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特表2024-535124破傷風毒素に結合する抗体およびその使用
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  • 特表-破傷風毒素に結合する抗体およびその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】破傷風毒素に結合する抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/12 20060101AFI20240918BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240918BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20240918BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C07K16/12 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 R
A61P31/04
A61K31/7088
A61K35/12
A61K35/76
A61K48/00
G01N33/569 F
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538780
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022074735
(87)【国際公開番号】W WO2023036774
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/074596
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】511017287
【氏名又は名称】インスティテュート・フォー・リサーチ・イン・バイオメディシン
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR RESEARCH IN BIOMEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ランツァヴェッキア,アントーニオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA23Y
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB351
4C084ZB352
4C085AA13
4C085AA14
4C085BA12
4C085BB11
4C085BB36
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB35
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、破傷風毒素に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントに関する。本発明はまた、そのような抗体および抗体フラグメントをコードする核酸、およびそれを発現する細胞に関する。さらに、本発明は、Clostridium tetaniまたは破傷風感染の診断、予防および治療における抗体および抗体フラグメントの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破傷風毒素に結合する、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)それぞれが、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列と、少なくとも70%以上の配列同一性を有する、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにそれぞれが、配列番号4、配列番号5、および配列番号7のアミノ酸配列と、少なくとも70%以上の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または
(ii)それぞれが、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列と、少なくとも70%以上の配列同一性を有する、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにそれぞれが、配列番号4、配列番号6、および配列番号7のアミノ酸配列と、少なくとも70%以上の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または
(iii)それぞれが、配列番号12、配列番号13、および配列番号14のアミノ酸配列と、少なくとも70%以上の配列同一性を有する、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにそれぞれが、配列番号15、配列番号16、および配列番号18のアミノ酸配列と、少なくとも70%以上の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または
(iv)それぞれが、配列番号12、配列番号13、および配列番号14のアミノ酸配列と、少なくとも70%以上の配列同一性を有する、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにそれぞれが、配列番号15、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列と、少なくとも70%以上の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;
を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)それぞれが、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列と、少なくとも80%以上の配列同一性を有する、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにそれぞれが、配列番号4、配列番号5、および配列番号7のアミノ酸配列と、少なくとも80%以上の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または
(ii)それぞれが、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列と、少なくとも80%以上の配列同一性を有する、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにそれぞれが、配列番号4、配列番号6、および配列番号7のアミノ酸配列と、少なくとも80%以上の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または
(iii)それぞれが、配列番号12、配列番号13、および配列番号14のアミノ酸配列と、少なくとも80%以上の配列同一性を有する、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにそれぞれが、配列番号15、配列番号16、および配列番号18のアミノ酸配列と、少なくとも80%以上の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または
(iv)それぞれが、配列番号12、配列番号13、および配列番号14のアミノ酸配列と、少なくとも80%以上の配列同一性を有する、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにそれぞれが、配列番号15、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列と、少なくとも80%以上の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;
を含む、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)それぞれが、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列と、少なくとも90%以上の配列同一性を有する、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにそれぞれが、配列番号4、配列番号5、および配列番号7のアミノ酸配列と、少なくとも90%以上の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または
(ii)それぞれが、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列と、少なくとも90%以上の配列同一性を有する、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにそれぞれが、配列番号4、配列番号6、および配列番号7のアミノ酸配列と、少なくとも90%以上の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または
(iii)それぞれが、配列番号12、配列番号13、および配列番号14のアミノ酸配列と、少なくとも90%以上の配列同一性を有する、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにそれぞれが、配列番号15、配列番号16、および配列番号18のアミノ酸配列と、少なくとも90%以上の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または
(iv)それぞれが、配列番号12、配列番号13、および配列番号14のアミノ酸配列と、少なくとも90%以上の配列同一性を有する、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにそれぞれが、配列番号15、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列と、少なくとも90%以上の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号1に記載の重鎖CDR1配列、配列番号2に記載の重鎖CDR2配列、配列番号3に記載の重鎖CDR3配列、配列番号4に記載の軽鎖CDR1配列、配列番号5または6に記載の軽鎖CDR2配列、および配列番号7に記載の軽鎖CDR3配列;または
(ii)配列番号12に記載の重鎖CDR1配列、配列番号13に記載の重鎖CDR2配列、配列番号14に記載の重鎖CDR3配列、配列番号15に記載の軽鎖CDR1配列、配列番号16または17に記載の軽鎖CDR2配列、および配列番号18に記載の軽鎖CDR3配列;
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号8と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号9と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(ii)配列番号19と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号8と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号9と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(ii)配列番号19と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号20と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号8と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号9と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(ii)配列番号19と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号8と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号9と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(ii)配列番号19と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号8と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号9と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(ii)配列番号19と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号8と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号9と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(ii)配列番号19と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(ii)配列番号19に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号10と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;または
(ii)配列番号21と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号10と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;または
(ii)配列番号21と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号10と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列含む軽鎖;または
(ii)配列番号21と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号10と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;または
(ii)配列番号21と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号10と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;または
(ii)配列番号21と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号10と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;または
(ii)配列番号21と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項19】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖;または
(ii)配列番号21に記載のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖;
を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項20】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト抗体である、請求項1~19のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項21】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体である、請求項1~20のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項22】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、精製されている、請求項1~21のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項23】
前記抗体がFc部分を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項24】
前記抗体がIgG型である、請求項1~23のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項25】
前記抗体がIgG1型である、請求項24に記載の抗体。
【請求項26】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、FvまたはscFvから選択される、請求項1~22のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項27】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fabである、請求項26に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項28】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、単鎖抗体である、請求項1~23のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項29】
医薬品として使用するための、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項30】
Clostridium tetaniまたは破傷風の感染の予防または治療に使用するための、請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項31】
請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む、核酸分子。
【請求項32】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドは、コドン最適化されている、請求項31に記載の核酸分子。
【請求項33】
配列番号27~48のいずれか1つに記載の核酸配列;または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体を含む、請求項31または32に記載の核酸分子。
【請求項34】
第1および第2の核酸分子の組み合わせであって、第1の核酸分子は、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み;第2の核酸分子は、同抗体またはその抗原結合フラグメントの対応する軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、組み合わせ。
【請求項35】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドの、一方または両方がコドン最適化されている、請求項34に記載の核酸分子の組み合わせ。
【請求項36】
配列番号27~48のいずれか1つに記載の核酸配列;または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体を含む、請求項34または35に記載の核酸分子の組み合わせ。
【請求項37】
請求項31~33のいずれか1項に記載の核酸分子、または請求項34~36のいずれか1項に記載の核酸分子の組み合わせを含む、ベクター。
【請求項38】
第1ベクターと第2ベクターの組み合わせであって、第1ベクターは、請求項34~36のいずれか1項に定義される第1核酸分子を含み、第2ベクターは、請求項34~36のいずれか1項に定義される対応する第2核酸分子を含む、組み合わせ。
【請求項39】
請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメントを発現する、または請求項37もしくは38に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項40】
請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項31~33のいずれか1項に記載の核酸、請求項34~36のいずれか1項に記載の核酸の組み合わせ、請求項37に記載のベクター、請求項38に記載のベクターの組み合わせ、または請求項39に記載の細胞、および任意に、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む、医薬組成物。
【請求項41】
任意に、Clostridium tetaniまたは破傷風への感染の予防または治療における、医薬品として使用するための、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、請求項31~33のいずれか1項に記載の核酸、請求項34~36のいずれか1項に記載の核酸の組み合わせ、請求項37に記載のベクター、請求項38に記載のベクターの組み合わせ、もしくは請求項39に記載の細胞、または請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
Clostridium tetaniまたは破傷風感染の(in-vitro)診断における、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
【請求項43】
抗破傷風ワクチンの品質をモニタリングするための、請求項1から28のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの使用であって、前記ワクチンに含まれる抗原またはそのエピトープのコンフォメーションを確認することにより抗破傷風ワクチンの品質をモニタリングする、使用。
【請求項44】
Clostridium tetaniまたは破傷風の感染の予防、治療または減弱のための医薬の製造における、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項31~33のいずれか1項に記載の核酸、請求項34~36のいずれか1項に記載の核酸の組み合わせ、請求項37に記載のベクター、請求項38に記載のベクターの組み合わせもしくは請求項39に記載の細胞、または請求項40に記載の医薬組成物の、使用。
【請求項45】
Clostridium tetaniもしくは破傷風への感染を減少させるか、またはClostridium tetaniもしくは破傷風への感染のリスクを低下させる方法であって、以下を含む方法:
治療有効量の、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、請求項31~33のいずれか1項に記載の核酸、請求項34~36のいずれか1項に記載の核酸の組み合わせ、請求項37に記載のベクター、請求項38に記載のベクターの組み合わせもしくは請求項39に記載の細胞、または請求項40に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与すること。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は破傷風に対する抗体、特に破傷風毒素に結合する抗体の分野に関する。本発明はまた、このような抗体の使用、例えばClostridium tetaniの感染または破傷風の予防および治療方法における使用に関する。
【0002】
破傷風は、Clostridium tetaniの芽胞の感染によって起こる。この菌の芽胞は環境中に遍在しており、例えば土壌、唾液、埃、糞尿などに含まれている。これらは神経系に影響を及ぼす深い切り傷、創傷、火傷から体内に侵入する。ほとんどの場合、感染後14日以内に発症する。症状としては、顎の痙攣や口が開かない、背中や腹部、四肢に頻発する筋肉の痙攣、突然の物音に誘発されることの多い突然の痛みを伴う筋肉の痙攣、発作、頭痛、発熱、発汗などがある。破傷風は破傷風トキソイドに基づく強力なワクチンで予防できるが、40歳/50歳を過ぎると破傷風毒素に対する抗体価が低下する。破傷風は世界の多くの地域で依然として重要な公衆衛生問題であるが、特に予防接種率が低く、また不潔な出産習慣が一般的な、低所得国および低所得地区ではなおさらである。WHOの推計によると、2018年には25,000人の新生児が新生児破傷風で死亡した。
【0003】
破傷風は、嫌気性条件下でClostridium tetaniによって生産される破傷風毒素(「破傷風神経毒」、TeNTとも称される)によって引き起こされる。破傷風毒素は非常に強力な神経毒で、LD50は約2.5~3ng/kgである。破傷風毒素は細菌内でtetX遺伝子によってコードされており、150kDaのプレタンパク質として発現し、細菌または宿主のプロテアーゼによって100kDaの重鎖および50kDaの軽鎖の2つの部分に切断される。両鎖は単一のジスルフィド結合でつながっている。軽鎖はZn2+メタロプロテアーゼであり、一方で重鎖はN末端転位ドメイン(HN)およびC末端受容体結合ドメイン(HC)を有する。
【0004】
病院の救急治療室で患者が壊死性創傷を呈した場合、直ちに行われる治療は、積極的な創傷治療、筋痙攣を制御する薬剤、抗生物質に加えて、通常、ポリクローナルヒト抗体の投与である。この抗体は免疫過剰のヒトドナーから単離され、破傷風免疫グロブリン(TIG)として知られている。低所得国では高免疫ウマ血清がよく使用され、これは危険な過敏反応を引き起こし得る。
【0005】
しかしながら、ポリクローナルTIGには様々な欠点がある。破傷風毒素に対して特異的に指向する抗体のパーセンテージが低いため、通常、大量のタンパク質を注射する必要がある。その結果、血管浮腫またはアナフィラキシーなどの副作用が生じ得る。さらに、抗体の髄腔内投与はより効果的であると思われるが、この方法は注射できるタンパク質の総量によって制限されるため、TIGでは実行不可能である。さらに、中和効力はTIGのロットによって異なり、未知のウイルスまたは血液タンパク質が混入する危険性がある。さらに、TIGには少量のIgAが含まれており、IgA不足の患者では免疫反応を引き起こす可能性がある。
【0006】
上記の観点から、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することである。特に、本発明の目的は、高い結合親和性で破傷風毒素に特異的に結合する抗体を提供することである。それにより、非常に強力な抗体は少量しか注射する必要がない。
【0007】
この目的は、下記および添付の特許請求の範囲に記載された対象-課題によって達成される。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は、本明細書に記載した特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されるものではないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0009】
以下では、本発明の要素について説明する。これらの要素は、具体的な実施形態とともに列挙されているが、追加の実施形態を作成するために、任意の方法および任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に記載された実施例および実施形態は、本発明を明示的に記載された実施形態のみに限定するように解釈されるべきではない。本明細書は、明示的に記載された実施形態と任意の数の開示された要素とを組み合わせた実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願における全ての記載された要素の任意の順列および組み合わせは、文脈がそうでないことを示さない限り、本出願の記載によって開示されたものとみなされるべきである。
【0010】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、用語「を含む(comprise)」、ならびに「を含む(comprises)」および「を含む(comprising)」などの変形は、明記された部材、整数または工程を含むことを意味するが、他の明記されていない部材、整数または工程を除外することを意味しないと理解される。用語「からなる(consist of)」は、用語「を含む(comprise)」の特定の実施形態であり、他の非記載部材、整数または工程は除外される。本発明の文脈において、用語「を含む(comprise)」は、用語「からなる(consist of)」を包含する。それゆえ、用語「を含む(comprising)」は、「からなる(consisting)」と同様に「を含む(including)」を包含し、例えば、X「を含む(comprising)」組成物は、Xのみを含む場合もあれば、例えば、X+Yのような追加の何かを含む場合もある。
【0011】
本発明を説明する文脈で(特に特許請求の範囲の文脈で)使用される用語「a」および「an」および「the」および類似の参照は、本明細書で特に示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方をカバーするものと解釈される。本明細書における値の範囲の記載は、単に、範囲内に入る各個別の値を個別に参照するための略記法としての役割を果たすことを意図している。本明細書に別段の記載がない限り、各個別の値は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書中のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な非請求要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0012】
「実質的に」という語は、「完全に」を除外するものではなく、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない可能性がある。
【0013】
数値xに関する用語「約」は、x±10%、例えばx±5%、またはx±7%,またはx±10%,またはx±12%,またはx±15%,またはx±20%を意味する。
【0014】
本明細書で使用する用語「疾患」は、正常な機能を損なう、典型的には特徴的な徴候および症状によって示される、ならびにヒトまたは動物の生命の期間または質の低下をひきおこす、ヒトまたは動物の身体またはその一部分の異常な状態をいずれも示しているという点で、(医学的状態における)用語「障害」および「状態」と一般的に同義であることを意図しており、また互換的に使用される。
【0015】
本明細書で使用される場合、対象または患者の「治療」への言及は、予防、予防、減弱、改善および治療を含むことが意図される。本明細書において、用語「対象」または「患者」は、ヒトを含む全ての哺乳動物を意味するために互換的に使用される。対象の例としては、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、およびウサギが挙げられる。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0016】
投与量はしばしば体重との関係で表される。それゆえ、[g、mg、または他の単位]/kg(またはg、mgなど)で表される用量は、用語「体重」が明示的に言及されていなくても、通常、「体重kg(またはg、mgなど)あたり」の[g、mg、または他の単位]を指す。
【0017】
用語「結合」および類似の言及は、通常、「特異的に結合する」ことを意味し、これは非特異的な付着を包含しない。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、本発明による特徴的な特性が保持される限り、全抗体、抗体フラグメント(抗原結合フラグメントなど)、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、組換え抗体、遺伝子設計抗体(変異体抗体または突然変異体)など、限定されるものではないが、様々な形態の抗体を包含する。いくつかの実施形態では、抗体はヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。例えば、抗体はヒトモノクローナル抗体である。
【0019】
上述のように、用語「抗体」には一般に抗体フラグメントも含まれる。抗体のフラグメントは、抗体の抗原結合活性を保持することができる。このようなフラグメントは「抗原結合フラグメント」と呼ばれる。抗原結合フラグメントには、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、FvまたはscFvが含まれるが、これらに限定されない。抗体のフラグメントは、ペプシンやパパインなどの酵素による消化、および/または化学的還元によるジスルフィド結合の切断を含む方法によって抗体から得ることができる。あるいは、抗体のフラグメントは、例えば、重鎖および/または軽鎖の配列の一部(フラグメント)をクローニングして発現させるなどの組換え手段によって得ることができる。本発明はまた、本発明の抗体の重鎖および軽鎖に由来する単鎖Fvフラグメント(scFv)を包含する。例えば、本発明には、本発明の抗体由来のCDRを含むscFvが含まれる。また、重鎖または軽鎖の単量体および二量体、単ドメイン重鎖抗体、単ドメイン軽鎖抗体、ならびに単鎖抗体、例えば重鎖および軽鎖可変ドメインがペプチドリンカーによって結合された単鎖Fvも含まれる。本発明の抗体フラグメントは、当業者に公知の様々な構造に含まれ得る。さらに、本発明の配列は、本発明の配列が本発明のエピトープを標的とし、分子の他の領域が他の標的と結合する多重特異性分子の構成要素であってもよい。特許請求の範囲を含む本明細書では、抗原結合フラグメント、抗体フラグメント、抗体の変異体および/または誘導体について明示的に言及している箇所があるが、本発明の配列は、本発明のエピトープを標的とし、他の領域は他の標的と結合する多特異性分子の構成要素であってもよい。用語「抗体」は、抗体のすべてのカテゴリー、すなわち、抗原結合フラグメント、抗体フラグメント、抗体の変異体および誘導体を含むことが理解される。
【0020】
ヒト抗体は、当該技術分野において公知である(van Dijk, M. A., and van de Winkel, J. G., Curr.Opin.Chem.Biol. 5 (2001) 368-374)。ヒト抗体は、内在性免疫グロブリンの生産がない場合に、免疫によりヒト抗体の全レパートリーまたは選択されたものを生産することができるトランスジェニック動物(例えばマウス)においても生産することができる。このような生殖細胞系列変異マウスにヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイをトランスファーすると、抗原チャレンジによりヒト抗体が生産されるようになる(例えば、Jakobovits, A., et al., Proc.Natl. Acad.Sci. USA 90 (1993) 2551-2555; Jakobovits, A., et al., Nature 362 (1993) 255-258; Bruggemann, M., et al., Year Immunol.7 (1993) 3340を参照)。ヒト抗体もファージディスプレイライブラリーにおいて生産できる(Hoogenboom, H. R., and Winter, G., J. Mol.Biol. 227 (1992) 381-388; Marks, J. D., et al., J. Mol.Biol.222(1991)581-597)。Cole et al.およびBoerner et al.の技術は、ヒトモノクローナル抗体の調製にも利用可能である(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); and Boerner, P., et al., J. Immunol. 147 (1991) 86-95)。いくつかの実施形態において、ヒトモノクローナル抗体は、Traggiai E, Becker S, Subbarao K, Kolesnikova L, Uematsu Y, Gismondo MR, Murphy BR, Rappuoli R, Lanzavecchia A. (2004):An efficient method to make human monoclonal antibodies from memory B cells: potent neutralization of SARS coronavirus. Nat Med. 10(8):871-5に記載されているように、改善したEBV-B細胞不死化を用いることで調製される。本明細書において、用語「可変領域」(軽鎖の可変領域(V)、重鎖の可変領域(V))は、抗体と抗原との結合に直接関与する軽鎖と重鎖の対のそれぞれを示す。
【0021】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgA、IgG、IgM、すなわちα、γまたはμ重鎖)であることができる。例えば、抗体はIgG型である。IgGアイソタイプの中で、抗体はIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブクラス、例えばIgG1であってもよい。本発明の抗体は、κまたはλ軽鎖を有していてもよい。いくつかの実施形態において、抗体はIgG1タイプであり、κ軽鎖を有する。
【0022】
本発明による抗体は、精製された形態で提供され得る。典型的には、抗体は例えば、組成物の90%未満(重量%)、通常は60%未満、より通常は50%未満が他のポリペプチドで構成されている、他のポリペプチドを実質的に含まない組成物中に存在する。
【0023】
本発明による抗体は、ヒトおよび/または非ヒト(または異種)宿主、例えばマウスにおいて免疫原性を示すことがある。例えば、抗体は非ヒト宿主では免疫原性であるが、ヒト宿主では免疫原性でないイディオトープを有し得る。ヒトに使用する本発明の抗体には、マウス、ヤギ、ウサギ、ラット、非霊長類哺乳動物などの宿主から容易に単離できず、一般にヒト化またはゼノマウスから得ることができないものが含まれる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「中和抗体(neutralizing antibody)」とは、宿主において感染を開始および/または永続させる病原体の能力を中和する、すなわち、予防、防止、低減、阻害または妨害することができる抗体である。用語「中和抗体(neutralizing antibody)」、「中和する抗体(an antibody that neutralizes)」または「中和する抗体(antibodies that neutralize)」は、本明細書では互換的に使用される。これらの抗体は、本明細書に記載されるように、適切な製剤化により、予防剤または治療剤として、積極的なワクチン接種に関連して、診断ツールとして、または生産ツールとして、単独で、または組み合わせて使用することができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「変異」は、参照配列、例えば対応するゲノム配列と比較した場合の、核酸配列および/またはアミノ酸配列における変化に関する。例えばゲノム配列と比較した突然変異は、例えば(天然に存在する)体細胞突然変異、自然突然変異、例えば酵素、化学物質もしくは放射線により誘導される誘導突然変異、または部位特異的突然変異誘発(核酸配列および/またはアミノ酸配列に特異的かつ意図的な変化を生じさせるための分子生物学的方法)により得られる突然変異であり得る。それゆえ、用語「変異」または「変異させる」は、例えば核酸配列またはアミノ酸配列に物理的に変異を生じさせることも含むと理解されるものとする。変異には、1つ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸の置換、欠失、挿入、および連続する複数のヌクレオチドまたはアミノ酸の逆位が含まれる。アミノ酸配列の変異を達成するにあたり、(組換え)変異ポリペプチドを発現させるために、変異はアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に導入され得る。変異は、例えば部位特異的突然変異誘発により、あるアミノ酸をコードする核酸分子のコドンを改変して、異なるアミノ酸をコードするコドンにすることによって、または例えばポリペプチドをコードする核酸分子のヌクレオチド配列を知り、核酸分子の1つ以上のヌクレオチドを変異させる必要なしに、ポリペプチドの変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子の合成をデザインすることにより、配列変異体を合成することによって、達成し得る。
【0026】
本明細書の本文全体を通して、いくつかの文書を引用する。本明細書で引用した各文書(すべての特許、特許出願、科学刊行物、製造者の仕様書、説明書などを含む)は、上述または下述にかかわらず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる部分も、本発明が先行発明によりかかる開示に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるものではない。
【0027】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0028】
<抗体およびその抗原結合フラグメント>
第1の態様において、本発明は、破傷風毒素に(特異的に)結合する、(単離された)抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。本発明はまた、破傷風トキソイドに(特異的に)結合する、(単離された)抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0029】
破傷風毒素(破傷風神経毒、TeNTとも称される)は、一般に、3つのドメインを有するものとして記載される:軽鎖(Lドメイン)、ならびに重鎖のN末端(HNドメイン)およびC末端(HCドメイン)部分。重鎖のC末端ドメイン(HC)は、特定の細胞表面レセプターを認識し、シナプス前結合を担う。重鎖のC末端ドメイン(HC)には2つのサブドメイン、N末端HC-NおよびC末端HC-Cがある。C末端サブドメインHC-Cにはポリシアロガングリオシド結合部位とニドーゲン結合部位が含まれ、N末端サブドメインHC-NはHNドメインに結合している。重鎖のN末端ドメイン(HN)は、膜移行によってLドメインを細胞質に送り込む役割を担っている。破傷風毒素が細胞質に到達するとき、重鎖と軽鎖の間のジスルフィド結合が還元され、Lドメイン(軽鎖)がニューロンの細胞質に放出される。Lドメインはメタロプロテアーゼであり、遠心性運動ニューロンの均衡のとれた収縮を制御する脊髄の抑制性介在ニューロン由来の神経伝達物質放出をブロックする。
【0030】
本発明による抗体またはその抗原結合フラグメントの結合を評価する標準的な方法は当業者に公知であり、例えばELISA(酵素結合免疫吸着測定法)が挙げられる。これにより、抗体結合の相対的親和性は、飽和状態で50%の最大結合を達成するのに必要な抗体濃度(EC50)を測定することにより決定し得る。
【0031】
例示的な標準ELISAは、以下のように実施することができる:ELISAプレートは、抗体の結合が試験されるタンパク質/複合体/粒子(例えば、破傷風毒素)の十分な量(例えば、1μg/ml)でコーティングされ得る。その後、プレートを検査する抗体と共にインキュベートする。洗浄後、例えば、アルカリホスファターゼと結合したヤギ抗ヒトIgGなどの、試験抗体を認識する標識抗体を用いて、抗体の結合を明らかにすることができる。その後プレートを洗浄し、必要な基質(例えばp-NPP)を添加し、例えば405nmなどでプレートを読み取り得る。抗体結合の相対的親和性は、飽和状態で50%の最大結合を達成するのに必要なmAb濃度(EC50)を測定することにより決定され得る。EC50値は、勾配を変化させた4パラメータ非線形回帰でフィットした結合曲線の内挿により算出され得る。
【0032】
一般に、本発明による抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖上に(少なくとも)3つの相補性決定領域(CDR)を、軽鎖上に(少なくとも)3つのCDRを含み得る。一般に、相補性決定領域(CDR)は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインに存在する超可変領域である。通常、抗体の重鎖と連結した軽鎖のCDRは一緒に抗原レセプターを形成する。通常、3つのCDR(CDR1、CDR2、CDR3)は可変ドメイン内で非連続的に配置される。抗原レセプターは通常2つの可変ドメイン(重鎖と軽鎖の2つの異なるポリペプチド鎖上:重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL))から構成されているため、各抗原レセプターには通常6つのCDR(重鎖:CDRH1、CDRH2、CDRH3、軽鎖:CDRL1、CDRL2、CDRL3)が存在する。例えば、古典的なIgG抗体分子は通常2つの抗原レセプターを持つため、12個のCDRを含む。重鎖および/または軽鎖上のCDRは、フレームワーク領域によって分離されていることがあり、フレームワーク領域(FR)は、可変ドメイン中の、CDRよりも「可変性」の低い領域である。例えば、可変領域(またはそれぞれの可変領域)は、3つのCDRによって分離された4つのフレームワーク領域から構成される。
【0033】
重鎖上の3つの異なるCDRおよび軽鎖上の3つの異なるCDRを含む本発明の例示的な抗体の重鎖および軽鎖の配列を決定した。CDRアミノ酸の位置は、IMGT番号付けシステム(IMGT:http://www.imgt.org/;参照:Lefranc, M.-P. et al. (2009) Nucleic Acids Res. 37, D1006-D1012)に従って定義される。
【0034】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも70%の配列同一性を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに配列番号4、配列番号5、および配列番号7のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも70%の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または(ii)配列番号4、配列番号5、および配列番号7のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも70%の配列同一性を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに配列番号4、配列番号6、および配列番号7のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも70%の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または(iii)配列番号12、配列番号13、および配列番号14のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも70%の配列同一性を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに配列番号15、配列番号16、および配列番号18のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも70%の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または(iv)配列番号12、配列番号13、および配列番号14のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも70%の配列同一性を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに配列番号15、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列と少なくともそれぞれ70%の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに配列番号4、配列番号5、および配列番号7のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または(ii)配列番号4、配列番号5、および配列番号7のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに配列番号4、配列番号6、および配列番号7のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または(iii)配列番号12、配列番号13、および配列番号14のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに配列番号15、配列番号16、および配列番号18のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または(iv)配列番号12、配列番号13、および配列番号14のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに配列番号15、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列と少なくともそれぞれ80%の配列同一性を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、を含む。
【0036】
本明細書中を通して使用されるように、「配列同一性」は、通常、参照配列(すなわち、本出願に記載される配列)の全長に関して計算される。本明細書中で言及されるような同一性のパーセンテージは、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって指定されたデフォルトパラメーターを使用するBLASTなどの、当該分野で公知の方法によって決定され得る。[Blosum 62 matrix; gap open penalty=11 and gap extension penalty=1]。
【0037】
本明細書を通して使用されるように、「配列変異体」は、参照配列中の1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドが欠失または置換され、および/または1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドが参照配列に挿入された、改変された配列を有する。改変の結果、配列変異体は通常、参照配列と少なくとも70%同一である配列を有する。少なくとも70%同一である変異体配列は、参照配列の100アミノ酸またはヌクレオチドあたり、30個を超える改変、すなわち、欠失、挿入または置換の任意の組み合わせを有さない。配列変異体は、参照配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%同一であってもよい(ここで、通常、参照配列に対する配列変異体の同一性の%が高いほど、配列変異体はより好ましい)。「配列変異体」においては、参照配列の機能性(例えば、本願の場合、破傷風毒素への結合)が維持され得る。
【0038】
一般に、非保存的アミノ酸置換も可能であるが、置換は通常、保存的アミノ酸置換であり、この場合、置換されたアミノ酸は、参照配列中の対応するアミノ酸と類似の構造的または化学的性質を有する。例えば保存的アミノ酸置換は、例えばアラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンなどの1つの脂肪族または疎水性アミノ酸を別のものに置換すること、例えばセリンおよびスレオニンなどの1つのヒドロキシル基含有アミノ酸を別のものに置換すること、例えばグルタミン酸およびアスパラギン酸などの1つの酸性残基を別のものに置換すること、例えばアスパラギンおよびグルタミンなどの1つのアミド基含有残基を別のものに置換すること、例えばフェニルアラニンおよびチロシンなどの1つの芳香族含有残基を別のものに置換すること;例えばリジン、アルギニンおよびヒスチジンなどの1つの塩基性残基を別のものに置換すること;例えばアラニン、セリン、スレオニン、システインおよびグリシンなどの1つの小アミノ酸を別のものに置換すること、を含む。
【0039】
アミノ酸配列の挿入には、1残基から100残基以上を含むポリペプチドまでの長さのアミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、レポーター分子または酵素へのアミノ酸配列のN末端またはC末端への融合が挙げられる。
【0040】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびに配列番号4、配列番号5、および配列番号7のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または(ii)配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに配列番号4、配列番号6、および配列番号7のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または(iii)配列番号12、配列番号13、および配列番号14のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに配列番号15、配列番号16、および配列番号18のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;または(iv)配列番号12、配列番号13、および配列番号14のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに配列番号15、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも90%の配列同一性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、を含んでいてもよい。
【0041】
したがって、抗体またはその抗原結合フラグメントは、好ましくは、以下のものを含む:
-配列番号1に記載の重鎖CDR1配列;
-配列番号2に記載の重鎖CDR2配列;
-配列番号3に記載の重鎖CDR3配列;
-配列番号4に記載の軽鎖CDR1配列;
-配列番号5または6に記載の軽鎖CDR2配列;および
-配列番号7に記載の軽鎖CDR3配列。
【0042】
あるいは、抗体またはその抗原結合フラグメントは、好ましくは、以下のものを含む:
-配列番号12に記載の重鎖CDR1配列;
-配列番号13に記載の重鎖CDR2配列;
-配列番号14に記載の重鎖CDR3配列;
-配列番号15に記載の軽鎖CDR1配列;
-配列番号16または17に記載の軽鎖CDR2配列;および
-配列番号18に記載の軽鎖CDR3配列。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号8と70%以上(例えば、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列、および配列番号9と70%以上(例えば、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号19と70%以上(例えば、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列、および配列番号20と70%以上(例えば、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。それにより、上記で定義したCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号8と75%以上(例えば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号9と75%以上(例えば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号19と75%以上(例えば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20に対して75%以上(例えば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。それにより、上記で定義したCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号8と80%以上(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号9と80%以上(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号19と80%以上(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20と80%以上(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。それにより、上記で定義したCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号8と85%以上(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号9と85%以上(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号19と85%以上(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20と85%以上(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。それにより、上記で定義したCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号8と90%以上(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号9と90%以上(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号19と90%以上(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20と90%以上(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。それにより、上記で定義したCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号8と95%以上(例えば、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号9と95%以上(例えば、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号19と95%以上(例えば、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20と95%以上(例えば、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0055】
より具体的には、抗体またはその抗原結合フラグメントは、好ましくは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むか、または当該配列からなる重鎖可変領域、および配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むか、または当該配列からなる軽鎖可変領域を含む。
【0056】
あるいは、抗体またはその抗原結合フラグメントは、好ましくは、配列番号19に記載のアミノ酸配列を含むか、または当該配列からなる重鎖可変領域、および配列番号20に記載のアミノ酸配列を含むか、または当該配列からなる軽鎖可変領域を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号10と70%以上(例えば、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11と70%以上(例えば、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号21と70%以上(例えば、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22と70%以上(例えば、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。それにより、上記で定義したCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号10と75%以上(例えば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11と75%以上(例えば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号21と75%以上(例えば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22と75%以上(例えば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。それにより、上記で定義したCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号10と80%以上(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11と80%以上(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号21と80%以上(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22と80%以上(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。それにより、上記で定義したCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号10と85%以上(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11と85%以上(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号21と85%以上(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22と85%以上(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。それにより、上記で定義したCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号10と90%以上(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11と90%以上(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号21と90%以上(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22と90%以上(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。それにより、上記で定義したCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号10と95%以上(例えば、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11と95%以上(例えば、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号21と95%以上(例えば、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22と95%以上(例えば、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0069】
より具体的には、抗体またはその抗原結合フラグメントは、好ましくは、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むか、または当該配列からなる重鎖、および配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むか、または当該配列からなる軽鎖を含む。
【0070】
あるいは、抗体またはその抗原結合フラグメントは、好ましくは、配列番号21に記載のアミノ酸配列を含むか、または当該配列からなる重鎖、および配列番号22に記載のアミノ酸配列を含むか、または当該配列からなる軽鎖を含む。
【0071】
本発明の例示的抗体、すなわち抗体TT104およびTT110のCDRおよびVH/VL配列ならびにFab配列を以下の表1に示す。
【表1】
【0072】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体はヒト抗体である。いくつかの実施形態において、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。例えば、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体であってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明による抗体、またはその抗原結合フラグメントは、Fc部分を含む。Fc部分は、ヒト由来、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4由来、例えばヒトIgG1由来であってもよい。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「Fc部分」は、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域(例えば、ネイティブIgGの残基216、重鎖定常領域の最初の残基を114とする)から始まり、免疫グロブリン重鎖のC末端で終わる免疫グロブリン重鎖の一部に由来する配列を指す。したがって、Fc部分は、完全なFc部分であっても、その一部(例えば、ドメイン)であってもよい。完全なFc部分は、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン(例えば、EUアミノ酸位置216~446)を含む。追加のリジン残基(K)がFc部分の極C末端に存在することもあるが、成熟抗体から切断されることが多い。
【0075】
Fc部分内の各アミノ酸位置は、本明細書では、Kabatの当技術分野で認識されているEUナンバリングシステムに従ってナンバリングされており、例えばKabat et al.による“Sequences of Proteins of Immunological Interest”, U.S. Dept. Health and Human Services, 1983 and 1987を参照されたい。KabatにおけるEUインデックスまたはEUナンバリングは、EU抗体のナンバリングを指す(Edelman GM, Cunningham BA, Gall WE, Gottlieb PD, Rutishauser U, Waxdal MJ. The covalent structure of an entire gammaG immunoglobulin molecule. Proc Natl Acad Sci U S A. 1969;63(1):78-85; Kabat E.A., National Institutes of Health (U.S.) Office of the Director, “Sequences of Proteins of Immunological Interest”, 5th edition, Bethesda, MD : U.S. Dept. of Health and Human Services, Public Health Service, National Institutes of Health, 1991, 本明細書で全体を参照として援用)。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明の文脈において、Fc部分は、ヒンジ(例えば、上部、中部、および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはそれらの変異体、一部、もしくはフラグメントのうちの少なくとも1つを含む。Fc部分は、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメインまたはCH3ドメインを含んでいてもよい。Fc部分は、完全なFc部分であってもよい。Fc部分はまた、天然に存在するFc部分に対して1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含んでいてもよい。例えば、ヒンジドメイン、CH2ドメインまたはCH3ドメイン(またはその一部)の少なくとも1つが欠失されていてもよい。例えば、Fc部分は、以下を含むか、または以下からなっていてもよい:(i)CH2ドメイン(またはその一部)に融合したヒンジドメイン(またはその一部)、(ii)CH3ドメイン(またはその一部)に融合したヒンジドメイン(またはその一部)、(iii)CH3ドメイン(またはその一部)に融合したCH2ドメイン(またはその一部)、(iv)ヒンジドメイン(またはその一部)、(v)CH2ドメイン(またはその一部)、または(vi)CH3ドメインまたはその一部。
【0077】
Fc部分は、天然に存在する免疫グロブリン分子の完全なFc部分とはアミノ酸配列が異なるように修飾され得る一方で、天然に存在するFc部分によって付与される少なくとも1つの望ましい機能を保持することは、当業者には理解されるであろう。このような機能には、Fc受容体(FcR)結合、抗体半減期調節、ADCC機能、プロテインA結合、プロテインG結合、補体結合などが含まれる。天然に存在するFc部分で、このような機能を担うおよび/またはこのような機能に必須な一部は、当業者に公知である。いくつかの実施形態において、本発明による抗体は、FcRとの相互作用/結合が損なわれていない、(完全な)Fc部分/Fc領域を含む。
【0078】
一般に、抗体のFcレセプターへの結合は、例えばELISA(Hessell AJ, Hangartner L, Hunter M, Havenith CEG, Beurskens FJ, Bakker JM, Lanigan CMS, Landucci G, Forthal DN, Parren PWHI, et al.: Fc receptor but not complement binding is important in antibody protection against HIV. Nature 2007, 449:101-104; Grevys A, Bern M, Foss S, Bratlie DB, Moen A, Gunnarsen KS, Aase A, Michaelsen TE, Sandlie I, Andersen JT: Fc Engineering of Human IgG1 for Altered Binding to the Neonatal Fc Receptor Affects Fc Effector Functions. 2015, 194:5497-5508)やフローサイトメトリー(Perez LG, Costa MR, Todd CA, Haynes BF, Montefiori DC: Utilization of immunoglobulin G Fc receptors by human immunodeficiency virus type 1: a specific role for antibodies against the membrane-proximal external region of gp41. J Virol 2009, 83:7397-7410; Piccoli L, Campo I, Fregni CS, Rodriguez BMF, Minola A, Sallusto F, Luisetti M, Corti D, Lanzavecchia A: Neutralization and clearance of GM-CSF by autoantibodies in pulmonary alveolar proteinosis. Nat Commun 2015, 6:1-9)などの当業者に公知の種々の方法によって評価されてもよい。
【0079】
例えば、FcR結合は、(抗体の)Fc部分と、造血細胞上の特殊化された細胞表面レセプターであるFcレセプター(FcR)との相互作用によって媒介される。Fcレセプターは免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を介して、免疫複合体の貪食作用による抗体でコートされた病原体の除去と、対応する抗体でコートされた赤血球や他の様々な細胞標的(例えば腫瘍細胞)の溶解の両方を媒介することが示されている(ADCC; Van de Winkel, J. G., and Anderson, C. L., J. Leukoc. Biol. 49 (1991) 511-524)。FcRは免疫グロブリンクラスに対する特異性によって定義され、IgG抗体に対するFcレセプターはFcγR、IgEに対するものはFcεR、IgAに対するものはFcαRなどと称され、新生児FcレセプターはFcRnと称される。Fcレセプターの結合については、例えばRavetch, J. V., and Kinet, J. P., Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492; Capel, P. J., et al., Immunomethods 4 (1994) 25-34; de Haas, M., et al., J Lab. Clin. Med. 126 (1995) 330-341; and Gessner, J. E., et al., Ann. Hematol. 76 (1998) 231-248において開示されている。
【0080】
ネイティブIgG抗体のFcドメイン(FcγR)によるレセプターの架橋は、免疫複合体のクリアランスや抗体生産の調節だけでなく、貪食、抗体依存性細胞傷害、および炎症性メディエーターの放出など、多種多様なエフェクター機能を誘発する。そのため、Fc部分は受容体(FcγR)の架橋を提供し得る。ヒトにおいて、FcγRの3つのクラスが特徴づけられている:(i)FcγRI(CD64)は、単量体IgGと高親和性で結合し、マクロファージ、単球、好中球、好酸球に発現する;(ii)FcγRII(CD32)は、複合体化IgGと中~低親和性で結合し、特に白血球上に広く発現し、抗体媒介免疫の中心的な役割を果たすことが知られており、FcγRIIA、FcγRIIBおよびFcγRIICに分けられ、これらは免疫系において異なる機能を果たすが、IgG-Fcと同様の低親和性で結合し、これらの受容体のエクトドメインは非常に相同性が高い;(iii)FcγRIII(CD16)は、IgGと中~低親和性で結合し、2つのタイプが存在する:FcγRIIIAはNK細胞、マクロファージ、好酸球、一部の単球、T細胞に存在し、ADCCを媒介し、FcγRIIIBは好中球に高発現する。FcγRIIAは殺傷に関与する多くの細胞(例えばマクロファージ、単球、好中球)に存在し、殺傷プロセスを活性化することができるとみられる。FcγRIIBは抑制過程に関与しているとみられ、B細胞、マクロファージ、肥満細胞、好酸球に存在する。重要なのは、FcγRIIB全体の75%が肝臓に存在することである(Ganesan, L. P. et al., 2012: FcγRIIb on liver sinusoidal endothelium clears small immune complexes. Journal of Immunology 189: 4981-4988)。FcγRIIBは、LSECと呼ばれる肝類洞内皮および肝臓のKupffer細胞に豊富に発現しており、LSECは小免疫複合体のクリアランスの主要部位である(Ganesan, L. P. et al., 2012: FcγRIIb on liver sinusoidal endothelium clears small immune complexes. Journal of Immunology 189: 4981-4988)。
【0081】
したがって、本発明の抗体、およびその抗原結合フラグメントは、FcγRIIbに結合することが可能であり得、例えばIgG型抗体などの、FcγRIIbに結合するためのFc部分、特にFc領域を含む抗体を挙げることができる。さらに、Chu, S. Y. et al., 2008: Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcγRIIb with Fc-engineered antibodies. Molecular Immunology 45, 3926-3933に記載されているように、変異S267EおよびL328Fを導入することにより、FcγRIIb結合を増強するようにFc部分を設計することも可能である。これにより、免疫複合体のクリアランスを促進することができる(Chu, S., et al., 2014: Accelerated Clearance of IgE In Chimpanzees Is Mediated By Xmab7195, An Fc-Engineered Antibody With Enhanced Affinity For Inhibitory Receptor FcγRIIb. Am J Respir Crit, American Thoracic Society International Conference Abstracts)。したがって、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、特にChu, S. Y. et al., 2008: Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcγRIIb with Fc-engineered antibodies. Molecular Immunology 45, 3926-3933に記載されているように、変異S267EおよびL328Fにより操作されたFc部分を含んでいてもよい。
【0082】
B細胞では、さらなる免疫グロブリンの生産と、例えばIgEクラスへのアイソタイプ転換を抑制するように機能するとみられる。マクロファージでは、FcγRIIBはFcγRIIAを介して貪食を阻害する。好酸球や肥満細胞では、b型はIgEが別のレセプターに結合することにより、これらの細胞の活性化を抑制するのを助け得る。
【0083】
FcγRI結合に関しては、ネイティブIgGにおいてE233-G236、P238、D265、N297、A327およびP329の少なくとも1つを修飾すると、FcγRIへの結合が減少する。IgG1およびIgG4に置換された233-236位のIgG2残基は、FcγRIへの結合を10倍減少させ、抗体感作赤血球に対するヒト単球応答を消失させた(Armour, K. L., et al. Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2613-2624)。FcγRII結合に関しては、例えばE233-G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292およびK414のうち少なくとも1つのIgG変異について、FcγRIIAに対する結合の減少が認められる。FcγRIII結合に関しては、例えばE233-G236,P238,D265,N297,A327,P329,D270,Q295,A327,S239,E269,E293,Y296,V303,A327,K338,D376のうち少なくとも1つの変異について、FcγRIIIAへの結合の減少が認められる。Fcレセプターに対するヒトIgG1上の結合部位のマッピング、上記の変異部位、およびFcγRIおよびFcγRIIAに対する結合の測定方法は、Shields, R. L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604に記載されている。例えば、単一変異(S239DまたはI332E)、二重変異(S239D/I332E)、および三重変異(S239D/I332E/A330L)は、ヒトFcγRIIIaに対する親和性を改善した。さらに、S239D/I332Eに変異G236Aを加えると、FcγRIIa:FcγRIIb比が改善するだけでなく、FcγRIIIaとの結合も増強した。したがって、変異G236A/S239D/A330L/I332EはFcγRIIaとFcγRIIIaの結合を増強することが記載されている。
【0084】
重要なFcγRIIとの結合に関しては、ネイティブIgG Fcの2つの領域、すなわち、(i)IgG Fcの下部ヒンジ部位、特にアミノ酸残基L、L、G、G(234~237、EUナンバリング)、および(ii)IgG FcのCH2ドメインの隣接領域、特に、下部ヒンジ領域に隣接する上部CH2ドメインのループおよび鎖、例えばP331の領域(Wines, B.D., et al., J. Immunol. 2000; 164: 5313 - 5318)が、FcγRIIとIgGの相互作用に重要であるとみられる。さらに、FcγRIはIgG Fc上の同じ部位に結合するとみられるが、FcRnとプロテインAはIgG Fc上の異なる部位に結合し、それはCH2-CH3界面にあるとみられる(Wines, B.D., et al., J. Immunol. 2000; 164: 5313 - 5318)。
【0085】
例えば、Fc部分は、FcRn結合または半減期の延長に必要であることが当技術分野で知られているFc部分の少なくとも一部を含むか、またはそれらからなっていてもよい。代替的または付加的に、本発明の抗体のFc部分は、プロテインA結合に必要とされることが当該技術分野で知られている少なくとも一部を含み、および/または本発明の抗体のFc部分は、プロテインG結合に必要とされることが当該技術分野で知られているFc分子の少なくとも一部を含む。Fc部分は、FcγR結合に必要であることが当技術分野で知られている少なくとも一部を含んでいてもよい。上記で概説したように、Fc部分はそれゆえ少なくとも、(i)ネイティブIgG Fcの下部ヒンジ部位、特にアミノ酸残基L、L、G、G(234~237、EUナンバリング)、および(ii)ネイティブIgG FcのCH2ドメインの隣接領域、特に下部ヒンジ領域に隣接する上部CH2ドメインのループおよびストランドから構成され得る、例えばP331の領域、例えばP331周辺のネイティブIgG Fcの上部CH2ドメインの少なくとも3、4、5、6、7、8、9、または10個の連続するアミノ酸の領域、例えばネイティブIgG Fcのアミノ酸320と340(EUナンバリング)の間の領域、を含む。
【0086】
さらに本発明による抗体は、未修飾の抗体と比較してFcRに対する結合親和性および/または血清中半減期を改変させるために、重鎖のCH2またはCH3ドメインの特定の領域に(ランダムな)アミノ酸変異を導入することによって修飾することができる。このような修飾の例としては、アミノ酸残基250、314および428を含む群から選択される重鎖定常領域の少なくとも1つのアミノ酸の置換が挙げられるが、これらに限定されない。このようなFc修飾のさらなる例は、Saxena A, Wu D. Advances in Therapeutic Fc Engineering - Modulation of IgG-Associated Effector Functions and Serum Half-life. Front Immunol. 2016;7:580に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、抗体は、「YTE」変異(M252Y/S254T/T256E;EUナンバリング)を含み得る。いくつかの実施形態において、抗体は、重鎖定常領域における変異M428Lおよび/またはN434Sを含み得る(EUナンバリング)。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明による抗体、またはその抗原結合フラグメントは、Fc領域を含む。本明細書で使用する場合、用語「Fc領域」は、抗体重鎖の2つ以上のFc部分によって形成される免疫グロブリンの一部を指す。例えば、Fc領域は、単量体または「単鎖」Fc領域(すなわち、scFc領域)であってもよい。単鎖Fc領域は、単一のポリペプチド鎖内に結合した(例えば、単一の連続した核酸配列にコードされた)Fc部分から構成される。例示的なscFc領域は、WO 2008/143954 A2に開示されている。Fc領域は二量体であってもよい。「二量体Fc領域」または「dcFc」は、2つの別個の免疫グロブリン重鎖のFc部分によって形成される二量体を指す。二量体Fc領域は、2つの同一Fc部分(例えば、天然に存在する免疫グロブリンのFc領域)のホモ二量体であってもよいし、2つの非同一Fc部分のヘテロ二量体であってもよい。
Fc領域のFc部分は、同一または異なるクラスおよび/またはサブクラスであってもよい。例えば、Fc部分は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブクラスの免疫グロブリン(例えば、ヒト免疫グロブリン)由来であってもよい。Fc領域のFc部分は、同じクラスおよびサブクラスであってもよい。しかしながら、Fc領域(またはFc領域の1つ以上のFc部分)はまた、キメラであってもよく、それにより、キメラFc領域は、異なる免疫グロブリンのクラスおよび/またはサブクラスに由来するFc部分を含んでいてもよい。例えば、二量体または単鎖Fc領域の少なくとも2つのFc部分は、異なる免疫グロブリンクラスおよび/またはサブクラス由来であってもよい。付加的または代替的に、キメラFc領域は、1つ以上のキメラFc部分を含んでいてもよい。例えば、キメラFc領域または部分は、第1のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、またはIgG3サブクラス)の免疫グロブリンに由来する1つ以上の一部を含んでもよい一方で、Fc領域または部分の残りの一部は異なるサブクラスのものである。例えば、FcポリペプチドのFc領域または部分は、第1のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2またはIgG4サブクラス)の免疫グロブリン由来のCH2および/またはCH3ドメイン、ならびに第2のサブクラス(例えば、IgG3サブクラス)の免疫グロブリン由来のヒンジ領域を含んでいてもよい。例えば、Fc領域または部分は、第1のサブクラス(例えば、IgG4サブクラス)の免疫グロブリン由来のヒンジおよび/またはCH2ドメイン、ならびに第2のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、またはIgG3サブクラス)の免疫グロブリン由来のCH3ドメインを含んでいてもよい。例えば、キメラFc領域は、第1のサブクラス(例えば、IgG4サブクラス)の免疫グロブリン由来のFc部分(例えば、完全なFc部分)、および第2のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、またはIgG3サブクラス)の免疫グロブリン由来のFc部分を含んでいてもよい。例えば、Fc領域または部分は、IgG4免疫グロブリン由来のCH2ドメインおよびIgG1免疫グロブリン由来のCH3ドメインを含んでいてもよい。例えば、Fc領域または部分は、IgG4分子由来のCH1ドメインおよびCH2ドメイン、ならびにIgG1分子由来のCH3ドメインを含んでいてもよい。例えば、Fc領域または部分は、抗体の特定のサブクラスからのCH2ドメインの一部、例えば、CH2ドメインのEU292~340位を含んでいてもよい。例えば、Fc領域または部分は、IgG4部分に由来するCH2の292~340位およびIgG1部分に由来するCH2の残りのアミノ酸を含んでいてもよい(あるいは、CH2の292~340位はIgG1部分に由来し、CH2の残りの部分はIgG4部分に由来してもよい)。
さらに、Fc領域または部分は、(付加的または代替的に)例えばキメラヒンジ領域を含んでいてもよい。例えばキメラヒンジは、例えば一部はIgG1、IgG2、またはIgG4分子(例えば、上部および下部中間ヒンジ配列)に由来し、一部はIgG3分子(例えば、中間ヒンジ配列)に由来していてもよい。別の例では、Fc領域または部分は、一部がIgG1分子に由来し、一部がIgG4分子に由来するキメラヒンジを含んでいてもよい。別の例では、キメラヒンジは、IgG4分子に由来する上部および下部ヒンジドメイン、ならびにIgG1分子に由来する中間ヒンジドメインを含んでいてもよい。このようなキメラヒンジは、例えばIgG4ヒンジ領域の中間ヒンジドメインのEU位置228にプロリン置換(Ser228Pro)を導入することによって作製されてもよい。他の実施形態では、キメラヒンジは、EU233-236位のアミノ酸がIgG2抗体に由来するアミノ酸および/またはSer228Pro変異を含むことができ、ヒンジの残りのアミノ酸はIgG4抗体に由来するアミノ酸である。本発明による抗体のFc部分に使用され得る更なるキメラヒンジは、US 2005/0163783 A1に記載されている。
【0088】
いくつかの実施形態において、Fc部分、またはFc領域は、ヒト免疫グロブリン配列由来(例えば、ヒトIgG分子由来のFc領域またはFc部分由来)のアミノ酸配列を含むか、または当該配列からなる。しかしながら、Fc部分またはFc領域は、他の哺乳動物種由来の1つ以上のアミノ酸を含んでいてもよい。例えば、霊長類のFc部分または霊長類結合部位が、抗体または抗原結合フラグメントに含まれていてもよい。あるいは、Fc部分またはFc領域に1つ以上のマウスアミノ酸が存在してもよい。
【0089】
いくつかの実施形態において、抗体、または抗原結合フラグメントは、特に上記のようなFc部分に加えて、定常領域に由来する他の部分、特に、(ヒト)IgG1の定常領域などの、IgGの定常領域に由来する他の部分を含む。本発明による抗体は、特に上記のようなFc部分に加えて、定常領域の他のすべての部分、特にIgG((ヒト)IgG1など)の定常領域の他のすべての部分を含んでいてもよい。換言すれば、抗体、または抗原結合フラグメントは、ヒトIgG1由来の(完全な)Fc領域を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、抗体、または抗原結合フラグメントは、特にヒトIgG1由来の(完全な)Fc領域に加えて、(ヒト)IgG1の定常領域の他のすべての部分などの、IgGの定常領域の他のすべての部分も含む。
【0090】
しかしながら、一般に、本発明の抗体は任意のアイソタイプ(例えば、IgA、IgG、IgM、すなわちα、γまたはμ重鎖)であることができる。例えば、抗体はIgG型であってもよい。IgGアイソタイプの中で、抗体はIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブクラス、例えばIgG1であってもよい。本発明の抗体は、κまたはλ軽鎖を有していてもよい。いくつかの実施形態において、抗体はIgG1型であり、ラムダまたはカッパ軽鎖を有する。
【0091】
いくつかの実施形態において、抗体はヒトIgG1型である。抗体は任意のアロタイプであってもよい。用語「アロタイプ」は、IgGサブクラス間で見られる対立遺伝子の変異を指す。例えば、抗体はG1m1(またはG1m(a))アロタイプ、G1m2(またはG1m(x))アロタイプ、G1m3(またはG1m(f))アロタイプ、および/またはG1m17(またはGm(z))アロタイプであってもよい。G1m3アロタイプとG1m17アロタイプはCH1ドメインの同じ位置(EUナンバリングにおいて214位)に存在する。G1m3はR214(EU)に対応し、一方でG1m17はK214(EU)に対応する。G1m1アロタイプはCH3ドメイン(356位と358位(EU))に位置し、置換E356DとM358Lを指す。G1m2アロタイプは、431位(EU)のアラニンがグリシンに置換されたものを指す。G1m1アロタイプは、例えば、G1m3またはG1m17アロタイプと組み合わせてもよい。いくつかの実施形態において、抗体は、G1m1を含まないG1m3アロタイプ(G1m3,-1)である。いくつかの実施形態において、抗体はG1m17,1アロタイプである。いくつかの実施形態において、抗体はG1m3,1アロタイプである。いくつかの実施形態において、抗体は、G1m1を有しないG1m17アロタイプ(G1m17,-1)である。任意に、これらのアロタイプは、G1m2、G1m27またはG1m28アロタイプと組み合わされてもよい(または組み合わされなくてもよい)。例えば、抗体はG1m17,1,2アロタイプであってもよい。
【0092】
一般に、本発明による抗体または抗原結合フラグメントはグリコシル化されていてもよい。例えば、重鎖のCH2ドメインに結合したN-結合型糖鎖は、C1qやFcRの結合に影響を与える可能性があり、グリコシル化された抗体はこれらの受容体に対する親和性が低くなる。したがって、本発明による抗体のFc部分のCH2ドメインは、グリコシル化残基が非グリコシル化残基で置換された1つ以上の変異を含んでいてもよい。例えば、抗体の糖鎖は投与後にヒト免疫原性反応を引き起こさない。
【0093】
定常領域の配列例は、配列番号23~26に記載のアミノ酸配列である。例えば、IgG1 CH1-CH2-CH3のアミノ酸配列は、配列番号23に記載のものか、または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の変異を含む)である。軽鎖定常領域は、配列番号24または25に記載のものか、または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の変異を含む)であってもよい。
【0094】
上述のように、本発明は抗原結合フラグメントを包含する。抗原結合フラグメントは、Fc部分、特に完全なFc部分の一部を含んでも含まなくてもよい。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、FvまたはscFvから選択される。例えば、F(ab’)2(ペプシン切断または組換え発現により得られ得る)およびFab’(F(ab’)2からまたは組換え発現により得られ得る)は、通常、ヒンジ領域を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、単鎖抗体(またはフラグメント)であってもよい。単鎖抗体(またはフラグメント)は、6つのCDRの完全なセットをコードしてもよく、すなわち、3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDRを含んでもよい。より具体的には、単鎖抗体(またはフラグメント)は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含んでいてもよく、例えば、上記のようなVHおよびVL配列が含まれる。
【0096】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはFc部分を含まない。換言すれば、抗体または抗原結合フラグメントは、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域のいずれも含んでいなくてもよい。ある実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはFabである。Fabは、典型的には、重鎖および軽鎖可変ドメインに加えて、重鎖(例えば、CH1)および軽鎖(例えば、CL)の単一の定常領域を含む。Fabは、例えばパパイン切断によって、または例えば重鎖VHおよびCH1領域をコードする核酸配列の後(特にCH1コード配列の直後)に導入された終止コドンを用いた組換え発現によって、得られてもよい。例えば、Fabの重鎖定常領域(CH1領域)のアミノ酸配列は、配列番号26に記載のものか、または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の変異を含む)であってもよい。Fabの軽鎖定常領域は通常、「完全な」免疫グロブリンのものに対応し、それゆえ、配列番号24または25に記載のもの;または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の変異を含む)であってもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、Fabは、配列番号10に記載の重鎖配列、または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の変異を含む);および配列番号11に記載の軽鎖配列、または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の変異を含む)を含むか、または当該重鎖配列もしくはその配列変異体、および当該軽鎖配列もしくはその配列変異体からなる。それによって、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0098】
他の実施形態において、Fabは、配列番号21に記載の重鎖配列、または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の変異を含む);および配列番号22に記載の軽鎖配列、または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の変異を含む)を含むか、または当該重鎖配列もしくはその配列変異体、および当該軽鎖配列もしくはその配列変異体からなる。それによって、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0099】
本発明の抗体には、上記で定義した本発明の抗体由来の6つのCDRと、抗原に対する別の抗体由来の1つ以上のCDRとを含むハイブリッド抗体分子も含まれる。例えば、抗体は二重特異性であってもよい。
【0100】
変異体抗体も本発明の範囲に含まれる。それゆえ、本願明細書に記載された配列の変異体も本発明の範囲に含まれる。このような変異体には、免疫応答中のin vivoまたは不死化B細胞クローンの培養に伴うin vitroでの体細胞変異によって生じた天然の変異体が含まれる。あるいは、遺伝暗号の縮退により変異体が生じ得、転写または翻訳のエラーにより生じ得る。
【0101】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、精製された形態で提供され得る。典型的には、抗体または抗原結合フラグメントは、例えば、組成物の90%未満(重量比)、通常は60%未満、より通常は50%未満が他のポリペプチドで構成されているような、実質的に他のポリペプチドを含まない組成物中に存在する。
【0102】
本発明の抗体は、非ヒト宿主(または異種宿主)、例えばマウスにおいて免疫原性を示し得る。特に抗体は、非ヒト宿主では免疫原性であるが、ヒト宿主では免疫原性でないイディオトープを有していてもよい。特に、ヒトに使用する本発明の抗体には、マウス、ヤギ、ウサギ、ラット、非霊長類哺乳動物などの宿主から容易に単離できず、一般にヒト化またはゼノマウスから得ることができないものが含まれる。
【0103】
<核酸>
別の態様において、本発明はまた、上記の本発明による抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子を提供する。
【0104】
いくつかの実施形態において、核酸分子は、本発明の例示される抗体(例えば、上記の表1に記載されている)をコードする1つ以上のポリヌクレオチド、または本明細書に記載されているその配列変異体(例えば上記のように、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有する)を含む。
【0105】
核酸分子および/またはポリヌクレオチドの例には、例えば、組換えポリヌクレオチド、ベクター、オリゴヌクレオチド、rRNA、mRNA、miRNA、siRNA、もしくはtRNAなどのRNA分子、またはcDNAなどのDNA分子が含まれる。核酸は、抗体の軽鎖および/または重鎖をコードすることができる。換言すれば、抗体の軽鎖および重鎖は、同じ核酸分子によってコードされてもよい(例えば、バイシストロン様式で)。あるいは、抗体の軽鎖および重鎖は別々の核酸分子によってコードされていてもよい。
【0106】
遺伝子コードの冗長性により、本発明は、同じアミノ酸配列をコードする核酸配列の配列変異体も含んでいる。抗体(または完全な核酸分子)をコードするポリヌクレオチドは、抗体の発現のために最適化されてもよい。例えば、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、抗体生産のための発現系における翻訳の効率を改善するために使用することができる。さらに、核酸分子は、異種要素(すなわち、天然では抗体(の重鎖または軽鎖)のコード配列と同じ核酸分子上には存在しない要素)を含んでいてもよい。例えば、核酸分子は、異種プロモーター、異種エンハンサー、異種UTR(例えば、最適な翻訳/発現のため)、異種Poly-A-tailなどを含んでいてもよい。
【0107】
核酸分子とは、核酸成分を含む分子である。核酸分子という用語は通常、DNAまたはRNA分子を指す。それは用語「ポリヌクレオチド」と同じ意味で使用され、すなわち核酸分子は、抗体をコードするポリヌクレオチドからなり得る。あるいは、核酸分子は、抗体をコードするポリヌクレオチドに加えて、さらなる要素を含んでいてもよい。典型的には、核酸分子は、糖/リン酸骨格のホスホジエステル結合によって互いに共有結合しているヌクレオチドモノマーを含むか、または当該ヌクレオチドモノマーからなるポリマーである。用語「核酸分子」は、塩基修飾、糖修飾、骨格修飾などの修飾核酸分子、DNAまたはRNA分子も包含する。
【0108】
一般に、核酸分子は、特定の核酸配列を挿入、欠失または改変するように操作され得る。このような操作による変化には、制限部位を導入するための変化、コドン用法を修正するための変化、転写および/または翻訳調節配列を追加または最適化するための変化などが含まれるが、これらに限定されない。核酸を変化させて、コードされるアミノ酸を改変させることも可能である。例えば、抗体のアミノ酸配列に1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10などの)アミノ酸置換、欠失、および/または挿入を導入することが有用であり得る。このような点変異は、エフェクター機能、抗原結合親和性、翻訳後修飾、免疫原性などを修飾することができ、共有結合基(例えば、標識)を結合するためのアミノ酸を導入することができ、または(例えば、精製目的のために)タグを導入することができる。あるいは、核酸配列の変異は「サイレント」、すなわち遺伝暗号の冗長性のためにアミノ酸配列に反映されないものであってもよい。一般に、変異は特定の部位に導入されることもあれば、ランダムに導入され、選択(例えば分子進化)を経て導入されることもある。例えば、(例示的な)抗体の軽鎖または重鎖のいずれかをコードする1つ以上の核酸は、コードされるアミノ酸に異なる特性を導入するために、ランダムにまたは方向性をもって変異させることができる。このような変化は、最初の変化が保持され、他のヌクレオチド位置における新たな変化が導入される反復プロセスの結果であり得る。さらに、独立した工程で達成された変化を組み合わせてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド(または(完全な)核酸分子)は、コドン最適化されていてもよい。当業者にとってコドン最適化のための様々なツールは公知であり、例えば以下の文献に記載されているものがある:Ju Xin Chin, Bevan Kai-Sheng Chung, Dong-Yup Lee, Codon Optimization OnLine (COOL):a web-based multi-objective optimization platform for synthetic gene design, Bioinformatics, Volume 30, Issue 15, 1 August 2014, Pages 2210-2212;またはGrote A, Hiller K, Scheer M, Munch R, Nortemann B, Hempel DC, Jahn D, JCat: a novel tool to adapt codon usage of a target gene to its potential expression host. Nucleic Acids Res. 2005 Jul 1;33(Web Server issue):W526-31;または、例えばGenscript’s OptimumGeneTM algorithm (as described in US 2011/0081708 A1)。
【0110】
例えば、本発明の核酸分子は、配列番号27~48のいずれか1つに記載の核酸配列;または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体を含んでいてもよい。
【0111】
本発明の例示的な抗体のCDR、VH/VLまたはFab配列をコードする例示的な核酸配列を以下の表2に示す。
【表2】
【0112】
したがって、核酸分子は以下を含んでいてもよい:
(i)配列番号27もしくは38(もしくはその配列変異体)に記載のポリヌクレオチド;配列番号28もしくは39(もしくはその配列変異体)に記載のポリヌクレオチド;配列番号29もしくは40(もしくはその配列変異体)に記載のポリヌクレオチド;配列番号30もしくは41(もしくはその配列変異体)に記載のポリヌクレオチド;(a)配列番号31もしくは32(もしくはその配列変異体)もしくは(b)配列番号42もしくは43(もしくはその配列変異体)に記載のポリヌクレオチド;および配列番号33もしくは44(もしくはその配列変異体)に記載のポリヌクレオチド;
(ii)配列番号34もしくは45(もしくはその配列変異体)に記載のポリヌクレオチド;および配列番号35もしくは46(もしくはその配列変異体)に記載のポリヌクレオチド;または
(iii)配列番号36もしくは47(もしくはその配列変異体)に記載のポリヌクレオチド;および配列番号37もしくは48(もしくはその配列変異体)に記載のポリヌクレオチド。
【0113】
本発明は、第1および第2の核酸分子の組み合わせも提供し、ここで第1の核酸分子は、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み;そして第2の核酸分子は、同じ抗体または同じその抗原結合フラグメントの対応する軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。本発明の核酸分子の(一般的な)特徴に関する上記の説明は、組み合わせた第1および第2の核酸分子にも適宜適用される。したがって、抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドの一方または両方は、コドン最適化されていてもよい。例えば、当該組み合わせは、配列番号27~48のいずれか1つに記載の核酸配列;または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、第1および第2の核酸分子の組み合わせであって、第1の核酸分子が、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み;第2の核酸分子が、同じ抗体または同じその抗原結合フラグメントの対応する軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む組み合わせは、以下に記載する通りである。
【0114】
本発明はまた、第1の核酸分子と第2の核酸分子との組み合わせを提供し、ここで
-第1の核酸分子は、抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、このポリヌクレオチドは(a)配列番号27、28および29(もしくはその配列変異体)に記載のヌクレオチド配列;または(b)配列番号38、39および40(もしくはその配列変異体)に記載のヌクレオチド配列を含み;および
-第2の核酸分子は、抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、このポリヌクレオチドは(c)配列番号30、31(もしくは32)および33(もしくはそれらの配列変異体)に記載のヌクレオチド配列、または(d)配列番号41、42(もしくは43)および44(もしくはそれらの配列変異体)に記載のヌクレオチド配列を含む。
【0115】
このような組合せは、通常、上記の本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする。繰り返しになるが、本発明の核酸分子の(一般的な)特徴に関する上記の説明は、組み合わせた第1および第2の核酸分子にも適宜適用される。
【0116】
いくつかの実施形態において、
-第1の核酸分子は、(a)配列番号34(もしくはその配列変異体)に記載のヌクレオチド配列;または(b)配列番号45(もしくはその配列変異体)に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含み、および
-第2の核酸分子は、(c)配列番号35(もしくはその配列変異体)に記載のヌクレオチド配列;または(d)配列番号46(もしくはその配列変異体)に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む。
【0117】
いくつかの実施形態において、
-第1の核酸分子は、(a)配列番号36(もしくはその配列変異体)に記載のヌクレオチド配列;または(b)配列番号47(もしくはその配列変異体)に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含み、および
-第2の核酸分子は、(c)配列番号37(もしくはその配列変異体)に記載のヌクレオチド配列;または(d)配列番号48(もしくはその配列変異体)に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む。
【0118】
本明細書に記載されるような例示された配列については、上記の表2に示される抗体TT104または抗体TT110のいずれかに対応する配列番号の、そのような組み合わせが好ましいことが理解される。
【0119】
<ベクター>
本発明の範囲にさらに含まれるのは、本発明による核酸分子を含むベクター、例えば発現ベクターである。通常、ベクターは上記のような核酸分子を含む。
【0120】
本発明はまた、第1および第2のベクターの組み合わせを提供し、ここで、第1のベクターは、(核酸分子の組み合わせについて記載された)上記のような第1の核酸分子を含み、第2のベクターは、(核酸分子の組み合わせについて記載された)上記のような第2の核酸分子を含む。
【0121】
ベクターは通常、組換え核酸分子、すなわち天然に存在しない核酸分子である。したがって、ベクターは異種要素(すなわち、天然に存在しない配列要素)を含んでいてもよい。例えば、ベクターは、マルチクローニング部位、異種プロモーター、異種エンハンサー、(先述のベクターを含む細胞を、先述のベクターを含まない細胞と比較して同定するための)異種選択マーカーなどを含んでいてもよい。本発明の文脈におけるベクターは、所望の核酸配列を組み込むかまたは保有するのに適している。このようなベクターは、貯蔵ベクター、発現ベクター、クローニングベクター、トランスファーベクターなどであってよい。貯蔵ベクターは、核酸分子の簡便な貯蔵を可能にするベクターである。それゆえ、ベクターは、例えば本発明による所望の抗体(の重鎖および/または軽鎖)に対応する配列を含んでいてもよい。発現ベクターは、RNA、例えばmRNA、またはペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質などの発現産物の生産に使用され得る。例えば発現ベクターは、(異種)プロモーター配列などの、ベクターの配列伸長の転写に必要な配列を含んでいてもよい。クローニングベクターは、典型的には、核酸配列をベクターに組み込むために使用され得るクローニング部位を含むベクターである。クローニングベクターは、例えば、プラスミドベクターまたはバクテリオファージベクターであり得る。トランスファーベクターは、核酸分子を細胞または生物にトランスファーするのに適したベクターであり、例えばウイルスベクターである。本発明の文脈におけるベクターは、例えば、RNAベクターまたはDNAベクターであり得る。例えば、本出願の意味におけるベクターは、クローニング部位、抗生物質耐性因子などの選択マーカー、および複製起点などのベクターの増殖に適した配列を含む。本出願の文脈におけるベクターは、プラスミドベクターであってもよい。
【0122】
<細胞>
さらなる態様において、本発明はまた、本発明による抗体またはその抗原結合フラグメントを発現する細胞;および/または本発明によるベクター(またはベクターの組み合わせ)を含む細胞を提供する。
【0123】
このような細胞の例には、真核細胞、例えば酵母細胞、動物細胞または植物細胞などが含まれるが、これらに限定されない。このような細胞の他の例には、例えばE.coliなどの原核細胞が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、細胞は、哺乳動物細胞株などの哺乳動物細胞である。例として、ヒト細胞、CHO細胞、HEK293T細胞、PER.C6細胞、NS0細胞、ヒト肝細胞、骨髄腫細胞またはハイブリドーマ細胞が含まれる。
【0124】
細胞は、本発明によるベクター、例えば発現ベクターでトランスフェクションされてもよい。用語「トランスフェクション」は、DNAまたはRNA(例えばmRNA)分子などの核酸分子を細胞、例えば真核細胞または原核細胞に導入することを指す。本発明の文脈において、用語「トランスフェクション」は、哺乳動物細胞などの細胞に核酸分子を導入するための、当業者に公知のあらゆる方法を包含する。このような方法は、例えば、エレクトロポレーション、例えばカチオン性脂質および/またはリポソームに基づくリポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ナノ粒子に基づくトランスフェクション、ウイルスに基づくトランスフェクション、またはDEAE-デキストランもしくはポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーに基づくトランスフェクションを包含する。いくつかの実施形態において、導入は非ウイルス性である。
【0125】
さらに、本発明の細胞は、例えば本発明による抗体を発現させるために、本発明によるベクターで安定的にまたは一時的にトランスフェクションされてもよい。いくつかの実施形態において、細胞は、本発明による抗体をコードする本発明によるベクターで安定的にトランスフェクションされる。他の実施形態では、細胞は、本発明による抗体をコードする本発明によるベクターで一時的にトランスフェクションされる。
【0126】
したがって、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを異種発現する組換え宿主細胞も提供する。例えば、細胞は抗体とは別の種であってもよい(例えば、ヒト抗体を発現するCHO細胞)。いくつかの実施形態において、その細胞の細胞種は、天然では(そのような)抗体を発現しない。さらに、宿主細胞は、ネイティブな状態では存在しない翻訳後修飾(PTM;例えば、グリコシル化)を抗体に付与し得る。このようなPTMは、機能的な差異(例えば、免疫原性の低下)をもたらし得る。したがって、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、天然に生産される抗体(例えば、ヒトの免疫応答の抗体)とは異なる翻訳後修飾を有し得る。
【0127】
<抗体の生産>
本発明による抗体は、当該技術分野で公知の任意の方法によって作製することができる。例えば、ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を作製するための一般的な方法論は公知である(Kohler, G. and Milstein, C., 1975; Kozbar et al. 1983)。いくつかの実施形態において、WO2004/076677に記載されている代替EBV不死化法が使用される。
【0128】
いくつかの実施形態では、参照により本明細書に組み込まれるWO2004/076677に記載の方法が使用される。この方法では、本発明の抗体を生産するB細胞をEBVおよびポリクローナルB細胞活性化因子で形質転換する。効率をさらに高めるために、形質転換工程の間に、細胞の増殖および分化の追加的刺激剤を任意に追加してもよい。これらの刺激剤はIL-2およびIL-15などのサイトカインであってもよい。一態様において、IL-2は不死化の効率をさらに向上させるために不死化工程の間に添加されるが、その使用は必須ではない。これらの方法を用いて生産された不死化B細胞はその後、当技術分野で公知の方法を用いて培養し、そこから抗体を単離することができる。
【0129】
別の例示的な方法がWO2010/046775に記載されている。この方法では、形質細胞がマイクロウェル培養プレートで、限定された数で、または単一の形質細胞として培養される。抗体は、形質細胞培養物から単離することができる。さらに、形質細胞培養物からRNAを抽出し、当技術分野で公知の方法を用いてPCRを行うことができる。抗体のVHおよびVL領域は、RT-PCR(逆転写酵素PCR)により増幅され、配列決定され、次いでHEK293T細胞または他の宿主細胞にトランスフェクションされる発現ベクターにクローニングされ得る。発現ベクターへの核酸のクローニング、宿主細胞のトランスフェクション、トランスフェクションされた宿主細胞の培養、生産された抗体の単離は、当業者に公知の任意の方法を用いて行うことができる。
【0130】
抗体は、所望により、濾過、遠心分離、およびHPLCまたはアフィニティークロマトグラフィーなどの様々なクロマトグラフィー法を用いて、さらに精製することができる。抗体、例えばモノクローナル抗体を精製する技術は、医薬品グレードの抗体を生産する技術を含め、当技術分野において公知である。
【0131】
分子生物学の標準的な技術を使用して、本発明の抗体をコードするDNA配列を調製してもよい。所望のDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成技術を用いて完全または部分的に合成してもよい。部位特異的突然変異誘発およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を適宜使用してもよい。
【0132】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列の発現には、任意の適切な宿主細胞/ベクター系を使用してもよい。真核生物、例えば哺乳動物宿主細胞発現系は、完全抗体分子のような抗体分子の生産に使用してもよい。好適な哺乳動物宿主細胞としては、CHO、HEK293T、PER.C6、NS0、ミエローマまたはハイブリドーマ細胞が含まれるが、これらに限定されない。また、原核生物、例えば細菌宿主細胞発現系も、完全抗体分子のような抗体分子の生産に使用してもよい。好適な細菌宿主細胞としては、E. coliの細胞が含まれるが、これに限定されない。
【0133】
本発明はまた、本発明の核酸をコードするベクターを含む(異種)宿主細胞を、本発明の抗体分子をコードするDNAからのタンパク質の発現に適した条件下で培養し、抗体分子を単離することを含む、本発明による抗体分子の製造方法を提供する。
【0134】
重鎖と軽鎖の両方を含む抗体を生産するために、細胞株を2つのベクター、すなわち軽鎖ポリペプチドをコードする第1のベクター、および重鎖ポリペプチドをコードする第2のベクターでトランスフェクションしてもよい。あるいは、軽鎖と重鎖のポリペプチドをコードする配列を含む単一のベクターを用いてもよい。
【0135】
本発明による抗体は、(i)例えば本発明によるベクターの使用により、宿主細胞中で本発明による核酸配列を発現させ、(ii)発現された抗体産物を単離することにより生産されてもよい。加えて、この方法は、(iii)単離された抗体を精製することを含んでいても。形質転換B細胞および培養形質細胞は、所望の特異性または機能を有する抗体を生産するものについてスクリーニングすることができる。
【0136】
スクリーニング工程は、任意のイムノアッセイ、例えばELISA、組織もしくは細胞(トランスフェクション細胞を含む)の染色、中和アッセイ、または所望の特異性もしくは機能を同定するための当技術分野で公知の他の多数の方法、のいずれかによって実施してもよい。アッセイは、1つ以上の抗原の単純な認識に基づいて選択してもよく、または、例えば抗原結合抗体だけでなく中和抗体を選択する機能、例えばシグナル伝達カスケード、形状、増殖速度、他の細胞に影響を与える能力、他の細胞または他の試薬による影響や条件の変化に対する応答、分化状態などの、標的細胞の特性を変化させることができる抗体を選択する機能などの、所望の機能にさらに基づいて選択することもできる。
【0137】
次に、陽性形質転換B細胞培養物から個々の形質転換B細胞クローンを生産してもよい。陽性細胞の混合物から個々のクローンを分離するためのクローニング工程は、限界希釈法、マイクロマニピュレーション法、セルソーティングによる単一細胞沈着法、または当技術分野で公知の他の方法を用いて実施することができる。
【0138】
培養形質細胞からの核酸は、当技術分野で公知の方法を用いて、HEK293T細胞または他の公知の宿主細胞において単離、クローニング、および発現させることができる。
【0139】
本発明の不死化B細胞クローンまたはトランスフェクションされた宿主細胞は、例えば、モノクローナル抗体の供給源として、目的のモノクローナル抗体をコードする核酸(DNAまたはmRNA)の供給源として、研究用としてなどの、様々な方法で使用することができる。
【0140】
本発明はまた、本発明によって抗体を生産する不死化Bメモリー細胞またはトランスフェクション宿主細胞を含む組成物を提供する。
【0141】
本発明の不死化B細胞クローンまたは培養形質細胞は、その後の組換え発現のための抗体遺伝子のクローニングのための核酸源としても使用されてもよい。組換え源からの発現は、安定性、再現性、培養の容易さ等の理由から、例えばB細胞やハイブリドーマからの発現よりも、医薬目的では一般的であり得る。
【0142】
それゆえ本発明は、以下の工程を含む組換え細胞を調製する方法も提供する:(i)B細胞クローンまたは培養形質細胞から、目的の抗体をコードする1つ以上の核酸(例えば、重鎖および/または軽鎖mRNA)を得る工程;(ii)発現ベクターに核酸を挿入する工程;および(iii)宿主細胞における目的の抗体の発現を可能にするために、(異種)宿主細胞にベクターをトランスフェクションする工程。
【0143】
同様に、本発明は、以下の工程を含む、組換え細胞を調製するための方法も提供する:(i)目的の抗体をコードするB細胞クローンまたは培養形質細胞からの核酸の配列を決定する工程;および(ii)工程(i)からの配列情報を使用して、宿主細胞に挿入するための核酸を調製し、その宿主細胞における目的の抗体の発現を可能にする工程。核酸は、工程(i)と(ii)の間に、制限部位を導入するため、コドン使用法を変更するため、および/または転写および/または翻訳調節配列を最適化するために操作してもよいが、必要ではない。
【0144】
さらに、本発明は、目的の抗体をコードする1つ以上の核酸で宿主細胞をトランスフェクションする工程を含む、トランスフェクションされた宿主細胞を調製する方法も提供し、ここで核酸は、本発明の不死化B細胞クローンまたは培養形質細胞に由来する核酸である。それゆえ、最初に核酸を調製し、次にそれを用いて宿主細胞をトランスフェクションする手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時期に実施することができる。
【0145】
このような本発明の組換え細胞は、発現や培養の目的で使用することができる。特に、大規模な医薬品製造のための抗体の発現に有用である。また、医薬組成物の有効成分として使用することもできる。静置培養、ローラーボトル培養、腹水、中空糸型バイオリアクターカートリッジ、モジュール型ミニファーメンター、攪拌槽、マイクロキャリア培養、セラミックコア灌流などを含むが、これらに限定されない任意の適切な培養技術を使用することができる。
【0146】
B細胞または形質細胞から免疫グロブリン遺伝子を取得し、配列決定する方法は、当技術分野でよく知られている(例えば、Kuby Immunology, 4th edition, 2000のChapter 4を参照)。
【0147】
トランスフェクションされた宿主細胞は、酵母および動物細胞、特に哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞、NS0細胞、PER.C6細胞またはHKB-11細胞のようなヒト細胞、骨髄腫細胞、またはヒト肝細胞)、ならびに植物細胞を含む真核細胞であり得る。いくつかの実施形態において、トランスフェクションされた宿主細胞は、ヒト細胞のような哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、発現宿主は、特にヒトにおいてそれ自体免疫原性ではない糖鎖構造で、本発明の抗体をグリコシル化することができる。いくつかの実施形態において、トランスフェクションされた宿主細胞は無血清培地中で増殖可能であり得る。さらなる実施形態において、トランスフェクションされた宿主細胞は、動物由来産物の存在なく培養で増殖可能であり得る。トランスフェクションされた宿主細胞は、細胞株を得るために培養されてもよい。
【0148】
本発明はまた、目的の抗体をコードする1つ以上の核酸分子(例えば、重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子)を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:(i)本発明により不死化B細胞クローンを調製するか、または形質細胞を培養する工程;(ii)B細胞クローンまたは培養形質細胞から、目的の抗体をコードする核酸を取得する工程。さらに本発明は、以下の工程を含む、目的の抗体をコードする核酸配列を得るための方法を提供する:(i)本発明により不死化B細胞クローンを調製するか、または形質細胞を培養する工程;(ii)B細胞クローンまたは培養形質細胞から、目的の抗体をコードする核酸を配列決定する工程。
【0149】
本発明はさらに、目的の抗体をコードする核酸分子を調製する方法であって、本発明の形質転換B細胞クローンまたは培養形質細胞から得られた核酸を得る工程を含む方法を提供する。それゆえ、最初にB細胞クローンまたは培養形質細胞を得る手順、次いでB細胞クローンまたは培養形質細胞から核酸を得る手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時期に実施することができる。
【0150】
本発明はまた、本発明による抗体(例えば、医薬用)を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法も含む:(i)目的の抗体を発現する選択されたB細胞クローンまたは培養形質細胞から、1つ以上の核酸(例えば、重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子)を取得および/または配列決定する工程;(ii)核酸(単数または複数)を挿入するか、または核酸(単数または複数)の配列を使用し、発現ベクターを調製する工程;(iii)目的の抗体を発現することができる宿主細胞を、トランスフェクションする工程;(iv)目的の抗体が発現される条件下で、トランスフェクションされた宿主細胞を培養または継代培養する工程;および任意に、(v)目的の抗体を精製する工程。
【0151】
本発明はまた、以下の工程を含む、目的の抗体を調製する方法を提供する:トランスフェクションされた宿主細胞集団、例えば安定にトランスフェクションされた宿主細胞集団を、目的の抗体が発現される条件下で培養または継代培養し、および任意に目的の抗体を精製する工程であって、上述のトランスフェクションされた宿主細胞集団は、(i)上記のように調製されたB細胞クローンまたは培養形質細胞によって生産される、選択された目的の抗体をコードする核酸を提供し、(ii)核酸を発現ベクターに挿入し、(iii)目的の抗体を発現し得る宿主細胞内においてベクターをトランスフェクションし、そして(iv)目的の抗体を生産するために、挿入された核酸を含んでなるトランスフェクションされた宿主細胞を培養または継代培養する、ことによって調製されている。それゆえ、最初に組換え宿主細胞を調製し、次にそれを培養して抗体を発現させる手順は、異なる場所(例えば、異なる国)の異なる人々によって、全く異なる時期に実施することができる。
【0152】
<医薬組成物>
本発明はまた、以下の1つ以上を含む医薬組成物を提供する:
(i)本発明の抗体またはその抗原結合フラグメント;
(ii)本発明の核酸または核酸の組み合わせ;
(iii)本発明のベクターまたはベクターの組み合わせ;および/または
(iv)本発明による抗体を発現する、または本発明によるベクターを含む細胞
および任意に、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体。
【0153】
換言すれば、本発明は、本発明による抗体、本発明による核酸、本発明によるベクターおよび/または本発明による細胞を含む医薬組成物も提供する。
【0154】
薬学的組成物は、任意に、薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤も含むことができる。担体または賦形剤は投与を促進し得るが、組成物を受ける個体に有害な抗体の生産を、それ自体が誘導すべきではない。また、毒性であってはならない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子などの、大きく、ゆっくりと代謝される高分子であり得る。いくつかの実施形態において、本発明による医薬組成物中の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤は、Clostridium tetaniまたは破傷風への感染に関して活性成分ではない。
【0155】
薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩などの無機酸塩、または酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩などの有機酸の塩を使用することができる。
【0156】
医薬組成物中の薬学的に許容される担体には、水、生理食塩水、グリセロール、エタノールなどの液体が加えて含まれていてもよい。加えて、湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝化物質などの補助物質が、このような組成物中に存在してもよい。このような担体により、医薬組成物をタブレット剤、ピル剤、ドラジェ剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などに製剤化し、対象に摂取させることができる。
【0157】
本発明の医薬組成物は、様々な形態で調製され得る。例えば組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製されてもよい。注射前の液体ビヒクルへの溶解または懸濁に適した固体形態も調製可能である(例えば保存剤を含む滅菌水に戻すための、Synagis(商標)およびHerceptin(登録商標)と同様の凍結乾燥組成物)。組成物は、例えば軟膏、クリームまたは粉末として局所投与用に調製されてもよい。組成物は経口投与のために、例えばタブレット剤もしくはカプセル剤として、スプレー剤として、または(任意にフレーバー付きの)シロップ剤として調製されてもよい。組成物は例えば、吸入器として、微粉末またはスプレーを用いて、肺投与用に調製されてもよい。組成物は、座薬またはペッサリーとして調製されてもよい。組成物は例えば、点滴として、鼻、耳または眼投与用に調製されてもよい。組成物はキットの形態であってもよく、組み合わされた組成物が対象への投与の直前に再構成されるようにデザインされる。例えば、凍結乾燥抗体が滅菌水または滅菌緩衝液とともにキット形態で提供されてもよい。
【0158】
いくつかの実施形態において、組成物中の(唯一の)有効成分は本発明による抗体である。そのため、消化管内で分解されやすいものであり得る。それゆえ、組成物が消化管を使用する経路で投与される場合、組成物は抗体を分解から保護するが、消化管から吸収されると抗体を放出する薬剤を含んでいてもよい。
【0159】
薬学的に許容される担体に関する徹底的な議論は、Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th edition, ISBN: 0683306472で閲覧できる。
【0160】
本発明の医薬組成物は、一般に、5.5~8.5の間のpHを有し、いくつかの実施形態において、これは6~8の間、例えば約7であり得る。pHは、緩衝剤の使用によって維持されてもよい。組成物は、無菌および/またはパイロジェンフリーであってもよい。組成物は、ヒトに対して等張であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、密封容器で供給される。
【0161】
本発明の範囲内には、いくつかの投与形態で存在する組成物が含まれる;その形態には、非経口投与、例えば注射または点滴、例えばボーラス注射または持続点滴による投与に適した形態が含まれるが、これらに限定されない。生産物が注射用または点滴用である場合、それは油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液または乳濁液の形態をとり得、懸濁化剤、保存剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含み得る。あるいは抗体は、使用前に適切な無菌液体で戻すための、乾燥形態であってもよい。
【0162】
ビヒクルとは、典型的には、薬学的に活性な化合物、特に本発明による抗体などの化合物を貯蔵、輸送、および/または投与するのに適した材料であると理解される。例えば、ビヒクルは、薬学的に活性な化合物、特に本発明による抗体を貯蔵、輸送、および/または投与するのに適した、生理学的に許容される液体であってもよい。一旦製剤化されると、本発明の組成物は対象に直接投与することができる。いくつかの実施形態において、組成物は、哺乳動物、例えばヒト対象への投与に適合される。
【0163】
本発明の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、腹腔内、髄腔内、脳室内、経皮、経皮、局所、皮下、経鼻、経腸、舌下、膣内または直腸経路を含むが、これらに限定されない、任意の数の経路によって投与され得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物は中枢神経系に投与されてもよい。したがってそれは例えば、髄腔内、脳室内、脳内、硬膜外、経鼻、鼻腔内、または肛門周囲の投与経路を介して投与され得る。ハイポスプレーもまた、本発明の医薬組成物を投与するために使用されてもよい。任意に医薬組成物は、経口投与用、例えばタブレット剤、カプセル剤などとして、局所投与用として、または注射用、例えば液体溶液または懸濁液として調製されてもよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は注射剤である。注射前の液体ビヒクル中への溶液または懸濁液に適した固体形態も包含され、例えば、医薬組成物は凍結乾燥形態であってもよい。
【0164】
注射、例えば静脈内注射、皮膚注射、皮下注射、または患部への注射の場合、活性成分は、パイロジェンフリーであり、かつ適切なpH、等張性および安定性を有する、非経口的に許容される水溶液の形態であってもよい。当業者であれば、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液などの等張ビヒクルを用いて、適切な溶液をよく調製することができる。必要に応じて、保存剤、安定化剤、緩衝剤、酸化防止剤および/または他の添加剤を含めることができる。個体に投与されるのが、本発明による抗体、ペプチド、核酸分子、または他の薬学的に有用な化合物のいずれであろうと、投与は通常「有効量」、例えば「予防的に有効な量」または「治療的に有効な量」(場合により)であり、これは個体に利益を示すのに十分である。実際の投与量、投与の速度および時間経過は、治療されるものの性質および重篤度に依存する。注射の場合、本発明による医薬組成物は、例えば予め充填されたシリンジで提供され得る。
【0165】
上記で定義した本発明医薬組成物はまた、カプセル剤、タブレット剤、水性懸濁液または溶液を含むが、これらに限定されない、経口的に許容される任意の剤形で経口投与することができる。経口用のタブレット剤の場合、一般的に使用される担体としては、乳糖およびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤も一般的に添加される。カプセル剤の形態で経口投与する場合、有用な希釈剤にはラクトースや乾燥コーンスターチがある。経口投与のために水性懸濁液が必要な場合には、活性成分、すなわち上記で定義したような本発明トランスポーター貨物結合体分子を、乳化剤および懸濁化剤と組み合わせる。所望により、ある種の甘味剤、香味剤または着色剤も加えることができる。
【0166】
本発明の医薬組成物はまた、特に治療対象が局所適用によって容易にアクセス可能な領域または器官、例えばアクセス可能な上皮組織を含む場合、局所投与されてもよい。適切な局所製剤は、これらの領域または器官の各々に対して容易に調製される。局所適用のために、本発明の医薬組成物は、本発明の医薬組成物、特に上記で定義したようなその成分を、1つ以上の担体に懸濁または溶解して含有する、適切な軟膏に製剤化され得る。局所投与用の担体としては、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、本発明の医薬組成物は、適切なローションまたはクリームに製剤することができる。本発明の文脈において、適切な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が含まれるが、これらに限定されない。
【0167】
投与治療は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールであり得る。特に、医薬組成物は、単回投与製品として提供され得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物中の抗体の量は、特に単回投与製品として提供される場合、200mgを超えず、例えば100mgまたは50mgを超えない。
【0168】
単回投与、例えば毎日、毎週または毎月の投与の場合、本発明による医薬組成物中の抗体の量は、1gまたは500mgを超えない。いくつかの実施形態において、1回の投与量について、本発明による医薬組成物中の抗体の量は、200mg、または100mgを超えないものであり得る。例えば、1回の投与量について、本発明による医薬組成物中の抗体の量は、50mgを超えないものであり得る。
【0169】
医薬組成物は、典型的には、本発明の1つ以上の抗体の「有効」量、すなわち、所望の疾患もしくは状態を治療、改善、減衰、軽減もしくは予防するのに十分な量、または検出可能な治療効果を示すのに十分な量を含む。治療効果には、病原性効力または身体症状の軽減または減弱も含まれる。任意の特定の対象に対する正確な有効量は、対象の体格、体重、健康状態、病態の性質および程度、ならびに投与に選択される治療薬または治療薬の組み合わせに依存する。所与の状況に対する有効量は、日常的な実験によって決定され、臨床医の判断の範囲内である。本発明の目的のために、有効量は一般に約0.005~約100mg/kg、例えば約0.0075~約50mg/kgまたは約0.01~約10mg/kgであり得る。いくつかの実施形態において、有効量は、投与される個体の体重(例えば、kg単位)に対して、本発明の抗体(例えば、医薬組成物中の抗体の量)が約0.02~約5mg/kgとなる。
【0170】
さらに、本発明による医薬組成物は、さらなる抗体または抗体ではない成分であってもよい、追加の活性成分を含んでもよい。したがって、本発明による医薬組成物は、1つ以上の追加の活性成分を含んでもよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、2つの異なる抗体または抗原結合フラグメント、特に破傷風毒素に(特異的に)結合する2つの異なる抗体または抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態において、2つの異なる抗体またはその抗原結合フラグメントの各々は、上記のような本発明による抗体である。
【0171】
本発明による抗体は、付加的活性成分(例えば、上記の第2の抗体)と同じ医薬組成物中に存在させることもでき、あるいは、本発明による抗体は第1の医薬組成物中に含まれ、付加的活性成分(例えば、上記の第2の抗体)は第1の医薬組成物とは異なる第2の医薬組成物中に含まれる。したがって、1つ以上の付加的活性成分が想定される場合、各付加的活性成分(例えば、上述の第2の抗体)および本発明による抗体は、異なる医薬組成物中に含まれていてもよい。このような異なる医薬組成物は、組み合わせて/同時に、または別々の時間もしくは別々の場所(例えば、身体の別々の部分)に投与することができる。
【0172】
したがって、本発明はまた、2つの異なる抗体またはその抗原結合フラグメントの組合せを提供し、ここで、2つの異なる抗体またはその抗原結合フラグメントの各々は、上記の本発明による抗体であり、好ましくは、以下にさらに詳細に記載するように医薬に使用するための抗体である。
【0173】
さらに、本発明は、2つの異なる抗体またはその抗原結合フラグメントを含む部品キットも提供し、ここで、2つの異なる抗体またはその抗原結合フラグメントの各々は、上記の本発明による抗体である。部品キットにおいて、2つの異なる抗体は、異なる容器中(例えば、異なる医薬組成物中)に提供され得る。
【0174】
特に、上記の医薬組成物、組合せおよび部品キットの場合、本発明の2つの異なる抗体またはその抗原結合フラグメントのうち、第1の抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1に記載の重鎖CDR1配列、配列番号2に記載の重鎖CDR2配列、配列番号3に記載の重鎖CDR3配列、配列番号4に記載の軽鎖CDR1配列、配列番号5または6に記載の軽鎖CDR2配列、および配列番号7に記載の軽鎖CDR3配列を含んでいてもよく;また第2の抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号12に記載の重鎖CDR1配列、配列番号13に記載の重鎖CDR2配列、配列番号14に記載の重鎖CDR3配列、配列番号15に記載の軽鎖CDR1配列、配列番号16または17に記載の軽鎖CDR2配列、および配列番号18に記載の軽鎖CDR3配列を含んでいてもよい。
【0175】
いくつかの実施形態において、第1の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号8に記載のVH配列、または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の変異を含む);および配列番号10に記載のVL配列、または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の変異を含む)を含み得る。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5または6、および配列番号7に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。次に、第2の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号19に記載のVH配列、または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の変異を含む);および配列番号20に記載のVL配列、またはは、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の変異を含む)を含み得る。それにより、上記で定義されたCDR配列(それぞれ配列番号12、配列番号13、および配列番号14に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびにそれぞれ配列番号15、配列番号16または17、および配列番号18に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列)が維持され得る。
【0176】
本発明による抗体と追加の活性成分(例えば、上記の第2の抗体)は、相乗的治療効果のような相加的治療効果を提供し得る。用語「相乗効果」は、それぞれの活性剤の個々の効果の合計よりも大きい、2つ以上の活性剤の複合効果を表すために使用される。それゆえ、2つ以上の薬剤の複合効果により、活性またはプロセスの「相乗的阻害」がもたらされる場合、活性またはプロセスの阻害が、それぞれの活性薬剤の阻害効果の合計よりも大きいことが意図される。用語「相乗的治療効果」は、2つ以上の治療法の組み合わせにより観察される治療効果であって、(いくつかのパラメータにより測定される)その治療効果が、個々の治療法により観察される個々の治療効果の合計よりも大きいことを指す。
【0177】
いくつかの実施形態において、本発明による医薬組成物は、(本発明の抗体または上記のそれぞれの核酸、ベクターまたは細胞に加えて)追加の活性成分を含まなくてもよい。
【0178】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本発明の抗体を含み得、ここで、抗体は、組成物中の全タンパク質の少なくとも50重量%(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)を占め得る。本発明の組成物において、抗体は精製された形態であってもよい。
【0179】
本発明はまた、以下の工程を含む医薬組成物の調製方法を提供する:(i)本発明の抗体を調製する工程;および(ii)精製された抗体を1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と混和する工程。
【0180】
他の実施形態において、医薬組成物を調製する方法は、抗体を1つ以上の薬学的に許容される担体と混和する工程を含み、ここで抗体は、本発明の形質転換B細胞または培養形質細胞から得られたモノクローナル抗体である。
【0181】
治療目的で抗体またはB細胞を送達する代わりに、B細胞または培養形質細胞に由来する目的のモノクローナル抗体をコードする核酸(典型的にはDNA)を対象に送達することが可能であり、その場合、核酸は対象内でin situで発現して、所望の治療効果を提供することができる。適切な遺伝子治療および核酸導入ベクターは当技術分野で公知である。
【0182】
薬剤組成物は、特に複数回投与形式で包装されている場合、抗菌剤を含んでいてもよい。これらは、例えば、Tween 80などのTween(ポリソルベート)などのデタージェントを含んでいてもよい。デタージェントは一般に、例えば0.01%未満の低レベルで存在する。組成物はまた、強壮性を与えるためにナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含んでもよい。例えば、10±2mg/mlのNaCl濃度が典型的である。
【0183】
さらに、医薬組成物は、特に凍結乾燥される場合、または凍結乾燥された材料から戻された材料を含む場合、例えば糖アルコール(例えば、マンニトール)または二糖類(例えば、スクロースまたはトレハロース)を15~30mg/ml前後(例えば、25mg/ml)で含んでもよい。凍結乾燥用組成物のpHは、凍結乾燥前に5~8、または5.5~7、または6.1前後に調整することができる。
【0184】
本発明の組成物はまた、1つ以上の免疫調節剤を含み得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の免疫調節剤は、アジュバントを含む。
【0185】
<医療行為およびその他の用途>
さらなる態様において、本発明は、本発明による抗体もしくはその抗原結合フラグメント、本発明による核酸分子(もしくは核酸分子の組合せ)、本発明によるベクター(もしくはベクターの組合せ)、本発明による細胞、本発明による医薬組成物、本発明による組合せ、または本発明による部品キットの医薬としての使用を提供する。特に、本発明による抗体もしくはその抗原結合フラグメント、本発明による核酸分子(もしくは核酸分子の組み合わせ)、本発明によるベクター(もしくはベクターの組み合わせ)、本発明による細胞、本発明による医薬組成物、本発明による組み合わせ、または本発明による部品キットは、Clostridium tetaniの感染もしくは破傷風の予防および/または治療に使用され得る。
【0186】
したがって、本発明はまた、Clostridium tetaniの感染もしくは破傷風を改善もしくは軽減する、またはClostridium tetaniの感染もしくは破傷風のリスクを低下させる方法であって、以下を含む方法を提供する:治療有効量の、本発明による抗体もしくはその抗原結合フラグメント、本発明による核酸分子(もしくは核酸分子の組み合わせ)、本発明によるベクター(もしくはベクターの組み合わせ)、本発明による細胞、または本発明による医薬組成物を、それを必要とする対象に投与すること。さらに、本発明は、本発明による抗体もしくはその抗原結合フラグメント、本発明による核酸分子(もしくは核酸分子の組み合わせ)、本発明によるベクター(もしくはベクターの組み合わせ)、本発明による細胞、または本発明による医薬組成物の、Clostridium tetaniの感染または破傷風の、予防、治療または減弱のための医薬の製造における使用も提供する。
【0187】
Clostridium tetaniの感染または破傷風の予防とは、特に、対象がClostridium tetaniの感染または破傷風について診断されなかった(診断が行われなかったか、診断結果が陰性であった)、および/または対象がClostridium tetaniの感染または破傷風の症状を示さない、予防的な設定を指す。これとは対照的に、治療環境では、対象は典型的には、Clostridium tetaniの感染または破傷風と診断され、および/またはClostridium tetaniの感染または破傷風の症状を示す。なお、Clostridium tetaniの感染または破傷風の「治療」および「療法」/「治療的」という用語には、Clostridium tetaniの感染もしくは破傷風および/または関連症状の減弱/軽減だけでなく、(完全な)治癒も含まれる。
【0188】
いくつかの実施形態において、対象はヒトであってもよい。治療処置の有効性を確認する1つの方法は、本発明の組成物の投与後の疾患症状のモニタリングを含む。治療は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールであり得る。一実施形態において、本発明による抗体、抗体フラグメント、核酸、ベクター、細胞または組成物は、そのような治療を必要とする対象に投与される。このような対象には、例えば免疫不全の対象など、特にClostridium tetaniの感染または破傷風のリスクがある、または感受性のある者が含まれるが、これらに限定されない。
【0189】
本発明による抗体およびそのフラグメントは、Clostridium tetaniの感染または破傷風の診断にも使用することができる。診断の方法は、抗体をサンプルと接触させることを含み得る。このようなサンプルは、例えば、鼻腔、副鼻腔、唾液腺、肺、肝臓、膵臓、腎臓、耳、眼、胎盤、消化管、心臓、卵巣、下垂体、副腎、甲状腺、脳、皮膚、または血漿もしくは血清などの血液から採取された単離された組織サンプルなど、対象から単離されてもよい。例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントは、(単離された)血液サンプル(例えば、全血、血漿または血清)と接触させてもよい。診断方法はまた、抗原/抗体複合体の検出、特に抗体とサンプルとの接触後の検出を含んでいてもよい。このような検出工程は、通常、ベンチで、すなわちヒトまたは動物の身体に接触することなく行われる。検出方法の例は当業者によく知られており、また例えばELISA(酵素結合免疫吸着測定法)などが含まれる。したがって、診断は例えば、上記のように単離されたサンプル(および抗原/抗体複合体のin vitro検出工程)を用いることにより、in vitroで実施され得る。したがって、本抗体またはその抗原結合フラグメントは、Clostridium tetaniの感染または破傷風の(in vitro)診断に使用され得る。
【0190】
したがって、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗原、すなわち破傷風毒素を検出するための(in vitro)方法において使用され得る。同様に、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、破傷風毒素標的タンパク質/抗原を結合させるための(in vitro)方法に使用され得る。破傷風毒素(抗原)を検出するために、抗体を(単離された)サンプル(すなわち、抗原の存在について試験されるサンプル)と接触させてもよい。抗体と抗原(破傷風毒素)との特異的結合により、抗体/抗原複合体が形成され、この複合体は当技術分野で公知の方法により容易に検出することができる。
【0191】
このような検出方法は、(ヒトまたは動物の体から単離されたサンプルを用いた)(in vitro)診断の文脈で使用され得るが、ワクチンサンプルなどの他の(例えば、生産/製造)サンプルの試験にも使用され得る。したがって、本発明に記載の抗体、抗体フラグメントまたはその変異体は、非治療的/非診断的な文脈、例えばワクチン開発または製造においても使用され得る。そのため本発明は、ワクチン、特に抗原(すなわち、破傷風毒素のようなワクチンに含まれる所望の抗原)が適切に生成および/または折り畳まれているかどうか(および/または正しいコンフォメーションにあるかどうか)を試験するための、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの使用も提供する。したがって、抗体は、所望の免疫原性を有するワクチン製造のモニタリングに使用され得る。この目的のために、抗体は、例えば上記のようにワクチンと接触させてもよい。さらに、本発明は、ワクチンが所望の抗原、例えば破傷風毒素、またはそのフラグメントもしくは変異体を含むかどうかをチェックすることにより、抗破傷風ワクチンの品質をモニタリングするための、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの使用も包含する。より具体的には、この抗体はワクチン中の抗原またはそのエピトープのコンフォメーションをチェックするために使用してもよい。また、抗原(破傷風毒素)の修飾バージョンを、例えばワクチンに有用な破傷風毒素のフラグメントおよび変異体などの本発明の抗体で試験してもよい。
以下、添付図について簡単に説明する。図は、本発明をより詳細に説明するためのものである。しかしながら、これらは本発明の主題を何ら限定することを意図するものではない。
【0192】
(図面の簡単な説明)
図1は、破傷風トキソイド(TT)を接種したドナーから単離されたモノクローナル抗体のTTに対する結合特性を、実施例1について示したものである。
【0193】
(実施例)
以下では、本発明の様々な実施形態および態様を示す特定の実施例を示す。しかしながら、本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。以下の準備および実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施できるようにするために与えられる。しかしながら、本発明は、例示された実施形態によって範囲が限定されるものではなく、これらの実施形態は、本発明の単一の側面の例示としてのみ意図されており、機能的に同等である方法は、本発明の範囲内である。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な修飾は、前述の説明、添付の図および以下の実施例から当業者には容易に明らかになるであろう。このような修飾はすべて添付の特許請求の範囲に属する。
【0194】
<実施例1:ヒトモノクローナル抗体TT104およびTT110の同定および特性評価>
末梢血サンプルは、破傷風トキソイド(TT)による定期予防接種を受けたドナーから採取した。抗CD19-PECy7抗体およびマウス抗PEマイクロビーズを用いた磁気細胞ソーティング、次いでAlexa Fluor 647標識ヤギ抗ヒトIgG、Alexa Fluor 647標識ヤギ抗ヒトIgMおよびPE標識抗ヒトIgDを用いたFACSソーティングにより、メモリーB細胞を単離した。ソートされたIgGメモリーB細胞をEpstein-Barrウイルス(EBV)で不死化し、CpG-DNAおよび照射したPBMC-フィーダー細胞の存在下で単細胞培養にプレーティングした(Traggiai E. et al., 2004, Nat Med 10(8): 871-5 およびWO2004/076677に記載)。
【0195】
不死化後2週間、培養上清を、ELISAによってTTへの結合について試験した。簡単に述べると、ELISAプレートを、1μg/mlの組換えTTでコートした。プレートを、1%BSAでブロックし、そして滴定した抗体とインキュベートし、続いて1/500アルカリホスファターゼ(AP)標識ヤギ抗ヒトIgGとインキュベートした。その後、プレートを洗浄し、基質(パラニトロフェニルホスフェート(p-NPP)、シグマ社製)を添加し、405nmでプレートを読み取った。
結果を図1と表3に示す。これらのデータは、TT特異的モノクローナル抗体を生産するいくつかの不死化B細胞クローンが同定されたことを示している。10個のTT特異的モノクローナル抗体の抗体V遺伝子の塩基配列を決定し、IMGTデータベース(IMGT:http://www.imgt.org/;参照:Lefranc, M.-P. et al. (2009) Nucleic Acids Res. 37, D1006-D1012)を用いて解析した。
【表3】
【0196】
最も結合親和性の高い抗体の中からTT110とTT104を選び、これらの抗体のFABを作製した。
【0197】
【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】
【図面の簡単な説明】
【0198】
図1】破傷風トキソイド(TT)を接種したドナーから単離されたモノクローナル抗体のTTに対する結合特性を、実施例1について示したものである。
図1
【配列表】
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【国際調査報告】