(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】容器詰食品、容器詰食品の製造方法、容器詰食品の製造における脂溶性ビタミンの使用及び経口組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 13/30 20160101AFI20240920BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240920BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20240920BHJP
A23L 33/155 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
A23L13/30
A23L33/10
A23L33/15
A23L33/155
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514739
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2022035383
(87)【国際公開番号】W WO2023048234
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】10202110628R
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】エリック キアン-シウン シム
(72)【発明者】
【氏名】シャージャン リン
(72)【発明者】
【氏名】中尾 嘉宏
【テーマコード(参考)】
4B018
4B042
【Fターム(参考)】
4B018LE05
4B018MD23
4B018MD24
4B018MD26
4B018MD69
4B018ME02
4B042AC01
4B042AD34
4B042AD39
4B042AE08
4B042AG07
4B042AH01
4B042AH03
4B042AK02
(57)【要約】
本発明は、トリ肉及び/又はトリ骨を抽出することにより得られるチキンエキスより生じる好ましくない臭い(例えば、魚臭)が抑制された、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品、及び、該容器詰食品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、チキンエキスを含む経口組成物が容器詰めされた容器詰食品であって、経口組成物は、チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含み、容器内のヘッドスペース中の臭気成分の濃度が100ppm以下であり、上記臭気成分の濃度は、トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオールの総濃度である容器詰食品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チキンエキスを含む経口組成物が容器詰めされた容器詰食品であって、
経口組成物は、チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含み、
容器内のヘッドスペース中の臭気成分の濃度が100ppm以下であり、
前記臭気成分の濃度は、トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオールの総濃度である容器詰食品。
【請求項2】
脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の容器詰食品。
【請求項3】
下記(A)及び/又は(B)を満たす、請求項2に記載の容器詰食品。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、経口組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上である
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、経口組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上である
【請求項4】
ビタミンA又はその類縁体は、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項2又は3に記載の容器詰食品。
【請求項5】
ビタミンD又はその類縁体は、エルゴカルシフェロール及び/又はコレカルシフェロールである請求項2又は3に記載の容器詰食品。
【請求項6】
ビタミンE又はその類縁体は、トコフェロールである請求項2又は3に記載の容器詰食品。
【請求項7】
ビタミンK又はその類縁体は、フィロキノン及び/又はメナキノンである請求項2又は3に記載の容器詰食品。
【請求項8】
チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造方法であって、
チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含む原料組成物を含む容器を加熱し、
原料組成物が脂溶性ビタミンを含むことにより、前記加熱でのチキンエキスの加熱により生じる臭いを抑制する容器詰食品の製造方法。
【請求項9】
チキンエキスの加熱により生じる臭いは、トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオールからなる群から選択される少なくとも1種の臭気成分に由来する臭いである請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
下記(A)及び/又は(B)を満たす、請求項10に記載の製造方法。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、原料組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上である
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、原料組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上である
【請求項12】
ビタミンA又はその類縁体は、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
ビタミンD又はその類縁体は、エルゴカルシフェロール及び/又はコレカルシフェロールである請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
ビタミンE又はその類縁体は、トコフェロールである請求項10に記載の製造方法。
【請求項15】
ビタミンK又はその類縁体は、フィロキノン及び/又はメナキノンである請求項10に記載の製造方法。
【請求項16】
チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造における脂溶性ビタミンの使用であって、チキンエキスの加熱により生じる臭いを抑制するための脂溶性ビタミンの使用。
【請求項17】
チキンエキスの加熱により生じる臭いは、トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオールからなる群から選択される少なくとも1種の臭気成分に由来する臭いである請求項16に記載の使用。
【請求項18】
脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項16又は17に記載の使用。
【請求項19】
下記(A)及び/又は(B)を満たす、請求項18に記載の使用。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、経口組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上となるようにビタミンA及び/又はその類縁体を使用する
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、経口組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上となるようにビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を使用する
【請求項20】
ビタミンA又はその類縁体は、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項18に記載の使用。
【請求項21】
ビタミンD又はその類縁体は、エルゴカルシフェロール及び/又はコレカルシフェロールである請求項18に記載の使用。
【請求項22】
ビタミンE又はその類縁体は、トコフェロールである請求項18に記載の使用。
【請求項23】
ビタミンK又はその類縁体は、フィロキノン及び/又はメナキノンである請求項18に記載の使用。
【請求項24】
チキンエキスを含む経口組成物であって、
チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含み、
チキンエキスは、ヒスチジン、カルノシン及びアンセリンを含み、
経口組成物は、ヒスチジンを0.00001~10重量%、カルノシンを0.00001~3重量%、アンセリンを0.00005~5重量%含有し、
脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種であり、下記の(A)及び/又は(B)を満たす、経口組成物。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、経口組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上である
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、経口組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上である
【請求項25】
チキンエキスを含む経口組成物であって、
チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含み、
チキンエキスは、シクロフェニルアラニルフェニルアラニンを含有し、
脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種であり、
下記の(A)及び/又は(B)を満たす、経口組成物。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、経口組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上である
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、経口組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上である
【請求項26】
ビタミンA又はその類縁体は、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項24又は25に記載の経口組成物。
【請求項27】
ビタミンD又はその類縁体は、エルゴカルシフェロール及び/又はコレカルシフェロールである請求項24又は25に記載の経口組成物。
【請求項28】
ビタミンE又はその類縁体は、トコフェロールである請求項24又は25に記載の経口組成物。
【請求項29】
ビタミンK又はその類縁体は、フィロキノン及び/又はメナキノンである請求項24又は25に記載の経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品に関する。本発明はまた、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造方法に関する。本発明はまた、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造における脂溶性ビタミンの使用に関する。本発明はまた、チキンエキスを含む経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
チキンエキスは、鶏肉が有する「滋養強壮」の本体とされ、例えば、東南アジアでは、食品・食材の範ちゅうを超えたいわゆる「伝承薬」としても用いられている。
チキンエキスに対する消費者の嗜好は高まっており、旨味等のチキンエキスの風味を一層強く感じるチキンエキスの開発が望まれる。また、チキンエキスは、トリ肉、トリ骨、トリ足、及び/又はトリ皮から熱水抽出される成分であるが、例えば、レトルト条件又は滅菌条件下での長時間の高温高圧加熱によって臭み(例えば、魚臭)が発生することから、チキンエキスから生じる臭みを低減する技術が望まれている。
【0003】
非特許文献1には、トリ肉のフレーバーは熱的に誘導され、メイラード反応、脂質の熱分解、及びこれらの反応の相互作用が、加熱後の鶏肉から生じる臭気成分の生成に関与していることが開示されている。そして、トリ肉製品の風味劣化と、望ましくない「温められた風味」(warmed over flavor)の形成の主な理由は、トリ肉中にα-トコフェロールが不足しているためであると開示されている。本文献には、トリ肉の調理及び冷蔵後の再加熱時に生じるフレーバーに関する記載はあるものの、トリ肉及び/又はトリ骨から抽出された成分をさらに加熱した際に生じるフレーバーについては記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Dinesh D.Jayasena et al.“Flavour Chemistry of Chicken Meat:A Review”、Asian Australas.J.Anim.Sci.Vol.26,No.5:732-742、May 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鶏肉及び/又はトリ骨を抽出することにより得られるチキンエキスを含む製品は、一般的にチキンエキスを加熱処理したものである。そのため、チキンエキスを加熱した際に生じる好ましくない臭い(Odor、例えば、魚臭)を低減する技術が望まれている。また、チキンエキスを含む製品が、20℃以上の環境で貯蔵された際に生じる臭いを低減する技術が望まれている。
【0006】
本発明は、トリ肉及び/又はトリ骨を抽出することにより得られるチキンエキスより生じる好ましくない臭い(例えば、魚臭)が抑制された、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品、及び、該容器詰食品の製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造において、チキンエキスの加熱により生じる臭いを抑制することができる成分の使用を提供することを目的とする。本発明はまた、チキンエキスを含みながらも、チキンエキスより生じる臭気成分が低減された経口組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、チキンエキスの加熱により生じる好ましくない臭い(例えば、魚臭)について種々検討を進めた結果、チキンエキスに脂溶性ビタミンを含有させることにより、チキンエキスの加熱により生じる好ましくない臭いを抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の通りである。
〔1〕チキンエキスを含む経口組成物が容器詰めされた容器詰食品であって、経口組成物は、チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含み、容器内のヘッドスペース中の臭気成分の濃度が100ppm以下であり、上記臭気成分の濃度は、トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオールの総濃度である容器詰食品。
〔2〕脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種である上記〔1〕に記載の容器詰食品。
〔3〕下記(A)及び/又は(B)を満たす、上記〔2〕に記載の容器詰食品。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、経口組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上である;
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、経口組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上である。
〔4〕ビタミンA又はその類縁体は、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種である上記〔2〕又は〔3〕に記載の容器詰食品。
〔5〕ビタミンD又はその類縁体は、エルゴカルシフェロール及び/又はコレカルシフェロールである上記〔2〕~〔4〕のいずれかに記載の容器詰食品。
〔6〕ビタミンE又はその類縁体は、トコフェロールである上記〔2〕~〔5〕のいずれかに記載の容器詰食品。
〔7〕ビタミンK又はその類縁体は、フィロキノン及び/又はメナキノンである上記〔2〕~〔6〕のいずれかに記載の容器詰食品。
〔8〕チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造方法であって、チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含む原料組成物を含む容器を加熱し、原料組成物が脂溶性ビタミンを含むことにより、上記加熱におけるチキンエキスの加熱により生じる臭いを抑制する容器詰食品の製造方法。
〔9〕チキンエキスの加熱により生じる臭いは、トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオールからなる群から選択される少なくとも1種の臭気成分に由来する臭いである上記〔8〕に記載の製造方法。
〔10〕脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種である上記〔8〕又は〔9〕に記載の製造方法。
〔11〕下記(A)及び/又は(B)を満たす、上記〔10〕に記載の製造方法。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、原料組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上である
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、原料組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上である
〔12〕ビタミンA又はその類縁体は、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種である上記〔10〕又は〔11〕に記載の製造方法。
〔13〕ビタミンD又はその類縁体は、エルゴカルシフェロール及び/又はコレカルシフェロールである上記〔10〕~〔12〕のいずれかに記載の製造方法。
〔14〕ビタミンE又はその類縁体は、トコフェロールである上記〔10〕~〔13〕のいずれかに記載の製造方法。
〔15〕ビタミンK又はその類縁体は、フィロキノン及び/又はメナキノンである上記〔10〕~〔14〕のいずれかに記載の製造方法。
〔16〕チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造において、チキンエキスの加熱により生じる臭いを抑制するための脂溶性ビタミンの使用。
〔17〕チキンエキスの加熱により生じる臭いは、トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオールからなる群から選択される少なくとも1種の臭気成分に由来する臭いである上記〔16〕に記載の使用。
〔18〕脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種である上記〔16〕又は〔17〕に記載の使用。
〔19〕下記(A)及び/又は(B)を満たす、上記〔18〕に記載の使用。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、経口組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上となるようにビタミンA及び/又はその類縁体を使用する
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、経口組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上となるようにビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を使用する
〔20〕ビタミンA又はその類縁体は、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種である上記〔18〕又は〔19〕に記載の使用。
〔21〕ビタミンD又はその類縁体は、エルゴカルシフェロール及び/又はコレカルシフェロールである上記〔18〕~〔20〕のいずれかに記載の使用。
〔22〕ビタミンE又はその類縁体は、トコフェロールである上記〔18〕~〔21〕のいずれかに記載の使用。
〔23〕ビタミンK又はその類縁体は、フィロキノン及び/又はメナキノンである上記〔18〕~〔22〕のいずれかに記載の使用。
〔24〕チキンエキスを含む経口組成物であって、チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含み、チキンエキスは、ヒスチジン、カルノシン、アンセリンを含み、経口組成物は、ヒスチジンを0.00001~10重量%、カルノシンを0.00001~3重量%、アンセリンを0.00005~5重量%含有し、脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種であり、下記の(A)及び/又は(B)を満たす、経口組成物。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、経口組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上である
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、経口組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上である
〔25〕ビタミンA又はその類縁体は、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種である上記〔24〕に記載の経口組成物。
〔26〕ビタミンD又はその類縁体は、エルゴカルシフェロール及び/又はコレカルシフェロールである上記〔24〕又は〔25〕に記載の経口組成物。
〔27〕ビタミンE又はその類縁体は、トコフェロールである上記〔24〕~〔26〕のいずれかに記載の経口組成物。
〔28〕ビタミンK又はその類縁体は、フィロキノン及び/又はメナキノンである上記〔24〕~〔27〕のいずれかに記載の経口組成物。
〔29〕チキンエキスを含む経口組成物であって、チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含み、チキンエキスは、シクロフェニルアラニルフェニルアラニン〔Cyclo(Phe-Phe)〕を含有し、脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種であり、下記の(A)及び/又は(B)を満たす、経口組成物。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、経口組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上である
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、経口組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上である
〔30〕ビタミンA又はその類縁体は、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種である上記〔29〕に記載の経口組成物。
〔31〕ビタミンD又はその類縁体は、エルゴカルシフェロール及び/又はコレカルシフェロールである上記〔29〕又は〔30〕に記載の経口組成物。
〔32〕ビタミンE又はその類縁体は、トコフェロールである上記〔29〕~〔31〕のいずれかに記載の経口組成物。
〔33〕ビタミンK又はその類縁体は、フィロキノン及び/又はメナキノンである上記〔29〕~〔32〕のいずれかに記載の経口組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トリ肉及び/又はトリ骨を抽出することにより得られるチキンエキスより生じる好ましくない臭い(Odor)(例えば、魚臭)が抑制された、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品、及び、該容器詰食品の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造において、チキンエキスの加熱により生じる臭い(Odor)を抑制することができる成分の使用を提供することができる。また、本発明によれば、チキンエキスを含みながらも、チキンエキスより生じる臭気成分が低減された経口組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1に係る液状経口組成物に対する臭いの評価と、比較例1に係る液状経口組成物に対する臭いの評価とを視覚的に比較した図である。
【
図2】
図2は、実施例2に係る液状経口組成物に対する臭いの評価と、比較例1に係る液状経口組成物に対する臭いの評価とを視覚的に比較した図である。
【
図3】
図3は、実施例3に係る液状経口組成物に対する臭いの評価と、比較例1に係る液状経口組成物に対する臭いの評価とを視覚的に比較した図である。
【
図4】
図4は、比較例2に係るチキンエキスから生じるトリメチルアミンの発生量(100%)に対する、実施例4~21に係る脂溶性ビタミンを含むチキンエキスから生じるトリメチルアミンの発生量の割合を示すグラフである。
【
図5】
図5は、比較例2に係るチキンエキスから生じるブタンジオンの発生量(100%)に対する、実施例4~21に係る脂溶性ビタミンを含むチキンエキスから生じるブタンジオンの発生量の割合を示すグラフである。
【
図6】
図6は、比較例2に係るチキンエキスから生じる3-メチルブタン酸の発生量(100%)に対する、実施例4~18に係る脂溶性ビタミンを含むチキンエキスから生じる3-メチルブタン酸の発生量の割合を示すグラフである。
【
図7】
図7は、比較例2に係るチキンエキスから生じる2-メチル-3-フランチオールの発生量(100%)に対する、実施例4~21に係る脂溶性ビタミンを含むチキンエキスから生じる2-メチル-3-フランチオールの発生量の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品であって、経口組成物がチキンエキスと脂溶性ビタミンとを含むことにより、チキンエキスより生じる好ましくない臭い(Odor)が抑制される。また、本発明は、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造方法であって、原料組成物を含む容器を加熱する工程を有し、原料組成物がチキンエキスと脂溶性ビタミンと含むことにより、上記加熱工程においてチキンエキスの加熱により生じる臭い(Odor)を抑制する容器詰食品の製造方法でもある。
【0012】
また、本発明は、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造方法において、チキンエキスの加熱により生じる臭い(Odor)を抑制するための脂溶性ビタミンの使用でもある。
【0013】
また、本発明は、チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含む経口組成物でもある。
【0014】
本明細書において、本発明の、容器詰食品、製造方法、使用及び経口組成物を、単に「本発明」と記載する場合があるが、この場合、本発明の、容器詰食品、製造方法、使用及び経口組成物に共通する説明を行う。
【0015】
本発明の一形態は、チキンエキスを含む経口組成物が容器詰めされた容器詰食品であって、経口組成物は、チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含み、容器内のヘッドスペース中の臭気成分の濃度が100ppm以下であり、前記臭気成分の濃度は、トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオールの総濃度である容器詰食品である。経口組成物がチキンエキスと脂溶性ビタミンとを含むことにより、チキンエキスより生じる好ましくない臭い(Odor)が抑制される。
【0016】
<チキンエキス>
本発明で用いられるチキンエキス(以下ではCEと記載することがある)としては、トリ肉を原料として用い、液体中で加熱することにより得られる抽出物等を用いることができる。チキンエキスは市販品であってもよい。原料に骨、軟骨、脚等が含まれていてもよいが、トリの頭部及び内蔵を含まないことが好ましい。本発明におけるチキンエキスは、トリ肉及び/又はトリ骨のエキスであることが好ましく、トリ肉及びトリ骨のエキス、又はトリ肉のエキスであることがより好ましい。
【0017】
本発明で用いられるチキンエキスを抽出により製造する場合、本分野で用いられている通常の方法により製造することができる。例えば、100℃以上、好ましくは125℃以上の液体を用いた常圧抽出及び/又は加圧抽出を行い、得られた抽出物を膜処理やろ過することにより、チキンエキスを製造することができる。具体的には、(1)トリ肉及び任意でトリ骨等を溶媒中にて加熱することにより、トリ肉に含有される水溶性タンパク質を除去する前処理工程、及び(2)上記前処理後に水溶性タンパク質を含有する溶媒を新しい溶媒に交換し、溶媒中でトリ肉を加熱する抽出工程により得られる抽出物が挙げられる。溶媒としては、水、エタノール、又はこれらの混合物等の液体を用いるのが好ましい。
チキンエキスは、上記のような方法で得られる抽出液、その希釈液、濃縮物又は乾燥粉末、及び、これらの精製物を含む。精製物としては、例えばチキンエキスの抽出液を限外ろ過や膜処理、分液操作による分画、又は樹脂等による分画処理に供して精製度を上げたものが用いられる。チキンエキスの精製度を上げた後、凍結乾燥や噴霧乾燥等によって粉末化しても良い。
【0018】
本発明で用いられるチキンエキスは、ヒスチジン、カルノシン、アンセリン又はこれらの塩を含むことが好ましい。カルノシンは、βアラニンとヒスチジンのジペプチドでβアラニル・ヒスチジンとなったものである。また、アンセリンは、ヒスチジン部分がメチル化されβアラニル・1メチルヒスチジンとなったものである。
本発明で用いられるチキンエキスにおいて、ヒスチジン、カルノシン及びアンセリンは、無機酸又は有機酸を含む塩又は無機塩基又は有機塩基を含む塩の形態で含有することができる。そのような酸又は塩基は、塩の用途に基づいて選択することができる。食品、飲料、及び医薬品への適用を考慮すると、以下の食用又は薬学的に許容される塩が好ましい。無機酸性塩の例には、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、及びp-トルエンスルホン酸塩が含まれる。有機酸性塩の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸との塩、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸との塩が挙げられる。無機塩基の例には、ナトリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウムの水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩と、アンモニアとが含まれる。有機塩基を有する塩の例には、メチルアミン、ジメチルアミン、及びトリエチルアミンの塩等のモノ、ジ、又はトリアルキルアミン塩、モノ、ジ、又はトリヒドロキシアルキルアミン塩、グアニジン塩、及びN-メチルグルコサミンの塩が含まれる。
【0019】
本発明で用いられるチキンエキスがヒスチジンを含む場合、ヒスチジンの含有量は、例えば、該チキンエキス中に0.01重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、また、10重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。また、チキンエキス中のヒスチジンの含有量は、一態様において、0.01~10重量%であることが好ましく、0.01~1重量%であることがより好ましく、0.1~1重量%であることがさらに好ましい。上記ヒスチジンの含有量は、ヒスチジンが塩の形態で含まれる場合には、ヒスチジン換算値を意味する。上記ヒスチジンの含有量は、ヒスチジン及びその塩の総含有量を意味する。
一態様において、チキンエキス固形分中のヒスチジンの含有量は、0.01~10重量%であることが好ましく、0.01~5重量%であることがより好ましく、0.1~3重量%であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明で用いられるチキンエキスがカルノシンを含む場合、カルノシンの含有量は、例えば、該チキンエキス中に0.001重量%以上であることが好ましく、0.01重量%以上であることがより好ましく、また、3重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以下であることがより好ましい。また、チキンエキス中のカルノシンの含有量は、一態様において、0.001~3重量%であることが好ましく、0.001~0.3重量%であることがより好ましく、0.01~0.3重量%であることがさらに好ましい。上記カルノシンの含有量は、カルノシンが塩の形態で含まれる場合には、カルノシン換算値で示される。上記カルノシンの含有量は、カルノシン及びその塩の総含有量を表す。
一態様において、チキンエキス固形分中のカルノシンの含有量は、0.001~10重量%であることが好ましく、0.001~0.5重量%であることがより好ましく、0.01~2重量%であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明に用いられるチキンエキスがアンセリンを含む場合、アンセリンの含有量は、例えば、該チキンエキス中に0.005重量%以上であることが好ましく、0.05重量%以上であることがより好ましく、また、5重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましい。一態様において、チキンエキス中のアンセリンの含有量は、0.005~5重量%であることが好ましく、0.005~0.5重量%であることがより好ましく、0.05~0.5重量%であることがさらに好ましい。上記アンセリンの含有量は、アンセリンが塩の形態で含まれる場合には、アンセリン換算値で示される。上記アンセリンの含有量は、アンセリン及びその塩の総含有量を表す。チキンエキス固形分中のアンセリンの含有量は、一態様において、0.005~10重量%であることが好ましく、0.005~6重量%であることがより好ましく、0.05~3重量%であることがさらに好ましい。
【0022】
ヒスチジン、カルノシン及びアンセリンは、例えばHPLCで定量することができる。
【0023】
一態様において、本発明における経口組成物中のチキンエキス(固形分換算)の含有量は、例えば、該組成物中に0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、また、99重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。一態様において、チキンエキス(固形分換算)の含有量は、固形分換算で、例えば、該組成物中に0.01~99重量%が好ましく、0.1~90重量%がより好ましく、0.5~90重量%がさらに好ましい。本明細書において、チキンエキス(固形分換算)の含有量には、ヒスチジン、カルノシン及びアンセリンが含まれる。
【0024】
本発明で用いられるチキンエキスは、シクロフェニルアラニルフェニルアラニン〔Cyclo(Phe-Phe)〕を含むことが好ましい。シクロフェニルアラニルフェニルアラニンは、アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチドの一種である。シクロフェニルアラニルフェニルアラニンは、遊離形態又は塩形態であってもよい。シクロフェニルアラニルフェニルアラニンの塩としては、例えば、ヒスチジン、カルノシン、及びアンセリンについて上述したものを含む。
【0025】
本発明で用いられるチキンエキスがシクロフェニルアラニルフェニルアラニンを含む場合、シクロフェニルアラニルフェニルアラニンの含有量は、例えば、該チキンエキス100g中に1μg以上であることが好ましく、60μg以上であることがより好ましく、75μg以上であることがさらに好ましい。言い換えると、シクロフェニルアラニルフェニルアラニンの含有量は、例えば、該チキンエキス中に0.1×10-5重量%以上であることが好ましく、6.0×10-5重量%以上であることがより好ましく、7.5×10-5重量%以上であることがさらに好ましい。また、チキンエキス中のシクロフェニルアラニルフェニルアラニンの含有量は、一態様において、0.1×10-5~0.01重量%であることが好ましく、6.0×10-5~0.01重量%であることがより好ましく、7.5×10-5~0.01重量%であることがさらに好ましい。なお、上記シクロフェニルアラニルフェニルアラニンの含有量は、シクロフェニルアラニルフェニルアラニンが塩の形態で含まれる場合には、シクロフェニルアラニルフェニルアラニン換算値を意味する。上記シクロフェニルアラニルフェニルアラニンの含有量は、シクロフェニルアラニルフェニルアラニン及びその塩の総含有量を意味する。
【0026】
本発明で用いられるチキンエキス中、又は、本発明の経口組成物中のシクロフェニルアラニルフェニルアラニンは、例えばLCMSや、HPLCを用いて定量することができる。
【0027】
本発明における経口組成物は、ヒスチジン、カルノシン、アンセリン及びシクロフェニルアラニルフェニルアラニンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明における経口組成物が、ヒスチジン、カルノシン及びアンセリンを含む場合、経口組成物におけるヒスチジンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00001~10重量%であることが好ましく、0.0001~10重量%であることがより好ましく、0.0001~1重量%であることがさらに好ましい。また、本発明における経口組成物のカルノシンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00001~3重量%であることが好ましく、0.0001~3重量%であることがより好ましく、0.0001~0.3重量%であることがさらに好ましい。また、本発明における経口組成物のアンセリンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00005~5重量%であることが好ましく、0.0005~5重量%であることがより好ましく、0.005~0.5重量%であることがさらに好ましい。一態様において、経口組成物が液体である場合、該経口組成物におけるヒスチジンの含有量は、0.0001~10mg/mLが好ましく、0.001~9mg/mLがより好ましく、0.01~5mg/mLであることがさらに好ましい。経口組成物が液体である場合、該経口組成物におけるカルノシンの含有量は、0.00001~3mg/mLであることが好ましく、0.0001~3mg/mLであることがより好ましく、0.0001~2mg/mLであることがさらに好ましい。経口組成物が液体である場合、該経口組成物におけるアンセリンの含有量は、0.0001~10mg/mLであることが好ましく、0.001~7mg/mLであることがより好ましく、0.01~5mg/mLであることがさらに好ましい。ヒスチジン、カルノシン、及びアンセリンが塩の形態の場合、ヒスチジンの含有量、カルノシンの含有量、及びアンセリンの含有量は、それぞれ、ヒスチジン換算、カルノシン換算、及びアンセリン換算を意味する。上記の経口組成物におけるヒスチジン、カルノシン、及びアンセリンの含有量は、ヒスチジン及びその塩の総含有量、カルノシン及びその塩の総含有量、アンセリン及びその塩の総含有量をそれぞれ意味する。
本発明における経口組成物が、シクロフェニルアラニルフェニルアラニンを含む場合、経口組成物におけるシクロフェニルアラニルフェニルアラニンの含有量は、例えば、該組成物中に0.1×10-5~0.01重量%であることが好ましく、6×10-5~0.01重量%であることがより好ましく、7.5×10-5~0.01重量%であることがさらに好ましい。
なお、上記の経口組成物におけるシクロフェニルアラニルフェニルアラニンの含有量は、シクロフェニルアラニルフェニルアラニンが塩の形態で含まれる場合には、シクロフェニルアラニルフェニルアラニン換算を意味する。上記の経口組成物におけるシクロフェニルアラニルフェニルアラニンの含有量は、シクロフェニルアラニルフェニルアラニン及びその塩の総含有量を意味する。
【0028】
<脂溶性ビタミン>
本発明に用いられる脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンK及びこれらの類縁体等が挙げられる。上記ビタミンの類縁体は、エステル等を含む。市販のものを使用することもできる。脂溶性ビタミンは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。脂溶性ビタミンは、好ましくは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0029】
ビタミンA又はその類縁体は、プロビタミンA又はその類縁体であることが好ましく、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0030】
ビタミンD又はその類縁体は、エルゴカルシフェロール及び/又はコレカルシフェロールあることが好ましく、コレカルシフェロールであることがより好ましい。
【0031】
ビタミンE又はその類縁体は、トコフェロールであることが好ましい。
上記トコフェロールとしては、αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール、δトコフェロール及びトコフェロールのエステル等が挙げられる。本発明に用いられる脂溶性ビタミンがトコフェロールである場合、トコフェロールは、αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール、δトコフェロール及びトコフェロールのエステルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、上記トコフェロールのエステルは特に限定されないが、トコフェリルアセテート、トコフェリルニコチネート及びトコフェリルリノレートエステルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0032】
ビタミンK又はその類縁体は、フィロキノン及び/又はメナキノンであることが好ましく、メナキノンであることがより好ましい。メナキノンは、メナキノン4であることが好ましい。
【0033】
本発明に用いられる脂溶性ビタミンは、ビタミンA及び/又はその類縁体、ビタミンD及び/又はその類縁体、ビタミンE及び/又はその類縁体、並びに、ビタミンK及び/又はその類縁体からなる群より選択される少なくとも2種であることが好ましい。脂溶性ビタミンとしてビタミンA及び/又はその類縁体、ビタミンD及び/又はその類縁体、ビタミンE及び/又はその類縁体、並びに、ビタミンK及び/又はその類縁体からなる群より選択される少なくとも2種を併用することで、チキンエキスのレトルト条件又は殺菌条件での加熱により生じる臭いをより包括的に抑制できるためである。ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK及びこれらの類縁体の好適な態様は上述の通りである。また、本発明に用いられる脂溶性ビタミンは、ビタミンA及び/又はその類縁体、並びに、ビタミンE及び/又はその類縁体であることがより好ましい。一態様において、脂溶性ビタミンは、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、レチノール、トコフェロール、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、及び、メナキノンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、βカロテン、トコフェロール、コレカルシフェロール、及び、メナキノンからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。一態様において、脂溶性ビタミンはβカロテン及び/又はトコフェロールであることが好ましい。
【0034】
本発明においては、経口組成物における脂溶性ビタミンの濃度は下記(A)及び/又は(B)を満たすことが好ましい。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、経口組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上である
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、経口組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上である。
また、経口組成物における脂溶性ビタミンの総濃度が500mg/L以下であることが好ましい。経口組成物がチキンエキスと脂溶性ビタミンとを含むことにより、チキンエキスにより生じる臭いを抑制することができるが、経口組成物中の脂溶性ビタミンの濃度が上記であることにより、より効果的にチキンエキスより生じる臭いを抑制することができるためである。
なお、経口組成物における脂溶性ビタミンの総濃度は、480mg/L以下であることがより好ましく、475mg/L以下であることがさらに好ましい。経口組成物における脂溶性ビタミンの総濃度は、1.4×10-5mg/L以上であることが好ましい。
本発明の製造方法においては、経口組成物中の脂溶性ビタミンの濃度が上記範囲となるように、原料組成物中の脂溶性ビタミンの濃度を調整することが好ましい。該製造方法は、経口組成物中の脂溶性ビタミンの濃度が上記範囲となるように、該原料組成物中の脂溶性ビタミン濃度を調整することを含んでもよい。
【0035】
また、本発明がチキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造方法である場合、原料組成物における脂溶性ビタミンの濃度が下記(A)及び/又は(B)を満たすことが好ましい。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、原料組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上である。
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、原料組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上である。
また、原料組成物における脂溶性ビタミンの総濃度が500mg/L以下であることが好ましい。チキンエキスを含む原料組成物中の脂溶性ビタミンの濃度が上記濃度であることにより、原料組成物を含む容器を加熱した場合に、原料組成物中のチキンエキスから生じる臭いをより効果的に抑制することができるためである。
本発明の製造方法は、原料組成物における脂溶性ビタミンの濃度が上記(A)及び/又は(B)を満たすように原料組成物に脂溶性ビタミンを添加する工程を有することが好ましい。
また、原料組成物における脂溶性ビタミンの総濃度は、480mg/L以下であることがより好ましく、475mg/L以下であることがさらに好ましい。原料組成物における脂溶性ビタミンの総濃度は、1.4×10-5mg/L以上であることが好ましい。
なお、本発明の製造方法は、原料組成物中の脂溶性ビタミンの濃度が上記範囲となるように、原料組成物中の脂溶性ビタミンの濃度を調整することが好ましく、原料組成物中の脂溶性ビタミンの濃度が上記範囲となるように、原料組成物中の脂溶性ビタミンの濃度を調整する工程を有していてもよい。
上記(A)において、脂溶性ビタミンは、ビタミンA又はその類縁体として、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、及び、レチノールからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、βカロテンを含むことがより好ましい。
上記(B)において、脂溶性ビタミンは、コレカルシフェロール、トコフェロール、フィロキノン、及び、メナキノンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、トコフェロール及び/又はメナキノンを含むことがより好ましく、トコフェロールを含むことがさらに好ましい。
【0036】
本発明で用いられる脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含む場合、経口組成物又は原料組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上であることが好ましく、15mg/L以上であることがより好ましく、30mg/L以上であることがさらに好ましく、50mg/L以上であることがよりさらに好ましい。また、本発明で用いられる脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含む場合、経口組成物又は原料組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が240mg/L以下であることが好ましく、150mg/L以下であることがより好ましい。
【0037】
本発明で用いられる脂溶性ビタミンがビタミンD及び/又はその類縁体を含む場合、経口組成物又は原料組成物におけるビタミンD及びその類縁体の総濃度が0.1mg/L以上であることが好ましく、0.15mg/L以上であることがより好ましい。また、本発明で用いられる脂溶性ビタミンがビタミンD及び/又はその類縁体を含む場合、経口組成物又は原料組成物におけるビタミンD及びその類縁体の総濃度が120mg/L以下であることが好ましく、100mg/L以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明で用いられる脂溶性ビタミンがビタミンE及び/又はその類縁体を含む場合、経口組成物又は原料組成物におけるビタミンE及びその類縁体の総濃度が0.1mg/L以上であることが好ましく、1mg/L以上であることがより好ましく、10mg/L以上であることがさらに好ましく、15mg/L以上であることがよりさらに好ましく、50mg/L以上であることが特に好ましい。また、本発明で用いられる脂溶性ビタミンがビタミンE及び/又はその類縁体を含む場合、経口組成物又は原料組成物におけるビタミンE及びその類縁体の総濃度が500mg/L以下であることが好ましく、360mg/L以下であることがより好ましく、160mg/L以下であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明で用いられる脂溶性ビタミンがビタミンK及び/又はその類縁体を含む場合、経口組成物又は原料組成物におけるビタミンK及びその類縁体の総濃度が0.1mg/L以上であることが好ましく、1mg/L以上であることがより好ましく、1.5mg/L以上であることがさらに好ましい。また、本発明で用いられる脂溶性ビタミンがビタミンK及び/又はその類縁体を含む場合、経口組成物又は原料組成物におけるビタミンK及びその類縁体の総濃度が120mg/L以下であることが好ましく、100mg/L以下であることがより好ましい。
【0040】
本発明で用いられる脂溶性ビタミンの経口組成物中又は原料組成物中の濃度は、例えばHPLCで定量することができる。脂溶性ビタミンのHPLCによる定量は、例えば、以下の方法により行われる。
【0041】
<ビタミンA及びビタミンA類縁体の定量>
チキンエキス中のビタミンA及びその類縁体の定量は、ISO規格EN12823-1:2014、EN12823-2:2000、又は、EN20633:2015に従ってHPLCを用いて行われる。
【0042】
<ビタミンD及びビタミンD類縁体の定量>
チキンエキス中のビタミンD及びその類縁体の定量は、ISO規格EN20636:2018又はAOAC公認方法2011.11(50.1.34)に従ってHPLCを用いて行われる。
【0043】
<ビタミンE及びビタミンE類縁体の定量>
チキンエキス中のビタミンE及びその類縁体の定量は、ISO規格EN12822:2014又はEN20633:2015に従ってHPLCを用いて行われる。
【0044】
<ビタミンK及びビタミンK類縁体の定量>
チキンエキス中のビタミンE及びその類縁体の定量は、ISO規格EN21446:2019又はAOAC公認方法999.15.に従ってHPLCを用いて行われる。
原料組成物に上記チキンエキスと上記脂溶性ビタミンとが含まれていればよく、混合条件や添加順等は特に問わない。
【0045】
<臭気成分>
本発明の容器詰食品において、容器内のヘッドスペース中の臭気成分の濃度は、100ppm以下であり、上記臭気成分の濃度は、トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオールの総濃度である。
【0046】
好ましくない臭い(例えば、魚臭)を構成する臭気成分には、上記トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸及び2-メチル-3-フランチオールの他の成分も含まれるが、本発明者らが鋭意検討したところ、脂溶性ビタミンを添加しない従来の製造方法で製造されたチキンエキスでは、上記4成分(トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸及び2-メチル-3-フランチオール)による臭気が主に課題となることが確認された。脂溶性ビタミンを添加しない従来の製造方法で製造された容器詰食品に含まれるチキンエキスでは、容器のヘッドスペース中に上記4つの臭気成分が定期的に検出された。また、チキンエキスの製造ロットの一例において、脂溶性ビタミンを含まないチキンエキスをレトルト条件で加熱(密封容器に封入し、121℃で8分間加熱)した際に、容器のヘッドスペース中のトリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸及び2-メチル-3-フランチオールの総濃度が115ppmであった。同じ製造ロットのチキンエキスに、トコフェロール(118mg/L)及びβカロテン(15mg/L)を添加し、同じレトルト条件で加熱した際の、ヘッドスペース中のトリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸及び2-メチル-3-フランチオールの総濃度は、100ppmを下回り、チキンエキスのレトルト条件での加熱により生じる臭いが低減されていた。本発明の容器詰食品、及び、該容器詰食品の製造方法においては、経口組成物及び原料組成物が1種以上の脂溶性ビタミンを含むため、チキンエキスより生じる臭いを低減することができる。特に、トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸及び2-メチル-3-フランチオールの生成を抑制することができ、容器のヘッドスペース中のこれらの総濃度を100ppm以下に低減することができる。
本発明が、チキンエキスを含む経口組成物が容器詰めされた容器詰食品、及び、該容器詰食品の製造方法である場合、容器詰食品の容器内のヘッドスペース中の臭気成分の濃度は、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがさらに好ましく、5ppm以下であることがよりさらに好ましい。ヘッドスペース中に臭気成分が存在しなくてもよい。
【0047】
上記臭気成分の濃度は、当技術分野において既知の任意の方法で測定することができ、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて測定することができる。ガスクロマトグラフィーを用いた上記臭気成分の分析条件としては、例えば、実施例に記載のガスクロマトグラフィーの分析条件を用いることができる。
【0048】
本発明のチキンエキスを含む経口組成物を含む容器詰食品は、チキンエキスと1種以上の脂溶性ビタミンとを含み、チキンエキスから生じる臭いが低減されたものであるが、特にチキンエキスの加熱により生じる臭いが低減されたものであることが好ましい。本発明の容器詰食品に含まれるチキンエキスの加熱には、該容器詰食品の製造工程での加熱として、例えば、レトルト条件での加熱、殺菌条件での加熱が挙げられ、また、該容器詰食品の製造後の加熱としては、例えば貯蔵期間中の貯蔵庫等の温度上昇(例えば、20℃以上)による加熱が挙げられる。また、密封容器入り食品とは、チキンエキス含有経口組成物を入れた密封容器に食品を20℃以上の環境下で保存することによって生じる臭気が低減されたものである。
【0049】
<容器詰食品の製造方法>
本発明の一態様であるチキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造方法は、原料組成物を含む容器を加熱する工程を有し、原料組成物がチキンエキスと脂溶性ビタミンとを含むことにより、上記加熱工程においてチキンエキスの加熱により生じる臭いを抑制する。上記チキンエキスの加熱により生じる臭いは、トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオールからなる群から選択される少なくとも1種の臭気成分に由来する臭いであることが好ましい。
上記原料組成物は、上述のチキンエキスと上述の脂溶性ビタミンとが含まれていればよく、混合条件や添加順等は特に問わない。
また、原料組成物中のチキンエキス及び脂溶性ビタミンの好適な態様は、経口組成物中のチキンエキス及び脂溶性ビタミンの好適な態様と同様である。原料組成物中の脂溶性ビタミンの好ましい濃度の範囲は上述の通りである。
【0050】
本発明の容器詰食品は、チキンエキスの殺菌条件、特にレトルト条件での加熱により生じる臭いが抑制されたものであることが好ましい。また、本発明の容器詰食品の製造方法は、チキンエキスの殺菌条件、特にレトルト条件での加熱により生じる臭いを抑制することが好ましい。本発明の容器詰食品、及び、その製造方法において、容器内のヘッドスペース中の臭気成分は、チキンエキスの殺菌条件、特にレトルト条件での加熱により生じる臭いであることが好ましい。
【0051】
<殺菌条件>
本発明の製造方法における加熱工程の加熱は、殺菌のために行われることが好ましい。
本発明の製造方法は、上述の通り、好ましくは、チキンエキスの殺菌条件、特にレトルト条件での加熱により生じる臭い(Odor)を抑制する、チキンエキスを含む経口組成物の製造方法又はチキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造方法である。また、本発明は、好ましくは、チキンエキスの殺菌条件、特にレトルト条件での加熱により生じる臭い(Odor)を抑制するための脂溶性ビタミンの使用でもある。また、本発明は、チキンエキスの殺菌条件、特にレトルト条件での加熱により生じる臭い(Odor)が抑制された経口組成物、又は、該経口組成物を含有する容器詰食品でもある。殺菌条件における圧力及び温度は特に限定されない。当技術分野において既知の任意の条件で行うことができる。具体的には、例えば、加熱は、400分以内(好ましくは6~37分)、50℃以上、好ましくは、100~130℃の温度条件で行われる。
レトルト条件での加熱は、当技術分野において既知の任意の条件で行うことができる。具体的には、例えば、113~120℃の温度条件で、6~37分間加熱することをいい、通常、加圧下または常圧下で行われる。レトルト条件における圧力は、例えば、0.1~0.3MPa(ゲージ圧)とすることができる。また、殺菌条件(オートクレーブ条件)における温度は特に限定されないが、当該技術分野において既知の任意の条件で行うことができる。具体的には、例えば、100~130℃で400分以内、又は、113~120℃以下の温度条件で、6~37分間加熱することをいう。
【0052】
本発明が、チキンエキスを含む経口組成物が容器詰めされた容器詰食品、及び、該容器詰食品の製造方法である場合、容器の形態は特に限定されない。本発明で用いられる容器は、内容物である経口組成物の商業的無菌性を維持するように設計された容器であればよく、例えば、ガラス又はプラスチックの瓶;ガラス又はプラスチックのボトル;アルミホイル又はプラスチックのレトルトポーチ;ボイルインバッグ;紙、プラスチック、アルミが入ったカートンボックス又はジュースの紙パック;蓋つきバケツ;及び密閉缶等の容器を用いることができる。本発明における容器詰食品の製造方法において、殺菌条件下で加熱を行う場合、用いられる容器は殺菌条件下において耐熱性を有することが好ましい。
本発明において、「容器詰食品」とは、「容器に密封された食品」を意味し得る。本発明の容器詰食品は、容器詰飲料であることが好ましい。
【0053】
<経口組成物>
一態様として、本発明は、チキンエキスを含む経口組成物であって、経口組成物はチキンエキスと脂溶性ビタミンとを含み、チキンエキスは、ヒスチジンと、カルノシンと、アンセリンとを含む。経口組成物は、ヒスチジンを0.00001~10重量%、カルノシンを0.00001~3重量%、アンセリンを0.00005~5重量%含有し、上記脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種であり、下記の(A)及び/又は(B)を満たす、経口組成物である。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、経口組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上である。
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、経口組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上である。
また、一態様として、本発明は、チキンエキスを含む経口組成物であって、チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含み、チキンエキスは、シクロフェニルアラニルフェニルアラニンを含有し、上記脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンAの類縁体、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種であり、下記の(A)及び/又は(B)を満たす、経口組成物である。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、経口組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上である。
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、経口組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上である。
本発明の経口組成物におけるチキンエキス、脂溶性ビタミンの好ましい形態は上述の通りである。本発明の経口組成物は、チキンエキスより生じる臭いが抑制されたものであることが好ましく、チキンエキスの加熱により生じる臭いが抑制されたものであることがより好ましく、チキンエキスのレトルト条件又は殺菌条件での加熱により生じる臭いが抑制されたものであることがさらに好ましい。また、本発明において、チキンエキスのより生じる臭い(Odor)は、経口組成物に脂溶性ビタミンを添加しない場合と比較して抑制されていればよい。
【0054】
本発明において、経口組成物及び原料組成物は、好ましくは、液状である。本発明の製造方法では、チキンエキスは、市販品や熱水等により抽出して製造したものをそのまま脂溶性ビタミンと混合することができるが、チキンエキスが濃縮物、乾燥粉末又はこれらの精製物の形態である場合、水、エタノール又はその混合物等の液体で希釈、溶解等してから脂溶性ビタミンと混合してもよい。
【0055】
本発明における経口組成物は、飲食品又は医薬品として用いることが好ましい。飲食品としては、機能性食品、保健機能食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等が挙げられる。飲食品の形態としては特に限定されず、固形状の食品であってもよいし、液状の飲料であってもよい。好ましくは飲料である。
上記の本発明の容器詰食品は、チキンエキスと脂溶性ビタミンとを含む液状の経口組成物(好ましくは飲料)が、容器詰された容器詰食品であることが好ましい。
医薬品の形態としては特に限定されず、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、ドライシロップ等の内用剤等が挙げられるが、これに限定されない。
【0056】
本発明における経口組成物は、医薬品又は飲食品への添加物として許容されている各種の希釈剤、酸味料、酸化防止剤、安定剤、保存料、香料、乳化剤、色素類、調味料、pH調整剤、栄養強化剤等が添加されていてもよい。
乳化剤は特に限定されず、例えば、Habo P90スクロースモノパルミテート、L90スクロースモノラウレート、ソルビトール溶液、プロピレングリコール、中鎖トリグリセリド、レシチン(シンガポール、Compass Foods Pte.Ltd.)、オレンジオイル、アラビアゴム、スクロースアセテートイソブチレート、乳酸、クエン酸(日本、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、Kelcogel(登録商標)ゲランガム(CP Kelco U.S.、Inc.)、及び、Kelcotrol(登録商標)キサンタンガム(CP Kelco U.S.、Inc.)等の乳化剤を用いることができる。
【0057】
本発明の経口組成物は、成分を混合することにより製造できる。該経口組成物は、また、原料組成物を加熱することにより製造できる。
【0058】
本発明における経口組成物は、治療的用途(医療用途)又は非治療的用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。非治療的とは、医療行為、すなわち人間の手術、治療又は診断を含まない概念である。
【0059】
本発明における経口組成物は、経口で摂取(経口投与)されるものである。本発明の経口組成物の投与量(摂取量ということもできる)は特に限定されない。
【0060】
本発明の組成物を摂取させる又は投与する対象(投与対象ということもできる)は、特に限定されない。好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
一態様において、本発明における投与対象として、中高年者が挙げられる。
【0061】
本発明の経口組成物は、食品用途、飲料用途及び健康食品用途からなる群から選択される少なくとも1種の用途に用いられることが好ましい。
【0062】
<チキンエキスにより生じる臭いを抑制するための脂溶性ビタミンの使用>
本発明は、チキンエキスにより生じる臭い(Odor)を抑制するための脂溶性ビタミンの使用を含む。
また、一態様として、本発明は、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造において、チキンエキスの加熱により生じる臭いを抑制するための脂溶性ビタミンの使用でもある。
また、一態様として、本発明は、チキンエキスの加熱により生じる臭い、又は、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の20℃以上での貯蔵により生じる臭いを抑制するための脂溶性ビタミンの使用でもある。
チキンエキスの加熱により生じる臭い、又は、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の20℃以上での貯蔵により生じる臭いは、トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオールからなる群から選択される少なくとも1種の臭気成分に由来する臭い(Odor)であることが好ましい。
本発明の使用における、経口組成物、チキンエキス、脂溶性ビタミン、これらの好適な態様は、上述の本発明の容器詰食品におけるチキンエキス、脂溶性ビタミン、これらの好適な態様と同様である。また、本発明の使用における経口組成物は、上述のチキンエキスと上述の脂溶性ビタミンとが含まれていればよく、混合条件や添加順等は特に問わない。
なお、本発明の使用において、脂溶性ビタミンの使用は下記(A)及び/又は(B)を満たすことが好ましい。
(A)脂溶性ビタミンがビタミンA及び/又はその類縁体を含み、経口組成物におけるビタミンA及びその類縁体の総濃度が10mg/L以上となるようにビタミンA及び/又はその類縁体を使用する
(B)脂溶性ビタミンがビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、経口組成物におけるビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体の総濃度が0.1mg/L以上となるようにビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDの類縁体、ビタミンEの類縁体及びビタミンKの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種を使用する
【0063】
<風味維持方法、風味維持剤>
本発明は、チキンエキスに脂溶性ビタミンを添加することにより、チキンエキスのレトルト条件又は殺菌条件での加熱により生じる臭いを抑制することができる、チキンエキスを含む経口組成物の製造方法、及びチキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造方法等に関するものである。チキンエキスに、脂溶性ビタミンを添加することにより、チキンエキスのレトルト条件又は殺菌条件での加熱により生じる臭いが抑制されるため、チキンエキスをレトルト条件又は殺菌条件での加熱下に置いた後も、該チキンエキスの本来の風味を維持することができる。よって、一態様において、本発明は、チキンエキスを含む経口組成物の風味維持方法であって、チキンエキスに脂溶性ビタミンを添加することにより、チキンエキスのレトルト条件又は殺菌条件での加熱により生じる臭い(Odor)を抑制し、チキンエキスの風味を維持する方法であってもよい。また、一態様において、本発明は、チキンエキスを含む経口組成物の風味維持剤であって、有効成分として脂溶性ビタミンを含む、チキンエキスのレトルト条件又は殺菌条件での加熱により生じる臭いを抑制する風味維持剤であってもよい。チキンエキスの風味としては、旨味及び/又は厚み等が挙げられる。上記チキンエキス、脂溶性ビタミンの好ましい態様及び配合量等は、上述した経口組成物におけるものと同じである。
本発明における風味を維持する方法及び風味維持剤において、チキンエキスの加熱は、殺菌条件下の加熱であってもよく、又は、20℃以上の環境で貯蔵されることによる加熱であってもよい。
本明細書において、本明細書において下限値と上限値によって表されている数値範囲、即ち「下限値~上限値」は、それら下限値及び上限値を含む。例えば、「1~2」により表される範囲は、1以上2以下を意味し、1及び2を含む。本明細書において、上限及び下限は、いずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0065】
実施例及び比較例で使用した原料を以下に示す。
【0066】
<チキンエキス>
チキンエキス(CE)は、市販品(BEC Brand’s Essence of Chicken(製造元:ブランズ・サントリー(タイ)株式会社(サントリー食品アジアパシフィックのライセンス会社)))を用いた。該チキンエキスは、熱水でトリ肉及びトリ骨を加熱して得られる抽出物である。該チキンエキスは、シクロフェニルアラニルフェニルアラニンを0.000079重量%含む。なお、CE1ml中のヒスチジンの含有量は4.5mg/mLであり、カルノシンの含有量は0.94mg/mLであり、アンセリンの含有量は1.9mg/mLであった。
【0067】
<ヒスチジン、カルノシン及びアンセリンの定量>
トリ肉エキス中のヒスチジン、カルノシン及びアンセリンの定量は、下記の条件でHPLCを用いて行った。
<HPLC分析条件>
装置:高速液体クロマトグラフシステム紫外検出器(Agilent社製Agilent1100シリーズ)
カラム:Zorbax300-SCX4.6mm ID×250mm(Agilent社製)
移動相:50mMリン酸二水素カリウム
流速:1.0mL/分
フローチャネル:チャネルA(50mMリン酸二水素カリウム)、チャネルB(アセトニトリル)、チャネルD(脱イオン水)
UV検出波長:210nm
サンプル注入量:10μL
【0068】
(LC-MS分析によるシクロフェニルアラニルフェニルアラニンの検出と定量)
チキンエキス中のシクロフェニルアラニルフェニルアラニンの検出と定量は、LC-MSを用いて行った。LC-MS分析は、Agilent社のHPLC1290シリーズと連結した、Duo Spray Turbo Vイオンソース及びガス発生器(Peak Scientific社)を備えるTripleTOF5600(AB Sciex社)で行った。質量分析計では、エレクトロスプレーイオン化と多重反応モニタリング(MRM)を、下記のパラメータを用いて、単位質量分解能で陽イオンモードにて使用する:衝突エネルギー拡散(CES):10;イオン放出遅延(IRD):67;イオン放出幅(IRW):25;イオン源ガス:40;カーテンガス(CUR):30;温度:500.0;イオンスプレー電圧フローティング(ISVF):5500。デクラスタリングの可能性(DP)及び衝突エネルギー(CE)等のMS化合物依存パラメータ設定は、それぞれ、100.0及び30.0で最適化した。Analyst1.8(AB Sciex社)を用いて、機器制御、データ取得、及びデータ処理を行った。
【0069】
シクロフェニルアラニルフェニルアラニンを、1mg/mLの濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、超純水で作用濃度(working concentration)まで希釈してから、UHPLC Guard Zorbax Eclipse Plus C18 2.1×5mm、1.8μm(Agilent)を備えるZorbax Eclipse Plus C18 RRHD 1.8μm 2.1×50mmカラム(Agilent)に注入し、溶離液A(超純水:ギ酸=100:0.1(v/v))及び溶離液B(アセトニトリル:ギ酸=100:0.1(v/v))を用いて、下記のリニアグラジエントで溶離した:0-0.5分:100%溶離液A;0.5-7.5分:100-65%溶離液A;7.5-10分:65-0%溶離液A;10-13分:0%溶離液A;13-13.1分:0-100%溶離液A。注入量は10μL、流量は300μL/分、定量イオン及び確認イオンとして保持時間7.6分で検出した。15.625、31.25、62.5、125ng/mLの標準シクロフェニルアラニルフェニルアラニンを質量分析計に注入し、検量線を作成した。チキンエキス粉末を用いて、希釈標準溶液として、チキンエキスを1000μg/mL溶液で再構築した。チキンエキス中のシクロフェニルアラニルフェニルアラニンの定量は、SCIEX OS 1.6.1.29803 Analytics(AB Sciex社)を用いて行った。
【0070】
<脂溶性ビタミン>
βカロテン:C4582(ドイツ、Merck KGaA)、及び、SoluClear カロテン CALBP0127(シンガポール、Compass Foods Pte.Ltd.)
カルシフェロール:コレカルシフェロール(VD Base No.36875)(日本、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
トコフェロール:天然ビタミンE W530066(ドイツ、Merk KGaA)、及び、SoluClear α-トコフェロール NAKAQ0078(シンガポール、Compass Foods Pte.Ltd.)
メナキノン:ビタミンK2 メナキノン4 V9378(ドイツ、Merk KGaA)
乳化剤:Habo P90スクロースモノパルミテート(シンガポール、Compass Foods Pte.Ltd.)
【0071】
<実施例1~3>
実施例1~3の経口用組成物(溶液)を下記表1に記載の量で調製した。具体的には、表1に記載の量のトコフェロール及び/又はβカロテンを乳化剤と共に、チキンエキス(CE)(68mL)に添加し、充分に撹拌して、均一な混合物を得た。これにより、実施例1~3における液状経口組成物を得た。実施例1~3で得られた各液状経口組成物を密閉ガラス容器に分注し、8分間121℃で殺菌した。表1に、実施例1~3の各液状経口組成物中のトコフェロール及び/又はβカロテン濃度を示す。実施例1の経口組成物におけるトコフェロール濃度は118mg/Lであった。実施例2の液状経口組成物におけるβカロテン濃度は15mg/Lであった。実施例3の液状経口組成物におけるトコフェロール濃度及びβカロテン濃度はそれぞれ118mg/L及び15mg/Lであった。
【0072】
<比較例1>
脂溶性ビタミン(トコフェロール及びβカロテン)を添加しなかった以外は、実施例3と同様にして、比較例1に係る液状経口組成物を調製した。
【0073】
【0074】
<臭いの評価>
専門のパネラー9名が、常温でガラスチューブに約20mL入った各実施例1~3及び比較例1に係る液状経口組成物の臭いを評価した。評価基準は次の通りである。
【0075】
<評価基準>
下記表2に、臭いの評価項目(ゆでた鶏の脂肪の臭い、バターの臭い、焦げた臭い、チーズのような臭い、魚の臭い、肉の臭い、カビ臭さ、ローストした臭い)を示す。各臭いの評価項目を評価するための評価基準サンプルを次の通り調製した。臭いの評価項目(sensory attribute)、各臭いの評価項目の定義、各臭いの評価項目の評価基準サンプルは、下記表2に記載の通りである。
評価基準サンプルは、標準液を下記表2の「評価基準サンプルと強度」に示す濃度まで水で希釈し、得られた希釈標準液を評価基準サンプルとして使用した。具体的には、例えば、香りの官能特性(魚の臭い)の1つは、魚に関連する香りとして定義され、魚市場の匂いに類似した匂いを有する。希釈した標準液に0.005mg/mLのトリメチルアミンが含まれている場合、魚の臭いのスコアは(1)である。希釈した標準溶液に0.025mg/mLのトリメチルアミンが含まれている場合、魚の臭いのスコアは(5)である。希釈した標準液に0.1mg/mLのトリメチルアミンが含まれている場合、魚の臭いのスコアは(9)である。これらのスコアを評価基準として使用した。
【0076】
【0077】
<専門のパネラー9名の選出とトレーニング>
シンガポール在住のパネリスト9名が評価に参加した。評価の際の各液状経口組成物(実施例1~3及び比較例1)間の相違点と類似点に関するグループディスカッションは、パネルリーダーにより取り纏められた。パネリストは、トコフェロールとβカロテンの影響を受けていると考えられているチキンエキスの香りの属性に焦点を当てて、液状経口組成物の臭い(官能特性)を説明する官能属性のリストを作成した。
パネリストは、実際の評価セッションの前の2時間のトレーニングセッション中に、用語の生成に加えて、属性の強度を評価するために9ポイントのスケールを使用することも学んだ。例えば、評価項目「魚の臭い」の評価基準は次のとおりである。希釈した標準液に0.005mg/mLのトリメチルアミンが含まれている場合、魚の臭いのスコアは(1)である。希釈した標準溶液に0.025mg/mLのトリメチルアミンが含まれている場合、魚の臭いのスコアは(5)である。希釈した標準液に0.1mg/mLのトリメチルアミンが含まれている場合、魚の臭いのスコアは(9)である。このトレーニングセッション中に、各サンプルを少なくとも2回テストした。
【0078】
<評価>
9名のパネリストは、実施例1~3及び比較例1に係る液状経口組成物の臭いの評価のために、提供された約20mLの液状経口組成物(常温)の臭いを嗅ぎ、上記表2に記載の評価項目を評価した。その後、各評価項目を、9段階で評価した。本試験は、ヘルシンキ宣言の精神に従って、人間の感覚分析を実施し、全てのパネリストからインフォームドコンセントを得ている。
【0079】
<評価結果の分析>
ノンパラメトリックウィルコクソン符号順位統計検定を使用して、コントロール(比較例1)と実施例1~3に係る液状経口組成物間のスコアの有意差を検定した。データ分析は、Stata統計ソフトウェアパッケージ(米国テキサス州StataCorp、2017)を使用して実行した。P値がp<0.05の場合、得られたデータは有意であるとみなした。
分析結果を下記表3に示す。得られた結果は、平均値±標準偏差値として示す。下記表3の結果は、トコフェロール及び/又はβカロテンがチキンエキス(CE)に添加された実施例1~3に係る液状経口組成物が評価項目のスコアを低下させたことを示している。
また、ノンパラメトリックウィルコクソン符号順位統計検定を使用して得たP値を下記表4に示す。
【0080】
【0081】
【0082】
なお、実施例1、2及び3に係る液状経口組成物に対する臭いの評価と、比較例1に係る液状経口組成物に対する臭いの評価とを視覚的に比較した図を、それぞれ、
図1、
図2及び
図3として示す。
【0083】
上記表3の結果から、チキンエキス(CE)に8mgのトコフェロールを添加した実施例1の液状経口組成物では、評価項目の「全体的な臭い」、「ゆでた鶏の脂肪の臭い」、「魚の臭い」、「バターの臭い」、「チーズのような臭い」、「カビ臭さ」が有意に低減したことが確認できる。同様の内容が
図1からも確認できる。また、チキンエキス(CE)に1mgのβカロテンが添加された実施例2の液状経口組成物においても、評価項目の「全体的な臭い」、「バターの臭い」、「チーズのような臭い」、「魚の臭い」、「ローストした臭い」が有意に減少していることが確認できる。同様の内容が
図2からも確認できる。さらに、表3及び
図3の結果からは、8mgのトコフェロール及び1mgのβカロテンがチキンエキス(CE)に添加された実施例3の液状経口組成物では、「全体的な臭い」、「ゆでた鶏の脂肪の臭い」、「バターの臭い」、「チーズのような臭い」、「魚の臭い」、「肉の臭い」、「カビ臭さ」、「ローストした臭い」を、比較例1の液状経口組成物と比較して有意に低減したことが確認できる。
すなわち、脂溶性ビタミンとして、トコフェロール及びβカロテンが添加された実施例3に係る液状経口組成物は、トコフェロール又はβカロテンが添加された実施例1又は2に係る液状経口組成物よりも、多くの評価項目において、有意に臭気を低減していた。
【0084】
<実施例4~21>
実施例4~21の経口用組成物(溶液)を下記表5に記載の量で調製した。具体的には、表5に記載の量のトコフェロール、及び/又は、βカロテン、コレカルシフェロール又はメナキノンを乳化剤と共に、チキンエキス(CE)(68mL)に添加し、充分に撹拌して、均一な混合物を得た。これにより、実施例4~21に係る液状経口組成物を得た。
【0085】
<比較例2>
トコフェロール、βカロテン、コレカルシフェロール、及びメナキノンを添加しなかった以外は、実施例4~21の方法と同様にして、比較例2に係る液状経口組成物を調製した。
【0086】
実施例4~21及び比較例2で得られた各液状経口組成物を密閉ガラス容器に分注し、8分間121℃で殺菌した。表5に、実施例4~21の各液状経口組成物中のトコフェロール、及び/又は、βカロテン又はコレカルシフェロール又はメナキノンの濃度を示す。
【0087】
【0088】
<ガスクロマトグラフィー質量分析法によるヘッドスペース分析>
チキンエキスを含む容器のヘッドスペース中の好ましくない臭い成分(トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオール)の濃度を、ヘッドスペース―固相マイクロ抽出ユニットと連結したAgilent社の7890A-5975C GC-MSで分析した。液状経口組成物10mLを、内部標準40μLをスパイクした20mL抽出フラスコに移した。1mLの2M硫酸で酸性化した後、フラスコを20分間80~100℃の水浴中で密閉した。ヘッドスペース―固相マイクロ抽出は、GCMSに注入する30分前に行った。GC/MSに好適なAgilent MassHunterソフトを用いて、データ取得、定性的データ分析、定量的データ分析、結果報告を行った。
<GCMS分析結果の分析>
表6に分析結果を示す。結果は、平均値±標準偏差値として示す。下記表6の結果によると、トコフェロール及び/又はβカロテン又はコレカルシフェロール又はメナキノンをCEに添加した実施例4~21に係る液状経口組成物では、臭気成分(トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオール)の濃度が低下していることが分かる。
また、各臭気成分について、比較例2に係るチキンエキスから生じる各臭気成分の発生量(100%)に対する、実施例4~21に係る脂溶性ビタミンを含むチキンエキスから生じる各臭気成分の発生量の割合をグラフ化したものを
図4~7に示す。
【0089】
【0090】
上記表6の結果によると、トコフェロール、βカロテン、トコフェロール、及びβカロテン、コレカルシフェロール又はメナキノンをCEに添加した実施例4~21に係る液状経口組成物では、臭気成分(トリメチルアミン、ブタンジオン、3-メチルブタン酸、及び、2-メチル-3-フランチオール)の濃度割合が、比較例2よりも低下していることが分かる。用量依存効果も示された。
【0091】
実施例1~3及び比較例1における官能評価では、ビタミンA(βカロテン)及び/又はビタミンE(トコフェロール)が添加されたチキンエキスにおける臭い抑制効果を確認した。
また、実施例4~21及び比較例2の結果から、ビタミンA(βカロテン)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンD(コレカルシフェロール)及びビタミンK(メナキノン)のいずれの脂溶性ビタミンが添加された場合にも、脂溶性ビタミンを含まないチキンエキス(比較例2)と比較し、臭気成分の発生抑制効果を確認した。
以上の結果から、脂溶性ビタミンを添加することで、チキンエキスの臭いの抑制効果が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、トリ肉及び/又はトリ骨を抽出することにより得られるチキンエキスより生じる好ましくない臭い(例えば、魚臭)が抑制された、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品、及び、該容器詰食品の製造方法を提供することができる。本発明はまた、チキンエキスを含む経口組成物を含有する容器詰食品の製造において、チキンエキスの加熱により生じる臭いを抑制することができる成分の使用を提供することができる。本発明はまた、チキンエキスを含みながらも、チキンエキスより生じる臭気成分が低減された経口組成物を提供することができる。
【国際調査報告】