(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】多発性骨髄腫を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240918BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240918BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240918BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240918BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00 ZNA
A61P43/00
A61K9/08
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/26
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 E
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540838
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 US2022042944
(87)【国際公開番号】W WO2023043658
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524097160
【氏名又は名称】カエルム バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】スペクター マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ソボロフ-ジェインズ スーザン ビー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC27
4C076DD07
4C076DD22
4C076DD23
4C076DD38
4C076DD46
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、対象における多発性骨髄腫を治療する方法及びアミロイド形成を阻害する方法を提供する。本明細書で提供される方法は、ミスフォールド軽鎖に結合する抗体と抗CD38抗体との併用投与を含む。前記抗CD38は、例えばダラツムマブ、イサツキシマブ、CID-103(CASI Pharma)、若しくはMoro3087(Morphosys)、又はそれらの組合せである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における多発性骨髄腫を治療する方法であって、以下のステップ:
前記対象に、
(a)配列番号1に示す重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に示す軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体と、
(b)抗CD38抗体と
を投与するステップであって、それにより、前記対象における多発性骨髄腫を治療する、ステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記抗体が、約250mg/m
2~1,375mg/m
2の用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗体用量が、約500mg/m
2、約750mg/m
2、約1,000mg/m
2から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
毎週の抗体投与用量が、約10~15mg/kgの抗体、約15~20mg/kgの抗体、又は約20~30mg/kgの抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
約500mg/m
2の抗体の投与が、約1,000~1,500mgの抗体を投与することを含み、約750mg/m
2の抗体の投与が、約1,500~2,500mgの抗体を投与することを含み、約1,000mg/m
2の抗体の投与が、約2,500~3,000mgの抗体を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
500mg/m
2、750mg/m
2、及び1,000mg/m
2の抗体投与用量が、標的受容体についての少なくとも90%の部位占有率を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、少なくとも2、3、又は4週間にわたって毎週投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
その後、維持用量の前記抗体を前記対象に投与するステップ
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
最初の2、3、4週、又はそれ以上の週数を経た後、前記維持用量の前記抗体が、2週間毎に、3週間毎に、又は1カ月毎に投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗CD38抗体が、ダラツムマブ、イサツキシマブ、CID-103(CASI Pharma)、若しくはMoro3087(Morphosys)、又はそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ダラツムマブが、約10~20mg/kgの用量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ダラツムマブが、少なくとも第1のサイクル又は第2のサイクルにわたって毎週投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
その後、維持用量の前記ダラツムマブを前記対象に投与するステップ
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1のサイクル又は第2のサイクルの後、前記維持用量の前記ダラツムマブが、2週間毎に、3週間毎に、4週間毎に、又は1カ月毎に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、前記ダラツムマブの投与の前に、それと同時に、又はその後に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が、前記ダラツムマブの投与の前に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体及び/又は前記ダラツムマブが、静脈内(IV)注入、皮下注射、又は筋肉内注射によって投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体の投与が、臓器又は組織中に存在するアミロイド沈着の除去を誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記臓器又は組織が、心臓、腎臓、肝臓、肺、胃腸管、神経系、筋骨格系、軟部組織、皮膚、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、ミスフォールドカッパ及びラムダ軽鎖に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、
(a)1つ又は複数の等張剤と、
(b)非イオン界面活性剤と
を更に含む医薬組成物中にて前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記医薬組成物が、約20~40mg/mLの抗体を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記等張剤が酢酸ナトリウムであり、緩衝剤が塩化ナトリウムであり、前記非イオン界面活性剤がポリソルベート80である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記医薬組成物が、約15~35mMの酢酸ナトリウムを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記医薬組成物が、約25~75mMの塩化ナトリウムを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記医薬組成物が、約0.5~5%のマンニトールを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記医薬組成物が、約0.001~0.1%のポリソルベート80を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記医薬組成物が、約5~6のpHを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記医薬組成物が、約5.5のpHを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体が、
それぞれ不均一な電荷を有する、天然画分、還元画分、及び/又はグリコシル化若しくは脱グリコシル化画分
を含む混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記天然画分が、シアリル化種、中性種、並びに/又はガラクトシル化、フコシル化、及び/若しくはマンノシル化中性種を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記還元画分が、糖化リジンを有する軽鎖を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体が、インタクトな抗体、ハーフマー断片、不完全抗体断片、他の断片、及び/又はそれらの凝集体を含む混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記ハーフマーが、1つ又は2つの重鎖(HC)及び1つの軽鎖(LC)を含む抗体である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記不完全抗体が、HCのC末端領域を欠いている、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記断片が、C末端リジンを保持するHCを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
対象の循環中のミスフォールド前駆体タンパク質への結合によってアミロイド形成を阻害する方法であって、以下のステップ:
前記対象に、
(a)配列番号1に示す重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に示す軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体と、
(b)ダラツムマブ、イサツキシマブ、CID-103(CASI Pharma)、若しくはMoro3087(Morphosys)、又はそれらの組合せから選択される抗CD38抗体と
を投与するステップであって、それにより、前記対象におけるアミロイド形成を阻害する、ステップ
を含む、前記方法。
【請求項38】
前記抗体が、約250mg/m
2~1,375mg/m
2の用量で投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体用量が、約500mg/m
2、約750mg/m
2、及び約1,000mg/m
2から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
約500mg/m
2の抗体の毎週の抗体投与用量が、約10~15mg/kgの抗体を含み、約750mg/m
2の毎週の用量が、約15~20mg/kgの抗体を含み、約1,000mg/m
2の抗体の毎週の用量が、約20~30mg/kgの抗体を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
約500mg/m
2の抗体の投与が、約1,000~1,500mgの抗体を投与することを含み、約750mg/m
2の抗体の投与が、約1,500~2,500mgの抗体を投与することを含み、約1,000mg/m
2の抗体の投与が、約2,500~3,000mgの抗体を投与することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
500mg/m
2、750mg/m
2、及び1,000mg/m
2の抗体投与用量が、標的受容体についての少なくとも90%の部位占有率を達成する、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記抗体が、少なくとも2、3、又は4週間にわたって毎週投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
その後、維持用量の前記抗体を前記対象に投与するステップ
を更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
最初の2、3、4週、又はそれ以上の週数を経た後、前記維持用量の前記抗体が、2週間毎に、3週間毎に、又は1カ月毎に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ダラツムマブが、約10~20mg/kgの用量で投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記ダラツムマブが、少なくとも第1のサイクル又は第2のサイクルにわたって毎週投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項48】
その後、維持用量の前記ダラツムマブを前記対象に投与するステップ
を更に含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
第1のサイクル又は第2のサイクルの後、前記維持用量の前記ダラツムマブが、2週間毎に、3週間毎に、4週間毎に、又は1カ月毎に投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体が、前記ダラツムマブの投与の前に、それと同時に、又はその後に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体が、前記ダラツムマブの投与の前に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項52】
前記抗体及び/又は前記ダラツムマブが、静脈内(IV)注入、皮下注射、又は筋肉内注射によって投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項53】
前記抗体の投与が、臓器又は組織中に存在するアミロイド沈着の除去を誘導する、請求項37に記載の方法。
【請求項54】
前記臓器又は組織が、心臓、腎臓、肝臓、肺、胃腸管、神経系、筋骨格系、軟部組織、皮膚、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記抗体が、ミスフォールドカッパ及びラムダ軽鎖に結合する、請求項37に記載の方法。
【請求項56】
前記抗体が、
(a)1つ又は複数の等張剤と、
(b)非イオン界面活性剤と
を更に含む医薬組成物中にて前記対象に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項57】
前記医薬組成物が、約20~40mg/mLの抗体を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記等張剤が酢酸ナトリウムであり、緩衝剤が塩化ナトリウムであり、前記非イオン界面活性剤がポリソルベート80である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記医薬組成物が、約15~35mMの酢酸ナトリウムを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記医薬組成物が、約25~75mMの塩化ナトリウムを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記医薬組成物が、約0.5~5%のマンニトールを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
前記医薬組成物が、約0.001~0.1%のポリソルベート80を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
前記医薬組成物が、約5~6のpHを有する、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
前記医薬組成物が、約5.5のpHを有する、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
前記抗体が、
それぞれ不均一な電荷を有する、天然画分、還元画分、及び/又はグリコシル化若しくは脱グリコシル化画分
を含む混合物である、請求項37に記載の方法。
【請求項66】
前記天然画分が、シアリル化種、中性種、並びに/又はガラクトシル化、フコシル化、及び/若しくはマンノシル化中性種を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記還元画分が、糖化リジンを有する軽鎖を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記抗体が、インタクトな抗体、ハーフマー断片、不完全抗体断片、他の断片、及び/又はそれらの凝集体を含む混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項69】
前記ハーフマーが、1つ又は2つの重鎖(HC)及び1つの軽鎖(LC)を含む抗体である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記不完全抗体が、HCのC末端領域を欠いている、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記断片が、C末端リジンを保持するHCを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
シクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、メルファラン、レナリドミド、イサツキシマブ、ベネトクラクス、幹細胞移植、又はそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの追加療法を前記対象に施すステップを更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項73】
前記抗体が、約6mg/kg~32mg/kgの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項74】
前記抗体用量が、約18.75mg/kg及び約25mg/kgから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項75】
前記抗体の投与が、約1400~2300mgの抗体を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項76】
前記抗体が、約6mg/kg~32mg/kgの用量で投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項77】
前記抗体用量が、約18.75mg/kg及び約25mg/kgから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項78】
前記抗体の投与が、約1400~2300mgの抗体を投与することを含む、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2021年9月14日に出願した米国仮出願第63/244,113号、2021年12月2日に出願した同第63/285,435号、及び2022年8月25日に出願した同第63/400,882号の優先権を主張する。前記先行出願の開示は本出願の開示の一部と見なされ、その全ての内容が参照によって本出願に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は、一般にアミロイドーシスに関し、より具体的には、併用療法を使用して多発性骨髄腫を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
多発性骨髄腫は、抗体を産生する白血球の1種である形質細胞の稀ながんである。多発性骨髄腫は、正常な造血の抑制、モノクローナル免疫グロブリン又は断片(軽鎖又は重鎖)の産生、免疫抑制、腎症及び神経障害を引き起こす骨髄内のクローン形質細胞の増殖を特徴とする、最終分化したBリンパ球のクローン性悪性腫瘍である。骨髄腫細胞は、正常な抗体を産生する代わりに、モノクローナルタンパク質又はM-タンパク質と呼ばれる単一の抗体を多数産生する。これにより、多くの場合には、様々な臓器で直接的な損傷又は免疫グロブリン(重鎖又は軽鎖)の蓄積が引き起こされる。
【0004】
一部の多発性骨髄腫患者はアミロイドーシスも有している。骨髄腫及びリンパ腫の合併症状としての全身性アミロイドーシス及び臓器合併症の存在は、予後不良と関連している。
【0005】
アミロイドーシスは、影響を受けた臓器に応じた症状を伴う、身体組織における異常タンパク質沈着という共通点を持つ一群の疾患である。アミロイドーシスによって損傷される可能性のある最も重要な臓器としては、心臓、腎臓、神経及び肝臓を含む。アミロイドーシスの最も一般的なタイプの1つは、AL(免疫グロブリン軽鎖)アミロイドーシスと呼ばれる。
【0006】
ALアミロイドーシスに対する療法は、多発性骨髄腫に対するものに類似するが、根底にあるアミロイドーシスの結果として発現している症状により、患者は療法に耐えかねる場合がある。幹細胞移植に不適格な患者には、根底にある形質細胞異常増殖症(PCD)を根絶するための標的化学療法が使用される。かかる治療は、メルファランとデキサメタゾンの併用、ボルテゾミブとデキサメタゾンの併用等のような細胞毒性化学療法に依存する。しかし、細胞毒性化学療法は、せいぜい、異常抗体及びタンパク質沈着の更なる産生を停止するためにしか有効でないため、予後は、病理学的沈着の持続(又は進行)により、及び臓器機能障害の改善及び/又は逆転の欠如により、依然として非常に不良である。
【0007】
そこで、骨髄腫細胞を標的とし、異常抗体の更なる産生を停止し、タンパク質沈着を低減することができる多発性骨髄腫療法が求められている。本明細書に開示される組成物及び方法はこのニーズを満たすものである。
【発明の概要】
【0008】
概要
本開示は、ミスフォールド軽鎖に結合する本明細書に記載の抗体と、抗CD38抗体、例えばダラツムマブ、イサツキシマブ、CID-103(CASI Pharma)、若しくはMoro3087(Morphosys)、又はそれらの組合せとの併用療法が、多発性骨髄腫の治療に有効であるという発見に基づいたものである。本開示は、本明細書の実施例における開示によって例示されるが、それに限定されるものではない。
【0009】
1つの実施形態において、本開示は、対象における多発性骨髄腫を治療する方法であって、以下のステップ:前記対象に、配列番号1に示す重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に示す軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体と、抗CD38抗体とを投与するステップであって、それにより、前記対象における多発性骨髄腫を治療する、ステップを含む、前記方法を提供する。この実施形態の態様において、前記抗体は、約500mg/m2~1,000mg/m2の用量で投与され得る。更なる形態において、毎週の抗体投与用量は、約500mg/m2の抗体、約750mg/m2の抗体又は約1,000mg/m2の抗体であり得る。前記毎週の抗体投与用量は、約10~15mg/kgの抗体、約15~20mg/kgの抗体、又は約20~30mg/kgの抗体を含み得る。前記抗体は、少なくとも2、3、又は4週間にわたって毎週投与され得、任意にその後に維持用量の前記抗体が投与され得る。最初の2、3、4週、又はそれ以上の週数を経た後、前記維持用量の前記抗体が、2週間毎に、3週間毎に、又は1カ月毎に投与され得る。この実施形態の態様において、前記抗CD38抗体はダラツムマブであり、約10~20mg/kgの用量で投与され得、好ましくは、少なくとも第1又は第2のサイクルにわたって毎週投与される。第1又は第2のサイクルの後、維持用量の前記ダラツムマブは、前記対象に対して2週間毎、3週間毎、4週間毎、又は1カ月毎である。
【0010】
前記抗体は、前記抗CD38抗体、例えば、ダラツムマブ、イサツキシマブ、CID-103(CASI Pharma)、若しくはMoro3087(Morphosys)、又はそれらの組合せの投与の前に、それと同時に、又はその後に投与され得る。この実施形態の態様は、静脈内(IV)注入、皮下注射、又は筋肉内注射による前記抗体及び/又は前記ダラツムマブの投与を含む。
【0011】
1つの実施形態において、本開示は、アミロイド形成を阻害するための方法であって、投与された結果、循環中のミスフォールドタンパク質に結合する、本明細書に開示される抗体を、対象に投与することで、アミロイド形成を阻害する、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】
図1A~1Bは、CDR領域を含む、抗体の重鎖及び軽鎖の配列を示す。
図1Aは、重鎖の配列を示す。
【
図1B】
図1A~1Bは、CDR領域を含む、抗体の重鎖及び軽鎖の配列を示す。
図1Bは、CDR領域を含む軽鎖の配列を示す。
【
図2A】
図2A~2Cは、3つの独立した方法によって評価された抗体の電荷不均一性の特徴付けを図示する。
図2Aは、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)分離による抗体の電荷不均一性の特徴付けを示す。
【
図2B】
図2A~2Cは、3つの独立した方法によって評価された抗体の電荷不均一性の特徴付けを図示する。
図2Bは、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)分離による抗体の電荷不均一性の特徴付けを示す。
【
図2C】
図2A~2Cは、3つの独立した方法によって評価された抗体の電荷不均一性の特徴付けを図示する。
図2Cは、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)による抗体の電荷不均一性の特徴付けを示す。
【
図3A】
図3A~3Bは、第1b相試験と比較した、第2相試験における個別の抗体濃度を図示する。
図3Aは、患者における抗体濃度を示す折れ線グラフである。
【
図3B】
図3A~3Bは、第2相試験における個別の抗体濃度の、第1b相試験との比較を図示する。
図3Bは、患者における抗体濃度を半対数スケールで示す折れ線グラフである。
【
図4A】
図4A~4Bは、第1b相試験と比較した、第2相試験における個別の抗体平均濃度を図示する。
図4Aは、患者における抗体平均濃度を線形スケールで示す折れ線グラフである。
【
図4B】
図4A~4Bは、第1b相試験と比較した、第2相試験における個別の抗体平均濃度を図示する。
図4Bは、患者における抗体平均濃度を半対数スケールで示す折れ線グラフである。
【
図5】第1b相試験からの抗体平均濃度、及びC
minの決定を図示する折れ線グラフである。
【
図6】C
max/用量についての用量比例性評価を図示する棒グラフである。
【
図7】C
min/用量についての用量比例性評価を図示する棒グラフである。
【
図8】AUCτ/用量についての用量比例性評価を図示する棒グラフである。
【
図9】指定されたサブグループにおける、療法に対する血液学的応答を図示する。
【
図10】主要臓器の悪化も血液学的進行もない、生存のカプラン・マイヤー推定値を示すグラフである。
【
図11】患者の全体的な経時的心臓応答を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本開示は、本明細書に記載の抗体とダラツムマブとの併用療法が多発性骨髄腫の治療に有効であるという発見に関する。
【0014】
本発明の組成物及び方法を説明する前に、説明される特定の組成物、方法、及び実験条件が変更し得るため、本開示は、かかる組成物、方法、及び条件に限定されないことが、理解されるであろう。また、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲のみに限定されることから、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することが意図されないことも理解されるであろう。
【0015】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「一つ(a)」、「一つ(an)」及び「該(the)」は、文脈上別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「該方法」への言及は、1つ又は複数の方法、及び/又は本明細書に記載のタイプのステップを含み、これは、本開示の通読等によって、当業者に自明となるであろう。
【0016】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許、及び特許出願は、これらの個々の刊行物、特許、及び特許出願が、具体的且つ個別に参照により組み込まれると示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語と科学用語は、本開示が属する分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味である。本明細書に記載の場合と類似又は相当する任意の方法及び材料が本開示の実施又は試験において使用できるが、修飾及び変形が本開示の精神及び範囲内に包含されることは理解されるであろう。
【0018】
1つの実施形態において、本開示は、対象における多発性骨髄腫を治療する方法であって、以下のステップ:軽鎖フィブリルに結合する抗体と、併用する抗CD38抗体、例えばダラツムマブ、イサツキシマブ、CID-103(CASI Pharma)、若しくはMoro3087(Morphosys)、又はそれらの組合せとを含む療法を対象に施すステップであって、それにより、対象における多発性骨髄腫を治療する、ステップを含む、前記方法を提供する。本明細書で提供される例示的な実施例及び本明細書において、ダラツムマブは抗CD38抗体として提供される。
【0019】
単に「骨髄腫」としても知られる多発性骨髄腫(MM)又は「形質細胞骨髄腫」は、通常抗体を産生する白血球の1種である形質細胞のがんである。MMは、初期に無症候であることが多く、疾患の進行につれて、骨痛、貧血、腎機能障害、及び感染が生じる。MMの原因は不明であるが、肥満、放射線曝露、家族歴、及び特定化学物質がリスク因子であると考えられる。
【0020】
Bリンパ球は、骨髄で産生され、成熟時にリンパ節に再配置する。Bリンパ球は、進行すると、成熟し、その細胞表面上に種々のタンパク質を提示する。活性化されて抗体を分泌する場合のBリンパ球は、形質細胞として知られる。MMは、リンパ節の胚中心を離れた後、Bリンパ球内で発生する。MM細胞に最も密接に関連する正常細胞系は、一般に、活性化メモリーB細胞又は形質細胞の前駆体である形質芽細胞のいずれかと考えられる。免疫系は、B細胞の増殖及び抗体の分泌を厳格な管理下で維持する。突然変異又は転座等のような遺伝的事象は、MMの発生を引き起こし得るB細胞増殖の重大な調節の原因であり得る。
【0021】
MMは、くすぶり型骨髄腫に進行する意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症から発生する。異常な形質細胞は、異常な抗体及び/又はモノクローナル遊離軽鎖を生成し、腎臓の問題及び濃すぎる血液を引き起こし得る。形質細胞はまた、骨髄又は軟部組織において塊を形成し得る。1つの腫瘍が存在する場合は、形質細胞腫と呼ばれ、2つ以上の腫瘍が存在する場合は、名称が多発性骨髄腫となる。MMは、血液又は尿検査で見出される異常な抗体、骨髄生検で見出されるがん性形質細胞、及び医用イメージングで見出される骨病変に基づいて診断される。別の一般的所見は、高い血中カルシウムレベルである。多くの臓器が骨髄腫によって冒さ得ることから、症状及び徴候は大きく変化する。疲労及び骨痛は、発症時の最も一般的な症状である。MMによって誘発される作用が様々であるため、疾患を診断するための方法は様々である。MMは、例えば、血液検査、病理組織学、医用イメージング、又は診断基準の使用を通じて診断され得る。
【0022】
血液検査は、通常、パラプロテイン(モノクローナルタンパク質、又はMタンパク質及び/又はモノクローナル遊離軽鎖)の存在、全てのクラスの免疫グロブリン、特にIgGパラプロテイン、IgA及びIgMのレベル増加、単離された軽鎖及び/又は重鎖(κ軽鎖若しくはλ軽鎖又はα重鎖、γ重鎖、δ重鎖、ε重鎖若しくはμ重鎖の5タイプのいずれか)のレベル増加、カルシウムレベルの上昇(破骨細胞が骨を破壊しながら、それを血中に放出するとき)、及び/又は腎機能低下に起因する血清クレアチニンレベル上昇、の検出に依存する。
【0023】
病理組織診断は、骨髄生検を実施することで形質細胞によって占められる骨髄のパーセンテージを推定するために用いることができる。表面タンパク質の発現に基づく特定の細胞型の特徴付けは、細胞質内、場合によって細胞表面上で免疫グロブリンを発現する形質細胞を検出するために用いることができる。骨髄腫細胞は、CD56、CD38、CD138、及びCD319陽性、及びCD19、CD20、及びCD45陰性であることが多い。細胞の形態についても、骨髄腫細胞に特有の特性として、試験し、用いることができる。
【0024】
MMが疑われる者の診断検査は、典型的に、骨格検査又はPET-CTを含む。骨格検査又はPET-CTが陰性である場合、骨病変を検出するために、全身MRIが実施される。
【0025】
MMの診断を助けるため、診断基準が開発されている。症候性骨髄腫は、クローン性形質細胞が骨髄生検又は他の組織からの生検で(任意の量で)>10%を占める(形質細胞腫)こと、モノクローナルタンパク質(骨髄腫タンパク質)が血清又は尿のいずれかで検出され、且つ3g/dLより高い(真の非分泌性骨髄腫の症例を除く)こと、及び形質細胞障害(関連の臓器又は組織障害、CRAB)に関連する終末臓器損傷の証拠が見出されること、という基準のうちの少なくとも1つを患者が満たすとき、診断確定される。
【0026】
CRAB基準は、以下のような、MMの最も一般的な徴候を包含する。
カルシウム:血清カルシウムが、正常上限よりも>0.25mmol/L(>1mg/dL)高い、又は>2.75mmol/L(>11mg/dL)。
腎不全:クレアチニンクリアランスが<40mL/分間、又は血清クレアチニンが>1.77mol/L(>2mg/dL)。
貧血:ヘモグロビン値が、正常下限を>2g/dL下回る、又はヘモグロビン値が<10g/dL。
骨病変:骨格ラジオグラフィー、CT、PET/CT又はMRIでの1つ又は複数の骨溶解病変。
【0027】
MMについて、病期分類は、予後診断を助けるが、治療決定を導かない。MMは、β2ミクログロブリン(β2M)<3.5mg/L、アルブミン≧3.5g/dL、細胞遺伝学的正常、LDH上昇無しのステージIと、ステージIにもステージIIIにも分類されないステージIIと、β2M≧5.5mg/L及びLDH上昇又は細胞遺伝学的高リスク[t(4,14)、t(14,16)、及び/又はdel(17p)]のステージIIIとに分類できる。
【0028】
骨髄腫タンパク質は、増殖する異常なモノクローナル形質細胞によって過剰に産生される異常な抗体(免疫グロブリン)、又は(より多くの場合は)、免疫グロブリン軽鎖(又は重鎖)等のようなその断片である。かかるタンパク質についての他の用語は、Mタンパク質、M成分、Mスパイク、スパイクタンパク質、モノクローナルタンパク質又はパラプロテインを含む。骨髄腫タンパク質のこの増殖は、免疫機能の障害、異常に高い血液粘度(血液の「濃さ(thickness)」)、及び腎損傷を含む、身体に有害ないくつかの作用を引き起こす。
【0029】
骨髄腫は、形質細胞の悪性腫瘍である。形質細胞は、それぞれが重鎖及び軽鎖の対からなる免疫グロブリンを産生する。MMについて、悪性クローンの変異形質細胞は、制御されない方式で繁殖し、原細胞が生成されて産生した特異抗体の過剰産生をもたらし、正規分布で、Mスパイク(又はモノクローナルスパイク)と呼ばれる「スパイク」をもたらす。尿中又は血液中のパラプロテインの検出は、最も多くは、MMの前兆でありながらMMにおける症状である意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)に関連する。血液中のパラプロテイン過剰は、パラプロテイン血症として知られる。正常な免疫グロブリン抗体と異なり、パラプロテインは、感染に対抗することはできない。
【0030】
1つの実施形態において、本開示は、対象におけるMMを治療する、及び/又は循環中のミスフォールド前駆体タンパク質への結合によってアミロイド形成を阻害する方法であって、以下のステップ:配列番号1に示す重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に示す軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体と、ダラツムマブとを対象に投与するステップであって、それにより、対象における多発性骨髄腫を治療する、ステップを含む、前記方法を提供する。本開示の抗体は、軽鎖フィブリルのN末端部分、循環中のミスフォールド前駆体タンパク質又はアミロイド沈着に結合する。特定の理論に縛られることを望むものではないが、抗体は、Fc媒介のエフェクター機能を活性化し、マクロファージの食作用を通じてFcR媒介のオプソニン作用を促進することで、骨髄腫細胞を破壊するものと考えられる。ダラツムマブは、多発性骨髄腫細胞で過剰発現されるCD38に対するIgG1kモノクローナル抗体である。ダラツムマブは、形質細胞の表面上のCD38に結合し、CDC(補体依存性細胞毒性)、ADCC(抗体依存性細胞毒性)及びADCP(抗体依存性細胞食作用)を含むいくつかの機構によってアポトーシスを引き起こす(Phipps, C. et al., Ther. Adv. Hematol., 6:120 7, 2015)。両方ともマクロファージ及び補体を活性化する抗体とダラツムマブの相補的な機構に基づけば、MMの治療に併用する相乗効果が期待される。
【0031】
抗体は、重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一のコピー及び軽(L)鎖ポリペプチドの2つの同一のコピーといった4つのポリペプチドからなる。重鎖は、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEの5タイプがある。可能な軽鎖は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)の2つある。各重鎖は、1つのN末端可変(VH)領域及び3つのC末端定常(CH1、CH2及びCH3)領域を含有し、各軽鎖は、1つのN末端可変(VL若しくはVK、又はVλ若しくはVκ)領域及び1つのC末端定常(CL)領域を含有する。抗体中の軽鎖及び重鎖の各可変ドメインは、相補性決定領域(「CDR」)又は超可変領域と呼ばれる3つのセグメントも含む。軽鎖における各CDRは、隣接する重鎖における対応するCDRと共に、抗体の抗原結合部位を形成する。各軽鎖重鎖対の可変領域は、抗体の抗原結合部位を形成するが、定常領域は、構造的な支持を提供し、抗原結合によって開始される免疫応答を調節する。
【0032】
本明細書に記載の抗体は、下記表1及び
図1Aに示すV
K領域(配列番号2)及びV
H領域(配列番号1)を有する。重鎖及び軽鎖のCDR配列は表2及び
図1Bに示す。
【0033】
【0034】
【0035】
VH及びVK領域をコードする遺伝子は、クローン化して既知のヒト抗体CH及びCK配列を使用してキメラ抗体を産生することができる。本開示の抗体は、アミロイドのβプリーツシート立体構造によって発現されるエピトープだけでなく、軽鎖フィブリルにも結合すると考えられる。
【0036】
開示される抗体は、任意のタイプのヒト定常領域及び/又はフレームワーク領域を含み得る。開示されるヒト化抗体及びキメラ抗体は、例えば、ヒトIgG(IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4を含む)、IgA、IgE、IgF、IgH、又はIgMの定常領域及び/又はフレームワーク領域を含み得る。1つの態様において、開示される抗体は、ヒトIgG1定常領域を含む。
【0037】
抗体は、例えば、重鎖のそれぞれの破壊を引き起こし、3つの別々の抗体断片を産生するタンパク質分解酵素パパインで切断することができる。軽鎖及び質量が該軽鎖とほぼ等しい重鎖の断片からなる2つの同一ユニットは、Fab断片(例えば、「抗原結合」断片を含む)と呼ばれる。重鎖の2つの等しいセグメントからなる第3のユニットは、Fc断片と呼ばれる。Fc断片は、一般的に、抗原-抗体結合に関与しないが、身体からの抗原の除去に関与する後続のプロセスに重要である。「Fv」は、完全な抗原認識・結合部位を含有する最小抗体断片である。この領域は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインの密な非共有会合での二量体からなる。各可変ドメインの3つのCDRは、まさにこの立体構造で、相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を画定する。6つのCDRは、集合的に、抗原結合特異性を抗体に付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でも、親和性が結合部位全体より低いものの、抗原を認識しそれに結合する能力を有する。「単鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、ここでこれらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。Fvポリペプチドは、抗原結合に望ましい構造をsFvが形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインの間のポリペプチドリンカーを更に含み得る。sFvのレビューについては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
【0038】
いくつかの態様において、開示される抗体は、該抗体がアミロイドフィブリル(例えば、カッパ及び/若しくはラムダ軽鎖フィブリル)又はミスフォールド前駆体タンパク質に結合する能力を維持する限り、1つ又は複数の置換、挿入、又は欠失を含む。本開示の抗体は、該抗体がアミロイドフィブリル又はミスフォールド前駆体タンパク質に結合する能力を維持する限り、本明細書に開示される対応する重鎖及び軽鎖配列と比較して、例えば、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%の同一性を有する重鎖及び軽鎖を含むことができる。他の態様において、本開示の抗体は、該抗体がアミロイドフィブリル又はミスフォールド前駆体タンパク質に結合する能力を維持する限り、本明細書に開示される対応するCDR配列と比較して、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%の同一性を有するCDRを含むことができる。いくつかの態様において、本明細書に開示される抗体は、例えば、様々なpHで、示差的な抗原結合を産生するように操作されてもよい。
【0039】
本開示の抗体は、Mタンパク質又は他の骨髄腫パラプロテイン、及びフィブリル及びアミロイド沈着又はミスフォールド前駆体タンパク質に結合することができる。該結合は、マクロファージ食作用を通じて形質細胞のFcR媒介オプソニン作用を誘導する。
【0040】
本開示の組成物及び方法において有用な抗体は、配列番号3~8のCDR配列を含むモノクローナル抗体であり得る。これらの抗体は、アミロイドフィブリルのβプリーツシート立体構造によって提示されたエピトープに結合する。1つの態様において、本開示の抗体は、ミスフォールドカッパ及びラムダ軽鎖に結合する。本明細書で使用されるように、「ミスフォールド軽鎖に結合する」とは、異常な軽鎖(カッパ及びラムダ)を認識しそれに結合するが、(天然の典型的なコンフォメーションで)正しく折り畳まれた非凝集又は遊離軽鎖を同じ程度には認識せず、それに対して同じ程度には結合しない抗体の結合特異性を指す。天然軽鎖又はその断片は、通常タンパク質分解を通じて分解される機能的ペプチドである。ミスフォールディング時、ペプチドは、生理学的構造及び機能を失う可能性があり、コンフォメーション変化はペプチドを非機能的でより安定的にし、そのタンパク質分解による分解を阻止する。蓄積されたミスフォールド軽鎖は、互いに凝集し、アミロイドフィブリルを形成し得、次に互いに又は追加のミスフォールド軽鎖と共に、更に凝集し得る。アミロイドフィブリルは、細胞によって分解できず、細胞周囲のプラークに蓄積して組織及び臓器の健常機能を破壊する線維状沈着である。アミロイド沈着は、典型的に、所与の患者において、凝集したミスフォールドカッパ軽鎖、又はミスフォールドラムダ軽鎖を含む。かかる沈着は、通常、凝集体中にカッパ及びラムダ軽鎖の両方を含むことはない。本開示の抗体は、カッパ及びラムダ軽鎖の両方をそれらのミスフォールドコンフォメーションで認識し、それらの生理学的コンフォメーション(正しく折り畳まれた軽鎖)ではカッパ又はラムダ鎖を同じ程度には認識しない。凝集体は、抗体が認識するミスフォールドカッパ及びラムダ軽鎖の両方を含むことは必要とされない。
【0041】
抗体を含む組成物は、1つ又は複数の等張剤を含み得、例えば、該組成物は、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上の等張剤を含み得る。いくつかの態様において、1つ又は複数の等張剤は、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール若しくはソルビトール、又は塩化ナトリウムから選択される。組成物は、多種多様な化学用途において、組成物のpHをほぼ一定値に保持するために緩衝剤を含んでもよい。いくつかの態様において、緩衝剤は酢酸ナトリウムである。
【0042】
抗体組成物は、表面張力又は界面圧力を低下させるために、非イオン性界面活性剤を含んでもよい。抗体組成物は、例えば、エトキシレート、脂肪アルコールエトキシレート(狭い範囲のエトキシレート、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、及びペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル等)、アルキルフェノールエトキシレート(APE又はAPEO、例えばノノキシノール及びTriton X-100等)、脂肪酸エトキシレート、特級エトキシル化脂肪酸エステル及び油、エトキシル化アミン及び/又は脂肪酸アミド(ポリエトキシ化獣脂アミン、コカミドモノエタノールアミン、及びコカミドジエタノールアミン等)、末端ブロックエトキシレート(ポロクサマー等)、ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル、グリセロールの脂肪酸エステル(グリセロールモノステアレート及びグリセロールモノラウレート等)、ソルビトールの脂肪酸エステル(span:ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、及びソルビタントリステアレート、及びTween又はポリソルベート:Tween20、Tween40、Tween60、及びTween80等)、スクロースの脂肪酸エステル、及びアルキルポリグルコシド(セシルグルコシド、ラウリルグルコシド及びオクチルグルコシド等)から選択される非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0043】
1つの態様において、抗体組成物は、本明細書に記載の抗体、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、マンニトール及びポリソルベート80を含む。
【0044】
1つの態様において、抗体組成物は、約20~40mg/mLの抗体を含む。別の態様において、組成物は、約15~35mMの酢酸ナトリウムを含む。更に別の態様において、組成物は、約25~75mMの塩化ナトリウムを含む。1つの態様において、組成物は、約0.5~5%のマンニトールを含む。別の態様において、抗体組成物は、約0.001~約0.1%のポリソルベート80を含む。更に別の態様において、抗体組成物は、約5~6のpHを有する。
【0045】
1つの実施形態において、抗体組成物は、約30mg/mLの抗体、約25mMの酢酸ナトリウム、約50mMの塩化ナトリウム、約1%のマンニトール、約0.01~0.05%のポリソルベート80、及び約5.5のpHを含む。
【0046】
1つの態様において、抗体組成物は、例えば、バイアル又はアンプル中に、30mg/mLの抗体、約25mMの酢酸ナトリウム、約50mMの塩化ナトリウム、約1%のマンニトール、約0.01~0.05%のポリソルベート80を含み、約5.5のpHを有する。
【0047】
別の態様において、抗体は、不均一な電荷を有する、天然画分、還元画分、及びグリコシル化若しくは脱グリコシル化画分を含む、抗体分子の混合物である。抗体分子の混合物は、天然構造(天然画分を規定する)、還元構造(還元画分を規定する)、及びグリコシル化若しくは脱グリコシル化構造(可変的にグリコシル化若しくは脱グリコシル化の画分を規定する)を有するものを含み得、これらのいずれも不均一な電荷を有する。
【0048】
化学的及び酵素的な細胞内及び細胞外機構によって誘導される翻訳後修飾(PTM)は、微小不均一性、及び組換え抗体の電荷不均一性に影響を与えることができることで、安定性、溶解性、有効性、安全性、薬力学及び薬物動態等の重要な品質属性に影響を与えることができる。組換え細胞株、培地及びプロセスの設定もまた、これらの品質属性に影響を与え得る。表面電荷変異体の分布もまた、抗体の不均一性の重要な尺度である。
【0049】
タンパク質の電荷変動は、修飾のタイプ内で異なり、一部のPTMがタンパク質の正味電荷を直接的に修飾する一方で、それ以外はコンフォメーション変化及び局所電荷分布の変動を誘導する。生成物の主要画分よりも低い等電点(pI)を有する電荷種は、酸性変異体と定義され、シアリル化、アスパラギン及びグルタミンの脱アミド化、糖化、及び他の機構によって生成される。糖化は、例えば、還元糖分子、最も一般的にはグルコースが、反応性アミノ基に共有結合的に結合される場合の非酵素的反応である。塩基性変異体は、主要画分より高いpIを有し、重鎖の不完全なC末端リジンクリッピングによって、及び断片化と凝集によって生成される種と定義される。ピログルタミン酸を形成するためのN末端グルタミンの環化は、N末端アミンの中性アミドへの転換による抗体の正電荷損失の別の例である。脱アミド化は、アスパラギン残基をアスパラギン酸及び/又はイソアスパラギン酸残基及び/又はスクシンイミド中間体に非酵素的に修飾し、負電荷の出現をもたらすタンパク質の一般的な分解経路である。他の一部のPTMは、余分なメチル基の骨格タンパク質への挿入をもたらし、イソアスパラギン酸を形成するメチオニン酸化又はアスパラギン酸異性化等、タンパク質の正味電荷の修飾を伴わずに、局所電荷分布に影響を与える。電荷プロファイルの修飾は、タンパク質の構造及び生物学的活性に潜在的に影響を与え得る。本開示の抗体の機能性に影響を与え得る他のPTMは、それぞれ、フコシル化及びマンノシル化抗体又はその断片を生成できるフクロース(fuculose)及びマンノースを含む。
【0050】
本開示の抗体組成物は、いくつかの形態で存在でき各形態が該抗体組成物の画分を規定する抗体を含む。抗体は、例えば、いかなるストレスも存在しない場合の抗体の主要形態である、主要画分を表す天然形態で存在できる。抗体は、それぞれ還元画分及び還元脱グリコシル化画分を表す還元形態、又は還元脱グリコシル化形態で存在することもできる。
【0051】
1つの態様において、天然画分は、シアリル化種、中性種、並びに/又はガラクトシル化、フコシル化、及び/若しくはマンノシル化中性種を含む。他のグリコシル化形態の場合、フコシル化及び非フコシル化形態、並びに高マンノース形態を含み得る。インタクトな抗体がヘテロ二量体であり、2つの重鎖分子を含有することから、インタクトな抗体中の各鎖上のグリコシル化は、他方の重鎖の場合と同じであっても異なっていてもよい。別の態様では、還元画分は、糖化リジンを有する軽鎖を含む。本明細書で使用されるように、「糖化リジンを有する軽鎖」という語句は、リジンの様々なレベルの糖化を含むことを意味する。例えば、軽鎖のリジンが全く糖化されていなくても、その1個のリジン、数個のリジン、又は全てのリジンが糖化されていてもよい。
【0052】
モノクローナル抗体の表面電荷分布の分析により、これらの修飾についての集約された情報が提供される。抗体の電荷不均一性を測定するための一般的分析法は、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)及びイオン交換クロマトグラフィー(IEX)を含む。両方法は、広く用いられるが、塩勾配溶出を用いるIEX法は、標準として認められ、ルーチン的に用いられている。IEXの主な制限は、全ての抗体に適合される必要がある塩緩衝系である。しかし、pH勾配の使用は、生成物に依存しないことが示されており、抗体の電荷不均一性を測定するために、線形pH勾配によるカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)法も使用できる。これらの試験では、mAbの電荷変異体に対する、温度上昇又はアルカリ性pHでの強制的なストレス分解の影響が報告されている。かかるストレス下で観察された分解は、主に、タンパク質の脱アミド化又は酸化反応を反映する酸性種の増加を引き起こす。電荷不均一性は、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)分離によっても測定できる。
【0053】
1つの態様において、抗体は、インタクトな抗体、ハーフマー断片、不完全抗体断片、他の断片、及び/又はそれらの凝集体を含む混合物である。いくつかの態様において、ハーフマーは、1つ又は2つの重鎖(HC)及び1つの軽鎖(LC)を含む抗体分子である。他の態様において、不完全抗体は、HCのC末端領域を欠いている抗体である。いくつかの態様において、他の断片は、C末端リジンを保持するHCを含む。様々な態様において、抗体凝集体、又は抗体断片は、C末端リジンを保持していても、保持していなくてもよい。
【0054】
「ダラツムマブ」とは、MM細胞内で過剰発現されるCD38に特異的に結合する抗体を指し、このようなことは、がん細胞を直接殺傷し免疫系によるがん細胞への攻撃を助けると考えられる。ダラツムマブは、DARZALEX(登録商標)という商品名で販売されている。この薬物のより新しい形態は、ダラツムマブ及びヒアルロニダーゼ(darzalex(登録商標)、faspro(登録商標))として知られている。本明細書で使用されるように、「ダラツムマブ」は、該薬物の市販形態及びダラツムマブ抗体含有の他の製剤の両方を含む。
【0055】
抗体及びダラツムマブ組成物は、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、経口、経鼻、肺、眼、膣、又は直腸投与用に製剤化され得る。いくつかの実施形態において、抗体及び/又はダラツムマブは、例えば溶液、懸濁液、エマルジョン、リポソーム製剤等中で、静脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内投与用に製剤化される。
【0056】
様々な剤形に対して薬理学的に許容される担体は、当分野で公知である。例えば、固体製剤のための賦形剤、潤滑剤、結合剤、及び崩壊剤は、公知であり、液体製剤のための溶媒、可溶化剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、及び緩和(soothing)剤は、公知である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、例えば、1つ又は複数の保存剤、抗酸化剤、安定化剤等の1つ又は複数の追加成分を含む。
【0057】
加えて、開示される医薬組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、又は高い薬物濃度に適した他の規則正しい構造として、製剤化できる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。
【0058】
注射可能な滅菌溶液は、適宜、必要量の活性化合物を上で列挙された成分の1つ又は組合せを有する適切な溶媒に組み入れ、その後に滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般に、分散媒は、活性化合物を、塩基性分散媒及び上で列挙された成分からの必要な他の成分を含有する滅菌媒体に組み入れることによって調製される。注射可能な滅菌溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分の粉末+任意の所望の追加成分を以前に滅菌濾過されたその溶液から生成する真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0059】
本開示において、本開示の抗体及びダラツムマブは、形質細胞、特にがん性骨髄腫細胞のアポトーシスを促進するように、MMを患っている対象(例えば、ヒト患者)に投与される。様々な実施形態において、本開示は、本明細書に記載の抗体の投与を含む治療方法を提供する。いくつかの態様において、治療有効量の抗体が投与される。典型的な投与経路は、医学の当業者によって十分に理解されるように、非経口(例えば、静脈内、皮下、又は筋肉内)である。当然ながら、他の投与経路は可能である。投与は、以下に考察される通り、単独で又は追加療法と組み合わせて、単回又は複数回用量で行われ得る。投与される抗体量、及び投与頻度は、特定の患者について医師によって最適化され得る。
【0060】
本開示の方法は、MMの治療に使用できる。本明細書で使用されるように、「多発性骨髄腫の治療」という表現は、標準な技法によって測定される、対象のMMの症状又は指標の軽減、MMの進行速度の減少、又はMM患者の臓器機能の改善を指すことを意味する。
【0061】
MMの治療は、一般に、それぞれ対象におけるダラツムマブ及び抗体用量又は血漿濃度に関する本明細書に記載の療法の「治療有効量」の投与に依存し、該療法が、MMの症状を、例えば軽減、改善、又は除去するようにかかる治療を必要とする対象に施される場合に対する特定の薬理効果を提供する。強調すべきことは、薬物の治療有効量又は治療レベルは、かかる用量が当業者に治療有効量と見なされるとしても、本明細書に記載の症状/疾患の解消に常に有効であるとは限らない点である。治療有効量は、他の要因のうち、投与経路及び剤形、対象の年齢及び体重、及び/又は治療開始時のMMのタイプ及び病期を含む対象の症状等に基づいて変動し得る。
【0062】
治療有効量は、対象において「治療応答」は、例えばMMの少なくとも1つの尺度での改善を誘導するのに十分な用量又は量であり得る。
【0063】
本明細書で使用されるように、用語「個体」、「患者」又は「対象」は、互換的に使用でき、本開示の療法が施される個体生物、脊椎動物、哺乳動物(例えば、ウシ、イヌ、ネコ又はウマ)、又はヒトを指す。
【0064】
本開示の療法は、本明細書に記載の療法の実施前に、たとえ以前に受けた治療があったとしても、MMを有する任意の対象に施すことができる。療法は、MMが以前に治療されたか否かに関わらず、施すことができる。
【0065】
1つの態様において、対象は、療法の実施前に新たにMMと診断される。他の態様において、対象は、療法の実施前に、MM治療を以前に受けたことがある。
【0066】
用語「の投与」及び/又は「投与する」は、治療を必要とする対象に本開示の抗体を治療有効量で提供することを意味すると理解されるべきである。投与経路としては、皮内、皮下、静脈内、腹腔内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、経皮、経気管、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内及び胸骨内、経口、舌下頬側、直腸、膣、経鼻、眼投与とともに、注入、吸入、及び噴霧を含むが、それらに限定されない。1つの態様において、抗体は、静脈内(IV)注入、皮下注射、又は筋肉内注射によって投与される。
【0067】
用語「サイクル」とは、1つ又は複数の治療剤又は薬物の投与スケジュールを指し、1つ又は複数の治療剤又は薬物が対象に投与される期間を指す。サイクルは、薬物が投与される日数及び該薬物が投与されない休止期間を含み得る。サイクル長さは様々であり得、例えば1週間、2週間、3週間、28日間(又は4週間)、5週間又は6週間とすることができる。
【0068】
語句「併用療法」、「と併用して」等とは、前記応答を増加させるための、1つより多くの薬物療法又は治療の同時使用を指す。併用療法において、ダラツムマブは、本開示の抗体又は抗体組成物の投与の前に、それと同時に、又はそれに次いで投与することができる。本開示の態様は、追加の形質細胞指向療法、例えばシクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、メルファラン、レナリドミド、イサツキシマブ、ベネトクラクス、幹細胞移植、又はそれらの組合せ等との併用に関する。
【0069】
シクロホスファミドは、免疫系を抑制する化学療法剤である。シクロホスファミドは、低レベルのALDHを有する細胞内のグアニンN-7位で、DNA鎖間及びDNA鎖内の双方でのDNA架橋の形成を誘導できる。DNA架橋は、不可逆であり、細胞アポトーシスを引き起こす。シクロホスファミドは、適応免疫療法において、特に制御性T細胞(CD4+CD25+T細胞)を除去することによって、有利な免疫調節効果を誘導する。
【0070】
ボルテゾミブは、26Sプロテアソームの触媒部位に高い親和性及び特異性で結合する抗がん薬物療法である。ボルテゾミブは、プロテアソームを阻害することによって、プロアポトーシス因子の分解を阻止し、それにより腫瘍細胞におけるプログラム細胞死を誘起する。
【0071】
デキサメタゾンは、リウマチの問題、いくつかの皮膚疾患、重度アレルギー、喘息、慢性閉塞性肺疾患、クループ、脳腫脹、眼科手術後の眼痛を含む、多くの症状の治療に使用されるコルチコステロイド薬物療法であり、結核においては抗生物質を伴う。
【0072】
CyBorDは、通常はMMの治療に使用される、シクロホスファミド、ボルテゾミブ及びデキサメタゾンの組合せである。
【0073】
メルファランは、MM、卵巣がん、メラノーマ、及びアミロイドーシスを治療するために使用される化学療法剤である。それは、経口的又は静脈内に投与され、アルキル化を通じて、DNAヌクレオチドグアニンを化学的に改変する。アルキル化は、DNAの鎖間の連結を引き起こし、そこでDNA合成及びRNA合成を阻害し、分割及び非分割腫瘍細胞の双方において細胞毒性を引き起こす。メルファランの一般的副作用は、アミロイドーシスの治療に有利である骨髄抑制を含む。
【0074】
レナリドミドは、MM及び骨髄異形成症候群(MDS)を治療するために使用され、少なくとも1つの他の治療と共に、一般にはデキサメタゾンと一緒に投与することができる。
【0075】
イサツキシマブは、MMの治療に使用されるモノクローナル抗体である。イサツキシマブは、造血及びMM細胞の表面で発現されるCD38に選択的に結合し、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、補体依存性細胞毒性(CDC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、及び抗体依存性細胞毒性(ADCC)等の免疫エフェクター機構を活性化する。
【0076】
ベネトクラクスは、抗アポトーシスB細胞リンパ腫-2(Bcl-2)タンパク質を遮断し、CLL細胞のプログラム細胞死を引き起こすBH3ミメティックである。
【0077】
本明細書で使用されるように、「形質細胞指向療法」という語句は、形質細胞(形質B細胞又は抗体産生細胞)を特異的に阻害するために用いることができる任意の指向又は標的療法を指すことを意味する。形質細胞標的療法としては、レナリドミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、プロテアソーム阻害剤及びそれらの組合せを含むが、それらに限定されない。
【0078】
1つの態様において、対象は、現在MM治療を受けているか又は以前に受けたことがある。いくつかの態様において、MM治療は、化学療法、コルチコステロイド、免疫調節剤、プロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDCA)阻害剤、免疫療法、核外輸送阻害剤、幹細胞移植、放射線療法、手術、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0079】
本明細書で使用されるように、用語「化学療法」又は「化学療法薬」とは、がんを治療するために使用される任意の治療薬を指す。化学療法薬は、それを引き起こす細胞経路と無関係に、細胞に対して、細胞死又は増殖低下、特にがん細胞死をもたらす毒性作用を有する、任意の物質又は薬剤を含むことができる。MMの治療に使用できる化学療法は、メルファラン(MM、卵巣がん、メラノーマ、及びアミロイドーシスを治療するために使用される化学療法薬)、ビンクリスチン(oncovin)、シクロホスファミド(Cytoxan、免疫系を抑制する化学療法薬)、エトポシド(vp-16)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、リポソームドキソルビシン(doxil)、又はベンダムスチン(treanda)を含み得る。
【0080】
コルチコステロイドは、脊椎動物の副腎皮質で産生されるステロイドホルモンのクラス、及びこれらのホルモンの合成類似体である。コルチコステロイド、グルココルチコイド及びミネラルコルチコイドの2つの主なクラスは、ストレス応答、免疫応答、及び炎症の制御、炭水化物代謝、タンパク質異化、血液電解質レベル、及び挙動を含む、広範囲の生理学的過程に関与する。いくつかの一般的な天然に存在するステロイドホルモンは、コルチゾール、コルチコステロン、及びコルチゾンである。コルチコステロイドの他の例としては、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、フルニソリド、メチルプレドニソン(methylprendisone)及びヒドロコルチゾンを含む。
【0081】
デキサメタゾン及びプレドニゾン等のコルチコステロイドは、多発性骨髄腫の治療の重要な部分である。それらは、単独で又は治療の一部として他の薬剤と組み合わせて使用することができる。また、コルチコステロイドは、化学療法が引き起こし得る悪心及び嘔吐の低減を補助するためにも使用される。デキサメタゾンは、リウマチの問題、いくつかの皮膚疾患、重度アレルギー、喘息、慢性閉塞性肺疾患、クループ、脳腫脹、眼科手術後の眼痛を含む多くの症状の治療に使用されるコルチコステロイド薬物療法であり、結核においては抗生物質を伴う。
【0082】
用語「免疫モジュレーター」又は「免疫調節剤」は、本明細書で使用されるように、免疫系を調節する任意の治療薬を指す。免疫モジュレーターの例としては、エイコサノイド、サイトカイン、プロスタグランジン、インターロイキン、ケモカイン、チェックポイントレギュレーター、TNFスーパーファミリーメンバー、TNF受容体スーパーファミリーメンバー及びインターフェロンを含む。免疫モジュレーターの具体例としては、PGI2、PGE2、PGF2、CCL14、CCL19、CCL20、CCL21、CCL25、CCL27、CXCL12、CXCL13、CXCL-8、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CXCL10、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL15、IL17、IL17、INF-α、INF-β、INF-ε、INF-γ、G-CSF、TNF-α、CTLA、CD20、PD1、PD1L1、PD1L2、ICOS、CD200、CD52、LTα、LTαβ、LIGHT、CD27L、41BBL、FasL、Ox40L、April、TL1A、CD30L、TRAIL、RANKL、BAFF、TWEAK、CD40L、EDA1、EDA2、APP、NGF、TNFR1、TNFR2、LTβR、HVEM、CD27、4-1BB、Fas、Ox40、AITR、DR3、CD30、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRAIL-R3、TRAIL-R4、RANK、BAFFR、TACI、BCMA、Fn14、CD40、EDARXEDAR、DR6、DcR3、NGFR-p75、及びTajを含む。免疫モジュレーターの他の例としては、トシリズマブ(actemra(登録商標))、CDP870(cimzia(登録商標))、enteracept(enbrel(登録商標))、アダリムマブ(humira(登録商標))、kineret(登録商標)、アバタセプト(orencia(登録商標))、インフリキシマブ(remicade(登録商標))、リツキシマブ(rituxan(登録商標))、ゴリムマブ(simponi(登録商標))、avonex(登録商標)、rebif(登録商標)、recigen(登録商標)、plegridy(登録商標)、betaseron(登録商標)、copaxone(登録商標)、novatrone(登録商標)、ナタリズマブ(tysabri(登録商標))、フィンゴリモド(gilenya(登録商標))、テリフルノミド(aubagio(登録商標))、BG12、tecfidera(登録商標)、及びアレムツズマブ(campath(登録商標)、lemtrada(登録商標))を含む。
【0083】
多発性骨髄腫を治療するために使用できる免疫調節剤は、サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミドを含む。
【0084】
サリドマイド(thalomid(登録商標))は、鎮静剤として、また妊婦におけるつわりに対する治療として、数十年前に初めて使用されたものである。それは、先天性欠損を引き起こすことが見出されたとき、市場から撤退されたが、MMに対する治療として再び利用可能になった。サリドマイドの副作用は、眠気、疲労、重度の便秘、及び有痛性神経障害(ニューロパチー)を含み得る。ニューロパチーは、重度であり得ることで、薬剤の停止後に消失しない可能性がある。また、脚部で開始し、肺に移動し得る重篤な血餠のリスクも増加する。
【0085】
レナリドミド(revlimid(登録商標))は、サリドマイドと類似している。それはMMを治療するために使用できる。レナリドミドの最も一般的な副作用は、血小板減少症(低血小板)及び低白血球数である。それは有痛性神経障害も引き起こし得る。血餠のリスクは、サリドマイドで観察される場合ほど高くないとしても、やはり増加する。骨髄腫が幹細胞移植又は初期治療のいずれかの後に寛解状態である場合の患者において、レナリドミドは、寛解状態を延長するための維持療法として施され得る。
【0086】
ポマリドミド(pomalyst(登録商標))は、サリドマイドにも関連し、MMを治療するために使用される。いくつかの一般的な副作用は、低赤血球数(貧血)及び低白血球数を含む。神経障害のリスクは、他の免疫調節薬物を伴う場合ほど重度でないが、血餠のリスク増加にもつながる。
【0087】
プロテアソーム阻害剤は、細胞内の酵素複合体(プロテアソーム)が細胞分裂を制御するために重要なタンパク質を破壊するのを停止することによって、機能する。それらは、正常細胞よりも多くの腫瘍細胞を冒すように思われるが、必ず副作用を伴う。多発性骨髄腫を治療するために使用できるプロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブを含む。
【0088】
ボルテゾミブ(velcade(登録商標))は、このタイプの薬剤で最初に承認されたものであり、MMを治療するために使用されることが多い。それは、腎臓の問題を有する骨髄腫患者の治療において特に有益であり得る。骨髄腫が幹細胞移植又は初期治療のいずれかの後に寛解状態になった患者において、ボルテゾミブもまた、寛解状態を延長するための維持療法として施され得る。
【0089】
カルフィルゾミブ(kyprolis(登録商標))は、機能しなかった他の薬物で既に治療された患者におけるMMを治療するために使用できる、より新しいプロテアソーム阻害剤である。注入中、アレルギー性反応のような問題を予防するため、ステロイド薬デキサメタゾンが、第1のサイクルにおける各用量の前に投与されることが多い。
【0090】
イキサゾミブ(ninlaro(登録商標))は、典型的に、3週間にわたって週1回、口から摂取され、続いて1週間休むようなカプセル剤であるプロテアソーム阻害剤である。この薬物は、通常、他の薬物が試みられた後に投与される。
【0091】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、どの遺伝子が細胞内で活性である又は作動するかに影響を与え得る薬物の群である。それらは、ヒストンと呼ばれる染色体中のタンパク質と相互作用することによってこのように振る舞う。MMの治療に使用できるHDAC阻害剤は、パノビノスタットを含む。パノビノスタット(farydak(登録商標))は、ボルテゾミブ及び免疫調節剤で既に治療された患者を治療するために使用できるHDAC阻害剤である。それは、典型的に、2週間にわたって週3回摂取され、続いて1週間休むようなカプセル剤である。次に、このサイクルは繰り返される。
【0092】
用語「免疫療法」とは、免疫系又は免疫応答を調節することを含む療法の任意のタイプを指す。免疫系の調節は、免疫系を誘導する、刺激する、又は増強すること、ならびに免疫系を低下させる、抑制する、又は阻害することを含む。免疫療法は、能動的又は受動的であり得る。受動的免疫療法は、除去すべき標的に特異的なモノクローナル抗体の投与に依存する。例えば、腫瘍標的化モノクローナル抗体は、がんを治療するための臨床的有効性を示している。能動的免疫療法は、細胞免疫を誘導し、標的薬剤に対する免疫記憶を確立することを目的とする。能動的免疫療法としては、ワクチン接種及び免疫モジュレーターを含むが、それらに限定されない。MMの治療に使用できる免疫療法は、抗CD38抗体及び抗SLAMF7抗体、並びに抗体-薬物コンジュゲート等のモノクローナル抗体を含む。
【0093】
イサツキシマブ(sarclisa(登録商標))は、骨髄腫細胞上のCD38タンパク質に付着する別のモノクローナル抗体である。このようなことは、がん細胞を直接的に殺傷するとともに、免疫系によるそれらへの攻撃を助けると考えられる。この薬物は、典型的に、少なくとも2つの他の治療が試みられた後に、他のタイプの骨髄腫薬と併せて使用される。
【0094】
エロツズマブ(empliciti(登録商標))は、骨髄腫細胞上で見出されるSLAMF7タンパク質に付着するモノクローナル抗体である。このようなことは、免疫系によるがん細胞への攻撃を助けると考えられる。この薬物は、主に、骨髄腫に対する他の治療を既に受けた患者において使用される。
【0095】
本明細書で使用されるように、用語「抗体-薬物コンジュゲート」とは、化学療法薬に連結されたモノクローナル抗体を指す。MM治療のための抗体-薬物コンジュゲートは、骨髄腫細胞上のBCMAタンパク質を標的とする抗体、及び化学療法剤を含む。ベランタマブマフォドチン-blmf(blenrep(登録商標))は、主に、骨髄腫に対する少なくとも4つの他の治療(プロテアソーム阻害剤、免疫調節薬物、及びCD38に対するモノクローナル抗体を含む)を既に受けた者において、骨髄腫を治療するために単独で使用できる抗体-薬物コンジュゲートである。
【0096】
「核外輸送阻害剤」、又は「核外輸送の選択的阻害剤」(SINE)は、細胞核から細胞質への輸送に関与するタンパク質であるエキスポーチン1(XPO1又はCRM1)を遮断する薬物である。この阻害は、アポトーシスによる細胞周期停止及び細胞死を引き起こし、SINE化合物は、抗がん薬として興味深い。セリネクサー(Xpovio(登録商標))は、MMの治療における最終手段の薬物として承認されている。それは通常、デキサメタゾンと共に使用される。
【0097】
本明細書において、「幹細胞移植」又は「骨髄移植」とは、高用量化学療法による患者の骨髄内の全ての細胞(骨髄腫細胞等のがん細胞を含む)の枯渇、及び新しい健常な造血幹細胞の移植を指す。幹細胞移植は、一般にMMを治療するために使用される。移植は、移植前に患者の骨髄若しくは末梢血から取り除かれた患者自身の幹細胞を用いる自家移植、又は患者の細胞型に一致したドナー(兄弟又は姉妹等の患者の近縁者等)からの造血幹細胞を用いる同種移植、のいずれかであり得る。幹細胞移植は、MMを有する患者に対する標準治療である。自家移植により、骨髄腫が一時期(数年でも)消え得るが、がんは治癒せず、骨髄腫が再発することが多い。
【0098】
放射線は、化学療法及び/又は他の薬物に応答しておらず、疼痛を引き起こしており、破壊に近い可能性のある、骨髄腫によって損傷された骨の領域を治療するために使用され得る。それは孤立性形質細胞腫に対する最も一般的な治療でもある。
【0099】
手術は、時として、単一の形質細胞腫の除去に使用されるが、MMを治療するために使用されることは殆どない。脊髄圧迫が麻痺、重度の筋力低下、又はしびれを引き起こすとき、緊急手術が必要とされる場合がある。金属のロッド又はプレートを取り付けるための手術は、弱くなった骨の支持を補助することができ、骨折を予防又は治療するために必要とされ得る。
【0100】
MMの治療に使用できる本明細書に記載の全ての追加治療は、単独で又は様々な組合せで使用することができる。これらの組合せのうち、以下の組合せはMMの治療に使用されることが多い。
-レナリドミド(又はポマリドミド若しくはサリドマイド)及びデキサメタゾン、
-カルフィルゾミブ(又はイキサゾミブ若しくはボルテゾミブ)、レナリドミド、及びデキサメタゾン、
-ボルテゾミブ(又はカルフィルゾミブ)、シクロホスファミド、及びデキサメタゾン、
-エロツズマブ(又はダラツムマブ)、レナリドミド、及びデキサメタゾン、
-ボルテゾミブ、リポソームドキソルビシン、及びデキサメタゾン、
-パノビノスタット、ボルテゾミブ、及びデキサメタゾン、
-エロツズマブ、ボルテゾミブ、及びデキサメタゾン、
-サリドマイド又はボルテゾミブの存在下又は不在下での、メルファラン及びプレドニゾン(MP)、
-ビンクリスチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、及びデキサメタゾン(VADと呼ばれる)、
-デキサメタゾン、シクロホスファミド、エトポシド、及びシスプラチン(DCEPと呼ばれる)、
-ボルテゾミブの存在下又は不在下での、デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、及びエトポシド(DT-PACEと呼ばれる)、
-セリネクサー、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、
-イデカブタゲンビクルユーセル、B細胞成熟抗原特異的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法。
【0101】
薬物療法の選択及び用量は、がんの病期、患者の年齢及び腎機能、並びに患者の虚弱程度がどれほどであり得るかを含む多くの要因に依存する。幹細胞移植が計画される場合、殆どの医師は、骨髄を損傷し得る、メルファランのような特定の薬物の使用を回避する。
【0102】
別の態様において、本開示は、MM及び別の形質細胞障害を患っている患者の治療方法を提供し、該方法は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に示すアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体と、ダラツムマブとを含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0103】
形質細胞障害は、B細胞の単一クローンの不釣合な増殖、及び血清、尿、又は両方における構造的且つ電気泳動的に均一な(モノクローナル)免疫グロブリン又はポリペプチドサブユニットの存在を特徴とする、病因が不明の障害の多様な群である。未分化B細胞は、骨髄における発生後、通常、リンパ節、脾臓、及び消化管(例えば、パイエル板)等の末梢リンパ組織に侵入し、そこで成熟細胞に分化し始め、それぞれが、限られた数の抗原に応答し得る。一部のB細胞は、適切な抗原に遭遇後、形質細胞へと増殖する。各形質細胞系は、2つの同一重鎖(ガンマ[γ]、ミュー[μ]、アルファ[α]、デルタ[δ]、又はイプシロン[ε])及び2つの同一軽鎖(カッパ[κ]又はラムダ[λ])からなる、1つの特異的免疫グロブリン抗体の合成を主な目的としている。通常は、僅かに過剰な軽鎖が産生され、少量の遊離ポリクローナル軽鎖の尿中排泄(≦40mg/24時間)が正常である。形質細胞障害は、病因が不明であり、1クローンの不釣合な増殖を特徴とする。結果は、重鎖及び軽鎖の両方又は1タイプの鎖のみからなり得るモノクローナル免疫グロブリンタンパク質(Mタンパク質)であるその産物の、血清レベルでの対応する増加である。
【0104】
形質細胞障害は、(1)通常は無症候性であり、モノクローナルB又は形質細胞に関連し、慢性炎症性及び感染症状(慢性胆嚢炎、骨髄炎、腎盂腎炎、関節リウマチ、及び結核を含む)を伴う、又は他の障害(家族性高コレステロール血症、ゴーシェ病、カポジ肉腫、苔癬粘液腫、肝障害、重症筋無力症、悪性貧血及び甲状腺機能亢進症を含む)に関連する、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症と、(2)(a)くすぶり型MM、(b)免疫グロブリン及び/又は軽鎖産生に関連する症候性及び活動性MM、(c)モノクローナル軽鎖に関連する原発性全身性アミロイドーシス(非遺伝性)、又は重鎖に関連する原発性全身性アミロイドーシス(IgG、IgA、IgM又はIgD重鎖病)、(d)モノクローナルタンパク質の産生に関連するB細胞リンパ腫、のいずれかで無症候性であり得る悪性形質細胞障害と、の2つのカテゴリーに分類することができる。
【0105】
最も一般的な形質細胞疾患は、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUSであって、くすぶり型MMを伴い、患者が、たとえあったとしても非常に限られた臓器障害を有することからまだ病んでいない、形質細胞疾患である)、MM、及び全身性ALアミロイドーシスを含む。形質細胞増殖及びMタンパク質産生は、(1)高カルシウム血症又は悪性形質細胞によって分泌される毒性軽鎖に起因する、また一部のMタンパク質が自己抗原に対する抗体活性を示すという事実に起因する、臓器、特に腎臓への損傷、(2)他の免疫グロブリンの産生低下に起因する、免疫障害、(3)Mタンパク質が血小板をコーティングし、凝固因子を不活性化し、そして血液粘度を増加させる能力に起因する、出血傾向、(4)Mタンパク質及び/又は軽鎖が臓器(最も一般的に、心臓、腎臓及び肝臓)内に線維状沈着を形成する能力に起因する、アミロイドーシス、及び(5)骨基質及び/又は骨髄中のモノクローナル形質細胞による破骨細胞の過剰活性化に起因する、骨粗鬆症、高カルシウム血症、貧血、又は汎血球減少を含む、疾患の様々な症状に関連する。
【0106】
炎症性疾患又は長期透析等の外部要因に起因する、遺伝型及び孤発型を含む、多くの異なるタイプのアミロイドーシス疾患及び障害が存在する。一般に、アミロイドーシスは、ミスフォールド軽鎖タンパク質又はその断片の集積及び凝集に起因する。アミロイドーシスは、異なる人々における異なる臓器を冒し得、異なるタイプのアミロイドが存在する。アミロイドーシスは、心臓、腎臓、肝臓、脾臓、神経系及び消化管を冒すことが多い。重度アミロイドーシスは、生命を脅かす臓器不全を引き起こし得る。多くのタイプが多臓器を冒す一方で、その他は身体の一部分のみを冒す。アミロイドーシスの徴候及び症状としては、足首及び脚の腫脹、重度の疲労及び脱力、息切れ、手足のしびれ、刺痛若しくは疼痛、特に手首の疼痛(手根管症候群)、出血を伴う可能性がある下痢、若しくは便秘、不本意な著しい体重減少、肥大した舌、肥厚若しくは易皮下出血等の皮膚変化及び眼の周りの紫がかった斑点、不規則な心拍、又は、嚥下困難を含み得るが、それらに限定されない。
【0107】
更なる実施形態では、本開示は、抗アミロイドーシス治療の候補者として、MMを有する対象を同定する方法を提供し、該方法は、対象におけるALアミロイドーシスフィブリル及び/又はアミロイドタンパク質前駆体の沈着を同定し、それにより対象を抗アミロイドーシス治療に対する候補者として同定することを含み、ここで対象におけるALアミロイドーシスフィブリル及び/又はアミロイドタンパク質前駆体の沈着の同定は、対象が療法に応答する可能性を示し、該療法は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に示すアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体と、ダラツムマブとを含むことで、対象を抗アミロイドーシス治療の候補者として同定する。
【0108】
本明細書で使用されるように、対象におけるALアミロイドーシスフィブリル及び/又はアミロイドタンパク質前駆体の沈着の同定は、当分野で公知のアミロイドーシスを診断する任意の方法を対象に施すことを含み得る。アミロイドーシスは、対象において、臨床検査、生検、及び/又は画像検査を用いて検出することができる。
【0109】
臨床検査は、アミロイドーシスを示し得る異常なタンパク質を検出するための血液及び尿分析を含み得る。徴候及び症状に応じて、更に甲状腺及び肝機能検査も必要であり得る。血液及び尿検査は、どの臓器が障害され、それらがどの程度損なわれるかを発見することにも寄与し得る。例えば、尿サンプル中のタンパク質のレベルで観察する24時間尿収集は、腎障害を示し得る尿中の過剰なタンパク質を示すことができる。また、血液検査は、(カッパ及びラムダ軽鎖のレベルを評価する目的で)血液中の異常な抗体(免疫グロブリン)タンパク質の存在について検査するために使用することもできる。
【0110】
組織生検は、アミロイド沈着の証拠を見出すための組織の小さいサンプルの採取を含む。あらゆる種類の組織又は臓器生検は、「コンゴーレッド染色」で染色し、分析し、アミロイドーシス沈着を検出することができる。侵襲性がより低い生検は、(腹部の皮膚下からの)脂肪パッド生検、口唇唾液腺生検(内唇)、及び皮膚又は骨髄を含む。骨髄検査は、骨髄吸引(一部の液体骨髄の除去を含む)及び骨髄生検(1片の骨髄組織の1~2cmのコアの除去を含む)を含み得る。これらのサンプルは、骨髄腫細胞のパーセンテージを決定するために役立つことができる。侵襲性がより高い生検は、通常は、アミロイドーシスが疑われるが、骨髄、脂肪パッド、唇又は皮膚部位の生検が陰性になる場合に実施される、臓器生検を含み得る。そして、症状を示している臓器の外科的生検は、肝臓、腎臓、神経、心臓又は消化管(胃又は腸)において実施することができる。
【0111】
画像検査は、疾患の範囲を確立することを補助するために使用できる、心エコー図及び他のイメージングを含み得る。心エコー図を使用し、アミロイド沈着は、心臓において、そのサイズ及び形状、並びにアミロイドのあらゆる影響の位置及び範囲を観察しながら検出することができる。他のイメージングは、MRI(磁気共鳴イメージング)、及びCMR(心臓磁気共鳴の場合)、ピロリン酸スキャン(異常なタイプの心筋症が認められるか否かを評価するためにも使用される核医学検査)を含み得る。また、対象に注射される放射性トレーサーを使用する核イメージングを用いて、特定タイプのアミロイドーシスに起因する早期の心臓障害を明らかにすることもできる。それはまた、異なるタイプのアミロイドーシス間の識別に役立つことができ、治療決定を導くことができる。また、本明細書に記載の抗体は、124I等の放射性トレーサーと結合させて標識抗体を生成した場合、イメージングを目的として使用することもできる。そのようなイメージング技術は、対象における沈着アミロイドフィブリルの局在化及び範囲の双方を提供し得る。したがって、本開示の標識抗体を用いて、疾患を有することが疑われる患者におけるアミロイド沈着疾患の存在を検出するとともに、治療の有効性を判定することができる。
【0112】
様々な形態において、追加療法が、対象に更に施される。
【0113】
いくつかの態様において、追加療法は、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、メルファラン、レナリドミド、イサツキシマブ、ベネトクラクス、幹細胞移植、又はそれらの組合せを含む。
【0114】
前述した方法の治療有効用量及び投与レジメンは、当業者に容易に理解されるように、様々であり得る。用量レジメンは、最適な所望の応答(例えば、がん細胞量の減少)を提供するように調整され得る。
【0115】
1つの態様において、抗体は、少なくとも2週間、3週間又は4週間にわたって毎週投与される。本開示の抗体の投与は、対象に投与される初期用量である、負荷用量が検討される。抗体負荷用量の後には、例えば、維持用量が続き得る。
【0116】
1つの態様において、その後、維持用量の抗体が対象に更に投与される。
【0117】
抗体維持用量は、負荷用量時に従うレジメンに類似したレジメンで投与してもよく、又は維持用量は、負荷用量時に従うレジメンと比較して異なるレジメンで投与してもよい。例えば、維持用量は、負荷用量より低い頻度で投与することができる。
【0118】
いくつかの態様において、毎週の投与での最初の2、3、4週、又はそれ以上の週数を経た後、抗体維持用量が、2週間毎に、3週間毎に、又は1カ月毎に投与される。
【0119】
様々な他の投与レジメンは、本明細書に記載の方法に適し得る。例えば、いくつかの態様において、単回用量の抗体が投与されてもよい一方で、他の態様では、いくつかの分割用量が長期的に投与されてもよく、又は該用量は、状況によって示される通り、後続の投与において比例的に低減又は増加されてもよい。例えば、開示される抗体は、皮下、静脈内、又は筋肉内注射によって毎週1回又は2回投与されてもよい。いくつかの態様において、開示される抗体は、皮下、静脈内、又は筋肉内注射によって月1回又は月2回投与されてもよい。いくつかの態様において、開示される抗体は、皮下、静脈内、又は筋肉内注射によって年1回又は年2回投与されてもよい。他の態様において、開示される抗体又はその抗原結合断片は、患者の状況又は症状が示し得る通り、週1回、隔週1回、3週間に1回、4週間に1回、月1回、隔月1回、3カ月間に1回、4カ月間に1回、5カ月間に1回、6カ月間に1回、7カ月間に1回、8カ月間に1回、9カ月間に1回、10カ月間に1回、11カ月間に1回、年2回、又は年1回投与されてもよい。
【0120】
1つの態様において、ダラツムマブは、少なくとも第1のサイクル又は第2のサイクルにわたって毎週投与される。サイクルは、薬物が投与される日数及び薬物が投与されない休止期間を含み得る。サイクル長さは様々であり得、例えば、1週間、2週間、3週間、28日間(又は4週間)、5週間又は6週間とすることができる。
【0121】
本開示のダラツムマブの投与は、対象に投与される初期用量である、負荷用量が検討される。負荷用量の後には、例えば、維持用量が続き得る。
【0122】
ダラツムマブ維持用量は、負荷用量時に従うレジメンに類似したレジメンで投与してもよく、又は維持用量は、負荷用量時に従うレジメンと異なるレジメンで投与してもよい。例えば、維持用量は、負荷用量より低い頻度で投与することができる。
【0123】
いくつかの態様において、第1のサイクル又は第2のサイクルの後、ダラツムマブ維持用量が、2週間毎に、3週間毎に、4週間毎に、又は1カ月毎に投与される。
【0124】
様々な他の投与レジメンは、本明細書に記載の方法に適し得る。例えば、単回用量のダラツムマブが投与されてもよい一方で、他の態様において、いくつかの分割用量が長期的に投与されてもよく、又は該用量は、状況によって示される通り、後続の投与において比例的に低減又は増加されてもよい。初回のダラツムマブ投与は、例えば、皮下、静脈内、又は筋肉内注射によって2日間の用量に分けて施してもよい。いくつかの態様において、ダラツムマブは、皮下、静脈内、又は筋肉内注射によって月1回又は月2回投与されてもよい。いくつかの態様において、ダラツムマブは、皮下、静脈内、又は筋肉内注射によって年1回又は年2回投与されてもよい。他の態様において、ダラツムマブは、患者の状況又は症状が示し得る通り、週1回、隔週1回、3週間に1回、4週間に1回、月1回、隔月1回、3カ月間に1回、4カ月間に1回、5カ月間に1回、6カ月間に1回、7カ月間に1回、8カ月間に1回、9カ月間に1回、10カ月間に1回、11カ月間に1回、年2回、又は年1回投与されてもよい。
【0125】
患者に施される併用療法の治療有効用量(単回用量又は複数回用量のいずれか)は、患者におけるがん細胞の量を減少させるのに十分であるべきである。かかる治療有効量は、患者における症状変化を評価することによって、又は骨髄腫細胞、形質細胞腫のサイズ及び数、又はパラプロテイン若しくはMタンパク質の存在量を評価することによって、決定され得る。
【0126】
特定の対象に対する有効用量は、性別、体表面積(BSA)、体重等の属性によって左右され得る。例えば、身長5’8”、体重150ポンドでBSA1.8(Mosteller)の男性の場合、抗体の有効用量は、約1800mgであり得る。例えば、身長5’8”、体重235ポンドでBSA2.3(Mosteller)の男性の場合、抗体の有効用量は約2300mgであり得る。
【0127】
例示的用量は、治療される個体のサイズ及び健康状態、並びに治療される症状に応じて変動し得る。いくつかの態様において、開示される抗体の治療有効量は、約250mg/m2~1375mg/m2又は約500mg/m2~1000mg/m2であってもよいが、いくつかの状況では、該用量はより高くてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、治療有効量は、約1000、約975、約950、約925、約900、約875、約850、約825、約800、約775、約750、約725、約700、約675、約650、約625、約600、約575、約550、約525、又は約500mg/m2であってもよい。
【0128】
1つの態様において、抗体投与用量は、約500mg/m2~1,000mg/m2である。多数の態様において、抗体投与用量は、約500mg/m2、約750mg/m2及び約1,000mg/m2から選択される。
【0129】
同様に、いくつかの態様において、抗体の有効量は、約2,200mgであるが、いくつかの状況では、該用量はより高くても低くてもよい。いくつかの実施形態において、治療有効量は、約50~5000mg、約60~約4500mg、約70~4000mg、約80~3500mg、約90~3000mg、約100~2500mg、約150~2000mg、約200~1500mg、約250~1000mg、約1400mg~2300mg、又はそれらの間の任意の用量であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、治療有効量は、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約650、約700、約750、約800、約850、約900、約950、約1000、約1100、約1200、約1300、約1400、約1420、約1500、約1600、約1700、約1800、約1900、約2000、約2100、約2200、約2270、約2300、約2400、約2500、約2600、約2700、約2800、約2900、約3000、約3100、約3200、約3300、約3400、約3500、約3600、約3700、約3800、約3900、約4000、約4100、約4200、約4300、約4400、約4500、約4600、約4700、約4800、約4900、約5000又はそれ以上のmgであってもよい。
【0130】
1つの態様において、約1,000mg/m2の抗体の毎週用量の投与は、約2,750mgの抗体を投与することを含む。
【0131】
他の態様において、約500mg/m2の抗体の毎週用量の投与は、約1,375mgの抗体を投与することを含み、510mg/m2のその投与は、約1400mgの抗体を投与することを含み、約750mg/m2の抗体の毎週用量の投与は、約2,065mgの抗体を投与することを含み、約836mg/m2の抗体のその投与は、約2300mgの抗体を投与することを含む。他の態様において、約500mg/m2の抗体の投与用量は、約1,000~1,500mgの抗体を投与することを含み、約750mg/m2の抗体の投与は、約1,500~2,500mgの抗体を投与することを含み、約1,000mg/m2の抗体の投与は、約2,500~3,000mgの抗体を投与することを含む。特定の理論に縛られることを望むものではないが、2.75×mg/m2の用量が許容されると考えられる。
【0132】
同様に、いくつかの態様において、抗体の有効量は、約25mg/kg又は約18.75mg/kgであるが、いくつかの実施形態において、該濃度はより高くても低くてもよい。いくつかの実施形態において、有効量は、約1~50mg/kg、約5~40mg/kg、約6~32mg/kg、約10~30mg/kg、又は約15~25mg/kg、又はそれらの間の任意の値であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、有効量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、26、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50又はそれ以上のmg/kgであってもよい。
【0133】
1つの態様において、約1,000mg/m2の抗体の投与は、約25mg/kgの抗体を投与することを含む。他の態様において、約500mg/m2の抗体の投与用量は、約12.5mg/kgの抗体を含み、約750mg/m2の投与用量は、約18.75mg/kgの抗体を含む。他の態様において、約500mg/m2の抗体の投与用量は、約10~15mg/kgの抗体を含み、約750mg/m2の毎週用量は、約15~20mg/kgの抗体を含み、約1,000mg/m2の抗体の毎週用量は、約20~30mg/kgの抗体を含む。
【0134】
1つの態様において、ダラツムマブの投与用量は、約10~20mg/kg、約14~18mg/kg、又はそれらの間の任意の値である。有効用量は約16mg/kgであってもよい。
【0135】
他の態様において、ダラツムマブは、15mL当たりダラツムマブ1500mg~2200mg、15mL当たりダラツムマブ1600mg~2000mg、15mL当たりダラツムマブ1700mg~1900mgの製剤で皮下投与されてもよい。有効量は、15mL当たりダラツムマブ約1800であってもよい。
【0136】
開示される治療方法はまた、状況によって必要とされ得るような他の公知の治療方法と組み合わされてもよい。したがって、いくつかの態様において、開示される療法は、他の公知の治療の前、後、又はそれと同時に施されてもよい。いくつかの態様において、開示される抗体は、他の治療選択肢が失敗した後、又は疾患が進行し続けた後に限り、投与されてもよい。
【0137】
上で考察したように、開示される療法は、追加療法と組み合わせて施すことができる。1つの態様において、抗体は、追加療法の前、それと同時、又はその後に投与される。
【0138】
様々な形態において、開示される療法は、追加療法の前に施される。
【0139】
本明細書に記載の方法は、本開示の抗体及びダラツムマブの投与に依存する。様々な態様において、抗体の対象への投与は、抗体、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、マンニトール、及びポリソルベート80を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0140】
目的の疾患を治療するためのその有効性に加えて、治療薬は、副作用、毒性、又は有害事象を含み得る、かかる疾患の治療に関連しない他の事象に関連し得る。例えば、治療薬(複数可)は、用量の増加が観察された毒性の増加に関連する場合に、治療有効用量の使用を制限又は禁止し得る用量制限毒性に関連し得る。
【0141】
ある療法は、治療の開始前に存在しなかった、又は治療への曝露後に強度若しくは頻度のいずれかで悪化した、治療下で発現した有害事象(TEAE)に関連し得る。一般的なTEAEとしては、悪心、下痢、尿路感染、疼痛、目まい、頭痛、疲労及び不眠を含むが、それらに限定されない。本明細書で使用されるように、「重篤有害事象」という用語は、死亡をもたらし、生命を脅かし、入院患者の入院若しくは既存の入院の延長を必要とし、又は持続的若しくは有意な美観の損傷若しくは能力障害をもたらす、有害な医学的事象を意味する。
【0142】
1つの態様において、500mg/m2、750mg/m2及び1,000mg/m2の抗体の投与用量、及び10~20mg/kg及び14~18mg/kgのダラツムマブの投与用量は、薬物関連有害事象を引き起こさない。
【0143】
別の態様において、500mg/m2、750mg/m2及び1,000mg/m2の抗体の用量及び10~20mg/kg及び14~18mg/kgのダラツムマブの投与用量は、用量制限毒性を引き起こさない。
【0144】
療法の、アミロイドーシスを治療する有効性は、療法の薬物動態パラメータに基づいて測定することもできる。
【0145】
例えば、抗体用量の有効性は、その標的、例えばλ-軽鎖フィブリル及び/又はκ-軽鎖フィブリルの凝集体等に結合する能力として測定できる。ダラツムマブ用量の有効性は、その標的、例えばCD38に結合する能力として測定できる。
【0146】
療法用量の有効性は、標的受容体についての部位占有率として測定することができる。標的受容体についての部位占有率は、抗体及び/又はダラツムマブの指定用量について、抗体又はダラツムマブがどのような割合の軽鎖フィブリル又は形質細胞に結合し、したがって分解及びアポトーシスを能動的に標的とすることを指し示すことができる。
【0147】
本明細書の療法用量は、例えば、標的についての少なくとも50%の占有率を誘導するのに十分であり得る。抗体は、対象においてアミロイド沈着又は軽鎖フィブリルについての少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の占有率を誘導することができる。
【0148】
1つの態様において、500mg/m2、750mg/m2及び1,000mg/m2の抗体の投与用量は、標的受容体についての少なくとも90%の部位占有率を達成する。
【0149】
療法用量の有効性は、投与用量と比較した、対象における測定時のその濃度として測定できる。
【0150】
1つの態様において、対象における療法の濃度は、投与用量と共に増加する。
【0151】
抗体用量の有効性は、対象のMM細胞を効率的に破壊する能力として測定できる。
【0152】
以下の実施例は、本開示を例示するために示される。しかし、本開示がこれらの実施例に記載される特定の条件又は詳細に限定されるものではないことは理解されるべきである。本明細書で参照される全ての印刷された刊行物は、参照により具体的に組み込まれる。
【0153】
単独の又は形質細胞指向療法と組み合わせた、本開示の抗体の高用量の有効性について考察する実施例は、以下に提示され、考察された用途について意図される。以下の実施例は、本開示の実施形態を更に例示するために提供されるが、本開示の範囲を限定することは意図されない。それらは使用され得る典型的なものである一方で、当業者に公知の他の手順、方法論、又は技法は代替的に使用され得る。
【実施例】
【0154】
実施例1
抗体の産生及び特徴付け
本開示の抗体は、抗体のアミノ酸配列を改変することなく、翻訳効率を改善し、且つ転写効率を改善するために、コドン最適化DNA配列をコードするプラスミドを宿主細胞にトランスフェクトすることによって作製した。
【0155】
細胞を、高い抗体価及び細胞密度に至らせるための条件下で培養した。作製プロセスは、細胞片/回収性の最適なバランス及び抗体価に至るまでのバイオリアクター内での産生を含んだ。
【0156】
次に、得られた抗体を、様々なストレス条件下で電荷不均一性を試験することによって特徴付けた。
【0157】
図2に示すように、天然、還元、及び還元+脱グリコシル化画分の分析によると、全ての画分が複雑な混合物であることが示された。全ての天然画分が、予想されたグリコシル化変異体の混合物を含有した。
【0158】
AV4及びAV5画分が、シアリル化種を含有した。主なピーク及びBV1画分は、より小さい中性種(G0及びG0F)に富んでいた。また、より多くの酸画分が、ガラクトシル化中性種(G1F及びG2F)に富み、且つ天然AV5画分が、ハーフマー(HC/LC)、1つのHCのN末端半分を欠いている抗体、及び他の未知の断片に富むことが示された。天然BV1画分は、予想通り、C末端リジンを保持するHCに富み、還元されたAV3-5 LC画分は、糖化リジンに富んでいた。
【0159】
図2に示すように、抗体の電荷不均一性を、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)分離(
図2A)、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)分離(
図2B)及びカチオン交換クロマトグラフィー(CEX、
図2C)によって評価した。結果は、明白な不均一性が所与の方法の人為的結果でないことを示した。
【0160】
実施例2
抗体の第2相薬物動態分析の予備的結果
予備的第2相薬物動態(PK)データ分析の目的は、(1)500~1000mg/m2のPK曝露における用量比例性を評価すること、(2)130μg/mLの目標Cトラフに達するための最低用量数/最小用量数を評価すること、及び(3)部分的な第2相PKデータを用いて第3相用量及びレジメンの推奨を評価することであった。
【0161】
【0162】
本開示の抗体の個別PKを経時的に評価し、第1b相試験のデータと比較した。
図3A及び3Bに示すように、第2相試験において、500、750、及び1000mg/m
2の用量は、それぞれ用量6、4、及び3に対して、完全なピーク(患者の血流中の抗体の最高濃度)及びトラフ(投与前の患者の血流中の最低濃度)のデータを有し、500~1000mg/m
2にかけてPK曝露の増加を示した。これは、濃度がより低く、ばらつきがより高い、第1b相試験からのデータと著しく異なる。
【0163】
図4A及び4Bに更に示すように、抗体の平均PKの試験を経時的に評価し、第1b相試験のデータと比較した。第2相において、500、750、及び1000mg/m
2の用量が、それぞれ用量6、4、及び3に対して、完全なピーク及びトラフデータを有し、500~1000mg/m
2の用量にかけてPK曝露の増加を示した。これは、特に用量2~4の後に、濃度がより低く、ばらつきがより高い、第1b相試験からのデータと著しく異なる。
【0164】
抗体の用量によるピーク曝露Cmax(μg/mL)の試験を更に評価した。表4に示すように、500mg/m2で、全体的に、ピーク曝露は、第2相試験と第1b相試験の間で同等であった。用量1及び4の後に、Cmaxは重複しており、用量3/用量1の蓄積比は、約1.43~2倍で類似していた。第2相は、用量2及び3の後に、第1b相と比較して約50%高いCmaxを有した。
【0165】
この第2相試験では、軽度~中等度のばらつきが認められた。1000mg/m2で、最終の3データ点にばらつきが追加された(より低いPK、ややより重篤な病状)。750mg/m2で、%CV最高値は、ダラツムマブに切り替えられた、心臓でMayoステージ2を有する対象である、データ点1003-0005によるものであった。
【0166】
【0167】
図5に示すように、抗体の全身性曝露は、0.5~500mg/m
2の用量範囲にわたって比例的な用量をやや上回ることが見出された(第1b相試験)。第1b相試験において、平均T
1/2は、250及び500mg/m
2についてそれぞれ10日間及び16日間であり、QuantPharmによるモデルは、24日間に近いT
1/2を示した。C
minは、3つの数字以下の平均で設定し、130μg/mLであった。NTproBNPは、500mg/m
2におけるC
minが約100μg/mL減少していたとき、最終用量から1週間後(880時間)に増加し始めた(N=7pt)。他のバイオマーカーは、高度に可変であった。
【0168】
アミロイドの最大結合性における最大半量有効濃度(EC50)(インビトロ)は、約157μug/mLであり、Michaelis-MentonのEC90(計算値)は、約36.5μg/mL(95CI 5~134μg/mL)であった。
【0169】
第1a/1b相のモデリング及びシミュレーションは、最小予測定常状態CminSS(分析データセットからの患者中)が、250mg/m2 QW、750mg/m2 Q2W、又は1000mg/m2 Q3Wの投与レジメンに従い、このレベルを達成することを示した。Q4W投与の場合、たとえ1000mg/m2の用量であっても、最低曝露の患者についてCminSSで82.7%の標的占有率しか達成できなかった。
【0170】
試験抗体の最小曝露Cmin(Cトラフ、μg/mL)を、用量によって評価した。表5に示すように、500mg/m2で、全体的に、トラフ曝露は、第2相と第1b相の間で重複しており、第2相がより高い傾向があった。第2相と第1b相の間で、用量3/用量1の蓄積比は、2.3対4.4倍であった。この第2相では、軽度~中等度のばらつきが認められた。
【0171】
90%の受容体占有率における最小Cトラフが、1000mg/m2下での第2の毎週用量、750mg/m2下での第3の毎週用量、500mg/m2下での第6の毎週用量の後、>130μg/mLで達成された。130μg/mLの目標は、第1a/1b相試験に基づいたものであり、新しい第2相データと共に変化する可能性が高い。
【0172】
【0173】
試験抗体AUCτ(μg×hr/mL)を用量によって評価した。表6に示すように、500mg/m2で、全体的に、累積的曝露は、第2相試験と第1b相試験の間で同等であった。用量1及び4の後、AUCτ値が重複していた。第2相試験では、用量3/用量1の蓄積比は、第1b相における2倍に対して3.3~4倍であった。
【0174】
この第2相試験では、用量2及び3の後、第1b相試験と比較して約100%高いAUCτが認められ、ばらつきは、軽度~中等度であった。
【0175】
【0176】
C
max/用量についての用量比例性評価を評価した。
図6及び表7に示すように、この第2相試験では、C
maxが、500~1000mg/m
2にかけてほぼ用量比例的に増加した。これは、特に用量3後のケースであり、750mg/m
2での標的媒介薬物動態(TMDD)の飽和が示された。
【0177】
【0178】
更に、C
min/用量についての用量比例性評価を評価した。
図7及び表8に示すように、この第2相試験では、C
minが、500~1000mg/m
2にかけてほぼ用量比例的に増加した。これは、特に用量1後のケースであり、750mg/m
2での標的媒介薬物動態(TMDD)の飽和が示された。
【0179】
【0180】
加えて、AUCτ/用量についての用量比例性評価を評価した。
図8及び表9に示すように、AUCτは、750~1000mg/m
2にかけてほぼ用量比例的に増加し、750mg/m
2での標的媒介薬物動態(TMDD)の飽和が示された。
【0181】
【0182】
結論として、本発明に記載の抗体のPK試験の予備データによると、PK曝露が、500~1000mg/m2の試験用量範囲にわたる用量増加とともに増加し、TMDDが、750~1000mg/m2のPK曝露の用量比例を上回る増加、及び500~750mg/m2のほぼ用量比例の増加をもたらすことが示される。その情報は、安全性への懸念無しに最大耐用量を仮定しての1000mg/m2での投与、また全ての対象が、第2の用量の後、所望を上回るCmin(即時的、完全、及び持続的な標的飽和)に達することを裏付ける。したがって、この試験は、第3相試験プロトコルにおいて、Q2W維持が続く、用量レベル1000mg/m2の4QW負荷用量として定義されるP3D(推奨第3相用量)を示した。
【0183】
第3相最適用量レジメンを精査するためには、より高い用量レベルでのこの第2相におけるPK及びPDデータの完全な収集、第1相及び第2相データを組み込んだPK/PDモデルの更新が用いられ、新しい目標Cトラフを確立することができる。
【0184】
PK、試験材料、及びCyBorDの存在対不在(第1b相における一部の患者は試験前に化学療法で治療された)についてのBAアッセイにおける差が制限された一方で、初回用量(用量1)後の抗体曝露は、2つの試験間で重複したが、第2相試験における後続用量後では、約30~100%高かった。
【0185】
実施例3
抗体製剤及び用量
抗体製剤:
対象に投与するための抗体の製剤は、
30mg/mLの抗体、10mL/バイアル(=300mgの抗体)、
25mMの酢酸ナトリウム、
50mMの塩化ナトリウム、
1%マンニトール、及び
0.01~0.05%ポリソルベート80
を含有するものと定義した。
【0186】
製剤は、pH5.5で維持した。
【0187】
用量範囲評価:
集団薬物動態の試験は、体表面積(BSA)又は体重との相関がないことを示している。BSAによる最良の用量が、1000mg/m2であり、2番目に良い選択肢が、ステップダウンとしての使用が求められ得る750mg/m2であると判定された。
【0188】
250~1375mg/m2の全ての用量の範囲は、体重による最良の用量が25mg/kgと評価され、2番目に良い選択肢が18.75mg/kgであることを示した。
【0189】
6.25~31.25mg/kgの全ての用量の範囲は、全ての患者のアミロイドサブタイプ及び重篤度レベルにわたる適切な投与についての決定的な所見として、標的媒介薬物動態(TMDDであって、薬剤が高親和性でその薬理学的標的部位に結合する現象)が750mg/m2及びそれ以上で発生することを示した。
【0190】
驚いたことに、全ての患者のサブタイプ及び重篤度は、潜在的にクリアランス及び飽和曝露における差異を認めることが予想される場合、類似するPK曝露プロファイルを有した。軽度/中等度の患者のばらつきが、形質細胞指向療法(PCD)に応じた抗体用量、またそれと組み合わせた抗体用量の双方で認められた。
【0191】
固定用量範囲:
体重による固定用量の場合、患者を、25mg/kgを受ける3つの用量群に分けた。
40~70kg - 1750mg/用量
71kg~100kg - 2500mg/用量
>100kg - 2750mg/用量
BSAによる固定用量の場合、患者を、3つの用量群に分けた。
1.15~1.70BSA - 1700mg/用量の固定用量
1.71~2.40BSA - 2400mg/用量の固定用量
>2.41BSA - 2750mg/用量の固定用量
【0192】
BSAは、表10に示すように、複数の方法によって計算した。
【0193】
【0194】
負荷用量レジメン:
Cトラフレベルは、30μg/mL~400μg/mLの範囲であった。
【0195】
それは、肝臓、心臓及び脾臓からの5つのアミロイドサブタイプから、結合数によって決定した。第1b相からのNTproBNPバイオマーカーデータ(100μg/mL)を、GLSデータ(用量>100mg/m2が効果を有した):>30μg/mLと共に使用した。
【0196】
130μg/mLのCトラフを急速に達成する負荷用量が、
1500mg/m2の1用量、
1000mg/m2又は25mg/kgの2qw又は3qw用量
750mg/m2又は18.75mg/kgの4qw用量、
500mg/m2又は12.5mg/kgの6qw用量
によって達成できることが確立され、これは、固定用量を含む全ての用量レベルについて4qw用量をカバーした。
【0197】
維持用量レジメン
維持用量レジメンは、
BSA及び体重ベースの全ての用量についてq2w用量をカバーし、
1375mg/m2についてq4wをカバーし、
1000mg/m2又は25mg/kgについてq3w及びq4wをカバーし、
750mg/m2又は18.75mg/kgについてq3wをカバーする
ように確立された。
【0198】
PCDと組み合わせた用量レジメン
抗体は曝露に対する影響無しで組み合わせて安全に投与できることが更に確立された。抗体を最初に投与し、そして正常な好中球及び単球を維持した上で用量を変更することが理想的であることが見出された。
【0199】
この発見は、作用機構に基づく抗体及びドキシサイクリンの併用投与により、より良好な臓器応答を得ることができるという仮説に基づく。抗体は、毒性軽鎖、プロトフィブリル、フィブリル及びアミロイドを除去し、アミロイドは、細胞外マトリックスを有する臓器内で形成する一方で、ドキシサイクリンは、マトリックスメタロプロテアーゼを阻害し、細胞外マトリックスを阻止し、抗体のアミロイド及びN末端エピトープへの一層の接近を可能にする。
【0200】
CARES臨床プログラムは、2つの並行二重盲検無作為化イベント主導型グローバル第3相試験から構成され、そこでは、新規にALアミロイドーシスと診断され、標準療法(SoC)治療(シクロホスファミド-ボルテゾミブ-デキサメタゾン(CyBorD)化学療法)を経験していないALアミロイドーシス患者における抗体の有効性及び安全性を評価している。1つの試験では、約267名のMayoステージIIIa疾患を有する患者を登録しており[抗体+CyBorD(n=178)及びプラセボ+CyBorD(n=89)]、1つの試験では約111名のMayoステージIIIb疾患を有する患者を登録している[抗体+CyBorD(n=74)及びプラセボ+CyBorD(n=37)]。試験は、北米、イギリス、ヨーロッパ、イスラエル、日本、及びオーストラリアにわたる約70の施設で実施される。各試験において、参加者は、4週間にわたって毎週1回、抗体+SoC又はプラセボ+SoCのいずれかを受けるように、2:1の比で無作為化されている。これに、試験1で最低54例の死亡及び試験2で最低77例の死亡が現れるまで(最低12カ月の治療期間が予想される)、2週間毎に投与される維持用量が続くことになる。患者は、12週間毎にフォローアップ訪問を継続することになる。主要な試験目的は、全生存、及び抗体の安全性と忍容性である。主要な副次目的は、6分間歩行試験(6MWT)、生活の質尺度(カンザスシティ心筋症質問票全体スコア及びショートフォーム36バージョン2の身体コンポーネントスコア)及び心臓改善(グローバル縦ひずみ、又はGLS)における機能的改善を評価することである。
【0201】
患者のベースライン特徴及び人口統計を表11に示す。少なくとも、試験1では患者13人中9人(69.2%)、試験2では患者39人中23人(59%)に、抗PCD療法と同時に少なくとも4用量のCAEL-101が投与された。
【0202】
これらの進行中の試験では、心臓AL-A患者のアミロイド負荷を軽減するファーストインクラス治療としてのCAEL-101の有効性及び安全性を評価する。注目すべきことは、試験1(MayoステージIIIb)は、この重症患者集団における薬理学的効果を正式に評価する、初めての無作為化、プラセボ対照の有効性臨床試験である点である。MayoステージIIIb患者の予想生存期間中央値がMayoステージIIIa患者より遥かに短いため、MayoステージIIIB試験に必要な得られるサンプルのサイズは、MayoステージIIIA試験(患者267人)より少なくなる(患者111人)。重要なのは、これらの研究は2012Mayoステージ分類システムに基づいてステージIII及びIVと同定された患者を含むことである(Kumar, S. et al., J. Clin. Oncol., 30:989 95, 2012)。
【0203】
(表11)患者ベースライン特徴及び人口統計
略語:eGFR、推定糸球体濾過率。NT-proBNT、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド。SD、標準偏差。
【0204】
実施例4
ALアミロイドーシスを有する患者における、抗形質細胞異常増殖症療法と併用する抗体の安全性及び忍容性:非盲検第2相試験からの1年の結果
軽鎖(AL)アミロイドーシスは、形質細胞異常増殖症(PCD)によって引き起こされる稀な全身性疾患である。過剰な免疫グロブリン軽鎖は、ミスフォールドし、臓器、主に心臓に沈着する不溶性のアミロイドフィブリルを形成する。生存期間は、心臓合併症の程度に大きく依存する。現在の療法は、PCDを標的としてフィブリル形成を停止させるが、臓器に沈着した既存のフィブリルは処置しない。第2相試験では、患者が、標準治療(SOC)としての抗PCD療法と併用して、最大1000mg/m2の抗体の毎週の注入で治療され、この用量の忍容性が高く、第3相に適切であることが実証された。SOCと共に投与されるCAEL 101の長期安全性及び忍容性を評価した。
【0205】
ALアミロイドーシスが診断確定され(MayoステージI、II、IIIa)、最低余命が6カ月で、測定可能な血液疾患を持つ成人患者は、この進行中の非盲検第2相試験(NCT04304144)の対象となった。MM、仰臥位収縮期血圧<90mm Hg、又は症候性起立性低血圧の患者は除外された。抗PCDが必要でなくなると治験担当医師が判断するまで、全ての患者がSOC抗PCD療法と共に隔週で1000mg/m
2の抗体を受けた(
図9)。安全性評価は、治療下で発現した有害事象(TEAE)、臨床検査、心電図、バイタルサイン、及び身体検査を含んだ。薬物動態エンドポイントは、次の投与前のCAEL-101の最大血清濃度(C
max)及び最小血清濃度を含んだ(C
トラフ)。探索的エンドポイントは、心機能(心筋トロポニンT[cTnT]及びN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド[NT-proBNP])、腎機能(推定糸球体濾過率[eGFR]及びタンパク尿)及び遊離軽鎖(FLC)の変化を含んだ。免疫原性の評価も行った。
【0206】
初期の長期結果は、一部の患者が1年間治療を受けたときに評価した。その時点で、25人の患者の平均年齢は65.2歳(47~80歳の範囲)であり、大部分が男性(72.0%)であった。MayoステージI(8.0%)、II(76.0%)、及びIIIa(16.0%)は、登録患者の広範な疾患重篤度を反映し、20人(80.0%)が心臓合併症を呈し、9人(36.0%)が腎臓合併症を呈し、20人(80.0%)が事前の抗PCD療法を受けていた。24人(96.0%)の患者がTEAEを発現したが、治療に関連する可能性のあるTEAEを発現したのは6人(24.0%)のみであった(表12)。8人(32.0%)の患者がグレード3以上のTEAEを少なくとも1つ発現し、7人(28.0%)が重篤な有害事象を少なくとも1つ発現した。中止は3件(12.0%)あった。敗血症性肺炎による死亡が1件(治験担当医師は抗体とは無関係と判断)、心臓移植が1件、及び同意を撤回した患者が1件であった。最も一般的なTEAEは、吐き気(9人[36.0%])、便秘(8人[32.0%])、及び下痢、疲労、又は発疹(それぞれ7人[28.0%])を含んだ。
【0207】
【0208】
シクロホスファミド-ボルテゾミブ-デキサメタゾン(CyBorD)の抗PCD併用治療へのダラツムマブ(n=12)の追加は、抗体の薬物動態プロファイル又は忍容性プロファイルを改変しなかった。心臓の評価可能な患者が20人である。全体的に、20人中18人(90%)の現在心臓評価可能な患者(ベースラインNT-proBNP≧332ng/L及び初回用量後NT-proBNP値≧1)が、最後の評価可能な時点で改善を示したか又は病勢安定であった。7人(35.0%)が奏効し(ベースラインから≧30%のNT-proBNP減少)、11人(55%)がベースラインから安定している(ベースラインから±30%の変化)。単一施設での治験担当医師が判定したところ、腎臓の評価可能な患者が同様のタンパク尿応答を示した。腎臓の評価可能な患者は9人である。全体的に、9人中8人(88.9%)のベースラインでの腎機能障害の現在の患者が、腎臓応答を示した(単一施設での治験担当医師が判断)。腎臓応答は、治療後のタンパク尿の≧30%の減少として定義した。3人の患者において、タンパク尿は<0.5g/24hに減少した。
【0209】
この現在進行中の試験では、心臓ALアミロイドーシスを有する患者のアミロイド負荷を軽減する治療として抗PCD SOCと共に投与される抗体の長期安全性及び忍容性を評価する。抗体は、抗PCD療法と共に投与されるときに忍容性が高い。観察されたTEAEの殆どは、軽度~中等度の重篤度であり、介入を必要としていなかった。ダラツムマブを抗PCDレジメンに追加した場合、忍容性又は抗体への曝露に有意な差はなかった。心臓及び腎臓の応答バイオマーカーの改善は、試験開始時にそれぞれ心臓又は腎臓合併症を呈した患者の殆どで観察された。
【0210】
約1年後、ALアミロイドーシス治療戦略の一環としての抗体は、忍容性が高いことが実証される。この最新の報告は、抗体と抗PCDとの併用についてのこれまでの知見を裏付ける。
【0211】
試験に登録された全てのALアミロイドーシス患者が、初期にシクロホスファミド-ボルテゾミブ-デキサメタゾン(CyBorD)±ダラツムマブと共に投与されたCAEL-101の治療を1年間受けた後、安全性、忍容性、及びバイオマーカーデータを再評価した。
【0212】
治験担当医師の指示により、1000mg/m2以下のCAEL-101を抗PCD療法と共に隔週で投与した。安全性評価に加えて、心臓及び腎臓応答をそれぞれN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)及びタンパク尿の経時的変化によって評価した。
【0213】
この分析では、MayoステージI(8%)、II(76%)、及びIIIa(16%)のALアミロイドーシスを有する患者(n=25。平均年齢65歳、72%男性)がCAEL-101で1年間治療された。患者は心臓合併症(n=22)、腎臓合併症(n=9、1施設からの報告)を示し、事前の抗PCD療法(n=20)を受けていた。25人の患者全員が治療下で発現した有害事象(TEAE)を発現し、6人(24%)が治療に関連する可能性のあるTEAEを発現した。5人の患者が治療に関連しない理由で中止した(表13)。15人(60%)の患者がグレード3以上の重篤度のTEAEを発現し、13人(52%)が1つ以上の重篤な有害事象(SAE)を発現した。最も一般的なTEAEは、吐き気(n=10)、便秘又は疲労(それぞれn=9)、貧血、不眠、又は下痢(それぞれn=8)、及びめまい、咳、又は発疹(それぞれn=7)であった。
【0214】
図11に示すように、22人の心臓評価可能な患者のうち、全ての登録患者が1年間のCAEL-101治療を受けた後、10人(46%)の患者がベースラインからの≧30%のNT-proBNP減少を経験し、4人(18%)が病勢安定であり(ベースラインからの±30%の変化)、3人(14%)が疾患の進行を示し(ベースラインからの≧30%のNT-proBNP増加)、5人の患者についてのデータが未記入であった。9人の腎臓評価可能な患者のうち、8人がベースラインからの≧30%のタンパク尿減少を示した。
【0215】
CAEL-101の長期安全性評価は、この試験でも継続する。現在登録されている全ての患者は、少なくとも1年間治療を受けている。この1年の時点で、CAEL-101は、臓器毒性の証拠なく一般に忍容性が高くなっている。臓器応答は、抗PCD治療の休止後でも持続する。TEAEの殆どは軽度~中等度である。心臓ALアミロイドーシス欧州改良版MayoステージIIIa及びIIIbにおけるCAEL-101の有効性及び安全性を評価するために、第3相プログラムが開始されている。
【0216】
(表13)1年間のCAEL-101治療後の、治療下で発現した有害事象及び中止のまとめ
【0217】
実施例5
抗体の臓器応答
開示される抗体の投与は、腎機能のいくつかの改善を示した。患者7人が腎臓合併症を有し、全員が臓器応答を有した。
【0218】
特に、部分奏効(PR)を有する患者1人が、後に病勢安定(SD)に戻った。これにも関わらず、患者は、現在、進行中の深刻化する腎臓応答を有し、抗形質細胞療法における変化を伴わない、24時間タンパク尿の76%の減少を示した。中央値は、臓器応答まで56日であった。
【0219】
開示される抗体の投与は、いくつかの心臓応答を示した。8人中3人の評価可能な患者を新規に診断し、彼らのNT-proBNPは、CyBorD療法の最初の3か月以内に増加を示している。患者8人中1人が、NT-proBNP基準で心臓応答を達成した。
【0220】
実施例6
1000mg/m2で投与された開示される抗体は、上記の進行中の無作為化二重盲検第3相試験における、CyBorDと組み合わせた推奨用量である。特に腎臓における臓器応答は、再発性患者であっても一般的であった。患者1人のみは、抗形質細胞療法における変化が必要であることが理由で、もはや試験中でない。たとえ進行中の血液学的(部分奏効)PRを伴わなくても、有意に臓器応答が認められている。
【0221】
実施例7
免疫グロブリン軽鎖アミロイドーシスに対するダラツムマブベースの治療
新たにALアミロイドーシスと診断された患者を対象としたこの第3相試験では、ダラツムマブと、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、及びデキサメタゾンとの併用皮下投与により、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、及びデキサメタゾン単独よりも血液学的完全奏効の頻度が有意に高かった。ダラツムマブ群では、血液学的奏効がより深く、より迅速に発生した。
【0222】
全ての患者は、6つの28日サイクルのそれぞれにわたって毎週1回、1.3mg/m2の体表面積の用量でボルテゾミブを皮下投与され、300mg/m2の用量でシクロホスファミドを経口又は静脈内投与され(最大毎週用量500mg)、及び40mgの用量でデキサメタゾンを経口又は静脈内投与された。70歳以上の、低体重(体格指数[体重キログラムを身長メートルの二乗で割った値]<18.5)の、又は血液量過多症、コントロール不良の糖尿病、若しくは以前にグルココルチコイド療法に関連する許容できない副作用を有した患者について、デキサメタゾンは、彼らの医師の判断により、毎週20mgの用量で投与できる。ダラツムマブ群に割り当てられた患者は、疾患の進行、後続療法の開始、又は試験開始から最大24サイクルのいずれかが発生(先後を問わず)するまで、組換えヒトヒアルロニダーゼPH20と共製剤化された15mL当たり1800mgのダラツムマブを、サイクル1及び2において毎週、サイクル3~6において2週間毎に、その後4週間毎に皮下投与された。
【0223】
合計388人の患者(ダラツムマブ群195人、対照群193人)が無作為化を受けた。ベースラインでの患者の人口統計的特徴及び臨床的特徴について群間でバランスをとった(表14)。年齢の中央値は64歳であり(34~87歳の範囲)、診断からの期間の中央値は、43日であった(5~1611日の範囲)。障害された遊離軽鎖レベルと障害されていない遊離軽鎖レベルの間のベースライン差の中央値は、1リットル当たり187mgであった(1~9983の範囲)。合計254人の患者(65.5%)が、2つ又はそれ以上の臓器合併症を有し、患者の71.4%が心臓合併症を有し、59.0%が腎臓合併症を有した。患者の大部分(76.8%)が心臓ステージII又はそれ以上と分類された。無作為化を受けた患者388人のうち、381人(ダラツムマブ群193人、対照群188人)が少なくとも1用量の試験治療を受けた。一次分析の臨床データカットオフ時点で(2020年2月14日)、ダラツムマブ群の患者合計52人(26.9%)及び対照群の患者合計68人(36.2%)が、プロトコル規定の治療完了前に介入を中止した。対照群では、121人の患者(64.4%)がプロトコルに指定されたように6サイクルの治療を受けた。ダラツムマブ群では、159人の患者(82.4%)が6サイクルの試験治療を完了し、149人(77.2%)が該6つの治療サイクルを完了した後に単剤ダラツムマブ皮下投与を継続した。分析時点で、患者195人中141人(72.3%)がダラツムマブの投与を継続していた。ダラツムマブ群と対照群の間で用量減量は同様であった(シクロホスファミド、それぞれ17.6%及び13.8%。ボルテゾミブ、25.9%及び19.7%。デキサメタゾン、27.5%及び27.7%。ダラツムマブ用量減量は許可されなかった)。療法期間の中央値は、ダラツムマブ群で9.6カ月、対照群で5.3カ月であった。
【0224】
(表14)ベースラインでの患者の人口統計的特性及び疾患特性(治療意図のある集団)
【0225】
中央値11.4カ月のフォローアップ(0.03~21.3の範囲)で、ダラツムマブ群の患者104人(53.3%)及び対照群の患者35人(18.1%)が、血液学的完全奏効を示した(表15)。この差は有意であった(相対リスク比、2.9。95%信頼区間[CI]、2.1~4.1。オッズ比、5.1。95%CI、3.2~8.2。両方の比較でP<0.001)。事前に指定されたサブグループにおける、血液学的完全奏効を有する患者のパーセンテージは、ダラツムマブ群で一貫した効果を示した(
図9)。6カ月での血液学的完全奏効のランドマーク分析は、全体的な血液学的完全奏効と一致するパーセンテージを示した(ダラツムマブ群49.7%対対照群14.0%。相対リスク比、3.5。95%CI、2.4~5.2。オッズ比、6.1。95%CI、3.7~10.0。両方の比較でP<0.001)。血液学的完全奏効までの時間の中央値は、ダラツムマブ群で60日であり、対照群で85日であった。非常に良好な血液学的部分奏効又はそれ以上を有した患者のパーセンテージは、ダラツムマブ群で78.5%であり、対照群で49.2%であった(相対リスク比、1.6。95%CI、1.4~1.9。オッズ比、3.8。95%CI、2.4~5.9)。1リットル当たり20mg又はそれ以下の障害された遊離軽鎖レベルは、対照群よりダラツムマブ群の患者において頻繁に観察された(70.5%対20.2%)。1リットル当たり10mg未満の障害された遊離軽鎖レベルと障害されていない遊離軽鎖レベルの間の差で同様の結果が観察された(63.3%対29.5%)(表15)。心臓応答を評価可能な患者のうち(ダラツムマブ群118人、対照群117人)、6カ月で心臓応答を有したパーセンテージは、ダラツムマブ群で41.5%であり、対照群で22.2%であった(表15)。6カ月での心臓進行は、それぞれ患者の2.5%及び7.7%において観察された。腎臓応答を評価可能な患者のうち(ダラツムマブ群117人、対照群113人)、6カ月で腎臓反応を有したパーセンテージは、ダラツムマブ群で53.0%であり、対照群で23.9%であった(表15)。6カ月での腎臓進行は、それぞれ患者の4.3%及び11.5%において観察された。主要臓器の悪化も血液学的進行もない生存期間は、対照群よりダラツムマブ群の方が長かった(主要臓器の悪化、血液学的進行、又は死亡の、ハザード比、0.58。95%CI、0.36~0.93。P=0.02)(
図10)。血液学的進行は、ダラツムマブ群で患者8人(4.1%)、対照群で患者25人(13.0%)において発生した。主要臓器の悪化も血液学的進行も後続治療もない生存期間はまた、対照群よりダラツムマブ群の方が長かった(主要臓器の悪化、血液学的進行、後続治療、又は死亡の、ハザード比、0.39。95%CI、0.27~0.56)。
【0226】
(表15)6カ月での全体的な確認された血液学的奏効並びに心臓及び腎臓応答のまとめ
【0227】
ダラツムマブ群で患者193人中合計19人(9.8%)、対照群で患者188人中合計79人(42.0%)が、非交差耐性の後続療法を受けた。非交差耐性の後続療法を受けた対照群の患者79人のうち、48人(61%)が、単独療法又は他の療法との併用療法として、ダラツムマブを静脈内投与された。ダラツムマブ群で患者193人中合計13人(6.7%)、対照群で患者188人中合計20人(10.6%)が後続の自家幹細胞移植を受けた。この分析の時点、全体的な生存期間は、両群間で実質的に差はなかった。
【0228】
結果によると、新たにALアミロイドーシスと診断された患者、及びボルテゾミブ、シクロホスファミド、及びデキサメタゾンへのダラツムマブの追加が、より高い頻度の血液学的完全奏効と、主要臓器の悪化も血液学的進行もない生存期間とに関連することが示された。ダラツムマブ群では、血液学的奏効がより深く、より迅速に発生した。新にALアミロイドーシスと診断された患者を対象としたこの将来を見越した無作為化された試験では、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、及びデキサメタゾンへの皮下投与ダラツムマブの追加により、有意に良好な転帰がもたらされた。
【0229】
実施例8
第3相試験
表16は、更なる第III相試験の、配列番号1に示す重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に示す軽鎖可変ドメイン(VL)を有する本明細書に開示されるCAEL-101抗体における用量を評価するための人口統計的特徴及びベースライン特徴を提供する。結果は、範囲(最小/最大)及び中央値用量を示すが、例えば、中央値用量は、25.6mg/kgであり、範囲は19.8~31.1mg/kgであり、患者の大多数は、22~28mg/kgを受けた。
【0230】
【0231】
実施例9
MAYOステージIIIa又はステージIIIBのALアミロイドーシスを有する患者における抗体を評価する第3相試験
生存期間の延長を目指す心臓アミロイド(CARES)試験の設計は、MayoステージIIIa又はステージIIIbのALアミロイドーシスを有する患者における本明細書に開示される抗体を評価する2つのプラセボ対照、二重盲検、無作為化、国際第3相試験であった。抗体は、配列番号1に示す重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に示す軽鎖可変ドメイン(VL)を有する。この試験の目的は、PCD単独治療と比較して、治療未経験のMayoステージIIIb(NCT04504825。試験301)又はIIIaのALアミロイドーシス(NCT04512235。試験302)を有する患者において、PCD治療と併用した抗体が全生存期間を改善するか否かを判定することであった。
【0232】
背景として、ALアミロイドーシスは、モノクローナル形質細胞異常増殖症(PCD)によるアミロイド形成性免疫グロブリン(Ig)軽鎖の過剰産生に起因する、稀で重篤な進行性の全身性障害である。これらのアミロイド形成性軽鎖は、ミスフォールドし、複数の臓器に沈着して進行性臓器機能障害/損傷及び死亡を引き起こす不溶性のアミロイドフィブリルとして凝集する。ALアミロイドーシス患者の予後は、形質細胞クローンのサイズ及び組織中、特に心臓中のアミロイド負荷に依存する。例えば、高レベルの心臓トロポニンT(cTnT)及びN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)を特徴とする広範な心臓合併症を有する患者は、予後が不良である。MayoステージIIIa及びIIIbのALアミロイドーシス患者の生存期間の中央値は、それぞれ24カ月及び4カ月である。殆どの患者について、標準治療(SoC)は、病的な形質細胞増殖を抑制し、アミロイド形成性遊離軽鎖の生成を停止し、新しいアミロイドフィブリルの沈着及び更なる臓器衰退を予防する抗PCD療法である。しかし、既に沈着したフィブリルの除去を誘導し臓器機能を回復する療法に対する重大なニーズが存在する。抗線維化剤は、アミロイドフィブリルの分解を促進することで、組織アミロイド負荷を軽減し、全生存期間及び生活の質(QoL)を向上させるように設計される。
【0233】
本明細書に記載の抗体はアミロイドフィブリル中のミスフォールドIg軽鎖に結合するモノクローナル抗体であり、組織及び臓器からフィブリルを除去するように設計される。他の実施例で述べたように、CAEL-101(抗PCD SoCの併用の有無に関わらず)は、一般に、第1及び第2相試験において最大1000mg/m2まで良好な忍容性を示す。第2相データ(NCT04304144)は、シクロホスファミド-ボルテゾミブ-デキサメタゾン(CyBorD)と併用するCAEL-101の長期使用(中央値最大49週間)、及びそのCyBorD及びダラツムマブとの同時使用が、一般に、忍容性が高いことを示す。心臓及び腎臓機能障害を有する一部の患者のベースラインでの心臓及び腎臓バイオマーカーを評価したところ、心臓及び腎臓疾患の改善が示唆される。
【0234】
【0235】
患者はALアミロイドーシスステージIIIb又はIIIa(2004年のMayoステージ分類に対する2013年の欧州改良版に基づく)を有する治療未経験の成人であり、該患者は、PCDに対して計画された第1選択治療が、SoCとして施されるCyBorDベースのレジメンであるものが適格である(表18)。50ng/Lの閾値における高感度トロポニンT(hs-TnT)の追加基準が含まれた。
【0236】
(表18)
a35ng/LのcTnTは、50ng/L.11のhs-TnTに外挿できる。
bcTnT(Mayoステージ分類システムの欧州改良版においてng/mLとして報告される)は、心臓応答の予後バイオマーカーとして使用できるhs-TnTの単位との一貫性を維持するためにng/Lに変換されている。
cTnT、心臓トロポニンT。hs-TnT、高感度トロポニンT。NT-proBNP、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド。
【0237】
これらの国際的な多施設共同二重盲検無作為化第3相試験は、2020年に開始され、14か国(カナダ、米国、英国、ベルギー、フランス、スペイン、イタリア、ギリシャ、ドイツ、ポーランド、イスラエル、ロシア連邦、日本、オーストラリア)における70超の施設での患者を登録している。
【0238】
スクリーニングは、最長28日かかった。その後、MayoステージIIIb(N=111)及びIIIa(N=267)の患者が、4週間にわたる、1000mg/m2での本明細書に記載の抗体の毎週1回の静脈内注入又はプラセボの静脈内注入、及びそれに続く2週間毎の維持投与を受けるために、2:1に無作為化された。試験301(ステージIIIb)では、抗体+SoC抗PCD治療群の患者が74人であった。試験302(ステージIIIa)では、抗体+SoC抗PCD治療群の患者が178人であった。試験301(ステージIIIb)では、プラセボ+SoC抗PCD治療群の患者が37人であった。試験302(ステージIIIa)では、プラセボ+SoC抗PCD治療群の患者が89人であった。患者は、SoCの直観的なプロトコルに従って抗PCD療法を同時に受けた。治療の最小期間は、≧50週間(12カ月)又は患者の死亡までと計画された。これらはイベント主導型の試験であるため、治療は、試験301で最小54例の死亡、試験302で最小77例の死亡まで継続された。患者は、何らかの原因で死亡するまで、又は試験の終了まで、経過観察された。
【0239】
主要エンドポイントは全生存期間であり、無作為化から死亡日までの期間と定義され、最後に判明した生存日で打ち切られた(全生存期間は事象までの時間のログランク統計を使用して分析する)。主な副次的エンドポイントは、6MWT(6分間歩行試験)で測定された機能状態、GLS%(グローバル縦ひずみ)で測定された心機能、KCCQ-OS(カンザスシティ心筋症質問票、全体スコア)で測定された生活の質、SF-36v2(ショートフォーム36バージョン2)で測定された生活の質、及び様々な安全性指標といったタスクに関する、ベースラインから50週目(12カ月/1年)までの変化であった。安全性指標は、TEAE(治療下で発現した有害事象)、臨床検査[NT-proBNP、cTnT、遊離軽鎖(FLC)、薬物動態(PK)の変化]、免疫原性検査、身体検査及びバイタルサイン、及び12誘導心電図を含んだ。患者のサブセットは、選択されたセンターで肝臓と脾臓の追加の視覚化を伴う心臓の造影MRI(磁気共鳴イメージング)を受けた。14週目から開始し、患者が12週間毎に安全性測定値、6MWT、及びQoL質問票の変化について評価された。患者は、グローバル縦ひずみ(GLS)測定のための心エコー検査を受け、タンパク質評価のために24時間尿が収集・分析された。ベースラインでの患者人口統計を表19に示す。ベースラインでの疾患特性を表20に示す。
【0240】
【0241】
(表20)
eGFR、推定糸球体濾過率。hs-TnT、高感度トロポニンT。NT-proBNP、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド。
【0242】
高レベルの心臓バイオマーカー及び低いeGFRは、広範な心臓及び/又は腎臓合併症を示す。
【0243】
NT-proBNPレベルは、MayoステージIIIaの患者では332pg/mLの閾値を上回り(試験302)、MayoステージIIIbの患者では8500pg/mLの閾値を上回った(試験301)。少なくとも、試験301では患者19人中14人(74%)、試験302では患者58人中47人(81%)が、少なくとも4用量の本明細書に記載の抗体と抗PCD療法とを同時に受けていた。
【0244】
これらの進行中の試験では、心臓ALアミロイドーシス患者のアミロイド負荷を軽減するファーストインクラス治療としての本明細書に記載の抗体の有効性及び安全性を評価する。心臓磁気共鳴イメージング(MRI)サブ試験への参加に同意した患者のサブセットは、選択されたセンターで肝臓及び脾臓の追加の視覚化を伴う心臓の造影MRIを受けた。適切な疾患管理及び最適な治療成果は、正確な予後情報が利用可能な場合にのみ達成できる。試験301及び302における患者分類は、2004年のMayoステージ分類システムに対する2013年の欧州改良版に基づくものであり、該システムは、重篤度の低い患者と広範な心臓合併症及びより高い死亡率リスクを有する重症患者とを区別する際に、他の病期分類システムと比較して堅牢で精度がより高い。注目すべきことは、MayoステージIIIbでの試験301は、この重症患者集団における薬剤の効果を正式に評価する初めての無作為化プラセボ対照有効性臨床試験である点である。
【0245】
本開示は、上記実施例を参照して記載されているが、修飾及び変形が本開示の精神及び範囲内に包含されることは理解されるであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲のみによって限定される。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】