IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中▲るい▼鄭州有色金属研究院有限公司の特許一覧

特表2024-535133高強度電磁シールド銅合金およびその製造方法
<>
  • 特表-高強度電磁シールド銅合金およびその製造方法 図1
  • 特表-高強度電磁シールド銅合金およびその製造方法 図2
  • 特表-高強度電磁シールド銅合金およびその製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】高強度電磁シールド銅合金およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 9/00 20060101AFI20240918BHJP
   C22C 9/06 20060101ALI20240918BHJP
   C22F 1/08 20060101ALI20240918BHJP
   B22D 27/02 20060101ALI20240918BHJP
   B22D 21/00 20060101ALI20240918BHJP
   C22C 1/02 20060101ALI20240918BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C22C9/00
C22C9/06
C22F1/08 Q
B22D27/02 V
B22D21/00 B
C22C1/02 503B
C22F1/00 624
C22F1/00 630A
C22F1/00 660Z
C22F1/00 661A
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685
C22F1/00 686A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 694A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541124
(86)(22)【出願日】2023-04-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 CN2023090491
(87)【国際公開番号】W WO2023207943
(87)【国際公開日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】202210473077.5
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524107414
【氏名又は名称】中▲るい▼鄭州有色金属研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHENGZHOU NON-FERROUS METALS RESEARCH INSTITUTE CO., LTD. OF CHALCO
【住所又は居所原語表記】No. 82 Jiyuan Road, Shangjie District, Zhengzhou, Henan 450041, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 冬生
(72)【発明者】
【氏名】劉 丹
(72)【発明者】
【氏名】陳 開斌
(72)【発明者】
【氏名】張 旭貴
(72)【発明者】
【氏名】張 亜楠
(72)【発明者】
【氏名】張 芬萍
(72)【発明者】
【氏名】王 慧瑶
(57)【要約】
本発明は、高強度電磁シールド銅合金及びその製造方法に関し、銅合金の技術分野に属する。該合金の化学組成は、質量%でFe3~9%、Ni2~5%、Al0.2~0.5%、希土類金属0.01~0.20%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる。異なる合金元素の添加によって銅合金における鉄元素の溶解度を効果的に向上させ、銅合金の強度及び電磁シールド性能を向上させ、電磁シールド性能>110dB、導電率>50%IACS、引張強度>950MPaの高強度電磁シールド銅合金が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度電磁シールド銅合金であって、
化学組成が質量%で、Fe3~9%、Ni2~5%、Al0.2~0.5%、希土類金属0.01~0.20%、残部Cuおよび不可避的不純物からなることを特徴とする高強度電磁シールド銅合金。
【請求項2】
前記希土類金属は、銅ランタン合金、銅セリウム合金、及び銅イットリウム合金のうちのいずれか一つまたは複数の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の高強度電磁シールド銅合金。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高強度電磁シールド銅合金の製造方法であって、
前記銅合金の化学組成に合わせて原料を配置するステップと、
前記原料を真空溶解して銅合金液を得るステップと、
前記銅合金溶液を鋳込みしてインゴットを得るステップと、
前記インゴットを電磁攪拌して銅合金丸棒を得るステップと、
前記銅合金丸棒を電極として真空アーク再溶解を行い、均質化インゴットを得るステップと、
前記均質化インゴットを鍛造、熱間圧延および冷間圧延してスラブを得るステップと、
前記スラブを時効処理して前記高強度電磁シールド銅合金を得るステップと、を含むことを特徴とする高強度電磁シールド銅合金の製造方法。
【請求項4】
前記真空溶解の前に、真空溶解炉の真空度を10-3Paに予備抽出し、その後、前記真空溶解炉の真空度が0.1Pa~0.9Paになるようにアルゴンガスを充填することを特徴とする請求項3に記載の高強度電磁シールド銅合金の製造方法。
【請求項5】
前記インゴットを5~20秒間静置した後、前記電磁攪拌を行うことを特徴とする請求項3に記載の高強度電磁シールド銅合金の製造方法。
【請求項6】
前記電磁攪拌は、正回転と逆回転を交互に行い、前記電磁攪拌の攪拌周波数は5~30Hzであり、前記電磁攪拌の電流は200~300Aであることを特徴とする請求項3に記載の高強度電磁シールド銅合金の製造方法。
【請求項7】
前記真空アーク再溶解の圧力は0.1~5Paであり、前記真空アーク再溶解のアーク長は25~80mmであることを特徴とする請求項3に記載の高強度電磁シールド銅合金の製造方法。
【請求項8】
前記銅合金丸棒を電極として使用するとき、前記銅合金丸棒の周りに50~100mmのギャップ層が残ることを特徴とする請求項3に記載の高強度電磁シールド銅合金の製造方法。
【請求項9】
前記熱間圧延の開始温度は1000~1020℃であり、前記熱間圧延の終了温度は830~850℃であり、前記熱間圧延の歪み率は60%以上であり、前記冷間圧延の歪み率が45~60%であることを特徴とする請求項3に記載の高強度電磁シールド銅合金の製造方法。
【請求項10】
前記時効処理の温度は250~300℃であり、前記時効処理の時間は24~72時間であることを特徴とする請求項3に記載の高強度電磁シールド銅合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅合金の技術分野に関し、特に高強度電磁シールド銅合金及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高強度電磁シールド銅合金は、導電率が高く、放熱性が良く、電磁シールドの性能を有し、主に超LSIリードフレーム、高効率広帯域5G通信機器、国防軍工装備の電子逆探装置、レーダー、大電力マイクロ波電子管、高パルス磁界導体等に適用され、幅広い有望性を有しているため、極めて注目を集めている。
【0003】
従来の高強度電磁シールド銅合金は、電磁シールド性能自体の向上を目指すのが一般的であるが、電磁シールド性能と強度を同時に向上させることは困難である。この原因として、主に、(1)銅における鉄の固溶度が小さく、余剰の鉄が凝固過程で粗大な鉄相を析出し、鋳物品質を劣化させ、材料性能を低下させること、(2)銅鉄液相が大きな正溶解熱を持ち、液相線で準安定難溶隙間が存在し、鋳物中心とエッジの成分が大きくばらつき、銅鉄合金性能に影響することの2点が挙げられる。このため、高い強度と高い電磁シールド性能とを両立させることが、現在、急務となっている課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術における高強度電磁シールド銅合金の高強度と高電磁シールド性能が両立できないという技術的問題を解決し、高強度電磁シールド銅合金及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、高強度電磁シールド銅合金が提供され、質量%でFe3~9%、Ni2~5%、Al0.2~0.5%、希土類金属0.01~0.20%、残部Cu及び不可避的不純物からなる化学組成を有する。
【0006】
本発明の他の態様によれば、上記の高強度電磁シールド銅合金の製造方法が提供され、原料を配置するステップと、前記原料を真空溶解して、化学成分が前記高強度電磁シールド銅合金の化学成分と同一である銅合金液を得るステップと、前記銅合金液を鋳込みしてインゴットを得るステップと、前記インゴットを電磁攪拌して、銅合金丸棒を得るステップと、前記銅合金丸棒を電極として真空アーク再溶解を行い、均質化インゴットを得るステップと、前記均質化インゴットを鍛造、熱間圧延及び冷間圧延して、スラブ(slab)を得るステップと、前記スラブを時効処理して、前記高強度電磁シールド銅合金を得るステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の実施例における技術的態様をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明するが、以下の図面は本発明の実施例の一部であり、当業者にとって、創造的な労力せずに、これらの図面に基づいて他の図面を獲得することができることは明らかである。
図1】本発明のいくつかの実施形態による方法のフローチャートを示す。
図2】本発明のいくつかの実施形態による銅合金丸棒の金属組織図を示す。
図3】本発明のいくつかの実施形態による金属組織図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の具体的な実施形態及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明することにより、本発明の利点及び様々な効果がより明瞭に示される。当業者にとっては、これらの具体的な実施形態および実施例が、本発明を例示するためのものであり、本発明を限定するものではないことが理解すべきであろう。
【0009】
本明細書全体を通して、特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は、当該技術分野で慣用される意味として理解されるべきである。したがって、特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾がある場合には、本明細書を優先する。
【0010】
本発明で使用される各種の原料、試薬、器具、装置等は、特に説明しない限り、市販品を入手してもよいし、既存の方法で入手してもよい。
【0011】
本発明の代表的な実施形態によれば、質量%でFe3~9%、Ni2~5%、Al0.2~0.5%、希土類金属0.01~0.20%、残部Cu及び不可避不純物からなる化学組成を有する高強度電磁シールド銅合金が提供される。
【0012】
本発明の実施形態は、高強度電磁シールド銅合金を提供するものであり、異なる合金元素の添加によって、銅合金における鉄元素の溶解度を効果的に向上させ、銅合金の強度および電磁シールド性能を向上させる。いくつかの実施形態では、ニッケル元素を添加することで、銅と面心立方格子状の連続固溶体を形成し、強度を向上させるとともに、銅合金における鉄の溶解度を増大させる。さらに、アルミニウム元素を添加することで、ニッケルと化合物を形成し、該化合物の析出硬化作用により合金の強度を大幅に向上させる。さらに、希土類金属を添加することにより、結晶粒を微細化し、粒界面積を増大させ、強度を向上させることができるとともに、磁気反射界面を効果的に増大させて、電磁シールド性能を向上させることができる。
【0013】
上記主要な化学元素及び限定範囲は、詳細に説明する。Feについて、鉄元素は常磁性元素であり、銅合金の低い周波数の電磁シールド効果を著しく高めるとともに、銅の再結晶過程を遅延させて、その強度と硬度を高めることができるが、銅における鉄の溶解度が小さく、1050℃の条件で3.5%に過ぎず、最大固溶度を超えると、合金成分の偏析が激しくなり、銅合金の均一性に影響を与えるだけでなく、材料の強度及び導電性が著しく低下するため、Fe含有量を3~9%に制御する。
【0014】
Niについて、ニッケル元素は、銅と無限固溶の連続固溶体を形成し、面心立方格子を呈し、銅合金の強度を向上させるとともに、銅合金における鉄元素の溶解度を増大させることができ、950℃の条件で、銅ニッケル合金における鉄の溶解度が4.8%拡大し、銅合金の電磁シールド性能および引張強さをさらに向上させる。
【0015】
Alについて、アルミニウム元素はニッケルとNiAl相またはNiAl相を形成し、NiAl相またはNiAl相は銅合金に放射状または網目状に分布し、顕著な析出硬化効果を示し、電磁シールド銅合金の強度を大きく向上させ、そのうち、ニッケル/アルミニウム比が8~10である場合、最適な特性を示すため、Ni含有量を2~5%に、Al含有量を0.2~0.5%に制御する。
【0016】
希土類金属について、希土類元素であるランタン、セリウム、イットリウムは銅にほとんど固溶しないため、希土類元素の添加量が行き過ぎないようにし、少量の希土類金属が溶融ループを浄化し、銅合金鋳物の品質を向上させる効果を有するため、希土類金属の含有量を0.01~0.20%に制御する。
【0017】
いくつかの実施形態では、希土類金属は、銅ランタン合金、銅セリウム合金、および銅イットリウム合金のうちのいずれか1つまたは複数の組合せを含んでよい。
【0018】
上記合金を選択する原因について、希土類元素であるランタン、セリウム、イットリウムは。銅合金の結晶粒を微細化し、粒界面積を増大させ、銅合金の強度を向上させることができるとともに、磁気反射界面を効果的に増大させ、電磁シールド効果を高める一方、希土類元素であるランタン、セリウム、イットリウムが非常に酸化されやすいため、銅ランタン合金、銅セリウム合金、銅イットリウム合金を中間合金として添加する。
【0019】
本発明の他の代表的な実施形態は、上記高強度電磁シールド銅合金の製造方法を提供し、
原料を配置するS1と、
前記原料を真空溶解して、化学成分が前記高強度電磁シールド銅合金の化学成分と同一である銅合金液を得るS2と、
前記銅合金溶湯を鋳込みし、インゴットを得るS3と、
前記インゴットを電磁攪拌し、銅合金丸棒を得るS4と、
前記銅合金丸棒を電極として真空アーク再溶解を行い、均質化インゴットを得るS5と、
前記均質化インゴットを鍛造、熱間圧延および冷間圧延して、スラブを得るS6と、
前記スラブを時効処理して前記高強度電磁シールド銅合金を得るS7と、を含んでいる。
【0020】
上記高強度電磁シールド銅合金の製造方法において、各ステップの作用は、具体的に以下の通りである。真空溶解は、銅合金の溶解におけるガスを除去し、希土類元素の酸化損失を低減し、材料組成の精度を確保するという効果を有する。
【0021】
電磁攪拌は、銅合金の鋳造において、鋳片における鉄元素の成分偏析を低減し、銅合金材成分の均質性を高める効果を有する。電磁攪拌を採用する利点は、銅合金鋳片の内部の等軸晶の形成および成長に有利であり、鋳片の等軸晶率の向上、凝固組織の微細化、介在物分布の改善ができ、成分の均質化が促進されることである。電磁攪拌において、金属溶融物に直接接触せず、銅合金溶湯を汚染しない。
【0022】
真空アーク再溶解は、銅合金鋳片をさらに純化し、不純物元素を除去し、成分偏析を低減し、材料成分の均質性をさらに向上させ、銅合金の強度および電磁シールド性能を向上させる作用を有する。真空アーク再溶解法を用いる利点は、真空下と高温条件下において、消耗電極における酸化物、窒化物等の非金属介在物が解離し、または炭素還元により除去されるため、さらなる精製が可能となることである。また、ガスと非金属介在物、及び低融点の有害不純物の除去が可能なり、縦方向と横方向の性能のばらつきが改善され、材料特性の安定性、均一性が確保され、塑性変形性能、力学的性能、電磁シールド性能等の物性が飛躍的に向上する。
【0023】
時効処理は加工歪を除去し、性能の均一性を向上させる効果を有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記真空溶解の前に、真空度を10-3Paに予備抽出し、次いで、アルゴンを0.1~0.9Paの真空度に充填する。
【0025】
その作用について、予備抽出は、真空溶解炉内の空気を効率よく排気し、酸化を防止するためであるが、真空度が10-3Paに達すると、銅元素の沸点が951℃まで低下し、溶解中に銅が多量に揮発するため、アルゴンガスを真空度0.1~0.9Paまで充填して溶解することで、材料が酸化されないことを保証するとともに、元素の揮発損失を回避することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記インゴットを5~20秒間静置した後に電磁攪拌を行う。
【0027】
静置時間を制御する作用は、静置時間が短すぎると、溶湯過熱度が大きくなりすぎ、ピットが発生しやすく、鋳造欠陥が形成されるが、静置時間が長すぎると、インゴットが完全に凝固し、攪拌効果が発揮できないため、5~20sに制御することである。
【0028】
いくつかの実施形態では、電磁攪拌は、正回転と逆回転とが交互に行われ、電磁攪拌の攪拌周波数が5~30Hzであり、電磁攪拌の電流が200~300Aである。
【0029】
電磁攪拌は、正転と逆転を交互に行うようにすることで、単一モードによるインゴットの内引巣の発生を回避することができる。電磁攪拌の周波数を制御する作用は、この範囲で周波数が高くなるにつれて、電磁攪拌効果が高くなり、結晶粒径の微細化効果がより顕著になることである。5Hz未満の場合、電磁攪拌の周波数が弱すぎ、均質化及び微細化の効果が得られず、30Hzを超える場合、表皮効果及び渦電流効果が顕著になり、結晶粒に溶融成長の傾向があり、電磁攪拌による凝固組織の改善効果が低減することを招く。また、溶融物内の流れが段々強くなる乱流となり、初相分布の均一性、すなわち電磁攪拌による成分偏析の改善効果が低下する。
【0030】
電磁攪拌の電流を制御する原因は、この範囲で電流の増大に伴い、電磁界強度が著しく増大し、銅合金溶湯の流動性が増し、ミクロな温度起伏が大きくなり、成分の均一化に有利である。電流が200A未満場合、鋳物の内部に発生する電磁力が弱く、柱状晶の等軸晶への転換が不十分であり、均質化の効果が不十分であるが、電流が300Aに達し、周波数が適正である場合、続けて電流を増大しても、組織に変化が起こらず、かえって電気エネルギーの無駄を招く。
【0031】
いくつかの実施形態において、真空アーク再溶解の圧力は0.1~5Paであり、前記真空アーク再溶解のアーク長は25~80mmである。
【0032】
真空アーク再溶解の圧力を制御する原因は、炉内圧力がアーク挙動と銅合金の品質に影響を与え、アーク領域の残圧が5Pa以上に増大する場合、グロー放電の臨界圧力領域に達し、アークの燃焼が不安定になり、アークが消滅するおそれもある。
【0033】
アーク長を制御する原因は、アーク長が短すぎる場合、短絡が頻発し、インゴットの品質が低下するが、アーク長が長すぎる場合、アークが移動し、機器を破壊する。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記銅合金丸棒を電極として使用する場合、前記銅合金丸棒の周り側に50~100mmのギャップ層を残す。
【0035】
ギャップ層を残す作用は、安全性を確保する一方、ガス排出のための良好なチャネルを提供することである。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記熱間圧延の開始温度は1000~1020℃であり、前記熱間圧延の終了温度は830~850℃であり、前記熱間圧延の歪み率は60%以上であり、前記冷間圧延の歪み率は45~60%である。
【0037】
いくつかの実施形態において、時効処理の温度は250~300℃であり、時効処理の時間は24~72時間である。
【0038】
実施例1
化学成分の質量%が表1に示される高強度電磁シールド銅合金が提供される。
表1:実施例1の高強度電磁シールド銅合金の化学成分
【0039】
前記高強度電磁シールド銅合金の製造方法は、以下のステップを含む。
【0040】
(1)原料配置
重量%で、鉄4%、ニッケル2%、アルミニウム0.2%、希土類ランタン金属0.05%、残部の銅及びその他の不可避不純物からなる原料を調製し、そのうち、希土類のランタンを銅ランタン中間合金として配合する。
【0041】
(2)真空誘導溶解
原料は、炉に入れる前にスケールと油汚れを除去し、鉄棒、電気銅板、電気ニッケル板の表面を研磨して皮膜を除去し、装入時に架橋を防ぐために上部がきつく、下部が緩く装着され、鉄棒、銅板、ニッケル板を坩堝の下部に入れ、アルミニウムインゴットを坩堝の上部に置き、坩堝の材料をアルカリ坩堝とし、銅ランタン合金を二次装入盤に入れる。その後、鋳型内部をサンドペーパーできれいに研磨し、内壁に離型剤(窒化ホウ素+アルコール)を塗布する。真空炉の蓋を閉め、機械式ポンプ、ルーツ式ポンプを順次開けて真空引きし、10-3Paの真空度に達すると、ルーツ式ポンプ、機械式ポンプを閉めて、アルゴンガスを0.4Paになるように注入して溶解を行う。溶解開始時、40kWの小電力で10分間、60kWで5分間、最後に95kWの大電力で化学洗浄まで給電し、材料溶解過程における架橋を防止する。材料が化学洗浄された後、続けて大電力で給電し、坩堝を2~3回傾動させ、温度が1350℃程度に達すると、電力を40kWまで低下し、この温度で30分程度保持して、合金材料の精錬を行う。精錬期終了後に停電し、降温して皮膜を形成し、停電15分後に、溶融プールの液面に僅かな膜が形成され、この時点で銅ランタン合金をゆっくりと均一に加え、95kWの電力で溶融プールを攪拌し、坩堝を2~3回傾動させ、1300℃まで昇温した場合、10分間保温し、そして、40kWまで電力を下げて温度調整し、温度が1200℃程度になる場合、鋳造を行い、インゴットを得る。
【0042】
(3)電磁攪拌鋳造
鋳造後の銅合金インゴットを10秒間静置して電磁攪拌し、電磁攪拌方向は5秒間正転及び5秒間反転のサイクルで循環し、電磁攪拌電流が200Aであり、電磁攪拌周波数が10Hzであり、銅合金丸棒が得られる。
【0043】
(4)真空アーク再溶解
電磁攪拌、鋳造して得られた銅合金丸棒の皮膜を除去し、これを電極として真空アーク再溶解を行い、電磁シールド銅合金内のガスおよび非金属介在物を除去することで、低融点の有害不純物を除去し、長手方向と幅方向の性能のばらつきを改善し、銅合金の良い一致性、均一な成分及び性能の安定性が確保され、塑性変形性能、力学的性能、電磁シールド性能である物性が著しく改善される。真空アーク溶解の主なプロセス条件として、炉内圧力を1Pa、アーク長を35mm、電極と坩堝とのギャップを60mm、溶解の初期電圧を80kWとし、溶融プールを形成した後、坩堝底部のチル効果を補うために、本溶解期に所定された電力よりも高い120kWまで溶解電力を増加させる。溶解の間、インゴットの頭部の収縮巣及び偏析を最小限にするように、電力を溶解の末期まで90kWに保たれ、最後にホットトッピングが行われ、組成の均質化された均質化インゴットが得られる。
【0044】
(5)塑性変形
均質化されたインゴットを鍛造処理し、所望の寸法の鍛造品が得られる。鍛造後の銅合金に対して、熱間圧延処理や冷間圧延処理を含む圧延変形処理を行い、材料の強度をさらに高める。熱間圧延は、開始温度が950℃であり、終了温度が830~850℃であり、熱間圧延の歪み率を65%に制御する。冷間圧延処理は、冷間圧延の歪み率を50%に制御し、スラブが得られる。
【0045】
(6)時効処理
加工歪みを除去し、性能の均一性を高めるように、スラブに対して時効処理を行い、時効処理温度は250℃であり、時効処理時間は24時間である。
【0046】
実施例2
化学成分の質量百分率が表2に示される高強度電磁シールド銅合金を提供する。
表2:実施例2の高強度電磁シールド銅合金の化学成分
【0047】
上記高強度電磁シールド銅合金の製造方法は、以下のステップを含む。
【0048】
(1)原料配置
重量%で、鉄5.2%、ニッケル3.1%、アルミニウム0.3%、希土類金属であるセリウム0.07%、残部Cu及びその他の不可避不純物からなる原料を調製し、そのうち、希土類のセリウムを銅セリウム中間合金として配合される。
【0049】
(2)真空誘導溶解
原料は、炉に入れる前にスケールと油汚れを除去し、鉄棒、電気銅板、電気ニッケル板の表面を研磨して皮膜を除去し、装入時に架橋を防ぐために上部がきつく、下部が緩く装着され、鉄棒、銅板、ニッケル板を坩堝の下部に入れ、アルミニウムインゴットを坩堝の上部に置き、坩堝の材料をアルカリ坩堝とし、銅ランタン合金を二次装入盤に入れる。その後、鋳型内部をサンドペーパーできれいに研磨し、内壁に離型剤(窒化ホウ素+アルコール)を塗布する。真空炉の蓋を閉め、機械式ポンプ、ルーツ式ポンプを順次開けて真空引きを行い、10-3paの真空度に達すると、ルーツ式ポンプ、機械式ポンプを閉めて、アルゴンガスを0.8paになるように注入して溶解を行う。溶解開始時に、40kwの小電力で10分間、60kwで5分間、最後に95kwの大電力で化学洗浄まで給電し、材料溶解過程における架橋を防止する。材料が化学洗浄された後、続けて大電力で給電し、坩堝を2~3回傾動させ、温度が1380℃程度達すると、電力を40kwまで低下させ、この温度で30分間程度保持して、合金材料の精錬を行う。精錬期終了後に停電し、降温して皮膜を形成し、停電15分間の後に、溶融プールの液面に僅かな膜が形成され、この時点で銅ランタン合金をゆっくりと均一に加え、95kwの電力で溶融ループを攪拌し、坩堝を2~3回傾動させ、1350℃まで昇温した場合、10分間保持し、そして、40kwまで電力を下げて温度調整し、温度が1220℃程度になる場合、鋳造を行い、インゴットが得られる。
【0050】
(3)電磁攪拌鋳造
鋳造後の銅合金インゴットを8秒間静置して電磁攪拌し、電磁攪拌方向は8秒間正転S及び8秒間反転のサイクルで循環し、電磁攪拌電流が300Aであり、電磁攪拌周波数が20Hzであり、銅合金丸棒が得られる。
【0051】
(4)真空アーク再溶解
電磁攪拌、鋳造して得られた銅合金丸棒の皮膜を除去し、これを電極として真空アーク再溶解を行い、電磁シールド銅合金内のガスおよび非金属介在物を除去することで、低融点の有害不純物を除去し、長手方向と幅方向の性能のばらつきを改善し、銅合金の良い一致性、均一な成分及び性能の安定性が確保され、塑性変形性能、力学的性能、電磁シールド性能である物性が著しく改善される。真空アーク溶解の主なプロセス条件として、炉内圧力を0.5Pa、アーク長を40mm、電極と坩堝とのギャップを60mm、溶解の初期電圧を80kwとし、溶融プールを形成した後、坩堝底部のチル効果を補うために、本溶解期に所定された電力よりも高い120kWまで溶解電力を増加させる。溶解の間、インゴットの頭部の収縮巣及び偏析を最小限にするように、電力を溶解の末期まで90kWに保たれ、最後にホットトッピングが行われ、組成の均質化された均質化インゴットが得られる。
【0052】
(5)塑性変形
均質化されたインゴットを鍛造処理し、所望の寸法の鍛造品を得る。鍛造後の銅合金に対して、熱間圧延処理や冷間圧延処理を含む圧延変形処理を行い、材料の強度をさらに高める。熱間圧延は、開始温度を950℃、終了温度を830~850℃、熱間圧延の歪み率を68%に制御する。冷間圧延処理の歪み率を55%に制御し、スラブが得られる。
【0053】
(6)時効処理
加工歪みを除去し、均一性を高めるように、スラブに対して時効処理を行い、時効処理温度は300℃であり、時効処理時間は24時間である。
【0054】
実施例3
化学成分の質量%が表3に示される高強度電磁シールド銅合金を提供する。
表3:実施例3の高強度電磁シールド銅合金の化学成分
【0055】
上記高強度電磁シールド銅合金の製造方法は、以下のステップを含む。
【0056】
(1)原料配置
重量%で、鉄6.3%、ニッケル4.2%、アルミニウム0.4%、希土類のイットリウム0.03%、残部Cu及びその他不可避不純物からなる原料を調製し、そのうち、希土類イットリウムを銅イットリウム中間合金として配合される。
【0057】
(2)真空誘導溶解
原料は、炉に入れる前にスケールと油汚れを除去し、鉄棒、電気銅板、電気ニッケル板の表面を研磨して皮膜を除去し、装入時に架橋を防ぐために上部がきつく、下部が緩く装着され、鉄棒、銅板、ニッケル板を坩堝の下部に入れ、アルミニウムインゴットを坩堝の上部に置き、坩堝の材料をアルカリ坩堝とし、銅イットリウム合金を二次装入盤に入れる。その後、鋳型内部をサンドペーパーできれいに研磨し、内壁に離型剤(窒化ホウ素+アルコール)を塗布する。真空炉の蓋を閉め、機械式ポンプ、ルーツ式ポンプを順次開けて真空引きを行い、10-3paの真空度に達すると、ルーツ式ポンプ、機械式ポンプを閉めて、アルゴンガスを0.8paになるように注入して溶解を行う。溶解開始時に、40kwの小電力で10分間、60kwで5分間、最後に95kwの大電力で化学洗浄まで給電し、材料溶解過程における架橋を防止する。材料が化学洗浄された後、続けて大電力で給電し、坩堝を2~3回傾動させ、温度が1400℃程度に達すると、電力を40kwまで低下させ、この温度で30分間程度保持して、合金材料の精錬を行う。精錬期終了後に停電し、降温して皮膜を形成し、停電15分間の後に、溶融プールの液面に僅かな膜が形成され、この時点で銅ランタン合金をゆっくりと均一に加え、95kwの電力で溶融プールを攪拌し、坩堝を2~3回傾動させ、1380℃まで昇温した場合、10分間保持し、そして、40kwまで電力を下げて温度調整し、温度が1210℃程度になる場合、鋳造を行い、インゴットが得られる。
【0058】
(3)電磁攪拌鋳造
鋳造後の銅合金インゴットを10秒間静置して電磁攪拌し、電磁攪拌方向は5秒間正転及び5秒間反転のサイクルで循環し、電磁攪拌電流が300Aであり、電磁攪拌周波数が20Hzであり、銅合金丸棒が得られる。
【0059】
(4)真空アーク再溶解
電磁攪拌、鋳造して得られた銅合金丸棒の皮膜を除去し、これを電極として真空アーク再溶解を行い、電磁シールド銅合金内のガスおよび非金属介在物を除去することで、低融点の有害不純物を除去し、長手方向と幅方向の性能のばらつきを改善し、銅合金の良い一致性、均一な成分及び性能の安定性が確保され、塑性変形性能、力学的性能、電磁シールド性能である物性が著しく改善される。真空アーク溶解の主なプロセス条件として、炉内圧力を2Pa、アーク長を35mm、電極と坩堝とのギャップを55mm、溶解の初期電圧を75kwとし、溶融プールを形成した後、坩堝底部のチル効果を補うために、本溶解期に所定された電力よりも高い115kWまで溶解電力を増加させる。溶解の間、インゴットの頭部の収縮巣及び偏析を最小限にするように、電力を溶解の末期まで85kWに保たれ、最後にホットトッピングが行われ、組成の均質化された均質化インゴットが得られる。
【0060】
(5)塑性変形
均質化されたインゴットを鍛造処理し、所望の寸法の鍛造品を得る。鍛造後の銅合金に対して、熱間圧延処理や冷間圧延処理を含む圧延変形処理を行い、材料の強度をさらに高める。熱間圧延は、開始温度を955℃、終了温度を855℃、熱間圧延の歪み率を65%以上に制御する。冷間圧延処理の歪み率を50%に制御し、スラブが得られる。
【0061】
(6)時効処理
加工歪みを除去し、均一性を高めるように、スラブに対して時効処理を行い、時効処理温度は280℃であり、時効処理時間は42時間である。
【0062】
比較例1
重量%でFe20wt%、Ni10wt%、および残部Cuからなる高強度電磁シールド銅合金であり、その製造方法は実施例1と同様である。
【0063】
比較例2
重量%でFe10wt%、Ni10wt%、Re0.1wt%、残部Cuからなる高強度電磁シールド銅合金であり、その製造方法は実施例1と同様である。
【0064】
比較例3
重量%で、Ni25wt%、Al5wt%、および残部Cuからなる高強度電磁シールド銅合金であり、その製造方法は実施例1と同様である。
【0065】
実験例1
実施例1~3及び比較例1~3により提供される高強度電磁シールド銅合金について、それぞれ電磁シールド性能及び引張強さを測定し、その結果を下記の表に示す。
【0066】
以上の表から分かるように、比較例1~3と比べて、本発明の実施例1~3に提供される高強度電磁シールド銅合金は、電磁シールド性能、導電率、引張強さに優れ、電磁シールド性能>110dB、導電率>50%IACS、引張強さ>950MPaとなる。
【0067】
本発明の実施形態に提供される高強度電磁シールド銅合金は、異なる合金元素の添加によって、銅合金における鉄元素の溶解度を効果的に向上させ、銅合金の強度および電磁シールド性能を向上させる。いくつかの実施形態では、ニッケル元素を添加して、銅と面心立方格子状の連続固溶体を形成することによって、強度を向上させるとともに、銅合金における鉄の溶解度を増大させる。さらにアルミニウム元素を添加することにより、ニッケルと化合物を形成し、該化合物の析出硬化作用により合金の強度を大幅に向上させる。さらに希土類金属を添加することにより、結晶粒を微細化し、粒界面積を増大させて強度を向上させることができ、また、磁気反射界面を効果的に増大させて、電磁シールド性能を向上させることができる。
【0068】
最後に、用語「備えることができる」、「含むことができる」、またはそれらの任意の他の変形形態は、非排他的な包含をカバーするように意図され、したがって、要素のリストを含むプロセス、方法、品目、または装置は、それらの要素だけでなく、明示的に列挙されていない他の要素も含んでも良いか、またはそのようなプロセス、方法、品目、または装置に固有の要素も含むことをさらに理解されたい。本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、当業者は、基本的な創造的概念を知った以上、さらなる変更および修正をこれらの実施形態に加えることができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、好ましい実施形態、ならびに本発明の範囲内に入るすべての変更および修正を包含すると解釈されることが意図される。当業者にとって、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び変形を行うことができることは明らかである。したがって、本発明のこのような変形及び変更は、本発明の請求項及びその均等技術の範囲内であれば、本発明に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】