(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】医療機器用ポリマーコーティング及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 29/08 20060101AFI20240920BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20240920BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20240920BHJP
A61L 31/10 20060101ALI20240920BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61L29/08 100
C23C26/00 A
A61L29/16
A61L31/10
A61L31/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510518
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 US2022043945
(87)【国際公開番号】W WO2023044093
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500013898
【氏名又は名称】モット・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ヒル アレックス
【テーマコード(参考)】
4C081
4K044
【Fターム(参考)】
4C081AC03
4C081AC06
4C081BB06
4C081CA272
4C081CG01
4C081DB03
4C081EA06
4K044AA02
4K044AA03
4K044AA06
4K044BA12
4K044BA21
4K044BB03
4K044BB04
4K044BC00
4K044BC02
4K044CA53
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、多孔質金属基材と、基材上に配置された自己組織化単層と、を含む生物耐性物品であって、自己組織化単層が、多孔質金属基材に反応的に結合した第1の端部と、双性イオンポリマーに反応的に結合した第2の端部と、を有するカップリング剤を含む、生物耐性物品である。多孔質金属基材上に自己組織化単層を配置することと、双性イオンポリマーを自己組織化単層に結合させることと、を含む方法もまた本明細書に開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物耐性物品であって、
多孔質金属基材と、
前記基材上に配置された自己組織化単層と、を含み、前記自己組織化単層が、前記多孔質金属基材に反応的に結合した第1の端部と、双性イオンポリマーに反応的に結合した第2の端部と、を有するカップリング剤を含む、生物耐性物品。
【請求項2】
多孔質金属表面が金属を含み、前記金属が、鉄、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、金、白金、ステンレス鋼、チタン、タンタル、イリジウム、モリブデン、ニオブ、パラジウム、クロム、又はそれらの合金を含む、請求項1に記載の生物耐性物品。
【請求項3】
前記多孔質金属表面が、約10ナノメートル~約100マイクロメートルの平均細孔径を有する、請求項1に記載の生物耐性物品。
【請求項4】
前記多孔質金属表面が、約100ナノメートル~約1マイクロメートルの平均細孔径を有する、請求項3に記載の生物耐性物品。
【請求項5】
前記多孔質金属表面が金属酸化物を含み、前記金属酸化物が、酸化タンタル、酸化チタン、酸化イリジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化ロジウム、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の生物耐性物品。
【請求項6】
前記第1の端部が、シラン、チオール、カルボキシル、アミド、イミド、エステル、硫酸エステル、リン酸エステル、チオリン酸エステル、ホウ酸エステル、尿素、エポキシド、カルバメート、チオカルバメート、チオ硫酸塩、スルホネート、ホスホネート、ハロゲンチオホスホネート、ニトロ、ニトロソ、硝酸塩、亜硝酸塩、又はそれらの組み合わせを含む第1の反応性官能基を含む、請求項1に記載の生物耐性物品。
【請求項7】
前記双性イオンポリマーが、前記カップリング剤の前記第2の端部に位置する反応性開始剤によってモノマーから重合される、請求項1に記載の生物耐性物品。
【請求項8】
前記双性イオンポリマーが、ポリホスホリルコリン、ポリスルホベタイン、ポリカルボキシベタイン、ポリトリメチルアミンN-オキシド、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の生物耐性物品。
【請求項9】
前記双性イオンポリマーが、ポリトリメチルアミンN-オキシドである、請求項1に記載の生物耐性物品。
【請求項10】
前記双性イオンポリマーが、1000ナノメートル未満の厚さの層を形成する、請求項9に記載の生物耐性物品。
【請求項11】
方法であって、
多孔質金属基材上に自己組織化単層を配置することと、
双性イオンポリマーを前記自己組織化単層に結合させることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記自己組織化単層を前記基材に反応的に結合させることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記自己組織化単層の端部に配置された反応性開始官能基を介して、前記双性イオンポリマーの重合を開始することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
物品がスパージャーである、請求項1~10のいずれか一項に記載の生物耐性物品。
【請求項15】
物品が薬物送達デバイスである、請求項1~10のいずれか一項に記載の生物耐性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月20日に出願され、シリアル番号63/246,012を割り当てられた仮出願に対する優先権の利益を主張する。前述の仮出願の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、医療機器用のポリマーコーティング及びその製造方法に関する。バイオファウリングは、微生物、植物、真菌、藻類、又は動物が、非特異的なタンパク質吸着を介して表面に付着した場合に発生する。バイオファウリングは、水が存在する場合、ほとんどどこにでも発生する可能性があるため、バイオファウリングは、医療機器、海上輸送、製薬、金属組織学、石油精製、石油化学製品を含む多くの産業にリスクをもたらす。
【0003】
金属表面をコーティングすることにより、耐バイオファウリング性が向上する。自己組織化単層は、材料の表面をコーティングし、機能化することができる。高分子コーティングは、表面に塗布して表面と反応させることができるか、又は代替的に、たとえ表面との反応がなくても、表面上に配置して表面を保護することができる。表面をコーティングするために使用されるポリマーのいくつかは、ポリエーテル、デキストラン等の多糖類、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、又はヘパリン等の親水性ポリマーを含む。
【0004】
バイオファウリングを克服するための表面コーティングの進歩にもかかわらず、バイオファウリングに抵抗し、溶液中での長期曝露にわたって能力を維持する改良されたポリマーの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示されるのは、多孔質金属基材と、基材上に配置された自己組織化単層と、を含む生物耐性物品であって、自己組織化単層が、多孔質金属基材に反応的に結合した第1の端部と、双性イオンポリマーに反応的に結合した第2の端部と、を有するカップリング剤を含む、生物耐性物品である。
【0006】
多孔質金属基材上に自己組織化単層を配置することと、双性イオンポリマーを自己組織化単層に結合させることと、を含む方法もまた本明細書に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、多孔質金属表面上に配置された双性イオンポリマーコーティングによってバイオファウリングから保護された生物耐性多孔質金属表面に関する。双性イオンポリマーコーティングは、カップリング剤を介して金属表面に共有結合的又はイオン的に反応(結合)している。一実施形態では、カップリング剤の一部が、双性イオンポリマーに反応的に結合し、別の部分が、多孔質金属表面に反応的に結合している。双性イオンポリマーは、表面をバイオファウリングから保護する。
【0008】
一実施形態では、生物耐性コーティングを提供する方法は、多孔質金属表面上に自己組織化単層(SAM)コーティングを配置することを含む。この単層は、多孔質金属マトリックスに結合することができる、シラン又はチオール等の官能基を有するカップリング剤を含む。カップリング剤の他端は、モノマーを重合して双性イオンポリマーを生成する可能性を有する、臭素官能基等の開始剤を含む。SAMでコーティングされると、多孔質金属表面は、ポリマーの前駆体を含む溶液に浸漬される。浸漬後、溶液に開始剤を添加してモノマーを重合する。ポリマーは、カップリング剤と反応して、多孔質金属の表面にコーティングを形成する。コーティングは、約10~10,000ナノグラム/平方センチメートル(ng/cm2)の負荷であり、好ましくは1マイクロメートル未満の厚さである。
【0009】
上述したように、双性イオンポリマーは、多孔質金属表面上に配置される。多孔質金属表面は、多孔質金属マトリックスの一部である。多孔質金属マトリックス(本明細書において多孔質金属フォームとも称されることもある)は、生物学的流体の濾過に使用することができ、したがって経時的にバイオファウリングを受ける。多孔質金属マトリックスは、全体にわたって多孔質であり(すなわち、複数の多孔質浸透経路を含む)、細孔を通過することができない粒子サイズを有する濾液を保持しながら、流体がそれらを通って流れることを可能にする。
【0010】
多孔質金属マトリックスは、好ましくは複数のオープンセル構造を含むが、クローズドセル構造の一部を含んでもよい。多孔質金属マトリックスは、鉄、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、金、白金、ステンレス鋼、チタン、タンタル、イリジウム、モリブデン、ニオブ、パラジウム、クロム、又はそれらの合金等の金属を含み得る。多孔質金属マトリックスはまた、金属孔の表面上に配置された金属酸化物の層を含み得る。好適な金属酸化物としては、上記の金属の酸化物(多孔質金属マトリックスに使用され得る)が挙げられる。多孔質金属マトリックスの表面をコーティングするために使用され得る他の金属酸化物としては、酸化タンタル、酸化チタン、酸化イリジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化ロジウム、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0011】
濾過に使用される多孔質金属マトリックスの直径は、0.2ミリメートル~50ミリメートル、好ましくは0.5ミリメートル~25ミリメートル、より好ましくは0.75ミリメートル~20ミリメートルであり得る。細孔の平均細孔径は、約10ナノメートル~約10マイクロメートル、好ましくは約100ナノメートル~約1マイクロメートルである。
【0012】
カップリング剤は、双性イオンポリマーを多孔質金属マトリックス表面にカップリングさせる。カップリング剤は、多孔質金属マトリックスの表面上に反応性自己組織化単層を形成し、一端が多孔質金属マトリックスの表面に反応的に結合し、(カップリング剤の)反対側の端部が双性イオンポリマーに反応的に結合している。
【0013】
カップリング剤の一端は、多孔質金属表面に反応的に結合し、適切な条件下で金属表面に共有結合又はイオン結合することができる反応性官能基を含む。カップリング剤は、第1の反応性官能基、第1の端部で第1の反応性官能基に共有結合又はイオン結合し、第1の端部の反対の第2の端部で第2の反応性ハロゲン化官能基に共有結合又はイオン結合する結合種を含む。
【0014】
第1の反応性官能基は、多孔質金属マトリックスを形成する金属又は金属酸化物と反応することができる。第1の反応性官能基は、濾過される生物学的流体の存在下では分解されない。また、該官能基は、生物学的流体に対して不活性であり、生物学的流体と反応しない。該官能基は、(特に双性イオンポリマーとともに)バイオファウリングの予防を促進するように機能する。
【0015】
第1の反応性官能基の例としては、シラン、チオール、カルボキシル、アミド、イミド、エステル、硫酸エステル、リン酸エステル、チオリン酸エステル、ホウ酸エステル、尿素、エポキシド、カルバメート、チオカルバメート、チオ硫酸塩、スルホネート、ホスホネート、ハロゲンチオホスホネート、ニトロ、ニトロソ、硝酸塩、亜硝酸塩等、又はそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい反応性官能基としては、シラン、チオール、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0016】
結合種は、一般に、直鎖又は環状の、置換又は非置換のC2~C30アルキル、2~30個の繰り返し単位を有するポリシロキサンポリマー等を含む。好ましい実施形態では、結合種は、一般に、直鎖又は環状の、置換又は非置換のC4~C15アルキル、4~20個の繰り返し単位を有するポリシロキサンポリマー等を含む。好ましい実施形態において、結合種は、メルカプトウンデカノールを含む。
【0017】
カップリング剤の第2の端部は、一般に、モノマーの双性イオンポリマーへの重合を促進する触媒反応性官能基を含む。有機複合体の第2の端部は、双性イオンポリマーのモノマーと重合する可能性を有する、臭素官能基等の開始剤を含む。この開始剤の例を以下に示す。
【0018】
好適な開始剤は、以下の式(1)に示される構造を有するブロモイソブチリルブロミドである。
【化1】
【0019】
別の好適な開始剤は、式(2)に示されるエチルα-ブロモイソ酪酸である。
【化2】
【0020】
更に別の好適な開始剤は、式(3)に示される2-ブロモ-2-メチルプロピオン酸である。
【化3】
【0021】
更に別の好適な開始剤は、式(4)に示される2-ブロモプロピオニルブロミドである。
【化4】
【0022】
上記の開始剤の組み合わせを使用することができる。
【0023】
上述したように、双性イオンポリマーは、開始剤によって開始され得る。ポリアンフォライト及びポリベタインを含む双性イオンポリマーは、正電荷及び負電荷の両方がその構造に組み込まれたポリマーである。双性イオンポリマーは、分子鎖上に等しいアニオン基及びカチオン基を有することを特徴とし、そのために親水性及び防汚性が高い。それらは、非特異的タンパク質吸着、細菌付着、及びバイオフィルム形成に抵抗することができる。したがって、双性イオンポリマーは、バイオメディカルインプラントの防汚コーティング、血液接触センサー及びインビボでの薬物送達、分離膜及び海洋コーティング等の、幅広い生物学的及び医学的な関連分野に適用される大きな可能性を有する。
【0024】
ポリマーコーティングに好適なポリマーとしては、ポリエーテル、多糖類、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、親水性ポリマー、及び双性イオンポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。親水性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヘパリン、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。多孔質金属材料又は金属酸化物材料上の親水性ポリマーコーティングは、親水性ポリマーコーティングによってバイオファウリングに対してある程度の保護を提供するが、双性イオンポリマーコーティングは、他の市販の親水性ポリマーコーティングと比較して、バイオファウリングを克服するために良好に機能する。双性イオンポリマーとしては、ポリホスホリルコリン(PPC)、ポリスルホベタイン(PSB)、ポリカルボキシベタイン(PCB)、及びポリトリメチルアミンN-オキシド(PTMAO)が挙げられるが、これらに限定されない。PTMAOは、バイオファウリングの問題を克服するための有望な双性イオンポリマーに対する第4のクラスとして最近発見された。PTMAOでコーティングされた表面は、血清タンパク質吸着が少なく、免疫原性が低い。PTMAOでコーティングされた表面が好ましい。
【0025】
一実施形態では、生物耐性多孔質金属を製造する1つの様式において、自己組織化単層(SAM)コーティングが多孔質金属マトリックスに最初に塗布される。この単層は、多孔質金属マトリックスに結合することができる、シラン又はチオール等の官能基を有する有機複合体(カップリング剤)を含む。有機複合体の他端は、モノマーを重合してポリマーコーティングを形成する可能性を有する臭素官能基等の開始剤を含む。
【0026】
SAMでコーティングされると、多孔質マトリックスは、ポリマーコーティングの化学的前駆体を含有する溶液内に浸される。浸してから、開始剤を熱とともに添加して化学的前駆体を重合し、多孔質金属の表面上にコーティングを形成する。コーティングは非常に薄く、約10~10,000ナノグラム/平方センチメートル(ng/cm2)の負荷であり、好ましくは1マイクロメートル未満の厚さである。一実施形態では、ポリマーコーティングは、1000ナノメートル未満、好ましくは900ナノメートル未満、好ましくは30~750ナノメートルの厚さを有する。
【0027】
前駆体と多孔質金属表面に結合したカップリング剤との間の混和性を可能にするために、反応中に好適な溶媒が使用されてもよい。極性溶媒の例は、水、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチロラクトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ジクロロメタン等であるか、又はそれらの組み合わせが使用されてもよい。ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、四塩化炭素、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他の非極性溶媒、又はそれらの組み合わせも使用され得る。少なくとも1つの極性溶媒及び少なくとも1つの非極性溶媒を含む共溶媒を用いて、溶媒の膨張力を変更するか、又は反応性の速度を変更することもできる。
【0028】
多孔質金属表面上の双性イオンポリマーコーティングは、ポリエチレングリコールコーティングに伴う現存する毒性の問題を克服するという点で有利である。また、多孔質基材に良好に結合又は付着しないことがあるヒドロゲルよりも良好に機能する。
【0029】
医療機器における使用とは別に、この生物耐性コーティングはスパージャーに使用されてもよい。双性イオンポリマーはまた、バイオファウリングが発生するスパージャー又は通気デバイス上にコーティングされてもよい。
【実施例】
【0030】
実施例1
本予言的実施例は、金属表面上での生物耐性コーティングの調製について詳述する。特に、本予言的実施例は、カップリング剤の自己組織化単層で多孔質金属をコーティングすることについて詳述する。100ミリリットル(ml)のジクロロメタン、1.8mlのピリジン、及び5グラムのメルカプトウンデカノールを、0~10℃の反応器内で最初に組み合わせる。6.28グラムのブロモイソブチリルブロミドを反応器に添加し、その後、反応器の内容物を1時間混合する。反応器を20~30℃に一晩(好ましくは16時間)加熱する。次いで、反応器中の溶液を、水(200ml)及びトルエン(50ml)で希釈する。次いで、トルエンの抽出を介して、不混和性溶液から生成物を除去する。現在トルエンに溶解している生成物を、次いで、室温でその蒸気圧を下回るように圧力を低下させることによって蒸発させる。これに続いて、固体をエタノール中に再溶解し、メルカプトウンデカノール及びブロモイソブチリルブロミド生成物の0.2mMの溶液を作製する。次いで、本実施形態において亜鉛から特別に作製された多孔質金属基材を、0.2mMの溶液に24時間漬ける。この反応は、上にSAMが配置された多孔質金属を生成する。
【0031】
実施例2
本予言的実施例は、多孔質金属表面上での両性イオンコーティングの形成を開示する。溶液中のコーティングされた金属(実施例1から)に臭化銅(CuBr)を添加して、0.1mM~0.4mMの溶液を得る。この化学物質は、Tris[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(Me6TREN)と組み合わせるとリガンドを形成し、これは、PTMAOモノマーの原子移動ラジカル重合(ATRP)の開始剤として機能する。SAMが配置された多孔質金属を含む反応器に、1.72グラムのPTMAOモノマーを添加する。別個の反応器に2.5~5mlのメタノールを添加する。Me6TRENを添加して、0.05~0.2mMの溶液を得る。0.4mlの脱イオン水を1mLまで添加する。内容物を20~50℃で混合する。所望の分子量のPTMAOが形成されるまで、反応を8~24時間継続する。次いで、多孔質金属上のPTMAOのコーティングを含む反応生成物をメタノール中で2回洗浄し、続いて水中で1回洗浄する。次いで、それを20℃の空気中で乾燥させて、生物耐性多孔質金属を形成する。
【0032】
本発明を一部の実施形態に関して説明したが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われ得、同等物がその要素の代わりに置換され得ることを理解するであろう。更に、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の態様として開示される特定の実施形態に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲内の全ての実施形態を含むことが意図される。
【0033】
実施例3
これは実際の実施例であり、実際に実施された。実施例1及び2に概説される方法を用いて、ASTM F316-03によって約3~3.5ミクロンであると決定された最大細孔径と、キャピラリーフローポロメトリーによって0.08~0.12ミクロンであると決定された平均細孔径を有する多孔質亜鉛試料を、PTMAOでコーティングした。コーティングされた試料のセット及びコーティングされていない試料の対照セットの両方を、40g/Lの濃度の脱イオン水中のウシ血清アルブミンの溶液に浸した。対照試料は、相互接続された多孔性の損失を経験し、溶液中のタンパク質は、3日以内に試料の細孔を完全に汚損し、塞いだ。コーティングされた試料は、ASTM F316-03に従ってバブルポイント試験によって決定されたように相互接続された多孔性を保持し、最大13日間塞がれず、耐汚損性の平均433%の増加を表した。
【国際調査報告】