(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】硬化性ポリシロキサン組成物及びそれから調製される光学的に平滑なフィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
C08L83/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513228
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 US2022043968
(87)【国際公開番号】W WO2023055596
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】ガーナー、メアリー イー.
(72)【発明者】
【氏名】タフト、ブラッドリー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】カミングス、ミシェル
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP042
4J002CP141
4J002CP143
4J002EX016
4J002EX017
4J002FD206
4J002FD207
4J002GP00
4J002GP02
(57)【要約】
硬化性組成物は、(a)15~73重量パーセントのビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂と、(b)0.5~5重量パーセントのビニル官能性ジシロキサンと、(c)2~25重量%の水素化ケイ素官能性Mキャップシルセスキオキサン樹脂と、(d)白金ヒドロシリル化触媒からの1~10重量部/百万重量部の白金と、を含有し、ここで、(a)及び(b)の濃度の合計は、少なくとも35重量パーセントであり、重量パーセント値は、硬化性組成物の重量に対するものであり、硬化性組成物は、アセチレンアルコールヒドロシリル化抑制剤を含まない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、
(a)700~1900ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有し、かつ以下の平均化学構造(I)を有する、15~73重量パーセントのビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂:
(R
3SiO
1/2)
a(R’SiO
3/2)
b((ZO)
xR’SiO
(3-x/2))
z (I)
(式中、少なくとも1つのRは、1~8個の炭素原子を有する末端アルケニル基であり、下付き文字xは、記載の度に独立して、0~2の範囲内の値から選択され、下付き文字aは、0.15~0.35の範囲内の値であり、下付き文字bは、0.65~0.85の範囲内の値であり、下付き文字zは、0~0.10の範囲内であり、下付き文字a、b、及びzの合計は、1.0である);
(b)250~500ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有し、かつ以下の化学構造(II)を有する、0.5~5重量パーセントのビニル官能性ジシロキサン:
(R’R
2SiO
1/2)
2 (II)
(式中、少なくとも1つのRは、1~8個の炭素原子を有する末端アルケニル基である);
(c)500~1200ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有し、かつ以下の平均化学構造(III)を有する、2~25重量%の水素化ケイ素官能性Mキャップシルセスキオキサン樹脂:
(R”
2HSiO
1/2)
c(R’SiO
3/2)
d((ZO)
xR’SiO
(3-x/2))
z (III)
(式中、下付き文字xは、記載の度に独立して、0~2の範囲内の値から選択され、下付き文字cは、0.5~0.7の範囲内の値を有し、下付き文字dは、0.3~0.5の範囲内の値を有し、下付き文字zは、0~0.10の範囲内であり、下付き文字c、d、及びzの合計は、1.0である);
(d)硬化性組成物の重量に基づいた、白金ヒドロシリル化触媒からの1~10重量部/百万重量部の白金、
を含み、
ここで、
Rは、上記の要件を条件として、記載の度に独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、及び1~8個の炭素原子を有する末端アルケニル基からなる群から選択され;R’は、記載の度に独立して、アリール基から選択され;R”は、記載の度に独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択され;Zは、記載の度に独立して、水素、及びアルキル基、及びR基からなる群から選択され;下付き文字a~d及び下付き文字zは、シロキサン単位を含有する分子中の対応するシロキサン単位のモル比を指し;(a)及び(b)の濃度の合計は、少なくとも35重量パーセントであり;重量パーセント値は、硬化性組成物の重量に対するものであり;前記硬化性組成物は、アセチレンアルコールヒドロシリル化抑制剤を含まない、硬化性組成物。
【請求項2】
前記硬化性組成物が、0重量パーセントを超え、同時に65重量パーセント以下である、300~9000ダルトンの範囲内の重量平均分子量及び化学構造(IV)を有する直鎖アルケニル官能性ポリオルガノシロキサンを更に含み:
(R
3SiO
1/2)
e(R’
(2-x)R”
xSiO
2/2)
f (IV)
式中、各(R
3SiO
1/2)単位中の少なくとも1つのRが末端アルケニル基であり、R’がアリール基から選択され、R”が1~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、下付き文字xが0~1の範囲内の平均値を有し、下付き文字eが0.03~0.97の値を有し、下付き文字e及び下付き文字fが、シロキサン単位を含有する前記分子中の会合したシロキサン単位のモル比であり、下付き文字e及び下付き文字fの値の合計が1.0であり、重量パーセントが、硬化性組成物重量に対するものであることを条件として、Rが、記載の度に独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基及び末端アルケニル基から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記硬化性組成物が、0重量パーセントを超え、同時に25重量パーセント以下である、250~500ダルトンの範囲内の重量平均分子量及び化学構造(V)を有するシリルヒドリド官能性直鎖オルガノシロキサンを更に含み:
(HR
2SiO
1/2)
2(R’
2SiO
2/2) (V)
式中、Rが、記載の度に独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、R’が、アリール基から選択される、請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
SiHと末端アルケニル基とのモル比が、0.8~3.0の範囲内である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
(i)化学構造(I)が、以下の化学構造を有し:(ViMe
2SiO
1/2)
a(PhSiO
3/2)
b((ZO)
xPhSiO
(3-x/2))
z;
(ii)化学構造(II)が、以下の化学構造を有し:(ViMePhSiO
1/2)
2;
(iii)化学構造(III)が、以下の化学構造を有し:(HMe
2SiO
1/2)
c(PhSiO
3/2)
d((ZO)
xPhSiO
(3-x/2))
z;
(iv)化学構造(IV)が、存在する場合は、以下の化学構造を有し:(ViMe
2SiO
1/2)
e(PhMeSiO
2/2)
f;
(v)化学構造(V)が、存在する場合は、以下の化学構造を有し:(HMe
2SiO
1/2)
2(PhPhSiO
2/2);かつ、
式中、「Vi」がビニル基を指し、「Ph」がフェニル基を指し、「Me」がメチル基を指す、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記硬化性組成物が、前記シロキサン分子中のケイ素原子のモルに対して3モル%を超えるエポキシ含有基を含有するシロキサン分子を含まない、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記硬化性組成物のフィルムを形成し、次いで、100摂氏度を超える温度まで前記フィルムを加熱して硬化ポリマーフィルムを形成することを含む、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化する方法。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の組成物の硬化ポリマーフィルムを含む、硬化ポリマーフィルム。
【請求項9】
前記フィルムが、589ナノメートルの波長光を用いて測定した場合に1.50以上の屈折率、25~500マイクロメートルの範囲内の厚さを有することを特徴とし、前記フィルムが、光学的に平滑な主面を有する、請求項8に記載の硬化ポリマーフィルム。
【請求項10】
前記フィルムが、前記フィルムの縁部へと光を誘導するように、前記フィルムに結合された光源を更に含む、請求項8又は請求項9に記載の硬化ポリマーフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性ポリシロキサン組成物、硬化性ポリシロキサン組成物を特に光学的に平滑なフィルムへと硬化させる方法、及び硬化性ポリシロキサン組成物から作製された光学的に平滑なフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
序論
ライトガイドは、発光体から特定の所望の位置へと光を指向的に透過するのに有用である。物品の厚さ寸法を通って光を透過させるレンズとは対照的に、ライトガイドは、ライトガイド物品の縁部へと光を導き、次いで、物品の長さ及び/又は幅寸法を通ってライトガイドを通じてライトガイドの対向する縁部へと光を透過させる際に、ライトガイド物品内で光を内部反射することによって使用される。ライトガイド物品は、光がライトガイドを通って移動する際にライトガイド物品内に維持される光を最大にするために、表面粗さ及び屈折率についてより厳しい要件を有する。表面粗さ及び不充分な屈折率は、光がライトガイド物品内を移動する間にライトガイドの表面から内部反射するため、ライトガイドの表面を通る光の損失をもたらす可能性がある。光は、ライトガイド内の他の物体の周りの曲がりくねった経路又は複雑な経路を通って効率的に導かれ、かつ所望の位置で放射され得る。ライトガイドは、携帯電話、テレビ、及びディスプレイエレクトロニクスで広く使用されている。
【0003】
ポリメチルシロキサンは、コストが高く屈折率が低いため、一般的なライトガイド媒体ではない。ポリメチルシロキサンは、典型的には約1.4の屈折率を有するが、一方でポリカーボネート(「PC」)及びポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)のようなより一般的なライトガイド材料は、典型的には1.5を超える屈折率を有し、20摂氏度で589ナノメートルの波長光を用いて測定される屈折率値を有する。材料は、ライトガイドとして材料内の光をより効率的に並進させるために、1.50を超える屈折率を有することが望ましい。しかし、熱安定性などの固有の安定性が知られているので、ポリシロキサン材料をライトガイド媒体として使用することもまた望ましい。
【0004】
ある特定のライトガイド用途では、ライトガイドは、およそ25~500マイクロメートルの厚さを有するフィルムである必要がある。そのような用途の例には、屋外ディスプレイエレクトロニクス、前面照明付き電子ディスプレイ、審美的照明又は周囲照明、自動車のアクセント照明、及び照明が薄くかつ/又は可撓性である領域(すなわち、光のシート)から放射する必要がある他の用途が含まれる。このようなフィルムは独自の課題を提示する。例としては、フィルムは、光学的に平滑であるか、又は光が表面の粗さ特徴に沿ってライトガイドから散乱し得る、対向する主面を有する必要がある。表面が25ナノメートル未満である値Raを特徴とする粗さを有する場合、表面は「光学的に平滑」であり、ここで、「Ra」とは、表面から光を拡散させるために意図的に粗面化された領域を除いて、表面上の任意の1.0ミリメートルの長さの線で遭遇する特徴高さの算術平均である。ライトガイドフィルムは、ライトガイドからの光を拡散させるために単語又は図形などの意図的に粗面化されたパターンを含むことができ、それらは意図的に光学的に平滑ではない。しかしながら、フィルムの残りの部分は、意図的に拡散させられる領域以外の領域において主面からの光拡散を最小限に抑えるために、光学的に平滑でなければならない。
【0005】
更に、フィルムは、取り扱い可能なほど充分に高い弾性率まで硬化しなければならず、これは、ASTM D5289-19aによって測定されるように、15デシニュートン*メートル(dN*m)を超えるトルクの剛性まで硬化しなければならないことを意味する。そのようなフィルムを調製するのに好適な硬化性組成物は、25摂氏度(℃)で少なくとも1時間の作業時間を有することが更に望ましく、ここで、作業時間は、組成物が2倍の粘度となるのに必要な時間である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、20摂氏度(℃)で589ナノメートルの波長光を用いて測定した場合に1.50以上の屈折率を有し、25~500マイクロメートルの厚さであり、25ナノメートル未満の表面粗さRa値を有し、15dN*mを超える硬化剛性を有するフィルムへとキャスト及び硬化することができる、硬化性ポリシロキサン組成物を提供することによって、上述した各問題の解決策を提供する。更に、硬化性組成物は、100℃を超える温度で(主面が空気に曝された状態で)外気中にて硬化させた場合、そのようなフィルムを形成することができる。硬化性組成物はまた、25℃で少なくとも1時間の作業時間を有する。
【0007】
この解決策は、キャストしてフィルムを形成し、次いでヒドロシリル化によって硬化させて上述した特性を伴うフィルム(「目標フィルム」)を得ることができる、ポリシロキサン材料の特定の組合せを発見した結果である。なお、ポリシロキサンにアリール基を含有させることにより、1.50を超える値まで屈折率を高めることができることが知られている。しかしながら、本発明を発見する過程で、アリール官能性ポリシロキサンは、主面を空気に曝露した状態で100℃を超える温度で硬化させた場合、光学的に平滑な主面を有するフィルムへの硬化に問題を有し得ることが見出された。本発明は、空気に曝露された場合に光学的に平滑な主面へと硬化することができるが、一方で目標フィルムの他の特性もまた達成することができる、特定の組成物を発見した結果である。
【0008】
第1の態様では、本発明は、硬化性組成物であって、以下:
(a)700~1900ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有し、かつ以下の平均化学構造(I)を有する、15~73重量パーセントのビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂:
(R3SiO1/2)a(R’SiO3/2)b((ZO)xR’SiO(3-x/2))z (I)
(式中、少なくとも1つのRは、1~8個の炭素原子を有する末端アルケニル基であり、下付き文字xは、記載の度に独立して、0~2の範囲内の値から選択され、下付き文字aは、0.15~0.35の範囲内の値であり、下付き文字bは、0.65~0.85の範囲内の値であり、下付き文字zは、0~0.10の範囲内であり、下付き文字a、b、及びzの合計は、1.0である);
(b)250~500ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有し、かつ以下の化学構造(II)を有する、0.5~5重量パーセントのビニル官能性ジシロキサン:
(R’R2SiO1/2)2 (II)
(式中、少なくとも1つのRは、1~8個の炭素原子を有する末端アルケニル基である);
(c)500~1200ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有し、かつ以下の平均化学構造(III)を有する、2~25重量%の水素化ケイ素官能性Mキャップシルセスキオキサン樹脂:
(R”2HSiO1/2)c(R’SiO3/2)d((ZO)xR’SiO(3-x/2))z (III)
(式中、下付き文字xは、記載の度に独立して、0~2の範囲内の値から選択され、下付き文字cは、0.5~0.7の範囲内の値を有し、下付き文字dは、0.3~0.5の範囲内の値を有し、下付き文字zは、0~0.10の範囲内であり、下付き文字c、d、及びzの合計は、1.0である);
(d)硬化性組成物の重量に基づいた、白金ヒドロシリル化触媒からの1~10重量部/百万重量部(weight parts per million weight parts)の白金;
を含み、
式中、Rは、上記の要件を条件として、記載の度に独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、及び1~8個の炭素原子を有する末端アルケニル基からなる群から選択され;R’は、記載の度に独立して、アリール基から選択され;R”は、記載の度に独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択され;Zは、記載の度に独立して、水素、及びアルキル基、及びR基からなる群から選択され;下付き文字a~d及び下付き文字zは、シロキサン単位を含有する分子中の対応するシロキサン単位のモル比を指し;(a)及び(b)の濃度の合計は、少なくとも35重量パーセントであり;重量パーセント値は、硬化性組成物の重量に対するものであり;硬化性組成物は、アセチレンアルコールヒドロシリル化抑制剤を含まない、
硬化性組成物である。
【0009】
第2の態様では、本発明は、硬化性組成物のフィルムを形成し、次いで、100摂氏度を超える温度までフィルムを加熱して硬化ポリマーフィルムを形成することを含む、第1の態様の硬化性組成物を硬化する方法である。
【0010】
第3の態様では、本発明は、第1の態様の組成物の硬化ポリマーフィルムを含む、硬化ポリマーフィルムである。
【0011】
特に、透明なシロキサン組成物は、鋳型空隙を充填するための、又は半導体素子上のコーティングとしての、様々な組成物で知られている。しかしながら、これらの用途は、シロキサン組成物の光学的に平坦なフィルムを達成するという課題に対処せず、本明細書に記載の目標フィルムなどの光学的に平坦なフィルムを作製するために使用され得る組成物を特定していない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル試験法(ASTM International methods)を指し、ENは、European Normを指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0013】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0014】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0015】
「アルキル」は、水素原子を除去することによってアルカンから誘導可能な炭化水素基を指す。アルキルは、直鎖状又は分岐状であり得る。
【0016】
「分子量」は、特に明記しない限り、重量平均分子量を指す。ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography:GPC)によってポリマーの重量平均分子量を決定する。GPC分析用のポリマーの試料をトルエン中の希釈溶液として調製し、分析前に0.45マイクロメートルのポリテトラフルオロエチレンフィルタを用いて溶液を濾過する。溶離液として高圧液体クロマトグラフィー(high pressure liquid chromatography:HPLC)グレードのテトラヒドロフランを使用し、35℃に維持した2本のPolymer Labs 5マイクロメートル混合Cカラムに通す。
【0017】
「屈折率」又は「RI」とは、人工サファイアプリズム及び発光ダイオード(light emitting diode:LED)光源を備えたRudolph Research Analytical J257 Series Automatic Refractometerを用いて、硬化性組成物について測定される。20℃で589ナノメートルの光を用いて屈折率を測定する。本明細書の組成物のために、硬化性組成物のRIは、硬化性組成物を用いて作製された得られた硬化ポリマーフィルムのRIと同等であると仮定されるので、硬化フィルムのRI値は、硬化ポリマーフィルムを作製するために使用される硬化性組成物のRI値に対応する。フィルム上のRIを実際に測定するには、Metricon Prism Couplerを使用する。
【0018】
フィルムの「表面粗さ」は、値「Ra」によって特徴付けられ、これは、5倍対物レンズを備えたZygo New View 7300白色光干渉計を用いて評価されるように、表面上の任意の1.0ミリメートル長の線で遭遇する特徴高さの算術平均である。
【0019】
「光学的に平滑」とは、光を拡散させるために意図的に粗面化されていない表面部分について、25ナノメートル未満の表面粗さRa値を有するフィルムを指す。このようなRa値は、プラスチック産業会(Plastics Industry Association)規格SPI A-1からのプラスチックの射出成型仕上げのための最高光沢規格に対応する。
【0020】
フィルムの「主面」とは、最大の平面表面積を有する表面を指し、ここで、平面表面積とは、表面のテクスチャを無視するように平面へと投影された表面の表面積を指す。フィルムは、典型的には、フィルムの厚さによって分離された対向する主面を有する。
【0021】
フィルムの「縁部」とは、フィルムの対向する主面を接合するフィルムの寸法に沿ったフィルムの外側限界を指す。
【0022】
3°コーンを備えたプレート粘度計(CPA-52Z - Brookfield)におけるBrookfield DV-IIコーンと、トルク読み取り値が所与の設定の下におけるレオメータの最大トルク値の40~60%になるような毎分回転数値と、を用いて、25℃での硬化性組成物の粘度を決定する。
【0023】
一態様では、本発明は、硬化性組成物である。硬化性組成物は、硬化性組成物の成分を架橋する硬化反応を受けることができる。本発明は、白金ヒドロシリル化触媒の存在下において、ビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂、ビニル官能性ジシロキサン、及び水素化ケイ素官能性Mキャップシルセスキオキサン樹脂のヒドロシリル化反応によって硬化することができる。
【0024】
ビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂は、以下の平均化学構造(I)を有する:
(R3SiO1/2)a(R’SiO3/2)b((ZO)xR’SiO(3-x/2))z (I)
ここで、
Rは、記載の度に独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、及び1~8個の炭素原子を有するアルケニル基からなる群から選択される。ビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂において、少なくとも1つのR基、好ましくは2つ以上のR基は、1~8個の炭素原子を有する末端アルケニル基から選択される。好ましくは、Rの末端アルケニル基は、ビニル(「Vi」)基であり、アルキル基は、メチル(「Me」)、エチル、及びプロピル基から選択される。
【0025】
R’は、記載の度に独立して、アリール基から、好ましくはフェニル(「Ph」)基及びベンジル基からなる群から選択される。
【0026】
Zは、記載の度に独立して、水素及びR基から、好ましくは水素(「H」)、メチル、及びエチル基からなる群から選択される。
【0027】
下付き文字xは、記載の度に独立して、0~2の範囲内の値から選択され、0、1、又は2であり得る。
【0028】
下付き文字a、下付き文字b、及び下付き文字zとは、シロキサン単位を含有する分子中の対応するシロキサン単位のモル比を指し、a、b、及びzの合計は、化学構造(I)では1.0である。下付き文字aは、0.15~0.35の範囲内の値であり、0.15以上、0.20以上、0.25以上、更には0.30以上であり得るが、一方で同時に、0.35以下であり、0.30以下、0.25以下、更には0.20以下であり得る。下付き文字bは、0.65~0.85の範囲内の値であり、0.65以上、0.70以上、0.75以上、更には0.80以上であり得るが、一方で同時に、0.85以下、0.80以下、0.75以下、更には0.70以下である。下付き文字zは、0~0.10の範囲内の値であり、0以上、更には0.05以上であり得るが、一方で同時に、0.10以下であり、0.05以下であり得る。
【0029】
望ましくは、ビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂は、以下の化学構造を有する:(ViMe2SiO1/2)a(PhSiO3/2)b((ZO)xPhSiO(3-x/2))z。
【0030】
ビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂は、700~1900ダルトン(Da)の範囲内の重量平均分子量(Mw)を有し、700Da以上、800Da以上、900Da以上、1000Da以上、1100Da以上、1200Da以上、1300Da以上、1400Da以上、1500Da以上、1600Da以上、1700Da以上、又は更には1800Da以上のMwを有し得るが、一方で同時に、1900Da以下、1800Da以下、1700Da以下、1600Da以下、1500Da以下、1400Da以下、1300Da以下、1200Da以下、1100Da以下、1000Da以下、900Da以下、又は更にはこれら以下(or even or less)のMwを有し得る。
【0031】
硬化性組成物中のビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂の濃度は、硬化性組成物重量に基づいて、15~73重量パーセント(重量%)の範囲内であり、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、又は更には70重量%以上であり得るが、一方で同時に、73重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、又は更には20重量%以下である。
【0032】
ビニル官能性ジシロキサンは、以下の平均化学構造(II)を有する:
(R’R2SiO1/2)2 (II)
式中、R及びR’は、本明細書中の上記で定義したとおりであるが、ただし、少なくとも1つのRは、1~8個の炭素原子を有する末端アルケニル基である。望ましくは、ビニル官能性ジシロキサンは、以下の化学構造を有する:(ViMePhSiO1/2)2。
【0033】
ビニル官能性ジシロキサンは、250~500Daの範囲内のMwを有し、250Da以上、300Da以上、350Da以上、400Da以上、又は更には450Da以上のMwを有し得るが、一方で同時に、500Da以下、450Da以下、400Da以下、350Da以下、又は更には300Da以下のMwを有し得る。
【0034】
硬化性組成物中のビニル官能性ジシロキサンの濃度は、硬化性組成物重量に対して重量%で、0.5~5重量%の範囲内であり、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、又は更には4重量%以上であり得るが、一方で同時に、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、又は更には1重量%以下であるが、ただし、ビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂及びビニル官能性ジシロキサンの合わせた濃度は、硬化性組成物重量に基づいて、35重量%以上である。ビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂及びビニル官能性ジシロキサンの合わせた濃度は、例えば、硬化性組成物重量に対して重量%で、35重量%~78重量%の範囲内、又は言い換えると35重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、又は更には70重量%以上であり得るが、一方で同時に78重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、更には40重量%以下であり得る。
【0035】
水素化ケイ素官能性Mキャップシルセスキオキサン樹脂は、以下の平均化学構造(III)を有する:
(R”2HSiO1/2)c(R’SiO3/2)d((ZO)xR’SiO(3-x/2))z (III)
式中、
R’、Z、及び下付き文字zは、本明細書中の上記で定義したとおり、記載の度に独立しており;
R”は、記載の度に独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択され、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、更には6個以上を有し得るが、一方で同時に8個以下、7個以下、6個以下、4個以下、3個以下、更に2個以下の炭素原子を有し得;
下付き文字xは、記載の度に独立して、0~2の範囲内の値から選択され、0、1、又は2であり得;
下付き文字cは、0.5~0.7の範囲内の値を有し、0.6~0.7又は0.5~0.6の範囲内であり得;
下付き文字dは、0.3~0.5の範囲内の値を有し、0.3~0.4又は0.4~0.4の範囲内であり得;
下付き文字c、下付き文字d、及び下付き文字zの合計は、1.0である。
【0036】
望ましくは、水素化ケイ素官能性Mキャップシルセスキオキサン樹脂は、以下の平均化学構造を有する:(HMe2SiO1/2)c(PhSiO3/2)d((ZO)xPhSiO(3-x/2))z。
【0037】
水素化ケイ素官能性Mキャップシルセスキオキサン樹脂は、500~1200Daの範囲内のMwを有し、500Da以上、600Da以上、700Da以上、800Da以上、900Da以上、1000Da以上、又は更には1100Da以上であり得るが、一方で同時に、1200Da以下、1100Da以下、1000Da以下、900Da以下、800Da以下、700Da以下、又は更には600Da以下である。
【0038】
水素化ケイ素官能性Mキャップシルセスキオキサン樹脂の濃度は、2~25重量%の範囲内であり、硬化性組成物重量に対して重量%で、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、又は更には20重量%以上であり得るが、一方で同時に、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、又は更には5重量%以下であり得る。
【0039】
白金ヒドロシリル化触媒は、1つを超える白金含有ヒドロシリル化触媒のいずれか1つ又は組合せであり得る。白金ヒドロシリル化触媒としては、化合物及び錯体、例えば、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(カルステット触媒)、H2PtCl6、ジ-μ.-カルボニルジ-.π.-シクロペンタジエニルジニッケル、白金-カルボニル錯体、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金アセチルアセトナート(acac)、白金黒など、白金化合物、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、白金ビス(エチルアセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトナート)、二塩化白金、及び白金化合物とオレフィン若しくは低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体、又はマトリックス若しくはコアシェル型構造でマイクロカプセル化された白金化合物などが挙げられる。白金ヒドロシリル化触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を含む、白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体を含む溶液の一部であり得る。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体であり得る。
【0040】
白金ヒドロシリル化触媒の濃度は、1~10重量百万分率(parts per million:ppm)の範囲内の白金濃度を得るのに充分であり、硬化性組成物重量に基づいてppmで、1ppm以上、2ppm以上3ppm以上、4ppm以上、5ppm以上、6ppm以上、7ppm以上、8ppm以上、又は更には9ppm以上であり得るが、一方で同時に、10ppm以下、9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、又は更には2ppm以下であり得る。
【0041】
任意選択的には、硬化性組成物は、平均化学構造(IV)を有する直鎖アルケニル官能性ポリオルガノシロキサンを更に含み得る:
(R3SiO1/2)e(R’(2-x)R”xSiO2/2)f (IV)
式中、各R、R’、及びR”は、本明細書中上記に提示される基の定義から独立して選択され;下付き文字xは、0~1の範囲内の平均値を有し;下付き文字eは、0.03~0.97の値を有し、0.03以上、0.05以上、0.10以上、0.20以上、0.30以上、0.40以上、0.50以上、0.60以上、0.70以上、0.80以上、又は更には0.90以上であり得るが、一方で同時に、0.97以下、0.95以下、0.90以下、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.20以下、又は更には0.10以下であり、下付き文字fは、下付き文字e及び下付き文字fの合計が1.0になるように選ばれる。
【0042】
望ましくは、直鎖アルケニル官能性ポリオルガノシロキサンは、以下の2つの構造の範囲内の化学構造を有する1つ以上の成分から選択される:(ViMe2SiO1/2)e(PhMeSiO2/2)f、式中、下付き文字e及び下付き文字fは、本明細書中上記に記載のとおり、(ViMe2SiO1/2)(Ph2SiO2/2)(ViMe2SiO1/2)である。
【0043】
硬化性組成物中の直鎖アルケニル官能性ポリオルガノシロキサンの濃度は、0~65重量%の範囲内であり、硬化性組成物重量に対して重量%で、0重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、又は更には60重量%以上であり得るが、一方で同時に、65重量%以下、65重量%以下、55重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、25重量%以下、15重量%以下、又は更には5重量%以下である。
【0044】
同時に、硬化性組成物は、任意選択的に、平均化学構造(V)を有するシリルヒドリド官能性直鎖オルガノシロキサンを含み得る:
(HR2SiO1/2)2(R’2SiO2/2) (V)
式中、R及びR’は、本明細書中上記で記載されたとおり、記載の度に各々独立している。望ましくは、シリルヒドリド官能性直鎖オルガノシロキサンは、以下の化学構造を有する:(HMe2SiO1/2)2(PhPhSiO2/2)。
【0045】
硬化性組成物中のシリルヒドリド官能性直鎖オルガノシロキサンの濃度は、0~25重量%の範囲内であり、硬化性組成物重量に対して重量%で、0重量%以上、10重量%以上、又は更には20重量%以上であり得るが、一方で同時に、25重量%以下、15重量%以下、又は更には5重量%以下である。
【0046】
望ましくは、硬化性組成物は、水素化ケイ素官能基(silicon hydride functionality:SiH)と末端アルケニル基とのモル比が0.8~3.0の範囲内であり、0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.2以上、1.4以上、1.6以上、1.8以上、2.0以上、2.2以上、2.4以上、2.6以上、又は更には2.8以上であり得るが、一方で同時に、望ましくは3.0以下、2.9以下、2.7以下、2.5以下、2.3以下、2.1以下、1.9以下、1.7以下、1.5以下、1.3以下、1.1以下、又は更には1.0以下である。プロトン核磁気共鳴(1H NMR)分光法によって、SiH対末端アルケニル基のモル比を決定する。既知量の試料を、既知量の内部標準(1,4-ジオキサン)と合わせて、重水素化クロロホルム中において、分析用試料を調製する。5ミリメートルのONeNMRプローブを備えたAligent 400-MR NMR装置を用いてスペクトルを収集する。MesReNova x64ソフトウェアを用いてデータを分析する。内部標準のプロトン共鳴に対する関連プロトン共鳴を積分することによって、末端アルケニル基及びSiH基の重量パーセントを計算する。
【0047】
望ましくは、硬化性組成物は、シロキサン分子中のケイ素原子のモルに対して、3モルパーセント(モル%)を超える、好ましくは2モル%以上、更により好ましくは1モル%以上のエポキシ含有基を含有するシロキサン分子を含まない。
【0048】
望ましくは、硬化性組成物は、589ナノメートルにて、1.50以上、好ましくは1.50超の屈折率(RI)を有する。
【0049】
別の態様では、本発明は、本発明の硬化性組成物を硬化ポリマーフィルムへと硬化させる方法である。本方法は、硬化性組成物のフィルムを形成し、次いで、100摂氏度(℃)を超える温度、好ましくは120℃以上、更により好ましくは130℃以上までフィルムを加熱して、フィルムを硬化ポリマーフィルムへと硬化させることを含む。硬化性組成物は、基材上へのスピンコーティング、又は引き下げバー、ドクターブレード(若しくは任意のナイフブレード)、若しくはスロットダイを用いたフィルムへのキャストなどの任意の方法によってフィルムへと形成することができる。例えば、硬化性組成物は、シリコンウェハ、好ましくは光学的に平滑なシリコンウェハ上へとスピンコーティングすることができる。あるいは、硬化性組成物は、スロットダイの物理的オフセットによって、又はブレード若しくはナイフの下における基材上に硬化性組成物を通過させることによって、フィルム厚が制御され、ブレード縁部若しくはナイフ縁部と基材との間のギャップによって厚さが制御される、基材、好ましくは光学的に平滑な基材上に配置することができる。
【0050】
硬化前及び特に硬化後のフィルム厚は、望ましくは25~500マイクロメートルの範囲内であり、25マイクロメートル以上、50マイクロメートル以上、75マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上、150マイクロメートル以上、200マイクロメートル以上、250マイクロメートル以上、300マイクロメートル以上、350マイクロメートル以上、400マイクロメートル以上、又は更に450マイクロメートル以上であり得るが、一方で同時に、望ましくは、500マイクロメートル以下、475マイクロメートル以下、425マイクロメートル以下、375マイクロメートル以下、325マイクロメートル以下、275マイクロメートル以下、225マイクロメートル以下、175マイクロメートル以下、125マイクロメートル以下、75マイクロメートル以下、又は更には50マイクロメートル以下である。手持ち式デジタルマイクロメータ(Mitutoyo 547-526S)を用いて、ASTM D1005手順C 6.3.6に従ってフィルム厚を決定する。
【0051】
硬化性組成物のフィルムの一方の主面が基材表面と接触している間、対向する主面は空気に曝され得る。空気に曝された場合でも、フィルムの露出した主面は、光学的に平滑な表面に硬化することができる。更に、光学的に平滑な表面を有する基材上で硬化した場合、得られた硬化ポリマーフィルムは、両方とも光学的に平滑な対向する主面を有することができる。特に、意図的なパターニングは、意図的なパターニングが存在しない光学的に平滑な表面を保持しながら、主面の一部又は全部へとインプリント又は付与することができる。
【0052】
硬化ポリマーフィルムは、15デシニュートン*メートル(dN*m)以上の剛性を有し、20dN*m以上、25dN*m以上、30dN*m以上、35dN*m以上、40dN*m以上、45dN*m以上、50dN*m以上、55dN*m以上、60dN*m以上、65dN*m以上、70dN*m以上、75dN*m以上、80dN*m以上、85dN*m以上、又は更には90dN*m以上の剛性を有し得るが、一方で同時に、典型的には、150dN*m以下、100dN*m以下、75dN*m以下、又は更には50dN*m以下の剛性を有する。
【0053】
硬化ポリマーフィルムは、硬化ポリマーフィルムがフィルムの縁部へと光を誘導するようにフィルムに結合された光源を更に含む、物品の一部であり得る。本発明の硬化ポリマーフィルムは、特に、光がフィルムの縁部内へと誘導され、フィルム内でフィルムの他の縁部へと、及び任意選択的にはフィルムの1つ以上の主面のパターン化部分から外へと透過する、ライトガイドとして特に有用である。そのような用途では、フィルムは、フィルムの縁部へと光を誘導する光源と「結合」される。結合は、発光源との直接接触によって、又は発光源からの光を透過している光ファイバ又は他の導波路材料を介した間接結合によって行うことができる。
【実施例】
【0054】
表1は、以下の実施例のための材料を列挙する。
【0055】
【0056】
以下の表に示される組成物の成分(グラムで示される成分量)を容器中に合わせ、金属スパチュラを用いて手で混合し、次いでスピードミキサーを用いて毎分3500回転で30秒間混合することによって硬化性組成物を調製する。硬化性組成物のRIを決定する。また、最初に製造後に粘度を測定し、続いて硬化性組成物の作業時間に相当する粘度が倍増するまでの時間を決定するために15分毎に測定することによって、硬化性組成物の作業時間を決定する。
【0057】
2~4グラムの硬化性組成物を光学的に平滑なシリコンウェハ(直径100ミリメートル又は150ミリメートルのPure Wafer、ホウ素ドープシリコーン、試験グレード、0.5ミリメートル厚、二乗平均平方根表面粗さが1ナノメートル未満)上に堆積させ、次いで、Coast Effective Equipmentスピンコータを用いて毎分500~1000回転で60秒間ウェハ上に硬化性組成物をスピンコートして、25~500マイクロメートルの厚さの均一な薄膜を達成することによって、硬化性組成物のフィルムを調製する。
【0058】
フィルムを含有するウェハを、外気中で130℃に設定されたホットプレート上に5分間移載し、次いで硬化したフィルムを冷却させることによって、硬化性組成物のフィルムを硬化させる。手持ち式デジタルマイクロメータ(Mitutoyo 547-526S)を用いて、ASTM D1005手順C 6.3.6に従って硬化フィルムの厚さを決定する。露出した主面の表面粗さを評価する。
【0059】
以下の表は、硬化性組成物のレシピ、及びそれらの硬化性組成物の特性評価結果を提供する。
【0060】
本発明の組成物は、589ナノメートルで1.5超のRI、その露出した硬化表面では24ナノメートル未満のRa値、及び25~500マイクロメートルの厚さ、並びに>15dN*m超の剛性及び1時間を超える作業時間を有する、硬化ポリマーフィルムを形成する能力を実証する。
【0061】
実施例A~実施例Gは、水素化ケイ素官能性Mキャップシルセスキオキサン樹脂なしでは、許容できない表面粗さを硬化フィルムが呈することを明らかにする。
【0062】
実施例H~実施例Jは、ビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂とビニル官能性ジシロキサンとの組合せが35重量%未満である硬化性組成物が、15dN*m超の剛性を達成しない硬化フィルムをもたらすことを明らかにする。
【0063】
実施例Kは、15dN*m超の剛性を達成するために、1.9重量%超の水素化ケイ素官能性Mキャップシルセスキオキサン樹脂が必要であることを明らかにする。
【0064】
実施例L及び実施例1は、硬化フィルムが15dN*m超の剛性を達成するためには、15重量%超のビニル官能性Mキャップアリールシルセスキオキサン樹脂が必要であることを明らかにする。
【0065】
実施例M~実施例O及び実施例9~実施例11は、ビニル官能性ジシロキサン成分がない場合、硬化性組成物が60分未満の作業時間を有することを明らかにする。
【0066】
実施例P及び実施例12は、本発明が、露出した硬化フィルム表面上に光学的に平滑な表面を達成するために、アセチレンアルコールヒドロシリル化抑制剤を含んではならないことを明らかにする。
【0067】
実施例12~実施例16は、ポリマー骨格上にアルキルアリール又はジアリール置換基を有する直鎖アルケニル官能性ポリオルガノシロキサンを、別々に又は組成物中のブレンドとして使用し、所望のフィルム特性をもたらすことができることを明らかにする。
【0068】
実施例1~実施例16は「光学的に透明」である。「光学的透明度」とは、400ナノメートル(nm)での光に対して80%を超える透過率、及び400nmでの透過率を800nmでの透過率で割った(「%T(400/800)」)0.7を超える透過率を指す。400~800nmの波長範囲にわたり、ASTM D1003の方法によって紫外/可視(UV/Vis)デュアルビーム分光光度計(Perkin Elmer Lambda 950)で透過率を測定する。反応性組成物前駆体を手で混合し、次いでスピードミキサー中で毎分3500回転にて30秒間にわたって混合し、80℃で12時間硬化させることによって、透過率を測定するための試料を調製する。ガラススライド間で試料を硬化させて、厚さ10ミリメートルの光学的に平滑な表面を有する試料を生成する。
【0069】
実施例について、実施例4は、400nmでのパーセント透過率(%T)が85.1であり、%T(400/800)が0.95である;実施例8は、400nmでのパーセント透過率(%T)が86.7であり、%T(400/800)が0.95である;実施例10は、400nmでのパーセント透過率(%T)が87.9であり、%T(400/800)が0.98である;実施例13は、400nmでのパーセント透過率(%T)が88.0であり、%T(400/800)が0.98である;実施例14は、400nmでのパーセント透過率(%T)が88.5であり、%T(400/800)が0.98である;実施例15は、400nmでのパーセント透過率(%T)が89.0であり、%T(400/800)が0.98である;並びに、実施例16は、400nmでのパーセント透過率(%T)が88.0であり、%T(400/800)が0.99である。
【0070】
【表2】
データなし-特性評価することができず、フィルムを作製することができたよりも前にあまりにも速く硬化した。
【0071】
【国際調査報告】