(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ボールコントロールと耐久性を向上させるニット構成要素と物品
(51)【国際特許分類】
D04B 1/10 20060101AFI20240920BHJP
A43B 1/028 20220101ALI20240920BHJP
【FI】
D04B1/10
A43B1/028
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024516492
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 US2021050495
(87)【国際公開番号】W WO2023043438
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514144250
【氏名又は名称】ナイキ イノベイト シーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ダンビー
(72)【発明者】
【氏名】モハメッド モハメッド
(72)【発明者】
【氏名】アーサー パーカー モリナリ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ジー プレヴォ
(72)【発明者】
【氏名】バティステ レミー
(72)【発明者】
【氏名】ウィル シクサー
(72)【発明者】
【氏名】アラン ワイト
【テーマコード(参考)】
4F050
4L002
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BC03
4F050HA56
4F050JA04
4F050JA05
4F050JA06
4F050JA08
4F050JA09
4F050JA13
4L002AC07
4L002BA01
4L002DA01
4L002EA00
4L002FA00
(57)【要約】
異なる相対摩擦係数を有し、また交互のパターンで形成された第1の領域及び第2の領域を含む表面を有するニット構成要素。第1の表面の第1の領域は、第1の表面の総表面積の40%~80%である。交互のパターンは、同心状の形状であり得る。交互のパターンは、第1の領域と第2の領域との間に直線状の境界及び曲線状の境界を有し得る。第1の領域は、コア及びコーティングを有する第1のヤーンから形成され得る。コーティングは少なくとも部分的にコアを取り囲む。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面及び反対側の第2の表面を有するニット構成要素であって、前記ニット構成要素の前記第1の表面は、第1の摩擦係数を有する第1の領域であり、コア及びコーティングを有する第1のヤーンを含み、前記コーティングが前記コアを少なくとも部分的に取り囲んでいる、該第1の領域と、及び前記第1の摩擦係数とは異なる第2の摩擦係数を有し、第2のヤーンを含む第2の領域と、を備え、前記第1の領域は前記第2の領域と交互のパターンを形成し、第1の領域は、前記第1の表面の総表面積の40%~80%であるように、該交互のパターンを形成する、ニット構成要素。
【請求項2】
請求項1に記載のニット構成要素において、前記コーティングは熱可塑性エラストマーを含む、ニット構成要素。
【請求項3】
請求項1に記載のニット構成要素において、前記第1の領域における第1の領域は、前記コア及び前記コーティングを含むインターループしたヤーンの熱成形ネットワークを含み、前記コーティングは、前記コアの少なくとも一部を取り囲み、また前記インターループしたヤーンの熱成形ネットワークにおけるヤーン相互間のスペースの少なくとも一部を占めることによって、前記インターループしたヤーンの熱成形ネットワークを合体させる、ニット構成要素。
【請求項4】
請求項1に記載のニット構成要素において、前記第1の摩擦係数は前記第2の摩擦係数よりも大きい、ニット構成要素。
【請求項5】
請求項1に記載のニット構成要素において、前記第1の摩擦係数及び前記第2の摩擦係数は動摩擦係数である、ニット構成要素。
【請求項6】
請求項1に記載のニット構成要素において、前記第2のヤーンの少なくとも一部は前記コーティングを含まない、ニット構成要素。
【請求項7】
請求項1に記載のニット構成要素において、前記交互のパターンは同心状のパターンである、ニット構成要素。
【請求項8】
請求項1に記載のニット構成要素において、前記第1の領域における第1の領域及び前記第2の領域における第2の領域が前記交互のパターンで連続しており、前記第1の領域と前記第2の領域との間の境界が曲線状である、ニット構成要素。
【請求項9】
請求項1に記載のニット構成要素において、前記第1の領域における第1の領域及び前記第2の領域における第2の領域が前記交互のパターンで連続しており、前記第1の領域と前記第2の領域との間の境界が直線状である、ニット構成要素。
【請求項10】
請求項1に記載のニット構成要素において、前記第1の領域における第1の領域及び前記第2の領域における第2の領域が前記交互のパターンで連続しており、前記第1の表面の第1の隆起部分が、前記第1の領域及び前記第2の領域にわたって連続して延在している、ニット構成要素。
【請求項11】
外向き表面部分及び反対側の内向き表面部分を有する履物用アッパーのニット物品であって、前記外向き表面は、第1の摩擦係数を有し、第1のヤーンを含む第1の領域と、及び前記第1の摩擦係数とは異なる第2の摩擦係数を有し、第2のヤーンを含む第2の領域と、を備え、前記第1の領域は、前記外向き表面部分の第1の部分域における前記第2の領域と第1の交互のパターンを形成し、第1の領域は、前記第1の部分域で前記外向き表面部分の総表面積の40%~80%となるように、前記第1の交互のパターンを形成する、履物用アッパーのニット物品。
【請求項12】
請求項11に記載の履物用アッパーのニット物品において、前記第1の領域及び前記第2の領域は、前記外向き表面部分の第2の部分域において第2の交互のパターンを形成し、前記第1の領域は、前記第2の部分域で前記外向き表面部分の総表面積の40%~80%となるように、前記第2の交互のパターンを形成する、履物用アッパーのニット物品。
【請求項13】
請求項12に記載の履物用アッパーのニット物品において、前記第1の部分域は前記履物用アッパーのニット物品の内側部分にあり、また前記第2の部分域は前記履物用アッパーのニット物品の外側部分にある、履物用アッパーのニット物品。
【請求項14】
請求項13に記載の履物用アッパーのニット物品において、前記第1の交互のパターンは同心状のパターンである、履物用アッパーのニット物品。
【請求項15】
請求項13に記載の履物用アッパーのニット物品において、前記第1の交互のパターンは、前記第1の領域における第1の領域と前記第2の領域における第2の領域との間で曲線状の境界、又は前記第1の領域における前記第1の領域と前記第2の領域における前記第2の領域との間で直線状の境界の少なくとも一方を含む、履物用アッパーのニット物品。
【請求項16】
請求項11に記載の履物用アッパーのニット物品において、前記第1の領域における第1の領域は、各々がコアを有するインターループしたヤーンの熱成形ネットワークを含み、熱可塑性エラストマーが、前記コアの少なくとも一部を取り囲み、前記インターループしたヤーンの熱成形ネットワークにおけるヤーン相互間のスペースの少なくとも一部を占めることによって、前記インターループした単数形を合体させる、履物用アッパーのニット物品。
【請求項17】
請求項11に記載の履物用アッパーのニット物品において、前記第1の部分域は、前記履物用アッパーのニット物品のつま先領域の少なくとも一部にわたって延在している、履物用アッパーのニット物品。
【請求項18】
請求項11に記載の履物用アッパーのニット物品において、前記第1の部分域は、前記履物用アッパーのニット物品のつま先領域の少なくとも一部と、並びに前記履物用アッパーのニット物品の内側側面及び外側側面の少なくとも一部にわたって延在している、履物用アッパーのニット物品。
【請求項19】
第1の表面及び反対側の第2の表面を有するニット構成要素を製造する方法であって、第1のヤーン及び第2のヤーンを前記ニット構成要素として編むニッティングステップと、及び前記ニット構成要素の前記第1の表面を熱成形するステップと、を備え、前記ニット構成要素の前記第1の表面は、第1の摩擦係数を有し、各々がコアを有するインターループしたヤーンの熱成形ネットワークを含む第1の領域であり、熱可塑性エラストマーが各コアの少なくとも一部を取り囲み、またインターループしたヤーンの熱成形ネットワークにおけるヤーン相互間のスペースの少なくとも一部を占めることによって、前記インターループしたヤーンを合体させるようにした、該第1の領域と、及び前記第1の摩擦係数とは異なる第2の摩擦係数を有し、前記第2のヤーンを含む第2の領域と、を備え、前記第1の領域は、前記第1の表面の総表面積の40%~80%となるように、前記第2の領域と交互のパターンを形成する、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記第1の表面を熱成形するステップは、さらに、前記第1の表面の1つ又は複数の隆起部分を有する前記第1の表面を成形するステップを含み、前記1つ又は複数の隆起部分は、複数の前記第1の領域及び複数の前記第2の領域にわたって延在している、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ニット生地、物品の構成要素、履物などの物品及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
履物を含む様々な物品は生地(textiles)で形成されており、生地は多くの場合、ヤーン(糸)又は複数のヤーンをインターループ(interlooping)させる(例えば、編む)ことによって形成されている。特に、履物のアッパーは、ニット生地(knitted textile)から形成されてもよい。耐久性及び/又は耐水性を高めるために、非生地構成要素(コンポーネント)を生地に付加し、また固定(例えば、接着、縫合)してもよい。例えば、架橋ポリウレタンを耐久性のある被覆層、合成皮革生地、又はラミネートフィルム層として使用することができる。しかしながら、フィルムであっても、任意の付加的な層を加えることは、着用者に適合し、固有受容フィードバックを与える物品の能力を低下させ、これは特定のスポーツ活動における物品にとって特に重要であり得る。例えば、フットボール用のシューズ(他の地域ではサッカーとしても知られている)では、着用者が生地を通してボールを感じることができ、ボールコントロール及びボールさばきのために一定レベルの牽引性、又はグリップを持つことが重要である。同時に、履物のグリップ力が高すぎると、素早いタッチ及びボールさばきを行う着用者の能力が妨げられるおそれがある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本開示のさらなる態様は、添付の図面と併せて考慮すれば、以下に説明する詳細な説明を検討する際に容易に理解されるであろう。
【
図1A】本明細書の態様による、履物物品の外側の側面斜視図である。
【
図1B】本明細書における態様による、
図1Aの履物物品の内側の側面斜視図である。
【
図1C】本明細書における態様による、代替パターンを有する
図1Aの履物の内側の側面斜視図である。
【
図2A】本明細書における態様による、中央のコースが第1のヤーンで形成され、ループの外側のコースが第2のヤーンで形成された、3つの相互連結されたループのコースの概略図である。
【
図2B】本明細書における態様による、熱成形工程にさらされた後の
図2Aのループの相互連結されたコースの概略図である。
【
図3A】本明細書における態様による、ニット構成要素(knitted component)の外向き表面に成形された様々な突起及び隆起の例示的な斜視図を描いている。
【
図3B】本明細書における態様による、ニット構成要素の外向き表面に成形された様々な突起及び隆起の例示的な斜視図を描いている。
【
図3C】本明細書における態様による、ニット構成要素の外向き表面に成形された様々な突起及び隆起の例示的な斜視図を描いている。
【
図4】明細書の態様による、別の履物物品の内側の側面斜視図である。
【
図5A】本明細書における態様による、さらに別の代替的な履物物品の側方斜視図である。
【
図5B】本明細書における態様による、
図5Aの物品の内側の側面斜視図である。
【
図6】本開示による、ニット構成要素を形成する方法のフローチャートを描いている。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明の主題は、法令上の要件を満たすために、本明細書において特異性をもって記載されている。しかしながら、この記載自体は、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。むしろ、本発明者らは、請求又は開示される主題が、他の現在又は将来の技術と組み合わせて、本明細書に記載されるものと同様の異なるステップ又はステップの組み合わせを含むことによって、他の方法で具体化される可能性も意図している。さらに、「ステップ(step)」及び/又は「ブロック(block)」という用語は、本明細書において、採用される方法の異なる要素を特定するために使用される可能性があるが、個々のステップの順序が明示的に記載される場合を除き、本明細書において開示される任意の様々なステップ間又はステップ間の特定の順序を暗示するものとして解釈されるべきではない。
【0005】
履物を含む様々な物品は生地(textiles)で形成されており、生地は多くの場合、ヤーン(糸)又は複数のヤーンをインターループさせる(例えば、編む)ことによって形成されている。特に、履物のアッパーはニット生地から形成されることがある。耐久性及び/又は耐水性を高めるために、非生地構成要素(コンポーネント)を生地に付加して固定(例えば、接着、縫合)してもよい。例えば、ポリウレタン(例えば、架橋ポリウレタン)、合成皮革生地、又はラミネートフィルム層を耐久性のある被覆層として使用することができる。しかしながら、たとえフィルムであっても、任意の付加的な層を加えることは、着用者に適合し、固有受容フィードバックを与える物品の能力を低下させ、これは特定のスポーツ活動における物品にとって特に重要であり得る。例えば、フットボール用のシューズでは、着用者が生地を通してボールを感じることができ、ボールコントロール及びボールさばきのために一定レベルの牽引性又はグリップを持つことが重要である。同時に、履物のグリップ力が高すぎると、素早いタッチ及びボールさばきを行う着用者の能力が妨げられるおそれがある。さらに、フットウェアの異なる部分が異なるタイプの動きに利用されることがあるため、異なる部分において異なる特性(例えば、パターン)を有するアッパー用の生地が望まれることがある。
【0006】
以下で詳細を述べるが、物体(例えば、ボール)コントロールのためのグリップ又は牽引性は、変化するグリップを有する第1の領域と第2の領域の交互のパターンによって達成される。これらの交互のパターンは、望ましいグリップ量が達成されるようにボールコントロールを微調整するのに役立つ。例えば、ニット構成要素又は履物のアッパーなどの本明細書に記載された生地は、第1の摩擦係数を有する第1の領域及び第1の摩擦係数とは異なる又は第1の摩擦係数よりも低い第2の摩擦係数を有する第2の領域との交互のパターンを含むことができる。履物用アッパーの表面におけるこの第1の領域と第2の領域との間の交互の配置は、履物用アッパーとボールなどの物体との間の相互作用を実現し、履物用アッパーの着用者によるコントロールの感覚を高めることができる。さらに、第1の領域と第2の領域の交互のパターンを有し、第1の領域が履物のアッパーの一部(例えば、ボール接触部分域)の外向き表面の総表面積の40%~80%である、履物のアッパーの表面は、履物のアッパーの着用者による潜在的に高められたコントロールの感覚を達成するのに有効であると想定される。
【0007】
熱可塑性エラストマーは、耐摩耗性、牽引性(グリップとも呼ばれる)又はその両方のレベルを提供する高分子組成物に組み込むことができ、アパレル、履物及びスポーツ用品などの耐摩耗性又は牽引性が望ましい物品に使用するのに適していることが確認されている。多くの場合、これらの高分子(ポリマー)組成物が提供する耐摩耗性、牽引性又はその両方のレベルは、履物、アパレル及びスポーツ用品の製造に使用される標準的な加硫ゴム組成物と同等か、それ以上である。加硫ゴムとは異なり、これらの高分子組成物は熱可塑性であり、且つ固体及び溶融状態での特性により、工業規模の編み機又は織機での使用に適した特性を有するコーティングされたヤーンに容易に形成することが可能である。これらの特性により、ニッティング/編成(knitting)及び織成(weaving)などの従来の製造工程、並びに不織布を製造するための工業規模の工程を使用して、生地を含む様々な物品に容易に組み込むことができるヤーンが得られる。また、加硫ゴムとは異なり、これらの生地及びこれらの生地が組み込まれた物品は、順番に、コーティングされたヤーンの高分子組成物を再流動させる方法で熱成形することができ、生地又は物品の他の構成要素、例えば、他のヤーン、他の生地、発泡体、成形樹脂構成要素などを損傷しない条件下で、生地又は物品に耐摩耗性、又は高いグリップ力の表面を形成することができる。
【0008】
高いレベルでは、本開示の様々な態様は、ボールコントロール及び耐久性などの特定の所望の機能性を最大化するために、これらの熱可塑性エラストマーを物品中の生地に組み込むことを対象にする。具体的には、ニット構成要素は、第1のコアヤーン(本明細書では「コア」とも称する)及び熱可塑性エラストマーからなる第1のコーティング(本明細書では「コーティング」とも称する)とを有する第1のヤーンを含み得る。熱可塑性組成物は、第1のコアヤーンを少なくとも部分的に取り囲む1つ又は複数の熱可塑性エラストマーからなる。ニット構成要素は、第1のヤーンとは異なる第2のヤーンをさらに含む。ニット構成要素の第1の表面(例えば、ニット構成要素を用いて形成された物品の外向き表面)において、第1の領域が第1のヤーンで形成される一方、第2の領域が第2のヤーンで形成される。第1のヤーン及び第2のヤーンの材料に少なくとも部分的に起因して、第1の領域及び第2の領域は、共通の材料に対して異なる摩擦係数を有する。具体的には、第1の領域は第2の領域よりも高い摩擦係数を有し、第2の領域に対して第1の領域で増加したグリップを与えることができる。例えば、第1の領域は、第2の領域と同じボール表面との間の摩擦係数よりも高いボール表面との摩擦係数を有してもよい。さらに、第1及び第2の領域は交互のパターンを形成し、第1の領域が第1の表面(例えば、履物のアッパーのボール接触部分)の総表面積の40%から80%を占めるようにし、これは、ニット構成要素に対して改善されたレベルのグリップを与えることができる。
【0009】
ニット構成要素がフットボールシューズなどの履物用アッパーに組み込まれるとき、第1及び第2の領域の交互のパターンは、耐摩耗性を提供するだけでなく、ボールコントロール及びボールさばきを改善することができる。いくつかの態様において、交互のパターンは、アッパーの内側面の同心状のパターン(例えば、第1の領域と第2の領域との間の曲線状の境界)を含む。いくつかの態様において、第1及び第2の領域は、ストライプ(例えば、第1の区域と第2の区域との間の直線状の境界)の異なる交互のパターンを形成してもよい。一例では、ストライプは一般に、アッパーの外側の側面など、バイトラインからスロートまで延びている。内側の側面における第1及び第2の領域の同心状のパターンは、ボールのパス、レシーブ及びキックの動きには望まれる場合がある一方、ボールをドラッギングする動き又はナッジングには、外側の側面のより直線的なパターンが望まれ得る。
【0010】
さらに、いくつかの態様において、ニット構成要素は、第1のコーティングが流れ、第1のヤーンのコース又は第1のコアヤーンのコース間のスペースの少なくとも一部を占めるように熱成形され得る。この配置により、有利なことに、ラミネートされた表皮を必要とすることなく、360度のボールコントロールをニット構成要素に直接一体化することができ、表面を単一の機能層として簡素化することができる。生地がシューズ又はフットボールブーツのアッパーに使用される場合、この単一の機能層は、単一の機能層から付加層を省くことによって着用者をボールに近づけるのに役立ち、これによって着用者への固有受容フィードバックが増加し、ボールコントロールがさらに改善される。さらに、ラミネートされた表皮を含まないことで、ニッティング(編成)後工程が減り、製造効率が向上する。
【0011】
本開示の態様は、ニット構成要素を製造する方法をさらに含み得る。この方法は、第2のヤーンと一体的に編まれた第1のヤーンを有するニット構成要素を編むニッティングステップを含み得る。上述したように、第1のヤーンは、第1のコアヤーン及び第1のコアヤーンを少なくとも部分的に取り囲み、1つ又は複数の熱可塑性エラストマーを含む高分子組成物からなる第1のコーティングを含んでもよく、コーティングは、第1のコアヤーンを少なくとも部分的に取り囲む。さらに、ニット構成要素内において、第1のヤーンはニット構成要素の第1の表面上に第1の領域を形成し、且つ第2のヤーンはニット構成要素の第1の表面上に第2の領域を形成し、第1の領域は第2の領域とは異なる摩擦係数を有する。さらに、第1の領域は、上述のように、第2の領域と交互のパターンを形成してもよい。
【0012】
さらに、態様には、アッパー用のニット構成要素を製造する方法が含まれる。上述したように第1のヤーンを第2のヤーンと一体的に編んだニット構成要素は、第1のコーティングを再流動及び再固化させてインターループしたヤーンの熱成形ネットワークを形成するように熱成形することができる。熱成形したネットワークは、第1のコアヤーンと、及び第1のコアヤーンの少なくとも一部を取り囲み、且つ熱成形されたネットワーク内の糸の少なくとも一部の間の空間を占める第1のコーティングとを備える。この方法は、さらに、第1の表面を成形して、熱成形されたネットワークに隆起部分を形成するステップを備え、隆起部分は、ニット構成要素内に同心状のパターンを形成するものであり得る。本開示のさらなる態様としては、熱成形されたニット構成要素を含むアッパーをソール構造に取り付けることによって履物を製造する方法があり得る。
【0013】
上述したように、特定の態様は、1つ又は複数のニット構成要素又は熱成形されたニット構成要素が対象とされる。特定の態様において、そのようなニット構成要素又は熱成形されたニット構成要素は、履物を含むスポーツ用品又は履物の物品の少なくとも一部を形成する。実例を挙げると、態様は、ニット構成要素で形成された履物用アッパーがある。履物は従来、アッパー及びソール構造を含む。アッパーはソール構造に固定され、且つ足を快適及び確実に受け入れるための空間を履物内に形成する。本明細書で使用される場合、「アッパー(upper)」という用語は、足の甲及びつま先の領域、足の内側及び外側の側面に沿い、また足のかかとの領域の周囲に延びて、着用者の足を受け入れるための空間を形成する履物構成要素を指す。アッパーの非限定的な例示的な例としては、バスケットボールシューズ、サイクリングシューズ、クロストレーニングシューズ、グローバルフットボール(サッカー)シューズ、アメリカンフットボールシューズ、ボウリングシューズ、ゴルフシューズ、ハイキングシューズ、スキー又はスノーボードブーツ、テニスシューズ、ランニングシューズ及びウォーキングシューズに組み込まれたアッパーが挙げられる。さらに、他の態様では、アッパーは、ドレスシューズ、ローファー、サンダルなどの非運動靴に組み込むこともできる。従って、履物に関して開示された概念は、多種多様な履物のタイプに適用される。
【0014】
トップ、ボトム、フロント、サイド、バック、上側、下側、外側、内側、右側、左側、内向き、外向きなど、アッパーを説明するときに使用される位置関係の用語は、着用者の足が足受け入れ空間にあり、また着用者の足首又は脚が足首開口部を通って伸びるように、着用者が直立した状態でアッパーが意図された通りに着用されることに関して使用される。しかしながら、位置に関する用語の使用は、解釈の目的上、人間の実際の存在に依存しないことを理解すべきである。
【0015】
「ニット構成要素(knitted component)」という用語は、コース及びうねを決める複数の噛み合わされたループを形成するように操作された(例えば、編み機で)少なくとも1本のヤーンから形成される生地片を指す。本明細書で使用される「コース(course)」という用語は、同じ編みサイクル中に隣接する針によって生成される、(真っ直ぐな生地の編み目のままの)ニットループの主に水平な列を指す。コースは、ニットステッチ、ホールドステッチ、フロートステッチ、タックステッチ、トランスファーステッチ、リブステッチなど、ニットの技術分野で知られているような1つ又は複数のステッチタイプから構成されることがある。本明細書で使用する「ニットステッチ(knit stitch)」という用語は、前のステッチを通してヤーンのループを生地の後ろから前に引っ張った後、ヤーンが針から解放される基本的なステッチタイプを指す。用語「うね(wale)」は、本明細書で使用される場合、一般に、順次の(必ずしも全てではないが)コース又はニッティングサイクルで同じ針によって生成される、相互に噛み合った又はインターループしたニットループの主に垂直な列である。本明細書に記載されるニット構成要素には、横編み又は縦編み構成要素が含まれ得る。
【0016】
本明細書で使用される「一体的にニッティングする(integrally knit)」という用語は、1つの領域における1つ又は複数の編まれた(ニッティングされた)コースからのヤーンが、別の領域における1つ又は複数の編まれたコースとインターループされているニット生地を意味し得る。インターループするとは、単純なニットステッチ、タックステッチ、ホールドステッチ、フロートステッチ又はミスステッチなどを介することができる。このようにして、一体的に編まれた領域は、継ぎ目のない移行を有する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「ダブルニット構造」という用語は、二つのニードルベッド又はシリンダー内の2組の針を有する機械で編成された生地、又は生地部分を指す。本明細書におけるいくつかの態様は、機械が横編み機(フラットニット)からなることを想定している。フラットニット機を説明する場合、「ベッド」という用語が一般的に使用される。しかしながら、本明細書における態様は、縦編みニットの構成要素にも関連し得ることを理解されたい。別の方法で説明すると、ダブルニット構造という用語は、第1のニードルベッド上に形成されたフロントコース及び第2のニードルベッド上に形成されたバックコースを有する生地を意味する。ダブルニット構造の生地のフロントコースは、生地のフロント層を形成するインターループしたステッチのコースであり、バックコースは、生地のバック層を形成するインターループしたステッチのコースであり、生地のフロント層とバック層は実質的に同時に形成され得る。本明細書で使用される場合、「フロント層」という用語は、アッパーのような生地を組み込んだ物品が着用されるときに外部に面するように構成された生地層を指し、「バック層」という用語は、物品が着用されるときに着用者の皮膚表面に面するように構成された生地層を指す。
【0018】
さらに、本明細書には様々な測定値が記載されている。別段の記載がない限り、測定値に関して「約(about)」又は「ほぼ/実質的に(substantially)」という用語は、指示値の±10%以内を意味する。
【0019】
ここで図、特に
図1A及び
図1Bに目を向けると、履物100が一つの例示的な着用物品として描かれている。
図1A及び1Bは履物100を描いているが、アパレル(例えば、シャツ、ジャージ、パンツ、ショーツ、手袋、眼鏡、靴下、帽子、キャップ、ジャケット、下着)及び物入れ(例えば、バックパック、バッグ)を含むだけでなく、これらに限定されない他の履物も、本開示によって想定されることが理解されるべきである。
図1A及び
図1Bの履物100は、一般に、地面に面するアウトソール領域110、足首の襟領域112、外側の足中間部領域114a、内側の足中間部領域114b、足前部領域116及び踵部領域118があり得る。さらに、履物100は、複数のアイステイ120、タン124及びスロート領域126があり得る。
図1A及び
図1Bに示すように、履物100は、右足で使用されることを意図しているが、以下の議論は、左足で使用されることを意図した履物100の鏡像にも適用され得ることを理解すべきである。
【0020】
いくつかの態様において、履物100はソール構造104とアッパー102を含む。ソール構造104は、アッパー102に固定され、また履物100を履いたときに足と地面の間に広がる。いくつかの態様では、ソール構造104はミッドソール107及びアウトソール109を含む。ミッドソール107は、ストローベル(図示していない)などのアッパー102の下部領域に固定してもよく、ポリマーフォームなどの弾性のある材料又は他の適切な材料から構成されるクッション要素を含んでもよい。他の構成では、ミッドソール107のクッション要素は、力をさらに減衰させ、安定性を高め、又は足の動きに影響を与える流体充填室、プレート、減速材及び/又は他の要素を組み込んでいてもよい。アウトソール109はミッドソール107の下面に固定してもよく、天然又は合成ゴム材料などの耐摩耗性エラストマー材料を含んでもよい。アウトソール109は、牽引性を付与するためにテクスチャード加工してもよい、又は1つ若しくは複数の牽引性要素を含んでもよい。牽引性要素は、アウトソール109に貼り付けられた別個の要素であってもよい、或いはアウトソール109と一体的に形成されていてもよい。
【0021】
アッパー102は、様々な要素(例えば、レースステー、タンの襟、内側サイド、外側サイド、つま革(vamp)、先芯(toe box)、ヒールカウンター)から形成され、これらが組み合わさって、足を確実及び快適に受け入れるための構造を提供する。アッパー102の構成は著しく異なることがあるが、様々な要素は一般的に、ソール構造104に対して足を受け入れ固定するための空間をアッパー102内で決める。アッパー102内の空間の表面は足を収容する形状であり、足の甲及びつま先の領域に渡って、足の内側及び外側の側面に沿って、足の下側及び足のかかとの領域の周りに延在し得る。
【0022】
アッパー102の少なくとも一部は、例えば、横編み工程又は平編み機での縦編み工程などによる少なくとも1つのニット構成要素130で形成することができる。ニット構成要素130は、横編み、縦編み又は任意の他の適切なニッティング工程などのニッティング工程中に、単一の一体型ワンピース要素として形成されてもよい。
図1A及び
図1Bに描かれた例では、ニット構成要素130はアッパー102のアウターシースを形成し、アッパー102の外側の足中間部領域114a、内側の足中間部領域114b、足前部領域116及びスロート領域126の少なくとも一部の外面を形成する。いくつかの態様において、ニット構成要素130はさらに、アッパー102の内面を形成する。
【0023】
アッパー102は、さらに、ニット、織成、不織成又は他のタイプの生地であってもよい生地構成要素140などの、一つ又は複数の追加構成要素を含んでもよい。生地構成要素140は、踵部領域118、足首の襟領域112及びタン124の少なくとも一部を形成することができる。生地構成要素140は、単一の生地構成要素であってもよい、或いは複数の生地構成要素を一緒に固定して形成してもよい。さらに、生地構成要素140がニット構成要素130と一体的に編まれる態様でもよい。生地構成要素140は、ニット構成要素130と一体的に編まれていてもよい。或いは、生地構成要素140は、縫合、接着などの少なくとも1つを介してニット構成要素130に固定されてもよい。
【0024】
ニット構成要素130は、異なる機能性を付与するための1つ又は複数の異なるタイプのヤーンを含んでもよい。例えば、ニット構成要素130は、第1のヤーン及び第2のヤーンを含むことができる。第1のヤーン(本明細書では、第1のコーティングされたヤーン又はコーティングされたヤーンとも呼ばれる)は、第1のコアヤーンと、第1のヤーンに第1の特性のセットを提供する第1のコーティングと、を含む。第2のヤーンは、第1のヤーンとは異なる材料組成を有してもよい。例えば、第2のヤーンは、少なくとも、第2のヤーンが第1のヤーンとは異なる特性を示すように、第1のヤーンの第1のコーティングとは異なるコーティングを含むことができる。
【0025】
さらに、第1のヤーン内において、第1のコアヤーン及び第1のコーティングは、異なる特性を提供するために異なる材料組成を有してもよい。例えば、本明細書に記載されるように、第1のコーティングは低処理温度高分子組成物から構成されてもよく、一方、第1のコアヤーンは、第1のコーティングがコアヤーンをそのまま残す温度で溶融又は変形し得るように、高処理温度高分子組成物から構成されてもよい。一態様では、第1のヤーンにおけるコアヤーンの高分子組成物の変形温度は、第1のコーティングの高分子組成物、例えば熱可塑性組成物からなる高分子組成物の溶融温度よりも少なくとも20℃高い。これにより、コーティングが溶融状態にあるときに、コアヤーンをこのコーティングによって被覆することができる。
【0026】
第1のヤーンにおける第1のコアヤーンは、モノフィラメント又はマルチフィラメントヤーン、例えば、ヤーンが工業規模の編み機によって操作されるのに十分な特性(デニール及び粘着性など)を有する市販のポリエステル又はポリアミドのヤーンから構成されてもよい。さらに、コアヤーンは、ポリエステル、高強力ポリエステル、ポリアミドのヤーン、金属ヤーン、ストレッチヤーン、カーボンヤーン、ガラスヤーン、ポリエチレン又はポリオレフィンのヤーン、バイコンポーネントヤーン、PTFEヤーン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)のヤーン、液晶ポリマーヤーン、特殊装飾ヤーン、反射ヤーン又はこれらヤーンの1つ又は複数からなるマルチコンポーネントのヤーンを含む天然、又は人工繊維をベースとすることができる。例示的な態様では、コアヤーンはポリエステルからなる熱可塑性材料からなる。
【0027】
様々な態様において、第1のコアヤーンは、当該技術分野において公知の任意の方法によって被覆され得る。一態様では、本明細書で開示される第1のコーティングのための高分子組成物は、引抜成形、及び/又は液体高分子材料の浴を通してヤーンを引っ張ることによる製造に適している。さらに別の態様では、コーティング工程にかかわらず、十分な被服材料が単独で又は1つ又は複数の他のヤーンと様々な構成で編み、その後熱成形し、リフロー及び再凝固させたときに、被覆材料(例えば、熱可塑性エラストマーを含む高分子組成物)は、ニット構造内の第1のヤーンの配置に応じて、1つ又は複数の表面上、及び/又は第1のコアヤーン内に適切な濃度の被覆材料を有する構造を形成する。
【0028】
第1のヤーンにおける第1のコーティングは、熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性組成物を含む高分子組成物を含む。熱可塑性エラストマー組成物である高分子組成物を押し出し、高分子組成物から直接繊維、フィラメント、ヤーン又はフィルムを形成することは可能であるが、そのエラストマー特性により、高分子組成物のこれらの形態は、高レベルの伸張及び熱収縮を有する。つまり、繊維、フィラメント、糸又はフィルムは、機械のガイドを通過して滑るのではなく、機械のガイドの周囲で伸びる傾向があり、工業規模の編み機及び織機で一般的に発生する温度で収縮する傾向がある。しかしながら、機械的に操作されるのに適したコアヤーンにコーティングとして高分子組成物を適用することにより、得られるコーティングされた第1のヤーンは、コアヤーンの粘り強さと耐伸縮性を保持する一方で、エラストマー特性により、コーティングの高分子組成物により提供される優れた牽引性と耐摩耗性を有する外表面も提供する。例えば、破断時引張強度が少なくとも1キログラム以上、破断するひずみが20パーセント未満であり、熱収縮率が20パーセント未満である150デニールのコアヤーンは、約1.0ミリメートルまでの公称平均外径まで高分子組成物で被覆されても、市販の平編み機を使用して編む又ははめ込む能力を保持し得ることが見出されている。工業規模の設備でこのヤーンを使用することができるため、この第1のヤーンは、従来の製造工程と比較して、位置及び量の両方においてより高いレベルの特異性で、生地及び生地からなる物品内に高分子組成物をさまざまに配置することを可能にする新しい製造方法をも可能にし得る。
【0029】
さらに、高分子組成物の熱可塑性の性質により、高分子組成物の溶融温度が第1のコアヤーンの変形温度よりも十分に低い場合に、組成物を溶融して第1のコアヤーンを被覆するために使用することが可能になり、また、その後、ニット構成要素130を熱成形して、第1のコアヤーンと、第1のコアヤーンを固化する再流動して再固化した高分子組成物との両方からなる熱成形ネットワークを形成することが可能になる。一態様では、コーティングの高分子組成物の熱可塑性エラストマーは、-20℃未満のガラス転移温度を有し、これにより、ニット構成要素130が低温環境で使用される場合でさえ、高分子組成物中に存在する熱可塑性エラストマーが「ゴム状」状態にあることが可能になる。別の態様において、コーティングの高分子組成物の溶融温度は少なくとも100°Cであり、これにより、ニット構成要素130が高温条件下で出荷又は保管されるときに高分子組成物が溶融しないことが保証され得る。別の態様において、コーティングの高分子組成物の溶融温度は少なくとも130°Cであり、このことは、ニット構成要素130が、蒸し工程など、履物、アパレル又はスポーツ用品の物品の製造工程中に生地がしばしば遭遇する条件にさらされたときに高分子組成物が溶融しないことを確実にする。別の態様において、コーティングの高分子組成物の溶融温度は170°C未満であり、これにより、ニット構成要素130は、アッパー102の一部を形成し得る他の生地、又は構成要素に悪影響を与えない温度で熱成形され得ることが保証される。別の態様において、コーティングの高分子組成物の熱可塑性エラストマーの溶融エンタルピーは、約30ジュール/グラム未満又は25ジュール/グラム未満であってもよく、これは、熱成形プロセス中に、高分子組成物を完全に溶融させ、溶融された高分子組成物の良好な流動を達成して、ニット構成要素130のヤーンのネットワークをより良好に固めるために、より少ない熱及びより短い加熱時間が必要とされることを意味する。別の態様において、コーティングの高分子組成物の熱可塑性エラストマーの再結晶温度は、60°C以上又は95°C以上であってもよく、これにより、熱成形後の高分子組成物の迅速な再固化が促進され、熱成形後に生地を冷却するのに必要な時間が短縮され、生地に能動的な冷却を提供する必要性が回避され、それにより、サイクル時間が短縮され、エネルギー消費が低減され得る。
【0030】
ニット構成要素130は、第1のヤーン(すなわち、コーティングされたヤーン)に加えて第2のヤーンも含むため、ヤーン(すなわち、第1のヤーン及び第2のヤーンからのコアヤーン)の熱成形ネットワークは、リフロー及び再固化した高分子組成物によって連結される。リフロー及び再固化した高分子組成物の存在は、熱成形された生地内で1つ又は複数の機能を果たすことができ、例えば、ニット構成要素130全体又はその部分域(region)内だけで伸縮のレベルを制御すること、ニット構成要素130の表面全体又はその部分域内だけで高い耐摩耗性及び/又は牽引性を有する表皮を形成すること、ニット構成要素130の表面全体又はその部分域内だけで耐水性を向上させること、或いはニット構成要素130全体又はその部分域内だけで基材に接着することなどが挙げられる。
【0031】
ニット構成要素130における第1のヤーンの使用は、物品を形成するのに必要な異なる材料の数を減らすこともできる。第1のヤーンのコーティングは、熱成形されるとき、ニット構成要素130の表面上に表皮を形成してもよい。代替的又は付加的に、熱成形されたときの第1のヤーンのコーティングは、ニット構成要素130内でヤーン同士を接着するため、或いはニット構成要素130の表面に他の要素を接着するための接着剤として作用してもよい。本明細書に記載された熱成形されたニット構成要素130の使用は、耐摩耗性を高め、又は牽引性を生み出すために従来加えられていた別個の要素の1つ又は複数に取って代わる可能性があり、物品のリサイクル性を向上させながら、廃棄物を減らし、製造工程を簡素化する。加えて、追加層としてではなく、ニット構成要素130のニット構造内にこれらの特性を作り出すことは、ニット構成要素130が着用者の足の形状を形成するのを助け、サッカーボールを扱うときのような、より固有受容フィードバックを可能にする。本明細書に記載される履物には、本明細書の技術の範囲から逸脱することなく、他のボールを使用することができることに留意されたい。
【0032】
この熱成形された生地の熱成形ネットワークは、
図1A及び1Bのニット構成要素130の第1表面105のような、アッパーの外向き表面を形成することができる。予期せぬことに、生地を熱成形することによって作成された熱成形ネットワークは、ボールを蹴るときにアッパーによってボールに付与されるスピン率の点で、熱成形ネットワークの特性がカンガルーの皮革と同等又は優れ得るという点で、ボール接触性に優れる。例えば、約65~約85のデュロメータ硬度(ショアA)を有する高分子組成物を使用すると、ボールスピン率が改善されたアッパーが得られることが判明している。また、本明細書で説明する生地からなるアッパーは、濡れた及び乾いた条件下での牽引性の点で、合成皮革、又は表皮でコーティングされたニットアッパーと同等又はそれ以上であることも判明している。
【0033】
本明細書で説明されるように、第2のヤーンは、ニット構成要素130の少なくとも一部の部分域において熱成形ネットワークを形成するために第1のヤーンと一体的に編まれてもよい。具体的には、ニット構成要素130は、
図1A及び1Bに示すように、アッパー102の外向き表面を形成する第1の表面105を有してもよい。ニット構成要素130は、アッパー102の内向き表面を形成し、また
図1A及び1Bでは見えない反対側の第2の表面も含み得る。第1の表面105は、複数の第1の領域及び複数の第2の領域(例えば、第1の領域108及び第2の領域106)を含んでもよい。
図1A及び1Bにおいてこれらの領域を区別するために、第1の領域104は、第2の領域106よりも薄い陰影で描かれている。しかしながら、陰影は、これらの領域104及び106の相対的な着色を必ずしも制限すべきではないことを理解すべきである。
【0034】
第1表面105上の第1領域108は第1のヤーンを含み、また第1表面105上の第2の領域106は第2のヤーンを含む。様々な態様において、第2の領域106は第1のヤーンを完全に又はほぼ排除する。いくつかの態様において、第1の領域108は第2のヤーンを完全に又はほぼ排除する。他の態様において、第1の領域108は、本明細書に記載の技術から逸脱することなく、微量の第1のヤーンを有してもよく、及び/又は第2の領域106は、微量の第2のヤーンを有してもよい。「微量(Trace amounts)」とは、本明細書では、特定の糸の約10重量%未満と定義される。例えば、第1のヤーンの10重量%未満又は第2のヤーンの10重量%未満である。
【0035】
上述したように、第1のヤーンは、第1のコアヤーンと、熱可塑性高分子組成物からなる第1のコーティングとを有してもよい。熱可塑性高分子組成物は、第1のコアヤーンを少なくとも部分的に取り囲む1つ又は複数の熱可塑性エラストマーを含んでもよい。第2のヤーンは、ポリエステルからなる熱可塑性材料のフィラメントを含んでもよい。しかしながら、第2のヤーンは、一例では、第1のコーティングを構成する熱可塑性高分子組成物を含まない。
【0036】
先に説明したように、第1のヤーンと第2のヤーン異なる物理的特性を有していてもよい。例えば、第1のヤーンの第1のコーティングは第1の変形温度を有し、また第2のヤーンは第1の変形温度よりも大きい第2の変形温度を有する。ある態様において、この第2の変形温度は、第2の溶融温度又は第2の分解温度のいずれか低い方である。そのため、第1のヤーン又は少なくとも第1の糸のコーティングは、第2のヤーンの構造がそのままである間に、本明細書に記載される熱成形ネットワークを形成するために、溶融、フロー又は溶融状態になり得る。様々な態様において、コーティングの変形温度は、第2のヤーンの第2の変形温度よりも少なくとも20°C低い。例えば、様々な態様において、第1のヤーンのコーティングの溶融温度は、少なくとも100°C、少なくとも130°C又は少なくとも170°Cであり、各例において、第2の変形温度は、第1のヤーンのコーティングの溶融温度よりも少なくとも20°C大きくてもよい。
【0037】
少なくとも部分的には、第1のヤーン及び第2のヤーンの選択的な使用により、第1の領域108は第2の領域106とは異なる摩擦係数を有する。本明細書において相対的な摩擦係数が言及される場合、共通の試験規格が第1の領域及び第2の領域の両方に適用される。例えば、本明細書に記載される第1の領域の静摩擦係数又は動摩擦係数を決定するために、第1の領域だけのサンプルを、ASTMD1894を用いて試験することができる。同様に、第2の領域だけのサンプルを、ASTMD1894を用いて試験し、本明細書に記載の第2の領域の静摩擦係数又は動摩擦係数を決定することができる。しかしながら、以下に説明するように、ASTMD1894の修正版又は他の試験は、第1の領域及び第2の領域の両方に共通の試験規格が適用される限り、本明細書の技術の範囲から逸脱することなく使用することができる。別の言い方をすれば、第1の領域が第2の領域と比較して高い摩擦係数を有する場合、排他的な第1の領域サンプルと排他的な第2の領域サンプルの両方が、同じ試験(例えば、同じ試験規格及び/又はプロセス)及び同じ条件(例えば、湿潤、乾燥、温度)を使用して測定され、唯一の変数は、この例では、摩擦係数が決定される材料(例えば、第1の領域と第2の領域)の変化である。したがって、相対的な摩擦係数(例えば、第1の領域は第2の領域よりも高い摩擦係数を有する)が、第1の領域と第2の領域との間で決定され得る。
【0038】
いくつかの態様において、第1の領域108は第2の領域106よりも高い摩擦係数を有する。摩擦係数は、湿潤状態又は乾燥状態のいずれかに基づくことができる。様々な態様において、第1の領域108は、湿潤及び乾燥状態の両方において、第2の領域よりも高い摩擦係数を有する。一態様では、フットボール材料の乾燥サンプルで試験した第1領域108の乾燥動摩擦係数は、約0.90~約1.50である。さらに、フットボール材料の濡れたサンプルで試験された第1の領域108の湿潤動摩擦係数は、約0.50~約0.80であり得る。さらに、いくつかの態様において、フットボール材料の乾燥サンプル対フットボール材料の湿潤サンプルにおける第1の領域108の動的摩擦係数の間の差は、40パーセント未満である。このようにして、第1の領域108を形成する第1のヤーンは、第1の領域108が、乾燥及び濡れた状態の両方において、フットボールのような物体に対して牽引性又はグリップを有することを可能にし得る。このようにして、第1のヤーンは、着用者が様々な気象条件下で良好なボールコントロールを有することを可能にし、また濡れたときのフットボールの滑りを低減し得る。本明細書で開示される摩擦係数の値はすべて、以下に記載される生地-ボール摩擦係数試験を用いて得ることができる。
【0039】
グリップ力(摩擦係数で表すことができる)はボールコントロールに役立つが、グリップ力が高すぎると、着用者がボールを操作するスピードが低下する。サッカーのような活動では、ソフトで素早いタッチが望まれる場合があり、したがって、第1の領域108からの摩擦係数を相殺する領域を持つことは、全体的なグリップとボールコントロールの最適なレベルを与えるのに役立つ可能性がある。このように、第1のヤーンを含まない第2の領域106は、濡れた状態及び乾いた状態において、第1のヤーンよりも低い摩擦係数を有する。例えば、第2の領域106の摩擦係数(湿潤又は乾燥)は、第1の領域108の摩擦係数(湿潤又は乾燥)よりも約10%~約75%小さい範囲内、第1の領域108の摩擦係数(湿潤又は乾燥)よりも約15%~約60%小さい範囲内、又は第1の領域108の摩擦係数(湿潤又は乾燥)よりも約20%~約50%小さい範囲内であってもよい。
【0040】
第1及び第2の領域108及び106はまた、他の異なる物理的特性を有してもよい。例えば、第1のヤーン又は第1のヤーン及び第2のヤーンの第1のコーティングは、それらの色の色相、値及び彩度のうちの少なくとも1つに基づいて異なっていてもよい。このように、第1の領域108及び第2の領域106は、それらの色の色相、値及び彩度のうちの少なくとも1つに基づいて異なってもよい。第1のヤーンと第2のヤーンとの間及び第1の領域108と第2の領域106との間の他の視覚的差異は、本明細書における技術の範囲から逸脱することなく使用され得る。しかしながら、いくつかの態様において、第1領域108と第2の領域106との間における視覚的な差異は最小限であるか又は存在しないことがあるが、他の物理的特性の差異は残る。
【0041】
図1A及び
図1Bに示すように、第1の領域108及び第2の領域106は、アッパー102の表面上に交互のパターンを形成する。例えば、第1の領域108の1つが、2つの第2の領域106相互間に配置されてもよく、言い換えれば、第2の領域106の一つが、2つの第1の領域108相互間に配置されてもよい。このように第1の領域108及び第2の領域106を交互にすることにより、ボールコントロールを改善するためにアッパー102の部分域内で最適なグリップを与えることができる。様々な態様において、第1の領域108及び第2の領域106各々のサイズ及び寸法は、所望されるグリップ及び/又はボールコントロールの量に応じて変化し得る。例えば、第1の領域108の大きさ及び寸法は、第2の領域106の大きさ及び寸法と同様であっても又は異なっていてもよいが、第2の領域106に対する第1の領域108の総表面積の比率は、所望されるグリップ及び/又はボールコントロールの量に依存する。例えば、第2の領域106に対する第1の領域108の総表面積の比率は、より多くのグリップ及び/又はボールコントロールが望まれる場合に大きくなり、一方、第2の領域106に対する第1の領域108の総表面積の比率は、より少ないグリップが望まれる場合に小さくなり得る。いくつかの態様において、第1の領域108は、約40%~約80%の範囲内、約50%~約70%の範囲内、及び/又は約55%~約65%の範囲内である、ニット構成要素103の第1の表面105の部分域内の総表面積の割合を構成する。本明細書で提供される範囲は、範囲の両端の値を含む。例えば、40%~80%の範囲は、40%及び80%を含む。このように、第2の領域106は、約20%~約60%の範囲内、約30%~約50%の範囲内及び/又は約55%~約65%の範囲内である、ニット構成要素103の第1の表面105の総表面積の割合を形成することができる。
【0042】
図1Aに描かれたアッパー102の外側の側面は、アッパー102がソール構造104を接地面に接触させた着用時の構成にあるとき、概ね垂直に延びる交互のストライプパターンに配置された第1の領域108及び第2の領域106を含む。このように、第1の領域108及び第2の領域106は、概して、ニット構成要素130の底縁150からスロート領域126に向かって延び得る。ニット構成要素130の底端縁150の少なくとも一部は、アッパー102がソール構造104と接合するバイトライン152と整列することがある。外側の側面で第1の領域108及び第2の領域106を交互に配置することで形成されるストライプは、足前部領域116だけでなく、外側の足中間部領域114aにも延びていてもよい。さらに、ニット構成要素130が踵部領域118まで延びている態様では、ストライプは踵部領域118にも延びていてもよい。ストライプは、第1の領域108と第2の領域106との間の直線状の境界を含む交互のパターンの一例である。
【0043】
ストライプの少なくとも一部は、ジグザグ構成、波線構成、平行線構成及び/又はニット構成要素130の曲率に沿うストライプなどの他の任意のストライプ構成を有することができる。付加的、又は代替的に、ストライプの少なくとも一部は、その長さに沿って変化する幅を有し得る。例えば、幅の変化は、3ミリメートルの狭い幅から1センチメートルの広い幅までの範囲であり得る。第1の領域108及び第2の領域106の交互に配置して形成される任意の数のストライプが、ニット構成要素130に含まれてもよい。いくつかの態様では、第1の領域108は、ニット構成要素130の第1の表面105上に10~40個の間におけるストライプを形成し、他の態様では、第1の領域108は、ニット構成要素130の第1の表面105に25~35個の間におけるストライプを形成する。しかしながら、ストライプの個数及び構成は、所望されるグリップ及び/又はボールコントロールの量、次に、上述したように、第2の領域106に対する第1の領域108の総表面積の比率に依存する。
【0044】
図1Bに描かれたアッパー102の内側の側面では、第1の領域108及び第2の領域106が交互に、形状の同心状のパターン又は言い換えれば「渦(swirl)」又は「渦巻き(whirl)」パターンを形成する。この例では、第1の領域108及び第2の領域106の同心状のパターンは、不規則な形状の円を含む。渦又は渦巻きパターンは、第1の領域108と第2の領域106との間に曲線状の境界を有する交互に配置するパターンの例である。付加的に又は代替的に、同心状の形状は、三角形、円形、卵形、平行四辺形、五角形、六角形、星形、ハート形、それらの組み合わせ、又は本明細書に記載の技術の範囲から逸脱することのない同心状の任意の組み合わせであってもよい。パターンは、同心状のパターンの一部である少なくとも第1の領域108及び第2の領域108が同軸及び共通の中心を共有するという点で同心状である。
図1Bの同心状のパターンの中心は、内側の足中間部領域114b内に位置し、且つ蹴ったときにサッカーボールなどのボールにスピンを与えるのに役立つ。内側の足中間部領域114bの中心に近い同心状のパターンの部分域内では、第2の領域106は、アッパーのこの部分域において第1の領域108によって覆われているよりも、第1の表面105の多くを覆い得る。
【0045】
いくつかの態様では、内側の足中間部領域114b内の同心状のパターンは、追加の第1領域108と追加の第2の領域106とを交互に配置することによって形成された一連のストライプの間に挟まれていてもよい。1つ又は複数の同心状のパターンに隣接するこれらのストライプは、
図1Bに示すように、同心状のパターンを形成する形状の曲率又は角度に対応する曲率又は角度を有していてもよい。
【0046】
図1Cは、アッパー102の内側面における第1の領域108及び第2の領域106の交互に配置するパターンの別の態様を描いている。この構成では、第1の領域108及び第2の領域106は、依然として一般的に同心状の形状パターンを形成することができるが、形状は同心状のパターン内の形状を強調して形成する様々な長さ及び曲率の破線で形成されてもよい。
【0047】
アッパー102の外側及び内側における第1の領域108及び第2の領域106の交互のパターンの異なるタイプの使用は、特定の活動で実行され得る異なるタイプの動きを反映している。例えば、サッカーでは、足の内側はボールをパス、レシーブ及び/又はキックするために使用されることが多く、一方、足の外側はボールをドラッグ又はナッジングのような他のボール操作に使用される。そのため、第1の領域108及び第2の領域106の比率又はパターンを変えることで、特定の行為に適した異なるグリップパターンを提供することができる。例えば、内側の足中間部領域114bの同心状のパターンは、第1の領域108と第2の領域106との間の摩擦係数のより全方位的な分散を提供し、これは、レシーブ、パス及び/又はキックの動作のためのより良いボールコントロールを可能にし得る。上述したように、同心状のパターンはまた、着用者がボールを蹴るときにボールに多かれ少なかれスピンを付与することを可能にし得る。対照的に、外側の側面のストライプパターンは、より長手方向(すなわち、足前部領域116から踵部領域118に延びる方向)における第1領域108及び第2領域107の摩擦係数の分散を提供し、ドラッグ又はナッジング中のボールのより良好なコントロールを可能にし得る。
【0048】
本明細書に記載の態様は、履物のアッパーに配置された同心状のパターン及びストライプパターンを特徴とするが、このようなパターンは、特定の行為で実行され得る異なるタイプの動きを反映するために、付加的又は代替的に履物のソール又は底に配置されてもよいことに留意されたい。具体的には、アウトソール109の前部又はつま先領域では、アウトソール109の後部又は踵部よりも、第1の領域及び第2の領域の摩擦係数の異なる分散を含むようにパターンをカスタマイズしてもよい。
【0049】
上述のように、ニット構成要素130のいくつかの態様は、二つのニッティングベッド上に形成された二重ニット構造である。第1のヤーン及び第2のヤーンは、第1のヤーン及び第2のヤーンが交互にニット構成要素105の第1の表面105を形成し得るように、コース内及び/又はうねに沿って、フロントベッド上のニットループ及びバックベッド上のループを形成するために共に使用され得る。例えば、第1のヤーンはフロントベッドのニードル上でループを形成して第1の領域108を形成し得るとともに、第2のヤーンはバックベッドのニードル上で浮き上がり又はループを形成する。一方、第2の領域106は、第1のヤーンがバックベッドのニードル上で浮いている又はループを形成している間に、第2のヤーンはフロントベッドのニードル上でループを形成するときに、形成され得る。
【0050】
いくつかの態様において、ニット構成要素130は、エラスタン又は弾性ポリウレタン材料からなる第3のヤーンを含む。例示的な態様において、第3のヤーンは、第1の表面105とは反対側のニット構成要素130の第2の表面上に編まれる。具体的には、第3のヤーンは、第1の表面105上の第1の領域108及び第2の領域106の反対側の領域において第2の表面上に編まれてもよい。いくつかの態様において、第3のヤーンは、第3のヤーンが第2の表面上にのみ存在し、かつ第1の表面105には存在しないように、バックニードルベッドなどの1つのニードルベッド上でのみ編まれる。第3のヤーンをニット構成要素130の第2の表面(例えば、内向き表面)上のエラスタン又は弾性ポリウレタン材料と一緒に含むことは、ニット構成要素130にある程度の弾性を提供し、これは、アッパー102上のニット構成要素130がボールなどの物体と接触しているとき、着用者に対する固有受容フィードバックを強化する。
【0051】
上述したように、第1のヤーンは、熱成形によって、溶融又は変形、及びその後固化して、第1のヤーンにおけるコアヤーン及び一つ又は複数の他のヤーン、例えば第2のヤーン及びいくつかの態様では第3のヤーンの一部と熱成形ネットワークを形成し得るコーティングを有する。このようにして、熱成形プロセスは、ニット構成要素130のニット構造の少なくとも一部を変形させ得る。例えば、ニッティング後、ニット構成要素130は、第1のヤーン及び第2のヤーンのループの相互連結されたコースを含んでいてもよく、且つ熱成形後、ニット構成要素130は、第1のヤーンのコーティングの変形又は溶融に少なくとも部分的に起因して、熱成形部分において第1のヤーン及び第2のヤーンのループの相互連結されたコースを含んでいなくてもよい。同時に、第1のヤーンにおけるコアヤーンは依然として第2のヤーンとの相互連結されたループを形成し、かつ残りのループは依然として溶融及び再固化した被服材料を介して連結され得る。
【0052】
図2Aは、熱成形工程前の、
図1A~Cのニット構成要素130であり得る例示的なニット構成要素の部分200を概略的に示す。部分200は、本明細書で説明される第1のコーティングされたヤーンである第1のヤーン210及び
図1A~Cにつき記載された第2のヤーンである第2のヤーン208の相互に連結されたコースを含む。部分200は、第2のヤーン208を有する第1のコース202及び第2のコース204、及び第1のヤーン210の第3のコース206を含む。そのような態様において、第1のヤーン210のループの第3のコース206は、第2のヤーン208を有する第1のコース202及び第2のコース204に相互に連結(例えば、干渉)されてもよい。
【0053】
図2Bは、熱成形プロセスにさらされた後の部分200を描いている。
図2A及び
図2Bを比較することによって分かるように、本明細書に記載されるような熱可塑性高分子組成物からなる第1のヤーン210は、固形ヤーン構造から溶融ヤーン構成要素212に熱成形され、第1のヤーン210のコアヤーン214は、そのインターループされた形態で依然として残っている。ある態様において、熱成形プロセスの加熱ステップは、少なくとも部分的に、第1のヤーン210中のコーティングを溶融及びフローさせ、そしてその後、熱成形プロセスの完了によって固化させて溶融ヤーン構成要素212にする。この溶融ヤーン構成要素212は、第1のヤーン210のコアヤーン214を取り囲むコーティングであり、そのコーティングが溶融し、フローし、再固化した後のものである。
図2Bの溶融ヤーン構成要素212は、第1のヤーン210のコアヤーン214に接触し、少なくとも部分的に取り囲み、ネットワークを形成する第3のコース206とインターループする、或いは近接する第1のコース202及び第2のコース204の少なくとも一部分で、第2のヤーン208の一部と接触し、少なくとも部分的に取り囲むように描かれている。しかしながら、溶融ヤーン構成要素212は、本明細書に記載される技術から逸脱することなく、
図2Bに描写されるよりも生地の外向き表面上でより大きな範囲又はより小さな範囲に広がるように熱成形され得る。
【0054】
熱成形から作成された溶融ヤーン構成要素212を有する部分は、熱成形された溶融ヤーン構成要素212を有しない領域と比較して、増加した耐摩耗性及び増加した耐水性特性を有し得る。さらに、これらの特性は、追加の層又はフィルムとして適用されるのではなく、ニット構造を通して提供されるため、ニット構成要素の部分200は、比較的薄く及び柔軟なままであり得る。そのため、溶融ヤーン構成要素212は、早期摩耗又は破損することなく、スロートと足前部分域との間の領域など、アッパーの屈曲性の高い領域で利用することができる。
【0055】
図2A及び
図2Bは、本明細書に記載されるようなニット及び熱成形の単なる例であることに留意されたい。第1のヤーン210を主体とする、或いは第2のヤーン208を主体とする任意な複数の隣接する列、及び/又は任意な複数の隣接するループを有する他のニットパターンは、本明細書に記載の技術の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載のニット構成要素の表面上の第1の領域(
図1A~1Cの第1の領域108など)又は第2の領域(
図1A~1Cの第2の領域106など)のうちの一方を形成するために使用され得る。例えば、図示を簡単にするために、部分200は単一のニット層のみで示されている。しかしながら、本開示のいくつかの態様は、2つのニードルベッド上のニードルを使用して形成された二重ニット構造を有するニット構成要素を含み得ることを想定している。例えば、第1のヤーン210は、ニット構成要素の第1の表面を形成し得る
図2Aの第3のコース206のループを形成するためにフロントニードルベッドで編まれてもよく、また第1のコース202と同時に編まれるコースなどの別のコースにおいて、第1のヤーン210は、ニット構成要素の第2の表面の少なくとも一部を形成するためにバックニードルベッドで編まれてもよい。同様に、第2のヤーン208は、
図2Aの第1のコース202及び第2のコース204のループを形成するためにフロントベッドニードルで編まれてもよく、これはニット構成要素の第1の表面を形成してもよく、また別のコース、例えば第3のコース206と同時に編まれるコースでは、第2のヤーン208は、ニット構成要素の第2の表面の少なくとも一部を形成するためにバックニードルベッドで編まれてもよい。いくつかの態様では、第1のヤーン210及び/又は第2のヤーン208は、1つのコース内でフロント及びバックニードルベッドの間を往復し得る。さらに、部分200が2重ニット構造の一部であるいくつかの態様において、第2の表面のためのコースを形成するループは、エラスタン又は弾性ポリウレタン材料を有する第3のヤーンから形成され得る。さらに、2重ニット構造を有するいくつかの態様において、溶融ヤーン構成要素212は、ニット層間に延び得るが、第2の表面を形成するためにバック層を通って完全には延びないようにする場合があり得る。代替的な構成では、溶融ヤーン構成要素212は、依然として、2重ニット構造の両方のニット層を通って完全に延びる場合があり得る。
【0056】
図3Aから3Cはそれぞれ、様々なテクスチャ又はパターンで熱成形されたニット構成要素の例示的な外向き表面を示す。このニット構成要素は、例えば、交互に配置された第1の領域108及び第2の領域106を有する本明細書に記載のニット構成要素130であってよく、第1の領域108は第1のヤーンからなり、且つ第2の領域106は第2のヤーンからなる。このようなニット構成要素の熱成形は、本明細書で説明されるように、第1のヤーンのコーティングをリフロー及び再固化させるために使用することができ、被覆材料が熱成形されたヤーンのネットワークのヤーン相互間の空間の少なくとも一部を占めるようにする。以下にさらに説明するように、熱成形中、ニット構成要素130が平板又は従来のツーピースの金型などの成形面に接触しているときに圧力が加えられることがある。いくつかの態様において、成形面は、ニット構成要素130の第1の表面105に隆起した要素を有するテクスチャを形成するための凹部及び/又は隆起した要素を含み得る。ニット構成要素130のニット構造に成形された隆起した要素は、有利には、ニット構成要素130の第1の表面(アッパーの外面であってもよい)とフットボールとの間のグリップ量など、ニット構成要素のグリップ効果を調整するために使用され得る。具体的には、隆起した要素は、第1のヤーンによる第1の領域108のより高い摩擦係数(すなわち、より大きなグリップ)を緩和する。このように、隆起した要素は、第1の領域108が表面積のより大きな部分を形成するニット構成要素130の部分に配置されてもよい。さらに、いくつかの態様では、隆起した要素はアッパーの外側側面に配置され、内側側面には配置されない、又はアッパーの内側側面には外側側面ほど隆起した要素がない場合があり得る。
【0057】
隆起した要素160は、ニット構成要素130内で様々な形状、サイズ及び配置をとることができる。
図3Aでは、隆起した要素160は、互いに間隔が狭く、かつ平行に延びる細長い隆起又は溝を形成している。この例示的なパターン内では、隆起は異なる長さを有し得る。さらに、
図3Aの隆起は、第1の領域108と第2の領域106の両方にまたがって延びている。さらに、隆起は、第1の領域108と第2の領域106の長手方向に対してほぼ直交して延び得る。隆起は隆起の間に溝と同様の凹部を形成することがあるので、隆起はニット構成要素130の第1の表面105から水分及び他の小さな破片を逃がすように動作することもでき、これにより、ボールとの接触面がより良好になり、同様に、濡れた及び/又は汚れた状態でのグリップ及び/又はボールコントロールがより良好になる。さらに、アッパーの外側側面の細長い平行な溝は、ドラッグ、ナッジング及び他のそのような技術に特に有利であり得る。いくつかの態様では、隆起の間の溝又は凹部は、幅及び/又は間隔が、互いに1ミリメートル~1センチメートルの間又はほぼその間にある。しかしながら、上述したように、隆起のパターン、幅及び/又は間隔は、所望に応じてグリップ及び/又はボールコントロールを調整するために微調整し得る。
【0058】
図3Bにおいて、隆起した要素160は、ニット構成要素130の第1の表面105から突出する四面体又はピラミッド状の突起の形態である。
図3Bの突起は、第1の領域108及び第2の領域106の両方に配置され得る。他の態様では、突起は第1の領域108のみに配置される。さらに、突起は、
図3Bに示されるように、概ね直線状に配置されてもよく、或いはより密集又はランダムなパターンで配置され得る。
【0059】
図3Cにおいて、隆起した要素160は、互いに間隔が狭く細長い隆起を形成する。これらの隆起は、互いからほぼ等距離に間隔を置いてもよい。さらに、溝はそれぞれ湾曲又はアーチ型であってもよい。この例示的なパターン内では、隆起は異なる長さを有してもよく、細長い隆起又は溝の複数の行及び/又は複数の列のわずかに湾曲した又は曲線状のトラックを協働的に形成してもよい。
図3Aの隆起した要素160と同様に、
図3Cの隆起は、第1の領域108と第2の領域106の両方に渡って延びている。さらに、隆起は、第1の領域108及び第2の領域106の長手方向に対してほぼ直交して延び得る。隆起は、隆起の間に溝と同様の凹部を形成することがあるので、隆起はまた、ニット構成要素130の第1の表面105に対して水分及び他の小さな破片を逃がすように動作し、これにより、ボールとのより良好な接触面を得ることができる。いくつかの態様において、隆起の間の溝又は凹部は、幅及び/又は互いの間隔が1ミリメートル~1センチメートルの間又はほぼ間にある。
図3A~3Cに描写された隆起した要素160は、単に例示的なパターンであり、ニット構成要素130の第1の表面105は、本明細書に記載された技術の範囲から逸脱することなく、平坦、光沢、凹凸、又はマットなテクスチャ又はパターンを有するように熱成形され得ることに留意されたい。
【0060】
図4及び
図5A~5Bは、
図1A~1Cに示されているものとは異なる第1及び第2の領域の交互のパターンを有する履物用ニット構成要素の態様を描いている。
図4は、ソール構造404及びアッパー402を有する履物400を描いている。ソール構造404の態様は、
図1A~1Bのソール構造104に関して説明したのと概ね同じ構成を有する。さらに、アッパー402の態様は、
図1A~1Bのアッパー102に関して説明したのと概ね同じ構成を有する。このように、アッパーは少なくとも部分的にニット構成要素430から形成されてもよく、またニット構成要素430の態様は、以下の例外を除き、
図1A~1Bのニット構成要素130に関して説明したのと概ね同じ構成を有し得る。
【0061】
ニット構成要素430は、異なる材料組成及び異なる特性を有する少なくとも第1のヤーン及び第2のヤーンから形成される。ニット構成要素430は、
図1A~1Bの構成要素130に関連して上述した材料及び技術を用いて形成されてもよい。ニット構成要素430の第1の表面405は、アッパーの外向き表面を形成し、また第1のヤーンで形成された第1の複数の領域(第1の領域408)及び第2のヤーンで形成された第2の複数の領域(第2の領域406)を有することができる。
【0062】
図1A~1Bの第1の領域108及び第2の領域106と同様に、第1の領域408及び第2の領域406は、異なる摩擦係数を有してもよい。例えば、第1の領域408の湿潤及び乾燥の摩擦係数は、第2の領域406のそれらよりも大きくてもよい。さらに、第1の領域408及び第2の領域406は、少なくともアッパー402の内側の側面において交互に配置されてもよい。具体的には、第1の領域408及び第2の領域406は、不規則な形状の円及び/又は楕円などの同心状のパターンを形成するように交互に配置されてもよい。同心状のパターンの中央部分域は、内側の足中間部領域414内に配置されてもよい。
図1A及び
図1Bのニット構成要素130とは異なり、第2の領域406は、中央部分域に近接する同心状の第1の領域408よりも実質的に大きな幅を有しなくてもよい。むしろ、中央部分域において第1の領域408を形成する同心円又は楕円は、中央部分域において第2の領域406を形成する同心円又は楕円の表面積と同様の表面積を有してもよい。その結果、内側の足中間部領域414の同心状のパターンの中央部分域は、
図1Bの内側の足中間部領域114aの同心状のパターンの中央部分域よりも大きなグリップを提供し得る。
【0063】
第1の領域408及び第2の領域406はまた、
図1Aに関して説明したパターンと同様に、アッパーの外側の側面に交互のパターンを形成してもよいことを理解すべきである。さらに、ニット構成要素430の第1の表面405上の第1の領域408の少なくとも一部は、
図2A及び
図2Bのニットの部分200に関して説明したものと同様の熱成形ネットワークを形成するために熱成形を受け得ることを理解すべきである。さらに、いくつかの態様において、熱成形された第1の表面405は、第1の領域408及び/又は第2の領域406内に隆起した構造を含むように成形されてもよい。これらの隆起した構造は、
図3A~3Cに関して説明した任意のパターンを含み得る。
【0064】
図5A及び
図5Bは、本明細書のいくつかの態様に従った交互のパターンの別の構成を示す。
図5A及び
図5Bは、ソール構造504及びアッパー502を有する履物500を描いている。ソール構造504の側面は、
図1A~1Bのソール構造104に関して説明した構成と概ね同じ構成を有し得る。さらに、アッパー502の側面は、
図1A~1Bのアッパー102に関して説明したのと概ね同じ構成を有し得る。そのため、アッパーは少なくとも部分的にニット構成要素530から形成され、またニット構成要素530の側面は、以下に述べる例外を除き、
図1A~1Bのニット構成要素130に関して説明されたのと概ね同じ構成、材料及び/又は特性を有し得る。
【0065】
ニット構成要素530の第1の表面505は、アッパーの外向き表面を形成してもよく(
図1A~1Bの第1の表面105と同様に)、また第1のヤーンで形成された第1の複数の領域(第1の領域508)及び第2のヤーンで形成された第2の複数の領域(第2の領域506)を有する。
図1A~1Bの第1の領域108及び第2の領域106と同様に、第1の領域508及び第2の領域506は、異なる摩擦係数を有し得る。例えば、第1の領域508の湿潤及び乾燥摩擦係数は、第2の領域506のそれらよりも大きくてもよい。
【0066】
さらに、第1の領域508及び第2の領域506は、アッパー502の内側側面で同心状に形成された交互のパターンで配置されてもよい。具体的には、第1の領域508と第2の領域506は、
図5Bに示されるように、少なくとも内側の足中間部514において同心状の三角形の形状のパターンを形成するように交互になり得る。いくつかの態様において、同心状の三角形は丸みを帯びた角又は尖った角を有し得る。いくつかの態様において、内側の足中間部514内の同心状のパターンは、足前部領域516、踵部領域518及び外側の足中間部領域512(
図5Aに示される)など、ニット構成要素530の残りの部分に形成されたジグザグパターン内に入れ子にし得る。
【0067】
第1の領域508及び第2の領域506のジグザグパターンは、アッパー502の外側の側面に位置し得る。このパターン内では、第1の領域506及び第2の領域508は、一般に、ニット構成要素530の底端縁550からアッパー502のスロート領域526に向かって延びている。ニット構成要素530の底端縁550の少なくとも一部は、アッパー502がソール構造454と接合するバイトライン552と整列し得る。第1の領域508及び第2の領域506を外側の側面に交互に配置することで形成されるジグザグのストライプは、足前部領域516だけでなく、外側の足中間部領域512にも延在し得る。さらに、ニット構成要素530が踵部領域518まで延びる態様では、ストライプは踵部領域518にも延在し得る。
【0068】
ジグザグパターンは様々な大きさを有してよい。ジグザグパターン内のストライプは、いくつかの態様において互いに概ね平行であってもよい。さらに、いくつかの態様において、内側の側面のジグザグパターンを有する少なくともいくつかのストライプの少なくともいくつかの点又は角度は、内側の足中間部514内の同心状の三角形の最も外側の少なくとも1つの点又は角度と整列してよく、そのような最も外側の三角形はジグザグのストライプの一つの角度に入れ子になっている。
【0069】
さらに、
図5A及び
図5Bに描かれている態様では、アッパー502は、スロート領域526の外側を形成する生地構成要素556を含む。この生地構成要素556は、ひも通し及び小穴を覆う外側の覆いとして機能し得る(
図1A及び
図1Bに示されているものと同様)。生地構成要素556は、一体的に編まれていてもよく、また第1の領域508及び第2の領域506を有するニット構成要素530と一体的なニット構造を有していてもよい。あるいは、生地構成要素は、ニット構成要素503とは別個に形成され、かつステッチ、接合などを介して1つ又は複数の位置でニット構成要素530に固定されてもよい。
【0070】
図6は、上述のニット構成要素130、430及び/又は530などのニット構成要素を製造する例示的な方法600を示すフロー図を含む。方法600で提供されるステップは単なる例示であり、方法600は、図示されていない追加のステップを含み得る。方法600のステップの少なくともいくつかは、自動編み機であってもよい編み機上で実行されるものとして示されている。このように、これらのステップの1つ又は複数は、編み機と通信可能に結合された、又は統合されたプロセッサ又はコンピュータを有する制御ユニットを用いて実行及び/又は制御され得る。例示的な態様では、方法600のステップを実施するために使用される編み機は、Vベッドを形成するように互いに相対的に角度が付けられている二つのニードルベッド-フロントニードルベッド及びバックニードルベッド-を有するVベッド平編み機である。しかしながら、これは一例であり、ニット構成要素又はその一部を形成するために他の編み機を使用され得ることを理解されたい。同様に、例示的な態様では、方法600内のニッティングステップは横編み工程であってもよいが、代替的な態様では、縦編み工程が使用されてもよい。
【0071】
ブロック602において、方法600は、第2のヤーンと一体的に編まれた第1のヤーンを有するニット構成要素をニッティングするステップを含む。上述したように、第1のヤーンは、第1のコアヤーン及び第1のコアヤーンを少なくとも部分的に取り囲む一つ又は複数の熱可塑性エラストマーを含む高分子組成物からなる第1のコーティングを含み得る。ブロック602においてニット構成要素を編むニッティングステップは、第1のヤーンがニット構成要素の第1の表面上に第1の領域を形成するように第1のヤーンを編むステップと、及び第2のヤーンがニット構成要素の第1の表面上に第2の領域を形成するように第2のヤーンを編むステップとを含み得る。第1の領域を形成するために、第1のヤーンは第1の(すなわち、フロント)ニードルベッド上のニードルの周りにループを形成し得る、一方、第2のヤーンは第1のヤーンのループの後ろに浮かべられ、及び/又は第2の(例えば、バック)ニードルベッド上のニードルの周りにループを形成する。第2の領域を形成するために、第2のヤーンは、第1のヤーンが第2のヤーンのループの後ろに浮かべられている間、及び/又は第2のニードルベッド上のニードルの周りにループを形成している間に、第1のニードルベッド上のニードルの周りにループを形成し得る。ブロック602で形成される第1の領域及び第2の領域の例示的な態様は、
図1A~5Bに関して説明した任意の第1の領域及び第2の領域であってよい。さらに、方法600はまた、第3のヤーンがニット構成要素の第2の(すなわち、裏面又は内向きの)表面を形成するように、エラスタン又は弾性ポリウレタン材料を有する第3のヤーンを第2のニードルベッド上に編みことを含み得る。
【0072】
ブロック604において、方法600は、第1のヤーンの第1のコーティングが流れ、第1のヤーンのコース間又は第1のコアヤーンのコース間のスペースの少なくとも一部を占めるように、ニット構成要素の少なくとも第1の領域を熱成形するステップを含む。付加的に又は代替的に、熱成形は、第1のコーティングが流れ、かつ第1のコアヤーンと第2のヤーンのコースとの間のスペースの少なくとも一部分を占めるようにすることができる。熱成形は、コーティングの高分子組成物に、第1のコアヤーンと、第1のコアヤーンの少なくとも一部を取り囲み、熱成形されたネットワーク内のヤーンの少なくとも一部の間の空間を占める第1の高分子組成物とからなるインターループした糸の熱成形ネットワークを形成させることができる。熱成形ネットワークは、主としてニット構成要素の第1の表面上の第1の領域を貫通し得るが、ニット構成要素の第2の領域を形成する第2のヤーンの少なくとも一部は、熱成形ネットワークを形成する溶融及び再固化した熱可塑性高分子組成物に接触し、かつ少なくとも部分的に取り囲み得ることを理解すべきである。
【0073】
さらに、ブロック604における熱成形ステップは、熱可塑性高分子組成物(すなわち、第1のヤーンのコーティング)の温度を、本明細書に記載の熱可塑性高分子組成物の少なくとも一部を溶融及びフローさせる、或いは変形させる温度まで上昇させることを含む。さらに、熱成形工程は、本明細書に記載のリフローされた熱可塑性高分子組成物を固化して、履物の物品のような所望の構造及び/又は形状にするために、続いて熱可塑性高分子組成物の温度を低下させるステップを含む。
【0074】
ニット構成要素は、プレート又はツーピースの金型などの成形面を用いて熱成形し得る。ニット構成要素は成形面に接触させる前に加熱してもよいし、或いは成形面に接触させながら加熱してもよい。ある態様では、熱可塑性高分子組成物の温度を約10秒~約5分間上昇させてもよい。ある態様において、熱可塑性高分子組成物の温度は、約30秒~約5分間上昇させてもよい。ある態様において、熱可塑性高分子組成物の温度は、約30秒~約3分間上昇させてもよい。さらに、いくつかの態様において、熱可塑性高分子組成物は、冷却を受ける前に加熱温度に複数回さらされるようにしてもよい。
【0075】
冷却のために、ニット構成要素は、温度を低下させた冷却ゾーンに移動し得る。冷却により、熱可塑性高分子組成物は、第1のヤーンのコース及び/又は第1のコアヤーンのコース間のスペースの少なくとも一部を占めるリフローされた場所で再固化することができる。さらに、第1の高分子組成物(例えば、熱可塑性エラストマーからなる熱可塑性組成物からなる高分子組成物)は、第1のコアヤーンのコースと第2のヤーンとの間のスペースの少なくとも一部を占めるそのリフローされた位置で再固化するように冷却されてもよい。
【0076】
さらに、いくつかの態様では、熱の適用中又は後に圧力を加え得る。ある態様において、熱成形は、金型表面上の材料を約50kPa~約300kPaの圧力にさらす。ある態様では、熱成形は、金型表面上の材料を約50kPa~約250kPaの圧力にさらす。ある態様では、熱成形は、金型表面の材料を約100kPa~約300kPaの圧力にさらす。
【0077】
方法600のいくつかの態様では、テクスチャ成形の表面を使用して、ニット構成要素の第1の表面に三次元テクスチャを付与し得る。例えば、熱及び必要に応じて圧力を加えることにより、テクスチャ成形の表面は、溶融した熱可塑性高分子組成物に第1の表面に隆起した要素を形成させることができる。隆起した要素は、
図3A~3Cに関して説明した任意の形態又はパターンであってもよい。テクスチャ成形の表面は、熱成形中の最初の熱印加又はその後の熱印加に使用され得る。
【0078】
熱成形の前に、第1のヤーン(熱可塑性高分子からなるコーティングを有する)をニット構成要素にニッティングを介して第1の領域に選択的に組み込むことにより、製造工程を簡素化し得る。具体的には、熱成形ネットワークの選択的な配置を維持しながら、特定の領域(すなわち、第2の領域)をマスク又は保護する必要なく、ニット構成要素全体を熱成形中に露出させることが可能になり、それによって、より時間及びエネルギー効率の高い製造工程が得られる。
【0079】
いくつかの態様において、方法600は、ブロック606において、ニット構成要素をアッパーに形成するステップを含む。ニット構成要素はすでにアッパーの形状に編まれていてもよく、1つ又は複数の部分を折り畳むこと、及び/又は1つ又は複数の端縁を接合して足受け入れ空間を形成することによってアッパーに形成されてもよい。いくつかの態様では、ニット構成要素はより大きな生地片であってよく、アッパーの形状に又はアウターシースのようなアッパーの構成要素の形状に裁断される。いくつかの態様において、ブロック606は、ステッチ、接着などにより、熱成形されたニット構成要素を1つ又は複数の生地構成要素に固定するステップを含む。
【0080】
いくつかの態様では、方法600は、ブロック608に示すように、アッパー又は別のそのような熱成形ニット構成要素をソール構造に取り付けるステップを含み得る。この取り付けは、アッパー又はニット構成要素及びソール構造を一緒に熱成形することによって、及び/又は機械的技術又は当該技術分野で公知の技術によって達成し得る。
【0081】
(第1のヤーンの特性の例)
上述したように、生地及び成形構成要素は、単独で又は他の材料(例えば、本明細書に記載される繊維、フィラメント及びヤーンに該当しない第2のヤーン)と組み合わせて記載されるようなヤーン(上述では第1のヤーンと称ばれる)の選択的組み込みを含み得る。ある態様において、本明細書に記載されるヤーン及び/又は繊維は、特定の機能性を提供するために使用され得る。例えば、ある態様において、本明細書に記載のヤーンは、防水性又は耐水性を有するフィルムを形成するために熱成形され得る。
【0082】
ある態様では、本明細書に記載の第1のヤーンなどのコーティングされたヤーンは、約0.6~約0.9キログラムの印加力、又は約0.7~約0.9キログラムの印加力、又は約0.8~約0.9キログラムの印加力、又は0.9キログラムを超える印加力の破断強度を有する。
【0083】
ある態様では、本明細書に記載のヤーンは、単一の熱可塑性エラストマーのみからなる繊維又はフィラメントから製造される。他の態様では、繊維は二つ又はそれ以上の異なる熱可塑性エラストマーのブレンドから構成される。
【0084】
ある態様において、ヤーンはコーティングされたヤーンであり、コアヤーンは第2の高分子組成物及びコアヤーン上に配置されたコーティング層を含み、コーティング層は第1の高分子組成物を含み、第1の高分子組成物は第1の溶融温度を有する。ある態様において、第2の高分子組成物は、第2の変形温度を有する第2の熱可塑性組成物であり、また第2の変形温度は、第1の高分子組成物の第1の融解温度よりも少なくとも約20℃大きい、少なくとも約50℃大きい、少なくとも約75℃大きい又は少なくとも約100℃大きい。別の態様において、第2の高分子組成物は、第2の溶融温度又は変形温度を有する第2の熱可塑性組成物であり、また第2の変形温度は、第1の高分子組成物の第1の溶融温度よりも約20℃大きい、約50℃大きい、約75℃大きい又は約100℃大きい温度である。
【0085】
ある態様において、第1の高分子組成物は高分子成分を含む。ある態様において、第1の高分子組成物は、単一の高分子成分(例えば、単一の熱可塑性エラストマー)を含み得る。他の態様において、第1の高分子組成物は、2つ又は高分子成分(例えば、2又は複数の異なる熱可塑性エラストマー)を含み得る。
【0086】
ある態様において、第2の高分子組成物は第1の熱硬化性組成物である。ある態様において、第2の高分子組成物は第2の熱硬化性組成物からなる。コアヤーンは、コーティングプロセス中に第1の高分子材料が押し出される温度でその強度を保持する任意の材料であってよい。コアヤーンは、天然繊維若しくは再生繊維若しくはフィラメント、又は合成の繊維若しくはフィラメントであってよい。ある態様において、コアヤーンは、綿、絹、ウール、レーヨン、ナイロン、エラスタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、又はポリオレフィンから構成されてもよい。ある態様において、コアヤーンはポリエチレンテレフタレート(PET)で構成される。ある態様において、第2の高分子組成物は、200℃より大きい、220℃より大きい、240℃より大きい、又は約200℃~約300℃の間における変形温度を有する。
【0087】
ある態様では、コアヤーンはステープルヤーン、マルチフィラメント糸又はモノフィラメント糸である。ある態様では、コアヤーンはポリツイストである。ある態様では、コアヤーンは、約100デニール~約300デニール、又は約100~約250デニール、又は約100~約200デニール、又は約100~約150デニール、又は約150~約300デニール、又は約200~約300デニール、又は約250~約300デニールの線密度を有する。ある態様では、コアヤーンは、約60ミクロン~200ミクロン、約60~160ミクロン、約60~120ミクロン、約60~100ミクロン、約100~200ミクロン、又は約140~200ミクロンの厚さを有する。
【0088】
ある態様では、コアヤーンは、約100デニール~約200デニール、約125デニール~約175デニール、又は約150デニール~160デニールの厚さを有するポリエチレンテレフタレートである。ある態様では、コアヤーンは、約20パーセント~約30パーセント、約22パーセント~約30パーセント、約24パーセント~約30パーセント、約20パーセント~約28パーセント、又は約20パーセント~約26パーセントの伸び率を有するポリエチレンテレフタレートである。ある態様において、コアヤーンは、約1グラム/デニール~約10グラム/デニール、約3グラム/デニール~約10グラム/デニール、約5グラム~約10グラム/デニール、約1グラム~約7グラム/デニール、又は約1グラム~約5グラム/デニールの粘着性を有するポリエチレンテレフタレートである。
【0089】
ある態様において、コーティングされたヤーンは、コーティング層がコアヤーンを囲む軸方向の中心にあるように、環状ダイ又はオリフィスを通してコアヤーンにコーティング(すなわち、第1の高分子組成物)を押し出すことによって製造され得る。コアヤーンに塗布されるコーティングの厚さは、ヤーンの用途に応じて変化し得る。ある態様では、コーティングヤーンはニット生地を製造するために使用される。ある態様では、コーティングされたヤーンは、1.00ミリメートルまで、又は約0.75ミリメートルまで、又は約0.5ミリメートルまで、又は約0.25ミリメートルまで、又は約0.2ミリメートルまで、又は約0.1ミリメートルまでの公称平均外径を有する。別の態様では、コーティングは、約0.1ミリメートル~約1.00ミリメートル、又は約0.1ミリメートル~約0.80ミリメートル、又は約0.1ミリメートル~約0.60ミリメートルの公称平均外径を有する。別の態様では、ヤーン上のコーティングは、約50マイクロメートル~約200マイクロメートル、又は約50マイクロメートル~約150マイクロメートル、又は約50マイクロメートル~約125マイクロメートルの平均半径方向コーティングの厚さを有する。
【0090】
ある態様では、コアヤーンは、約100デニール~約200デニール、約125デニール~約175デニール、又は約150デニール~約160デニールの厚さを有し、コーティングは、約0.10ミリメートル~約0.50ミリメートル、又は約0.10ミリメートル~約0.25ミリメートル、又は約0.10ミリメートル~約0.20ミリメートルの公称平均外径を有する。ある態様では、コアヤーンは、約100デニール~約200デニール、約125デニール~約175デニール、又は約150デニール~約160デニールの厚さを有するポリエチレンテレフタレートであり、コーティングは、約0.10ミリメートル~約0.50ミリメートル、又は約0.10ミリメートル~約0.25ミリメートル、又は約0.10ミリメートル~約0.20ミリメートルの公称平均外径を有する。
【0091】
さらなる態様では、コーティングされた糸は、約0.2~約0.6ミリメートル、又は約0.3~約0.5ミリメートル、又は約0.4~約0.6ミリメートルの正味の総径を有する。いくつかの態様では、鉱油又はシリコーンオイルを含むがこれらに限定されない潤滑油は、約0.5重量%~約2重量%、又は約0.5重量%~約1.5重量%、又は約0.5重量%~約1重量%で糸上に存在する。いくつかの態様において、潤滑組成物は、生地を形成する工程の前又は工程中に、コーティングされた糸の表面に塗布される。いくつかの態様において、熱可塑性組成物及び潤滑組成物は、熱可塑性組成物が潤滑組成物の存在下でリフロー及び再固化されるときに混和性である。リフロー及び再固化の後、リフロー及び固化した組成物は、潤滑組成物を含み得る。
【0092】
ある態様において、コアヤーンは、約8パーセント~約30パーセント、約10パーセント~約30パーセント、約15パーセント~約30パーセント、約20パーセント~約30パーセント、約10パーセント~約25パーセント、又は約10パーセント~約20パーセントの伸び率を有する。ある態様では、コアヤーンは、約1グラム/デニール~約10グラム/デニール、約2グラム/デニール~約8グラム/デニール、約4グラム/デニール~約8グラム/デニール、又は約2グラム/デニール~約6グラム/デニールの粘着性を有する。
【0093】
ある態様において、熱成形されたとき第1のコーティングの高分子組成物は、約100℃から約210℃、必要に応じて約110℃~約195℃、約120℃~約180℃、又は約120℃~約170℃の融解温度を有する。別の態様において、第1の高分子組成物は、約120℃より大きく約170℃より低く、また必要に応じて約130℃より大きく約160℃より低い融解温度を有する。
【0094】
更なる態様において、融解温度が100°Cより大きい場合、第1の高分子組成物から形成された、或いは組み込んだ成形品は、例えば、出荷又は貯蔵中に、成形品が同様の温度に短期間遭遇しても保持される。別の態様において、融解温度が100℃より大きい、或いは120℃より大きい場合、第1の高分子組成物から形成又は組み込んだ物品は、充填、帯状の表面、又は快適性の特徴及びぴったりとしたフィット性の特徴のために使用されるストレッチ糸などの目的のために物品に組み込まれた任意のポリエステル成分を溶融又は制御不能に融合させることなく、蒸してもよい。
【0095】
ある態様において、融解温度が120℃より高い場合、本明細書に開示される第1又は第2の高分子組成物を組み込んだ材料は、高温の舗装面、コート面、人工又は天然のサッカーピッチ又は同様の競技面、トラック又はフィールド上での使用中に軟化及び/又は粘着性になりにくい。ある態様において、第1又は第2の高分子組成物の溶融温度が高いほど、且つその溶融エンタルピーが大きいほど、第1又は第2の高分子組成物を組み込んだ、又は構成された履物若しくは運動用具の物品が、接触加熱エクスカーション(偏位)、摩擦表面加熱事象、又は環境加熱エクスカーションに耐える能力が高くなる。ある態様において、このような熱エクスカーションは、物品が高温の地面、コート又は芝生の表面に接触するとき、或いは物品が地面、別の靴、ボールなどの別の表面に接触するときの摩擦又は摩耗から生じる摩擦加熱から生じ得る。
【0096】
別の態様において、溶融温度は、約210℃未満、又は約200℃未満、又は約190℃未満、又は約180℃未満、又は約175℃未満であるが、約120℃より大きい、又は約110℃より大きい、又は約103℃より大きい場合、ポリマーコーティングされたヤーンは、短時間で望ましいデザイン及び美的特徴を付与するために、それから編まれた生地の所定の部分域を成形及び/又は熱成形する目的で溶融され得る。
【0097】
ある態様において、140℃より低い溶融温度は、履物又は他の物品に組み込まれたポリエステルヤーンからの染料移行のリスクを防止又は軽減する。さらなる態様では、パッケージ染色されたポリエステルヤーン又はフィラメントからの染料移行は拡散制限プロセスであり、且つ熱成形中等の140℃を超える温度に短時間曝されても、履物又は他の物品の外観が広範囲に損傷したり、変色したり、さもなければ認容できなくなったりすることはない。しかしながら、別の態様では、ポリマーコーティングの溶融温度が約210℃を超えると、熱損傷及び染料移行が起こり得る。
【0098】
ある態様において、高い溶融エンタルピーは、ポリマーが完全に溶融し、且つ良好にフローすることを保証するために、より長い加熱時間が必要であることを示す。別の態様では、低い融解エンタルピーは、完全な融解と良好なフローを確保するために、より短い加熱時間が必要である。
【0099】
さらなる態様では、高い冷却発熱は、溶融から固体への急速な転移を示す。別の側面では、より高い再結晶温度は、ポリマーがより高い温度で固化できることを示している。ある態様では、高温凝固は熱成形に有益である。ある態様では、95℃を超える再結晶化は、熱成形後の迅速な固化を促進し、サイクル時間を短縮し、冷却要求を低減し、且つ組立中及び使用中の靴構成要素の安定性を向上させる。
【0100】
ある態様において、本明細書に開示されるコーティング組成物の粘度は、コーティングの組成物の特性及び加工に影響を及ぼす。さらなる態様において、低いせん断速度(例えば、毎秒1未満)における高い粘度は、フロー、変位及び固体のような挙動に対する抵抗を示す。別の態様では、より高い剪断速度(例えば、毎秒10以上)での低粘度は、高速の押出に適している。ある態様では、粘度が高くなると、コアヤーンをコーティングするために十分なフロー及び変形する能力が困難になる。別の態様では、高い剪断減粘指数(例えば、毎秒10又は100での粘度が毎秒1より低い)を示す材料は押出成形が困難であり、且つ高すぎる速度でコーティング又は押出成形すると溶融破壊し得る。
【0101】
ある態様において、第1の領域を形成する組成物は、約50~約90ショアA、必要に応じて約55~約85ショアA、約60~約80ショアA、約60~約70ショアA、又は約67~約77ショアAのデュロメータショアA硬度を有する。
【0102】
様々な態様において、コーティングされた糸用の第1の高分子組成物は、本明細書において以下に記載されるようなコールドロス屈曲試験に従ってコーティングされたヤーン用の第1の高分子組成物の熱成形プラーク上で試験されたときに、約120,000~約180,000、又は約140,000~約160,000、又は約130,000~約170,000のコールドロス屈曲試験結果を有する。
【0103】
ある態様では、第1のヤーン又は第1の領域の高分子組成物又はコーティングは、2つ以上の第1の特性、又は必要に応じて3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、又は上記で提示された10個の第1の特性すべてを有する。
【0104】
第1の特性に加えて、熱成形されたとき、第1のヤーン又は第1の領域の第1のコーティング又は高分子組成物は、1つ又は複数の第2の特性を有する。ある態様において、熱成形されたとき、第1のヤーン又は第1の領域の第1のコーティング又は高分子組成物は、50℃未満、必要に応じて30℃未満、0℃未満、-10℃未満、-20℃未満、又は-30℃未満のガラス転移温度を有する。ある態様において、熱成形されたとき、第1のヤーン又は第1の領域の第1のコーティング又は高分子組成物は、25℃で、弾性、粘着性及び伸長試験を使用して決定されるように、7メガパスカルより大きい、必要に応じて8メガパスカルより大きい破断時応力を有する。ある態様において、熱成形されたとき、第1のヤーン又は第1の領域の第1のコーティング又は高分子組成物は、25℃において、弾性、粘着性及び伸び試験を使用して決定されるように、2メガパスカルより大きい、必要に応じて2.5メガパスカルより大きい、又は3メガパスカルより大きい300%の弾性における引張応力を有する。ある態様において、熱成形されたとき、第1のヤーン又は第1の領域の第1のコーティング又は高分子組成物は、25℃で、弾性、粘着性及び伸長試験を使用して決定されるように、400パーセントより大きい、必要に応じて450パーセントより大きい、必要に応じて500パーセントより大きい、又は550パーセントより大きい破断伸度を有する。別の態様において、熱成形されたとき、第1のヤーン又は第1の領域の第1のコーティング又は高分子組成物は、2つ以上の第2の特性、又は必要に応じて3つ以上、又は4つすべての第2の特性を有する。
【0105】
ある態様において、本明細書に記載のフィルム、繊維及び糸は、1グラム/デニールより大きい粘着性を示すことができる。ある態様において、本明細書に記載のフィルム、繊維及びヤーンは、約1グラム/デニール~約5グラム/デニールの粘着性を示すことができる。一つ又は複数の態様において、本明細書に記載のフィルム、繊維及びヤーンは、約1.5グラム/デニール~約4.5グラム/デニールの粘着性を示すことができる。一態様では、本明細書に記載のフィルム、繊維及びヤーンは、約2グラム/デニール~約4.5グラム/デニールの粘着性を示すことができる。本明細書で使用される「粘着性」は、繊維又はヤーンの特性を指し、以下に記載されるそれぞれの試験方法及びサンプリング手順を使用して決定される。具体的には、ヤーンのサンプルの粘着性及び伸度は、予荷重5グラムで、ENISO2062に詳述されている試験方法に従って決定される。伸度は破断前に加えられた最大引張力を記録する。粘着性は、試験片の線密度に対する試験片を破断するのに必要な荷重の比として計算することができる。
【0106】
ある態様では、商業用編み機での使用に適したヤーンを利用することが望まれ得る。50°Cにおけるヤーンの自立収縮は、商業用編み機での使用に適したヤーンを予測することができる1つの特性である。ある態様において、本明細書に記載のフィルム、繊維、フィラメント及びヤーンは、20°Cから70°Cまで加熱したときの自立収縮が15%未満であることを示すことができる。様々な態様において、本明細書に記載のフィルム、繊維、及びヤーンは、約0%~約60%、約0%~約30%又は約0%~約15%、20°C~70°Cまで加熱されたときの自立収縮を示すことができる。本明細書で使用する「自立収縮(free-standing shrinkage)」という用語は、以下のように記載されるヤーンの特性及びそれぞれの試験方法を指す。
【0107】
[ヤーンの収縮試験]ヤーンの自立収縮は以下の方法で決定できる。後述のヤーンのサンプリング手順に従ってヤーンのサンプルを用意し、ほぼ室温(例えば、20°C)において最小限の張力で約30ミリメートルの長さにカットする。カットしたサンプルを50℃又は70℃のオーブンに90秒間入れる。サンプルをオーブンから取り出し測定する。収縮率は、サンプルのオーブン前後の測定値を用い、オーブン後の測定値をオーブン前の測定値で割り、100を乗じて算出する。
【0108】
[ヤーンサンプリング手順]試験するヤーンは試験前に室温(20℃カット24℃)で24時間保管する。材料の最初の3メートルは廃棄する。サンプルヤーンをほぼ室温(例えば、20°C)において最小限の張力で約30ミリメートルの長さにカットする。
【0109】
1つ又は複数の態様において、70℃におけるヤーンの自立収縮は、ヤーンの物理的構造に任意の実質的な変化を与えることなく特定の環境条件にさらされるヤーンの能力の有用な指標であり得る。ある態様において、低加工温度の高分子組成物からなるヤーンは、20°Cから70°Cまで加熱したときに、約0%から約60%の自立収縮を示すことができる。1つ又は複数の態様において、低加工温度の高分子組成物からなるヤーンは、20°Cから70°Cに加熱されたときに約0%から約30%の自立収縮を示すことができる。ある態様では、低加工温度の高分子組成物からなるヤーンは、20°Cから70°Cに加熱されたときに約0%から約20%の自立収縮を示すことができる。
【0110】
上述したように、ある態様において、本明細書に記載の第1の高分子組成物及び第2の高分子組成物は、異なる特性を有する。様々な態様において、これらの異なる特性は、熱成形プロセス中に、本明細書に記載されるようなコーティングされた繊維が、溶融及びフロー、その後冷却及び固化、熱成形プロセス前とは異なる構造になる(例えば、ヤーンから溶融ヤーン構成要素に熱成形する)ことを可能にする一方で、熱成形プロセスが、コーティングされていない繊維の溶融温度未満の温度で実施される場合、コーティングされていない繊維は、そのようなプロセス中に変形又は溶融することができず、その構造を(例えば、ヤーンとして)維持することができる。そのような態様において、熱成形プロセス中に本明細書に記載されるようなコーティングされた繊維から形成される溶融ヤーン構成要素は、非変形構造(例えば、ヤーン又は繊維)に一体的に連結され、これにより着用物品の特定のスポットに絞った三次元構造及び/又は他の特性を提供することができる。
【0111】
(熱可塑性エラストマーの例)
様々な態様において、本明細書に記載される第1のヤーンのコーティングをするための高分子組成物は、1つ又は複数の熱可塑性エラストマーを含む。ある態様において「エラストマー」は、25℃でASTMD-412-98を用いて決定される400パーセントより大きい破断伸度を有する材料として定義される。別の態様において、エラストマーはプラークとして形成され、プラークは10~35キログラムフォース(kgf)又は約10~約25キログラムフォース又は約10~約20キログラムフォース又は約15~約35キログラムフォース又は約20~約30キログラムフォースの破断強度を有する。別の態様において、引張破断強度又は極限強度は、断面積について調整した場合、1平方センチメートル当たり70キログラムフォースより大きい又は1平方センチメートル当たり80キログラムフォースより大きい。別の態様において、エラストマープラークは、450パーセント~800パーセント又は500パーセント~800パーセント又は500パーセント~750パーセント又は600パーセント~750パーセント、又は450パーセント~700パーセントの破断ひずみを有する。さらに別の態様において、エラストマープラークは、100%ひずみにおける荷重が、1ミリメートル当たり3~8キログラムフォース、又は1ミリメートル当たり約3~約7キログラムフォース、又は1ミリメートル当たり約3.5~約6.5キログラムフォース、又は1ミリメートル当たり約4~約5キログラムフォースである。ある態様において、エラストマープラークは、850キログラムミリメートル~2200キログラムミリメートル、又は約850キログラムミリメートル~約2000キログラムミリメートル、又は約900キログラムミリメートル~約1750キログラムミリメートル、又は約1000キログラムミリメートル~約1500キログラムミリメートル、又は約1500キログラムミリメートル~約2000キログラムミリメートルの靭性を有する。ある態様において、エラストマープラークは、約35~約155、又は約50~約150、又は約50~約100、又は約50~約75、又は約60~約155、又は約80~約150の硬度を有する。さらに別の態様では、エラストマープラークは、約35~約80、又は約35~約75、又は約40~約60、又は約45~約50の引き裂き強度を有する。
【0112】
側面において、例示的な熱可塑性エラストマーには、ホモポリマー及びコポリマーが含まれる。「ポリマー」という用語は、1つ又は複数のモノマー種を有する重合分子を指し、且つホモポリマー及びコポリマーを含む。「コポリマー」という用語は、2つ又は複数のモノマー種を有するポリマーを指し、且つターポリマー(すなわち、3つのモノマー種を有するコポリマー)を含む。ある態様において、熱可塑性エラストマーはランダムコポリマーである。ある態様において、熱可塑性エラストマーはブロックコポリマーである。例えば、熱可塑性エラストマーは、相対的に硬い(ハードセグメント)同じ化学構造ポリマー単位の繰り返しブロック(セグメント)、及び相対的に軟らかい(ソフトセグメント)ポリマーセグメントの繰り返しブロックを有するブロックコポリマーであってもよい。様々な態様において、ハードセグメントとソフトセグメントを繰り返すブロックコポリマーを含むブロックコポリマーでは、物理的架橋がブロック内、ブロック間又はブロック内及びブロック間の両方に存在し得る。ハードセグメントの具体例としては、イソシアネートセグメント及びポリアミドセグメントが含まれる。ソフトセグメントの具体例としては、ポリエーテルセグメント及びポリエステルセグメントが含まれる。本明細書で使用する場合、ポリマーセグメントは、例えば、イソシアネートセグメント、ポリアミドセグメント、ポリエーテルセグメント、ポリエステルセグメントなどの特定のタイプのポリマーセグメントであり得る。セグメントの化学構造は、記載された化学構造に由来することが理解される。例えば、イソシアネートセグメントは、イソシアネート官能基を含む重合単位である。特定の化学構造のポリマーセグメントのブロックを指す場合、そのブロックは他の化学構造のセグメントを10モルパーセントまで含み得る。例えば、本明細書で使用する場合、ポリエーテルセグメントは10モルパーセントまでの非ポリエーテルセグメントを含むと理解される。
【0113】
ある態様において、第1の高分子組成物は、高分子組成物中に存在する全てのポリマーからなる高分子成分を含み、必要に応じて、高分子成分は2つ以上のポリマーを含み、2つ以上のポリマーは、2つ以上のポリマー各々における個々のセグメントの化学構造又は2つ以上のポリマーの各々の分子量又はその両方において互いに異なる。
【0114】
様々な態様において、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性コポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリエーテルブロックアミドエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン系コポリマーエラストマー、熱可塑性スチレン系コポリマーエラストマー、熱可塑性アイオノマーエラストマー又はそれらの任意な組み合わせのうちの1つ又は複数を含み得る。ある態様では、第1の高分子組成物は、熱可塑性エラストマースチレン系コポリマーからなる。さらなる態様において、熱可塑性エラストマースチレン系コポリマーは、スチレンブタジエンスチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレンエチレンブチレンスチレン(SEBS)樹脂、スチレンアクリロニトリル(SAN)樹脂又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。ある態様では、高分子組成物は、熱可塑性エラストマーポリエステルポリウレタン、熱可塑性ポリエーテルポリウレタン又はそれらの任意な組み合わせから構成される。いくつかの態様において、熱可塑性エラストマーポリエステルポリウレタンは、芳香族ポリエステル、脂肪族組成物又はそれらの組み合わせであってもよい。以下に具体的に記載されていない他の熱可塑性高分子材料も、本明細書に記載のコーティングされた繊維及び/又はコーティングされていない繊維に使用することも想定されていることを理解されたい。ある態様において、約110℃より大きく約170℃より小さい融解温度を有する熱可塑性エラストマーを含む高分子組成物である。他の態様において、熱可塑性エラストマーを含んでなる高分子組成物は、約110℃~約170℃、約115℃~約160℃、約120℃~約150℃、約125℃~約140℃、約110℃~約150℃又は約110℃~約125℃の融解温度を有する。
【0115】
種々の態様において、熱可塑性エラストマーは、本明細書において以下に記載されるASTMD3418-97に従って決定されるとき、50°C未満のガラス転移温度(Tg)を有する。いくつかの態様において、熱可塑性エラストマーは、本明細書に後述するASTMD3418-97に従って決定されるとき、約-60℃~約50℃、約-25℃~約40℃、約-20℃~約30℃、約-20℃~約20℃、又は約-10℃~約10℃のガラス転移温度(Tg)を有する。ある態様において、熱可塑性エラストマーのガラス転移温度は、本明細書に開示されるコーティングされたヤーンを組み込んだ物品であって、コーティングされたヤーンが熱可塑性エラストマーからなる被覆材料を含み、熱可塑性材料が、履物に組み込んだときに、通常の着用中にそのガラス転移温度以上であるように選択される(すなわち、よりゴム状であり、且つより脆くない)。
【0116】
一態様において、熱可塑性エラストマーは、(a)複数の第1のセグメント、(b)複数の第2のセグメント、及び必要に応じて(c)複数の第3のセグメントからなる。様々な態様において、熱可塑性エラストマーはブロックコポリマーである。いくつかの態様において、熱可塑性エラストマーはセグメントコポリマーである。さらなる態様において、熱可塑性エラストマーはランダムコポリマーである。さらなる態様では、熱可塑性エラストマーは縮合コポリマーである。
【0117】
さらなる態様において、熱可塑性エラストマーは、約50,000ダルトン~約1,000,000ダルトン、約50,000ダルトン~約500,000ダルトン、約75,000ダルトン~約300,000ダルトン、約100,000ダルトン~約200,000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0118】
さらなる態様において、熱可塑性エラストマーは、第1のセグメント対第2のセグメントのそれぞれの重量に基づいて約1:1~約1:2、又は第1のセグメント対第2のセグメントのそれぞれの重量に基づいて約1:1から約1:1.5の比率を有する。
【0119】
さらなる態様において、熱可塑性エラストマーは、第1のセグメント対第3のセグメントのそれぞれの重量に基づいて約1:1~、約1:5、第1のセグメント対第3のセグメントのそれぞれの重量に基づいて約1:1~、約1:3、第1のセグメント対第3のセグメントのそれぞれの重量に基づいて約1:1~、約1:2、第1のセグメント対第3のセグメントのそれぞれの重量に基づいて約1:1~約1:3である第1のセグメント対第3のセグメントの比率を有する。
【0120】
さらなる態様において、熱可塑性エラストマーは、約250ダルトン~約6000ダルトン、約400ダルトン~約6000ダルトン、約350ダルトン~約5000ダルトン、又は約500ダルトン~約3000ダルトンの数平均分子量を有する第1の成分に由来する第1のセグメントを有する。
【0121】
いくつかの態様において、熱可塑性エラストマーは相分離したドメインからなる。例えば、複数の第1のセグメントは、主に第1のセグメントからなるドメインに相分離することができる。さらに、異なる化学構造を有するセグメントに由来する複数の第2のセグメントは、主に第2のセグメントからなるドメインに相分離することができる。いくつかの態様において、第1のセグメントはハードセグメントからなり、第2のセグメントはソフトセグメントからなることができる。他の態様において、熱可塑性エラストマーは、複数の第1のコポリエステル単位からなる相分離ドメインからなることができる。
【0122】
一態様において、熱成形前に、高分子組成物は、約20℃から約-60℃のガラス転移温度を有する。ある態様において、熱成形前に、高分子組成物は、ASTMD3389によって決定される約10ミリグラム~約40ミリグラムのテーバー(Taber)摩耗の抵抗を有する。ある態様において、熱成形前に、高分子組成物は、ASTMD2240によって決定される約60から約90のデュロメータ硬度(ショアA)を有する。ある態様では、熱成形前の高分子組成物は、ASTMD792によって決定される約0.80g/cm3~約1.30g/cm3の比重を有する。ある態様において、熱成形前に、高分子組成物は、2.16キログラムの試験重量を用いて160℃で約2グラム/10分~約50グラム/10分のメルトフローインデックスを有する。ある態様において、熱成形の前に、高分子組成物は、10キログラムの試験重量を使用する場合、190℃又は200℃で約2グラム/10分より大きいメルトフローレートを有する。ある態様では、熱成形前に、高分子組成物は、約1メガパスカル~約500メガパスカルの弾性を有する。
【0123】
(熱可塑性ポリウレタンエラストマーの例)
ある態様において、本明細書のいくつかの態様において第1のヤーンのコーティングに使用されるような熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマーである。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、熱可塑性ブロックポリウレタンコポリマーであってもよい。熱可塑性ポリウレタンコポリマーは、ハードセグメントのブロック及びソフトセグメントのブロックを含む、ハードセグメント及びソフトセグメントからなるコポリマーであり得る。ハードセグメントは、イソシアネートセグメントを含む又は構成され得る。同じ又は別の態様において、ソフトセグメントはポリエーテルセグメント又はポリエステルセグメント又はポリエーテルセグメント及びポリエステルセグメントの組み合わせを含む又は構成され得る。ある態様において、熱可塑性材料又は熱可塑性材料の高分子成分は、ハードセグメントの繰り返しブロック及びソフトセグメントの繰り返しブロックを有するエラストマー熱可塑性ポリウレタンなどの、エラストマー熱可塑性ポリウレタンハードセグメント及びソフトセグメントからなるか又は本質的になり得る。
【0124】
態様において、一つ又は複数の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、一つ又は複数のイソシアネートを一つ又は複数のポリオールと重合させることによって、以下に式1で例示するようなカルバメート結合(-N(CO)O-)を有するコポリマー鎖を生成することによって製造することができ、ここでイソシアネートはそれぞれ、例えば1分子当たり2個、3個、又は4個のイソシアネート基など、好ましくは1分子当たり2個以上のイソシアネート(-NCO)基を含む(ただし、単官能イソシアネートも、例えば、鎖終端単位(chain terminating units)として必要に応じて含むことができる)。
【0125】
【0126】
これらの態様において、各R1及びR2は独立して脂肪族又は芳香族セグメントである。必要に応じて、各R2は親水性セグメントであり得る。
【0127】
特に断らない限り、本明細書に記載の任意の官能基又は化合物は、置換又は非置換であり得る。「置換された」基又は化合物、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシル、エステル、エーテル又はカルボン酸エステル基は、非水素ラジカル(すなわち、置換基)で置換された少なくとも一つの水素ラジカルを有する。非水素ラジカル(又は置換基)の例としては、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、エーテル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシル、オキシ(又はオキソ)、アルコキシル、エステル、チオエステル、アシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、アミド、イオウ及びハロを含むが、これらに限定されない。置換アルキル基が一つ以上の非水素ラジカルを含む場合、置換基は同じ炭素又は2つ以上の異なる炭素原子に結合することができる。
【0128】
さらに、イソシアネートを1つ又は複数の鎖延長剤で鎖延長して、2つ以上のイソシアネートを架橋することもできる。これにより、以下に例示する式2のようなポリウレタンコポリマー鎖を生成することができ、ここでR3は鎖延長剤を含む。各R1及びR3と同様に、各R3は独立して脂肪族又は芳香族セグメントである。
【0129】
【0130】
式1及び2中の各セグメントR1又は第1のセグメントは、使用される特定のイソシアネートに基づいて、独立して、直鎖状又は分枝状のC3-30セグメントを含むことができ、脂肪族、芳香族又は脂肪族部分及び芳香族部分の組み合わせを含むことができる。「脂肪族」という用語は、非局在化π(パイ)電子を有する環状共役環系を含まない飽和又は不飽和の有機分子を指す。比較すると、「芳香族」という用語は、非局在化π電子を有する環状共役環系を指し、局在化π電子を有する仮想的な環系よりも大きな安定性を示す。
【0131】
各セグメントR1は、反応物モノマーの総重量に基づいて、5重量%~85重量%、5重量%~70重量%、又は10重量%~50重量%の量で存在し得る。
【0132】
脂肪族の態様において(脂肪族イソシアネートからの)、各セグメントR1は、直鎖脂肪族基、分枝脂肪族基、シクロ脂肪族基又はそれらの組み合わせを含み得る。例えば、各セグメントR1は、直鎖状又は分枝状のC3~20アルキレンセグメント(例えば、C4~15アルキレン、又はC6~10アルキレン)、一つ又は複数のC3~8シクロアルキレンセグメント(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、又はシクロオクチル)及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0133】
ポリウレタンコポリマー鎖を製造するのに好適な脂肪族ジイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ブチレンジイソシアネート(BDI)、ビスイソシアナトシクロヘキシルメタン(HMDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、ビスイソシアナトメチルトリシクロデカン、ノルボルナンジイソシアネート(NDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、4,4´-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ジイソシアナトドデカン、リジンジイソシアネート及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0134】
芳香族の態様では(芳香族イソシアネートからの)、各セグメントR1は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フェナントレニル、ビフェニレニル、インダニル、インデニル、アントラセニル及びフルオレニルなどの一つ又は複数の芳香族基を含むことができる。特に断らない限り、芳香族基は、無置換の芳香族基又は置換された芳香族基であり、ヘテロ芳香族基も含むことができる。「ヘテロ芳香族」とは、単環式又は多環式(例えば、縮合二環式及び縮合三環式)の芳香族環系を指し、ここで1から4個の環原子は酸素、窒素又は硫黄から選択され、残りの環原子は炭素であり、環系は任意の環原子によって分子の残りの部分に結合される。好適なヘテロアリール基の例としては、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル及びベンゾチアゾリルが挙げられる。
【0135】
ポリウレタンコポリマー鎖を製造するのに適した芳香族ジイソシアネートの例としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、トリメチロールプロパン(TMP)とのTDI付加物、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ナフタレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、3、3´-ジメチルジフェニル1-4,4´-ジイソシアネート(DDDI)、4,4´-ジベンジルジイソシアネート(DBDI)、4-クロロ-1,3-フェニレンジイソシアネート及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの態様において、コポリマー鎖は実質的に芳香族基を含まない。
【0136】
ある態様において、ポリウレタンコポリマー鎖は、HMDI、TDI、MDI、H12脂肪族及びそれらの組み合わせを含むジイソシアネートから製造される。例えば、本開示の本明細書に記載のコーティングされた繊維は、一つ又は複数のポリウレタンコポリマー鎖を含むことができ、HMDI、TDI、MDI、H12脂肪族及びそれらの組み合わせを含むジイソシアネートから製造される。
【0137】
ある態様において、架橋されている(例えば、熱可塑性特性を保持する部分架橋ポリウレタンコポリマー)又は架橋可能なポリウレタン鎖を、本開示に従って使用することができる。多機能イソシアネートを使用して、架橋又は架橋可能なポリウレタンコポリマー鎖を製造することが可能である。ポリウレタンコポリマー鎖を製造するのに適したトリイソシアネートの例としては、TDI、HDI及びトリメチロールプロパン(TMP)との付加物であるIPDI、ウレトジオン(すなわち、二量体化したイソシアネート)、ポリメリックMDI、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0138】
式2のセグメントR3は、使用する特定の鎖延長剤ポリオールに基づき、直鎖状又は分枝状のC2-C10セグメントを含むことができ、例えば、脂肪族、芳香族又はポリエーテルであることができる。ポリウレタンコポリマー鎖を製造するのに適した鎖延長剤ポリオールの例としては、エチレングリコール、エチレングリコールの低級オリゴマー(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコール)、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、プロピレングリコールの低級オリゴマー(例えば、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びテトラプロピレングリコール)、1,4-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、1-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジヒドロキシアルキル化芳香族化合物(例えばヒドロキノン及びレゾルシノールのビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、キシレン-a,a-ジオール、キシレン-a,a-ジオールのビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル及びそれらの組み合わせを含む。
【0139】
式1及び式2のセグメントR2は、ポリエーテル基、ポリエステル基、ポリカーボネート基、脂肪族基又は芳香族基を含むことができる。各セグメントR2は、反応物モノマーの総重量に基づいて、5重量%~85重量%、5重量%~70重量%、又は10重量%~50重量%の量で存在することができる。
【0140】
必要に応じて、いくつかの例において、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、比較的高い親水性を有する熱可塑性ポリウレタンである。例えば、熱可塑性ポリウレタンは、式1及び式2のセグメントR2がポリエーテル基、ポリエステル基、ポリカーボネート基、脂肪族基又は芳香族基を含み、脂肪族基又は芳香族基が、相対的に高い親水性を有する1つ又は複数のペンダント基(すなわち、相対的に「親水性」基)で置換されている熱可塑性ポリエーテルポリウレタンであり得る。比較的「親水性」な基は、ヒドロキシル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリラクトン(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP))、アミノ、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェート、アンモニウム(例えば、三級アンモニウム及び四級アンモニウム)、双性イオン(例えば、ポリカルボキシベタイン(pCB)のようなベタイン及びホスファチジルコリンのようなホスホン酸アンモニウム)及びそれらの組み合わせからなる基から選択することができる。このような例において、この比較的親水性の基又はR2のセグメントは、ポリウレタン骨格の一部を形成することができる、或いはペンダント基としてポリウレタン骨格にグラフトされることができる。いくつかの例では、ペンダント親水性基又はセグメントは、リンカーを介して脂肪族基又は芳香族基に結合され得る。各セグメントR2は、反応物モノマーの総重量に基づいて、5重量%~85重量%、5重量%~70重量%、又は10重量%~50重量%の量で存在し得る。
【0141】
いくつかの例において、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの少なくとも1つのR2セグメントは、ポリエーテルセグメント(すなわち、1つ又は複数のエーテル基を有するセグメント)を含む。好適なポリエーテルとしては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)、ポリテトラメチレンオキシド(PTmO)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される用語「アルキル」は、1~30個の炭素原子、例えば1~20個の炭素原子、又は1~10個の炭素原子を含む直鎖及び分岐上の飽和炭化水素基を意味する。Cnという用語は、アルキル基が「n」個の炭素原子を有することを意味する。例えば、C4アルキルとは、4個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。C1-7アルキルとは、全範囲(すなわち、1~7個の炭素原子)及びすべてのサブグループ(例えば、1~6、2~7、1~5、3~6、1、2、3、4、5、6及び7個の炭素原子)を包含する多数の炭素原子を有するアルキル基を意味する。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル(2-メチルプロピル)、t-ブチル(1,1-ジメチルエチル)、3,3-ジメチルペンチル及び2-エチルヘキシルが含まれる。特に断らない限り、アルキル基は無置換アルキル基又は置換アルキル基であり得る。
【0142】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーのいくつかの例において、少なくとも1つのR2セグメントはポリエステルセグメントを含む。このポリエステルセグメントは、1つ又は複数の二価アルコール(例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチルペンタンジオール、1-1,5-ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,2-ドデカンジオール、シクロヘキサンジメタノール及びこれらの組み合わせ)と、1つ又は複数のジカルボン酸(例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、スベリン酸、メチルアジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、チオジプロピオン酸、シトラコン酸及びこれらの組み合わせ)のポリエステル化に由来し得る。ポリエステルはまた、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール、ポリ(プロピレンカーボネート)グリコール、ポリ(テトラメチレンカーボネート)グリコール及びポリ(ノナノメチレンカーボネート)グリコールなどのポリカーボネートプレポリマーに由来し得る。適切なポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリヘキサムエチレンカーボネート、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(テトラメチレンカーボネート)、ポリ(ノナノメチレンカーボネート)及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0143】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーの種々の態様において、少なくとも1つのR2セグメントはポリカーボネートセグメントを含む。ポリカーボネートセグメントは、1つ又は複数の二価アルコール(例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチルペンタンジオール1-1,5、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,2-ドデカンジオール、シクロヘキサンジメタノール及びこれらの組み合わせ)とエチレンカーボネートとの反応から導出することができる。
【0144】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーの様々な例において、少なくとも一つのR2セグメントは、比較的大きい程度の親水性を有する一つ又は複数の基、すなわち比較的「親水性」な基で置換された脂肪族基を含むことができる。一つ又は複数の比較的親水性の基は、ヒドロキシル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリラクトン(例えば、ポリビニルピロリドン)、アミノ、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸、アンモニウム(例えば、三級アンモニウム及び四級アンモニウム)、双性イオン(例えば、ポリカルボキシベタイン(pCB)などのベタイン及びホスファチジルコリンなどのホスホン酸アンモニウム)及びそれらの組み合わせからなる基から選択することができる。いくつかの例において、脂肪族基は直鎖状であり、且つ例えば、C1_20アルキレン鎖又はC1_20アルケニレン鎖(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、エテニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレン、ヘプテニレン、オクテニレン、ノネニレン、デセニレン、ウンデセニレン、ドデセニレン、トリデセニレン)を含むことができる。「アルキレン」という用語は、二価の炭化水素を意味する。この用語は、アルキレン基が「n」個の炭素原子を有することを意味する。例えば、C1-6アルキレンは、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するアルキレン基を指す。「アルケニレン」という用語は、少なくとも一つの二重結合を有する二価の炭化水素を指す。
【0145】
場合によっては、少なくとも一つのR2セグメントは、1つ又は複数の比較的親水性の基で置換された芳香族基を含む。1つ又は複数の親水性基は、ヒドロキシル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリラクトン(例えば、ポリビニルピロリドン)、アミノ、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、アンモニウム(例えば、三級アンモニウム及び四級アンモニウム)、双性イオン性(例えば、ポリカルボキシベタイン(pCB)のようなベタイン及びホスファチジルコリンのようなアンモニウムホスホネート基)及びそれらの組み合わせからなる基から選択することができる。適切な芳香族基としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フェナントレニル、ビフェニレニル、インダニル、インデニル、アントラセニル、フルオレニルピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、及びベンゾチアゾリル基、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0146】
種々の局面において、脂肪族基及び芳香族基は、一つ又は複数のペンダントの比較的親水性の基及び/又は荷電基で置換され得る。いくつかの態様において、ペンダント親水性基は、一つ又は複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の)ヒドロキシル基を含む。様々な態様において、ペンダント親水性基は、一つ又は複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の)アミノ基を含む。場合によっては、ペンダント親水性基は、1又は複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の)カルボキシレート基を含む。例えば、脂肪族基は、1以上のポリアクリル酸基を含み得る。場合によっては、ペンダント親水性基は、1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の)スルホン酸基を含む。場合によっては、ペンダント親水性基は、1つ又は複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の)リン酸基を含む。いくつかの例では、ペンダント親水性基は、1つ又は複数のアンモニウム基(例えば、第3級アンモニウム及び/又は第4級アンモニウム)を含む。他の例では、ペンダント親水性基は、1つ又は複数の双性イオン基(例えば、ポリカルボキシベタイン(pCB)などのベタイン及びホスファチジルコリン基などのホスホン酸アンモニウム基)を含む。
【0147】
いくつかの態様において、R2セグメントは、対イオンと結合して熱可塑性エラストマーをイオン架橋し、イオノマーを形成することができる荷電基を含むことができる。これらの態様において、例えば、R2は、ペンダントアミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アンモニウム基又は双性イオン基又はそれらの組み合わせを有する脂肪族基又は芳香族基である。
【0148】
ペンダント親水性基が存在する様々な場合において、ペンダント「親水性」基は少なくとも1つのポリエーテル基、例えば二つのポリエーテル基である。他の態様では、ペンダント親水性基は少なくとも一つのポリエステルである。様々な態様において、ペンダント親水性基はポリラクトン基(例えば、ポリビニルピロリドン)である。ペンダント親水性基の各炭素原子は、必要に応じて、例えばC1-6アルキル基で置換され得る。これらの態様のいくつかにおいて、脂肪族基及び芳香族基はグラフト重合性基であり得、ここでペンダント基はホモポリマー基(例えば、ポリエーテル基、ポリエステル基、ポリビニルピロリドン基)である。
【0149】
いくつかの態様において、ペンダント親水性基は、ポリエーテル基(例えば、ポリエチレンオキシド基、ポリエチレングリコール基)、ポリビニルピロリドン基、ポリアクリル酸基又はそれらの組み合わせである。
【0150】
本明細書で説明するように、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、例えばポリマー上のウレタン基又はカルバメート基(ハードセグメント)間の非極性又は極性の相互作用を介して物理的に架橋することができる。これらの態様において、式1の成分R1及び式2の成分R1及びR3は、しばしば「ハードセグメント」と呼ばれるポリマーの部分を形成し、且つ成分R2は、しばしば「ソフトセグメント」と呼ばれるポリマーの部分を形成する。これらの態様において、ソフトセグメントはハードセグメントに共有結合することができる。いくつかの例において、物理的に架橋されたハードセグメント及びソフトセグメントを有する熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、親水性熱可塑性ポリウレタンエラストマー(すなわち、本明細書に開示されるような親水性基を含む熱可塑性ポリウレタンエラストマー)であり得る。
【0151】
ある態様では、熱成形前に、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、以下の特性を有する芳香族ポリエステル熱可塑性エラストマーポリウレタン又は脂肪族ポリエステル熱可塑性エラストマーポリウレタンである。(1)約20℃から約-60℃のガラス転移温度、(2)ASTMD3389によって決定される約10ミリグラム~約40ミリグラムのテーバー耐摩耗性、(3)ASTMD2240によって決定される約60~約90のデュロメータ硬度(ショアA)、(4)ASTMD792によって決定される約0.80g/cm3~約1.30g/cm3の比重、(5)2.16キログラムの試験重量を使用して、160℃で約2グラム/10分~約50グラム/10分のメルトフローインデックス、(6)10キログラムの試験重量を使用する場合、190℃又は200℃で約2グラム/10分より大きいメルトフローレート及び(7)約1メガパスカルから約500メガパスカルの弾性。
【0152】
本発明の使用に適した、より大きな親水性を有する商業的に入手可能な熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、商品名「TECOPHILIC」、例えば、TG-500、TG-2000、SP-80A-150、SP-93A-100、SP-60D60(Lubrizol、Countryside、IL)、「ESTANE」(例えば、58238、T470A;Lubrizol、Countryside、IL)、及び「ELASTOLLAN」(例えば、9339、1370A;BASF)が挙げられるが、こられに限定されない。
【0153】
様々な態様において、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、本明細書において先に記載したように、部分的に共有結合的に架橋され得る。
【0154】
(熱可塑性スチレン系共重合体エラストマーの例)
ある態様において、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性エラストマーのスチレン系コポリマーである。これらのコポリマーの例としては、スチレンブタジエンスチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)樹脂、ポリアセタール樹脂(POM)、スチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)又はこれらのブレンド、合金、化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な市販の熱可塑性エラストマーであるスチレン系コポリマーとしては、スチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)樹脂であるMONOPRENEIN5074、SP066070及びSP16975(TeknorApex,Pawtucket,RI,USA)などがある。いくつかの態様において、ブレンド、合金及び化合物は、混和性を達成するために、溶融加工性であることが好ましく、或いは添加剤、油又はグラフト化された化学部分と相溶させることができる。
【0155】
一態様において、熱可塑性エラストマースチレン系コポリマーは、以下の式3で示されるような少なくとも1つのブロックを含む。
【0156】
【0157】
別の態様において、熱可塑性エラストマースチレン系コポリマーは、第1のポリスチレンブロック(式4のブロックm)、ポリブタジエンブロック(式4のブロックo)及び第2のポリスチレンブロック(式4のブロックp)からなるSBSブロックコポリマーであり得、SBSブロックコポリマーは、以下の式4に示す一般構造を有する。
【0158】
【0159】
別の態様において、熱可塑性エラストマー性スチレン系コポリマーは、以下の式5に見られるように、第1のポリスチレンブロック(式5のブロックx)、ポリオレフィンブロック(式5のブロッキー)であって、ポリオレフィンブロックが交互のポリエチレンブロック(式5のブロックv)及びポリブチレンブロック(式4のブロックw)からなるポリオレフィンブロック及び第2のポリスチレンブロック(式5のブロックz)とからなるSEBSブロックコポリマーであり得る。
【0160】
【0161】
ある態様では、SEBSポリマーの密度は約0.88グラム/立方センチメートルから約0.92グラム/立方センチメートルである。さらなる態様では、SEBSポリマーは、架橋ゴム、架橋ポリウレタン及び熱可塑性ポリウレタン材料よりも15から25も密度が低くなり得る。さらなる態様において、より密度の低いコーティング組成物は、同様の性能を達成しながら、採用される体積の同じ材料について、軽量化と構成要素当たりのコストの節約を提供する。
【0162】
「化学化合物(chemical compound)」とは、化学化合物の単一分子に限定されるのではなく、化学化合物の1つ又は複数の以上の分子を指す。さらに、1つ又は複数の分子は、化学化合物のカテゴリーに該当する限り、同一であっても同一でなくてもよい。したがって、例えば、「ポリアミド(polyamide)」は、ポリアミドの1つ又は複数のポリマー分子を含むと解釈され、ポリマー分子は同一でも同一でなくてもよい(例えば、異なる分子量及び/又は異性体)。
【0163】
要素の「少なくとも1つ(at least one)」及び「1つ又は複数の/1つ以上の(one or more of)」という用語は、互換的に使用され、且つ単一の要素及び複数の要素を含む同じ意味を有し、要素の末尾の接尾辞「(s)」によっても表すことができる。例えば、「少なくとも1つのポリアミド」、「1つ又は複数のポリアミド」及び「ポリアミド(s)」は、互換的に使用することができ、同じ意味を有する。
【0164】
特に指定のない限り、本明細書で言及される温度は標準大気圧(すなわち1気圧)で決定される。
【0165】
特性分析及び特性評価手順。本明細書に記載されている様々な特性及び特徴の評価は、以下に説明するような様々な試験手順による。
【0166】
[サンプルの摩擦係数]生地又はプラークサンプルの静的又は動的摩擦係数(COF)は、ASTMD1894試験法を用いて決定することができる。この方法では、サンプルをサイズに合わせて裁断し、そりに取り付け、また100gの加重板をそりに載せる。試験中、加重そりは試験される材料の試験面を横切って引っ張られる。例えば、静的及び動的な湿潤及び乾燥したCOFは、コンクリート表面を横切るそりを引いて、サンプル及びコンクリートのCOFを決定することによって決定することができ得る。その表面に対するサンプルの摩擦係数は、標準の力(100グラム+そり重量)を記録し、且つ試験表面をそりで引きずるのに必要な加えられた力を測定することによって把握される。そして、二つの力の比から摩擦係数(COF)が計算される。乾燥COFは、乾燥したサンプルを乾燥した試験面に対して試験することにより決定され、且つ湿潤COFは、水で濡らしたサンプルを室温の水に10分間浸し、室温の水で濡らした試験面に対して試験することにより決定される。
【0167】
[生地ボール摩擦係数試験]フットボール(NikeInc.,Beaverton,OR,USA)のパネルからのサンプルに対して、以下に説明する構成要素サンプリング手順又は生地サンプリング手順を用いて調製したサンプルの静的及び動的摩擦係数(COF)は、サンプル摩擦係数について説明した試験法ASTMD1894の修正版を用いて決定できる。この方法では、サンプルをサイズにカットしてアクリル基板に取り付け、且つボール材料をサイズにカットしてそりに取り付ける。ボール材料がそりに取り付けられると、そりの接触フットプリントは、3.9インチ×1インチ、また重量は約0.402キログラムになる。試験中、サンプル及びボール材料は、ボール材料の外面が履物の外面を形成することを意図したサンプルの表面に接触するように配置され、またそりはサンプルを横切って引っ張られる。静的又は動的な乾燥COFを決定するためには、乾燥したサンプル及び乾燥したボール材料が使用される。静的又は動的な湿潤COFを測定するために、サンプル及びボール材料は、試験の直前に室温の水に10分間浸す。各測定は少なくとも3回繰り返され、且つ測定結果は平均化される。
【0168】
[融解及びガラス転移温度試験]融解温度及び/又はガラス転移温度は、ASTMD3418-97に準拠し、市販の示差走査熱量計(「DSC」)を使用して、以下に説明する材料サンプリング手順に従って調製したサンプルについて決定する。間欠には、10~60ミリグラムのサンプルをアルミニウム製DSCパンに入れ、且つクリンパープレスで蓋を密閉する。DSCは、20℃/分の昇温速度で-100℃から225℃までスキャンし、225℃で2分間保持した後、-20℃/分の割合で25℃まで冷却するように構成されている。次に、このスキャンから作成されたDSC曲線を標準的な手法で分析し、ガラス転移温度及び融解温度を決定する。融解エンタルピーは、融解吸熱を積分し、サンプルの質量で正規化することによって計算される。冷却時の結晶化エンタルピーは、冷却吸熱を積分し、またサンプルの質量で正規化することによって計算される。
【0169】
[変形温度試験]ビカット軟化温度は、ASTMTmD1525-09プラスチックのビカット軟化温度に関する標準試験方法に詳述されている試験方法に従い、以下に説明する材料サンプリング手順又は構成要素(コンポーネント)サンプリング手順に従って調製したサンプルについて、好ましくは荷重A及び速度Aを用いて決定する。簡潔には、ビカット軟化温度とは、特定の荷重のもとで、平坦端部針が試験片を1ミリメートルの深さまで貫通する温度である。この温度は、材料が高温の用途に使用された場合に予想される軟化点を反映している。この温度は、1平方ミリメートルの円形又は正方形の断面を持つ平坦端部針が試験片を1ミリメートルの深さまで貫通する温度とされる。ビカットA試験には10ニュートン(N)の荷重が、一方、ビカットB試験には50ニュートンの荷重が用いられる。この試験では、貫通針が端部から少なくとも1ミリメートルの位置で試験片の表面に当たるように、試験片を試験装置にセットする。ビカットA又はビカットB試験の要求事項に従って、試験片に荷重を加える。次に、試験片を23°Cのオイルバスに入れる。バスは、針が1ミリメートル貫通するまで、1時間当たり50℃又は120℃の割合で上昇させる。試験片の厚さは3~6.5ミリメートルの間、幅及び長さは10ミリメートル以上でなければならない。最小の厚さを達成するために積み重ねることができる層は3つまでである。
【0170】
[メルトフローインデックス試験]メルトフローインデックスは、ASTMD1238-13押出プラストメーターによる熱可塑性プラスチックのメルトフローレートの標準試験方法に詳述されている試験方法に従い、後述の材料サンプリング手順に従って調製したサンプルについて、本明細書に記載されている手順Aを用いて決定する。簡単に説明すると、メルトフローインデックスは、所定の温度及び荷重でオリフィスを通る熱可塑性プラスチックの押出速度を測定する。この試験法では、約7グラムの材料を、その材料について規定された温度に加熱されたメルトフロー装置のバレルに装填する。材料に応じた重さがプランジャーに加えられ、且つ溶融材料が型を通して押し出される。時限押出物は回収され、計量される。メルトフローインデックスの値は、適用荷重と適用温度に対してg/10分で計算される。ASTMD1238-13に記載されているように、メルトフローインデックスは、2.16kgの重量を用いて160℃で又は10kgの重量を用いて200℃で決定できる。
【0171】
[溶融ポリマー粘度試験]この試験は、以下に説明するプラーク又はフィルムサンプリング手順に従って準備した2ミリメートルのプラーク又はフィルムを用いて実施する。円形の型を使用して、プラーク又はフィルムから50ミリメートルの試験片ディスクを切り出す。試験片は、ARES-G2(変位制御)レオメータの直径50mmのアルミニウム製平行プレートに取り付ける。規定の垂直抗力荷重下で試験片が両方のディスク表面に接触するようにトッププレートを下降させ、ステージを210°Cに加熱する。サンプルは、定められた滞留時間(分)、溶融するまで平衡化され、振動せん断周波数掃引が低ひずみ振幅で適用され、速度依存データを収集する。所定のせん断振動数で振動運動を発生させるのに必要な印加せん断応力の比から、測定された粘度値が得られる。せん断速度に依存する粘度データは、毎秒0.1~毎秒1000まで収集できる。
【0172】
[プラーク弾性試験]以下に説明するプラーク又はフィルムサンプリング手順に従って作製したサンプルの弾性は、ASTMD412-98加硫ゴム及び熱可塑性ゴム及び熱可塑性エラストマー-張力の標準試験方法に詳述されている試験方法に従って決定されるが、以下の修正が加えられている。サンプルの寸法はASTMD412-98のダイCで、且つ使用するサンプルの厚さは2.0ミリメートル±0.5ミリメートルである。使用されるグリップの種類は、金属製の鋸歯状のグリップ面を持つ空気圧式グリップである。使用されるグリップ距離は75ミリメートルである。負荷速度は500ミリメートル/分である。弾性(初期)は、初期直線リージョンにおける応力(MPa)対ひずみの傾きを取ることによって計算される。この試験は、破断強度、破断ひずみ、100%ひずみ時の荷重、靭性、剛性、引裂強度などの他の引張特性を決定するためにも使用することができる。
【0173】
[ヤーンのデニールと太さ試験]デニールを測定するには、以下で説明するヤーンのサンプリング手順に従って糸のサンプルを準備する。ヤーンのサンプルの既知の長さ及び対応する重量を測定する。これを糸の9000メートルあたりのグラム数に換算する。コーティングされたヤーンの太さを決定するには、まずヤーンをカミソリでカットし、顕微鏡で観察し、コアヤーンの直径に対するコーティングの厚さをスケールに合わせて決定する。
【0174】
[ヤーンの弾性、粘着性、伸び試験]ヤーンの弾性は、上述のヤーンのサンプリング手順に従って準備したサンプルについて決定し、またENISO2062(パッケージからの生地-ヤーン)一定伸長率(CRE)試験機を用いた一端破断力及び破断伸度の測定に詳述されている試験方法に従って試験する。この試験方法には以下の変更が加えられている。試験片長さ600ミリメートルで5個の試験片を準備する。使用機器はインストロン万能試験システムである。インストロンの空気圧コード及びスレッドグリップ又は同様の空気圧グリップを取り付け、グリップ距離は250ミリメートルとする。グリップ距離は145+1ミリメートルに設定し、またインストロンの空気圧コード及びスレッドグリップを使用する場合はゲージ長を250+2ミリメートルに設定する。予荷重は5グラムに設定し、また使用する荷重速度は250ミリメートル/分である。弾性(初期)は、初期直線部分域における応力(MPa)対ひずみの傾きを取ることによって計算される。最大引張力が記録される。糸のサンプルの粘着性と伸びは、予荷重を5グラムに設定し、ENISO2062に詳述されている試験方法に従って決定する。伸びは破断前に加えられた最大引張力の値が記録される。いくつかの態様では、粘着性は試験片の線密度に対する試験片を破断するために必要な荷重の比として計算される。
【0175】
[比重試験]比重(SG)は、ASTMD792に詳述されている試験方法に従い、体積変位を用いて決定する。例えば、SGは、デジタル天秤又はデンシコムテスター(DensicomTester)(Qualitest,Plantation,Florida,USA)を使用して、プラークサンプリング手順又はコンポーネントサンプリング手順で採取されたサンプルについて測定される。各サンプルは秤量(g)され、蒸留水槽(22℃±2℃)に浸される。誤差を避けるため、サンプル表面の気泡は、例えば、サンプルを水に浸す前にイソプロピルアルコールを拭き取るか、或いはサンプルを浸した後にブラシを使って取り除く。蒸留水中のサンプルの重量を記録する。比重は以下の式で算出する。
【0176】
【0177】
[デュロメータ硬度試験。]材料の硬度は、ASTMD-2240デュロメータ硬度に詳述されている試験方法に従って、ショアAスケールを用いてサンプルについて決定することができる。
【0178】
[糸の収縮試験]ヤーンの自立収縮は、以下の方法で決定することができる。後述するヤーンのサンプリング手順に従ってヤーンのサンプルを調製し、ほぼ室温(例えば、20°C)で最小限の張力で約30ミリメートルの長さにカットする。カットしたサンプルを50℃又は70℃のオーブンに90秒間入れる。サンプルをオーブンから取り出し、測定する。収縮率は、サンプルのオーブン前とオーブン後の測定値を用い、オーブン後の測定値をオーブン前の測定値で割り、100を乗じて算出する。
【0179】
[ストール摩耗試験]耐摩耗性(靴底の擦れをシミュレートする耐摩耗性を含む)は、以下に説明する構成要素(コンポーネント)サンプリング手順、プレート又はフィルムサンプリング手順又は生地サンプリング手順に従って準備したサンプルを使用して、ストール摩耗試験を使用して測定することができる。ストール摩耗試験の最小サンプル数は3である。本明細書で使用するサンプルは、直径112ミリメートルの円形に手作業でカット又は型抜きしたものである。ストール摩耗試験はASTMD3886に詳しく記載されており、アトラス万能摩耗試験機で実施することができる。ストール摩耗試験では、静止して取り付けた試験サンプルの上を摩耗媒体が移動し、サンプルの外観がモニターされる。ストール摩耗試験は、通常の使用における摩耗をシミュレートするために加圧下で行われる。
【0180】
[DIN摩耗試験]サンプルは以下の構成要素(コンポーネント)サンプリング手順、プラーク又はフィルムサンプリング手順又は生地サンプリング手順に従って準備される。摩耗損失は、ASTM標準穴あけドリルを使用してカットした直径16±0.2ミリメートル、最小厚さ6ミリメートルの円柱状サンプルで試験される。摩耗損失は、GotechのGT-7012-D摩耗試験機でASTMD5963-97aの方法Bを用いて測定する。試験は22°C、摩耗経路40メートルで行われる。試験に使用した標準ゴム#1の密度は1.336グラム/立方センチメートル(g/cm3)である。摩耗損失体積が小さいほど、耐摩耗性に優れている。
【0181】
[水浸透試験]サンプルの耐水性は、後述する構成要素サンプリング手順、プラーク又はフィルムサンプリング手順又は生地サンプリング手順に従って準備したサンプルを用いて、以下のように測定する。試験される試験片は、表面が水平に対して45°の角度をなす支持台に取り付けられる。支持台には直径152mmの試験片ホルダー内輪が含まれる。試験片は、試験前に少なくとも2時間、実験室環境で平衡化させる。試験片は直径220ミリの円形にカットされる。皮革又は硬い合成皮革のような厚い素材又は硬い素材は、サンプルの外縁に三つの切り込みを入れる。試験片は手作業でカットするか、型抜きし得る。柔らかい素材の試験片は同じ大きさにカットされ、長さの方向が試験片に記される。裏打ち紙は、白又はオフホワイトのペーパータオル、コーヒーフィルター又は同様の薄くて吸収性のある紙から調製される。裏打ち紙も直径220ミリの円形にカットする。試験片1枚につき1枚の裏紙を用意し、裏紙は再利用しない。裏打ち紙と試験片はサンプル固定具に入れられ、スプレー試験装置に入れられる。サンプルの長さ方向は水流方向と平行にする。漏斗をスプレーノズルと試験片の間の高さ6インチ(152.4ミリメートル)に調整する。スプレーノズルは試験片の中心を越えていなければならない。250±2ミリリットルの蒸留水を漏斗に加え、試験片に水を噴霧する。スプレー終了後10秒以内に、上面の撥水性を評価する。上面が評価された後、サンプル固定具を支持台から取り外し、裏紙を評価してサンプルに水が浸透しているかどうかを判定する。目視評価の後、水の浸透が報告され、サンプルは濡れの程度によって「合格」又は「不合格」と評価される。最表面の粘着又は濡れが観察されない場合、最表面のわずかなランダムな粘着又は濡れが観察される場合又はスプレーポイントで最表面の濡れが観察される場合、そのサンプルは合格とみなされる。スプレーポイントを超えて及び/又は裏面を含めて、さらに濡れた場合は、そのサンプルは水浸透試験に不合格であることを示す。
【0182】
[生地-ボール衝撃試験]生地の試験サンプルは、以下に説明する構成要素(コンポーネント)サンプリング手順又は生地サンプリング手順に従って準備する。生地の10インチ×8インチの試験サンプルは、外周が10インチの金属シリンダーの外面に取り付けられる。試験サンプルとシリンダーはロボットのスイングアームに取り付けられ、スイングアームは時速80.4672km(50マイル)で振られ、静止したボールの赤道に衝突する。使用されるボールは、80kPa(0.80バール)に膨らませた規定サイズのナイキ「MERLIN」フットボールである。高速ビデオカメラを使用して、インパクト直後のボールの位置を記録する。高速ビデオカメラで記録された複数フレームの画像の空間内の位置とボールの回転を使用して、ソフトウェアでインパクト直後のボールの速度とスピンレートを計算する。各測定は少なくとも3回繰り返され、その結果は平均化される。
【0183】
[アッパ-ボールインパクト試験]男性用サイズ10.5のフットボールブーツ全体又は男性用サイズ10.5のフットボールブーツのアッパーをロボットのスイングアームに取り付け、ロボットの揺動アームを時速80.4672km(50マイル)でスイングさせたときに、ボールがつま革(ヴァンプ)の内側、靴紐の上又は靴紐付近(ブーツに靴紐構造がある場合)でブーツに衝突し、アッパーがボールの赤道に衝突するように配置する。使用されるボールは、80kPa(0.80バール)に膨らませた規定サイズのナイキ「MERLIN」フットボールである。高速ビデオカメラを使用して、インパクト直後のボールの位置を記録する。高速ビデオカメラで記録された複数フレームの画像の空間内の位置とボールの回転を使用して、ソフトウェアでインパクト直後のボールの速度とスピンレートを計算する。各測定は少なくとも3回繰り返され、その結果は平均化される。
【0184】
(サンプリング手順)
上述の試験を用いて、本明細書に開示された材料及びそれから形成された成形品の様々な特性は、以下のサンプリング手順で調製されたサンプルを用いて特徴付けることができる。
【0185】
[材料サンプリング手順]材料サンプリング手順は、高分子組成物又はポリマーの整ったサンプル、若しくは場合によっては、高分子組成物又はポリマーを形成するために使用される材料のサンプルを得るために使用することができる。材料は、フレーク、顆粒、粉末、ペレットなどの媒体形態で提供される。高分子材料又はポリマーの供給源がきちんとした形態で入手できない場合は、サンプルは複合要素又は単独構造体など、高分子材料又はポリマーを含む構成要素又は要素からサンプルを切り出し、それによって材料のサンプルを分離することができる。
【0186】
[プラーク又はフィルムのサンプリング手順]高分子組成物又はポリマーのサンプルを調製する。次に、ポリマー又は高分子組成物の一部を、試験装置に適合するサイズのフィルム又はプラークに成形する。例えば、ロス屈曲試験機(Ross flexing tester)を使用する場合、プラーク又はフィルムサンプルは、使用するロス屈曲試験機内に適合する大きさにし、サンプルは、金型内で高分子組成物又はポリマーを熱成形することにより、約15センチメートル(cm)×2.5センチメートル(cm)の寸法及び約1ミリメートル(mm)~約4ミリメートル(mm)の厚さを有する。ポリマーのプラークサンプルの場合、サンプルは、ポリマーを溶融し、溶融ポリマーを金型に充填し、金型の形状でポリマーを再凝固させ、固化した成形サンプルを金型から取り出すことによって調製することができる。あるいは、ポリマーのサンプルを溶融し、押出してフィルムにし、それをサイズに合わせてカットすることもできる。高分子組成物のサンプルの場合、高分子組成物の成分をブレンドし、高分子組成物の熱可塑性成分を溶融し、溶融した高分子組成物を金型に充填し、高分子組成物を型の形状に再固化し、また固化した成形サンプルを金型から取り出すことによって、サンプルを調製することができる。あるいは、高分子材料のサンプルは、高分子組成物の成分を混合し、溶融することによって調製することができ、次いで、溶融高分子組成物を、サイズに合わせてカットされたフィルムに押し出すことができる。ポリマー又は高分子組成物のフィルムサンプルの場合、フィルムは、フィルムのほぼ一定の膜厚(平均膜厚の±10%以内)を有するウェブ又はシートとして押し出され、得られたウェブ又はシートを固化させるために冷却される。得られたウェブ又はシートから、4平方センチメートルの表面積を持つサンプルを切り出す。あるいは、フィルム材料の供給源がきちんとした形で入手できない場合、フィルムは履物構成要素の基材から、或いは共押出しシート又はウェブの裏基材から切り出すことができ、それによってフィルムを分離することができる。いずれの場合も、得られた分離フィルムから4平方センチメートルの表面積を持つサンプルを切り出す。
【0187】
[コンポーネントサンプリング手順]この手順は、履物物品の構成要素、履物物品、アパレル物品の構成要素、アパレル物品、スポーツ用品の構成要素、又はスポーツ用品の物品から材料のサンプルを得るために使用することができ、高分子組成物、又は生地、又は熱成形ネットワークなどの生地の一部のサンプルを含む。非湿潤状態(例えば、25°C、相対湿度20%)の材料を含むサンプルは、刃物を用いて物品又は構成要素(コンポーネント)から切断される。材料が一つ又は複数の付加的な材料に接着されている場合、その手順は、試験される材料から付加的な材料を分離することを含むことができる。例えば、ソール構造の接地面にある材料を試験するために、反対側の面は、試験される材料に接着している任意の接着剤、ヤーン、繊維、発泡体などを除去するために、皮を剥ぐ、摩滅させる、削る、その他の方法で洗浄することができる。得られたサンプルは材料が含まれ、材料に接着された任意の材料が含まれ得る。
【0188】
サンプルは、例えば、履物物品であれば、地面に面する表面の足前部分域、足中間部分域、又は踵部分域のように、成形品又は構成要素上に存在する材料のほぼ一定の材料厚さ(平均材料の厚さの±10%以内)を提供する成形品又は構成要素(コンポーネント)に沿った位置で採取される。上述の試験プロトコルの多くでは、4平方センチメートル(cm2)の表面積を有するサンプルが使用される。サンプルは、試験装置に適合する大きさ及び形状(例えば、ドッグボーン型のサンプル)にカットされる。材料が、4平方センチメートルの表面積を有する任意のセグメントにも成形品又は構成要素に存在しない、及び/又は材料の厚さが、4平方センチメートルの表面積を有するセグメントに対してほぼ一定でない場合には、より小さな断面表面積を有するサンプルサイズを採取することができ、それに応じて領域特定の測定値が調整される。
【0189】
[ヤーンのサンプリング手順]試験するヤーンは、試験前に室温(20℃~24℃)で24時間保管する。最初の3メートルの材料は廃棄する。サンプルのヤーンをほぼ室温(例:20°C)で最小限の張力で約30ミリメートルの長さにカットする。
【0190】
[生地のサンプリング手順。]試験する生地は、試験前に室温(20°C~24度)で24時間保管する。生地サンプルは、ほぼ室温(例:20°C)において最小限の張力で、使用する試験方法で指示されたサイズに裁断する。
【0191】
(態様の例)
以下の条項は、本明細書で意図される概念の例示的な態様を表す。以下の条項の任意のいずれか1は、1つ又は複数の他の条項に従属するように、多重従属的な態様で組み合わせることができる。さらに、従属項(前の条項に明示的に従属する条項)の任意の組み合わせを、本明細書で意図する態様の範囲内に留まりながら組み合わせ得る。以下の条項は、本質的に例示であり、限定するものではない。
【0192】
[第1項] 第1の表面及び反対側の第2の表面を有するニット構成要素であって、ニット構成要素の第1の表面は、第1の摩擦係数を有する第1の領域であり、コア及びコーティングを有する第1のヤーンを含み、コーティングはコアを少なくとも部分的に取り囲んでいる第1の領域と、及び第1の摩擦係数とは異なる第2の摩擦係数を有し、第2のヤーンを含む第2の領域と、を含み、第1の領域は第2の領域と交互のパターンを形成し、第1の領域は、第1の表面の総表面積の40%~80%であるように、該交互のパターンを形成する、ニット構成要素。
【0193】
[第2項] 第1項に記載のニット構成要素において、コーティングは熱可塑性エラストマーを含む、ニット構成要素。
【0194】
[第3項] 第1又は2項に記載のニット構成要素において、第1の領域における第1領域は、コア及びコーティングを含むインターループしたヤーンの熱成形ネットワークを含み、コーティングは、コアの少なくとも一部を取り囲み、またインターループしたヤーンの熱成形ネットワークにおけるヤーン相互間のスペースの少なくとも一部を占めることによって、インターループしたヤーンの熱成形ネットワークを合体させる、ニット構成要素。
【0195】
[第4項] 第1~3のうちいずれか一項に記載のニット構成要素において、第1の摩擦係数は第2の摩擦係数よりも大きい、ニット構成要素。
【0196】
[第5項] 第1~4のうちいずれか一項に記載のニット構成要素において、第1の摩擦係数及び第2の摩擦係数は動摩擦係数である、ニット構成要素。
【0197】
[第6項] 第1~5のうちいずれか一項に記載のニット構成要素において、第2のヤーンはコーティングを含まない、ニット構成要素。
【0198】
[第7項] 第1~6のうちいずれか一項に記載のニット構成要素において、交互のパターンは同心状のパターンである、ニット構成要素
【0199】
[第8項] 第1~7のうちいずれか一項に記載のニット構成要素において、第1の領域(複数形)における第1の領域(単数形)及び第2の領域(複数形)における第2の領域(単数形)が交互パターンで連続しており、第1の領域(単数形)と第2の領域(単数形)との間の境界が曲線状である、ニット構成要素。
【0200】
[第9項] 第1~8のうちいずれか一項に記載のニット構成要素において、第1の領域(複数形)における第1の領域(単数形)及び第2の領域(複数形)における第2の領域(単数形)が交互パターンで連続しており、第1の領域(単数形)と第2の領域(単数形)との間の境界が直線状である、ニット構成要素。
【0201】
[第10項] 第1~9のうちいずれか一項に記載のニット構成要素において、第1の領域(複数形)における第1の領域(単数形)及び第2の領域(複数形)における第2の領域(単数形)が交互パターンで連続しており、第1の表面の第1の隆起部分が、第1の領域(単数形)と第2の領域(単数形)にわたって連続して第1の方向に延在している、ニット構成要素。
【0202】
[第11項] 外向き表面部分及び反対側の内向き表面部分を有する履物用アッパーのニット物品であって、外向き表面は、第1の摩擦係数を有し、第1のヤーンを含む第1の領域と、及び第1の摩擦係数とは異なる第2の摩擦係数を有し、第2のヤーンを含む第2の領域と、を備え、第1の領域は、外向き表面部分の第1の部分域における第2の領域と第1の交互のパターンを形成し、第1の領域は、第1の部分域で外向き表面部分の総表面積の40%~80%となるように、該第1の交互のパターンを形成する、履物用アッパーのニット物品。
【0203】
[第12項] 第11項に記載の履物用アッパーのニット物品において、第1の領域(複数形)は、外向き表面部分の第2の部分域における第2の領域(複数形)と第2の交互のパターンを形成し、第1の領域(複数形)は、第2の部分域で外向き部分の総表面積の40%~80%となるように該第2の交互のパターンを形成する、履物用アッパーのニット物品。
【0204】
[第13項] 第12項に記載の履物用アッパーのニット物品において、第1の部分域は履物用アッパーのニット物品の内側部分にあり、また第2の部分域は履物アッパーのニット物品の外側部分にある、履物用アッパーのニット物品。
【0205】
[第14項] 第11~13のうちいずれか一項に記載の履物用アッパーのニット物品において、第1の交互のパターンは同心状のパターンである、履物用アッパーのニット物品。
【0206】
[第15項] 第11~13のうちいずれか一項に記載の履物用アッパーのニット物品において、第1の交互のパターンは、第1の領域(複数形)における第1の領域(単数形)と第2の領域(複数形)における第2の領域(単数形)との間で曲線状の境界、又は第1の領域(複数形)における第1の領域(単数形)と第2の領域(複数形)における第2の領域(単数形)との間で直線状の境界の少なくとも一方を含む、履物用アッパーのニット物品。
【0207】
[第16項] 第12~15のうちいずれか一項に記載の履物用アッパーのニット物品において、第1の領域(複数形)における第1の領域(単数形)は、各々がコアを有するインターループしたヤーンの熱成形ネットワークを含み、熱可塑性エラストマーが、コアの少なくとも一部を取り囲み、インターループしたヤーンの熱成形ネットワークにおけるヤーン相互間のスペースの少なくとも一部を占めることによって、インターループしたヤーンを合体させる、履物用アッパーのニット物品。
【0208】
[第17項] 第11~16のうちいずれか一項に記載の履物用アッパーのニット物品において、第1の部分域は、履物用アッパーのニット物品のつま先領域の少なくとも一部にわたって延在している、履物用アッパーのニット物品。
【0209】
[第18項] 第11~16のうちいずれか一項に記載の履物用アッパーのニット物品において、第1の部分域は、履物用アッパーのニット物品のつま先領域の少なくとも一部と、並びに履物用アッパーのニット物品の内側側面及び外側側面の少なくとも一部にわたって延在している、履物用アッパーのニット物品。
【0210】
[第19項] 第1の表面及び反対側の第2の表面を有するニット構成要素を製造する方法であって、第1のヤーン及び第2のヤーンをニット構成要素として編み上げるニッティングステップと、及びニット構成要素の第1の表面を熱成形するステップと、を備え、ニット構成要素の第1の表面は、第1の摩擦係数を有し、各々がコアを有するインターループしたヤーンの熱成形ネットワークを含む第1の領域であり、熱可塑性エラストマーが各コアの少なくとも一部を取り囲み、またインターループしたヤーンの熱成形ネットワークにおけるヤーン相互間のスペースの少なくとも一部を占めることによってインターループしたヤーンを合体させるようにした、該第1の領域と、及び第1の摩擦係数とは異なる第2の摩擦係数を有し、第2のヤーンを含む第2の領域と、を含み、第1の領域は、第1の表面の総表面積の40%~80%となるように、第2の領域と交互のパターンを形成する、方法。
【0211】
[第20項] 第19項に記載の方法において、第1の表面を熱成形するステップは、さらに、第1の表面の1つ又は複数の隆起部分を有する第1の表面を成形するステップを含み、1つ又は複数の隆起部分は、複数の第1の領域及び複数の第2の領域にわたって延在している、方法。
【0212】
本開示の態様は、限定的ではなく例示的であることを意図して記載されている。その範囲から逸脱しない代替的な態様は、当業者に明らかになるであろう。当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、前述の改良を実施する代替手段を開発し得る。
【0213】
特定の特徴及びサブコンビネーションは有用であり、他の特徴及びサブコンビネーションを参照することなく採用することができ、特許請求の範囲内で意図されることが理解されるであろう。様々な図に記載された全てのステップが、記載された特定の順序で実施される必要はない。
【0214】
特定の要素及びステップが互いに関連して論じられるが、本明細書で提供される任意の要素及び/又はステップは、本明細書で提供される範囲内でありながら、その明示的な規定にかかわらず、他の任意の要素及び/又はステップと組み合わせ可能であると意図されていることが理解される。その範囲から逸脱することなく、本開示の多くの可能な態様がなされ得るので、本明細書に記載され又は添付図面に示される全ての事項は、例示的なものとして解釈され、限定的な意味ではないことが理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面
(105)及び反対側の第2の表面を有するニット構成要素
(130)であって、前記ニット構成要素
(130)の前記第1の表面
(105)は、第1の摩擦係数を有する第1の領域
(108)であり、コア及びコーティングを有する第1のヤーン
(210)を含み、前記コーティングが前記コアを少なくとも部分的に取り囲んでいる、該第1の領域
(108)と、及び前記第1の摩擦係数とは異なる第2の摩擦係数を有し、
前記第1のヤーン(210)とは異なる第2のヤーン
(208)を含
み、前記第1の領域(108)とは異なる第2の領域
(106)と、を備え、前記第1の領域
(108)は前記第2の領域
(106)と交互のパターンを形成し、第1の領域は、前記第1の表面
(105)の総表面積の40%~80%であるように、該交互のパターンを形成
し、前記第1の摩擦係数は前記第2の摩擦係数よりも大きく、前記第2の領域の前記第2の摩擦係数は、前記第1の領域の前記第1の摩擦係数よりも約10%~約75%小さい範囲内である、ニット構成要素。
【請求項2】
請求項1に記載のニット構成要素
(130)において、前記コーティングは熱可塑性エラストマーを含む、ニット構成要素。
【請求項3】
請求項1に記載のニット構成要素
(130)において、前記第1の領域
(108)における第1の領域は、前記コア及び前記コーティングを含むインターループしたヤーンの熱成形ネットワークを含み、前記コーティングは、前記コアの少なくとも一部を取り囲み、また前記インターループしたヤーンの熱成形ネットワークにおけるヤーン相互間のスペースの少なくとも一部を占めることによって、前記インターループしたヤーンの熱成形ネットワークを合体させる、ニット構成要素。
【請求項4】
請求項1に記載のニット構成要素
(130)において、前記第1の摩擦係数及び前記第2の摩擦係数は動摩擦係数である、ニット構成要素。
【請求項5】
請求項1に記載のニット構成要素
(130)において、
前記第1のヤーン(210)は熱可塑性エラストマー組成物を含み、前記第2のヤーン(208)は熱可塑性材料を含み、また前記第2のヤーン
(208)は前記
第1ヤーン(210)のコーティングを
なす前記熱可塑性エラストマー組成物は含まない、ニット構成要素。
【請求項6】
請求項1に記載のニット構成要素
(130)において、前記交互のパターンは
、前記第1の領域及び前記第2の領域が同軸状で共通の中心を共有するよう同心状のパターンである、ニット構成要素。
【請求項7】
請求項1に記載のニット構成要素
(130)において、前記第1の領域
(108)における第1の領域及び前記第2の領域
(106)における第2の領域が前記交互のパターンで連続しており、前記第1の領域
(108)と前記第2の領域
(106)との間の境界が曲線状である、ニット構成要素。
【請求項8】
請求項1に記載のニット構成要素
(130)において、前記第1の領域
(108)における第1の領域及び前記第2の領域
(106)における第2の領域が前記交互のパターンで連続しており、前記第1の領域と前記第2の領域との間の境界が直線状である、ニット構成要素。
【請求項9】
請求項1に記載のニット構成要素
(130)において、前記第1の領域
(108)における第1の領域及び前記第2の領域
(106)における第2の領域が前記交互のパターンで連続しており、前記第1の表面
(105)の第1の隆起部分が、前記第1の領域及び前記第2の領域にわたって連続して延在し
、とくに、前記第1のヤーンのコーティングが熱成形されてインターループしたヤーンの熱成形ネットワークを形成し、また前記第1の表面(105)の第1の隆起部分が前記熱成形ネットワークの一部である、ニット構成要素。
【請求項10】
外向き表面部分
(105)及び反対側の内向き表面部分を有する履物用アッパー
(102)のニット物品であって、前記外向き表面
(105)は、第1の摩擦係数を有し、第1のヤーン
(210)を含む第1の領域
(108)と、及び前記第1の摩擦係数とは異なる第2の摩擦係数を有し、
前記第1ヤーン(210)とは異なる第2のヤーン(208)を含む第2の領域
(106)と、を備え、前記第1の領域
(108)は、前記外向き表面部分
(105)の第1の部分域における前記第2の領域
(106)と第1の交互のパターンを形成し、第1の領域は、前記第1の部分域で前記外向き表面部分
(105)の総表面積の40%~80%となるように、前記第1の交互のパターンを形成
し、また前記第1の摩擦係数は前記第2の摩擦係数よりも大きく、前記第2の領域の前記第2の摩擦係数は、前記第1の領域の前記第1の摩擦係数よりも約10%~約75%小さい範囲内である、履物用アッパーのニット物品。
【請求項11】
請求項
10に記載の履物用アッパー
(102)のニット物品において、前記第1の領域
(108)及び前記第2の領域
(106)は、前記外向き表面部分
(105)の第2の部分域において第2の交互のパターンを形成し、前記第1の領域は、前記第2の部分域で前記外向き表面部分
(105)の総表面積の40%~80%となるように、前記第2の交互のパターンを形成する、履物用アッパーのニット物品。
【請求項12】
請求項
11に記載の履物用アッパー
(102)のニット物品において、前記第1の部分域は前記履物用アッパー
(102)のニット物品の内側部分にあり、また前記第2の部分域は前記履物用アッパー
(102)のニット物品の外側部分にある、履物用アッパーのニット物品。
【請求項13】
請求項
12に記載の履物用アッパー
(102)のニット物品において、前記第1の交互のパターンは同心状のパターンである、履物用アッパーのニット物品。
【請求項14】
請求項
12に記載の履物用アッパー
(102)のニット物品において、前記第1の交互のパターンは、前記第1の領域
(108)における第1の領域と前記第2の領域
(106)における第2の領域との間で曲線状の境界、又は前記第1の領域
(108)における前記第1の領域と前記第2の領域
(106)における前記第2の領域との間で直線状の境界の少なくとも一方を含む、履物用アッパーのニット物品。
【請求項15】
請求項
10に記載の履物用アッパー
(102)のニット物品において、前記第1の領域
(108)における第1の領域は、各々がコアを有するインターループしたヤーンの熱成形ネットワークを含み、熱可塑性エラストマーが、前記コアの少なくとも一部を取り囲み、前記インターループしたヤーンの熱成形ネットワークにおけるヤーン相互間のスペースの少なくとも一部を占めることによって、前記インターループした単数形を合体させる、履物用アッパーのニット物品。
【請求項16】
請求項
10に記載の履物用アッパー
(102)のニット物品において、前記第1の部分域は、前記履物用アッパーのニット物品のつま先領域の少なくとも一部にわたって延在している、履物用アッパーのニット物品。
【請求項17】
請求項
10に記載の履物用アッパー
(102)のニット物品において、前記第1の部分域は、前記履物用アッパーのニット物品のつま先領域の少なくとも一部と、並びに前記履物用アッパーのニット物品の内側側面及び外側側面の少なくとも一部にわたって延在している、履物用アッパーのニット物品。
【請求項18】
第1の表面
(105)及び反対側の第2の表面を有するニット構成要素
(130)を製造する方法であって、第1のヤーン
(210)及び第2のヤーン
(208)を前記ニット構成要素
(130)として編むニッティングステップと、及び前記ニット構成要素
(130)の前記第1の表面
(105)を熱成形するステップと、を備え、前記ニット構成要素
(130)の前記第1の表面
(105)は、第1の摩擦係数を有し、各々がコアを有するインターループしたヤーンの熱成形ネットワークを含む第1の領域であり、熱可塑性エラストマーが各コアの少なくとも一部を取り囲み、またインターループしたヤーンの熱成形ネットワークにおけるヤーン相互間のスペースの少なくとも一部を占めることによって、前記インターループしたヤーンを合体させるようにした、該第1の領域
(108)と、及び前記第1の摩擦係数とは異なる第2の摩擦係数を有し、前記第2のヤーン
(208)を含む第2の領域
(106)と、を備え、前記第1の領域
(108)は、前記第1の表面
(105)の総表面積の40%~80%となるように、前記第2の領域
(106)と交互のパターンを形成
し、前記第1の摩擦係数は前記第2の摩擦係数よりも大きく、前記第2の領域の前記第2の摩擦係数は、前記第1の領域の前記第1の摩擦係数よりも約10%~約75%小さい範囲内である、方法。
【請求項19】
請求項
18に記載の方法において、前記第1の表面を熱成形するステップは、さらに、前記第1の表面の1つ又は複数の隆起部分を有する前記第1の表面を成形するステップを含み、前記1つ又は複数の隆起部分は、複数の前記第1の領域及び複数の前記第2の領域にわたって延在し
、前記1つ又は複数の隆起部分はインターループしたヤーンの熱成形ネットワークの一部である、方法。
【国際調査報告】