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特表2024-535130制御性T細胞を有効成分として含む退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】制御性T細胞を有効成分として含む退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20240918BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20240918BHJP
【FI】
A61K35/17 ZNA
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/02
A61P21/00
C12N5/0783
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540539
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 KR2022013610
(87)【国際公開番号】W WO2023038489
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0121783
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524097654
【氏名又は名称】ブイティー バイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VT BIO CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】#201,2F,83,Jingoksandan 2beon-ro Gwangsan-gu Gwangju 62465,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イ、スン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョン ウン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BD14
4B065BD15
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087MA65
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZA22
4C087ZA94
(57)【要約】
制御性T細胞を有効成分として含む退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物に関するものであり、薬学的組成物は、M1ミクログリア細胞の活性化の抑制またはDAMへの進行を抑制し、M2分極化を促進し、タウタンパク質のリン酸化を抑制し、抗炎症性サイトカインの発現を増加させて神経細胞を保護するので、退行性脳疾患の予防または治療に有効に使用可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御性T細胞(regulatory T cell)を有効成分として含む
ことを特徴とする退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項2】
前記制御性T細胞は、ヒト制御性T細胞(human regulatory T cell)である
請求項1に記載の退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項3】
前記制御性T細胞は、NOS2、CD86、IL-12a、IL-1β、IL-1β、IL-23、IL-6、TNF-α、Trem2、Tmem119、Cc3cr1、ItgaxおよびCcl6の発現を抑制するものである
請求項1に記載の退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項4】
前記制御性T細胞は、IL-4、IL-10、TGF-β、Arg1、Ym1、Mrc1、IL-2の発現を増加させるものである
請求項1に記載の退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項5】
前記退行性脳疾患は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、認知症(dementia)、進行性核上性麻痺(Progressive supranuclear palsy)、多系統萎縮症(Multiple system strophy)、オリーブ橋小脳変性症(Olivopontocerebellar atrophy; OPCA)、シャイ・ドレーガー症候群(Shy-Drager syndrome)、線条体黒質変性症(Striatonigral degeneration)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis; ALS)、本態性振戦症(Essential tremor)、大脳皮質基底核変性症(Cortico-basal ganlionic degeneration)、びまん性レビー小体病(Diffuse Lewy body disease)、パーキンソン-ALS-認知症複合症(Parkinson-ALS-dementia complex of Guam)およびピック病(Pick’s disease)からなる群から選択されるいずれか一つである
請求項1に記載の退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項6】
前記組成物は、脊髄腔内投与用である
請求項1に記載の退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の薬学的組成物を個体に投与するステップを含む
ことを特徴とする退行性脳疾患の予防または治療方法。
【請求項8】
前記制御性T細胞は、ヒト制御性T細胞(human regulatory T cell)である
請求項7に記載の退行性脳疾患の予防または治療方法。
【請求項9】
前記薬学的組成物は、脊髄腔内投与用である
請求項7に記載の退行性脳疾患の予防または治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御性T細胞を有効成分として含む退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease;AD)は、記憶の認知機能の漸進的な喪失が特徴である通常の神経退行性疾患である。これまでアルツハイマー病の原因は完全に判明されておらず、神経炎症は、アルツハイマー病の病理の発生の中心過程であると考えられている。アルツハイマー病患者に関する研究は、神経の委縮に先立って、アルツハイマー病の初期の段階において持続的な神経炎症に対する証拠を提供する。
【0003】
一方、近頃、免疫療法分野の発展は、神経疾患に対する新たなかつ強力な様相を作り出した。具体的には、制御性T細胞療法は、脳治療の版図を再編し始めている。制御性T細胞(Treg)は、免疫体系を調節し、免疫恒常性を保持するT細胞の小さな下位集合である。CD4CD25Foxp3制御性T細胞は、CD4T細胞のうちの5~10%を占め、免疫寛容を誘導し、免疫恒常性を保持するのに重要な役割を果たす。虚血性脳卒中の患者と動物モデルに関する研究は、出血を遮断し、感覚運動(sensorimotor)機能を改善するTreg細胞の治療効能を立証した。また、虚血性マウスに制御性T細胞を静脈注射にて投与したとき、脳出血変形が極的に緩和されて注入されたTreg細胞の神経保護効果を示唆した。自己免疫性脳疾患の他に、神経退行性疾患の治療用途にも研究されているが、Treg細胞の注入がアルツハイマー病の治療に役立つかどうかは依然として曖昧なところがある。
【0004】
中枢神経系の主な免疫細胞であるミクログリア細胞(microglia、小膠細胞)は、脳炎症を調節するのに重要な役割を果たす。アルツハイマー病においては、活性化したミクログリア細胞が様々な炎症反応を誘導して神経炎症を調節することが知られている。一般に、ミクログリア細胞は、前炎症性(pro-inflammatory)M1および免疫抑制性(immunosupperssive)M2という2種類の互いに異なる活性化表現型を有している。M1表現型のミクログリア細胞は、主として炎症性サイトカインおよびケモカインを放出し、炎症反応に欠かせない必須遺伝子を発現することにより、炎症反応を誘導する。これに対し、M2表現型のミクログリア細胞は、炎症反応に対する保護または治療のために数多くの抗炎症性サイトカイン、ケモカイン、抗神経性因子を放出する。そのため、ミクログリア細胞のM1分極化を抑制し、M2分極化を誘導するのであれば、アルツハイマー病に対する高い潜在的な治療効果を有することが見込まれる。最近の研究によれば、アルツハイマー病、ALS、前頭葉性認知症、老化など神経退行性疾患において上向き調節された遺伝子の集合であると定義されるDAM(disease-associated microglia;疾患に関連したミクログリア細胞)または「神経退行性」表現型が観察された。しかしながら、ミクログリア細胞またはDAM表現型において恒常性機能の損失が神経細胞の損失とどれくらいの相関があるか、DAMが神経退行性疾患に得になるか、あるいは、害になるかは依然として不明である。
【0005】
したがって、本発明者らは、アルツハイマー病の治療のために脊髄腔内に注入されたヒト制御性T細胞(hTreg)の影響を調べようとし、hTregは、脳の神経炎症を抑制し、炎症性ミクログリア細胞の発現を抑制して神経の保護効果があることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、制御性T細胞(regulatory T cell)を有効成分として含む退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供することである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、退行性脳疾患の予防または治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するために、本発明は、制御性T細胞(regulatory T cell)を有効成分として含む退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0009】
次いで、本発明は、前記薬学的組成物を個体に投与するステップを含む退行性脳疾患の予防または治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の薬学的組成物は、M1ミクログリア細胞の活性化の抑制またはDAMへの進行を抑制し、M2分極化を促進し、タウタンパク質のリン酸化を抑制し、抗炎症性サイトカインの発現を増加させて神経細胞を保護するので、退行性脳疾患の予防または治療に有効に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】動物モデルの用意過程を簡単に図式化させて示す模式図である。
図2】ADマウスの手動回避実験結果を示すグラフである。
図3】海馬におけるM1マーカーのmRNAの発現レベルを示すグラフである。
図4】海馬におけるDAMマーカーのmRNAの発現レベルを示すグラフである。
図5】海馬におけるM1、M2、脳由来の神経成長因子およびDAMマーカーのタンパク質の発現レベルを示すグラフである。
図6】海馬におけるM2マーカーのmRNAの発現レベルを示すグラフである。
図7】海馬におけるCD116およびTrem2に対する免疫蛍光染色結果を示す写真である。
図8】海馬におけるリン酸化したタウタンパク質に対する免疫蛍光染色結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態について詳しく説明する。但し、下記の実施形態は、本発明に対する単なる例示として提示されるものであって、当業者にとって周知の著名な技術または構成についての具体的な説明が本発明の要旨をかえって曖昧にする虞があると認められる場合にはその詳細な説明は省略されることがあり、これにより本発明が格別に制限されることはない。本発明は、添付の特許請求の範囲の記載およびこれから解釈される均等な範ちゅう内において多種多様な変形および応用が可能である。
【0013】
また、この明細書中において用いられる用語(terminology)は、本発明の望ましい実施形態を適切に表現するために用いられた用語であって、これらは、使用者、運用者の意図又は本発明が属する分野の慣例などによって異なってくる可能性がある。よって、これらの用語に関する定義は、この明細書の全般に亘っての内容を踏まえて行われることが妥当であるといえる。明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0014】
この明細書の全般にわたって、特定の物質の濃度を示すために用いられる「%」は、別途の断りのない限り、固体/固体は(w/w)%、固体/液体は(w/v)%、そして液体/液体は(v/v)%である。
【0015】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0016】
本発明は、制御性T細胞(regulatory T cell)を有効成分として含む退行性脳疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0017】
本発明において使われる用語「制御性T細胞」とは、T細胞亜型のうち唯一に免疫抑制を誘導可能な細胞であって、過剰に活性化した免疫反応を減少させたり不要な免疫反応を抑制したりする役割を果たすT細胞(T cell)の一種のことをいう。前記制御性T細胞は、免疫反応(immune response)を抑制してアレルギー、自己免疫、炎症、微生物に対する反応などを調節する。
【0018】
また、前記制御性T細胞は、ヒト制御性T細胞(human regulatory T cell)であってもよいが、これに何ら制限されるものではない。
【0019】
さらに、前記制御性T細胞は、M1ミクログリア細胞関係のマーカーであるNOS2、CD86、IL-12a、IL-1β、IL-1β、IL-23、IL-6およびTNF-αの発現を抑制するものであってもよい。
【0020】
さらにまた、前記制御性T細胞は、DAM(disease-associated microglia)マーカーであるTrem2、Tmem119、Cc3cr1、ItgaxおよびCcl6の発現を抑制するものであってもよい。
【0021】
さらにまた、前記制御性T細胞は、ミクログリア細胞のM2分極化関係のマーカーであるIL-4、IL-10、TGF-β、Arg1、Ym1、Mrc1およびIL-2の発現を増加させるものであってもよい。
【0022】
さらにまた、前記退行性脳疾患は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、認知症(dementia)、進行性核上性麻痺(Progressive supranuclear palsy)、多系統萎縮症(Multiple system strophy)、オリーブ橋小脳変性症(Olivopontocerebellar atrophy; OPCA)、シャイ・ドレーガー症候群(Shy-Drager syndrome)、線条体黒質変性症(Striatonigral degeneration)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis; ALS)、本態性振戦症(Essential tremor)、大脳皮質基底核変性症(Cortico-basal ganlionic degeneration)、びまん性レビー小体病(Diffuse Lewy body disease)、パーキンソン-ALS-認知症複合症(Parkinson-ALS-dementia complex of Guam)およびピック病(Pick’s disease)からなる群から選らばれるものであってもよいが、神経炎症によって引き起こされる神経疾患であれば、格別に制限なしに含まれ得る。
【0023】
さらにまた、前記薬学的組成物は、脊髄腔内投与用であってもよいが、これに何ら制限されるものではない。
【0024】
本発明において使われた用語「予防」とは、本発明に係る組成物の投与により退行性脳疾患の発症、進展および再発を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0025】
本発明において使われた用語「治療」とは、本発明に係る組成物の投与により退行性脳疾患およびこれによる合併症の症勢を好転させたり合併症の症勢に有利に働くように変更したりするあらゆる行為を意味する。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、大韓医学協会などにおいて提示された資料を参照して本発明の組成物が効く疾患の正確な基準を知り、改善、向上および治療された度合いを判断することが可能である。
【0026】
本発明に係る組成物は、薬学的に有効な量の制御性T細胞を単独にて含んでいてもよいし、あるいは、一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含んでいてもよい。上記において、薬学的に有効な量とは、免疫疾患の症状を予防、改善および治療するのに十分な量のことをいう。上記において、「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与されるとき、通常、胃腸障害、目まいなどのアレルギー反応またはこれと類似の反応を引き起こさない組成物のことをいう。
【0027】
また、本発明の組成物は、臨床投与の際に経口または非経口にて投与可能であり、通常の医薬品製剤の形態で使用可能である。投与形態は、経口、粘膜(例えば、鼻腔、舌下、膣、バッカル、または直腸)、非経口的(例えば、皮下、静脈、ボーラス注入、筋肉内または動脈内)、局所(例えば、目)、経皮(transdermal)または無傷の皮膚を通しての(transcutaneous)の方式であってもよく、これらに何ら限定されるものではない。投与形態の例としては、錠剤;カプレット(caplets);柔らかな弾性ゼラチンカプセルなどのカプセル剤;カシェ剤(cachets);トローチ剤;口内錠(lozenges);散剤(粉薬);坐剤;パウダー;エアロゾル(例えば、鼻腔スプレーまたは鼻腔吸入薬);ゲル;懸濁製剤(例えば、水相または非水相液状懸濁製剤、水中油型乳剤、または油中水型液状乳剤);溶液剤およびエリキシル剤を含む患者に経口または粘膜投与するのに好適な液状投与剤形;患者に注射投与するのに好適な液状投与剤形;局所投与するのに好適なアイドロップ(eyedrop)または他の眼科製剤;および患者に注射投与するのに好適な液状投与形態を提供するために再構成可能な滅菌固相製剤(例えば、結晶型または無定形固体)を含むが、これらに何ら限定されるものではない。本発明の投与形態の種類、形状、およびタイプは、一般に、それらの使用に応じて非常に様々である。例えば、疾患の急性治療のために用いられた投与形態は、同じ疾患の慢性治療のために用いられる投与形態よりもさらに多くの量の活性成分を含み得る。また、非経口的な投与形態は、同じ疾患を治療するために用いられた経口投与形態よりもさらに少ない量の活性成分を含み得る。本発明により含まれる投与形態および方式は非常に様々であり、これは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって自明である(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed.,Mack Publishing, Easton PA (1990)参照。)
【0028】
さらに、薬学的に許容可能な担体を含む組成物は、経口または非経口の色々な剤形であってもよい。製剤化させる場合には、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製可能である。前記担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、生理食塩水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油、デキストリン、カルシウムカーボネート、プロピレングリコールおよびリキッドパラフィンからなる群から選択されたいずれか一種以上であってもよいが、これらに何ら限定されるものではなく、通常の担体、賦形剤または希釈剤がいずれも使用可能である。前記成分は、前記有効成分である制御性T細胞に独立してまたは組み合わせて追加可能である。
【0029】
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法に応じて、経口投与したり非経口投与(例えば、脊髄腔内、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)したりすることができ、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などに応じてその範囲が様々である。
【0030】
また、経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ得、このような固形製剤は、一つ以上の化合物に少なくとも一種以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製可能である。さらに、単なる賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤なども使用可能である。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられるが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に、色々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘未剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。
【0031】
また、非経口投与のための製剤には、滅菌済みの水溶液、非水性溶剤、懸濁溶剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性油、エチルオレートなどの注射可能なエステルなどが使用可能である。坐剤の基剤としては、ウィテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用可能である。
【0032】
また、本発明の薬学的組成物は、必要に応じて、水もしくはそれ以外の薬学的に許容可能な液との無菌性溶液、または懸濁液剤の注射剤の形態にて非経口的に使用可能である。例えば、薬理学上に許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定化剤、賦形剤、ビヒクル(vehicle)、防腐剤、結合剤などと適当に組み合わせて、一般的に認められている製薬実施に求められる単位容量の形態で混和することにより製剤化させることが考えられる。前記製剤において、有効成分量は、指示を受けた範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0033】
さらに、注射のための無菌組成物は、注射用蒸留水などの賦形液を用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0034】
さらにまた、注射用の水溶液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張溶液、例えば、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール、具体的には、エタノール、ポリアルコール、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ノニオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用可能である。
【0035】
さらにまた、前記油性液としては、ごま油、大豆油が挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用可能である。また、緩衝剤、例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定化剤、例えば、ベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合可能である。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填させる。
【0036】
さらにまた、本発明の薬学的組成物の患者の体内への投与は、好ましくは、非経口投与であり、具体的には、脊髄腔内への1回~3回の投与が基本であるが、それ以上の投与であってもよい。また、投与時間は、短時間であってもよいし、あるいは、長時間にわたっての持続投与であってもよい。さらに具体的には、注射剤形、経皮投与型などが挙げられる。注射剤形は、例えば、脊髄腔内注射、静脈内注射、動脈内注射、選択的な動脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、脳室内注射、脳内注射、骨髄液腔内注射などにより投与可能である。
【0037】
さらにまた、本発明の薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌済みの水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤および坐剤からなる群から選択されるいずれか一つの剤形を有していてもよい。坐剤の基剤としては、ウィテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用可能である。
【0038】
さらにまた、本発明の有効物質の人体への有効な投与量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態および疾患の重症度に応じて異なってくる。
【0039】
本発明の薬学的組成物は、退行性脳疾患の予防または治療の効果のために単独にて、または手術、ホルモン治療、薬物治療および生物学的反応調節剤を使用する方法と併用可能である。
【0040】
次いで、本発明は、前記薬学的組成物を個体に投与するステップを含む退行性脳疾患の予防または治療方法を提供する。
【0041】
本発明の方法は、上述した薬学的組成物を含むため、上述した本発明の薬学的組成物と重複する内容は、重複する内容の記載によるこの明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省く。
【0042】
本発明の薬学的組成物は、治療学的に有効な量または薬学的に有効な量にて投与可能である。
【0043】
本発明において、用語「治療学的に有効な量」とは、対象疾患を予防または治療するのに有効な組成物の薬学的に許容可能な塩の量のことを意味し、本発明の組成物の治療的に有効な量は、色々な要素、例えば、投与方法、目的個所、患者の体調などに応じて異なってくる。したがって、人体に使用するとき、投与量は、安全性および効率性を両方とも考慮して適正量として決定されなければならない。動物実験を通じて決定した有効量からヒトに用いられる量を推定することも可能である。有効な量の決定の際に考慮すべきこのような事項は、例えば、Hardman and Limbird, eds., Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th ed. (2001), Pergamon Press;及びE.W. Martin ed., Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed. (1990), Mack Publishing Co.に記述されている。
【0044】
本発明において、用語「薬学的に有効な量」とは、医学的な治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合にて疾患を治療するのに十分であり、しかも、副作用を引き起こさない程度の量のことを意味し、有効容量レベルは、患者の健康状態、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物への敏感度、投与方法、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、配合または同時に使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野における周知の要素に応じて決定可能である。本発明の組成物は、個別の治療剤として投与してもよいし、あるいは、他の治療剤と併用して投与してもよいし、従来の治療剤と順次にまたは同時に投与されてもよいし、あるいは、単一にまたは多重に投与されてもよい。上記の要素をいずれも考慮して、副作用なしに最小限の量にて最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは、当業者により容易に決定可能である。
【0045】
また、前記薬学的組成物は、脊髄腔内投与用であってもよいが、これに何ら制限されるものではない。
【0046】
本発明において、「個体」は、退行性脳疾患を予防または治療することを目的とする個体であれば、特に限定されるものではなく、好ましくは、ヒトをはじめとする哺乳動物を示す。前記哺乳動物は、非靈長類(牛、豚、馬、猫、犬、ラット、マウスなど)および靈長類(ヒト、猿、例えば、カニクイザル(cynomolgous)およびチンパンジー)を示す。
【0047】
また、前記退行性脳疾患は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、認知症(dementia)、進行性核上性麻痺(Progressive supranuclear palsy)、多系統萎縮症(Multiple system strophy)、オリーブ橋小脳変性症(Olivopontocerebellar atrophy; OPCA)、シャイ・ドレーガー症候群(Shy-Drager syndrome)、線条体黒質変性症(Striatonigral degeneration)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis; ALS)、本態性振戦症(Essential tremor)、大脳皮質基底核変性症(Cortico-basal ganlionic degeneration)、びまん性レビー小体病(Diffuse Lewy body disease)、パーキンソン-ALS-認知症複合症(Parkinson-ALS-dementia complex of Guam)およびピック病(Pick’s disease)からなる群から選択されるものであってもよいが、神経炎症によって引き起こされる神経疾患であれば、格別に制限なしに含まれ得る。
【0048】
発明の実施のための形態
以下、本発明について実施例を挙げてさらに詳しく説明する。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
<実施例1>実験材料および実験方法
1-1.実験材料
アミロイドベータ(Aβ1-42)ペプチドは、ジェンスクリプト(GenScript)社(アメリカ合衆国ニュージャージー州ピスカタウェイ)から購入した。Aβ1-42ペプチドは、450μlの蒸留水(DW)に懸濁され、50μlの10xリン酸塩緩衝食塩水(PBS)と混合して1xPBSを製造した。微小繊維状Aβ(fibrillary Aβ)の生成のために溶解されたペプチドは、37℃において一晩中インキュベーションした。bvPLA2は、シグマ(Sigma)社(アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス市)から購入してPBSに溶かし、実験に供されるまで-20℃において保管した。
【0050】
1-2.動物モデルの用意
3xTg ADマウス[B6;129-Tg(APPSwe, tauP301L)1Lfa Psen1tm1Mpm/Mmjax]は、ジャクソン・ラボラトリー(Jackson Laboratory)社(アメリカ合衆国メイン州バーハーバー)から購買した。合計で18匹の雄性3xTg ADマウスが実験に供された。前記動物モデルにおいて、細胞外Aβは、生後6ヶ月以降に発生することが観察され、12ヶ月からはタウ(tau)病理(pathology)は12ヶ月後に発症された。すべてのマウスは、12時間の明暗周期にて食物と水に自由にアクセス可能な個所に収容され、ヒト制御性T細胞(hTreg)を投与するために生後10ヶ月のマウスを実験に供した。マウスは、イソフルラン(isoflurane)により麻酔され、25-ゲージ腰椎穿刺針(lumbar puncture needle)はL3-L4またはL4-L5レベルにおいて脊柱管(spinal canal)内に刺し込まれた。1×10、1×10、1×10、1×10hTreg細胞(10μlのPBSを含む)は、脳脊髄液(cerebrospinal fluid)に20秒かけて注入された。動物実験は、動物保護規定に従って行われ、動物実験に関するガイドラインは、慶熙大学動物実験倫理委員会(Institutional Animal Care & Use Committee;IACUC)から承認された(KHUASP(SE)-21-102)。
【0051】
1-3.単核細胞の分離
単核細胞は、次のような手順に従って分離した。
【0052】
1)血液パックを柔らかく震盪させて混ぜた後、500mLのスクエアメディアボトルに血液を注ぎ移す。工程検査のための検体として30μLの血液を採取する。
【0053】
2)D-PBSと血液とが1:2の割合になるようにD-PBSを入れた後、転倒混和して血液とD-PBSとが十分に混合できるようにして均質な血液サンプルを用意する。
【0054】
3)Leucosep(商標名)チューブにFicoll-paque(商標名)PLUS 15mLを入れた後、1000xgにて2分間遠心分離して用意する。用意されたleucosepチューブに希釈された血液30mLを丁寧に入れる。
【0055】
4)3)において用意されたleucosepチューブを常温(15~25℃)において400xgにて30分間遠心分離する。*遠心分離機の設定を加速度-9、減速度-1に変えて行う。
【0056】
5)PBMCの上の血漿層を除去する。
【0057】
6)PBMC層を採取して新たな50mLのチューブに分離する。*採取可能な最大限の量でPBMCを回収する。
【0058】
7)D-PBSを回収容量に2:1の割合にて希釈する。(例)PBMC 10mL:D-PBS 20mL)
【0059】
8)7)において用意されたチューブを転倒混和した後、常温(15~25℃)において500xgにて10分間遠心分離する。そして、上澄み液を除去する。
【0060】
9)D-PBS 10mLにてそれぞれチューブの細胞ペレットを再浮遊させて一ヵ所に収集する。そして、D-PBS 10mLにてチューブに残っている細胞をチューブに回収し、これを2回さらに行う。
【0061】
10)総D-PBS 40mLに再浮遊された細胞を「5.7.1 生存細胞の計数」の方法に従って細胞を計数する。
【0062】
11)残りの細胞を300xgにて10分間遠心分離する。
【0063】
12)上澄み液を除去した後、5%AB血清2mM EDTA CliniMACS(登録商標)バッファー(以下、「MACSバッファー」と称する、VTRS03)にて0.8x10cells/70μLになるように再浮遊させる。*細胞ペレットが単一細胞になるように丁寧に解す。
【0064】
13)細胞にCliniMACS(登録商標)CD8 GMPマイクロビーズ0.8x10cells/30μLを処理する。
【0065】
14)MACSバッファーとビーズが処理された細胞を常温(15~25℃)において30分間反応させる。
【0066】
15)反応させた細胞にMACSバッファー(VTRS03)を1x10cells/1mLになるようにさらに入れて混ぜた後、300xgにて10分間常温(15~25℃)において遠心分離する。
【0067】
16)QuadroMACS(商標名)セパレーターにLDカラムを用意する。
【0068】
17)MACSバッファー(VTRS03)2mLにてカラムを濡らす。*カラムは、乾かないように注意を払う。
【0069】
18)遠心分離済みの15)の上澄み液を除去した後、MACSバッファー(VTRS03)にて1x10cells/500μLになるように細胞を再浮遊させる。
【0070】
19)再浮遊させた細胞をLDカラムに流下させる。
【0071】
20)MACSバッファー(VTRS03)を1mLずつ2回カラムに流下させてラベル付けされていない細胞を50mLのチューブに集める。*MACSバッファー(VTRS03)が全部流下し切れることを確認し、入れる。
【0072】
21)50mLのチューブに収集した細胞にMACSバッファー(VTRS03)を加えて最終的な体積が40mLになるようにする。「5.7.1 生存細胞の計数」の方法に従って細胞を計数する。
【0073】
22)残りの細胞は、1000xgにて5分間常温(15~25℃)において遠心分離する。
【0074】
23)計数された細胞数が4x10cells/mLになるように細胞培養液を用意した後、最終的な体積に合うようにIL-2(500unit/mL)、bvPLA2(0.4ug/mL)、微小繊維状アミロイドβ(5μM)になるように入れる。
【0075】
24)遠心分離済みの細胞の上澄み液を除去し、8x10cells/mLになるように再浮遊させる。
【0076】
25)21)において計数された細胞数を基準として工程検査のための検体を5x10cells以上採取する。
【0077】
26)下記の表1を参考にしてT75フラスコに分注されるべき最終のボリュームの半分を分注する。23)において用意された細胞培養液をフラスコに4x10cells/mLになるように満たす。分注後に、残余量は同じ方法により下記の表1を参考にして適正フラスコに分注する。但し、T75フラスコの最小の培養容量は、20mLにする。
【0078】
27)フラスコの表面に培養開始日付け、製造番号、担当者を表記し、顕微鏡を用いて細胞の状態を観察した後、37℃である5%COインキュベーターにおいて3日間培養する。
【0079】
【表1】
【0080】
但し、細胞数が6x10cells未満であるとき、T12.5フラスコを立てて3mLに接種する。6×10cells以上となる時点では、1×10cells/mLにて接種する。
【0081】
1-4.制御性T細胞の分離
ヒト制御性T細胞は、CD4CD25CD127dim/-Regulatory T cell Isolation Kit IIを用いて、次のような手順に従って分離した。
【0082】
1)240mmのスクレーパーを用いて、T75フラスコの底にくっついている細胞を掻き落とす。
【0083】
2)1)において浮遊させた細胞を50mLのチューブに収集し、フラスコに残っている細胞をMACSバッファー(VTRS03)10mLにて収集する。そして、1000xgにて5分間4℃において遠心分離する。
【0084】
3)上澄み液を除去した後、MACSバッファー(VTRS03)10mLにてそれぞれ細胞を再浮遊させた後、4本のチューブのうちの1本のチューブに細胞を集める。そして、MACSバッファー(VTRS03)10mLにて他のチューブに残っている細胞を集める。
【0085】
4)細胞を「5.7.1 生存細胞の計数」の方法に従って計数する。次いで、細胞は、1000xgにて5分間4℃において遠心分離する。
【0086】
5)上澄み液を除去した後、細胞をMACSバッファー(VTRS03)にて0.8x10cells/40μLになるように再浮遊させる。
【0087】
6)細胞にCD4CD25CD127dim/-T CELL Biotin-Antibody Cocktail IIを0.8x10cells/10μLになるように入れる。
【0088】
7)処理された細胞を上手く混合して4℃において5分間反応させる。
【0089】
8)反応済みの細胞にMACSバッファー(VTRS03)を0.8x10cells/30uLになるように入れ、かつ、抗ビオチンマイクロビーズを0.8x10cells/20μLになるように入れる。
【0090】
9)処理された細胞を上手く混合して4℃において10分間反応させる。
【0091】
10)QuadroMACS(商標名)セパレーターにLDカラムを用意する。
【0092】
11)LDカラムにMACSバッファー(VTRS03)2mLを流下させてカラムを濡らす。*カラムは、乾かないように注意を払う。
【0093】
12)9)における反応済みの細胞にMACSバッファー(VTRS03)を1x10cells/500μLになるように入れて再浮遊させる。
【0094】
13)LDカラムに再浮遊させた細胞を入れ、MACSバッファー(VTRS03)を1mLずつ2回カラムに流下させる。*MACSバッファー(VTRS03)が全部流下し切れることを確認し、入れる。
【0095】
14)カラムの下流に落下する細胞を15mLのチューブに集めた後、1000xgにて5分間4℃において遠心分離する。
【0096】
15)上澄み液を除去した後、細胞にMACSバッファー(VTRS03)を0.8x10cells/90μLになるように入れて再浮遊させる。
【0097】
16)CD25マイクロビーズIIを0.8x10cells/10μLになるように処理した後、上手く混合して4℃において30分間反応させる。
【0098】
17)反応済みの細胞にMACSバッファー(VTRS03)1mLを入れ、1000xgにて5分間4℃において遠心分離する。
【0099】
18)OctoMACS(商標名)セパレーターにMSカラムを用意する。
【0100】
19)MACSバッファー(VTRS03)1mLを流下させてMSカラムを濡らす。
【0101】
20)遠心分離済みの17)の上澄み液を除去した後、MACSバッファー(VTRS03)にて1x10cells/500μLになるように再浮遊させる。
【0102】
21)再浮遊された細胞をMSカラムに流下させ、MACSバッファー(VTRS03)を500μLずつ2回流下させ、カラムの下流に落下する細胞(CD25細胞)を15mLチューブに集める。*MACSバッファー(VTRS03)が全部流下し切れたことを確認し、入れる。
【0103】
22)MSカラムにMACSバッファー(VTRS03)1mLを入れ、プランジャーにてMSカラムに圧力を加えてMSカラムにくっついている細胞(CD25細胞)をチューブに集める。この過程を1回さらに行う(合計で2mLのMACSバッファーを使用)。
【0104】
23)21)において用意された15mLのチューブを1000xgにて2分間4℃において遠心分離する。
【0105】
24)OctoMACS(商標名)セパレーターにMSカラムを用意する。
【0106】
25)MACSバッファー(VTRS03)1mLを流下させてMSカラムを濡らす。
【0107】
26)遠心分離済みの23)の上澄み液を除去した後、MACSバッファー(VTRS03)にて20)と同じ容量にて再浮遊させる。
【0108】
27)MSカラムに再浮遊された細胞を流下させ、MACSバッファー(VTRS03)を500μLずつ2回流下させてカラムの下流に落下する細胞(CD25細胞)を15mLチューブに集める。*MACSバッファー(VTRS03)が全部流下し切れたことを確認し、入れる。
【0109】
28)MSカラムにMACSバッファー(VTRS03)1mLを入れ、プランジャーにてMSカラムに圧力を加えてMSカラムにくっついている細胞(CD25細胞)を22)において用意されたチューブに一緒に集める。この過程を1回さらに行う(合計で2mのLMACSバッファーを使用)。
【0110】
29)上記のような手順を終えると、合計で4mLのMSカラムにくっついている細胞(CD25細胞)が得られる。
【0111】
30)MSカラムを用いて回収された細胞を1000×gにて5分間4℃において遠心分離する。
【0112】
31)OctoMACS(商標名)セパレーターにMSカラムを用意する。
【0113】
32)MACSバッファー(VTRS03)1mLを流下させてMSカラムを濡らす。
【0114】
33)遠心分離済みの30)の上澄み液を除去した後、MACSバッファー(VTRS03)にて20)と同じ容量にて再浮遊させる。
【0115】
34)33)において用意された細胞をMSカラムに流下させ、MACSバッファー(VTRS03)にて500μLずつ2回流下させた後、カラムの下流に落下する細胞(CD25細胞)を15mLのチューブに集める。
【0116】
35)MSカラムにMACSバッファー(VTRS03)1mLを入れ、プランジャーにてMSカラムに圧力を加えてMSカラムにくっついている細胞(CD25細胞)をチューブに集める。
【0117】
36)35)をもう1回さらに行う(1mLずつ合計で2mLのMACSバッファーを使用)。
【0118】
37)MSカラムを用いて回収された細胞を1000xgにて5分間4℃において遠心分離する。
【0119】
38)細胞を細胞培養液(VTRS04)10mLにて再浮遊させた後、細胞を計数し、1000xgにて5分間4℃において遠心分離する。
【0120】
1-5.手動回避実験
保持記憶は、恐怖によって動機付けられている回避(自己防衛)システム(ハミルトンキンダー社、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ所在)にて測定し、手動回避は、以前に示された反応の抑制により観察された。ソフトウェア制御機械式ゲートにより分離された2つのチャンバー箱により行われた手動回避実験は、3回の試行訓練(training trial)と1回のリテンション(データ保持)試験から構成した。試行訓練の間に、各マウスは、順応のために10秒間消灯されたチャンバー箱の右側に配置された。10秒間の適応期間の後に右側のチャンバーに照明を点けた後、左側にある暗い区画にいくギロチンドア(guillotine door)を開いた。このとき、暗い区画に入ったマウスは、電気刺激を受けることになる。電気刺激が終わった後、または180秒が経った後には、マウスを箱から取り出した。また、暗い区画に電気衝撃を加えたことを除いては、上記の方法と同様にしてリテンション試験を2回行った。照明が暗い区画に入る前の待ち時間(latency)と誤りの発生時間を記録し、待ち時間が増加し、誤りの発生時間が減少することにつれて、以前に電気刺激が生じた暗い区画に対する保持記憶が向上したことが分かる。
【0121】
1-6.Y迷路実験
Y迷路実験は、見慣れている領域よりも新たな領域を探索するせっ歯類の好み度に基づいており、空間作業記憶の色々な側面を測定するように設計された。迷路は、それぞれ39X8X16cmである3本の透明なプラスチックアーム(plastic arm)から構成されており、それぞれに対して120°の角度に設定されている。最初の実験においては、マウスは、スタートアームと他のアームを自由に探索することができ、三番目のアーム(arm)は、不透明な扉で塞いでおいた。好み度と関連する誤差を避けるために、各実験グループ内において無造作にてアーム(arm)に割り当ててバランスを取った。その後、マウスは、2分間ホームケージに戻した。二回目の実験においては、マウスをスタートアームの終端に置き、2分間3番目のアーム(arm)も探索可能なようにした。迷路は、各探索段階の間に70%エタノール溶液にて掃除して嗅覚信号を除去した。
【0122】
1-7.逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
RT-PCRは、TRizol方法により全RNAを抽出し、CycleScript(商標名)Reverse Transcriptase(バイオニア社(BIONEER CORPORATION)製、大韓民国大田広域市所在)を用いて相補的なDNAを合成した。PCR増幅は、サーマルサイクラー(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製、アメリカ合衆国ハーキュリーズ市所在)を用いて行った。すべての反応は、製造社のプロトコルに従ってSYBR Green I mix(バイオライン社(Bioline Ltd.)製、イギリスロンドン市所在)とともにLightcycler(登録商標)2.0 instrument(ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)社製、ドイツマンハイム市所在)を用いて行われた。増幅に供されたプライマーは、表2に示す。すべてのプライマーに対するPCR条件は、95℃において30秒、40サイクル95℃において15秒、60℃において30秒にて行われた。RT-qPCRデータは、標的ハウスキーピング遺伝子であるβ-アクチンのデルタサイクルしきい(delta cycle threshold;ΔCT)値として計算された。
【0123】
【表2】
【0124】
1-8.ウエスタンブロッティング細胞を4℃において20分間PRO-PREP(商標名)(イントロン・バイオテクノロジー(iNtRON Biotechnology)社製、大韓民国城南市所在)にて溶解させた。各サンプルのタンパク質の濃度は、ブラッドフォード分析により決定され、サンプル(タンパク質30μg)を10%SDS-ポリアクリルアミドゲルにおいて分離し、ニトロセルロースメンブレインに移し、室温(20~25℃)において5%脱脂油において30分間遮断した。遮断してから30分後に、メンブレインを4℃において一晩中培養するために1次抗体(抗CD86、抗NOS2または抗β-アクチン)と順次に反応させた。25mM Tris-Cl、150mM NaClおよび0.05% Tween-20を含むTween 20(TBS-T)にてトリス緩衝生理食塩水にて洗浄した後、blotを西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)が結合された二次抗体(抗ウサギまたは抗マウスIgG)と2時間かけてインキュベーションした。免疫反応性は、ウェスタンブロッティング検出試薬キット(アブクロン(Abclon)社製、大韓民国ソウル特別市所在)を用いて視覚化させた。抗体の結合は、化学発光検出システム(Davinch-Chemi(商標名)、大韓民国ソウル特別市所在)にて測定した。デンシトメトリー分析は、Image Jソフトウェアを用いて行った。
【0125】
1-9.免疫組織化学染色(IHC)
マウスをイソフルラン(isoflurane)にて麻酔した後、冷たく保管したPBSを経心腔的かん流(transcardially perfused)させ、PBSに溶かした4%パラホルムアルデヒド溶液にて固定した。脳は除去して4%パラホルムアルデヒド溶液に4℃において48時間かけて固定した後、30%スクロース/PBS溶液に4℃において保管した。正中線に沿って脳を二等分した後、各半球脳(hemi-brain)を冠状断面(coronal section)の切開により前部分、中央部分、後部分に分けた。各部分は、最適切削温度(Optimal Cutting Temperature;O.C.T.;WVR)封入剤(mounting medium)に個別的に内蔵され、液体窒素において凍結されて-80℃において保管された。Leica RM2145クライオスタット(cryostat)を用いて脳の中央部分から凍結切片(7μm)を用意し、SuperFrost(商標名)Plusスライドガラスに装着した。また、各マウスにおいて最小限で3つの隣り合っていない(100μm以上離れている)セクションを指定した。各セクションは、まず、PBSにて洗浄した後、PBS-5% BSA-0.05% Tween 20にて室温において1時間かけてブロックした後、ウサギ抗Iba1抗体(1/200)(富士フイルム和光純薬(株)製)と4℃において一晩中インキュベーションするか、あるいは、ウサギ抗GFAP抗体(1/200)(DAKO社製)と室温において30分間インキュベーションした。セクションをPBS-0.1% BSAにて3回洗浄した後、マウス抗CD11b(1/200)(ab8878;Abcam)と室温において30分間インキュベーションし、3回洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標)488-共液ヤギ抗ラット及びAlexa Fluor(登録商標)594-共液ヤギ抗ヤギ抗体(1/1000 each)と室温において30分間インキュベーションした。3回洗浄された脳セクションを4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(1μg/ml in PBS)にて染色させ、Immu-Mount(商標名)培地(サーモシャンドン社製)にてカバースリップ(coverslip)した。Zen2(blue edition)ソフトウェアおよび共焦点蛍光顕微鏡(LSM800、カールツァイス(Carl Zeiss)社製)を用いて画像を得た。すべてのフィールド/画像において、ミクログリア細胞の定量的分析は、画素強度に基づいて行われ、細胞は、Image J(アメリカ国立衛生研究所)を用いて計算した。
【0126】
1-10.統計的分析
グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)ソフトウェア(GraphPad Software社製、アメリカ合衆国カリフォルニア州ラホヤ所在)を用いて統計分析を行った。条件は、one-way ANOVA分析後に事後グループの比較(posthoc groug comparison)を用いて比較した。データは、平均±SEMにて表わされ、P<0.05は有意なものとしてみなされた。
【0127】
<実施例2>実験結果
2-1.アルツハイマー病におけるTregの治療効果
アルツハイマー病におけるTregの治療効果を調べるために、ヒト制御性T細胞(hTreg)を分離し、体外増幅を行った(図1)。増幅されたhTregは、10μlのPBS中の1×10cells/mice、1×10cells/mice、1×10cells/miceおよび1×10cells/miceの細胞容量にて3xTgADマウスに脊髄腔内(intrathecally)に投与された。対照群のマウスに対しては、同じ投与方法によりPBSのみを投与した。
【0128】
手動回避実験の結果、3xTg ADマウスは、待ち時間の間に記憶の改善を示さなかった(図2A)。これとは対照的に、野生型(WT)と3xTg ADマウスは、平均潜在的保持(retention latency)期間の違いは統計的に有意な結果に達した(図2B)。訓練遅延時間(training latency)もまた、すべてのhTreg投与グループ(10、10、10、10)において有意差を示した(それぞれp=0.0361, 0.0091, 0.0096, 0.0143)。
【0129】
次いで、生後10ヶ月のマウスは、短期集中力記憶に対して評価された。Y迷路実験の結果、すべての項目においてWTと比較して3xTg ADマウスグループにおいてのみ相当の減少を示しており(図2C)、変更行動力(spontaneo alteration)の変化の場合、WTマウスと比較して3xTg ADマウスグループにおいてWTに比べて有意な変化が現れ、10および10hTregグループもまた相当の変化を示した(図2D)。このような結果は、hTregの投与がアルツハイマー病マウスの学習および記憶能力を格段に向上させたことを意味する。
【0130】
2-2.M1ミクログリア細胞およびDAM(disease-associated microglia)へのhTregの影響
まず、海馬におけるM1ミクログリア細胞mRNAの発現へのhTregの直接的な影響を確認するために、リアルタイム定量PCR(qPCR)を行った。その結果、NOS2、CD86、IL-12a、IL-1β、IL-1β、IL-23、IL-6およびTNF-αの発現が3xTg ADマウスにおいて上昇したが、hTregが投与されたマウスにおいては対照群であるWTマウスと略同様に発現されることを確認した(図3)。
【0131】
海馬におけるDAM(disease-associated microglia)マーカーのmRNAの発現を確認するために、リアルタイムPCRを行った。前記実施例2-1の結果と略同様に、DAMマーカーは、3xTg ADマウスにおいて発現が増加することが示された。しかしながら、hTregは、Trem2、Tmem119、Cc3cr1、Itgax、Ccl6の発現を有意に抑制した(図4)。
【0132】
次いで、我々はまた、ウエスタンブロッティングによりM1(図5A)、M2(図5B)ミクログリア細胞および神経成長因子(図5C)およびDAM(図5D)のタンパク質の発現を測定した。3xTg ADグループにおけるCD86の発現レベルは、WTグループに比べて増加した(p<0.01)。海馬におけるCD86のタンパク質の発現レベルは、3xTg ADグループに比べてすべてのhTreg投与群において減少した(図5A、p<0.01)。NOS2、Arg1、CD206、Iba-1およびBDNFの発現のウエスタンブロッティング分析は、タンパク質レベルにおいて有意な変化を示さなかった(図5Bおよび図5C)。しかしながら、Trem2の発現は、3xTgに比べて10hTreg注射群において有意に減少した(図5D)。
【0133】
このような結果は、3xTg ADマウスにおいてM1ミクログリア細胞が活性化し、hTregは、アルツハイマー病により増加されたM1ミクログリア細胞およびDAM関係のマーカーの発現を抑制してM1ミクログリア細胞の活性化およびDAMへの進行を抑制することを意味する。
【0134】
2-3.M2ミクログリア細胞mRNAの発現へのhTregの影響
海馬におけるM2ミクログリア細胞mRNAの発現へのhTregの直接的な影響を確認するためにリアルタイムqPCRを行った。その結果、前記実施例2-1の結果と対照的に、M2ミクログリア細胞関係のマーカーであるIL-4、IL-10、TGF-β、Arg1、Ym1、Mrc1、IL-2は、3xTgADマウスにおいては有意に減少した。また、10および10hTreg投与マウスにおいては、IL-10の発現を有意に増加させることが示された(図6)。
【0135】
2-4.CD116およびTrem2に対する免疫反応の分析
CD11bとTrem2に対する免疫反応は、海馬歯状回(hippocampal dentate gyrus;DG)において観察された(図7A)。特に、Trem2細胞は、3xTg ADグループに比べて10hTreg投与群において有意に減少したが、他の実験群においては減少しなかった(図7C)。CD116b細胞とCD116bTrem2細胞のすべての実験群において有意な変化は観察されなかった(図7B図7D)。このような結果は、hTregはCD11bを変化させず、Trem2を選択的に抑制したことを意味する。
【0136】
Trem2は、脳中の免疫細胞であるミクログリア細胞(microglia)の表面に発現する受容体であって、ミクログリア細胞が完全なDAM(disease-associated microglia)に進行するようにする役割を果たす。したがって、このような結果から、hTregは、ミクログリア細胞のDAM(disease-associated microglia)への進行を抑制する効果があることが分かる。
【0137】
2-5.アミロイドβおよびタウタンパク質へのTregの影響
Tregがアルツハイマー病の進行にどのような影響を及ぼすかについて理解するために、Tregの脊髄腔内への投与がADマウスモデルの海馬においてタウタンパク質のリン酸化を減少させることができるかどうかを調べた。
【0138】
具体的には、hTreg投与細胞数に応じたp-Tau発現レベルの変化を確認するために、10ヶ月齢の3xTg ADマウスにそれぞれ1×10、10、10hTregsもしくはPBSを注入した。その後、12ヶ月齢のマウスの海馬においてリン酸化したタウタンパク質(p-Tau)に対する免疫蛍光染色を行い、その結果は図8A図8Bに示す。
【0139】
図8A及び図8Bに示されているように、対照群3xTg ADマウスは、海馬においてリン酸化したタウタンパク質レベルが有意に増加され、hTreg投与群の場合、hTregを処理しなかった3xTg ADマウスに比べてリン酸化したタウタンパク質レベルが大幅に減少したことが示された(図8A図8B)。特に、極少量である1×10hTregsを投与したマウスにおいてもp-Tauの発現レベルを有意に減少させたことが確認された。
【0140】
このような結果をまとめてみると、hTregは、中枢神経系(CNS:Central nervous system)の先天免疫細胞であって、炎症過程の恒常性を保持し、認知機能を調節するミクログリア細胞のM1活性化を抑制し、M2分極化を促進してタウタンパク質の除去および神経保護の作用を誘導する。したがって、このような結果から明らかなように、ヒト制御性T細胞(hTreg)は中枢神経系疾患、特に、退行性脳疾患の予防または治療用の組成物として利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【国際調査報告】