IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アドファファーム ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特表-新規リポペプチド製剤 図1
  • 特表-新規リポペプチド製剤 図2
  • 特表-新規リポペプチド製剤 図3
  • 特表-新規リポペプチド製剤 図4
  • 特表-新規リポペプチド製剤 図5
  • 特表-新規リポペプチド製剤 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】新規リポペプチド製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/24 20060101AFI20240918BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240918BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240918BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240918BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240918BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/36
A61K9/10
A61K47/08
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/20
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/16
A61K47/42
A61K9/19
A61K9/127
A61P1/16
A61P31/20
A61P29/00
A61P3/00
A61K38/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539909
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2022075538
(87)【国際公開番号】W WO2023041588
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】LU500648
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524097104
【氏名又は名称】アドファファーム ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ ヘルムート
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA19
4C076AA29
4C076BB11
4C076CC04
4C076CC21
4C076CC35
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD41
4C076DD45
4C076DD48
4C076DD51
4C076DD52
4C076DD55
4C076DD59
4C076DD63
4C076DD67
4C076DD70
4C076EE30
4C076EE41
4C076FF63
4C076GG43
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA19
4C084MA21
4C084MA24
4C084MA44
4C084NA05
4C084ZA75
4C084ZB11
4C084ZB33
4C084ZC21
(57)【要約】
リポペプチドの新規な薬学的リポソーム製剤ならびにそれらの使用および調製が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、製剤を調製するための方法:
(i)ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、もしくは前述のいずれかの誘導体、または前述のいずれかの組合せからなる群より選択される、1つまたは複数のリン脂質と、
任意で、コレステロールまたはその誘導体と、
少なくとも1つの有機溶媒と
を含む有機相を提供する工程、
(ii)水性媒体と、
任意で、薬学的に許容される緩衝液と、
任意で、グリシン、アルギニン、プロリン、または増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストラン、または前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分からなる群より選択される増量剤と、
任意で、グリシン、アルギニン、プロリン、または増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストラン、または前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分からなる群より選択される増量剤ではない薬学的に許容される等張化剤と
を含む水相を提供する工程であって、
該水相のpHが3~9である、前記工程、
(iii)該有機相と該水相とを組み合わせる工程であって、該有機相と該水相との混合比が、10:1(v/v)~1:10(v/v)であり、これが、組み合わされた有機相および水相をもたらし、該少なくとも1つの有機溶媒と、該水相とが、単相混合物、好ましくは凍結可能なかつ昇華可能な単相混合物を形成する、前記工程、
(iv)リポペプチドを工程(i)の有機相に加え、次いで、リポペプチドを含む有機相を、工程(iii)に記載されるように水相と混合する工程、または
リポペプチドを工程(ii)の水相に加え、次いで、リポペプチドを含む水相を、工程(iii)に記載されるように有機相と混合する工程、または
リポペプチドを工程(iii)の組み合わされた相に加える工程
のいずれかであって、
これが、リポペプチド製剤をもたらし、そのようにして得られた該リポペプチド製剤が単相ナノ分散系である、前記工程。
【請求項2】
前記少なくとも1つの有機溶媒が、アニソール、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、ジメチルカーボネート、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピリデングリセロール、アルコール、好ましくは1-ブタノール、2-ブタノール、およびtert-ブタノールからなる群より選択されるアルコール、酢酸、乳酸エチル(エチル2-ヒドロキシプロパノエート)、アセトニトリル、または前述のいずれかの組合せからなる群より選択され、好ましくは、少なくとも1つの有機溶媒が、アルコール、好ましくはtert-ブタノール、アニソール(フェノキシメタン)、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、およびジメチルカーボネート、ならびにそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記前述のいずれかの誘導体が、DLPA、DMPA、DPPA、DSPA、POPA、POPA、DEPA、HSPA、HEPA、DLPC、DMPC、DPPC、DSPC、DOPC、POPC、DEPC、HSPC、HEPC、DLPE、DMPE、DPPE、DSPE、POPE、POPE、DEPE、HSPE、HEPE、DLPG、DMPG、DPPG、DSPG、POPG、POPG、DEPG、HSPG、HEPG、DLPI、DMPI、DPPI、DSPI、POPI、POPI、DEPI、HSPI、HEPI、DLPS、DMPS、DPPS、DSPS、POPS、POPS、DEPS、HSPS、HEPS、前述のいずれかのPEG化形態、および前述のいずれかの塩からなる群より選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶媒がtert-ブタノールである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記リポペプチドが、ブレビルチドまたはリラグルチドである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記リン脂質が、PCを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記水相のpHが5~7.5である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
単相ナノ分散系の滅菌濾過をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
工程(iv)から得られた製剤(単相ナノ分散系)を凍結乾燥させる工程(v)をさらに含み、これが凍結乾燥物をもたらす、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
工程(v)で得られた凍結乾燥物を水溶液と混合する再水和工程をさらに含み、これがリポソーム製剤をもたらす、請求項9記載の方法。
【請求項11】
再水和工程(再構成)から得られたリポソーム製剤のリポソームのD90が1μm~4.5μmである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
混合すること/再構成することに使用される水溶液が、NaClの量が8g/l~10g/l、好ましくは8.8g/l~9.2g/l、より好ましくは9g/lであるNaCl水溶液である、請求項10または請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項1~8記載のリポペプチド製剤の場合に単相ナノ分散系のミセルのD90が60nm以下である、または請求項10~12記載のリポソーム製剤の場合にリポペプチド製剤が薬学的製剤である、請求項1~8または10~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記請求項のいずれか一項記載の方法に従って調製された、薬学的製剤。
【請求項15】
(a)(a)~(e)の総重量に基づいて40%~97%の範囲内の、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、もしくは前述のいずれかの誘導体、またはそれらの混合物からなる群より選択されるリン脂質、
(b)(a)~(e)の総重量に基づいて3%~13%の範囲内のブレビルチド、または(a)~(e)の総重量に基づいて0.3%~2%の範囲内のリラグルチド、
(c)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~14%の範囲内のコレステロールまたはその誘導体、
(d)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~35%、好ましくは15%~35%の範囲内の、グリシン、アルギニン、プロリン、もしくは増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、またはスクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストラン、もしくは前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分、
(e)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~35%の範囲内の、(d)ではない等張化剤
を含む、単相ナノ分散系である製剤であって、
(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の合計が常に合計100%になり、(a)~(e)の組み合わされた量が、該製剤の総重量に基づいて10%~100%である、前記製剤。
【請求項16】
凍結乾燥製剤である、請求項15記載の製剤。
【請求項17】
請求項16記載の製剤を、好ましくは水溶液、より好ましくは生理食塩水または水と混合することまたはそれを用いて再構成することによって得られる薬学的リポソーム製剤である、製剤であって、
(a)(a)~(e)の総重量に基づいて40%~75%の範囲内の、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、もしくは前述のいずれかの誘導体、またはそれらの混合物からなる群より選択されるリン脂質、
(b)(a)~(e)の総重量に基づいて3%~13%の範囲内のブレビルチド、または(a)~(e)の総重量に基づいて0.3%~2%の範囲内のリラグルチド、
(c)(a)~(e)の総重量に基づいて4%~14%の範囲内のコレステロールまたはその誘導体、
(d)(a)~(e)の総重量に基づいて15%~35%の範囲内の、グリシン、アルギニン、プロリン、もしくは増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、またはスクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストラン、もしくはそれらの混合物からなる群より選択される糖成分、
(e)(a)~(e)の総重量に基づいて0.1%~10%の範囲内の、(d)ではない等張化剤
を含み、
(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の合計が合計100%になり、(a)~(e)の組み合わされた量が、溶媒および等張化剤をさらに含む該製剤の総重量に基づいて10%~50%である、前記製剤。
【請求項18】
容器内の請求項15または16記載の製剤と、第2の容器内の薬学的水溶液とを含む、キット。
【請求項19】
コレステロールの誘導体が、コレステリル硫酸、コレステリル硫酸の塩、コレステリルヘミスクシネート、コレステリルスクシナート、コレステリルオレアート、コレステロール-PEG、コプロスタノール、コレスタノール、コレスタン、コール酸、コルチゾール、コルチコステロン、ヒドロコルチゾン、およびカルシフェロールからなる群より選択される、請求項1~14のいずれか一項記載の方法、請求項15もしくは16記載の製剤、または請求項17記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
ブレビルチドは、慢性B型肝炎および慢性デルタ型肝炎(D型肝炎としても知られる)、ならびに潜在的に様々な炎症性疾患および代謝性疾患の治療のための新規な薬物候補である。ブレビルチドは、WO 2009/092612(特許文献1)に開示されている。ブレビルチドは、大きなHBV表面タンパク質(HBV=B型肝炎ウイルス)のN末端ドメインに由来する、線状の47アミノ酸の化学合成ペプチドである。この活性物質は、酢酸塩として入手可能である。その抗ウイルス作用様式は、肝細胞表面タンパク質NTCPの特異的結合および遮断に依存する。NTCPのブレビルチド媒介阻害は、細胞へのHBVおよびHDV(D型肝炎ウイルス)の侵入を防止する。
【0002】
B型肝炎ウイルスおよびデルタ型肝炎ウイルスは、HBV preS1表面タンパク質ドメインを有するNTCPへの結合を介して肝細胞に侵入することが近年発見された。preS1ドメインの模倣物として、ミルクルデックスBは、対応するNTCP結合部位を特異的に遮断し、それによって、肝細胞へのウイルスの侵入を阻害する。
【0003】
NTCPの遮断は、抗ウイルス薬の開発に関連するだけではない。脂質代謝、特に胆汁酸レベルの上昇に対するこの機構の効果は、様々な他の疾患の治療にとって肯定的な意味を有し得る。
【0004】
デルタ型肝炎は、ウイルス性肝炎の最も重篤な形態である。デルタ型肝炎は、ビリオンの集合および増殖のためにHBVからのヘルパー機能を必要とし、ウイルス放出、および新たな細胞の感染のためにHBVエンベロープを使用する小型RNAウイルスであるHDVによって引き起こされる。慢性的に感染したHBVの約5%がHDVに同時感染している。
【0005】
HDVの存在は、HBV感染単独よりも重篤かつ急速な肝疾患の進行に関連する。HBV/HDVの同時感染の過程では、肝硬変および代償不全がHBV単独感染よりも早くかつ頻繁に起こる。
【0006】
HBVに対して活性な抗ウイルス剤はHDVに対して作用しないため、HDV同時感染患者の治療選択肢は極めて限られている。
【0007】
HDV感染の治療のために、例えば、Hepcludex(登録商標)としても知られているブレビルチドは、2020年7月に、HDVに対する最初の特異的薬剤の1つとして条件付きで承認された。ブレビルチドは、白色またはオフホワイト色の吸湿性粉末として現れる。ブレビルチドは、水に実質的に不溶性であり、50%酢酸中1mg/mlおよびカーボネート緩衝液中約7mg/mlの濃度でそれぞれpH8.8で可溶性である。Hepcludex(登録商標)は、MYR PharmaceuticalsによるHepcludex(登録商標)2mgの説明書に従って、-20℃で、または2℃~8℃の温度で3ヶ月まで保存することができる粉末として入手可能である。Hepcludex(登録商標)は、使用時に、注射用水によって再構成され、続いて、治療の過程のために1日1回必要とされる皮下注射が行われる。
【0008】
非経口投与のために難溶性化合物を可溶化する様々な方法がある。典型的な手法は、pHの最適化、または共溶媒15(例えば、PEG300、PEG400、プロピレングリコールまたはエタノール)の使用である。これらの手法が何らかの理由のために実行不可能である場合、界面活性剤の使用が考慮され得る(例えば、Tween(登録商標)80またはCremophor EL(登録商標))。しかし、これらのタイプの界面活性剤は、有害作用に関連することが多い。
【0009】
シクロデキストリンは、安全な可溶化剤として確立されているが、あらゆる化合物に有効な可溶化剤ではないため制限がある。また、20種の天然油(例えば、プロポフォール)に高い溶解度を有する化合物は、非経口脂肪エマルジョンに可溶化され得る。
【0010】
難溶性化合物を可溶化する別の可能性には、リン脂質の使用がある(van Hoogevest P.,Xiangli L.,and Alfred F.“Drug delivery strategies for poorly water-soluble drugs:the industrial perspective”Expert Opinion an Drug Delivery 2011,8(11),1481-1500(非特許文献1))。しかし、リン脂質による特定の難溶性化合物の可溶化は予測することができず、通常、リポソームのサイズは、リポソームが医薬品に使用するのに好適であるように採用されなければならない。
【0011】
US 8,591,942(特許文献2)およびUS 9,655,846(特許文献3)は、ドセタキセルを含有するリポソームを調製する方法を開示した。US 8,591,942(特許文献2)では、該方法は、大豆ホスファチジルコリンおよびオレイン酸ナトリウムを水性媒体中に分散させて、分散リポソームを生成する工程を含む。
【0012】
US 2008/0166403(特許文献4)は、ビタミンE誘導体(D-アルファトコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート、TPGS)を含有するリン脂質二重層と親水性コアとを含む長期循環リポソームを開示した。
【0013】
通常、リポソームは、脂質を有機溶媒に溶解し、凍結乾燥させ、続いて、水和することによって調製される(これにより、通常、それらの大きなサイズおよび低いカプセル化体積のためにほとんどの用途に好適でない多層リポソームがもたらされる。押出または複合均質化などの追加の工程を使用することによって、大きなリポソームのサイズを縮小しなければならない。ただし、これらのプロセスのカプセル化効率は、通常、70%未満である。50%は高いと考えられ、一般に、得ることができるのは20%~30%のカプセル化効率である(Dan Lasic,TibTech July 1998,Vol.16,pages 307 to 321(非特許文献2))。
【0014】
場合によっては、約90%のカプセル化効率が観察されたが、これらの観察結果は、5~50μmの直径を典型的に有するMLV(多層小胞)カプセル化に関し、高く、かつ望ましくない脂質対薬物比をもたらす(Liposome-Based Depot Injection Technologies Nandini V.Katre Am J Drug Deliv 2004;2(4):213-227 1175-9038/04/0004-0213/$31.00/0(非特許文献3))。
【0015】
WO 2014/167435(特許文献5)は、活性成分としての抗癌剤、D-a-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(TPGS)の機能的コーティングによって取り囲まれたリポソームを含み、抗癌剤がリポソーム内に封入されており、さらに該製剤が>70%のカプセル化効率を有する表面官能化リポソーム製剤を開示した。
【0016】
Muthu et al;Biomaterials.2012 Apr;33(12):3494-501(非特許文献4)は、溶媒注入法によって調製された、ドセタキセルの脳送達のためのTPGSコーティングリポソームを開示した。報告された製剤は、約64.10±0.57%のカプセル化効率をもたらし、これは本発明(カプセル化効率約95%)よりも顕著に低かった。
【0017】
WO 2010/078045 A2(特許文献6)は、水の実質的に連続的に流れる流れと、リポソームを形成することができる有機溶媒含有脂質の実質的に連続的に流れる流れとを実質的に連続的に混合し、リポソームが生じるように混合物を冷却することによって、制約された粒径のリポソームを調製する方法を開示しており、水の流れの流速と有機溶媒の流れの流速との比、および該混合物の冷却速度は、リポソームの少なくとも約90%が約200nm未満の粒径であるようにリポソームの調製物を得るように制御される。
【0018】
CN 110339166 A(特許文献7)は、リラグルチド多小胞リポソームならびにその調製方法および用途に関する。より具体的には、該リラグルチド多小胞リポソームは、リラグルチド、メンブレン材料、浸透圧調節剤および安定剤を含む。
【0019】
Zhang et al.(Drug Delivery 23(9):3358-3363,2016)(非特許文献5)は、2段階水中油中水型二重乳化プロセスを使用することによる、糖尿病を治療するための皮下リラグルチド配合多小胞リポソームを開示している。
【0020】
CN 102688192 A(特許文献8)は、ホスファチド、ゴマ油、グリセリン、リラグルチド、塩およびエタノールから主に構成される、糖尿病を治療するためのポリペプチド薬の調製物、およびその生成方法を開示している。
【0021】
Uhl et al.(European Journal of Pharmaceutics and biopharmaceutics,103:159-166,2016)(非特許文献6)は、治験中のB型肝炎ペプチド薬ミルクルデックスBの経口投与のための、特定のテトラエーテル脂質を含有するリポソーム製剤を開示している。
【0022】
驚くべきことに、ブレビルチドまたはリラグルチドなどのリポペプチドの製剤は、本発明による単純な調製方法を使用することによって、高いカプセル化効率で調製され得ることが観察された。本発明による調製方法は、驚くほど高い配合量のリポペプチド、例えば、ブレビルチドだけでなく、凍結乾燥させることができる単相ナノ分散系ももたらす。そのような凍結乾燥単相ナノ分散系の再水和は、皮下注射に適したリポソームサイズと、好ましいリポソーム/薬物比とを有するリポソーム製剤をもたらす。
【0023】
特に、驚くべきことに、単相ナノ分散系が、有機相と水相とを組み合わせることによって本発明の方法を使用して容易に調製され得、有機相が、1つまたは複数のリン脂質と、1つまたは複数の有機溶媒とを含み、1つまたは複数の有機溶媒が、水相と、凍結可能なかつ昇華可能な単相混合物を形成することが見出された。該単相ナノ分散混合物は、小胞のサイズを縮小するための高剪断ミキサー、高圧ホモジナイザーまたは超音波のような機械的手段を必要とせずに、有機相を水相と単に混合することによって(自発的に)生じる。該単相ナノ分散系は、前に列挙した現在の手法では通常必要とされるいかなる機械的サイズ縮小工程も伴わず、滅菌濾過され、凍結乾燥され得るミセルを含む。これは、そのような凍結乾燥単相ナノ分散系が安定であることが見出され、したがって、特別な温度要件および/または時間制約を伴わず保存および/または出荷され得ることから、特に有利である。
【0024】
また、ブレビルチドのようなリポペプチドは、本発明に従って調製されたそのような単相ナノ分散系では、特に凍結乾燥形態で良好に保存され得るが、該リポペプチドは、ブレビルチドの場合のように溶液中で安定ではない可能性がある。投与に必要な場合、単相ナノ分散系の凍結乾燥調製物は、例えば、凍結乾燥薬物の再構成に典型的に使用されるように、水溶液を加えることによって容易に再構成され得る。好ましくは生理食塩水または緩衝液などの塩含有水溶液を用いて、本発明による単相ナノ分散系を再構成することによって、リポソームがインサイチューで調製される。特に、例えば、凍結乾燥前に0.22μmの公称孔径を有する薬学的に承認されたフィルターを使用して滅菌濾過されるリポソームの直接調製および機械的サイズ縮小に基づく現在の手法と比較して、本発明の方法を使用して、より大きな多層リポソームを調製することができる。本発明に従って1μm~4.5μmのD90を有する多層リポソームをインサイチューで生成することができることから、該リポソームは、カプセル化された薬物の長期放出を可能にするデポーを形成する皮下注射に有利に使用され得るほか、該リポソームに、現在の方法を使用して生成されたリポソームと比較して、ブレビルチドのようなより多くのリポペプチドを配合することもできる。注目すべきことに、この段落に関して、同じことが本発明によるそれぞれの製剤に当てはまる。
【0025】
本発明による薬学的リポソーム製剤は、ブレビルチドのようなリポペプチドの投与に関して特に有利である。溶液中のブレビルチドのようなリポペプチドの皮下注射と比較して、本発明の薬学的多層リポソーム製剤を使用した投与は、リポペプチドの皮下デポーからの放出がより遅いため、バイオアベイラビリティーが延長される。その結果、本発明による薬学的リポソーム製剤は、例えば、毎日ではなく週に1回必要とされ得る。したがって、好ましくはブレビルチドを含む、本発明による薬学的リポソーム製剤は、患者の生活の質を顕著に向上させる可能性を有する。
【0026】
したがって、本発明は、有機相と水相とを組み合わせ、リポペプチドを加えることによるナノスケール系の調製に基づく、リポペプチド含有製剤の容易かつ高効率な調製方法に関する。該ナノスケール系は、熱力学的に安定であり、医薬品製造の標準的な手順に従って容易に調合され、滅菌濾過され、充填され、凍結乾燥され得る。凍結乾燥調製物は、高い安定性および貯蔵寿命を特徴とし、非経口投与、特に皮下注射の準備ができたリポペプチド含有リポソームを生成するために、例えば、注射用水または生理食塩水を加えることによってインサイチューで容易に再構成され得る。
【0027】
本発明の実際の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。本発明の態様は、従属請求項の主題であり、本明細書および図面を通して開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】WO 2009/092612
【特許文献2】US 8,591,942
【特許文献3】US 9,655,846
【特許文献4】US 2008/0166403
【特許文献5】WO 2014/167435
【特許文献6】WO 2010/078045 A2
【特許文献7】CN 110339166 A
【特許文献8】CN 102688192 A
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】van Hoogevest P.,Xiangli L.,and Alfred F.“Drug delivery strategies for poorly water-soluble drugs:the industrial perspective”Expert Opinion an Drug Delivery 2011,8(11),1481-1500
【非特許文献2】Dan Lasic,TibTech July 1998,Vol.16,pages 307 to 321
【非特許文献3】Liposome-Based Depot Injection Technologies Nandini V.Katre Am J Drug Deliv 2004;2(4):213-227
【非特許文献4】Muthu et al;Biomaterials.2012 Apr;33(12):3494-501
【非特許文献5】Zhang et al.(Drug Delivery 23(9):3358-3363,2016)
【非特許文献6】Uhl et al.(European Journal of Pharmaceutics and biopharmaceutics,103:159-166,2016)
【発明の概要】
【0030】
概要
第1の局面(局面1)は、
(a)(a)~(e)の総重量に基づいて40%~99.7%、好ましくは40%~97%、より好ましくは40%~75%の範囲内の、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、もしくは前述のいずれかの誘導体、またはそれらの混合物からなる群より選択される、1つまたは複数のリン脂質、
(b)(a)~(e)の総重量に基づいて0.3%~20%の範囲内のリポペプチド、好ましくはブレビルチドまたはリラグルチド、
(c)(a)~(e)の総重量に基づいて好ましくは0%~14%、好ましくは4%~14%の範囲内のコレステロールまたはその誘導体、
(d)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~35%、好ましくは15%~35%の範囲内の、増量剤、好ましくはグリシン、アルギニン、プロリン、もしくは増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、またはスクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、キシリトール、キシロース、デキストランもしくはそれらの混合物からなる群より選択される糖成分、
(e)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~35%の範囲内、好ましくは0.1%~10%の範囲内の、(d)ではない等張化剤
を含む、単相ナノ分散系である製剤であって、
(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の合計が常に合計100%になり、(a)~(e)の組み合わされた量が、製剤の総重量に基づいて10%~100%である製剤に関する。したがって、局面1による製剤は、リポペプチドが配合されたミセルを含む単相ナノ分散系に関する。該リポペプチドは、好ましくは、ブレビルチドまたはリラグルチドであり、好ましくは、ブレビルチドは、(a)~(e)の総重量に基づいて3%~13%の範囲内にあるか、またはリラグルチドは、(a)~(e)の総重量に基づいて0.3%~2%の範囲内にある。
【0031】
好ましい態様1は、製剤が凍結乾燥製剤である、局面1の製剤に関する。これは、好ましい態様1による凍結乾燥製剤が安定であり、したがって、特定の温度要件および/または時間制約を伴わず保存および/または出荷され得ることから、有利である。
【0032】
さらに好ましい態様2は、ブレビルチドの量が12mg~24mgである、好ましい態様1による凍結乾燥製剤に関する。
【0033】
さらに好ましい態様2は、リラグルチドの量が0.6mg~1.8mgである、好ましい態様1による凍結乾燥製剤に関する。
【0034】
さらなる局面は、本明細書において前述される局面1、好ましい態様1、および/または2つのさらに好ましい態様2のいずれかの製剤を混合すること/再構成することによって得られる薬学的リポソーム製剤である、製剤であって、
(a)(a)~(e)の総重量に基づいて40%~99.7%、好ましくは40%~97%、より好ましくは40%~75%の範囲内の、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、もしくは前述のいずれかの誘導体、またはそれらの混合物からなる群より選択される、1つまたは複数のリン脂質、
(b)(a)~(e)の総重量に基づいて0.3%~20%の範囲内のリポペプチド、好ましくはブレビルチドまたはリラグルチド、
(c)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~14%の範囲内、好ましくは4%~14%の範囲内のコレステロールまたはその誘導体、
(d)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~35%、好ましくは15%~35%の範囲内の、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストランまたはそれらの混合物からなる群より選択される糖成分、
(e)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~35%の範囲内、好ましくは0.1%~10%の範囲内の、(d)ではない等張化剤
を含み、
(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の合計が、合計100%になり、(a)~(e)の組み合わされた量が、溶媒、好ましくは水をさらに含む製剤の総重量に基づいて10%~50%である製剤に関する。好ましくは、該さらなる局面による薬学的リポソーム製剤は、本明細書において前述される局面1、好ましい態様1、および/または2つのさらに好ましい態様2のいずれかの製剤を、水溶液、好ましくは生理食塩水または緩衝液(生理学的に許容される溶液)などの塩含有水溶液と混合することまたはそれを用いて再構成することによって得られる。リポペプチドに関して、該リポペプチドは、好ましくは、ブレビルチドまたはリラグルチドであり、好ましくは、ブレビルチドは、(a)~(e)の総重量に基づいて3%~13%の範囲内にあるか、またはリラグルチドは、(a)~(e)の総重量に基づいて0.3%~2%の範囲内にある。
【0035】
さらに好ましい態様4は、等張化剤がNaClである、さらなる局面によるリポソーム薬学的組成物に関する。
【0036】
さらに好ましい態様5は、緩衝液系をさらに含む、さらなる局面および/または好ましい態様4によるリポソーム薬学的製剤に関する。
【0037】
さらに好ましい態様6は、リポソーム薬学的製剤のpHが、5~8、好ましくは5~7.6、より好ましい一態様では6~7.6(例えば、わずかに酸性から中性のいずれか、例えば、6.5~7、または7.2~7.6、例えば、7.3~7.5)である、さらなる局面および/または好ましい態様4~5のいずれか1つによるリポソーム薬学的製剤に関する。
【0038】
さらに好ましい態様7は、(a)が、PC、またはPCと、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびホスファチジン酸(PA)からなる群より選択される1つもしくは複数のリン脂質との混合物、好ましくはPCである、局面1、さらなる局面、および/または好ましい態様1および6のいずれか1つによる製剤に関する。
【0039】
さらに好ましい態様8は、(e)がトレハロースである、局面1、さらなる局面、および/または好ましい態様1~7のいずれか1つによる製剤に関する。
【0040】
さらに好ましい態様9は、(a)がPCであり、(a)が、製剤中の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の総和と比較して50%~70%であり、(b)が、製剤中の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の総和と比較して5%~11%であり、(d)が、製剤中の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の総和と比較して6%~12%であり、(e)がトレハロースであり、(e)が、製剤中の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の総和と比較して20%~30%であり、(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の合計が、合計100%になる、局面1、さらなる局面、および/または好ましい態様1~8のいずれか1つによる製剤に関する。
【0041】
さらに好ましい態様10は、医薬品として使用するための、さらなる局面および/または好ましい態様4~9のいずれかによる薬学的組成物に関する。
【0042】
さらに好ましい態様11は、該使用が、慢性B型肝炎および/または慢性D型肝炎の治療におけるものである、好ましい態様10による使用のための薬学的組成物に関する。これは、ブレビルチドのようなリポペプチドの投与頻度を溶液中のそれぞれのリポペプチドの投与と比較して減少させることができ、したがって、患者の生活の質を向上させることができるという利点を有する。
【0043】
さらに好ましい態様11は、該使用が、炎症性、好ましくは炎症性疾患の治療におけるものである、好ましい態様10による使用のための薬学的組成物に関する。
【0044】
さらに好ましい態様は、
(a)(a)~(e)の総重量に基づいて40%~70%の範囲内の、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、もしくは前述のいずれかの誘導体、またはそれらの混合物からなる群より選択される、1つまたは複数のリン脂質、
(b)(a)~(e)の総重量に基づいて0.3%~20%の範囲内のリポペプチド、好ましくはブレビルチドまたはリラグルチド、
(c)(a)~(e)の総重量に基づいて4%~14%の範囲内のコレステロールまたはその誘導体、
(d)(a)~(e)の総重量に基づいて15%~35%の範囲内の、増量剤、好ましくはグリシン、アルギニン、プロリン、もしくは増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、またはスクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、キシリトール、キシロース、デキストランもしくはそれらの混合物からなる群より選択される糖成分、
(e)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~35%の範囲内の、(d)ではない等張化剤
を含み、
(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の合計が、合計100%になる、局面1、さらなる局面、および/またはその好ましい態様1~10のいずれかによる製剤に関する。
【0045】
好ましい一態様では、製剤が、製剤の総重量に基づいて0.01%~2%の範囲内のtert-ブタノールをさらに含む、局面1、またはその好ましい態様1もしくは2のいずれかによる製剤。
【0046】
さらに別の好ましい態様では、製剤が、製剤の総重量に基づいて0.01%~2%の範囲内のtert-ブタノールをさらに含み、(a)~(e)の組み合わされた量が、製剤の総重量に基づいて98%~99.99%である、局面1、またはその好ましい態様1もしくは2のいずれかによる製剤。
【0047】
さらなる局面2は、慢性B型肝炎および/もしくは慢性D型肝炎または炎症性を治療するための医薬品の調製のための、好ましくは慢性B型肝炎および/もしくは慢性D型肝炎または炎症性疾患を治療するための医薬品の調製のための、局面1、または好ましい態様1もしくは2のいずれか1つによる製剤の使用に関する。
【0048】
さらなる局面3は、局面1、または好ましい態様1もしくは2のいずれか1つによる製剤を含み、薬学的水溶液を分離するキットに関する。例えば、容器内の局面1または好ましい態様1もしくは2のいずれか1つによる製剤と、第2の容器内の薬学的水溶液とを含む、キット。任意で、2つの容器の2つの成分を混合して、好ましくは使用準備済の薬学的リポソーム製剤を受け取るための説明書をさらに含む。したがって、局面3は、好ましくは、リポペプチドが配合された凍結乾燥単相ナノ分散系と、凍結乾燥単相ナノ分散系を再構成するために使用され、したがって、その後の使用のために、好ましくはその後の皮下注射のために、該リポペプチドが配合されたリポソームを調製することができる薬学的水溶液とを含む、キットに関する。
【0049】
さらなる局面4は、
(i)ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、もしくは前述のいずれかの誘導体、または前述のいずれかの組合せからなる群より選択される、1つまたは複数のリン脂質と、
任意で、コレステロール、またはコレステロールの誘導体と、
少なくとも1つの有機溶媒と
を含む有機相を提供する工程、
(ii)水性媒体と、
任意で、グリシン、アルギニン、プロリン、または増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、キシリトール、キシロース、デキストラン、または前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分からなる群より選択される増量剤と、
任意で、薬学的に許容される緩衝液と、
任意で、グリシン、アルギニン、プロリン、または増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストラン、または前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分からなる群より選択される増量剤ではない薬学的に許容される等張化剤と
を含む水相を提供する工程であって、
水相のpHが、3~9、例えば、5.5~7、例えば、5.8~6.7である(例えば、酢酸ナトリウム緩衝液を使用することによって)、工程、
(iii)有機相と水相とを組み合わせる工程であって、有機相と水相との混合比が、10:1(v/v)~1:10(v/v)、好ましくは2:1(v/v)~1:4(v/v)、より好ましくは1.5:1(v/v)~1:4(v/v)、例えば、1:1(v/v)~1:3(v/v)、約1±0.5:1±0.5(v/v)、約1±0.5:2±0.5(v/v)、または約1±0.5:3±0.5(v/v)、例えば、1:1(v/v)、1:2(v/v)または1:3(v/v)であり、これが、組み合わされた有機相および水相をもたらし、該少なくとも1つの有機溶媒と、水相とが、単相混合物、好ましくは凍結可能なかつ昇華可能な単相混合物を形成する、工程、
(iv)リポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、工程(i)の有機相に加え、次いで、リポペプチドを含む有機相を、工程(iii)に記載されるように水相と混合する工程、またはリポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、工程(ii)の水相に加え、次いで、リポペプチドを含む水相を、工程(iii)に記載されるように有機相と混合する工程、またはリポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、工程(iii)の組み合わされた相に、好ましくは工程(iii)の組み合わされた相に加える工程のいずれかであって、これが、リポペプチド製剤をもたらし、そのようにして得られた該リポペプチド製剤が単相ナノ分散系である、工程
を含む、製剤を調製するための方法に関する。
【0050】
したがって、単相混合物は、水相と、有機相に含まれる少なくとも1つの有機溶媒とを組み合わせることによって形成され、該単相混合物は、好ましくは凍結可能なかつ昇華可能であることが想定される。これは、有機相が凍結乾燥によって製剤から実質的に除去され得るという利点を有する。本明細書において、用語「凍結可能」は、0℃~-60℃の範囲内の温度未満で固体マトリックスを形成する混合物の物理化学的特性を指す。特に、0℃~-60℃の範囲内の温度で、工程(iii)で調製された単相混合物が固体マトリックスを実質的に形成していることが好ましい。さらに、用語「昇華可能」は、1Pa~100Paの範囲内の圧力、および0℃~-60℃の範囲内の温度で、いかなる中間液体状態も伴わずに、固体状態から気体状態に移行する混合物の物理化学的特性として理解されることを意図している。
【0051】
したがって、好ましい単相混合物は、水相、好ましくは水と、少なくとも1つの有機溶媒を含む有機相とを組み合わせることによって得ることができ、該少なくとも1つの有機溶媒は、好ましくは、アニソール、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、ジメチルカーボネート、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピリデングリセロール、アルコール、好ましくは1-ブタノール、2-ブタノール、およびtert-ブタノールからなる群より選択されるアルコール、酢酸、乳酸エチル(エチル2-ヒドロキシプロパノエート)、アセトニトリル、ならびに前述のいずれかの組合せからなる群より選択される。
【0052】
代替的に、または任意で、少なくとも1つの有機溶媒は、アニソール、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、ジメチルカーボネート、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピリデングリセロール、1-ブタノール、2-ブタノール、およびtert-ブタノール、ならびに前述のいずれかの組合せからなる群より選択されてもよい。
【0053】
代替的に、または任意で、少なくとも1つの有機溶媒が、アルコール、好ましくはtert-ブタノール、アニソール(フェノキシメタン)、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、およびジメチルカーボネート、ならびにそれらの組合せからなる群より選択されることが特に好ましい。好ましくは、少なくとも1つの有機溶媒は、tert-ブタノールを含むか、またはtert-ブタノールである。
【0054】
代替的に、または任意で、少なくとも1つの有機溶媒は、酢酸、乳酸エチル(エチル2-ヒドロキシプロパノエート)およびアセトニトリルからなる群より選択されてもよい。
【0055】
有機溶媒の列挙された例は、限定ではなく例示のために与えられていることを理解されたい。特に、当業者であれば、好適な有機溶媒、したがって、水のような水溶液との好ましくは凍結可能なかつ昇華可能な単相混合物を形成することができる有機溶媒を同定する方法を知っている。
【0056】
驚くべきことに、本発明の方法に従って単相混合物を調製することは、有機相に含まれる1つまたは複数のリン脂質が、滅菌濾過され得る単相ナノ分散系を構築するという有利な効果を有することが見出された。
【0057】
好ましい一態様では、局面4による方法は、
(i)ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、もしくは前述のいずれかの誘導体、または前述のいずれかの組合せからなる群より選択される、1つまたは複数のリン脂質と、
任意で、コレステロール、またはコレステロールの誘導体と、
アニソール、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、ジメチルカーボネート、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピリデングリセロール、アルコール、好ましくは1-ブタノール、2-ブタノール、およびtert-ブタノールからなる群より選択されるアルコール、酢酸、乳酸エチル(エチル2-ヒドロキシプロパノエート)、アセトニトリル、または前述のいずれかの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの有機溶媒と
を含む有機相を提供する工程であって、
好ましくは少なくとも1つの有機溶媒が、アルコール、好ましくはtert-ブタノール、アニソール(フェノキシメタン)、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、およびジメチルカーボネート、ならびにそれらの組合せからなる群より選択される、工程、
(ii)水性媒体と、
任意で、薬学的に許容される緩衝液と、
任意で、グリシン、アルギニン、プロリン、または増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、キシリトール、キシロース、デキストラン、または前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分からなる群より選択される増量剤と、
任意で、グリシン、アルギニン、プロリン、または増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストラン、または前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分からなる群より選択される増量剤ではない薬学的に許容される等張化剤と
を含む水相を提供する工程であって、
水相のpHが、3~9、例えば、5.5~7、例えば、5.8~6.7である(例えば、酢酸ナトリウム緩衝液を使用することによって)、工程、
(iii)有機相と水相とを組み合わせる工程であって、有機相と水相との混合比が、10:1(v/v)~1:10(v/v)、より好ましくは2:1(v/v)~1:4(v/v)、さらにより好ましくは1.5:1(v/v)~1:4(v/v)、例えば、1:1(v/v)~1:3(v/v)、約1±0.5:1±0.5(v/v)、約1±0.5:2±0.5(v/v)、または約1±0.5:3±0.5(v/v)、例えば、1:1(v/v)、1:2(v/v)または1:3(v/v)であり、これが、組み合わされた有機相および水相をもたらし、該少なくとも1つの有機溶媒と、水相とが、単相混合物、好ましくは凍結可能なかつ昇華可能な単相混合物を形成する、工程、
(iv)リポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、工程(i)の有機相に加え、次いで、リポペプチドを含む有機相を、工程(iii)に記載されるように水相と混合する工程、またはリポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、工程(ii)の水相に加え、次いで、リポペプチドを含む水相を、工程(iii)に記載されるように有機相と混合する工程、またはリポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、工程(iii)の組み合わされた相に、好ましくは工程(iii)の組み合わされた相に加える工程のいずれかであって、これが、リポペプチド製剤をもたらし、そのようにして得られた該リポペプチド製剤が単相ナノ分散系である、工程を含む。
【0058】
局面4の好ましい一態様1、および上記の好ましい態様は、有機溶媒がtert-ブタノールである方法に関する。
【0059】
局面4の好ましい一態様2、およびその好ましい態様は、リポペプチドがブレビルチドまたはリラグルチドである方法に関する。
【0060】
局面4の好ましい一態様3、およびその好ましい態様は、リン脂質がPCを含む方法に関する。
【0061】
局面4の好ましい一態様4、およびその好ましい態様は、水相のpHが5~6である方法に関する。
【0062】
局面4の好ましい一態様5、およびその好ましい態様は、工程(iv)から得られた製剤(単相ナノ分散系)を凍結乾燥させる工程(v)をさらに含み、これが、凍結乾燥物をもたらす方法に関する。該工程(v)は、単に明確化するために「工程(v)」と呼ばれる、好ましいが純粋に任意の工程であることを理解されたい。
【0063】
局面4の好ましい一態様6、および好ましい態様5は、工程(v)で得られた凍結乾燥物を水溶液によって再水和させる工程をさらに含み、これが、リポソーム製剤をもたらす方法に関する。したがって、特に、該好ましい態様6は、工程(v)で得られた凍結乾燥物を水溶液と混合し、リポソーム製剤をもたらす再水和工程に関する。該リポソーム製剤は、再構成されたリポソーム製剤である。本明細書において、用語「再構成」は、凍結乾燥物を水溶液、好ましくは生理食塩水または水、より好ましくは生理食塩水と混合することによる、凍結乾燥製剤(単相ナノ分散系)の再水和を指す。
【0064】
局面4の好ましい一態様7、および好ましい態様6は、再水和工程(再構成)から得られたリポソーム製剤のリポソームのD90が、1μm~4.5μm、好ましくは2.5μm未満、より好ましくは0.025μm~2.5μm、さらにより好ましくは0.1μm~2μmである方法に関する。したがって、リポソーム製剤は、凍結乾燥単相ナノ分散系を、水溶液、好ましくは生理食塩水または水、より好ましくは生理食塩水と混合することまたはそれを用いて再構成することによって調製され得る。
【0065】
水溶液が、少なくとも95%の水を含む、局面4の好ましい一態様8、ならびにその好ましい態様6および7。
【0066】
局面4の好ましい一態様9、およびその好ましい態様6~8は、混合/再構成に使用される水溶液が、NaClの量が8g/l~10g/l、好ましくは8.8g/l~9.2g/l、より好ましくは9g/lであるNaCl水溶液である方法に関する。
【0067】
局面4の好ましい一態様10は、リポペプチド製剤またはリポソーム製剤が薬学的製剤である、局面4およびその好ましい態様2~4または好ましい態様6~9による方法に関する。
【0068】
局面4の好ましい一態様11は、D90が60nm未満、好ましくは25nm未満、より好ましくは20nm以下、さらにより好ましくは3nm~20nmである、局面4およびその好ましい態様2~4または10による方法に関する。より好ましい一態様では、D90は10nm~20nmであり、別のより好ましい態様では、D90は3nm~5nmである。
【0069】
別の局面5は、局面4、および本明細書において開示されるその好ましい態様による方法に従って調製された製剤に関する。
【0070】
局面5の好ましい一態様では、製剤は薬学的製剤である。
【0071】
定義
別途記載されていない限り、%単位の量は、%(重量/重量)((w/w))を指す。
【0072】
別途明確に述べられていない場合(例えば、「1つ」を意味する「特定の」などの用語を使用することによって)、用語「a」は、用語「a」に続く「1つ」および「1つまたは複数」/「1つよりも多い」名詞を包含する不定冠詞である。
【0073】
本明細書において使用される「緩衝液」または「緩衝液系」は、溶液のpHの変化を防ぐために使用され、好適な例は当業者に周知である。
【0074】
本明細書において使用される「増量剤」は、その名称が暗示するように、凍結乾燥生成物のバルクを形成し、凍結乾燥ケーキに適切な構造を提供する。バルク剤の非限定的な例には、マンニトール、グリシン、アルギニン、プロリン、グルコース、スクロース、ラクトース、トレハロースおよびデキストランがある。
【0075】
用語「コレステロール」は、3β-ヒドロキシ-5-コレステン(CAS番号:57-88-5)を指す。コレステロールの誘導体の例には、コレステリル硫酸およびその塩(例えば、ナトリウム塩)、コレステリルヘミスクシネート、コレステリルスクシナート、コレステリルオレアート、コレステロールのポリエチレングリコール誘導体(コレステロール-PEG)、コプロスタノール、コレスタノール、コレスタン、コール酸、コルチゾール、コルチコステロン、ヒドロコルチゾン、ならびにカルシフェロールがある。したがって、コレステロールの誘導体は、好ましくは、コレステリル硫酸、コレステリル硫酸の塩、コレステリルヘミスクシネート、コレステリルスクシナート、コレステリルオレアート、コレステロール-PEG、コプロスタノール、コレスタノール、コレスタン、コール酸、コルチゾール、コルチコステロン、ヒドロコルチゾン、およびカルシフェロールからなる群より選択される。
【0076】
本明細書において使用される用語「容器」は、非経口投与用の組成物を収容するのに適した、ゴム栓およびキャップを備えたアンプルまたはバイアル、単室または二重室シリンジ、ポリマー材料またはガラス製の注入バッグまたはボトルを意味する。これはまた、液体を保持するための任意の器物を含む。
【0077】
用語「D90」は、当業者に周知であり、サイズ分布に関して、製剤中のそのような粒子を形成する成分の重量の90%の重量を有する、所与の値以下の直径を有する小胞の量を指す。D90は、多角度光散乱(MALS)によって決定され得る。
【0078】
用語「X%~Y%の範囲内」(XおよびYは0~100の任意の数を表し、X%はY%よりも小さい)は、X%およびY%を含む、X%~Y%の範囲内の任意の数を指す。
【0079】
本明細書において使用される「ナノ分散系」は、60nm以下のD90を有する小胞を含む水性製剤を指し、小胞はリポソームではない。より具体的には、小胞を含む該水性製剤の凍結乾燥物を再構成すること/混合することによってリポソームを生成することができることから、該小胞はリポソームの前駆体と見なすことができ、好ましくは、再構成は、生理食塩水または水を使用し、より好ましくは生理食塩水を使用する。該小胞は、本明細書において、単相ナノ分散系に関連してミセルとも呼ばれる。ここで、本発明者らは、本発明による単相ナノ分散系が液晶特性を有し、リオトロピック液晶の場合、ミセルに類似したナノスケール自己集合構造を(自発的に)形成することを見出したことに留意されたい(この文脈では、最後に2022年9月12日に編集された、リオトロピック液晶に関するEnglish Wikipediaエントリーも参照)。本明細書において、用語「ナノ分散系(nano-disperse system)」および「ナノ分散系(nano-dispersed system)」は、本明細書において区別なく使用される。さらに本明細書において、ナノ分散系は単相ナノ分散系である。
【0080】
脂質鎖がペプチドに共有結合している、ペプチドとしての「リポペプチド」。ペプチドのそのような修飾は、特にペプチドが50個未満のアミノ酸を有する場合、脂質鎖が、例えば、血清アルブミンと非共有結合的に相互作用して分子量を増加させ、したがって、患者に投与された場合に、例えば、腎濾過を減少させることに起因するタンパク質分解攻撃を阻害することが見出された。典型的には、脂質付加には3つのタイプがあり、それらは、脂質とペプチドとの間の結合形成方法、すなわち、アミド化、エステル化(S-またはO-)、およびS-結合(エーテルまたはジスルフィド)形成に基づいて異なる。アミド化、およびO-エステル化は、不可逆的な強い共有結合を形成するのに対して、他の2つの方法は、弱く可逆的な共有結合である。使用される方法、ならびに脂質鎖、脂質付加の位置、および使用されるスペーサーはいずれも、物理化学的特性および生物活性に顕著な影響を及ぼす(Zhang and Bulaj“Converting Peptides into Drug Leads by Lipidation”.Current Medicinal Chemistry,Vol 19,Issue 11,2012)。
【0081】
「治療用リポペプチド」は、疾患の治療に使用されるペプチドまたはポリペプチド(オリゴマー)である。天然に存在するペプチドは、ホルモン、成長因子、神経伝達物質、イオンチャネルリガンドおよび抗感染薬として役立ち得る。リポペプチド治療薬は、そのような機能を模倣する。ペプチドは身体によって代謝され得ることから、リポペプチド治療薬は、通常比較的安全で忍容性が高い。
【0082】
リラグルチド(CAS番号204656-20-2)(N26-(ヘキサデカノイル-ガンマ-グルタミル)-[34-アルギニン]GLP-1-(7-37)-ペプチド(WHO)またはNN 2211としても知られるγ-L-グルタモイル(N-α-ヘキサデカノイル)-Lys26、Arg34-GLP-1(7-37))は、31個のアミノ酸を有するリポペプチドである。リラグルチドは、2型糖尿病、肥満および慢性的な体重管理を治療するために使用される抗糖尿病薬である。したがって、リラグルチドは治療用リポペプチドでもある。
【0083】
ブレビルチド(CAS番号:2012558-47-1)は、N末端およびアミド化C末端に脂肪酸、ミリストイル残基を有する、47アミノ酸ペプチドを有するリポペプチドである。この活性物質は、酢酸塩として入手可能である。対イオンアセテートは、ペプチド分子の塩基性基にイオン形態で結合し、非化学量論比で存在する。ブレビルチドの化学名は、(N-ミリストイル-グリシル-L-トレオニル-L-アスパラギニル-L-ロイシル-L-セリル-L-バリル-Lプロリル-L-アスパラギニル-L-プロリル-L-ロイシル-グリシル-L-フェニルアラニル-L-フェニルアラニル-L-プロリル-L-アスパルチル-L-ヒスチジル-Lグルタミニル-L-ロイシル-L-アスパルチル-L-プロリル-L-アラニル-L-フェニルアラニル-グリシル-L-アラニル-L-アスパラギニル-L-セリル-Lアスパラギニル-L-アスパラギニル-Lプロリル-L-アスパルチル-L-トリプトファニル-L-アスパルチル-L-フェニルアラニル-L-アスパラギニル-L-プロリルL-アスパラギニル-L-リシル-L-アスパルチル-L-ヒスチジル-L-トリプトファニル-L-プロリル-L-グルタミル-L-アラニル-L-アスパラギニル-L-リシルL-バリルグリシンアミド、酢酸塩である。ブレビルチドは、慢性D型肝炎の治療のための抗ウイルス薬である。ブレビルチドは、皮下注射によって投与される。したがって、ブレビルチドは治療用リポペプチドでもある。ブレビルチドは、通常、その酢酸塩の形態で販売されている。
【0084】
「リポソーム」は、少なくとも1つの脂質二重層を有する球状小胞である。リポソームは、医薬品の投与のためのビヒクルとして使用され得る。リポソームは、ほとんどの場合、リン脂質、特にホスファチジルコリンから構成されるが、脂質二重層構造と適合性である限り、卵ホスファチジルエタノールアミンなどの他の脂質も含み得る。
【0085】
本明細書において使用される「リポソーム製剤」は、リポソームを含む液体を意味し、該リポソームは、リン脂質を含む。該リポソーム製剤は、水性環境内でのブレビルチドまたはリラグルチドなどのリポペプチドの可溶化に適している。
【0086】
本明細書において開示されるリポソームサイズまたは小胞サイズ(ミセルサイズなど)とは、それぞれ、多角度光散乱(MALS)または動的光散乱(DLS)によって決定されるサイズを指す。通常、リポソームのサイズは、0.025μm~2.5μmの範囲内である(Akbarzadehet al.Nanoscale Research Letters 2013,8:102)。
【0087】
「配合する」とは、ブレビルチドをリポソームに組み込むか、またはリポソームに移すこと/ブレビルチドをリポソームによってカプセル化することを意味する。
【0088】
「薬学的に許容される」とは、動物、より具体的にはヒトに使用するために、国の規制機関によって承認されているかもしくは承認可能であること、または欧州薬局方もしくは米国薬局方もしくは他の一般的に認識されている薬局方に記載されていることを意味する。
【0089】
PEGとは、ポリエチレングリコールを意味する。
【0090】
PEG化は、PEG化されていると記載される小胞をもたらす、分子および巨大構造、例えば、リン脂質へのPEGポリマー鎖の共有結合および非共有結合または融合のプロセスである。PEG化リン脂質は周知であり、市販されている。
【0091】
本明細書において記載される「薬学的組成物」は、特に薬学的リポソーム組成物である。「薬学的リポソーム組成物」とは、薬学的投与に適した、リポソームを含む組成物を意味する。
【0092】
本発明の製剤に使用されるリン脂質は、天然リン脂質、合成リン脂質およびそれらの組合せからなる群より選択され得る。レシチンは、リン脂質の天然資源の1つである。レシチンは、卵黄および大豆に見られる混合物である。レシチンは、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびホスファチジルイノシトール(PI)または前述のいずれかの(薬学的に許容される)塩を含むいくつかのリン脂質を含む。
【0093】
一般に、本明細書において使用されるリン脂質の構造は、構造(I)のリン脂質であり、
式中、
R1は、C10~C24アシルを表し、
R2は、C10~C24アシル、または水素を表し、
R3は、2-トリメチルアミノ-1-エチル(PCをもたらす)、2-アミノ-2-カルボキシ-1エチル(PSをもたらす)、イノシチル基(C6H11O5)(PIをもたらす)、2-アミノ-1エチル(PEをもたらす)、または水素(PAをもたらす)を表す。
【0094】
用語「ホスファチジン酸」および「PA」は、本明細書において区別なく使用される。PAまたはその(薬学的に許容される)塩は、天然源および/または合成源に由来し得る。PAの非限定的な例には、DLPA、DMPA、DPPA、DSPA、POPA、POPA、DEPA、HSPA、HEPAまたは前述のいずれかの(薬学的に許容される)塩がある。
【0095】
用語「ホスファチジルコリン」および「PC」は、本明細書において区別なく使用される。PCまたはその(薬学的に許容される)塩は、天然源および/または合成源に由来し得る。PCは、PEG化され得る。PCの非限定的な例には、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、ジエルコイルグリセロホスホコリン(DEPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、水素化卵ホスファチジルコリン(HEPC)、または前述のいずれかの(薬学的に許容される)塩がある。
【0096】
用語「ホスホエタノールアミン」および「PE」は、本明細書において区別なく使用される。PEは、PEG化され得る。PEまたはその(薬学的に許容される)塩は、天然源および/または合成源に由来し得る。PEの非限定的な例には、DLPE、DMPE、DPPE、DSPE、POPE、POPE、DEPE、HSPE、HEPE、または前述のいずれかの(薬学的に許容される)塩がある。
【0097】
用語「ホスファチジルグリセロール」および「PG」は、本明細書において区別なく使用される。PGまたはその(薬学的に許容される)塩は、天然源および/または合成源に由来し得る。PGの非限定的な例には、DLPG、DMPG、DPPG、DSPG、POPG、POPG、DEPG、HSPG、HEPG、または前述のいずれかの(薬学的に許容される)塩がある。
【0098】
用語「ホスファチジルイノシトール」および「PI」は、本明細書において区別なく使用される。PIは、PEG化され得る。PIまたはその(薬学的に許容される)塩は、天然源および/または合成源に由来し得る。PIの非限定的な例には、DLPI、DMPI、DPPI、DSPI、POPI、POPI、DEPI、HSPI、HEPI、または前述のいずれかの(薬学的に許容される)塩がある。
【0099】
用語「ホスホセリン」および「PS」は、本明細書において区別なく使用される。PSは、PEG化され得る。PSまたはその(薬学的に許容される)塩は、天然源および/または合成源に由来し得る。PSの非限定的な例には、DLPS、DMPS、DPPS、DSPS、POPS、POPS、DEPS、HSPS、HEPS、または前述のいずれかの(薬学的に許容される)塩がある。
【0100】
リン脂質のいずれかの薬学的に許容される塩の非限定的な例には、ナトリウム塩またはアンモニウム塩、例えば、PG-Na PG-NH4、DSPG-Na、またはDSPG-NH4がある。
【0101】
したがって、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)およびホスファチジルグリセロール(PG)からなる群より選択されるリン脂質のいずれかの誘導体は、DLPA、DMPA、DPPA、DSPA、POPA、POPA、DEPA、HSPA、HEPA、DLPC、DMPC、DPPC、DSPC、DOPC、POPC、DEPC、HSPC、HEPC、DLPE、DMPE、DPPE、DSPE、POPE、POPE、DEPE、HSPE、HEPE、DLPG、DMPG、DPPG、DSPG、POPG、POPG、DEPG、HSPG、HEPG、DLPI、DMPI、DPPI、DSPI、POPI、POPI、DEPI、HSPI、HEPI、DLPS、DMPS、DPPS、DSPS、POPS、POPS、DEPS、HSPS、HEPS、前述のいずれかのPEG化形態、および前述のいずれかの塩からなる群より選択される。
【0102】
「患者への投与直前」の混合とは、患者への投与の3日前まで、特に24時間前まで、例えば、6時間前までを意味する。
【0103】
「等張化剤」とは、製剤をヒト血漿と等張にするために製剤に加えられ得る薬学的に許容される化合物を意味する。等張化剤には、例えば、デキストロース、グルコース、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、グリセリンおよびNaCl、特にスクロースまたはグリセリンまたはNaCl、より具体的にはスクロースまたはNaClが含まれる。張性は、「有効重量オスモル濃度」であり、メンブレンを横切って浸透力を及ぼす能力を有する溶質の濃度の合計に等しい。非経口製剤は、血漿と等張であるべきである。等張化剤は、当業者に周知である。
【0104】
本明細書において使用される場合、任意の疾患または障害「を治療する」、「を治療すること」または「の治療」という用語は、一態様では、疾患または障害を改善すること(すなわち、疾患、またはその臨床症状のうちの少なくとも1つの発症を遅らせるか、または停止させるか、または減少させること)を指す。別の態様では、「治療する」、「治療すること」または「治療」は、患者が認識できない可能性のあるものを含む少なくとも1つの身体的パラメーターを緩和または改善することを指す。さらに別の態様では、「治療する」、「治療すること」または「治療」は、疾患または障害を物理的に、(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的に、(例えば、身体的パラメーターの安定化)、またはその両方で調節することを指す。
【0105】
用語「(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の合計が、合計100%になる」とは、成分(a)~(e)に与えられるパーセント値が、(a)~(e)の値の合計が100になるように常に選択されなければならないことを意味する。したがって、これらの値は、成分(a)~(e)の間の比を与える。ただし、当業者であれば、製剤が溶媒などの追加の成分を含み得ることを理解している。ただし、そのような追加の成分の量は、(a)~(e)の間の比を計算する際に考慮されない(%の値は、常に合計100%にならなければならない)。
【0106】
組合せがいずれかの自然法則に背かない限り、態様が態様、好ましい態様、より好ましい態様、特に好ましい態様、または最も好ましい態様である場合、事実に関係なく、本発明のあらゆる態様を組み合わせることができ、本発明の2つ以上の態様のそのような組合せは、そのような2つ以上の態様の組合せが明確に言及されていなくても、2つ以上の態様を開示することによって本明細書において開示されることが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0107】
詳細な説明
本発明は、リポペプチドを含む製剤を調製するための単純な方法に関する。本発明の方法は、小胞、好ましくはミセルのD90が60nm以下、より好ましくは25nm以下、好ましくは20nm以下である液体製剤(リポペプチド製剤)の容易な調製を可能にする。本発明による方法の最中に形成されるこの単相ナノ分散系は、最終リポソーム製剤のためにリポソームのサイズを機械的に縮小する必要を伴わず、リポソーム製剤の調製を可能にする。
【0108】
あるいは、本発明の方法は、リポソームのD90が1μm~4.5μmであるリポソーム製剤の容易な調製をさらに可能にする。本発明は、本発明の方法に従って調製されたリポペプチドを含む製剤、より具体的には、患者への非経口投与に適したリポペプチド、好ましくは治療用リポペプチド、より好ましくはブレビルチドまたはリラグルチドの製剤をさらに提供する。特に、そのような投与は、静脈内注射または注入によるものである。本発明は、投与に適したリポソーム組成物を提供するために、患者への投与直前に一緒に混合され得る2つの別個の製剤をさらに提供する。一方の製剤は、リポペプチドを含む凍結乾燥物であり得、第2の製剤は水性製剤であり得る。2つの別個の製剤が一緒に混合されると、ブレビルチドが形成リポソームに配合され、ブレビルチドの可溶化が可能になり、臨床で使用するのに適した薬学的リポソーム組成物がもたらされる。
【0109】
好ましくは治療用のリポペプチドを含む製剤は、患者への投与前にリポソームへの該治療用リポペプチドの効率的かつ最適な配合を可能にすべきである。
【0110】
好ましくは、本発明は、投与(注射)後にリポソームからのブレビルチドの迅速な放出を可能にする薬学的リポソーム製剤を提供する。
【0111】
全体として、本明細書において記載される発明は、この薬物の困難な化学的特徴にもかかわらず、患者へのリポペプチド、好ましくは治療用リポペプチド(例えば、ブレビルチドまたはリラグルチド)の効果的な投与を可能にする。
【0112】
本明細書において記載される製剤は、特に、薬学的製剤、例えば、薬学的リポソーム組成物である。
【0113】
好ましくは、リポソーム製剤のリポソームのD90は1μm~4.5μmである。
【0114】
特に、本明細書において記載されるリン脂質は、卵レシチン、大豆レシチンまたは合成リン脂質から選択される。
【0115】
本発明のいくつかの局面および態様を以下に説明する。
【0116】
製剤
第1の局面は、
(a)約60%など、(a)~(e)の総重量に基づいて40%~99.7%の範囲内、好ましくは40%~97%の範囲内の、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、もしくは前述のいずれかの誘導体、またはそれらの混合物からなる群より選択される、1つまたは複数のリン脂質、
(b)リポペプチドがブレビルチドである場合は約8%、またはリポペプチドがリラグルチドである場合は0.3%~2%の範囲内、例えば、0.37±0.05%(すなわち、0.365%~0.375%)、0.6±0.05%、0.7±0.05%、1.1±0.06% 1.2±0.06% 1.8±0.06%など、(a)~(e)の総重量に基づいて0.3%~20%の範囲内、好ましくは3%~18%の範囲内、より好ましくは3%~13%の範囲内のリポペプチド、好ましくは治療用リポペプチド、より好ましくはブレビルチドまたはリラグルチド、
(c)約9%など、(a)~(e)の総重量に基づいて0%~14%、好ましくは4%~14%の範囲内のコレステロールまたはその誘導体、
(d)約25%など、(a)~(e)の総重量に基づいて0%~35%、好ましくは15%~35%の範囲内の、増量剤、好ましくはグリシン、アルギニン、プロリン、もしくは増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、またはスクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストランもしくはそれらの混合物からなる群より選択される糖成分、より好ましくはグリシン、アルギニン、プロリン、またはスクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストランもしくはそれらの混合物からなる群より選択される糖成分、さらにより好ましくはグリシン、アルギニン、プロリン、マンニトール、グルコース、スクロース、ラクトース、トレハロースまたはデキストラン、さらにより好ましくはマンニトール、グリシンまたはトレハロース、
(e)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~35%の範囲内の、(d)ではない等張化剤
を含む、単相ナノ分散系である製剤であって、
(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の合計が合計100%になり、(a)~(e)の組み合わされた量が、製剤の総重量に基づいて10%~100%である製剤に関する。
【0117】
(c)および(e)に関して、これらの成分は、任意で最低境界値として0%を有する範囲によって実証されるいくつかの製剤中にある。
【0118】
当業者であれば、製剤が(a)、(b)、(d)、任意で(c)および任意で(e)からなる場合、調製方法、好ましくは以下にさらに記載される本発明の調製方法に使用される微量の溶媒および添加剤(tert-ブタノール、または水、または緩衝液系など)が依然として最大2%の量まで存在し得ることを理解するであろう。
【0119】
好ましい一態様は、本発明による製剤であって、製剤が、(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)ならびに溶媒、好ましくはtert-ブタノールの残渣からなり、tert-ブタノールの量が、このような製剤の総重量(例えば、凍結乾燥物の場合、例えば、(a)~(e)およびtert-ブタノールの組み合わされた量)に基づいて0.01%~2%である製剤に関する。より好ましくは、tert-ブタノールの量は、1%以下、例えば、0.001%~0.8%である。
【0120】
別の好ましい態様は、本発明による製剤であって、製剤が、(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)、tert-ブタノールならびに緩衝液系、好ましくは酢酸緩衝液系からなり、tert-ブタノールおよび緩衝液系の組み合わされた量が、このような製剤の総重量(例えば、凍結乾燥物の場合、例えば、(a)~(e)およびtert-ブタノールの組み合わされた量)に基づいて0.01%~2%である製剤に関する。
【0121】
さらに別の好ましい態様では、本発明による製剤は、リポソーム、プロリポソーム、脂質クラスレート、脂質コロイド分散物、ミセル、逆性ミセル、円盤状構造またはそれらの組合せを含む。
【0122】
さらに好ましい一態様は、小胞のD90が60nm以下、好ましくは25nm未満、より好ましくは20nm以下、例えば、10nm~20nm、例えば、約15nm、または3nm~10nm、例えば、約5nmである、好ましくは薬学的な単相ナノ分散系に関する。
【0123】
別の好ましい態様は、凍結乾燥製剤に関する。
【0124】
別の好ましい態様は、リポペプチド(b))、好ましくは治療用リポペプチド、より好ましくはブレビルチドまたはリラグルチドの量が12mg~24mg、より好ましくは10mg~20mgである凍結乾燥製剤(凍結乾燥物)に関する。
【0125】
さらに別の好ましい態様は、リポペプチド(b))、好ましくは治療用リポペプチド、より好ましくはリラグルチドの量が0.5mg~1.8mg、例えば、それぞれ0.6mg、1.2mgまたは1.8mgである凍結乾燥製剤(凍結乾燥物)に関する。
【0126】
凍結乾燥製剤では、(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の合計は合計100%になり、(a)~(e)の組み合わされた量は、製剤の総重量に基づいて98%~100%である。好ましくは、(a)~(e)の組み合わされた量は、99%~100%、さらにより好ましくは99.9%~100%、最も好ましくは100%である。
【0127】
好ましい一態様は、(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)ならびに水および任意で緩衝液を含む、本発明による薬学的リポソーム製剤に関する。
【0128】
好ましくは、特に後者の2つの好ましい態様では、(a)~(e)の組み合わされた量は、製剤の総重量に基づいて10%~15%である。
【0129】
さらに好ましい態様では、本発明による製剤中の薬学的に活性な物質は、脂質クラスレート、プロリポソーム、ミセルまたはリポソーム、より好ましくはリポソームまたはミセルによって捕捉される。換言すれば、組成物は、例えば、少なくとも1つのリポソームまたは少なくとも1つのミセルをそれぞれ含み、ブレビルチドは、リポソームまたはミセルに配合される。
【0130】
好ましい一態様では、本発明による製剤中の薬学的に活性な物質は、ミセル(ナノ分散製剤/単相ナノ分散系)によって捕捉される。最も好ましくは、ミセルは、60nm以下、例えば、25nm未満、より好ましくは20nm以下、例えば、10nm~20nm、または3nm~10nmであるD90を有する。
【0131】
別の好ましい態様では、本発明による製剤中の薬学的に活性な物質は、リポソーム(リポソーム製剤)によって捕捉される。
【0132】
別の好ましい態様は、製剤、好ましくはリポソーム製剤またはナノ分散製剤が薬学的製剤である製剤に関する。
【0133】
リポソーム製剤
好ましい一態様は、凍結乾燥製剤(単相ナノ分散系)を、好ましくは水溶液、より好ましくは生理食塩水または水、さらにより好ましくは生理食塩水と混合することまたはそれを用いて再構成することによって得られる薬学的リポソーム製剤に関する。
【0134】
そのような薬学的リポソーム製剤は、好ましくは注射に適している。特定の態様では、リポソーム製剤は、患者に静脈内投与されるか、または好ましくは皮下投与される。
【0135】
別の好ましい態様は、リポペプチドがブレビルチドであり、リポソーム製剤中のブレビルチドの量が12mg/1.5ml~24mg/1.5ml、より好ましくは15mg/1.5ml~20mg/1.5mlである薬学的リポソーム製剤に関する。
【0136】
別の好ましい態様は、リポペプチドがリラグルチドであり、リポソーム製剤中のリラグルチドの量が0.5mg/ml~18mg/ml、例えば、0.5mg/ml~12mg/ml、より好ましくは4mg/ml~8mg/ml、さらにより好ましくは5.8~6.2mg/ml、例えば、6mg/mlである薬学的リポソーム製剤に関する。
【0137】
別の好ましい態様によれば、薬学的リポソーム製剤は、5~7.5、例えば、5~6、または6~7.5、または7.3~7.4のpHを有する。
【0138】
(a)リン脂質
別の好ましい態様は、1つまたは複数のリン脂質が、PC、またはPCと、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)およびホスファチジン酸(PA)ホスファチジルグリセロール(PG)、もしくは前述のいずれかの薬学的に許容される塩からなる群より選択される1つもしくは複数のリン脂質との混合物を含む製剤に関する。
【0139】
別の好ましい態様は、1つまたは複数のリン脂質が、PC、またはPCと、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)およびホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、もしくは前述のいずれかの薬学的に許容される塩からなる群より選択される1つもしくは複数のリン脂質との混合物である製剤に関する。
【0140】
好ましい一態様では、少なくとも1つのリン脂質はPEG化リン脂質である。
【0141】
別のより好ましい態様は、1つまたは複数のリン脂質が、好ましくはDLPC、DMPC、DPPC、DSPC、POPC、POPC、DEPC、HSPC、HEPC、または前述のいずれかの好ましくは薬学的に許容される塩からなる群より選択されるPCまたは好ましくは薬学的に許容されるその塩を含む製剤に関する。
【0142】
別のさらに好ましい態様は、1つまたは複数のリン脂質が、好ましくはPEG化DLPC、PEG化DMPC、PEG化DPPC、PEG化DSPC、PEG化POPC、PEG化POPC、PEG化DEPC、PEG化HSPC、PEG化HEPC、または前述のいずれかの好ましくは薬学的に許容される塩からなる群より選択されるPEG化PCまたは好ましくは薬学的に許容されるその塩を含む製剤に関する。
【0143】
別のより好ましい態様は、1つまたは複数のリン脂質が、PCまたは好ましくは薬学的に許容されるその塩を含む製剤に関する。さらにより好ましい一態様では、PCまたは好ましくは薬学的に許容されるその塩は、大豆(例えば、Lipoid S100)、卵または合成物に由来し、最も好ましい態様では、PCまたは好ましくは薬学的に許容されるその塩は、大豆に由来する。
【0144】
別の好ましい態様は、(a)の量が、製剤中の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の総和と比較して50%~65%である製剤に関する。例えば、約57%。
【0145】
別の好ましい態様は、PGまたは好ましくは薬学的に許容されるその塩が、PEG化PG、またはPEG化された好ましくは薬学的に許容されるその塩である製剤に関する。
【0146】
別のより好ましい態様は、PGまたは好ましくは薬学的に許容されるその塩が、DLPG、DMPG、DPPG、DSPG、POPG、POPG、DEPG、HSPG、HEPGからなる群より選択される製剤に関する。
【0147】
別のより好ましい態様は、PGまたは好ましくは薬学的に許容されるその塩が、PEG化されており、PEG化DLPG、PEG化DMPG、PEG化DPPG、PEG化DSPG、PEG化POPG、PEG化POPG、PEG化DEPG、PEG化HSPG、PEG化HEPG、または前述のいずれかの好ましくは薬学的に許容される塩からなる群より選択される製剤に関する。
【0148】
(b)リポペプチド
好ましい一態様では、リポペプチドは、50個以下のアミノ酸を有するリポペプチドである。
【0149】
さらに好ましい態様では、リポペプチドは、5~50個のアミノ酸を有する。好ましくは、5~50個のアミノ酸は、アラニン(ala)、アルギニン(arg)、アスパラギン(asn)、アスパラギン酸(asp)、システイン(cys)、グルタミン(gln)、グルタミン酸(glu)、グリシン(gly)、ヒスチジン(his)、イソロイシン(ile)、ロイシン(leu)、リジン(lys)、メチオニン(met)、フェニルアラニン(phe)、プロリン(pro)、セリン(ser)、トレオニン(thr)、トリプトファン(trp)、チロシン(tyr)およびバリン(val)からなる群より独立して選択される。
【0150】
別の好ましい態様では、親油性残基は、アミド化、エステル化(S-またはO-)、またはS-結合(エーテルまたはジスルフィド)形成を介してアミノ酸に結合している。
【0151】
別の好ましい態様では、リポペプチドは、5~50個のアミノ酸のうちの1つに共有結合したグリコシルホスファチジルイノシトール-アンカー、パルミトイル(C16:0)残基またはミリストイル(C14:0)残基からなる群より選択される少なくとも1つの親油性残基を有する。例えば、パルミトイル残基またはミリストイル残基は、シス残基に結合している。
【0152】
好ましい一態様では、リポペプチドは、5~50個のアミノ酸のうちの1つに共有結合したグリコシルホスファチジルイノシトール-アンカー、パルミトイル(C16:0)残基またはミリストイル(C14:0)残基からなる群より選択される1つの親油性残基を有する。
【0153】
さらに別の好ましい態様では、リポペプチドは、同じ種類の1つのリポペプチドである(例えば、ブレビルチドのみまたはリラグルチドのみが存在する)。
【0154】
別の好ましい態様では、本発明による製剤(または方法)に使用されるリポペプチドはブレビルチドである。
【0155】
さらに別の好ましい態様では、本発明による製剤(または方法)に使用されるリポペプチドはリラグルチドである。
【0156】
さらに別の好ましい態様では、リポペプチドはブレビルチドである。
【0157】
さらに別の好ましい態様では、リポペプチドはリラグルチドである。
【0158】
別の好ましい態様は、ブレビルチドがその酢酸塩として使用される、本発明による製剤に関する。一態様では、本発明による製剤は、好ましくはブレビルチドとして等モル範囲内のアセテートを含む。
【0159】
別の好ましい態様は、リポペプチド(b))の量が、製剤中の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の総和と比較して5%~11%である製剤に関する。例えば、約8%。
【0160】
別の好ましい態様では、リポペプチド、好ましくはブレビルチドまたはリラグルチドの量は、製剤中の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の総和と比較して5%~11%であり、製剤中のリポペプチド(c))の濃度は、例えば、製剤がブレビルチドを含む単相ナノ分散系などの液体製剤であるか、またはリポペプチドを含むリポソーム製剤、好ましくは薬学的リポソーム製剤である場合、15mg/1.5ml~20mg/1.5mlである。
【0161】
別の好ましい態様では、(c)の量は、製剤中の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の総和と比較して5%~11%であり、製剤中の(c)の濃度は、例えば、製剤が凍結乾燥製剤である場合、成分(a)~(e)の総和176.6mg当たり8mg~成分(a)~(e)の総和176.6mg当たり19.4mgである。
【0162】
(c)コレステロール
コレステロールは、リポソームの安定性と、薬物放出とに影響を及ぼすことが知られている。
【0163】
したがって、好ましい一態様では、本発明による製剤は、好ましくはコレステロールまたはその誘導体(成分(c))を含む。
【0164】
別の好ましい態様は、(c)がコレステロールまたはコレステリル硫酸ナトリウムからなる群より選択される製剤に関する。より好ましくは、成分(c)はコレステロールである。
【0165】
別の好ましい態様は、(c)の量が、製剤中の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の総和と比較して6%~12%である製剤に関する。例えば、約9%、例えば、8%~10%。
【0166】
(d)増量剤
特に、本発明による製剤が凍結乾燥可能であるべきである場合、または本発明による方法を介した本発明による製剤の調製が凍結乾燥工程を必要とする場合、増量剤の存在が有利である。好ましい増量剤の例には、グリシン、アルギニン、プロリン、もしくは増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、または糖成分(本発明による製剤中の成分(e))がある。好ましい糖成分は、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、キシリトール、キシロース、デキストランまたはそれらの混合物からなる群より選択される。
【0167】
より好ましい一態様は、(e)がトレハロースである製剤に関する。
【0168】
別の好ましい態様は、(e)の量が、製剤中の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の総和と比較して20%~30%である製剤に関する。例えば、約25%。
【0169】
好ましい一態様では、本発明による製剤は、成分(a)~(e)に加えて、製剤(例えば、凍結乾燥物)の総重量と比較して0.01%~2%の範囲内のtert-ブタノールを含む。
【0170】
(e)等張化剤
別の好ましい態様は、(a)、(b)、(c)、(d)と、(d)ではない1つまたは複数の等張化剤(本発明による製剤中の成分(e))とを含む薬学的リポソーム製剤に関する。
【0171】
そのような等張化剤、好ましくは薬学的に許容される等張化剤は、薬学的リポソーム製剤中に存在すべきである。そのような等張化剤は、本発明による凍結乾燥物を該等張化剤を含む水相と混合することによってリポソーム製剤の調製中に加えられ得るか、または凍結乾燥物の再水和工程中に提供され得る。
【0172】
あるいは、そのような等張化剤は、等張化剤が、本発明によるリポペプチドを調製するための本発明による方法に使用される水相の一部であるという点で、凍結乾燥物中に既に存在し得る。当業者であれば、張性剤が部分的にそのような水相の一部であり、部分的に水相の一部であり得ることを知っている。当業者であれば、患者に提供される医薬品に関して等張効果を有するために最終薬学的リポソーム製剤中で適切な濃度を有することが必要とされる等張化剤の総量を容易に計算することができる。
【0173】
当業者であれば、例えば、張性剤がグルコースまたはトレハロースなどの糖成分である場合、等張化剤が場合によっては増量剤でもあることを認識するであろう。
【0174】
NaClなどの他の等張化剤は、増量機能を有しない。したがって、そのような「単一機能性成分」、例えば、NaClを使用する場合、製剤は、増量剤(e)と等張化剤(e)とを含み得る。製剤は、増量剤(例えば、トレハロース)と、「2つの」等張化剤(トレハロース、および例えば、NaCl)とを含んでもよい。
【0175】
等張化剤は、当業者に周知である。好ましい一態様では、等張化剤は、デキストロース、グルコース、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、グリシン、アルギニン、プロリンおよびNaCl、特にグリシン、マンニトール、トレハロース、グルコースおよびNaCl、さらにより具体的にはグリシンおよびNaCl、最も好ましくはNaClからなる群より選択される。
【0176】
当業者であれば、好ましくは皮下注射用の製剤中の特定の等張化剤の適切な濃度を選択する方法を知っている。
【0177】
好ましい態様では、等張化剤はNaClであり、薬学的リポソーム製剤中のNaClの濃度は、薬学的リポソーム製剤の総重量に基づいて0.8%~1%、より好ましくは約0.9%、例えば、0.9%±0.1%、より好ましくは0.9%である。
【0178】
好ましい一態様では、成分(e)は、本発明による製剤中に0.1%~10%、より好ましくは0.4%~1.5%の量で存在し、例えば、張性剤がNaClである場合、製剤、例えば薬学的に許容される製剤中のNaClの好ましい量は、0.8%~1.0%(0.9%±0.1%、より好ましくは0.9%±0.05%)であり、すなわち血漿に関して、生理学的濃度であるか、または生理学的濃度に近い。
【0179】
等張化剤、および製剤の種類(例えば、薬学的に許容されるリポソーム製剤または凍結乾燥物)に応じて、当業者であれば、生理学的濃度で患者に投与するための(最終)製剤中に存在する1つまたは複数の張性剤の量を計算する方法をよく知っている。
【0180】
水溶液用溶媒
別の好ましい態様は、本明細書において定義される(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)と、1つまたは複数の溶媒とを含む薬学的リポソーム製剤に関する。
【0181】
別の好ましい態様は、1つまたは複数の溶媒が、最終製剤の総重量に基づいて10%~90%、例えば、80%~90%、またはさらには85%~90%の量で存在する薬学的リポソーム製剤に関する。
【0182】
適切な溶媒は、当業者によって選択され得る。好ましい一態様では、単数または複数の溶媒は、水、および例えば、塩が存在する水溶液からなる群より選択される。塩が存在する水溶液は、好ましくは、生理学的濃度の少なくとも1つの塩、好ましくは等張濃度の少なくとも1つの塩、例えば、生理食塩水、ラクテートリンゲル液および/またはプラズマライト(Plasma Lyte)などを含む溶液、好ましくは水である。本明細書において、生理食塩水は、食塩溶液とも呼ばれ得、好ましくは1リットル(0.9%)溶液当たり9gの塩の塩化ナトリウム濃度を有する塩化ナトリウムと水との混合物に関する(そのような0.9%(w/v)生理食塩水がリポソームの再構成および形成のために使用される実施例4も参照)。ラクテートリンゲル液とは、水中の塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウムおよび塩化カルシウムの混合物としての乳酸ナトリウム溶液を指す。プラズマライトは、プラズマライト148(pH7.4)とも呼ばれ得る。したがって、該水溶液は、好ましくは、ヒトの生理学的血漿電解質濃度、重量オスモル濃度およびpHを反映する塩濃度、重量オスモル濃度およびpHを有する。ただし、より好ましい態様では、溶媒は、水、または水と好ましくは等張濃度の少なくとも1つの塩との組合せであり、溶媒の総量の水の量は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%である。好ましくは、溶媒は、水、生理食塩水、ラクテートリンゲル液またはプラズマライトである。
【0183】
より好ましくは、1つまたは複数の溶媒は、水または生理食塩水である。最も好ましくは、1つまたは複数の溶媒は水である。
【0184】
緩衝液
別の好ましい態様は、本明細書において定義される(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)と、緩衝液とを含む薬学的リポソーム製剤である製剤に関する。
【0185】
別の好ましい態様は、本明細書において定義される(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)と、溶媒とからなる薬学的リポソーム製剤である製剤に関する。
【0186】
別の好ましい態様は、本明細書において定義される(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)、溶媒、ならびに1つまたは複数の等張化剤、ならびに緩衝液を含む薬学的リポソーム製剤である製剤に関する。
【0187】
本発明による薬学的リポソーム製剤中の成分(a)~(e)に加えて、1つまたは複数の溶媒、緩衝液、塩、他の添加剤などの任意の薬学的に許容される成分は、薬学的水溶液として要約される。したがって、本発明による薬学的リポソーム製剤は、成分(a)~(e)と、薬学的水溶液とからなる。当業者であれば、薬学的水溶液を形成する成分が、本明細書において定義される(a)~(e)を含む製剤と連続的に組み合わされ得るか、または最初に混合され、次いで、本明細書において定義される(a)~(e)を含む製剤に加えられ得ることを理解するであろう(すなわち、この製剤は、(a)~(e)、および例えば、緩衝液のみを含み得るか、または薬学的水溶液もしくは(f)と一緒に/薬学的水溶液もしくは(f)中で提供され、水溶液は連続的に提供され、成分(a)~(e)と、本発明による薬学的水溶液とからなる薬学的リポソーム製剤がもたらされることを理解するであろう。
【0188】
単相ナノ分散系の小胞サイズ
さらに別の態様では、本発明による方法の工程(iv)のリポペプチド製剤(以下をさらに参照)は単相ナノ分散系であり、小胞のD90は、60nm以下、より好ましくは25nm未満、さらにより好ましくは20nm以下、例えば、10nm~20nm、または3nm~10nmである。
【0189】
リポソームサイズ
さらに別の態様では、本発明によるリポソーム製剤のリポソームは、1μm~4.5μmのD90サイズ分布を有する。
【0190】
治療方法/使用方法
一局面は、慢性B型肝炎および/または慢性D型肝炎を治療するための医薬品の調製のための、リポペプチドがブレビルチドである、本発明による製剤の使用に関する。
【0191】
別の局面は、炎症性、好ましくは炎症性疾患を治療するための医薬品の調製のための、リポペプチドがブレビルチドである、本発明による製剤の使用に関する。
【0192】
別の局面は、リポペプチドがブレビルチドである、本発明による薬学的リポソーム製剤を患者に提供する工程を含む、慢性B型肝炎および/または慢性D型肝炎を治療する方法に関する。好ましくは、本発明による薬学的リポソーム製剤の提供は注射である。
【0193】
一局面は、2型糖尿病を治療するための医薬品の調製のための、リポペプチドがリラグルチドである、本発明による製剤の使用に関する。
【0194】
別の局面は、リポペプチドがリラグルチドである、本発明による薬学的リポソーム製剤を患者に提供する工程を含む、2型糖尿病を治療する方法に関する。好ましくは、本発明による薬学的リポソーム製剤の提供は注射である。
【0195】
調製方法
別の局面は、
(i)1つまたは複数のリン脂質(本発明による製剤中の成分(a))と、任意で、コレステロールまたはその誘導体(本発明による製剤中の成分(c))と、好ましくはアニソール、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、ジメチルカーボネート、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピリデングリセロール、アルコール、好ましくは1-ブタノール、2-ブタノール、およびtert-ブタノールからなる群より選択されるアルコール、より好ましくはtert-ブタノール、酢酸、乳酸エチル(エチル2-ヒドロキシプロパノエート)、アセトニトリル、および前述のいずれかの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの有機溶媒とを含む有機相を提供する工程、
(ii)水性媒体と、
任意で、グリシン、アルギニン、プロリン、または増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストラン、または前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分からなる群より選択される増量剤と、
任意で、薬学的に許容される緩衝液と、
任意で、薬学的に許容される等張化剤と
を含む水相を提供する工程であって、
水相のpHが、3~9、例えば、5.5~7、例えば、5.8~6.7である(例えば、酢酸ナトリウム緩衝液を使用することによって)、工程、
(iii)有機相と水相とを組み合わせる工程であって、有機相と水相との混合比が、10:1(v/v)~1:10(v/v)であり、これが、組み合わされた有機相および水相をもたらし、該少なくとも1つの有機溶媒と、水相とが、単相混合物、好ましくは凍結可能なかつ昇華可能な単相混合物を形成する、工程、
(iv)リポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、組み合わされた相に加えて、本発明によるリポペプチド製剤を受け取るか、または
工程(iii)において有機相を水相と混合する前に、リポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを有機相に加えるか、または
工程(iii)において水相を有機相と混合する前に、リポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを水相に加え、
リポペプチド製剤をもたらす工程であって、そのようにして得られた該リポペプチド製剤が単相ナノ分散系である、工程
を含む、本発明による製剤を調製する方法に関する。
【0196】
好ましくは、水相は、緩衝液を含む。
【0197】
好ましい一態様は、
(i)1つまたは複数のリン脂質(本発明による製剤中の成分(a))と、任意で、コレステロールまたはその誘導体(本発明による製剤中の成分(c))と、好ましくはアニソール、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、ジメチルカーボネート、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピリデングリセロール、アルコール、好ましくは1-ブタノール、2-ブタノール、およびtert-ブタノールからなる群より選択されるアルコール、より好ましくはtert-ブタノール、酢酸、乳酸エチル(エチル2-ヒドロキシプロパノエート)、アセトニトリル、および前述のいずれかの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの有機溶媒とを含む有機相を提供する工程、
(ii)水性媒体と、
任意で、グリシン、アルギニン、プロリン、または増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストラン、または前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分からなる群より選択される増量剤と、
薬学的に許容される緩衝液と、
任意で、薬学的に許容される等張化剤と
を含む水相を提供する工程であって、
水相のpHが、3~9、例えば、5.5~7、例えば、5.8~6.7である(例えば、酢酸ナトリウム緩衝液を使用することによって)、工程、
(iii)有機相と水相とを組み合わせる工程であって、有機相と水相との混合比が、10:1(v/v)~1:10(v/v)であり、これが、組み合わされた有機相および水相をもたらし、該少なくとも1つの有機溶媒と、水相とが、単相混合物、好ましくは凍結可能なかつ昇華可能な単相混合物を形成する、工程、
(iv)リポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、組み合わされた相に加えて、本発明によるリポペプチド製剤を受け取るか、または
工程(iii)において有機相を水相と混合する前に、リポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを有機相に加えるか、または
工程(iii)において水相を有機相と混合する前に、リポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを水相に加え、
リポペプチド製剤をもたらす工程であって、そのようにして得られた該リポペプチド製剤が単相ナノ分散系である、工程
を含む、本発明による製剤を調製する方法に関する。
【0198】
したがって、別の好ましい態様は、
(i)1つまたは複数のリン脂質(本発明による製剤中の成分(a))と、任意で、コレステロールまたはその誘導体(本発明による製剤中の成分(c))と、好ましくはアニソール、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、ジメチルカーボネート、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピリデングリセロール、アルコール、好ましくは1-ブタノール、2-ブタノール、およびtert-ブタノールからなる群より選択されるアルコール、より好ましくはtert-ブタノール、酢酸、乳酸エチル(エチル2-ヒドロキシプロパノエート)、アセトニトリル、および前述のいずれかの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの有機溶媒とを含む有機相を提供する工程、
(ii)水性媒体と、
任意で、グリシン、アルギニン、プロリン、または増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストラン、または前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分からなる群より選択される増量剤と、
任意で、薬学的に許容される緩衝液と、
任意で、薬学的に許容される等張化剤と
を含む水相を提供する工程であって、
水相のpHが、3~9、例えば、5.5~7、例えば、5.8~6.7である(例えば、酢酸ナトリウム緩衝液を使用することによって)、工程、
(iii)有機相と水相とを組み合わせる工程であって、有機相と水相との混合比が、10:1(v/v)~1:10(v/v)であり、これが、組み合わされた有機相および水相をもたらし、該少なくとも1つの有機溶媒と、水相とが、単相混合物、好ましくは凍結可能なかつ昇華可能な単相混合物を形成する、工程、
(iv)リポペプチド、好ましくはブレビルチドまたはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、組み合わされた相に加えて、本発明によるリポペプチド製剤を受け取る工程であって、そのようにして得られた該リポペプチド製剤が単相ナノ分散系である、工程
を含む、本発明による製剤を調製する方法に関する。
【0199】
好ましくは、水相は、緩衝液を含む。
【0200】
別の態様は、
(i)1つまたは複数のリン脂質(本発明による製剤中の成分(a))と、リポペプチド、好ましくはブレビルチドまたはリラグルチド、より好ましくはブレビルチド(本発明による製剤中の成分(b))と、任意で、コレステロールまたはその誘導体(本発明による製剤中の成分(c))と、好ましくはアニソール、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、ジメチルカーボネート、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピリデングリセロール、アルコール、好ましくは1-ブタノール、2-ブタノール、およびtert-ブタノールからなる群より選択されるアルコール、より好ましくはtert-ブタノール、酢酸、乳酸エチル(エチル2-ヒドロキシプロパノエート)、アセトニトリル、および前述のいずれかの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの有機溶媒とを含む有機相を提供する工程、
(ii)水性媒体と、
任意で、グリシン、アルギニン、プロリン、または増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストラン、または前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分からなる群より選択される増量剤と、
任意で、薬学的に許容される緩衝液と、
任意で、薬学的に許容される等張化剤と
を含む水相を提供する工程であって、
水相のpHが、3~9、例えば、5.5~7、例えば、5.8~6.7である(例えば、酢酸ナトリウム緩衝液を使用することによって)、工程、
(iii)有機相と水相とを組み合わせる工程であって、有機相と水相との混合比が、10:1(v/v)~1:10(v/v)であり、これが、組み合わされた有機相および水相をもたらし、該少なくとも1つの有機溶媒と、水相とが、単相混合物、好ましくは凍結可能なかつ昇華可能な単相混合物を形成する、工程
を含む、本発明による製剤を調製する方法に関する。
【0201】
好ましくは、水相は、緩衝液を含む。
【0202】
別の態様は、
(i)1つまたは複数のリン脂質(本発明による製剤中の成分(a))と、任意で、コレステロールまたはその誘導体(本発明による製剤中の成分(c))と、好ましくはアニソール、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、ジメチルカーボネート、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピリデングリセロール、アルコール、好ましくは1-ブタノール、2-ブタノール、およびtert-ブタノールからなる群より選択されるアルコール、より好ましくはtert-ブタノール、酢酸、乳酸エチル(エチル2-ヒドロキシプロパノエート)、アセトニトリル、および前述のいずれかの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの有機溶媒とを含む有機相を提供する工程、
(ii)水性媒体と、
リポペプチド、好ましくはブレビルチドまたはリラグルチド、より好ましくはブレビルチド(本発明による製剤中の成分(b))、
任意で、グリシン、アルギニン、プロリン、または増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、スクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストラン、または前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分からなる群より選択される増量剤と、
任意で、薬学的に許容される緩衝液と、
任意で、薬学的に許容される等張化剤と
を含む水相を提供する工程であって、
水相のpHが、3~9、例えば、5.5~7、例えば、5.8~6.7である(例えば、酢酸ナトリウム緩衝液を使用することによって)、工程、ならびに
(iii)有機相と水相とを組み合わせる工程であって、有機相と水相との混合比が、10:1(v/v)~1:10(v/v)であり、これが、組み合わされた有機相および水相をもたらし、該少なくとも1つの有機溶媒と、水相とが、単相混合物、好ましくは凍結可能なかつ昇華可能な単相混合物を形成する、工程
を含む、本発明による製剤を調製する方法に関する。
【0203】
好ましくは、水相は、緩衝液を含む。
【0204】
説明のために、10:1(v/v)の混合比とは、10体積部の有機相と、1体積部の水相とが組み合わされる(例えば、10mlおよび1ml)ことを意味する。好ましくは、本発明による方法における混合比は、5:1(v/v)~1:5(v/v)、例えば、1:1、または約1、例えば、2:1~1:2である。
【0205】
水性媒体
水性媒体は、好ましくは水、または例えば、塩が存在する水溶液である。塩が存在する水溶液は、好ましくは、生理学的濃度の少なくとも1つの塩、好ましくは等張濃度の少なくとも1つの塩、例えば、生理食塩水、ラクテートリンゲル液および/またはプラズマライトなどを含む溶液、好ましくは水である。したがって、水性媒体は、好ましくは、ヒトの生理学的血漿電解質濃度、重量オスモル濃度およびpHを反映する塩濃度、重量オスモル濃度およびpHを有する。水性媒体は、好ましくは水、または水と等張濃度の少なくとも1つの塩、好ましくは生理食塩水、ラクテートリンゲル液および/またはプラズマライトとの組合せである。水性媒体の溶媒の総量の水の量は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%である。より好ましくは、水性媒体は、水または生理食塩水である。最も好ましくは、水性媒体は水である。
【0206】
本発明による方法に使用するための好ましい緩衝液、増量剤および等張化剤は、本発明の製剤について記載されるそれぞれの緩衝液、増量剤および等張化剤と同一である。
【0207】
水相
工程(ii)の水相は水性媒体を含み、好ましくは、水性媒体は水からなり、すなわち、水は水相中の唯一の溶媒である。
【0208】
好ましい一態様では、水相のpHは、リポペプチドが水相に実質的に可溶性でないように選択される。これに関して実質的に可溶性でないとは、リポペプチドの最大20%(w/w)(ii)の水相と混合された総量と比較して)、より好ましくは最大10%(w/w)、さらにより好ましくは最大5%(w/w)、さらにより好ましくは最大1%(w/w)、最も好ましくは最大0.1%(w/w)が水相に可溶性であることを意味する。
【0209】
本発明による方法に使用するための好ましい緩衝液、増量剤および等張化剤は、本発明の製剤について記載されるそれぞれの緩衝液、増量剤および等張化剤と同一である。
【0210】
水相用緩衝液(工程(i))
好ましい一態様では、水相は、緩衝液を含む。
【0211】
当業者であれば、特定のpH値のための緩衝液を選択する方法を知っている。好ましい緩衝液は、酢酸緩衝液(例えば、アセテート/酢酸)(好ましくは、3.7~6.5のpHの場合))、ホスフェート緩衝液またはシトレート緩衝液(例えば、Na2HPO4/クエン酸、Na2HPO4/NaH2PO4、またはNa2HPO4/NaOH)(好ましくは、5.4~8.0のpHの場合)、クエン酸ナトリウム/クエン酸(3.0~6.2の好ましいpH))である。
【0212】
好ましい一態様では、水相は、少なくとも70%(w/w)、より好ましくは少なくとも90%(w/w)の水性媒体と、好ましくは水と、水相中の増量剤の量が好ましくは1%(w/w)~25%(w/w)である、任意で増量剤(本発明による製剤中の成分(d))と、緩衝液とを含み、緩衝液の量は、好ましくは0.001%(w/w)~5%(w/w)、より好ましくは0.001%(w/w)~1%(w/w)、例えば、0.01%(w/w)~0.1%(w/w)である。
【0213】
増量剤が水相中に存在する場合、当業者であれば、本発明による製剤に到達するために、水相の総体積と、増量剤の量(および緩衝液、または増量剤とは異なる張性剤などのさらなる任意の成分の量)とを選択する方法を知っている。
【0214】
別の好ましい態様では、水は、水性媒体中の唯一の溶媒であり、したがって、水相である。
【0215】
特にブレビルチドがリポペプチド(b)である場合、酢酸緩衝液が最も好ましい。好ましくは、そのような水相のpHは、5~6.8、例えば、5~6である。
【0216】
さらに好ましい態様では、水相は、水性媒体と、バルク剤と、緩衝液と、任意でリポペプチドとからなる。水相中にリポペプチドが存在する場合、該水相のpHは、リポペプチドが水相に可溶性である範囲内であるべきである。リポペプチドが水相に可溶性でない場合、リポペプチドを有機相に、または組み合わされた有機相および水相に加えることが有利である。
【0217】
さらに一層好ましい態様では、水相は、水と、バルク剤と、緩衝液と、任意でリポペプチドとからなる。
【0218】
さらに一層好ましい態様では、水相は、水性媒体と、好ましくは水と、緩衝液と、任意でリポペプチドとからなる。
【0219】
極めて好ましい態様では、水性媒体、緩衝液および等張化剤などの成分はいずれも、薬学的に許容される成分である。
【0220】
通常、緩衝液は、0.05mM~100mM、例えば、1mM~50mMの濃度で存在する。
【0221】
有機相
本明細書において示される少なくとも1つの有機溶媒に関する定義および例示的な例の他に、有機相については、少なくとも1つの適切な凍結乾燥可能な水混和性有機溶媒が当業者によって選択され得る。
【0222】
有機溶媒は、標準的な条件(25℃および1.013bar)で水と混和性であるべきである。また、有機溶媒は、有機溶媒が昇華(物質が、液体状態を通過することなく、固体状態から気体状態に直接移行すること)によって除去され得るように、凍結乾燥可能であるべきである。当業者であれば、例えば、当技術分野において公知の有機溶媒の圧力温度(PT)ダイアグラムを使用することによって、好適な有機溶媒、ならびに有機溶媒を凍結乾燥させるための好適な温度および圧力を選択する方法を知っている。
【0223】
好ましい有機溶媒は、アニソール、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、ジメチルカーボネート、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピリデングリセロールおよびアルコール、例えば、好ましくは1-ブタノール、2-ブタノール、およびtert-ブタノールからなる群より選択されるブタノール、酢酸、乳酸エチル(エチル2-ヒドロキシプロパノエート)、アセトニトリル、または前述のいずれかの組合せからなる群より選択され、好ましくは、少なくとも1つの有機溶媒は、アルコール、好ましくはtert-ブタノール、アニソール、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、およびジメチルカーボネート、ならびにそれらの組合せからなる群より選択される。
【0224】
好ましい一態様では、有機溶媒はアニソール(CAS 100-66-3)である。
【0225】
好ましい一態様では、有機溶媒は酢酸エチル(CAS 141-78-6)である。
【0226】
好ましい一態様では、有機溶媒は1,4-ジオキサン(CAS 123-91-1)である。
【0227】
好ましい一態様では、有機溶媒はジメチルカーボネート(CAS 616-38-6)である。
【0228】
好ましい一態様では、有機溶媒はジメチルスルホキシド(CAS 67-68-5)である。
【0229】
好ましい一態様では、有機溶媒はグリコフロール(CAS 31692-85-0)である。
【0230】
好ましい一態様では、有機溶媒はN,N-ジメチルアセトアミド(CAS 127-19-5)である。
【0231】
好ましい一態様では、有機溶媒はN,N-ジメチルホルムアミド(CAS 68-12-2)である。
【0232】
好ましい一態様では、有機溶媒はN-メチル-2-ピロリドン(CAS 872-50-4)である。
【0233】
好ましい一態様では、有機溶媒はイソプロピリデングリセロール(CAS 100-79-8)である。
【0234】
好ましい一態様では、有機溶媒は1-ブタノール(CAS 71-36-3)である。
【0235】
好ましい一態様では、有機溶媒は2-ブタノール(CAS 78-92-2)である。
【0236】
好ましい一態様では、有機溶媒はtert-ブタノール(CAS 75-65-0)である。
【0237】
好ましい一態様では、有機溶媒は酢酸である。
【0238】
好ましい一態様では、有機溶媒は乳酸エチル(エチル2-ヒドロキシプロパノエート)である。
【0239】
好ましい一態様では、有機溶媒はアセトニトリルである。
【0240】
驚くべきことに、ブタノール、好ましくはtert-ブタノール(TBA)を使用すると、工程(i)からの有機相を工程(ii)からの水相と組み合わせた際に、好ましい単相ナノ分散系がもたらされることが見出された。
【0241】
したがって、より好ましい一態様では、有機溶媒はtert-ブタノール(CAS 75-65-0)である。
【0242】
本発明による方法に適した有機相中のより高いおよびより低い濃度のリポペプチド成分を使用することができるが、有機相中の1つまたは複数のリポペプチドの合計が、有機相の総重量に基づいて3%~30%、例えば、5%~25%、例えば、10%~20%であることが好ましい。
【0243】
当業者であれば、過度の負担を伴わず、様々な成分(a)~(e)の間の比に関する要件を有する、本発明による製剤に到達するために、工程(iii)で組み合わされる有機相および水相の様々な成分の濃度および量を計算することができる。
【0244】
驚くべきことに、工程(iv)のリポペプチド製剤は単相ナノ分散系であり、小胞のD90は、60nm以下、好ましくは25nm未満、より好ましくは20nm以下、例えば、10nm~20nm、例えば、約15nm、または3nm~10nm、例えば、約5nmであることが見出された。
【0245】
換言すれば、説明に束縛されるように、(i)からの有機相と(ii)からの水相とを組み合わせることによって、リポソームは得られず、60nm以下、好ましくは25nm未満のミセルの(粒子の)D90サイズを有する単相ナノ分散系が得られる。このナノ分散物は滅菌濾過することができる。
【0246】
好ましい一態様では、有機相と水相との間の比は、2:1(v/v)~1:4.5(v/v)、さらにより好ましくは1.5:1(v/v)~1:4(v/v)、例えば、1:1(v/v)~1:4(v/v)、例えば、1:1(v/v)~1:3.5(v/v)、例えば、約1:1(v/v)、約1:2(v/v)または約1:3(v/v)である。説明のために、「(v/v)」は、2つの相の体積比を指し、例えば、1:1の比とは、1mlの有機相、および1mlの水相を指す。
【0247】
好ましい一態様では、得られた単相ナノ分散系における小胞のD90は、2つの相の間の比が1:1である場合、15nm以下、より好ましくは10nm以下、例えば、3nm~10nmである。説明に束縛されるものではないが、有機溶媒の高い比は、溶媒混合物内の成分の主に分子的な溶液をもたらし得る。
【0248】
別の好ましい態様では、単相ナノ分散系における小胞のD90は、2つの相の間の比が1:3である場合、60nm以下、より好ましくは25nm未満、さらにより好ましくは20nm以下、例えば、5nm~20nmである。説明に束縛されるものではないが、このより高い割合の水では、ミセルの典型的なサイズおよび均質性を示すミセル溶液が形成される。混合物は、わずかなチンダル効果を有するほぼ透明な外観を示し、公称孔径0.22μmの滅菌フィルターを通して自由に濾過可能である。
【0249】
1:5の溶媒混合比では、得られた調製物は濁っている。DLSによるサイズ分布測定では、約1,000μm(1000nm)の平均サイズを有する広範囲な不均質なスペクトルの小胞が明らかにされる。この分散物は、高圧を印加するだけで、公称孔径0.22μmのメンブレン滅菌フィルターを通して濾過することができる。
【0250】
好ましい一態様では、有機相間の比は1:1~1:4であり、単相ナノ分散系における小胞、好ましくはミセルのサイズは5nm~60nmである。
【0251】
本発明による方法は、小胞へのリポペプチドの高い配合を可能にする。凍結乾燥後、少量の有機溶媒、好ましくはブタノール、より好ましくはtert-ブタノールが依然として凍結乾燥物中に存在し得る。したがって、本発明による製剤は、本発明の方法に従って調製される場合、少量の有機溶媒、好ましくはブタノール、より好ましくはtert-ブタノールを依然として含み得る。
【0252】
当業者であれば、工程(i)および工程(ii)の順序が交換可能であることを理解するであろう。同様に、当業者であれば、PGおよびリン脂質(a)をある量の有機溶媒にそれぞれ別個に溶解することができ、次いで、2つの有機相を組み合わせて工程(i)の有機相をもたらすことができるか、または両化合物を並行してもしくは連続して同じ量の有機溶媒に溶解し、工程(i)の有機相をもたらすことができることを理解するであろう。
【0253】
本発明による方法のための好ましいリポペプチドも、上記の本発明による製剤について記載されている。
【0254】
通常、工程(i)~(iv)は、室温(25℃)付近および室温(25℃)で、ならびに標準圧力(101.325kPa)付近および標準圧力(101.325kPa)で行われ得る。一般に、工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)は、好ましくは0℃~40℃、より好ましくは15℃~35℃、例えば、18℃~28℃の温度で個々に行われ得る。4つの工程のいずれかは、より高いおよびより低い圧力でも個々に行われ得るが、好ましくは、工程のいずれかは、90kPa~112kPa、より好ましくは95kPa~116kPa、最も好ましくは標準圧力付近、例えば、101.325kPa±2%の圧力で個々に行われる。
【0255】
任意で、方法は、1つまたは複数のさらなる工程を含む。
【0256】
好ましくは、1つのさらなる工程は、工程「滅菌濾過」である:
・(a)、(b)、(d)、および任意で(e)、および任意で(d)を含む得られた製剤を滅菌濾過する。
【0257】
好ましくは、滅菌濾過は、メンブレンフィルター、例えば、PVDFメンブレンフィルターを使用することによって行われる。メンブレンフィルターの公称孔径は200nm以下であることが好ましい。
【0258】
工程(i)~(iv)と同じ好ましい温度および圧力が、滅菌濾過工程にも適用される。
【0259】
任意で、方法は、リポペプチドを有するナノ分散製剤の任意の工程「凍結乾燥」をさらに含む:
・本明細書において定義される(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)を含む、工程(iv)(または工程(iv)後の滅菌濾過工程)から得られた製剤を凍結乾燥させ、本明細書において定義される(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)を含む凍結乾燥物をもたらす。
【0260】
当業者であれば、凍結乾燥(freeze drying)(凍結乾燥(lyophilization))技術をよく知っている。通常、本発明による製剤の凍結乾燥は、+40℃~-40℃、好ましくは+30℃~-10℃の温度で行われる。凍結乾燥工程は、1回または複数回繰り返されてもよい。通常、圧力は1000hPa~0.001hPaである(1hPa=1mbar)。好ましくは、凍結乾燥工程は、1hPa~0.01hPa、例えば、約0.1hPaの圧力で行われる。
【0261】
任意で、方法は、凍結乾燥の工程を含み、方法は、(a)、(b)、(d)、および任意で(c)、および任意で(e)を含む凍結乾燥物を好ましくは薬学的水溶液によって再水和させる工程をさらに含む。
【0262】
別の好ましい態様は、
(i)好ましくはPCおよびPG(成分(a))を含むリン脂質(a))と、任意でコレステロール(成分(c))とをブタノール、好ましくはtert-ブタノールに溶解することによって有機相を調製する工程、
(ii)糖成分(d)、好ましくはトレハロースと、任意で成分(d)ではない等張化剤(成分(e))とを水性媒体に溶解することによって水相を調製する工程であって、好ましくは、水性媒体が、3~9、例えば、約5.5のpHを有する(例えば、酢酸ナトリウム緩衝液を使用することによって)、工程、
(iii)有機相と水相とを組み合わせる工程、
(iv)リポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、工程(i)の有機相に加え、次いで、リポペプチドを含む有機相を、工程(iii)に記載されるように水相と混合する工程、またはリポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、工程(ii)の水相に加え、次いで、リポペプチドを含む水相を、工程(iii)に記載されるように有機相と混合する工程、またはリポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、工程(iii)の組み合わされた相に、好ましくは工程(iii)の組み合わされた相に加える工程のいずれかであって、これが、リポペプチド製剤をもたらし、そのようにして得られた該リポペプチド製剤が単相ナノ分散系である、工程、
(v)工程(iv)の製剤を凍結乾燥させ、(a)、(b)、(d)、および任意で(c)、および任意で(e)を含む凍結乾燥物をもたらす工程
を含む、本発明による製剤を調製する方法に関する。
【0263】
任意で、方法は、好ましくは工程(iv)の前、または工程(v)の前に、工程「滅菌濾過」工程などのさらなる工程を含む。
【0264】
別の好ましい態様は、
(i)好ましくはPCおよびPG、(成分(a))を含むリン脂質(a))と、任意でコレステロール(成分(c))とをブタノール、好ましくはtert-ブタノールに溶解することによって有機相を調製する工程、
(ii)糖成分(e)、好ましくはトレハロースを水性媒体に溶解することによって水相を調製する工程であって、好ましくは、水性媒体が、3~9、例えば、約5.5のpHを有する(例えば、酢酸ナトリウム緩衝液を使用することによって)、工程、
(iii)有機相と水相とを組み合わせる工程、
(iv)リポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを、組み合わされた相に加えて、本発明によるリポペプチド製剤を受け取るか、または
工程(iii)において有機相を水相と混合する前に、リポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを有機相に加えるか、または
工程(iii)において水相を有機相と混合する前に、リポペプチド、好ましくはブレビルチドもしくはリラグルチド、より好ましくはブレビルチドを水相に加える工程
を含む、リポソーム製剤、好ましくは本発明による薬学的リポソーム製剤を調製する方法に関する。
(v)工程(iv)のリポペプチド製剤を凍結乾燥させ、(a)、(b)、(d)、および任意で(c)、および任意で(e)を含む凍結乾燥物をもたらす工程。
(vi)工程(v)の凍結乾燥物を好ましくは薬学的水溶液によって再水和させ、好ましくは薬学的リポソーム製剤をもたらす工程。
【0265】
別の好ましい態様は、好ましくは上記の工程(i)~(iv)、および上記で概説された少なくとも任意の工程「凍結乾燥」に従って調製された、(a)、(b)、(c)、任意で(d)、(e)、および任意で(f)を含む凍結乾燥物を薬学的水溶液によって再水和させる工程を含む、凍結乾燥物の「再水和」の工程を含む、本発明による薬学的リポソーム製剤を調製する方法に関する。
【0266】
通常、そのような工程は、工程(i)~(iv)について記載されたのと同じ温度および圧力で行われ得る。
【0267】
均質化のためには、得られたリポソーム分散物を穏やかに旋回させるかまたはボルテックスすることで十分である。リポソーム製剤がリポペプチド製剤を必要とする患者に注射するのに適しているべきであれば、さらに複雑な工程によってリポソームのサイズを縮小する必要はない。
【0268】
好ましい一態様では、有機相、組み合わされた有機相および水相、リポペプチド製剤、凍結乾燥物またはリポソーム製剤中のリポペプチドと1つまたは複数のリン脂質との間の比は、それぞれ該有機相、組み合わされた有機相および水相、リポペプチド製剤、凍結乾燥物またはリポソーム製剤中のリポペプチドとリン脂質との総量に基づいて、それぞれ1:333~1:2、例えば、1:333~1:49(リポペプチドが、例えば、リラグルチドである場合)、または1:33~1:6.7(リポペプチドが、例えば、ブレビルチドである場合)である。
【0269】
水溶液
本明細書において使用される場合、好ましくは薬学的水溶液は、薬学的水性媒体、好ましくは水、または例えば、塩が存在する(好ましくは薬学的)水性媒体を含む。塩が存在する該水性媒体は、好ましくは、生理学的濃度の少なくとも1つの塩、好ましくは等張濃度の少なくとも1つの塩、例えば、生理食塩水、ラクテートリンゲル液および/またはプラズマライトなどを含む水性媒体、好ましくは水である。したがって、(好ましくは薬学的)水性媒体は、好ましくは、ヒトの生理学的血漿電解質濃度、重量オスモル濃度およびpHを反映する塩濃度、重量オスモル濃度およびpHを有する。好ましくは薬学的水溶液は、水、または水と好ましくは等張濃度の少なくとも1つの塩との組合せであることが好ましく、溶媒の総量の水の量は、少なくとも80%であることが好ましい。より好ましくは、(好ましくは薬学的)水溶液は、水または生理食塩水である。
【0270】
一態様では、薬学的水溶液は、水、または水と、塩、例えば、生理食塩水、ラクテートリンゲル液および/もしくはプラズマライトなどとの組合せからなり、溶媒の総量の水の量は少なくとも80%である。より好ましくは、(好ましくは薬学的)水溶液は、水または生理食塩水である。さらにより好ましい態様では、薬学的水溶液は水からなる。
【0271】
さらに好ましい態様は、本明細書において記載される溶媒と、等張化剤とを含む薬学的水溶液に関する。水溶液中で使用するための好ましい等張化剤は、本発明による製剤について既に記載されている。
【0272】
さらに好ましい態様は、本明細書において記載される溶媒、および等張化剤、および緩衝液を含む薬学的水溶液に関する。水溶液中で使用するための好ましい等張化剤および緩衝液系は、本発明による製剤について既に記載されている。
【0273】
好ましくは、薬学的水溶液のpHは、得られたリポソーム製剤のpHが、5~8、好ましくは5~7.6、より好ましくは6~7.6(例えば、わずかに酸性から中性のいずれか、例えば、6.5~7、または7.2~7.6、例えば、7.3~7.5)であるように選択される。当業者であれば、本発明による調製方法に応じて、凍結乾燥物が緩衝液系を既に含むことができるか、またはそのような緩衝液系に薬学的水溶液が提供されることを知っている。当業者であれば、過度の負担を伴わず、最終リポソーム製剤を調製するための薬学的水溶液に関する要件を計算することができる。
【0274】
本発明の方法に使用され得る好ましい張性剤、緩衝液、溶媒、リン脂質、ホスファチジルグリセロール、リポペプチド、コレステロール(およびその誘導体)、サッカロース成分、前述のいずれかの比および量は、本発明による製剤について既に上述されている。
【0275】
好ましくは、本発明による方法に使用される様々な成分の比は、本明細書において記載される要件を有する製剤を調製するために当業者によって選択される。当業者であれば、
(a)(a)~(e)の総重量に基づいて40%~93%の範囲内の、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG))、もしくは前述のいずれかの誘導体、またはそれらの混合物からなる群より選択されるリン脂質、
(b)(a)~(e)の総重量に基づいて3%~13%の範囲内のブレビルチド、または(a)~(e)の総重量に基づいて0.3%~2%の範囲内のリラグルチド、
(c)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~14%の範囲内のコレステロールまたはその誘導体、
(d)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~35%の範囲内の、グリシン、アルギニン、プロリン、もしくは増量剤として好適であることが公知の任意の他のアミノ酸、またはスクロース、トレハロース、アラビノース、エリスリトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルトトリオース、マンニトール、マンノビオース、マンノース、リボース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、キシロース、デキストラン、もしくは前述のいずれかの混合物からなる群より選択される糖成分、
(e)(a)~(e)の総重量に基づいて0%~35%の範囲内の、(d)ではない等張化剤
を含む製剤であって、
(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の合計が合計100%になり、(a)~(e)の組み合わされた量が、製剤および任意の好ましい製剤の総重量に基づいて10%~100%である製剤を調製するために必要な量および濃度を容易に計算することができる。
【0276】
好ましい一態様では、本発明による方法において、緩衝液は、水相または水溶液のいずれかに存在しなければならない。
【0277】
別の好ましい態様では、本発明による方法において、同じまたは異なる緩衝液が水相中に存在し、水溶液中に存在し、好ましくは緩衝液は同じである。
【0278】
さらに別の好ましい態様では、本発明による方法において、増量剤が水相中に存在する。
【0279】
さらに別の好ましい態様では、本発明による方法において、増量剤および緩衝液が水相中に存在する。
【0280】
さらに別の好ましい態様では、本発明による方法において、等張化剤が水相中に存在する。
【0281】
さらに別の好ましい態様では、本発明による方法において、等張化剤および緩衝液が水相中に存在する。
【0282】
さらに別の好ましい態様では、本発明による方法において、等張化剤、増量剤および緩衝液が水相中に存在する。
【0283】
さらに別の好ましい態様では、本発明による方法において、等張化剤が水溶液中に存在する。
【0284】
さらに別の好ましい態様では、本発明による方法において、等張化剤および緩衝液が水溶液中に存在する。
【0285】
キット
本発明のさらなる局面は、本発明による製剤を含み、薬学的水溶液を分離するキットに関する。例えば、本発明による製剤は1つの容器内にあり、薬学的水溶液は別の容器内にある。
【0286】
好ましい一態様では、本発明による製剤は凍結乾燥製剤である。
【0287】
別の好ましい態様では、本発明による製剤は凍結乾燥製剤であり、容器内の該製剤の一部は、成分(a)~(e)の総和176.6mg当たり8mg~成分(a)~(e)の総和176.6mg当たり19.4mgの濃度のブレビルチド(化合物(c))を含有し、ブレビルチドの量は、製剤中の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の総和と比較して5%~11%である。好ましい一態様では、容器内の本発明による製剤の一部の重量は、100mg~250mgである。
【0288】
好ましい一態様では、薬学的水溶液の一部を本発明による凍結乾燥製剤に加えた後(またはその逆)、本発明による得られた薬学的リポソーム製剤中の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の合計の量が20%~2%、より好ましくは15%~7%、例えば、約12%であるように、薬学的水溶液の一部の重量が計算されるように、薬学的水溶液が別の容器に分割される。
【0289】
2成分薬学的水溶液と凍結乾燥製剤との混合は、患者への投与直前に薬学的リポソーム製剤を調製することを可能にする。
【0290】
記載された発明は、その特定の態様を参照して説明されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、均等物を置き換えることができることを当業者は理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス工程または工程を本発明の目的の範囲まで採用するために、多くの改変を行うことができる。そのようなすべての改変は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0291】
図面
図1図1は、凍結乾燥プロセスのプロセスチャートを示す。
図2図2は、有機相と水相との比(v/v)に応じた、観察された小胞のサイズ分布を示す。
図3図3は、0.9%NaCl溶液中で再構成した後の1.9μmのリポソームの平均サイズを示す(D90=3.6μm)。
図4図4は、精製水中で再構成した後の0.2μmのリポソームの平均サイズを示す(D90=2μm)。
図5図5は、余分なリポソーム体積(非カプセル化ブレビルチド)のRP-HPLCクロマトグラムを示す。
図6図6は、27G×1インチのカニューレを取り付けた単回使用3mLシリンジからのブレビルチドアセテートリポソーム製剤(1.5ml)の力-変位曲線を示す。
【0292】
本発明の他の局面および利点は、限定ではなく例示を目的として与えられる以下の実施例に記載される。
【0293】
本明細書において引用された各刊行物、特許、特許出願または他の文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0294】
物質および材料
以下の物質および材料を使用した(表1)。
【0295】
(表1)物質および材料
【0296】
以下の機器および装置を使用した。
HPLC機器:
同定番号:Sys 1
製造業者:Agilent Technologies(Santa Clara,California USA)
タイプ:1260 Series
パイロット凍結乾燥機(GT1):
製造業者:Hof Sonderanlagenbau(Lohra,Germany)
0.5m2棚面積
粒子サイザー:
製造業者:Malvern(Malvern,GB)
タイプ:Mastersizer 2000
DLSプレートリーダー:
製造業者:Wyatt Technology Corporation(Santa Barbara,CA,USA)
タイプ:DynaproプレートリーダーII
追加の実験室機器
・マグネチックスターラー(IKA Werke)
・ホールピペット(Gilson)
・カメラ機器(DGMacro 105mm 1:2.8を備えたCanon、EOS 600D)
・pHメーター(InLab Micro電極を備えたMettler Toledo、SevenMulti)
・天秤(Kern、EW6200-2NM、ABJ-NM ABS3204N
・精製水供給(Siemens、Ultra Clean UV UF(商標))
・ボルテックスミキサー(Scientific Industries Inc.、Vortex Genie II)
・遠心分離機:ThermoScientific、Heraeus Pico 17
・オービタルシェーカー:Wisd Laboratory Instruments、WiseShake SHO-1D
【0297】
以下のプロトコルをRP-HPLC分析に使用した(表2を参照)。
【0298】
(表2)RP-HPLCのクロマトグラフィー条件
【0299】
追加の実験室機器
・マグネチックスターラー(IKA Werke)
・ホールピペット(Gilson)
・カメラ機器(DGMacro 105mm 1:2.8を備えたCanon、EOS 600D)
・pHメーター(InLab Micro電極を備えたMettler Toledo、SevenMulti)
・天秤(Kern、EW6200-2NM、ABJ-NM ABS3204N
・精製水供給(Siemens、Ultra Clean UV UF(商標))
・ボルテックスミキサー(Scientific Industries Inc.、Vortex Genie II)
・遠心分離機:ThermoScientific、Heraeus Pico 17
・オービタルシェーカー:Wisd Laboratory Instruments、WiseShake SHO-1D
【0300】
単相ナノ分散系によるリポソーム製剤の調製
【0301】
実施例1:ナノ分散系の調製
TBAの利用による分散物生成には、以下の工程を含めた。
【0302】
ホスファチジルグリセロール(PG)、S100(高度に精製された大豆レシチン)およびtert-ブタノール(TBA)を含有する有機相を秤量し、続いて、加熱(70℃)、および約40~80分間の撹拌によってPGおよびS100をTBAに溶解した。
【0303】
成分が均質に溶解したらすぐに、有機相を周囲温度まで冷却した。
【0304】
水相:酢酸を用いて、10mM酢酸ナトリウム緩衝液をpH5.5に調整した。トレハロース(5%)を加え、撹拌下で溶解した。
【0305】
水溶液を連続撹拌下で有機相に少量ずつ加えた。水溶液の第1の部分を透明なミセル系に溶解した。水相を完全に加えた後、低粘度の乳白色単相ナノ分散系が生じた。
【0306】
穏やかに撹拌しながら、ブレビルチドアセテートを加え、ミセル系に配合した。
【0307】
公称孔径200nmのPVDFメンブレンフィルターを通して、最終バルク溶液を滅菌濾過した。
【0308】
実施例2:凍結乾燥
実施例1から得られた製剤を滅菌ガラスバイアルに充填した(2Rバイアル内1.5g)。
【0309】
充填したバイアルに凍結乾燥位置で栓をし、凍結乾燥機に入れた。
【0310】
以下の凍結乾燥サイクルを行った(表3)。
【0311】
(表3)凍結乾燥プロセスのプログラム
【0312】
以下の装置を使用した:
パイロット凍結乾燥機(GT3)(Hof Sonderanlagenbau(Lohra,Germany))、棚面積0.25m2、アイスコンデンサー容量5kg。
【0313】
プロセスをオンラインデータ取得によってモニタリングした。プロセスチャート(図1を参照)は、凍結乾燥プロセスが首尾よく完了したことを示した。
【0314】
実施例3:リポソーム製剤の調製
1.5mlの精製水または1.5mlの0.9%塩化ナトリウム溶液のいずれかによって、凍結乾燥物を再構成した。凍結乾燥物の再構成は、10秒以内に迅速かつ自発的であった。得られた分散物を、5分以内に穏やかに旋回させるか、ボルテックス混合することによって均質化した。
【0315】
いずれの場合も、視覚的に異なるリポソーム分散物が得られた。精製水によって再構成された凍結乾燥物の方がより高い透明性および乳白色を示し、サブミクロンサイズの粒子を示したが、精製水によって再構成されたものの方がより高い濁度およびより白濁した外観を示した。より具体的には、精製水によって再構成された凍結乾燥物の方がより高い透明性および乳白色を示し、サブミクロンサイズの粒子を示したが、生理食塩水によって再構成されたものの方がより高い濁度およびより白濁した外観を示し、より大きな直径を有する多層リポソームを示した。したがって、特に皮下デポー製剤の場合、生理食塩水を使用して凍結乾燥物を再構成することが有利である。
【0316】
MALS粒子サイザーを使用して、両再構成変異体を分析した。
【0317】
実施例4:小胞/リポソームサイズ分布
MALS(多角度光散乱):液体試料セルを備えたhydro 2000μP試料セル機器(MALS)を備えたMalvern、Mastersizer 2000を使用して、リポソーム/小胞サイズを決定した。試料セルに分散剤(約18mL、0.9%塩化ナトリウムまたは精製水)を充填し、循環ポンプ速度を増加させることによって気泡を除去した。機器をブランクにした。十分なシグナル吸収に達するまで試料を加えた。測定を開始し、その後3回測定を行った。要約したデータから結果を計算した。
【0318】
DLS(動的光散乱):Dynapro Plate Reader(Wyatt Technology)機器を使用して、リポソーム/小胞サイズ分布も決定した。試料(30μL)を透明な底部を有する96ウェルプレートに充填し、プレートをDLSプレートリーダーに移し、試料当たり3ウェルを充填した。測定を開始した。温度は25℃に設定した。取得時間:5秒、ウェル当たり5回の取得を行った。観察された粒子の質量加重平均半径を計算した。
【0319】
4.1 単相ナノ分散系における小胞(ミセル)サイズ
形成された小胞のサイズを決定するために、動的光散乱によって有機相と水相との様々な比を分析した。
【0320】
試験した比は、有機相:水相1:1、1:3および1:5であった。
【0321】
1:1の比は、濁りのない透明な溶液をもたらした。少数の極めて小さい粒子を検出することができた。平均サイズは約5nm(3nm~10nm、図2を参照)であった。この説明に束縛されるものではないが、有機溶媒の高い比は、溶媒混合物内の成分の主に分子的な溶液をもたらすように思われる。
【0322】
1:3の溶媒混合比内では、観察された粒子の数およびサイズは、約15nmの平均サイズ(10nm~20nm、図2を参照)に実質的に増加した。ミセルの典型的なサイズおよび均質性を示すミセル溶液が形成された。混合物は、わずかなチンダル効果を有するほぼ透明な外観を示し、公称孔径0.22μmの滅菌フィルターを通して自由に濾過可能であった。
【0323】
1:5の溶媒混合比では、得られた調製物は濁っていた。DLSによるサイズ分布測定では、多層リポソームに典型的な約1μmの平均サイズを有する広範囲な不均質なスペクトルの小胞が明らかにされた。このリポソーム分散物は、高圧を印加するだけで、公称孔径0.22μmのメンブレン滅菌フィルターを通して濾過され、小胞の変形をもたらすことができる。図2は、有機相と水相との比(v/v)に応じた、観察された小胞のサイズ分布を示す。
【0324】
4.2 リポソーム製剤(再構成凍結乾燥物)中のリポソームサイズ
以下のサイズ分布が観察された:
0.9%NaCl溶液中で再構成すると、リポソームの平均サイズは1.9μmになる(D90=3.6μm、図3を参照)。
精製水中で再構成すると、リポソームの平均サイズは0.2μmになる(D90=2μm、図4を参照)。
【0325】
測定値により、分散物の視覚的印象が裏付けられた:塩化ナトリウム溶液中で再構成した方がより大きなリポソームが形成されたのに対して(約1.9μmの主要画分、3.6μmのD90)、精製水中で再構成した方がより小さなサイズのリポソームが観察された(約0.2μmの主要画分、2μmのD90)。上述のように、薬物配合量が増大することから、より大きい(多層)リポソームが好ましい。
【0326】
実施例5:ブレビルチドのリポソームカプセル化
ブレビルチドおよび製剤の含有量および純度の決定。
【0327】
遊離(非カプセル化)ブレビルチドの量を決定することによって、ブレビルチドのリポソームカプセル化を試験した。
【0328】
1.5mlの0.9%(w/w)NaCl溶液または水によって、実施例2からの凍結乾燥試料を再構成した。ブレビルチドのリポソームカプセル化を決定するための試料を混合し、20分間放置して、完全なヒドラジン化およびリポソーム形成を可能にした。その後、再構成された試料を0.9%塩化ナトリウム溶液で1:1に希釈し、十分に混合した。試料を21460 xgで遠心分離して、脂質相を溶媒から分離した。上清を回収し、RP-HPLCによって分析した。
【0329】
原薬の製造業者、Chengdu Shengnuo Biopharm Co.Ltd.から提供されるようにRP-HPLC法を使用した。表2に概説されるように、クロマトグラフィー条件を分析に使用した。
【0330】
1.5mLの0.9%(w/w)塩化ナトリウム溶液によって試料を再構成した。試料を十分に混合し、20分間実験台に放置して、完全なヒドラジン化およびリポソーム形成を可能にした。その後、再構成された試料を0.9%塩化ナトリウム溶液で1:1に希釈し、十分に混合した。試料を21460 xgで遠心分離して、脂質相を溶媒から分離した。上清を回収し、分析した。
【0331】
DS較正標準と、試料調製によって得られたクロマトグラムからのブレビルチドのピーク面積とを使用して、mg/mLとして結果を報告する。図5は、余分なリポソーム体積(非カプセル化ブレビルチド)のRP-HPLCクロマトグラムを示す。
【0332】
上清中に少量のブレビルチドを検出することができた。較正標準と比較することによって、遊離ブレビルチドアセテートの量は847μg(バイアル当たり)と計算され、これは94%のカプセル化効率に相当する。同じ調製物の第2のバイアルでは、96%のカプセル化効率(584μg/バイアル)が決定された。
【0333】
実施例6:押出力
それぞれ水または0.9%NaClによって凍結乾燥物を再構成した後、リポソーム分散物を標準的な単回使用3mL PPシリンジに吸引し、27G×1インチのカニューレを取り付け、残りの空気をシリンジから除去した。力/変位測定装置(Thumler、Z3)を使用して、規定の横断速度によって、シリンジの内容物を分注した。
【0334】
結果を図6に示す。この図は、27G×1インチのカニューレを取り付けた単回使用3mLシリンジからのブレビルチドアセテートリポソーム製剤(1.5ml)の力-変位曲線を示す。図1の歪み1:速度200mm/分;図5の歪み2および3:速度500mm/分。
【0335】
押出力の評価によって、30~50Nの中程度の力が、リポソームブレビルチド製剤を分注するのに十分であることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】