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特表2024-535197即時に水素を製造する水素燃料動力システム及び船舶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】即時に水素を製造する水素燃料動力システム及び船舶
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/06 20060101AFI20240920BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20240920BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240920BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C01B3/06
C01B3/56 Z
F02M21/02 G
F23K5/00 302
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513285
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 CN2022086420
(87)【国際公開番号】W WO2023040250
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111083047.5
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522228469
【氏名又は名称】江南造船(集団)有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼道志
(72)【発明者】
【氏名】周▲金▼元
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼双燕
(72)【発明者】
【氏名】秦斌
【テーマコード(参考)】
3K068
4G140
【Fターム(参考)】
3K068AA05
3K068AB12
3K068AB14
3K068AB15
3K068CA01
3K068DA00
4G140FA02
4G140FB06
4G140FC01
4G140FC02
4G140FD01
4G140FE01
(57)【要約】
本発明は、水素燃料動力の技術分野における即時に水素を製造する水素燃料動力システム及び船舶を開示する。当該システム及び船舶は、パイプラインを通じて順に接続される原料貯蔵ユニット、水素ガス生成ユニット、水素ガス処理ユニット及び水素エネルギー変換ユニットを含む。原料貯蔵ユニットは、水素製造原料を貯蔵するために用いられる。水素ガス生成ユニットは、進入した水素製造原料に化学反応を生じさせて水素ガスを生成するために用いられる。水素ガス処理ユニットは、進入した水素ガスを精製処理するために用いられる。水素エネルギー変換ユニットは、水素ガスの化学エネルギーを、電気エネルギー、力学的エネルギー又は熱エネルギーに変換するために用いられる。本発明では、化学反応による水素製造方式を用い、固体原料と液体原料を別々に貯蔵することで、水素エネルギーの即時生成・即時利用を実現し、水素エネルギーの貯蔵を減少させる。これにより、船舶用水素エネルギーの貯蔵における各種問題が解決されるとともに、構造がシンプルで、消費電力が小さく、補給が容易であるとの利点も有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプライン(50)を通じて順に接続される原料貯蔵ユニット(10)、水素ガス生成ユニット(20)、水素ガス処理ユニット(30)及び水素エネルギー変換ユニット(40)を含み、
前記原料貯蔵ユニット(10)は、水素製造原料(11)を貯蔵するために用いられ、
前記水素ガス生成ユニット(20)は、進入した水素製造原料(11)に化学反応を生じさせて水素ガスを生成するために用いられ、
前記水素ガス処理ユニット(30)は、進入した水素ガスを精製処理するために用いられ、
前記水素エネルギー変換ユニット(40)は、水素ガスの化学エネルギーを、電気エネルギー、力学的エネルギー又は熱エネルギーに変換するために用いられることを特徴とする即時に水素を製造する水素燃料動力システム。
【請求項2】
前記原料貯蔵ユニット(10)は、水素製造原料(11)の湿度を検出するための湿度検出装置(13)と、水素製造原料(11)の温度を検出するための第1温度検出装置(12)を含み、前記原料貯蔵ユニット(10)は、水素製造原料(11)の温度及び湿度を改善するための給気口(14)及び排気口(15)を有することを特徴とする請求項1に記載の即時に水素を製造する水素燃料動力システム。
【請求項3】
前記水素ガス生成ユニット(20)は水素ガス生成装置(21)を含み、前記水素ガス生成装置(21)は、ハウジング構造、天板構造(2103)及び液体原料供給管路(2116)を含み、前記ハウジング構造は、固液反応に用いられる反応チャンバ(2104)を有し、前記液体原料供給管路(2116)は、前記反応チャンバ(2104)と連通し、前記反応チャンバ(2104)内に前記水素製造原料(11)と化学反応を生じる液体原料を搬送するために用いられ、
前記天板構造(2103)はハウジング構造の天井部に設けられ、前記天板構造(2103)は原料補給チャンバ(2105)及びガス収集チャンバ(2106)を有し、前記原料補給チャンバ(2105)と前記反応チャンバ(2104)の間には、前記原料補給チャンバ(2105)内の前記水素製造原料(11)を反応チャンバ(2104)に進入させるための第2原料補給扉(2109)が設けられており、前記ガス収集チャンバ(2106)と前記反応チャンバ(2104)の間には、水素ガスを前処理するための多孔質バッフル(2110)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の即時に水素を製造する水素燃料動力システム。
【請求項4】
前記天板構造(2103)は箱型構造となっており、前記箱型構造の内部空間には分割プレートが設けられており、前記分割プレートが箱型構造の内部空間を前記原料補給チャンバ(2105)と前記ガス収集チャンバ(2106)に分割しており、前記天板構造(2103)の天井部には、前記水素製造原料(11)を前記原料補給チャンバ(2105)に進入させるための第1原料補給扉(2108)が設けられており、前記第1原料補給扉(2108)と前記第2原料補給扉(2109)は、水素ガスの外部漏洩を防止するインターロック設計となっていることを特徴とする請求項3に記載の即時に水素を製造する水素燃料動力システム。
【請求項5】
前記ハウジング構造は外殻(2101)及び内殻(2102)を含み、前記内殻(2102)と前記外殻(2101)の間には、前記反応チャンバ(2104)を冷却するための冷却チャンバ(2107)が形成されることを特徴とする請求項3に記載の即時に水素を製造する水素燃料動力システム。
【請求項6】
前記水素ガス生成ユニット(20)は窒素ガス供給管路(24)を更に含み、前記窒素ガス供給管路(24)は、第1窒素ガス供給枝管(241)及び第2窒素ガス供給枝管(242)の一端に接続され、前記第2窒素ガス供給枝管(242)の他端は前記原料補給チャンバ(2105)と連通し、前記第1窒素ガス供給枝管(241)の他端は前記ガス収集チャンバ(2106)と連通し、且つ、前記第1窒素ガス供給枝管(241)には遮断弁(2411)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の即時に水素を製造する水素燃料動力システム。
【請求項7】
前記水素ガス生成ユニット(20)は廃液処理装置(22)及び廃液オーバーフロー管(23)を更に含み、前記廃液オーバーフロー管(23)は、前記水素ガス生成装置(21)と前記廃液処理装置(22)の間に設けられて、前記水素ガス生成装置(21)内の廃液を前記廃液処理装置(22)にオーバーフローさせるために用いられることを特徴とする請求項3に記載の即時に水素を製造する水素燃料動力システム。
【請求項8】
前記液体原料供給管路(2116)のうちの前記反応チャンバ(2104)に位置する一端は反応液中に浸され、且つ、前記液体原料供給管路(2116)には液体原料噴射枝管(2117)が接続されており、前記液体原料噴射枝管(2117)には、液体原料を下方に向かって噴射するためのいくつかのノズルヘッド(2114)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の即時に水素を製造する水素燃料動力システム。
【請求項9】
前記水素ガス処理ユニット(30)は、前記パイプライン(50)を通じて順に連通する除塵器(31)、乾燥器(32)、精製器(33)、加圧装置(34)及びバッファタンク(35)を含むことを特徴とする請求項1に記載の即時に水素を製造する水素燃料動力システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の即時に水素を製造する水素燃料動力システムを含むことを特徴とする船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素燃料動力の技術分野に関し、具体的には、即時に水素を製造する水素燃料動力システム及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
2018年4月に、IMOは水上運輸業における温室効果ガスの排出削減に関する初期戦略を制定し、2008年と比較して、2050年までに水上運輸業における温室効果ガスの排出を少なくとも50%削減することを示した。これは、世界の水上運輸業にとって初となる温室効果ガスの排出削減に関する戦略でもあった。水素ガスは、現在、炭素を含まないクリーンエネルギーとして業界の関心を集め、積極的に開発されている新燃料の一つである。それに伴い、水素燃料動力船という概念も生まれており、いま業界で注目の話題となっている。
【0003】
目下のところ、水素ガスは、船上において、主に高圧気体状、低温液状、固体状の合金吸着、有機液体等の形式で燃料として貯蔵されている。しかし、上記のような水素ガスの貯蔵方式にはいくつかの問題が存在する。例えば、常圧で-253℃に全熱冷却して液体状で貯蔵する場合、船上には、超低温の液体水素貯蔵タンクと、そのために機能する超低温配管系、バルブ等を設置する必要があり、初期投資が莫大になるとの問題が存在する。また、例えば350bar以上の高圧気体状で貯蔵する場合には、船上に高圧の水素ガスタンクを設置する必要があるが、現在のところ、材料や圧力等の限界を理由として、タンクあたりの容積は約数立方メートルとなっている。且つ、単位質量あたりの水素貯蔵密度も低く、初期投資も嵩むため、エネルギー貯蔵量の小さな船舶にのみ適用されている。また、固体状の合金吸着技術には、未成熟であり、水素の充填・排出効率が低く、金属が粉末化しやすく、重金属中毒を引き起こすとの問題が存在する。また、有機液体技術には、難点が多く、操作条件が厳しく、且つ一定の毒性による危険があるとの問題が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に鑑みて、本発明の目的は、従来の船舶用水素エネルギーは貯蔵しにくいとの技術的課題を解決するために、即時に水素を製造する水素燃料動力システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明で採用する技術方案は以下の通りである。即ち、即時に水素を製造する水素燃料動力システムは、パイプラインを通じて順に接続される原料貯蔵ユニット、水素ガス生成ユニット、水素ガス処理ユニット及び水素エネルギー変換ユニットを含む。
【0006】
前記原料貯蔵ユニットは、水素製造原料を貯蔵するために用いられる。
【0007】
前記水素ガス生成ユニットは、進入した水素製造原料に化学反応を生じさせて水素ガスを生成するために用いられる。
【0008】
前記水素ガス処理ユニットは、進入した水素ガスを精製処理するために用いられる。
【0009】
前記水素エネルギー変換ユニットは、水素ガスの化学エネルギーを、電気エネルギー、力学的エネルギー又は熱エネルギーに変換するために用いられる。
【0010】
好ましくは、前記原料貯蔵ユニットは、水素製造原料の湿度を検出するための湿度検出装置と、水素製造原料の温度を検出するための第1温度検出装置を含む。前記原料貯蔵ユニットは、水素製造原料の温度及び湿度を改善するための給気口及び排気口を有する。
【0011】
好ましくは、前記水素ガス生成ユニットの数は1つ又は複数であり、複数の前記水素ガス生成ユニットは並列に設置される。また、前記水素ガス処理ユニットの数は1つ又は複数であり、複数の前記水素ガス処理ユニットは並列に設置される。
【0012】
好ましくは、前記水素ガス生成ユニットは水素ガス生成装置を含む。前記水素ガス生成装置は、ハウジング構造、天板構造及び液体原料供給管路を含む。前記ハウジング構造は、固液反応に用いられる反応チャンバを有する。前記液体原料供給管路は、前記反応チャンバと連通し、前記反応チャンバ内に前記水素製造原料と化学反応を生じる液体原料を搬送するために用いられる。
【0013】
好ましくは、前記天板構造はハウジング構造の天井部に設けられる。前記天板構造は原料補給チャンバ及びガス収集チャンバを有する。前記原料補給チャンバと前記反応チャンバの間には、前記原料補給チャンバ内の前記水素製造原料を前記反応チャンバに進入させるための第2原料補給扉が設けられている。前記ガス収集チャンバと前記反応チャンバの間には、水素ガスを前処理するための多孔質バッフルが設けられている。
【0014】
好ましくは、前記天板構造は箱型構造となっている。前記箱型構造の内部空間には分割プレートが設けられており、前記分割プレートが箱型構造の内部空間を前記原料補給チャンバと前記ガス収集チャンバに分割している。前記天板構造の天井部には、前記水素製造原料を前記原料補給チャンバに進入させるための第1原料補給扉が設けられている。前記第1原料補給扉と前記第2原料補給扉は、水素ガスの外部漏洩を防止するインターロック設計となっている。
【0015】
好ましくは、前記ハウジング構造は外殻及び内殻を含む。前記内殻と前記外殻の間には、前記反応チャンバを冷却するための冷却チャンバが形成される。
【0016】
好ましくは、前記液体原料供給管路のうちの反応チャンバに位置する一端は反応液中に浸される。また、前記液体原料供給管路には液体原料噴射枝管が接続されており、前記液体原料噴射枝管には、液体原料を下方に向かって噴射するためのいくつかのノズルヘッドが設けられている。
【0017】
好ましくは、前記水素ガス生成ユニットは窒素ガス供給管路を更に含む。前記窒素ガス供給管路は、第1窒素ガス供給枝管及び第2窒素ガス供給枝管の一端に接続される。前記第2窒素ガス供給枝管の他端は前記原料補給チャンバと連通し、前記第1窒素ガス供給枝管の他端は前記ガス収集チャンバと連通する。且つ、前記第1窒素ガス供給枝管には遮断弁が設けられている。
【0018】
好ましくは、前記反応チャンバ内には、液位検出装置、第2温度検出装置及び密度検出装置が設けられている。前記液位検出装置は、前記反応チャンバ内の反応液の液位情報を検出するために用いられる。前記第2温度検出装置は、前記反応チャンバ内の反応液の温度情報を検出するために用いられる。前記密度検出装置は、前記反応チャンバ内の反応液の密度情報を検出するために用いられる。前記ガス収集チャンバ内には圧力検出装置が設けられている。前記圧力検出装置は、前記ガス収集チャンバ内の水素ガスの圧力情報を検出するために用いられる。
【0019】
好ましくは、前記水素ガス生成ユニットは廃液処理装置及び廃液オーバーフロー管を更に含む。前記廃液オーバーフロー管は、前記水素ガス生成装置と前記廃液処理装置の間に設けられて、前記水素ガス生成装置内の廃液を前記廃液処理装置にオーバーフローさせるために用いられる。
【0020】
好ましくは、前記廃液処理装置は、廃液収集ボックス、廃液移送ポンプ及び廃液排出管を含む。前記廃液収集ボックスはオーバーフロー管を通じて前記水素ガス生成装置に接続され、前記廃液排出管の一端は廃液収集ボックスに接続される。且つ、前記廃液移送ポンプは廃液排出管に設けられる。
【0021】
好ましくは、前記水素ガス処理ユニットは、前記パイプラインを通じて順に連通する除塵器、乾燥器、精製器、加圧装置及びバッファタンクを含む。
【0022】
好ましくは、前記水素エネルギー変換ユニットは、水素燃料電池、水素ガス内燃機関、水素ガス外燃機関、ガスタービン、水素ガスインジェクタ及び水素燃料ボイラのいずれかである。
【0023】
本発明のもう一つの目的は、即時に水素を製造する水素燃料動力船舶を提供することである。前記船舶は、上記の即時に水素を製造する水素燃料動力システムを含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0025】
1.本発明では、順に直列に設置される原料貯蔵ユニット、水素ガス生成ユニット、水素ガス処理ユニット及び水素エネルギー変換ユニットによって水素エネルギーの即時生成・即時利用を実現することで、水素エネルギーの貯蔵を減少させて、船舶用水素エネルギーの貯蔵における各種問題を解決する。
【0026】
2.本発明は、化学反応による水素製造方式を用い、固体原料と液体原料を別々に貯蔵することで、水素エネルギーの即時生成・即時利用を実現する。また、これにより、構造がシンプルで、消費電力が小さく、補給が容易であるとの利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の概略構造図である。
図2図2は、水素ガス生成装置の概略構造図である。
図3図3は、廃液処理装置の概略構造図である。
図4図4は、水素ガス処理ユニットの概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を組み合わせて、本発明の具体的実施形態につき更に詳細に説明する。なお、これらの実施形態は本発明を説明するためのものにすぎず、本発明を制限するものではない。
【0029】
本発明の記載において、説明すべき点として、「中心」、「縦」、「横」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「天井」、「底」、「内」、「外」等の用語で示される方向又は位置関係は、図示に基づく方向又は位置関係であって、本発明の記載の便宜上及び記載の簡略化のためのものにすぎず、対象となる装置又は部材が特定の方向を有し、特定の方向で構成及び操作されねばならないことを明示又は暗示するものではない。よって、本発明を制限するものと理解すべきではない。また、「第1」、「第2」との用語は記載の便宜上のものにすぎず、相対的な重要性を明示又は暗示するものと解釈すべきではない。
【0030】
説明すべき点として、本発明の記載において、別途明確に規定及び限定している場合を除き、「取り付ける」、「連なる」、「接続する」との用語は広義に解釈すべきである。例えば、固定的な接続であってもよいし、取り外し可能な接続であってもよいし、一体的な接続であってもよい。また、機械的な接続であってもよいし、電気的な接続であってもよい。且つ、直接的な連なりであってもよいし、中間媒体を介した間接的な連なりであってもよいし、2つの部材内部の連通であってもよい。当業者であれば、具体的状況に応じて本発明における上記用語の具体的意味を解釈可能である。
【0031】
また、別途説明する場合を除き、本発明の記載において、「複数」とは2つ又は2つ以上を意味する。
【0032】
実施例:図1図4は、即時に水素を製造する水素燃料動力システムを示している。当該システムは、化学反応によって水素ガスの即時生成・即時利用を実現することで、船舶用水素エネルギーの貯蔵の問題を解決する。当該システムは、パイプライン50を通じて順に直列に接続される原料貯蔵ユニット10、水素ガス生成ユニット20、水素ガス処理ユニット30及び水素エネルギー変換ユニット40を含む。
【0033】
原料貯蔵ユニット10は、固体状の水素製造原料11を貯蔵するために用いられる。
【0034】
水素ガス生成ユニット20は、水素ガス生成ユニット20に進入した水素製造原料11と液体原料に化学反応を生じさせて水素ガスを生成するために用いられる。
【0035】
水素ガス処理ユニット30は、水素ガス処理ユニット30に進入した水素ガスを精製処理するために用いられる。
【0036】
水素エネルギー変換ユニット40は、水素ガスの化学エネルギーを、電気エネルギー、力学的エネルギー又は熱エネルギーに変換するために用いられる。
【0037】
本願では、順に直列に設置される原料貯蔵ユニット10、水素ガス生成ユニット20、水素ガス処理ユニット30及び水素エネルギー変換ユニット40によって水素エネルギーの即時生成・即時利用を実現することで、水素エネルギーの貯蔵を減少させる。これにより、船舶用水素エネルギーの貯蔵における各種問題が解決されるだけでなく、構造がシンプルで、消費電力が小さく、補給が容易であるとの利点も有する。
【0038】
具体的な実施例において、原料貯蔵ユニット10は、船上の密閉領域、開放領域又は半開放領域であってもよいし、容量要求を満たす独立した貯蔵容器であってもよく、原料貯蔵ユニット10内の温度、湿度等の環境条件が水素製造原料11の保存要求を満たしていればよい。また、水素製造原料11は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素マグネシウム又は水素化ホウ素アルミニウムと触媒との混合物である。
【0039】
好ましくは、図1に示すように、原料貯蔵ユニット10は、水素製造原料11の湿度を検出するための湿度検出装置13と、水素製造原料11の温度を検出するための第1温度検出装置12を含む。また、原料貯蔵ユニット10は、水素製造原料11の温度及び湿度を調節するための給気口14及び排気口15を有する。このように設けることで、まず、湿度検出装置13により水素製造原料11の湿度情報を取得し、第1温度検出装置12により水素製造原料11の温度情報を取得したあと、給気口14及び排気口15により原料貯蔵ユニット10内の水素製造原料11の湿度及び温度の調節を実現する。
【0040】
より好ましくは、船上で海水と即時に反応して水素ガスを製造するための水素製造原料11は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素マグネシウム又は水素化ホウ素アルミニウム等と触媒との混合物である。水素製造原料11の形態は、粉末状、線状、粒状、円盤状、ブロック状及びハニカム状等の反応を生じやすい各種外形とすることができる。
【0041】
具体的実施例において、図2及び図3に示すように、水素ガス生成ユニット20は水素ガス生成装置21を含む。水素ガス生成装置21は、ハウジング構造、天板構造2103及び液体原料供給管路2116を含む。ハウジング構造は、固液反応に用いられる反応チャンバ2104を有する。液体原料供給管路2116の一端は、反応チャンバ2104と連通し、反応チャンバ2104内に水素製造原料11と化学反応を生じる液体原料を搬送するために用いられる。好ましくは、液体原料は海水である。天板構造2103はハウジング構造の天井部に設けられる。天板構造2103は、独立した原料補給チャンバ2105及びガス収集チャンバ2106を有する。原料補給チャンバ2105と反応チャンバ2104の間には、原料補給チャンバ2105内の水素製造原料11を反応チャンバ2104に進入させるための第2原料補給扉2109が設けられている。また、ガス収集チャンバ2106と反応チャンバ2104の間には、水素ガスを前処理するための多孔質バッフル2110が設けられている。このように設けることで、化学反応による水素製造に関与する固体原料は第2原料補給扉2109を通じて反応チャンバ2104内に進入する。また、液体原料が、液体原料供給管路2116を通じて反応チャンバ2104内に進入し、固体原料と化学反応を生じて水素ガスを発生させる。
【0042】
好ましくは、天板構造2103は箱型構造となっている。箱型構造の内部空間には分割プレートが設けられており、当該分割プレートが箱型構造の内部空間を原料補給チャンバ2105とガス収集チャンバ2106に分割している。天板構造2103の天井部には、更に、水素製造原料11を原料補給チャンバ2105に進入させるための第1原料補給扉2108が設けられている。第1原料補給扉2108と第2原料補給扉2109には、水素ガスの外部漏洩を防止するインターロック設計を採用する。このようにして、並列となる原料補給チャンバ2105とガス収集チャンバ2106を天板構造2103内に設けることで、水素製造原料11の補給と水素ガスの収集を同時に実現可能となる。また、第1原料補給扉2108と第2原料補給扉2109とのインターロック設計によって、第1原料補給扉2108と第2原料補給扉2109は一方のみが開状態となり得るため、設備の運転過程において、水素ガス生成装置21内で発生した水素ガスが原料補給時に外部に漏洩しないように保証される。
【0043】
具体的な実施例において、図2に示すように、水素ガス生成ユニット20は窒素ガス供給管路24を更に含む。当該窒素ガス供給管路24は、水素ガス生成装置21に窒素ガスを搬送することで、窒素ガスにより水素ガス生成装置21を不活性化させるために用いられる。当該窒素ガス供給管路24は、第1窒素ガス供給枝管241及び第2窒素ガス供給枝管242の一端にそれぞれ接続される。第2窒素ガス供給枝管242の他端は、原料補給チャンバ2105と連通して原料補給チャンバ2105に窒素ガスを搬送するために用いられる。また、第1窒素ガス供給枝管241の他端はガス収集チャンバ2106と連通する。且つ、第1窒素ガス供給枝管241には、ガス収集チャンバ2106及び反応チャンバ2104に窒素ガスを搬送するための遮断弁2411が設けられている。このように設けることで、反応チャンバ2104内で化学反応による水素製造を行う際には、第1窒素ガス供給枝管241上の遮断弁2411は閉状態となる。一方、第2窒素ガス供給枝管242は開通状態となって、原料補給チャンバ2105に窒素ガスを連続的に搬送することで、設備運転時の連続原料補給の安全性を保証する。また、水素ガス生成装置21の運転過程で危険な状況が発生した場合には、遮断弁2411を開いて反応チャンバ2104内に窒素ガスを搬送可能とすることで、水素ガス生成装置21の不活性化を実現する。
【0044】
好ましくは、液体原料供給管路2116のうちの反応チャンバ2104に位置する一端は反応液中に浸される。このように設けることで、水素ガス生成装置21の運転過程で危険な状況が発生した場合には、遮断弁2411を開き、反応チャンバ2104内に窒素ガスを搬送して反応チャンバ2104内の圧力を向上させ、反応チャンバ2104内の反応液を水素ガス生成装置21から押し出すことで、速やかに化学反応を阻止することが可能となる。
【0045】
より好ましくは、液体原料供給管路2116には液体原料噴射枝管2117が接続されている。液体原料噴射枝管2117は、反応チャンバ2104の天井部に水平方向に沿って設けられる。且つ、液体原料噴射枝管2117には、液体原料を下方に向かって噴射するためのいくつかのノズルヘッド2114が線状に分布している。このようにして、下方に向かって噴射するノズルヘッド2114により液体原料を水素製造原料11に吹き付けることで、液体原料と固体原料との素早い混合を実現できるだけでなく、水素ガス生成における一次前処理も実現される。
【0046】
具体的な実施例において、図2に示すように、ハウジング構造は外殻2101及び内殻2102を含む。外殻2101が内殻2102の外部に配設されることで、内殻2102と外殻2101の間には冷却チャンバ2107が形成される。当該冷却チャンバ2107内には、反応チャンバ2104内の反応液を冷却するための冷却液が蓄えられている。このように設置するのは、化学的水素製造反応が発熱反応であり、水素ガスの生成過程で大量の熱が放出される結果、反応液の温度が上昇するためである。冷却チャンバ2107内に充填されている冷却液は、反応過程で発生した熱を効果的に除去することで反応液の温度を低下可能とする。これにより、水素製造における化学反応の安全且つ安定的な実施が保証される。
【0047】
具体的な実施例において、図2に示すように、反応チャンバ2104内には、液位検出装置2111、第2温度検出装置2112及び密度検出装置2115が設けられている。液位検出装置2111は、反応チャンバ2104内の反応液の液位情報を検出するために用いられる。第2温度検出装置2112は、反応チャンバ2104内の反応液の温度情報を検出するために用いられる。密度検出装置2115は、反応チャンバ2104内の反応液の密度情報を検出するために用いられる。ガス収集チャンバ2106内には圧力検出装置2113が設けられている。圧力検出装置2113は、ガス収集チャンバ2106内の水素ガスの圧力情報を検出するために用いられる。このように設けることで、液位検出装置2111、第2温度検出装置2112、圧力検出装置2113及び密度検出装置2115によって、水素ガス生成装置21の運転過程における液位、温度、圧力及び密度情報を取得可能となるため、設備の安全な運転を保証するのに都合がよい。
【0048】
具体的な実施例において、図1図2及び図3に示すように、水素ガス生成ユニット20は廃液処理装置22及び廃液オーバーフロー管23を更に含む。廃液オーバーフロー管23は、水素ガス生成装置21と廃液処理装置22の間に設けられて、水素ガス生成装置21内の廃液を廃液処理装置22にオーバーフローさせるために用いられる。このように設けることで、水素ガスの製造過程では、液体原料が液体原料供給管路2116とノズルヘッド2114を通じて連続的に絶えず反応チャンバ2104内に搬送されるため、反応液の液位は上昇し続けるが、液位が所定の値まで上昇した場合、余った反応液は設置されているオーバーフロー管23を通じて廃液処理装置22内にオーバーフロー可能となる。
【0049】
好ましくは、廃液処理装置22は、廃液収集ボックス2201、廃液移送ポンプ2202及び廃液排出管2203を含む。廃液収集ボックス2201は、オーバーフロー管23を通じて水素ガス生成装置21に接続されており、水素製造過程で発生した廃液を蓄えるために用いられる。廃液収集ボックス2201内には液位検出装置2205が設けられている。当該液位検出装置2205は、廃液収集ボックス2201内の廃液の液位情報を検出するために用いられる。廃液排出管2203は、一端が廃液収集ボックス2201に接続され、他端が舷の外側に設けられる。また、廃液移送ポンプ2202と一方向弁2204が廃液排出管2203に設けられて、廃液の海への排出を制御するために用いられる。
【0050】
より好ましくは、廃液排出管2203は、一端が廃液収集ボックス2201に接続され、他端が船舶の廃液室に接続される。廃液室は廃液を蓄えるために用いられる。これにより、船舶が港に到着したあとの陸上処理が容易となり、廃液による海洋汚染が減少する。
【0051】
具体的実施例において、図4に示すように、水素ガス処理ユニット30は、パイプライン50を通じて順に連通する除塵器31、乾燥器32、精製器33、加圧装置34及びバッファタンク35を含む。除塵器31は、水素ガスについて除塵処理を行うことで、水素ガス中の塵埃含有量を低下させるために用いられる。乾燥器32は、水素ガスについて乾燥処理を行うことで、付着した水分を除去するために用いられる。精製器33は、付着した窒素ガス等の異物を除去することで、水素ガスの純度が要求を満たすように保証するために用いられる。加圧装置34は、水素ガスを増圧させることで、水素ガスを所望の圧力まで加圧してバッファタンク35内に搬送するために用いられる。バッファタンク35は水素ガスの一時貯蔵に用いられる。
【0052】
好ましくは、除塵器31には、水槽式又は濾過式等の一般的に使用される除塵器を選択可能である。また、乾燥器32には、凍結式又は吸着式の製品を選択可能である。また、精製器33には、フィルム式又は分子篩式の製品を選択可能である。
【0053】
具体的実施例において、水素エネルギー変換ユニット40は、水素燃料電池、水素ガス内燃機関、水素ガス外燃機関、ガスタービン、水素ガスインジェクタ及び水素燃料ボイラのいずれかである。水素エネルギー変換ユニット40は、バッファタンク35から搬送されてきた水素ガスを船舶の前進に必要な力学的エネルギーに変換するために用いられる。
【0054】
具体的実施例において、水素ガス生成ユニット20及び水素ガス処理ユニット30の数に制限はなく、1つであってもよいし、複数であってもよい。水素ガス生成ユニット20及び/又は水素ガス処理ユニット30の数が複数の場合、複数の水素ガス生成ユニット20及び/又は水素ガス処理ユニット30は並列の接続関係を満たしていればよい。このようにして、水素ガス生成ユニット20及び水素ガス処理ユニット30の数を増加させれば、水素ガスの発生量を増大させて、船舶における水素ガスの大きな必要量を満たすことが可能となる。
【0055】
好ましくは、設備の配置面について、原料貯蔵ユニット10、水素ガス生成ユニット20、水素ガス処理ユニット30の配置位置に制限はなく、船上の配置しやすい任意の箇所に配置してもよいし、一箇所にまとめて配置してもよいし、複数の箇所に分散させて配置してもよい。水素エネルギー変換ユニット40は、主に、船舶の機器スペース又は推進ポッド内に配置される。
【0056】
より好ましくは、水素ガス生成ユニット20はコントローラを更に含む。当該コントローラは、バッファタンク35内の圧力センサに電気的に接続される。また、当該コントローラは、液体原料供給管路2116の制御弁にも電気的に接続される。これにより、バッファタンク35内の圧力情報を利用して、水素ガス生成装置21内に進入させる液体原料の量を制御することで、化学反応の速度を制御する。
【0057】
更に好ましくは、水素ガス生成装置21の冷却液が除去した反応廃熱は、船上の廃熱利用システムと連携可能なため、水素ガスの利用効率が更に向上する。
即時に水素を製造する水素燃料動力船舶は、上述した即時に水素を製造する水素燃料動力システムを含む。
【0058】
本発明における水素ガスの製造過程は次の通りである。
【0059】
水素ガス生成装置21は、停止時には、窒素ガス供給管路24から搬送される窒素ガスにより内部の領域が不活性化されることで、設備運転初期の安全性が保証される。また、船上で水素ガスを消費してエネルギーを発生させる必要がある場合には、原料貯蔵ユニット10内に貯蔵されている水素製造原料11が水素ガス生成ユニット20に搬送される。そして、まず、水素ガス生成装置21の第1原料補給扉2108が開放されて水素製造原料11が原料補給チャンバ2105に投入される。次に、第1原料補給扉2108が閉止されて、第2原料補給扉2109が開放され、水素製造原料11が反応チャンバ2104に投入される。また、液体原料供給管路2116を通じて海水が反応チャンバ2104内に移送され、海水が水素製造原料11と化学反応を生じることで、反応液が形成されるとともに水素ガスが生成される。水素ガスは、ノズルヘッド2114から吐出される海水により一次前処理が施されたあと、気液分離のための多孔質バッフル2110を通過してガス収集チャンバ2106内に進入する。多孔質バッフル2110は、水素ガスについて二次前処理(即ち、液滴分離)を行うことができる。二次前処理を施された水素ガスは、パイプライン50及び一方向弁501を通過して水素ガス処理ユニット30に搬送される。
【0060】
以上の記載は本発明の好ましい実施形態にすぎない。指摘すべき点として、当業者であれば、本発明の技術原理を逸脱しないことを前提に、いくらかの改良及び置換を行うことも可能であり、これらの改良及び置換も本発明の保護の範囲と見なすべきである。
【符号の説明】
【0061】
10 原料貯蔵ユニット
11 水素製造原料
12 第1温度検出装置
13 湿度検出装置
14 給気口
15 排気口
20 水素ガス生成ユニット
21 水素ガス生成装置
22 廃液処理装置
23 廃液オーバーフロー管
24 窒素ガス供給管路
241 第1窒素ガス供給枝管
242 第2窒素ガス供給枝管
2411 遮断弁
2101 外殻
2102 内殻
2103 天板構造
2104 反応チャンバ
2105 原料補給チャンバ
2106 ガス収集チャンバ
2107 冷却チャンバ
2108 第1原料補給扉
2109 第2原料補給扉
2110 多孔質バッフル
2111 液位検出装置
2112 第2温度検出装置
2113 圧力検出装置
2114 ノズルヘッド
2115 密度検出装置
2116 原料供給管路
2117 液体原料噴射枝管
2201 廃液収集ボックス
2202 廃液移送ポンプ
2203 廃液排出管
2204 一方向弁
2205 液位検出装置
30 水素ガス処理ユニット
31 除塵器
32 乾燥器
33 精製器
34 加圧装置
35 バッファタンク
40 水素エネルギー変換ユニット
50 パイプライン
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】