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特表2024-535135マイクロ流体細胞培養装置及び細胞培養方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-27
(54)【発明の名称】マイクロ流体細胞培養装置及び細胞培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240919BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240919BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527015
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 FI2022050587
(87)【国際公開番号】W WO2023037047
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】20215947
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523157069
【氏名又は名称】フィンアドヴァンス オーユー
【氏名又は名称原語表記】Finnadvance OY
【住所又は居所原語表記】c/o Prateek Singh, Aapistie 5 A 415, 90220 Oulu Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】シン プラテーク
(72)【発明者】
【氏名】グエン ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ヌルミ トゥオマス
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC11
4B029DG06
4B065AA90X
4B065BC01
4B065BC42
4B065BC46
4B065CA46
(57)【要約】
細胞培養のためのマイクロ流体細胞培養装置(100)が開示される。マイクロ流体細胞培養装置(100)は、2つ以上の培地リザーバ(102、104)と、非平坦面(108)を有する第1のマイクロ流体室(106)と、圧力室である第2のマイクロ流体室(110)と、第1のマイクロ流体室(106)と第2のマイクロ流体室(110)とを分離し、第1のマイクロ流体室(106)の非平坦面(108)と相対する、可撓性非多孔質膜(112)と、第1のマイクロ流体室(106)と2つ以上の培地リザーバ(102、104)とをつなぐ1つ以上のマイクロ流体チャネル(114、116、124、126)と、を備える。また、前述したマイクロ流体細胞培養装置(100)を用いた細胞培養方法も開示されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養のためのマイクロ流体細胞培養装置(100)であって、
・ 2つ以上の培地リザーバ(102、104)と、
・ 非平坦面(108)を有する第1のマイクロ流体室(106)と、
・ 圧力室である第2のマイクロ流体室(110)と、
・ 前記第1のマイクロ流体室(106)と前記第2のマイクロ流体室(110)とを分離する可撓性非多孔質膜(112)であって、前記第1のマイクロ流体室(106)の前記非平坦面(108)と相対する、可撓性非多孔質膜と(112)、
・ 前記第1のマイクロ流体室(106)と前記2つ以上の培地リザーバ(102、104)とをつなぐ1つ以上のマイクロ流体チャネル(114、116、124、126)と、
を備える、マイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項2】
前記可撓性非多孔質膜(112)は、プランジャ領域を有する、請求項1に記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項3】
前記プランジャ領域の高さが50から500μmである、請求項1又は2に記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項4】
前記プランジャ領域は、前記非平坦面(108)に面するように配置された1つ以上の特徴部を備える、請求項1又は2に記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項5】
前記1つ以上の特徴部は、断面の特徴部である、請求項1から4のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項6】
前記特徴部の数が2つ以上であり、前記特徴部は、正方形配列ユニット、長方形配列ユニット、円形配列ユニット、又は六角形配列ユニットのいずれかから選択される配列ユニットの形態で配置される、請求項1から5のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項7】
前記非平坦面(108)は、1つ以上のピット(128)を有する、請求項1から6のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項8】
前記1つ以上の特徴部は、前記1つ以上のピット(128)に対応する、請求項1から7のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項9】
前記1つ以上の特徴部は、対応して配置された前記1つ以上のピット(128)に対して垂直である、請求項1から8のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項10】
前記1つ以上の特徴部は、対応して配置された前記1つ以上のピット(128)と相補的である、請求項7に記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項11】
前記1つ以上のマイクロ流体チャネル(114、116、124、126)は、前記可撓性非多孔質膜(108)を通過する、請求項1から10のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項12】
前記可撓性膜の前記1つ以上のマイクロ流体チャネル(114、116、124、126)は、1つ以上の出口(120、122)を有する、請求項1から11のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項13】
前記1つ以上の出口(120、122)のそれぞれは、第1の端部と第2の端部とを有し、
前記第1の端部は、前記第1のマイクロ流体室(106)に開口し、
前記第2の端部は、
・ 前記第2のマイクロ流体室(110)の上端に対応する側、
・ 1つ以上の生体材料リザーバ(102、104)、及び
・ 外部出口
のうちのいずれか1つに開口することで、前記1つ以上のマイクロ流体チャネルは、前記第1のマイクロ流体室(106)と前記1つ以上の出口(120、122)とをつなぐ、
請求項1から12のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項14】
前記第2のマイクロ流体室(110)に、気体又は液体が充填される、請求項1から13のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項15】
前記非平坦面(108)の製作材料は、前記第2のマイクロ流体室(110)が所定の圧力下で、生体材料に及ぼされる所望の所定圧力に基づいて選択される、請求項1から14のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項16】
前記非平坦面(108)の製作材料は、前記第2のマイクロ流体室(110)が所定の圧力下で、その構造的完全性に基づいて選択される、請求項1から15のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項17】
前記非平坦面(108)は、シリコーン材料及びヒドロゲル材料の少なくとも一方から作製される、請求項1から16のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項18】
前記第1のマイクロ流体室(106)は、平坦面の上に配置された非平坦面(108)を有し、
前記非平坦面は、ガラス材料及びプラスチック材料の少なくとも一方から作製される、請求項1から17のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項19】
前記非平坦面(108)は、その内部に埋め込まれた電極又はセンサーを有する、請求項1から18のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項20】
前記第1のマイクロ流体室(106)は、接着性コーティングを有し、
前記接着性コーティングは、その上に生体材料を付着させ、前記生体材料を灌流で培養するように構成される、
請求項1から19のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項21】
生体材料が、細胞、細胞スフェロイド、オルガノイド、又は組織のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1から20のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項22】
細胞が、神経細胞、グリア細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、アストロサイト、ペリサイト、又はそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1から21のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項23】
前記2つ以上の培地リザーバ(102、104)又は1つ以上の生体材料リザーバは、圧力アクチュエータに接続される、請求項1から22のいずれかに記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)。
【請求項24】
・ 2つ以上の培地リザーバ(102、104)と、
・ 非平坦面(108)を有する第1のマイクロ流体室(106)と、
・ 圧力室である第2のマイクロ流体室(110)と、
・ 前記第1のマイクロ流体室(106)と前記第2のマイクロ流体室(110)とを分離する可撓性非多孔質膜(112)であって、前記第1のマイクロ流体室(106)の前記非平坦面(108)と相対する、可撓性非多孔質膜と(112)、
・ 前記第1のマイクロ流体室(106)と前記2つ以上の培地リザーバ(102、104)とをつなぐ1つ以上のマイクロ流体チャネル(114、116、124、126)と、
を備える、請求項1から23に記載のマイクロ流体細胞培養装置(100)を利用した細胞培養方法であって、
前記第1のマイクロ流体室(106)の前記非平坦面(108)上で生体材料を培養することを含む、
方法。
【請求項25】
前記細胞培養は、三次元細胞培養である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記三次元細胞培養は、神経系を再現した細胞培養である、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
1つ以上の特徴部を含むプランジャ領域を有する前記可撓性非多孔質膜(12)を、前記非平坦面(108)に面するように配置することを含む、請求項24から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記非平坦面(108)は、1つ以上のピット(128)を有し、
前記1つ以上のピット(128)は、前記可撓性非多孔質膜(12)と相対して配置され、前記可撓性非多孔質膜(112)の前記プランジャ領域の前記1つ以上の特徴部に対応する、
請求項24から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記可撓性非多孔質膜(112)を通過するように1つ以上のマイクロ流体チャネルを配置することを含む、請求項24から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記可撓性非多孔質膜(112)を通過する前記1つ以上のマイクロ流体チャネル(114、116、124、126)を介して前記第1のマイクロ流体室に生体材料を提供することを含み、
前記生体材料は、前記可撓性非多孔質膜(112)と相対する、前記非平坦面(108)の1つ以上のピット(128)に収容される、
請求項24から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記可撓性非多孔質膜(112)によって前記生体材料に圧力を加えることを含む、請求項24から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記可撓性非多孔質膜(112)を通過する前記1つ以上のマイクロ流体チャネル(114、116、124、126)を通じて残骸を灌流する、請求項24から31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
化学薬品又は生物学的薬剤を前記生体材料に塗布して、増殖及び再生、分化、運動、分裂、接着、分泌、死、遺伝子型、表現型、代謝の少なくとも1つを改変することをさらに含む、請求項24から32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記生体材料を添加する前に、前記第2のマイクロ流体室(110)に圧力を加えることによって前記可撓性非多孔質膜(112)を押し下げ、
前記第2のマイクロ流体室の圧力を下げることによって前記可撓性非多孔質膜(112)がその中立状態に戻るまで、生体材料を所定の時間培養する、
請求項24から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
内部を通過する1つ以上のマイクロ流体チャネル(114、116、124、126)を有する可撓性非多孔質膜(112)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示事項は、概して、細胞培養技術に関し、より具体的には、細胞培養のためのマイクロ流体細胞培養装置に関する。さらに、本願の開示事項は、細胞培養方法に関するものである。
【背景】
【0002】
細胞は生来、生体内で増殖及び分化する性質を持っている。
【0003】
一方で、組織に関連する体内プロセスをシミュレートするために、細胞を試験管内で増殖させることもできる。特に、試験管内細胞培養アッセイは、様々な細胞間相互作用、細胞の創傷治癒メカニズム等を評価する重要な手段となっている。
【0004】
しかし、自然環境におけるマルチレベルの細胞間相互作用を考慮することができないため、試験管内細胞培養アッセイでは、例えば脳、脊髄、末梢神経、神経筋接合部等の細胞の神経系モデルのような様々な細胞モデルの再現、研究が難しい。したがって、神経系モデルは、膜モデル又はチャネルモデルのいずれかを使用して研究され得る。
【0005】
膜モデルでは、多孔質膜を足場にして、細胞接着、及び/又は細胞への栄養培地供給を行うことが一般的である。通常、多孔質膜を備えるマイクロ流体装置が、血管モデル等の様々な細胞モデルを再現して研究するために採用されることがある。
【0006】
しかし、このようなマイクロ流体装置は、脳研究、すなわち神経系モデル、例えば神経細胞に対する様々な圧力の影響を決定するような研究には最適化されていない。一般的に、このようなマイクロ流体装置の多孔質膜は、印加される圧力(培養室内の液圧や膜にかかる機械的圧力)に対応できずに、信頼性の高い装置とはならない。また、マイクロ流体装置の多孔質膜は、硬くて壊れやすいものが多く、破れやすいため、信頼性の低い装置となってしまう。さらに、多孔質膜には神経軸索の成長を導きにくいという欠点もあるため、灰白質以外の神経損傷を正確にモデル化するために使用できない。
【0007】
近年、従来のマイクロ流体装置の問題点を解決するために、マイクロ流体加圧装置が製造されている。このようなマイクロ流体加圧装置では、マイクロ流体プレス装置を2つの部位に分離するために非多孔質膜を使用し、マイクロ流体加圧装置内の適所に配置した基板上で増殖した細胞培養物に押し当てる。しかし、既存のマイクロ流体加圧装置も脳研究、すなわち神経系モデルには最適化されていない。すなわち、脳損傷を再現しようとしても、非多孔質膜により、室圧の差が生理的な適切なレベルでは高くなりすぎる。
【0008】
チャネルモデルは、神経系細胞培養物の収容により適したモデルであり、神経細胞が増殖できる所定のチャネル、チューブ、ゲル等に沿って神経軸索を形成することを目的としている。ニューロンは、軸索の成長に物理的なガイドを必要とすることが理解されるであろう。既存のマイクロ流体チャネルを利用した装置は、神経系細胞培養物を複数のチャネルに収容し、神経系細胞培養物に圧力を加えて損傷や出血を生じるように設計されている。しかし、このようなチャネルの多くは幅が狭く、またその製作材料もプラスチックやポリシリコーンであるため、空気圧や液圧を利用して制御してチャネルに圧力をかけることは困難であった。そのため、このようなマイクロ流体チャネルを利用した装置は、印加圧力の低さを主因として、脳損傷の研究には実用的ではない。
【0009】
現在、神経系モデルの研究にはマウスモデルが使用されている。このようなマウスモデルでは、マウスの頭蓋を標準的な力で叩いて脳障害や出血を引き起こし、最終的にマウスを犠牲にしてデータ収集を行うのが一般的である。しかし、動物モデルはヒトの神経系モデルを再現するのにあまり効率的ではなく、さらに倫理的な問題もある。さらに、マウスは専用の施設や訓練された技術者、さらに数カ月に及ぶ繁殖及び増殖のための長い待ち時間等、高いコストがかかるにもかかわらず、一匹につきデータが1点しか得られない。さらに、マウスモデルは頻繁に人が介入する必要があるため、従来の技術では非効率的であった。
【0010】
したがって、上記の内容を考慮すると、特に神経組織の損傷の研究のために、細胞培養のための従来の技術に関連する欠点を克服する必要がある。
【摘要】
【0011】
本願の開示事項(以下、本開示という)は、細胞培養のためのマイクロ流体細胞培養装置を提供しようとするものである。また、本開示は、細胞培養方法を提供しようとするものである。本開示は、試験管内細胞培養の既存の問題の解決、様々な細胞間相互作用及び/又はプロセスの理解のためのソリューションを提供しようとするものである。本開示の目的は、従来技術で生じる問題を少なくとも部分的に克服し、細胞、特に脳細胞における創傷及び治癒を分析する目的、又は脳細胞の上で例えば薬剤、治療薬、毒素、汚染物質等の潜在的物質を試験する目的で、細胞の最適な増殖によってもたらされるより高品質の細胞を提供するマイクロ流体細胞培養装置の効率的で信頼性のある設計を実現するソリューションを提供することにある。
【0012】
ある捉え方によれば、本開示の一実施形態は、細胞培養のためのマイクロ流体細胞培養装置を提供する。このマイクロ流体細胞培養装置は、
・ 2つ以上の培地リザーバと、
・ 非平坦面を有する第1のマイクロ流体室と、
・ 圧力室である第2のマイクロ流体室と、
・ 前記第1のマイクロ流体室と前記第2のマイクロ流体室とを分離する可撓性非多孔質膜であって、前記第1のマイクロ流体室の前記非平坦面と相対する、可撓性非多孔質膜と、
・ 前記第1のマイクロ流体室と前記2つ以上の培地リザーバとをつなぐ1つ以上のマイクロ流体チャネルと、を備える。
【0013】
別の態様において、本開示の一実施形態は、マイクロ流体細胞培養装置を用いた細胞培養方法を提供する。このマイクロ流体細胞培養装置は、
・ 2つ以上の培地リザーバと、
・ 非平坦面を有する第1のマイクロ流体室と、
・ 圧力室である第2のマイクロ流体室と、
・ 前記第1のマイクロ流体室と前記第2のマイクロ流体室とを分離する可撓性非多孔質膜であって、前記第1のマイクロ流体室の前記非平坦面と相対する、可撓性非多孔質膜と、
・ 前記第1のマイクロ流体室と前記2つ以上の培地リザーバとをつなぐ1つ以上のマイクロ流体チャネルと、を備え、
該方法は、前記第1のマイクロ流体室の前記非平坦面上で生体材料を培養することを含む。
【0014】
本開示の実施形態は、従来技術における前述の問題を実質的に克服するか、又は少なくとも部分的に対処し、マイクロ流体細胞培養装置における培地の効果的な供給と、細胞の最適な増殖のための使用済み培地の除去の改善を可能にする。
【0015】
有用なことに、マイクロ流体細胞培養装置の設計は、第1のマイクロ流体室内の流体圧力を変化させることによって脳の流体圧力の増加を研究するための、ヒト神経系のモデルに適しており、したがって、異なる複数の脳損傷をモデル化するためのはるかに複雑で調整可能かつ繰り返し性を持つシステムを提供する。
【0016】
本開示のさらなる態様、利点、特徴及び目的は、添付の請求項と併せて理解される図面及び例示的な実施形態の詳細説明から明らかになるであろう。
【0017】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、様々に組み合わせることが可能であることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
上記の摘要及び下記の例示的な実施形態の詳細説明は、添付の図面と併せて読むことで、さらに良く理解される。本開示を説明する目的で、本開示の例示的な構造を図面に示す。しかしながら、本開示は、本明細書に開示される特定の方法及び手段に限定されるものではない。さらに、当業者であれば、図面が縮尺どおりでないことを理解するであろう。可能な限り、同種の要素は同一の番号で示す。
【0019】
次に、以下の図を参照して、本開示の実施形態を例としてのみ説明する。
図1】本開示の一実施形態に係る細胞培養のためのマイクロ流体細胞培養装置の透視図である。
図2】本開示の一実施形態に係る細胞培養のためのマイクロ流体細胞培養装置の拡大図である。
図3】本開示の一実施形態に係る細胞培養方法のステップを示すフローチャートである。
【0020】
図中、下線付きの番号は、その番号が配置されている要素、その番号が隣接している要素を表している。下線のない番号は、その番号と要素を結ぶ線によって識別される要素に関連する。番号に下線がなく、かつ矢印が関連付けられている場合、その番号は、矢印が指し示す全体的な要素を識別するために使用される。
【実施形態の詳細説明】
【0021】
以下の詳細説明は、本開示の実施形態と、それらを実施できる方法とを示す。本開示を実施するいくつかの形態を開示したが、当業者であれば、本開示を実施又は実践するための他の実施形態も可能であることが分かるであろう。
【0022】
一態様では、本開示の一実施形態は、細胞培養のためのマイクロ流体細胞培養装置を提供する。このマイクロ流体細胞培養装置は、
・ 2つ以上の培地リザーバと、
・ 非平坦面を有する第1のマイクロ流体室と、
・ 圧力室である第2のマイクロ流体室と、
・ 前記第1のマイクロ流体室と前記第2のマイクロ流体室とを分離する可撓性非多孔質膜であって、前記第1のマイクロ流体室の前記非平坦面と相対する、可撓性非多孔質膜と、
・ 前記第1のマイクロ流体室と前記2つ以上の培地リザーバとをつなぐ1つ以上のマイクロ流体チャネルと、を備える。
【0023】
別の態様において、本開示の一実施形態は、マイクロ流体細胞培養装置を用いた細胞培養方法を提供する。このマイクロ流体細胞培養装置は、
・ 2つ以上の培地リザーバと、
・ 非平坦面を有する第1のマイクロ流体室と、
・ 圧力室である第2のマイクロ流体室と、
・ 前記第1のマイクロ流体室と前記第2のマイクロ流体室とを分離する可撓性非多孔質膜であって、前記第1のマイクロ流体室の前記非平坦面と相対する、可撓性非多孔質膜と、
・ 前記第1のマイクロ流体室と前記2つ以上の培地リザーバとをつなぐ1つ以上のマイクロ流体チャネルと、を備え、
該方法は、前記第1のマイクロ流体室の前記非平坦面上で生体材料を培養することを含む。
【0024】
本開示は、上述のマイクロ流体細胞培養装置を提供する。マイクロ流体細胞培養装置は、神経系細胞培養のための複数のマイクロ流体チャネルを有し、細胞を、所望の場所に位置するように増殖させるためのガイドを提供し、神経系モデルを再現している。マイクロ流体細胞培養装置では、細胞や、オルガノイド、スフェロイド、組織片等の任意の細胞含有体を培養することができる。さらに、マイクロ流体細胞培養装置は、細胞の最適な増殖と検査用途のために、新鮮な細胞(すなわち生体試料)、栄養飼料及び各種分析物を連続的に提供するように設計されている。さらに、マイクロ流体細胞培養装置は、ヒトの組織や臓器における流体の流れを効果的に再現することにより、増殖時に細胞を効率的に生産することができる。本開示の装置では、球状のオルガノイドを装置内に入れ、装置の中心部に閉じ込め、圧力をかけることで、頭蓋骨が割れる等の脳損傷をシミュレートして、脳オルガノイドの研究を行うことができる。さらに、マイクロ流体細胞培養装置は、細胞の傷や治癒をリアルタイムで研究するための、エネルギー、時間、コストに関して効率の良い総合的なソリューションである。有用なことに、印加される圧力は、例えば、細胞の種類や異なる種類の脳損傷を研究するための実験の種類に基づいて、強度や印加時間(ミリ秒から数分の範囲)を調整可能である。さらに、有用なことに、マイクロ流体細胞培養装置は、従来の膜型マイクロ流体加圧装置やチャネル型マイクロ流体装置における、脳研究への応用が困難であるという問題点に対処する。また、マイクロ流体細胞培養装置(及びその使用方法)は、前臨床脳損傷研究の分野において、ヒト細胞を用いて高スループットで脳損傷を検査し、動物モデルの使用を回避することを可能にする。
【0025】
本開示において、マイクロ流体細胞培養装置は、細胞培養に用いられる。本明細書で使用される「細胞培養」という用語は、増殖速度を有する少数から多数の細胞を、制御された条件下で人工的に作られた環境において、増殖させるプロセスを意味するものである。この制御された条件は、細胞の最適な増殖に適しており、増殖に適した容器、増殖培地(栄養飼料、増殖因子、ホルモンを含む)、物理化学的パラメータ(pH、浸透圧、湿度、温度、無菌条件等)を含む。さらに、少数の細胞(すなわち、接種材料)が装置の入力として提供され、多数の細胞(すなわち、培養細胞)が出力として得られる。細胞の所望の増殖が実現された後に、新たな細胞を加えることができることが理解されるであろう。任意で、細胞は、増殖培地及び1つ以上の分析物中で培養され得る。任意で、1つ以上の分析物を細胞培養物に添加し、細胞及び/又は様々な細胞プロセスに対する1つ以上の分析物の影響を監視する。任意で、1つ以上の分析物は、治療薬、薬剤、汚染物質及び毒素を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。任意で、様々な細胞プロセスには、増殖及び再生、分化、運動、分裂、接着、分泌、死、遺伝子型、表現型、代謝が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本開示を通じて、本明細書で使用される「マイクロ流体細胞培養装置」という用語は、自然の生物環境を再現し、そこに細胞等の生体材料のための試験管内微小生理学的環境を作り出す装置を意味する。この点で、マイクロ流体細胞培養装置は、マイクロ流体の流れ、脈管、バリアを内蔵し、生体材料の増殖のために生きた細胞のような条件を提供する。特に、生体材料は、最適な増殖条件で細胞を増やすことで増殖する仕組みを生来有している。増殖培地とマイクロ流体細胞培養装置は、生体材料の増殖のために、例えば、適切な温度、pH、栄養素、水分、気体交換等のような最適な条件を提供する。さらに、マイクロ流体細胞培養装置は、生体材料を培養するために必要なすべての構成要素を1つのコンパクトで取扱いが容易なユニットで構成している。マイクロ流体細胞培養装置は、細胞の増殖や細胞間相互作用、細胞の創傷及び治癒メカニズム等の研究に利用でき得る。さらに、このようなマイクロ流体細胞培養装置は、様々な薬理学的又は毒性学的化合物の細胞への影響を分析するために使用され得る。
【0027】
さらに、本開示のマイクロ流体細胞培養装置は、様々な細胞培養物及び細胞プロセスに適合するように、様々な形状(円形又は平面等)、サイズで製作され得る。任意で、マイクロ流体細胞培養装置は、角柱、直方体、円柱、球体、ディスク、スライド、チップ、フィルム、プレート、パッド、チューブ、ストランド、ボックス等の異なる様々な形状であってよい。
【0028】
任意で、マイクロ流体細胞培養装置は、その中の内容物を容易に操作できるように異なる様々なサイズであってもよく、マイクロタイタープレート、マルチチャネルピペッター、顕微鏡、インクジェット式アレイスポッター、フォトリソグラフィックアレイ合成装置、アレイスキャナー又はリーダー、蛍光検出器、赤外線(IR)検出器、質量分析計、サーモサイクラー、高処理機械、ロボティクス等の様々な標準研究機器に適合し得る。
【0029】
任意で、マイクロ流体細胞培養装置は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、Flexdym(商標)ポリマー、チオール-エンポリマー、UV硬化エポキシ樹脂ベースのフォトレジスト、PMMA、ポリスチレン、PLGA、ソフト熱可塑性エラストマー(sTPE)、スチレンブロックコポリマー(BCP)、SU-8ポリマー又はこれらの任意の組合せのいずれかから選択される製作材料を使用して製造される。特に、マイクロ流体細胞培養装置は、一般的に細胞培養に適し、防水性があり、使用中の様々な生物学的及び/又は生化学的プロセスの影響に耐えられる強度を有する製作材料から製造されている。任意で、製作材料は、最適な流速、マイクロ流体工学、生理学的条件等を提供し、それによって生体材料の自然な機能を再現する。一例として、マイクロ流体細胞培養装置の製作材料は、2種類の液体又は液体と気体の間で、直接接触することなく、気体分子又は低分子の一貫した交換を可能にする。このような分子の間接的な拡散により、細胞はより長く新鮮な状態で生き続けることができる。マイクロ流体細胞培養装置は、複数層の製作材料を用いて製造される。典型的には、前記複数層の製作材料は、増殖する細胞の重量を保持し、様々な処理を行うのに十分な厚みを有する。
【0030】
任意で、製造及び加工技術は、射出成形、オーバーモールディング、三次元印刷、フォトリソグラフィー等を含むことができるが、これらに限定されない。一例として、炭素とケイ素を含む有機鉱物ポリマーであるポリジメチルシロキサン(PDMS)が、マイクロ流体細胞培養装置の製造のための製作材料として使用される。特に、PDMSは生体適合性、透明性、柔軟性、ガス透過性、低溶解性、低表面張力で知られている。この例では、マイクロ流体細胞培養装置の製造は、PDMSベースモノマーと架橋剤(PDMSの硬化用)を混合することと、得られた混合物を所望の形状及びサイズの微細構造型に流し込むことと、それを最適温度にさらして型のエラストマーレプリカを取得することと、を含む。
【0031】
さらに、PDMSを複数層重ね、複雑な形状にすることによって、膜、バリア、管等、所望の組み合わされ得るものを追加できるような複雑な形状の構造を実現する。複数層は、プラズマ接合や接着剤等を用いて接合される。さらに、任意で、マイクロ流体細胞培養装置をプラズマ処理し、エタノールと緩衝液で洗い流して気泡を除去し、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ヒアルロン酸、他のマトリクスタンパク質、又はそれらの組合せ等の細胞接着材料を含むコーティング溶液を塗布する。通常、マイクロ流体細胞培養装置を所定時間培養した後、コーティング溶液を除去し、マイクロ流体細胞培養装置を洗浄してから生体材料を添加する。一例として、マイクロ流体細胞培養装置は6層のPDMSを有し、それぞれの厚さは100から3000マイクロメートル(μm)の範囲内であってもよい。上限は、例えば1又は2cmであってもよい。マイクロ流体細胞培養装置の各層の厚さは、例えば、100、500、1000、1500、2000、又は2500μmから500、1000、1500、2000、2500、又は3000μmまでとすることができる。代替例では、マイクロ流体細胞培養装置の製造に、その他ポリケイ酸塩材料又はプラスチックが使用され得る。
【0032】
上述のマイクロ流体細胞培養装置は単一のユニットであり、ユニットを複数組み合わせて、ANSIウェルプレート形式又は他の高スループットシステムによる、高スループットシステムウェルプレート形式のチップ又はユニットのアレイが形成され得ることが理解されるであろう。
【0033】
有用なことに、このような高スループットシステムは、組織の創傷治癒モデルを複数回に分けて実施(分析)することができる。さらに、このような高スループットシステムは、ロボットによる取扱いに加えて、効率的な自動化も可能にする。
【0034】
任意で、マイクロ流体細胞培養装置は、光学的透明度を向上させるために透明なプレート又はチップとして、又は蛍光及び/又は発光研究に使用するためにコーティングされたプレート又はチップとして設計され得る。有用なことに、マイクロ流体細胞培養装置は、クローニング、インキュベーション、スクリーニング等を含む様々な用途のための様々な標準的なマルチウェル細胞培養プレートに適合するように使用され得る。通常、標準的なマルチウェル細胞培養プレートは、一般的には2:3の長方形のマトリクスで、定義された外形寸法を持っている。標準的なマルチウェル細胞培養プレートは、例えば、高スループット分析のためのウェルの2×3、3×4、4×6、6×8、8×12、16×24、32×48、及び48×72マトリクスを含む標準的な6、12、24、48、96、384、1536、及び3456ウェル細胞培養プレートから選択され得る。そのため、マルチウェル細胞培養プレートのウェル寸法、直径、ウェル間の距離も業界標準に準じて定義されている。任意で、本開示のマイクロ流体細胞培養装置は、シート状に大量に生産し、マルチウェル細胞培養プレートのウェルに嵌るように、球等の所望の形状に打ち抜くことができる。ウェルによって囲まれた寸法や容積は、ウェルそのものよりも大きくできないことが理解されるであろう。さらに、マイクロ流体細胞培養装置は、異なるマルチウェル細胞培養プレート形式で使用するように、同じ外形寸法を有するべきである。
【0035】
さらに、特定のウェルプレート形式におけるマイクロ流体細胞培養装置の寸法は、マルチウェル細胞培養プレート形式の最大長及びマルチウェル細胞培養プレート形式の最大幅に基づいて定義され得る。最大長は、ウェル間距離(すなわち、マイクロ流体細胞培養装置装置の3ウェル)の倍数から、30の製造及び使用性の観点に関連した、材料の完全性のためにマイクロ流体室壁の最小厚さを差し引いて計算される。同様に、最大幅は、ウェル間距離(すなわち、マイクロ流体細胞培養装置装置の1ウェル)の倍数から、マイクロ流体室壁の最小厚さを差し引いて計算される。
【0036】
一例として、マイクロ流体細胞培養装置は、標準的な384ウェルプレート形式(ANSI SLAS 4-2004 (R2012)、ウェル位置についてのMicroplate規格)と共に使用され得る。この点で、マイクロ流体細胞培養装置の内寸は、例えば、3.7mm×12.7mm(幅×長さ)であってもよい。さらに、マイクロ流体細胞培養装置の内寸は、1536ウェルと3456ウェルプレート形式で、それぞれおよそ1/2、1/3に減少する。この点で、3456ウェルプレート形式の装置で使用する場合、マイクロ流体細胞培養装置の内寸は1.0mm×4.0mmとなり得る。さらに、マイクロ流体細胞培養装置の高さは、5mmから20mmの範囲であってもよい。ANSI規格の外形寸法を持つマルチウェル細胞培養プレート形式でウェルを追加する場合、マイクロ流体細胞培養装置の長さを長くすることができることが理解されるであろう。マイクロ流体細胞培養装置の外形寸法も、標準的な384ウェルプレート形式(Well Plate Footprint Dimensions ANSI/SLAS 1-2004 (R2012))に従うことが理解されるであろう。
【0037】
任意で、細胞培養は、三次元細胞培養である。本明細書で使用される「三次元細胞培養」という用語は、制御された条件下で単一又は複数の細胞を培養し、体内での細胞増殖と同様に、増殖させ、三次元的にその周囲と相互作用させることを意味する。三次元細胞培養は、細胞を培養するために、無細胞三次元足場(もしくは基板)又は足場のない液体懸濁培地を使用する。三次元基板としては、ヒドロゲルマトリクス、多孔質膜、固体足場等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。有用なことに、三次元細胞培養は、細胞接着と細胞内シグナリングのためのより多くの接触空間を有する三次元細胞培養物を提供する。三次元細胞培養物は、創薬、組織工学、薬理学的及び毒物学的研究(例えば、細胞に対する様々な物質の影響を分析する)に有益に使用され得る。
【0038】
任意で、三次元細胞培養は、神経系を再現した細胞培養である。実施例では、マイクロ流体細胞培養装置は、ヒトの神経系をモデル化するために採用され得る。この点で、当該装置は、脳細胞を培養し、及び/又は細胞に傷(又は損傷)を引き起こし、その後、他の細胞が相互作用して引き起こされた損傷を克服できるように設計され得る。
【0039】
任意で、生体材料は、細胞、細胞スフェロイド、オルガノイド、又は組織のうちの少なくとも1つから選択される。生体材料は、増殖速度を有する細胞の群から選択される。生体試料は通常、最適な条件下で自然環境から分離される。任意で、生体試料の分離方法は、公知技術の、従来の細胞分離方法から選択されるため、本開示を簡潔にするために、本明細書では詳細に説明されない。任意で、生体材料は、細胞株、単層培養細胞、マトリクスに埋め込まれた細胞、臓器、微生物培養物、又はそれらの組合せである。任意で、生体材料は、オルガノイド又はスフェロイドである。任意で、生体材料のサイズは、1から6mmの範囲であってもよい。典型的には、生体材料のサイズは、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、又は5.5mmから、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、又は6mmまでの間であってもよい。生体試料は、単一細胞であっても、共培養された同一又は異なる種類の複数の細胞であってもよいことが理解されるであろう。
【0040】
任意で、細胞は、神経細胞、グリア細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、アストロサイト、ペリサイト、又はそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つから選択される。神経細胞は、大多数の生物において神経組織を構成する主要な要素である。神経細胞又はニューロンは電気的興奮性細胞であり、シナプスと呼ばれる特別な接続を介して他の細胞と通信する。神経細胞は、触覚、聴覚、光覚、嗅覚、味覚等の感覚器官に影響を与える刺激に反応して脊髄や脳に信号を送り、脊髄や脳からの信号を受けて筋肉の収縮や腺の分泌を制御し、神経細胞と周囲の他の神経細胞とつなぐ等、神経系で重要な役割を担っている。グリア細胞は、恒常性を維持し、ミエリンを形成し、神経細胞、神経伝達、シナプス結合に支持、保護、酸素を提供する非神経細胞である。アストロサイトは、脳や脊髄に存在するグリア細胞の一種で、血液脳関門を形成する内皮細胞への生化学的支持、神経組織への栄養補給、細胞外イオンバランスの維持、脳血流調節、感染や損傷に伴う脳や脊髄の修復や傷跡の処理等を行う細胞である。
【0041】
内皮細胞を包み込むペリサイトは、脳内の恒常性維持や止血機能を担い、血液脳関門を維持している。
【0042】
線維芽細胞は創傷治癒に重要な役割を担っている。同じ種類又は異なる種類の細胞同士が、様々な生理学的プロセスの適切な機能を実現するために作用し合うことが理解されるであろう。任意で、細胞は、微生物、ウイルス、菌類、植物、又は動物に由来し、その様々な細胞プロセスを研究することができる。
【0043】
細胞培養のためのマイクロ流体細胞培養装置は、2つ以上の培地リザーバを備える。本明細書で使用される「培地リザーバ」という用語は、細胞培養のための増殖培地を貯蔵するための貯蔵区画、容器、コンテナ等を意味する。2つ以上の培地リザーバのそれぞれは、上端と、上端と反対側の下端とからなり、その間に増殖培地等の液体培地を入れるための所定の容積を画定する。さらに、2つ以上の培地リザーバのそれぞれは、上端に第1の開口部、下端に第2の開口部を有し、第1の開口部から2つ以上の培地リザーバ内に新鮮な液体培地を添加でき、第2の開口部から細胞培養用の液体培地を分注することができる。液体培地は、細胞の増殖のための自然環境を再現する人工的な増殖環境を提供することが理解されるであろう。通常、液体培地は、細胞の増殖に必要な栄養素、増殖因子、ホルモン等を含み、また、細胞培養物のpHや浸透圧を調整する。任意で、液体培地は、アミノ酸、グルコース、塩、ビタミン、及び他の栄養素の混合物を含み得、粉末又は液体の形態で利用可能である。
【0044】
さらに、マイクロ流体細胞培養装置は、非平坦面を有する第1のマイクロ流体室と、圧力室である第2のマイクロ流体室と、を備える。第1のマイクロ流体室と第2のマイクロ流体室は、様々な種類の生体材料、すなわち細胞又は細胞含有体を培養するためのマイクロ流体室の、連続して(一方の下端が他方の上端に並ぶように)、動作結合した2つの部分に類似する。第1のマイクロ流体室及び第2のマイクロ流体室のそれぞれは、その間にそれぞれの所定の容積を囲む、上端と、上端と反対側の下端とを有する。さらに、第2のマイクロ流体室の下端が第1のマイクロ流体室の上端とつながる(又は並ぶ)ように第1のマイクロ流体室の上に第2のマイクロ流体室が設けられ、第2のマイクロ流体室の上端はマイクロ流体細胞培養装置の開放上面に面する。第2のマイクロ流体室の上端は、開いておらず、閉じており、圧力アクチュエータに連結された圧力入口を有することが理解されるであろう。さらに、第2のマイクロ流体室には、通常、いかなる物質も存在しないため、真空室として機能する。マイクロ流体室が2つ以上の培地リザーバの間に配置され、第1のマイクロ流体室が2つ以上の培地リザーバのそれぞれの下端の第2の開口に対応して(すなわち、整列して)配置され、第2のマイクロ流体室が2つ以上の培地リザーバのそれぞれの上端の第1の開口に対応して(すなわち、整列して)配置されていることが理解されるであろう。
【0045】
任意で、第2のマイクロ流体室は、気体又は液体で充填される。この点で、第2のマイクロ流体室は、圧力アクチュエータと組み合わせて使用される。圧力アクチュエータは、圧力により流体の流れを作動させるために使用される。任意で、圧力は、細胞培養物に対する液圧の影響を研究するため、空気圧、液圧、機械的圧力、それらの組合せ、又は他の種類の圧力のいずれかであってもよい。さらに、流体圧は、細胞が機械的又は流体圧(すなわち、空気圧又は液体圧)にさらされるあらゆる種類の細胞培養物の研究に使用することができる。さらに、空気圧や液体で作動するシステムでは、精密な圧力制御によって標準的な圧力を実現することができる。任意で、第2のマイクロ流体室は、作動に空気を利用する空気圧アクチュエータと組み合わせて使用される。任意で、圧力アクチュエータを使用して、第2のマイクロ流体室を気体又は液体で充填し、それぞれ空気圧又は液圧を発生させる。高スループット形式では、単一の圧力アクチュエータで複数のマイクロ流体細胞培養装置を一度に作動させることができることが求められるため、圧力アクチュエータを組み合わせて、複数の圧力チャネルを含む大きなユニットが形成され得る。任意で、圧力アクチュエータは、注射器のようなローテクなものでも、全自動圧力アクチュエータでもよい。
【0046】
可撓性非多孔質膜は空気透過性であり、空気圧は時間の経過と共に喪失する可能性があるため、この段階で、この空気圧で損傷又はストレスを受けた細胞培養物に1つ以上の分析物を添加して、その細胞プロセスを研究することができることが理解されるであろう。さらに、空気圧は時間の経過と共に喪失する可能性があるため、より長い時間実験を行う場合には、可撓性非多孔質膜を作動させるために油圧が選択され得る。あるいは、流体作動は、可撓性機械的レバーによって実行され得る。この点で、可撓性機械レバーは、マイクロ流体細胞培養装置のそれぞれによって同じ機械的作用が行われる場合、マイクロ流体細胞培養装置のそれぞれにおいて同じ圧力を提供することができるであろうマイクロ流体細胞培養装置に鋳込まれ得る。
【0047】
本明細書で使用される「非平坦面」という用語は、三次元的性質を有する表面を意味する。さらに、第1のマイクロ流体室の下端は、非平坦面を含む。非平坦面とは、典型的には、平坦でない特徴物を持つ粗面のようなものである。非平坦面は、一般的に、生体材料を増殖させるための位置決めやガイドのための空間を提供する。具体的には、非平坦面は、神経系細胞培養物を再現することを可能にし、また、神経系モデルを研究するために、圧力印加が最適な所望の位置に、すなわち、第1のマイクロ流体室の中心にオルガノイドを配置するのに寄与する。
【0048】
任意で、非平坦面は、1つ以上のピットを有する。本明細書で使用される「ピット」という用語は、その内部で細胞培養を可能にするための小型化されたウェルを指す。1つ以上のピットは、生体試料とその増殖のための所定量の培地を保持するための容積を有する。任意で、1つ以上のピットは、第1のマイクロ流体室に埋め込まれる。任意で、2つの隣接するピットが、ピットのそれぞれの壁の厚さによって分離される。任意で、1つ以上のピットは、所定の断面である。典型的には、所定の断面は、形状、大きさ、配置等を含む。任意で、1つ以上のピットは、輪郭、ピット(窪み)、溝、隆起、柱、スパイク、筋、又は半球の形状である。任意で、1つ以上のピットは、円錐形断面、立方体断面、立方形状断面、円筒形断面、球形断面、楕円形断面、六角形断面、多角形断面等のうちの1つを有する。任意で、1つ以上のピットは、平坦な底、最小限の丸みを帯びた縁(凹)を持つ底、V字型の底、又はU字型の底を有する。
【0049】
任意で、1つ以上のピットは、0.3から3.0mmの間の範囲の高さと、0.1から3.0mmの間の範囲の厚さとを有する。1つ以上のピットの高さは、典型的には、0.3、0.6、0.9、1.2、1.5、1.8、2.1、2.4、又は2.7ミリメートル(mm)から0.6、0.9、1.2、1.5、1.8、2.1、2.4、2.7、又は3.7までの範囲であってもよい。1つ以上のピットの厚さは、典型的には、0.1、0.3、0.6、0.9、1.2、1.5、1.8、2.1、2.4、又は2.7mmから0.3、0.6、0.9、1.2、1.5、1.8、2.1、2.4、2.7、又は3.0mmまでの範囲であってもよい。上述の多数の形状及びサイズは、細胞を生かし続けるために、培地(及び/又は1つ以上の分析物)のそれを通じた流れを維持しながら、増殖中に1つ以上のピット内の細胞の拡張及び収容を可能にするであろうことが理解されるであろう。
【0050】
高スループットで細胞培養を実現するために、ピットの数ができるだけ多くされ得ることが理解されるであろう。この場合、第1のマイクロ流体室の1平方面積当たりのピットの数を増やすよう、各ピットの厚みが小さくされ得る。しかし、厚みを減らしてピット数を増やすと、マイクロ流体細胞培養装置の品質が低下し、効果的な細胞培養ができない可能性がある。例えば、ピット数が多いと、成形及び離型時にマイクロ流体細胞培養装置の材料の完全性が損なわれるおそれがある。さらに、標準的なマルチウェル細胞培養プレートにおける、マイクロ流体細胞培養装置の不正確な配置も生じ得る。これは例えば、不正配向での配置であり、ピットの中心ではなく、ピットの底の隅に生体材料が誤って装填されることにつながる。この点で、本開示のマイクロ流体細胞培養装置は、マイクロ流体細胞培養装置の材料の完全性を損なうおそれなく、高スループットの細胞培養を実現するために、第1のマイクロ流体室に例えば4から25のピットを設ける。
【0051】
ピットの数が2つ以上である場合、ピットは、配列ユニットで配置することを可能とする列に配置されることが理解されるであろう。任意で、配列ユニットは、正方形配列ユニット、長方形配列ユニット、円形配列ユニット、又は六角形配列ユニットから選択することができる。また任意で、正方形配列ユニットは、4つ以上のピットを含むピット行列を含み、六角形配列は、6つ以上のピットを含むピット行列を含む。
【0052】
任意で、正方形配列ユニットは、4ピットを含む2×2行列、9ピットを含む×3行列、16ピットを含む4×4行列、25ピットを含む5×5行列、100ピットを含む10×10行列等のいずれかを含んでもよい。任意で、長方形配列ユニット又は円形配列ユニットは、1つ以上のピットを含むピット行列を含んでもよい。
【0053】
一例として、長方形配列ユニットは、8つのピットを含む1×8行列で構成される。1つ以上のピットが溝又は隆起形状である場合、溝又は隆起形状のピットは、それぞれが互いに平行又は互いに傾斜して並置され得ることが理解されるであろう。一例として、8つの溝状又は隆起状のピットを1×8行列状に配置することができる。
【0054】
さらに、マイクロ流体細胞培養装置は、第1のマイクロ流体室と第2のマイクロ流体室と分離する可撓性非多孔質膜を有し、可撓性非多孔質膜は前記第1のマイクロ流体室の非平坦面と相対して配置される。本明細書で使用される「膜」という用語は、第1の面及び第2の面を有する平坦なシートを意味する。可撓性非多孔質膜は、第1のマイクロ流体室と第2のマイクロ流体室との間に配置される。この点で、可撓性非多孔質膜は、可撓性非多孔質膜の第1の面が第1のマイクロ流体室の非平坦面に面し、可撓性非多孔質膜の第2の面がマイクロ流体細胞培養装置の開放上面に面するように、第1のマイクロ流体室及び第2のマイクロ流体室の間に配置される。つまり、第1のマイクロ流体室、可撓性非多孔質膜、第2のマイクロ流体室は、積層体として配置されている。
【0055】
有用なことに、可撓性非多孔質膜は、圧力を受けると流体作動を可能とする。
【0056】
任意で、可撓性非多孔質膜は、プランジャ領域を有する。本明細書で使用される「プランジャ領域」という用語は、可撓性非多孔質膜からの突出部を意味する。プランジャ領域は、対応する表面に押し付けられ、そこに圧力を加えるように設計されていることが理解されるであろう。任意で、プランジャ領域の高さは50から500マイクロメートルである。プランジャ領域の高さは、典型的には、50、100、150、200、300、又は400マイクロメートル(μm)から100、150、200、300、400、又は500μmまでであってもよい。
【0057】
任意で、プランジャ領域は、非平坦面に面するように配置された1つ以上の特徴部を含む。具体的には、可撓性非多孔質膜は、プランジャ領域が第1のマイクロ流体室の非平坦面に面するように、第1のマイクロ流体室と第2のマイクロ流体室との間に配置される。より具体的には、1つ以上の特徴部は、第1のマイクロ流体室の非平坦面に面するプランジャ領域側から突出する。1つ以上の特徴部は、第1のマイクロ流体室の非平坦面上の1つ以上のピットのような、対向する表面の特定の部位に圧力を加えるように設計される。あるいは、1つ以上の特徴部は、第1のマイクロ流体室の1つ以上のピット内で増殖する腫瘍オルガノイド内に配置できるプローブ又は針として機能し、増殖する腫瘍の内部からの試料収集を可能とし得る。
【0058】
任意で、1つ以上の特徴部は、1つ以上のピットに対応する。
【0059】
1つ以上の特徴部と1つ以上のピットは、互いに対向して配置される。さらに、1つのピットに合わせて1つの特徴部を配置することで、特定の部位、つまり対応するピットで圧力をかけることができるようになっている。したがって、ある特徴部は、対応するピットを反転したものであるか、対応するピット内で摺動するように設計される。任意で、1つ以上の特徴部は、対応して配置された1つ以上のピットに対して垂直であり、対応する1つ以上のピット内で摺動可能である。任意で、1つ以上の特徴部は、対応して配置された1つ以上のピットと相補的であり、対応する1つ以上のピットを反転したものである。任意で、プランジャ領域の1つ以上の特徴部を介した圧力の印加は、プランジャ領域の下の第1のマイクロ流体室の非平坦面上の1つ以上のピット、あるいは溝又は特徴部による1つ以上の特徴部の全領域を網羅しないように制限される。これによって、1つ以上のピット内で増殖する細胞がより受ける圧力がより小さくなる。
【0060】
したがって、この点について、任意で、1つ以上の特徴部は、1つ以上のピットの所定の断面に対して極めて相補的な所定の断面である。典型的には、1つ以上の特徴部の所定の断面は、形状、大きさ、配置等を含む。任意で、1つ以上の特徴部は、輪郭、ピット(窪み)、溝、隆起、柱、スパイク、筋、又は半球の形状である。任意で、1つ以上の特徴部は、円錐形断面、立方体断面、立方形状断面、円筒形断面、球形断面、楕円形断面、六角形断面、多角形断面等のうちの1つを有する。任意で、1つ以上の特徴部は、平坦な底、最小限の丸みを帯びた縁(凸)を持つ底、V字型の底、又はU字型の底を有する。任意で、1つ以上の特徴部は、0.3から3.0mmの間の範囲の高さと、0.1から3.0mmの間の範囲の厚さを有する。1つ以上の特徴部の高さは、典型的には、0.3、0.6、0.9、1.2、1.5、1.8、2.1、2.4、又は2.7ミリメートル(mm)から0.6、0.9、1.2、1.5、1.8、2.1、2.4、2.7、又は3.7までの範囲であってもよい。1つ以上の特徴部の厚さは、典型的には、0.1、0.3、0.6、0.9、1.2、1.5、1.8、2.1、2.4、又は2.7mmから0.3、0.6、0.9、1.2、1.5、1.8、2.1、2.4、2.7、又は3.0mmまでの範囲であってもよい。一例では、1つ以上のピットの断面が立方体状であれば、対応する1つ以上の特徴部の断面は立方体状であり、1つ以上の特徴部の断面が、1つ以上のピットの断面よりも下方にあることで、特徴が対応するピット内へと挿入可能となる。別の例では、凹形状の1つ以上のピットは、その内部で摺動する凸形状の対応する1つ以上の特徴部を有している。好ましくは、平坦な底部又は最小限の丸みを帯びた縁(凹)を有する底部を有する1つ以上の特徴部は、他の種類と比較して製造が容易である。また、筋状の非平坦面へのプレスでは、すべてのピット間で均等な圧力とするため、底が平らな(長方形の)形状の1つ以上の特徴部が好ましい。さらに、高さが低く、端が凹んでいる1つ以上の特徴部が好ましいが、細胞培養物がオルガノイドの場合、六角形又は八角形の断面と対応する1つ以上のピットを有する1つ以上の特徴が好ましい場合がある。1つ以上の特徴部のわずかな縁が1つ以上のピット内の所定の位置に丸みを帯びたオルガノイドを保持するためである。任意で、V字型の底部(又は円錐形の端部又はスパイク)を有する1つ以上の特徴部は、薬物又は他の材料等の1つ以上の分析物をオルガノイドに注入するための針として機能し得る。あるいは、この特徴部は、オルガノイド内の化学的状態を調べるための注射器として使用され得る。さらに、一実施形態では、上記特徴部は、異なる複数のシミュレーションモデルを実現するために、1つ以上の電極と組み合わせることができる。
【0061】
任意で、特徴部の数が2つ以上である場合、これらの特徴部は、正方形配列ユニット、長方形配列ユニット、円形配列ユニット、又は六角形配列ユニットのいずれかから選択される配列ユニットの形態で配置される。この点で、1つ以上の特徴部が1つ以上のピットに対応するためには、特徴部の数がピットの数と同じであるべきであることが理解されるであろう。さらに、1つ以上の特徴部の配置は、1つ以上のピットの配置と同じであるべきである。より具体的には、特徴部が例えば正方形配列ユニット、長方形配列ユニット、円形配列ユニット、又は六角形配列ユニットで配置されている場合、ピットも正方形配列ユニット、長方形配列ユニット、円形配列ユニット、又は六角形配列ユニットで配置されるべきである。また任意で、正方形配列ユニットは、4つ以上の特徴部を含む特徴部行列を含み、六角形配列は、6つ以上の特徴部を含む特徴部行列を含む。任意で、正方形配列ユニットは、4特徴部を含む2×2行列、9特徴部を含む3×3行列、16特徴部を含む4×4行列、25特徴部を含む5×5行列、100特徴部を含む10×10行列等のいずれかを含んでもよい。任意で、長方形配列ユニット又は円形配列ユニットは、1つ以上の特徴部を含む特徴部行列を含んでもよい。一例として、長方形配列ユニットは、8つの特徴部を含む1×8行列を含む。1つ以上の特徴部が溝又は隆起形状である場合、溝又は隆起形状の特徴部は、それぞれが互いに平行又は互いに傾斜して並置され得ることが理解されるであろう。一例として、8つの溝状又は隆起状の特徴部を1×8行列状に配置することができる。
【0062】
任意で、特徴部を持つ可撓性非多孔質膜は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、Flexdym又は他のポリシリコーン材料を、所望の形状及び位置の窪みを持つ型を用いて、薄膜状に鋳込むことで作成され得る。型内の薄膜は、培養され、離型されると、1つ以上のピットとその中の内容物に圧力をかけるように構成される、可撓性非多孔質膜の突出した特徴部となる。任意で、可撓性非多孔質膜は、生体適合性のある材料で構成される。任意で、1つ以上の特徴部は、可撓性非多孔質膜からの垂直圧力が加えられるときに、細胞に横方向の圧力を加える。さらに、可撓性非多孔質膜がある圧力をかけたときに所望の圧力になるように、特徴部の製作材料を選択してもよい。
【0063】
任意で、生体材料(すなわち、細胞又は細胞含有体)は、懸濁液で、一度に1つずつ又は混合物として、第1のマイクロ流体室の1つ以上のピットに添加され得る。任意で、生体材料は、生体材料を含む液体培地又は緩衝液に懸濁された状態で、第1のマイクロ流体室の1つ以上のピットに装填され得る。液体中の生体材料は、(使用される細胞の種類に基づいて)所定の培養期間にわたって培養され、第1のマイクロ流体室の1つ以上のピットにおいて3次元細胞培養物が生成される。任意で、所定の培養期間は、1つ以上のピットにおいて、例えば、4日間とすることができる。この増殖期間により、1つ以上のピット内に三次元細胞培養物が生成される。細胞培養物の準備ができたら、第2のマイクロ流体室に空気又は液体を入れて、可撓性非多孔質膜に圧力をかけて作動させることができる。可撓性非多孔質膜の作動は、細胞の種類に応じて、あるいは試験の要件に応じて、数秒、数分、数時間維持され得る。可撓性非多孔質膜の作動により、可撓性非多孔質膜の1つ以上の特徴部が、第1のマイクロ流体室の非平坦面の1つ以上のピット内の細胞培養物に損傷又はストレスを与えることになる。任意で、細胞又は細胞含有体は、マイクロ流体細胞培養装置の非平坦面の1つ以上のピットの中心に装填することができる。その後、細胞又は細胞含有体を、凹状の窪みを有する1つ以上の特徴部を有する可撓性非多孔質膜でプレスされ得る。プレス中、細胞又は細胞含有体が所定の位置に留まることができ、これによっても力がより均一に分散される。
【0064】
有用なことに、可撓性非多孔質膜の作動は、ヒトの神経系をモデル化するのに適している。神経系モデルは、神経細胞が増殖する方向性を提供するために、第1のマイクロ流体室に隆起又は筋状の非平坦面を有し得る。さらに、臓器や組織の自然な機能を再現した上記装置を実現するために、マイクロ流体や流れの動的特性で知られ、細胞培養に適した適切な製作材料が採用される。
【0065】
任意で、非平坦面の製作材料は、第2のマイクロ流体室が所定の圧力下にあるときに、その構造的完全性に基づいて選択される。具体的には、第2のマイクロ流体室が所定の圧力に達したときに、非平坦面の製作材料がその構造的完全性を失うことが必要である。また任意で、非平坦面の製作材料は、第2のマイクロ流体室によって及ぼされる圧力によって、崩壊、粉砕、裂断等し得る。具体的には、第2のマイクロ流体室から一定の荷重又は所定の圧力がかかると、非平坦面の製作材料が破壊又は構造的に変形する必要がある。この点で、神経細胞の損傷をシミュレートする場合、神経細胞に十分な圧力をかけ、細胞に深刻な損傷を与えることを目的とすることができる。この点で、1つ以上の特徴部からなるプランジャ領域は、非平坦面の1つ以上のピットの底に到達することが必要であってもよい。
【0066】
さらに、1つ以上の特徴部は、1つ以上のピットに対応し、そのための対応部分として機能する。あるいは、1つ以上の特徴部及び1つ以上のピットは、十分な圧力が加えられると壊れる軟質材料を用いて作製され得る。また、このような軟質材料は、神経細胞の増殖ガイドとして機能するが、圧力をかけると変形するため、神経細胞へ十分に圧力をかけることができる。さらに、軟質材料を使用することにより、1つ以上の特徴部及び1つ以上のピットの異なる複数の形状要素を互いに係合して、軟質材料が押しつぶされたり壊れたりした時点で、神経細胞に損傷を与えることができる。
【0067】
任意で、非平坦面の製作材料は、第2のマイクロ流体室が所定の圧力下にあるときに、生体材料にかかる所定の所望圧力に基づいて選択される。製作材料は、培養される生体材料の種類に基づいて選択され得ることが理解されるであろう。特に、異なる生体材料は、異なる構造的完全性を持ち、そこに損傷や応力を与えるためには異なるレベルの圧力が必要となる。
【0068】
さらに、非平坦面の製作材料は、その上で細胞の増殖が可能であることが必要である。
【0069】
任意で、非平坦面は、シリコーン材料及びヒドロゲル材料の少なくとも一方から作製される。さらに、非平坦面は軟質で薄い素材から作製される。ヒドロゲル材料は、天然、合成、又はハイブリッド材料であってもよく、コラーゲン、フィブリン、アルギン酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、及びポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。任意で、ヒドロゲルは、2D基板から層ごとに、あるいは別のヒドロゲル内に直接3次元的に細胞を印刷するように、バイオインクとして機能し得る。有用なことに、シリコーン材料やヒドロゲル材料は、細胞の膨張を可能にし、試験管内での規則的な細胞増殖のための雰囲気を提供する細胞培養基材として使用されてもよい。さらに、有用なことに、上記材料は、増殖する細胞に対して疎水性バリアと高い酸素透過性を提供する。さらに、上記材料は、電気的な作動に適している。さらに、上記材料の柔らかさにより、細胞培養物は3次元的に増殖し、それにより生物学的環境がより良く再現され、従来のプラスチック材料やガラス材料のように平坦化な形状、異常な偏光、分化した表現型の喪失を伴わないことが理解されるであろう。
【0070】
任意で、第1のマイクロ流体室は、平坦面上に配置された非平坦面を有し、この非平坦面は、ガラス材料及びプラスチック材料の少なくとも一方から作製される。この点で、ガラス材料とプラスチック材料は、その上に細胞の3次元的な増殖を可能にするための非平坦面が配置された、非生理的に硬い平坦面を提供する。さらに、ガラス材料とプラスチック材料は、可撓性非多孔質膜で圧力をかけたときに、細胞を破壊するために必要な硬さを提供する。
【0071】
任意で、第1のマイクロ流体室は接着性コーティングを含む。この接着性コーティングは、その上に生体材料を付着させ、生体材料を灌流で培養するように構成される。本明細書で使用される「接着性コーティング」という用語は、第1のマイクロ流体室等の表面、好ましくは第1のマイクロ流体室の非平坦面上の細胞の接着を強化するコーティングを指す。任意で、接着性コーティングは、その非平坦面上で、第1のマイクロ流体室を整列させる。さらに任意で、接着性コーティングは、非平坦面の製造に使用されるシリコーン材料又はヒドロゲル材料を整列させる。有用なことに、接着性コーティングは、通常、その上への細胞の付着を強化又は促進し、細胞が表面に付着し、その上を移動し、増殖すること等を可能にする。
【0072】
任意で、非平坦面には電極やセンサーが埋め込まれる。可撓性非多孔質膜及びその1つ以上の特徴部を作動させて、1つ以上のピット内の細胞培養物に損傷又はストレスを与えることの他に、第1のマイクロ流体室の反対側の端部に配置された電極を用いて、非平坦面をさらに刺激することができる。電極からの電流が細胞の増殖を促進し、細胞の治癒及び再生が促される。有用なことに、電極は、毛細血管の密度と灌流を増加させ、創傷の酸素化を改善し、肉芽形成と線維芽細胞の活性を促進することによって、創傷治癒を促進することができる。非平坦構造の反対側の端に刺激を加えることで、ヒトの神経系細胞培養物の基礎を効果的に再現することができることが理解されるであろう。
【0073】
さらに、マイクロ流体細胞培養装置は、第1のマイクロ流体室と2つ以上の培地リザーバとをつなぐ1つ以上のマイクロ流体チャネルを備える。本明細書で使用される「マイクロ流体チャネル」という用語は、2つ以上の培地リザーバからマイクロ流体細胞培養装置に流体(液体培地等)を供給するための毛細管構成を指す。マイクロ流体チャネルは、動作時に、培地(及び/又は1つ以上の分析物)を第1のマイクロ流体室に供給する。さらに、マイクロ流体チャネルは、濃度の異なる1つ以上の分析物を第1のマイクロ流体室の各ピットに供給するように構成される。
【0074】
任意で、マイクロ流体チャネルは、マイクロ流体細胞培養装置に、すなわちPDMS層の間に組み込まれる。任意で、マイクロ流体チャネルは、マイクロ流体細胞培養装置の層と同じ製作材料を使用して、又は異なる材料、例えばテフロン(登録商標)、ガラス、光ファイバー等を使用して製造され得る。さらに、マイクロ流体チャネルを有するマイクロ流体細胞培養装置の製作材料の複数の層は、マイクロ流体チャネルを流れる流体がその外に流出しないように密閉される(又は互いに接着される)。
【0075】
任意で、1つ以上のマイクロ流体チャネルは、可撓性非多孔質膜を通過する。任意で、1つ以上のマイクロ流体チャネルは、可撓性非多孔質膜のプランジャ領域を通過する。可撓性非多孔質膜の1つ以上のマイクロ流体チャネルは、第1のマイクロ流体室内の細胞培養物に所定量の液体培地を供給するように構成される。さらに、可撓性非多孔質膜の1つ以上のマイクロ流体チャネルは、分子、タンパク質、抗体、脂質、脂質粒子、ミセル、細胞断片、全細胞、又は細胞含有構造物の少なくとも1つを細胞培養物に塗布するように構成され得る。任意で、上記化合物を塗布することは、染色や画像化、薬物検査、及び/又は細胞に刺激を与える目的で行われ得る。さらに、可撓性非多孔質膜の1つ以上のマイクロ流体チャネルを使用して、蛍光タンパク質を発現する細胞株の代わりに蛍光抗体を塗布して、リアルタイム又はタイムラプスイメージングを行うことができる。この点で、任意で、可撓性非多孔質膜の1つ以上のマイクロ流体チャネルは、細胞培養物が生きている間に、1つ以上のピットを複数の蛍光マーカーで同時に染色するためのアレイを作成するために使用され得る。これにより、1つの実験から複数のタイムポイントを収集し、複数の目的の分子に対して染色することで、リアルタイムに細胞培養システムを研究することができる。これにより、膨大なデータセットに必要な実験回数を減らすことができる。
【0076】
任意で、可撓性膜の1つ以上のマイクロ流体チャネルは、1つ以上の出口を有する。任意で、1つ以上の出口は、可撓性非多孔質膜のプランジャ領域を通過する。1つ以上の出口は、通常、主要な1つ以上のマイクロ流体チャネルから突出して、マイクロ流体細胞培養装置の異なる部分又はその外側に開口する。1つ以上のマイクロ流体チャネルは、1つ以上の出口と第1のマイクロ流体室との間で、可撓性非多孔質膜を通って垂直方向に延在し、主要な1つ以上のマイクロ流体チャネル自体は、2つ以上のリザーバと第1のマイクロ流体室との間で水平方向に延在することが理解されるであろう。
【0077】
さらに任意で、1つ以上の出口のそれぞれは、第1の端と第2の端を有し、第1の端は、第1のマイクロ流体室に開口し、第2の端は、第2のマイクロ流体室の上端に対応する側、1つ以上の生体材料リザーバ、及び外部出口のうちの少なくとも1つに開口することで、1つ以上のマイクロ流体チャネルは、第1のマイクロ流体室と1つ以上の出口とをつなぐ。さらに、第1のマイクロ流体室は、可撓性非多孔質膜の内部を延在し、第2のマイクロ流体室と垂直方向に平行に上方に延びる1つ以上のマイクロ流体チャネルを介して、1つ以上の出口に接続される。1つ以上の出口のそれぞれの第1の端は、2つ以上の培地リザーバから第1のマイクロ流体室に液体培地を提供するために、第1のマイクロ流体室に開口することが理解されるであろう。
【0078】
任意で、マイクロ流体細胞培養装置の外部に開口する1つ以上の出口の第2の端は、圧力をかけた後、損傷した生体材料(細胞又は組織)から試料を得るために構成される。任意で、マイクロ流体細胞培養装置の外部に開口する1つ以上の出口の第2の端は、損傷した生体材料(細胞又は組織)に、分析物等、又は同種もしくは異なる種類の生体材料(細胞又は組織)を添加するために構成される。可撓性非多孔質膜を作動させる目的で第2のマイクロ流体室に圧力を加えたときに、気体又は流体が第1のマイクロ流体室と第2のマイクロ流体室との間を流れるのを避けるために、1つ以上の出口の第2の端は第2のマイクロ流体室の外に開くことが理解されるであろう。あるいは、1つ以上のマイクロ流体チャネルと液体培地における運動は、マイクロ流体細胞培養装置を傾けることによって手動で実現することもできる。さらに、1つ以上の出口の第2の端は、培養細胞の採取、使用済みの液体培地の除去、及び細胞培養物から死細胞及び残骸を片づけることを可能にする。さらに、組織が傷ついたり、圧力でストレスがかかったりした場合に、追加の細胞を細胞培養物に加えることも可能である。この追加の細胞には、単球、マクロファージ、リンパ球等の免疫細胞、又は他の種類の組織適正な免疫細胞が含まれるが、これらに限定されない。さらに、可撓性非多孔質膜の1つ以上のマイクロ流体チャネルの1つ以上の出口は、損傷した細胞から、加圧状態であっても流出試料を取得して分析するように構成されてもよい。
【0079】
任意で、1つ以上の出口は、化学的又は生物学的薬剤を細胞培養物上又は組織内に導入するために使用される。
【0080】
任意で、液体培地と比較した材料密度の違いにより、光が画像フィールドを横切って不規則に曲がるため、1つ以上の特徴部だけでなく、1つ以上のピットは、画像の特定の領域で画像ぼけを生じ得る。
【0081】
任意で、増殖した、傷ついた、又は治癒した細胞は、外部出口から採取することができる。あるいは、細胞の採取は、第1のマイクロ流体室内に針又は注射器を導入して細胞を吸い出すことによって達成され得る。
【0082】
任意で、2つ以上の培地リザーバ又は1つ以上の生体材料リザーバは、圧力アクチュエータに接続される。任意で、2つ以上の培地リザーバ又は1つ以上の生体材料リザーバに接続された圧力アクチュエータは、第2のマイクロ流体室に連結されたものと同じであっても、それとは異なるものであってもよい。圧力アクチュエータは、2つ以上の培地リザーバ又は1つ以上の生体材料リザーバにそれぞれ循環させる液体培地及び生体材料を含む緩衝液の運動を可能にする。さらに、2つ以上の培地リザーバ又は1つ以上の生体材料リザーバの圧力作動は、液体培地及び生体材料を含む緩衝液の、細胞培養物のための第1のマイクロ流体室の1つ以上のピットへの供給にも帰結する。一例として、圧力アクチュエータにより、5時間ごとに10μlの液体培地と1μlの生体材料を含む緩衝液が第1のマイクロ流体室に分注され、流出培地は分析のために外部出口から除去され得る。
【0083】
任意で、マイクロ流体細胞培養装置は、マイクロ流体細胞培養装置の容易な取扱い、マルチウェル細胞培養プレートに対する配置及び除去のためのガイド要素(又はタブ)を備える。任意で、マイクロ流体細胞培養装置は、細胞の増殖及び保存中に微生物及び/又はウイルス汚染の増殖を防止する微生物バリアを備える。
【0084】
本開示はまた、上記のような方法に関する。前述の第1の側面に関して、上記に開示された様々な実施形態及び変形例は、本方法に準用される。
【0085】
任意で、細胞培養は、三次元細胞培養である。
【0086】
任意で、三次元細胞培養は、神経系を再現した細胞培養である。
【0087】
任意で、上記方法は、1つ以上の特徴部を含むプランジャ領域を有する可撓性非多孔質膜を、非平坦面上に面するように配置することを含む。
【0088】
任意で、非平坦面は、1つ以上のピットを有する。
【0089】
任意で、1つ以上の特徴部は、1つ以上のピットに対応する。
【0090】
任意で、1つ以上の特徴部は、対応して配置された1つ以上のピットに対して垂直である。
【0091】
任意で、1つ以上の特徴部は、対応して配置された1つ以上のピットに対して相補的である。
【0092】
任意で、上記方法は、可撓性非多孔質膜を通過するように1つ以上のマイクロ流体チャネルを配置することを含む。
【0093】
任意で、上記方法は、可撓性非多孔質膜を通過する1つ以上のマイクロ流体チャネルを介して第1のマイクロ流体室に生体材料を提供することを含み、生体材料は、非平坦面の1つ以上のピットに、可撓性非多孔質膜と相対して収容される。
【0094】
任意で、上記方法は、可撓性非多孔質膜によって生体材料に圧力を加えることを含む。
【0095】
任意で、可撓性非多孔質膜を通過する1つ以上のマイクロ流体チャネルを通じて、残骸を灌流する。
【0096】
任意で、上記方法は、さらに、化学薬品又は生物学的薬剤を生体材料に塗布して、増殖及び再生、分化、運動、分裂、接着、分泌、死、遺伝子型、表現型、代謝の少なくとも1つを改変することを含む。
【0097】
任意で、生体材料を添加する前に、第2のマイクロ流体室に圧力を加えることによって可撓性非多孔質膜を押し下げ、第2のマイクロ流体室の圧力を下げることによって可撓性非多孔質膜がその中立状態に戻るまで、生体材料を所定の時間培養する。
【0098】
また、本開示は、上記のような可撓性非多孔質膜の製造方法にも関する。前述した第1の側面に関して開示した様々な実施形態及び変形例は、可撓性非多孔質膜の製造方法にも準用される。
【0099】
内部を通過する1つ以上のマイクロ流体チャネルを有する可撓性非多孔質膜を製造する方法である。
【図面の詳細説明】
【0100】
図1を参照すると、本開示の一実施形態に係る細胞培養のためのマイクロ流体細胞培養装置100の透視図が示されている。マイクロ流体細胞培養装置100は、培地リザーバ102及び104等の2つ以上の培地リザーバと、非平坦面108を有する第1のマイクロ流体室106と、圧力室である第2のマイクロ流体室110と、第1のマイクロ流体室106と第2のマイクロ流体室110をと分離し、第1のマイクロ流体室106の非平坦面108と相対する可撓性非多孔質膜112と、第1のマイクロ流体室106と2つ以上の培地リザーバ102、104とをつなぐマイクロ流体チャネル114、116等の1つ以上のマイクロ流体チャネルと、を備える。さらに、第2のマイクロ流体室110は、圧力アクチュエータ(図示せず)に連結された圧力入口118を有する。さらに、マイクロ流体細胞培養装置100の出口側には、可撓性非多孔質膜112内に延在し、第2のマイクロ流体室110と垂直方向に平行に上方に延びる、1つ以上のマイクロ流体チャネル124、126の、出口120、122等の1つ以上の出口が設けられる。さらに、第1のマイクロ流体室106は、可撓性非多孔質膜112の内部に延在し、第2のマイクロ流体室110と垂直方向に平行に上方に延びる、出口120、122等の1つ以上の出口に、マイクロ流体チャネル124、126等の1つ以上のマイクロ流体チャネルを介して、接続されている。
【0101】
さらに、第1のマイクロ流体室106の非平坦面108は、ピット128等の1つ以上のピットを有する。
【0102】
マイクロ流体細胞培養装置100の単一のユニットが図示されており、複数のそのようなユニットを組み合わせて、高スループットのウェルプレート形式のチップ又はユニットのアレイを形成することができ、組織の傷及び治癒モデルを多重に実行(及び分析)できることが理解されるであろう。さらに、このようなチップ又はユニットのアレイは、ロボットによる取扱いに加えて、自動化も可能にする。この点で、複数の膜作動チャネルを組み合わせてより大きなユニットを形成し、単一の圧力ユニットで複数の膜を一度に作動させることができる。
【0103】
図2を参照すると、本開示の一実施形態に係る細胞培養のためのマイクロ流体細胞培養装置100の拡大図200が示されている。図示のように、マイクロ流体細胞培養装置の多層構造は、6つの層、すなわち、それぞれ、所定の第1、第2、第3、第4、第5及び第6厚さを有する第1層202、第2層204、第3層206、第4層208、第5層210、及び第6層212を備える。マイクロ流体細胞培養装置100の第1層202は、2つ以上のリザーバ102、104の開口部と、1つ以上のマイクロ流体チャネル124、126の1つ以上の出口120、122の開口部とを含む最上層である。1つ以上のマイクロ流体チャネル124、126は、1つ以上の出口120、122と第1のマイクロ流体室106との間で、可撓性非多孔質膜112を通って垂直方向に延在し、1つ以上のマイクロ流体チャネル114、116自体は、2つ以上のリザーバ102、104と第1のマイクロ流体室106との間で水平方向に延在することが理解されるであろう。マイクロ流体細胞培養装置100の第2層204は、2つ以上のリザーバ102、104と、圧力アクチュエータに連結された圧力入口118と、そこを通る1つ以上のマイクロ流体チャネル124、126の1つ以上の出口120、122のセグメントとを含む第2マイクロ流体室110を備える。マイクロ流体細胞培養装置100の第3層206及び第4層208は、1つ以上の特徴部(不図示)を有するプランジャ領域(不図示)と、第1層202の1つ以上の出口120、122と第5層210の第1マイクロ流体室106との間を垂直に延在する1つ以上のマイクロ流体チャネル124、126のセグメントと、を含む可撓性非多孔質膜112を有する。マイクロ流体細胞培養装置100の第5層210は、第1マイクロ流体室106と1つ以上のマイクロ流体チャネル114、116とを含む。さらに、第5層210は、マイクロ流体細胞培養装置100に組み込まれた1つ以上のマイクロ流体チャネル114、116を保持する。マイクロ流体細胞培養装置100の第6層212は、第1マイクロ流体室106のピット128等の1つ以上のピットを含む。図示のように、第1のマイクロ流体室106のピット128等の1つ以上のピットと相補的であることから、プランジャ領域は、凹状の窪みを有する隆起したシリンダであることが分かる。
【0104】
図3を参照すると、本開示の一実施形態に係る細胞培養方法のステップのフローチャート300が示されている。ステップ302において、第1のマイクロ流体室の非平坦面上で生体材料を培養する。
【0105】
ステップ302はあくまで例示であって、本明細書の特許請求の範囲から逸脱することなく、1つ以上のステップが追加される他の代替案も提供され得る。
【0106】
前述した本開示の実施形態への変更は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく可能である。本開示を説明しその権利を主張するために使用される「備える」、「含む」、「内蔵する」、「有する」、「ある」等の表現は、非排他的に、すなわち明示的に説明されていない項目、構成部分、又は構成要素も存在することを許容するように解釈されることを意図している。また、単数形での言及は、複数形にも関すると解釈される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】