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特表2024-535114粗発酵ブロスを精製する凝集プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】粗発酵ブロスを精製する凝集プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/34 20060101AFI20240918BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 14/62 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C07K1/34
C07K1/18
C07K14/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519825
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 IN2022050827
(87)【国際公開番号】W WO2023053132
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202141044738
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521073752
【氏名又は名称】バイオコン バイオロジクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOCON BIOLOGICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Biocon House,Ground Floor,Tower-3,Semicon Park,Electronic City,Phase-ii Hosur Road,Karnataka,Bengaluru 560100 INDIA
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャイフ,アジモディン ミンヤサブ
(72)【発明者】
【氏名】ハズラ,パルタ プラティム
(72)【発明者】
【氏名】シュクラ,ヴィバヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ガニジャー,カルティック シヴァッパ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA37
4H045EA20
4H045GA23
(57)【要約】
本発明は、特定のpHにおける尿素およびTritonX-100の存在下で製造規模にてインスリンおよびインスリン類似体または誘導体の粗発酵ブロスから組換えタンパク質を精製する凝集のプロセスに関する。凝集プロセスの後に、ブロスのさらなる清澄化するための、少なくとも1回の遠心分離とpH調整のステップが続く。さらに、存在する凝集体を最終的に除去するための濾過、および純粋なタンパク質を捕捉するためのクロマトグラフィーのステップが続く。このプロセスを使用することにより、95%を超える高い産生物回収率が達成された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵ブロス中の組換えタンパク質を精製するプロセスであって、以下:
a)尿素および非イオン性洗浄剤を発酵ブロスに添加すること;
b)発酵ブロスのpHを、pH2~4.5の範囲の値、またはpH7.5~8.5の範囲の値に調整すること;および、
c)発酵ブロスを少なくとも30分間インキュベートすること;
d)発酵ブロスから不溶物を分離し、それにより上清を得ること、
を含む、前記プロセス。
【請求項2】
以下:
a)尿素および非イオン性洗浄剤を上清に添加すること;
b)上清のpHをpH2~4.5の範囲の値、またはpH7.5~8.5の範囲の値に調整すること;
c)上清を少なくとも30分間インキュベートすること;および
d)上清から不溶物を分離すること、
をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
尿素が、0.1~0.3Mの濃度で添加される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
尿素が、0.15~0.25Mの濃度で添加される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
非イオン性洗浄剤が、0.1~1%(v/v)の範囲の濃度で添加される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
発酵ブロスおよび/または上清から不溶物を分離することが、遠心分離または濾過により行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
組換えタンパク質が、インスリンまたはインスリン類似体もしくは誘導体である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
インスリン類似体が、インスリングラルギン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルトまたは経口インスリントレゴピルである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
組換えタンパク質が、酵母によって産生されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
酵母が、Pichia pastorisである、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
非イオン性洗浄剤が、Triton、Tween、またはBrijシリーズの群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
非イオン性洗浄剤が、TritonX-100である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
TritonX-100の濃度が、0.1~0.4%である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
TritonX-100の濃度が、0.15%である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
pH調整が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの群から選択される好適な塩基を使用して実行される、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
水酸化ナトリウムの濃度が、2.5Mである、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
発酵ブロスおよび/または上清から不溶物を分離することが、不溶物をデプス濾過にさらすことを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
タンパク質の最終捕捉が、陽イオン交換クロマトグラフィーによるものである、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
99%より多くの尿素および非イオン性洗浄剤が、陽イオン交換クロマトグラフィー後に除去される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
95%より多くの最終タンパク質が、回収される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
組換えタンパク質を精製する方法であって、組換えタンパク質がインスリングラルギンであり、以下:
a)宿主Pichia pastorisを使用してインスリングラルギンを産生した後に得られる発酵ブロスを収集すること;
b)0.25M尿素および0.25%(v/v)のTritonX-100を発酵ブロスに添加すること;
c)発酵ブロスのpHをpH3.0~3.5の範囲の値に調整すること;
d)発酵ブロスを少なくとも2時間インキュベートすること;
e)遠心分離により発酵ブロスから不溶物を分離し、それにより上清を得ること;
f)上清のpHを8.5に調整すること;
g)上清を少なくとも2時間インキュベートすること;および、
h)遠心分離により上清から不溶物を分離すること、
を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
pHを2.5の値に再調整することをさらに含み、およびインスリングラルギンの最終捕捉として陽イオン交換クロマトグラフィーによる精製を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
組換えタンパク質の精製方法であって、組換えタンパク質が、インスリンリスプロであり、以下:
a)宿主Pichia pastorisを使用してインスリンリスプロを産生した後に得られる発酵ブロスを収集すること;
b)発酵ブロスのpHを2.0~2.5の範囲の値に調整すること;
c)発酵ブロスを少なくとも30分間インキュベートすること;
d)遠心分離により発酵ブロスから不溶物を分離し、それにより上清を得ること;
e)0.1M尿素および0.15%TritonX-100を上清に添加すること;
f)pHをpH3.8~4.2の範囲の値に調整すること;
g)上清を少なくとも30分間インキュベートすること;および、
h)遠心分離により不溶物を上清から分離すること、
を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
pHを2.5の値に再調整することをさらに含み、およびインスリンリスプロの最終捕捉として陽イオン交換クロマトグラフィーによる精製を含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
TritonX-100が、2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノールである、請求項1~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示されるようなプロセスは、下流プロセシングの分野に分類される。プロセスは、発酵ブロスからのタンパク質の精製に関連する。とりわけ、可溶性および不溶性成分を含有するタンパク質懸濁液からタンパク質を精製するための凝集のプロセスが提供される。
【背景技術】
【0002】
背景に関する以下の議論は、ただ単に読者が本発明を理解するのを助けるために提供されるに過ぎずそして、本発明の先行技術を説明または構成することを認めるものではない。
【0003】
Pichia pastorisを宿主細胞として用いた組換えタンパク質の産生は、幅広く産業的に行われている。インスリン、その類似体および誘導体などの治療用組換えタンパク質は、約5~7kDaのサイズのペプチドである。これらのペプチドは、前駆体分子の形でPichia pastorisにおいて発現しており、発酵上清中に外部に分泌される。発酵物の採取後、細胞は連続遠心分離によって分離される。遠心分離後の上清は、かなりの量のPichia細胞、細胞破片、Pichia関連色素、および他の培地関連不純物を含有する。このクルードをクロマトグラフのカラムに直接ロードすることはできない。不溶性固体や多くの可溶性不純物は、精製カラムに重大な損傷を与え、捕捉から精製ステップに至るまでずっと持ち越すと、精製プロセスに深刻な干渉を与え、カラム寿命が短くなり、精製性能が低下させられる結果となり得る。
【0004】
発酵上清の清澄化には、まずメンブレン濾過などの物理的分離法が用いられた。精密濾過は、固形分の多い原料の清澄化に広く使用されている別の技法である。精密濾過を用いた清澄化プロセスを開発するために広範な開発がなされた。0.1ミクロンの精密濾過メンブレンを用いたプロセスが開発された。精密濾過後、精密濾過中に遭遇する希釈を克服するために濾液は限外濾過によってさらに濃縮された。このプロセスは、総面積100mで、20~22KLの上清量を濾過するようにスケールアップされた。イオン性ポリマーは、デプス濾過やメンブレン吸収剤などの用途における、プロセスストリームからの不純物の除去を強化するために発酵培地を改変するためにも使用されている。
【0005】
欧州特許第1934242号に記載されているように、細胞や細胞破片を除去するために使用される従来のバイオ医薬品タンパク質精製法は、必ずしも効果的ではなく、時には目的の産生物に著しく結合することもあり、全体的なプロセス時間を増大して、このことが、操作手順のスケールアップ中の困難となり得る。より迅速な回収時間および/またはより多くの回収を可能にする任意の改良は、タンパク質治療薬の製造に関連するコストを削減するため、望ましい。
したがって、効率的な精製プロセスが依然として必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の概要:
発酵ブロス中の組換えタンパク質を精製するプロセスが提供される。このプロセスには、不純物の凝集が関係する。
【0007】
開示されたプロセスは、培養ブロスの採取後に凝集ステップを提供することによる下流のタンパク質回収プロセスである。
【0008】
いくつかの態様において、プロセスは、酵母発酵ブロスから目的のタンパク質を精製するためのプロセスであり、a)発酵上清を凝集させること;b)少なくとも1つの分離ステップを行うこと、を含む。
【0009】
発酵ブロス中の組換えタンパク質を精製するプロセスが提供される。プロセスは、発酵ブロスに尿素および非イオン性洗浄剤(non-ionic detergent)を添加することを包含する。プロセスはさらに、発酵ブロスのpHをpH2~4.5の範囲の値またはpH7.5~8.5の範囲の値に調整することを包含する。いくつかの態様において、尿素および非イオン性洗浄剤は、pH値を調整することに先立ち添加される。いくつかの態様において、pH値は、尿素および非イオン性洗浄剤を添加することに先立ち調整される。プロセスは、発酵ブロスを30分またはそれ以上インキュベートすることもまた包含する。プロセスは、発酵ブロスから不溶物を分離することをさらに包含する。不溶物を分離することにより、上清が得られる。
【0010】
いくつかの態様において、プロセスはさらにまた、尿素および非イオン性洗浄剤を上清に添加することを包含する。このような態様において、プロセスは、上清のpHをpH2~4.5の範囲の値に、またはpH7.5~8.5の範囲の値に調整することもまた包含する。いくつかの態様において、尿素および非イオン性洗浄剤は、pH値を調整することに先立ち添加される。いくつかの態様において、pH値は、尿素および非イオン性洗浄剤を添加することに先立ち調整される。プロセスのこのような態様は、さらに、上清を少なくとも30分間インキュベートすることを包含する。このような態様におけるプロセスは、上清から不溶物を分離することもまた包含する。
【0011】
尿素は、いくつかの態様において、0.1~0.3Mの最終濃度に添加される。いくつかの態様において、尿素は、0.15~0.25Mの最終濃度に添加される。
いくつかの態様において、非イオン性洗浄剤は、最大1%(v/v)の範囲の濃度で添加される。
発酵ブロスおよび/または上清から不溶物を分離することは、いくつかの態様において、遠心分離または濾過によって行われる。発酵ブロスおよび/または上清から不溶物を分離することは、ブロスをデプス濾過にさらすことを含む。
【0012】
いくつかの態様において、非イオン性洗浄剤は、極性部分としてポリオキシエチレンをベースとし、および非極性部分としてアルキルフェニル部分を含有する。いくつかの態様において、非イオン性洗浄剤は、末端ヒドロキシ基を有するポリオキシエチレン鎖を極性部分として有する脂肪酸エステルをベースとし、脂肪酸のアルキル鎖が非極性部分を定義する。いくつかの態様において、非イオン性洗浄剤は、極性部分としてマルトシドまたはグルコシドをベースとし、および非極性部分としてアルキル鎖を含有する。いくつかの態様において、非イオン性洗浄剤は、Triton、TweenまたはBrijシリーズの群から選択される。
【0013】
いくつかの態様において、非イオン性洗浄剤は、TritonX-100(IUPAC名:2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノール)である。いくつかの態様において、2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノールは、0.1~0.4%、例えば0.15%の最終濃度となるように添加される。
【0014】
いくつかの態様において、組換えタンパク質は、インスリンまたはインスリン類似体もしくは誘導体である。インスリン類似体は、実例として、インスリングラルギン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルトまたは経口インスリントレゴピルであってよい。
【0015】
いくつかの態様において、組換えタンパク質は酵母によって産生されている。酵母は、例えば、Pichia pastorisであってもよい。
【0016】
発酵ブロスまたは上清のpHを調整することは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの好適な塩基を添加することによって行われる。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムは、例えば、2.5Mである溶液の形態で添加されてもよい。
【0017】
いくつかの態様において、プロセスは、最終捕捉ステップとして陽イオン交換クロマトグラフィーを包含する精製プロセスの一部である。このような精製プロセスのいくつかの態様においては、尿素および非イオン性洗浄剤の99%より多くが、陽イオン交換クロマトグラフィー後に除去される。このような精製プロセスのいくつかの態様において、産生されたタンパク質の95%より多くが回収される。
【0018】
いくつかの態様においては、プロセスは、粗発酵ブロスからの組換えタンパク質の精製のための凝集のプロセスであり、以下のステップ:
a.Pichia pastorisを好適な宿主として用いた組換えタンパク質の産生;
b.尿素およびTritonX-100の添加により、pHが2~4.5の範囲および/またはpHが7.5~8.5の範囲にて発酵ブロス中の不純物を凝集すること;
c.遠心分離または濾過による凝集体の除去;
d.pHを2~2.5の範囲に再調整すること;
e.クロマトグラフィーによるタンパク質の最終捕捉;
を含む。
【0019】
いくつかの態様におけるプロセスは、インスリンなどの組換えタンパク質またはインスリングラルギン、インスリンリスプロおよびインスリンアスパルトなどのインスリン類似体の精製に関する。
【0020】
凝集のプロセスのいくつかの態様において、凝集体は遠心分離およびデプス濾過によって除去され、および、タンパク質の最終捕捉は陽イオン交換クロマトグラフィーによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、グラルギン上清の一次処理に適用した例示的な凝集のプロセスのフローチャートを表す。
図2A図2Aは、グラルギンの室温保持でのNTU安定性を示す。
図2B図2Bは、グラルギンの低温保持でのNTU安定性を示す。
図3図3は、リスプロ上清の一次処理に適用された凝集の例示的なプロセスのフローチャートを表す。
図4A図4Aは、pH2.0±0.2、室温保持でのリスプロのNTU安定性データを示す。
図4B図4Bは、pH2.0±0.2、低温保持でのリスプロのNTU安定性データを示す。
図5A図5Aは、pH4±0.2、室温保持でのリスプロのNTU安定性データを示す。
図5B図5Bは、pH4±0.2、低温保持でのリスプロのNTU安定性データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な記載
組換えタンパク質が細胞培養培地に分泌される場合、組換えタンパク質の下流プロセシングは、それぞれの培地を採取し、タンパク質を発現していた細胞からそれを分離することで始まる。この回収ステップは、細胞デブリの除去、ならびにいずれかの微粒子およびコロイド材料の除去を包含する。その後、大量の夾雑物(主にタンパク質)が除去され得、および微量夾雑物を除去する仕上げステップが適用され得る。本明細書において提供されるプロセスは、タンパク質を発現していた細胞の最初の除去に続く精製ステップに関する。
【0023】
開示されるプロセスは先行技術に存在する方法が直面する問題に対処するための努力の結果である。上清中に存在する不純物は、幅広い凝集pH範囲についてスクリーニングされた。このような研究中に、これらの不純物は2~4.5および7.5~8.5のpH範囲で凝集する傾向があることが観察された。凝集は主にpHレベルの変更に起因して起こり、その場で形成されるリオトロピック塩によって部分的に促進された。
塩化カルシウムなどの外部の凝集薬を使用して凝集を促進し、または凝集の程度を増大させる試みが行われたが、pHベースの凝集が十分であり、上清中に存在する粒子状物質の分布に著しい変化を引き起こすことが観察された。より細かいコロイド粒子がすべて合体して、より大きな凝集体を形成し、したがって、遠心分離または他の濾過技法によってその除去が向上する。しかし、凝集した不純物とともに、産生物までも沈殿したり、または凝集体に物理的にくっついたりして、遠心分離中または濾過の間に失われた。
【0024】
タンパク質を溶液中に保ち、しかしなお凝集した固形物を溶解させないようなストラテジーが考案された。これは、タンパク質を可溶化すると、潜在的に固体もまた溶解し得るため、少し難易度が高かった。しかしながら、尿素およびTritonX-100の濃度を最適化して、凝集した固体を溶解することなくタンパク質を溶液中に保つことで、絶妙なバランスが達成された。これにより、遠心分離直後のNTUの濁度が20~100の最適なタンパク質回収と上清試料が保証された。そのような清澄化の後で試料は2~8℃で貯えられたとき7~8日より長く濁度に関して安定したままである。
【0025】
定義
本明細書中に別様に定義されない限り、本発明との関係において使用される科学用語および専門用語は、一般的に当業者により理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の定めがない限り、単数形の用語は複数形を包含し、複数形の用語は単数形を包含するものとする。本発明の方法および技法は、当該技術分野において周知である従来の方法に従って一般に行われる。本明細書との関係で使用される命名法、および本明細書に記載の技法は、一般的に当該技術分野において使用されるそれらである。本発明の方法および技法は、一般に当該技術分野において周知である従来の方法に従って行われる。
用語「Pichia pastoris」は、タンパク質の産生のための発現系として頻繁に使用される、メチロトロフィック酵母の一種を指す。
【0026】
用語「組換えタンパク質」は、クローン化されたおよび好適な宿主系において発現された、変更/改変された遺伝子配列を指す。
【0027】
用語「一次回収」または「一次処理」は、発酵上清の清澄化中のプロセスを指し、ここで採取されたブロスは、尿素、TritonX-100のような化学物質および/または共可溶化剤で処理されて凝集を経て、凝集体を除去するいくつかのpH調整および遠心分離ステップがこれに続く。
【0028】
用語「下流の精製」は、産生の間に生じた関連する不純物および廃棄物からの生合成医薬製品の回収および精製を指す。
【0029】
用語「ヒトインスリン」は、その構造および特性が周知であるヒトホルモンを指す。ヒトインスリンは、システイン残基間のジスルフィド架橋によって接続された2つのポリペプチド鎖、つまりはA鎖およびB鎖を有する。A鎖は21アミノ酸のペプチドであり、およびB鎖は30アミノ酸のペプチドであり、2つの鎖は3つのジスルフィド架橋によって接続されている:1つはA鎖の6位と11位のシステインとの間、2番目はA鎖の7位のシステインとB鎖の7位のシステインとの間、および3番目は、A鎖の20位のシステインとB鎖の19位のシステインとの間である。
【0030】
親ポリペプチドに関する用語「類似体」または「誘導体」は、親ポリペプチドの1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基によって置換/欠失/付加されている改変ポリペプチドを指す。このようなアミノ酸残基の付加、欠失または置換は、ポリペプチドのN末端またはポリペプチドのC末端またはポリペプチド内で起こり得る。インスリン類似体の例は、インスリンアスパルト、インスリンリスプロ、インスリングラルギン、経口インスリントレゴピルなどである。他の例は、ブタまたはウシのインスリンであり、いずれもヒトインスリンの類似体である。
【0031】
用語「グラルギン」は具体的にはインスリンA鎖上の21位のアミノ酸アスパラギンがグリシンに置き換えられ、および2つのアルギニン残基がB鎖のC末端に付加される、ヒトインスリンとは異なる長時間作用型ヒトインスリン類似体を指す。
【0032】
用語「リスプロ」は、具体的にはヒトインスリンからは化学的に異なる速効型ヒトインスリン類似体を指す。インスリンリスプロ中では、B28位のアミノ酸プロリンがリジンによって置き換えられており、B29位のリジンがプロリンによって置き換えられている。
【0033】
用語「CIEXクロマトグラフィー」は、分離が負に帯電した樹脂に対する正に帯電したイオンの親和性に起因して実行される「陽イオン交換液体クロマトグラフィー」を指す。クロマトグラフィーは一次処理を行いつつ発酵終了の上清の清澄化を行うタンパク質を捕捉および濃縮するために用いられる。
【0034】
用語「NTU」は、細かく懸濁したコロイド粒子によって引き起こされる液体媒体の曇りまたはかすみの尺度である「比濁法濁度単位」を指す。溶液のNTUは、比濁計を使用して測定される。
【0035】
用語「凝集」は、微粒子がひとまとまりになりフロック(単数または複数)(これは、沈降または濾過のような様々な方法により分離され得る)を形成させるプロセスを指す。
【0036】
用語「低温」または「低温保持」は、2℃~8℃の範囲にある温度を指す。温度は、例えば5℃を包含する4℃~6℃までであってよい。
【0037】
「室温」または「RT」または「RT保持」は、23℃または24℃を包含する22℃~25℃の範囲にある周囲温度または温度を指す。
【0038】
用語「デプス濾過」は、ここで濾過される流体が、高負荷の微粒子状物質を含有するとき多孔濾過媒体が粒子を留め得る濾過技法のタイプを指す。フィルターは媒体全体で使用され、および結果として大きな粒子の塊が目詰まりをおこす前に保持することができる。
【0039】
用語「DE珪藻土(DE)濾過」は、珪藻または珪藻土、つまり小さい、単細胞生物の骨格の残骸をフィルター媒体として使用するプロセスを指す。
【0040】
用語「遠心分離」は、粒子のサイズ、形状、密度、媒体の粘度、およびロータースピードに従って溶液から粒子を分離する遠心力の適用に関係する技法を指す。
【0041】
用語「v/v」は、体積/体積を指す。それは溶質および溶媒が、本質的に液体であるということを示す。%v/vは、溶媒が100mLであることを意味する。%v/v溶液は、体積(v)の基本尺度としてミリリットルを使用して以下の式:
%v/v=溶質のmL/溶液の100mL
で計算される。
【0042】
発酵上清の清澄化のために、当初はメンブレン濾過のような物理的な分離方法が使用されてきた。しかしながら、この濾過技法には、細胞分離ステップ後の発酵上清の中に存在する(懸濁粒子、細胞、細胞デブリ、微細なコロイド状固形物、タンパク質の凝集物(aggregate)、およびその他の不溶物のような)粒子のさまざまな性質に起因する課題があった。この粗上清を扱うために必要な濾過面積は100L/m未満であり、濾過後のフィードの品質は捕捉クロマトグラフィー上へ直接ロードするには好適ではなかった。一般的に使用される濾過スキームは、4~5uフィルター/1.2uフィルター/0.45u(公称)メンブレンフィルターを直列に接続しての利用に関係した。その結果、メンブレンフィルターの使用は、発酵上清の清澄化の方法としては、むしろ非現実的で不経済であると結論づけざるを得ない。同様の課題はデプスフィルターでも経験された。粒子径の広範な分布に起因して、デプスフィルターの頻繁なおよび急激な詰まりが一般的に観察され、その結果、単位フィルター面積当たりの濾過物生産量が極度に低くなった。
【0043】
メンブレン濾過やデプス濾過の際に直面した課題は、主に上清が幅広い粒度分布を備える微粒子状物質を有するという事実に起因していた。この分布の広さに起因して、より微細な粒子は濾過開始時にフィルターメンブレンを詰まらせ、よってフィルター処理能力を多大に減少させたであろう。
【0044】
精密濾過は、固形分の多いフィードの清澄化に広く使用されているもう一つの技法である。精密濾過を用いた清澄化プロセスを開発するため、広範な開発が行われた。0.1ミクロンの精密濾過メンブレンを使用するプロセスが開発された。精密濾過後、濾液は精密濾過中に発生した希釈を克服するために限外濾過によってさらに濃縮された。このプロセスを100mの総面積でスケールアップし、20~22KLの上清を濾過した。上清の濾過は80~100時間で達成され、澄明度は大幅に改善された。しかしながら、精密濾過後の清澄化された上清は、制限された安定性を示した。精密濾過後の上清の室温または低温のいずれかでの保存の際に、微小沈殿物が再び出現し、試料の澄明度および濁度が変化することによって、これに続く捕捉カラムの目詰まりを引き起こした。
【0045】
要約すれば、上清を清澄化するために依拠されていた従来の遠心分離および/または濾過のアプローチは、クロマトグラフィーに適用する前に以下のような課題をもたらした:
-フィード中の残留固形分がより高くなると、捕捉カラムに対してより高い背圧が引き起こされた;
-試料の保持中にNTUまたは懸濁したコロイド粒子が増大し続けた;
プロセス時間とカラム寿命に大きな影響を及ぼし、プロセスがばらばらになる結果になった。欧州特許第3070472号にて言及されているように、特定のイオン性ポリマー、特に陽イオン性ポリマーは、細胞および/または細胞デブリの凝集ならびにタンパク質の沈殿/凝固に使用できる。イオン性ポリマーは、発酵培地を改変して、デプス濾過やメンブレン吸収剤などの用途における、プロセスストリームからの不純物の除去を強化するためにも使用されている。しかしながら、発酵培地が処理されるにつれて、培地のpHと導電率が変化し続けることも知られている。結果として、これらの凝集剤の有効性は典型的には低減される。
【0046】
欧州特許第1934242号にて言及されているように、細胞および細胞デブリを除去するために使用される従来のバイオ医薬品タンパク質精製方法は、常に効果的であるというのではなく、時には目的の産生物を著しく結合させ、操作手順のスケールアップ中に課題となり得る全体的なプロセス時間を増大させる。より短い回収時間および/またはより大きな回収を可能にする改良はいずれも、タンパク質製造に関連するコストを削減するため、有利である。
【0047】
一般に適用されるもう一つの主要なアプローチは、pH、陰イオン剤、および陽イオン剤を用いた凝集である。このような凝集方法のすべてにおいて、不純物とともに産生物が共沈することが一般に直面される主な問題となる。このような状況においては、凝集した不純物を遠心分離によってまたは濾過によって物理的に分離する場合に、沈殿した産生物も不純物の沈殿物とともに除去され、その結果、産生物の喪失が大きくなった。これは主に、目的とするタンパク質の凝集体への物理的吸着または非特異的相互作用、もしくは実際の産生物の沈殿という現象に起因していた。これは、目的のタンパク質の喪失を引き起こすことによるプロセスコストへの影響に起因して、凝集ベースの清澄化アプローチに深刻な課題を提起した。
【0048】
本明細書に開示されるプロセスでは、発酵ブロスが使用される。発酵ブロスは、組換えタンパク質を産生した組換え宿主細胞の遠心分離によって得られた上清であってもよい。いくつかの態様において、プロセスは、宿主細胞を使用して組換えタンパク質を産生することを包含してもよい。
【0049】
一般に、任意の所望の組換えタンパク質が、発酵ブロスに包含されてよい。いくつかの態様において、組換えタンパク質は、インスリンまたはその類似体/誘導体である。それぞれのタンパク質は、真核系などの任意の適切な宿主細胞で発現されていてもよい。好適な真核宿主細胞の一例は、Pichia pastorisなどの酵母である。プロセスは、発酵ブロスに尿素および非イオン性界面活性剤を添加することを包含する。
【0050】
非イオン性界面活性剤は、イオン性官能基を持たない化合物である。したがって、その親水性の頭部基は非荷電性である。任意の非イオン性界面活性剤が一般に使用され得る。例えば、それはエーテルであってもよく、および/またはヒドロキシル基を包含してもよい。いくつかの態様において、非イオン性界面活性剤はポリエーテルである。いくつかの態様において、非イオン性界面活性剤は、アミンオキシドまたはホスフィンオキシドである。いくつかの態様において、非イオン性界面活性剤はスルホキシドである。
【0051】
いくつかの態様において、非イオン性界面活性剤と互換的に呼ばれる非イオン性界面洗浄剤は、Triton、TweenまたはBrij、例えばBrij 35、C12E23、またはポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルの商品名で市販されている。ポリオキシエチレンベースの非イオン性界面活性剤は、例えば、Brij35、Brij58、TritonX-100、IGEPALCA-630(旧NonidetP-40)の商品名で入手可能である。例示的な態様において、非イオン性洗浄剤はTritonX-100の商品名で入手可能である。
【0052】
複数のヒドロキシ基をもつ非イオン性界面活性剤は、実例として、Deoxy Big CHAPの商品名で入手可能な([N,N’-ビス(3-D-グルコナミドプロピル)デオキシコールアミド])、またはBig CHAPの商品名で入手可能なN,N-ビス-(3-D-グルコナミドプロピル)コールアミドである。複数のヒドロキシ基をもつ非イオン性界面活性剤のさらなる例は、アシル-N-メチルグルカミド(MEGA)化合物、例えばN-デカノイル-N-メチルグルカミンまたはN-オクタノイル-N-メチルグルカミドである。
【0053】
さらなる好適な非イオン性界面活性剤は、APO-12の商品名で入手可能なジメチルジデシルホスフィンオキシドである。オクチルベータグルコシドは非イオン性界面活性剤の別の一例である。別の好適な非イオン性界面活性剤は、n-ドデカノイルスクロースである。さらに2つの好適な非イオン性界面活性剤は、n-ドデシル-β-D-グルコピラノシドおよびn-ドデシル-β-D-マルトシドである。別の2つの好適な非イオン性界面活性剤は、シクロヘキシル-n-エチル-β-D-マルトシドおよびシクロヘキシル-n-ヘキシル-β-D-マルトシドである。シクロヘキシル-n-メチル-β-D-マルトシドおよびn-デカノイルスクロースは、好適な非イオン性界面活性剤のさらなる2つの例である。さらになお別の好適な非イオン性界面活性剤はジギトニン(Digitonin)である。
【0054】
一般に、非イオン性界面活性剤は、0より大きく0.5%v/vまでの範囲の最終濃度に添加される。いくつかの態様において、非イオン性界面活性剤の最終濃度は、0.05%v/vを超え、例えば0.1%v/vより大きい。いくつかの態様において、非イオン性界面活性剤の最終濃度は、最大0.4%v/vを包含する、最大0.6%v/vである。例示的な例として、非イオン性界面活性剤の最終濃度は、0.25%v/vであってもよい。
【0055】
尿素は、0Mより大きく0.5Mまでの範囲の最終濃度まで添加してよい。いくつかの態様において、尿素の最終濃度は、0.1より大きく0.3Mまでの範囲であってもよい。いくつかの態様において、尿素の最終濃度は、0.02Mより大きく、例えば0.05Mより大きい。いくつかの態様において、尿素の最終濃度は、0.1Mより大きく、例えば0.12Mより大きい。いくつかの態様において、非イオン性界面活性剤の最終濃度は、0.2Mまでを包含する、0.35Mまでである。いくつかの態様において、尿素の最終濃度は、0.15~0.25Mの範囲内であってもよい。例示的な例として、尿素の最終濃度は、0.1Mであってもよい。
【0056】
プロセスはさらに、尿素および非イオン性界面活性剤が添加された発酵ブロスのpHを調整することを包含する。pHは、例えばpH2.5~pH4.0の範囲のpH値に調整されてもよい。pHはまた、pH3.0~pH3.8の範囲のpH値に調整されてよい。pHは、実例として、pH2.8またはpH3.5に調整されてもよい。いくつかの態様において、pHは、pH7.8~pH8.2の範囲のpH値に調整されてもよい。pHはまた、pH8.0~pH8.5の範囲のpH値に調整されてもよい。
【0057】
発酵ブロスのpH値を調整するために、任意の酸または塩基を使用することができる。pHを上昇させる必要がある場合は、有機または無機の塩基を発酵ブロスに添加してもよい。pH調整に好適な塩基は、例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムである。水酸化ナトリウムの濃度は、1~4Mの範囲、例えば2.5Mであってよい。
【0058】
pH調整後、尿素および非イオン性界面活性剤が添加された発酵ブロスを、凝集が起こるのを可能にするのに十分な時間インキュベートする。いくつかの態様において、発酵ブロスは、1時間以上を包含する、30分以上インキュベートされる。いくつかの態様において、発酵ブロスは4時間以上を包含する、2時間以上インキュベートされる。
【0059】
インキュベーション後、発酵ブロスは可溶物と不溶物に分離される。これにより、不溶物が発酵ブロスから除去され、溶液が得られるが、参照を容易にするために、以下では上清と称する。可溶物と不溶物への分離は、一般的に物理的手段を用いて達成される。発酵ブロスは、フロキュレーションの充分な除去を可能にする8983gの力で遠心分離(装置:Beckman coulter)してもよい。インキュベーション後、発酵ブロスを濾過(3M(商標)Zeta Plus(商標)カプセル、60SP公称孔径0.3ミクロン~4ミクロン)にさらすこともできる。フィルターは、例えば、フロキュレーションの充分な除去を可能にするメンブレンであってもよい。
【0060】
pH処理した発酵ブロスを、遠心分離によって増強された重力におよび濾過に、または遠心分離にさらした後、プロセスは完了してもよい。所望により、あるいは凝集がまだなお観察される場合には、上清のpHの第2の調整が行われてもよい。
【0061】
任意の第2またはさらにこれに続くpH調整のpHは、尿素および非イオン性界面活性剤が添加された発酵ブロスのpHを調整するために使用されたpHからは独立して選択される。例示として、pHが第1のpH調整において増大されていた場合、pHは、第2のpH調整またはさらにこれに続くpH調整において増大または減少されてよい。いくつかの態様において、第1のpH調整は、例えば、2.0~4.5の範囲のpH値であってよく、これに続くpH調整は、7.5~8.5の範囲のpH値であってよい。いくつかの態様において、最初のpH調整は、例えば、7.5~8.5の範囲のpH値であってよく、およびこれに続くpH調整は、2~4.5の範囲のpH値であってもよい。いくつかの態様において、最初のpH調整とこれに続くpH調整の両方は、7.5~8.5の範囲のpH値であってもよいが、しかしこの範囲内で異なるpH値であってもよい。同様に、最初のpH調整とこれに続くpH調整は、2.0~4.5の範囲のpH値であってもよいが、しかしこの範囲内で異なるpH値であってもよい。
【0062】
一般に、任意の第2のまたはさらにこれに続くpH調整において、pHは、例えば、pH7.8~pH8.2の範囲のpH値に調整されてよい。pHはまた、pH8.0~pH8.5の範囲のpH値に調整されてよい。いくつかの態様において、pHは、pH2.5~pH4.0の範囲のpH値に調整されてよい。pHはまた、pH3.0~pH3.8の範囲のpH値に調整されてよい。pHは、実例として、pH2.8~pH3.5に調整されてよい。
【0063】
第2のまたはさらにこれに続くpH調整の後、上清は、さらなる凝集が起こるのを可能にするのに充分な時間インキュベートされる。いくつかの態様において、上清は、1時間以上を包含する、30分以上インキュベートされる。いくつかの態様において、上清は4時間以上を包含する、2時間以上インキュベートされる。
【0064】
第2のまたはさらにこれに続くpH調整後、凝集が起こるのを可能にするのに十分な時間、上清を再度インキュベートする。この第2のまたはさらなるインキュベーションは、1時間以上を包含する、30分以上継続してよい。いくつかの態様において、第2以降のインキュベーションは、4時間以上を包含する、2時間以上継続してよい。
【0065】
第2のまたはさらなるインキュベーションの後、充分なフロキュレーションの除去を可能にする重力で上清を遠心分離する。上で詳述したのと同様の重力を使用してもよい。インキュベーション後、上清を濾過にさらしてもよい。上で詳述したようなフィルターを採用してもよい。フィルターは例えば充分なフロキュレーションの除去を可能にするメンブレンであってもよい。
【0066】
いくつかの態様において、組換えタンパク質を発現するPichia pastoris細胞を細胞培養培地中で所定の時間または所望の細胞密度および/または充填細胞体積が達成されるまで培養すること、遠心分離によって細胞を除去し、尿素およびTritonX-100などの非イオン性界面活性剤を無細胞の発酵上清に添加して無細胞の上清を得ること、およびpHベースの凝集を開始すること、凝集中に無細胞の上清を混合すること、凝集を沈降させること、ならびに清澄化された上清を回収すること、を含む、酵母細胞培養物の採取方法が提供される。
【0067】
これに続いて、組換えタンパク質は、典型的にはクロマトグラフィーを包含するであろう、さらなる下流の処理ステップにさらされてよい。
【0068】

以下において、本明細書に開示されるプロセスの態様を例によって説明する。インスリンまたはその類似体/誘導体などの目的のタンパク質を、酵母はPichia pastorisを選択した酵母発現系で発現させた。タンパク質の発現は、大規模産生のための20~22KLの範囲の容量を有する発酵リアクターで実施した。タンパク質は前駆体の形態で細胞から培地中に分泌された。
【0069】
発酵終了時に、ブロスを採取し、8983gで10分間遠心分離した。遠心分離後に回収した上清は、目的のタンパク質とともに、可溶性物質ならびに不溶性物質をなお含有した。このステップで凝集開始物質を添加することは、タンパク質が他の培地成分とともに凝集することを引き起こしてしまう可能性があった。ゆえに、プロセス時間をさらに削減するために、図1および図3に示すように、上清を尿素および非イオン性洗浄剤の溶液で処理した後に、好適な塩基を用いてpHを2~4.5または7.5~8.5の範囲へ調整し、規定時間インキュベートして、および凝集体を除去するために遠心分離するという改善されたプロセスが考案された。採取したブロスの澄明度に応じて、追加のpH調整および遠心分離のステップを実施してもよい。
【0070】
特定のpHで添加された尿素および非イオン性洗浄剤の添加により凝集が始まり、培地成分、細胞、細胞デブリ、コロイドおよび他の材料がクラスター化し、様々な大きさのフロック/凝集物を形成する。このことは、採取すべきタンパク質がフロックと結合することをもまた防いだ。
pH調整用の塩基は水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであり、主に水酸化ナトリウムであった。水酸化ナトリウムの濃度を以下に示す。
【0071】
材料および方法
表は、以下に行われた実験に使用した材料および材料のグレードを詳しく示す。
表は、行われた実験に使用した試薬およびその調製法を詳しく示す。
【表1】
【0072】
凝集された粒子の効率のよい溶液からの分離のために、プロセスにおいて遠心分離の方法を2~3回繰り返した。
-タンパク質の可溶性パターンを研究するため、幅広いpH範囲をスキャンした。
-pH2~4.5またはpH7.5~8.5のいずれかの有効なpHを、不純物およびコロイド粒子を選択的に沈殿させるのに好適であるとして同定した。
-最適化された尿素およびTritonX-100の個別濃度、ならびに尿素およびTritonX-100の混合物を共可溶化剤として選択した。
-尿素およびTritonX-100を使用することで、不純物およびその他のコロイド粒子の選択的凝集が引き起こされ、主な産生物を最小限の喪失で溶液中に維持した。
【0073】
インスリングラルギン含有発酵ブロスの凝集プロセス
図1は、インスリングラルギンを含有する発酵ブロスの凝集プロセスの段階的なフローチャートを示す。発酵ブロスからのインスリングラルギン上清を、異なる強度および異なるpHの一次処理ストック((表1に示されるとおりの)尿素およびTritonX-100の30Xストック)を用いてさらに清澄化した。
【0074】
発酵終了の際に、発酵ブロスを採取し、最初に遠心分離した。遠心分離の際に、30Xストックからの尿素およびTritonX-100の混合物を無細胞の発酵上清に添加した。試薬の分量を体積/体積ベースで添加した。2.5M水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを3.5±0.1に調整した後、混合液を2時間インキュベーションのために静置した。pHは発酵ブロス中に存在するインスリンまたはインスリン類似体に依存する。
【0075】
インキュベーション後、混合物を遠心分離し、pH3.5で形成された凝集体の形態での固体を除去した。この遠心分離の後、得られた上清のpHを、2.5M水酸化ナトリウム溶液を用いて8.5±0.1にさらに調整した。第2のpH調整は、pH7.5~8.5の範囲でのみ固有に凝集する追加の固体を溶液から除去するためになされた。このようにして、試料は2つのタイプの凝集プロセスを経て、それぞれの後に遠心分離ステップへと進む。インスリングラルギンについてはこの2段階の凝集ステップに従ったが、他の類似体のほとんどは単一の凝集ステップで細胞のない上清から固形物を取り出すのに充分である。
【0076】
最後の遠心分離ステップ後に得られた凝集された上清のpHを2.5±0.1に再調整した。
混合物を、デプス濾過および終末濾過(terminal filtration)を、これに続き陽イオン交換液体クロマトグラフィーを用いてさらに清澄化した。
本明細書で提供される方法は、実験の助けによりさらに精緻化された。しかしながら、これらの実験は本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
以下の実験では、凝集の効率は、一次回収ステップでの産生物回収率とNTUで表される。
【0077】
実験1-より良い清澄化および最適な回収のためのグラルギン上清の一次処理
この実験では、異なるpH値とストック濃度でグラルギンの一次処理を実施した。一次処理は2つの異なるバッチでもまた実施した。溶液の濁度を比濁計で測定し、得られた濁度を比濁法濁度単位(NTU)で報告した。プロセス回収は、最適化されたpH値を評価するために、バッチの両方から各値について計算された。
【0078】
発酵終了時に、ブロスを採取し、8983gで10分間遠心分離し(ブロスから細胞および細胞デブリを除去するため)、これに続き、尿素およびTritonX-100の溶液を上清に30Xストックから添加した。この添加後、2.5M水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを3.5±0.1に調整した。いったんpH調整した後、ブロスを2時間インキュベートし、それに続いてブロスを8983gで10分間遠心分離した。pH3.5でのインキュベーションの後の遠心分離終了後、2.5M水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを8.5に増大させ、追加で2時間インキュベートして凝集させた。pH8.5でのインキュベーション後に形成されたこれらのフロキュレート(flocculate)を、さらにもう1回の遠心分離によって除去した。このプロセスは、下表の試験番号5に従った。他のすべての試験は、一次処理ストックの有無にかかわらず、単一のpHでインキュベートした。これに続いて、図1に示されるとおりpHを2.5±0.1に再調整した。10の試験を2バッチで行った。試験1、2、および3には一次処理ストックを添加しなかった。
【0079】
表2は、実験1のとおりに試験を行った後に観察された結果を詳しく示す。
【表2】
【0080】
表2に見られるように、pH4.5での一次回収において、共可溶化剤を添加した場合(試験番号5、7、および10)と添加しなかった場合(試験番号3および7)とで際立つ差があった。一次処理プロセスの間に共可溶化剤(一次処理ストック)を添加することで、産生品の喪失を大幅に低減できることが観察された。また、pH3.5~およびpH8.5、pH3.5(単独)が、一次清澄化のためのもっとも最適なプロセス条件であることが観察され、これらの試験(試験番号5および6)は、NTUとプロセス回収との間の絶妙なバランスを供している。
【0081】
実験2-一次処理アプローチによるグラルギン清澄上清の安定性(NTU安定性)
一次処理後の清澄化された上清の安定性を定めるため、NTUに関して、独立した実験を実施した。実験は、異なるpH値、異なる尿素およびTritonXの濃度で、3つの試験で実施した。実験は、低温すなわち5±3℃、および室温すなわち22±3℃などの2つの異なる保持条件で行った。
【0082】
表3は、試験で行ったステップを詳しく示す。
【表3】
【0083】
表4は、表3で詳しく示したプロセスに関して実施した試験の詳細を詳しく示す。結果は、図2Aおよび図2Bとともに観察するとよりよく示される。
【表4】
【0084】
表4に詳しく示すように、試験1は、pHの3.5への調整後の一次処理に供された。
試験2および試験3では、一次処理剤を使用せず、夫々pHを3.5および2.5に調整した。
すべての試験で、8983gで10分間2次パス(pass)の遠心分離を行い、その後pHを2.5±0.2に調整した。
試験の実施のとおり、NTUは7日間安定であった。
上記の安定性データ(表4)から明らかなように、試験1(pH3.5、一次処理アプローチあり)および試験2(pH3.5、一次処理アプローチなし)では、NTUは低温保持で7日間ほとんど安定(微小な増大)であった。同じ時点で、試験3(pH2.5、一次処理アプローチなし)では増大していたことが見出された。
RT保持中、一次処理アプローチありのpH3.5の試験1は、他の試験(一次処理アプローチなしpH3.5、および一次処理アプローチなしpH2.5)と比較して安定性が高く、一次処理はNTUの安定性に関する大いなる利点を供することが明確に示された。
【0085】
実験3:グラルギンの清澄化された上清のデプス濾過試験-比較評価
上清のNTU単位での濁度が高いと、デプス濾過のステージで大きな課題が生じ、それによって、より大きなフィルター面積および大幅に長い処理時間が必要となる可能性がある。濾過処理能力は、以下の表5に示すように、種々の(一次処理あり・なし)試験で研究された。
表5で詳しく示したように、試験はデプス濾過(3M(商標) Zeta Plus(商標)カプセル、60SP公称孔径レート0.3ミクロン~4ミクロン)操作にかけられ、濾過処理能力データは2.0barのカットオフ圧力限界で観察された。試験1のデプス濾過データはラボで作成されたもので、残りの2つのデータセット(pH3.5~8.5およびpH3.5、いずれも一次処理あり)はスケールバッチ(過去の製造実行)でのものから参照されたものである。
【表5】
結果-一次処理なしのpH2.5での試験1は、上の表に示すように、他のアームと比較して最小の濾過処理能力を示した。試験1(pH2.5で一次処理なしの清澄化アプローチ)の容積処理能力は、バッチ1および2でそれぞれ252L/mと176L/mであると見出された。一方、一次処理アプローチ(pH3.5と3.5の後に8.5)を用いた他のアームでは、いずれの場合でも容積処理能力がより高かった(1000L/mより大きかった)。
このことは、一次処理プロセスを行うことには以下の4つの利点:
1.処理回収が増大する;
2.よりよい清澄度を提供する;
3.濾過処理能力を大幅に増大させる;および
4.バッチランニングコストの削減、
があることを示した。
【0086】
インスリンリスプロを含有する無細胞の発酵上清の凝集プロセス
図3は、インスリンリスプロを含有する無細胞の発酵上清の凝集プロセスの段階的なフローチャートを示す。インスリンリスプロの無細胞の発酵上清を、ブロスを8983gで15~30分間遠心分離して得た。
最初のブロスの遠心分離後に得られた無細胞の発酵上清のpHを、オルトリン酸/2.5M水酸化ナトリウム溶液を用いて、6~6.5(発酵pH)から2.0±0.1に調整した。pH調整後、特定のタイプの発酵不純物または培地成分または塩類を凝集させるために、この上清混合液を8~12時間インキュベーション(静置)したままとした。pH2で行われるこの第一ステージの凝集に固有であることに、産生物がこのpH条件下で高い溶解性を示し、よって不純物や塩類と共沈しないため、一次処理剤(尿素/TritonX-100)を添加する必要がない。ほぼ12時間インキュベートした後、凝集した固形物を遠心分離によって除去する。
遠心分離後に得られたpH2の上清は、凝集の第二ステップを探るためにさまざまなpH条件、すなわちpH3.5、4、および4.5にさらに調整される。pHの調整前に、試料に生成物の沈殿を回避するために一次処理剤をベースに添加する。この一次処理剤を伴うpH3.5、pH4、またはpH4.5の試料を、凝集が起こるまで2~4時間インキュベートした後、8983gで15~30分間遠心分離する。最後の遠心分離後に得られた試料をpH2.5に再調整し、デプスフィルターと終末フィルターでさらに濾過し、これに続いて陽イオン交換クロマトグラフィーカラムにロードして捕捉した。
【0087】
実験4:よりよい清澄化および最適な回収のためのリスプロの発酵上清の一次処理
リスプロの発酵上清を一次処理ストック(尿素とTritonX-100の30Xストック、すなわち3M尿素および4.5%TritonX-100)を用いて、図3に記載したプロセスフローに従って、異なる強度および異なるpHで清澄化した。表6は、これらの試験の成果を示している。
【表6】
結果:2つの主な評価基準としてNTUおよびプロセス回収率を考慮すると、夫々pH値2.0および4.5(尿素およびTritonX-100の1倍の強度)での一次処理アプローチによる清澄化試験(3および6)は、他の組み合わせと比較して、良好なプロセス回収率と清澄化を示した。
【0088】
実験5:一次処理アプローチによるリスプロの清澄化された上清の安定性(NTUベースの安定性モニタリング)
NTUに関して清澄化された上清の安定性を定めるために、独立したセットの実験を行った。清澄化されたリスプロ上清の安定性を、2つの異なる保持条件、すなわち低温(5±3℃)とRT(24±2℃)とでNTUに関して行った。実験は2つの試験のセット、すなわち次のように行った。
-一次処理ありの試験1および試験3は、それぞれpH2.0±0.2およびpH4.0±0.2で実行/行った。
-一次処理なしの試験2および試験4は、それぞれpH2.0±0.2およびpH4.0±0.2で実行/行った。
試験1および試験3を一次処理ありで実行し、試験2および試験4を一次処理なしで実行した。
これらの実験を行うためのプロセスのステップを表7および表8に詳しく示す。
【表7】
【表8】
【0089】
NTU安定性を、表9に示すようにRT(22±3℃)で、および表10に示すように低温(5±3℃)で行った。
a)清澄化された上清のRT保持(22±3℃)におけるNTU安定性-結果を図4Aに示す。
【表9】
b)清澄化された上清の低温保持(5±3℃)におけるNTU安定性-結果を図4Bに示す。
【表10】
【0090】
同様の実験のセットを、試験3と4を用いてRTで実行した。NTU安定性を、表11に示すようにRT(22±3℃)で、および表12に示すように低温(5±3℃)で行った。

c)室温保持(22±3℃)における清澄化された上清のNTU安定性-結果を図5Aに示す。
【表11】
d)清澄化された上清の低温保持(5±3℃)におけるNTU安定性-結果を図5Bに示す。
【表12】
結果:尿素およびTritonX-100ストック液の添加なしの場合、NTUは室温(RT)保持で5日目以降に増大することが観察された。この観察は、一次処理なしの、すなわちpH2.0±0.2およびpH4.0±0.2の両試験で同様であることが見出された。
(一次処理あり・なしの)いずれのアームについても、いずれのpHのステージ(すなわちpH2.0±0.2およびpH4.0±0.2)においても、低温保持中のNTUに明確な差は見られなかったが、一次処理ありの試験は、一次処理なしの試験と比較してNTUに関して良好であった。
【0091】
結論:本明細書で開示されるプロセスは、複合発酵上清から可溶性不純物の凝集へのシンプルなアプローチを提供する。それは単純な化学薬剤およびpHパラメーターを使用して、可溶性不純物の凝集を引き起こす。凝集プロセスで使用される薬剤は、市販の凝集剤とは異なり、これに続くイオン交換クロマトグラフィーによるクロマトグラフィー精製を妨害しない。開示されたプロセスは、尿素および洗浄剤の適切な混合物を使用することにより、凝集プロセス中の産生物の喪失を回避し、よって、目的の産生物を溶液中に維持する。凝集プロセスは、遠心分離のような単純な物理的分離方法で除去され得るように、凝集体のサイズを増大する。この凝集方法によって溶液から不純物が完全に除去されることは、清澄化された溶液が室温でほぼ5日間および低温条件下で7日間より長いといった長期間についての、清澄化された溶液の安定性によって示される。この新しいアプローチは、溶液から不純物を取り出し、それを清澄化して、クロマトグラフィーのローディングに好適にすることで、ネガティブな精製(negative purification)を可能にする。捕捉クロマトグラフィーの後、99%以上の凝集薬が除去され、最終産生物に残留物として現れないことが確保される。提案された方法は、一次回収ステップのプロセス時間およびコスト負担を削減し、捕捉カラムの詰まりを回避するという大きな利点を供する。クロマトグラフィーの前に採用された濾過プロセスは、この一次回収アプローチによる清澄化により、デプスフィルターの濾過能力が5~20倍増大し、プラスの影響を受けた。凝集プロセスは1000倍にスケールアップされ、小規模の観察と同様に行われた。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
【国際調査報告】