出て、(拡大された第1入口開口を介して)第1ボールトラックに入るように寸法決めされている。幅が第1入口開口から次第に狭くなることにより、各第1ボールは、回転軸に沿った各第1ボールの変位が進むにつれて、第1ボールトラックに対して徐々に整列していく。特に、第2距離については、第1区域の各第1ボールが最小幅に達したときは各第2ボールが各第2開放部から第2区域の第1ボールトラックに入ることしかしないように、設計されている。
【0031】
これにより、各第1ボールを第1区域に通すことが容易になる。各第1ボールのみを各第1ボールトラックに通し、続いて、各第1ボールを各面取り部を介して第1シャフトに対して良好に整列させることにより、各第2ボールを第2区域において各第1ボールトラックに対して整列させることができる
これにより、切り換え時間を短縮し、切り換えプロセスを簡素化することができる。このプロセスでは、トルクの伝達は損なわれない。
【0032】
特に、軸継手は、さらに、回転軸に沿って延在する複数の第2ボールトラックを有する第2シャフトと、複数の第3ボールトラックを有するスリーブとを少なくとも備える。このスリーブは、各第1ボールトラック及び各第2ボールトラックを、回転軸に沿って少なくとも部分的に覆う。さらに、軸継手は、さらに複数の第3ボールを有する。各第1及び第2ボールは、各第1ボールトラックと各第3ボールトラックとによって形成される第1トラック対に配置されており、各第3ボールは、各第2ボールトラックと各第3ボールトラックとによって形成される第2トラック対に配置されている。各ボールは、スリーブを回転軸に沿って変位させることによって、各ボールトラックに沿って前述の位置の間で変位可能であり、その結果、連結位置では各シャフトは互いに回転不能に接続され、分離位置では第1シャフトと第2シャフトは相対的に回転可能である。
【0033】
特に、各ボールは、転がり運動の一部として(且つ滑り運動としてではなく)シャフトに沿って移動される。各ボールが転がり運動することにより、小さな力で軸継手を作動させることが可能となる。
【0034】
特に、各シャフトは回転軸に沿って互いに隣り合って配置されており、スリーブは半径方向外側に各第1及び第2ボールトラックを超えて延在している。各第3ボールトラックは、外側の(すなわち、半径方向外側に配置されている)ボールトラックをなしており、内側の(すなわち、半径方向内側に配置されている)各第1ボールトラックとともに各第1トラック対を形成しており、内側の各第2ボールトラックとともに各第2トラック対を形成している。
【0035】
別の態様としては、複数の第1ボールトラックと複数の第2ボールトラックは回転軸に沿って重なり合っており、且つ、スリーブは、半径方向に沿って、第1及び第2ボールトラック間の配置されている。一方のシャフトは内側の(半径方向内側に配置される)複数のボールトラックを有し、もう一方のシャフトは外側の(半径方向外側に配置される)複数のボールトラックを有する。スリーブは、複数の内側の第3ボールトラックと、複数の外側の第3ボールトラックとを有する。
【0036】
特に、第1シャフトは、回転軸に沿って互いに隣り合って配置された複数の第2区域を有する。
【0037】
特に、スリーブとシャフトそれぞれとの間に、ケージが配置されており、複数の(第1及び第2)ボールは、少なくとも回転軸に沿って延びる軸方向に関して、ケージを介して互いに対して決まった距離で配置されている。
【0038】
各第2ボールトラックに配置された各ボール間の距離は、各第1ボールトラックに配置された各ボール間の距離とは異なるように設計可能である(ただし、同じにすることも可能である)。
【0039】
特に、(それぞれの)ケージは、スリーブに接続されていないが、各ボールを介して軸方向に沿って変位する。各ボールは常に各第3ボールトラックに配置されているため、ケージはスリーブとともに回転する。スリーブを変位させることにより、特に(排他的に)転がり運動の一部として、特に各ボールと、各ボールを介したケージとを、軸方向に沿って変位させることができる。これにより、各ボールを前述の区域内で変位させて、軸継手の分離位置又は連結位置を実現することができる。
【0040】
特に、各第1ボールトラックのみは、開放部を介して、周方向に沿って互いに接続されている。各第1ボールトラックは、第1区域では各第1開放部を介して互いに接続されており、第2区域では周方向に沿って各第2開放部を介して互いに接続されている。これにより、各第1及び第2ボールを、周方向に沿った(第1ボールトラックのトラック基部に対応する)直径上で、周方向に沿って変位させることができる。第1区域の各第1開放部と第2区域の各第2開放部は、特に周方向に沿って、互いに並んで配置されている。従って、それぞれの区域の各開放部は、周方向にのみ延在しているボールトラックをなしている。
【0041】
スリーブを回転軸に沿って変位させることにより、各第1及び第2ボールを各(第1、第2、及び第3)ボールトラックに沿って変位させて、各第1及び第2ボールをそれぞれの開放部に配置することができる。これにより、開放部によって形成されており且つ周方向に延在するボールトラックに沿って、各ボールを変位させて、各ボールを周方向に沿って第1シャフトに対して変位させることができる。これにより、スリーブと第2シャフトを、第1シャフトに対して回転させることができる。特に、第1シャフトに配置されたボールは全て、開放部を有するそのような区域に配置されなければならず、これにより、各第1ボールトラックに配置された各ボールを有するスリーブを、第1シャフトに対して回転させることができる。
【0042】
各第1ボールトラックに配置された各ボールが、周方向に沿って、開放部の外側に且つウェブと並んで配置されている場合は、各シャフトは互いに対して回転不能に接続されている。
【0043】
特に、各ボールの複数の列が、複数のトラック対のうちの少なくとも1つに配置されており、このとき、1つの列の各ボールは、回転軸に沿った位置に配置され且つ周方向において互いに隣り合っている。特に、第1シャフト上の列の数は、第1シャフト上に設けられた(第1及び第2)区域の数に対応する。
【0044】
特に、スリーブは、作動装置によって、回転軸に沿って延びる軸方向に沿って、シャフトに対して変位可能である。
【0045】
様々な作動装置を使用することができる。ボールとボールトラック間の摩擦が低いため(滑り摩擦よりも低い転がり摩擦によるため)、軸継手を切り換えるために必要な作動力はわずかである。
【0046】
記載した軸継手用の(第1)シャフトも提案する。シャフトは、周面に、複数の第1ボールトラックを有しており、これらの第1ボールトラックは、少なくとも第1区域及び第2区域にわたって、回転軸に沿って延在している。第1ボールトラックは、第1区域では第1ウェブによって、第2区域では第2ウェブによって、周方向に沿って互いに間隔を置いて配置されている。第1ボールトラック同士は互いに接続されている。第1区域では、周方向に沿って互いに並んで配置されている複数の第1開放部を介して接続されている。第2区域では、周方向に沿って互いに並んで配置されている複数の第2開放部を介して接続されている。第1区域における、各第1開放部に面する各第1ウェブの第1端面は、第2区域における、各第2開放部に面する第2端面よりも小さい。
【0047】
軸継手に関する記載、特にそれに関連して述べられている第1シャフトに関する記載は、特に、シャフトに転用可能であり、逆もまた同様である。
【0048】
特に、特許文献1による軸継手を参照する。第1シャフト、第2シャフト、スリーブ、及びケージによる装置に関して特許文献1に述べられた記載は、ここで記載しているシャフト装置に特に転用可能である。
【0049】
特に、請求項及びこれらの請求項を再掲する記載において、不定冠詞(「ein」、「eine」、「einer」、「eines」)は、数詞として使用したものではなく、そのまま理解すべきであることを意図している。従って、これに対応して導入さてる用語や構成要素は、少なくとも一回は存在しているが、特に、数回存在することもありうると理解すべきことを意図している。
【0050】
疑義を回避するために言えば、本明細書において使用する序数詞(「第1」、「第2」、等)は、主として、幾つかの同じような対象物、数値、工程を区別するため(のみ)に供されるものであり、即ち、特に、これらの序数詞が、これら対象物、数値、工程の、互いに対する任意の依存関係や順序を必ずしも定めるものでない。依存関係や順序が必要である場合には、このことは本明細書に明記されるか、或いは、実際に記載されている構成を精査することにより、当業者にとって明らかになる。構成要素が1回以上(「少なくとも1つ」)生じ得る場合は、それらの構成要素の1つに関する記載は、これらの複数の構成要素の全て又は幾つかに等しく当てはまり得るが、必ずそのようであるわけではない。
【0051】
以下で、添付の図を参照して、本発明及び技術的背景をより詳細に説明する。詳述する実施形態により本発明が限定されることを意図したものではないことに留意すべきである。特段の記載のない限り、特に、図で説明する技術内容の部分的特長を抽出し、それらを他の構成要素及び本明細書の知見と組み合わせることも可能である。特に、図及び特に図示された比率は、単に概略的なものにすぎないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図面は、以下を示す。
【
図1】軸継手の側面図であり、断面の一部を示している。
【
図2】分離状態における軸継手の側面図であり、断面の一部を示している。
【
図4】回転軸に沿って見た第1シャフトの第1設計変形例である。
【
図5】回転軸に沿って見た第1シャフトの第2設計変形例である。
【
図6】回転軸に沿って見た第1シャフトの第3設計変形例である。
【
図7】半径方向に沿って見た、分離位置にある公知の軸継手の詳細を示したものである。
【
図8】半径方向に沿って見た、連結位置にある軸継手の、
図7における詳細を示したものである。
【
図9】半径方向に沿って見た、分離位置にある軸継手の詳細を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、軸継手の側面図であり、断面の一部を示している。軸継手1は、第1シャフト2と第2シャフト3とを切換え可能に接続するために使用される。これらのシャフトは、互いに同軸上に配置されており、共通の回転軸5を有する。
【0054】
軸継手1は、第1シャフト2と、複数の第1ボール12と、複数の第2ボール13とを備える。第1シャフト2は、周面4に、複数の第1ボールトラック8を有しており、これらの第1ボールトラック8は、少なくとも第1区域6及び第2区域7にわたって、回転軸5に沿って延在している。各第1ボールトラック8は、第1区域6では各第1ウェブ10によって、第2区域7では各第2ウェブ11によって、周方向9に沿って互いに間隔を置いて配置されている。複数の第1ボール12は、(軸継手1のいずれの位置においても)第1区域6に配置されている。複数の第2ボール13は、(軸継手1のいずれの位置においても)第2区域7に配置されている。第1ボールトラック8同士は互いに接続されている。第1区域6では、周方向9に沿って互いに並んで配置されている複数の第1開放部14(ここでは不図示、
図9参照)を介して接続されている。第2区域7では、周方向9に沿って互いに並んで配置されている複数の第2開放部15を介して接続されている。
【0055】
軸継手1は、2つの位置の間でのみ切り換え可能である。ボール12、13は、それぞれの区域6、7内において、ボールトラック8、23に沿って、前述の位置の間で変位可能である。ボール12、13は、周方向9においては、連結位置にあるときはウェブ10、11に並んで配置されており(ここでは図示されている)、分離位置(ここでは図示されている)にあるときは各開放部14、15に並んで配置されている。第1区域6における、各第1開放部14に面する、各第1ウェブ10の第1端面16(
図9参照)は、第2区域7における、各第2開放部15に面する第2端面17よりも小さい。
【0056】
軸継手1は、さらに、回転軸5に沿って延在する複数の第2ボールトラック23を有する第2シャフト3と、複数の第3ボールトラック25を有するスリーブ24とを備える。スリーブ24は、各第1ボールトラック8及び各第2ボールトラック23を、回転軸5に沿って少なくとも部分的に覆う。さらに、軸継手1は、さらに複数の第3ボール26を有する。各第1及び第2ボール12、13は、各第1ボールトラック8と各第3ボールトラック25とによって形成される第1トラック対27に配置されており、各第3ボール26は、各第2ボールトラック23と各第3ボールトラック25とによって形成される第2トラック対28に配置されている。各ボール12、13、26は、スリーブ24を回転軸5に沿って変位させることによって、各ボールトラック8、23、25に沿って前述の位置の間で変位可能であり、その結果、連結位置ではシャフト2、3は互いに回転不能に接続され、分離位置ではシャフト2、3は相対的に回転可能である。
【0057】
シャフト2、3は回転軸5に沿って互いに隣り合って配置されており、スリーブ24は半径方向30外側に第1及び第2ボールトラック8、23を超えて延在している。各第3ボールトラック26は、外側の(すなわち、半径方向30外側に配置されている)ボールトラックをなしており、内側の(すなわち、半径方向30内側に配置されている)第1ボールトラック8とともに第1トラック対27を形成しており、内側の第2ボールトラック23とともに第2トラック対28を形成している。
【0058】
第1シャフト2は、回転軸5に沿って互いに隣り合って配置された複数の第2区域7を有する。
【0059】
スリーブ24とシャフト2、3それぞれとの間に、ケージ31が配置されており、複数の(第1及び第2)ボール12、13は、回転軸5に沿って延びる軸方向32に関して、ケージ31を介して互いに対して決まった距離33で配置されている。
【0060】
軸継手1の動作中においては、各第1ボール12は、特に、常に第1区域6に配置されており、第2ボール13は、常に第2区域7に配置されている。軸継手1が切り換えられると、各ボール12、13は、回転軸5に沿ってそれぞれの区域6、7内で変位する。従って、各ボール12、13が、軸継手1の分離位置においてそれぞれの開放部14、15に配置されている場合、各ボール12、13は、第1シャフト2に対して相対的に周方向9に沿って移動させることができる。従って、第1シャフト2は各ボール12、13に対して自由に回転させることができる。軸継手1を連結位置に切り換えるために、各ボール12、13はそれぞれの区域6、7の第1ボールトラック8に入る。連結位置では、各ボール12、13は、周方向9においてウェブ10、11と並んで配置されているため、各ボール12、13に対して第1シャフト2が回転することは不可能である。
【0061】
各ボール12、13、26は、各第1ボールトラック8又は各第2ボールトラック23のいずれかに割り当てられる。従って、ボール12、13、26はそれぞれ、第1ボールトラック8の1つ又は第2ボールトラック23の1つのうちいずれかにのみ配置されており、それにより、軸継手1が切り換えられた場合でも、ボール12、13、26は第1シャフト2から第2シャフト3に変位したりすることはなく、その逆もない。
【0062】
スリーブ24は、作動装置34によって、回転軸5に沿って延びる軸方向32に沿って、シャフト2、3に対して変位可能である。スリーブ24は、ばね要素35の作用に抗して変位可能であり、これにより、スリーブ24は自動的に戻ることができる。第1ばね要素35は、圧縮ばねによって実現される。作動装置34を介して、スリーブ24は、軸継手1を切り換えるために、初期位置(
図1に破線で示されているスリーブ24の位置を参照)から変位29の方向にばね力に抗して変位可能であり、それによって、スリーブ24は、ばね力のみによって初期位置に戻ることができる。
【0063】
図2は、分離状態における軸継手1の側面図であり、断面の一部を示している。
図3は、
図2における軸継手1の側面図を示している。
図2及び
図3を以下にまとめて説明する。
図1の説明を参照する。
【0064】
シャフト2及び3は、互いに同軸上に配置されており、共通の回転軸5を有する。軸継手1は、第1シャフト2と、複数の第1ボール12と、複数の第2ボール13とを備える。第1シャフト2は、周面4に、複数の第1ボールトラック8を有しており、これらの第1ボールトラック8は、少なくとも第1区域6及び第2区域7にわたって、回転軸5に沿って延在している。軸継手1は、さらに、回転軸5に沿って延在する複数の第2ボールトラック23を有する第2シャフト3と、複数の第3ボールトラック25を有するスリーブ24とを備える。スリーブ24は、各第1ボールトラック8及び各第2ボールトラック23を、回転軸5に沿って少なくとも部分的に覆う。さらに、軸継手1は、さらに複数の第3ボール26を有する。
【0065】
図1とは対照的に、ここでは、各ボール12、13、26の2つの列が、各トラック対27、28のそれぞれに配置されている。各ボール12、13は、各第1ボールトラック8の、即ち第1シャフト2の、2つの区域6、7に配置されている。各第1ボールトラック8は、第1区域6では第1開放部14を介して互いに接続されており、第2区域7では周方向9に沿って第2開放部15を介して互いに接続されている。区域6、7は、軸方向32に沿って互いに隣り合って配置されている。従って、各ボール12、13が各ウェブ10、11と並んで配置されている場合、トルクは、各ボール12、13を介して、スリーブ24と第1シャフト2との間で伝達することができる。各ボール12、13が各開放部14、15と並んで配置されている場合、各ボール12、13は、第2シャフト3と、スリーブ24と、ケージ31とともに、第1シャフト2に対して自由に回転可能であるか又は周方向9に沿って変位可能である。
【0066】
スリーブ24とシャフト2、3との間に、ケージ31が配置されており、これにより、複数のボール12、13、26は、回転軸5に沿って延びる軸方向32に関して、ケージ31を介して互いに対して決まった距離33で配置されている。
【0067】
ケージ31はスリーブ24に接続されていないが、スリーブ24によって移動される各ボール12、13、26を介して軸方向32に沿って変位する。スリーブ24は、複数の止め部36を有しており、これらの止め部36で、ケージ31が軸方向32に対して支持される。ケージ31は、止め部36によって、軸方向32に沿ってスリーブ24と整列させることができる。
【0068】
各ボール12、13、26は常に各第3ボールトラック25に配置されているので、ケージ31はスリーブ24とともに回転する。ケージ31は、変位29を介して、軸方向32に沿って変位可能であり、各ボール12、13、26は、スリーブ24を介して、軸方向32に沿って変位可能である。これにより、各ボール12、13を区域6、7内で変位させて、軸継手1の分離位置を実現することができる(
図2参照)。
【0069】
図4は、回転軸5に沿って見た第1シャフト2の第1設計変形例を示している。
図5は、回転軸5に沿って見た第1シャフト2の第2設計変形例を示している。
図6は、回転軸5に沿って見た第1シャフト2の第3設計変形例を示している。
図1~
図3の説明を参照する。
図4~
図6を以下にまとめて説明する。
【0070】
軸継手1では、第1シャフト2の個々の第1ボールトラック8は、周方向9に沿って、互いに対して角度距離37を置いて配置される(
図4参照)。従って、分離位置から連結位置に変更するためにこれらの角度距離37を橋渡ししなければならず、その結果、各第1ボールトラック8内に又はウェブ10、11間の領域内に、各ボール12、13を移動させることができる。角度距離37が比較的大きい場合は、連結位置となるために長い切り換え時間を必要とする。切り換えは、非常に小さい角度範囲38でのみ可能であり、この角度範囲38は、ボール12、13に対する第1ボールトラック8の第1入口開口19の(余剰)サイズによって決定される。さらに、これは、連結される対象であるシャフト2、3の、切り換えのために許容される回転速度の差を、厳しく制限する。
【0071】
しかし、第1入口開口19を広げるか又は第1ボールトラック8の幅20を広げるかすると、軸継手1のNVH(騒音・振動・ハーシュネス)挙動が悪化するため(周方向9に関して、各第1ボールトラック8内の各ボール12、13の遊びが大きくなるため)、これを行うことはできない。角度距離37を縮小させる、例えば第1ボールトラック8の数を増加させる(
図5参照)と、伝達可能なトルクの減少を引き起こす。有効直径39が大きい場合に角度距離37を縮小させる(各第1ボールトラック8は第1シャフト2のより大きな直径上に配置される、
図6参照)と、設置スペースの要件が増大し、設置できなくなることがしばしばある。
【0072】
図7は、半径方向30に沿って見た、分離位置にある公知の軸継手1を詳細に示したものである。
図8は、半径方向30に沿って見た、連結位置にある軸継手1の、
図7における詳細を示したものである。
図7及び
図8を以下にまとめて説明する。
【0073】
軸継手1は、第1シャフト2と、複数の第1ボール12と、複数の第2ボール13とを備える。第1シャフト2は、周面4に、複数の第1ボールトラック8を有しており、これらの第1ボールトラック8は、少なくとも第1区域6及び第2区域7にわたって、回転軸5に沿って延在している。軸継手1は、回転軸5に沿って延在する複数の第2ボールトラック23を有する第2シャフト3をさらに備え、これらの第2ボールトラック23には各第3ボール26が配置されている。
【0074】
第1ボールトラック8は、第1区域6では各第1ウェブ10によって、第2区域7では各第2ウェブ11によって、周方向9に沿って互いに間隔を置いて配置されている。複数の第1ボール12は、(軸継手1のいずれの位置においても)第1区域6に配置されている。複数の第2ボール13は、(軸継手1のいずれの位置においても)第2区域7に配置されている。第1ボールトラック8同士は互いに接続されている。第1区域6では、周方向9に沿って互いに並んで配置されている複数の第1開放部14を介して接続されている。第2区域7では、周方向9に沿って互いに並んで配置されている複数の第2開放部15を介して接続されている。
【0075】
軸継手1は、2つの位置の間でのみ切り換え可能である。ボール12、13は、それぞれの区域6、7内において、ボールトラック8、23に沿って、前述の位置の間で変位可能である。ボール12、13は、周方向9においては、連結位置にあるときはウェブ10、11に並んで配置されており(
図8)、分離位置(
図7)にあるときは各開放部14、15と並んで配置されている。各第1開放部14に面する、各第1ウェブ10の第1端面16は、第2区域7における各第2開放部15に面する第2端面17と同じように設計されている。
【0076】
分離位置では、各第1ボール12は、第1端面16から第1距離21のところに、回転軸5に沿って配置されており、各第2ボール13は、第2端面17から同じ大きさの第2距離22のところに配置されている。
【0077】
各ボール12、13に第1ボールトラック8に沿って変位29が生じると、同時に、各ボール12、13は、各第1ボールトラック8の、周方向9に対してウェブ10、11によって区切られた領域にねじ込まれる。
【0078】
図9は、半径方向30に沿って見た、分離位置にある軸継手1の詳細を示したものである。
図1~
図8の説明を参照する。
【0079】
軸継手1は、第1シャフト2と、複数の第1ボール12と、複数の第2ボール13とを備える。第1シャフト2は、周面4に、複数の第1ボールトラック8を有しており、これらの第1ボールトラック8は、少なくとも第1区域6及び第2区域7にわたって、回転軸5に沿って延在している。軸継手1は、回転軸5に沿って延在する複数の第2ボールトラック23を有する第2シャフト3をさらに備え、これらの第2ボールトラック23には各第3ボール26が配置されている。
【0080】
ボール12、13は、それぞれの区域6、7内で第1ボールトラック8に沿って前述の位置の間で変位可能である。ボール12、13は、示されている分離位置では、周方向9において開放部14、15と並んで配置されている。第1区域6における、各第1開放部14に面する各第1ウェブ10の第1端面16は、第2区域7における、各第2開放部15に面する第2端面17よりも小さい。
【0081】
第1端面16のサイズを第2端面17と比べて小さくしたことにより、各第1ボール12を第1ボールトラック8に(又は各第1ウェブ10の間の領域に)入りやすくすることができる。特に、2つの第1ボールトラック8同士の間の角度距離37(ここで示されている)は、このように実際に小さくなる。また、それによって、第1ボールトラック8の各第1ウェブ10と各第1ボール12との間の、周方向9に関するクリアランスが、少なくとも第1端面16の領域で増加する。
【0082】
各第1ウェブ10の第1端面16は、第1ボールトラック8の第1入口開口19が拡大されるように小さくされる。第1ボールトラック8の第1入口開口19は、周方向9に拡大される。
【0083】
面取り部18は、第1ウェブ10の第1端面16に隣接している。面取り部18は、第1ウェブ10に隣接して配置された第1ボールトラック8のうちの1つに向かって傾斜している。面取り部18は、第1ボールトラック8の第1入口開口19を形成する。この第1入口開口19は、周方向9に拡大されている。面取り部18によって、第1ボールトラック8の幅20は、回転軸5に沿って第1入口開口19から徐々に細くなっていく。従って、第1ボールトラック8の、周方向9に広がる幅20は、回転軸5に沿う方向に関して、第1端面16がある位置で最大となり、そこから第1ボールトラック8の(その後一定となる)最小幅20まで徐々に細くなっていく。
【0084】
第1区域6における第1ボールトラック8の最小幅20は、第2区域7における第1ボールトラック8の最小且つ一定の幅20と同じ大きさである。
【0085】
面取り部18は、第1端面16と第1ウェブ10のトラック側壁との間の移行部を形成する、エッジの凹部からなる。
【0086】
分離位置において、各第1ボール12は、回転軸5に沿って各第1端面16から第1距離21のところに配置されており、且つ、各第2ボール13は、回転軸5に沿って各第2端面17から第2距離22のところに配置されている。第2距離22は、第1距離21よりも大きい。
【0087】
第1距離21と第2距離22との間の差は、各第1ボール12が最初に回転軸5に沿って第1開放部14から出て、拡大された第1入口開口19を介して第1ボールトラック8に入るように寸法決めされている。幅20が第1入口開口19から次第に狭くなることにより、各第1ボール12は、回転軸5に沿った各第1ボール12の変位29が進むにつれて、第1ボールトラック8に対して徐々に整列していく。第2距離22については、第1区域6の各第1ボール12が最小幅20に達したときは各第2ボール13が各第2開放部15から第2区域7の第1ボールトラック8に入ることしかしないように、設計されている。
【0088】
これにより、各第1ボール12を第1区域6に通すことが容易になる。各第1ボール12のみを各第1ボールトラック8に通し、続いて、各第1ボール12を各面取り部18を介して第1シャフト2に対して良好に整列させることにより、各第2ボール13を第2区域7において各第1ボールトラック8に対して整列させることができる。これにより、切り換え時間を短縮し、切り換えプロセスを簡素化することができる。
このプロセスでは、トルクの伝達は損なわれない。
【符号の説明】
【0089】
1 軸継手
2 第1シャフト
3 第2シャフト
4 周面
5 回転軸
6 第1区域
7 第2区域
8 第1ボールトラック
9 周方向
10 第1ウェブ
11 第2ウェブ
12 第1ボール
13 第2ボール
14 第1開放部
15 第2開放部
16 第1端面
17 第2端面
18 面取り部
19 第1入口開口
20 幅
21 第1距離
22 第2距離
23 第2ボールトラック
24 スリーブ
25 第3ボールトラック
26 第3ボール
27 第1トラック対
28 第2トラック対
29 変位
30 半径方向
31 ケージ
32 軸方向
33 距離
34 作動装置
35 ばね要素
36 止め部
37 角度距離
38 角度範囲
39 有効直径
【国際調査報告】