(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】アンチモン含有触媒を含む触媒システム
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20240920BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01J29/76 A
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 228
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510283
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 CN2022121247
(87)【国際公開番号】W WO2023046146
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/121061
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チェン、リアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ジアディ
(72)【発明者】
【氏名】チウ、レンジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ユーチャオ
(72)【発明者】
【氏名】ハオ、ユーフェン
(72)【発明者】
【氏名】シー、ウェンミン
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
排気ガスを浄化するための触媒システムであって、アンチモン含有触媒、特にアンチモン含有SCR触媒を含む1つ以上のアンチモン含有領域と、任意選択的に金属促進されるモレキュラーシーブを含む1つ以上のアンチモン捕捉領域と、を含み、アンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つが、排気ガスの流動方向において1つ以上のアンチモン含有領域の下流に位置する、触媒システム、及びまた窒素酸化物を含有する排気ガスの処理のための、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを浄化するための触媒システムであって、
-アンチモン含有触媒、特にアンチモン含有SCR触媒を含む1つ以上のアンチモン含有領域と、
-任意選択的に金属促進されるモレキュラーシーブを含む1つ以上のアンチモン捕捉領域と、を含み、
前記1つ以上のアンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つが、前記排気ガスの流動方向において前記1つ以上のアンチモン含有領域の下流に位置する、触媒システム。
【請求項2】
前記アンチモン含有触媒が、支持体の粒子上に支持されている、酸化アンチモン、酸化バナジウム、及び任意選択的に他の金属又は半金属の少なくとも1つの酸化物を含有する、請求項1に記載の触媒システム。
【請求項3】
前記アンチモン含有触媒における前記支持体が、モレキュラーシーブ、並びにTi、Si、W、Al、Ce、Zr、Mg、Ca、Ba、Y、La、Pr、Nb、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sn、及びBiからなる群から選択される元素の酸化物から選択される、請求項2に記載の触媒システム。
【請求項4】
前記他の金属又は半金属が、B、Al、Bi、Si、Sn、Pb、Sb、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ce、Y、Nb、Mo、Er、Ba、Sm、及びWからなる群から選択される、請求項2又は3に記載の触媒システム。
【請求項5】
前記1つ以上のアンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つが、貴金属系触媒を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒システム。
【請求項6】
貴族金属系触媒が、支持体の粒子上に支持された1つ以上の貴金属、好ましくは白金族金属、より好ましくはPtを含有する、請求項5に記載の触媒システム。
【請求項7】
前記貴族金属系触媒における前記支持体が、モレキュラーシーブ、並びにTi、Si、W、Al、Ce、Zr、Mg、Ca、Ba、Y、La、Pr、Nb、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sn、Sm、Eu、Hf、及びBiからなる群から選択される元素の酸化物から選択される、請求項6に記載の触媒システム。
【請求項8】
前記1つ以上のアンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つが、前記モレキュラーシーブを含む層、及び前記貴金属系触媒を含む層で層状化されている、請求項5~7のいずれか一項に記載の触媒システム。
【請求項9】
前記1つ以上の貴金属の各々が、各アンチモン捕捉領域に基づいて、0.01~20g/ft
3、好ましくは0.5~10g/ft
3の量で存在する、請求項5~8のいずれか一項に記載の触媒システム。
【請求項10】
前記1つ以上のアンチモン捕捉領域における前記モレキュラーシーブが、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、-CHI、-CLO、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、*-EWT、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFO、IFR、-IFU、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITH、*-ITN、ITR、ITT、-ITV、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JNT、JOZ、JRY、JSN、JSR、JST、JSW、KFI、LAU、LEV、LIO、-LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTJ、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、*MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、-PAR、PAU、PCR、PHI、PON、POS、PSI、PUN、RHO、-RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、*SFV、SFW、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、*-SSO、SSY、STF、STI、*STO、STT、STW、-SVR、SVV、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、-WEN、YUG、又はZON、及びこれらの任意の組み合わせの骨格型を有するアルミノシリケートゼオライトから選択され、中でもAEI、BEA、CHA、AFT、AFX、FAU、FER、KFI、MOR、MFI、MOR、MEL、又はこれらの任意の組み合わせが好ましい、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒システム。
【請求項11】
前記モレキュラーシーブが、金属促進されており、前記金属が、Au及びAgなどの貴金属、Ru、Rh、Pd、In、及びPtなどの白金族金属、Cr、Zr、Nb、Mo、Fe、Mn、W、V、Al、Ti、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Sn、及びBiなどの卑金属、Can及びMgなどのアルカリ土類金属、並びにこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒システム。
【請求項12】
前記モレキュラーシーブが、金属促進されており、前記金属が、Fe、Cu、又はこれらの組み合わせである、請求項11に記載の触媒システム。
【請求項13】
前記1つ以上のアンチモン捕捉領域における前記モレキュラーシーブが、5:1~150:1、好ましくは5:1~50:1、特に10:1~40:1の範囲のSiO
2/Al
2O
3モル比(SAR)を有するアルミノシリケートゼオライトから選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の触媒システム。
【請求項14】
前記1つ以上のアンチモン捕捉領域、及び前記1つ以上のアンチモン含有領域が、互いに独立して、押出物の形態又は基材上のウォッシュコートの形態で存在する、請求項1~13のいずれか一項に記載の触媒システム。
【請求項15】
前記1つ以上のアンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つ、及び前記1つ以上のアンチモン含有領域のうちの少なくとも1つが、不活性基材の2つ以上の細片上に別々に担持されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の触媒システム。
【請求項16】
前記押出物及び/又は前記基材が、ハニカム構造、例えばモノリシックフロースルー構造又はウォールフロー構造を有する、請求項14又は15に記載の触媒システム。
【請求項17】
前記1つ以上のアンチモン含有領域の各々が、前記アンチモン含有領域と前記アンチモン捕捉領域との総体積に対して、10~90体積%、好ましくは20~80体積%、より好ましくは30~70体積%%の割合で前記触媒システムに含まれている、請求項1~16のいずれか一項に記載の触媒システム。
【請求項18】
前記1つ以上のアンチモン捕捉領域の各々が、前記アンチモン含有領域と前記アンチモン捕捉領域との前記総体積に対して、10~90体積%、好ましくは20~80体積%、より好ましくは30~70体積%の割合で前記触媒システムに含まれている、請求項1~17のいずれか一項に記載の触媒システム。
【請求項19】
窒素酸化物を含有する排気ガスの処理のための方法であって、還元剤の存在下で、前記排気ガスを請求項1~18のいずれか一項に記載の触媒システムと接触させることを含む、方法。
【請求項20】
前記排気ガスが、内燃エンジン、例えばガソリン又はディーゼルエンジンから発生する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
還元剤供給源と、請求項1~18のいずれか一項に記載の触媒システムと、任意選択的に、ディーゼル酸化触媒(DOC)、三元変換触媒(TWC)、四元変換触媒(FWC)、無触媒又は触媒スートフィルタ(CSF)、アンモニア酸化触媒(AMOx)、NOx捕捉、NOx吸収装置触媒、炭化水素捕捉触媒、センサ及びミキサのうちの1つ以上と、を含む、特に内燃エンジンから発生する排気ガスの処理のための、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチモン含有触媒を含む触媒システム、及び窒素酸化物を含有する排気ガスの処理のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンチモン含有触媒は、多くの分野、例えば、ポリエステル材料の生成、アルカン及びアルケンのアンモ酸化、有機化合物のアルコキシル化、エンジン排気の処理において有用であることが知られている。アンチモン種は、活性物質又は促進剤のいずれかとして機能し得、特定の用途に応じて異なる化学組成を有し得る。ここ数十年で、高温におけるアンチモン種の揮発性に関する懸念が、特定の用途、例えば、エンジン排気処理におけるアンチモン含有触媒の利用可能な市場を限定する問題となった。
【0003】
エンジン排気、特にディーゼルエンジン排気は、一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(hydrocarbon、HC)、及び窒素酸化物(nitrogen oxides、NOx)などのガス状放出物、並びに一般に微粒子又は粒子状物質(particulate matter、PM)と称される凝縮相材料(液体及び固体)を含む。エンジン排気は、空気への放出前にエンジン排気システムで処理される必要がある。エンジン排気システムは、概して、NOxの還元のための触媒、例えば、選択的触媒還元(selective catalytic reduction、SCR)によるNOxの還元のための触媒を含む。
【0004】
アンチモン種は、バナジウム系酸化物SCR触媒のSCR性能を効果的に改善するための良好な候補として報告されている。米国特許第2009/143225(A1)号は、活性材料としての酸化バナジウム及びアンチモンを含むSCR触媒を記載しており、アンチモンが、低温で窒素酸化物(NOx)の還元を促進し、耐硫黄被毒性を増加させるのに有効であることを証明している。アンチモン種を含有するバナジウム系酸化物SCR触媒は、例えば、韓国特許第101065242(B1)号、米国特許第8975206(B2)号、及び国際公開第2017101449(A1)号にも記載されている。
【0005】
バナジウム系酸化物SCR触媒に対するアンチモンの良好な促進効果にもかかわらず、エンジン排気システムにおけるアンチモン種を含有するバナジウム系酸化物SCR触媒の応用は、高温排気ガスの流れ中でSCR触媒に接触し得る高温でのアンチモン種の揮発性の懸念のために限定される。SCR触媒からのアンチモン蒸発を減少させるのに有用ないくつかの手段が提案された。例えば、国際公開第2021055299(A1)号は、アンチモン種を含有するバナジウム系酸化物触媒を記載しており、触媒中のタングステン種の存在が、高温下でのアンチモン種の蒸発を顕著に抑制し得ることを証明している。
【0006】
それは望ましく、アンチモン含有触媒から周囲へのアンチモンの放出を減少させるための代替的な又はより効果的な手法。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、周囲へのアンチモン放出を望ましく低い量で発生させる、アンチモン含有触媒を含む触媒システムを提供することである。
【0008】
驚くべきことに、この目的は、1つ以上のアンチモン含有領域と、アンチモンを捕捉するためのモレキュラーシーブを含む1つ以上の領域と、を含む、触媒システムによって達成された。
【0009】
したがって、一態様では、本発明は、排気ガスを浄化するための触媒システムであって、
-アンチモン含有触媒、特にアンチモン含有SCR触媒を含む1つ以上のアンチモン含有領域と、
-任意選択的に金属促進されるモレキュラーシーブを含む1つ以上のアンチモン捕捉領域と、を含み、
アンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つが、排気ガスの流動方向において1つ以上のアンチモン含有領域の下流に位置する、触媒システムに関する。
【0010】
別の態様では、本発明は、還元剤の存在下で、排気ガスを本明細書に記載されるような触媒システムと接触させることを含む、窒素酸化物を含有する排気ガスの処理のための方法に関する。
【0011】
更なる態様では、本発明は、還元剤供給源と、本明細書に記載されるような触媒システムと、任意選択的に、ディーゼル酸化触媒(diesel oxidation catalyst、DOC)、三元変換触媒(three-way conversion catalyst、TWC)、四元変換触媒(four-way conversion catalyst、FWC)、無触媒又は触媒スートフィルタ(catalyzed soot filter、CSF)、アンモニア酸化触媒(ammonia oxidation catalyst、AMOx)、NOx捕捉、NOx吸収装置触媒、炭化水素捕捉触媒、センサ及びミキサのうちの1つ以上と、を含む、特に内燃エンジンから発生する排気ガスの処理のためのシステムに関する。
【0012】
モレキュラーシーブを含むアンチモン捕捉領域を下流に配置することによって、アンチモン含有触媒から周囲へのアンチモンの放出が効果的に抑制され得ることが、本発明者らによって見出された。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、本明細書の以下に詳細に記載されるであろう。本発明は、多くの異なる方法で実施され得、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0014】
本明細書において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」などの用語は、「含有する(contain)」、「含有している(containing)」などと互換的に使用され、非限定的なオープンな方式で解釈されるべきである。すなわち、例えば、更なる成分又は要素が存在し得る。「からなる(consists of)」又は「から本質的になる(consists essentially of)」という表現又は同族語は、「含む(comprises)」又は同族語に包含され得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、「領域」という用語は、特定の材料を含み、排気ガス流動方向における特定の長さに延在する触媒システムの部分を意味するように単に意図される。
【0016】
本明細書において、「上流」及び「下流」への任意の言及は、流れの流動方向、例えば、排気ガスの流動方向に対する相対的な位置であると理解されるであろう。
【0017】
第1の態様によれば、本発明は、排気ガスを浄化するための触媒システムであって、
-アンチモン含有触媒を含む1つ以上のアンチモン含有領域と、
-任意選択的に金属促進されるモレキュラーシーブを含む1つ以上のアンチモン捕捉領域と、を含み、
アンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つが、排気ガスの流動方向において1つ以上のアンチモン含有領域の下流に位置する、触媒システムを提供する。
【0018】
アンチモン含有領域は、排気ガスを浄化するのに有用な任意のアンチモン含有触媒を含み得る。特に、アンチモン含有領域は、アンチモン含有SCR触媒を含む。
【0019】
アンチモン含有触媒は、アンチモン促進剤を含有するそれらのバナジウム系SCR触媒であり得る。したがって、アンチモン含有触媒は、NOxの選択的触媒還元のための主要な活性種としてバナジウム、及び促進剤としてアンチモンを含有し、各々は、典型的には、それぞれの酸化物及び/又はこれらの複合酸化物の形態で存在する。
【0020】
アンチモン含有触媒は、任意選択的に、少なくとも1つの追加の金属又は半金属を含み得る。追加の金属又は半金属は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、バリウム(Ba)、サマリウム(Sm)、エルビウム(Er)、及びタングステン(W)を含み得るが、これらに限定されない。特に、追加の金属又は半金属は、ケイ素(Si)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)から選択され得る。少なくとも1つの金属又は半金属は、それぞれの酸化物、又はバナジウム、アンチモン、若しくは他の追加の金属若しくは半金属とのこれらの複合酸化物、又はこれらの組み合わせの形態で存在し得ることが理解されるであろう。
【0021】
いくつかの実施形態では、アンチモン含有触媒は、支持体の粒子上に、酸化アンチモン、酸化バナジウム、並びに任意選択的に、ケイ素(Si)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)から選択される金属又は半金属の少なくとも1つの酸化物を含有するか、又はそれらからなる。例えば、アンチモン含有触媒は、支持体の粒子上に、バナジウム(V)、アンチモン(Sb)、及びケイ素(Si)の酸化物を含有するか、又はそれらからなる。
【0022】
支持体として有用な材料は、モレキュラーシーブ、並びにTi、Si、W、Al、Ce、Zr、Mg、Ca、Ba、Y、La、Pr、Nb、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sn、及びBiからなる群から選択される金属の酸化物を含み得るが、これらに限定されない。好ましくは、支持体は、チタニア(好ましくは、アナターゼ)、シリカ、アルミナ、ジルコニア、及びこれらの任意のドーパント安定化形態から選択される1つ以上であり得る。
【0023】
アンチモン含有触媒は、Sb2O3として計算して、アンチモン含有触媒の総重量に基づいて、1~30重量%、1~25重量%、1~15重量%、2~12重量%、又は2~8重量%の量でアンチモンを含有し得る。
【0024】
アンチモン含有触媒は、V2O5として計算して、アンチモン含有触媒の総重量に基づいて、0.1~20重量%、1~15重量%、2~10重量%、又は2~7重量%の量でバナジウムを含有し得る。
【0025】
少なくとも1つの追加の金属又は半金属の各々は、存在する場合、それぞれの酸化物として計算して、アンチモン含有触媒の総重量に基づいて、0.1~30重量%、1~15重量%、又は2~10重量%の量でアンチモン含有触媒中に含有され得る。
【0026】
支持体は、アンチモン含有触媒の総重量に基づいて、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、又は少なくとも75重量%の量でアンチモン含有触媒中に含有され得る。支持体の量は、アンチモン含有触媒の総重量に基づいて、最大で95重量%、又は最大で90重量%であり得る。
【0027】
いくつかの例示的な実施形態では、アンチモン含有触媒は、
(a)Sb2O3として計算して、1~25重量%の酸化アンチモンと、
(b)V2O5として計算して、1~15重量%の酸化バナジウムと、
(c)1~15重量%のSiO2と、
(d)任意選択的に、WO3として計算して、1~10重量%の酸化タングステンと、
(e)65~95重量%のTiO2支持体と、を含有するか、又はそれらからなり、
各々は、アンチモン含有触媒の総重量に基づく。
【0028】
いくつかの例示的な実施形態では、アンチモン含有触媒は、
(a)Sb2O3として計算して、1~15重量%の酸化アンチモンと、
(b)V2O5として計算して、2~10重量%の酸化バナジウムと、
(c)2~10重量%のSiO2と、
(d)任意選択的に、WO3として計算して、2~10重量%の酸化タングステンと、
(e)70~90重量%のTiO2支持体と、を含有するか、又はそれらからなり、
各々は、アンチモン含有触媒の総重量に基づく。
【0029】
いくつかの更なる例示的な実施形態では、アンチモン含有触媒は、
(a)Sb2O3として計算して、2~12重量%、好ましくは2~8重量%の酸化アンチモンと、
(b)V2O5として計算して、2~7重量%の酸化バナジウムと、
(c)2~10重量%のSiO2と、
(e)75~90重量%のTiO2支持体と、を含有するか、又はそれらからなり、
各々は、アンチモン含有触媒の総重量に基づく。
【0030】
本明細書に記載されるような各場合におけるアンチモン含有触媒の総重量は、100重量%である。
【0031】
アンチモン含有領域の各々におけるアンチモン含有触媒は、2つ以上のこのような領域が存在する場合、互いに同じか又は異なる組成を有し得ることが理解されるであろう。
【0032】
アンチモン含有触媒は、Sb2O3として計算して、各アンチモン含有領域に基づいて、50~3,000g/ft3のアンチモン、好ましくは200~2,200g/ft3のアンチモン、より好ましくは350~2,000g/ft3のアンチモンを提供する量で存在し得る。
【0033】
アンチモン含有領域はまた、アンチモン含有触媒に加えて、1つ以上の成分も含有し得、これは、非触媒活性成分、例えば、触媒物品の調製において有用な加工助剤、例えば、潤滑剤及び結合剤であり得る。他の成分はまた、触媒活性であり得、例えば、アンチモン含有触媒以外の活性種であり得る。
【0034】
驚くべきことに、モレキュラーシーブがアンチモン種を捕捉するのに有用であることが本発明者らによって見出された。したがって、モレキュラーシーブを含む1つ以上の領域が、アンチモンを捕捉するために触媒システム中に配置される。本明細書では、これらの領域は、アンチモン捕捉領域と称される。
【0035】
アンチモン捕捉領域は、任意選択的に金属促進されるモレキュラーシーブを含む。本明細書において、モレキュラーシーブの文脈内の「金属促進された」という用語は、モレキュラーシーブの任意の性能を改善することができる金属がモレキュラーシーブ中及び/又はモレキュラーシーブ上に組み込まれていることを意味するように意図される。促進剤金属とも称される金属は、非骨格元素としてモレキュラーシーブ中に存在する。言い換えれば、促進剤金属は、モレキュラーシーブ骨格の構成には関与しない。促進剤金属は、モレキュラーシーブ内及び/又はモレキュラーシーブ表面の少なくとも一部上に、好ましくはイオン種の形態で存在し得る。
【0036】
モレキュラーシーブは、概して四面体型部位を含有し、実質的に均一な細孔分布を有する酸素イオンの広範な三次元網目構造に基づく骨格材料を指す。本発明の目的に好適なモレキュラーシーブは、ミクロ多孔質又はメソ多孔質であり得る。典型的には、2nm未満の平均細孔サイズを有するモレキュラーシーブは、「ミクロ多孔質」と分類され、2~50nmの平均細孔サイズを有するモレキュラーシーブは、「メソ多孔質」と分類される。細孔サイズは環サイズによって画定される。
【0037】
特に、モレキュラーシーブは、ゼオライトである。「ゼオライト」という用語は、当該技術分野におけるその通常の意味を有し、典型的には、角共有TO4四面体から構成される開いた三次元骨格構造を有する空間的網目構造を有する結晶質材料(典型的には、アルミノシリケート)を指し、式中、Tは、四価元素(典型的には、Si)又は三価元素(典型的には、Al)である。アニオン性骨格の電荷のバランスをとるカチオンは、骨格酸素と緩く会合しており、残りの細孔容積は、水分子で充填されている。非骨格カチオンは、概して交換可能であり、水分子は、除去可能である。
【0038】
本発明の目的のために、好適なモレキュラーシーブは、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、-CHI、-CLO、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、*-EWT、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFO、IFR、-IFU、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITH、*-ITN、ITR、ITT、-ITV、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JNT、JOZ、JRY、JSN、JSR、JST、JSW、KFI、LAU、LEV、LIO、-LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTJ、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、*MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、-PAR、PAU、PCR、PHI、PON、POS、PSI、PUN、RHO、-RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、*SFV、SFW、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、*-SSO、SSY、STF、STI、*STO、STT、STW、-SVR、SVV、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、-WEN、YUG、及びZON、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される骨格型を有するアルミノシリケートゼオライトを含み得るが、これらに限定されない。
【0039】
特に、アンチモン捕捉領域に有用なモレキュラーシーブは、AEI、AEL、AFI、AFT、AFO、AFX、AFR、ATO、BEA、CHA、DDR、EAB、EMT、ERI、EUO、FAU、FER、GME、HEU、JSR、KFI、LEV、LTA、LTL、LTN、MAZ、MEL、MFI、MOR、MOZ、MSO、MTW、MWW、OFF、RTH、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TON、TSC、及びWENの群から選択される骨格型を有するゼオライトを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、アンチモン捕捉領域に有用なモレキュラーシーブは、AEI、BEA(例えば、β)、CHA(例えば、チャバザイト、SSZ-13)、AFT、AFX、FAU(例えば、ゼオライトY)、MOR、MFI(例えば、ZSM-5)、MOR(例えば、モルデナイト)、及びMELの群から選択される骨格型を有するゼオライトを含み、中でも、AEI、BEA、及びCHAが特に好ましい。
【0041】
いくつかの他の実施形態では、アンチモン捕捉領域に有用なモレキュラーシーブは、小細孔ゼオライトから選択され得る。「小細孔ゼオライト」という用語は、約5オングストローム(Å)よりも小さい細孔開口部を有するゼオライトを指す。小細孔ゼオライトは、小細孔8員環ゼオライトであり得る。「8員環ゼオライト」という用語は、8員環細孔開口部を有するゼオライトを指す。いくつかの8員環ゼオライトは、二重6員環(double-six ring、d6r)二次構造単位を有し得、その中で、ケージ様構造が、4員環による二重6員環構造単位の結合から生じて形成される。例示的な小細孔8員環ゼオライトは、骨格型AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、及びWENを含む。
【0042】
いくつかの特定の実施形態では、アンチモン捕捉領域に有用な小細孔ゼオライトは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、SAS、SAT、及びSAVからなる群から選択される骨格型を有するゼオライトを含む。AEI、AFT、AFX、及びCHAからなる群から選択される骨格型を有する小細孔ゼオライトが、特に言及され得る。
【0043】
ゼオライトが、本明細書において国際ゼオライト協会(IZA:International Zeolite Association)によって概して受け入れられている骨格型コードを参照して言及される場合、それは、参照材料だけでなく、SCR触媒活性を有する任意のアイソ型の骨格材料も含むように意図されることが理解されるであろう。各骨格型コードについての参照材料及びアイソ型の骨格材料のリストは、IZAのデータベース(http://www.iza-structure.org/databases/)から入手可能である。
【0044】
アンチモン捕捉領域におけるモレキュラーシーブとして有用なアルミノシリケートゼオライト、例えば、本明細書の上に記載されるような骨格型のうちのいずれかを有するものは、好適には、5:1~150:1、好ましくは5:1~50:1、特に10:1~40:1の範囲のSiO2/Al2O3モル比(SAR)を有する。
【0045】
モレキュラーシーブは、高い表面積、例えば、DIN 66131に従って決定される場合、少なくとも300m2/g、少なくとも400m2/g、少なくとも550m2/g、又は少なくとも650m2/g、例えば400~750m2/g、又は450~750m2/gのBET表面積を示し得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、アンチモン捕捉領域におけるモレキュラーシーブは、金属促進されたモレキュラーシーブから選択される。促進剤金属は、Au及びAgなどの貴金属、Ru、Rh、Pd、In、及びPtなどの白金族金属、Cr、Zr、Nb、Mo、Fe、Mn、W、V、Al、Ti、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Sn、及びBiなどの卑金属、Ca及びMgなどのアルカリ土類金属、並びにこれらの任意の組み合わせから選択され得る。促進剤金属は、好ましくはFe若しくはCu、又はこれらの組み合わせである。
【0047】
いくつかの例示的な実施形態では、アンチモン捕捉領域は、AEI、BEA、CHA、AFT、AFX、FAU、FER、KFI、MOR、MFI、MOR、又はMELの骨格型を有するCu及び/又はFe促進されたゼオライト、特にAEI、BEA、又はCHAの骨格を有するCu及び/又はFe促進されたゼオライトを含み得る。
【0048】
促進剤金属は、金属促進されたモレキュラーシーブの総重量に基づいて、酸化物基準で0.1~20重量%、0.5~15重量%、1~10重量%、又は4~10重量%の量で、金属促進されたモレキュラーシーブ中に存在し得る。Cu又はFeが促進剤金属として使用されるいくつかの例示的な実施形態では、促進剤金属は、好ましくは、金属促進されたモレキュラーシーブの総重量に基づいて、酸化物基準で0.5~15重量%、又は1~15重量%、又は1~10重量%の量で存在する。
【0049】
アンチモン捕捉領域は各々、1つ以上の金属促進されたモレキュラーシーブを含み得る。言い換えれば、ただ1つの金属促進されたモレキュラーシーブ又は2つ以上の金属促進されたモレキュラーシーブの組み合わせが、単一のアンチモン捕捉領域において使用され得る。
【0050】
モレキュラーシーブは、各アンチモン捕捉領域に基づいて、2,500~6,500g/ft3、好ましくは3,000~5,500g/ft3の量で存在し得る。モレキュラーシーブの量は、金属促進されたモレキュラーシーブが使用される場合、金属促進されたモレキュラーシーブの量を指すことを理解されたい。
【0051】
任意選択的に、アンチモン捕捉領域は、1つ以上の機能成分、例えば、排気ガスを処理するのに有用な貴金属系触媒を含み得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、アンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つは、貴金属系触媒を含む。したがって、このような領域は、任意選択的に金属促進されるモレキュラーシーブの第1の成分と、貴金属系触媒の第2の成分と、を含む。
【0053】
貴金属系触媒は、支持体の粒子上に支持された1つ以上の貴金属を含有し得る。好適な貴金属は、特に白金族金属、例えばRu、Rh、Pd、In、及びPt、好ましくはPt及びPdである。
【0054】
貴金属のための支持体は、貴金属を受容及び担持するのに好適な任意の材料、例えばモレキュラーシーブ、Ti、Si、W、Al、Ce、Zr、Mg、Ca、Ba、Y、La、Pr、Nb、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sn、Sm、Eu、Hf、及びBiからなる群から選択される金属の酸化物であり得る。特に、貴金属のための支持体は、高表面積アルミナ、セリア、ジルコニア、ランタナ、バリア、イットリア、ネオジミア、プラセオジミア、チタニア、ユーロピア、サマリア、ハフニア、及びこれらの任意の複合物又は組み合わせから選択され得る。
【0055】
1つ以上の貴金属の各々は、各アンチモン捕捉領域に基づいて、0.01~20g/ft3、好ましくは0.5~10g/ft3の量で存在し得る。
【0056】
任意選択的に金属促進されるモレキュラーシーブの第1の成分、及び貴金属系触媒の第2の成分は、任意の可能な形態で、例えば、これらの混合物として、又は別個の形態でアンチモン捕捉領域において存在し得る。代替的には、第1の成分及び第2の成分は、例えば、任意選択的に金属促進されるモレキュラーシーブ上に貴金属を支持することによって一体化され得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、アンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つは、モレキュラーシーブを含む層、及び貴族(precious group)金属系触媒を含む層で層状化されている。これらの層の配置は、特に制限されない。モレキュラーシーブを含む層は、貴族金属系触媒を含む層の上部に配置され得、その逆もまた同様である。
【0058】
アンチモン捕捉領域は、触媒活性であり得るか、又は非活性であり得る少なくとも1つの追加成分、例えば加工助剤を含み得る。
【0059】
1つ以上のアンチモン含有領域、及び1つ以上のアンチモン捕捉領域は、互いに独立して、押出物の形態又は基材上のウォッシュコートの形態で、本発明による触媒システム中に存在し得る。
【0060】
「押出物」という用語は、概して、押出によって形成された成形体を指す。押出物は、ガス流動を通過させる任意の適切な構造、好ましくはハニカム構造を有し得る。ハニカム構造は、本明細書の以下にモノリシックフロースルー構造及びウォールフロー構造について記載されるような流動流路を有し得る。領域のうちのいずれかが押出物の形態で存在する場合、押出物は、任意の従来の手段によって、それぞれの触媒と、任意選択的に結合剤及び潤滑剤などの少なくとも1つの加工助剤とから形成され得る。
【0061】
「基材」という用語は、概して、排気流れ中で接触する条件に耐えるのに好適である構造を指し、その上に触媒材料が、典型的にはウォッシュコートの形態で担持される。
【0062】
典型的には、基材は、モノリシックフロースルー構造であり得、これは、基材の入口面から出口面まで延在する複数の微細な平行ガス流動流路を有し、その結果流路は、そこを通る流体流動に対して開いている。その流体入口からその流体出口まで本質的に直線の経路である流路は、流路を通って流動するガスが触媒材料と接触するように、触媒材料がウォッシュコートとして塗布される壁によって画定される。モノリシック基材の流動流路は、薄壁チャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形などの任意の好適な断面形状及びサイズであり得る。このような構造は、断面1平方インチ当たり60~900以上の流動流路(又は「セル」)を含有し得る。例えば、基材は、50~600セル/平方インチ(cells per square inch、「cpsi」)又は200~450cpsiを有し得る。フロースルー基材の壁厚さは、様々であり得、典型的な範囲は、2ミル~0.1インチである。
【0063】
基材はまた、基材の入口面から出口面に沿って延在する複数の微細な平行ガス流動流路を有するモノリシックウォールフロー構造であり得、交互の流路は、反対端部で遮断される。流路は、流路を通って流動するガスが触媒材料と接触するように、触媒材料がウォッシュコートとして塗布される壁によって画定される。この構成は、ガスがウォールフロー基材の多孔質壁を通って流動して、出口面に到達することを必要とする。ウォールフロー基材は、最大で700cpsi、例えば100~400cpsiを有し得る。モノリシック基材の流動流路は、薄壁チャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形などの任意の好適な断面形状及びサイズであり得る。ウォールフロー基材の壁厚さは、2ミル~0.1インチの典型的な範囲で様々であり得る。
【0064】
「ウォッシュコート」という用語は、当該技術分野におけるその通常の意味を有し、基材に塗布された触媒材料又は他の材料の薄い接着性コーティングを指す。ウォッシュコートは、概して、所望の材料、及び任意選択的に特定の固体含有量(例えば、15~60重量%)を有する結合剤などの加工助剤を含有するスラリーを調製し、次いで、スラリーを基材上に塗布し、乾燥させ、焼成して、ウォッシュコート層を提供することによって形成される。ウォッシュコートは、1つ以上の層の形態で、概して0.1~10g/in3、例えば0.5~7g/in3の量で基材上に充填される。
【0065】
基材は、通常、不活性であり、従来、例えば、セラミック又は金属材料から作製され、本明細書において「不活性基材」と称されるであろう。基材が代替的に活性であり得ることが、企図され得る。その場合、基材は、例えば、モレキュラーシーブ触媒又は他の触媒活性な種を含有する押出物からなり得る。
【0066】
本発明による触媒システムのいくつかの例示的な実施形態では、1つ以上のアンチモン含有領域及び1つ以上のアンチモン捕捉領域は、1つ以上の不活性基材の細片上のウォッシュコートとして存在する。特に、アンチモン含有領域のうちの少なくとも1つ、及びアンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つは、不活性基材の2つ以上の細片上に別々に担持される。
【0067】
いくつかの特定の例示的な実施形態では、本発明による触媒システムは、1つのアンチモン含有領域及び1つのアンチモン捕捉領域を含み、これらは、ウォッシュコートとして基材の1つ又は2つの細片上に担持される。基材の1つの細片の場合、アンチモン含有領域のウォッシュコートは、アンチモン捕捉領域のウォッシュコートの上流に位置する。基材の2つの細片の場合、アンチモン含有領域は、第1の上流基材上にウォッシュコートとして担持され、アンチモン捕捉領域は、第2の下流基材上にウォッシュコートとして担持される。
【0068】
いくつかの他の特定の例示的な実施形態では、本発明による触媒システムは、2つのアンチモン含有領域及び1つのアンチモン捕捉領域を含み、これらは、ウォッシュコートとして基材の1つ、2つ又は3つの細片上に担持される。基材の1つの細片の場合、2つのアンチモン含有領域のウォッシュコートは、アンチモン捕捉領域のウォッシュコートの上流に位置する。基材の2つの細片の場合、2つのアンチモン含有領域のウォッシュコートは、第1の上流基材の細片上に順番に担持され得、アンチモン捕捉領域は、第2の下流基材の細片上にウォッシュコートとして担持される。代替的には、一方のアンチモン含有領域は、第1の上流基材の細片上にウォッシュコートとして担持され得、他方のアンチモン含有領域及びアンチモン捕捉領域は、第2の下流基材の細片上にそれぞれのウォッシュコートとして担持され、アンチモン捕捉領域は、第2の下流基材の細片上のアンチモン含有領域の下流に位置する。基材の3つの細片の場合、一方のアンチモン含有領域は、第1の上流基材の細片上に担持され、他方のアンチモン含有領域は、第2の中間基材の細片上に担持され、アンチモン捕捉領域は、第3の下流基材の細片上に担持される。
【0069】
いくつかの更なる特定の例示的な実施形態では、本発明による触媒システムは、1つのアンチモン含有領域及び2つのアンチモン捕捉領域を含み、これらは、ウォッシュコートとして基材の1つ、2つ又は3つの細片上に担持される。基材の1つの細片の場合、一方のアンチモン捕捉領域のウォッシュコートは、アンチモン含有領域のウォッシュコート及び他方のアンチモン捕捉領域のウォッシュコートの両方の下流に位置し、後者の2つの領域は、当該順序で、又は逆に配置され得る。基材の2つの細片の場合、一方のアンチモン捕捉領域が最も下流に位置するという場合、3つの領域のうちのいずれか2つがそれぞれのウォッシュコートとして、一方の基材の細片上に担持され得、残りの領域が他方の基材の細片上に担持されることが企図され得る。基材の3つの細片の場合、例えば、アンチモン含有領域は、第1の上流基材の細片上に担持され、一方のアンチモン捕捉領域は、第2の中間基材の細片上に担持され、他方のアンチモン捕捉領域は、第3の下流基材の細片上に担持される。
【0070】
より多くの領域を含む本発明による触媒システムのための好適な設計は、上に記載されるような構成を参照して企図され得る。
【0071】
本発明による触媒システムの他の例示的な実施形態では、1つ以上のアンチモン含有領域は、押出物として存在し、1つ以上のアンチモン捕捉領域は、基材の1つ以上の細片上に担持されたウォッシュコートとして存在する。アンチモン含有領域の押出物及びアンチモン捕捉領域を担持する基材は、少なくとも1つのアンチモン捕捉領域が最も下流に位置するという場合、排気ガスの流動方向において任意の順序で配置され得る。
【0072】
本発明による触媒システムは、1つ以上のアンチモン捕捉領域及び1つ以上のアンチモン捕捉領域を収容するための少なくとも1つのハウジングを含み得る。1つのハウジングは、1つの領域のみを収容し得るか、又は2つ以上の領域を収容し得ることが理解されるであろう。
【0073】
好ましくは、本発明による触媒システムは、全ての領域を収容するためのただ1つのハウジングを含むか、又は互いに流体連通する2つ以上のハウジングを含む。ハウジングは、好ましくは均一な形状、例えば円筒形の形態を有する。2つ以上のハウジングの場合、ハウジングは、好ましくは同じ形状、特に円筒形の形態を有する。
【0074】
1つ以上のアンチモン含有領域の各々は、アンチモン含有領域とアンチモン捕捉領域との総体積に対して、10~90体積%、好ましくは20~80体積%、より好ましくは30~70体積%の割合で触媒システムに含まれている。
【0075】
1つ以上のアンチモン捕捉領域の各々は、アンチモン含有領域とアンチモン捕捉領域との総体積に対して、10~90体積%、好ましくは20~80体積%、より好ましくは30~70体積%の割合で触媒システムに含まれている。
【0076】
領域に関して言及される体積割合は、領域が占める空間体積を指す。領域が基材上にウォッシュコートとして存在する場合、領域の体積割合は、領域が位置する基材の一部の体積を指すように意図されることが理解されるであろう。
【0077】
本発明による触媒物品は、酸化機能及び貯蔵機能を含むが、これらに限定されない、更なる機能を提供し得る1つ以上の成分又は領域を含み得る。炭化水素吸着剤及びNOx吸着剤などの貯蔵成分が、アンチモン含有領域のエリアに配置され得ることが企図され得る。1つ以上の更なる成分は、任意の形態、例えばウォッシュコート又は共押出物で存在し得る。アンチモン含有領域とアンチモン捕捉領域との間に更なる機能を提供する中間領域が存在し得ることも企図され得る。
【0078】
本発明による触媒システムは、例えば、発電所並びに建物及び家庭の暖房システムなどの定置燃焼デバイス、並びに車両の燃焼エンジン、特にディーゼルエンジンなどの移動燃焼デバイスからの排気ガスを処理するために使用され得る。本発明による触媒システムは、内燃エンジン、例えばガソリン又はディーゼルエンジン、特にヘビーデューティディーゼルエンジンからの排気ガスを処理するのに特に有効であり得る。
【0079】
したがって、別の態様では、本発明は、窒素酸化物を含有する排気ガスの処理のための方法であって、還元剤の存在下で、排気ガスを本明細書に記載されるような触媒システムと接触させることを含む、方法に関する。
【0080】
いくつかの実施形態では、本方法は、内燃エンジン、例えばガソリン又はディーゼルエンジン、特にヘビーデューティディーゼルエンジンから発生する排気ガスの処理に有用である。
【0081】
更なる態様では、本発明は、還元剤供給源、本明細書に記載されるような触媒システムを含む、特に内燃エンジンから発生する排気ガスの処理のためのシステムに関する。
【0082】
排気ガスの処理のためのシステムは、1つ以上の排気ガス処理要素を更に含み得る。従来の排気ガス処理要素は、SCR触媒以外の触媒、例えば、ディーゼル酸化触媒(DOC)、三元変換触媒(TWC)、四元変換触媒(FWC)、無触媒又は触媒スートフィルタ(CSF)、アンモニア酸化触媒(AMOx)、NOx捕捉、NOx吸収装置触媒、炭化水素捕捉触媒、センサ及びミキサを含むが、これらに限定されない。
【0083】
排気ガスの処理のためのシステムの変形例では、触媒システムの少なくとも1つの領域は、他の領域に密接に接続されてはいない。この場合、排気ガス処理システムの1つ以上の要素、例えば、SCR触媒以外の触媒成分、還元剤供給源、フィルタ、センサ、及び/又はミキサが、中間に配置され得る。
【0084】
排気ガス処理システムは、エンジンの下流かつ本発明による触媒システムの上流に位置するディーゼル酸化触媒を更に含むことが好ましい。いくつかの実施形態では、排気ガス処理システムは、好ましくは、本発明による触媒システムの上流に位置するディーゼル酸化触媒及び触媒スートフィルタの両方を含む。
【0085】
実施形態
様々な実施形態が以下に列挙される。以下に列挙される実施形態は、本発明の範囲に従って全ての態様及び他の実施形態と組み合わされ得ることが理解されるであろう。
【0086】
実施形態1.排気ガスを浄化するための触媒システムであって、
-アンチモン含有触媒、特にアンチモン含有SCR触媒を含む1つ以上のアンチモン含有領域と、
-任意選択的に金属促進されるモレキュラーシーブを含む1つ以上のアンチモン捕捉領域と、を含み、
1つ以上のアンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つが、排気ガスの流動方向において1つ以上のアンチモン含有領域の下流に位置する、触媒システム。
【0087】
実施形態2.アンチモン含有触媒が、支持体の粒子上に支持されている、酸化アンチモン、酸化バナジウム、及び任意選択的に他の金属又は半金属の少なくとも1つの酸化物を含有する、実施形態1に記載の触媒システム。
【0088】
実施形態3.アンチモン含有触媒における支持体が、モレキュラーシーブ、並びにTi、Si、W、Al、Ce、Zr、Mg、Ca、Ba、Y、La、Pr、Nb、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sn、及びBiからなる群から選択される元素の酸化物から選択される、実施形態2に記載の触媒システム。
【0089】
実施形態4.他の金属又は半金属が、B、Al、Bi、Si、Sn、Pb、Sb、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ce、Y、Nb、Mo、Er、Ba、Sm、及びWからなる群から選択される、実施形態2又は3に記載の触媒システム。
【0090】
実施形態5.1つ以上のアンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つが、貴金属系触媒を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の触媒システム。
【0091】
実施形態6.貴族金属系触媒が、支持体の粒子上に支持された1つ以上の貴金属、好ましくは白金族金属、より好ましくはPtを含有する、実施形態5に記載の触媒システム。
【0092】
実施形態7.貴族金属系触媒における支持体が、モレキュラーシーブ、並びにTi、Si、W、Al、Ce、Zr、Mg、Ca、Ba、Y、La、Pr、Nb、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sn、Sm、Eu、Hf、及びBiからなる群から選択される元素の酸化物から選択される、実施形態6に記載の触媒システム。
【0093】
実施形態8.1つ以上のアンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つが、モレキュラーシーブを含む層、及び貴金属系触媒を含む層で層状化されている、実施形態5~7のいずれか1つに記載の触媒システム。
【0094】
実施形態9.1つ以上の貴金属の各々が、各アンチモン捕捉領域に基づいて、0.01~20g/ft3、好ましくは0.5~10g/ft3の量で存在する、実施形態5~8のいずれか1つに記載の触媒システム。
【0095】
実施形態10.1つ以上のアンチモン捕捉領域におけるモレキュラーシーブが、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、-CHI、-CLO、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、*-EWT、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFO、IFR、-IFU、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITH、*-ITN、ITR、ITT、-ITV、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JNT、JOZ、JRY、JSN、JSR、JST、JSW、KFI、LAU、LEV、LIO、-LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTJ、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、*MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、-PAR、PAU、PCR、PHI、PON、POS、PSI、PUN、RHO、-RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、*SFV、SFW、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、*-SSO、SSY、STF、STI、*STO、STT、STW、-SVR、SVV、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、-WEN、YUG、又はZON、及びこれらの任意の組み合わせの骨格型を有するアルミノシリケートゼオライトから選択され、中でもAEI、BEA、CHA、AFT、AFX、FAU、FER、KFI、MOR、MFI、MOR、MEL、又はこれらの任意の組み合わせが好ましい、実施形態1~9のいずれか1つに記載の触媒システム。
【0096】
実施形態11.モレキュラーシーブが、金属促進されており、金属が、Au及びAgなどの貴金属、Ru、Rh、Pd、In、及びPtなどの白金族金属、Cr、Zr、Nb、Mo、Fe、Mn、W、V、Al、Ti、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Sn、及びBiなどの卑金属、Can及びMgなどのアルカリ土類金属、並びにこれらの任意の組み合わせから選択される、実施形態1~10のいずれか1つに記載の触媒システム。
【0097】
実施形態12.モレキュラーシーブが、金属促進されており、金属が、Fe、Cu、又はこれらの組み合わせである、実施形態11に記載の触媒システム。
【0098】
実施形態13.1つ以上のアンチモン捕捉領域におけるモレキュラーシーブが、5:1~150:1、好ましくは5:1~50:1、特に10:1~40:1の範囲のSiO2/Al2O3モル比(SAR)を有するアルミノシリケートゼオライトから選択される、実施形態1~12のいずれか1つに記載の触媒システム。
【0099】
実施形態14.1つ以上のアンチモン捕捉領域、及び1つ以上のアンチモン含有領域が、互いに独立して、押出物の形態又は基材上のウォッシュコートの形態で存在する、実施形態1~13のいずれか1つに記載の触媒システム。
【0100】
実施形態15.1つ以上のアンチモン捕捉領域のうちの少なくとも1つ、及び1つ以上のアンチモン含有領域のうちの少なくとも1つが、不活性基材の2つ以上の細片上に別々に担持されている、実施形態1~14のいずれか1つに記載の触媒システム。
【0101】
実施形態16.押出物及び/又は基材が、ハニカム構造、例えばモノリシックフロースルー構造又はウォールフロー構造を有する、実施形態14又は15に記載の触媒システム。
【0102】
実施形態17.1つ以上のアンチモン含有領域の各々が、アンチモン含有領域とアンチモン捕捉領域との総体積に対して、10~90体積%、好ましくは20~80体積%、より好ましくは30~70体積%%の割合で触媒システムに含まれている、実施形態1~16のいずれか1つに記載の触媒システム。
【0103】
実施形態18.1つ以上のアンチモン捕捉領域の各々が、アンチモン含有領域とアンチモン捕捉領域との総体積に対して、10~90体積%、好ましくは20~80体積%、より好ましくは30~70体積%の割合で触媒システムに含まれている、実施形態1~17のいずれか1つに記載の触媒システム。
【0104】
実施形態19.窒素酸化物を含有する排気ガスの処理のための方法であって、還元剤の存在下で、排気ガスを実施形態1~18のいずれか1つに記載の触媒システムと接触させることを含む、方法。
【0105】
実施形態20.排気ガスが、内燃エンジン、例えばガソリン又はディーゼルエンジンから発生する、実施形態19に記載の方法。
【0106】
実施形態21.還元剤供給源と、実施形態1~18のいずれか1つに記載の触媒システムと、任意選択的に、ディーゼル酸化触媒(DOC)、三元変換触媒(TWC)、四元変換触媒(FWC)、無触媒又は触媒スートフィルタ(CSF)、アンモニア酸化触媒(AMOx)、NOx捕捉、NOx吸収装置触媒、炭化水素捕捉触媒、センサ及びミキサのうちの1つ以上と、を含む、特に内燃エンジンから発生する排気ガスの処理のための、システム。
【0107】
本発明は、特に有利な実施形態を記載する以下の実施例によって更に例示されるであろう。実施例は、本発明を例示するために提供されるが、それらは、本発明を限定するように意図されない。
【実施例】
【0108】
実施例1
実施例1.1基材上のアンチモン含有触媒を含む細片の調製
TiO2として計算して95.9重量%のチタン含有量を有するアナターゼ形態の173.2gのTiO2、V2O5として計算して10.75重量%のバナジウム含有量を有する74.4gのシュウ酸バナジル溶液、及び12.0gのSb2O3を、200gのDI水中で、室温で混合した。得られた懸濁液を30分間撹拌した後、更に30%のアンモニア水溶液を添加して、システムのpHを7.0に上げた。次いで、30.1重量%のSiO2含有量を有する46.2gのSiO2ゾルを添加した。1時間撹拌した後、均質なスラリーを得た。5ミルの壁厚さを有する300cpsiのフロースルーハニカムコージエライト基材を、得られたスラリーに浸漬して、十分なスラリーを充填した。余分に充填されたスラリーを、エアナイフで注意深く吹き飛ばし、続いて150℃の熱風で15分間乾燥させ、次いで空気中450℃で1時間焼成した。
【0109】
4.5g/in3の基材上での総ウォッシュコート充填量が得られるまで、浸漬、乾燥、及び焼成のプロセスを繰り返した。アンチモン含有触媒は、V2O5として計算して4.0重量%のバナジウム含有量を有する。
【0110】
実施例1.2基材上の、Cu促進されたCHAゼオライトの上層と、Pt系触媒の下層と、を含むアンチモン捕捉細片の調製
i)下層の調製
17.6重量%のPt含有量を有するビス(エタノールアンモニウム)ヘキサヒドロキソ白金(IV)の溶液を、脱イオン水と混合して、均一な混合物を形成し、これを510gのAl2O3粉末に含浸させ、30分間撹拌した。得られたスラリーを、5ミルの壁厚さを有する300cpsiのフロースルーコージエライトモノリス基材上に、基材をスラリー中に浸漬することによってコーティングした。余分に充填されたスラリーを、エアナイフで注意深く吹き飛ばし、続いて130℃で乾燥させ、450℃で焼成した。室温に冷却した後、Pt充填量が2g/ft3である状態で、0.5g/in3の基材上での総ウォッシュコート充填量が得られるまで、浸漬、乾燥、及び焼成のプロセスを繰り返した。
【0111】
ii)上層の調製
31のSiO2対Al2O3モル比、600m2/gを超えるBET表面積、16μmのD90、0.07重量%以下のNa2O、及び0.37g/mLのタップ密度を有するH形成CHAゼオライトを使用した。
【0112】
92重量部のCHAゼオライト、3重量部の酸化銅(CuO)、及びZrO2として計算して5重量部の酢酸ジルコニウムを、脱イオン水中で混合して、スラリーを形成した。次いで、スラリーを、Sympatec粒子サイズ分析器で測定して、5μmのD90の粒子サイズに粉砕した。粉砕されたスラリーを、基材をスラリーに浸漬することによって、上記工程i)のコーティングされた基材上にコーティングした。余分に充填されたスラリーを、エアナイフで注意深く吹き飛ばし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で焼成した。2.1g/in3の基材上での総ウォッシュコート充填量が得られるまで、浸漬、乾燥、及び焼成のプロセスを繰り返した。
【0113】
実施例2
実施例2.1基材上のアンチモン含有触媒を含む細片の調製
細片を、実施例1.1に記載されたのと同じプロセスによって調製した。
【0114】
実施例2.2基材上の、Cu促進されたCHAゼオライトの上層と、Pt系触媒の下層と、を含むアンチモン捕捉細片の調製
i)下層の調製
アンチモン捕捉細片の下層を、実施例1に記載されたのと同じプロセスによって調製した。
【0115】
ii)上層の調製
11のSiO2対Al2O3モル比、450m2/gのBET表面積、13μmのD90、0.12重量%以下のNa2O、及び0.6g/mLのタップ密度を有するH形成CHAゼオライトを使用した。
【0116】
91重量部のCHAゼオライト、4重量部の酸化銅(CuO)、及びZrO2として計算して5重量部の酢酸ジルコニウムを、脱イオン水中で混合して、スラリーを形成した。次いで、スラリーを、Sympatec粒子サイズ分析器で測定して、5μmのD90の粒子サイズに粉砕した。粉砕されたスラリーを、基材をスラリーに浸漬することによって、上記工程i)で得られたコーティングされた基材上にコーティングした。余分に充填されたスラリーを、エアナイフで注意深く吹き飛ばし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で焼成した。2.1g/in3の基材上での総ウォッシュコート充填量が得られるまで、浸漬、乾燥、及び焼成のプロセスを繰り返した。
【0117】
実施例3
実施例3.1基材上のアンチモン含有触媒を含む細片の調製
細片を、実施例1.1に記載されたのと同じプロセスによって調製した。
【0118】
実施例3.2基材上の、Cu促進されたCHAゼオライトの上層と、Pt系触媒の下層と、を含む細片の調製
i)下層の調製
アンチモン捕捉細片の下層を、実施例1に記載されたのと同じプロセスによって調製した。
【0119】
ii)上層の調製
11のSiO2対Al2O3モル比、450m2/gのBET表面積、13μmのD90、0.12重量%以下のNa2O、及び0.6g/mLのタップ密度を有するH形成CHAゼオライトを使用した。
【0120】
87重量部のCHAゼオライト、8重量部の酸化銅(CuO)、及びZrO2として計算して5重量部の酢酸ジルコニウムを、脱イオン水中で混合して、スラリーを形成した。次いで、スラリーを、Sympatec粒子サイズ分析器で測定して、5μmのD90の粒子サイズに粉砕した。粉砕されたスラリーを、基材をスラリーに浸漬することによって、上記工程i)で得られたコーティングされた基材上にコーティングした。余分に充填されたスラリーを、エアナイフで注意深く吹き飛ばし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で焼成した。2.1g/in3の基材上での総ウォッシュコート充填量が得られるまで、浸漬、乾燥、及び焼成のプロセスを繰り返した。
【0121】
実施例4
実施例4.1基材上のアンチモン含有触媒を含む細片の調製
細片を、実施例1.1に記載されたのと同じプロセスによって調製した。
【0122】
実施例4.2基材上の、Fe促進されたβゼオライトの上層と、Pt系触媒の下層と、を含む細片の調製
i)下層の調製
アンチモン捕捉細片の下層を、実施例1に記載されたのと同じプロセスによって調製した。
【0123】
ii)上層の調製
40のSiO2対Al2O3モル比、Fe2O3として計算して1.4重量%の鉄充填、100%のX線結晶化度、708m2/gのBET表面積、D90=5ミクロン、及びNa2O=0.03重量%を有するFe/βゼオライトを使用した。
【0124】
95重量部のFe/βゼオライト、及びZrO2として計算して5重量部の酢酸ジルコニウムを、脱イオン水中で混合して、スラリーを形成した。次いで、スラリーを、Sympatec粒子サイズ分析器で測定して、5μmのD90の粒子サイズに粉砕した。粉砕されたスラリーを、基材をスラリーに浸漬することによって、上記工程i)で得られたコーティングされた基材上にコーティングした。余分に充填されたスラリーを、エアナイフで注意深く吹き飛ばし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で焼成した。2.1g/in3の基材上での総ウォッシュコート充填量が得られるまで、浸漬、乾燥、及び焼成のプロセスを繰り返した。
【0125】
実施例5
実施例5.1基材上のアンチモン含有触媒を含む細片の調製
細片を、実施例1.1に記載されたのと同じプロセスによって調製した。
【0126】
実施例5.2基材上の、Fe促進されたβゼオライトの上層と、Pt系触媒の下層と、を含む細片の調製
i)下層の調製
アンチモン捕捉細片の下層を、実施例1に記載されたのと同じプロセスによって調製した。
【0127】
ii)上層の調製
40のSiO2対Al2O3モル比、Fe2O3として計算して1.4重量%の鉄充填、100%のX線結晶化度、708m2/gのBET表面積、D90=5ミクロン、及びNa2O=0.03重量%を有するFe/βゼオライトを使用した。
【0128】
94重量部のFe/βゼオライト、Fe2O3として計算して1重量部の硝酸鉄、及びZrO2として計算して5重量部の酢酸ジルコニウムを、脱イオン水中で混合して、スラリーを形成した。次いで、スラリーを、Sympatec粒子サイズ分析器で測定して、5μmのD90の粒子サイズに粉砕した。粉砕されたスラリーを、基材をスラリーに浸漬することによって、上記工程i)で得られたコーティングされた基材上にコーティングした。余分に充填されたスラリーを、エアナイフで注意深く吹き飛ばし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で焼成した。2.1g/in3の基材上での総ウォッシュコート充填量が得られるまで、浸漬、乾燥、及び焼成のプロセスを繰り返した。
【0129】
実施例6
実施例6.1基材上のアンチモン含有触媒を含む細片の調製
細片を、実施例1.1に記載されたのと同じプロセスによって調製した。
【0130】
実施例6.2基材上の、Fe促進されたβゼオライトの上層と、Pt系触媒の下層と、を含む細片の調製
i)下層の調製
アンチモン捕捉細片の下層を、実施例1に記載されたのと同じプロセスによって調製した。
【0131】
ii)上層の調製
9のSiO2対Al2O3モル比、Fe2O3として計算して4.8重量%の鉄充填、98%のX線結晶化度、578m2/gのBET表面積、D90=13μm、0.07重量%のNa2O、0.03重量%のK2O、0.01重量%のCaO、0.02重量%のMgOを有するFe/βゼオライトを使用した。
【0132】
95重量部のFe/βゼオライト、及びZrO2として計算して5重量部の酢酸ジルコニウムを、脱イオン水中で混合して、スラリーを形成した。次いで、スラリーを、Sympatec粒子サイズ分析器で測定して、5μmのD90の粒子サイズに粉砕した。粉砕されたスラリーを、基材をスラリーに浸漬することによって、上記工程i)で得られたコーティングされた基材上にコーティングした。余分に充填されたスラリーを、エアナイフで注意深く吹き飛ばし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で焼成した。2.1g/in3の基材上での総ウォッシュコート充填量が得られるまで、浸漬、乾燥、及び焼成のプロセスを繰り返した。
【0133】
実施例7
実施例7.1基材上のアンチモン含有触媒を含む細片の調製
れんがを、実施例1.1に記載されたのと同じプロセスによって調製した。
【0134】
実施例7.2基材上の、Fe促進されたβゼオライトの上層と、Pt系触媒の下層と、を含む細片の調製
i)下層の調製
アンチモン捕捉細片の下層を、実施例1に記載されたのと同じプロセスによって調製した。
【0135】
ii)上層の調製
150のSiO2対Al2O3モル比、90%のX線結晶化度、568m2/gのBET表面積、D90=15μm、0.3g/Lの緩みかさ密度(loose bulk density)を有するH形成βゼオライトを使用した。
【0136】
91重量部のβゼオライト、Fe2O3として計算して4重量部の硝酸鉄、及びZrO2として計算して5重量部の酢酸ジルコニウムを、脱イオン水中で混合して、スラリーを形成した。次いで、スラリーを、Sympatec粒子サイズ分析器で測定して、5μmのD90の粒子サイズに粉砕した。粉砕されたスラリーを、基材をスラリーに浸漬することによって、上記工程i)で得られたコーティングされた基材上にコーティングした。余分に充填されたスラリーを、エアナイフで注意深く吹き飛ばし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で焼成した。2.1g/in3の基材上での総ウォッシュコート充填量が得られるまで、浸漬、乾燥、及び焼成のプロセスを繰り返した。
【0137】
実施例8 Sb放出の測定
試験試料の調製
アンチモン含有領域を表す試料を、上記の実施例において調製されたようなアンチモン含有触媒を含む各細片から1インチの直径及び2インチの長さを有するコアを切断することによって調製した。
【0138】
アンチモン捕捉領域を表す試料を、上記の実施例において調製されたような各アンチモン捕捉細片から1インチの直径及び1インチの長さを有するコアを切断することによって調製した。
【0139】
測定プロセス
実験用固定床シミュレータ(1.2インチの内径を有する石英ガラス管)において、アンチモン含有領域を表す1つの試料、アンチモン捕捉領域の1つの試料を、試料の周囲を包むマット材料としてセラミック繊維紙を使用して、ガスの流動方向において上流から下流に連続的に設置した。8gのγ-アルミナ顆粒(Alfa Aesar、bimodal)を吸着剤として試料の後に充填した。設置後、シミュレータを5体積%のO2を有するN2ガスでパージし、表1に示されるような温度まで加熱した。次いで、5体積%のH2O、5体積%のO2、500vppmのNO、500vppmのNH3、及び残りはN2からなるガスを、7.5L/分の総流量でシミュレータに18時間供給して、熱処理を行った。
【0140】
比較のために、アンチモン捕捉領域を表す試料を、γ-アルミナ顆粒に置き換えた試験も実行した。
【0141】
冷却後、γ-アルミナ顆粒を反応器から取り出し、以下の手順に従ってアンチモン含有量について分析し、このことは、先行する試料からのアンチモンの放出を示す:
i)γ-アルミナ顆粒を微粉末に粉砕すること、
ii)i)からの粉末を、12体積部の16NのHNO3、4.0体積部の28NのHF、及び0.8体積部の12NのHClからなる鉱酸中に、圧力温浸によって、透明な溶液が観察されるまで溶解すること、並びに
iii)誘導結合プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectrometry、ICP-OES)を用いてアンチモン含有量を決定すること。
【0142】
試験結果を以下の表1に要約する。
【0143】
【0144】
実施例9触媒性能試験
実施例1.1からの1インチの直径及び2インチの長さを有する円筒状試料を、10体積%の水/空気中、550℃で200時間、水熱エージングした。
【0145】
実施例1.2からの1インチの直径及び1インチの長さを有する円筒状試料を、10体積%の水/空気中、650℃で50時間、水熱エージングした。
【0146】
実験室用固定床シミュレータにおいて、SCR触媒性能を測定するために、実施例1.1からのエージングされた試料を上流に配置し、続いて実施例1.2からのエージングされた試料を配置した。ベース供給ガスは、5体積%のH2O、10体積%のO2、1000ppmのNO、及び残りはN2からなる。体積ベースの空間速度(space velocity、SV)を、1”×3”の円筒状試料に基づいて、60,000/時に固定し、NH3とNO(NSR)との比を1.0に固定した。200℃でのNO変換は、67%であった。
【国際調査報告】