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特表2024-535131ウエアラブルデバイスからのグリンパティック流および神経変性の非侵襲的評価
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ウエアラブルデバイスからのグリンパティック流および神経変性の非侵襲的評価
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20240918BHJP
   A61B 5/374 20210101ALI20240918BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240918BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20240918BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B5/374
A61B5/055 382
A61B5/055 380
A61B5/256 130
A61B5/02 310G
A61B5/02 310V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540837
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 US2022023409
(87)【国際公開番号】W WO2023043490
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/244,080
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】524097377
【氏名又は名称】アプライド・コグニション・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ダガム,ポール
(72)【発明者】
【氏名】コバックス,グレゴリー・ティー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョバングランディー,ローラン・ビー
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー,カール・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スチューデント,イエルク・シー
(72)【発明者】
【氏名】ウィップル,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】カプラン,ジョナサン・アイ
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C096
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA09
4C017AA11
4C017AA14
4C017AA18
4C017AA20
4C017AB08
4C017AC15
4C017AC26
4C017BC11
4C017BC16
4C017BC21
4C038PP05
4C038PS03
4C096AA17
4C096AA18
4C096AC01
4C096AD14
4C096DC19
4C096DC24
4C127AA03
4C127GG11
4C127LL13
(57)【要約】
コンピュータ実装方法およびシステムが、睡眠中に記録された神経生理学的データおよび神経血管データにアクセスすることを含む。前記神経生理学的および神経血管データから、グリンパティック流マーカー、神経変性の分子解析マーカー、または神経変性の神経画像診断マーカーのうちの1つである標的への関数マッピングが実行される。関数マッピングに基づいて標的予測モデルが出力される。標的予測モデルは、新たな神経生理学的および神経血管データを受け取り、神経変性の予測マーカーを出力することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のコンピュータプロセッサにより実施される方法であって、
a.前記1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、睡眠中に記録された神経生理学的データおよび神経血管データにアクセスするステップと、
b.前記1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、前記神経生理学的データおよび前記神経血管データからグリンパティック流のマーカーである標的への関数マッピングを実行するステップと、
c.前記1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、前記関数マッピングに基づいて標的予測モデルを出力するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
a.前記1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、グリンパティック流の前記マーカーから、神経変性の分子解析マーカーまたは神経変性の神経画像診断マーカーのうちの一方である標的への第2の関数マッピングを実行するステップと、
前記1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、前記第2の関数マッピングに基づいて標的予測モデルを出力するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記神経生理学的データが脳波図記録であり、前記脳波図記録から睡眠マクロ構造および睡眠微細構造特徴が抽出される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記神経血管データが、患者の頭から取られた電気インピーダンス記録と、前記患者の頭において測定されたフォトプレチスモグラフィと、患者の耳内で測定された慣性測定装置加速度とのうちの1つまたは複数を含み、前記神経血管データが、睡眠脳脊髄液量変化と、脳かん流拍動と、心拍数変動性と、安静時心拍数と、パルス通過時間と、パルス波速度と、呼吸数とを計算するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記神経生理学的データおよび神経血管データがウエアラブルデバイスから取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ウエアラブルデバイスのセンサーが患者の耳内に挿入され、前記耳または外耳道から測定値が取られる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ウエアラブルデバイスが、前記外耳道の壁に対する前記センサーの界面接触を増大させるために前記外耳道内部で加圧される袋を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
神経変性の前記分子解析マーカーが、βアミロイドとタウとpタウとαシヌクレインと神経フィラメント光とのうちの1つのCSFまたは血漿アッセイである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
神経変性の前記神経画像診断マーカーが、βアミロイド、タウまたはグルコースのうちの1つに結合する放射性トレーサによるPETスキャンである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
神経変性の前記神経画像診断マーカーがMRIスキャンである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記標的予測モデルに新たな神経生理学的データと新たな神経血管データとを入力するステップと、
グリンパティック流の予測マーカーを出力するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記標的予測モデルに介入データを入力するステップと、
前記標的予測モデルに新たな神経生理学的データと新たな神経血管データを入力するステップと、
グリンパティック流の予測標的マーカーを出力するステップと、
グリンパティック流の前記予測標的マーカーに対する前記介入データの効果を判定するステップと、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
1つまたは複数のコンピュータプロセッサと、
神経生理学的データを測定するように構成された神経生理学的データ取得モジュールと、
神経血管データを測定するように構成された神経血管データ取得モジュールと、
脳波図データと前記神経血管データを第2のコンピューティングデバイスに送信するように構成された送信モジュールと、
を含むシステム。
【請求項14】
前記1つまたは複数のコンピュータプロセッサと、前記神経生理学的データ取得モジュールと、前記神経血管データ取得モジュールと、前記送信モジュールとがウエアラブルデバイスに配置されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記ウエアラブルデバイスが、患者の耳に装着するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記ウエアラブルデバイスのセンサーが前記耳内に挿入され、前記耳または外耳道から測定値が取られる、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記ウエアラブルデバイスが、前記外耳道の壁に対する前記センサーの界面接触を増大させるために前記外耳道内部で加圧される袋を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記神経生理学的データが脳波図記録であり、前記脳波図記録から睡眠マクロ構造および睡眠微細構造特徴が抽出される、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記神経血管データが、患者の頭から取られた電気インピーダンス記録と、前記患者の頭において測定されたフォトプレチスモグラフィと、患者の耳内で測定された慣性測定装置加速度とのうちの1つまたは複数を含み、前記神経血管データが、睡眠脳脊髄液変化と、脳かん流拍動と、心拍数変動性と、安静時心拍数と、パルス通過時間と、パルス波速度と、呼吸数とを計算するために使用される、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記第2のコンピューティングデバイスが、携帯電話とローカルコンピューティングデバイスとリモートコンピューティングデバイスとのうちの1つである、請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
前記第2のコンピューティングデバイスが、前記神経生理学的データと前記神経血管データとを入力するように構成され、標的予測モデルを出力するように構成された、機械学習アルゴリズムを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
前記標的予測モデルが、新たな神経生理学的データと新たな神経血管データとを入力として受け取るように構成され、神経変性の予測マーカーを出力するように構成されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記標的予測モデルが、介入データと、新たな神経生理学的データと、新たな神経血管データとを入力として受け取るように構成され、脳タンパク質症または神経変性の予測マーカーと、脳タンパク質症または神経変性の前記予測マーカーに対する前記介入データの効果の判定とを出力するように構成されている、請求項21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2021年9月14日に出願された米国仮特許出願第63/244,080号の利益を主張し、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本発明は、一般に、神経変性の識別、予測および治療において使用するための、ウエアラブルデバイスからの神経生理学的および神経血管データの収集に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]グリンパティック系と、アミロイドβなどの神経変性に関与する脳タンパクのクリアランスにおけるその役割の発見に伴い、近年、脳液輸送系への関心が急速に高まっている。グリンパティック流の阻害は、アルツハイマー病、外傷性脳損傷およびパーキンソン病の動物モデルにおけるタンパク質蓄積と認知機能低下を加速させる。グリンパティック流は、主として睡眠中に活発であり、脳血管動脈拍動によって駆動され、したがって、覚醒状態の脳において蓄積する老廃物のクリアランスのためには睡眠、脳血管完全性および神経血管連関が必要である。グリンパティック流の減少の結果として、神経変性に至る脳内のタンパク質の蓄積(タンパク質症と呼ばれる)が生じ、これは神経画像診断あるいは脳脊髄液または血漿の分子解析によって検出することができる。したがって、神経画像診断または分子解析によって行われるような脳内のタンパク質の蓄積を単に報告するのではなく、タンパク質蓄積を生じさせるグリンパティック流のメカニズムのモニタリングに焦点を合わせた、グリンパティック流とそのタンパク質クリアランスに関連する情報のモニタリングと解析のための非侵襲的技術が、神経変性の診断と治療において有用となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]本開示は、一般に、神経変性の識別、予測および治療において使用するための、神経生理学的および神経血管データの収集を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の例示の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のコンピュータプロセッサにより実施される方法であって、(a)1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、睡眠中に記録された神経生理学的データおよび神経血管データにアクセスすることと、(b)1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、前記神経生理学的データおよび神経血管データからグリンパティック流のマーカーである標的への関数マッピングを実行することと、(c)1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、関数マッピングに基づいて標的予測モデルを出力することとを含む、方法を対象とする。
【0006】
[0005]別の例示の実施形態では、本開示は、(a)1つまたは複数のコンピュータプロセッサと、(b)神経生理学的データを測定するように構成された神経生理学的データ取得モジュールと、(c)神経血管データを測定するように構成された神経血管データ取得モジュールと、(d)脳波図データと神経血管データを第2のコンピューティングデバイスに送信するように構成された送信モジュールと、を含むシステムを対象とする。
【0007】
[0006]上記の実施形態は非限定的な例であり、他の態様および実施形態についても本明細書で説明する。上記の概要は、以下の詳細な説明でさらに説明する様々な概念を概説するために示している。この概要は、特許請求される主題の必要または必須の特徴を特定することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲を限定することも意図していない。
【0008】
[0007]本発明の具体的な特徴、態様および利点は、以下の説明および添付図面を参照すればよりよくわかるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】[0008]図1Aは、本発明により構成された分子解析または神経画像診断に相当する、脳タンパク質症および神経変性の非侵襲的測定のためのシステムの一実施形態を示す図である。
図1B図1Bは、本発明により構成された分子解析または神経画像診断に相当する、脳タンパク質症および神経変性の非侵襲的測定のためのシステムの一実施形態を示す図である。
図2A】[0009]本発明により構成された分子解析または神経画像診断に相当する、脳タンパク質症および神経変性の非侵襲的測定のためのシステムのインイヤセンサーの一実施形態を示す図である。
図2B】本発明により構成された分子解析または神経画像診断に相当する、脳タンパク質症および神経変性の非侵襲的測定のためのシステムのインイヤセンサーの一実施形態を示す図である。
図2C】[0010]本発明による、フレックス回路および人造ソフトシリコーンコンポーネントを含むイヤデバイスの組み立てプロセスを示す図である。
図2D】本発明による、フレックス回路および人造ソフトシリコーンコンポーネントを含むイヤデバイスの組み立てプロセスを示す図である。
図2E】本発明による、フレックス回路および人造ソフトシリコーンコンポーネントを含むイヤデバイスの組み立てプロセスを示す図である。
図2F】本発明による、フレックス回路および人造ソフトシリコーンコンポーネントを含むイヤデバイスの組み立てプロセスを示す図である。
図2G】本発明による、フレックス回路および人造ソフトシリコーンコンポーネントを含むイヤデバイスの組み立てプロセスを示す図である。
図3】[0011]本発明により構成された分子解析または神経画像診断に相当する、グリンパティック流、脳タンパク質症、および神経変性の非侵襲的測定のためのシステムの例示のコンピューティング環境を示す図である。
図4】[0012]本発明の一実施形態によるシステムの機能記述を示す図である。
図5A】[0013]図5Aは、本発明の一実施形態による、神経変性の識別、予測および治療において使用するための、ウエアラブルデバイスからの神経生理学的および神経血管データの収集に関連する例示の方法を示す図である。
図5B図5Bは、本発明の一実施形態による、神経変性の識別、予測および治療において使用するための、ウエアラブルデバイスからの神経生理学的および神経血管データの収集に関連する例示の方法を示す図である。
図6A】[0014]本発明の一実施形態による、神経生理学的データ取得モジュールおよび例示の関連データを示す図である。
図6B】本発明の一実施形態による、神経生理学的データ取得モジュールおよび例示の関連データを示す図である。
図6C】本発明の一実施形態による、神経生理学的データ取得モジュールおよび例示の関連データを示す図である。
図6D】本発明の一実施形態による、神経生理学的データ取得モジュールおよび例示の関連データを示す図である。
図6E】本発明の一実施形態による、神経生理学的データ取得モジュールおよび例示の関連データを示す図である。
図6F】本発明の一実施形態による、神経生理学的データ取得モジュールおよび例示の関連データを示す図である。
図7A】[0015]本発明の一実施形態による神経血管データ取得モジュールを示す図である。
図7B-1】本発明の一実施形態による神経血管データ取得モジュールの例示の関連データを示す図である。
図7B-2】本発明の一実施形態による神経血管データ取得モジュールの例示の関連データを示す図である。
図7C】本発明の一実施形態による神経血管データ取得モジュールの例示の関連データを示す図である。
図7D】本発明の一実施形態による神経血管データ取得モジュールの例示の関連データを示す図である。
図7E】本発明の一実施形態による神経血管データ取得モジュールの例示の関連データを示す図である。
図8A】[0016]本発明の一実施形態による、グリンパティック流のマーカー、神経変性の分子解析マーカーまたは神経画像診断マーカーのためのデータ取得モジュールを示す図である。
図8B】本発明の一実施形態による、グリンパティック流のマーカー、神経変性の分子解析マーカーまたは神経画像診断マーカーのためのデータ取得モジュールの関連画像を示す図である。
図9】[0017]本発明の一実施形態による、非侵襲的神経生理学的および神経血管入力データからグリンパティック流の標的出力測定値への関数マッピングの学習モジュール、または、本発明の別の実施形態による、グリンパティック流のマーカーのための入力データから分子解析または神経画像診断からの標的出力脳タンパク質症または神経変性測定値への関数マッピングの学習モジュールを示す図である。
図10】[0018]本発明の一実施形態による、非侵襲的神経生理学的および神経血管入力データからのグリンパティック流の標的マーカーの予測モジュール、または本発明の別の実施形態による、グリンパティック流のマーカーである入力データを使用した、脳タンパク質症および神経変性の標的分子解析または神経画像診断の予測モジュールを示す図である。
図11A】[0019]本発明の一実施形態による、標的関与モジュールを示す図である。
図11B-1】本発明の一実施形態による、標的関与モジュールの関連データを示す図である。
図11B-2】本発明の一実施形態による、標的関与モジュールの関連データを示す図である。
図11B-3】本発明の一実施形態による、標的関与モジュールの関連データを示す図である。
図11C】本発明の一実施形態による、標的関与モジュールの関連データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0020]上述のタンパク質のクリアランスに関与するグリンパティック流を参照すると、脳の血管周囲腔(PVS)がグリンパティック液輸送系の中核をなす。血管周囲腔の視覚化を可能にする蛍光色素標識化粒子は、この系が、すべて単一のネットワークとして相互接続された動脈周囲腔、毛細血管周囲腔および細静脈周囲腔を含むことを明らかにする。グリンパティック流系は、タンパク質症タンパク質などの脳間質液(ISF)老廃物を細動脈周囲腔および細静脈周囲腔を通して髄膜リンパに排出させる。PVSは、血管周囲アミロイドベータ蓄積物を特徴とする脳アミロイド血管症などの疾病過程に冒され、アルツハイマー病脳の90%を超える脳内に存在するきわめて重要な部位である。アルツハイマー病ではpタウのPVS蓄積も観察され、脳内の動脈、細動脈および静脈に存在することが実証されている。グリンパティック流系において、脳脊髄液(CSF)が動脈周囲腔に入り、血流の方向に流れ、動脈壁拍動によって推進される。CSFは、血管周囲腔の外壁を形成する血管アストロサイトエンドフィートに存在するアクアポリン4(AQP4)水チャネルによって促進されたISFと混合する。睡眠中、動脈拍動がCSFバルク流を脳に向かって駆動する。このプロセスは、覚醒状態とAQP4表出に強く依存することがわかっている。最新の神経画像診断技術により、現在では、心収縮ごとに起こる脳室系を通るCSFの絶え間ない拍動移動による無傷のCNSにおけるCSF流とそのタンパク質クリアランスを視覚化することが可能である。このリズムには呼吸もさらに寄与しており、低周波での拍動を加える。これらの鋭い拍動に、睡眠中の夜間に起こる最大CSF生成と午後に起こる最小CSF生成を有する概日リズムまたは日周リズムが重なる。CSFトレーサを使用した動物モデルにおけるMRI解析により、NREM睡眠中にISFからくも膜下CSFへのグリンパティック流が強化されることが明らかになる。
【0011】
[0021]睡眠は、グリンパティック流と脳血液量を含む、脳生理学のほとんどの局面に著しい影響を及ぼす。動物モデルでは、ノンレム(NREM)睡眠における脳血液量の大きさは覚醒状態と比較して2倍になり、脳内の総血液量は、覚醒から睡眠へおよび覚醒へと戻る遷移中に大幅に変化し、脳血液量動態が覚醒状態と結びついていることを示している。睡眠中の血液量のこのような変化は、細動脈の直径の変動を駆動する神経活動の変動とリンクしている。この神経血管連関の強度は覚醒状態とともに変化し、覚醒状態と比較して睡眠中に大幅に増大し、神経活動が覚醒状態よりも低い睡眠中の脳血液量の増加の説明がつく。
【0012】
[0022]間質腔およびCSF内のアミロイドβおよびタウの濃度は、日周パターンに従い、両方のタンパク質濃度は覚醒中にピークに達し、睡眠中に底になる。一晩の睡眠遮断は、アミロイド結合放射性トレーサを使用したポジトロン放出断層撮影(PET)によって実証される脳ISF中の可溶アミロイドβの大幅な増加を生じさせる。CSFおよびISF中のアミロイドβ、タウおよびその他のタンパク質の正味濃度は、CSF生成速度、ISF量、ISF回転率、およびグリンパティック流の日周および状態依存変動の複合効果を反映する。睡眠徐波デルタ波は、睡眠中の有効な老廃物除去に関与するグリンパティック流と緩徐デルタ波の振幅に関連付けられる。睡眠遮断によって、失速グリンパティック流と、脳内のアミロイドβ溶質およびその他のタンパク質を含む、老廃物溶質の蓄積が生じる。
【0013】
[0023]睡眠中、睡眠状態と覚醒状態との間の相の調節に関与するAQP4チャネルを使用するアストロサイトの作用によって、グリンパティック流が増大する。膜チャネルタンパクAQP4とAQP4を通る水分流動を使用して、アストロサイトが、睡眠中にISF腔を23%増大させるように脳実質の細胞容積を縮小させ、それによって水と溶質が隣接する血管周囲腔内に拡散することを可能にする。徐波睡眠中、ISF腔の増大、アストロサイトエンドフィートのギャップ結合の開き、および脳血行動態の増大が、ISFとCSFの間の栄養分の交換と老廃物の除去のための環境を生じさせる。
【0014】
[0024]加齢、慢性併存疾患、神経変性疾患、および物理的脳損傷によって生じる、グリンパティック流系の分子および細胞成分、脳神経血管完全性、およびその神経血管連関の損傷は、細胞外液中のタウおよびアミロイドβの増加に密接に結びついている。脳実質におけるこれらの凝縮タンパクの拡散は、臨床症状の悪化と認知機能低下につながる。この系の機能完全性と脳ISF中のタンパク質の病理学的蓄積の測定は、関心タンパク質と結合する放射性トレーサを使用したPETスキャンまたはCSF抽出およびタンパク質濃度の分析のための腰椎穿刺などの、侵襲的手法を必要とする。これらの手法のコストおよび複雑さは、脳タンパク質症をスクリーニングするため、またはその進行をモニタリングするためのそれらの手法の使用を制限する。これらの検査を利用することができない場合、アルツハイマー病などの神経変性障害をスクリーニング、診断およびモニタリングするために、現在、医師は臨床評価および認知評価を使用する。これらの障害の10年から20年の前臨床期間における早期に介入する機会が失われ、病状進行を遅らせるかまたは停止させる可能性がある有望な新しい治療法を評価することもできなくなる。既存の侵襲的検査手法のもう一つの難点は、熟練した技術者によって病院または診療所環境において行われる必要があることである。これは、タンパク質症の進行のモニタリング、治療計画の調整、および新しい治療法に対する反応のモニタリングのためのこれらの費用がかかり時間のかかる侵襲的手法の有効性をさらに低下させる追加の患者負担をもたらす。
【0015】
[0025]タンパク老廃物クリアランスのグリンパティック系は、睡眠中に作用し、睡眠脳波図(EEG)によって測定可能な特徴と、神経血管血液量、拍動および連関を測定する特徴とに依存する。睡眠中における短期遮断は、CSFおよびISF老廃物タンパク質の増加を生じさせ、長期遮断は神経変性を伴うISFタンパク凝集の形成につながる。睡眠中の関連するEEG特徴、脳血液量変化、および動脈拍動を測定することができ、既存の侵襲的臨床手法を使用して測定することができるようなCSFおよびISF老廃物タンパクレベルおよびISFタンパク凝集を予測することができる方法およびシステムにそのデータを送信するウエアラブルデバイスがあれば、神経変性タンパク質症の医学的スクリーニングおよびモニタリングに有意な利点をもたらし、タンパク質蓄積および神経変性を遅らせるかまたは停止する適切な介入処置を選択するのに役立つであろう。本明細書で使用し、以下で詳述する、「ウエアラブルデバイス」は、被験者によって装着されるデバイスであって、被験者から神経生理学および/または神経血管データを収集するための1つまたは複数のセンサーと、プロセッサと、メモリと、収集されたデータを記憶するための記憶デバイスと、ウエアラブルデバイスが収集されたデータを別のコンピューティングデバイスに送信することができるようにする少なくとも1つの無線送信モジュールとを含むデバイスである。ウエアラブルデバイスの無線通信機能は、ウエアラブルデバイスが他の機器への外部配線を必要としないように自己完結であるようにすることができる。ウエアラブルデバイスは、睡眠中に被験者によって装着されるように構成される。
【0016】
[0026]本開示の実施形態により、様々な図が図1A図11Cに示されており、同様の参照番号は、図面の様々な図および図形のすべてについて例示の実施形態の同様および対応する部分を指すために、全図を通して一貫して使用されている。また、図1および図4における参照番号の先頭桁は、そのアイテムまたは部分がさらに詳細に記載されている図番号に対応することに留意されたい。
【0017】
[0027]以下の詳細な説明には、例示のために多くの具体的詳細が含まれている。当業者には、以下の詳細の多くの変形および変更が本開示の範囲に含まれることがわかるであろう。したがって、以下の例示の実施形態は、一般性の損失なしに、制限を課すことなく、特許請求される本発明について記載されている。
【0018】
[0028]本開示の例示の実施形態は、脳タンパク質症および神経変性の非侵襲的測定を可能にするシステムおよび方法を含む。そのような測定は、典型的には高性能機器を使用する医療施設で行われ、脳脊髄液の分子解析または神経画像診断を伴い、血漿またはCSF中のタンパク質症タンパクアミロイド、タウまたはアルファシヌクレインレベルのアッセイ、PETスキャンにおける脳アミロイドもしくはタウ負荷、構造的脳MRI上の脳萎縮、タンパク質症タンパクCSFアッセイまたは神経画像診断からの可溶性タンパク質症タンパク負荷における正味変化の測定のための反復日周評価を含む。本開示の例示の実施形態は、神経血管データと同期して睡眠神経生理学的データを取得する新規なシステムおよび方法を教示する。神経生理学的データには脳波図(EEG)データが含まれる。神経血管データには、経頭蓋インピーダンスプレスチモグラフィ(IPG)、頸動脈波伝播時間(PTT)、心拍数変動性(HRV)、および安静時心拍数(RHR)が含まれる。例示の実施形態は、さらに、睡眠後の神経変性の前記分子解析または神経画像診断検査のうちの一方を取得し、睡眠神経生理学および神経血管データから神経変性の分子解析または神経画像診断マーカーへの関数マッピングを学習するステップを行うことができる。関数マッピングの学習は、睡眠データにおける関連する特徴を判定するために損失関数を使用することと、損失関数の極小値を生成する最適重みのセットを特定することと、最適重みを使用して脳タンパク質症および神経変性予測モデルとも呼ぶ関数マッピングを作成することとを含む。例示の実施形態は、さらに、神経変性の前記分子解析または神経画像診断マーカーをスクリーニングまたはモニタリングするために学習済み関数マッピングを新たな睡眠神経生理学および神経血管データに適用するステップを行うことを含むことができる。例示の実施形態は、さらに、睡眠の前または睡眠中の睡眠神経生理学または神経血管の態様を対象とする治療的介入を行うことと、睡眠神経生理学または神経血管に対する標的関与または効果を測定することと、さらに、脳タンパク質症および神経変性に対する治療効果を予測するために、学習した関数マッピングを適用するステップを行うこととを含む。
【0019】
[0029]本開示の別の実施形態は、人が、心臓血管介入または活動が神経変性の分子解析または神経画像診断マーカーに与える効果をモニタリングすることを可能にするシステムおよび方法を含み、この実施形態は、睡眠の前の心臓血管介入また活動データを記録するステップを行い、さらに、睡眠中に神経生理学および神経血管データを記録し、心臓血管介入または活動の脳タンパク質症および神経変性に対する治療効果を予測するために、学習した関数マッピングを適用するステップを行うための、新規なシステムおよび方法を教示する。
【0020】
[0030]本開示の別の実施形態は、人が、神経変性の分子解析または神経画像診断マーカーに対する薬剤介入または神経調節介入の効果をモニタリングすることを可能にするシステムおよび方法を含み、この実施形態は、睡眠の前または睡眠中の薬剤介入または神経調節介入を記録するステップを行い、さらに、睡眠中に神経生理学および神経血管データを記録し、脳タンパク質症および神経変性に対する薬剤介入または神経調節介入の治療効果を予測するために学習済み関数マッピングを適用するステップを行うための、新規なシステムおよび方法を教示する。
【0021】
[0031]本開示の別の実施形態は、人が、神経変性の分子解析または神経画像診断マーカーに対する食事介入の効果をモニタリングすることを可能にするシステムおよび方法を含み、この実施形態は、睡眠の前の食事介入を記録するステップを行い、さらに、睡眠中に神経生理学および神経血管データを記録し、脳タンパク質症および神経変性に対する食事介入の治療効果を予測するために学習済み関数マッピングを適用するステップを行うための、新規なシステムおよび方法を教示する。
【0022】
[0032]本開示の別の実施形態は、センサーと、ネットワークインターフェースを含む第2のコンピュータと通信する無線ネットワークインターフェースをサポートするモバイルコンピュータとの無線通信インターフェースとを有するウエアラブルコンピュータを含むウエアラブルシステムであって、各コンピュータが、プロセッサと、コンピュータプログラムを記憶するように動作可能なメモリユニットと、前記コンピュータシステムにデータを入力するために動作可能な入力機構と、ユーザに情報を提示するための出力機構と、プロセッサをメモリユニット、入力機構および出力機構に結合するバスとをさらに含み、ウエアラブルシステムが、ウエアラブルシステムに記憶され、実行されると機能を実施するように動作可能な様々な実行可能プログラムモジュールを含む、ウエアラブルシステムとすることができる。センサーを有するウエアラブルコンピュータは、EEGを記録することができるセンサーを有する神経生理学的データ取得モジュールと、神経血管データを記録することができるセンサーを有する神経血管データ取得モジュールとを含むことができ、データはウエアラブルコンピュータに記憶され、実行されると前記ウエアラブルコンピュータのメモリユニットに神経生理学および神経血管センサー取得データを記録する。送信モジュールが、無線ネットワークインターフェース(たとえばBluetoothまたはWiFi無線)と、前記ウエアラブルコンピュータに記憶され、実行されると無線ネットワークインターフェースを介してメモリユニットに記憶されている記録を前記モバイルコンピュータに送信する命令とを含むことができる。第2の送信モジュールも、前記ウエアラブルコンピュータに記憶可能であり、有線ネットワークインターフェースと、実行されるとバスネットワークインターフェースを介してメモリユニットに記憶されている記録をローカルコンピュータステーションに送信する命令とを含むことができ、ローカルコンピュータステーションはそのデータを、無線ネットワークインターフェースを介して第2のコンピュータに送信する。前記第2のコンピュータに学習モジュールを記憶することができ、実行されると送信された前記記録から前記第2のコンピュータに記憶された神経変性の分子解析または神経画像診断マーカーへの関数マッピングを学習し、前記記録における関連する特徴を判定するために損失関数を使用し、前記損失関数の極小値を生成する最適重みのセットを特定し、前記最適重みを使用して前記関数マッピングを作成する。脳タンパク質症および神経変性予測モジュールも前記第2のコンピュータに記憶可能であり、実行されると、新たな送信された記録から神経変性の分子解析または神経画像診断マーカーの予測値を計算するために、脳タンパク質症および神経変性予測モデルとも呼ぶ学習済み関数マッピングを、センサーを有するウエアラブルコンピュータからの睡眠神経生理学および神経血管センサーデータの新たな送信された記録に適用する。したがって、脳タンパク質症および神経変性予測モデルは、前述の侵襲的画像診断またはアッセイ手法を必要とせずに、データの新たな記録から予測脳タンパク質症および神経変性値を判定することができる。
【0023】
[0033]本開示の別の実施形態は、センサーと、ネットワークインターフェースを含む第2のコンピュータと通信する無線ネットワークインターフェースをサポートするモバイルコンピュータとの無線通信インターフェースとを有するウエアラブルコンピュータを含むウエアラブルシステムであって、各コンピュータが、プロセッサと、コンピュータプログラムを記憶するために動作可能なメモリユニットと、前記コンピュータシステムにデータを入力するために動作可能な入力機構と、ユーザに情報を提示するための出力機構と、プロセッサをメモリユニット、入力機構および出力機構に結合するバスとをさらに含み、ウエアラブルシステムが、ウエアラブルシステムに記憶され、実行されると機能を実施するように動作可能な様々な実行可能プログラムモジュールを含む、ウエアラブルシステムとすることができる。一実施形態では、ウエアラブルシステムは、心臓血管活動データを記録することができるセンサーを有するデータ取得モジュールであって、前記データがウエアラブルコンピュータに記憶され、実行されると前記コンピュータのメモリユニットに取得されたデータを記憶する、データ取得モジュールを含むことができる。別の実施形態では、ウエアラブルシステムは、食事および栄養データを記録することができるデータ入力モジュールであって、前記データがモバイルコンピュータに記憶され、実行されると、前記コンピュータのメモリユニットにデータを記録する、データ入力モジュールを含むことができる。別の実施形態では、ウエアラブルシステムは、薬物および神経刺激データを記録することができるデータ入力モジュールであって、前記データがモバイルコンピュータに記憶され、実行されると前記コンピュータのメモリユニットにデータを記録するデータ入力モジュールを含むことができる。上記実施形態のいずれにおいても、送信モジュールが、通信インターフェースと、前記ウエアラブルまたはモバイルコンピュータに記憶された関連する命令であって、実行されると無線ネットワークインターフェースを介してメモリユニットに記憶された記録を前記第2のコンピュータに送信する命令とを含むことができる。上記実施形態のいずれにおいても、実行されると、送信された記録から神経変性の分子解析または神経画像診断マーカーの値を計算するために、学習済み関数マッピングを、センサーを有するウエアラブルコンピュータからの睡眠神経生理学および神経血管センサーデータの送信された前記記録に適用するモジュールを、前記第2のコンピュータに記憶することができる。
【0024】
[0034]本発明および様々な実施形態の詳細は、図面の各図を参照すればよりよく理解することができる。図1Aおよび図1Bは、本発明により構成されたシステムの機能記述の一実施形態を示しており、本出願を検討すれば、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく他の構成も使用可能であることが当業者にはわかるように、範囲を限定することは意図されていない。図1を参照すると、システムは、被験者の頭部に装着することができるウエアラブルデバイスを含むことができる。一実施例では、ウエアラブルデバイスは被験者の耳に装着することができる。ウエアラブルデバイスは、非侵襲的測定のための前述の神経生理学および神経血管データ取得センサー200を含むことができる。図1にさらに示すように、ウエアラブルデバイスは、取得されたセンサーデータを記憶し、そのデータを、センサーが正しく配置され、袋が正しく加圧されていることを判定するためのセンサーインピーダンスの準備測定値に変換し、そのデータを分子解析または神経画像診断マーカーに相当する脳タンパク質症および神経変性の測定値とするさらなる処理のために送信するために、モバイルコンピュータおよび/またはローカルコンピュータおよび/またはリモートの第2のコンピュータと通信することができる、データ記憶、処理および送信モジュール300を含むことができる。非侵襲的センサー200は、デジタルセンサー信号をアナログセンサー信号から電気的に分離する電線導管と、センサー200内の空気袋を300内の圧電ポンプに接続し、表面センサーと耳および外耳道表皮との間の十分な界面接触を確実にするためにイヤデバイス200のインイヤ部を膨らませるエアチューブと、ウエアラブルデバイスのしっかりした装着を確実にするように設計されたニチノールバンドとを収容するフォームフィッティングバンド100を介して、モジュール300に接続されている。装着されたデバイスの図を110に示す。別の実施形態では、ウエアラブルデバイスのコンポーネントは、他の構成を有することができ、他の機構によりユーザに装着することができることを理解されたい。たとえば、空気袋は流体で満たされる別の種類の袋に置き換えることができる。
【0025】
[0035]図2A図2Bは、本発明により構成されたシステムのイヤセンサーの一実施形態を示しており、本出願を検討すれば、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく他の構成も使用可能であることが当業者にはわかるように、範囲を限定することは意図されていない。図2(a)を参照すると、イヤデバイス200に収容されたフレックス回路が210に示されている。コンポーネント212は、心収縮ごとに大動脈内に駆出される血液から耳内のバリスティック加速を感知することができるミリ重力加速度を測定する慣性測定装置(IMU)の位置決めを示す。コンポーネント214は、外耳道壁と接触するようにフレックス回路上に光電脈波(PPG)センサーを位置決めする様子を示している。PPGは、外耳道皮膚を通して赤外光の2つの波長の反射を測定することによって、各心拍および動脈血酸素飽和度によって耳の毛細血管血液量の拍動性変化を測定することができる。フレックス回路導線216が、導電性インク、布またはその他の材料とすることができるイヤデバイスを被う2つの導電性電極と接触させるイヤデバイス200の表面上で終端されている。図220を示す図2(b)を参照すると、フレックス回路の1層部は、ユーザの耳の解剖学的構造の相違に対応するように自然に屈曲するように設計され、フレックスの2層部の第2の層は、能動および受動電子コンポーネントが屈曲によって外れないようにこれらの部分を堅いままに維持するためにフレックス回路の下面に貼られた硬化材であり、4層部は、信号破損を生じさせる電子結合を減らすかまたはなくすために、アナログ信号とデジタル信号との間の接地面を有する。
【0026】
[0036]図2C図2Gを参照すると、図230、240、250、260および270が、230および250に図示されているフレックス回路210と人造ソフトシリコーンコンポーネントとを含むイヤデバイスの組み立て工程を示している。図240は、シリコーンコンポーネント230に取り付けられたフレックス回路242を示す。図250は、外耳道内部に入ると空気または流体により加圧される第2のシリコーンコンポーネントにおける袋252を示す。膨張によりPPGセンサー264が、信号対雑音測定値向上のために外耳道皮膚と密着させられ、脳からの神経生理学的電流と経頭蓋生体インピーダンスの測定のために使用される導電性電極272および273と外耳道表皮との良好な界面接触をさらに確実にする。人間の外耳道における最初の屈曲を模倣する第2のシリコーンコンポーネント252における人間工学的屈曲に留意されたい。デバイス上のIMU262の位置決めを図2Fに示す。
【0027】
[0037]図3は、本発明により構成されたデータ記憶、処理および送信モジュール300を含むウエアラブルコンピューティングデバイス305として示されている前述のウエアラブルデバイスの一実施形態を示しており、本出願を検討すれば、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく他の構成も使用可能であることが当業者にはわかるように、範囲を限定することは意図されていない。具体的には、データ記憶、処理および送信モジュール300は、1つまたは複数のプロセッサ308と、メモリ310と、記憶デバイス314と、送信モジュール312とを含む。データ記憶、処理および送信モジュール300のコンポーネントは、イヤデバイスセンサーデータの記憶、センサーが正しく配置され、袋が正しく加圧されていることを判定するためにそのデータを処理してセンサーインピーダンスの準備測定値とし、そのデータを分子解析または神経画像診断マーカーに相当する脳タンパク質症および神経変性の測定値とするさらなるオフライン処理のために送信する役割を果たす。図3のウエアラブルコンピューティングデバイス305の実施例は、患者の耳内に配置されるとデータを収集し、そのデータを記憶デバイス314内への記憶とプロセッサ308による処理と、送信モジュール312による送信のために提供する、IMUおよび/またはPPGなどの前述のセンサー200も示している。入力/出力デバイス314は、ボタンまたは表示画面の形態のユーザインターフェースとすることができる。ウエアラブルコンピューティングデバイスの他の実施形態では、入力/出力デバイスが省かれてもよい。
【0028】
[0038]図3の例示の実施形態は、スマートフォンまたはタブレットなどのモバイルコンピューティングデバイス320およびデスクトップコンピュータなどのローカルコンピューティングデバイス340と無線リンクを介して無線通信可能なウエアラブルコンピューティングデバイス305を示している。モバイルコンピューティングデバイスとローカルコンピューティングデバイスの両方を有することは必要条件ではなく、別の実施形態ではモバイルコンピューティングデバイス320とローカルコンピューティングデバイス340の一方のみがウエアラブルコンピューティングデバイス305と通信してもよいことを理解されたい。図3に示すように、モバイルコンピューティングデバイス320とローカルコンピューティングデバイス340は、プロセッサ322/342と、メモリ324/344と、送信モジュール326/346と、入力/出力インターフェース328/348と、記憶デバイス330/350を含む、容易にわかる従来のコンポーネントを含む。モバイルコンピューティングデバイス320とローカルコンピューティングデバイス340の一方または両方が、ウエアラブルコンピューティングデバイス305によって収集されたデータを第2のコンピューティングデバイス360に送信することができる。第2のコンピューティングデバイスは、典型的にはリモートに位置し、インターネットなどのワイドエリアネットワークを介してアクセスされる。第2のコンピューティングデバイスは、プロセッサ362、メモリ364、送信モジュール366、入力/出力インターフェース368、および記憶デバイス370などの、コンピューティングコンポーネントを含むことができる。記憶デバイス370は、プロセッサ362によって実行可能な様々なプログラムモジュールを記憶することができる。具体的には、記憶デバイス370は、学習ソフトウェアモジュールと予測ソフトウェアモジュールを含むことができる。たとえば、学習ソフトウェアモジュールは、収集された神経生理学的および神経血管データからグリンパティッククリアランスまたは神経変性の標的マーカーへの関数マッピングを判定する機械学習アルゴリズムまたは深層学習アルゴリズムを含むことができる。予測モジュールは、ウエアラブルコンピューティングデバイスによって患者から新たに収集されるセンサーデータに基づいてグリンパティッククリアランスまたは神経変性を予測するために使用される関数マッピングに基づくモデルを含むことができる。
【0029】
[0039]図4は、本発明により構成されたシステムの機能記述の一実施形態を示し、本出願を検討すれば、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく他の構成も使用可能であることが当業者にはわかるように、範囲を限定することは意図されていない。図4を参照すると、耳内に位置づけられた前述のセンサーなど、ユーザの頭部に位置づけられたセンサーを介して神経生理学的データ取得モジュール600によってユーザの睡眠神経生理学的データが捕捉され、記録される。神経血管データ取得モジュール700が、ユーザの頭部に位置づけられたセンサーを介してユーザの睡眠神経血管データをさらに捕捉する。前述のように、神経生理学的データ取得モジュール600と神経血管データ取得モジュール700は、ウエアラブルデバイスにおいて実装可能である。
【0030】
[0040]それに対して、脳タンパク質症および神経変性標的データ取得モジュール800は、典型的には医療施設における高性能機器を使用して実装され、神経変性の1つまたは複数の分子解析または神経画像診断マーカーを取得する役割を果たす侵襲的モジュールである。関心マーカーは、神経変性障害のマーカーである、アミロイドベータ42、タウ、アルファシヌクレイン、および神経フィラメント光を含む、いくつかの脳タンパク質症タンパク質のうちの1つのCSFまたは血漿アッセイ、関心タンパク質の放射性トレーサによるPETスキャンなどの神経画像診断スキャン、脳萎縮を測定するために造影剤を使用するMRIとすることができる。CSFアッセイまたはPETスキャンは、脳内に蓄積したCSFタンパク質またはタンパク質の存在レベルを評価するために睡眠後に行うか、または睡眠中に発生したタンパク質レベルの正味変化を評価するために睡眠の前と後の両方に行うことができる。マーカーは、睡眠の前にCSFに注入され、睡眠中に脳間質液輸送により髄膜リンパおよび海綿静脈洞系に排出されるくも膜下造影剤と、反復MRIスキャンを使用して測定可能な取り込みおよびクリアランス速度とを使用したMRIとすることもできる。
【0031】
[0041]モジュール800によって測定された標的マーカーデータは、モジュール800の侵襲的測定を繰り返す必要なしに、標的学習モジュール900によって、モジュール600からの新たな神経生理学的データとモジュール700からの新たな神経血管データとを、長期的モニタリングのための神経変性の予測分子または神経画像診断マーカーにマッピングする、標的予測モジュール1000を作成するために使用される。標的学習モジュール900と標的予測モジュール1000は、出力を提供するために機械学習または深層学習アルゴリズムを使用するソフトウェアとして実装可能である。標的学習モジュール900と標的予測モジュール1000は、前述の第2のコンピュータなど、1つまたは複数のリモートコンピュータ上で実行されるソフトウェアとして実装可能である。標的予測モジュール1000は、新たな患者から取られたモジュール600からの睡眠神経生理学的データとモジュール700からの睡眠神経血管データも、モジュール800の侵襲的測定の必要を評価するための医学的意思決定に使用可能な非侵襲的スクリーニングのために、神経変性の分子または神経画像診断マーカーにマッピングすることができる。標的関与モジュール1100は、想定治療介入が睡眠神経生理学または神経血管データに与える効果、または標的関与の程度、およびその効果がどのように神経変性の予測分子または神経画像診断マーカーの変化に転換されるかを測定する。介入は、心臓血管介入、食事介入、睡眠介入、薬理学的介入または神経刺激介入のうちの1つとすることができる。
【0032】
[0042]図5Aおよび図5Bは、2つの方法の形態の本発明の実施形態を示しており、本出願を検討すれば、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく他の方法も使用可能であることが当業者にはわかるように、範囲を限定することは意図されていない。図5Aを参照すると、標的予測モデルを作成し、適用する方法が示されている。動作505から開始し、コンピューティングデバイスのプロセッサが、1人または複数の患者の睡眠中に記録された神経生理学的および神経血管データにアクセスする。データは、前述のウエアラブルデバイスを使用して、または他のデバイスを使用して記録可能である。動作510で、プロセッサは、動作505でアクセスした記録データと標的マーカーデータとの間の関数マッピングを判定するために学習ソフトウェアモジュールを使用することができる。学習ソフトウェアモジュールは、関数マッピングを判定するために機械学習アルゴリズムを使用することができる。標的マーカーデータは、脳内のグリンパティック流を示すデータとすることができる。あるいは、標的マーカーデータは、図4のモジュール800に関連して説明したものなど、神経変性の分子解析マーカーまたは神経変性の神経画像診断マーカーのうちの一方とすることができる。関数マッピングの完了後、動作515で、学習ソフトウェアモジュールは、標的予測モジュールを出力する。標的予測モジュールは様々な方式で使用することができるため、図5Aの例示の方法は動作515の後、終了することができる。しかし、標的予測モジュールの1つの適用例を示すために、図5Aの例示の方法は動作520~530を続行することができる。具体的には、動作520で、グリンパティッククリアランスのマーカーまたは神経変性のマーカーを生成するために、ウエアラブルデバイスを使用して患者から新たに収集される神経生理学的および神経血管データを標的予測モデルに入力することができる。動作525で、出力されるマーカーを、患者のための治療介入を判定し、施すために使用することができる。特定の実施形態では、治療介入に関する情報をウエアラブルデバイスに入力することができる。最後に、治療介入が施された後、治療介入の効果を判定するために患者から新たなデータを収集するために、動作530でウエアラブルデバイスを再び使用することができる。
【0033】
[0043]次に図5Bを参照すると、本開示の例示の実施形態によるウエアラブルデバイスを動作させるための例示の方法が示されている。動作550から開始し、患者が患者の耳にウエアラブルデバイスを装着して眠っている間にデータを収集するために、ウエアラブルデバイスの神経生理学および神経血管データセンサーを起動することができる。たとえば、ウエアラブルデバイスのプロセッサが、ウエアラブルデバイスの記憶モジュールに記憶されているデータ取得モジュールを実行することができ、データ取得モジュールはセンサーの動作を制御する。動作555で、IMUおよび/またはPPGなどのウエアラブルデバイスのセンサーが、患者の睡眠中に神経生理学および神経血管データを収集する。動作560で、ウエアラブルデバイスは収集されたデータをウエアラブルデバイスの記憶デバイスに記憶することができる。場合によっては、動作565で示されているように、ウエアラブルデバイスのプロセッサは、センサーによって収集されたデータに対して特定の初期信号処理を行い、そのような処理されたデータをウエアラブルデバイスの記憶デバイスに記憶することができる。最後に、動作570で、ウエアラブルデバイスの送信モジュールが、収集および/または処理されたデータのウエアラブルデバイスから有線または無線通信リンクを介したモバイルコンピューティングデバイスおよびローカルコンピューティングデバイスのうちの一方または両方への送信を管理することができる。モバイルコンピューティングデバイスおよび/またはローカルコンピューティングデバイスは、ウエアラブルデバイスから、学習ソフトウェアモジュールおよび予測ソフトウェアモジュールを実行することができる第2のコンピューティングデバイスにデータを中継することができる。
【0034】
[0044]図6A図6Fは、本発明により構成されたシステムの神経生理学的データ取得モジュール600の一実施形態を示しており、本出願を検討すれば、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく他の構成も使用可能であることが当業者にはわかるように、範囲を限定することは意図されていない。図6Aを参照すると、610において、睡眠中のユーザから生EEGデータが取得される。EEGデータは、信号を記録するためのベッドサイド増幅器を有する従来のEEGヘッドキャップセンサーを使用して、または信号を増幅し、記録するための集積電子回路を有するウエアラブルデバイスを使用して取得することができる。生EEG信号から、睡眠の4段階であるN1、N2、N3および急速眼球運動(REM)をマークするヒプノグラム620を生成するために、様々な導出値を解析することができ、そこから、合計睡眠時間、睡眠開始待ち時間、睡眠開始後の覚醒、睡眠効率および覚醒回数を含む、追加の睡眠パフォーマンスパラメータ680を導き出すことができる。630において、生EEG信号における徐波振動が検出され、睡眠中の30秒または60秒エポックでそれらの振動の密度(毎分振動数)、振幅および存続時間が報告される。640において、0.5Hzと4.5Hzの間の周波数帯のEEG信号における相対または絶対パワーとして定義される徐波活動が、30秒または60秒エポックごとに計算され、報告される。パワースペクトルを計算するための選択肢には、高速フーリエ変換、ウェルチのピリオドグラムまたはマルチテーパ法が含まれる。650において、1つまたは複数のEEG導出値において別の睡眠EEG要素である睡眠紡錘波が検出される。睡眠紡錘波は、紡錘波周波数に応じて速波と徐波の2種類がある。各種類について紡錘波密度、周波数、存続時間および振幅が、30秒または60秒エポックで報告される。徐波振動または活動630および640と睡眠紡錘波650の両方は、グリンパティック流の睡眠微細構造マーカーである。最後に、670でEEG信号における全パワースペクトル密度が30秒または60秒エポックで計算され、報告される。
【0035】
[0045]図6Aに示すEEGデータ要素のうちの1つまたは複数を、標的予測モデルに関連して使用することができる。たとえば、図6Aに示すEEGデータ要素は、標的予測モデルのトレーニングのために使用することができる。別の例として、EEGデータ要素が、標的予測モデルがトレーニングされた後で新たに収集されるデータである場合、EEGデータ要素を、神経変性の新たな標的マーカーを予測するために標的予測モデルに入力することができる。
【0036】
[0046]図6Bを参照すると、622は、標準10-20頭皮ウエットセンサーモンタージュを使用した一晩のEEG記録中の個体からの例示の睡眠ヒプノグラムであり、C3-M1導出の結果が示されている。この睡眠ヒプノグラムは、個体が覚醒(W)しているときと、N1、N2、N3またはREM段階睡眠中の状態を30秒エポックごとに示している。642には、30秒エポックでウェルチのピリオドグラムを使用した0.5Hzから4.5Hzまでの帯域幅の徐波活動が示されている。徐波活動は、N3睡眠中にピークに達しているのがわかる。徐波活動の重要な特徴には、標的予測モデルに関連して使用可能な存続時間、パワーおよび周波数が含まれる。たとえば、図6Bに示す徐波睡眠要素の特徴は、標的予測モデルをトレーニングするために使用することができる。EEG徐波睡眠要素が、標的予測モデルがトレーニングされた後で新たに収集されるデータである場合、EEG徐波睡眠データ要素は、神経変性の新たな標的マーカーを予測するために標的予測モデルに入力することができる。
【0037】
[0047]同じ一晩に同じ個体について、図1Aに示すモジュール100、200および300を含むイヤデバイスを使用して同時記録が行われた。図6Cにおいて、624はイヤデバイスによって記録された睡眠ヒプノグラムを示し、644はウェルチのピリオドグラムおよび30秒エポックを使用した0.5Hzから4.5Hzまでの帯域幅の徐波活動を示している。
【0038】
[0048]図6Dを参照すると、EEG記録の同じ一晩の同じ個体について、C3-M1導出を使用した標準10-20頭皮ウエットセンサーモンタージュからの、30秒エポックでウェルチのピリオドグラムを使用した10Hzから16Hzまでの帯域幅の睡眠微細構造紡錘波活動が652に示されている。654に、図1Aに示すモジュール100、200および300からなるイヤデバイスからのセンサーを使用した同じ解析が示されている。両方の図において、ピーク紡錘波活動がN2段階睡眠と一致していることがわかる。紡錘波活動の重要な特徴には、存続時間、パワーおよび周波数が含まれる。たとえば、図6Dに示す睡眠紡錘波要素の特徴は、標的予測モデルをトレーニングするために使用することができる。EEG睡眠紡錘波要素が、標的予測モデルがトレーニングされた後で新たに収集されるデータである場合、EEG睡眠紡錘波データ要素は、神経変性の新たな標的マーカーを予測するために標的予測モデルに入力することができる。
【0039】
[0049]EEG記録の同じ一晩に同じ個体について、図6Eに異なるEEG電極位置間のヒプノグラム段階および睡眠パフォーマンスパラメータの感度一致を示す。図6Fの682に、図1Aの200に示す左右のイヤ電極間のヒプノグラムおよび導出を採点するためのC3-M1導出間のヒプノグラム段階の感度一致を示す。図6Fの684に、図1Aの200に示す左右のイヤ電極間のヒプノグラムおよび導出を測定するためのC3-M1導出間の睡眠ヒプノグラムから導出された睡眠パフォーマンスパラメータの一致を示す。感度一致およびパフォーマンスパラメータの相違は、測定のためのセンサー位置の解剖学的相違に起因しており、標的予測モデルのトレーニング用および神経変性の新たな標的マーカーの予測を行うためにトレーニング済み標的予測モデルへの入力としての睡眠EEG特徴を抽出するための、使用間およびユーザ間の一貫した解剖学的センサー配置の重要さを強調している。図2C図2Gに示す解剖学的知識に基づくイヤフィッティングを使用した、図1Aに示すウエアラブルイヤデバイスによって行われるようなインイヤ導線配置は、ユーザによる一貫した解剖学的配置を確実にする。
【0040】
[0050]図7A図7Eは、本発明により構成されたシステムの神経血管データ取得モジュール700の一実施形態を示し、本出願を検討すれば、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく他の構成も使用可能であることが当業者にはわかるように、範囲を限定することは意図されていない。図7Aを参照すると、インイヤEEGを記録するために使用される図2Gに示す同じセンサー272および273が、EEG帯域幅を優に上回る80kHzで睡眠中の左から右耳への経頭蓋インピーダンスを記録するために多重化されている。経頭蓋インピーダンスは、たとえばモジュール710に示すグリンパティック流および脳脊髄液生成の睡眠関連変化から、および、モジュール730に示す心拍間測定可能脳かん流拍動に至る心拍動から、睡眠中に生じる脳内の流体変化を追跡する。心臓の鼓動ごとに、心拍出量のかなりの部分が内頸動脈および椎骨動脈に駆出され、脳実質に送達される。脳血液量のこの変化は、経頭蓋インピーダンスを低下させ、センサーによって測定可能である。インピーダンス波形の振幅と、インピーダンス波形パルスの数値積分とは、心周期中に脳内に駆出される血液の量に比例する。睡眠中の経頭蓋インピーダンスの移動平均は低い方へドリフトする。このドリフトは、たとえばグリンパティック流および脳脊髄液生成の増大から睡眠中に流体量が増大する脳流体量の日周変動に対応し、モジュール710によって測定可能である。睡眠の開始と睡眠最下点との間の経頭蓋インピーダンスのより大きい降下は、より多くのグリンパティック流とともに予測される総脳流体組成のより大きな増大と相関する。モジュール730によって記録される拍動は、睡眠中のグリンパティック流とタンパク質クリアランスを促進する脳間質腔を通る流体の流れを助ける。振幅、または駆出量を測定する数値積分領域として測定されるこれらの拍動のより大きい大きさは、クリアランスの向上につながるより多量のグリンパティック流を推進すると期待される。図1Aに示され、図2Fの264に示されているデバイスの耳内に配置されたフォトプレチスモグラフィセンサーが、モジュール750における睡眠中の心拍数変動性と、モジュール770による安静時心拍数と、やはりモジュール770により呼吸数を推定するために使用可能な洞性不整脈とを記録する。睡眠中の心拍数変動性は、自律神経系の交感神経-副交感神経トーンの測定手段となり、より低い心拍数変動性は、より低い副交感神経トーンとより高い交感神経トーンを示す。睡眠中、脳内の青斑核によって活性化されるより高い交感神経トーンは、脳間質液の流れとタンパク質バイオマーカークリアランスを低下させる。より高い睡眠時心拍数変動性は、より大きいグリンパティック流およびタンパク質クリアランスを生じさせると期待される。モジュール770によって記録されたより低い睡眠安静時心拍数は、厳しく制御された脳血流量を維持するために、より高い拍出量によって補償される。より高い拍出量の結果、モジュール730によって測定可能なより大きい脳かん流拍動が生じ、グリンパティック流の推進力を高める。逆に、動脈、具体的には、グリンパティック流を駆動するように脳実質中に推進される脳脊髄液を含む血管周囲腔がそれと並んで通る脳実質内に侵入する細動脈を硬化させる疾病は、推進力を低下させる。推進力の低下は、モジュール730における脳かん流拍動の大きさの低下によって測定される。モジュール770において記録される呼吸数の変化も、心臓への静脈環流に影響し、それによって拍出量を変化させることによって730における血液量拍動を変化させる。
【0041】
[0051]図7Aに示す神経血管データ要素のうちの1つまたは複数を、標的予測モデルに関連して使用することができる。たとえば、図7Aに示す神経血管データ要素は、標的予測モデルをトレーニングするために使用することができる。別の例として、神経血管データ要素が、標的予測モデルがトレーニングされた後で新たに収集されるデータである場合、神経血管データ要素を神経変性の新たな標的マーカーを予測するために標的予測モデルに入力することができる。
【0042】
[0052]図7Bを参照すると、714は左インイヤデバイスの図2Gにおける272および273によって示される経頭蓋インピーダンスセンサーからの脳脊髄液量の睡眠時記録を示す。712に示す睡眠ヒプノグラムは、記録されたインピーダンス714に対応し、患者が段階N2およびN3(徐波睡眠)において深い睡眠に移行するときのインピーダンスの低下を示している。インピーダンスの低下は、脳組織を流れるグリンパティック流の増加およびそれに伴う脳脊髄液の生成の増加に対応する脳内の流体(または水)組成の増加に対応する。
【0043】
[0053]この患者の睡眠中の脳かん流拍動の間隔を732およびそれに対応する734におけるECG信号に示す。脳かん流拍出量は、拍動のピークと谷とのインピーダンス差である。差が大きいほど、心臓の鼓動の結果としての流体組成または水組成の変化が大きいことを意味しており、脳拍出量と直接、相関する。
【0044】
[0054]図7Cを参照すると、睡眠中の各500秒エポックについて、752に睡眠ヒプノグラムが示され、754にモジュール770による安静時心拍数の記録が示され、756にモジュール750による安静時心拍数変動性の記録が示されており、745と756の両方において、基準標準心電図(ECG)記録に対する図1Aに示すウエアラブルデバイスによるセンサーからの記録が示されている。
【0045】
[0055]図7Dを参照すると、パルス通過時間モジュール790が、図2Fの262によって示されているインイヤ慣性測定装置(IMU)からの心弾動図(BCG)791を記録する。記録791においてBCG I、JおよびK波形が強調されている。BCG記録のウェーブレット解析を使用して、J波形のパワーが792に示されており、そのピークはBCGのJ波形ピークと一致する。793に、図2Fに示すインイヤセンサー264からのPPG波形記録が示されており、794はECG記録を示す。IMU、PPGおよびECG記録がモジュール790によって時刻同期される。791~794に示されているデータの2.5秒期間のクローズアップが図7Eの795に示されている。心臓駆出のパルス通過時間の計算が795に示されている。最大血液加速がBCG J波796によってマークされており、PPG波形797の谷はPPGコレクタへの赤外散乱の低減を生じさせる耳内のタイミング毛細管血液怒張に対応する。その1つの心周期の797と796に示すタイミングの相違が、大動脈弁からインイヤセンサーまでのパルス通過時間である。パルス波速度を、大動脈弁からインイヤセンサーまで血液が通過する血管距離をパルス通過時間で割った値として計算することができる。成人では、この距離は固定したままであり、パルス通過時間の変化はパルス波速度の変化に反比例する。
【0046】
[0056]図8Aおよび図8Bは、本発明により構成されたシステムのグリンパティック流、脳タンパク質症および神経変性標的データ取得モジュール800の一実施形態を示し、本出願を検討すれば、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく他の構成も使用可能であることが当業者にはわかるように、範囲を限定することは意図されていない。図8Aを参照すると、一実施形態810では、グリンパティック流画像診断を、血管周囲腔内のCSFのグリンパティック流を測定するために拡散テンソルMRIとともに使用することができるか、または、くも膜下腔内に注入されると脳の血管外グリンパティック流輸送を通して排出されるガドリニウムなどのCSFトレーサとともに使用することができる。注入を睡眠開始の直前に時間調整することによって、MRIスキャンを睡眠の前と、睡眠の終了時にもう1回、行うことができる。関心重要領域における造影剤の明暗度の相違が、睡眠中に起こったグリンパティック系機能の神経画像診断標的を提供する。
【0047】
[0057]別の実施形態830では、PETスキャンを、特定の関心タンパク質に対して特異的な放射性トレーサと、脳内のタンパク質症蓄積を定量化する標準取り込み値比(SUVr)とともに使用することができる。別の実施形態では、放射性トレーサは、可溶性形態のタンパク質症タンパク質に結合し、PETスキャンSUVrは睡眠後の可溶性タンパク質の濃度の変化を定量化する。
【0048】
[0058]別の実施形態では、個体の神経変性の標的率を提供するため、数か月離れた2つの時点にわたる、海馬、内嗅皮質、視床、眼窩前頭皮質、頭骨頭頂部、側頭、前帯ならびに後帯状回、および楔前部領域などの関心解剖学的領域における脳容積の変化または神経変性の程度を測定するために、MRI850を使用することができる。
【0049】
[0059]別の実施形態870では、朝または睡眠の前と後の両方にタンパク質症タンパク質の髄液濃度がアッセイされる。母集団に対して正規化された絶対濃度または睡眠の前と後の濃度の日周差が、グリンパティック流をタンパク質の正味クリアランスとして測定し、脳タンパク質症および神経変性のマーカーの役割も果たす、そのタンパク質の標的分子マーカーを提供する。
【0050】
[0060]別の実施形態890では、タンパク質症タンパク質の血漿濃度が朝または睡眠の前と後の両方にアッセイされる。母集団に対して正規化された絶対濃度または睡眠の前と後の濃度の日周差が、グリンパティッククリアランス機能をタンパク質の正味グリンパティッククリアランスとして測定し、脳タンパク質症および神経変性のマーカーの役割も果たす、そのタンパク質の標的分子マーカーを提供する。
【0051】
[0061]標的マーカーデータ取得モジュール800を、実施形態810、830、850、870または890を使用して実装することができる。あるいは、標的マーカーデータ取得モジュール800は、図8に示す複数の実施形態を組み合わせて使用して実装することができる。
【0052】
[0062]図8Bを参照すると、812および814は2人の異なる個体におけるアミロイドタンパク質のPETスキャンおよびSUVrマーカーを示す。816には、SUVrスケールが示されており、0に近い値が、トレーサが結合するアミロイドタンパク質が低いかまたはまったくない場合に生じる低トレーサ濃度を表す。1.5を上回る値は、高いアミロイド蓄積とともに生じる高トレーサ濃度を示す。812に示すPETスキャンは、この冠状断スライス内において関心脳領域のいずれにおいてもアミロイドの蓄積が見られないことを示している。それに対して、814に示すスキャンは、眼窩前頭皮質および側頭部を含む多くの関心領域(矢印で示す)においてアミロイドの有意な蓄積を示している。PETスキャンの重要なマーカーには、標的予測モデルに関連して使用可能な関心タンパク質の関心領域別のSUVr値が含まれる。たとえば、図8Bに示すPETスキャンにおけるマーカーは、標的予測モデルのトレーニングにおける標的として使用することができる。標的予測モデルがトレーニングされた後は、神経変性の新たな標的マーカーを予測するために標的予測モデルに新たなEEG特徴および神経血管特徴を入力することができる。標的マーカーデータ取得モジュール800は、実施形態810、830、850、870または890のうちの1つを使用して実装することができる。あるいは、標的マーカーデータ取得モジュール800は、図8に示す複数の実施形態を組み合わせて使用して実装することができる。
【0053】
[0063]図9は、本発明により構成されたシステムのバイオマーカー学習ジュール900の一実施形態を示し、本出願を検討すれば、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく他の構成も使用可能であることが当業者にはわかるように、範囲を限定することは意図されていない。図9を参照すると、一実施形態では、901の入力データは、モジュール600によって取得された神経生理学特徴データ、モジュール700によって取得された神経血管特徴データ、もしくはこれらの組合せ、またはモジュール800の810によって取得されたグリンパティック流標的データとすることができる。別の実施形態では、901の入力データは810によって取得されたグリンパティック流のマーカーとすることができ、800によって取得される分子または神経画像診断標的出力データは、図8Aの830、850、870または890によって説明した実施形態のいずれか1つまたはこれらの組合せとすることができる。標的マーカーデータは、連続して評価可能であり、たとえば、拡散テンソルMRIを使用したmm/秒単位でグリンパティック流を測定するための擬似拡散係数、PETスキャンにおけるSUVr、またはタンパク質の髄液分子アッセイにおけるピコモル濃度とすることができ、あるいは病期の標準化レベルを使用した連続評価測定値の閾値化に基づく、高または低などのカテゴリ値とすることができる。標的神経画像診断マーカーデータは、全脳値または特定の神経変性疾病過程によって主として冒されていることがわかっている特定の関心領域の値とすることができる。入力トレーニングデータ901は、健常レベルから重度罹患レベルまでの範囲の、異なる疾病過程レベルにおける12人以上の患者の母集団について慎重に収集される必要がある。疾病過程の異なる極値における患者を代表するデータを有することによって、たとえば、健常患者812および脳に進行したアミロイド沈着症のある患者814について図8BのアミロイドPETスキャンSUVr値に示したような標的マーカーデータ値の範囲が与えられる。これらの極値は、予測モデルおよびフィッティング手法903が健常患者に対応する神経生理学的データ600および神経血管データ700おける特徴パターンと、罹患患者に対応する神経生理学的データ600および神経血管データ700おける特徴パターンとの組合せを学習することができるようにする。各患者データは、標的グリンパティック流、分子または神経画像診断マーカーデータ前後の一晩以上の夜に一緒に収集される神経生理学的データおよび神経血管データと同時に収集される必要がある。図1に示すデバイスは、患者からの同時の時間同期された神経生理学的データおよび神経血管データの捕捉のためと、図2Gに示す解剖学的フォームフィッティングイヤデバイスを使用するすべてのセンサーの位置決めの一貫性を確実にすることによってデータ取得の再現性を確実にするために設計されている。数夜にわたって神経生理学的データおよび神経血管データの取得を繰り返すことによって、モデルフィッティングの偏りと分散とのトレードオフを向上させ、予測を向上させる、903における予測モデルのトレーニングのための追加の特徴が得られる。神経生理学的データおよび神経血管データは、図6A図6Fおよび図7A図7Eに示すような特徴抽出を行うことによって前処理される。
【0054】
[0064]903において、モデルおよびフィッティング手法が選択される。モデルは、市販のソフトウェアパッケージおよびサービスで使用されているものを含む、多くの知られている機械学習および深層学習モデルのうちの1つとすることができ、フィッティング手法は選択されたモデルに基づいて選択される。汎用機械学習モデルであるランダムフォレストが、標的グリンパティック流、分子または神経画像診断マーカーを最もよく分離または予測する神経生理学的および神経血管特徴値のパターンおよび範囲を識別するのにきわめて効果が高い。患者トレーニングデータの取得は費用が高く、治験審査委員会承認臨床試験を必要とする。ランダムフォレストは、比較的少数の患者データ事例について良好な結果を提供するという点で、深層学習モデルに優る利点を有する。標的適用を代表する患者の母集団についてモデルが学習された後は、患者に脳MRI、脳脊髄液分子解析またはPET神経画像診断などの高価で侵襲的な臨床診断法を受けさせることなく、図1Aに示すデバイスによって取得された神経生理学的および神経血管睡眠データから、新たな未知の患者における脳グリンパティック流、タンパク質症または神経変性の予測を行うことができる。これは、図1Aに示すデバイスが、グリンパティック流、脳タンパク質症または神経変性の範囲外値を示すマーカーをスクリーニングすることと、スクリーニング陽性の個体についてそれらのマーカーの進行を経時的にモニタリングすることを可能にする。
【0055】
[0065]ランダムフォレストなどのモデルが選択された後は、神経生理学的および神経血管データが入力特徴であり、標的マーカーデータがモデル交差検証905における標的出力である。901の患者データが、最初に、5つの非オーバーラップセットなどのいくつかのフォールドにランダムに分割される。903におけるモデルが、最初の4つのフォールドのデータにフィッティングされ、フィッティングされたモデルが5番目のフォールド内の患者の標的マーカーデータを予測するために使用される。この手順はさらに4回繰り返され、そのたびに患者とそのデータの新たなフォールドが除外され、その結果として、入力神経生理学および神経血管特徴データからの完全な標的マーカーデータのモデル予測がもたらされる。907において、903における予測と標的マーカーデータとの二乗平均平方根とすることができる、適合度を使用してモデルが評価される。どのモデルが標的マーカーデータの最も正確な予測を提供するかを判定するために、いくつかの異なるモデルを使用して動作901~907を繰り返すことができる。最善の標的予測モデルが909に進められ、モデルによっては見られたことのない標的マーカーデータを含む、ホールドアウト患者とそのデータが試験され、予測モデルと、に対するそのパフォーマンスが911で出力される。
【0056】
[0066]図10は、本発明により構成されたシステムの標的予測モジュール1000の一実施形態を示し、本出願を検討すれば、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく他の構成も使用可能であることが当業者にはわかるように、範囲を限定することは意図されていない。図10を参照すると、一実施形態では、1001はモジュール600および700によって個体から取得された新たな神経生理学的および神経血管データであり、911の標的予測モデル出力に入力される。図6A図6Fおよび図7A図7Eに示すようにデータから特徴が抽出される。この新たな神経生理学的および神経血管データは、新たな未知の患者から、または元のトレーニングデータの一部であったが、疾病の進行を評価するために新たなデータが数か月または数年後に取得される患者から、取得することができる。動作1003において、モジュールは動作1001の新たな入力データに対して標的予測モデルを実行し、グリンパティック流のマーカーを出力する1005。別の実施形態では、1001は標的予測モデル1005のグリンパティック流出力であり、動作1003において、モジュールは動作1001のこの新たな入力データに対して標的予測モデルを実行し、脳タンパク質症または神経変性のマーカーを出力する1005。
【0057】
[0067]標的予測は、グリンパティック流、前述したものなどのタンパク質蓄積のレベルまたは構造MRIを使用して全脳容積または領域容積の変化として測定された神経変性の程度の、予測値とすることができる。予測値は、疾病進行または介入に対する反応をモニタリングするために使用されるマーカー値の連続値、または病期の存在または非存在を判定するためのカテゴリ値とすることができる。病期分類の標的予測値は、適切な規制検証試験による規制認可、および、分子解析または神経変性試験などの基準標準標的と比較した感度、特異度、陽性および陰性予測値の報告のために提出することができる。
【0058】
[0068]図11A図11Cは、本発明により構成されたシステムの標的関与モジュール1100の一実施形態を示し、本出願を検討すれば、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく他の構成も使用可能であることが当業者にはわかるように、範囲を限定することは意図されていない。図11Aを参照すると、一実施形態では、標的関与モジュール1110が、睡眠前または睡眠中の介入からデータを記録し、モジュール1130が睡眠中の神経生理学および神経血管データと、介入動作1110からの入力データを記録する。モジュール1150において、図6Aに示す神経生理学標的または特徴のうちの1つ、または図7Aに示す神経血管標的または特徴のうちの1つ、あるいは両方の組合せへの介入の関与が、ベースラインからの神経生理学または神経血管特徴値の変化として計算される。プロセス1110、1130および1150は、標的関与反応曲線を設定するために治療介入の異なるレベルまたは投与強度で複数回繰り返すことができる。
【0059】
[0069]短期または持続的な場合は長期における、グリンパティック流、脳タンパク質症および神経変性に与える治療介入の期待影響の予測を出力するために、データ入力1110および1130を使用して予測モデル911を実行することができる。出力されるグリンパティック流、脳タンパク質症または神経変性予測は、グリンパティック流、神経変性の分子または神経画像診断マーカーに対する介入の効果を明らかにするために使用することができる。他の実施形態では、動作1110は、心臓血管介入、食事介入、薬剤介入またはニューロモデュレーション介入を記録することができ、このデータは次に、動作1150における標的関与の実行計算のために1130に入力される。したがって、神経生理学および神経血管データに及ぼす介入の効果を解明することができ、予測モデル911を使用して神経変性のマーカーに対する介入の効果を判定することができる。
【0060】
[0070]図11Bを参照すると、一実施形態では、入力介入が、1112に示すように平らな仰臥位まで頭部を足に対して相対的に上げる(逆トレンデレンブルグ)かまたは下げる(トレンデレンブルグ)ことができる。トレンデレンブルグは頭蓋内かん流圧を上昇させる。1112の介入中に1134において経頭蓋インピーダンスをモニタリングすると、トレンデレンブルグにより経頭蓋インピーダンスが低下し、患者が平らな仰臥位に戻されると正常に戻ったことが示され、この介入の脳脊髄液量への標的関与を実証している。1132におけるインイヤPPGトレーシングの振幅包絡線をモニタリングすると、逆のことが起こり、トレンデレンブルグが振幅または血液量を低下させ、耳と頭皮に進み、患者が平らな仰臥位に戻ると正常に戻ることが示される。
【0061】
[0071]別の実施形態では、入力介入はバルサルバ法または過換気などの心肺介入とすることができる。この2つの心肺介入後の経頭蓋インピーダンストレーシングを1136および1138に示す。1136において、患者は1分マークにおいて開始する45秒バルサルバ法を行った。バルサルバ法は、胸腔内圧を上昇させ、それによって頭部からの静脈環流を減少させる。静脈環流の減少の結果、静脈充血と脳脊髄液量増加が起こる。これは、トレーシング1136におけるバルサルバ時の経頭蓋インピーダンスの低下によって実証される。1138において、同じ患者が1分において軽く過換気を開始し、1分15秒において完全過換気に進んだ。各吸息が胸腔内圧を低下させ、静脈環流を増大させ、それによってトレーシング1138に示すように脳脊髄液量の減少と経頭蓋インピーダンスの上昇を生じさせる。これらの両方の介入において、神経血管トレーシングをモニタリングすると、神経血管測定量、この場合は脳脊髄液量に対する介入の標的関与が実証された。
【0062】
[0072]図11Cを参照すると、別の実施形態では、神経生理学的および神経血管データのうちの1つまたは複数への介入の標的関与が判定された場合、介入のグリンパティック流、脳タンパク質症または神経変性のマーカーに対する効果を判定するために予測モデル911が使用される。図1152に、3つの異なる介入の下で連続MRIによって測定された脳からのくも膜下腔内ガドリニウムのクリアランスの速度を示す。最初の介入は対照、すなわち介入のない通常睡眠であり、2番目の介入は睡眠遮断であり、3番目の介入は徐波睡眠の存続時間を増加させるデクスメデトミジンである。これらの3つの介入は睡眠EEG測定値、具体的には徐波睡眠持続時間に関与する。図1152は、対照と比較した睡眠遮断(徐波睡眠なし)による造影剤の対応するより低速のクリアランスを示し、睡眠EEGデータ、神経血管データ、および標的脳タンパク質症ならびに神経変性データについてトレーニングされている予測モデル911から期待されるように、対照はデクスメデトミジン(徐波睡眠の増加)よりも低速のクリアランスを示している。
項目に記載する実施形態
[0073]上記に加えて、本開示の様々な実施形態は、以下の項目に記載されている実施形態を含むが、これらには限定されない。
【0063】
[0074]項目1. 1つまたは複数のコンピュータプロセッサにより実施される方法であって、
a.1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、睡眠中に記録された神経生理学的データおよび神経血管データにアクセスすることと、
b.1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、前記神経生理学的データおよび神経血管データからグリンパティック流のマーカーである標的への関数マッピングを実行することと、
c.1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、関数マッピングに基づいて標的予測モデルを出力することとを含む、方法。
【0064】
[0075]項目2. 項目1に記載の方法であって、
a.1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、グリンパティック流のマーカーから、神経変性の分子解析マーカーまたは神経変性の神経画像診断マーカーのうちの一方である標的への第2の関数マッピングを実行するステップと、
b.1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、第2の関数マッピングに基づいて標的予測モデルを出力するステップと、をさらに含む、方法。
【0065】
[0076]項目3. 項目1に記載の方法であって、神経生理学的データが脳波図記録であり、脳波図記録から睡眠マクロ構造および睡眠微細構造特徴が抽出される、方法。
【0066】
[0077]項目4. 項目1に記載の方法であって、神経血管データが、患者の頭から取られた電気インピーダンス記録と、患者の頭において測定されたフォトプレチスモグラフィと、患者の耳内で測定された慣性測定装置加速度とのうちの1つまたは複数を含み、神経血管データが、睡眠脳脊髄液量変化と、脳かん流拍動と、心拍数変動性と、安静時心拍数と、パルス通過時間と、パルス波速度と、呼吸数とを計算するために使用される、方法。
【0067】
[0078]項目5. 項目1に記載の方法であって、神経生理学的データおよび神経血管データがウエアラブルデバイスから取得される、方法。
【0068】
[0079]項目6. 項目5に記載の方法であって、ウエアラブルデバイスのセンサーが患者の耳内に挿入され、耳または外耳道から測定値が取られる方法。
【0069】
[0080]項目7. 項目6に記載の方法であって、ウエアラブルデバイスが、外耳道の管壁に対するセンサーの界面接触を増大させるために外耳道内部で加圧される袋を有する、方法。
【0070】
[0081]項目8. 項目2に記載の方法であって、神経変性の分子解析マーカーが、βアミロイドとタウとpタウとαシヌクレインと神経フィラメント光とのうちの1つのCSFまたは血漿アッセイである、方法。
【0071】
[0082]項目9. 項目2に記載の方法であって、神経変性の神経画像診断マーカーが、βアミロイド、タウまたはグルコースのうちの1つに結合する放射性トレーサによるPETスキャンである、方法。
【0072】
[0083]項目10. 項目2に記載の方法であって、神経変性の神経画像診断マーカーがMRIスキャンである、方法。
【0073】
[0084]項目11. 項目1に記載の方法であって、
標的予測モデルに新たな神経生理学的データと新たな神経血管データとを入力することと、グリンパティック流の予測マーカーを出力することと、をさらに含む方法。
【0074】
[0085]項目12. 項目1に記載の方法であって、
標的予測モデルに介入データを入力することと、
標的予測モデルに新たな神経生理学的データと新たな神経血管データを入力することと、
グリンパティック流の予測標的マーカーを出力することと、
グリンパティック流の予測標的マーカーに対する介入データの効果を判定することと、をさらに含む方法。
【0075】
[0086]項目13. 1つまたは複数のコンピュータプロセッサと、
神経生理学的データを測定するように構成された神経生理学的データ取得モジュールと、
神経血管データを測定するように構成された神経血管データ取得モジュールと、
脳波図データと神経血管データを第2のコンピューティングデバイスに送信するように構成された送信モジュールと、を含むシステム。
【0076】
[0087]項目14. 項目13に記載のシステムであって、1つまたは複数のコンピュータプロセッサと、神経生理学的データ取得モジュールと、神経血管データ取得モジュールと、送信モジュールとがウエアラブルデバイスに配置されているシステム。
【0077】
[0088]項目15. 項目14に記載のシステムであって、ウエアラブルデバイスが、患者の耳に装着するように構成されている、システム。
【0078】
[0089]項目16. 項目15に記載のシステムであって、ウエアラブルデバイスのセンサーが耳内に挿入され、耳または外耳道から測定値が取られる、システム。
【0079】
[0090]項目17. 項目16に記載のシステムであって、ウエアラブルデバイスが、外耳道の壁に対するセンサーの界面接触を増大させるために外耳道内部で加圧される袋を含む、システム。
【0080】
[0091]項目18. 項目13に記載のシステムであって、神経生理学的データが脳波図記録であり、脳波図記録から睡眠マクロ構造および睡眠微細構造特徴が抽出される、システム。
【0081】
[0092]項目19. 項目13に記載のシステムであって、神経血管データが、患者の頭から取られた電気インピーダンス記録と、患者の頭において測定されたフォトプレチスモグラフィと、患者の耳内で測定された慣性測定装置加速度とのうちの1つまたは複数を含み、神経血管データが、睡眠脳脊髄液変化と、脳かん流拍動と、心拍数変動性と、安静時心拍数と、パルス通過時間と、パルス波速度と、呼吸数とを計算するために使用される、システム。
【0082】
[0093]項目20. 項目13に記載のシステムであって、第2のコンピューティングデバイスが、携帯電話とローカルコンピューティングデバイスとリモートコンピューティングデバイスとのうちの1つである、システム。
【0083】
[0094]項目21. 項目13に記載のシステムであって、第2のコンピューティングデバイスが、神経生理学的データと神経血管データとを入力するように構成され、標的予測モデルを出力するように構成された、機械学習アルゴリズムを含む、システム。
【0084】
[0095]項目22. 項目21に記載のシステムであって、標的予測モデルが、新たな神経生理学的データと新たな神経血管データとを入力として受け取るように構成され、神経変性の予測マーカーを出力するように構成されている、システム。
【0085】
[0096]項目23. 項目21に記載のシステムであって、標的予測モデルが、介入データと、新たな神経生理学的データと、新たな神経血管データとを入力として受け取るように構成され、脳タンパク質症または神経変性の予測マーカーと、脳タンパク質症または神経変性の予測マーカーに対する介入データの効果の判定とを出力するように構成されている、システム。
【0086】
[0097]項目24. 1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって実施される方法であって、
a.1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、睡眠中に記録された神経生理学的データおよび神経血管データにアクセスすることと、
b.1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、前記神経生理学的データおよび神経血管データから標的への関数マッピングを実行することであって、標的がグリンパティック流のマーカー、神経変性の分子解析マーカーまたは神経変性の神経画像診断マーカーのうちの1つまたは複数である、関数マッピングを実行することと、
c.1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって、関数マッピングに基づいて標的予測モデルを出力することと、
d.睡眠中に収集された新たに収集された神経生理学的データおよび神経血管データを標的予測モデル内に入力として受け取ることと、
e.治療介入に関連付けられたデータを入力として受け取ることと、
f.治療介入の効果を測定することとを含む、方法。
【0087】
[0098]項目25. 1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって実施される方法であって、
a.ウエアラブルデバイスの神経生理学的データセンサーと神経血管データセンサーとを起動することと、
b.センサーによって、睡眠中に神経生理学的データと神経血管データとを収集することと、
c.神経生理学的データと神経血管データをウエアラブルデバイスの記憶デバイスに記憶することと、
d.ウエアラブルデバイスのプロセッサを使用して神経生理学的データと神経血管データを処理することと、
e.ウエアラブルデバイスの送信モジュールによって、神経生理学的データと神経血管データを第2のコンピューティングデバイスに送信することとを含む、方法。
【0088】
[0099]項目26. 項目1に記載の動作を行うコンピュータ実行可能命令を含む非一過性のコンピュータ可読媒体。
【0089】
[00100]項目27. 項目24に記載の動作を行うコンピュータ実行命令を含む非一過性のコンピュータ可読媒体。
【0090】
[00101]項目28. 項目25に記載の動作を行うコンピュータ実行命令を含む非一過性のコンピュータ可読媒体。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B-1】
図7B-2】
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B-1】
図11B-2】
図11B-3】
図11C
【国際調査報告】