(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】相変化材料(PCM)に基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01M 10/659 20140101AFI20240920BHJP
F28D 20/02 20060101ALI20240920BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240920BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240920BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M10/659
F28D20/02 D
H05K7/20 Q
H01M10/613
H01M10/653
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516452
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 US2022076532
(87)【国際公開番号】W WO2023044410
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ピッツ,アンドリュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト,ジェイムズ イー.
【テーマコード(参考)】
5E322
5H031
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA11
5E322DB12
5E322EA11
5E322FA01
5H031HH06
(57)【要約】
装置は、熱エネルギーの伝達を制御するように構成された複数のサーマルアクチュエータスイッチ(100、500、700、902~904、1002~1004)を含む。サーマルアクチュエータスイッチは、積層構成で配置される。各スイッチは、第一及び第二プレート(102~104、502~504、702~704)と、これらプレート間で可動なピストン(108~110、508~510、708~710)とを含む。また各スイッチは、(i)膨張してピストンの表面を第一位置に移動させ、(ii)収縮してピストンの表面を第二位置に移動させることを可能にするように構成された相変化材料(112、512、712)を含む。ピストンの表面は、第一プレートと熱的に接触し、第一位置及び第二位置の一方にある場合、プレート間の熱エネルギー伝達を増加させる。ピストンの表面は、第一プレートから離隔され、第一位置及び第二位置の他方にある場合、プレート間の熱エネルギー伝達を減少させる。スイッチの異なるものは、異なる温度で膨張するまたは収縮する異なる相変化材料を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサーマルアクチュエータスイッチを含む装置であって、
前記サーマルアクチュエータスイッチは、前記装置を通した熱エネルギーの伝達を制御するように構成され、積層構成に配置され、
各サーマルアクチュエータスイッチは、
第一プレート及び第二プレート、
前記第一プレートと前記第二プレートとの間で可動なピストン、ならびに
相変化材料であって、(i)膨張して前記ピストンの表面を第一位置に移動させ、(ii)収縮して前記ピストンの前記表面を第二位置に移動させることを可能にするように構成され、前記ピストンの前記表面は、前記第一プレートに熱的に接触し、前記第一位置及び前記第二位置の一方にある場合に前記第一プレートと前記第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を増加させ、前記ピストンの前記表面は、前記第一プレートから離隔され、前記第一位置及び前記第二位置の他方にある場合に前記第一プレートと前記第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を減少させる、前記相変化材料、
を含み、
前記サーマルアクチュエータスイッチの異なるものは、異なる温度で膨張するまたは収縮する異なる相変化材料を含む、
装置。
【請求項2】
各サーマルアクチュエータスイッチは、前記相変化材料が収縮する場合、前記ピストンを移動させるように構成された復帰部をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各サーマルアクチュエータスイッチの前記復帰部は1つ以上のばねを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
各サーマルアクチュエータスイッチの前記復帰部は複数の磁石を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記サーマルアクチュエータスイッチは、第一サーマルアクチュエータスイッチ及び第二サーマルアクチュエータスイッチを含み、
前記第一サーマルアクチュエータスイッチ及び前記第二サーマルアクチュエータスイッチは、それぞれ第一相変化材料及び第二相変化材料を含み、
前記第一相変化材料は、前記第二相変化材料とは異なる温度で膨張するまたは収縮するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
アレイは複数のアレイ素子を含み、
各アレイ素子は、前記積層構成内に2つ以上の前記サーマルアクチュエータスイッチを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記サーマルアクチュエータスイッチとの間で熱エネルギーを輸送するように構成された複数のヒートストラップをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも一つの熱源、
少なくとも1つのヒートシンク、及び
前記少なくとも1つの熱源と前記少なくとも1つのヒートシンクとの間の熱エネルギーの伝達を制御するように構成された複数のサーマルアクチュエータスイッチ、
を含むシステムであって、
前記サーマルアクチュエータスイッチは、積層構成に配置され、
各サーマルアクチュエータスイッチは、
第一プレート及び第二プレート、
前記第一プレートと前記第二プレートとの間で可動なピストン、ならびに
相変化材料であって、(i)膨張して前記ピストンの表面を第一位置に移動させ、(ii)収縮して前記ピストンの前記表面を第二位置に移動させることを可能にするように構成され、前記ピストンの前記表面は、前記第一プレートに熱的に接触し、前記第一位置及び前記第二位置の一方にある場合に前記第一プレートと前記第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を増加させ、前記ピストンの前記表面は、前記第一プレートから離隔され、前記第一位置及び前記第二位置の他方にある場合に前記第一プレートと前記第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を減少させる、前記相変化材料、
を含み、
前記サーマルアクチュエータスイッチの異なるものは、異なる温度で膨張するまたは収縮する異なる相変化材料を含む、
システム。
【請求項9】
各サーマルアクチュエータスイッチは、前記相変化材料が収縮する場合、前記ピストンを移動させるように構成された復帰部をさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
各サーマルアクチュエータスイッチの前記復帰部は1つ以上のばねを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
各サーマルアクチュエータスイッチの前記復帰部は複数の磁石を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記サーマルアクチュエータスイッチは、第一サーマルアクチュエータスイッチ及び第二サーマルアクチュエータスイッチを含み、
前記第一サーマルアクチュエータスイッチ及び前記第二サーマルアクチュエータスイッチは、それぞれ第一相変化材料及び第二相変化材料を含み、
前記第一相変化材料は、前記第二相変化材料とは異なる温度で膨張するまたは収縮するように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
アレイは複数のアレイ素子を含み、
各アレイ素子は、前記積層構成内に2つ以上の前記サーマルアクチュエータスイッチを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
(i)前記少なくとも1つの熱源及び前記少なくとも1つのヒートシンクと、(ii)前記サーマルアクチュエータスイッチとの間で熱エネルギーを輸送するように構成された複数のヒートストラップをさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
少なくとも1つの熱源から熱エネルギーを複数のサーマルアクチュエータスイッチで受けることであって、前記サーマルアクチュエータスイッチは積層構成に配置される、ことと、
前記サーマルアクチュエータスイッチを使用して、前記少なくとも1つの熱源と前記少なくとも1つのヒートシンクとの間の前記熱エネルギーの伝達を制御することと、
を含む方法であって、
各サーマルアクチュエータスイッチは、
第一プレート及び第二プレート、
前記第一プレートと前記第二プレートとの間で可動なピストン、ならびに
相変化材料であって、(i)膨張して前記ピストンの表面を第一位置に移動させ、(ii)収縮して前記ピストンの前記表面を第二位置に移動させることを可能にするように構成され、前記ピストンの前記表面は、前記第一プレートに熱的に接触し、前記第一位置及び前記第二位置の一方にある場合に前記第一プレートと前記第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を増加させ、前記ピストンの前記表面は、前記第一プレートから離隔され、前記第一位置及び前記第二位置の他方にある場合に前記第一プレートと前記第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を減少させる、前記相変化材料、
を含み、
前記サーマルアクチュエータスイッチの異なるものは、異なる温度で膨張するまたは収縮する異なる相変化材料を含む、方法。
【請求項16】
各サーマルアクチュエータスイッチでは、前記相変化材料が収縮する場合、復帰部を使用して、前記ピストンを移動させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
各サーマルアクチュエータスイッチの前記復帰部は、1つ以上のばねまたは磁石を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記サーマルアクチュエータスイッチは、第一サーマルアクチュエータスイッチ及び第二サーマルアクチュエータスイッチを含み、
前記第一サーマルアクチュエータスイッチ及び前記第二サーマルアクチュエータスイッチは、それぞれ第一相変化材料及び第二相変化材料を含み、
前記第一相変化材料は、前記第二相変化材料とは異なる温度で膨張するまたは収縮するように構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
アレイは複数のアレイ素子を含み、
各アレイ素子は、前記積層構成内に2つ以上の前記サーマルアクチュエータスイッチを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
複数のヒートストラップを使用して、(i)前記少なくとも1つの熱源及び前記少なくとも1つのヒートシンクと、(ii)前記サーマルアクチュエータスイッチとの間で熱エネルギーを輸送することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にサーマルシステムを対象とする。より具体的には、本開示は、相変化材料(PCM)に基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチを対象とする。
【背景技術】
【0002】
熱管理は、一般的には、熱エネルギー(加熱)がデバイスまたはシステムコンポーネントの性能に悪影響を与える、または破損させる可能性がある、様々な電子デバイス、パワードシステム、及び他のデバイスまたはシステムに必要とされる、または望まれる。例えば、バッテリは、使用中に加熱を受けることが多く、熱管理は、一般的には、バッテリを所定の温度範囲内に維持するために必要とされる、または望まれる。これらの温度範囲は、バッテリの動作効率を維持する、バッテリの長期使用を確保する、またはバッテリの破損を回避するように規定されることができる。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、相変化材料(PCM)に基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチを対象とする。
【0004】
第一実施形態では、装置は、装置を通した熱エネルギーの伝達を制御するように構成された複数のサーマルアクチュエータスイッチを含み、サーマルアクチュエータスイッチは、積層構成に配置される。各サーマルアクチュエータスイッチは、第一プレート及び第二プレート、ならびに第一プレートと第二プレートとの間で可動なピストンを含む。また各サーマルアクチュエータスイッチは、(i)膨張してピストンの表面を第一位置に移動させ、(ii)収縮してピストンの表面を第二位置に移動させることを可能にするように構成された相変化材料を含む。ピストンの表面は、第一プレートと熱的に接触し、第一位置及び第二位置の一方にある場合、第一プレートと第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を増加させる。ピストンの表面は、第一プレートから離隔され、第一位置及び第二位置の他方にある場合、第一プレートと第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を減少させる。サーマルアクチュエータスイッチの異なるものは、異なる温度で膨張するまたは収縮する異なる相変化材料を含む。
【0005】
第二実施形態では、システムは、少なくとも1つの熱源、及び少なくとも1つのヒートシンクを含む。またシステムは、少なくとも1つの熱源と少なくとも1つのヒートシンクとの間の熱エネルギーの伝達を制御するように構成された複数のサーマルアクチュエータスイッチを含み、サーマルアクチュエータスイッチは、積層構成に配置される。各サーマルアクチュエータスイッチは、第一プレート及び第二プレート、ならびに第一プレートと第二プレートとの間で可動なピストンを含む。また各サーマルアクチュエータスイッチは、(i)膨張してピストンの表面を第一位置に移動させ、(ii)収縮してピストンの表面を第二位置に移動させることを可能にするように構成された相変化材料を含む。ピストンの表面は、第一プレートと熱的に接触し、第一位置及び第二位置の一方にある場合、第一プレートと第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を増加させる。ピストンの表面は、第一プレートから離隔され、第一位置及び第二位置の他方にある場合、第一プレートと第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を減少させる。サーマルアクチュエータスイッチの異なるものは、異なる温度で膨張するまたは収縮する異なる相変化材料を含む。
【0006】
第三態様では、方法は、少なくとも1つの熱源から熱エネルギーを複数のサーマルアクチュエータスイッチで受けることを含み、サーマルアクチュエータスイッチは積層構成に配置される。また方法は、サーマルアクチュエータスイッチを使用して、少なくとも1つの熱源と少なくとも1つのヒートシンクとの間の熱エネルギーの伝達を制御することとを含む。各サーマルアクチュエータスイッチは、第一プレート及び第二プレート、ならびに第一プレートと第二プレートとの間で可動なピストンを含む。また各サーマルアクチュエータスイッチは、(i)膨張してピストンの表面を第一位置に移動させ、(ii)収縮してピストンの表面を第二位置に移動させることを可能にするように構成された相変化材料を含む。ピストンの表面は、第一プレートと熱的に接触し、第一位置及び第二位置の一方にある場合、第一プレートと第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を増加させる。ピストンの表面は、第一プレートから離隔され、第一位置及び第二位置の他方にある場合、第一プレートと第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を減少させる。サーマルアクチュエータスイッチの異なるものは、異なる温度で膨張するまたは収縮する異なる相変化材料を含む。
【0007】
他の技術的特徴は、以下の図面、説明、及び特許請求の範囲から、当業者には容易に明らかであろう。
【0008】
本開示をより完全に理解するために、ここでは添付図面に関連して以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示による、例示的な相変化材料(PCM)に基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチを示す。
【
図2】本開示による、例示的な相変化材料(PCM)に基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチを示す。
【
図3】本開示による、例示的な相変化材料(PCM)に基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチを示す。
【
図4】本開示による、例示的な相変化材料(PCM)に基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチを示す。
【
図5】本開示による、別の例示的なPCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチを示す。
【
図6】本開示による、別の例示的なPCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチを示す。
【
図7】本開示による、さらに別の例示的なPCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチを示す。
【
図8】本開示による、さらに別の例示的なPCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチを示す。
【
図9】本開示による、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチの例示的な第一積層配置を示す。
【
図10】本開示による、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチの例示的な第二積層配置を示す。
【
図11】本開示による、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチの例示的なアレイを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下で説明される
図1から
図11、及び本開示の原理を説明するために使用される種々の実施形態は、例示に過ぎず、決して本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。当業者であれば、本開示の原理が、適切に配置された任意のタイプのデバイスまたはシステムに実装されることができることが理解されよう。
【0011】
上述のように、熱管理は、一般的には、熱エネルギー(加熱)がデバイスまたはシステムコンポーネントの性能に悪影響を与える、または破損させる可能性がある様々な電子デバイス、パワードシステム、及び他のデバイスまたはシステムに必要とされる、または望まれる。例えば、バッテリは、使用中に加熱を受けることが多く、熱管理は、一般的には、バッテリを所定の温度範囲内に維持するために必要とされる、または望まれる。これらの温度範囲は、バッテリの動作効率を維持する、バッテリの長期使用を確保する、またはバッテリの破損を回避するように規定されることができる。
【0012】
本開示は、熱管理または他の目的に使用されることができる様々なサーマルアクチュエータスイッチを提供する。サーマルアクチュエータスイッチのそれぞれはピストンを含み、このピストンを使用して、熱的接続を形成し、遮断すること、またはその他の方法で、少なくとも1つの熱源(電力散逸または加温装置など)と少なくとも1つのヒートシンク(コールドプレートなど)との間の熱エネルギー伝達を促進し、妨げることができる。各サーマルアクチュエータスイッチ内の少なくとも1つの相変化材料(PCM)は、サーマルアクチュエータスイッチ内の局所的な加熱/冷却に基づいて相を変化させ、膨張/収縮し、サーマルアクチュエータスイッチ内でピストンを移動させることができる。場合によっては、サーマルアクチュエータスイッチ内の相変化材料が加熱されると、相変化材料は、膨張し、サーマルアクチュエータスイッチ内でピストンを移動させて、熱源(複数可)とヒートシンク(複数可)との間に熱接続を形成する(または熱接続を改善する)ことができる。サーマルアクチュエータスイッチ内の相変化材料が冷却されると、相変化材料は、収縮することができ、ばね荷重機構、磁石、またはその他の復帰機構を使用して、ピストンを押しまたは引き、熱源(複数可)とヒートシンク(複数可)との間の熱接続を遮断する(または熱接続を減少させる)ことができる。他の配置は、冷却されると膨張し、加熱されると収縮する相変化材料を有することができ、この相変化材料は、再び、ピストンを移動させて、熱接続を形成し(または改善し)、遮断する(または減少させる)ことができる。
【0013】
このようにして、各サーマルアクチュエータスイッチ内の相変化材料を使用して、サーマルアクチュエータスイッチを受動的に切り替えることができる。また、各サーマルアクチュエータスイッチの作動を使用して、ピストンとサーマルアクチュエータスイッチの別のコンポーネントとの間の接触表面積を制御することができることにより、表面積を使用して、熱エネルギー伝達を容易に制御することが可能になる。いくつかの実施形態では、各サーマルアクチュエータスイッチの作動は、ピストンの運動に基づいて線形である。さらに、復帰機構の使用により、各サーマルアクチュエータスイッチを使用して、熱源(複数可)とヒートシンク(複数可)との間の熱接続を繰り返し形成しても、遮断しても(または増加させても、減少させても)よい。
【0014】
加えて、複数のサーマルアクチュエータスイッチを任意の適切な直列及び/または並列配置(複数可)に使用して、少なくとも1つの熱源と少なくとも1つのヒートシンクとの間に所望の熱エネルギー伝達経路を設けてもよい。例えば、サーマルアクチュエータスイッチの並列アレイは、少なくとも1つのバッテリまたはその他の熱源(複数可)を横切って位置決めされてもよく、熱源(複数可)から離れて熱エネルギーを伝達するために使用され得る。これは、例えば、熱源(複数可)の表面(複数可)にわたる温度勾配の生成を低減させるまたは回避する際に有用であり得る。別の例として、複数のサーマルアクチュエータスイッチは直列に積層されてもよく、異なるサーマルアクチュエータスイッチは異なる温度閾値で膨張/収縮する相変化材料を有する。これにより、例えば、サーマルアクチュエータスイッチの全体的な熱伝達挙動は、特定の用途に合わせて調整されることが可能になってよい。特定の例として、これにより、積層されたサーマルアクチュエータスイッチは、異なる温度で、熱源(複数可)とヒートシンク(複数可)との間に1つ以上の熱接続を形成/遮断(または促進/抑制)することが可能になってよい。その結果、例えば、複数の積層されたサーマルアクチュエータスイッチのうちの1つは、第一熱エネルギー伝達率を可能にするために、より低い温度で、熱源(複数可)とヒートシンク(複数可)との間の熱接続を形成してもよく、または改善してもよい。積層されたサーマルアクチュエータスイッチのもう1つは、第二(より大きい)熱エネルギー伝達率を可能にするためのより高い温度で、熱源(複数可)とヒートシンク(複数可)との間に同じまたは別の熱接続を形成しても、または改善してもよい。また、直列結合した(積層された)サーマルアクチュエータスイッチの複数のセットが並列アレイに配置される場合などに、これらのアプローチの組み合わせを使用してもよい。
【0015】
図1から
図4は、本開示による、例示的なPCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチ100を示す。特に、
図1及び
図3は異なる動作配置でのサーマルアクチュエータスイッチ100の斜視図を示し、
図2及び
図4は異なる動作配置でのサーマルアクチュエータスイッチ100の断面図を示す。なお、
図1及び
図3でのサーマルアクチュエータスイッチ100の特定のコンポーネントは、例示及び説明を容易にするために、透明な概略形態で示される。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、サーマルアクチュエータスイッチ100は、上部プレート102及び下部プレート104を使用して形成されるものなど、ハウジングを含んでもよく、またはハウジングに関連していてもよい。各プレート102及び104は、少なくとも1つの熱源または少なくとも1つのヒートシンクに熱的に結合されることができる構造を表す。例えば、上部プレート102は少なくとも1つのヒートシンクに熱的に結合されてもよく、下部プレート104は少なくとも1つの熱源に熱的に結合されてもよい(またはその逆も同様であってもよい)。各プレート102及び104は、1つもしくは複数の金属または高い熱伝導率を有するその他の材料(複数可)のような、任意の適切な材料(複数可)を用いて形成されてもよい。また、各プレート102及び104は、任意の適切な方法で形成されてもよい。加えて、各プレート102及び104は、任意の適切なサイズ、形状、及び寸法を有し得る。
【0017】
場合によっては、プレート102及び104は、図示を容易にするために
図2及び
図4にのみ示される、熱絶縁材料106によって任意選択で分離されてもよい。熱絶縁材料106は、プレート102~104間の熱伝導率を低下させる、または最小にするのに役立つことができ、必要な場合または望ましい場合を除いて、プレート102~104自体の間の熱エネルギー伝達を低減させる、または最小にするのに役立つことができる。熱絶縁材料106は、熱絶縁性エポキシまたはその他の材料(複数可)など、任意の適切な材料(複数可)から形成されてよく、この材料を使用して、プレート102~104を、またはプレート102~104の間に位置決めされたガラス繊維ワッシャもしくはその他の構造体(複数可)を取り付けてもよい。また熱絶縁材料106は、任意の適切な方法で形成されてもよい。加えて、熱絶縁材料106は、任意の適切なサイズ、形状、及び寸法を有し得る。
【0018】
ピストン基部108及びピストンプレート110によって形成されるピストンは、プレート102及び104の間に位置決めされ、可動である。例えば、上部プレート102はプレート102の側壁部の間に形成された凹部を含んでもよく、ピストンプレート110の少なくとも一部はこの凹部内に位置決めされ、上下に可動であることができる。同様に、下部プレート104はプレート104の側壁部の間に形成された凹部を含んでもよく、ピストン基部108の少なくとも一部はその凹部内に位置決めされ、上下に可動であることができる。ピストン基部108及びピストンプレート110によって形成されるピストンは、1つ以上の金属または熱伝導率の高いその他の材料(複数可)など、任意の適切な材料(複数可)を使用して形成され得る。またピストンは、任意の適切な方法で形成されてもよい。加えて、ピストンは、任意の適切なサイズ、形状、及び寸法を有し得る。
【0019】
この例に示されるように、ピストン基部108は内部キャビティを有する環状シリンダまたはその他の構造体の形態を取ってもよく、相変化材料112はピストン基部108の内部キャビティ内に位置決めされる。この特定の例では、相変化材料112は、ピストンプレート110と、ピストン基部108内に突出する下部プレート104の一部との間に位置決めされる。これにより、相変化材料112は下部プレート104の一部に接触することができ、下部プレート104は相変化材料112の下方向運動を防止することができる。相変化材料112は、温度に基づいて適切な量で膨張し収縮することができる少なくとも1つの材料を表す。
【0020】
相変化材料112をサーマルアクチュエータスイッチ100に使用して、異なる位置の間でピストンプレート110を移動させると、プレート102及び104の間の熱エネルギー伝達が促進されるまたは抑制される。例えば、
図1及び
図2では、相変化材料112は収縮状態にあり、これは場合によっては、相変化材料112がより低い温度にある場合に起こり得る。この状態では、ピストンプレート110は、ピストンプレート110の主上面に少なくとも沿って、上部プレート102から離隔される。ここでは、ピストンプレート110の側面は、上部プレート102に接触しても、または接触しなくてもよい。この動作配置では、プレート102~104の間の熱エネルギー伝達を低減させる、または最小にすることができる。その結果、プレート102~104に熱的に結合されている熱源(複数可)とヒートシンク(複数可)との間の熱エネルギー伝達はほとんど存在しなくなり得る。いくつかの実施形態では、ピストンプレート110は、この動作配置では、プレート102から完全に分離されても、そのプレートに全く接触しなくてもよい。
【0021】
図3及び
図4では、相変化材料112は膨張状態にあり、これは場合によっては、相変化材料112がより高い温度にある場合に起こり得る。この状態では、ピストンプレート110は、ピストンプレート110の主上面に少なくとも沿って、上部プレート102に接触する。ここでも、ピストンプレート110の側面は、上部プレート102に接触しても、または接触しなくてもよい。この動作配置では、ピストン基部108及びピストンプレート110が両方のプレート102~104に同時に接触することで、熱エネルギーがプレート102~104の間でより高い伝導性ピストンを通して流れる経路を設けるため、プレート102~104の間の熱エネルギー伝達を増加させるまたは最大にすることができる。その結果、プレート102~104に熱的に結合されている熱源(複数可)とヒートシンク(複数可)との間の熱エネルギー伝達がはるかに高くなり得る。ここで、熱絶縁材料106が高い熱抵抗を生じるのに十分な厚さを有する場合などに、熱絶縁材料106がプレート102~104を互いから熱絶縁するのに役立つことができることに留意されたい。これにより、熱エネルギーは、プレート102~104自体の間で直接流れてアクチュエータの意図された機能を不注意に熱で(完全にまたはある程度まで)短絡させるのではなく、主にピストンを通してプレート102~104の間で伝わる。
【0022】
このようにして、サーマルアクチュエータスイッチ100は、相変化材料112を使用して、プレート102~104に熱で結合される熱源(複数可)とヒートシンク(複数可)との間の熱伝達を受動的に制御する。すなわち、サーマルアクチュエータスイッチ100は、相変化材料112の体積膨張特性及び体積収縮特性を使用して、2つの位置の間でピストンプレート110を作動させることができることにより、上部プレート102とピストンプレート110との間の表面接触面積を温度に基づいて増加させ、減少させる。場合によっては、ピストンプレート110の運動は、熱源(複数可)から受けた、そしてヒートシンク(複数可)に受け入れられなかった熱エネルギーに基づいた相変化材料112の膨張及び収縮によって、ピストンプレート110を移動させることを意味する、完全に受動的な方法で実行されてよい。相変化材料112の膨張または収縮を引き起こすために、追加のヒータまたはクーラーを必要としない場合がある(ただし、他の実施形態の場合にはそうでない場合がある)。
【0023】
さらにここでは、サーマルアクチュエータスイッチ100は、熱源(複数可)とヒートシンク(複数可)との間に剛性接触を可能にし得る。場合によっては、サーマルアクチュエータスイッチ100は、熱源(複数可)とヒートシンク(複数可)との間の全体積での剛性接触を可能にする。これは、プレート102~104が互いに固定して結合されることができることにより、場合によっては(機械的結合のためなど)、上部プレート102の上面に沿って、そして下部プレート104の底面に沿って安定した表面が大きくなることができるためである。加えて、サーマルアクチュエータスイッチ100の設計に応じて、サーマルアクチュエータスイッチ100は、「貫通」方向(
図1~
図4の垂直方向)に調整可能な熱分離、及び「面内」方向(
図1~
図4の水平方向)に調整可能な熱分離を設けることができる。
【0024】
なお、サーマルアクチュエータスイッチ100と共に使用される熱源(複数可)及びヒートシンク(複数可)は、熱エネルギーに適切な任意の供給源(複数可)及び供給先(複数可)を表してもよいことに留意されたい。例えば、「低温環境」のシナリオでは、少なくとも1つのヒータを使用して1つ以上のデバイスを加熱してもよい。このシナリオでは、加熱される1つ以上のデバイスは、熱源を表すことができ、ヒートシンクを表す少なくとも1つのコールドプレートを設けることができる。ここで、過剰な熱エネルギーがヒータによって1つ以上のデバイスに与えられる場合などに、1つ以上のサーマルアクチュエータスイッチ100を使用して、1つ以上のデバイスからコールドプレート(複数可)に過剰な熱エネルギーを除去することができる。この例では、1つまたは複数のデバイスに対する構造的支持を増加させながら、または最大にしながら、限られたヒータの電力を温存してもよい(サーマルアクチュエータスイッチ100が主に
図1及び
図2に示される開位置に留まり得るため)。ここでは、1つ以上のデバイスは、低温環境(例えば、宇宙用途)で使用される1つ以上のバッテリ、プロセッサ、または他のデバイスなど、加熱されるのに適した任意のデバイス(複数可)を表してもよい。場合によっては、1つ以上のサーマルアクチュエータスイッチ100を開閉して、1つ以上のデバイスを標的動作温度の上限と下限との間に、または標的動作温度範囲内に保つのを助けることができる。
【0025】
「高温環境」のシナリオでは、1つ以上のデバイスは熱を発生する場合があり、少なくとも1つのコールドプレートを使用して、1つ以上のデバイスから熱エネルギーを受け、1つ以上のデバイスを冷却することができる。このシナリオでは、1つ以上のデバイスは熱源を表すことができ、少なくとも1つのコールドプレートはヒートシンクを表すことができる。ここでは、1つ以上のサーマルアクチュエータスイッチ100は、1つ以上のデバイスとコールドプレート(複数可)との間の熱エネルギーの伝達を促進するために使用されることができる。この例では、サーマルアクチュエータスイッチ100が主に
図3及び
図4に示される閉位置に留まる場合などに、ヒートシンクへの熱エネルギー放散を最大にし得る。ここでは、1つ以上のデバイスは、1つ以上のバッテリ、プロセッサ、またはその他のデバイスのような、冷却されるのに適した任意のデバイス(複数可)を表してもよい。再度、場合によっては、1つ以上のサーマルアクチュエータスイッチ100を開閉して、1つ以上のデバイスを標的動作温度の上限と下限との間に、または標的動作温度範囲内に維持することができる。
【0026】
ここでは、相変化材料112が収縮すると、ピストンは、ピストンプレート110を上部プレート102から分離させるために、外部からの支援を必要とし得る。ここでは、ピストンプレート110を上部プレート102から分離させるのに必要な力を与えるのに適した任意の復帰機構を使用し得る。いくつかの実施形態では、例えば、1つ以上のばね114は、ピストンプレート110と上部プレート102との間に位置決めされることができる。この例では、上部プレート102は凹部116を含むが、凹部はピストンプレート110にも含まれてよく、またはそれに代替に含まれてよい。
図1及び
図2に示されるように、相変化材料112が収縮すると、ばね114は、ピストンプレート110を上部プレート102から押し放すのに役立つことができる。
図3及び
図4に示されるように、相変化材料112は、膨張すると、ばね114のばね力に打ち勝ち、ばね114を圧縮させることにより、ピストンプレート110を上部プレート102に接触させることが可能になる。
【0027】
なお、1つ以上のばね114の使用は、ピストンプレート110を上部プレート102から遠ざけるための復帰機構の一例を表すことに留意されたい。しかしながら、他の復帰機構も可能である。例えば、少なくとも1つの磁石118はピストンプレート110内またはその上に位置決めされてもよく、少なくとも1つの磁石118は下部プレート104内またはその上の1つまたは複数の磁石120に吸着されても、及び/または上部プレート102内またはその上の1つまたは複数の磁石122によって反発されてもよい。これらの実施形態では、ピストンプレート110及び1つ以上のプレート102~104内の任意の適切な位置に、任意の適切な数の磁石を使用してもよい。磁性の使用は、ばね114の使用(例えば、機械的ばねに関連する潜在的なヒステリシス)に勝るいくつかの信頼性の改善を提示し得るが、ばね及び磁石の実際の信頼性は実装によって異なることができる。
【0028】
サーマルアクチュエータスイッチ100の1つ以上の例は、多数の用途での使用を見いだし得る。例えば、サーマルアクチュエータスイッチ100は、バッテリ、プロセッサ、またはその他のコンポーネントが所定の温度で、または所定の温度範囲内に維持される必要がある、多数のデバイスに使用され得る。特定の例として、電力消費を制限することが必要であるまたは望ましい場合があり、受動設計が長期信頼性を向上させることができる、衛星、無人航空機、及びその他のシステムにサーマルアクチュエータスイッチ100を使用し得る。他の特定の例として、サーマルアクチュエータスイッチ100は、付加製造(additive
manufacturing:積層造形)システムなど、製造システムまたは製造メッセージシステムに使用され得る。一般に、本開示は、サーマルアクチュエータスイッチ100の任意の特定の用途に限定されず、本開示は、サーマルアクチュエータスイッチ100と共に使用される任意の特定のタイプの熱源(複数可)及びヒートシンク(複数可)に限定されない。
【0029】
図5及び
図6は、本開示による、別の例示的なPCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチ500を示す。サーマルアクチュエータスイッチ500は、上述のサーマルアクチュエータスイッチ100と同じ設計特性(ならびに同じ利点、利益、及び用途)の多くを有する。簡潔にするために、これらの設計特性の一部のみを以下に説明するが、上述のサーマルアクチュエータスイッチ100の様々な設計特性、利点、利益、及び用途は、サーマルアクチュエータスイッチ500に等しく適用可能である。
【0030】
図5及び
図6に示されるように、サーマルアクチュエータスイッチ500は、上部プレート502及び下部プレート504を含み、これらは、熱絶縁材料506によって任意選択で分離されてもよい。ピストン基部508及びピストンプレート510によって形成されるピストンは、プレート502及び504の間に位置決めされ、可動である。例えば、上部プレート502はプレート502の側壁部の間に形成された凹部を含んでもよく、ピストン基部508の少なくとも一部はこの凹部内に位置決めされ、上下に可動であることができる。同様に、下部プレート504はプレート504の側壁部の間に形成された凹部を含んでもよく、ピストンプレート510の少なくとも一部はその凹部内に位置決めされ、上下に可動であることができる。場合によっては、ピストン基部508は、内部キャビティを有する環状シリンダまたはその他の構造の形態を取り得る。この例では、上部プレート502自体は内部キャビティを画定し、その内に相変化材料512が位置決めされ、上部プレート502の内部キャビティは(ピストンの設計に応じて)上部プレート502の内部キャビティ内に存在しても、またはしなくてもよい。この特定の例では、相変化材料512は、ピストン基部508と上部プレート502の一部との間に位置決めされる。これにより、相変化材料512は上部プレート502の一部に接触することができ、上部プレート502は相変化材料512の上方向運動を防止することができる。相変化材料512は、温度に基づいて適切な量で膨張し収縮することができる少なくとも1つの材料を表す。
【0031】
この例では、ピストンを使用して、プレート502及び504の間の熱接続を選択的に形成し(または改善し)、遮断する(または減少させる)ことができる。より具体的には、相変化材料512が
図5に示されるように膨張状態にあると、ピストンプレート510は、下部プレート504の1つ以上のフランジまたはその他の突出部524から押し放され、熱接続を低減させるまたは減少させるのを助ける。相変化材料512が
図6に示されるように収縮状態にあると、ピストンプレート510は、下部プレート504の1つ以上のフランジまたはその他の突出部524に押し込まれ、熱接続を形成するまたは改善するのを助ける。しかしながら、ピストンプレート510が下部プレート504のフランジ(複数可)またはその他の突出部(複数可)524の上に位置決めされる場合などに、ピストンプレート510、及び下部プレート504のフランジ(複数可)またはその他の突出部(複数可)524の位置を逆にし得ることに留意されたい。その場合、相変化材料512の膨張は、ピストンプレート510をフランジ(複数可)またはその他の突出部(複数可)524に押し込むことによって熱接続を形成/改善することができ、相変化材料512の収縮は、ピストンプレート510がフランジ(複数可)またはその他の突出部(複数可)524から遠ざかることを可能にすることによって熱接続を遮断する/減少させることができる。
【0032】
1つ以上のばね514を復帰機構として使用して、ピストンプレート510を下部プレート504のフランジもしくはその他の突出部524に押し込むのに必要な力を与えること(ここに示される配置では)、またはピストンプレート510を下部プレート504のフランジもしくはその他の突出部524から押し放すことができる(ピストンプレート510がフランジまたはその他の突出部524より上にある代替配置では)。しかしながら、上述の磁石118~122の少なくとも一部など、その他の復帰機構をサーマルアクチュエータスイッチ500に使用してもよいことに留意されたい。ここでは示していないが、上述の凹部116と同様の方法で、ばね514ごとに凹部を下部プレート504に形成してもよい。
【0033】
1つ以上のサーマルストラップ526は、相変化材料512内に任意選択で位置決めされてよく、上部プレート502からピストン基部508まで延在する可能性がある。サーマルストラップ(複数可)526を使用して、温度の上昇に応じてより急速に相変化材料512を加熱する、または温度の低下に応じてより急速に相変化材料512を冷却するのを支援し得ることにより、相変化材料512がより急速に相変化するのを支援することができる。サーマルストラップ(複数可)526は上部プレート502とピストン基部508との間の少量の熱エネルギー伝達を可能にしてもよいが、ピストンプレート510がフランジまたは突出部524から離隔されている間、プレート502及び504の間の熱エネルギー伝達はほとんどない場合がある。各サーマルストラップ526は、1つ以上の金属、熱分解性グラファイトシート、または高い熱伝導率を有するその他の材料(複数可)など、任意の適切な材料(複数可)から形成されてもよい。また各サーマルストラップ526は、任意の適切な方法で形成されてもよく、任意の適切なサイズ、形状、及び寸法を有してもよい。加えてここでは、単一ストラップを含む、任意の適切な数のサーマルストラップ526を使用し得る。
【0034】
図7及び
図8は、本開示による、さらに別の例示的なPCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチ700を示す。サーマルアクチュエータスイッチ700は、上述のサーマルアクチュエータスイッチ100及び500と同じ設計特性(ならびに同じ利点、利益、及び用途)の多くを有する。簡潔にするために、これらの設計特性の一部のみを以下に説明するが、上述のサーマルアクチュエータスイッチ100及び500の様々な設計特性、利点、利益、及び用途は、サーマルアクチュエータスイッチ700に等しく適用可能である。
【0035】
図7及び
図8に示されるように、サーマルアクチュエータスイッチ700は、上部プレート702及び下部プレート704を含み、これらは、熱絶縁材料706によって任意選択で分離されてもよい。ピストン基部708及びピストンプレート710によって形成されるピストンは、プレート702及び704の間に位置決めされ、可動である。例えば、上部プレート702はプレート702の側壁部の間に形成された凹部を含んでもよく、ピストン基部708の少なくとも一部はこの凹部内に位置決めされ、上下に可動であることができる。同様に、下部プレート704はプレート704の側壁部の間に形成された凹部を含んでもよく、ピストンプレート710の少なくとも一部はその凹部内に位置決めされ、上下に可動であることができる。場合によっては、ピストン基部708は、内部キャビティを有する環状シリンダまたはその他の構造の形態を取り得る。この例では、上部プレート702自体は内部キャビティを画定し、その内に相変化材料712が位置決めされ、上部プレート702の内部キャビティは(ピストンの設計に応じて)上部プレート702の内部キャビティ内に存在しても、またはしなくてもよい。この特定の例では、相変化材料712は、ピストン基部708と上部プレート702の一部との間に位置決めされる。これにより、相変化材料712は上部プレート702の一部に接触することができ、上部プレート702は相変化材料712の上方向運動を防止することができる。相変化材料712は、温度に基づいて適切な量で膨張し収縮することができる少なくとも1つの材料を表す。
【0036】
この例では、ピストンを使用して、プレート702及び704の間の熱接続を選択的に形成し(または改善し)、遮断する(または減少させる)ことができる。より具体的には、相変化材料712が
図7に示されるように膨張状態にあると、ピストンプレート710は、下部プレート704の1つ以上のフランジまたはその他の突出部724から押し放され、熱接続を低減させるまたは減少させるのを助ける。相変化材料712が
図8に示されるように収縮状態にあると、ピストンプレート710は、下部プレート704の1つ以上のフランジまたはその他の突出部724に押し込まれ、熱接続を形成するまたは改善するのを助ける。しかしながら、ピストンプレート710が下部プレート704のフランジ(複数可)またはその他の突出部(複数可)724の上に位置決めされる場合などに、ピストンプレート710、及び下部プレート704のフランジ(複数可)またはその他の突出部(複数可)724の位置を逆にし得ることに留意されたい。その場合、相変化材料712の膨張は、ピストンプレート710をフランジ(複数可)またはその他の突出部(複数可)724に押し込むことによって熱接続を形成/改善することができ、相変化材料712の収縮は、ピストンプレート710がフランジ(複数可)またはその他の突出部(複数可)724から遠ざかることを可能にすることによって熱接続を遮断する/減少させることができる。
【0037】
1つ以上のばね714を復帰機構として使用して、ピストンプレート710を下部プレート704のフランジもしくはその他の突出部724に押し込むのに必要な力を与えること(ここに示される配置では)、またはピストンプレート710を下部プレート704のフランジもしくはその他の突出部724から押し放すことができる(ピストンプレート710がフランジまたはその他の突出部724より上にある代替配置では)。しかしながら、上述の磁石118~122の少なくとも一部など、その他の復帰機構をサーマルアクチュエータスイッチ700に使用してもよいことに留意されたい。ここでは示していないが、上述の凹部116と同様の方法で、ばね714ごとに凹部を下部プレート704に形成してもよい。
【0038】
上部プレート702の1つまたは複数の突出部726は、相変化材料712が位置決めされる内部キャビティ内に延出することができる。そのうえまたは代替に、ピストン基部708の1つまたは複数の突出部728は、相変化材料712が位置決めされる内部キャビティ内に延出することができる。場合によっては、突出部726及び突出部728の両方を、使用することができ、異なる側方向位置に交互配置する、またはその他の方法で使用することができる。突出部726及び728のいずれか一方または両方を使用して、より大きい表面積を設けることができ、この表面積を通して、熱エネルギーは相変化材料712、上部プレート702、またはピストン基部708に流入し、そこから流出することができる。その結果、突出部726及び728のいずれか一方または両方を使用して、温度の上昇に応じてより急速に相変化材料712を加熱する、または温度の低下に応じてより急速に相変化材料712を冷却するのを支援し得ることにより、相変化材料712がより急速に相変化するのを支援することができる。各突出部726及び728は、任意の適切な方法で形成され、任意の適切なサイズ、形状、及び寸法を有し得る。またここで、任意の適切な数の突出部726(突出部の無いものを含む)及び/または任意の適切な数の突出部728(突出部の無いものを含む)を使用してもよい。
【0039】
実装に応じて、サーマルアクチュエータスイッチ100、500、700では、様々なタイプの相変化材料112、512、712を使用し得る。使用され得る相変化材料の例としては、水、パラフィンワックス、塩水和物、はんだ、またはインジウム合金が挙げられる。一部の実施形態では、相変化材料は、相変化材料がより低い温度で収縮し、より高い温度で膨張するように選択される。様々な形態のパラフィンワックス、塩水和物、はんだ、及びインジウム合金は、この方法で挙動する相変化材料の例である。他の実施形態では、相変化材料は、相変化材料がより低い温度で膨張し、より高い温度で収縮するように選択される。水は、この方法で挙動する相変化材料の一例である。したがって、使用される相変化材料の選択は、(i)上部プレートと下部プレートとの間の熱接続が相変化材料の膨張または収縮に応じて形成されるかどうか、または改善されるかどうか、そして(ii)上部プレートと下部プレートとの間の熱接続が相変化材料の膨張または収縮に応じて遮断されるまたは減少するかどうかに(少なくとも部分的に)依存することができる。
【0040】
図1~
図8は、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチ100、500、700の例を示しているが、
図1~
図8に様々な変更を加えてもよい。例えば、各サーマルアクチュエータスイッチ100、500、700及びそのコンポーネントのサイズ、形状、及び寸法は、必要に応じて、または要望通り変動し得る。例えば、各ピストンの形状またはアスペクト比は、移動量と力との間の所望のバランスを達成するように最適化され得る。場合によっては、ピストンプレート110、510、710は、ピストンプレート110、510、710の側部がサーマルアクチュエータスイッチ100、500、700のハウジング(主に上部または下部プレート)に接触するのを絶縁するように可能な限り薄く保たれ得る。また、低熱伝導率材料は、ピストンプレート110、510、710と上部または下部プレートとの間の界面上に、またはそれに沿って位置決めされ得ることにより、それらの位置での熱抵抗が増加し得、摩擦が低減し得る。さらに、様々な追加の特徴は、サーマルアクチュエータスイッチ100、500、700と共に使用されてもよい。特定の例として、1つ以上の熱界面材料は、熱抵抗を制限するために、ピストンプレート110、510、710と上部及び下部プレート102~104、502~504、702~704との間の接触界面に使用されてよい。別の特定の例として、1つ以上の熱界面材料は、熱抵抗を制限するために、サーマルアクチュエータスイッチ100、500、700と熱源(複数可)/ヒートシンク(複数可)との間の接触界面に使用されてもよい。さらに別の特定の例として、熱絶縁を使用して、熱エネルギー伝達が実質的にサーマルアクチュエータスイッチ100、500、700のピストンを通して起こることを確保するのに役立ち得る。加えて、サーマルアクチュエータスイッチ100、500、700のハウジングが相変化材料112、512、712の転移温度付近で適切な応力を処理することができる場合などには、複数の相変化材料112、512、712は、サーマルアクチュエータスイッチ100、500、700に使用されてもよい。
【0041】
サーマルアクチュエータスイッチ100、500、700のプレート102~104、502~504、702~704を説明するために「上部」及び「下部」が使用されるが、これは、サーマルアクチュエータスイッチ100、500、700にいずれの構造上または使用上の制限も与えるものではないことに留意されたい。「上部」及び「下部」という用語は、単に便宜上、図に具体的に示されるようなプレートの位置を指すために使用される。サーマルアクチュエータスイッチ100、500、700のそれぞれは、必要に応じてまたは要望通り、逆の方法で、横向きで、または任意の他の適切な向きもしくは配置で実装される、または使用されることができる。
【0042】
また、
図1~
図8に示される特徴の任意の組み合わせを、特徴のその特異的な組み合わせが図に示されるか、上記に記載されているかどうかに関わらず、単一のサーマルアクチュエータスイッチに使用し得ることにも留意されたい。従って、例えば、サーマルアクチュエータスイッチ100は、1つ以上のフランジまたはその他の突出部524もしくは724を有するプレート102または104を含んでもよい。また、サーマルアクチュエータスイッチ100及び700はサーマルストラップ526を含んでもよく、またはサーマルアクチュエータスイッチ100及び500は突出部726及び突出部728の一方または両方を含んでもよい。加えて、各サーマルアクチュエータスイッチは、図(複数可)に示される任意の適切な数の各コンポーネントを含み得る。
【0043】
図9は、本開示による、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチの例示的な第一積層配置900を示す。
図9に示されるように、積層配置900は、直列に熱で(そして場合によっては機械的に)結合される複数のサーマルアクチュエータスイッチ902~904を含む。各サーマルアクチュエータスイッチ902~904は、上述のサーマルアクチュエータスイッチ100、500、または700の別個の例を表し得るが、各サーマルアクチュエータスイッチ902~904は、ピストンが相変化材料の膨張/収縮に基づいて移動する任意の他の適切な設計を有し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、サーマルアクチュエータスイッチ902~904は、異なる相変化材料112、512、712を含む。例えば、サーマルアクチュエータスイッチ902は転移温度が低い1つ以上の相変化材料112、512、712を有してもよく、サーマルアクチュエータスイッチ904は転移温度が高い1つ以上の相変化材料112、512、712を有してもよい(またはその逆も同様であってもよい)。場合によっては、より低い転移温度は、約5℃であっても、または5℃を含む範囲内であってもよく、より高い転移温度は、約25℃であっても、または25℃を含む範囲内であってもよい。従って、この積層配置900は、サーマルアクチュエータスイッチ902~904の1つがより低い温度で(例えば、その相変化材料112、512、712を膨張させるまたは収縮させることによって)閉じ、サーマルアクチュエータスイッチ902~904の両方がより高い温度で閉じることを可能にする。結果として、これは、「貫通」方向に調整可能な熱分離を設けるのに役立つ。
【0045】
上述のサーマルアクチュエータスイッチ100、500、または700と同様に、積層配置900により、少なくとも1つの熱源906と少なくとも1つのヒートシンク908との間の熱エネルギー伝達の受動制御が可能になる。少なくとも1つの熱源906は任意の適切な熱エネルギー源を表し、少なくとも1つのヒートシンク908は熱エネルギーに適切な任意の供給先を表す。なお、少なくとも1つの熱源906は、1つ以上のデバイスを加熱するためにヒータ(複数可)910が必要とされ得る低温環境などでは、任意選択で、1つ以上のヒータ910を含んでもよく、またはそれらに関連していてもよい。
【0046】
図10は、本開示による、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチの例示的な第二積層配置1000を示す。ここでの積層配置1000は、積層配置900と同様である。
図10に示されるように、積層配置1000は、直列に熱で結合される複数のサーマルアクチュエータスイッチ1002~1004を含む。各サーマルアクチュエータスイッチ1002~1004は、上述のサーマルアクチュエータスイッチ100、500、または700の別個の例を表し得るが、各サーマルアクチュエータスイッチ1002~1004は、ピストンが相変化材料の膨張/収縮に基づいて移動する任意の他の適切な設計を有し得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、サーマルアクチュエータスイッチ1002~1004は、異なる相変化材料112、512、712を含む。例えば、サーマルアクチュエータスイッチ1002は転移温度が低い1つ以上の相変化材料112、512、712を有してもよく、サーマルアクチュエータスイッチ1004は転移温度が高い1つ以上の相変化材料112、512、712を有してもよい(またはその逆も同様であってもよい)。場合によっては、より低い転移温度は、約5℃であっても、または5℃を含む範囲内であってもよく、より高い転移温度は、約25℃であっても、または25℃を含む範囲内であってもよい。従って、この積層配置1000は、サーマルアクチュエータスイッチ1002~1004の1つがより低い温度で(例えば、その相変化材料112、512、712を膨張させるまたは収縮させることによって)閉じ、サーマルアクチュエータスイッチ1002~1004の両方がより高い温度で閉じることを可能にする。結果として、これは、「貫通」方向に調整可能な熱分離を設けるのに役立つ。
【0048】
この構成では、積層配置1000は、少なくとも1つの熱源1006と少なくとも1つのヒートシンク1008との間に物理的に位置決めされない。代わりに、積層配置1000は、他の箇所に位置決めされ、熱伝導体1010及び1012を使用して、サーマルアクチュエータスイッチ1002及び1004を熱源(複数可)1006及びヒートシンク(複数可)1008に熱で結合する。各熱伝導体1010及び1012は、サーマルアクチュエータスイッチとの間で熱エネルギーを伝達するように構成された任意の適切な構造体を表す。実質的にここでは、熱伝導体1010及び1012は、積層配置1000との間で熱エネルギーを供給するためのヒートストラップとして機能する。各熱伝導体1010及び1012は、1つ以上の金属、熱分解性グラファイトシート、または高い熱伝導率を有するその他の材料(複数可)など、任意の適切な材料(複数可)を使用して形成されてもよい。各熱伝導体1010及び1012は、任意の適切な方法で形成されてもよい。加えて、各熱伝導体1010及び1012は、任意の適切なサイズ、形状、及び寸法を有し得る。
【0049】
熱絶縁材料1014は、任意選択で、熱伝導体1010及び1012または熱伝導体1010及び1012の一部の間に位置決めされてもよい。熱絶縁材料1014は、熱伝導体1010及び1012の間の直接的な熱エネルギー伝達を抑制するために、熱伝導体1010及び1012の間の熱伝導を低減させるのに役立つことができる。熱絶縁材料1014は、熱伝導体1010及び1012を保持するために使用される熱絶縁性エポキシもしくはその他の材料(複数可)、または熱伝導体1010及び1012の間に位置決めされたガラス繊維シートもしくはその他の構造体(複数可)など、任意の適切な材料(複数可)から形成されてもよい。また熱絶縁材料1014は、任意の適切な方法で形成されてもよい。加えて、熱絶縁材料1014は、任意の適切なサイズ、形状、及び寸法を有し得る。なお、熱伝導体1010及び1012が(
図10の実施形態に示されるように)熱絶縁材料1014を越えて延出する場合、熱伝導体1010及び1012は、必要または要望に応じて強化されてもよいことに留意されたい。例えば、熱絶縁材料1014を越えて延出する熱伝導体1010及び1012の少なくとも部分は、熱分解性グラファイトシートまたはその他の材料(複数可)を使用して形成されてもよく、Kapton(登録商標)またはその他の強化材料(複数可)を使用して強化されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチの積層配置900、1000のそれぞれは、以下のように実装されてもよい。サーマルアクチュエータスイッチは、ヒートシンクのより近くに配置されることができ、作動する(閉じられる)と、より高い温度でスイッチによる熱エネルギー輸送が可能になる。サーマルアクチュエータスイッチは、熱源のより近くに配置されることができ、作動する(閉じられる)と、より低い温度でスイッチによる熱エネルギー輸送が可能になる。これは、より高い作動温度を有するサーマルアクチュエータスイッチが、システム全体の制御を越えるある時点で高温環境温度に「クランプ」するのを防止することを支援するために行われてもよい(ループ内に能動冷却が存在しない場合があるため)。その代わり、より高い作動温度を有するサーマルアクチュエータスイッチは(例えば、ヒータを介して)制御されることができる、より低い温度にクランプされることができる。場合によっては、2つの積層スイッチが開閉する方法は、一方のスイッチがより高い温度で膨張する相変化材料を有し、他方のスイッチがより高い温度で収縮する相変化材料を有する場合など、互いに反対であることができる。特定の実施形態では、水は、多くの他の相変化材料とは反対の方法で挙動する傾向があるため、積層スイッチの1つに使用されることができる。しかしながら、スイッチの所望の作動が達成されるように、必要に応じてまたは要望通り、スイッチの配置が調整されることができることに留意されたい。
【0051】
図9及び
図10はPCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチの積層配置900、1000の例を示しているが、
図9及び
図10には様々な変更を行うことができる。例えば、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチの積層配置は、任意の適切な方法で使用され得る。また、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチの積層配置は2つより多いサーマルアクチュエータスイッチを含んでもよく、サーマルアクチュエータスイッチは異なる温度で膨張/収縮する2つより多い相変化材料を含んでも、または含まなくてもよい。
【0052】
図11は、本開示による、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチの例示的なアレイ1100を示す。
図11に示されるように、アレイ1100はアレイ素子を含み、各アレイ素子はサーマルアクチュエータスイッチ1102を含む。ここで見られるように、サーマルアクチュエータスイッチ1102は、並列に配置され、これは、サーマルアクチュエータスイッチ1102が少なくとも1つの熱源と少なくとも1つのヒートシンクとの間で熱エネルギーを伝達するために、それぞれ独立して使用されることができることを意味する。各サーマルアクチュエータスイッチ1102は、上述のサーマルアクチュエータスイッチ100、500、または700の別個の例を表し得るが、各サーマルアクチュエータスイッチ1102は、ピストンが相変化材料の膨張/収縮に基づいて移動する任意の他の適切な設計を有し得る。いくつかの実施形態では、
図11に示されるアレイ1100の各アレイ素子は、
図9に示される配置など、複数のサーマルアクチュエータスイッチ1102の積層配置を含んでもよい。
【0053】
サーマルアクチュエータスイッチ1102の並列配置の使用は、1つ以上のデバイスの温度を制御し、1つ以上のデバイスにわたる温度勾配を制御するのに役立つことができる。例えば、1つまたは複数のデバイスは、所望の温度範囲内に維持されることができ、デバイス(複数可)の1つまたは複数の表面にわたって所望の温度勾配を維持する(または所望の温度勾配範囲内の温度勾配を有する)ことができる。この例では、サーマルアクチュエータスイッチ1102は、一般に、ロウに配置され、これらロウは、互いに対して千鳥状に配列される(各サーマルアクチュエータスイッチ1102は隣接するロウ内のサーマルアクチュエータスイッチ1102とアライメントされないことを意味する)。このタイプの配置は、サーマルアクチュエータスイッチ1102間の側方向の熱伝達を低減させるまたは最小にすることを支援する際に有用である場合がある。しかしながら、アライメントされたサーマルアクチュエータスイッチ1102も使用し得る。
【0054】
なお、ここで示されるサーマルアクチュエータスイッチ1102のサイズは、各ロウのサーマルアクチュエータスイッチ1102間の間隔、及び異なるロウのサーマルアクチュエータスイッチ1102間の間隔と同様に、変動することができることに留意されたい。場合によっては、サーマルアクチュエータスイッチ1102間の間隔は、1つ以上の熱絶縁材料などによって、少なくとも部分的に充填されることができると、これら1つ以上の熱絶縁材料は、サーマルアクチュエータスイッチ1102が位置決めされる位置に実質的に熱伝導を制限することを支援する。
【0055】
図11は、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチのアレイ1100の一例を示しているが、
図11には様々な変更を行い得る。例えば、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチの並列配置は、任意の適切な方法で使用され得る。また、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチのアレイ1100は、任意の適切なレイアウトで任意の適切な数のサーマルアクチュエータスイッチ1102を含んでもよい。
【0056】
以下は、PCMに基づいた伝導性サーマルアクチュエータスイッチを実装する、またはそれらに関連する本開示の例示的な実施形態を説明する。しかしながら、他の実施形態を本開示の教示に従って使用し得る。
【0057】
第一実施形態では、装置は、装置を通した熱エネルギーの伝達を制御するように構成された複数のサーマルアクチュエータスイッチを含み、サーマルアクチュエータスイッチは、積層構成に配置される。各サーマルアクチュエータスイッチは、第一プレート及び第二プレート、ならびに第一プレートと第二プレートとの間で可動なピストンを含む。また各サーマルアクチュエータスイッチは、(i)膨張してピストンの表面を第一位置に移動させ、(ii)収縮してピストンの表面を第二位置に移動させることを可能にするように構成された相変化材料を含む。ピストンの表面は、第一プレートと熱的に接触し、第一位置及び第二位置の一方にある場合、第一プレートと第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を増加させる。ピストンの表面は、第一プレートから離隔され、第一位置及び第二位置の他方にある場合、第一プレートと第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を減少させる。サーマルアクチュエータスイッチの異なるものは、異なる温度で膨張するまたは収縮する異なる相変化材料を含む。
【0058】
第二実施形態では、システムは、少なくとも1つの熱源、及び少なくとも1つのヒートシンクを含む。またシステムは、少なくとも1つの熱源と少なくとも1つのヒートシンクとの間の熱エネルギーの伝達を制御するように構成された複数のサーマルアクチュエータスイッチを含み、サーマルアクチュエータスイッチは、積層構成に配置される。各サーマルアクチュエータスイッチは、第一プレート及び第二プレート、ならびに第一プレートと第二プレートとの間で可動なピストンを含む。また各サーマルアクチュエータスイッチは、(i)膨張してピストンの表面を第一位置に移動させ、(ii)収縮してピストンの表面を第二位置に移動させることを可能にするように構成された相変化材料を含む。ピストンの表面は、第一プレートと熱的に接触し、第一位置及び第二位置の一方にある場合、第一プレートと第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を増加させる。ピストンの表面は、第一プレートから離隔され、第一位置及び第二位置の他方にある場合、第一プレートと第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を減少させる。サーマルアクチュエータスイッチの異なるものは、異なる温度で膨張するまたは収縮する異なる相変化材料を含む。
【0059】
第三態様では、方法は、少なくとも1つの熱源から熱エネルギーを複数のサーマルアクチュエータスイッチで受けることを含み、サーマルアクチュエータスイッチは積層構成に配置される。また方法は、サーマルアクチュエータスイッチを使用して、少なくとも1つの熱源と少なくとも1つのヒートシンクとの間の熱エネルギーの伝達を制御することとを含む。各サーマルアクチュエータスイッチは、第一プレート及び第二プレート、ならびに第一プレートと第二プレートとの間で可動なピストンを含む。また各サーマルアクチュエータスイッチは、(i)膨張してピストンの表面を第一位置に移動させ、(ii)収縮してピストンの表面を第二位置に移動させることを可能にするように構成された相変化材料を含む。ピストンの表面は、第一プレートと熱的に接触し、第一位置及び第二位置の一方にある場合、第一プレートと第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を増加させる。ピストンの表面は、第一プレートから離隔され、第一位置及び第二位置の他方にある場合、第一プレートと第二プレートとの間の熱エネルギー伝達を減少させる。サーマルアクチュエータスイッチの異なるものは、異なる温度で膨張するまたは収縮する異なる相変化材料を含む。
【0060】
以下の特徴の任意の単一のものまたは任意の適切な組み合わせを、第一、第二、または第三実施形態と共に使用し得る。各サーマルアクチュエータスイッチは、相変化材料が収縮する場合、ピストンを移動させるように構成された復帰部を含んでもよい。各サーマルアクチュエータスイッチの復帰部は、1つ以上のばねまたは磁石を含み得る。サーマルアクチュエータスイッチは、第一及び第二サーマルアクチュエータスイッチを含み得、第一及び第二サーマルアクチュエータスイッチは、それぞれ第一及び第二相変化材料を含み得、第一相変化材料は第二相変化材料とは異なる温度で膨張しまたは収縮し得る。アレイは、複数のアレイ素子を含み得、各アレイ素子は、積層構成に2つ以上のサーマルアクチュエータスイッチを含み得る。複数のヒートストラップは、サーマルアクチュエータスイッチとの間で熱エネルギーを輸送し得る。
【0061】
本特許文書全体を通して使用される特定の単語及び語句の定義を記載しておくと有利な場合がある。「含む(include)」及び「備える/含む(comprise)」という用語、ならびにそれらの派生語は、制限なく含むことを意味する。「または」という用語は、包括的であり、及び/またはを意味する。「に関連する(associated with)」という語句、及びその派生語は、含む、その内に含まれる、それと相互接続する、収容する、その内に収容される、それにまたはそれと接続する、それにまたはそれと結合する、それと通信可能である、それと連携する、インターリーブする、並列する、それに最も近い、それにまたはそれとバインドされる、有する、そのプロパティを有する、それにまたはそれと関係するなどを意味することがある。「のうちの少なくとも1つ」という語句は、項目のリストと共に使用される場合、リストに挙げられた項目のうちの1つまたは複数の異なる組み合せを使用してもよく、リスト内の1つの項目のみを必要とする場合があることを意味する。例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」は、次の組み合わせ、A、B、C、A及びB、A及びC、B及びC、ならびにA及びB及びCのいずれかを含む。
【0062】
本開示における説明は、いずれかの特定の要素、ステップ、または機能が特許請求の範囲内に含まれなければならない必須のまたは重要な要素であることを黙示するものとして読まれるべきではない。特許主題の範囲は、許可された特許請求の範囲によってのみ定義される。さらに、「のための手段(means for)」または「のためのステップ(step for)」という正確な語句が特定の請求項において明示的に使用され、その後に機能を特定する分詞句が続かない限り、いずれの請求項も、添付の特許請求の範囲または請求項の要素のいずれに関しても、米国特許法第112条(f)を行使しない。請求項内の「メカニズム」、「モジュール」、「デバイス」、「ユニット」、「コンポーネント」、「要素」、「部材」、「装置」、「マシン」、「システム」、「プロセッサ」、または「コントローラ」のような用語の使用は(限定ではないが)、請求項自体の特徴によってさらに修正されるまたは強化される、当業者に知られている構造体を指すことが理解され、それを指すことを意図したものであり、米国特許法第112条(f)を行使することを意図したものではない。
【0063】
本開示が特定の実施形態及び一般的に関連する方法を説明してきたが、これらの実施形態及び方法の代替形態及び置換形態は、当業者には明らかであろう。したがって、例示的な実施形態の上記の説明は、本開示を定義または制約するものではない。以下の特許請求の範囲によって定義されるような、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の変更、置換、及び代替も可能である。
【国際調査報告】