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▶ スケッチャーズ ユーエスエイ インコーポレイテッド ザ セカンドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】容易な着脱のための履物カウンタ
(51)【国際特許分類】
   A43B 21/26 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A43B21/26
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023545807
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 US2022046726
(87)【国際公開番号】W WO2023064568
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/256,521
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514308106
【氏名又は名称】スケッチャーズ ユーエスエイ インコーポレイテッド ザ セカンド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】ウィークス ジョン マクスウェル
(72)【発明者】
【氏名】ケリー スコット
(72)【発明者】
【氏名】チュアン フランク エフ
(72)【発明者】
【氏名】リャオ ペイ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャ ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】シエ フイ
(72)【発明者】
【氏名】ストックブリッジ カート
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BB03
4F050BB07
4F050LA01
(57)【要約】
履物物品が、アッパーに取り付けられてソール構造からアッパーの後部ヒールカラーの少なくとも一部に延びるヒールカップを含む。ヒールカップは、上部、中間部及び下部を有して一様に成形され、上部は、中間部よりも短い内外方向長さを有し、中間部及び下部は、踵を受け入れるように構成された凹状構造を形成する。上部は、ユーザが履物を履いている時に、ユーザの足の荷重下で第1の構成から第2の構成に変形することができる。第2の構成では、上部の少なくとも一部が第1の構成に対して低下し、ユーザの足の荷重が除去された後に第1の構成に戻ることができる。中間部は、中心部分よりも厚い周辺部分を含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物物品であって、
足を受け入れる靴開口部を定めるアッパー、及びソール構造と、
前記アッパーに取り付けられて、前記ソール構造から前記アッパーの後部ヒールカラーの少なくとも一部に広がるヒールカップと、
を含み、
前記ヒールカップは、上部、中間部及び下部を有して一様に成形され、前記上部は、前記中間部よりも短い内外方向長さを有し、前記中間部及び前記下部は、踵を受け入れるように構成された凹状構造を形成し、
前記上部は第1の構成を有し、
前記上部は、ユーザが履物を履いている時に前記ユーザの足の荷重下で第2の構成に変形することができ、
前記第2の構成において、前記上部の少なくとも一部が前記第1の構成に対して低下し、
前記上部は、前記ユーザの足の前記荷重が除去された後に前記第1の構成に戻ることができ、
前記中間部は、周辺部分及び中心部分を定め、
前記周辺部分は第1の厚みを有し、
前記中心部分は第2の厚みを有し、
前記第2の厚みは前記第1の厚みよりも小さい、
履物物品。
【請求項2】
前記第1の厚みは、前記周辺部分から前記中心部分に至る方向に前記第2の厚みまで徐々に減少する、
請求項1に記載の履物製品。
【請求項3】
前記上部の少なくとも一部及び前記下部の一部は、前記第1の厚みと概ね等しい又は前記第1の厚みよりも大きな厚みを有する、
請求項1に記載の履物物品。
【請求項4】
前記中心部分の下部領域が、前記靴開口部から離れる方向に外向きに延び、これにより前記靴開口部を前記内外方向に沿って広げる、
請求項1に記載の履物物品。
【請求項5】
前記第1の構成における前記上部は、床の水平面に垂直な垂直線に対して第1の角度の下向き傾斜を有し、前記第2の構成における前記上部は第2の角度の傾斜を有し、前記第2の角度は前記第1の角度よりも大きい、
請求項1に記載の履物物品。
【請求項6】
前記第2の構成において、前記中間部の前記中心部分の上部領域が前記第1の構成よりも前記履物物品の前方に近い、
請求項1に記載の履物物品。
【請求項7】
前記第2の構成において、前記中間部の前記周辺部分は、前記履物物品の内外方向幅に沿って前記第1の構成よりも大幅に外向きに延びる、
請求項1に記載の履物物品。
【請求項8】
前記第2の厚みは、前記第1の厚みの少なくとも1/6である、
請求項1に記載の履物物品。
【請求項9】
前記第1の厚みは3.07mm以下であり、前記第2の厚みは少なくとも0.5mmである、
請求項1に記載の履物物品。
【請求項10】
前記ヒールカップと前記足を受け入れる靴開口部の前方部分との間に弾性部材が配置される、
請求項1に記載の履物物品。
【請求項11】
タンをさらに含み、該タンに支持部材が取り付けられ、該支持部材は、前記ユーザが履物を履いている時に前記タンの変形を防ぐ、
請求項1に記載の履物物品。
【請求項12】
前記支持部材は、前記タンの一部を前記アッパーに接続するコネクタである、
請求項11に記載の履物物品。
【請求項13】
前記支持部材は、前記タンと少なくとも部分的に同延の剛性部材である、
請求項11に記載の履物物品。
【請求項14】
前記ヒールカップの前記上部及び前記中間部の少なくとも内面に発泡要素が配置され、該発泡要素は、足の挿入時に前記ユーザの踵によって圧縮され、前記発泡要素は、前記足が挿入された時点で前記ユーザの足首に圧力を加えることができる、
請求項1に記載の履物製品。
【請求項15】
前記発泡要素は、前記ヒールカップの前記上部の両側から前記アッパーの前記内面の少なくとも一部に沿って延びて前記発泡要素の側部を形成する、
請求項14に記載の履物物品。
【請求項16】
前記発泡要素は、側面部がテーパ状である、
請求項15に記載の履物物品。
【請求項17】
前記発泡要素の後部は内向きに湾曲し、前記ヒールカップの凹状構造に沿って垂直方向下向きにテーパ状である、
請求項16に記載の履物物品。
【請求項18】
履物物品であって、
足を受け入れる靴開口部を定めるアッパー、及びソール構造と、
前記アッパーに取り付けられて、前記ソール構造から前記アッパーの後部ヒールカラーの少なくとも一部に広がるヒールカップと、
を含み、
前記ヒールカップは、上部、中間部及び下部を有して一様に成形され、前記上部は、前記中間部よりも短い内外方向長さを有し、前記中間部及び前記下部は、踵を受け入れるように構成された凹状構造を形成し、
前記上部は第1の構成を有し、
前記上部は、ユーザが履物を履いている時に前記ユーザの足の荷重下で第2の構成に変形することができ、
前記上部は、前記ユーザの足の前記荷重が除去された後に前記第1の構成に戻ることができ、
前記第1の構成における前記上部は、床の水平面に垂直な垂直線に対して第1の角度の下向き傾斜を有し、
前記第2の構成における前記上部は第2の角度の傾斜を有し、前記第2の角度は前記第1の角度よりも大きく、
前記中心部分の下部領域が、前記靴開口部から離れる方向に外向きに延び、これにより前記靴開口部を前記内外方向に沿って広げる、
履物物品。
【請求項19】
前記中間部は、周辺部分及び中心部分を定め、前記周辺部分は第1の厚みを有し、前記中心部分は第2の厚みを有し、前記ヒールカップの前記第2の厚みは前記第1の厚みよりも小さい、
請求項18に記載の履物物品。
【請求項20】
履物物品のアッパーであって、
足を受け入れる靴開口部と、
実質的に管状であるU字型の発泡アンクルカラーと、
を含み、
前記アンクルカラーは、前記足を受け入れる靴開口部の最上部領域を形成し、
前記発泡アンクルカラーは、前記足を受け入れる靴開口部の周り及び上に少なくとも部分的に延び、
前記アンクルカラーは、足の挿入中にユーザの踵によって圧縮され、前記足が挿入された時点で前記ユーザの足首に圧力を加えることができ、
前記アンクルカラーは、その長さに沿って、前記最上部領域から前記履物物品の前方に向かって下向きの角度を形成する平坦な領域を有する、
アッパー。
【請求項21】
前記アンクルカラーの下部は、前記アッパーに付着する取り付け片を有する、
請求項20に記載のアッパー。
【請求項22】
前記アンクルカラーは、該アンクルカラーの上部に縫い糸又は縫い目を有していない、
請求項20に記載のアッパー。
【請求項23】
前記アンクルカラーの断面形状は、第1の部分及び第2の部分を有し、前記第1の部分は、第1の半径を有する略半円であり、前記第2の部分は、第2の半径を有する略半円であり、前記第1の半径は前記第2の半径よりも大きい、
請求項20に記載のアッパー。
【請求項24】
ヒールカップをさらに含み、該ヒールカップは第1の構成を有し、前記ヒールカップは、ユーザが履物を履いている時に前記ユーザの足の荷重下で第2の構成に変形することができ、前記ヒールカップは、前記ユーザの足が完全に前記履物に挿入された後に自動的に前記第1の構成に戻ることができ、前記アンクルカラーは前記ヒールカップの上方に位置する、
請求項20に記載のアッパー。
【請求項25】
履物物品のアッパーであって、
足を受け入れる靴開口部と、
実質的に管状であるU字型の発泡アンクルカラーと、
を含み、
前記アンクルカラーは、前記足を受け入れる靴開口部の最上部領域を形成し、
前記発泡アンクルカラーは、前記足を受け入れる靴開口部の周り及び上に少なくとも部分的に延び、
前記アンクルカラーは、足の挿入中にユーザの踵によって圧縮され、前記足が挿入された時点で前記ユーザの足首に圧力を加えることができ、
前記アンクルカラーは、その長さに沿って、前記最上部領域から前記履物物品の前方に向かって下向きの角度を形成する平坦な領域を有する、
アッパー。
【請求項26】
前記アンクルカラーの下部は、前記アッパーに付着する取り付け片を有する、
請求項25に記載のアッパー。
【請求項27】
前記アンクルカラーは、該アンクルカラーの上部に縫い糸又は縫い目を有していない、
請求項25に記載のアッパー。
【請求項28】
前記アンクルカラーの断面形状は、第1の部分及び第2の部分を有し、前記第1の部分は、第1の半径を有する略半円であり、前記第2の部分は、第2の半径を有する略半円であり、前記第1の半径は前記第2の半径よりも大きい、
請求項25に記載のアッパー。
【請求項29】
ヒールカップをさらに含み、該ヒールカップは第1の構成を有し、前記ヒールカップは、ユーザが履物を履いている時に前記ユーザの足の荷重下で第2の構成に変形することができ、前記ヒールカップは、前記ユーザの足が完全に前記履物に挿入された後に自動的に前記第1の構成に戻ることができ、前記アンクルカラーは前記ヒールカップの上方に位置する、
請求項25に記載のアッパー。
【請求項30】
前記ヒールカップは、周辺部分及び中心部分を含み、前記周辺部分は第1の厚みを有し、該第1の厚みは前記ヒールカップの最大厚を定め、前記中心部分は第2の厚みを有し、該第2の厚みは前記ヒールカップの最小厚を定め、前記第1の厚みは、前記周辺部分から前記中心部分に至る方向に前記第2の厚みまで徐々に減少する、
請求項25に記載のアッパー。
【請求項31】
履物物品であって、
足を受け入れる靴開口部を定めるアッパー、及びソール構造と、
前記アッパー上でありかつ前記ソール構造の上方に位置し、後方角を有する少なくとも2つの中空レセプタクルを有するヒールカウンタサポートと、
2つの端部を有する圧縮性要素と、
を含み、
前記2つの中空レセプタクルの各々は、前記圧縮性要素の一端を受け取り、
前記圧縮性要素は第1の構成を有し、
前記圧縮性要素は、ユーザが履物を履いている時に前記ユーザの足の荷重下で第2の構成に変形することができ、
前記圧縮性要素は、前記ユーザの足が完全に前記履物に挿入された後に自動的に前記第1の構成に戻ることができる、
履物物品。
【請求項32】
前記ヒールカウンタサポートは、前記アッパーの外層を定める、
請求項31に記載の履物物品。
【請求項33】
前記圧縮性要素は円筒形である、
請求項31に記載の履物物品。
【請求項34】
前記圧縮性要素は、前記足を受け入れる靴開口部の上方の内側クォータから外側クォータに延びる、
請求項31に記載の履物物品。
【請求項35】
前記圧縮性要素は、前記アッパーに取り付けられたトンネルを通じて延びる、
請求項31に記載の履物物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本開示は、2021年10月15日に出願された米国仮特許出願第63/256,521号に基づく優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、一般に靴のヒールカウンタ又はヒールカウンタの構成要素に関し、具体的には、着用者の足が靴に入りやすくするように設計されたヒールカウンタに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、スポーツシューズなどの履物を履く場合、ユーザは、靴の中に正しく足を入れてクォータが踵の下で潰れないようにするために片手又は両手を使用し、或いは靴とは別の靴べらを操作しなければならないことが多かった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の態様は、より容易な足の挿入を支援するように変形できる構造を有する履物物品(article of footwear)に関する。
【0005】
本発明の1つの態様では、ヒールカップは、上部、中間部及び下部を有して一様に成形されるのがよく、上部は中間部よりも短い内外方向長さを有する。中間部及び下部は、踵を受け入れるように構成された凹状構造を形成することができる。ヒールカップの上部は、自然な状態では第1の構成を有し、ユーザが履物を履いている時にユーザの足の荷重下で第2の構成に変形することができる。第2の構成では、上部の少なくとも一部が第1の構成に対して低下し、ユーザの足の荷重が除去された後に上部が第1の構成に戻ることができる。中間部は、第1の厚みを有する周辺部分と第2の厚みを有する中心部分とを含むことができ、第2の厚みは第1の厚みよりも小さい。
【0006】
本発明の別の態様では、ヒールカップの上部が、その自然な状態では第1の構成を有し、ユーザが履物を履いている時にユーザの足の荷重下で第2の構成に変形することができ、ユーザの足の荷重が除去された後にヒールカップが第1の構成に戻ることができる。第1の構成では、上部が、床の水平面に垂直な垂直線に対して第1の角度の下向き傾斜を有し、第2の構成では、上部が、第1の角度よりも大きい第2の角度の傾斜を有する。また、第2の構成では、靴開口部を内外方向に沿って広げるヒールカップの中心部分の下部領域が、靴開口部から離れる方向に外向きに延びる。
【0007】
本発明の別の態様では、履物物品のアッパーが、足を受け入れる靴開口部の最上部領域を形成する実質的に管状のU字形発泡アンクルカラーを含む。発泡アンクルカラーは、足を受け入れる靴開口部を少なくとも部分的に取り囲んで足を受け入れる靴開口部を覆って広がり、足の挿入時にユーザの踵によって圧縮することができる。アンクルカラーは、足が挿入された時点でユーザの足首に圧力を加えることができる。アンクルカラーは、その長さに沿って、最上部領域から履物物品の前方に向かって下向きの角度を形成する平坦な領域を有することもできる。
【0008】
本発明の別の態様では、アッパー上でありかつソール構造の上方にヒールカウンタサポートが位置する。ヒールカウンタサポートは、後方角(backward angles)を有する少なくとも2つの中空レセプタクルを有することができる。また、2つの中空レセプタクルの各々は、圧縮性要素(compressible component)の一端を受け取る。圧縮性要素は、その自然な状態では第1の構成を有し、圧縮性要素は、ユーザが履物を履いている時にユーザの足の荷重下で第2の構成に変形することができ、ユーザの足が履物に完全に挿入された後に自動的に第1の構成に戻ることができる。
【0009】
以下では、本発明の選択的な実施形態及び態様をほんの一例として説明する。各説明では、説明事項を示す図(「FIG.」)を参照する。本明細書に添付する図面又は写真内に示すいくつかの図は、左足用又は右足用のいずれかの履物を表すことができる。各図は、本発明の1又は2以上の部品又は要素を表す1又は2以上の識別子を含む。
【0010】
以下の図面を参照しながら様々な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】圧縮性ヒールカップの正面図である。
図2図1の圧縮性ヒールカップの斜視図である。
図3図1の圧縮性ヒールカップの側面図である。
図4A】圧縮構成にある図1の圧縮性ヒールカップの正面斜視図である。
図4B】未圧縮構成にある図1の圧縮性ヒールカップの正面斜視図である。
図4C】靴内に圧縮構成で配置された図1の圧縮性ヒールカップの上面図である。
図4D】靴内に未圧縮構成で配置された図1の圧縮性ヒールカップの上面図である。
図5】一連の十字梁を有するように構成されたヒールカップの正面図である。
図6A図1のヒールカップの最後部のアーク長の断面の概略図である。
図6B図1の線6-6で切り取った図1のヒールカップの断面図である。
図7】内部にヒールカップが配置されたヒールカウンタの側面図である。
図8図7のヒールカウンタの上面図である。
図9図7のヒールカウンタの斜視図である。
図10図8の線10-10で切り取った図8のヒールカウンタの断面図である。
図11】剛性ヒールカップを組み込んだヒールカウンタを有する靴の斜視図である。
図12図11の靴の側面図である。
図13図11の靴の背面図である。
図14】タン及びインステップサポートの底面図である。
図15】クッション付きライニングを有する靴の斜視図である。
図16図15のクッション付きライニングの側面図である。
図17図15のクッション付きライニングの斜視図である。
図18図15のクッション付きライニングの上面図である。
図19図18の線19-19で切り取った図18のクッション付きライニングの断面図である。
図20A】ヒールカウンタサポートを有する靴の側面図である。
図20B】ヒールカウンタサポートを有する靴の斜視図である。
図20C図20Aの靴の背面図である。
図21図20の靴のアッパーの底部の斜視図である。
図22図23の靴のソール及びヒールカウンタサポートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
靴が、ソール(sole)及びアッパー(upper)を含むことができる。ソールは、アウトソール(outsole)、ミッドソール(midsole)、及び/又は一体的に形成されたアウトソール及びミッドソールを含むことができる。アッパーは、トウボックス(toe box)、バンプ(vamp)、タン(tongue)、内側クォータ(medial quarter)、外側クォータ(lateral quarter)、及びヒールカウンタ(heel counter)を含むことができる。靴は、前足部(forefoot portion)、後部(rear portion)、内側面(medial side)及び外側面(lateral side)を有する。アッパーは、外層(exterior layer)、内層(interior layers)又は内部構造(interior structure)、及び/又は内側ライニング(inner lining)を含むことができる。アッパーは、ユーザが靴を履いている時にユーザの足を受け入れることができる靴開口部(shoe opening)を形成することができる。
【0013】
ヒールカウンタ又はアッパーの後部は、靴開口部内への容易な足の挿入を可能にする(単複の)構造を含むことができる。これらの構造は、足の容易な除去を支援することもできる。さらに、ヒールカウンタ又はアッパーの後部は、ユーザが靴を履いている時又は脱いでいる時に一時的に拡大することができる。靴開口部の拡大は、ユーザの手による補助を最小限しか又は全く伴わずにユーザの足によって発揮できる荷重をユーザがヒールカウンタ又はアッパーの後部に加えることによって開始することができる。本発明の他の実施形態では、ヒールカウンタが、十分な荷重を受けた時に圧縮可能であるとともに、未圧縮状態に戻ることもできる。ヒールカウンタの低下も、より容易なユーザの足の挿入を可能にすることができる。ヒールカウンタは、ユーザによる通常の靴の着用中に靴に足が挿入されると足の固定を保証又は強化する発泡要素などの圧縮性層を有することができる。
【0014】
圧縮性ヒールカップ
図1図10の実施形態を参照すると、ヒールカウンタ32は圧縮性ヒールカップ52を含むことができ、圧縮性ヒールカップ52は、アッパー16の内部構成要素とすることも、ヒールカップ52が足に接触するようにアッパー16の内側ライニング46の一部又は内側ライニング46に隣接するアタッチメントとすることも、或いはアッパー16の外層42の一部又は外層42の外面のアタッチメントとすることもできる。
【0015】
図1図4の例示的な実施形態を参照すると、ヒールカップ52は、実質的にヒールカバーに対応する形状を有し、洋梨様の形状に似たプロファイルを有する。図1図2に示すように、ヒールカップは、ヒールカップカラー84付近の内外方向幅(mediolateral width)の方が下部54の内外方向幅よりも小さい。
【0016】
図2に示すように、ヒールカップの最後部におけるヒールカップの上部64の内壁66は、床の水平面88に垂直な垂直線86に対して0度~90度の下向き傾斜を有することができる。この例示的な実施形態では、上部66が30度の下向き傾斜を有することができる。ヒールカップ52の上部64の内壁66は、靴開口部48の方を向いた凸状湾曲部を有することもできる。凸状湾曲部の上部は、30度の下向き傾斜A1を有する。凸状湾曲部の下部は、ヒールカップ52の踵を受ける部分の真上に延びる。凸状湾曲部の下部は、A1の下向き傾斜よりも小さな、垂直線86に等しい傾斜に近づくにつれて徐々に減少する下向き傾斜を有することができる。ヒールカップ52は、踵の後部を取り囲む凹状湾曲部を有する。ヒールカップ52の内側面及び外側面は、クォータの一部、さらにはバンプにまで延びてこれらの支持部を形成することもできる。
【0017】
ヒールカップ52の厚みは様々な位置で減少することができる。上端線88は、ヒールカップ52の内面及びヒールカップ52の外面のテーパリング(tapering)を有することができる。ヒールカップ52は、他の周縁部(perimeter edges)に沿って2~3mmなどの増加した厚みT1を有することができる。別の例示的な実施形態では、靴12の着脱時におけるヒールカップ52の柔軟性を高めるように、いくつかのエリアで厚みT1が減少することができる。1つの実施形態では、ヒールカップ52の厚みT1が、ヒールカップ52の周縁部のエリアを形成する周辺部分70から中間部58の中心部分又は中心領域50に向かって徐々に減少することができる。中間部58の中心領域50における最小厚T1は、以下に限定するわけではないが、ヒールカップ52の周縁部における最も厚い部分に対して1/4~1/6の、0.5~1mmなどの厚みとすることができる。上部の最も厚い領域は、下部の最も厚い領域よりも厚いことができる。中間部58の中心領域の減少した厚みT1は、ヒールカップ52が十分な荷重下で圧縮されることを可能にすることができる。別の実施形態では、厚みT1が、内外方向部分全体にわたって、或いは中間部58における領域及び/又は上部64における領域などの複数の領域において減少することができる。薄い領域は、ヒールカップ52の柔軟性及び屈曲性を高めることにより、靴12の着用中などのユーザの足の荷重下で必要な圧縮性をもたらすことができる。このような圧縮は、ヒールカップ52の上部64及び/又は中間部58を後方に移動させて靴開口部48を広げ、足を入れやすくすることができる。ヒールカップ52は、自然な状態の第1の構成から、ユーザが履物を履いている時にはユーザの足の荷重を受けて第2の構成に変形することができる。例えば、ヒールカップ52は、ヒールカップ52の上部64及び/又は中間部58がユーザの足の挿入を可能にするほど十分に後退するように部分的に圧縮することができる。例えば、図9を参照されたい。ユーザの足が靴12に挿入されると、ヒールカップ52はその未圧縮構成に戻ることができる。
【0018】
この実施形態に加えて、ユーザが靴12を履く時には、図4Aに示すようにヒールカウンタ32が圧縮されると、ヒールカップ52の凸状湾曲部の最上部又は靴12のヒールカウンタ32の最上部セグメントが後退し、足から離れて後方に広がることができる。この作用は、ユーザが低度の足底屈(plantar flexion)で靴開口部48に足を挿入することを可能にする。ヒールカップ52の圧縮中には、ヒールカップ52の一部が前足部の方向に向かって前進することができる。ヒールカップ52の変形は、付属のヒールカウンタ32が拡大してヒールカップの内側面及び外側面が外向きに移動することにより、靴開口部を広げることを含むことができる。靴開口部48の内外方向の広がりは、ユーザの足の前足部の容易な挿入などのより容易な進入を可能にする。1つの例示的な実施形態では、7.5cmの靴開口部が最大4cm又は約50%広がることができる。図4C及び図4Dを参照されたい。この広がりは、靴のサイズ及びヒールカップの柔軟性に応じて小さく又は大きくすることができる。いくつかの靴では、固定及び使用のニーズに応じて所望の広がりをより小さく又は大きくすることができる。
【0019】
図1図4に示すようなヒールカップ52の例示的な実施形態では、デュポンハイトレル(Dupont Hytrel)などのポリマー材料で形成されたヒールカップ52の厚みT1が、0.4ミリメートル~4ミリメートルの範囲に及ぶことができる。ヒールカップの厚みT1の範囲は、材料の所望の弾性特性及び耐久特性に応じて様々な領域で薄く又は厚くすることができる。例えば、中央部を周辺部よりも薄くすることができ、具体的には図6Bに示すように中心部分を薄くすることができる。中心部分は、内側縁及び外側縁から間隔を空けることができ、周縁部の方が大きな厚みを有することができる。他の好適な材料としては、ヒールカップの圧縮可能な特性をもたらすことができる他の熱可塑性エラストマー又は他のポリマーを挙げることができる。
【0020】
別の例示的な実施形態では、ヒールカップを、エッグクレート(egg crate)様の構成を形成する一連の十字梁を有するように構成することができる。図5に、斜め構成の梁を有する例示的な実施形態を示す。別の実施形態では、梁を縦横構成とすることもできる。梁間のアパーチャは、概ね均一なサイズとすることができる。梁は、均一な寸法であることも、又は厚み及び幅が異なることもできる。薄い又は幅が狭い梁は、指定位置における柔軟性及び圧縮性を高めるために使用され、厚い又は幅が広い梁は、様々な度合いの剛性支持を提供する。例えば、中間部、具体的には縁部から間隔を空けた中間部の中心部分では、梁を薄くすることができる。周囲の梁は中心部分よりも厚くすることができる。中心部分は、荷重下で変形するように高い柔軟性を可能にすることができる。
【0021】
例示的な実施形態では、ヒールカップ52の最後部が、図6Aの断面図に示すような概ねS波に似た全体的垂直断面形状を有することができる。S波の上部及び下部は、S波の上側アーク端部と下側アーク端部との間に引かれてヒールカウンタ52及びS波の変曲点(inflection point)に交差する水平面、すなわち正中線90を通る点P1において区別することができる。S波の上部のアークの振幅(AU)及び幅(WU)は、S波の下部のアークの振幅(AL)及び幅(WL)とは異なることができる。例示的な実施形態では、WUがWLの約0.44倍である。AUは、ALの約1/3である。1つの可能な実施形態では、WUが約2センチメートルであり、WLが約4.5センチメートルである。AUは約3ミリメートルであり、ALは約9ミリメートルである。このS字構成は、ヒールカップ52の最後部の断面から広がるエリアの断面においてAU/AL及びWU/WLの両方が減少し、ヒールカップ52の内側面及び外側面に沿った下部アークのみから成ることができる。例示的な実施形態のヒールカップ52の最後部における測定値は例示的なものであるように意図される。
【0022】
ヒールカップの中間部の中心領域は、単一のアパーチャ又は複数のアパーチャを有することができる。ヒールカップの中間部の中心領域をカラーの最大厚及び/又はベースの最大厚よりも少ない材料で構成できるのと全く同様に、ヒールカップの中間部の中心領域は、その周縁部を形成する材料よりも柔軟性の高い材料で構成することができる。中心領域が単一のアパーチャ、複数のアパーチャ、小さな厚み及び/又は柔軟性の高い材料を含む結果として得られる効果は、靴に対するユーザの足の出し入れを容易にする役割を果たすことができる。
【0023】
この例示的な実施形態に加えて、図10に示すように、ヒールカップ52は少なくとも内部発泡層92に取り付けることができる。図8図10に示すように、ヒールカップ52は、アッパー16のヒールカウンタ32の内部に配置することができる。発泡層92は、ヒールカップ52の内壁66及びヒールカップ52の外壁の両方を覆うことができる。発泡層92は、上部及び中間部の周囲でさらに靴開口部48内に突出して広がることができる。発泡層92は、ヒールカップ52の上部64及び中間部58又はその近傍で厚くなることにより、靴開口部48のカフの一部を形成することができる。厚い発泡層92では、発泡体がユーザの足の踵骨領域の上方に位置して足の足首領域の少なくとも一部の周囲に広がるため、ユーザの足が靴12に挿入された時点で足を固定することができる。発泡体は圧縮可能であるため、足の出し入れの最中に発泡体が踵によって圧縮され、足が挿入された時点で足首を保持することができる。
【0024】
剛性ヒールカップ
1つの例示的な実施形態では、靴12が、図11図13に示すようなシューアッパー16の後部36に位置するヒールカウンタ32を有することができる。ヒールカウンタ32はヒールカップ52を含むことができ、ヒールカップ52は、アッパー16の内部構成要素とすることも、ヒールカップ52が足に接触するようにアッパー16の内側ライニング46の一部又は内側ライニング46に隣接するアタッチメントとすることも、或いはアッパー16の外層42の一部又はアッパー16の外層42の外面のアタッチメントとすることもできる。
【0025】
ヒールカップは、足の踵を受け入れるように構成されたヒールカップを形成する下部を有することができる。ヒールカップの下部は、内側面及び外側面の両方の周囲の側方延長部(side extensions)をさらに有することができる。ヒールカップは、ヒールカップの下部の上方に位置して踵骨の上方で内向きに湾曲する、又はアパーチャで構成できる中間部を有することができる。ヒールカップは、ヒールカップの後部に位置するアパーチャを有することができる。この実施形態に加えて、ヒールカップは、足の荷重下で実質的に圧縮できない材料で構成された剛性ヒールカップとすることもできる。
【0026】
剛性ヒールカップの中間部には、踵の足の周囲での靴のフィット感を高めるために追加できる少なくとも1つのアパーチャを組み込むことができる。アパーチャを覆うアッパー材料層は、材料が踵の輪郭の周囲で伸びるように弾性材料を含むことができる。この弾性材料が伸長する際に生じる張力は、通常の靴の使用中における足の固定を強化することができる。
【0027】
ヒールカップの上部は、ヒールカップの上端から靴開口部48に向かって下向きに湾曲して延びる滑らかな曲率を有するように構成することができる。上部の内壁は、上部の湾曲した上縁からアッパー16の内部に向かって延びる全体的な下向き傾斜を有する。上部の内壁は、上部の滑らかな曲率及び下向き傾斜の角度が足の踵の靴12内への滑り込みを容易にできるように靴べらに似た寸法を有することができる。ヒールカップは、ユーザの足の荷重下で実質的に圧縮されない剛性材料で構成することができる。別の実施形態では、ヒールカップが多少の柔軟性を有することにより、ヒールカップの上部が、足の挿入及び/又は除去が容易になるように、靴開口部から下向きに離れて曲がるのに十分な、及び/又は靴開口部48を広げるのに十分な若干の柔軟性を有することができる。
【0028】
図11に示すように、ヒールカウンタ32の上縁72は、後部ヒールカラー74の弾性支持構造を形成することもできる。ヒールカップ52をアッパー16に組み込む際には、(単複の)ファブリック材料又は当業で周知の(単複の)好適な材料を使用してヒールカップ52を覆うことにより、アッパーの外層42及び内層又は内部構造44を形成することができる。ファブリック材料は、ヒールカップ52の上方に延びることによってヒールカラー74の延長部を形成することができる。
【0029】
図11のアッパー16の内側圧縮性層としては、発泡材料又は当業で周知のいずれかの(単複の)内側ライニング材料を使用することができる。発泡材料76は、ヒールカップ52の内面に接着されて、硬いヒールカップ材料に対するクッション性をもたらすことができる。発泡材料の厚みは、足に対する所望のクッション性又は支持力に応じて均一であることも、或いは特定の位置で変化することもできる。1つの例示的な実施形態では、上部64の内壁66に厚みを増した発泡材料が配置され、内壁66の内外方向長さに沿ってさらに少なくとも部分的に延びることができる。この発泡材料は、図10に示す発泡材料構成と同様に、靴12の着用時に踵の上方の足首の少なくとも一部の周囲で湾曲するように構成することができる。この実施形態では、ユーザの足の挿入中に足が発泡材料を圧縮することができる。足の挿入後には、発泡材料が完全な未圧縮状態に膨張し又は部分的に膨張することにより、靴12内での足の固定性を向上させることができる。薄い発泡材料を使用してヒールカップ52の他の部分を覆うこともできる。
【0030】
剛性ヒールカップ52は、アッパーの側面のヒールカップ52と足を受け入れる靴開口部48の前方部分との間に位置する少なくとも1つの弾性領域78を有するシューアッパー16と組み合わせて使用することができる。弾性領域78は、靴12に足を挿入しやすくするためにヒールカウンタ32の後部が一時的に後退して足を受け入れる靴開口部48を広げることを可能にする1又は2以上の弾性材料を有することができる。図11に示すように、弾性材料は、内側クォータ又は外側クォータ又はこれらの両方におけるガセット(gusset)などの形態の、アッパーの空隙内に固定されるように構成されたゴア片(gore piece)80とすることができる。弾性材料は、ヒールカップ52と、クォータ30、又はバンプ24、又は場合によってはタンに位置する上部との間のいずれかの間隔内に存在することができる。弾性材料は、ヒールカップ52と、バンプ24の、又は場合によってはタンの内側面及び外側面との間に延びる一連の弾性ストリップ又はウェビング(webbing)として構成することもできる。
【0031】
インステップサポート
いくつかの実施形態では、ユーザが靴を履く時に、場合によってはユーザの足の甲がインステップの一部又はタンを部分的にスロートエリア(throat area)内に引き込むのを防ぐのに役立つように、インステップサポートを使用することができる。
【0032】
図14に示すようなタン126を有するいくつかの実施形態では、タン126の上部132の内側面が内側弾性ストラップ128の第1の端部又は近位端に取り付けられ、タン126の上部132の外側面が外側弾性ストラップ130の第1の端部又は近位端に取り付けられる。タンの前方下部は直接アッパーに取り付けられる。内側及び外側弾性ストラップの各々は、その第2の端部又は遠位端をアッパーの内側ライニングに直接取り付けることができる。別の実施形態では、弾性ストラップが、それぞれ内側クォータ及び外側クォータの内側ライニングの開口部を通じて延びることができる。内側及び外側弾性ストラップの第2の端部は、それぞれソール、中敷き、又はアッパーの内側ライニングの領域で終端することができる。弾性ストラップは、ユーザが靴を履く時にタンの大まかな位置を維持するように機能する。
【0033】
他の実施形態では、タンの縁部の内側面及び外側面の各々又はタンの上部が、弾性材料製のガセットによってアッパーの内側クォータ及び外側クォータの内側ライニングに取り付けられる。同様に、ガセットも、ユーザが靴を履く時にタンの大まかな位置を維持するように機能することができる。タンの別の実施形態では、タンの内側縁部及び外側縁部の少なくとも一部をアッパーの内部及びタンに直接貼り付け又は縫い付けることができる。さらに、タンの上部では、タンを従来のタンよりも内外方向に沿って広く延長させ、この延長部分の縁部又は一部をアッパーの内部に貼り付け又は縫い付けることができる。
【0034】
他の実施形態では、インステップ又はタンのファブリックよりも硬いシート様材料を含むことができるインステップ又はタンサポートをタンの外面に取り付け、又は外側タン層と靴開口部に面する内側タン層との間に埋め込むことができる。インステップ又はタンサポートは、足の挿入中にインステップ又はタンが潰れるのを制限又は防止することができる。図14に示す1つの実施形態では、タンサポート134を、タンよりも剛質であるように構成された熱可塑性ポリマーなどの剛性材料とすることができる。いくつかの実施形態では、インステップ又はタンサポートが0.2mm~1mmの厚みを有することができる。インステップサポートは、インステップ又はタンと同じ広がりを有することも、或いはインステップ又はタンの内側面又は外側面を越えて広がることもできる。図14に示す実施形態では、タンサポート134をインステップ又はタンよりも狭く、短くすることができる。
【0035】
1つの実施形態では、ヒールカウンタからインステップ又はアイステイ(eyestay)に補強用クォータ要素(reinforcing quarter element)が延びることができる。図11図12のガセット80などのガセットが組み込まれている場合には、補強用クォータ要素が、ヒールカウンタ52から、ガセットの前方下縁部に沿ってカラーの上縁部を回ってインステップ、バンプ24に近い領域、又はタンに隣接するアイステイに延びることができる。補強用クォータ要素は、アッパー又はクォータ材料よりも剛質であることができる。補強用クォータ要素の材料は、革、プラスチック又は硬いファブリックで構成することができる。補強用クォータ要素は、接着又は縫い付けによってアッパーに取り付けることができる。補強用クォータ要素は、ガセットの前方下縁部及びカラー部分に沿って延びるストリップなどの細長い形状として構成することができる。補強用クォータ要素は、外面上に配置することも、或いはアッパー内に埋め込まれた層又はアッパーの内側ライニングの一部に沿った層などの、アッパーの内層とすることもできる。補強用クォータ要素は、靴に足が挿入されてヒールカップを後方に押した時に、クォータ及びインステップ領域が靴の開口部内に内向きに潰れ又は移動することに対して抵抗を与えるように、靴の開口部に大きな安定性をもたらすことができる。
【0036】
補強用クォータ要素が、編上靴(laced shoes)で使用されるアイステイ層と組み合わせて使用される場合、アイステイは、クォータ及びインステップが靴の開口部内に内向きに潰れ又は移動することに対する抵抗を与える際にさらなる構造的支持を加えることができる。従って、足がヒールカップを押してガセットが後方に引き伸ばされた時に、補強用クォータ要素が後方に大きく引っ張られることがない。従って、靴に足が挿入されてヒールカップを後方に押した時に、靴開口部がより広い開口部を達成することができる。
【0037】
圧縮性ライニング
いくつかの実施形態では、ヒールカウンタ及びヒール/アンクルカラーの内面が、発泡層などの圧縮性層を有する部分を有することができる。圧縮性層は、靴開口部内に広がることができる。圧縮性層は、靴の着脱中に荷重下で圧縮される。発泡層は、靴に足が挿入された後には完全に又は部分的に膨張して非圧縮状態になり、このような膨張は靴内における足の固定を強化することができる。
【0038】
1つの例示的な実施形態では、圧縮性層100が、少なくともアンクルカラー140の一部及びヒールカウンタ32の上部領域内に埋め込まれる。図15図19を参照されたい。圧縮性層100は靴の開口部内に広がる。靴を履いている最中には、足が圧縮性層に荷重を及ぼすことにより、圧縮性層の一時的圧縮を通じて靴の開口部を広げる。足が靴に挿入された後には、圧縮性層が部分的に又は完全に元々の形状に膨張する。圧縮性層が膨張すると、発泡体が足の周囲で膨張して足の快適性及び固定性を強化することができる。いくつかの実施形態では、圧縮性層が、ユーザの足の踵骨の上方及び/又は周囲、並びに足の足首領域の少なくとも一部の周囲に広がる。
【0039】
圧縮性層は、EVA又はポリウレタンフォームなどの発泡材料で構成することができる。圧縮性層の形状は、材料を成形して少なくとも2層の繊維材料間に圧縮性層を付着させることによって予め形成することができる。圧縮性層の形状は、靴の開口部及び/又は靴のアンクルカラー内に広がる少なくとも部分的に丸みを帯びた外面を有することができる。図17図18に示すように、圧縮性層の体積は、ヒールカウンタの後部では大きく、靴の両側では発泡層の内側部分の長手方向に沿ってテーパ状であることができる。圧縮性層は、垂直軸に沿ってテーパ状になり又は丸みを帯びることができ、この圧縮性層は、アンクルカラー140の上部では体積が大きく、アンクルカラー140の下部では体積が小さい。図18~19を参照されたい。圧縮性層は、さらなるヒールカップ又はヒールカウンタを必要とすることなくヒールカップ全体を形成するために使用することができる。或いは、圧縮性層は、図1に示すような圧縮性ヒールカップと組み合わせて使用することもできる。ヒールカップはアッパーの外面を定めることができ、ヒールカップはアッパーの内面を定めることができ、或いはヒールカップは、例えば圧縮性層内に埋め込まれた場合には内層を定めることができる。
【0040】
例示的な実施形態では、アンクルカラーから下向きに下部フランジ118が延びて、アッパーに付着するように構成される。下部フランジは、アンクルカラーをアッパーに固定するために必要ないずれかの寸法で構成することができる。下部フランジは、長さが変化することもできる。いくつかの実施形態では、下部フランジが、アンクルカラーから下向きに一切延びることなく、アッパーに取り付けられたアンクルカラーの部分を定めることができる。他の実施形態では、下部フランジが、部分的に又は完全にアッパーの底部まで下向きに延びることができる。いくつかの実施形態では、下部フランジを、ヒールカウンタを形成するように構成することができる。他の実施形態では、図1に示すようなヒールカップを部分的に又は完全に下部フランジに埋め込むことができる。
【0041】
圧縮性層100は、いずれかのタイプの繊維によって覆うことができる。この繊維は弾性であることができ、ウィッキング特性を有することができる。この繊維は、圧縮性層の外形に形状適合することができる。好ましい実施形態では、圧縮性層に熱可塑性ベースの接着剤などの接着剤が塗布された後に、圧縮性層が弾性繊維スリーブに挿入される。結果として得られた製品を、アンクルカラー140の所望のパターンに従って接着剤又は縫い付けなどのいずれかの手段で付着させることもできる。繊維は熱可塑性材料を含むこともでき、圧縮性層100が繊維スリーブに挿入された後に、熱を加えて繊維を圧縮性層100に融着させることもできる。好ましい実施形態では、アンクルカラー及び/又はヒールカウンタの一部を形成する予め形成された形状に繊維が適合するように蒸気を適用することができる。
【0042】
この例示的な実施形態に加えて、アンクルカラー140は、その上部に縫い糸又は縫い目を有しておらず、アッパー16に取り付けられる底部に縫い目を有することができる。シームレスなアンクルカラー140は、内側クォータから踵を回って外側クォータに延びることができる。ユーザの足が履物に挿入されると、ユーザの踵が圧縮性層100をヒールカップに押し付ける。ヒールカップは、ユーザの踵が圧縮性層100を押圧した時にアッパー16のヒール領域の一部の構造的完全性が崩壊するのを防ぎ、従ってユーザの手又は外部の靴べらを使用することなくユーザの足が容易に靴内に入ることを可能にすることができる。ユーザの踵が完全に靴内に挿入されると、圧縮性層が反発して踵骨の上方のユーザの踵の背面及び足首領域の一部の周囲に対して力を及ぼすことにより、快適さをもたらしてユーザの足を靴内に固定するのに役立つことができる。
【0043】
この例示的な実施形態に加えて、アンクルカラー140のシームレスな上部の断面は実質的に円形である。アンクルカラー140は、前方部分142及び後部144に分離することができる。前方部分及び後部の各々は、前方部分の半径の方が後部の半径よりも大きいほぼ円形の断面22又は半円形断面に類似する。図18図19を参照されたい。圧縮性層は、ヒールカウンタの内部構造に直接、又は圧縮性層の材料を覆う繊維スリーブを介して取り付けることができる。
【0044】
ヒールカウンタサポートを有する圧縮性ヒールカウンタ
別の例示的な実施形態では、図20図22に示すように、ヒールカウンタサポート96が部分的に靴の外層を形成して、アッパー16のヒール部分の周囲で靴の内側クォータから靴の外側クォータに広がることができる。他の実施形態では、ヒールカウンタサポートが、クォータの一部に沿って、クォータ全体に沿って、又はクォータ全体に沿って靴のバンプ部分までさらに広がることができる。ヒールカウンタサポート96は、靴の異なる領域で高さが変化することができる。例示的な実施形態では、ヒールカウンタサポート96の内側端及び外側端の高さが、ソール14の真上のアッパー16のベースにかけて徐々に減少する。ヒールカウンタサポート96は、アッパーのヒール部分の内側面における最大高さの内側領域と、アッパーのヒール部分の外側面における最大高さの外側領域とを有することができる。ヒールカウンタサポート96は、アッパー16の高さの少なくとも一部を延長させる。例示的な実施形態では、アッパー16の内側及び外側ヒール部分98の高さがラスティング面(lasting surface)116から約5センチメートルであり、ヒール部分の内側面及び外側面のヒールカウンタサポート96の最大高さがラスティング面116から約3センチメートルである。ヒールカウンタサポート96は、その最大高さの領域からアッパー16のヒール部分98の後部に沿ったほぼ均一な高さの領域にかけて徐々に高さが減少することができる。例示的な実施形態では、アッパー16のヒール部分98に沿った高さがラスティング面116の上方約3センチメートルまで延び、ヒールカウンタサポート96の後部を形成する部分のほぼ均一な高さがラスティング面116の上方約2センチメートルである。
【0045】
ヒールカウンタサポート96は、アッパー16の外面を部分的に形成することができる。ヒールカウンタサポート96は、アッパー16のヒール部分98の外面に接する内面を有することができる。ヒールカウンタサポート96は、その外面から内面にわたって変化する厚みを有することができる。例示的な実施形態では、角度付きストリップ(angular strips)102がヒールカウンタサポート96の増加した厚みの部分を形成する。角度付きストリップ102は、ヒールカウンタサポート96の剛性を高めるとともに、圧縮性要素100を受けるように構成することができる。
【0046】
例示的な実施形態では、角度付きストリップ102が、靴12の内側面及び外側面に、圧縮性要素100の端部が固定される中空突出部(hollowed protrusions)を有する。圧縮性要素100はパイプとすることができ、パイプの各端部は中空突出部102内に固定される。角度付きストリップ102の中空突出部は、圧縮性要素100の表面の周囲に部分的に又は完全に延びることができる。例示的な実施形態では、圧縮性要素100をポリオキシメチレンで形成することができ、或いは同様の耐久性と、足の荷重を支持するのに十分な剛性と、靴12のヒール部分の内側面から外側面に湾曲する柔軟性とを有する他のいずれかの材料で形成することができる。圧縮性要素100の中央セグメント104は、足首開口部の後方で靴12のヒールカウンタの上方に延びることができる。例示的な実施形態では、角度付きストリップ102を、圧縮性要素100が中空突出部102内から靴12の背面に向かって後方傾斜A2で延びるように、圧縮性要素100を斜めに受けるように設計することができる。圧縮性要素100の後方傾斜A2は、床88の水平面に対して約45度である。図20Aを参照されたい。ヒール開口部の後部においてアッパー16の後方ヒール部分98の上方に延びる発泡層92は、圧縮性要素100と同程度の後方傾斜A2を有することができる。発泡層92の後方傾斜A2は、ユーザが靴を履く時にユーザの足を靴12内に導くのに役立つことができる。
【0047】
圧縮性要素100の中央セグメント104は、アッパー16の最後部の背後に延びて、アッパー16の1又は2以上のガイドトンネル106を通ることができる。例示的な実施形態では、発泡層92に革材料のストリップが縫い付けられて、ヒール開口部の後部においてアッパーの上方に延びる。革のストリップの端部は互いに縫い付けられてガイドトンネル106を形成し、そこに圧縮性要素が通される。
【0048】
靴12を履く際には、圧縮性要素100及び/又は後方に傾斜した発泡層92をユーザの足が靴開口部から下向き及び後向きに押圧することができる。ユーザの足が完全に靴12内に入ると、圧縮性要素100及び後方に傾斜した発泡層92はその最初の上昇位置に戻る。
【0049】
発泡材料製のさらなる内部ヒールサポート114は、アキレス腱における足の固定を強化できる十分な厚みを有することができ、ユーザが靴12を履くと、さらなる内部ヒールサポート114の下方に踵骨が位置することができる。内側ヒールサポート114は、靴に足が挿入された時点で踵骨の上方に位置できるほど十分な高さを有することができる。
【0050】
この例示的な実施形態に加えて、靴は、踵の後部を受け入れるように構成された可撓性材料のヒールカップ52を含むことができる。1つの実施形態では、ヒールカップが、ヒールカウンタとして十分な支持を行う熱可塑性材料である。内部ヒールサポート114は、ユーザの踵に必要な快適性をもたらす発泡材料ライニングとすることができる。
【0051】
以上、特定の実施形態を参照しながら本発明を説明したが、ソール構造には本発明の意図する範囲から逸脱することなく修正及び変形を加えることができると理解されたい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒールカウンタを備える靴であって、
前記ヒールカウンタはヒールカップを含み、
前記ヒールカップは、上部、中間部及び下部を有して一様に成形され、
前記上部は、前記中間部よりも短い内外方向長さを有し、
前記中間部及び前記下部は、踵を受け入れるように構成された凹状構造を形成し、
前記上部は第1の構成を有し、前記上部は、ユーザが前記靴を履いている時に前記ユーザの足の荷重下で第2の構成に変形するように構成され
前記第2の構成において、前記上部の少なくとも一部が前記第1の構成に対して低下し、前記上部は、前記ユーザの足の前記荷重が除去された後に前記第1の構成に戻るように構成され
前記ヒールカップの最後部における前記ヒールカップの前記上部の内壁が、垂直線に対して下向き傾斜を有し、
前記ヒールカップの前記上部の前記内壁は、靴開口部の方を向いた凸状湾曲部を有し、
前記ヒールカップの厚みが、前記ヒールカップの周辺部分から前記中間部の中心領域に向かって徐々に減少する、
【請求項2】
前記ヒールカップは、圧縮可能なヒールカップである、請求項1に記載の
【請求項3】
前記中間部は、第1の厚みを有する前記周辺部分と、第2の厚みを有する中心部分とを含み、前記第2の厚みは前記第1の厚みよりも小さい、請求項1に記載の
【請求項4】
前記第2の構成への前記ヒールカップの前記変形は、前記ヒールカウンタが拡大して前記ヒールカップの内側面及び外側面が外向きに移動することにより前記靴の開口部を広げることを含む、請求項1に記載の
【請求項5】
前記周辺部分は、前記ヒールカップの周縁部のエリアを形成する、請求項1に記載の
【請求項6】
前記ヒールカップは、少なくとも内部発泡層に取り付けられている、請求項1に記載の
【請求項7】
前記内部発泡層は、前記ヒールカップの前記上部及び前記中間部の周囲で前記靴開口部内に突出して広がる
請求項に記載の
【請求項8】
前記内部発泡層は、前記靴開口部のカフの一部を形成する、請求項に記載の
【請求項9】
ヒールカウンタを備える靴であって、
前記ヒールカウンタはヒールカップを含み、
前記ヒールカップは、上部、中間部及び下部を有して一様に成形され、
前記上部は、前記中間部よりも短い内外方向長さを有し、
前記中間部及び前記下部は、踵を受け入れるように構成された凹状構造を形成し、
前記上部は第1の構成を有し、
前記上部は、ユーザが前記靴を履いている時に前記ユーザの足の荷重下で第2の構成に変形するように構成され
前記第2の構成において、前記上部の少なくとも一部が前記第1の構成に対して低下し、前記上部は、前記ユーザの足の前記荷重が除去された後に前記第1の構成に戻るように構成され
前記ヒールカップの厚みが、前記ヒールカップの周辺部分から前記中間部の中心領域に向かって徐々に減少し、
前記ヒールカップの最後部が、全体的にS波形の垂直断面形状を有し、
前記ヒールカップは、少なくとも内部発泡層に取り付けられ、
前記発泡層は、前記上部及び前記中間部の周囲で靴開口部内に突出して広がり、
前記発泡層は、足の挿入中に踵によって圧縮され、前記足が挿入されると前記ユーザの足の足首を保持するように構成される、
【請求項10】
前記ヒールカップは、圧縮可能なヒールカップである、請求項に記載の
【請求項11】
前記中間部は、第1の厚みを有する前記周辺部分と、第2の厚みを有する中心部分とを含み、前記第2の厚みは前記第1の厚みよりも小さい、請求項9に記載の靴。
【請求項12】
前記周辺部分は、前記ヒールカップの周縁部のエリアを形成する、請求項9に記載の靴。
【請求項13】
前記発泡層は、前記靴に前記足が挿入された後、完全に又は部分的に非圧縮状態まで膨張し、前記靴内における前記足の固定を強化するように構成されている、請求項9に記載の靴。
【請求項14】
前記第2の構成への前記ヒールカップの前記変形は、前記ヒールカウンタが拡大して前記ヒールカップの内側面及び外側面が外向きに移動することにより前記靴の開口部を広げることを含む、請求項9に記載の靴。
【請求項15】
前記ヒールカップの前記上部の内壁は、靴開口部の方を向いた凸状湾曲部を有する、請求項9に記載の靴。
【請求項16】
前記内部発泡層は、前記靴開口部のカフの一部を形成する、請求項9に記載の靴。
【国際調査報告】