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特表2024-535216ポリアリーレンスルフィド廃棄汚泥から有機溶媒を回収するための逆溶媒技術
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ポリアリーレンスルフィド廃棄汚泥から有機溶媒を回収するための逆溶媒技術
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/00 20060101AFI20240920BHJP
   C08G 75/0204 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D3/00 B
C08G75/0204
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515352
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 US2022042614
(87)【国際公開番号】W WO2023038887
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,665
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヘンドリヒ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ネッカンティ,ヴェンカタ・エム
【テーマコード(参考)】
4D076
4J030
【Fターム(参考)】
4D076AA02
4D076AA12
4D076AA22
4D076BB10
4D076CB01
4D076CB05
4D076EA15X
4D076EA18Y
4D076EA32
4D076EA33
4D076EA34
4D076EA35
4D076EA36
4D076EA38
4D076FA11
4D076FA16
4D076HA03
4D076JA03
4J030BA03
4J030BD21
(57)【要約】
ポリアリーレンスルフィドの生成中に生成した廃棄汚泥から有機溶媒を回収するために方法やシステムが提供されている。方法は、廃棄汚泥を逆溶媒と合わせて分散物を作製する工程であって、分散物は、ポリアリーレンスルフィド生成の不純物のかなりの部分を含む固相と、ポリアリーレンスルフィドの生成中に使用される逆溶媒および有機溶媒を含有する液相を含む、工程を含む。液相は、固相から分離し、次に蒸留プロセスにかけて、有機溶媒を逆溶媒から分離する。方法は、重合プロセスによってポリアリーレンスルフィドを生成する工程、およびその後ポリアリーレンスルフィドのスラリーを精製する工程も含み得る。液体洗浄生成物は精製プロセスの結果として生成され、これを有機溶媒リッチ流および廃棄汚泥が生成される蒸留プロセスにかけてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンスルフィドの生成において生じた廃棄汚泥から有機溶媒を回収するための方法であって、
前記廃棄汚泥を逆溶媒と接触させて、固相および液相を含む分散物を生成する工程であって、前記廃棄汚泥は、約10重量%~約70重量%の有機溶媒を含有する工程;
前記固相を前記液相から分離する工程であって、前記液相は前記有機溶媒および前記逆溶媒を含有する工程;及び
前記液相を第1の蒸留プロセスに付す工程であって、その間に前記有機溶媒が前記逆溶媒から分離され、回収される工程
を含む、方法。
【請求項2】
第2の蒸留プロセスから前記廃棄汚泥を生成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の蒸留プロセスへの投入物は、ポリアリーレンスルフィド重合プロセスで生成されたポリアリーレンスルフィドスラリーを洗浄する際に得られる液体洗浄生成物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアリーレンスルフィドスラリーが前記有機溶媒を含有する洗浄溶液で洗浄される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリアリーレンスルフィドスラリーが、沈降カラム内で洗浄溶液と接触する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記逆溶媒が、前記ポリアリーレンスルフィドスラリーの洗浄中に使用される流れから生じる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記廃棄汚泥を酸性化する工程であって、酸性化した前記廃棄汚泥のpHが約7未満である工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記廃棄汚泥を前記逆溶媒と接触させる前に前記廃棄汚泥が酸性化される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記有機溶媒が有機アミド溶媒である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有機アミド溶媒がN-メチルピロリドンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記廃棄汚泥がアリーレンスルフィドオリゴマー、環状ポリアリーレンスルフィド、塩化ナトリウム、微細なポリアリーレンスルフィド粒子、揮発性有機化合物、またはその組合せを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記逆溶媒が、1~10個の炭素原子を有する低級アルカノール、2~10個の炭素原子を有するケトン、5~10個の炭素原子を有するアルカン、またはその組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記逆溶媒がアセトンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記逆溶媒が分離した前記液相の約50重量%~約90重量%を構成し、前記有機溶媒が分離した前記液相の約10重量%~約50重量%を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
回収された前記有機溶媒を、前記ポリアリーレンスルフィドを生成するためのプロセス、前記ポリアリーレンスルフィドを洗浄するためのプロセス、またはその組合せに再利用する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ポリアリーレンスルフィドの生成において生じた廃棄汚泥と接触して、固相および液相を含む分散物を生成するように構成された逆溶媒流;
前記分散物を固相と有機溶媒および前記逆溶媒を含有する液相とに分離するように構成された固/液分離システム;ならびに
分離した前記液相から前記有機溶媒を回収するように構成された第1の蒸留システム
を含むシステム。
【請求項18】
前記ポリアリーレンスルフィドを生成するように構成された重合システム;
前記ポリアリーレンスルフィドを含有するポリアリーレンスルフィドスラリーを受け入れ、液体洗浄生成物を生成するように構成された精製システム;ならびに
前記液体洗浄生成物を受け入れ、前記廃棄汚泥を生成するように構成された第2の蒸留システム
をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
酸性化剤を含有する酸性溶液流をさらに含み、前記酸性溶液流は酸性化剤を含有し、前記酸性溶液流は前記廃棄汚泥と接触して酸性化された廃棄汚泥を生成するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記逆溶媒流が前記廃棄汚泥と接触する前に前記酸性溶液流が前記廃棄汚泥と接触するように構成されている、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、2021年9月8日に出願された米国仮特許出願第63/241,665号に基づき、その優先権を主張し、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]ポリアリーレンスルフィドは、概して、有機アミド溶媒中でのジハロ芳香族モノマーとアルカリ金属硫化物またはアルカリ金属水硫化物の重合により生成される。生成後、ポリアリーレンスルフィドは、ポリマーを精製するために有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)で洗浄される。このプロセス中、1種または複数の溶媒含有流が生成され、その後一連の蒸留工程にかけられて有機溶媒が回収される。オフサイトに廃棄しなければならない廃棄流(「汚泥」)も蒸留プロセス中に生成される。残念なことに、この廃棄汚泥は依然としてかなり多くの量の有機溶媒を含有する。そのため、現在、ポリアリーレンスルフィドの生成中に生成した廃棄汚泥から有機溶媒を効果的に回収するための改善された方法およびシステムに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態によれば、ポリアリーレンスルフィドを生成するために使用されるプロセスから有機溶媒を回収するための方法が開示される。当該方法は、ポリアリーレンスルフィドの生成において生じた廃棄汚泥を逆溶媒(anti-solvent)と接触させて、固相および液相を含む分散物を生成する工程を含み得る。廃棄汚泥は、約10重量%~約90重量%の有機溶媒を含有し得る。方法はまた、固相を液相から分離する工程であって、液相は有機溶媒および逆溶媒を含有する工程;ならびに液相を蒸留プロセスに付す工程であって、その間に有機溶媒が逆溶媒から分離されおよび回収される工程を含み得る。いくつかの実施形態では、方法はまた、例えばポリアリーレンスルフィドスラリーを生成することを含むプロセスに従って、ポリアリーレンスルフィドを生成する工程;ポリアリーレンスラリーを洗浄して液体洗浄生成物を生成する工程;ならびに液体洗浄生成物を、廃棄汚泥を生成する第2の蒸留プロセスに付す工程を含み得る。いくつかの実施形態では、廃棄汚泥を逆溶媒と接触させる前に、またはそれと一緒に廃棄汚泥を酸性化することができる。例えば、廃棄汚泥は、約7以下のpHに酸性化させることができる。
【0004】
[0004]本発明の別の実施形態によれば、ポリアリーレンスルフィドの生成において生じた廃棄汚泥と接触して、固相および液相を含む分散物を生成するように構成された逆溶媒流;分散物を固相と有機溶媒および逆溶媒を含有する液相とに分離するように構成された固/液分離システム;ならびに分離した液相から有機溶媒を回収するように構成された蒸留システムを含むシステムが開示される。いくつかの実施形態では、システムはまた、ポリアリーレンスルフィドを生成するように構成された重合システム;ポリアリーレンスルフィドを含有するポリアリーレンスルフィドスラリーを受け入れ、液体洗浄生成物を生成するように構成された精製システム;ならびに液体洗浄生成物を受け入れ、廃棄汚泥を生成するように構成された第2の蒸留システムを含み得る。
【0005】
[0005]本開示は、以下の図を参照すると、より良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】[0006]本発明のプロセスおよびシステムの1つの実施形態を例示する概略図である。
図2】[0007]本発明で使用され得る沈降カラムの一実施形態を示す図である。
図3】[0008]スラリー入口における図2の沈降カラムの中間部分を示す断面平面図である。
図4】[0009]本発明において使用され得る沈降カラムの中間部分の長手方向断面形状のいくつかの異なる実施形態を示す図である。
図5】[0010]本発明で使用され得る洗浄システムの一実施形態を示す図である。
図6】[0010]有機溶媒回復プロセスのいくつかの再スラリー/フィルター工程のそれぞれの後のろ液の有機溶媒含有量を示す図である。
図7】[0011]pH7およびpH4における廃棄汚泥のろ過性を比較する図である。
図8】[0012]種々の酸性化レベルにおけるスラリー中の固体の凝集を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0013]当業者であれば、本考察は代表的実施形態の説明にすぎず、本発明のより広範囲な態様を制限するものとして意図していないことを理解するはずである。
[0014]概して、本発明は、ポリアリーレンスルフィドの生成中に生成した廃棄汚泥から有機溶媒を回収するための方法およびシステムに関する。より詳細には、ポリアリーレンスルフィドスラリーは、最初に重合プロセスによって生成され、その後浄プロセスによって精製される。液体洗浄生成物はこのように生成され、これを第1の蒸留プロセスにかけて、有機溶媒リッチ流および個々の廃棄汚泥を生成させる。
【0008】
[0015]図1を参照すると、方法およびシステムが例示されている。図示されているとおり、システムは、ポリアリーレンスルフィドスラリー501の生成をもたらす重合システム500を含み得る。生成後、ポリアリーレンスルフィドスラリーは、精製システム600に移動させ、その中でポリアリーレンスルフィドスラリーを洗浄溶液と接触させ(図1には図示せず)、それにより生成されたポリアリーレンスルフィド流601および液体洗浄生成物603が得られる。次に液体洗浄生成物603は、例えば蒸留システム700によってさらに処理されて、有機溶媒リッチ流701および廃棄汚泥703を生成することができる。いくつかの実施形態では、廃棄汚泥703は、酸性化剤を含む流れ706と合わせてもよく、得られた酸性化された廃棄汚泥704は、次に逆溶媒705と合わせて710、固相および液相を含む分散物707を作製することができる。固相は、廃棄汚泥、例えばアリーレンスルフィドオリゴマー、環状ポリアリーレンスルフィド、微細なポリアリーレンスルフィド粒子、および塩化ナトリウム中の不純物の全部ではないにしても実質的部分の沈殿によって生成される。他方では、液相は、ポリアリーレンスルフィドの生成中に使用される逆溶媒および有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)を含有する。この分散物の1つの利点は、既知の固/液分離技術800、例えばろ過、遠心分離などを使用して液相803を固相801から容易に分離できることである。分離されると、液相803は、次いで第2の蒸留プロセス900にかけられて、回収可能な逆溶媒903から有機溶媒901を分離および回収する。回収された有機溶媒は、その後、有機溶媒回収システムなどの回収された逆溶媒と同様に、ポリアリーレンスルフィドの合成中の重合システム、精製システムなどで再度使用することができる。
【0009】
I.重合システム
[0016]図示されるように、図1に示すシステムは、ポリアリーレンスルフィドスラリー501の生成をもたらす重合システム500を含む。スラリー501中のポリアリーレンスルフィドは、概して、式:
-[(Ar-X]-[(Ar-Y]-[(Ar-Z]-[(Ar-W]
[式中、
Ar、Ar、Ar、およびArは、独立に、6~18個の炭素原子のアリーレン単位であり;
W、X、Y、およびZは、独立に、-SO-、-S-、-SO-、-CO-、-O-、-C(O)O-または1~6個の炭素原子のアルキレンもしくはアルキリデン基から選択される二価の連結基であり、ここで、連結基のうちの少なくとも1つは-S-であり;
n、m、i、j、k、l、o、およびpは、独立に、0、1、2、3、または4であり、ただし、これらの総和は2以上である]
の繰返し単位を有する。
【0010】
[0017]アリーレン単位Ar、Ar、ArおよびArは、選択的に置換または無置換であり得る。有利なアリーレン単位は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセンおよびフェナントレンである。ポリアリーレンスルフィドは、典型的に、約30mol%超、約50mol%超または約70mol%超のアリーレンスルフィド(-S-)単位を含む。例えば、ポリアリーレンスルフィドは、2つの芳香環に直接結合した少なくとも85mol%のスルフィド結合を含んでよい。特定の一実施形態において、ポリアリーレンスルフィドは、その成分としてフェニレンスルフィド構造-(C-S)-(式中、nは、1以上の整数である)を含有するとして本明細書で定義される、ポリフェニレンスルフィドである。
【0011】
[0018]ポリアリーレンスルフィドは、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。例えば、ジハロ芳香族化合物の選択的組合せは、2つ以上の異なる単位を含有するポリアリーレンスルフィドコポリマーをもたらし得る。例えば、p-ジクロロベンゼンは、m-ジクロロベンゼンまたは4,4’-ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて使用される場合、ポリアリーレンスルフィドコポリマーは、式:
【0012】
【化1】
【0013】
の構造を有する部分
および式:
【0014】
【化2】
【0015】
の構造を有する部分
または式:
【0016】
【化3】
【0017】
の構造を有する部分
を含有するように生成され得る。
[0019]ポリアリーレンスルフィドは、直鎖状、半直鎖状、分岐状または架橋型であり得る。直鎖状ポリアリーレンスルフィドは、典型的に、80mol%以上の繰返し単位-(Ar-S)-を含有する。このような直鎖状ポリマーはまた、少量の分岐単位または架橋単位を含み得るが、分岐単位または架橋単位の量は、典型的に、ポリアリーレンスルフィドの全モノマー単位の約1mol%未満である。直鎖状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上記の繰返し単位を含有するランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであり得る。半直鎖状ポリアリーレンスルフィドは同様に、少量の1個または複数のモノマーが3個以上の反応性官能基を有する、架橋構造または分岐状構造がポリマー内に導入されている。
【0018】
[0020]種々の技術は、概して、重合システム500で使用してもよい。例えば、ポリアリーレンスルフィドを製造するためのプロセスは、水硫化物イオンをもたらす材料(例えば、アルカリ金属硫化物)とジハロ芳香族化合物を有機アミド溶媒中で反応させる工程を含んでよい。アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムまたはこれらの混合物であってよい。アルカリ金属硫化物が水和物または水性混合物である場合、アルカリ金属硫化物は、重合反応に先立って脱水操作に従って処理されてよい。アルカリ金属硫化物はまた、in situで生成されてもよい。加えて、例えば、アルカリ金属硫化物とともに微量で存在することがあるアルカリ金属多硫化物またはアルカリ金属チオ硫酸塩などの不純物を除去するまたは反応させるために(例えばそのような不純物を無害な物質に変化させるために)、少量のアルカリ金属水酸化物が反応に含まれてもよい。
【0019】
[0021]ジハロ芳香族は、制限なく、o-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、p-ジハロベンゼン、ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルフォン、ジハロジフェニルスルホキシドまたはジハロジフェニルケトンであってよい。ジハロ芳香族化合物は、単独でまたはそれらの任意の組合せにおいて使用されてよい。特定の例示的ジハロ芳香族化合物は、p-ジクロロベンゼン;m-ジクロロベンゼン;o-ジクロロベンゼン;2,5-ジクロロトルエン;1,4-ジブロモベンゼン;1,4-ジクロロナフタレン;1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼン;4,4’-ジクロルビフェニル;3,5-ジクロロ安息香酸;4,4’-ジクロロジフェニルエーテル;4,4’-ジクロロジフェニルスルホン;4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシド;および4,4’-ジクロロフェニルケトンを含み得るがこれらに限定されない。ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であってよく、同じジハロ芳香族化合物中の2個のハロゲン原子は、相互に同じでも異なっていてもよい。一実施形態において、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼンまたはこれらの2つ以上の化合物の混合物は、ジハロ芳香族化合物として使用される。当技術分野で公知であるように、ポリアリーレンスルフィドの末端基を生成するために、またはポリアリーレンスルフィドの重合反応および/もしくは分子量を調節するために、ジハロ芳香族化合物との組合せにおいて、モノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物ではない)を使用することもまた可能である。
【0020】
[0022]決して必須ではないが、ポリアリーレンスルフィドは、特定の実施形態において、少なくとも2つの別個の生成段階を含む多段階プロセスで生成され得る。生成プロセスの1つの段階は、プレポリマーを生成するための、ジハロ芳香族モノマーによる有機アミド溶媒および硫化水素アルカリ金属の加水分解生成物を含む、複合体の反応を含み得る。プロセスのもう1つの段階は、最終生成物を生成するための、プレポリマーのさらなる重合を含み得る。任意選択で、プロセスは、有機アミド溶媒およびアルカリ金属硫化物が反応して複合体を生成する、さらにもう1つの段階を含んでよい。所望であれば、異なる段階が異なる反応器で行われてもよい。合計サイクル時間は、単一反応器システムの場合のように全ての段階の合計ではなく、最も遅い段階のものと等しくなり得るので、それぞれの段階のための個別の反応器の利用は、サイクル時間を短縮し得る。加えて、単一の反応器システムにおいて同じサイズのバッチに必要な反応器よりも小さな反応器が利用され得るので、別個の反応器の利用により資本費用が削減され得る。さらに、各反応器は、その反応器内で実施される段階の仕様を満たすだけでよいので、生成プロセスの全ての段階の最も厳しいパラメーターを満たす単一の大きな反応器はもはや必要なく、それにより資本費用がさらに削減され得る。
【0021】
[0023]一実施形態では、例えば、重合システム500は、少なくとも2つの個別の反応器を利用する多段階プロセスを使用することができる。第1の反応器は、有機アミド溶媒およびアルカリ金属硫化物が反応して、有機アミド溶媒の加水分解生成物(例えば、アルカリ金属有機アミンカルボン酸塩)およびアルカリ金属水硫化物を含む複合体を生成するプロセスの第1の段階に利用することができる。ポリアリーレンスルフィドを生成するのに使用され得る例示的な有機アミド溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン;N-エチル-2-ピロリドン;N,N-ジメチルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド;N-メチルカプロラクタム;テトラメチル尿素;ジメチルイミダゾリジノン;ヘキサメチルリン酸トリアミドおよびこれらの混合物を含み得るがこれらに限定されない。アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムまたはこれらの混合物であってよい。アルカリ金属硫化物はまた、in situで生成されてもよい。例えば、硫化ナトリウム水和物が、第1の反応器内で、反応器に供給され得る硫化水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムから調製され得る。アルカリ金属硫化物を生成するために硫化水素アルカリ金属およびアルカリ金属水酸化物が反応器に供給されるとき、アルカリ金属水酸化物対硫化水素アルカリ金属のモル比は、約0.80~約1.50であり得る。加えて、例えば、アルカリ金属硫化物とともに微量で存在することがあるアルカリ金属多硫化物またはアルカリ金属チオ硫酸塩などの不純物を除去するまたは反応させるために(例えばそのような不純物を無害な物質に変化させるために)、少量のアルカリ金属水酸化物が第1の反応器に含まれてもよい。
【0022】
[0024]第1の反応器への供給物は、硫化ナトリウム(NaS)(水和物形態であってよい)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および水を含んでもよい。水と硫化ナトリウムとNMPとの反応は、以下の反応スキーム:
【0023】
【化4】
【0024】
に従って、メチルアミノ酪酸ナトリウム(SMAB、NMPの加水分解生成物)および硫化水素ナトリウム(NaSH)を含む複合体(SMAB-NaSH)を生成し得る。
[0025]一実施形態によれば、生成段階の必要条件ではないが、化学量論的過剰のアルカリ金属硫化物が第1の段階の反応器で利用されてもよい。例えば、供給物中の有機アミド溶媒対硫黄のモル比は、2~約10、または約3~約5であってよく、供給物中の水対硫黄源は、約0.5~約4、または約1.5~約3であってよい。
【0025】
[0026]複合体の生成中、第1の反応器内の圧力は、大気圧でまたは大気圧付近で維持されてよい。低い圧力を維持するために、蒸気が反応器から除去されてよい。蒸気の主要な成分は、水および硫化水素副生成物を含み得る。蒸気の硫化水素は、例えば、凝縮器において分離され得る。そのような凝縮器において分離された水の一部は、反応条件を維持するために、反応器に戻され得る。水の別の部分は、第1の段階で生成されたSMAB-NaSH溶液を脱水するために、プロセスから除去されてよい。例えば、第1の反応器における生成物溶液中の水対NaSHのモル比(または酸素対硫黄の比)は、第2の段階の反応器に供給されるSMAB-NaSH複合体溶液がほぼ無水になるように、約1.5未満であってよく、または約0.1~約1であってよい。
【0026】
[0027]生成されると、SMAB-NaSH複合体は、次に、ジハロ芳香族モノマー(例えば、p-ジクロロベンゼン)および好適な溶媒と一緒に第2の反応器に供給されて、プロセスの第2の段階においてポリアリーレンスルフィドプレポリマーを生成する。有効量の充填アルカリ金属硫化物1モル当たりのジハロ芳香族モノマーの量は、概して、約1.0~約2.0モル、いくつかの実施形態では約1.05~約2.0モル、いくつかの実施形態では約1.1~約1.7モルであり得る。所望であれば、ジハロ芳香族モノマーは、ジハロ芳香族モノマー対硫化水素アルカリ金属のモル比が比較的低い複合体で第2の反応器に投入してもよい。例えば、第2の反応器に投入したジハロ芳香族モノマー対硫黄のモル比は、約0.8~約1.5であってもよく、いくつかの実施形態では約1.0~約1.2であってもよい。複合体のジハロ芳香族モノマー対硫化水素アルカリ金属の比較的低いモル比は、縮合重合反応を介した最終的な高分子量ポリマーの生成にとって好ましい場合がある。第2の段階における溶媒対硫黄の比もまた、比較的低いことがある。例えば、第2の段階における複合体の硫化水素アルカリ金属対有機アミド溶媒(第2の反応器に添加された有機溶媒および第1の反応器からの複合体溶液中に残っている溶媒を含む)の比は、約2~約2.5であってもよい。この比較的低い比は、第2の反応器中の反応物の濃度を高め得、そのことが相対的な重合速度および体積当たりポリマー生成速度を高め得る。
【0027】
[0028]第2の反応器は、所望の圧力レベルを維持するために、第2の段階中に蒸気を除去するための蒸気出口を含んでいてもよい。例えば、第2の反応器は、当技術分野で周知のように圧力安全弁を含んでいてもよい。第2の段階から除去された蒸気は、濃縮および分離して、未反応のモノマーを回収し、反応器に戻すことができる。蒸気のうちの水の一部は、第2の段階の無水に近い状態を維持するために除去してもよく、水の一部を第2の反応器に戻すことができる。第2の反応器中の少量の水により、反応器の頂部で還流が発生する可能性があり、それによって反応器中の水相と有機溶媒相の間の分離が改善され得る。これは言い換えると、反応器から除去された蒸気相中の有機溶媒の損失を最小限に抑えることができ、同様に、前述したように、高アルカリ性有機溶媒による硫化水素の吸収によって蒸気流中の硫化水素の損失を最小限に抑えることができる。
【0028】
[0029]第2の段階の重合反応は、概して、約200℃~約280℃、または約235℃~約260℃の温度で実行されてよい。第2の段階の持続時間は、例えば、約0.5~約15時間、または約1~約5時間であってよい。第2の段階の重合反応に続いて、第2の段階の反応器から出る生成物溶液は、プレポリマー、有機溶媒、および重合反応の副生成物として生成される1種または複数の塩を含み得る。例えば、反応の副生成物として生成される塩の第2の段階の反応器から出るプレポリマー溶液に対する容積比は、約0.05~約0.25、または約0.1~約0.2であり得る。反応混合物に含まれる塩は、反応中に副生成物として生成された塩および例えば反応促進剤として反応混合物に添加された塩を含み得る。これらの塩は、有機または無機であってよく、すなわち、有機または無機カチオンと有機または無機アニオンの任意の組合せであってよい。これらは反応媒体中で少なくとも部分的に不溶性であり得、液体反応混合物の濃度とは異なる濃度を有し得る。一実施形態によれば、第2の段階の反応器から出るプレポリマー混合物中の塩の少なくとも一部は、混合物から除去されてもよい。例えば、塩は、従来の分離プロセスにおいて利用されてきた、スクリーンまたは篩の使用によって除去され得る。塩/液体抽出プロセスは、代替的または追加的に、塩をプレポリマー溶液から分離する際に利用されてよい。一実施形態では、熱ろ過プロセスが利用されてよく、熱ろ過プロセスでは、プレポリマーが溶液中にあり塩が固相中にある温度で、溶液がろ過される。一実施形態によれば、塩分離プロセスは、第2の反応器から出るプレポリマーを含む塩の約95%以上を除去し得る。例えば、塩の約99%超が、プレポリマー溶液から除去され得る。
【0029】
[0030]プロセスの第2の段階におけるプレポリマー重合反応およびろ過プロセスに続き、第3の反応器中でプレポリマーの分子量が増大する生成の任意選択の第3の段階が行われてもよい。第3の反応器への投入物は、溶媒、1種または複数のジハロ芳香族モノマー、および硫黄含有モノマーに加えて第2の反応器からのプレポリマー溶液を含んでもよい。例えば、第3の段階で添加される硫黄含有モノマーの量は、生成物ポリアリーレンスルフィドを生成するために必要な総量の約10%以下であり得る。例示された実施形態において、硫黄含有モノマーは、硫化ナトリウムであるが、これは第3の段階の必要条件ではなく、他の硫黄含有モノマー、例えば硫化水素アルカリ金属モノマーが、代替的に利用されてもよい。
【0030】
[0031]第3の反応条件は、ほぼ無水であり、水対硫黄含有モノマーの比が、約0.2、例えば0~約0.2であるものであってよい。プロセスの第3の段階中の低い含水量は、重量速度およびポリマー収率を増大させ、望ましくない副反応副生成物の生成を低減させる。これらの条件は、上記のとおり、求核性芳香族置換であるためである。さらに、第3の段階における圧力増大は、概して、水の蒸発によるものであるため、この段階での少ない含水量は、第3の反応が、例えば約1500kPaの比較的低い一定の圧力で行われることを可能にする。そのため、第3の反応器104は、高圧反応器である必要はなく、それにより、生成プロセスに大幅な費用節約がもたらされるだけでなく、高圧反応器に固有の安全上のリスクも軽減される可能性がある。
【0031】
[0032]第3の反応器内の反応条件は、溶媒対硫黄含有モノマーの比較的低いモル比も含んでもよい。例えば、対硫黄含有モノマーの比は、約2~約4、または約2.5~約3であってよい。第3の段階の反応混合物は、約120℃~約280℃、または約200℃~約260℃の温度に加熱されてよく、重合は、このように生成されたポリマーの溶融粘度が、所望の最終レベルに上げられるまで継続してよい。第2の重合工程の持続時間は、例えば、約0.5~約20時間、または約1~約10時間であってよい。生成されたポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は、既知のように変わり得るが、一実施形態では、約1000g/mol~約500,000g/mol、約2,000g/mol~約300,000g/mol、または約3,000g/mol~約100,000g/molであり得る。
【0032】
[0033]第3の段階および任意の所望の後生成処理過程に続いて、ポリアリーレンスルフィドは、典型的に所望の構成のダイに取り付けられた押出オリフィスを介して、第3の反応器から排出され、冷却され、回収され得る。一般に、ポリアリーレンスルフィドは、有孔ダイを介して排出されて、水浴中で巻き取られるストランドを形成し、ペレット化され、乾燥される。ポリアリーレンスルフィドはまた、ストランド、顆粒または粉末の形態をとっていてよい。
【0033】
II.精製システム
[0034]図1を再度参照すると、精製システム600は、重合システム500によって生成されたポリアリーレンスルフィドスラリー501を洗浄するためにも使用される。システム600内では、ポリアリーレンスルフィドスラリーを洗浄溶液と接触させ(図1には図示せず)、それにより精製されたポリアリーレンスルフィド流601および液体洗浄生成物603が得られる。
【0034】
[0035]1種または複数の溶媒は、通常洗浄溶液に導入される。水、有機溶媒などの種々の溶媒のいずれかを使用することができる。一実施形態では、例えば、水は単独で、または有機溶媒と組み合わせて使用することができる。特に好適な有機溶媒は、非プロトン性溶媒、例えば、ハロゲン含有溶媒(例えば、塩化メチレン、1-クロロブタン、クロロベンゼン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、および1,1,2,2-テトラクロロエタン);エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン);ケトン溶媒(例えば、アセトンおよびシクロヘキサノン);エステル溶媒(例えば、酢酸エチル);ラクトン溶媒(例えば、ブチロラクトン);カーボネート溶媒(例えば、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネート);アミン溶媒(例えば、トリエチルアミンおよびピリジン);ニトリル溶媒(例えば、アセトニトリルおよびスクシノニトリル);アミド溶媒(例えば、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素およびN-メチルピロリドン);ニトロ含有溶媒(例えば、ニトロメタンおよびニトロベンゼン);スルフィド溶媒(例えば、ジメチルスルホキシドおよびスルホラン)などを含む。使用される特定の溶媒に関係なく、溶媒システム全体(例えば、水およびN-メチルピロリドン)は、典型的に、洗浄溶液の約80重量%~約99.9重量%、いくつかの実施形態では約85重量%~約99.8重量%、いくつかの実施形態では約90重量%~約99.5重量%を構成する。
【0035】
[0036]洗浄溶液中では、安定剤、界面活性剤、pH調整剤などの他の好適な物質も使用されてもよい。例えば、洗浄溶液のpHを所望のレベルに上げるために、塩基性pH調整剤が用いられてもよく、このpHは、典型的に、7より高く、いくつかの実施形態では約9.0~約13.5、いくつかの実施形態では約11.0~約13.0である。好適な塩基性pH調整剤は、例えば、アンモニア、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属水酸化物等、およびこれらの組合せを含んでもよい。所望であれば、溶液は、ポリアリーレンスルフィドと接触する前および/または接触中に加熱して、洗浄効率を改善することができる。例えば、溶液は、約100℃以上、いくつかの実施形態では約110℃以上、いくつかの実施形態では約120℃~約300℃、いくつかの実施形態では約130℃~約220℃の温度に加熱することができる。特定の場合において、加熱は、混合物中の溶媒の大気圧での沸点を超える温度で行われる。NMPは、例えば、沸点が大気圧で約203℃である。このような実施形態では、加熱は、典型的に、1atm超、いくつかの実施形態では約2atm超、いくつかの実施形態では約3~約10atmなどの比較的高い圧力下で行われる。
【0036】
[0037]ポリアリーレンスルフィドが洗浄溶液と接触する方法は、所望に応じて様々であり得る。一実施形態では、例えば、精製システム600は、恒温槽、沈降カラムなどの容器を含んでもよく、その中でポリアリーレンスルフィドを洗浄溶液と接触させる。図2図3図4を参照すると、例えば、ポリアリーレンスルフィドおよび洗浄溶液を受けるように構成され得る精製システム600で使用し得る沈降カラム10の一実施形態が図2に示されている。沈降カラム10は、液体出口20を含む上部区画12と、入口24を含む中間区画14と、固体出口22および液体入口26を含む下部区画16とを含んでよい。垂直配置により例示されているが、沈降カラムは、垂直配置以外で利用され得、沈降カラムは、固体が重力によって入口24から出口22まで沈降カラムを通過して流れる限り、垂直に対して角度が付けられてもよいことが理解される。
【0037】
[0038]上部区画12および下部区画16は、中間区画14のものより大きな断面を有し得る。一実施形態では、沈降カラム10の区画は、断面が円形であってよく、この場合、上部区画12および下部区画16は、中間区画14の断面直径よりも大きな断面直径を有してよい。例えば、上部区画12および下部区画16は、中間区画の直径よりも約1.4~約3倍大きな直径を有し得る。例えば、上部および下部区画は、独立に、中間区画14の直径よりも約1.4、約2、または約2.5倍大きな直径を有し得る。上部区画12のより大きな断面は、出口20における固体の溢れを防止し得、下部区画16のより大きな断面は、出口20における固体流れ制限を防止し得る。沈降カラム10は特定の幾何学的形状に限定されず、沈降カラムの断面は円形に限定されないと理解すべきである。さらに、沈降カラムの各区画の断面形状は、互いに対して変わり得る。例えば、上部区画12、中間区画14および下部区画16のうち1つまたは2つは、楕円形の断面を有し得、他の区画は円形の断面を有し得る。
【0038】
[0039]沈降カラム10の中間区画14は、入口24を含み得、入口24を介してポリマースラリーが沈降カラム10に供給され得る。スラリーは、生成プロセスに由来する他の副生成物、例えば反応溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)、塩副生成物、未反応モノマーまたはオリゴマーとともに、ポリアリーレンスルフィドを含み得る。図3に示されるように、入口24は、壁25に対して実質的に接線方向で中間区画14の壁25と交わる。本明細書で使用される「実質的に接線方向」という用語は、中間区画14の壁25の真の接線と入口24の外壁27との間の距離によって決定され得る。入口24が、中間区画の壁25と完全な接線方向で交わるとき、この距離は0になる。概して、この距離は約5センチメートル未満、例えば約3センチメートル未満である。入口24が中間区画14の外壁25と実質的に接線方向になるような入口24の配置は、沈降カラム10内での流体流れパターンの乱れを回避し得る。この配置は、下向きに流れる固体と上向きに流れる液体との間の接触および物質移動を改善することができ、上部区画12の出口20を通る固体の喪失も回避することができる。出口20を通過する固体が喪失されないことをさらに確実にするため、入口24は、中間区画14が上部区画12と交わる接続点23からの距離において、中間区画14に配置されてよい。例えば、入口24の中点と接合点23との間の垂直距離は、中間区画14の全高と等しいか、それより約5%長くなっていてよい。例えば、入口24の中点と接合点23との間の垂直距離は、中間区画14の全高の約5%~約50%であってよい。中間区画14の全高は、上部区画12が中間区画14と交わる接合点23と、中間区画14が下部区画16と交わる接合点21との間の距離である。
【0039】
[0040]入口24は、重合システム500から沈降カラム10の中間区画14へとスラリーを運ぶことができる。沈降カラム10の中間区画14は、軸シャフト31および中間区画14の軸長に沿った一連の撹拌ブレード32を組み込んだ撹拌器30を含み得る。撹拌器30は、沈降物(流動床)内での液体の偏流を最小限にすることができ、スラリー含有物と上向きに流れる溶媒との接触を維持し、沈降カラム10を通過する固体の流れも維持することができる。撹拌ブレード32は、軸シャフト31から中間区画14の外壁25に向かって伸長していてよい。概して、撹拌ブレードは、軸シャフトから壁25までの距離の少なくとも半分伸長していてよく、一実施形態では、壁25までの距離のほぼ全体にわたって伸長していてもよい。一実施形態では、沈降カラムには、既知の沈降カラムに利用されてきた沈降プレートまたはトレイがなくてもよい。
【0040】
[0041]図示されるとおり、軸シャフト31は、中間区画14の長さに沿った一連の撹拌ブレード32を支持することができる。概して、少なくとも2つの撹拌ブレード32は、ブレード伸長部の各点での平衡配置において軸シャフト31から伸長してよい。ただし、このことは必要条件ではなく、単一位置において3つ、4つまたはそれ以上の撹拌ブレードが軸シャフト31から伸長していてもよい。あるいは、単一のブレードがシャフト31上の単一位置から伸長していてもよく、使用中に撹拌器30の平衡を維持するように、撹拌ブレードがシャフト31の長さにわたって互いからオフセットされてもよい。軸シャフト31は、シャフト31に沿った複数の位置において、軸シャフトから伸長する撹拌ブレード32を有していてよい。例えば、軸シャフトは、軸シャフトに沿った約3~約50の位置において、軸シャフトから伸長する撹拌ブレードを有し、2つ以上の撹拌ブレード32が各位置で軸シャフトから伸長していてよい。一実施形態では、軸シャフト31に沿ったブレードの配分は、区画14の上部のブレード数に比べて、底部の流動床区画内に、より多くのブレードがあるものであってよい。操作中、軸シャフト31は、典型的に約0.1rpm~約1000rpm、例えば約0.5rpm~約200rpmまたは約1rpm~約50rpmである速度で回転してよい。
【0041】
[0042]図示された実施形態において、ポリマースラリー流れが洗浄溶液の流れの方向と逆の方向である対向流が用いられている。図2を再び参照すると、ポリマースラリーは、入力24を介して沈降カラム10の中間区画14に供給される。それに対して、洗浄溶液は、入口26を介してカラム10の下部区画16に供給される。この態様では、洗浄溶液は、カラムを通って上向きに流れ、固体出口22に向かってカラムを通って下向きに流れるポリマースラリーと接触し得る。所望であれば、入口26は、固体を通って流体流れを強め、固体が入口26に入ることを防ぐことができる分配器35を含んでよい。下部区画16はまた、出口22において固形分を濃縮するための円錐形状を有していてよい。出口22におけるスラリーの固形分は、概して、約20重量%以上であり、またはいくつかの実施形態では約22重量%以上である。所望であれば、洗浄溶液は、入口26に供給される前に加熱されてよい。このような実施形態では、沈降カラムは、洗浄プロセス中に高温を維持するための加熱素子を含んでいてよい。
【0042】
[0043]所望であれば、固体出口22に向かって上部から床まで固体の濃度を増加させる流動床が、沈降カラム内に生成されてもよい。流動床高さは、沈降カラム内での固体の滞留時間がより適切に制御されるように、監視され制御され得る。沈降カラムの滞留時間の改善された制御を通じて、沈降カラム内で実行される分離プロセスの効果が改善され、このことが運転コストの低下および分離の改善に転換され得る。加えて、流動床高さおよび滞留時間の制御は、上部区画12の液体出口20を介した固体喪失を回避する助けになり得る。沈降カラム内の流動床高さを監視するために、センサが使用されてよい。センサの種類は制限されず、内部センサおよび外部センサを含む、流動床高さを監視することができる任意の好適なセンサであってよい。例えば、センサは、制限なしに、沈降カラム10の流動床高さを決定するために、光学、赤外、高周波、変位、レーダー、振動、音響、熱、圧力、核および/または磁気検知機構を利用し得る。例えば、一実施形態では、光学センサ40(例えば、レーザー源および検出器を含むレーザーベースセンサ)は、沈降カラム10の中間区画14内に、例えば入口24のレベル付近に位置していてよく、このセンサは、レーザーの反射を検出し、沈降カラム10内の相対密度の差を決定することができ、したがって流動床の上部の位置に関する情報を制御システムに伝達することができる。制御システムは、その情報をバルブに中継することができ、バルブは出口22において沈降カラムからの固体の流れを制御することができ、および/または入口24において沈降カラムへの固体の流れを制御し、流動床高さを制御することができる。サージタンクも、流動床高さの制御を維持することが知られている沈降カラムに出入りする導管に含まれてよい。流動床高さの制御する当技術分野において既知である他のシステムが利用されてもよく、流動床高さを制御するために利用される方法およびシステムは特に制限されない。流動床の上部は、入口24およびその付近にあってよい。沈降カラム10内での固体の滞留時間の制御を改善するために、プロセス中の沈降床高さの変動は、中間区画14の全高の約10%未満であってよい。例えば、プロセス中の流動床高さの変動は、中間区画14の全高の約5%未満であり得る。
【0043】
[0044]図2に円筒カラムとして示されているが、中間区画14の長手方向断面形状は、この実施形態に制限されない。例えば、図4に示されるとおり、沈降カラムの中間区画14a、14bおよび14cは、ストレートでもテーパー付きであってもよく、14aに示されるように円筒状中間区画からの角度が増加し、14bおよび14cに示されるように角度が増加する。テーパー付きの場合、中間区画は、底部より上部が広くなり、固体の運搬を妨げることなく、沈降カラムの底部において固体濃度が増加する。すなわち、テーパーの角度が大きすぎる場合、固体流れは、中央区画の壁で妨げられることがある。好ましいテーパー角度は、流量、システム内で運ばれる化合物の物理的性質、例えば粒径および粒子形状に応じて、およびカラム材料および表面粗さに応じて、各システムで異なる。
【0044】
[0045]特定の実施形態では、ポリアリーレンスルフィドは、単一工程で洗浄溶液と接触し得る。例えば、中でポリアリーレンスルフィドが洗浄される単一沈降カラムを使用することができる。代替実施形態では、しかしながら、複数の洗浄工程を使用することができる。そのようなプロセスの段階で使用される洗浄溶液は、同じである必要はない。一実施形態では、例えば、複数の沈降カラムが直列で使用でき、それらの1つまたは複数は上記のように対向流を有する。
【0045】
[0046]図5を参照すると、例えば、3つの沈降カラム101a、101b、および101cを直列で使用する洗浄プロセスの一実施形態が示されている。システムは上記のような設計を有する1つまたは複数の沈降カラムを含んでいてもよいが、これは開示されたシステムの必要条件ではない。例えば、システムは、上記の沈降カラムと設計が多少異なる沈降カラムを含んでいてもよく、例えば、図5のシステムの沈降カラムは、中間区画と比較して断面積がより大きい上部区画および下部区画を含まない。いずれの場合にも、システムは、複数の沈降カラム101a、101b、および101cを直列で含むことができる。
【0046】
[0047]第1の沈降カラム101aを通過する流れを開始するには、最初に入口124aを介してポリマースラリーを供給することができる。第1の洗浄溶液302は、同様に、入口126aを介してカラム101aに供給することができる。第1の洗浄溶液302は、概して、カラムを通ってポリマースラリーとは逆方向に上方に流れ、出口120aに至り、そこでポリマースラリー供給物の溶液および溶解化合物が含まれている可能性がある第1の洗浄生成物402を取り出すことになる。図示されているとおり、固体出口122aは、その後、第1の沈降カラム101aからの固体を第2の沈降カラム101bのスラリー入口124bに供給し得る。第2の洗浄溶液304は、概して、入口126bを介してカラム101bを通って固体とは逆方向に上方に流れ、出口120bに至り、そこで第2の洗浄生成物404を取り出すことになる。必要ではないが、第2の洗浄溶液304は、出口120cを介して第3の沈降カラム101cから取り出した再循環流であってもよい。最後の沈降カラム101cでは、第2の沈降カラムからの固体は、入口124cを介して供給することができる。第3の洗浄溶液306は、概して、入口126cを介してカラム101cを通って固体とは逆方向に上方に流れ、出口122cを介してカラムから出てポリマー生成物406を生成することになる。上記のとおり、所望であれば、洗浄プロセスの各段階で使用される洗浄溶液は異なっていてもよい。例えば、第1の洗浄溶液302および/または第2の洗浄溶液304は、有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)を、溶液中の唯一の溶媒として、または他のタイプの溶媒(例えば、水)と組み合わせて含有していてもよい。第3の洗浄溶液306は、同様に、水を、単独で、または他のタイプの溶媒と組み合わせて含有していてもよい。
【0047】
[0048]図1を再度参照すると、洗浄したポリアリーレンスルフィド601は、精製システム600から取り出し、当技術分野で既知の任意の技術に基づいて乾燥させ得る。乾燥は、約80℃~約250℃、いくつかの実施形態では約100℃~約200℃、いくつかの実施形態では、約120℃~約180℃の温度で起こり得る。得られたポリアリーレンスルフィドの純度は、比較的高く、例えば約95%以上、または約98%以上であり得る。精製したポリアリーレンスルフィドはまた、比較的高い分子量、例えば約30,000~約60,000ダルトン、いくつかの実施形態では約35,000ダルトン~約55,000ダルトン、いくつかの実施形態では、約40,000~約50,000ダルトンの重量平均分子量を有し得る。多分散指数(重量平均分子量を数平均分子量で除算した値)は、同様に、比較的低く、例えば約4.3以下、いくつかの実施形態では約4.1以下、いくつかの実施形態では、約2.0~約4.0であり得る。ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量は、例えば、約8,000~約12,500ダルトン、いくつかの実施形態では約9,000ダルトン~約12,500ダルトン、いくつかの実施形態では、約10,000~約12,000ダルトンであり得る。分子量は、トリフルオロ酢酸混合物中の冷HNO(50%)の混合物で酸化することによりポリマーをPPSOに変換し、PPSOを温ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に1時間溶解し、次にPSS-ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)ゲルカラムを備えたGPCにより分子量を分析することによって決定することができ、このゲルカラムには、移動相としてHFIP、検出器として屈折率を使用するHFIPゲルガードカラムが取り付けられていてもよい。
【0048】
[0049]液体洗浄生成物603は、同様に、精製システム600から取り出し得る。上記のとおり、洗浄生成物603は、単一液体流、例えば図2の出口20から出る液体洗浄生成物由来であってもよい。同様に、洗浄生成物603は、複数の液体流、例えば図5の出口120a、120b、および/または120cから出る液体洗浄生成物由来であってもよい。ただし、洗浄生成物603は、概して、有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)を含有し、それは重合および/または洗浄プロセスの残留物であり得る。洗浄生成物603は、水および/または種々の不純物、例えばアリーレンスルフィドオリゴマー、環状ポリアリーレンスルフィド、塩なども含有し得る。
【0049】
III.第1の蒸留システム
[0050]洗浄生成物603からの有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)の回収を助けるために、図1の実施形態において第1の蒸留システム700も使用される。第1の蒸留システム700は、1つまたは一連の蒸留塔を含んで、有機溶媒のかなりの部分を取り出し、有機溶媒リッチ流701を生成し得る。有機溶媒リッチ流701は、例えば、流れの約70重量%以上、いくつかの実施形態では約80重量%以上、いくつかの実施形態では、約90重量%~100重量%の量で有機溶媒を含有し得る。種々の好適な蒸留技術の例が、例えば、Iwasakiらの米国特許第4,976,825号、およびOmoriらの米国特許第5,167,775号に記載されている。蒸留は、例えば、約190℃~約300℃、いくつかの実施形態では、約200℃~約290℃の温度と、約67hPa(50トル)~約1000hPa(750トル)、いくつかの実施形態では、約133hPa(100トル)~約667hPa(500トル)の圧力で行うことができる。
【0050】
[0051]有機溶媒リッチ流701の生成に加えて、第1の蒸留システム700は、廃棄汚泥703も生成する。廃棄汚泥703は、重合プロセス中に生成される種々の不純物を含有する。このような不純物の例には、例えば、揮発性有機化合物、塩化ナトリウム、低分子量アリーレンスルフィドオリゴマー、環状ポリアリーレンスルフィド、および平均直径が例えば50マイクロメートル未満の微細なポリアリーレンスルフィド粒子がある。「低分子量」オリゴマーは、典型的に、数平均分子量が約2,000ダルトン未満、いくつかの実施形態では約1,500ダルトン以下、いくつかの実施形態では、約100~約1,000ダルトンのアリーレンスルフィドを意味する。このようなオリゴマーの多分散指数は、典型的に高く、例えば約7超、いくつかの実施形態では約9以上、いくつかの実施形態では、約10~約20である。重量平均分子量は、同様に、約20,000ダルトン未満、いくつかの実施形態では約15,000ダルトン以下、いくつかの実施形態では、約1,000~約12,000ダルトンであり得る。環状ポリアリーレンスルフィドはまた、廃棄スラリー中に存在していてもよく、これは典型的に以下の一般式:
【0051】
【化5】
【0052】
[式中、
nは4~30であり;かつ
Rは、独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、または約6~約24個の炭素原子を有するアリールアルキル基である]
を有する。
【0053】
[0052]その上、蒸留システム700は、洗浄生成物603から全ての有機溶媒を除去することはできないので、廃棄汚泥703は依然として有機溶媒の一部を含有することになる。上記のとおり、有機溶媒は、アミド溶媒、例えばN-メチル-2-ピロリドン;N-エチル-2-ピロリドン;N,N-ジメチルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド;N-メチルカプロラクタム;テトラメチル尿素;ジメチルイミダゾリジノン;ヘキサメチルリン酸トリアミドおよびその混合物であってもよい。典型的に、有機溶媒は、廃棄汚泥703の約10重量%~約85重量%、いくつかの実施形態では約20重量%~約80重量%、いくつかの実施形態では、約30重量%~約50重量%を構成する。同様に、不純物は、典型的に、廃棄汚泥703の約15重量%~約90重量%、いくつかの実施形態では約20重量%~約80重量%、いくつかの実施形態では、約50重量%~約70重量%を構成する。
【0054】
IV.有機溶媒回収
[0053]図1に示されるとおり、有機溶媒を回収するために、いくつかの実施形態では廃棄汚泥703は、酸と組み合わせることによって酸性化でき、それを酸性溶液流706に供給することができる。酸性溶液流706は、それだけには限らないが、硫酸、リン酸、塩酸、硝酸、カルボン酸、ハロゲン化カルボン酸、またはその組合せなどの酸性化剤を含み得る。いくつかの実施形態では、酸性化剤は、リン酸、硫酸、アセト酢酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸などの不揮発性薬剤であってよく、これにより後続の溶媒回収工程で酸汚染の問題を回避することができる。酸性溶液は、約50重量%以上、いくつかの実施形態では、例えば約60重量%以上もしくは約70重量%以上、例えば約50重量%~約90重量%、またはいくつかの実施形態では約70重量%~約85重量%の量で酸性化剤を含み得る。
【0055】
[0054]取り込むとき、酸性溶液706は、いくつかの実施形態では組み合わせた後に酸性化した廃棄汚泥704のpHが7未満、例えば約6以下または約5以下になる量で廃棄汚泥703と合わせることができる。例えば、酸性化した廃棄汚泥704は、いくつかの実施形態では約10重量%以下、例えば約7重量%以下、例えば約3重量%~約5重量%の量で酸性溶液を含み得る。
【0056】
[0055]廃棄汚泥の酸性化は、逆溶媒の添加前または添加と同時に実施することができる。酸性化すると、廃棄汚泥の種々の成分が影響を受ける可能性がある。例示的なオリゴマー酸性化スキームは、それだけには限らないが:
【0057】
【化6】
【0058】
を含み得る。
[0056]廃棄汚泥の酸性化により、オリゴマーなどの廃棄汚泥に含有されている物質の溶解度が低下し、それによって汚泥の固相含有量が増加し得る。廃棄汚泥の酸性化により、例えば粒子間の静電反発力が軽減することによって微粒子および微粉の凝集も増加し得る。したがって、廃棄汚泥の酸性化により、後続の分離工程において液体から固体の分離が改善され、廃棄汚泥からの有機溶媒の回収が改善され得る。
【0059】
[0057]酸性化した廃棄汚泥704(または廃棄汚泥が酸性化されていない実施形態では廃棄汚泥703)は、逆溶媒と合わせることができ、それは別の流れ705に供給され得る。逆溶媒流705の供給源は、必要に応じて変わってもよい。特定の実施形態では、例えば、精製システム600に使用される洗浄溶液などの逆溶媒流705は、ポリアリーレンスルフィドの精製中に使用することができる。好適な逆溶媒は、例えば、1~10個の炭素原子を有する低級アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノールなど);2~10個の炭素原子を有するケトン(例えば、アセトン);および5~10個の炭素原子を有するアルカン(例えば、ヘキサン)、ならびに前述のいずれかの混合物を含んでもよい。アセトンは、N-メチルピロリドンが廃棄汚泥703に含有される有機溶媒である場合に特に好適である。ただし、例えば撹拌槽710中で廃棄汚泥703を逆溶媒705と接触させると、分散物707が生成され、それは個々の固相および液相を含む。固相は、アリーレンスルフィドオリゴマー、環状ポリアリーレンスルフィド、微細なポリアリーレンスルフィド粒子、および塩化ナトリウムなどの廃棄汚泥703中の不純物の全てではないがかなりの部分の沈殿によって生成される。実際、特定の実施形態では、このような成分は、沈殿した固相の約70重量%以上、いくつかの実施形態では約80重量%以上、いくつかの実施形態では、約90重量%~100重量%を構成し得る。他方では、液相は、概して、ポリアリーレンスルフィドの生成中に使用される有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)および逆溶媒を含有する。逆溶媒は、典型的に、分離した液相の約50重量%~約90重量%、いくつかの実施形態では約60重量%~約85重量%、いくつかの実施形態では、約65重量%~約80重量%を構成するが、有機溶媒は、典型的に、分離した液相の約10重量%~約50重量%、いくつかの実施形態では約15重量%~約40重量%、いくつかの実施形態では、約20重量%~約35重量%を構成する。使用される特定の液体抽出剤に応じて、混合物1110の温度は、いくつかの実施形態では、例えば、約50℃以上、例えば約60℃以上、約70℃以上、または約80℃以上、例えば約75℃~約100℃、または約90℃であってよい。
【0060】
[0058]固/液分離システム800は、分散物707を固相801および液相803に容易に分離するのに使用することができる。システム800は、種々の既知の固/液分離デバイス、例えばフィルター、遠心分離機、デカンター、沈降カラムなどのいずれかを使用してもよい。好適なろ過デバイスは、例えば、スクリーンフィルター、回転フィルター、連続回転真空フィルター、連続移動床フィルター、バッチフィルターなどを含み得る。本明細書に詳細に示さないが、分離した固相801は、廃棄物として除去し、または再利用し、高分子量ポリアリーレンスルフィドに変換することができる。
【0061】
[0059]いくつかの実施形態では、固/液分離システム800は、複数の分離工程を含み得る。例えば、ろ過操作は、例えば、逆溶媒および/または水での固体の複数の洗浄を含み、それによりろ過ケーキからの有機溶媒の除去が増大し得る。例えば、洗浄工程は、固体1キログラム当たりの液体約100グラム~約200グラム、例えば固体1キログラム当たりの液体約150グラム~約175グラムでろ過ケーキを洗浄することを含み得る。任意選択で、複数の洗浄、遠心分離、ろ過などの複数の分離手法は、合わせることができる。
【0062】
[0060]液相803は、第2の蒸留システム900内で蒸留プロセスにかけて、有機溶媒903(例えば、N-メチルピロリドン)を逆溶媒901(例えば、アセトン)から分離させることができる。第2の蒸留システム900は、1つまたは一連の蒸留塔を使用し得る。蒸留は、例えば、約190℃~約300℃、いくつかの実施形態では、約200℃~約290℃の温度と、約67hPa(50Torr)~約1000hPa(750Torr)、いくつかの実施形態では、約133hPa(100Torr)~約667hPa(500Torr)の圧力で行うことができる。使用される条件にかかわらず、有機溶媒903は、所望ならば、種々の異なるプロセスで回収および使用することができる。特定の実施形態では、例えば、有機溶媒903は、再利用し、ポリアリーレンスルフィドの合成中に重合システム500で使用することができる。有機溶媒903はまた、洗浄溶液として精製システム600で使用することもできる。
【0063】
[0061]本発明は、以下に記載されている実施例を参照すると、より良く理解され得る。
【実施例
【0064】
実施例1
[0062]ポリアリーレンスルフィド生成プロセスからの廃棄汚泥を調べた。廃棄汚泥は、17重量%の固体(ほとんどNaCl)、および83重量%の液体を含んでいた。
【0065】
[0063]廃棄汚泥をろ過プロセスにかけ、それに続いてろ過ケーキ(53重量%の固体)を、再スラリー液としてアセトン(ATN)または水(HO)と2:1または1:1の重量比で再スラリー操作にかけた。
【0066】
[0064]再スラリーに続いて、得られた汚泥を、剪断速度4s-1で調べて、粘度特性を比較した。以下の表1に示すとおり、再スラリー液としてアセトンを含むスラリーは、水系再スラリーと比較して粘度が低く、剪断速度10~1,000s-1において、アセトン再スラリーは、ポンピングおよび混合の両方に役立った。
【0067】
【表1】
【0068】
[0065]複数の再スラリー/フィルター工程は、2:1汚泥:アセトン再スラリー生成を使用して廃棄汚泥を用いて実施した。図6は、各洗浄後のろ液中の%有機溶媒(N-メチルピロリドン、NMP)を示す。図示されているとおり、3回目の洗浄以降、ろ液中に存在する有機溶媒は1%未満であった。
【0069】
[0066]廃棄汚泥のろ過性に対するpHの影響を調べた。85%HPO溶液を利用して、廃棄汚泥pHを様々なレベルに調整した。図7は、pH7とその後のpH4への酸性化における廃棄汚泥のろ過性を比較する。図示されているとおり、pH7において、206kPa(30psi)のより高い圧力を利用した場合でも、汚泥のろ過性は、pHがpH4に調整され69kPa(10psi)の圧力でろ過された廃棄汚泥のろ過性よりもはるかに低かった。
【0070】
[0067]廃棄汚泥の試料10個を、pH6.7~pH3.0の種々のレベルにpH調整した。図8に示すとおり、酸性化後、試料の固体は、特に約5以下のpHにおいて固体の凝集の増加を示した。
【0071】
実施例2
[0068]ポリアリーレンスルフィド生成プロセスからの廃棄汚泥を調べた。廃棄汚泥は、17重量%の固体(ほとんどNaCl)、および83重量%の液体を含んでいた。
【0072】
[0069]廃棄汚泥の試料を、表2に示した種々の量のアセトンおよびリン酸と合わせた。次に得られた混合物を3250rpmで遠心分離にかけた。遠心分離機内でろ過ケーキが生成される時間と得られたろ過ケーキ中の%NMPを表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
[0070]見てわかるとおり、最初にアセトン希釈をしなくてもろ過の時間は酸性化により改善され、ろ過ケーキ中の残留有機酸は、酸性化および逆溶媒処理の両方により大幅に低下した。
【0075】
[0071]本開示の特定の実施形態が例示され記載されてきたが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく他の様々な変更および修正を実行できることが、当業者には明らかであろう。したがって、本開示の範囲内にあるそのような全ての変更および修正を添付の特許請求の範囲に含めるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】