(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ポリペプチド、融合型多量体タンパク質及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/31 20060101AFI20240920BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240920BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20240920BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240920BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240920BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240920BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240920BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240920BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20240920BHJP
B01J 20/285 20060101ALI20240920BHJP
B01J 20/283 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C07K14/31 ZNA
C07K19/00
C12N15/31
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
B01J20/281 R
B01J20/285 N
B01J20/285 T
B01J20/283
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566720
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2022140536
(87)【国際公開番号】W WO2024045430
(87)【国際公開日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】202211064221.6
(32)【優先日】2022-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517446393
【氏名又は名称】西安藍暁科技新材料股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUNRESIN NEW MATERIALS CO. LTD.
【住所又は居所原語表記】No.135, Jinye Rd, Xi’an Hi-tech Industrial Development Zone, Xi’an, Shaanxi, 710075, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 延軍
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲剛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲顧▼ 桐年
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 建涛
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】雷 暁菊
(72)【発明者】
【氏名】劉 瓊
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、タンパク質の生物学的機能の技術分野に関し、具体的には、(1)、SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、16位、25位、29位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に置換突然変異を有し、16位は、ロイシン又はバリンに置換により突然変異され、25位は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、又はトリプトファンに置換により突然変異され、29位は、アラニン、ロイシン、又はトレオニンに置換により突然変異され、49位は、アルギニン又はヒスチジンに置換により突然変異され、58位は、グリシン、イソロイシン、又はアラニンに置換により突然変異されたもの、(2)、(1)のポリペプチドと少なくとも80%以上の相同性を有し、16位、25位、29位、49位及び58位のうちの少なくとも1つの位置における置換突然変異を保持するものから選択される、ポリペプチド、融合型多量体タンパク質及びそれらの使用に関する。ポリペプチドは、高いアルカリ耐性及び高い担持量を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)、SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、16位、25位、29位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に置換突然変異を有し、
前記16位は、ロイシン又はバリンに置換により突然変異され、
前記25位は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、又はトリプトファンに置換により突然変異され、
前記29位は、アラニン、ロイシン、又はトレオニンに置換により突然変異され、
前記49位は、アルギニン又はヒスチジンに置換により突然変異され、
前記58位は、グリシン、イソロイシン、又はアラニンに置換により突然変異されたもの、
(2)、(1)の前記ポリペプチドと少なくとも80%以上の相同性を有し、前記16位、25位、29位、49位及び58位のうちの少なくとも1つの位置における置換突然変異を保持するものから選択される、ことを特徴とするポリペプチド。
【請求項2】
前記16位はロイシンに置換により突然変異され、及び/又は
前記25位はリジンに置換により突然変異され、及び/又は
前記29位はアラニンに置換により突然変異され、及び/又は
前記49位はアルギニンに置換により突然変異され、及び/又は
前記58位はグリシンに置換により突然変異される、ことを特徴とする請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドは、前記58位に前記置換突然変異を有し、前記16位、25位、29位及び49位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、又は
前記ポリペプチドは、49位に前記置換突然変異を有し、前記16位、25位、29位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、又は
前記ポリペプチドは、29位に前記置換突然変異を有し、前記16位、25位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、又は
前記ポリペプチドは、25位に前記置換突然変異を有し、前記16位、29位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、又は
前記ポリペプチドは、16位に前記置換突然変異を有し、前記25位、29位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、
任意に、前記ポリペプチドは、16位、25位、29位、49位及び58位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、16位、25位、49位及び58位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、49位及び58位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、29位、49位及び58位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、16位、25位及び29位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、16位及び25位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、49位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、25位の位置に置換突然変異を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチドが融合して形成された融合型多量体タンパク質を含む、ことを特徴とする融合型多量体タンパク質。
【請求項5】
ポリペプチドB及び/又はポリペプチドZmbをさらに含み、
前記ポリペプチドBは、
a、SEQ ID NO.2に示されるアミノ酸配列を有するもの、
b aのSEQ ID NO.2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するものから選択され、
前記ポリペプチドZmbは、
c、aのSEQ ID NO.2に示されるアミノ酸配列の少なくとも1つの位置にアミノ酸配列MLが挿入されたものであって、前記アミノ酸配列MLのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.3に示されるもの、
d、bの前記アミノ酸配列の少なくとも1つの位置にアミノ酸配列MLが挿入されたものから選択され、
任意に、前記ポリペプチドZmbのアミノ酸配列はSEQ ID NO.4に示される、ことを特徴とする請求項4に記載の融合型多量体タンパク質。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のポリペプチドをポリペプチドCmと表記し、
前記融合型多量体タンパク質は、少なくとも1つの前記ポリペプチドCm及び/又は少なくとも1つの前記ポリペプチドZmbを含み、
任意に、前記融合型多量体タンパク質は、1~6つの前記ポリペプチドCm及び/又は1~4つの前記ポリペプチドZmbを含み、
任意に、前記融合型多量体タンパク質は、4つの前記ポリペプチドCm及び/又は2つの前記ポリペプチドZmbを含む、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の融合型多量体タンパク質。
【請求項7】
A、SEQ ID NO.5に示されるアミノ酸配列を有するもの、
B、AのSEQ ID NO.5に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するものから選択される少なくとも1つの機能性ポリペプチドFLDをさらに含み、
任意に、前記機能性ポリペプチドFLDは、ポリペプチドCmとポリペプチドZmbとの間に位置し、
任意に、前記融合型多量体タンパク質は、N末端からC末端に向かって、4つのポリペプチドCm、1つの機能性ポリペプチドFLD、及び2つのポリペプチドZmbを含む、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の融合型多量体タンパク質。
【請求項8】
1)請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド又は請求項4~7のいずれか1項に記載の融合型多量体タンパク質をコードする、任意に、DNA又はRNAである核酸分子、
2)請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド又は請求項4~7のいずれか1項に記載の融合型多量体タンパク質を発現する発現カセット、組換えベクター、組換え微生物又はトランスジェニック細胞株、
3)1)の前記核酸分子を含む発現カセット、組換えベクター、組換え微生物又はトランスジェニック細胞株、
4)2)又は3)の前記発現カセットを含む組換えベクター、組換え微生物又はトランスジェニック細胞株、
5)2)又は3)又は4)の前記組換えベクターを含む宿主細胞のうちのいずれか1種を含み、
任意に、前記組換えベクターは、大腸菌発現ベクターpET-30a(+)から構築されたものであり、任意に、前記宿主細胞は大腸菌であり、任意に、前記大腸菌は大腸菌BL21(DE3)である、ことを特徴とする生物材料。
【請求項9】
抗体検出、単離又は精製における請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド又は請求項4~7のいずれか1項に記載の融合型多量体タンパク質の使用。
【請求項10】
請求項4~7のいずれか1項に記載の融合型多量体タンパク質とアフィニティークロマトグラフィー媒体担体とを含み、
任意に、前記アフィニティークロマトグラフィー媒体担体は、アガロースゲル、デキストラン、セルロース、水酸基を有する高分子ポリマー又はシリカゲルを含むが、これらに限定されない、ことを特徴とするアフィニティークロマトグラフィー媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年9月1日に中国特許庁に提出された、出願番号が202211064221.6、発明名称が「ポリペプチド、融合型多量体タンパク質及びそれらの使用」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全内容は引用によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
本願は、タンパク質の生物学的機能の技術分野に関し、具体的には、ポリペプチド、融合型多量体タンパク質及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
2022年2月までに、FDAは、計109種類の抗体薬を承認しており、世界の抗体薬市場は8年連続で10%以上の成長率を維持し、2021年に初めて2000億ドルを突破し、2020年よりも16.5%増となった。抗体の単離は抗体薬の生産において極めて重要であり、プロテインAアフィニティー精製は抗体の単離精製における重要なステップであり、現在、プロテインA充填剤はアルカリ性条件に対して敏感で、溶離条件があまりにも厳しく、抗体精製の市場規模の拡大中、プロテインA充填剤の担持量と耐アルカリ性などの性能に対する要求がますます高くなっている。黄色ブドウ球菌プロテインA(Staphylococal Protein A、SPA)は、プロテインAと略称し、黄色ブドウ球菌の細胞壁タンパク質の1種である。1983年に、SPA遺伝子はDugglebyらによってクローニングされ、大腸菌で発現した(Duggleby,C.J and Jones , SA:cloning and expression of the Staphylococcus aureus protein A gene in Escherichia coli.Nucl Acids Res.11(1983)3065-3076; Lofdahl, S., Guss, B., et al; Gene for Staphylococcal protein A.Proc.Natl.Acid.Sci.USA 80(1983)697-701)。SPAタンパク質分子は、E、D、A、B、及びCの5つの高度に相同なドメインとXドメインの計6つのドメインからなる。SPA上のE、D、A、B、及びCの5つの高度に相同なドメインはすべてIgGに結合する能力を持っているとともに、ほとんどの哺乳類のIgGのFc及びFab領域に結合することができる(Jansson B, Uhlen M, Nygren PA. All individual domains of staphylococcalprotein A show Fab binding. FEMS Immunol Med Microbiol. 1998 Jan;20(1):69-78.)ことから、SPAは、抗体精製のためのアフィニティーリガンドとして固相担体に結合され、抗体の単離精製に広く応用されている。
【0004】
抗体の生産過程で、検体中に脂質、核酸、タンパク質、多糖類、細胞断片などの不純物が含まれているか、ウイルス細菌によって汚染されているため、このような不純物は抗体の精製過程でプロテインAアフィニティー充填剤に非特異的に吸着され、充填剤を汚染する可能性があり、また、プロテインAカラムも定期的にその場洗浄(Clean In Place、CIP)を必要とする。プロテインA充填剤の使用寿命を延ばし、充填剤使用中のカラム効果を確保するため、充填剤の洗浄と再生が必要である。現在最も広く使用されている手段は、0.1~1MのNaOHを用いたクロマトカラムの原位置洗浄である。しかし、天然のプロテインAは0.1Mより高い濃度のNaOHに耐えることができず(Garshasb, Rigi, Samira, et al. A comprehensive review on staphylococcal protein A (SpA): Its productionand applications.[J]. Biotechnology & Applied Biochemistry, 2019.)、遺伝子工学の発展により、組換えプロテインAの耐アルカリ性が徐々に向上したが、工業的生産により抗体薬を製造する場合は組換えプロテインAの消費量が多く、その使用寿命が限られ、生産コストが増加し、このため、より高い担持量、より高い耐アルカリ性を持つプロテインA充填剤は、抗体メーカーが追求する必然のトレンドであり、充填剤メーカーの開発の方向でもある。
【0005】
抗体は、一般的に、FabとFcドメインからなり、抗体Fab領域とSPAとの相互作用は溶離pH値に深刻な影響を与え、IgGの解離と溶離にはより低いpH値が必要となり、SPA分子のBドメインの29位のグリシンがアラニンに置換されたBドメイン突然変異体は、Fab領域とほとんど相互作用せず、Bドメインの23位のアスパラギンがトレオニンに置換された場合、Bドメイン突然変異体の耐アルカリ性が著しく向上する(Amritkar V, Adat S, Tejwani V, et al. Engineering Staphylococcal Protein A for high-throughput affinity purification of monoclonal2antibodies[J]. Biotechnology advances, 2020:107632.)。しかし、改変されたSPA分子も、現在のSPA分子の高担持、高耐アルカリ性の要求を満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本願が解決しようとする技術的課題は、ポリペプチド、融合型多量体タンパク質及びそれらの使用を提供することにあり、得られる融合型多量体タンパク質は、より高い担持量、より高い耐アルカリ性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これに鑑み、本願は以下の技術的解決手段を提供する。
本願の一態様によれば、
(1)、SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、16位、25位、29位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に置換突然変異を有し、
前記16位は、ロイシン又はバリンに置換により突然変異され、
前記25位は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、又はトリプトファンに置換により突然変異され、
前記29位は、アラニン、ロイシン、又はトレオニンに置換により突然変異され、
前記49位は、アルギニン又はヒスチジンに置換により突然変異され、
前記58位は、グリシン、イソロイシン、又はアラニンに置換により突然変異されたもの、
(2)、(1)の前記ポリペプチドと少なくとも80%以上の相同性を有し、前記16位、25位、29位、49位及び58位のうちの少なくとも1つの位置における置換突然変異を保持するものから選択されるポリペプチドを提供する。
【0008】
任意に、前記16位はロイシンに置換により突然変異され、及び/又は
前記25位はリジンに置換により突然変異され、及び/又は
前記第29はアラニンに置換により突然変異され、及び/又は
前記49位はアルギニンに置換により突然変異され、及び/又は
前記58位はグリシンに置換により突然変異される。
【0009】
任意に、前記ポリペプチドは、58位に前記置換突然変異を有し、前記16位、25位、29位及び49位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、又は
前記ポリペプチドは、49位に前記置換突然変異を有し、前記16位、25位、29位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、又は
前記ポリペプチドは、29位に前記置換突然変異を有し、前記16位、25位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、又は
前記ポリペプチドは、25位に前記置換突然変異を有し、前記16位、29位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、又は
前記ポリペプチドは、16位に前記置換突然変異を有し、前記25位、29位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、
任意に、前記ポリペプチドは、16位、25位、29位、49位及び58位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、16位、25位、49位及び58位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、49位及び58位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、29位、49位及び58位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、16位、25位及び29位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、16位及び25位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、49位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、25位の位置に置換突然変異を有する。
【0010】
本願の別の態様によれば、ポリペプチドが融合して形成された融合型多量体タンパク質を含む、融合型多量体タンパク質を提供する。
【0011】
前記融合型多量体タンパク質は、ポリペプチドB及び/又はポリペプチドZmbをさらに含み、
前記ポリペプチドBは、
a、SEQ ID NO.2に示されるアミノ酸配列を有するもの、
b aのSEQ ID NO.2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するものから選択され、
前記ポリペプチドZmbは、
c、aのSEQ ID NO.2に示されるアミノ酸配列の少なくとも1つの位置にアミノ酸配列MLが挿入されたものであって、前記アミノ酸配列MLのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.3に示されるもの、
d、bの前記アミノ酸配列の少なくとも1つの位置にアミノ酸配列MLが挿入されたものから選択され、
任意に、前記ポリペプチドZmbのアミノ酸配列はSEQ ID NO.4に示される。
【0012】
前記融合型多量体タンパク質は、前記ポリペプチドをポリペプチドCmと表記し、
前記融合型多量体タンパク質は、少なくとも1つの前記ポリペプチドCm及び/又は少なくとも1つの前記ポリペプチドZmbを含み、
任意に、前記融合型多量体タンパク質は、1~6つの前記ポリペプチドCm及び/又は1~4つの前記ポリペプチドZmbを含み、
任意に、前記融合型多量体タンパク質は、4つの前記ポリペプチドCm及び/又は2つの前記ポリペプチドZmbを含む。
【0013】
前記融合型多量体タンパク質は、
A、SEQ ID NO.5に示されるアミノ酸配列を有するもの、
B、AのSEQ ID NO.5に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するものから選択される少なくとも1つの機能性ポリペプチドFLDをさらに含み、
任意に、前記機能性ポリペプチドFLDは、ポリペプチドCmとポリペプチドZmbとの間に位置し、
任意に、前記融合型多量体タンパク質は、N末端からC末端に向かって、4つのポリペプチドCm、1つの機能性ポリペプチドFLD、及び2つのポリペプチドZmbを含む。
【0014】
本願の又の態様によれば、
1)前記ポリペプチド又は前記融合型多量体タンパク質をコードする、任意に、DNA又はRNAである核酸分子、
2)前記ポリペプチド又は前記融合型多量体タンパク質を発現する発現カセット、組換えベクター、組換え微生物又はトランスジェニック細胞株、
3)1)の前記核酸分子を含む発現カセット、組換えベクター、組換え微生物又はトランスジェニック細胞株、
4)2)又は3)の前記発現カセットを含む組換えベクター、組換え微生物又はトランスジェニック細胞株、
5)2)又は3)又は4)の前記組換えベクターを含む宿主細胞のうちのいずれか1種を含み、任意に、前記組換えベクターは、大腸菌発現ベクターpET-30a(+)から構築されたものであり、任意に、前記宿主細胞は大腸菌であり、任意に、前記大腸菌は大腸菌BL21(DE3)である、生物材料を提供する。
【0015】
抗体検出、単離又は精製における前記ポリペプチド又は前記融合型多量体タンパク質の使用。
【0016】
本願の又の態様によれば、前記融合型多量体タンパク質とアフィニティークロマトグラフィー媒体担体とを含み、任意に、前記アフィニティークロマトグラフィー媒体担体は、アガロースゲル、デキストラン、セルロース、水酸基を有する高分子ポリマー又はシリカゲルを含む、アフィニティークロマトグラフィー媒体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本願の技術的解決手段には、次のような利点がある。
【0018】
1.本願は、(1)、SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、16位、25位、29位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に置換突然変異を有し、前記16位は、ロイシン又はバリンに置換により突然変異され、前記25位は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、又はトリプトファンに置換により突然変異され、前記29位は、アラニン、ロイシン、又はトレオニンに置換により突然変異され、前記49位は、アルギニン又はヒスチジンに置換により突然変異され、前記58位は、グリシン、イソロイシン、又はアラニンに置換により突然変異されたもの、(2)、(1)の前記ポリペプチドと少なくとも80%以上の相同性を有し、前記16位、25位、29位、49位及び58位のうちの少なくとも1つの位置における置換突然変異を保持するものから選択される、ポリペプチドを提供し、ポリペプチドが、高い耐アルカリ性及び高い担持量を有することによって、このポリペプチドを用いて製造された融合型多量体タンパク質は、より高い担持量、及びより高い耐アルカリ性を有するようになる。
2.本願による融合型多量体タンパク質は、前記ポリペプチドが融合して形成された融合型多量体タンパク質を含み、より高い担持量及びより高い耐アルカリ性を有する。
3.本願による融合型多量体タンパク質は、アミノ酸配列がSEQ ID NO.4に示されるポリペプチドZmbをさらに含み、実験結果より、前記ポリペプチドZmbドメインで充填剤を製造して抗体精製に用いる場合、溶離緩衝液のpH値が3.3から4.3に上昇することが示された。
4.本願による融合型多量体タンパク質は、少なくとも1つの機能性ポリペプチドFLDをさらに含み、前記FLDの挿入により、融合型多量体タンパク質の三次元構造の立体障害効果が低減し、それによって、融合型多量体タンパク質がIgGと再結合することが可能になり、融合型多量体タンパク質全体の担持量が増加する。
5.本願によるアフィニティークロマトグラフィー媒体は、前記融合型多量体タンパク質とアフィニティークロマトグラフィー媒体担体とを含み、前記融合型多量体タンパク質は、クロマトグラフィー媒体担体に結合されて、抗体の検出、単離又は精製のためのアフィニティークロマトグラフィー媒体となれる。
【0019】
本発明の具体的な実施形態又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、具体的な実施形態又は従来技術の記述のために使用した図面を簡単に説明するが、明らかに、以下に記述した図面は本発明のいくつかの実施形態であり、当業者にとって、創造的な労力をせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本願の実施例5におけるBL21-pET30a-CmZmb菌液のSDS-PAGEゲル電気泳動の結果であり、レーン1は乳糖誘導前、レーン2は乳糖誘導後、レーン3は溶解液上清1、レーン4は溶解液上清2、レーン5は溶解液上清3、レーン6は溶離液1、レーン7は溶離液2、レーン8はタンパク質marker(陝西普羅安蔕生物科技発展有限公司より提供され、品番:10225-1)である。
【
図2】本願の実施例5におけるBL21-pET30a-CmZmb菌液の精製タンパク質の結果であり、レーン1は溶解液上清2、レーン2はフロースルー、レーン3は溶出液、レーン4は4%B液による不純物溶離、レーン5は8%B液による不純物溶離、レーン6は40%B液による目的タンパク質溶離、レーン7は100%B液による目的タンパク質溶離である。
【
図3】本願の実験例1における融合型多量体タンパク質の担持量の動的試験結果である。
【
図4】本願の実験例2における融合型多量体タンパク質の耐アルカリ性の動的試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願をより良く理解するために以下の実施例が提供されるが、以下の実施例が提供されるが、本願は前記最良な実施形態に限定されるものではなく、これらの実施例は本願の内容及び保護範囲を制限するものではなく、誰かが本願から示唆された、又は本願と他の先行技術の特徴とを組み合わせた結果として、本願と同一又は類似する製品のいずれかが本願の特許範囲に含まれる。
【0022】
具体的な実験ステップ又は条件が実施例に記載されていない場合、当該分野の文献に記載されている従来の実験ステップの動作又は条件に従って実施することができる。使用した試薬又は器具は製造メーカーが明記されていない場合、いずれも市場で購入することができる通常の試薬製品である。
【0023】
下記の実施例におけるポリペプチド、融合型多量体タンパク質のコード遺伝子は、南京金瑞生物科技有限公司により合成された。
【0024】
本願において、アミノ酸残基は、リジン(K)、グリシン(G)、アラニン(A)、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)の略字であってもよい。
【0025】
実施例1 ポリペプチドCm
1.ポリペプチドCmの耐アルカリ性のスキームを探索するために、本実施例では、具体的には、以下のような一連のポリペプチドCmを設計した。
ポリペプチドC(天然):アミノ酸配列がSEQ ID NO.1に示される。
ポリペプチドCm(K58G):SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、58位のリジン(K)がグリシン(G)に置換により突然変異されただけである。
ポリペプチドCm(K49R):SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、49位のリジン(K)がアルギニン(R)に置換により突然変異されただけである。
ポリペプチドCm(G29A):SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、29位のグリシン(G)がアラニン(A)に置換により突然変異されただけである。
ポリペプチドCm(E25K):SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、25位のグルタミン酸(E)がリジン(K)に置換により突然変異されただけである。
ポリペプチドCm(I16L):SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、16位のイソロイシン(I)がロイシン(L)に置換により突然変異されただけである。
ポリペプチドCm(K58G、K49R、G29A、E25K、I16L):SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、
58位のリジン(K)がグリシン(G)に置換により突然変異され、
49位のリジン(K)がアルギニン(R)に置換により突然変異され、
29位のグリシン(G)がアラニン(A)に置換により突然変異され、
25位のグルタミン酸(E)がリジン(K)に置換により突然変異され、
16位のイソロイシン(I)がロイシン(L)に置換により突然変異された。
ポリペプチドCm(K58G、K49R、E25K、I16L):SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、
58位のリジン(K)がグリシン(G)に置換により突然変異され、
49位のリジン(K)がアルギニン(R)に置換により突然変異され、
25位のグルタミン酸(E)がリジン(K)に置換により突然変異され、
16位のイソロイシン(I)がロイシン(L)に置換により突然変異された。
ポリペプチドCm(K58G、K49R):SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、
58位のリジン(K)がグリシン(G)に置換により突然変異され、
49位のリジン(K)がアルギニン(R)に置換により突然変異された。
ポリペプチドCm(K58G、K49R、G29A):SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、
58位のリジン(K)がグリシン(G)に置換により突然変異され、
49位のリジン(K)がアルギニン(R)に置換により突然変異され、
29位のグリシン(G)がアラニン(A)に置換により突然変異された。
ポリペプチドCm(G29A、E25K、I16L):SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、
29位のグリシン(G)がアラニン(A)に置換により突然変異され、
25位のグルタミン酸(E)がリジン(K)に置換により突然変異され、
16位のイソロイシン(I)がロイシン(L)に置換により突然変異された。
ポリペプチドCm(E25K、I16L):SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、
25位のグルタミン酸(E)がリジン(K)に置換により突然変異され、
16位のイソロイシン(I)がロイシン(L)に置換により突然変異された。
さらに、上記ポリペプチドCmに係る16位の置換突然変異は、バリンに関するものでもよい。
25位に係る置換突然変異は、アルギニン、ヒスチジン、又はトリプトファンに関するものでもよい。
29位に係る置換突然変異は、ロイシン又はトレオニンに関するものでもよい。
49位に係る置換突然変異は、ヒスチジンに関するものでもよい。
58位に係る置換突然変異は、イソロイシン又はアラニンに関するものでもよい。
【0026】
実施例2
本実施例は、以下のようなポリペプチドZmbを設計した。
ポリペプチドB:アミノ酸配列がSEQ ID NO.2に示される。
ポリペプチドZmb:SEQ ID NO.2に示されるアミノ酸配列の20位と21位のアミノ酸の間に、SEQ ID NO.3に示されるアミノ酸配列MLが挿入されており、すなわち、ポリペプチドZmbのアミノ酸配列はSEQ ID NO.4に示される。
【0027】
実施例3
本実施例では、アミノ酸配列がSEQ ID NO.5に示される機能性ポリペプチドFLDを設計した。
【0028】
実施例4 融合型多量体タンパク質
本実施例では、実施例1~3のポリペプチドを用いて、以下のような一連の融合型多量体タンパク質を設計した。
CC:N末端からC末端に向かって順に6つのポリペプチドC(天然)が融合したアミノ酸配列であり、配列はC-C-C-C-C-Cである。
CmCm(K58G):N末端からC末端に向かって順に6つのポリペプチドCm(K58G)が融合したアミノ酸配列である。
CmCm(K49R):N末端からC末端に向かって順に6つのポリペプチドCm(K49R)が融合したアミノ酸配列である。
CmCm(G29A):N末端からC末端に向かって順に6つのポリペプチドCm(G29A)が融合したアミノ酸配列である。
CmCm(E25K):N末端からC末端に向かって順に6つのポリペプチドCm(E25K)が融合したアミノ酸配列である。
CmCm(I16L):N末端からC末端に向かって順に6つのポリペプチドCm(I16L)が融合したアミノ酸配列である。
CmCm(K58G、K49R、G29A、E25K、I16L):N末端からC末端に向かって順に6つのポリペプチドCm(K58G、K49R、G29A、E25K、I16L)が融合したアミノ酸配列である。
CmCm(K58G、K49R、E25K、I16L):N末端からC末端に向かって順に6つのポリペプチドCm(K58G、K49R、E25K、I16L)が融合したアミノ酸配列である。
CmCm(K58G、K49R):N末端からC末端に向かって順に6つのポリペプチドCm(K58G、K49R)が融合したアミノ酸配列である。
CmCm(K58G、K49R、G29A):N末端からC末端に向かって順に6つのポリペプチドCm(K58G、K49R、G29A)が融合したアミノ酸配列である。
CmCm(G29A、E25K、I16L):N末端からC末端に向かって順に6つのポリペプチドCm(G29A、E25K、I16L)が融合したアミノ酸配列である。
CmCm(E25K、I16L):N末端からC末端に向かって順に6つのポリペプチドCm(E25K、I16L)が融合したアミノ酸配列である。
CDB:N末端からC末端に4つのポリペプチドC(天然)、1つの機能性ポリペプチドFLD、2つのポリペプチドBが融合したアミノ酸配列であり、配列はC-C-C-C-FLD-B-Bである。
CB:N末端からC末端に向かって4つのポリペプチドC(天然)、2つのポリペプチドBが融合したアミノ酸配列であり、配列はC-C-C-B-Bである。
CmZmb:N末端からC末端に向かって順に4つのポリペプチドCm、1つの機能性ポリペプチドFLD、2つのポリペプチドZmbが融合したアミノ酸配列であり、配列はCm-Cm-Cm-Cm-FLD-Zmb-Zmbであり、そのアミノ酸配列はSEQ ID NO.6に、その遺伝子配列はSEQ ID NO.7に示される。
さらに、上記融合型多量体タンパク質中のポリペプチドCmが関与する
16位の置換突然変異は、バリンに関するものであってもよい。
25位の置換突然変異は、アルギニン、ヒスチジン又はトリプトファンに関するものであってもよい。
29位の置換突然変異は、ロイシン又はトレオニンに関するものであってもよい。
49位の置換突然変異は、ヒスチジンに関するものであってもよい。
58位の置換突然変異は、イソロイシン又はアラニンに関するものであってもよい。
【0029】
実施例5 融合型多量体タンパク質の製造
本実施例では、実施例4で設計した融合型多量体タンパク質を以下のプロセスに従って製造した。
【0030】
(1)組換えベクターの構築
融合型多量体タンパク質のコード遺伝子と発現ベクターpET-30a(+)をNdeI(生工生物工程(上海)有限公司より購入、B600120)とHindIII(生工生物工程(上海)有限公司より購入、B600184)の二重酵素で切断し、対応する断片を回収した後にライゲーションし(DNAゲル回収キット、上海碧雲天生物技術有限公司より購入、D0056)、ライゲーション産物と大腸菌TOP10コンピテント細胞を均一に混合し、氷上に30min放置し、水浴鍋にて42℃で90sヒートショックし、氷上に3min放置し、形質転換を行い、室温LB液体培地を100μl加え、シェーカーにおいて37℃、220回転数で振盪培養を60分間行い、菌液を均一に混合してカナマイシン(生工生物工程(上海)有限公司より購入、A506636)抵抗性プレートに塗布して、このプレートを逆様にして、37℃で一晩培養し、カナマイシン抵抗性を有する形質転換体をスクリーニングして、融合型多量体タンパク質を発現させた組換えベクターをスクリーニングした。例えば、スクリーニングした融合型多量体タンパク質CmZmbを発現させた組換えベクターをpET-30a-CmZmbと命名し、このことから類推して、他の融合型多量体タンパク質の組換えベクターを命名した。
【0031】
(2)組換え菌の構築
新鮮なBL21(DE3)菌液を30min氷浴処理し、4℃、1000gで10min遠心分離し、沈殿を0.1mol/L MgCl2-CaCl2(80mmol MgCl2と80mmol CaCl2、MgCl2とCaCl2は国薬集団化学試薬有限公司より購入、分析純粋、残りの化学試薬は純度が同じ)で再懸濁させ、4℃、1000gで10min遠心分離し、その後、0.1mol/L CaCl2溶液で重懸濁させ、BL21(DE3)コンピテント細胞を製造し、ステップ(1)でスクリーニングした組換えベクター(例えばpET-30a-CmZmb)を大腸菌BL21(DE3)コンピテント細胞に形質転換し、カナマイシン含有プレートにおいて形質転換体をスクリーニングし、配列決定の結果、正しい組換え形質転換体と確認し、BL21-pET30a-CmZmbと命名し、このことから類推して、他の融合型多量体タンパク質の組換え形質転換体を命名した。
【0032】
(3)組換え菌の発酵
配列決定の結果、正しい組換え形質転換体(例えばBL21-pET30a-CmZmb)をLB培地に接種量0.5%(体積%)で接種し、OD600が0.8となるように37℃で一晩培養し、最終濃度が10g/Lの乳糖を加えて誘導し、3~5時間後に遠心分離して、菌液を収集した。
【0033】
菌液(それぞれ乳糖誘導前の菌液、乳糖誘導後の菌液)40μlに5×注入緩衝液(陝西普羅安蔕生物科技発展有限公司より提供、品番:10137-1)10μlを加え、沸騰水で5min煮て、20μl注入してSDS-PAGEゲル電気泳動を行った結果、
図1に示すように、乳糖誘導BL21-pET30a-CmZmb菌液では、44kDの位置に1本の新しいタンパク質バンドが現れ(
図1のレーン2を参照)、乳糖誘導していないBL21-pET30a-CmZmb菌液では、このようなバンドが現れない或いはこのバンドの色が薄い(
図1のレーン1を参照)。このことから、融合型多量体タンパク質CmZmbがBL21-pET30a-CmZmbで発現を誘導されたことが示された。同様に、実施例4の他の融合型多量体タンパク質でも、発現が誘導されることに成功した。
【0034】
(4)精製
20mM PB(リン酸水素二ナトリウム十二水和物水溶液5.8018g/L及びリン酸水素二ナトリウム二水和物水溶液0.5928g/Lを用いて調製し、緩衝液の調製方式はいずれも通常の方法)を含む溶液に、分析用塩化ナトリウムを11.688g/Lの濃度に添加し、酸アルカリ水溶液でpHをpH7.4に調整して、緩衝液A液を得た。上記ステップ(3)で収集した菌液を緩衝液A液により重量比1:10で懸濁させ、分解時間をそれぞれ20min、30min、40minとし、超音波破砕し、室温で遠心分離した後、上清を収集し、分解液上清1、2、3を得た。同時に、溶解液上清2をニッケルカラムアフィニティー精製にかけた(下記の溶解液上清2(溶解時間30min)のように、40%B液が溶離するまでニッケルカラムアフィニティー精製を行い、溶離液を収集し、得られた溶離液を2つに分け、溶離液1と溶離液2とした)。SDS-PAGE電気泳動検出の結果、
図1のレーン3~7に(3種類の分解時間を用いたサンプルの結果に差がなく、
図1のレーン3~5のように、レーン3の分解液上清1は分解時間20minに対応し、レーン4の分解液上清2は分解時間30minに対応し、レーン5の分解液上清3は分解時間40minに対応する。
図1のレーン6~7のように、溶離液1と溶離液2の結果に明らかな差がなかった)に示すように、融合型多量体タンパク質の大部分は大腸菌ペリプラズムに発現し、沈殿中の発現量は比較的に少なかった。
【0035】
溶解液上清2(溶解時間30min)をニッケルカラムアフィニティー精製にかけ、具体的な精製ステップを以下に示す。精製装置(AKTA、Purifier)の流速を3ml/minに調整し、緩衝液A液を用いてカラムを平衡化し、A280nm(検出波長)、A231nm(検出波長)、及びA215nm(検出波長)のベースラインを約10CVだけ安定化させ、ベースラインをゼロにした。Aポンプでサンプル(溶解液上清60~120ml)を注入した。ベースラインを約10CVだけ安定化させるまで、緩衝液A液でカラムをリンスした。ベースラインを約10CVだけ安定化させるまで、8%(体積%)B液(B液は緩衝液A液に最終濃度が17.02g/Lのイミダゾールを加えたもの、イミダゾールは国薬集団化学試薬有限公司より購入)で不純物を洗浄した。ベースラインを約10CV安定化させるまで、40%(体積%)のB液で目的のタンパク質を溶離した。B液(100%(体積%))で約3CV溶離し、ベースラインを安定化させた(このタンパク質は、A280nmの吸収が小さく、A215nmの吸収が高いが、イミダゾールはA215nmへの影響が大きく、タンパク質を収集する際には収集範囲を繰り返し確認する必要があるが、濃度が低い場合、A215nm又はA231nmのピーク開始時に収集を開始し、濃度が高い場合、A280nmのピーク開始時に収集する)。ベースラインを約10CV安定化させるまで、緩衝液A液を用いてカラムとクロマトグラフィーシステムを洗浄した。特徴的なピークが精製された組換えタンパク質を収集し、例えば、融合型多量体タンパク質CmZmbの純度が80%以上になった(結果は
図2のレーンを参照)。同様に他の融合型多量体タンパク質の純度も80%以上になった。
【0036】
実施例6 アフィニティークロマトグラフィー媒体の製造
本実施例では、以下のようにアフィニティークロマトグラフィー媒体を製造した。
【0037】
実施例5で得られた融合型多量体タンパク質を用いて、アフィニティークロマトグラフィー媒体をそれぞれ製造した。具体的なステップは以下に示される。アガロースゲル4FF(西安藍暁科技新材料股▲ふん▼有限公司)100gに、臭化シアンを2~30mL(本実施例では15ml)加え、-10℃~10℃(本実施例では0℃)で15~30min(本実施例では22min)反応させ、2~50mL(本実施例では25ml)のトリエチルアミンを加え、-10℃~10℃(本実施例では0℃)で15~60min(本実施例では35min)反応させ、アセトンで洗浄した。融合型多量体タンパク質を純水で0.2~2g(本実施例では1g)溶解し、上記アガロースゲル4FFに加えてpH=7~11(本実施例ではpH=8)に調整し、0~20℃(本実施例では10℃)で一晩反応させた後、pH=7~11のエタノールアミン溶液を0.1~10%(体積%、本実施例では5%)加え、0~40℃(本実施例では20℃)で一晩反応させて、アフィニティークロマトグラフィー媒体を得た。製造されたアフィニティークロマトグラフィー媒体は、20%(体積%)のエタノール溶液中に保存された。
【0038】
実験例1 融合型多量体タンパク質充填剤の動的担持量試験
AKTA pureクロマトグラフィーシステムを用いてプログラミングして実験を行い、カラム媒体を実施例6で製造されたアフィニティークロマトグラフィー媒体とし、1.1mlのアフィニティークロマトグラフィー媒体を用いて20%(体積%)のエタノール水溶液2mlで均一に混合し、定流ポンプ(上海青浦濾西儀器場により購入)を用いて8rpm/minの流速でカラムに入れ、検出波長を280nmに設定し、カラム前圧を0.3MPaに設定し、カラムをシステムに接続し、流速を1.0ml/minに設定し、移動相B1で10CV溶離し、移動相A1で15CV平衡化した。サンプル(2mg/mlIgG、北京索莱宝科技有限公司により購入、SP031)を流速0.2ml/minで注入し、280nmまで注入したところの吸収値は90mAuであった。一定溶離移動相100%(体積%)として移動相B1を設定し、流速を1.0ml/minにし、ベースラインが安定するまで溶離し、溶離液を収集した。最後に、移動相A1を用いて10ml再生し、流速を1.0ml/minとした。吸収値はプログラムの起動から終了まで動的に検出されていた。
【0039】
移動相A1:20mm PB、0.15M NaClを含む混合液、pH7.4
移動相B1:0.1Mクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、pH3.3
動的担持量=(V
A×C
0)/V
C(mg/ml gel)
C
0はサンプル中の目的タンパク質の濃度であり、V
Aは突破曲線中の目的サンプルの濃度が5%C
0に達する時の注入総体積であり、V
Cは総カラムベッド体積である(劉瑩、曾建筑、于▲びょう▼ら。アフィニティークロマトグラフィー充填剤の動的担持量の測定方法:中国特許出願公開第114280208号明細書参照)。
CmZmb、CC、CDB、及びCB(CC、CDB、及びCB中のポリペプチドCはいずれもポリペプチドC(天然))で製造された充填剤について上記の方法に従って動的担持量を検出した結果、
図3に示すように、CmZmbで製造された充填剤の動的担持量は、CC、CDB、及びCBで製造された充填剤よりも高かった。
【0040】
以上の方法により実施した結果、溶離緩衝液pH4.3(すなわち移動相B1はpH4.3)の場合、CmZmb、CC、CDB及びCBの溶離効率はそれぞれ86.6%、56.8%、87.9%及び62.3%であり、CmZmbで製造されたアフィニティークロマトグラフィー媒体は、pH4.3緩衝液で目的タンパク質を溶離するときの効率が他のアフィニティークロマトグラフィー媒体と比較して高かった。
【0041】
実験例2 融合型多量体タンパク質充填剤の耐アルカリ性試験
AKTA pureクロマトグラフィーシステムを用いてプログラミングして実験を行い、カラム媒体を実施例6で製造されたアフィニティークロマトグラフィー媒体とし、1.1mlのアフィニティークロマトグラフィー媒体を用いて20%(体積%)エタノール水溶液2mlで均一に混合し、定流ポンプ(上海青浦濾西儀器場により購入)を用いて8rpm/minの流速でカラムに入れ、検出波長を280に設定し、カラム前圧を0.3MPaに設定し、カラムをシステムに接続し、緩衝液A2を用いて1mL/minの流速で10min平衡化し、カラム中のエタノールを洗い流し、0.5M NaOHを用いて0.2mL/minの流速でカラムを15min洗浄した後、緩衝液A2を用いて0.5mL/minの流速でカラムを10min洗浄し、このことを100サイクル繰り返し、10サイクルごとに動的担持量を測定した(動的担持量の計算方法は実験例1参照)。緩衝液A2:20mMPB、0.15M NaClを含む混合液、pH7.4。
【0042】
ポリペプチドC(天然)又はポリペプチドCmのみで融合型多量体タンパク質を製造した場合の耐アルカリ性試験の結果の一部について、
図4を参照する。
【0043】
【0044】
2.CmZmb、CC、CDB及びCBで製造された充填剤の耐アルカリ性試験の結果は
図4に示され、この図からみると、CmZmbで製造された充填剤の耐アルカリ性試験における動的担持量百分率はCC、CDB、及びCBより高かった。
【0045】
明らかなように、上記実施例は明瞭に説明するための例に過ぎず、実施形態を限定するものではない。当業者にとって、上記説明に基づき様々な形態の変更や修正を行うことができる。ここで、あらゆる実施形態を網羅する必要がなく、網羅することもできない。これから派生する明らかな変更や修正は依然として本発明創造の保護範囲内にある。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)、SEQ ID NO.1に示されるプロテインAの天然Cドメインと比較して、16位、25位、29位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に置換突然変異を有し、
前記16位は、ロイシン又はバリンに置換により突然変異され、
前記25位は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、又はトリプトファンに置換により突然変異され、
前記29位は、アラニン、ロイシン、又はトレオニンに置換により突然変異され、
前記49位は、アルギニン又はヒスチジンに置換により突然変異され、
前記58位は、グリシン、イソロイシン、又はアラニンに置換により突然変異されたもの、
(2)、(1)の前記ポリペプチドと少なくとも80%以上の相同性を有し、前記16位、25位、29位、49位及び58位のうちの少なくとも1つの位置における置換突然変異を保持するものから選択される、ことを特徴とするポリペプチド。
【請求項2】
前記16位はロイシンに置換により突然変異され、及び/又は
前記25位はリジンに置換により突然変異され、及び/又は
前記29位はアラニンに置換により突然変異され、及び/又は
前記49位はアルギニンに置換により突然変異され、及び/又は
前記58位はグリシンに置換により突然変異される、ことを特徴とする請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドは、前記58位に前記置換突然変異を有し、前記16位、25位、29位及び49位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、又は
前記ポリペプチドは、49位に前記置換突然変異を有し、前記16位、25位、29位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、又は
前記ポリペプチドは、29位に前記置換突然変異を有し、前記16位、25位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、又は
前記ポリペプチドは、25位に前記置換突然変異を有し、前記16位、29位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、又は
前記ポリペプチドは、16位に前記置換突然変異を有し、前記25位、29位、49位及び58位から選択される少なくとも1つの位置に前記置換突然変異を有し、
任意に、前記ポリペプチドは、16位、25位、29位、49位及び58位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、16位、25位、49位及び58位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、49位及び58位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、29位、49位及び58位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、16位、25位及び29位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、16位及び25位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、49位の位置に置換突然変異を有し、又は
任意に、前記ポリペプチドは、25位の位置に置換突然変異を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載のポリペプチドが融合して形成された融合型多量体タンパク質を含む、ことを特徴とする融合型多量体タンパク質。
【請求項5】
ポリペプチドB及び/又はポリペプチドZmbをさらに含み、
前記ポリペプチドBは、
a、SEQ ID NO.2に示されるアミノ酸配列を有するもの、
b aのSEQ ID NO.2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するものから選択され、
前記ポリペプチドZmbは、
c、aのSEQ ID NO.2に示されるアミノ酸配列の少なくとも1つの位置にアミノ酸配列MLが挿入されたものであって、前記アミノ酸配列MLのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.3に示されるもの、
d、bの前記アミノ酸配列の少なくとも1つの位置にアミノ酸配列MLが挿入されたものから選択され、
任意に、前記ポリペプチドZmbのアミノ酸配列はSEQ ID NO.4に示される、ことを特徴とする請求項4に記載の融合型多量体タンパク質。
【請求項6】
請求項1
又は2に記載のポリペプチドをポリペプチドCmと表記し、
前記融合型多量体タンパク質は、少なくとも1つの前記ポリペプチドCm及び/又は少なくとも1つの前記ポリペプチドZmbを含み、
任意に、前記融合型多量体タンパク質は、1~6つの前記ポリペプチドCm及び/又は1~4つの前記ポリペプチドZmbを含み、
任意に、前記融合型多量体タンパク質は、4つの前記ポリペプチドCm及び/又は2つの前記ポリペプチドZmbを含む、ことを特徴とする請求項
4に記載の融合型多量体タンパク質。
【請求項7】
A、SEQ ID NO.5に示されるアミノ酸配列を有するもの、
B、AのSEQ ID NO.5に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するものから選択される少なくとも1つの機能性ポリペプチドFLDをさらに含み、
任意に、前記機能性ポリペプチドFLDは、ポリペプチドCmとポリペプチドZmbとの間に位置し、
任意に、前記融合型多量体タンパク質は、N末端からC末端に向かって、4つのポリペプチドCm、1つの機能性ポリペプチドFLD、及び2つのポリペプチドZmbを含む、ことを特徴とする請求項
4に記載の融合型多量体タンパク質。
【請求項8】
1)請求項1
又は2に記載のポリペプチ
ドをコードする、任意に、DNA又はRNAである核酸分子、
2)請求項1
又は2に記載のポリペプチ
ドを発現する発現カセット、組換えベクター、組換え微生物又はトランスジェニック細胞株、
3)1)の前記核酸分子を含む発現カセット、組換えベクター、組換え微生物又はトランスジェニック細胞株、
4)2)又は3)の前記発現カセットを含む組換えベクター、組換え微生物又はトランスジェニック細胞株、
5)2)又は3)又は4)の前記組換えベクターを含む宿主細胞のうちのいずれか1種を含み、
任意に、前記組換えベクターは、大腸菌発現ベクターpET-30a(+)から構築されたものであり、任意に、前記宿主細胞は大腸菌であり、任意に、前記大腸菌は大腸菌BL21(DE3)である、ことを特徴とする生物材料。
【請求項9】
抗体検出、単離又は精製における請求項1
又は2に記載のポリペプチ
ドの使用。
【請求項10】
請求項
4に記載の融合型多量体タンパク質とアフィニティークロマトグラフィー媒体担体とを含み、
任意に、前記アフィニティークロマトグラフィー媒体担体は、アガロースゲル、デキストラン、セルロース、水酸基を有する高分子ポリマー又はシリカゲルを含むが、これらに限定されない、ことを特徴とするアフィニティークロマトグラフィー媒体。
【国際調査報告】