(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】アンモニアプラントを制御する方法
(51)【国際特許分類】
C01C 1/04 20060101AFI20240920BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20240920BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240920BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240920BHJP
C25B 9/65 20210101ALI20240920BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240920BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240920BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20240920BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C01C1/04 D
C25B15/02
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/65
C25B15/08 302
H01M8/04 Z
H01M8/0656
H02J15/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024515946
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022072726
(87)【国際公開番号】W WO2023036560
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515106066
【氏名又は名称】カサーレ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルベッタ、ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】オストゥーニ、ラファエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ビャウコフスキー、ミカル タデウシュ
(72)【発明者】
【氏名】フィリッピ、エルマンノ
【テーマコード(参考)】
4K021
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA05
4K021CA09
4K021DC03
4K021DC11
5H127AB21
5H127AB29
5H127BA02
5H127BA14
5H127BA22
(57)【要約】
アンモニアプラント(1)であって、アンモニアコンバータを備えたアンモニア合成セクション(202)と、水素貯蔵タンク(5)に接続された水素生成セクション(200)とを上記アンモニアプラント(1)が備える、アンモニアプラント(1)を制御する方法であって、上記方法が、貯蔵される、または、アンモニア合成セクションへ送達される水素(13)の量を、水素タンク(5)内に含まれる水素の量;アンモニア合成セクションへ送達される水素の流量;上記アンモニアコンバータへ供給される供給ガスの流量の目標範囲を維持するように制御する工程を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアプラント(1)を制御する方法であって:
前記アンモニアプラント(1)が:
水素および窒素を含む供給ガスから出発してアンモニアがアンモニア合成圧力で合成されるアンモニアコンバータを含んでいるアンモニア合成セクション(202);
ガス状水素(3)を生成するように構成された水素生成セクション(200);
前記水素生成セクションに接続された水素貯蔵タンク(5)
を備え;
前記方法は:
a)前記アンモニア合成セクションへ、前記水素生成セクションにより供給される水素の総量(13);
b)項目a)の前記水素の量における、前記水素生成セクション内で現在生成されている水素と、前記貯蔵タンクから取り出される水素との間の比率であって、前記貯蔵タンクからの水素が、前記量a)のゼロ~100%にわたる、比率;
c)前記水素貯蔵タンク(5)へ送られる水素の量
を制御する工程を備えており、
前記項目a)、b)およびc)は、以下のパラメータ:
i)前記水素貯蔵タンク(5)内に含まれる水素の量;
ii)前記アンモニア合成セクションへ供給される水素の流量、および/または前記アンモニアコンバータ内で反応させられる供給ガスの流量;
iii)上記ポイントii)の流量の少なくとも1つの、経時的な流量変化;
がそれぞれの目標範囲内に維持されるように制御され、
ii)およびiii)の目標範囲が、前記アンモニアコンバータを自己熱運転状態に保つように選択され、
前記供給ガスは、触媒的に反応させられてアンモニアを生成する前に予熱され;前記供給ガスの予熱は、アンモニア合成反応の高温廃水から新鮮な供給ガスへ熱を伝達することにより行われ;前記自己熱運転状態は、予熱された供給ガスが閾値温度以上の温度を有する状態に相当する、方法。
【請求項2】
水素タンク(5)内の水素の量が最小量超かつ最大量未満に維持されて、前記水素タンクを空にすることおよび過充填することを防止するように、a)、b)およびc)が制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アンモニア合成圧力が目標範囲内にあるという条件も満たすように、a)、b)およびc)が制御される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
a)、b)およびc)が、前記水素生成セクションの現在の水素出力;前記水素タンク(5)内に含まれる水素の量;前記アンモニア合成セクションの現在の負荷;前記アンモニア合成セクションの負荷の1つまたは複数の過去の値、の1つまたは複数に基づいて制御される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
a)、b)およびc)が、1つまたは複数の設定点信号(11a,11b)に基づいて制御され、かつ前記1つまたは複数の設定点信号が、前記水素タンク(5)内に含まれる水素の量の関数として生成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法であって、前記方法が、マスターコントローラ(15)と、前記マスターコントローラに対するスレーブコントローラとして構成される複数の流量コントローラ(16,17)とを含むカスケード制御システムにより行われ、前記マスターコントローラが、前記タンク(5)内に含まれる水素の量に対する感受性を有し、かつ前記流量コントローラが、a)、b)およびc)を制御するために配置された複数の流量調整バルブ(18,19,20)に作用する、方法。
【請求項7】
前記マスターコントローラ(15)が、前記水素貯蔵タンク(5)内のガス状水素の圧力を感知するように配置された圧力センサを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の流量調整バルブが:
前記水素貯蔵タンク(5)へ流れる水素(12)の流量、および前記アンモニア合成セクションへ送られる水素の流量を調整するように配置された1つまたは複数のバルブ(18,20);
前記水素貯蔵タンク(5)から取り出される水素(14)の流量を調整するように配置された少なくとも1つのバルブ(19)
を含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の流量調整バルブが、前記貯蔵タンクへ送られる水素の流量を調整するように配置された少なくとも第1のバルブ;前記貯蔵タンクから取り出される水素の流量を調整するように配置された第2のバルブ;前記アンモニア合成セクションへ送達される水素の流量を制御するように配置された第3のバルブを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水素タンク(5)内の水素の量が、前記水素タンク(5)の公称貯蔵容量の10%~30%に相当する最小量超、かつ前記公称貯蔵容量の70%~90%に相当する最大量未満に維持される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記アンモニア合成セクションへ送達される水素が、前記合成セクションの公称容量の10%~110%内に維持される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
アンモニア合成コンバータ内の圧力を、好ましくは前記コンバータを迂回する供給ガスの流量を制御することにより、制御する工程をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水素生成セクション(200)内では、水素が電気動力から生成され、および前記電気動力が経時的に変動し得るものであり、好ましくは、前記電気動力が再生可能エネルギーである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記水素生成セクションが、水から前記水素(3)を生成するように構成された水電解装置を含んでおり、好ましくは前記水電解装置が再生可能エネルギーを動力源としている、より好ましくは太陽エネルギーを動力源としている、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
水素が再生可能動力から生成され、および前記アンモニアプラントが電気グリッドに接続されておらず、前記プラントが、前記水素生成セクションにより、生成される水素が低く、またはない状態で、少なくとも、前記アンモニアプラントの運転のための動力を供給するように配置されたバックアップ動力システムを含んでおり、およびアンモニア生成のための水素入力が主に、または全部、水素貯蔵により、供給される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
バックアップ動力による運転中、前記バックアップ動力が、ガスタービン、ガスエンジン、燃料電池、または好適なバッテリのいずれかにより、生成され、前記ガスタービン、前記ガスエンジン、および前記燃料電池が好ましくは、水素またはアンモニアで焼成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の方法であって、前記プラントが窒素生成セクションを含んでおり、および前記方法は、窒素の生成が、過剰分の窒素がある場合にそれが大気中に排出される散逸方法により、制御されることを含む、方法。
【請求項18】
アンモニアがアンモニア合成圧力で合成されるアンモニアコンバータを含むアンモニア合成セクション(202);
アンモニアの合成のための前記アンモニア合成セクション内での使用のための水素(3)を生成するように構成された水素生成セクション(200);
前記水素生成セクションに接続された水素貯蔵タンク(5);
前記アンモニア合成セクションへアンモニア補給ガスを供給するように配置された補給ガスラインであって、前記アンモニア補給ガスが、前記水素生成セクション内で生成された水素、および窒素を好適な比率で備える、補給ガスライン;
請求項1~17のいずれか1項に記載の方法を実現するように構成された制御システム
を備える、アンモニアの合成のためのアンモニアプラント(1)。
【請求項19】
前記水素生成セクション(200)は、水から前記水素(3)を生成するように構成された水電解装置(2)を含み、前記水電解装置は、再生可能エネルギーを、好ましくは太陽エネルギーを動力源とする、請求項18に記載のアンモニアプラント。
【請求項20】
請求項18または19に記載のアンモニアプラントであって、前記アンモニアプラントが電気グリッドに接続されておらず、前記プラントは、前記水素生成セクションにより、生成される水素が低く、またはない場合に、少なくとも、前記プラントの運転のための動力を供給するように配置されたバックアップ動力システムを含んでおり、およびアンモニアの生成のための水素入力は主に、または全部、水素貯蔵から得られ、前記バックアップ動力システムは好ましくは、ガスタービン、ガスエンジン、燃料電池、または好適なバッテリのいずれかを含み、ならびに、前記ガスタービン、前記ガスエンジン、および前記燃料電池が、より好ましくは、水素またはアンモニアで焼成される、アンモニアプラント。
【請求項21】
請求項20に記載のアンモニアプラントであって、前記バックアップ動力システムは、公称負荷での前記アンモニアプラントにより、必要とされるピーク動力の10%以下であるバックアップ動力を生成するように配置された、アンモニアプラント。
【請求項22】
アンモニアの合成のためのプロセスであって:
アンモニアが、アンモニアコンバータを含むアンモニア合成セクション(202)内で、アンモニア合成圧力で好適な補給ガス(7)を反応させることにより、合成される工程;
水素が、水素生成セクション(200)内で生成され、ならびに使用されて前記補給ガスを生成し、および/または水素タンク内に貯蔵される工程;
を包含しており、
前記プロセスが:
貯蔵のために前記水素タンク(5)へ前記水素生成セクション(200)から送られる水素(12)の流量を制御する工程;
前記アンモニア合成セクション内での使用のために水素貯蔵タンク(5)から取り出される水素(14)の流量を制御する工程;
前記アンモニア合成セクションへ、前記水素生成セクションにより、送達される水素(13)の流量を制御する工程
をさらに含んでおり、
上述の複数の流量が請求項1~17のいずれか1項に記載の方法により、制御される、プロセス。
【請求項23】
請求項1~17のいずれか1項に記載の方法で作動するように構成された制御システムの提供を含む、アンモニアプラントを改修する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア生成の分野におけるものである。特に、本発明は、アンモニアプラントを制御する方法に、ならびに上記方法を実現するアンモニアプラントおよびアンモニア合成プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアの工業的生成では、好適な比での、水素および窒素の混合物である好適な補給ガスが、フロントエンドで生成され、そして反応セクションで触媒的に反応させられてアンモニアを生成する。特に、補給ガスの生成には、ガス状水素の生成が求められる。適切な量の窒素が、燃焼空気とともに、たとえば二次改質の意味合いで導入され、および/または別個に、たとえば空気からの分離により、準備される。アンモニア合成反応が、通常、いわゆるアンモニア合成ループの一部であるコンバータ内で行われる。
【0003】
従来、水素は、たとえば天然ガスまたは石炭などの炭化水素資源または炭素質源の改質プロセスにより、生成されている。改質ベースのプロセスでは、水素源(たとえば、上述された炭化水素資源または炭素質源)は経時的にほぼ一定であり、また、したがって、全体のプロセスや関連機器は、実質的に、公称能力付近での、たとえば公称能力の70%から110%までの限定された変動を伴う定常状態で運転するように設計されている。
【0004】
しかし、生成され得る水素流の流量および他のパラメータが経時的にかなり変動し得る、時間的に変動する水素源で運転するように適合された、より柔軟なアンモニアプラントに対する、関心が現れつつある。これは通常、再生可能エネルギー源から、たとえば水の太陽エネルギーを動力源とする電気分解から生成される水素の場合にあてはまる。
【0005】
アンモニア生成の意味合いにおける、再生エネルギーからの水素の生成は、CO2の排出を削減または排除できるため非常に興味深い(いわゆる「グリーン」アンモニアプラント)。しかし、それは、水素のそうした再生可能エネルギーベースの生成の変動し得る出力にどう対処するかという問題をもたらす。上述されたように、従来のアンモニアプラントは、水素の一定の、またはほぼ一定の入力で運転するように設計されており、したがって、それらは一般に、再生可能エネルギー源の典型的な変動、特に水素流量の時間変動に追従することができない。
【0006】
水素源の変動は、アンモニア合成セクションへ送達される補給ガス流量の変動をもたらす。当該合成セクションはしかし、そうした変動を許容することができない場合がある、たとえばアンモニアコンバータは、補給ガス入力が小さすぎる場合に自立運転を保つことができず、結果として、シャットダウンや関連する生成損失をもたらす場合がある。
【0007】
上記問題に対する従来の解決策は、水素貯蔵の提供である。当該貯蔵は、水素中間バッファとして機能して水素源の生成不足を一時的に補い得る。しかし、この解決策は、当該水素バッファ貯蔵にかかるコストという欠点を有する。水素は、高圧下で貯蔵されなければならず、および関連するコストは極めて高い。たとえば、エネルギー貯蔵なしで、および電気グリッドとの接続なしで、太陽光起電力電場内で生成された電気により、駆動される水電解からの水素を使用するアンモニアプラントの場合、夜間の電気不足を補うための安定したアンモニア生成を確実にするために大量の水素貯蔵が必要である。この貯蔵のコストは、アンモニアの生成に対する「グリーン」アプローチの競争力および利点を大きく低減させる。
【0008】
特許文献1は、部分負荷で運転するアンモニア合成ループを制御する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【0010】
本発明は、アンモニアプラントおよびプロセスを、変動し得る水素源にどのようにして適合させるかという問題を扱う。特に、本発明は、アンモニアの補給ガスの生成が、変動し得る水素源に部分的にまたは全部、依存する場合に、アンモニアプラント内の水素貯蔵の必要性をどのようにして低減させるかという問題に直面している。本発明は、小量のH2貯蔵でいわゆるグリーンアンモニアプラントを稼働させ、かつそうしたプラントの費用対効果の大きい制御を実現するという課題に直面している。本発明は、具体的には、水素貯蔵と、水素源が変動により左右される場合にプラントおよびプロセスの安定した運転を維持しながら水素貯蔵をどのようにして低減させるかという問題を扱う。
【0011】
特に、本発明は、関連コストを低減させるために比較的小量の水素貯蔵を使用して、負荷低下でのアンモニア合成ループの反応の減衰および減圧を回避し、ならびに高負荷での上記ループの過圧を回避することを目的とする。
【0012】
この課題は、特許請求の範囲に記載の、アンモニアプラントを制御する方法により、解決される。
【0013】
上記方法は、アンモニア合成セクションと、水素生成セクションと、水素貯蔵タンクとを備えるアンモニアプラントに適用される。上記アンモニアプラントは、制限されることなく、窒素生成セクションを含む他の複数のセクションを備え得る。上記アンモニア合成セクションは、水素および窒素を含む供給ガスから出発してアンモニア合成圧力でアンモニアが合成されるアンモニアコンバータを含んでいる。
【0014】
上記方法は:次の項目、すなわち、
a)上記アンモニア合成セクションへ、上記水素生成セクションにより送達される水素の総量;
b)上記ポイントa)の上記水素における、上記水素生成セクション内で現在生成されている水素と、上記貯蔵タンクから取り出される水素との間の比率;
c)上記水素貯蔵タンクへ送られる水素の量
を制御する工程を備えている。
【0015】
本発明によれば、上記制御は、i)水素タンク(5)内に含まれる水素の量;ii)上記アンモニア合成セクションへ送達される水素の流量、および/または上記アンモニアコンバータ内で反応させられる供給ガスの流量;iii)ポイントii)の流量の少なくとも1つの経時的な流量変化、がそれぞれの目標範囲内に維持されるように行われる。
【0016】
ii)およびiii)の目標範囲が、当該アンモニアコンバータを自己熱運転状態に保つように、すなわち、反応の損失および/またはコンバータのシャットダウンを回避するように選択される。
【0017】
b)によれば、アンモニア合成セクションへ送達される水素は、水素生成セクション内で瞬間的に生成される水素の0%~100%、貯蔵タンクから得られる水素の0%~100%、または、瞬間的に生成された水素の一部分および貯蔵から得られた水素の一部分を含むそれらの任意の組み合わせを含み得る。適切な組み合わせは、上述されたような目標i)、ii)およびiii)に基づいて選択され得る。
【0018】
本発明は、従来技術と比較して、水素貯蔵の大きさおよびコストのかなりな低減を可能にする、水素貯蔵の動的制御を提供する。よって、本発明は、再生エネルギーベースの水素からアンモニアを生成することについての、および、よって、アンモニアプラントのいわゆる脱炭素についての新たな興味深い可能性を開くものである。プラント自体は、従来のものよりもより柔軟であり、かつ、より広い範囲のプラント容量(10~110%)でアンモニアを生成し続けることができる。比較的小量の水素貯蔵を有していることは、アンモニアの平準化コスト(LCOA)およびアンモニアプラントの資本支出(CAPEX)を低減させるのに有益であり得る。というのは、アンモニア合成ループおよびそのコンバータは、電解装置からのピーク水素生成に対応するような大きさに作られていないに違いないが、ピーク生成量が上記貯蔵へ送られ得るので、より小さい値に対して設計され得るからである。水素貯蔵を追加することにより、上記貯蔵自体に余分なコストがもたらされるが、その一方で、所定の容量に対して、より小型であり、かつより安価なコンバータを設置することが可能になる。水素貯蔵のための余分なコストは、より小型のコンバータによる節約により、十分補われる。これは特に、小さな設備利用率を有する、大きく変動し得る動力プロファイルの場合にあてはまる。当該設備利用率は、年間動力生成量と、最大の設置動力容量との間の比として定義される。
【0019】
本発明の方法を使用するアンモニアプラントは、再生可能エネルギーからの変動し得る水素および窒素入力を経済的に受け入れ得る。よって、それは、アンモニア市場における、再生可能エネルギーの浸透の増大を促進し、いわゆるグリーンアンモニアの生成を増大させ得る。
【0020】
本発明の別の態様は、特許請求の範囲に記載のアンモニアプラントおよびプロセスである。本発明のなお別の態様は、特許請求の範囲に記載の、アンモニアプラントを改修する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるアンモニア合成プラントの単純化された図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態によるアンモニア合成プラントの単純化された図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態によるアンモニア合成プラントの単純化された図である。
【
図4】任意の期間にわたる、風力エネルギー源の一般的な利用可能性を示すプロットである。
【
図5】柔軟さがない、および柔軟なアンモニアプラントであって、いずれも、
図4の利用可能性を備えた風力エネルギー源を動力源とする、柔軟さがない、および柔軟なアンモニアプラントについての経時的なアンモニア負荷の変動を示す。
【
図6】
図5の柔軟さがない、および柔軟なアンモニアプラントを稼働させるのに必要な水素質量を示す。
【
図7】温度の関数としての、およびアンモニアの合成のための一般的な工業用触媒についての、アンモニア生成率のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、太陽エネルギーなどの再生可能エネルギー源から、そうした源の固有の変動により、水素が生成されるアンモニアプラントの場合に特に興味深い。しかし、これが前提条件でなく、および本発明が、大量の水素中間貯蔵の必要性を低減させるために供給水素の、時間的に変動し得る流量を有する従来のアンモニアプラントに適用される場合もあることを理解されたい。水素の、または水素を生成するためのエネルギーの変動し得る入力は、コストの問題に基づいて決定され、または選択される場合もある。たとえば、水素は、エネルギーのコストが低い時間帯中にグリッドから移入されるエネルギーにより、生成される場合があり;アンモニア生成は、エネルギーのコストが高い時間帯中の水素貯蔵に少なくとも部分的に依存する場合がある。
【0023】
本発明は、水素が再生可能エネルギーから全部または部分的に生成されるアンモニアプラントに、または、水素が部分的に再生可能エネルギーから生成され、および部分的に改質などの従来の源から生成されるハイブリッドプラントに適用可能である。いくつかの実施形態では、水素は、電気エネルギーであって、上記電気エネルギーが再生可能エネルギー源から部分的に、また全部生成される、電気エネルギーから(たとえば、電解により、)生成され得る。好ましい再生可能動力源は、太陽および風力を含んでいる。
【0024】
本発明の種々の実施形態では、再生エネルギー源からの、水素の生成のための好ましいプロセスは、水電解である。特に好ましくは、水電解は、太陽エネルギーまたは風力エネルギーを動力源とし得る。
【0025】
本発明は、興味深い実施形態によれば、水素の生成のための再生可能エネルギー源を使用した、いわゆるアイランド型または半アイランド型アンモニアシステムに適用可能である。アイランド型システムは、グリッド接続なしのシステムを表す;半アイランド型システムは、限定された状態下であるが使用されるグリッド接続を備えたシステムを表す。アイランド型システムでは、通常運転下の電気動力入力は全部、太陽エネルギーなどの再生可能エネルギー源により、供給され得る。
【0026】
本発明の実施形態では、水素は再生可能動力から生成され、およびアンモニアプラントは、電気グリッドに接続されていないアイランド型プラントである;上記プラントは、水素生成セクションにより、生成される水素が低く、またはない状態で、少なくとも、アンモニアプラントの運転のための動力を供給するように配置されたバックアップ動力システムを含んでいる。水素生成セクションの低出力の状態が、たとえば、再生可能動力が通常の10%以下である場合に生じ得る。よって、水素入力は主に、または全部、水素貯蔵により、供給される。
【0027】
バックアップ動力で運転するアンモニアプラントの上記状態は、たとえば、夜間に、またはより一般的には、太陽エネルギーが、たとえば厚い雲に覆われていることが理由で、利用可能でないか、または非常に低い場合に、水素の、太陽ベースの生成によるアンモニアプラントの場合にあてはまる。
【0028】
バックアップ動力は、アンモニアプラントの種々の機器の、特に、水素および窒素をアンモニア合成圧力に上昇させるのに必要な水素圧縮機および窒素圧縮機の運転を確実にするような大きさに作られる。バックアップ動力で運転する場合、上記圧縮機は、安定した運転と両立する場合、低減させられた負荷で稼働させられ得る。
【0029】
上記バックアップ動力は好ましくは、ガスタービン、ガスエンジン、燃料電池、または好適なバッテリのいずれかにより、生成される。上記ガスタービン、ガスエンジン、および燃料電池は好ましくは、水素またはアンモニアで焼成される。風力エネルギーが通常、バッテリにより、効率的に補われ得る短期変動を有するため、バックアップ動力のためのバッテリの使用が、風力を動力源とするプラントについては好ましい場合がある。太陽ベースのシステム(たとえば、光起電力)の場合、昼夜周期性が理由で、タービン、エンジン、または燃料電池の設置が好ましい。
【0030】
電解装置ベースのアンモニアプラントでは、バックアップ動力は実質的に、電解装置以外の機器すべてを稼働させるような大きさに作られる。関心のある実施形態では、動力入力の90%以上が電解装置により、吸収される。よって、バックアップ動力は、プラントにより、必要とされるピーク動力の10%以下であり得る。いくつかの実施形態では、バックアップ動力は、ピーク動力の5%~10%、または5%未満であり得る。
【0031】
上述されたバックアップ動力運転の利点は、アイランド型アンモニアプラントを最小負荷で稼働させ続け、主エネルギー源が利用可能でないか、または非常に低い出力を有する場合に完全なシャットダウンを回避するということである。本発明によるアイランド型アンモニアプラントは、電気グリッドが存在しておらず、およびなお高収益で運転する遠隔位置に設置され得る。別の利点は、アイランド型アンモニアプラントが、真に「グリーンアンモニア」である、すなわち、全部、再生可能エネルギー源から得られたエネルギーにより、生成された、アンモニアを生成し得るということである。
【0032】
半アイランド型システムでは、電気動力の大半は、再生可能エネルギー源により、システム内で、内部で生成され、および、グリッド接続は、再生可能エネルギー源が利用可能でない場合に最小量の動力を供給するために、または再生可能エネルギー源の動力出力が、アンモニアの目標生成に必要なものよりも大きい場合にピークを吸収するために使用される。
【0033】
専用の再生可能動力生成およびグリッド接続を備えた半アイランド型グリーンアンモニアプラントの場合、グリッド接続が、最小負荷で(たとえば、太陽PV再生可能動力生成の場合に夜間に電気を移入して)プラントを稼働させ、および再生可能動力生成のピークを吸収するための最小量の動力の利用可能性を常に保証するために提供される。半アイランド型プラントに本発明を適用する、関連する利点は、グリッド電気動力の移入が最小にされ、および、これが、グリッド電気が高価な場合にアンモニアの生成の全体コストを低減させ得るということである。
【0034】
アンモニア合成セクションは、適切な触媒上で、アンモニアを含んでいるガス状生成物に補給ガスを反応させるのに好適なアンモニア合成反応器(アンモニアコンバータ)を備える。上記コンバータは通常、アンモニア合成ループの一部である。
【0035】
アンモニア合成ループは、アンモニアコンバータに加えて、ループ内の循環を維持し、およびアンモニアコンバータに供給するように構成された圧縮機であるサーキュレータ;アンモニア含有廃水の凝縮のためにコンバータの下流に配置された凝縮器;アンモニア生成物が、凝縮後に、アンモニア液体生成物と、未変換物質を含んでいるガス状再循環流とに分離される分離器、上記分離器からサーキュレータの吸引側への再循環ラインを備え得る。
【0036】
好ましい実施形態では、ループは、サーキュレータにより送達された補給ガスの一部がアンモニアコンバータを迂回することを可能にするように配置された、アンモニアコンバータの迂回ラインを備える。迂回流量は、国際公開第2021/089276号により、開示されたループ圧力制御方法により、低減させられた負荷で運転する場合に許容可能な値に合成ループ圧力を維持するように制御され得る。非常に好ましくは、本発明の水素貯蔵制御は、上記ループ圧力制御と組み合わせられ得る。
【0037】
アンモニアコンバータには、アンモニア補給ガスが供給される。アンモニア補給ガスとの語は、水素および窒素を、アンモニア合成のための好適なN/H比で含んでいるガス状混合物を表す。上記比は通常、3:1、または約3:1である。
【0038】
アンモニア合成圧力は、高圧であり、通常、100バールを上回る。ほとんどの用途では、アンモニア合成圧力は、100バール~300バール、より好ましくは120バール~250バールの範囲内にある。水素貯蔵も、たとえば200バールなどの好適な高圧である。よって、水素生成セクションにより、生成された水素は通常、貯蔵のために、および、補給ガスラインへの供給のために圧縮される。
【0039】
上述された複数のパラメータa)、b)およびc)は、水素タンク内の水素の量が最小量を上回っており、および最大量を下回っているという条件を満たして、上記水素タンクを空にすることおよび過充填することを防止するように制御され得る。たとえば、水素タンク内の水素の量は、上記タンクの公称貯蔵容量の10%~30%に相当する最小量超、かつ70%~90%に相当する最大量未満に維持され得る。
【0040】
貯蔵量が最小量を下回っており、または空である場合、反応喪失およびシャットダウンのリスクが存在し得る。一方、貯蔵量が満タンである場合、プラントは、生成された水素すべてを処理することができない場合があり、よって、水素の一部は排出されなければならず、および再生可能動力は全部利用される訳でない。
【0041】
上述された複数の目標ii)およびiii)は、自己熱運転状態にアンモニアコンバータを維持するように選択される。上記自己熱運転状態は、反応の高温廃水から回収された熱が、反応を維持するのに十分高い温度に、新鮮な供給ガスを予熱する状態を表す。
【0042】
通常、供給ガスは、触媒的に反応させられてアンモニアを生成する前に予熱され;供給ガスの予熱は、アンモニア合成反応の高温廃水から、新鮮な供給ガスへ熱を伝達することにより、行われ;上記自己熱運転状態は、予熱された供給ガスが閾値温度以上の温度を有している状態に相当する。
【0043】
上記閾値温度は、本発明の方法の入力データであり得る。上記閾値温度は、望ましくない、反応喪失、およびコンバータのシャットダウンのリスクを回避するように選択される。上記閾値温度は、アンモニア合成反応に使用される触媒に応じて変わり得る。アンモニア合成において一般に使用される触媒の場合、上記閾値温度は、300℃および400℃間、より頻繁には、300℃および350℃間に含まれ得る。
【0044】
新鮮なガスの予熱は、アンモニアコンバータの一部であり得る供給廃水熱交換器、または別個の機器内で行われる。
【0045】
新鮮なガスの予熱では、発熱性アンモニア合成反応により、生成される熱である、反応廃水の熱量は、その後の反応のために、十分に高い温度に新鮮な供給物を予熱するために使用される。温度が所定の閾値を下回る場合、アンモニア合成反応の反応速度、および廃水の温度がその結果、低減させられ、よって、供給ガスの予熱に利用可能な熱が少なくなり、および温度はさらに減少する傾向にあり、コンバータのシャットダウンにつながる。本発明の方法は、そうした、反応喪失およびコンバータのシャットダウンを回避するように構成される。
【0046】
すなわち、本発明の方法は、自立運転とも呼ばれる自己熱運転の状態にアンモニアコンバータを維持する。
【0047】
好ましくは、上述された目標範囲ii)は、アンモニアコンバータの最大負荷および最小負荷が、コンバータ内の上述された反応喪失を回避するために設定された設計限度内にあるように選択される。さらに好ましくは、目標範囲iii)は、アンモニアコンバータ負荷における流量変動が、コンバータ内の上述された反応喪失を回避するために設定された設計限度内にあるように選択される。よって、本発明は、安定した運転、および、特に、ランプダウンまたはランプアップ中のコンバータ内のアンモニア合成反応の消滅のリスクの低減をもたらす。
【0048】
アンモニア合成セクションへ送達された水素は通常、好適な比率で窒素と混合されて、アンモニア補給ガスを得る。上記アンモニア補給ガスは、アンモニアコンバータを含むアンモニア合成ループへ供給される。
【0049】
上述された条件iii)によれば、方法は、アンモニア合成セクションへ供給される水素の流量の、または、アンモニアコンバータへの供給ガスの流量の、経時的な流量変動を制御する。上述された複数の流量の経時的な変動は、アンモニア合成セクションの負荷のランプアップまたはランプダウンに対応しており、それは、アンモニアコンバータにより、許容される特定の最大値を超えるはずでない。ランプは通常、経時的に%で表され、よって、たとえば、最大ランプは100%/hであり得る。最大ランプは、より短い期間、たとえば8%/5分を基準として定義される場合もある。
【0050】
アンモニア合成セクションの負荷は、アンモニア合成セクションにより、処理される補給ガスの流量により、表され、よって、それは、水素生成セクションから受け取られた水素に比例する。アンモニア合成ループの負荷を基準とする場合もある。
【0051】
本発明の方法は、アンモニア合成セクションの現在の負荷に基づいて複数のパラメータa)、b)、およびc)を制御し得る。複数のパラメータa)、b)、よびc)は、水素生成セクションの現在の水素出力;水素タンク内に含まれる水素の量;アンモニア合成セクションへ伝達される水素の量;アンモニア合成セクションの現在の負荷;アンモニア合成セクションの負荷の1つまたは複数の過去の値の1つまたは複数に基づいて制御され得る。
【0052】
さらなる実施形態では、上記複数のパラメータa)、b)およびc)は、上記アンモニア合成圧力が目標範囲内にあるという条件も満たすように制御される。
【0053】
好ましい実施形態では、上記複数の項目a)、b)およびc)は、1つまたは複数の設定点信号に基づいて制御され、および上記1つまたは複数の設定点信号は、水素タンク内に含まれる水素の量の関数として生成される。
【0054】
好ましい実施形態では、水素がガス状で貯蔵され、そしてそれゆえ、タンク内に含まれる水素の量は、タンク内の圧力を検出することにより測定され得る。いくつかの実施形態では、しかし、水素が液状で貯蔵され、そしてそうした場合には、タンク内の液体の高さが検出される場合もある。
【0055】
一実施形態では、本発明の方法は、マスターコントローラと、上記マスターコントローラに対するスレーブコントローラとして構成された複数の流量コントローラとを備えるカスケード制御システムにより、行われ、上記マスターコントローラは、タンク内に含まれる水素の量に対する感受性を有し、および、上記流量コントローラは、項目a)、b)およびc)に対して流量を制御するように配置された複数の流量調整バルブに作用する。
【0056】
上記カスケード制御システムは、上記水素貯蔵ユニットを空にすること、および/もしくは、水素で過充填することを防止し、ならびに/または、好適な流量でアンモニア合成ループへ水素を供給し、および、アンモニアコンバータ内の反応速度の低下を回避するためにランプ制御を行うように構成され得る。
【0057】
上述されたように、水素がガス状で貯蔵される場合、マスターコントローラは、水素貯蔵タンク内のガス状水素の圧力を感知するために配置された圧力センサを備え得る。
【0058】
上記複数の流量調整バルブは:
水素貯蔵タンクへ送られる水素の流量、およびアンモニア合成セクションへ送られる水素の流量を調整するように配置された1つまたは複数のバルブ;
水素貯蔵タンクから取り出される水素の流量を調整するように配置された少なくとも1つのバルブ
を含み得る。
【0059】
一実施形態では、単一のバルブが、水素貯蔵タンクへ送られる水素の流量、およびアンモニア合成セクションへ送られる水素の流量を制御するために使用され得る。たとえば、水素送達ラインは、タンクへ導かれたラインおよびアンモニア合成セクションへ導かれたラインに分けられる場合があり、ならびに、上記複数のラインの1つの上に配置されたバルブは、いずれもの流量を定め得る。一実施形態では、たとえば、第1の流量調整バルブは好ましくは、水素貯蔵タンクへ流れる水素の量を直接調整し、および、アンモニア合成セクションへ流れる水素の量を間接的に調整するために使用される;第2の流量調整バルブは好ましくは、水素貯蔵ユニットから得られる水素の量を調整するために使用される。
【0060】
別の実施形態では、上記複数の流量調整バルブは、上述された複数の流量それぞれを制御するための別個のバルブを含んでいる。
【0061】
アンモニア合成セクションへ伝達される補給ガス流量は、合成ループの安定した、および自立した運転を、特に、アンモニアコンバータの冷却およびシャットダウンを回避するために、維持するのに好適な目標範囲内に維持される。上記目標範囲は、アンモニア合成セクションの公称容量(すなわち、アンモニア合成セクションの、および関連するループの負荷)の1%~110%または10%~110%または20%~110%であり得る。上記公称容量は、通常の状態下で、合成セクションにより、生成され得るアンモニアを表している。
【0062】
一実施形態では、本発明の方法は合成ループ圧力の制御を特徴とする場合もある。合成ループ圧力は、水素であって、水素生成セクションにより、送達され得る、および、対応して、処理され得る補給ガスの、水素に応じて制御され得る。合成ループ圧力は、アンモニアコンバータの迂回流量、すなわち、ループ内を循環するがアンモニアコンバータを迂回する供給ガスの量を判定することにより、制御され得る。非常に好ましくは、合成ループ圧力は、国際公開第2021/089276号に開示された方法により、制御され得る。
【0063】
本発明の特に興味深い用途は、水から水素を生成するように構成された水電解装置を含む水素生成セクションに関する。より好ましくは、上記水電解装置は、太陽エネルギーまたは風力エネルギーなどの再生可能エネルギーを動力源とする。好ましい用途は、光起電力生成システムに結合された水電解装置を提供する。
【0064】
水素が、特に水電解装置により、生成される圧力は一般に、アンモニア合成圧力、および貯蔵用圧力をはるかに下回っており、したがって、圧縮が通常、行われる。圧縮は、高圧縮比が理由で、通常、多段圧縮機により、行われる。好ましくは、圧縮機は、中間冷却多段ユニットである。
【0065】
また、ガス状窒素が通常、たとえば空気分離ユニットにより、低圧で生成され、および多段式窒素圧縮機内で圧縮される。
【0066】
窒素の生成は、補給ガス内の水素対窒素比を調整するように制御されなければならない。好ましい実施形態では、窒素の生成は、過剰分の窒素がある場合にそれが大気中に排出される散逸方法により、制御される。
【0067】
より安定した運転状態にコンバータを保つ利点は、化学量論比のない非バランス型ガスの反応速度が場合によっては消滅することを防止することである。
【0068】
一実施形態では、単一の水素圧縮機が、貯蔵タンクへ、およびアンモニア合成セクションへ水素を送るために設けられる。上記水素圧縮機は、タンクへ導かれた第1のラインおよびアンモニア合成セクションへ導かれた第2のラインに分かれる送達ラインを有し得る。上記第2のラインは、窒素ラインと合流して、補給ガスを形成し得る。本実施形態では、貯蔵圧力が合成圧力よりも小さい場合、貯蔵タンクより取り出された水素は、圧縮機の吸引部へ、またはその中間段へ送られて、貯蔵タンクから得られた水素を合成セクションへ供給することを可能にし得る。別の実施形態では、複数の別個の圧縮機は、それぞれ、貯蔵タンクを充填するために、および、合成セクションへ供給するために設けられ得る。
【0069】
本発明は、上述されたような方法を実現するように構成された制御システムを備えたアンモニアプラントにさらに関する。
【0070】
好ましい実施形態では、プラントは、再生可能エネルギーを動力源とする水電解装置;水素圧縮機、水素貯蔵ユニット、アンモニア生成ループ、窒素生成セクション、上記水電解装置を上記水素圧縮機へ接続するコンジット、および上記水素圧縮機を上記水素貯蔵ユニットへ接続するコンジットを含む、アンモニアの生成のためのフロントエンドを備える。
【0071】
制御システムは、圧力コントローラ、第1の流量コントローラ、および第2の流量コントローラを備え得る。圧力コントローラは、水素貯蔵ユニットに、第1の流量コントローラに、および第2の流量コントローラに接続される。
【0072】
圧力コントローラは、第1の流量コントローラおよび第2の流量コントローラがそれぞれ、第1の流量調整バルブおよび第2の流量調整バルブを備える一方で、水素貯蔵ユニット内に保持された水素を測定するように適合されたセンサを備え得る。
【0073】
圧力コントローラは、水素貯蔵ユニット内に保持された水素の量に基づいて、および、水素生成セクション内で生成された水素の量に基づいて1つまたは複数の設定点信号を生成するように構成され得る。上記コントローラは、上記1つまたは複数の設定点信号を、上記第1の流量コントローラへ、および上記第2の流量コントローラへ送信して、水素貯蔵ユニットへ送られる水素の流量、アンモニア合成ループへ送られる水素の流量、および水素貯蔵ユニットから取り出される水素の流量を上記第1の流量調整バルブを介して、および上記第2の流量調整バルブを介して調整するように適合され得る。
【0074】
本発明のまた別の態様は、本発明の方法が実現された、アンモニアの合成のためのプロセスである。
【0075】
本発明の顕著な利点は以下を含んでいる。アンモニアプラントのCAPEX(資本支出)は、小型のH2貯蔵ユニットが使用され得るので、低減させられ、および、アンモニアプラントは、より広い範囲の運転状態で運転され続けられ得る。アイランド型または非アイランド型のアンモニアプラントの柔軟な運転が実現され得る。というのは、好適な流量の補給ガスをコンバータへ供給して、アンモニアコンバータを連続運転状態に維持し得るからである。水素貯蔵ユニットを空にすること、または水素で過充填することが回避される。経時的な補給ガス流量変動(ランプ)が、アンモニアコンバータにより、許容可能な限度内で維持され、反応の減速、またはプラントのシャットダウンを防止する。
【0076】
本発明の興味深い用途は、既存のアンモニアプラントの改修に関する。本発明により、アンモニアプラントを改修する方法は、少なくとも、上述されたような方法により、運転するように構成された制御システムの提供を含む。上記方法は、水素の生成のための水電解装置の、および、該当する場合、水素貯蔵の追加をさらに含み得る。上記プラントが水素貯蔵を備えている場合、本発明は既存の貯蔵の制御に適用され得る。
【0077】
本発明は、従来のアンモニアプラントまたはハイブリッドアンモニアプラントの改修に適用され得る。従来のアンモニアプラントは、水素が化石燃料から生成されるプラントを表す;ハイブリッドアンモニアプラントは、水素が部分的に化石燃料から、および部分的に再生可能エネルギーから生成されるプラントを表す。本発明により、改修されたプラントでは、より多くのアンモニアが安定して生成される場合があり、および水素流量の、より大きな時間変動が受け入れられ得る。
【実施例】
【0078】
以下は、本発明の一実施形態による、水素貯蔵制御のための例示的なアルゴリズムの説明である。上記アルゴリズムはメタ言語で記述され、および以下の記号が使用される。
LoadMin 合成ループ内の最小流量
LoadMax 合成ループ内の最大流量
RampUpMax 合成ループにより、許容される最大ランプアップ
RampDownMax 合成ループにより、許容される最大ランプダウン
FillMin 水素貯蔵タンクの最小充填
FillMax 水素貯蔵タンクの最大充填
Dt ランプを確認するための時間分解能
LoadPrec 合成ループの先行負荷(継続的に更新される)
FIC-1 バルブFCV1の流量コントローラ
FIC-2 バルブFCV2の流量コントローラ
FCV1 貯蔵タンクへ送られる水素の流量、およびアンモニア合成セクションへ送られる水素の流量を制御するための流量制御バルブ
FCV2 貯蔵タンクから取り出される水素の流量を制御するための流量制御バルブ
MIN,MAX 特定のリスト中の最小または最大値を返す
FILLING H2貯蔵の現在の充填%
【0079】
バルブFCV1が、貯蔵へ送られる水素の流量、および上記合成セクションへ送られる水素の流量をいずれも制御し得ると仮定される。これは、たとえば、貯蔵タンクへ導かれた第1のラインおよび上記合成セクションへ導かれた第2のラインに分かれるライン上で、圧縮された水素を送達する水素圧縮機を有する装置を設けることにより、行われ得る。バルブFCV1は、直接、第1のラインを介して貯蔵へ送られる水素を、および、よって、上記合成セクションへ導かれた第2のライン内の流量を制御するように上記第1のライン上に設けられ得る。
【0080】
バルブFCV2が、タンクから、たとえば、タンクの上部から水素を得るように配置され、および水素圧縮機の吸引側へ、または圧縮機の中間段へ導かれたライン上に設けられ、よって、貯蔵から取り出された水素が、合成セクションへ供給するために、好適な圧力に上昇させられる。
【0081】
水素が、上記水素圧縮機の吸引側に接続された電解装置により、生成されることも仮定される。
【0082】
時間tでの、水素貯蔵タンクの充填(現在の充填)は、p(t)がタンク内の水素の現在の圧力であり、およびpdesが100%充填での基準圧力であるとき、Filling(t)=p(t)/pdesと定められ得る。
【0083】
Dtは、システムの時間分解能を表す。変動し得るLoadPrecは、時間(t-Dt)を参照して継続的に更新される。
【0084】
上記複数の条件下で、水素貯蔵を制御するための例示的なアルゴリズムは以下の通りであり得る。
【0085】
工程1:FIC-1およびFIC-2の設定点の定義
この工程では、電解装置により、生成される水素流量(H2生成負荷)が、アンモニア合成ループをその公称流量で稼働させるのに必要な量と比較される。比較の結果に基づいて、および、タンク内に貯蔵された水素の現在の量に基づいて、システムは、バルブFCV1およびFCV2の設定点、すなわち、水素が貯蔵され、または、貯蔵から得られなければならないか、および、どの程度の量の水素が貯蔵され、または、貯蔵から得られなければならないかを定める。
【0086】
【0087】
工程2:最大ランプアップ/ダウンの確認
この工程では、システムは、ループの先行負荷を使用して、ランプアップまたはダウンが、ループ自体により、許容可能な限度を超えるものでないことを確実にする。
【0088】
【0089】
工程3:ループ圧力の制御
synloopの圧力は、サーキュレータの迂回バルブに作用して、制御され、および一定に保たれる。任意的には、ループが部分負荷で運転する場合、システムは、アンモニア合成ループの圧力を低減させて、圧縮動力を節約し、および部分負荷での体積流量の低減の影響を緩和する場合もある。あるいは、アンモニアをコンバータの上流に注入して、部分負荷での変換を減速させ得る。
【0090】
図1のアンモニアプラント1は基本的には、水素供給13の生成のための水素生成セクション200と;窒素供給9の生成のための窒素生成セクション201と;アンモニア生成物10を形成するように上記水素供給13および窒素供給9が反応させられるアンモニア合成セクション202と、を含んでいる。
【0091】
より詳細には、水素生成セクション200は、水供給50からの水素流3の生成のための水電解装置2;水素圧縮機4;水素貯蔵タンク5、を含んでいる。水電解装置2は、
図1では太陽源Sである再生可能エネルギー源により、供給される電気動力Eを動力源としている。太陽源Sはたとえば、光起電力電場であり得る。
【0092】
窒素生成セクション201は、空気供給24からの、窒素51の抽出のための窒素生成ユニット25と、窒素圧縮機27とを含んでいる。上記窒素生成ユニット25は、酸素または酸素富化空気の流26も生成する空気分離ユニット(ASU)であり得る。
【0093】
アンモニア合成セクション202は、アンモニア合成ループ6;迂回ライン53を備えたサーキュレータ32を含んでいる。サーキュレータ32は、水素供給13および窒素供給9を含む補給ガス7を受け取る。アンモニア合成ループ6は、
図3の実施形態に示されるように、アンモニアコンバータを含んでおり、補給ガス7は、アンモニアを形成するように、好適な触媒上で反応させられる。
【0094】
水素圧縮機4は、水素供給13をアンモニア合成セクション202へ送達するための第1のライン、および水素を貯蔵タンク5へ送達するための第2のライン12に分かれる送達ラインを有している。第1の流量調整バルブ18が、上記第2のライン12上に設けられている。
【0095】
水素は、第2の流量調整バルブ19を備えたライン14を介して貯蔵タンク5から取り出され得る。上記ライン14は、貯蔵された水素を、圧縮機4の吸引側に、または圧縮機の中間段へ導入するように構成され得る。よって、合成セクション202は、水素を直接、それが電解装置2から生成され、および/または貯蔵タンク5から取り出されるにつれ、受け取り得る。
【0096】
アンモニアプラント1は、アンモニアプラント1の瞬時の作動状態に応じて水素の貯蔵を制御するように構成された制御システム203をさらに含んでいる。より正確には、上記制御システム203は、上述されたバルブ18、19、および、結果として、ライン12を介して水素タンク5へ供給される水素の量;ライン14を介して水素タンク5から取り出される水素の量;ライン13を介してアンモニア合成セクション202へ送られる水素の量を制御する。
【0097】
上記制御システム203は、水素タンク5内の水素の圧力に対する感受性を有する圧力センサに接続された圧力インジケータコントローラ15と、上記第1の流量調整バルブ18に接続された第1の流量インジケータコントローラ16と、上記第2の流量調整バルブ19に接続された第2の流量インジケータコントローラ17とを備える。
【0098】
調整は、圧力インジケータコントローラ15がマスターコントローラとして機能し、ならびに、第1の流量インジケータコントローラ16および第2の流量インジケータコントローラ17がスレーブコントローラとして構成されるカスケード制御ロジックに従って行われる。圧力インジケータコントローラ15(マスタコントローラ)は水素タンク5内部の圧力を検出し、そして、その結果として、上記タンク5内に貯蔵された水素の量を検出する。上記検出に基づいて、コントローラ15は、第1の流量インジケータコントローラ16へ、および第2の流量インジケータコントローラ17(スレーブコントローラ)へ、設定点信号11a、11bを提供する。
【0099】
任意には、上記マスターコントローラ15は、上記源Sにより、利用可能にされた動力Eに基づいた、電解装置2の瞬間出力を表す、電解装置2により、供給される水素流3の流量の信号を受信する場合もある。よって、設定点信号11a、11bは、タンク5の内容物、および電解装置2の現在の出力に基づいて算出され得る。
【0100】
2つのスレーブコントローラ16、17は、マスターコントローラ15により、受信された設定点信号11a、11bを実現し、および上記複数の設定点信号に従って、第1の流量制御バルブ18の、および第2の流量制御バルブ19の開放を調整する。
【0101】
図1をみれば、水電解装置2から生成された水素3は、圧縮された後、第1の流量調整バルブ18の開放に応じて、ライン12を介して水素貯蔵タンク5へ、および/またはライン13を介してアンモニア合成セクション202へ導かれ得ることに留意され得る。適切な場合には、第2の流量調整バルブ19を開放し、および制御することにより、上記タンク5内に貯蔵された水素が取り出され、およびアンモニアの生成のために使用され得る。
【0102】
水素13が窒素9と混ぜられて、アンモニアの合成のための好適なN/H比を有する補給ガス7を生成する。窒素の適切な量はバルブ211により、制御される。
【0103】
ライン13内の水素供給は、ライン9内の窒素供給とともに、アンモニア合成ループ6の補給ガス入力フロー7を形成する。迂回ライン53は、サーキュレータ32により、送達される補給ガスの一部分が合成ループ6を迂回し得ることを確保する。上記迂回ライン53は、合成ループ6に入る補給ガスの流量を制御して、アンモニアコンバータ内の圧力または温度を間接的に制御することを可能にする。
【0104】
合成ループの迂回は、アンモニアプラントが部分負荷で稼働させられる場合に、アンモニアコンバータの圧力を制御し、およびアンモニアコンバータを適切な作動状態(自己維持状態)に保つのに有用であり得る。この目的のための好ましい制御システムは、国際公開第2021/089276号に開示されており、および本発明の方法と組み合わせられ得る。
【0105】
水素貯蔵の適応制御を提供することにより、水素貯蔵タンク5を空にすることおよび過充填することを回避し、および、許容可能な経時的流量変動(ランプ)で合成ループに供給して、アンモニア合成ループの自己持続運転を維持することを可能にする。以上のことはすべて、比較的小さな大きさの貯蔵タンク5、次いで、そのコストの低減により、可能にされる。
【0106】
この説明において以上で詳述された例の制御ロジックは
図1のレイアウトに適用され、バルブ18がFCV1に対応し、およびバルブ19がFCV2に対応する場合がある。
【0107】
図2は、
図1のものと同様の実施形態であって、アンモニア合成セクション202へ送られる水素の流量が、ライン13上に設置されたさらなる流量調整バルブ20により、制御される、実施形態を示している。
【0108】
好ましくは、
図2に示されるように、流量インジケータコントローラ16は、マスターコントローラ15により、送信される設定点信号11aに基づいて、上述されたバルブ18および上記さらなるバルブ20を制御する。
【0109】
図3は、
図1~2のものに対応する項目が、単純にするために、同じ参照番号により、表される別の実施形態を示す。
【0110】
図3では、タンク5から取り出された水素のライン14は、タンク5に供給する水素圧縮機4と並列の水素ライン60に接続されている。窒素供給ライン51も上記ライン60に接続されている。よって、主補給ガス圧縮機36は、補給ガス7の圧縮のために設けられている。本実施形態における圧縮機4は、水素を貯蔵タンク5へ供給するためのブースト圧縮機としての役目を務めているに過ぎない。
【0111】
水電解装置2の後に、上記電解装置2内で生成された水素3から微量の酸素を除去するために配置された、脱酸素反応器70も示されている。脱酸素反応器は、
図1および
図2の概略図中で設けられる場合もある。
【0112】
第1の流量調整バルブ18はブースト圧縮機4の供給ライン上に配置されており;第2の流量調整バルブ19はライン14上に配置されている。設定点11a、11bがマスターコントローラ15により、設けられて、上記バルブ18、19はコントローラ15、16により、制御される。制御システムは、
図1および
図2の好ましい実施形態に開示されたものと実質的に同様に作動する。
【0113】
主圧縮機36は、圧縮された補給ガス61をアンモニア合成ループ6へ送達する。
【0114】
アンモニア合成ループ6は、
図3に、より詳細に示す。それは、サーキュレータ32と、アンモニア32の合成のためのアンモニアコンバータ21と、凝縮器33と、反応させられていない水素および窒素、ならびにアンモニアの残留蒸気を含んでいるガス状再循環流35から液体アンモニア流10を分離するための分離器34とを備える。
【0115】
サーキュレータ32は、サーキュレータ32の吸引側へ戻り、コンバータ21を迂回する、サーキュレータ32により、送達される補給ガス61の流量を調整するためのバルブ31が備えられた迂回ライン53を備えている。分離器34から抽出されたガス状再循環流35も、再循環ライン30を介してサーキュレータ32の吸引側へ再循環させられ得る。
【0116】
プラントは、ライン30内を循環するガス状再循環流35の上記部分の圧力を感知し、および、設定点信号を流量制御バルブ31へ送って、迂回ライン53内を再循環させられた圧縮された補給ガスの流量を制御するために使用され得る圧力インジケータコントローラ62をさらに備える。
【0117】
図4~6は、本発明の利点のさらなる証拠を提供する。
【0118】
図4は、100時間の期間にわたる、電解装置2に接続された動力源の、変動する利用可能性を示すプロットを示している。
【0119】
図5は、
図4の期間にわたる、アンモニアプラントの負荷の変動の2つのプロットを含んでいる。第1のプロットは、公称負荷の70%~110%で運転する従来のアンモニアプラントである。第2のプロットは、負荷が公称負荷の10%~110%の範囲で変動し得る、本発明の方法により、稼働させられる柔軟なプラントに関する。
【0120】
図6は、
図5の2つのオプションによる、アンモニアプラントの安定した運転を確実にするために貯蔵され(たとえば、水素タンク5内に保持され)なければならない水素の質量をプロットしている。
【0121】
特に、
図6は、最大水素貯蔵量が最大60’000kgから10’000kg未満に低減させられることを示す。よって、水素タンクの大きさおよびコストが大きく低減させられる。たとえば、水素貯蔵コストを、貯蔵された水素1kg当たり、450米ドルと仮定すれば、アンモニアの平準化されたコストが、約33%だけ、低減させられ得ると出願人は算出している。
【0122】
図4は、たとえば風を動力源とする装置内にみられ得る上記源の変形を反映している。
太陽エネルギーが使用される場合、より周期的な変動(昼/夜)を伴えば、本発明はさらに有利であり、および、水素貯蔵の大きさはさらに低減させられ得る。
【0123】
図7は、温度に対する、アンモニアの形成率の一般的なプロットを示している。
図7は、鉄系触媒上、および水素窒素比3で、150バールで行われたアンモニア合成を表している。上記プロットは、アンモニア形成率が、400℃未満で劇的に減少することを示している。触媒に基づいて、自己熱運転の閾値温度がおおむね300℃および350℃間で定義され得る。本発明の方法は、流量を制御することにより、アンモニアコンバータの運転を維持し、ならびに、反応喪失、およびコンバータのシャットダウンの状態を回避する。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアプラント(1)を制御する方法であって:
前記アンモニアプラント(1)が:
水素および窒素を含む供給ガスから出発してアンモニアがアンモニア合成圧力で合成されるアンモニアコンバータを含んでいるアンモニア合成セクション(202);
ガス状水素(3)を生成するように構成された水素生成セクション(200);
前記水素生成セクションに接続された水素貯蔵タンク(5)
を備え;
前記方法は:
a)前記アンモニア合成セクションへ、前記水素生成セクションにより供給される水素の総量(13);
b)項目a)の前記水素の量における、前記水素生成セクション内で現在生成されている水素と、前記貯蔵タンクから取り出される水素との間の比率であって、前記貯蔵タンクからの水素が、前記量a)のゼロ~100%にわたる、比率;
c)前記水素貯蔵タンク(5)へ送られる水素の量
を制御する工程を備えており、
前記項目a)、b)およびc)は、以下のパラメータ:
i)前記水素貯蔵タンク(5)内に含まれる水素の量;
ii)前記アンモニア合成セクションへ供給される水素の流量、および/または前記アンモニアコンバータ内で反応させられる供給ガスの流量;
iii)上記ポイントii)の流量の少なくとも1つの、経時的な流量変化;
がそれぞれの目標範囲内に維持されるように制御され、
ii)およびiii)の目標範囲が、前記アンモニアコンバータを自己熱運転状態に保つように選択され、
前記供給ガスは、触媒的に反応させられてアンモニアを生成する前に予熱され;前記供給ガスの予熱は、アンモニア合成反応の高温廃水から新鮮な供給ガスへ熱を伝達することにより行われ;前記自己熱運転状態は、予熱された供給ガスが閾値温度以上の温度を有する状態に相当
し、前記閾値温度が300℃と400℃との間である、方法。
【請求項2】
水素タンク(5)内の水素の量が最小量超かつ最大量未満に維持されて、前記水素タンクを空にすることおよび過充填することを防止するように、a)、b)およびc)が制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アンモニア合成圧力が目標範囲内にあるという条件も満たすように、a)、b)およびc)が制御される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
a)、b)およびc)が、前記水素生成セクションの現在の水素出力;前記水素タンク(5)内に含まれる水素の量;前記アンモニア合成セクションの現在の負荷;前記アンモニア合成セクションの負荷の1つまたは複数の過去の値、の1つまたは複数に基づいて制御される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
a)、b)およびc)が、1つまたは複数の設定点信号(11a,11b)に基づいて制御され、かつ前記1つまたは複数の設定点信号が、前記水素タンク(5)内に含まれる水素の量の関数として生成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法であって、前記方法が、マスターコントローラ(15)と、前記マスターコントローラに対するスレーブコントローラとして構成される複数の流量コントローラ(16,17)とを含むカスケード制御システムにより行われ、前記マスターコントローラが、前記タンク(5)内に含まれる水素の量に対する感受性を有し、かつ前記流量コントローラが、a)、b)およびc)を制御するために配置された複数の流量調整バルブ(18,19,20)に作用する、方法。
【請求項7】
前記マスターコントローラ(15)が、前記水素貯蔵タンク(5)内のガス状水素の圧力を感知するように配置された圧力センサを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の流量調整バルブが:
前記水素貯蔵タンク(5)へ流れる水素(12)の流量、および前記アンモニア合成セクションへ送られる水素の流量を調整するように配置された1つまたは複数のバルブ(18,20);
前記水素貯蔵タンク(5)から取り出される水素(14)の流量を調整するように配置された少なくとも1つのバルブ(19)
を含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の流量調整バルブが、前記貯蔵タンクへ送られる水素の流量を調整するように配置された少なくとも第1のバルブ;前記貯蔵タンクから取り出される水素の流量を調整するように配置された第2のバルブ;前記アンモニア合成セクションへ送達される水素の流量を制御するように配置された第3のバルブを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水素タンク(5)内の水素の量が、前記水素タンク(5)の公称貯蔵容量の10%~30%に相当する最小量超、かつ前記公称貯蔵容量の70%~90%に相当する最大量未満に維持される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記アンモニア合成セクションへ送達される水素が、前記合成セクションの公称容量の10%~110%内に維持される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
アンモニア合成コンバータ内の圧力を、好ましくは前記コンバータを迂回する供給ガスの流量を制御することにより、制御する工程をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水素生成セクション(200)内では、水素が電気動力から生成され、および前記電気動力が経時的に変動し得るものであり、好ましくは、前記電気動力が再生可能エネルギーである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記水素生成セクションが、水から前記水素(3)を生成するように構成された水電解装置を含んでおり、好ましくは前記水電解装置が再生可能エネルギーを動力源としている、より好ましくは太陽エネルギーを動力源としている、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
水素が再生可能動力から生成され、および前記アンモニアプラントが電気グリッドに接続されておらず、前記プラントが、前記水素生成セクションにより、生成される水素が低く、またはない状態で、少なくとも、前記アンモニアプラントの運転のための動力を供給するように配置されたバックアップ動力システムを含んでおり、およびアンモニア生成のための水素入力が主に、または全部、水素貯蔵により、供給される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
バックアップ動力による運転中、前記バックアップ動力が、ガスタービン、ガスエンジン、燃料電池、または好適なバッテリのいずれかにより、生成され、前記ガスタービン、前記ガスエンジン、および前記燃料電池が好ましくは、水素またはアンモニアで焼成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の方法であって、前記プラントが窒素生成セクションを含んでおり、および前記方法は、窒素の生成が、過剰分の窒素がある場合にそれが大気中に排出される散逸方法により、制御されることを含む、方法。
【請求項18】
アンモニアがアンモニア合成圧力で合成されるアンモニアコンバータを含むアンモニア合成セクション(202);
アンモニアの合成のための前記アンモニア合成セクション内での使用のための水素(3)を生成するように構成された水素生成セクション(200);
前記水素生成セクションに接続された水素貯蔵タンク(5);
前記アンモニア合成セクションへアンモニア補給ガスを供給するように配置された補給ガスラインであって、前記アンモニア補給ガスが、前記水素生成セクション内で生成された水素、および窒素を好適な比率で備える、補給ガスライン;
請求項1~17のいずれか1項に記載の方法を実現するように構成された制御システム
を備える、アンモニアの合成のためのアンモニアプラント(1)。
【請求項19】
前記水素生成セクション(200)は、水から前記水素(3)を生成するように構成された水電解装置(2)を含み、前記水電解装置は、再生可能エネルギーを、好ましくは太陽エネルギーを動力源とする、請求項18に記載のアンモニアプラント。
【請求項20】
請求項18または19に記載のアンモニアプラントであって、前記アンモニアプラントが電気グリッドに接続されておらず、前記プラントは、前記水素生成セクションにより、生成される水素が低く、またはない場合に、少なくとも、前記プラントの運転のための動力を供給するように配置されたバックアップ動力システムを含んでおり、およびアンモニアの生成のための水素入力は主に、または全部、水素貯蔵から得られ、前記バックアップ動力システムは好ましくは、ガスタービン、ガスエンジン、燃料電池、または好適なバッテリのいずれかを含み、ならびに、前記ガスタービン、前記ガスエンジン、および前記燃料電池が、より好ましくは、水素またはアンモニアで焼成される、アンモニアプラント。
【請求項21】
請求項20に記載のアンモニアプラントであって、前記バックアップ動力システムは、公称負荷での前記アンモニアプラントにより、必要とされるピーク動力の10%以下であるバックアップ動力を生成するように配置された、アンモニアプラント。
【請求項22】
アンモニアの合成のためのプロセスであって:
アンモニアが、アンモニアコンバータを含むアンモニア合成セクション(202)内で、アンモニア合成圧力で好適な補給ガス(7)を反応させることにより、合成される工程;
水素が、水素生成セクション(200)内で生成され、ならびに使用されて前記補給ガスを生成し、および/または水素タンク内に貯蔵される工程;
を包含しており、
前記プロセスが:
貯蔵のために前記水素タンク(5)へ前記水素生成セクション(200)から送られる水素(12)の流量を制御する工程;
前記アンモニア合成セクション内での使用のために水素貯蔵タンク(5)から取り出される水素(14)の流量を制御する工程;
前記アンモニア合成セクションへ、前記水素生成セクションにより、送達される水素(13)の流量を制御する工程
をさらに含んでおり、
上述の複数の流量が請求項1~17のいずれか1項に記載の方法により、制御される、プロセス。
【請求項23】
請求項1~17のいずれか1項に記載の方法で作動するように構成された制御システムの提供を含む、アンモニアプラントを改修する方法。
【国際調査報告】