(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】光学デバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 6/122 20060101AFI20240920BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G02B6/122
G02B6/12 371
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508617
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2022036290
(87)【国際公開番号】W WO2023054526
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111160906.6
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100127177
【氏名又は名称】伊藤 貴子
(72)【発明者】
【氏名】田家 裕
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 健司
(72)【発明者】
【氏名】ビナラオ アンソニー レイモンド メラド
(72)【発明者】
【氏名】ヘン,チェン ブー
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147AB02
2H147AC01
2H147BA05
2H147BE01
2H147CD02
2H147DA08
2H147EA05A
2H147EA13C
2H147EA15C
2H147FA03
2H147FA09
2H147FA18
2H147GA19
(57)【要約】
本開示は、基板と、基板上に形成され、異なる厚さを有するスラブ部を有する複数の光導波路とを含む光学デバイスを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成され、異なる厚さを有するスラブ部を含む複数の光導波路と
を含む光学デバイス。
【請求項2】
前記光導波路は、リッジ部を更に含み、
前記複数の光導波路の間で、前記リッジ部の厚さが異なる、
請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記複数の光導波路を覆う酸化物層が形成されている、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記スラブ部の何れかの前記厚さは、前記複数の異なるリッジ部の何れの前記厚さよりも薄い、請求項1又は2に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記対応するリッジ部で透過される光の波長が長ければ長いほど、前記リッジ部の前記厚さに対する前記スラブ部の前記厚さの比率が低くなる、請求項1又は2に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記リッジ部上の前記酸化物層の厚さは等しい、請求項1又は2に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記酸化物層の上に電極が設けられ、前記電極は、前記酸化物層の側面に形成されている、請求項3に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記光導波路は、リチウムを含む酸化物で形成されている、請求項3に記載の光学デバイス。
【請求項9】
リチウムを含む前記酸化物は、エピタキシャル成長したニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムである、請求項1~8の何れか一項に記載の光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
[0001] 本開示は、光通信及び光計測分野で使用される光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
[0002] インターネットの使用の普及に伴い、通信トラフィックは著しく増大しており、光ファイバ通信は極めて重要になりつつある。光ファイバ通信は、電気信号を光信号に変換し、光ファイバを介して光信号を伝送する技術である。光ファイバ通信は、広帯域幅、低損失、及び強いノイズ耐性を有する。
【0003】
[0003]
図7は、先行技術における光学デバイス700の断面略図である。光学デバイス700は、基板710、光導波路721、722、723、及びバッファ層730を有する。3つの異なる波長を有する光が、光導波路721、722、723でそれぞれ伝搬する。しかし、
図7の光学デバイス700において、多数の波長を有する光が入射する場合、各光導波路の伝搬損失が増加するという問題がある。
【0004】
[0004] 特許文献1には、異なる厚さを有する光導波路を有する光学デバイスが開示されている。しかし、多数の波長を有する光が入射する場合、より低い伝搬損失が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
[0005] PTL 1:特許文献1:特開2013-44805号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] 本開示は、上述の問題を考慮して達成されており、その目的は、基板と、基板上に形成され、異なる厚さを有するスラブ部を含む複数の光導波路とを含む光学デバイスを提供することにある。これによって、各光導波路の厚さを、透過光の波長に対応して異ならせ、各光導波路の伝搬損失を抑制することができる。更に、基板上に複数の光導波路を形成することによって、光ファイバと容易に接続することができ、結合損失を低減することができる。
【0007】
[0007] 更に、本開示の光学デバイスにおいて、好ましくは、光導波路は、リッジ部を更に含み、複数の光導波路の間で、リッジ部の厚さは異なる。これによって、各光導波路の伝搬損失を更に抑制することができる。
【0008】
[0008] 更に、本開示の光学デバイスにおいて、好ましくは、複数の光導波路を覆う酸化物層が形成されている。これによって、光導波路で伝搬する光の吸収を抑制することができ、各光導波路の伝搬損失を更に抑制することができる。
【0009】
[0009] 更に、本開示の光学デバイスにおいて、好ましくは、スラブ部の何れかの厚さは、複数の異なるリッジ部の何れの厚さよりも薄い。これによって、各光導波路の伝搬損失を更に抑制することができる。更に、薄いスラブ部に接続することによって、電圧を、光導波路に容易に印加することができ、その結果、信号変調を容易にすることができ、色の微調整を実行することができる。更に、接地電極を共用することができるので、光学デバイスを小型化することができる。
【0010】
[0010] 更に、本開示の光学デバイスにおいて、好ましくは、対応するリッジ部で透過される光の波長が長ければ長いほど、リッジ部の厚さに対するスラブ部の厚さの比率は低くなる。これによって、不必要なモードの光伝搬を抑制することができ、各光導波路の伝搬損失を更に抑制することができる。
【0011】
[0011] 更に、本開示の光学デバイスにおいて、好ましくは、リッジ部上の酸化物層の厚さは等しい。
【0012】
[0012] 更に、本開示の光学デバイスにおいて、好ましくは、酸化物層の上に電極が設けられ、電極は、酸化物層の側面に形成されている。
【0013】
[0013] 更に、本開示の光学デバイスにおいて、好ましくは、光導波路は、リチウムを含む酸化物で形成されている。
【0014】
[0014] 更に、本開示の光学デバイスにおいて、好ましくは、リチウムを含む酸化物は、エピタキシャル成長したニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムである。
【発明の効果】
【0015】
発明の有利な効果
[0015] 本開示の光学デバイスによれば、多数の光路の伝搬を1つのデバイス(チップ)で達成することができ、各光導波路の伝搬損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面の簡単な説明
【
図1】[0016]本開示の第1の実施形態の光学デバイス100の上面図である。
【
図2】
図1の線A-A’に沿った光学デバイス100の例示的な断面図である。
【
図3】
図1の線A-A’に沿った光学デバイス100の変型例100Aの例示的な断面図である。
【
図4A】本開示の第2の実施形態の光学デバイス200の上面図であり、光導波路だけを例示する。
【
図4B】本開示の第2の実施形態の光学デバイス200の上面図であり、進行波電極を含む光学デバイス200を全体として例示する。
【
図5】
図4Bの線B-B’に沿った光学デバイス200の例示的な断面図である。
【
図6】
図4Bの線B-B’に沿った光学デバイス200の変型例200Aの例示的な断面図である。
【
図7】先行技術における光学デバイス700の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態の説明
[0017] 以下、本開示の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
第1の実施形態
[0018]
図1は、本開示の第1の実施形態の光学デバイス100の上面図である。
図2は、
図1の線A-A’に沿った光学デバイス100の例示的な断面図である。
【0019】
[0019]
図1及び
図2に例示の光学デバイス100は、基板10、光導波路層20及びバッファ層30を含む。光導波路層20は、ニオブ酸リチウム膜又はタンタル酸リチウム膜で構成されている。入力信号S1iとしての第1の可視光(例えば、赤色可視光)を、光学デバイス100に入力し、光導波路20aで伝搬した後、出力信号S1oとして出力する。入力信号S2iとしての第2の可視光(例えば、緑色可視光)を、光学デバイス100に入力し、光導波路20bで伝搬した後、出力信号S2oとして出力する。入力信号S3iとしての第3の可視光(例えば、青色可視光)を、光学デバイス100に入力し、光導波路20cで伝搬した後、出力信号S3oとして出力する。これによって、第1の可視光~第3の可視光を、1つのデバイス(チップ)で伝送することができる。
【0020】
[0020] 光導波路層20を構成するニオブ酸リチウム膜よりも低い屈折率を基板10が有する限り、基板10は、特に制限されないが、ニオブ酸リチウム膜又はタンタル酸リチウム膜をエピタキシャル膜として形成することができる基板であることが好ましい。以下、ニオブ酸リチウム膜を例として説明する。例えば、基板10は、単結晶基板(例えば、サファイア単結晶基板、シリコン単結晶基板、酸化アルミニウム(Al2O3)単結晶基板など)であってもよい。単結晶基板の結晶配向は、特に制限されない。光導波路層20を構成するニオブ酸リチウム膜は、例えば、様々な結晶配向を有する単結晶基板に対してc軸配向エピタキシャル膜として容易に形成される特性を有する。c軸配向ニオブ酸リチウム膜は、3回対称性を有するので、ベースとして使用される単結晶基板、即ち、基板10は、同じ対称性を有することが好ましい。基板10が、例えば、サファイア単結晶基板又は酸化アルミニウム単結晶基板である場合、基板10は、c平面を有する基板であってもよく、基板10がシリコン単結晶基板である場合、基板10は、(111)表面を有する基板であってもよい。
【0021】
[0021] 光導波路層20を構成するニオブ酸リチウム膜は、ニオブ酸リチウムを含む可視光透過材料から形成される。可視光透過材料は、レーザー源11によって生成される可視光に対して透過しさえすればよく、可視光の全領域に対して透過する必要がない。
【0022】
[0022] ニオブ酸リチウム膜を形成するニオブ酸リチウムは、リチウム(Li)、ニオブ(Nb)及び酸素(O)以外の元素を含んでもよい。ニオブ酸リチウムは、次式(I)によって表される化合物であってもよい。
【0023】
[0023] (I)LixNbAyOz
式(I)において、Aは、Li、Nb及びO以外の元素を示す。元素Aの例は、K、Na、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Zn、Sc、Ceなどを、単独で又は組み合わせて含む。数xは、0.5~1.2、好ましくは0.9~1.05の範囲を示す。数yは、0~0.5の範囲にわたる。数zは、1.5~4.0、好ましくは2.5~3.5の範囲を示す。
【0024】
[0024] 光導波路層20は、第1の光導波路20a、第2の光導波路20b及び第3の光導波路20cを含む。第1の光導波路20aは、第1のリッジ部21a及び第1のスラブ部22aを含む。第2の光導波路20bは、第2のリッジ部21b及び第2のスラブ部22bを含む。第3の光導波路20cは、第3のリッジ部21c及び第3のスラブ部22cを含む。リッジ部及びスラブ部で構成される光導波路において、光の伝搬は、リッジ部に主に集中する。光学デバイス100において、第1のリッジ部21aは、レーザー源によって放出される第1の可視光(赤色光)を伝搬する主要伝送路になる。第1のリッジ部21aにおける第1の可視光の伝送方向は、第1の可視光を伝搬する方向である。第2のリッジ部21bは、レーザー源によって放出される第2の可視光(緑色光)を伝搬する主要伝送路になる。第2のリッジ部21bにおける第2の可視光の伝送方向は、第2の可視光を伝搬する方向である。第3のリッジ部21cは、レーザー源によって放出される第3の可視光(青色光)を伝搬する主要伝送路になる。第3のリッジ部21cにおける第3の可視光の伝送方向は、第3の可視光を伝搬する方向である。
【0025】
[0025] 各光導波路の伝搬損失を抑制するために、光導波路の厚さを、透過光の波長に従って設定してもよい。
図2に例示のように、第3のスラブ部22cの厚さT3は、第2のスラブ部22bの厚さT2よりも薄く、第2のスラブ部22bの厚さT2は、第1のスラブ部22aの厚さT1よりも薄い。換言すれば、対応する光導波路で透過される光の波長が長ければ長いほど、スラブ部の厚さは厚くなる。更に、好ましくは、第3のリッジ部21cの厚さT6は、第2のリッジ部21bの厚さT5よりも薄く、第2のリッジ部21bの厚さT5は、第1のリッジ部21aの厚さT4よりも薄い。換言すれば、対応する光導波路で透過される光の波長が長ければ長いほど、リッジ部の厚さは厚くなる。従って、光導波路20a、20b及び20cの厚さは、透過光の波長に対応して異なり、光導波路20a、20b及び20cの伝搬損失を抑制することができる。更に、基板10に複数の光導波路を形成することによって、光ファイバと容易に接続することができ、結合損失を低減することができる。
【0026】
[0026] 更に、好ましくは、第1のスラブ部22aの厚さT1は、第3のリッジ部21cの厚さT6よりも薄い。換言すれば、更に、第1のスラブ部22a、第2のスラブ部22b、及び第3のスラブ部22cの中で最大厚さを有するスラブ部の厚さは、第1のリッジ部21a、第2のリッジ部21b、及び第3のリッジ部21cの中で最小厚さの厚さよりも薄い。従って、各光導波路20a、20b及び20cの伝搬損失を更に抑制することができる。
【0027】
[0027] 更に、好ましくは、対応するリッジ部で透過される光の波長が長ければ長いほど、リッジ部の厚さに対するスラブ部の厚さの比率は低くなる。詳細には、第1のリッジ部21aの厚さに対する(赤色光を伝搬する)第1のスラブ部22aの厚さの比(T1/T4)は、第2のリッジ部21bの厚さに対する(緑色光を伝搬する)第2のスラブ部22bの厚さの比(T2/T5)以下であり、第2のリッジ部21bの厚さに対する(緑色光を伝搬する)第2のスラブ部22bの厚さの比(T2/T5)は、第3のリッジ部21cの厚さに対する(青色光を伝搬する)第3のスラブ部22cの厚さの比(T3/T6)以下である。従って、不必要なモードの光伝搬を抑制することができ、各光導波路20a、20b及び20cの伝搬損失を更に抑制することができる。
【0028】
[0028] 光導波路層20のスラブ部22a~22bの厚さは、好ましくは、1nm~200nmの範囲にわたる。更に、光導波路層20は、スラブ部22a、22b及び22cを含む必要がなく、リッジ部21a、21b及び21cだけで構成可能である。
【0029】
[0029] 光導波路層20を構成するニオブ酸リチウム膜は、エピタキシャル膜であってもよい。ここで、エピタキシャル膜は、基板10上に成長され、基板10の結晶配向に整列される結晶配向を有する単結晶の膜を意味する。即ち、いわゆるエピタキシャル膜は、結晶配向が、膜厚方向及び膜面方向に単一である膜である。膜面をX-Y平面に設定し、膜厚方向をZ軸に設定する場合、結晶配向は、X軸、Y軸、及びZ軸方向に整列させられる。2θ-θX線回折を用いて配向位置でピーク強度及び極を確認することによって、膜がエピタキシャル膜であるか否かを証明することができる。
【0030】
[0030] 膜形成方法としては、例えば、スパッタリング、CVD、又はゾルゲル方法等によってニオブ酸リチウム膜を形成することができる。ニオブ酸リチウム膜のc軸を、基板10の主面と垂直に配向させる場合、電場をc軸と平行に印加することによって、光屈折率を電場の強度に比例して変化させる。基板10としてサファイア単結晶基板を使用する場合、ニオブ酸リチウム膜を、サファイア単結晶基板に直接エピタキシャル成長によって形成してもよい。基板10としてシリコン単結晶基板を使用する場合、ニオブ酸リチウム膜を、クラッド層を介してエピタキシャル成長によって形成してもよい。クラッド層は、ニオブ酸リチウム膜よりも低い屈折率を有し、エピタキシャル成長に適している材料で形成されている。例えば、Y2O3をクラッド層として使用する場合、高品質ニオブ酸リチウム膜を形成することができる。フォトリソグラフィーなどの方法を用いてニオブ酸リチウム膜を所望の形状にパターン化することによって、リッジ部からなる光導波路21を形成することができる。
【0031】
[0031] ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル膜にすることによって、ニオブ酸リチウム膜の可視光透過率を向上させる。
【0032】
[0032] 光導波路21で伝搬する可視光が吸収されるのを防止するために、バッファ層(又は酸化物層)30を、光導波路層20に形成する。好ましくは、バッファ層30は、光導波路層20の屈折率よりも小さい屈折率を有する。好ましくは、バッファ層30は、誘電体である。バッファ層30の材料として、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ランタン(La2O3)、又はこれらの酸化物の複合物などを使用することができる。複合物として、例えば、SiAlLaOxを使用することができる。バッファ層を形成する方法として、例えば、膜形成方法(例えば、スパッタリング、CVD、又はゾルゲル方法など)を使用することができる。
【0033】
[0033] 好ましくは、第1のリッジ部21a、第2のリッジ部21b及び第3のリッジ部21c上のバッファ層の厚さは、好ましくは等しい。詳細には、
図2に例示のように、第1のリッジ部21a上のバッファ層30の厚さT7、第2のリッジ部21b上のバッファ層30の厚さT8、及び第3のリッジ部21c上のバッファ層30の厚さT9は、好ましくは、互いに等しい。
【0034】
[0034] 第1の実施形態の光学デバイス100によれば、3種類の光導波路を、1つのチップに形成し、各光導波路20a、20b及び20cの伝搬損失を抑制することができる。
【0035】
[0035]
図3は、
図1の線A-A’に沿った光学デバイス100の変型例100Aの例示的な断面図である。
図3に例示のように、バッファ層30の上面は、同じ高さを有するように形成され、変型例の光学デバイス100Aによっても、各光導波路20a、20b及び20cの伝搬損失を抑制することもできる。
【0036】
第2の実施形態
[0036]
図4は、本開示の第2の実施形態の光学デバイス200の上面図であり、
図4Aは、光導波路だけを例示し、
図4Bは、進行波電極を含む光学デバイス200を全体として例示する。
図5は、
図4Bの線B-B’に沿った光学デバイス200の例示的な断面図である。光学デバイス200は、例えば、光変調器である。第2の実施形態の光学デバイス200は、第1の光導波路20a、第2の光導波路20b及び第3の光導波路20cが2つの分岐光路をそれぞれ有するという点で、第1の実施形態の光学デバイス100と異なる。更に、光導波路は、変調信号を各光導波路に印加する信号電極、及び接地電極も有する。以下、異なる点について、主に説明する。
【0037】
[0037]
図4に例示のように、第1の光導波路20a、第2の光導波路20b及び第3の光導波路20cは、同じ構造を有する。以下、第1の光導波路20aを、例として説明する。例えば、第1の光導波路20aは、マッハツェンダー干渉計の構造を有する光導波路であり、1つの入力光導波路2iから分波部2cによって分岐された第1及び第2の分岐光導波路20a1及び20a2を有し、第1及び第2の分岐光導波路20a1及び20a2は、合波部2dを介して1つの出力光導波路2oに収束される。入力光S1iは、分波部2cを介して分波され、第1及び第2の分岐光導波路20a1及び20a2をそれぞれ進み、次に、合波部2dで合波され、変調光S1oとして第1の光導波路20aから出力される。
【0038】
[0038] 同様に、第2の光導波路20bは、第3の分岐光導波路20b1及び第4の分岐光導波路20b2を有する。第3の光導波路20cは、第5の分岐光導波路20c1及び第6の分岐光導波路20c2を有する。
【0039】
[0039] 第1の実施形態と同様に、入力信号S1iとしての第1の可視光(例えば、赤色可視光)を、光学デバイス200に入力し、光導波路20aで伝搬した後、第1の可視光を、出力信号S1oとして出力する。入力信号S2iとしての第2の可視光(例えば、緑色可視光)を、光学デバイス200に入力し、光導波路20bで伝搬した後、第2の可視光を、出力信号S2oとして出力する。入力信号S3iとしての第3の可視光(例えば、青色可視光)を、光学デバイス200に入力し、光導波路20cで伝搬した後、第3の可視光を、出力信号S3oとして出力する。従って、第1の可視光~第3の可視光を、1つのデバイス(チップ)で伝送することができる。
【0040】
[0040]
図5に例示のように、第1の分岐光導波路20a1及び第2の分岐光導波路20a2は、第1の分岐リッジ部21a1、第2の分岐リッジ部21a2及び第1のスラブ部22aで構成されている。第3の分岐光導波路20b1及び第4の分岐光導波路20b2は、第3の分岐リッジ部21b1、第4の分岐リッジ部21b2及び第2のスラブ部22bで構成されている。第5の分岐光導波路20c1及び第6の分岐光導波路20c2は、第5の分岐リッジ部21c1、第6の分岐リッジ部21c2及び第3のスラブ部22cで構成されている。
【0041】
[0041] 第1の分岐光導波路20a1及び第2の分岐光導波路20a2の厚さは、等しく、これらの厚さは両方とも、T4である。第3の分岐光導波路20b1及び第4の分岐光導波路20b2の厚さは、等しく、これらの厚さは両方とも、T5である。第5の分岐光導波路20c1及び第6の分岐光導波路20c2の厚さは、等しく、これらの厚さは両方とも、T6である。更に、第1のスラブ部22a、第2のスラブ部22b及び第3のスラブ部22cの厚さT1~T3と、第1及び第2の分岐光導波路20a1及び20a2、第3及び第4の分岐光導波路20b1及び20b2、及び第5及び第6の分岐光導波路20c1及び20c2の厚さT4~T6との関係は、第1の実施形態の光学デバイス100の関係と同じであり、ここで繰り返さない。
【0042】
[0042] 第1の実施形態の光学デバイス100と同様に、第2の実施形態の光学デバイス200において、第1のスラブ部22aの厚さT1は、第3のリッジ部21cの厚さT6よりも薄い。換言すれば、更に、第1のスラブ部22a、第2のスラブ部22b、及び第3のスラブ部22cの中で最大厚さを有するスラブ部の厚さは、第1の分岐リッジ部21a1、第2の分岐リッジ部21a2、第3の分岐リッジ部21b1、第4の分岐リッジ部21b2、第5の分岐リッジ部21c1、第6の分岐リッジ部21c2の中での最小厚さよりも薄い。従って、各光導波路20a、20b及び20cの伝搬損失を更に抑制することができる。更に、薄いスラブ部上で接続することによって、電圧を、光導波路に容易に印加することができ、その結果、信号変調を容易にすることができ、色の微調整を実行することができる。更に、接地電極を共用することができるので、光学デバイスを小型化することができる。
【0043】
[0043]
図5に例示のように、光学デバイス200は、電極層40を更に含む。電極層40は、複数の信号電極及び複数の接地電極を有する。電極層40の材料として、例えば、金、銀、銅、白金、ルテニウム、コバルト、タングステン、モリブデン、又はこれらの金属の化合物を使用することができる。
【0044】
[0044] 電極層40を形成するために、例えば、次の方法を使用することができる。膜形成方法(例えば、蒸着、スパッタリング、CVD、又はゾルゲル方法)によって、金属膜を形成することができ、次に、フォトリソグラフィーなどの方法を用いて所望の形状にパターン化することによって、電極層40を形成することができる。更に、金属膜を、蒸着、スパッタリングなどによって形成する場合、所望の形状を有するマスクを介してパターンを形成することもできる。
【0045】
[0045]
図5に例示のように、第1の分岐光導波路20a1を進む可視光を変調するために、第1の信号電極41a1は、バッファ層30を介して第1の分岐リッジ部21a1と対向する。第2の分岐光導波路20a2を進む可視光を変調するために、第2の信号電極41a2は、バッファ層30を介して第2の分岐リッジ部21a2と対向する。第3の分岐光導波路20b1を進む可視光を変調するために、第3の信号電極41b1は、バッファ層30を介して第3の分岐リッジ部21b1と対向する。第4の分岐光導波路20b2を進む可視光を変調するために、第4の信号電極41b2は、バッファ層30を介して第4の分岐リッジ部21b2と対向する。第5の分岐光導波路20c1を進む可視光を変調するために、第5の信号電極41c1は、バッファ層30を介して第5の分岐リッジ部21c1と対向する。第6の分岐光導波路20c2を進む可視光を変調するために、第6の信号電極41c2は、バッファ層30を介して第6の分岐リッジ部21c2と対向する。
【0046】
[0046]
図4及び
図5に例示のように、上面図において、第1の接地電極42aは、第1の信号電極41a1の1つの側面であって、第2の信号電極41a2の反対側である側面に、第1の信号電極41a1に沿って構成される。更に、上面図において、第2の接地電極42bは、第6の信号電極41c2の1つの側面であって、第5の信号電極41c1の反対側である側面に、第6の信号電極41c2に沿って構成される。第1の接地電極42aを、第1のスラブ部22aに直接形成してもよい。第2の接地電極42bを、第3のスラブ部22cに直接形成してもよい。これによって、接地電極を共用することができ、光学デバイス200の高周波数特性を改善することができ、光学デバイス200を小型化することができる。
【0047】
[0047] 第2の実施形態の光学デバイス200によれば、多数の光路の変調を達成し、各光導波路20a、20b及び20cの伝搬損失を抑制することができる。
【0048】
[0048]
図6は、
図4Bの線B-B’に沿った光学デバイス200の変型例200Aの例示的な断面図である。
図6に例示のように、第1の接地電極42a及び第2の接地電極42bを、バッファ層30を介して第1のスラブ部22a及び第3のスラブ部22cの上に設ける。第2の実施形態の変型例の光学デバイス200Aによれば、各光導波路20a、20b及び20cの伝搬損失を更に抑制することができる。
【実施例】
【0049】
実施例
[0049] 第2の実施形態の光学デバイス200の構造に従って、実施例1~6を準備する。実施例1~6におけるリッジ部及びスラブ部の膜厚の関係、及び、各光導波路の経路損失(Path Loss)を、表1~6に示す。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
[0056] 表1~6に例示のように、対応するリッジ部で透過される光の波長が長ければ長いほど、リッジ部の厚さに対するスラブ部の厚さの比率が低くなる場合(表5及び表6に例示のように)、各波長を有する可視光の経路損失は、1dB/cm未満であり、伝搬損失を抑制する効果は優れている。
【0057】
[0057] 本開示を、添付の図面及び実施例に関連して詳細に上述したが、上述の説明は、どのような形態でも本開示を限定しないものとする。当業者は、本開示の本質的な精神及び範囲から逸脱することなく、必要に応じて本開示に修正及び変更を加えることができ、これらの修正及び変更は全て、本開示の範囲内に入る。
【符号の説明】
【0058】
参照符号リスト
[0058] 100、100A、200、200A、700 光学デバイス
10 基板
20 導波路層
30 バッファ層
40 電極層
20a 第1の光導波路
20b 第2の光導波路
20c 第3の光導波路
2c 分波部
2d 合波部
2i 入力光導波路
2o 出力光導波路
21a 第1のリッジ部
21b 第2のリッジ部
21c 第3のリッジ部
22a 第1のスラブ部
22b 第2のスラブ部
22c 第3のスラブ部
【手続補正書】
【提出日】2024-08-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成され、異なる厚さを有するスラブ部を含む複数の光導波路と
を含む光学デバイス。
【請求項2】
前記
複数の光導波路は、
それぞれ、リッジ部を更に含み、
前記複数の光導波路において、前記リッジ部の厚さが異なる、
請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記複数の光導波路を覆う酸化物層が形成されている、請求項1
又は2に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記スラブ部の何れかの前記厚さは、複数の
前記リッジ部の
異なる前記厚さのうちの何れ
の厚さよりも薄い、請求項
2に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前
記リッジ部で透過される光の波長が長ければ長いほど、前記リッジ部の前記厚さに対する前記スラブ部の前記厚さの比率が低くなる、請求項
2に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記リッジ部上の前記酸化物層の厚さは等しい、請求項
3に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記酸化物層の上に電極が設けられ、前記電極は、前記酸化物層の側面に形成されている、請求項3に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記光導波路は、リチウムを含む酸化物で形成されている、請求項3に記載の光学デバイス。
【請求項9】
リチウムを含む前記酸化物は、エピタキシャル成長したニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムである、請求項
8に記載の光学デバイス。
【国際調査報告】