(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】水溶性アロプレグナノロン誘導体及びその製造方法並びに用途
(51)【国際特許分類】
C07J 41/00 20060101AFI20240918BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240918BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240918BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240918BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/57 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C07J41/00 CSP
A61P25/00
A61P25/08
A61P25/28
A61P25/24
A61P25/20
A61K31/57
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539907
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 CN2022118549
(87)【国際公開番号】W WO2023040851
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111084187.4
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524097285
【氏名又は名称】南京邁諾威医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】劉飛
(72)【発明者】
【氏名】呉剛
(72)【発明者】
【氏名】王暁波
(72)【発明者】
【氏名】林成剛
(72)【発明者】
【氏名】趙欣
(72)【発明者】
【氏名】陳慶
(72)【発明者】
【氏名】劉敏
【テーマコード(参考)】
4C086
4C091
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086DA10
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
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4C086MA35
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4C086MA52
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4C086NA14
4C086ZA02
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4C086ZA06
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4C091AA01
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4C091EE05
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4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK01
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN01
4C091PA02
4C091PA05
4C091PB02
4C091RR09
(57)【要約】
本発明は、医薬分野に関し、具体的には、式Iに示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される塩に関し、そのうち、R
2、R
4は、それぞれ独立的にH又はDから選ばれ、R
1、R
3は、それぞれ独立的にCH
3、CH
2D、CHD
2又はCD
3から選ばれ、式Iの化合物は、少なくとも1つの重水素原子を含む。本発明は、アロプレグナノロンの薬理活性を保持する前提として、アロプレグナノロンのヒドロキシ基を構造的に修飾することによって、良好な物理/化学的安定性を有すると共に経口投与に適したアロプレグナノロン誘導体を得る。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iに示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される塩であって、
【化1】
そのうち、
R
2、R
4は、それぞれ独立的にH又はD(重水素)から選ばれ、
R
1、R
3は、それぞれ独立的にCH
3、CH
2D、CHD
2又はCD
3から選ばれ、
式Iの化合物は、少なくとも1つの重水素原子を含む、
式Iに示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項2】
式Iに記載の化合物は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の重水素原子を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
2はDであり、
好ましくは、R
2はD、且つR
1及びR
3はCH
3であり、
好ましくは、R
2はD、且つR
1及びR
3はCD
3である、
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式Iに記載の化合物は、式Ia又は式Ibに示される化合物である、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の化合物。
【化2】
【請求項5】
式Iに記載の化合物は、以下の構造から選ばれる、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の化合物。
【化3】
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の化合物の製造方法であって、
式IIの化合物と式IIIの化合物を反応させ、更に保護基を除去し、式Iの化合物を得るステップを含み、
【化4】
そのうち、R
1~R
4は請求項1~5の何れか一項に定義された通りであり、R
5は、例えばBocなどの保護基である、方法。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載の式Iに示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される塩のうちの少なくとも1種を含む、医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物は、結合剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、甘味剤又は矯味剤などの、1種又は複数種の薬学的に許容される補助剤を更に含み、
好ましくは、前記医薬組成物は経口投与のための、錠剤、丸剤、トローチ剤、糖衣剤、カプセル剤などであってもよい、
請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
中枢神経系障害の予防又は治療、鎮静催眠、アルツハイマー病の治療、てんかんの治療又はうつ病、特に産後うつ病の治療に用いられる薬物の製造における、請求項1~5の何れか一項に記載の式Iの化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される塩、或いは請求項7に記載の医薬組成物の用途。
【請求項10】
前記中枢神経系疾患は、外傷性脳損傷、本態性振戦、てんかん(難治性持続性てんかん、稀遺伝性てんかん(Dravet症候群及びRett症候群など)を含む)、うつ病(産後うつ病を含む)及びアルツハイマー病であり、前記中枢神経系疾患は、例えば本態性振戦、てんかん、臨床的うつ病、分娩後又は産後うつ病、非定型うつ病、精神病性重度うつ病、緊張性うつ病、季節性感情障害、気分変調、二重うつ病、うつ病性人格障害、再発性一過性うつ病、軽度うつ病性障害、双極性障害又は躁うつ病性障害、心的外傷後ストレス障害、慢性医学的状態に起因するうつ病、治療抵抗性うつ病、難治性うつ病、自殺傾向、自殺念慮又は自殺行動から選ばれる、
請求項9に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2021年9月14日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202111084187.4、発明名称が「水溶性アロプレグナノロン(Allopregnanolone)誘導体及びその製造方法並びに用途」という先行出願の優先権を主張する。上記先行出願は全体として援用により本願に組み込まれている。
[技術分野]
本発明は、医薬分野に関し、具体的には、経口投与に適した水溶性アロプレグナノロン誘導体、製造方法及びその用途、それを含む医薬組成物及び中枢神経系障害と鎮静催眠の予防又は治療、アルツハイマー病の治療、てんかんの治療又はうつ病、特に産後うつ病の治療のための用途に関する。
[背景技術]
神経活性ステロイドは、人体において重要な調節作用を果たしている神経組織に活性を有するステロイドであり、神経ステロイドは、主にプロゲステロン、プレグネノロン及びプロゲステロン代謝物であるプレグナノロンなどを含む。神経活性ステロイドは、人体において重要な生理学的作用を果たしており、人体における合成の障害が異なる神経(CN 104736158 A)又は精神疾患(Expert Opin Ther Targets.2014、18(6):679-90)を引き起こす。
【0002】
現在、プレグナノロン系物質には、プレグナノロン、アロプレグナノロン、エピプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンという化合物が含まれると一般的に考えられている(表1を参照)。
【0003】
【0004】
特許文献CN1300219Aは、異なるプレグナノロン系物質が中枢神経系の調節に異なる作用機序を有し、且つ中枢神経系に異なる生理学的作用を有することを開示する。アロプレグナノロン(3α-OH-5α-プレグナン-20-オン)は、重要なGABAA(γ-アミノ酪酸A)受容体であり、抗てんかん、催眠、抗片頭痛及び抗不安の作用を有する。エピプレグナノロン(3β-OH-5α-プレグナン-20-オン)は、アロプレグナノロンの作用を遮断及び拮抗し、アロプレグナノロンなどによる麻酔を適切に制御及び中止することができる。
【0005】
アロプレグナノロン(3α-OH-5α-プレグナン-20-オン)は近年、研究のホットスポットであり、1986年に、アロプレグナノロンがGABAA受容体の正の調節剤であることが指摘されている。アロプレグナノロンは、主にGABAA受容体のα及びβサブユニットに結合し、当該受容体における塩素イオンチャネルの開放頻度を増加させ、神経興奮性を低下させることにより、鎮定と抗不安の作用を生じる可能性がある。
【0006】
文献では、月経周期の異なる段階で、体内のプロゲステロン及びその代謝物のレベルが異なることが報告されている。月経開始前に、プロゲステロン及びその代謝物のレベルが低下する場合、月経前症候群(PMS)を引き起こす可能性があり、即ち、月経周期開始前に、身体にストレス、不安及び片頭痛などの症状が繰り返し発生し、これらの症状は月経後に消える(Dalton,K.、Premenstrual Syndrome and Progesterone Therapy、第2版、Chicago Yearbook、Chicago(1984))。産後うつ病は、プロゲステロン異常及びその代謝物のレベルにも関連し、妊娠の進行に伴って、健常妊婦の血漿中のアロプレグナノロン濃度が上昇し、出産後のアロプレグナノロン濃度が急激に低下する。研究の結果、アロプレグナノロン含有量の減少は、不安、うつ病及び振戦などの多くの精神障害性疾患の発症及び進行に密接に相関していると考えられ、アロプレグナノロンの外因性投与は、上記精神症状を顕著に改善することができる。
【0007】
しかし、従来のアロプレグナノロンは、水溶性が低く、経口投与バイオアベイラビリティが悪く、ヒト血漿半減期が約45分で、急速に代謝され、経口製剤化に適していない。
【0008】
特許文献CN104736158Aは、てんかん又は持続性てんかんを治療するため、アロプレグナノロンとシクロデキストリンとの組成物を配合し、且つそれを静脈内投与する方法を開示し、アロプレグナノロンとシクロデキストリンとの組成物において、シクロデキストリンの割合が1~30%、その血中薬物濃度が50~2300 nM、治療期間が長く24時間以上である。しかし、シクロデキストリンは高分子化合物であり、一定の腎毒性リスク(薬物超分子材料であるシクロデキストリン誘導体の安全性研究、中国材料科学技術と設備、2009年第5期、1~3ページ)を有しているため、安全上のリスクがある。
【0009】
2019年、商品名ZULRESSOのSAGE治療社のアロプレグナノロン注射液はアメリカでの販売が承認されており、アロプレグナノロン注射液は、無菌、透明、無色、且つ防腐剤を含まない静脈注射剤であり、アロプレグナノロンとスルホブチルβ-シクロデキストリンナトリウムがクラスレート化合物を形成し、アロプレグナノロンの溶解度を向上させる。アロプレグナノロン注射剤は、治療効果を達成するため、静脈内注射により安定した生理的濃度のアロプレグナノロンを生成できるが、60時間と長い静脈内注入が必要であり、注入方法が複雑で、注入には専門の医療スタッフが現場で継続的にモニタリングし、必要な介入を行う必要がある。アロプレグナノロンを注射する患者のコンプライアンスの低下をもたらし、医療スタッフによる使用は、非常に不便である。アロプレグナノロン注射液の注入方法は、0~4 hに30 μg/kg/hの用量で注入し、4~24 hに用量を60 μg/kg/hに増加させ、24~52 hに用量を90 μg/kg/h(90 μg/kg/hに耐えられない患者の場合、用量を60 μg/kg/hに設定してもよい)に増加させ、52~56 hに用量を60 μg/kg/hに減少させ、56~60 hに用量を30 μg/kg/hに減少させる。
[発明の概要]
本発明の目的は、経口投与に適し、生物学的利用能が高いと共に、速やかに発効し、且つ体内の安定的な生理的濃度を長時間において維持できるアロプレグナノロン系誘導体を提供することである。
【0010】
本発明の目的はまた、アロプレグナノロン系誘導体を含む組成物及び中枢神経系の異常による疾患を治療するための薬物の製造における、上記アロプレグナノロン系誘導体の応用を提供することである。
【0011】
本発明の目的は、下記技術案によって達成されるものであり、
第1態様によれば、本発明は、一般式Iの化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される塩を提供し、
【0012】
【0013】
そのうち、
R2、R4は、それぞれ独立的にH(水素)又はD(重水素)から選ばれ、
R1、R3は、それぞれ独立的にCH3、CH2D、CHD2又はCD3から選ばれ、
条件として、式Iの化合物は、少なくとも1つの重水素原子を含む。
【0014】
本発明の幾つかの実施形態において、式Iの化合物は1~8個の重水素原子を含み、又は式Iの化合物は1~7個の重水素原子を含み、又は式Iの化合物は1~6個の重水素原子を含み、具体的には、式Iの化合物は少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の重水素原子を含む。
【0015】
本発明の幾つかの実施形態において、R2はDである。
【0016】
本発明の幾つかの実施形態において、R2はD、且つR1及びR3はCH3である。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態において、R2はD、且つR1及びR3はCD3である。
【0018】
本発明の実施形態によれば、各Dの重水素化率は少なくとも3500倍(52.5%)、好ましくは、少なくとも4000倍(60%)、好ましくは、少なくとも4500倍(67.5%)、より好ましくは、少なくとも5000倍(75%)、より好ましくは、少なくとも5500倍(82.5%)、より好ましくは、少なくとも6000倍(90%)、より好ましくは、少なくとも6333.3倍(95%)、更に好ましくは、少なくとも6466.7倍(97%)、更に好ましくは、少なくとも6566.7倍(98.5%)、更に好ましくは、少なくとも6600倍(99%)、更に好ましくは、少なくとも6633.3倍(99.5%)である。
【0019】
好ましくは、重水素として指定されていない任意の原子が、その天然同位体存在度で存在する。
【0020】
本発明の具体的な実施形態において、式Iの化合物は、式Ia又は式Ibに示される化合物である:
【0021】
【0022】
そのうち、R1、R2、R3、R4は上記に定義された通りである。
【0023】
本発明の幾つかの好ましい実施形態において、式Iに示される化合物の例は以下の通りである:
【0024】
【0025】
本発明の化合物が互変異性体の形態で存在することができる場合、本発明は全ての互変異性体形態を含む。
【0026】
本発明の化合物は、立体異性体の形態(エナンチオマー、ジアステレオ異性体)で存在することができる。従って、本発明は、エナンチオマー又はジアステレオ異性体及びそれらのそれぞれの混合物を含む。このエナンチオマー及び/又はジアステレオ異性体の混合物から、既知の方法で立体異性体の均一な組成を分離することができる。
【0027】
本発明は、上記式Iに記載の化合物の製造方法を更に提供し、以下のステップを含む:
【0028】
【0029】
そのうち、R1~R4は上記に定義された通りであり、R5は、例えばアミノ保護基、例えばtert-ブトキシカルボニル(Boc)などの保護基であり、
式IIの化合物と式IIIの化合物を反応させ、更に保護基を除去し、式Iの化合物を得る。
【0030】
本発明は、式Iに示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される塩のうちの少なくとも1種を含む、医薬組成物を更に提供する。
【0031】
本発明によれば、上記医薬組成物は、1種又は複数種の薬学的に許容される補助剤を更に含む。
【0032】
本発明によれば、上記医薬組成物は経口投与に用いられ、上記医薬組成物は錠剤、丸剤、トローチ剤、糖衣剤、カプセル剤などであってもよい。
【0033】
本発明の医薬組成物は、従来の混合法、造粒法、糖衣造粒法などの当該分野で周知の方法を用いて製造することができる。例えば、従来の混合、充填又は錠剤化の方法を用いて固体経口組成物を製造することができる。例えば、上記活性化合物と固体補助剤とを混合し、得られた混合物を任意に粉砕し、必要に応じて他の適切な補助剤を加え、次に当該混合物を顆粒に加工し、錠剤又は糖衣剤の核を得るといった方法によって得られる。適切な補助剤は、結合剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、甘味剤又は矯味剤などを含むが、これらに限定されない。
【0034】
本発明は、本発明の式Iの化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される塩、或いは、中枢神経系障害の予防又は治療、鎮静催眠、アルツハイマー病の治療、てんかんの治療又はうつ病、特に産後うつ病の治療に用いられる薬物の製造における本発明の医薬組成物の用途を提供する。
【0035】
本発明は、中枢神経系障害の予防又は治療、鎮静催眠、アルツハイマー病の治療、てんかんの治療又はうつ病、特に産後うつ病の治療の方法であって、必要な個体に予防又は治療有効量の本発明の式Iの化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される塩、又は本発明の医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0036】
本発明によれば、上記中枢神経系疾患は、例えば外傷性脳損傷、本態性振戦、てんかん(難治性持続性てんかん、稀遺伝性てんかん(Dravet症候群及びRett症候群など)を含む)、うつ病(産後うつ病を含む)及びアルツハイマー病である。上記中枢神経系疾患は、例えば本態性振戦、てんかん、臨床的うつ病、分娩後又は産後うつ病、非定型うつ病、精神病性重度うつ病、緊張性うつ病、季節性感情障害、気分変調、二重うつ病、うつ病性人格障害、再発性一過性うつ病、軽度うつ病性障害、双極性障害又は躁うつ病性障害、心的外傷後ストレス障害、慢性医学的状態に起因するうつ病、治療抵抗性うつ病、難治性うつ病、自殺傾向、自殺念慮又は自殺行動から選ばれる。
【0037】
本明細書に記載の一般式Iの化合物の全ての投与方法において、1日当たりの投与量は0.01~200 mg/kg体重である。
【0038】
最適な所望の応答を提供するため、投与計画を調整することができる。例えば、単回経口投与、数分割用量を経時的に投与することができ、又は治療状況の必要性によって示されるように用量を比例的に減少又は増加させることができる。注意すべきことは、用量値は、緩和されるべき状態の種類及び重症度に応じて変化してもよく、且つ単回又は複数回の用量を含んでもよい。更に理解すべきことは、任意の特定の個体について、具体的な投与計画は、個体の必要性及び組成物を投与するか、又は組成物の投与を管理する人の専門的判断に従って、経時的に調整されるべきである。
【0039】
定義及び説明
なお、特に断らない限り、本発明において用いられる全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野における的技術者が理解できる意味と同じ意味を有する。本発明に係る全ての特許及び公開出版物は、引用によりその全体が本発明に組み込まれている。
【0040】
特に明記されていない限り、本明細書で使用されている以下の定義が適用される。本願に商品名が記載されている場合、その対応する商品又はその活性成分を示すことを意図する。
【0041】
本明細書で使用される「含む」、「包含」、「有する」、「含有」又は「関する」という用語及びその本明細書におけるその他の変形形態は、網羅的(inclusive)又は非限定的であり、且つ他の未列挙の要素又は方法ステップを除外しない。
【0042】
「予防又は治療」という用語は、疾患又は疾患に関連する1つ又は複数の症状を予防、改善又は除去するため、本発明に記載の化合物又は製剤を投与することを意味し、且つ以下を含む:
(i)特に哺乳動物が当該疾患状態にかかりやすいが、まだ当該疾患状態にかかっていると診断されていない場合、疾患又は疾患状態が当該哺乳動物において生じることを予防すること、
(ii)疾患又は疾患状態を抑制すること、即ち、その進行を抑制すること、
(iii)疾患又は疾患状態を軽減すること、即ち、当該疾患又は疾患状態を緩和させること。
【0043】
「重水素化率」という用語は、天然に存在する同位体の量に対する合成された同位体の量の比を示す。特に明記しない限り、構造中のある位置をH、即ち水素(H-1)と定義される場合、当該位置は天然に存在する同位体量のみを含む。構造中のある位置がD、即ち重水素(H-2)と定義される場合、当該位置は、天然に存在する同位体量(0.015%)より少なくとも3340倍多い同位体量(即ち少なくとも50.1%の重水素同位体を含む)を含む。
【0044】
「治療有効量」という用語は、(i)特定の疾患、病状又は障害を治療又は予防する、(ii)特定の疾患、病状又は障害の1種又は複数種の症状を軽減、改善又は除去する、或いは(iii)本明細書に記載の特定の疾患、病状又は障害の1種又は複数種の症状の発症を予防又は遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。「治療有効量」を構成する本発明の化合物の量は、当該化合物、疾患状態及びその重症度、投与方法並びに治療される哺乳動物の年齢に応じて変わるが、当業者は、それらの知識及び本開示から日常的に決定することができる。
【0045】
用語「薬学的に許容される」は、化合物、材料、組成物及び/又は剤形に対して、確実な医学的判定の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応或いは他の問題又は合併症がなく、合理的な利益/ハザード比に見合い、ヒト及び動物の組織との接触に使用するのに適することを意味する。
【0046】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される酸と形成された塩、及び薬学的に許容される塩基と形成されたその塩を含む。
【0047】
本明細書で使用される「薬学的に許容される酸」という用語は、薬用可能な酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸、酪酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、イセチオン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、スルファミン酸、乳酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、サリチル酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸、パモ酸、ニコチン酸、オロト酸、メチル硫酸、ドデシル硫酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルコン酸、グルクロン酸又はそれらの任意の組み合わせを指す。
【0048】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩基」という用語は、薬用可能な塩基、例えば、無機塩基(アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物など)又は有機塩基(例えば、アミン(第一級、第二級又は第三級アミン)など)を指す。適切な塩の例は、アミノ酸、アンモニア、第一級、第二級及び第三級アミン、並びに環状アミンから誘導される有機塩(例えば、ジエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩、ピペラジン塩、コリン塩、メグルミン塩、トロメタミン塩など)、並びにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及びリチウムから誘導される無機塩を含むが、これらに限定されない。
【0049】
「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物がその固体又は液体の状態で溶媒分子と配位することによって形成された配合物を指す。水和物は、溶媒和物の特定の形態であり、そのうち、配位作用は水と行われる。
【0050】
「医薬組成物」という用語は、本発明の化合物又はその塩の1種又は複数種と、薬学的に許容される補助剤との混合物を指す。医薬組成物の目的は、本発明の化合物の有機体への投与を容易にすることである。
【0051】
「薬学的に許容される補助剤」という用語は、有機体に対する明らかな刺激効果を有さず、且つ当該活性化合物の生物学的活性及び性能を損なわないような補助剤を指す。適切な補助剤は、当業者に周知であり、例えば、炭水化物、ワックス、水溶性及び/又は水膨潤性ポリマー、親水性又は疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などである。
【0052】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と適切な薬学的に許容される補助剤とを組み合わせることによって製造することができ、経口投与の場合、活性化合物と当技術分野で周知の薬学的に許容される補助剤とを混合することによって、当該医薬組成物を製造することができる。これらの補助剤は、本発明の化合物を錠剤、丸剤、トローチ剤、糖衣剤、カプセル剤などに製剤化して、患者に経口投与することができる。
【0053】
本明細書で使用される「個体」は、ヒト又は非ヒト動物を含む。例示的なヒト個体は、疾患(例えば、本明細書に記載の疾患)に罹っているヒト個体(患者と呼ばれる)又は正常な個体を含む。本発明における「非ヒト動物」には、全ての脊椎動物、例えば非哺乳動物(例えば鳥類、両生類、爬虫類)及び哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、家畜及び/又は家畜動物(例えばヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタなど)が含まれる。
【0054】
有益な効果
本発明は、式Iに示されるアロプレグナノロン誘導体であって、アロプレグナノロンの薬理活性を保持する前提として、アロプレグナノロンのヒドロキシ基を構造的に修飾することによって、良好な物理/化学的安定性を有すると共に経口投与に適したアロプレグナノロン誘導体を得る、アロプレグナノロン誘導体を提供する。体内に活性薬物を放出することによって、薬理作用を発揮させることができる。本発明のアロプレグナノロン誘導体は、代謝が安定し、経口投与バイオアベイラビリティが良好であり、毒性や副作用が少なく、経口投与後に速やかに発効し、且つ体内の安定的な生理的濃度のアロプレグナノロンを長時間において維持でき、適切な経口製剤に製剤化され、薬物の安全性を向上させ、患者のコンプライアンス及び投与の利便性を改善することができる。
[図面の簡単な説明]
[
図1]本発明の化合物を経口投与した雄ラット血漿中のアロプレグナノロンの薬物動態学曲線である。
[
図2]本発明の化合物を経口投与したビーグル犬血漿中のアロプレグナノロンの薬物動態学曲線である。
[発明を実施するための形態]
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の一般式の化合物及びその製造方法と応用を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明による請求範囲内に含まれる。
【0055】
本発明に係る中間体化合物は当業者に周知の複数種の合成方法により製造可能であり、以下に挙げられる具体的な実施形態、その他の化学合成法と組み合わせることにより形成される実施形態、及び当業者に周知の同等の代替方法が含まれ、好ましい実施形態は本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0056】
本発明の具体的な実施形態の化学反応は適当な溶剤において完成され、上記溶剤は、本発明の化学変化及びその必要な試薬と材料に適しなければならない。本発明の化合物を得るため、当業者は、既存の実施形態に基づいて合成工程又は反応プロセスを修正し又は選択する必要がある場合がある。
【0057】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は、本発明を限定するものではない。
【0058】
以下の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は通常、従来の条件に従うか、又は製造業者によって提案された条件に従う。特に断りのない限り、百分率及び部の数は重量で計算され、以下の実施例で使用される原料及び試薬は何れも市販品であるか、又は公知の方法により製造することができる。
【0059】
本発明において、aqは水溶液を表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表し、EtOAcは酢酸エチルを表し、EtOHはエタノールを表し、TFAはトリフルオロ酢酸を表し、i-PrOHはイソプロパノールを表し、ECSは細胞外液を表し、ICSは細胞内液を表し、MI001はアロプレグナノロンを表す、という略語を使用する。
【0060】
比較例1:比較化合物1(C1)塩酸塩の製造
【0061】
【0062】
ステップ1:1000 mLの三口丸底フラスコにMI001(50.0 g、157.0 mmol、1.0 eq)、Boc-L-Val-OH(tert-ブトキシカルボニルL-バリン)(40.9 g、188.2 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.9 g、15.5 mmol)及びジクロロメタン500 mLを加え、撹拌し、窒素ガス保護で反応系を-5~10℃に冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(38.9 g、188.5 mmol)のジクロロメタン(80 mL)溶液を滴下し、次いでこの温度で3 h反応させ、TLC(Thin Layer Chromatography、薄層クロマトグラフィー)により反応が完了するまでモニタリングし、反応を停止した。反応液をろ過し、ろ過ケーキをジクロロメタン(100 mL)で洗浄した。ろ液を減圧濃縮させ、粗生成物は100~200メッシュのシリカゲルサンドカラムクロマトグラフィー(石油エーテル(60~90)/酢酸エチル=20:1~10:1)により精製され、オフホワイトワックス状固体(78.2 g、収率96.2%)を得た。
【0063】
ステップ2:1000 mLの三口丸底フラスコにステップ1の生成物(78 g、150.6 mmol、1.0 eq)及びジクロロメタン(320 mL)を加えた。窒素ガス保護で、磁気撹拌し、系を0~10℃に冷却し、トリフルオロ酢酸(171.8 g、1506 mmol)を迅速に滴下し、次いで15~25℃で3 h反応させ、反応を停止させた。反応液を炭酸水素ナトリウム(164.5 g、1958 mmol)溶液に注入し、水(780 mL)でクエンチし、ジクロロメタン(700 mL)を加え、撹拌し、静置して分液し、有機相を得た。有機相を500 mLの純水で更に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過して濃縮させ、オフホワイト固体(59.5 g、収率94.6%)を得た。
【0064】
ステップ3:上記生成物0.5 gを取り、イソプロパノール(0.5 mL)、酢酸イソプロピル(7.5 mL)を加え、室温で透明になるように溶解した後、塩酸の酢酸エチル溶液(0.6 mL、2.0 Mの塩酸酢酸エチル)を滴下し、5~10℃に降温し、大量の固体が析出し、吸引ろ過して乾燥し、生成物(0.36 g、収率66.5%、純度HPLC 99.90%)を得た。
【0065】
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.83(brs,3H),5.23-5.14(m,1H),4.00-3.88(m,1H),2.52(t,J=8.7 Hz,2H),2.22-2.08(m,1H),2.11(s,3H),2.06-1.96(m,1H),1.86-1.08(m,18H),1.18(m,3H),1.17
(m,3H),1.04-0.88(m,1H),0.86-0.71(m,1H),0.80(s,3H),0.61(s,3H).MS m/z:418.3[M+H]+
実施例1 化合物1及びその塩酸塩の合成
【0066】
【0067】
中間体1aの合成:
100 mLの単口フラスコにBoc-L-Val-OH-3-d(1.20 g、5.5 mmol)、MI001(1.91 g、6.0 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(0.07 g、0.6 mmol)及びジクロロメタン(15 mL)を加えた。20℃でジシクロヘキシルカルボジイミド(1.24 g、6.0 mmol)のジクロロメタン(5 mL)溶液を滴下し、一晩撹拌した。ろ過してジシクロヘキシル尿素を除去し、ろ液を濃縮させ、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=20:1~7:1)により無色油状物2.3 gである中間体1a(収率80%)を得た。
【0068】
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 5.10(m,1H),5.07(d,J=9.5 Hz,1H),4.23(d,J=9.1 Hz,1H),2.53(t,J=8.8 Hz,1H),2.26-2.08(m,1H),2.11(s,3H),2.06-1.95(m,1H),1.85-0.71(m,20H),1.46(s,9H),0.98
(s,3H),0.90(s,3H),0.80(s,3H),0.61(s,3H).
化合物1の合成:
100 mLの単口フラスコに中間体1a(2.3 g、4.4 mmol)及びジクロロメタン(15 mL)を加え、20℃で撹拌しながら溶解し、トリフルオロ酢酸(5.02 g、44.0 mmol)を滴下した。温度を15~25℃に制御し、撹拌しながら3~4 h反応させた後、ジクロロメタン(20 mL)を加えた。撹拌しながら、反応液を炭酸水素ナトリウム水溶液(15 g/50 mL)に徐々に注入し、5~15 min撹拌した後、静置して分液した。有機相を純水(50 mL)で洗浄して分液し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過し、濃縮させた後、化合物1(1.73 g)を得た。
【0069】
化合物1の塩酸塩(1’)の合成:
得られた化合物1(1.59 g、3.8 mmol)を酢酸エチル(20 mL)及びイソプロパノール(1.3 mL)で溶解し、塩化水素の酢酸エチル溶液(2.4 M、1.6 mL、3.8 mmol)を滴下した。20℃で1 h撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを酢酸エチル(20 mL)で洗浄した。40℃で油ポンプにより真空(P≦-0.09 MPa)で4 h乾燥させ、白色固体(1.18 g、収率68%)を得た。
【0070】
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.83(brs,3H),5.23-5.14(m,1H),4.00-3.88(m,1H),2.52(t,J=8.7 Hz,1H),2.22-2.08(m,1H),2.11(s,3H),2.06-1.96(m,1H),1.86-1.08(m,18H),1.18(s,3H),1.17
(s,3H),1.04-0.88(m,1H),0.86-0.71(m,1H),0.80(s,3H),0.61(s,3H).MS m/z:419.28[M+H]+.
実施例2 化合物2及びその塩酸塩的の合成
【0071】
【0072】
中間体2aの合成:
窒素ガス保護で、100 mLの三口フラスコにBoc-L-Val-OH-d6(2 g、8.95 mmol)、ジクロロメタン(30 g)、MI001(2.85 g、8.95 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(0.11 g、0.90 mmol)を加え、撹拌しながら-5~5℃に降温し、ジクロロメタン(7.5 g)に溶けられたジシクロヘキシルカルボジイミド(2.1 g、10 mmol)溶液を滴下し、15~25℃で3 h反応させた後、TLCにより反応が完了するまでモニタリングし、反応液を水で洗浄し、撹拌して分液し、得られた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥濃縮させた後、カラムクロマトグラフィーにより(石油エーテル/酢酸エチル=20:1)分離され、無色油状物である中間体2a(3.2 g、収率68.5%)を得た。
【0073】
化合物2の合成:
前ステップで得られた生成物2aをジクロロメタン(16 mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(10.7 g)を加え、15~25℃で3~4 h撹拌し、TLCにより原料の反応が完了するまでモニタリングし、反応液を炭酸水素ナトリウム水溶液(40 mL)に加え、pHを7~8に調節し、ジクロロメタン(10 mL)を更に加え、分液後に有機相を保持し、更に水相をジクロロメタン(20 mL)で1回抽出し、有機相を合わせ、水(5 mL×3)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に固体になるまで濃縮乾燥させ、アセトニトリル(8 mL)を加えてスラリー化した後にろ過し、化合物2(1.2 g)を得た。
【0074】
化合物2の塩酸塩(2’)の合成:
化合物2(0.6 g)を取り、イソプロパノール(0.6 mL)、酢酸イソプロピル(9 mL)を加え、室温で溶解した後に塩酸の酢酸エチル溶液(0.7 mL、2.0 Mの塩酸酢酸エチル溶液)を滴下し、5~10℃に降温し、大量の固体が析出し、吸引ろ過して乾燥し、生成物(0.3 g、収率46.2%、純度HPLC 99.7%)を得た。
【0075】
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ8.85(brs,3H),5.22(s,1H),3.95(brs,1H),2.54(t,J=8.7 Hz,1H),2.49
(s,1H),2.19-2.14(m,1H),2.14(s,3H),2.05-2.02(m,1H),1.84-1.72(m,5H),1.61-1.41(m,7H),1.32-1.17(m,6H),1.04-0.88(m,1H),0.85(m,1H),0.82(s,3H),0.63(s,3H).MS m/z:424.39[M+H]+.
実施例3 化合物3及びその塩酸塩の合成
【0076】
【0077】
中間体3aの合成:
100 mLの単口フラスコにBoc-Val-OH-2-d(1.0 g、4.6 mmol)、MI001(1.46 g、4.6 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(0.06 g、0.5 mmol)及びジクロロメタン(15 mL)を加えた。20℃でジシクロヘキシルカルボジイミド(0.95 g、4.6 mmol)のジクロロメタン(5 mL)溶液を滴下し、一晩撹拌した。ろ過し、ろ液を濃縮させた。カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=20:1~7:1)により無色油状物である中間体3a(1.6 g、収率56%)を得た。
【0078】
化合物3の合成:
前ステップで得られた生成物である中間体3aをジクロロメタン(8 g)に溶解し、トリフルオロ酢酸(4.5 g)を加え、15~25℃で3~4 h撹拌し、TLCにより原料の反応が完了するまでモニタリングし、反応液を20 mLの炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、pHを7~8に調節し、ジクロロメタン(5 mL)を更に加え、分液後に有機相を保持し、更に水相をジクロロメタン(10 mL)で1回抽出し、有機相を合わせ、水(5 mL×3)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に固体になるまで濃縮乾燥させ、アセトニトリル4 mLを加えてスラリー化した後にろ過し、遊離塩基(0.6 g)を得た。
【0079】
化合物3の塩酸塩(3’)の合成:
上記生成物である化合物3(0.5 g)を取り、イソプロパノール(0.5 mL)、酢酸イソプロピル(7.5 mL)を加え、室温で溶解した後に塩化水素の酢酸エチル溶液(0.6 mL、2.0 Mの塩化水素の酢酸エチル溶液)を滴下し、5~10℃に降温し、大量の固体が析出し、吸引ろ過して乾燥し、生成物(0.36 g、収率66.5%、純度HPLC 99.70%)を得た。
【0080】
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ8.84(brs,3H),5.21(s,1H),2.56-2.48(m,2H),2.21-2.17(m,1H),2.13
(s,3H),2.05-2.02(m,1H),1.83-1.36(m,12H),1.32-1.19(m,12H),1.04-0.95(m,1H),0.90-0.84(m,1H),
0.82(s,3H),0.63(s,3H).MS m/z:419.25 [M+H]+.
実施例4 化合物4及びその塩酸塩の合成
【0081】
【0082】
MI001、Boc-D-Val-OH-3-dを原料として、実施例1の合成方法に従って、化合物4、化合物4の塩酸塩(4’)を製造して得られた。
【0083】
化合物4の塩酸塩(4’)、白色固体。
1H NMR(400 MHz,CDCl3) δ 8.76(brs,3H),5.16(brs,1H),4.00-3.88(m,1H),2.52(t,J=8.7 Hz,1H),2.22-2.08(m,1H),2.08(s,3H),2.06-1.96(m,1H),1.86-1.08(m,18H),1.18(s,3H),1.17(s,3H),1.04-0.88(m,
1H),0.86-0.71(m,1H),0.79(s,3H),0.61(s,3H).MS m/z:419.35[M+H]+.
実施例5 化合物5及びその塩酸塩の合成
【0084】
【0085】
MI001、Boc-D-Val-OH-d7を原料として、実施例2の合成方法に従って、化合物5、化合物5の塩酸塩(5’)を製造して得られた。
【0086】
化合物5塩酸塩(5’)、白色固体。
1H NMR(400 MHz,CDCl3) δ8.85(brs,3H),5.22(s,1H),3.95(brs,1H),2.54(t,J=8.7 Hz,1H),2.19-2.14(m,1H),2.14(s,3H),2.05-2.02(m,1H),1.84-1.72(m,5H),1.61-1.41(m,7H),1.32-1.17(m,6H),1.04-0.88(m,1H),0.85(m,1H),0.82(s,3H),0.63(s,3H).MS m/z:425.39 [M+H]+.
検測例1 化合物の溶解度実験
1.サンプルの調製
外部標準溶液の調製:測定待ちの化合物50 mgを精密に秤量し、10 mLのメスフラスコに入れ、適量の純水を加えて超音波により溶解し、目盛りまで希釈した後に均一に混合し、濃度5.0 mg/mLの外部標準溶液を得た。
【0087】
測定待ち溶液の調製:測定待ちの化合物1.0 gを精密に秤量し、20 mLの純水に溶解し、25℃で24 h撹拌しながら溶解し、遠心分離し、上清を取り、0.45 μmのろ過膜でろ過し、ろ液を得た。1 mLの上記ろ液を精密に秤量し、5 mLのメスフラスコに入れ、純水を加えて目盛りまで希釈し、均一に混合し、測定待ち溶液を得た。
【0088】
2.外部標準法による飽和溶解度の測定
クロマトグラフィー条件:
カラム:Waters XBridge C8 3.5 μm 4.6×100 mm NRT2019-21#、カラム温度:45℃、検出波長:205 nm。
【0089】
移動相A:10 mM/Lの(NH4)2HPO4溶液、移動相B:アセトニトリル、イソクラティック溶離し、A:B=40:60、流速:1.0 mL/min。
【0090】
サンプリング注入量:10 μL、実行時間:10 min。
【0091】
純水をブランク対照溶液として、UV検出器付きの高速液体クロマトグラフィーにより外部標準溶液、標準溶液のピーク面積がそれぞれ測定され、A外部標準、A測定待ちとしてそれぞれ記し、下記式により測定待ちの化合物の飽和溶解度Cが算出された。
C=A測定待ち/A外部標準×5 mg/mL×5。
具体的な結果は下記の表2に示される。
【0092】
【0093】
検測例2 パッチクランプの実験結果
手動パッチクランプ方法は、チャイニーズハムスター卵巣細胞を安定的に発現するhERGカリウムチャネル電流に対する化合物の作用を検出するために用いられ、心臓hERGカリウムイオンチャネルに対する薬物阻害は、心筋再分極の延長をもたらす主な原因であり、hERGのIC50値が大きいほど、心毒性が低いことを示した。
【0094】
実験材料:実験化合物(本発明の方法により製造された化合物1、比較化合物1)、ジメチルスルホキシド(シグマ・アルドリッチ(上海)・トレーシング社)、シサプリド(陽性対照、市販品)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、CHO-hERG細胞(Sophionバイオテクノロジー社)。
【0095】
手動パッチクランプ試験方法:
指数増殖期のCHO-hERG細胞を収集し、且つECS(細胞外液)に再懸濁させて使用に備えた。細胞を細胞記録セルに接種し、倒立顕微鏡ステージにセットし、記録セル中の細胞をランダムに選択して試験を行った。灌流システムを倒立顕微鏡ステージに固定し、ECSを用いて細胞を連続的に灌流した。
【0096】
細胞内液で満たされたガラスキャピラリーを使用して手動パッチクランプ試験記録微小電極を作製した。パッチクランプ試験当日、ホウケイ酸ガラス管(GC150TF-10、Harvard Apparatus Co.UK)を使用して、電極を作製した。ICSの電極充填後、抵抗は2~5 MΩの間であった。
【0097】
クランプ電圧は-80 mVであり、最初のステップで+60 mVまで脱分極し、850 ms維持して、hERGチャネルを開放した。次に、電圧を-50 mVに設定し、且つ1275 ms維持し、反発電流、又はテール電流と呼ばれる電流を生じさせ、テール電流のピーク値を測定して分析に使用された。最後に、電圧をクランプ電圧(-80 mV)に戻せた。溶媒対照作動溶液灌流の記録開始段階において、テール電流ピークを3以上の走査曲線が安定するまでモニタリングした後、hERG電流ピークに対する検測サンプル/陽性対照作動溶液の阻害作用が定常状態に達するまで、測定待ちの検測サンプル/陽性対照作動溶液を灌流することができる。
【0098】
全細胞パッチクランプ技術により、hERG電流を記録し、記録温度を室温とした。パッチクランプ増幅器の出力信号は、デジタルアナログ変換及び2.9 KHzローパスフィルタリングがかけられ、データはPatchmaster Proソフトウェアを用いて収集及び記録され、Origin 8Eソフトウェアを用いてデータ処理され、hERGのIC50値を算出した。実験データの結果は下記の表3に示される。
【0099】
【0100】
心臓hERGカリウムイオンチャネルに対する薬物阻害は、心筋再分極の延長をもたらす主な原因であり、hERGに対する化合物1の阻害濃度の半数(IC50)値は1.93 μMであった。比較化合物1と比較して、本発明の化合物1は、hERG阻害活性が更に低く、心臓の毒性や副作用が更に小さかった。
【0101】
検測例3 代謝研究
体外(ヒト肝臓ミクロソームのインキュベーション系)によって、実施例の化合物の代謝安定性及び活物質アロプレグナノロンの生成速度が判定された。
【0102】
実験材料及び試薬: ヒト肝臓ミクロソーム(Corning社、カタログ番号452117)、テストステロン(九鼎化学公司)、プロパフェノン(安普公司)、ジクロフェナク、トルブタミド、アセトニトリル、DMSOはSigma社から、NADPH(還元型補酵素II)はChem-Impex International社から入手、0.1 M pH7.4のPBS(リン酸塩緩衝液、自製)、他の試薬は何れも分析試薬であった。
【0103】
機器、条件及びパラメータ: 液体クロマトグラフィー-質量分析装置(LC/MS/MS、Shimadzu LC 30-AD、MS API 4000)、カラムはACQUITY UPLC BEH C18カラム(1.7μm 2.1×50 mm Column、Part No.186002350)、移動相はアセトニトリル-水-ギ酸(50:50:0.1)、流速0.7 mL/min、サンプリング注入量5 μL、カラム温度は室温であった。エレクトロスプレーイオン化源(ESI)、スプレー電圧4.8 KV、キャピラリー温度(TEM)300℃、シースガスN2、流速10 psi、アシストガスN2、流速1 psi、衝突ガス(CID)Ar、圧力1.5 mTorrであった。質量分析走査方法は陽イオン検出を使用する質量分析多重反応モニタリング(MRM)であった。内部標準は、トルブタミド(Tolbutamide)0.2 μg/mL含有のアセトニトリル溶液であり、最低定量下限5 ng/mL、相関係数>0.99であった。
【0104】
体外代謝研究方法: テストステロン、プロパフェノン又はジクロフェナクを参照検証検出系とし、アロプレグナノロン(化合物MI001)及び比較化合物1を参照として、ヒト肝臓ミクロソームインキュベーション系の体外試験によって、実施例の化合物の濃度低下速度及びMI001の生成速度を観察し、各実施例の化合物の体外代謝安定性及び肝臓ミクロソーム中のMI001濃度を維持する能力を評価した。
【0105】
各測定待ちのサンプルを約10 mg精密に秤量し、0.1 mLのDMSOで溶解し、純水で10 μM、1 μMの標準原液に段階的に希釈した。氷浴で操作し、表3に従って検出インキュベーション系を調製した。インキュベーション系(その組成は表4を参照)にNADPHを加えて反応を開始し、直ちに50 μLを取って150 μLのアセトニトリルに入れ、ゼロ時点のサンプル及び1 μM標準曲線サンプルとした。また、1 μM標準原液を取ってインキュベーション系に入れ、直ちに50 μLを取って150 μLのアセトニトリルに入れ、0.1 μM標準曲線サンプルとした。残った系を37℃の水浴に入れ、それぞれ5 min、15 min、30 min、1 h、2 hに50 μLを取って150 μLのアセトニトリルに入れた。各サンプルを振とうし、18000 gで10 min遠心分離し、上清を取ってLC/MS/MSによりサンプリング注入が測定された。一部の実施例の化合物の実験データ結果は下記の表5に示される。
【0106】
【0107】
【0108】
テストステロン、プロパフェノン又はジクロフェナクの代謝により、検出系が正常であることを実証し、比較化合物1及び実施例の化合物の結果は、ヒト肝臓ミクロソームにおける本発明の化合物の代謝安定性が良好であることを示し、肝臓ミクロソーム系における実施例の化合物から代謝されたアロプレグナノロンの濃度が安定化レベルに急速に到達できるが、比較化合物1が安定化レベルに到達できなかった。
【0109】
検測例4 薬物動態学特性の研究
1.SDラット薬物動態学特性の研究
この実験の目的は、SDラットにおける本発明の化合物の溶液、アロプレグナノロン溶液の単回経口投与を研究し、血漿中の活性成分であるアロプレグナノロンを検出し、且つSDラットにおける薬物代謝動態(PK)特性を評価することであった。
【0110】
実験材料: 雄SDラット(体重180~220 g、北京維通利華実験動物技術有限公司から購入し、製造許可番号:SCXK(京)2016~0006)、実験化合物(本発明の実施例の方法に従って製造)、精製水(自製)。
【0111】
実験方法: 雄SDラットをランダムに群分け(群に3匹ずつ)、試験期間は水を自由に摂取させ、投与前12 h以上絶食させ、投与後4 h後に給餌した。強制経口投与し、各SDラット群に、それぞれ20 mg/kg(アロプレグナノロンの量を基準として)の用量で実験化合物の5%のTween水溶液を投与した。
【0112】
投与前の0 min、投与後の5 min、15 min、30 min、1 h、2 h、3 h、4 h、6 h、8 h及び12 hに、血液サンプルをK2EDTA抗凝固管内にそれぞれ採取し、遠心分離を行うまで氷上で一時保存した。
【0113】
採血後の60 min以内に血漿を遠心分離し(2~8℃の条件で、8000 rpmで5 min遠心分離)、遠心分離後に血漿を96ウェルプレート又は遠心分離管に移し、氷ケースで輸送し、≦-15℃でLC-MS/MS検出まで保存した。LC-MS/MS生物学的分析方法により、SDラット血漿中の薬物濃度を測定し、非コンパートメントモデルを用いて、WinNonlinTM(Version8.3、Certara、USA)を用いて血中薬物濃度-時間データを分析し、SDラットにおける薬物代謝動態(PK)特性を評価し、データは表6に示され、薬物動態学曲線は
図1に示される。
【0114】
【0115】
2.ビーグル犬薬物動態学特性の研究
本発明者らは、異種肝臓ミクロソーム安定性実験により、異種肝臓ミクロソームにおける本発明の化合物の代謝が基本的に類似しており、ビーグル犬肝臓ミクロソームにおける代謝挙動がヒト肝臓ミクロソームにおける代謝挙動に最も近いことを見出した。この実験の目的は、ビーグル犬における本発明の化合物の各溶液の単回経口投与を研究し、血漿中の活性成分であるアロプレグナノロンを検出し、且つビーグル犬における薬物代謝動態(PK)特性を評価することであった。
【0116】
試験材料: 雄ビーグル犬(体重6~15 kg、北京維通利華実験動物技術有限公司から購入)、実験化合物(本発明の実施例の方法に従って製造)、精製水(自製)。
【0117】
実験方法: 雄ビーグル犬をランダムに群分け(群に3匹ずつ)、試験期間は水を自由に摂取させ、投与前12 h以上絶食させ、投与後4 h後に給餌した。強制経口投与し、各ビーグル犬群に、それぞれ10 mg/kg(アロプレグナノロンの量を基準として)の用量で実験化合物の5%のTween水溶液を投与した。
【0118】
投与前の0 min、投与後の5 min、15 min、30 min、1 h、2 h、3 h、4 h、6 h、8 h及び12 hに、血液サンプルをK2EDTA抗凝固管内にそれぞれ採取し、遠心分離を行うまで氷上で一時保存した。
【0119】
採血後の30 min以内に血漿を遠心分離し(2~8℃の条件で、3200 rpmで10 min遠心分離)、遠心分離後に血漿を96ウェルプレート又は遠心分離管に移し、氷ケースで輸送し、≦-60℃でLC-MS/MS検出まで保存した。LC-MS/MS生物学的分析方法により、ビーグル犬血漿中の薬物濃度を測定し、非コンパートメントモデルを用いて、WinNonlin(Version6.3又はその以降のバーション)を用いて血中薬物濃度-時間データを分析し、ビーグル犬における薬物代謝動態(PK)特性を評価し、データは表7に示され、薬物動態学曲線は
図2に示される。
【0120】
【0121】
上記結果は、本発明の化合物が薬物動態学特性を顕著に改善することができ、特に、本発明の化合物を投与した後、AUC及びCmaxが何れも極めて顕著に向上し、本発明の化合物は経口投与に適用でき、投与時間が長く、医療スタッフが常に注意を必要とするといったアロプレグナノロン静脈内投与製剤の欠陥を大幅に克服することができ、患者のコンプライアンス及び医療スタッフの投与の利便性を大幅に改善することができることを示した。
【0122】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の精神及び原則の範囲内でなされた何れの修正、同等置換、改良等も、本発明の請求範囲内に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【
図1】本発明の化合物を経口投与した雄ラット血漿中のアロプレグナノロンの薬物動態学曲線である。
【
図2】本発明の化合物を経口投与したビーグル犬血漿中のアロプレグナノロンの薬物動態学曲線である。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iに示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される塩であって、
【化1】
そのうち、
R
2、R
4は、それぞれ独立的にH又はD(重水素)から選ばれ、
R
1、R
3は、それぞれ独立的にCH
3、CH
2D、CHD
2又はCD
3から選ばれ、
式Iの化合物は、少なくとも1つの重水素原子を含む、
式Iに示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項2】
式Iに記載の化合物は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の重水素原子を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
2はDであり、
好ましくは、R
2はD、且つR
1及びR
3はCH
3であり、
好ましくは、R
2はD、且つR
1及びR
3はCD
3である、
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式Iに記載の化合物は、式Ia又は式Ibに示される化合物である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の化合物。
【化2】
【請求項5】
式Iに記載の化合物は、以下の構造から選ばれる、
ことを特徴とする請求項
1に記載の化合物。
【化3】
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の化合物の製造方法であって、
式IIの化合物と式IIIの化合物を反応させ、更に保護基を除去し、式Iの化合物を得るステップを含み、
【化4】
そのうち、R
1~R
4は請求項1~5の何れか一項に定義された通りであり、R
5は、例えばBocなどの保護基である、方法。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載の式Iに示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される塩のうちの少なくとも1種を含む、医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物は、結合剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、甘味剤又は矯味剤などの、1種又は複数種の薬学的に許容される補助剤を更に含み、
好ましくは、前記医薬組成物は経口投与のための、錠剤、丸剤、トローチ剤、糖衣剤、カプセル剤などであってもよい、
請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
中枢神経系障害の予防又は治療、鎮静催眠、アルツハイマー病の治療、てんかんの治療又はうつ病、特に産後うつ病の治療に用いられる薬物の製造における、請求項1~5の何れか一項に記載の式Iの化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、溶媒和物、結晶多形物又はそれらの薬学的に許容される
塩の用途。
【請求項10】
前記中枢神経系疾患は、外傷性脳損傷、本態性振戦、てんかん(難治性持続性てんかん、稀遺伝性てんかん(Dravet症候群及びRett症候群など)を含む)、うつ病(産後うつ病を含む)及びアルツハイマー病であり、前記中枢神経系疾患は、例えば本態性振戦、てんかん、臨床的うつ病、分娩後又は産後うつ病、非定型うつ病、精神病性重度うつ病、緊張性うつ病、季節性感情障害、気分変調、二重うつ病、うつ病性人格障害、再発性一過性うつ病、軽度うつ病性障害、双極性障害又は躁うつ病性障害、心的外傷後ストレス障害、慢性医学的状態に起因するうつ病、治療抵抗性うつ病、難治性うつ病、自殺傾向、自殺念慮又は自殺行動から選ばれる、
請求項9に記載の用途。
【国際調査報告】