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特表2024-535169VOC燃料供給システムとそれを備えた船舶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】VOC燃料供給システムとそれを備えた船舶
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20240920BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20240920BHJP
   F02M 25/00 20060101ALI20240920BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240920BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240920BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20240920BHJP
   F02B 43/00 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
F02M21/02 N
B63H21/38 B
F02M21/02 301A
F02M21/02 M
F02M25/00 H
F02M25/00 L
F02M25/00 N
F01N3/08 B
F01N3/24 L
F23K5/00 303
F02B43/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574699
(86)(22)【出願日】2023-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 KR2023011753
(87)【国際公開番号】W WO2024035115
(87)【国際公開日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】10-2022-0099439
(32)【優先日】2022-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0103578
(32)【優先日】2023-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ペ,ヨン ホ
【テーマコード(参考)】
3G091
3K068
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AA21
3G091AB04
3G091BA14
3G091CA08
3G091CA17
3K068AA01
3K068AB12
3K068CA11
(57)【要約】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)をエンジンの燃料に供給するためのVOC燃料供給システムおよびその方法、ならびにVOCを燃料とする船舶に関する。
本発明によるVOC燃料供給システムは、ガスを燃料として使用しガス燃料モードで運転するエンジン;揮発性有機化合物(VOC;Volatile Organic Compounds)を燃料として前記エンジンに供給するVOC供給部;前記VOC供給部とエンジンとを接続し、前記VOC供給部からエンジンに気体状態のVOC燃料が移送される経路である燃料供給ライン;と、前記燃料供給ラインに設けられて前記エンジンの上流で前記VOC燃料に含まれた液体状態の再凝縮VOCを濾過するドレンフィルタ;を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを燃料として使用しガス燃料モードで運転するエンジン;
揮発性有機化合物(VOC;Volatile Organic Compounds)を燃料として前記エンジンに供給するVOC供給部;
前記VOC供給部と前記エンジンとを接続し、前記VOC供給部から前記エンジンに気体状態のVOC燃料が移送される経路である燃料供給ライン;
前記燃料供給ラインに設けられ、前記エンジンの上流で前記VOC燃料に含まれた液体状態の再凝縮VOCを濾過するドレンフィルタ;を備えることを特徴とする、
VOC燃料供給システム。
【請求項2】
前記ドレンフィルタは、
下部に設けられた漏斗状のホッパ;
上部に設けられ、一端は前記燃料供給ラインから延長し、他端は前記ホッパに向かって折曲した形状であって、前記ドレンフィルタ内に前記VOC燃料を流入させるガス流入パイプ;を備え、
前記VOC燃料に含まれた液体状態の再凝縮VOCは前記ホッパの下に集められ、液体状態の再凝縮VOCを分離した気体状態のVOC燃料のみ排出されることを特徴とする、
請求項1に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項3】
前記エンジンに前記VOCより高い熱量のガス燃料を供給するガス供給部;
前記ガス供給部から供給されたガス燃料と前記VOC供給部から供給されたVOC燃料とを混合した混合ガス燃料を前記エンジンに供給する燃料混合部;をさらに備え、
前記エンジンは前記混合ガス燃料をガス燃料として供給されることを特徴とする、
請求項1に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項4】
前記ドレンフィルタに集められた液体状態の再凝縮VOCを回収する再凝縮VOCリサイクル手段;をさらに備えることを特徴とする、
請求項1に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項5】
前記再凝縮VOCリサイクル手段は、
前記ドレンフィルタの上流の燃料供給ラインに設けられ、前記エンジンに供給されるガス燃料の温度を測定する燃料温度測定部;
前記燃料温度測定部の温度測定値が予め設定した温度より低くなったら、前記VOC供給部の動作を停止する制御部;をさらに備えることを特徴とする、
請求項4に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項6】
前記再凝縮VOCリサイクル手段は、
前記ドレンフィルタの水位を測定するレベル測定部;
前記ドレンフィルタからエンジンへの流体の流れを遮断するためのフィルタ遮断バルブ;
前記フィルタ遮断バルブとエンジンとの間、および前記エンジンからガス燃料をベントするためのベントバルブ;、
前記レベル測定部による水位測定値が予め設定した水位に達すると、前記VOC供給部の動作を停止し、前記フィルタ遮断バルブを閉鎖し、前記ベントバルブを開放する制御部;を備えることを特徴とする、
請求項4に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項7】
前記再凝縮VOCリサイクル手段は、
前記ドレンフィルタで集められた液体状態の再凝縮VOCを排出するLVOC回収バルブ;
前記ドレンフィルタから排出された再凝縮VOCを貯蔵するLVOC回収タンク;
前記LVOC回収タンクで貯蔵された再凝縮VOCを前記VOC供給部に供給するLVOC移送ポンプ;を備えることを特徴とする、
請求項4に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項8】
前記再凝縮VOCリサイクル手段は、
前記ドレンフィルタに不活性ガスを供給し、前記ドレンフィルタで集められた再凝縮VOCを前記ドレンフィルタから排出する不活性ガス供給部;をさらに備えることを特徴とする、
請求項4に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項9】
前記再凝縮VOCリサイクル手段は、
前記ドレンフィルタに不活性ガスを供給するときに前記VOC供給部とドレンフィルタとの間を遮断するための二重遮断バルブユニット;
前記ドレンフィルタに不活性ガスを供給するときに前記ドレンフィルタとエンジンとの間を遮断するためのフィルタ遮断バルブ;
前記燃料供給ラインからドレンフィルタに供給される流体の圧力を測定する燃料圧力測定部;
前記ドレンフィルタで集められた液体状態の再凝縮VOCを排出するLVOC回収バルブ;
前記燃料圧力測定部の圧力測定値が予め設定した圧力に達すると、前記LVOC回収バルブを開放する制御部;を備えることを特徴とする、
請求項8に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項10】
前記二重遮断バルブユニットは、
前記二重遮断バルブユニットを通過する流体の圧力を調整するバルブを備え、
前記制御部は、前記燃料圧力測定部の圧力測定値が予め設定した圧力変化率を超えないように前記二重遮断バルブユニットの開度を制御して、前記ドレンフィルタに供給される不活性ガスの圧力を調整することを特徴とする、
請求項9に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項11】
前記燃料供給ラインを冷却して燃料供給ラインに残っている気体状態のVOCを凝縮させるための熱媒体が循環する冷却ライン;
前記冷却ラインに設けられた冷却バルブ;
前記ガス燃料モードが停止したら前記冷却バルブが開放するように制御する制御部;をさらに備えることを特徴とする、
請求項1に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項12】
前記エンジンから排出される排気ガスを脱窒するための還元剤を貯蔵する還元剤タンク;
前記還元剤タンクの温度を維持するための熱媒体を循環させるチラーユニット;を備え、
前記冷却ラインは、前記還元剤タンクを冷却して高温になった熱媒体が前記チラーユニットに再循環するラインから分岐して前記燃料供給ラインの端部に接続することを特徴とする、
請求項11に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項13】
前記燃料供給ラインに不活性ガスを供給して前記燃料供給ラインに残っている液体状態のLVOCを排出する不活性ガス供給部;
前記不活性ガス供給部と前記燃料供給ラインとを接続するLVOCパージライン;
前記LVOCパージラインに設けられたLVOCパージバルブ;
前記燃料供給ラインの温度を測定するパージ温度測定部;をさらに備え、
前記制御部は、前記パージ温度測定部の温度測定値が予め設定した設定値に達したら前記LVOCパージバルブを開放して、不活性ガスが前記燃料供給ラインに供給され、前記不活性ガスによって前記燃料供給ラインからLVOCを排出させることを特徴とする、
請求項11に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項14】
前記ドレンフィルタには、前記燃料供給ラインから排出された不活性ガスとLVOCが仮貯蔵され、
前記ドレンフィルタから排出されたガスを移送する第4ベントライン;
前記第4ベントラインに設けられたVOCベントバルブ;
前記ドレンフィルタから排出された液体を移送するLVOC回収ライン;
前記LVOC回収ラインに設けられたLVOC回収バルブ;
前記燃料供給ラインの圧力を測定する燃料圧力測定部;をさらに備え、
前記制御部は、前記燃料圧力測定部の圧力測定値が予め設定した設定値に達すると、前記VOCベントバルブおよびLVOC回収バルブを開放することを特徴とする、
請求項13に記載のVOC燃料供給システム。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載のVOC燃料供給システムを備え、VOCを燃料として使用する船舶。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)をエンジンの燃料として供給するVOC燃料供給システムおよび方法、ならびにVOCを燃料として使用する船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性有機化合物(VOC;Volatile Organic Compounds)は、原油輸送船(oil tanker)に設けられて原油貨物を貯蔵した原油貯蔵タンク、またはエンジンの燃料として使用される燃料油を貯蔵した燃料油貯蔵タンクなどから液体状態のオイルが揮発して生成される煤である。
【0003】
VOCの組成は、貯蔵タンクに貯蔵したオイルのほぼすべての成分、すなわち有機化合物を含有している。VOCを大気中に放出させると、太陽光の作用を受けて窒素酸化物と光化学反応しオゾン及び光化学酸化性物質が生成され、光化学スモッグを誘発したり、オゾン層破壊、温室効果に影響を与えるなど環境汚染を引き起こす。また、ベンゼンなどの物質は発がん性物質であるため人体にも非常に有害である。
【0004】
VOCは有害性の問題のため国際海事機関などでは一部港湾でのVOC排出を一部規制している。それだけでなく、VOCの大気放出はそれだけの有効物質の損失であるため、VOCを大気放出するのではなく回収して効果的に処理する方法を講じる必要がある。近年、VOCを燃料油としてリサイクルする技術を適用して船舶のエネルギー効率を高める研究も進められている。
【0005】
VOCは重炭化水素の含量が高くてガスエンジンのメタン価の要件を満たさないため、従来は改質器を用いてVOCを軽質炭化水素であるメタンに改質して供給するしかなかった。
【0006】
改質器を用いた燃料供給は、周期的に改質器の性能を維持のためのメンテナンスが必要であり、改質反応(reforming)のためには多量の蒸気などの熱エネルギーが必要となり、追加的な燃料燃焼が必須であるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前述した問題点を改善し、VOCをエンジンの燃料として安定的に供給するVOC燃料の供給システム及び方法、並びにVOCを燃料として使用する船舶を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本発明の一実施形態では、ガスを燃料として使用するエンジン;揮発性有機化合物(VOC;Volatile Organic Compounds)を燃料として前記エンジンに供給するVOC供給部;前記VOC供給部とエンジンとを接続し、前記VOC供給部からエンジンまで気体状態のVOC燃料が移送される経路である燃料供給ライン;と、前記燃料供給ラインに設けられ、前記エンジンの上流から前記VOC燃料に含まれた液体状態の再凝縮VOCを濾過するドレンフィルタ;を備えた、VOC燃料の供給システムが提供される。
【0009】
好ましくは、ドレンフィルタは、下部に設けられた漏斗状のホッパ;と、上部に設けられ、一端が前記燃料供給ラインから延長し、他端がホッパに向かって折曲した形状であって、前記ドレンフィルタ内に前記VOC燃料を流入させるガス流入パイプ;を備え、前記VOC燃料に含まれた液体状態の再凝縮VOCは前記ホッパーの下に集められ、液体状態の再凝縮VOCを分離した気体状態のVOC燃料のみ排出される。
【0010】
好ましくは、前記エンジンに前記VOCより高い熱量のガス燃料を供給するガス供給部;と、前記ガス供給部から供給されたガス燃料と前記VOC供給部から供給されたVOC燃料とを混合した混合ガス燃料を前記エンジンに供給する燃料混合部;とをさらに備え、前記エンジンは前記混合ガス燃料をガス燃料として供給される。
【0011】
好ましくは、前記ドレンフィルタで集められた液体状態の再凝縮VOCを回収する再凝縮VOCリサイクル手段;をさらに備え得る。
【0012】
好ましくは、前記再凝縮VOCリサイクル手段は、前記ドレンフィルタの上流の燃料供給ラインに設けられ、前記エンジンに供給されるガス燃料の温度を測定する燃料温度測定部;と、前記燃料温度測定部の温度測定値が予め設定した温度より低くなったら、前記VOC供給部の動作を停止する制御部;とをさらに備え得る。
【0013】
好ましくは、前記再凝縮VOCリサイクル手段は、前記ドレンフィルタの水位を測定するレベル測定部;前記ドレンフィルタからエンジンへの流体の流れを遮断するためのフィルタ遮断バルブ;前記フィルタ遮断バルブとエンジンとの間、および前記エンジンからガス燃料をベントするためのベントバルブ;と、前記レベル測定部による水位測定値が予め設定した水位に達すると、前記VOC供給部の動作を停止し、前記フィルタ遮断バルブを閉鎖して前記ベントバルブを開放する制御部;とを備え得る。
【0014】
好ましくは、前記再凝縮VOCリサイクル手段は、前記ドレンフィルタで集められた液体状態の再凝縮VOCを排出するLVOC回収バルブ;前記ドレンフィルタから排出された再凝縮VOCを貯蔵するLVOC回収タンク;と、前記LVOC回収タンクで貯蔵された再凝縮VOCをVOC供給部に供給するLVOC移送ポンプ;を備え得る。
【0015】
好ましくは、前記再凝縮VOCリサイクル手段は、前記ドレンフィルタに不活性ガスを供給して前記ドレンフィルタで集められた再凝縮VOCを前記ドレンフィルタから排出する不活性ガス供給部;をさらに備え得る。
【0016】
好ましくは、前記再凝縮VOCリサイクル手段は、前記ドレンフィルタに不活性ガスを供給するとき、前記VOC供給部とドレンフィルタとの間を遮断するための二重遮断バルブユニット;前記ドレンフィルタに不活性ガスを供給するとき、前記ドレンフィルタとエンジンとの間を遮断するためのフィルタ遮断バルブ;前記燃料供給ラインからドレンフィルタに供給される流体の圧力を測定する燃料圧力測定部;前記ドレンフィルタで集められた液体状態の再凝縮VOCを排出するLVOC回収バルブ;と、前記燃料圧力測定部の圧力測定値が予め設定した圧力に達したら前記LVOC回収バルブを開放する制御部;を備える。
【0017】
好ましくは、前記二重遮断バルブユニットは、前記二重遮断バルブユニットを通過する流体の圧力を調整するバルブを備え、前記制御部は、前記燃料圧力測定部の圧力測定値が予め設定した圧力変化率を超えないように前記二重遮断バルブユニットの開度を制御し、前記ドレンフィルタに供給される不活性ガスの圧力を調整する。
【0018】
前記目的を達成するため本発明の他の実施形態では、前記VOC供給システムを備えて、VOCを燃料として使用する船舶が提供される。
【0019】
好ましくは、前記船舶は、不活性ガスを生成して船内の不活性ガス需要先に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部;前記不活性ガス供給部と前記燃料供給ラインとを接続する不活性ガス供給ライン;前記不活性ガス供給ラインに設けられ、前記燃料供給ラインへの不活性ガスの流れを制御するパージ遮断バルブユニット;と、前記燃料供給ラインで、前記不活性ガス供給ラインが接続したポイントより上流に設けられ、前記エンジンへの燃料の流れを制御するガス遮断バルブユニット;を備え、前記ドレンフィルタは前記ガス遮断バルブユニットの下流に設けられ、前記ドレンフィルタで集められた再凝縮VOCは、前記船舶に設けられたパージ遮断バルブユニットおよびガス遮断バルブユニットの制御により、前記不活性ガスの圧力で前記ドレンフィルタから排出される。
【0020】
好ましくは、前記船舶のアッパーデッキの開放空間に設けられ、前記ドレンフィルタから排出された再凝縮VOCを貯蔵するLVOC回収タンク;と、前記LVOC回収タンクで貯蔵した再凝縮VOCを前記エンジンの燃料として供給するため前記再凝縮VOCを前記VOC供給部に供給するLVOC移送ポンプ;をさらに備え得る。
【0021】
また、前記目的を達成するため本発明のさらに他の実施形態では、揮発性有機化合物(VOC;Volatile Organic Compounds)をエンジンに要求される温度及び圧力で調整して気体状態のVOCガス燃料を生成するステップ;前記気体状態のVOCガス燃料をエンジンに供給する前にドレンフィルタを通過させるステップ;と、前記ドレンフィルタを通過したVOCガス燃料を前記エンジンに供給するステップ;を備え、前記ドレンフィルタを通過させるステップにより、前記エンジンに要求される温度及び圧力で供給される過程で凝縮した液体状態の再凝縮VOCを分離して、気体状態のVOCガス燃料のみを前記エンジンに供給する、VOC燃料供給方法が提供される。
【0022】
好ましくは、前記気体状態のVOCガス燃料を生成するステップは、前記VOCと前記VOCより高い熱量のガス燃料を混合して混合ガス燃料を生成するステップ;を備え得る。
【0023】
好ましくは、前記ドレンフィルタで分離した液体状態の再凝縮VOCを排出するステップ;と、排出された前記再凝縮VOCが前記気体状態のVOCガス燃料を生成するステップに供給される、リサイクルステップ;をさらに備え得る。
【0024】
好ましくは、前記再凝縮VOCを排出するステップは、前記ドレンフィルタの上流で前記VOCガス燃料の温度を測定するステップ;と、前記温度を測定するステップで測定した温度測定値が予め設定した温度より低かったら、前記再凝縮VOCを排出する前に、前記VOCガス燃料を生成するステップを停止する、VOC燃料供給停止ステップ;を備え得る。
【0025】
好ましくは、前記再凝縮VOCを排出するステップは、前記ドレンフィルタの水位を測定するステップ;と、前記水位を測定するステップで測定した水位測定値が予め設定した水位に達すると、前記再凝縮VOCを排出する前に前記エンジンに供給する工程を停止し、前記ドレンフィルター及びエンジンとエンジンからVOCガス燃料をベントするVOC燃料ベントステップ;を備え得る。
【0026】
好ましくは、前記再凝縮VOCを排出するステップは、前記ドレンフィルタの上流及び下流を遮断するステップ;と、前記上流及び下流が遮断されたドレンフィルタに不活性ガスを供給するステップ;を備え、前記不活性ガスの圧力によってドレンフィルタから再凝縮VOCを排出することができる。
【0027】
好ましくは、前記不活性ガスを供給するステップは、前記ドレンフィルタ上流の圧力を測定するステップ;と、前記圧力を測定するステップで測定した圧力測定値が予め設定した圧力変化率を超えないように前記不活性ガスの圧力を調整して供給する圧力調整ステップ;をさらに備え得る。
【0028】
また、前記目的を達成するため本発明の他の実施形態では、ガスを燃料として使用しガス燃料モードで運転するエンジン;揮発性有機化合物(VOC;Volatile Organic Compounds)を燃料として前記エンジンに供給するVOC供給部;前記VOC供給部とエンジンとを接続し、前記VOC供給部からエンジンに気体状態のVOC燃料を移送する燃料供給ライン;前記燃料供給ラインを冷却して燃料供給ラインに残っている気体状態のVOCを凝縮させるための熱媒体が循環する冷却ライン;前記冷却ラインに設けられた冷却バルブ;と、前記ガス燃料モードが停止したときに前記冷却バルブを開放するように制御する制御部;を備えた、VOC燃料供給システムが提供される。
【0029】
好ましくは、前記エンジンから排出される排気ガスを脱窒するための還元剤を貯蔵する還元剤タンク;と、前記還元剤タンクの温度を維持するための熱媒体を循環させるチラーユニット;を備え、前記冷却ラインは、前記還元剤タンクを冷却して高温になった熱媒体が前記チラーユニットに再循環するラインから分岐して、前記燃料供給ラインの端部に接続する。
【0030】
好ましくは、前記燃料供給ラインに不活性ガスを供給して前記燃料供給ラインで残っている液体状態のLVOCを排出する不活性ガス供給部;前記不活性ガス供給部と前記燃料供給ラインとを接続するLVOCパージライン;前記LVOCパージラインに設けられたLVOCパージバルブ;と、前記燃料供給ラインの温度を測定するパージ温度測定部;をさらに備え、前記制御部は、前記パージ温度測定部の温度測定値が予め設定した設定値に達したら前記LVOCパージバルブを開放して、不活性ガスが前記燃料供給ラインに供給され前記不活性ガスによって前記燃料供給ラインからLVOCが排出されるように制御する。
【0031】
好ましくは、前記燃料供給ラインから排出された不活性ガスとLVOCとを仮貯蔵するドレンフィルタ;前記ドレンフィルタから排出されたガスを移送する第4ベントライン;前記第4ベントラインに設けられたVOCベントバルブ;前記ドレンフィルタから排出された液体を移送するLVOC回収ライン;前記LVOC回収ラインに設けられたLVOC回収バルブ;と、前記燃料供給ラインの圧力を測定する燃料圧力測定部;をさらに備え、前記制御部は、前記燃料圧力測定部の圧力測定値が予め設定した設定値に達すると前記VOCベントバルブおよびLVOC回収バルブを開放する。
【0032】
好ましくは、前記ドレンフィルタは、下部に設けられた漏斗状のホッパ;と、上部に設けられ、一端が前記燃料供給ラインから延長し、他端がホッパに向かって折曲した形状であって、前記ドレンフィルタ内に前記VOC燃料を流入させるガス流入パイプ;を備え、前記VOC燃料に含まれた液体状態の再凝縮VOCは前記ホッパーの下に集められ、液体状態の再凝縮VOCを分離した気体状態のVOC燃料のみ排出される。
【0033】
好ましくは、前記LVOC回収ラインで排出されたLVOCを貯蔵するLVOC回収タンク;と、前記LVOC回収タンクで貯蔵された再凝縮VOCを前記VOC供給部に供給するLVOC移送ポンプ;をさらに備え得る。
【0034】
好ましくは、前記エンジンに供給されるガス燃料の温度を測定する燃料温度測定部;をさらに備え、前記制御部は、前記燃料温度測定部の温度測定値が予め設定した温度よりも低くなると、前記VOC供給部の作動を停止する。
【0035】
また、前記目的を達成するため本発明のさらに他の一実施形態では、前記VOC燃料供給システムを備えた、VOCを燃料として使用する船舶が提供される。
【0036】
さらに、前記目的を達成するため本発明のさらに他の一実施形態では、揮発性有機化合物(VOC;Volatile Organic Compounds)をエンジンのガス燃料で供給されてガス燃料モードで運転するステップ;を備え、前記ガス燃料モードが停止したとき、前記ガス燃料をエンジンに移送する燃料供給ラインを遮断するステップ;と、前記燃料供給ラインに熱媒体を供給して前記燃料供給ラインで残っている気体状態VOCを凝縮させるステップ;を備えた、VOC燃料供給方法が提供される。
【0037】
好ましくは、前記燃料供給ラインの温度を測定するステップ;と、前記燃料供給ラインの温度が予め設定した設定値に達すると、前記燃料供給ラインに不活性ガスを供給し、燃料供給ラインからLVOCを排出させてドレンフィルタに集めるステップ;をさらに備え得る。
【0038】
好ましくは、前記燃料供給ラインの圧力を測定するステップ;前記燃料供給ラインの圧力が予め設定した設定値に達すると、前記ドレンフィルタからガスを排出させるステップ;と、前記燃料供給ラインの圧力が予め設定した設定値に達すると、前記ドレンフィルタから液体を排出させてLVOC回収タンクに貯蔵するステップ;を備え、前記LVOC回収タンクで貯蔵したLVOCは前記エンジンの燃料として使用する。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係るVOC燃料供給システム及び方法、並びにVOCを燃料として使用する船舶は、VOCを大気に放出せずエンジンの燃料として使用することができ、環境汚染を防止し、船舶のエネルギー効率が高められる。
【0040】
VOCをエンジンの燃料で供給するとき、エンジンで要求される圧力条件に合わせて圧縮したらVOCの露点が高くなり、常温でも凝縮することができる。しかし、凝縮した液体状態のVOCがガス燃料モードで運転するエンジンに流入すると、エンジンの燃焼に問題発生の恐れがある。本発明は、凝縮した液体状態のVOCをエンジンへ供給する前にガス燃料から安全に分離し、凝縮した液体状態のVOCがガス燃料モードで運転するエンジンに供給されて発生し得る問題を防止する。
【0041】
また、本発明は、ガス燃料モードの運転が停止したり、他の燃料モードに切り替える時、配管内に気体状態で残っているVOCを冷却して回収し、凝縮した液体状態のVOCを燃料としてリサイクルすることができる。
【0042】
また、本発明は、エンジンへ供給される前にガス燃料から分離した液体状態のVOCを回収してエンジンの燃料としてリサイクルすることができる。
【0043】
さらに、船舶またはエンジンの燃料供給システムに必須である既存構成を最大限に活用し、VOCの回収およびリサイクル工程と装置の構成が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の第1実施形態によるVOC燃料供給システムを備えた船舶の一部を簡単に示す図である。
図2】本発明の第2実施形態によるVOC燃料供給システムを備えた船舶の一部を簡単に示す図である。
図3】本発明の第2実施形態によるVOC燃料供給システムがガス燃料モードで運転するとき、ガス燃料がエンジンに供給される流体の流れを説明するための図である。
図4】本発明の第2実施形態によるVOC燃料供給システムが燃料切替モードで運転するとき、配管をパージするための流体の流れを説明する図である。
図5】本発明の第2実施形態によるVOC燃料供給システムが燃料切替モードで運転するとき、配管がパージされてドレンフィルタで集められたVOCを処理するための流体の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の動作上の利点および本発明の実施形態によって達成される目的を十分に理解するためには、本発明の好ましい実施形態を添付図面と添付図面に記載した内容を参照しなければならない。
【0046】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態についてその構成と作用を詳細に説明する。ここで、各図面の構成要素に参照符号を付加することにおいて、同一の構成要素については、たとえ他の図面上に表示されても可能な限り同一の符号で表記したことに留意されたい。なお、以下の実施形態は様々な形態に変更することができ、本発明の範囲は下記の実施例によって限定されない。
【0047】
後述する本発明の一実施形態のVOC燃料供給システムおよび方法は、船舶での適用を例に説明するが、陸上でも適用することができる。
【0048】
また、後述する本発明の実施形態は、生成した原油を貨物として輸送する原油輸送船(crude oil carrier、またはcrude oil tanker)での適用を例に説明する。しかし、本発明は、海上で原油を生産する浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO;Floating、Production、Storage and Offloading Unit)、石油製品を輸送する石油製品運搬船(product carrier)、生産した原油を貯蔵できる浮体式貯蔵設備(FSU;Floating and Storage Unit)などにオイル貯蔵タンクが設けられ、VOCを発生して環境的危険性が潜在し、燃料油とガス燃料の両方を燃料として使用する二重燃料エンジンを備えた全ての船舶または海上浮体構造物で適用することができる。
【0049】
また、後述する本発明の一実施形態における船舶は、ガス燃料の液化ガスを燃料とするLFS(Liquefied gas Fueled Ship)であり得る。
【0050】
ここで、液化ガスは、VOCより熱量の高い物質であり、メタンまたはエタンを含む物質であってもよく、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Likefied Ethylene Gas)など炭化水素系の液化ガス燃料であっても、アンモニア(NH)、水素(H)など非炭化水素系の液化ガス燃料であり得る。
【0051】
ただし、後述する実施例ではエンジンのガス燃料としてLNGの適用を例に説明し、LNGが自然気化して生成された蒸発ガス(BOG;Boil-Off Gas)又はLNGを気化させて生成した天然ガスは単独またはVOCと混合してエンジンの燃料で使用することができる。
【0052】
また、後述する本発明の一実施形態におけるエンジンは、燃料油と天然ガスを選択的または混合して燃料で使用可能な二重燃料エンジンであってもよく、高圧ガス噴射エンジン、中圧ガス噴射エンジン、と低圧ガス噴射エンジンのいずれか1つ以上を備え得る。
【0053】
以下、図1乃至図5を参照して、本発明の一実施形態によるVOC燃料供給システムおよび方法、並びにVOCを燃料として使用する船舶について説明する。
【0054】
図1を参照すると、本発明における第1実施形態のVOC燃料供給システムは、エンジン500と揮発性有機化合物(VOC;Volatile Organic Compounds)をエンジン500に要求される圧力および温度条件で調整してVOCガス燃料をエンジン500に供給するVOC供給部と、VOCより熱量の高いガス燃料をエンジン500に要求される圧力及び温度条件で調整して供給するガス供給部と、VOCとガス燃料を混合して混合ガス燃料を生成する燃料混合部400を備える。
【0055】
本実施形態のエンジン500は、ガスとオイルを燃料として選択的に使用できる二重燃料エンジン(dual fuel engine)であり、ガス燃料を燃料として使用するガス燃料モードと、オイル(燃料油)を燃料として使用するオイル燃料モードで動作する。
【0056】
本実施形態のVOC燃料供給システムおよび方法は、エンジン500がガス燃料モードで動作するときにガス燃料をエンジン500の燃料として供給する。エンジン500がガス燃料モードで動作する時、天然ガスと、VOCと、天然ガス及びVOCとを混合した混合ガス燃料のいずれかをガス燃料で供給されるが、本実施形態では、エンジン500がガス燃料モードで動作し、混合ガス燃料を燃料で供給されることを基準に説明する。
【0057】
また、本実施形態におけるエンジン500は、船舶を推進するためのメインエンジンまたは電力を生産するための発電エンジンをいずれか1つ以上備え、1つ以上設けられる。図には、2台のエンジン500が設けられていることを例示している。
【0058】
一方、エンジン500は、船舶の安全規定上、危険区域(dangerous zone)に分類されるエンジンルームER内で設置しなければならない。エンジンルームERは船舶のアッパーデッキ(upper deck)の下部で配置される。
【0059】
エンジン500がガスを燃料とするエンジンである場合、エンジンルームERを通過するガス配管(燃料供給ラインFL)は二重管(double wall)510で構成しなければならない。
【0060】
以下、説明を容易にするため、燃料供給ラインFLのうち、二重管510で設けられた区間を二重管510と呼び、二重管510でない区間を燃料供給ラインFLと呼ぶことにする。
【0061】
二重管510は、エンジン500の内部燃焼室まで延長して設置されることができ、燃料混合部400から燃料供給ラインFLを介して移送された混合燃料は二重管510を流れてエンジン500の燃焼室に噴射される。
【0062】
一方、エンジン500の燃焼室に噴射されずに回収されるガス燃料、又はガストリップなどのエンジン500問題が発生したときに排出しなければならないガス燃料は、エンジン500からベントマスト(vent mast)へ接続した第1ベントラインVL1を介して、ベントマストにベントすることができる。第1ベントラインVL1には、開閉制御によってエンジン500および二重管510に充填された流体をベントまたはパージするように作動するベントバルブ520が設けられ得る。
【0063】
二重管510の内管(inner pipe)と外管(outer pipe)との間の空間、すなわち外管には内管からガスが漏洩したときに発生する各種事故を防止するための空気充填が必要であり、外管に充填された空気を周期的に交換する換気作業(ventilation)の実施が規定されている。
【0064】
ガス燃料船舶に対する安全規定(IGF code;International Code of Safety for Ships using Gases or other Low-flashpoint Fuels)は、二重管510の換気作業は時間当たり30回実施するように規定(いわゆる、30 air change rule)している。換気作業を実施することで、ガスが内管から外管に漏れても、換気する空気と共にガスが外部へ排出され、ガス漏洩による危険を防止することができる。
【0065】
また、エンジン500に燃料を供給するためには、燃料供給の制御に利用するガスバルブユニット(GVU;Gas Valve Unit)が設置されるGVUルームGRもアッパーデッキの下部で、危険区域のエンジンルームERに隣接して配置される。
【0066】
GVUルームGRも危険区域であるエンジンルームERに隣接して配置されるので、GVUルームGR内の内部空気を時間当たり30回交換する換気作業を実施しなければならない。
【0067】
換気用の空気は、カーゴエリア(cargo area)などの開放した安全区域(safety area)に分類される区域の空気を吸引(suction)して使用することを規定している。
【0068】
したがって、船舶では、二重管510およびGVUルームGRに供給する換気用空気として、貨物積込場所(cargo space)のように船内規定上の非危険開放区域(non-hazardous open area)で規定された場所から外部空気を吸引するダンパー720と、二重管510及びGVUルームGR内の内部空気を外部に排出する排出ダクト710と換気ファン700が設けられる。
【0069】
ダンパー720には、火災が発生しても火炎の拡散を防止するため、フレームスクリーン(flame screen)が設けられ得る。
【0070】
本実施形態のVOC供給部は、燃料油または原油を貯蔵するカーゴタンク100から移送されたVOCを圧縮するVOC圧縮機230と、VOC圧縮機230でVOCが圧縮されて得た圧縮熱を冷却する冷却部240と、VOC圧縮機230で圧縮されたVOCを液化させる凝縮器250と、凝縮器250で圧縮VOCが凝縮して生成された液体状態のVOC、すなわちLVOCを貯蔵するLVOCタンク200と、LVOCタンク200から排出されたLVOCを気化させてエンジン500の燃料で供給するLVOC気化器220と、エンジン500の燃料で供給するLVOCをLVOCタンク200から排出させてLVOC気化器220に移送するLVOC供給ポンプ210を備え得る。
【0071】
また、本実施形態のガス供給部は、エンジン500に供給されるガス燃料を貯蔵する燃料タンク300と、燃料タンク300から排出された液化天然ガス(LNG)を気化させるLNG気化器320と、エンジン500の燃料で供給するLNGを燃料タンク300から排出させてLNG気化器320に移送する燃料供給ポンプ310と、燃料タンク300から移送された蒸発ガスBOGをエンジン500に要求される温度で調整するBOGヒータ330を備え得る。
【0072】
本実施形態の燃料タンク300には、ガス燃料を液体状態、すなわちLNGの状態で貯蔵することができる。また、本実施形態の燃料タンク300は、常圧より高圧力に加圧した状態で運用する加圧型圧力タンクであり得る。
【0073】
本実施形態の燃料混合部400は、VOC供給部から移送されたVOCとガス供給部から移送された天然ガスとを混合してエンジン500に供給することができる。
【0074】
VOCまたはガス燃料をそれぞれエンジン500の燃料として単独供給することもできるが、VOCは熱量が低いためエンジン500のガス燃料として単独供給した場合、燃焼の効率性が低下する。本実施形態では、燃料混合部400を備えてVOCを天然ガスと混合した混合ガス燃料をエンジン500の燃料で供給することができる。
【0075】
燃料混合部400では、LVOC気化器220で気化したVOCと、LNG気化器320で気化した天然ガスとが混合され、必要に応じてBOGヒータ330で加熱した蒸発ガスをさらに混合することができる。
【0076】
燃料混合部400で混合されたVOCと天然ガスの混合ガス燃料は、燃料混合部400とエンジン500とを接続する燃料供給ラインFLを介してエンジン500の燃料として供給される。
【0077】
本実施形態では、VOC供給部、ガス供給部及び燃料混合部400を船舶のアッパーデッキ(upper deck)の上部で設けることができ、エンジン500はアッパーデッキの下部で設けられた別のエンジンルームERに設けられ得る。この場合、燃料混合部400からエンジン500に接続した燃料供給ラインFLは、アッパーデッキの上部(第1区間)と、GVUルームGRの内部(第2区間)と、エンジンルームERの内部(第3区間)を順次通過して設けられる。このとき、第1区間は外気に露出しているため、第1区間に設けられた燃料供給ラインFLは断熱処理されていてもよく、第3区間に設けられた燃料供給ラインFLは安全規定上の二重管510で設けられ得る。
【0078】
本実施形態では、混合ガス燃料は最大約25%のVOCと約75%の天然ガスを含むことができるが、VOCと天然ガスの混合割合はエンジン500の負荷に応じて調整することができる。エンジン500の負荷が高くなったら前記混合割合から天然ガスの混合割合を高くしVOCの混合割合を下げることで、混合割合を調整してエンジン500の負荷上昇に対応することができる。
【0079】
一方、VOCは大気圧下では気体状態で存在するが、エンジン500で必要とする圧力に圧縮すると露点が高くなるため、追加加熱しなければ常温でも凝縮する特性がある。
【0080】
例えば、10バールにおけるVOCの露点は約25℃である。すなわち、エンジン500が約10バールのガス燃料圧力を必要とする発電エンジンである場合、VOC供給部がVOCを10バールで圧縮するように設計すると、10バールで圧縮されたVOCがエンジン500に供給される過程で25℃以下の環境になったら液体状態で凝縮することになる。
【0081】
すなわち、VOCをエンジン500の燃料で使用するためには、VOCの圧力と温度をエンジン500で要求されるレベルに維持して供給する必要があるが、VOCの温度が露点温度より低くなったらVOCが凝縮することになる。
【0082】
また、燃料混合部400でVOCと天然ガスを混合しても、化学組成が完全に均一になることは不可能であるため、VOCの天然ガスの混合ガス燃料の中で一部のVOCが低温で凝縮する可能性もある。
【0083】
このように凝縮したVOCが液体状態でエンジン500にそのまま流入すると、ミスファイア(misfiring)、爆発など様々な事故を誘発する。
【0084】
再凝縮したVOCを気化させるためには、6バールを基準に約90℃以上で加熱しなければならない。すなわち、再凝縮VOCがエンジン500に流入しなくても、再凝縮VOCを加熱する手段を追設しなければ、気化せず燃料供給ラインFL上で残り続けることになる。
【0085】
本実施形態では、燃料混合部400からエンジン500に供給される過程で凝縮し、混合ガス燃料中に混合されている液体状態の再凝縮VOCがエンジン500に供給されないように混合ガス燃料から分離し、また混合ガス燃料から分離された液体状態の再凝縮VOCを燃料供給ラインFLから除去し、除去された再凝縮VOCを回収して再びエンジン500の燃料でリサイクルするための再凝縮VOCリサイクル手段をさらに備え得る。
【0086】
すなわち、本実施形態の再凝縮VOCリサイクル手段は、VOCをエンジン500の燃料として使用する船舶またはVOCをエンジン500の燃料で供給する燃料供給システムにおいてその適用が必須である。
【0087】
本実施形態の再凝縮VOCリサイクル手段は、燃料供給ラインFLに設けられ、燃料供給ラインFLに沿ってエンジン500に供給される混合ガス燃料の温度を測定する燃料温度測定部410と、燃料供給ラインFLに沿ってエンジン500に供給される混合燃料の圧力を測定する燃料圧力測定部420と、燃料供給ラインFLに沿ってエンジン500に移送される混合燃料で含まれた液体状態の再凝縮VOCを回収するドレンフィルタ430を備え得る。
【0088】
また、ドレンフィルタ430には、ドレンフィルタ430で集められた液体状態の再凝縮VOCの水位を測定するレベル測定部440と、ドレンフィルタ430で集められた再凝縮VOCを排出するLVOC回収バルブ460が設けられ得る。
【0089】
本実施形態の燃料温度測定部410、燃料圧力測定部420、およびドレンフィルタ430は、燃料供給ラインFLの第2区間、すなわちGVUルームGRの内で設けられ得る。
【0090】
また、本実施形態の再凝縮VOCリサイクル手段は、ドレンフィルタ430から排出された再凝縮VOCを回収して貯蔵するLVOC回収タンク470と、ドレンフィルタ430とLVOC回収タンク470とを接続しドレンフィルタ430から排出された再凝縮VOCがLVOC回収タンク470に移送される経路を提供するLVOC回収ラインRLと、LVOC回収タンク470で集められた再凝縮VOCを加圧してLVOCタンク200に移送するLVOC移送ポンプ480をさらに備え得る。
【0091】
本実施形態のLVOC回収タンク470とLVOC移送ポンプ480は、アッパーデッキ上部の開放空間に設けられ得る。
【0092】
本実施形態では、LVCO回収タンク470に回収された再凝縮VOCは、LVOC移送ポンプ480により、LVOC回収タンク470とLVOCタンク200とを接続するLVOC回収ラインRLに沿ってLVOCタンク200に移送され、LVOCタンク200に貯蔵される。すなわち、本実施形態によれば、ドレンフィルタ430から回収した再凝縮VOCがVOC供給部を介してエンジン500の燃料で再供給される。
【0093】
本実施形態によれば、液体状態のVOCがエンジン500に流入すると爆発などの危険性があるため、本実施形態のドレンフィルタ430は燃料供給ラインFLの第2区間、より具体的には、ガスバルブユニット530、610と二重管510との間に設けられ得る。
【0094】
本実施形態において、エンジン500に移送される混合ガス燃料は、燃料供給ラインFLを流れてドレンフィルタ430を通過することになる。
【0095】
図1で示すように、本実施形態のドレンフィルタ430の上部には、混合ガス燃料が流入するガス流入パイプ(gas inlet pipe、図面符号未付与)が設けられ、下部には漏斗状のホッパ(hopper、図面符号未付与)が設けられる。
【0096】
すなわち、燃料供給ラインFLを介してエンジン500に供給される混合ガス燃料は、エンジン500へ供給される前にドレンフィルタ430のガス流入パイプを介してドレンフィルタ430に流入され、ドレンフィルタ430を通過する過程で混合ガス燃料に含まれた液体状態のVOCはホッパを介して下部で集まるように構成される。
【0097】
また、ドレンフィルタ430のガス流入パイプは、ドレンフィルタ430の内部空間に延長して端部が下方向に折曲した形状(「く」の字)であり、折曲した部分は下方向のホッパと面するように構成され得る。
【0098】
本実施形態のレベル測定部440は、ドレンフィルタ430で集められた液体状態の再凝縮VOCの水位を検知して水位情報を制御部800に送信する。また、レベル測定部440は、ドレンフィルタ430で集められた液体状態の再凝縮VOCの水位(liquid level)を検知し、水位測定値が予め設定した水位に達するとアラームを発生して作業者に知らせる機能をさらに有することができる。
【0099】
レベル測定部440で水位測定値が予め設定した水位に達したことを検知したら、制御部800はエンジン500の運転モードをガス燃料モードからオイル燃料モードに切り替え、エンジン500に燃料の燃料油が供給されるようにシステムを制御する。あるいは、エンジン500の運転モードをガス単独の燃料で使用するモードに切り替え、ガス供給部を用いてガス燃料をエンジン500に燃料で供給してもよい。
【0100】
エンジン500の運転モードがオイル燃料モードに切り替わると、VOC供給部及びガス供給部は運転を停止し、燃料油供給部(図示せず)を作動させてカーゴタンク100又は別途の燃料油貯蔵タンク(図示せず)で貯蔵された燃料油をエンジン500の燃料で供給することができる。
【0101】
また、本実施形態のレベル測定部440は、紫外線で水位を検知するUVタイプのレベルスイッチを適用することが好ましい。液体状態のVOCは比重が約0.4と非常に低いため、レベル測定部440は浮力を利用して水位を検知するボールプロットタイプ(ball float type)のレベルスイッチ(level switch)の適用が不可能である。
【0102】
一方、本実施形態の燃料温度測定部410は、燃料供給ラインFLに沿って燃料混合部400からエンジン500に供給される混合ガス燃料の温度を測定する手段である。
【0103】
燃料温度測定部410で測定した温度測定値は、制御部800に送信する。制御部800は、燃料温度測定部410から温度情報を受信し、温度測定値が予め設定した温度より低くなると、LVOC供給ポンプ210の動作を停止させるように構成することができる。
【0104】
すなわち、制御部800は、燃料温度測定部410の温度測定値を用いて、再凝縮VOCが発生したか、またはVOCが再凝縮する条件であると判断した場合、LVOCタンク200から燃料混合部400へのVOC燃料供給を遮断する安全装置の制御ロジックを実行することができる。
【0105】
本実施例においてVOCの再凝縮条件は30℃であり得る。すなわち、制御部800は、燃料温度測定部410の温度測定値が30℃以下であれば、LVOC供給ポンプ210の作動を停止させることができる。
【0106】
一方、GVUルームGRに設けられてガス燃料供給を制御するガスバルブユニットは、二重遮断バルブユニット530、610を備える。二重遮断バルブユニット530、610は、開閉制御により流体の流れを開放及び遮断し、間隔をあけて直列設置される2つのシャットオフバルブ(shut off valve)531、611と、2つのシャットオフバルブ531、611の間の配管ラインから分岐してベントマストに接続するラインVL2、VL3上で設けられ、配管ラインに残っている流体をベントする圧力調整バルブ532、612を含めて構成され得る。
【0107】
二重遮断バルブユニット530、610は、燃料供給ラインFL上に配置されたガス遮断バルブユニット530を備え、ガス遮断バルブユニット530は、2つのガスシャットオフバルブ531と、2つのガスシャットオフバルブ531の間の燃料供給ラインFLから分岐してベントマストに接続するガスベントラインVL2で配置されたガス圧力調整バルブ532を備え得る。
【0108】
例えば、エンジン500のガストリップ(gas trip)が発生すると、2つのガスシャットオフバルブ531が閉じられて、ガス燃料の流れを遮断する。ガス燃料の流れを遮断することによって、2つのガスシャットオフバルブ531の間で上昇した圧力増加分は、ガス圧力調整バルブ532が開けられガスベントラインVL2を介してガスが排出されながら低くなるように作動する。
【0109】
一方、エンジン500の燃料供給モードを切り替え、ガストリップなどの燃料供給における問題を解決した後、エンジン500を再始動するためには、燃料供給ラインFLに残っている流体を除去し、不活性ガスを供給してパージを実行する必要がある。
【0110】
したがって、燃料供給ラインFLのガス遮断バルブユニット530の下流には、船舶に設けられ、不活性ガス、例えば窒素を生成及び供給する不活性ガス供給部600と連通して燃料供給ラインFLへの不活性ガスの供給経路となる不活性ガス供給ラインNLが配置される。
【0111】
本実施形態の二重遮断バルブユニット530、610は、不活性ガス供給ラインNL上に配置されたパージ遮断バルブユニット610を備え得る。
【0112】
パージ遮断バルブユニット610は、2つのパージシャットオフバルブ611と、2つのパージシャットオフバルブ611との間の不活性ガス供給ラインNLから分岐してベントマストに接続するパージベントラインVL3に配置されたパージ圧力調整バルブ612を備え得る。
【0113】
例えば、平常時には2つのパージシャットオフバルブ611が閉じられていて不活性ガス供給ラインNLを二重遮断し、パージ圧力調整バルブ612が開けられ燃料供給ラインFLに沿って移送されるガスが不活性ガス供給ラインNLに向かって逆流するのを根本的に遮断するように動作する。平常時には2つのパージシャットオフバルブ611が閉じられているので、燃料供給ラインFLからガスが不活性ガス供給ラインNLに逆流してもパージシャットオフバルブ611によって二重遮断され、逆流したガスがベントマストへ移動することになる。
【0114】
本実施形態において、パージシャットオフバルブ611は、圧力調整(throttling)が可能なバルブであり、開閉速度を調整することによってパージシャットオフバルブ611を通過する不活性ガスの圧力を徐々に上昇または下降させる。
【0115】
本実施形態によれば、従来のガスエンジンベースの燃料供給システムで必須構成である不活性ガス供給部600と、不活性ガス供給ラインNLと、ガスバルブユニット530,610を用いてドレンフィルタ430に集められた再凝縮VOCを回収することができる。
【0116】
本実施形態によれば、ドレンフィルタ430で集められた再凝縮VOCを回収するために、ドレンフィルタ430と二重管510との間の燃料供給ラインFLに設けられ、ドレンフィルタ430から再凝縮VOCを排出するとき、再凝縮VOCが二重管510へ流入しないように経路を遮断するフィルタ遮断バルブ450をさらに備え得る。
【0117】
以下、燃料混合部400からエンジン500に混合ガス燃料を供給して生成された再凝縮VOCを回収する方法を説明する。
【0118】
まず、燃料混合部400から混合ガス燃料は、燃料供給ラインFLを介して燃料温度測定部410、ガス遮断バルブユニット530、燃料圧力測定部420、ドレンフィルタ430と二重管510を順に経てエンジン500へ移送されるが、混合ガス燃料の移送中に生成された液体状態の再凝縮VOCは、ガス遮断バルブユニット530の下流であり二重管510の上流であるドレンフィルタ430によって濾過される。
【0119】
レベル測定部440は、ドレンフィルタ430で集められた再凝縮VOCの水位を測定して制御部800に水位情報を送信する。制御部800は、レベル測定部440で測定した水位が予め設定したレベルを超えることを検知したら、エンジン500のガス燃料モードを停止してオイル燃料モードに切り替える。
【0120】
エンジン500のガス燃料モードが停止されると、ベントバルブ520は自動的に、または制御部800の指示によって開放されるように作動する。すなわち、エンジン500のガス燃料モードが停止すると、ベントバルブ520が開けられ、二重管510およびエンジン500で残っている混合ガス燃料が第1ベントラインVL1を介してベントマストにベントされる。
【0121】
フィルタ遮断バルブ450は、エンジン500がガス燃料モードの運転時には開放されているが、二重管510及びエンジン500に残っている混合ガス燃料が全てベントされると、自動的に又は制御部800によって閉鎖されるように作動する。
【0122】
また、制御部800は、フィルタ遮断バルブ450が閉鎖されたらガスシャットオフバルブ531が閉鎖され、パージシャットオフバルブ611は開放され、不活性ガス供給部600から不活性ガスがガスガス遮断バルブ530の下流のドレンフィルタ430へ流入するように制御する。
【0123】
液体状態のVOC、すなわちLVOCは比重が約0.4であるので、不活性ガス(例えば、窒素)の圧力を用いて移送することができる。
【0124】
このとき、制御部800は、ガス遮断バルブユニット530とドレンフィルタ430との間の燃料供給ラインFLに設けられた燃料圧力測定部420で測定した圧力測定値を確認しながら、圧力測定値が徐々に増加するようにパージシャットオフバルブ611を徐々に開放させる。
【0125】
不活性ガス供給部600から供給される不活性ガスの圧力は約6バールであるが、パージシャットオフバルブ611を急に開けると、相対的に高圧力である6バールの不活性ガスが急激にドレンフィルタ430へ流入し、ドレンフィルタ430で集められた液体状態の再凝縮VOCが飛び出したり、飛沫を同伴する現象が発生する。
【0126】
したがって、本実施形態では、パージシャットオフバルブ611はドレンフィルタ430に流入する不活性ガスの圧力が急激に増加しないように、燃料圧力測定部420の圧力測定値に応じて、時間当たり圧力測定値が予め設定した圧力変化率を超えないようにパージシャットオフバルブ611の開放速度を調整しながら徐々に開放することが好ましい。
【0127】
また、本実施形態の制御部800は、燃料圧力測定部420による圧力測定値が予め設定した基準値に達すると、LVOC回収バルブ460を開放し、ドレンフィルタ430で集められた液体状態の再凝縮VOCを、LVOC回収ラインRLを介してLVOC回収タンク470に移送させる。
【0128】
本実施形態のLVOC回収タンク470は、船舶のアッパーデッキ(upper deck)の上部に設置され、また安全区域に分類される区域で設置されなければならない。LVOC回収タンク470を安全区域で設置することにより、爆発の危険が他の装備または区域へ影響を与えるのを最小限に抑えることができる。
【0129】
制御部800は、ドレンフィルタ430からLVOC回収タンク470へ再凝縮VOCの移送が完了したら、フィルタ遮断バルブ450を開放し、不活性ガス供給部600からエンジン500まで窒素を供給して、パージ作業を実施する。
【0130】
パージ作業が完了すると、制御部800は、エンジン500を再びガス燃料モードに切り替え、パージシャットオフバルブ611を閉じ、ガスシャットオフバルブ531を開放するなど、燃料混合部400から混合ガス燃料がエンジン500へ供給されるように各装置を制御する。
【0131】
本実施形態では、LVOC回収タンク470に集められた再凝縮VOCは、LVOC移送ポンプ480を用いてLVOCタンク200に移送することができるので、ドレンフィルタ430で分離した再凝縮VOCを再びVOC供給部に回収してエンジン500のガス燃料で用いることができる。
【0132】
次に、図2乃至図5を参照して、本発明の第2実施形態による船舶のVOC燃料供給システムおよびその方法について説明する。
【0133】
後述する本発明の第2実施形態は、前述した第1実施形態の変更例であり、VOCをエンジン500の燃料として供給するガス燃料モードがトリップやモード切替などの理由で停止されたとき、配管で残っているVOCの回収方法に相違点がある。
【0134】
より具体的には、後述する本発明の第2実施形態による船舶のVOC燃料供給システムは、ガス燃料モードが停止されたときに燃料供給ラインFLおよび二重管510をパージするため、LVOCパージラインNL1、LVOCパージバルブ540、第4ベントラインVL4、VOCベントバルブ620、パージ温度測定部550、冷却ラインCLと、冷却バルブ730をさらに備えた点で、本発明の第1実施形態と相違点がある。
【0135】
一方、本発明の第2実施形態による船舶のVOC燃料供給システムでは、前述した第1実施形態のフィルタ遮断バルブ450、ベントラインVL1、ベントバルブ520、不活性ガス供給ラインNLからパージシャットオフバルブ611の下流でガスシャットオフバルブ531とドレンフィルタ430との間の燃料供給ラインFLに接続するラインが含まれなく、省略することができる。
【0136】
あるいは、前記構成が含まれても、配管をパージするとき、第1実施形態による船舶のVOC燃料供給システムでは含まれず、本実施形態のみに含まれるLVOCパージラインNL1、LVOCパージバルブ540、第4ベントラインVL4、VOCベントバルブ620、パージ温度測定部550、冷却ラインCL、冷却バルブ730を用いることもできる。
【0137】
本実施形態の説明において、前述した第1実施形態のベントラインVL1、ベントバルブ520、不活性ガス供給ラインNLからパージシャットオフバルブ611の下流でガスシャットオフバルブ531とドレンフィルタ430との間の燃料供給ラインFLに接続するラインは含まれないことを例に説明する。
【0138】
以下、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明するが、その他の構成要素及びその動作については具体的な説明を省略し、省略しても同一の図面符号が付与された部材及びその部材の動作については前述した第1実施形態の説明を同様に適用することができる。
【0139】
一方、本発明の一実施形態によるエンジン500は、ディーゼルを燃料として使用するオイル燃料モードでも運転することができる。したがって、本発明の一実施形態による船舶は、エンジン500から排出された排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去するSCR(Selective Catalytic Reduction)システムを備える必要がある。SCRシステムは、排気ガス中の窒素酸化物を触媒層で還元剤との化学反応によって除去するための装置である。
【0140】
SCRシステムは、窒素酸化物と反応させるための還元剤を貯蔵する還元剤タンク920、還元剤を冷却するためのチラーユニット910と、触媒層が形成され、排気ガス中の窒素酸化物と還元剤との反応が起こる反応器(図示せず)を備え得る。
【0141】
還元剤は尿素水(urea)またはアンモニアであり、本実施形態では尿素水を例に説明する。尿素水を貯蔵する還元剤タンク920の温度は、還元剤を長期間保存するため、常に約30℃以下で維持する必要がある。
【0142】
チラーユニット910と還元剤タンク920とを接続する配管(図面符号未付与)を介して、チラーユニット910で冷却した低温熱媒体が還元剤タンク920に供給され、還元剤タンク920を冷却しながら高温になった高温熱媒体が再びチラーユニット910に回収されることで、還元剤タンク920を要求温度に維持することができる。
【0143】
本実施形態による船舶のVOC燃料供給システムは、チラーユニット910で冷却された低温熱媒体を二重管510に供給して二重管510を冷却する冷却ラインCLと、冷却ラインCLに設けられた冷却バルブ930をさらに備え得る。
【0144】
本実施形態では、冷却ラインCLを介して低温熱媒体を二重管510へ供給することにより、二重管510内に残っているVOCを凝縮させ、液体状態で残っているLVOCを冷却させて回収することができる。
【0145】
冷却ラインCLを備え低温熱媒体を用いて二重管510を冷却すると、二重管510内で残っているVOCは凝縮され、残っているLVOCは冷却されるので、本実施形態では、凝縮されたLVOCまたは冷却されたLVOCを二重管510の内管と燃料供給ラインFLを介してドレンフィルタ430に回収することができる。
【0146】
前述した第1実施形態では、再凝縮VOCが二重管510に流入しないように経路を遮断するフィルタ遮断バルブ450を設けたが、本実施形態ではフィルタ遮断バルブ450を省略するか、パージ時にフィルタ遮断バルブ450の変位を開放状態で維持することができる。
【0147】
本実施形態の冷却ラインCLは、チラーユニット910から燃料の流れ方向を基準に二重管510の下流端からドレンフィルタ430を経て、再びチラーユニット910に接続する循環ラインを形成し得る。
【0148】
すなわち、低温熱媒体は、冷却ラインCLに沿ってガス燃料の正常な流れ方向と逆方向に流れて、エンジン500からドレンフィルタ430に供給される。ドレンフィルタ430に集められた熱媒体は冷却ラインCLに沿ってチラーユニット910に再循環する。
【0149】
本実施形態では、ドレンフィルタ430と二重管510との間の燃料供給ラインFLに設けられ、二重管510からドレンフィルタ430に回収される流体の温度を測定するパージ温度測定部550をさらに備え得る。
【0150】
制御部800は、パージ温度測定部550の温度測定値に応じて冷却バルブ930を制御して二重管510の冷却温度を制御する。
【0151】
本実施形態では、不活性ガス供給ラインNLからパージシャットオフバルブ611を経て二重管510の端部に延長するLVOCパージラインNL1と、LVOCパージラインNL1に設けられたLVOCパージバルブ540をさらに備え得る。
【0152】
また、本実施形態では、燃料供給ラインFLからガスシャットオフバルブ531の下流で分岐してベントマストに接続する第4ベントラインVL4と、第4ベントラインVL4に設けられたVOCベントバルブ620をさらに備え得る。
【0153】
制御部800は、LVOCパージバルブ540を制御し、窒素供給部600からLVOCパージラインNL1を介して窒素を二重管510の端部へ供給することにより、二重管510の内に残っているVOCを液体状態でドレンフィルタ430に移送する。
【0154】
また、制御部800は、LVOCパージバルブ540を制御し、LVOCパージラインNL1を介して窒素を二重管510の端部に供給しながらも、VOC回収バルブ460を制御してドレンフィルタ430に回収されたLVOCを、LVOC回収ラインRLを介してLVOC回収タンク470に移送することもできる。
【0155】
本実施形態によるエンジン500がガス燃料モードで運転するとき、混合ガス燃料またはVOCをエンジン500に供給する方法は、第1実施形態と同様である。
【0156】
燃料混合部400から混合ガス燃料(またはVOC)が燃料供給ラインFLに沿って流れながら、燃料温度測定部410、ガスシャットオフバルブ531、燃料圧力測定部420、ドレンフィルタ430とパージ温度測定部550を経て二重管510の内管を介してエンジン500内の燃焼室に供給される。
【0157】
混合ガス燃料の移送中に気体状態のVOCが凝縮して生成された液体状態のLVOCは、ガスシャットオフバルブ531の下流で二重管510の上流で配置されたドレンフィルタ430によって濾過される。
【0158】
ガス燃料モードは、エンジン500や燃料供給装置などでトリップが発生し、船舶の運航状況などに応じてエンジン500の運転モードをオイル燃料モードに切り替える必要があるときに停止することができる。
【0159】
例えば、制御部800は、レベル測定部440で測定したドレンフィルタ430の水位測定値を受信し、水位測定値が予め設定した設定値を超えると、エンジン500のガス燃料モードを停止してオイル燃料モードに切り替える。
【0160】
エンジン500の燃焼室に噴射されずに回収されたガス燃料、またはガストリップなどのエンジン500の問題が発生したときやエンジン500の運転モードをガス燃料モードからオイル燃料モードに切り替えようとするとき、配管に残っているガス燃料、特にVOCは、本実施形態の方法によって液体状態で回収することができる。
【0161】
本実施形態において、ガス燃料モードが停止されたときに燃料供給ラインFLおよび二重管510をパージしながらLVOCを回収する方法は以下の通りである。
【0162】
前述した第1実施形態は、燃料混合部400からエンジン500に混合ガス燃料を供給して生成された再凝縮VOCを回収することと異なり、本実施形態では気体状態で配管に残っているVOCも凝縮させて液体状態で回収することに相違点がある。
【0163】
本実施形態では、ガス燃料モードが停止されると、まずガス燃料モードで開放変位のガスシャットオフバルブ531が閉鎖変位になるように制御される。このとき、LVOC供給ポンプ210の運転も停止される。
【0164】
ガスシャットオフバルブ531が閉鎖された後、ガスシャットオフバルブ531の下流の燃料供給ラインFLと二重管510の圧力はそのまま維持される。
【0165】
制御部800は、ガスシャットオフバルブ531が閉鎖されたら冷却バルブ930を開放し、還元剤タンク920を冷却して高温になった高温熱媒体の少なくとも一部が冷却ラインCLへ流入するように制御する。
【0166】
還元剤タンク920を冷却して高温になった高温熱媒体、すなわち冷却ラインCLに流入する熱媒体の温度は約10-15℃以下、好ましくは約12℃以下である。したがって、高温熱媒体の温度は、二重管510を冷却しながら管内で残っている気体状態のVOCを凝縮させるために十分低い温度である。
【0167】
冷却バルブ930が開放されて冷却ラインCLに熱媒体が流入すると、熱媒体は、二重管510を囲む冷却ラインCLに沿ってエンジン500内の二重管510の端部から上流の燃料供給ラインFLまで流れながら二重管510を急速に冷却することができる。
【0168】
冷却ラインCLに沿って二重管510を冷却して高温になった熱媒体は再びチラーユニット910へ再循環する。
【0169】
冷却ラインCLはドレンフィルタ430を通過するように設けられ、チラーユニット910に再循環する熱媒体がドレンフィルタ430に残っている気体状態のVOCも凝縮させることができる。
【0170】
一方、二重管510の上流で燃料供給ラインFLの温度を測定するパージ温度測定部550で測定した温度測定値は制御部800に送信される。制御部800は、パージ温度測定部550の温度測定値、すなわち二重管510上流の燃料供給ラインFLの温度が予め設定した設定値未満になるまで熱媒体を流して二重管510を冷却する。
【0171】
本実施形態の制御部800は、パージ温度測定部550の温度測定値がVOCの凝縮する温度、本実施形態では約30℃まで冷却することができる。すなわち、制御部800は、パージ温度測定部550の温度測定値が30℃未満になると、冷却バルブ930を閉じて二重管510の冷却を中断する。
【0172】
また、制御部800は、冷却バルブ930が閉鎖されると、LVOCパージバルブ540が開放されるように制御し、不活性ガス供給部600からLVOCパージラインNL1を介して不活性ガスを二重管510へ移送させる。このときパージシャットオフバルブ611が開放変位になるように制御される。
【0173】
LVOCパージラインNL1を介して不活性ガス供給部600から移送された不活性ガスは、二重管510及び燃料供給ラインFLを介してドレンフィルタ430に流れる。不活性ガスが二重管510及び燃料供給ラインFLを介してドレンフィルタ430に供給されることで、二重管510及び燃料供給ラインFLに残っている液体状態のLVOCもドレンフィルタ430へ移送されることになる。このとき、フィルタ遮断バルブ450が設けられている場合、フィルタ遮断バルブ450は開放変位になるように制御される。
【0174】
一方、制御部800は、LVOCパージラインNL1を介して不活性ガスを二重管510へ供給する時には、燃料圧力測定部420の圧力測定値を確認しながら、燃料圧力測定部420の圧力測定値が徐々に増加するようにパージシャットオフバルブ611の開度を制御する。
【0175】
不活性ガス供給部600から供給される不活性ガスの圧力は約6バールであり、パージシャットオフバルブ611を急に開放すると、相対的に高圧力である6バールの不活性ガスが急激にドレンフィルタ430へ流入しながら、ドレンフィルタ430で集められたLVOCが飛び出し、飛沫を同伴する現象が発生する。
【0176】
また、制御部800は、ドレンフィルタ430に不活性ガスが流入し始めたらVOCベントバルブ620を開放し、ドレンフィルタ430内の気体、すなわち不活性ガスが第4ベントラインVL4をベントマストへ供給されるように制御する。
【0177】
また、制御部800は、燃料圧力測定部420の圧力測定値が設定値まで高くなると、LVOC回収バルブ460を開けてドレンフィルタ430で集められたLVOCがLVOC回収ラインRLを介してLVOC回収タンク470へ回収されるように制御する。
【0178】
LVOC回収タンク470はアッパーデッキの上部の開放空間(safety area)に設けられて、爆発が他の場所に影響を及ぼすことを最小限に抑えることができる。
【0179】
LVCO回収タンク470に回収された再凝縮VOCは、LVOC移送ポンプ480によりLVOC回収タンク470とLVOCタンク200とを接続したLVOC回収ラインRLに流入し、LVOCタンク200に移送されてLVOCタンク200で貯蔵される。
【0180】
すなわち、本実施形態では、ドレンフィルタ430からLVOCがVOC供給部を介してエンジン500の燃料で再供給される。
【0181】
前記の工程が完了すると、二重管510および燃料供給ラインFLのパージが完了したと見なされ、ガス燃料モードまたはオイル燃料モードを再開することができる。
【0182】
前述したように、本発明の一実施形態は、VOCとLNGの混合燃料を使用するエンジン500において凝縮した液体状態のガスがエンジン500に流入するのを防止することができる。
【0183】
また、既に船舶で設置された基本装置、すなわち、チラーユニット910と、GVUルームGRに接続する不活性ガス供給部600と活用し、VOCを凝縮させて液体状態で回収することができ、温度及び圧力測定値だけで簡単に配管のパージとLVOCの回収を制御することができる。
【0184】
本発明は前記実施態様に限定されなく、本発明の技術的要旨を逸脱しない範囲内で様々な形態で修正または変更できることは、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【符号の説明】
【0185】
100:カーゴタンク
200:LVOCタンク
210:LVOC供給ポンプ
220:LVOC気化器
230:VOC圧縮機
240:冷却部
250:凝縮器
300:燃料タンク
310:燃料供給ポンプ
320:LNG気化器
330:BOGヒータ
400:燃料混合部
410:燃料温度測定部
420:燃料圧力測定部
430:ドレンフィルタ
440:レベル測定部
450:フィルタ遮断バルブ
460:LVOC回収バルブ
470:LVOC回収タンク
480:LVOC移送ポンプ
500:エンジン
510:二重管
520:ベントバルブ
530:ガス遮断バルブユニット
531:ガスシャットオフバルブ
532:ガス圧力調整バルブ
540:LVOCパージバルブ
550:パージ温度測定部
600:不活性ガス供給部
610:パージ遮断バルブユニット
611:パージシャットオフバルブ
612:パージ圧力調整バルブ
620:VOCベントバルブ
700:換気ファン
710:排出ダクト
720:ダンパー
800:制御部
910:チラー(chiller)ユニット
920:還元剤タンク
930:冷却バルブ
FL:燃料供給ライン
RL:LVOC回収ライン
NL:不活性ガス供給ライン
VL1、VL2、VL3、VL4:ベントライン
NL1:LVOCパージライン
CL:冷却ライン
ER:エンジンルーム
GR:GVUルーム


図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】