(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、積層体、硬化物、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/029 20060101AFI20240920BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240920BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20240920BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20240920BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G03F7/029
G03F7/004 501
G03F7/031
G03F7/038 501
H05K1/03 610H
H05K1/03 610R
H01L21/312 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516592
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2022122745
(87)【国際公開番号】W WO2023051726
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111161250.X
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507149350
【氏名又は名称】太陽油墨(蘇州)有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAIYO INK(SUZHOU)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.26TaishanRoad,Suzhou New District,Suzhou City,Jiangsu 215129China
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】工藤 知哉
(72)【発明者】
【氏名】リュ チュァン
(72)【発明者】
【氏名】プー グゥォビン
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】シュ ホンジン
【テーマコード(参考)】
2H225
5F058
【Fターム(参考)】
2H225AC43
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC54
2H225AC58
2H225AD02
2H225AD07
2H225AE14P
2H225AE15P
2H225AN34P
2H225AN36P
2H225AP09P
2H225AP10P
2H225AP11P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA12
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
5F058AA10
5F058AC07
5F058AC10
5F058AF04
5F058AG01
(57)【要約】
【課題】深部硬化性に優れ、アウトガスの発生が抑制され、かつ絶縁信頼性、解像性といった物性にも優れる硬化性樹脂組成物、積層体、硬化物、及び電子部品を提供する。
【解決手段】(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)無機充填剤、(C)熱硬化性樹脂、(D)光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物であって、前記(D)光重合開始剤として、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)無機充填剤、(C)熱硬化性樹脂、(D)光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(D)光重合開始剤として、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含むことを特徴とした硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)光重合開始剤が、(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤の配合量が、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤の配合量に対して、3質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)光重合開始剤が、室温で液体状の光重合開始剤のみからなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)カルボキシル基含有樹脂が、フェノール骨格を有さないものであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)無機充填剤の配合量が、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して40質量%以上、55質量%以下であることを特徴とした請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を樹脂層として有することを特徴とする積層体。
【請求項8】
請求項1~6に記載の硬化性樹脂組成物、または、請求項7に記載の積層体の樹脂層を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物を備える電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、積層体、硬化物、及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は小型化、高性能化の要求に伴い、搭載される半導体チップの高密度化、高機能化が進み、半導体チップを実装するプリント配線板も小型高密度化が要求されている。その結果、最近では、プリント配線板に用いられる絶縁材料にもさらなる微細化、高性能化が求められている。
【0003】
このような絶縁材料としては、特許文献1に記載のように、ビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂、エチレン性不飽和結合を1分子中に1つ以上含む不飽和化合物、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びエポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物などが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の感光性樹脂組成物では、深部硬化性が十分ではなく、微細パターンを形成することができなかった。また、特にパッケージ基板などの高性能な基板に使用される絶縁材料には、絶縁信頼性、アウトガスの抑制といった特性にもより優れることが求められており、従来の感光性樹脂組成物では十分でなかった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであり、その目的は、深部硬化性やアウトガスの抑制、解像性を両立することができ、かつ絶縁信頼性にも優れた硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)無機充填剤、(C)熱硬化性樹脂、(D)光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物において、(D)光重合開始剤として、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を使用することにより、深部硬化性に優れ、アウトガスの発生が抑制され、かつ絶縁信頼性、解像性といった物性にも優れる硬化性樹脂組成物を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記のとおりである。
[項1](A)カルボキシル基含有樹脂、(B)無機充填剤、(C)熱硬化性樹脂、(D)光重合開始剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物であって、
前記(D)光重合開始剤として、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物。
[項2]前記(D)光重合開始剤が、(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤をさらに含むことを特徴とする項1に記載の硬化性樹脂組成物。
[項3]前記(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤の配合量が、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤の配合量に対して、3質量%以上30質量%以下であることを特徴とする項2に記載の硬化性樹脂組成物。
[項4]前記(D)光重合開始剤が、室温で液体状の光重合開始剤のみからなることを特徴とする項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[項5](A)カルボキシル基含有樹脂が、フェノール骨格を有さないものであることを特徴とする項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[項6]前記(B)無機充填剤の配合量が、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して40質量%以上、55質量%以下であることを特徴とした項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[項7]項1~6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を樹脂層として有することを特徴とする積層体。
[項8]項1~6に記載の硬化性樹脂組成物、または、項7に記載の積層体の樹脂層を硬化させたことを特徴とする硬化物。
[項9]項8に記載の硬化物を備える電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、深部硬化性に優れ、アウトガスの発生が抑制され、かつ絶縁信頼性、解像性、にも優れ、さらに反射率、泡抜け性にも優れる硬化性樹脂組成物、それを使用した積層体、硬化物、及び電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)無機充填剤、(C)熱硬化性樹脂、(D)光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物であって、前記(D)光重合開始剤として、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含むことを特徴とした硬化性樹脂組成物である。
【0011】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物の各成分について詳述する。
【0012】
(A)カルボキシル基含有樹脂
カルボキシル基含有樹脂は、カルボキシル基が含まれることによりアルカリ現像性とすることができる。(A)カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種カルボキシル基含有樹脂を使用できる。また、光硬化性や耐現像性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを使用してもよい。
【0013】
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0014】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0015】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0016】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0017】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0018】
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0019】
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0020】
(7)多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
【0021】
(8)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
【0022】
(9)多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0023】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0024】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0025】
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0026】
(13)アミド構造およびイミド構造の少なくともいずれかを有するカルボキシル基含有樹脂。
【0027】
(14)上記(1)~(13)等に記載のカルボキシル基含有樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有樹脂。
【0028】
(A)カルボキシル基含有樹脂は、分子中にカルボキシル基を有している樹脂であれば、樹脂骨格は特に限定されないが、絶縁信頼性、反射率、耐熱変色性のさらなる向上の点から、好ましくはフェノール骨格を有さないものである。フェノール骨格がカルボキシル基含有樹脂内に含まれない場合、熱劣化による着色が生じにくいため、反射率が向上する傾向がある。フェノール骨格とは、1つまたは複数のフェノール性ヒドロキシ基を持つ芳香族類化合物由来の骨格である。
【0029】
上記カルボキシル基含有樹脂のうち、上記(1)、(7)、(8)、(10)、(11)、(14)に記載のカルボキシル基含有樹脂の少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。更なる絶縁信頼性を向上させる観点からは上記(1)または(1)を用いた(14)に記載のカルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。
【0030】
(A)カルボキシル基含有樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせた混合物を用いてもよい。
【0031】
(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20~120mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、より好ましくは30~100mgKOH/gの範囲である。(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価を上記範囲とすることで、良好にアルカリ現像が可能となり、良好な硬化物のパターンを形成することができる。
【0032】
(A)カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上の場合、乾燥塗膜のタックフリー性、露光後の塗膜の耐湿性、解像性が良好である。一方、重量平均分子量が150,000以下の場合、現像性と、貯蔵安定性が良好である。より好ましくは5,000~100,000である。
【0033】
上記したような(A)カルボキシル基含有樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、好ましくは5~80質量%、より好ましくは10~70質量%、さらに好ましくは20~60質量%である。5~80質量%の場合、塗膜強度が良好であり、組成物の粘性が適度で、塗布性等を向上できる。
(B)無機充填剤
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(B)無機充填剤を含む。(B)無機充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(B)無機充填剤の配合量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して35~60質量%の範囲が好ましく、40~55質量%の範囲がより好ましい。(B)無機充填剤の配合量が40質量%以上であれば、はんだ耐熱性、アウトガスの抑制、絶縁信頼性、反射率、耐熱変色性に一層優れた硬化性樹脂組成物を得る傾向がある。(B)無機充填剤の配合量が55質量%以下であれば、泡抜け性、解像性、深部硬化性に一層優れた硬化性樹脂組成物を得る傾向がある。
【0036】
(B)無機充填剤としては、例えば、酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、ノイブルグ珪土、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。中でも酸化チタン、シリカ、硫酸バリウムのうち少なくともいずれか1種を含むことが好ましく、硬化性樹脂組成物の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度、反射率などの特性を向上させることができる。そのうち、反射率の点から、酸化チタンを少なくとも含むことが特に好ましい。
【0037】
本発明の硬化性樹脂組成物に使用しえる酸化チタンとしては、硫酸法、塩素法により製造されるものや、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、あるいは含水金属酸化物による表面処理、有機化合物による表面処理を施した酸化チタンを用いることができる。酸化チタンは結晶構造によりルチル型とアナターゼ型に分類される。それらのうち、ルチル型酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型と比較して白色度が高いためによく使用される。しかしながら、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒活性を有するために、硬化性樹脂組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型と比較して若干劣るものの、光活性を殆ど有さないために、安定した硬化物を得ることができる。
【0038】
(B)無機充填剤が酸化チタンを含む場合、酸化チタンによる反射率向上効果と解像性とのバランスを果たす点から、酸化チタンの配合量は、硬化性樹脂組成物の全固形分量に対して、1質量%以上55質量%以下が好ましく、1.5質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0039】
(B)無機充填剤の平均粒子径は50μm以下であることが好ましく、平均粒子径0.1~25μmであることがより好ましく、平均粒子径0.2~10μmであることが特に好ましい。ここで平均粒子径とは、無機充填剤単体もしくは無機充填剤分散液の平均粒子径である。また一部平均粒子径100nm以下のナノフィラーも併用してもよい。ここで、本明細書において、無機充填剤の平均粒子径は、一次粒子の粒径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒径も含めた体積平均粒子径(D50)である。前記平均粒子径は、平均粒子径に合わせてマイクロトラック・ベル社製のMicrotrac MT3300EXIIなどのレーザー回折法による測定装置や、マイクロトラック・ベル社製のNanotrac Wave II UT151)などの動的光散乱法による測定装置を用いて測定することができる。
【0040】
また、(B)無機充填剤は、表面処理されたフィラー(表面処理フィラー)であってもよい。(B)無機充填剤の表面処理は特に限定されるものではなく、シラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコアルミネート系等のカップリング剤による表面処理や、アルミナ処理等の有機基を導入しない表面処理等、公知慣用の方法を用いることができる。
【0041】
(B)無機充填剤として、市販されているものを使用してもよい。酸化チタンの市販品として、富士チタン工業(株)製TR-600、TR-700、TR-750、TR-840、石原産業(株)製R-550、R-580、R-630、R-820、CR-50、CR-58、CR-60、CR-90、CR-97、チタン工業(株)製KR-270、KR-310、KR-380等などが挙げられます。
硫酸バリウムの市販品としては、堺化学社製B-30、B-31、B-32、B-33、B-34、B-35、B-35T等が挙げられる。
シリカの市販品としては、SE-40(トクヤマ製)、MSV25G(龍森製)、MLV-2114(龍森製)、SO-E5(アドマテックス製)、SO-E2(アドマテックス製)等が挙げられる。
(C)熱硬化性樹脂
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(C)熱硬化性樹脂を含む。(C)熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、メラミン誘導体などを使用することができる。(C)熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(C)熱硬化性樹脂としては、深部硬化性に優れ、アウトガスの発生が抑制され、かつ絶縁信頼性、耐熱変色性といった物性にも優れる硬化性樹脂組成物を得る観点から、エポキシ樹脂を含有することが好適である。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、アミノフェノール型、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂等の公知慣用のエポキシ樹脂を好適に用いることができる。
【0044】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物においては、これらエポキシ樹脂を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。また、液体状エポキシ樹脂を用いてもよく、固形のエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0045】
(C)熱硬化性樹脂の市販品としては、例えば、三菱ケミカル(株)製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC(株)製のEPICLON840、EPICLON850、EPICLON1050、EPICLON2055、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のエポトートYD-011、YD-013、YD-127、YD-128、Nan Ya Plastics社製のNPEL-128E(何れも商品名)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のjERYL903、DIC(株)製のEPICLON152、EPICLON165、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のエポトートYDB-400、YDB-500(何れも商品名)等のブロム化エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のjER152、jER154、DIC(株)製のEPICLON N-730、EPICLON N-770、EPICLON N-865、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のエポトートYDCN-701、YDCN-704、日本化薬(株)製のEPPN-201、EOCN-1025、EOCN-100、EOCN-104S、RE-306(何れも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;DIC(株)製のEPICLON830、三菱ケミカル社製のjER807、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のエポトートYDF-170、YDF-175、YDF-2004(何れも商品名)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のエポトートST-2004、ST-2007、ST-3000(何れも商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のjER604、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のエポトートYH-434、住友化学(株)製のスミエポキシELM-120(何れも商品名)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;(株)ダイセル製のセロキサイド2021(商品名)等の脂環式エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のYL-933、日本化薬(株)製のEPPN-501、EPPN-502(何れも商品名)等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬(株)製のEBPS-200、(株)ADEKA製のEPX-30、DIC(株)製のEXA-1514(何れも商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のjER YL-931(商品名)等のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学(株)製のTEPIC(商品名)等の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂(株)製のブレンマーDGT(商品名)等のジグリシジルフタレート樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のZX-1063(商品名)等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のESN-190、ESN-360、DIC(株)製のHP-4032、EXA-4750、EXA-4700(何れも商品名)等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC(株)製のHP-7200、HP-7200H(何れも商品名)等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂(株)製のCP-50S、CP-50M(何れも商品名)等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂等が挙げられ、これらエポキシ化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(C)熱硬化性樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して通常1~50質量%、より好ましくは5~35質量%である。
(D)光重合開始剤
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(D)光重合開始剤として、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含む。(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を配合することにより、深部硬化性に優れ、アウトガスの発生が抑制され、かつ解像性、はんだ耐熱性、絶縁信頼性、反射率、耐熱変色性にも優れた硬化性樹脂組成物を得ることが出来る。
【0047】
(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤は、1分子中に3つ以上のアシルフォスフィン骨格を有する光重合開始剤であり、下記の式Iで示されるものが好ましい。
ここで、
Aは、相互に独立して、O、SまたはNR
3を表す;
Gは、多官能化合物(コア)G-(A-H)
m+nの残基、ここで、A-Hは,それぞれ、アルコール性水酸基またはアミノ基或いはチオール基を表す;
m及びnは、m+nが、3~10の間の数であることを満たし;
mは、3~8の間の数である;
R
1及びR
2は、それぞれ、独立して、C
1-C
18のアルキル基、C
6-C
12のアリール基及びC
5-C
12のシクロアルキル基であり、それぞれ、1個以上の酸素及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換又は非置換イミノ基が介在しているか、又は介在していない、又は酸素及び/又は窒素及び/又は硫黄原子を含む5員~6員複素環式基であっても良い。ただし、前記R
1及びR
2は、それぞれ、アリール、アルキル、アリルオキシ、アルコキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されていてもよい;
R
2は、R
1-(C=O)-でもよい;
Yは、O又はSである;
R
3は、水素又はC
1~C
4のアルキル基である;
ただし、式(I)の光重合開始剤は、光硬化性エチレン系不飽和基を含まない。
【0048】
好ましくは、式(I)において、m+nは、3~8の間の数で、より好ましくは3~6の間の数である。
【0049】
好ましくは、式(I)において、mは、3~6の間の数で、より好ましくは3~5の間の数である。
【0050】
nがゼロでない場合、式(I)の化合物は、アルコール性ヒドロキシル基及び/又はアミノ基及び/又はチオール基を有している。
【0051】
本発明の一態様において、式(I)において、Aは酸素のみである。この場合、G-(A-H)m+nは、多水酸基(ポリヒドロキシ)化合物であって、単量体、オリゴマー、及び高分子ポリオール、並びにそれらの混合物から成る群から選択される。
【0052】
本発明の別の態様において、式(I)において、Aは、単独で、硫黄である。この場合、G-(A-H)m+nは、ポリチオール化合物である。
【0053】
本発明の更に別の態様において、式(I)において、Aは、単独で、窒素である。この場合、G-(A-H)m+nは、線状又は分枝ポリアミンである。
【0054】
式(I)において、Aは、酸素及び/又は窒素原子及び/又は硫黄の混合である。この場合、G-(A-H)m+nは、異なる官能基、例えば、アミノ基及びヒドロキシ基を含む化合物である。
【0055】
好ましくは、G-(A-H)m+nは、1500以下、より好ましくは800以下、更に好ましくは500以下の数平均分子量を有している。
【0056】
式(1)に包含される代表的な3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を表1に示す。これらのうち、PI-3、PI-4、PI-10、PI-11、PI-12、PI-14、PI-17が特に好ましい。このような3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含むことで、アウトガスが抑制され、絶縁信頼性にさらに優れる硬化物を得ることができる。
【0057】
【0058】
表1中のa、b、c及びdはそれぞれ独立した数であり、3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤の数平均分子量を所望の値とするために適宜選択される。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
このような3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤は、例えば特許6599446号に記載の方法によって製造することができる。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(D)光重合開始剤として、好ましくは(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤をさらに含む。(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤と(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤との組み合わせにより、絶縁信頼性、反射率に一層優れた硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0061】
前記(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤の配合量が、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤の配合量に対して、好ましく3質量%以上35質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上30質量%以下である。前記(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤の配合量が3質量%以上であれば、硬化性樹脂組成物の硬化物の表面硬化性、絶縁信頼性、反射率が更に向上する。前記(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤の配合量が30質量%以下であれば、表面硬化性、解像性、深部硬化性、絶縁信頼性、反射率が更に向上する。
(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。
市販品としては、IGM RESINS B.V.社製のOmnirad184、Omnirad1173、Omnirad2959、Omnirad127等が挙げられる。
【0062】
前記(D)光重合開始剤としては、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤及び(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤以外に、ほかの光重合開始剤を使用してもよい。そのほかの光重合開始剤は、通常に硬化性樹脂組成物に用いられるものであれば特に制限はない。
【0063】
そのほかの光重合開始剤として、例えば、モノアシルフォスフィン系光重合開始剤、ビスアシルフォスフィン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、N,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヘラーケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-モルホリノフェノン)-ブタノン-1,2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等などが挙げられる。
【0064】
前記(D)光重合開始剤が、室温で液体状の光重合開始剤のみからなることが好ましい。固体状の光重合開始剤を使用した場合と比較して、液体状の光重合開始剤のみを使用した場合、硬化性樹脂組成物の硬化物の表面硬化性がさらに向上することが発見されました。ここで、室温とは、25°Cを指す。室温で液状の光重合開始剤としては、例えばIGM RESINS B.V.社製のOmnipol TP、Omnirad 1173、Omnirad MBF、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン等が挙げられる。
他の成分
【0065】
本発明の硬化性樹脂組成物において、分子中にエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーを配合してもよい。
【0066】
前記の硬化性樹脂組成物に使用しえる前記光重合性モノマーは、活性エネルギー線照射により、光硬化して、本発明の樹脂組成物を、アルカリ水溶液に不溶化、又は不溶化を助けるものである。このような光重合性モノマーとしては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
【0067】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが、挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0068】
このような分子中にエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーを含む場合には、その配合量は、前記(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1~50質量部、より好ましくは、5~30質量部の割合である。前記配合量が、1質量部以上の場合、光硬化性が高くなり、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像により、パターン形成やすくなる。一方、50質量部以下の場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下せず、塗膜強度が良好となる。
【0069】
本発明の硬化性組成物において、前記の光重合性モノマーを配合した場合、これらの光重合性モノマー及び光重合開始剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
【0070】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、組成物の調製や粘度調整のために用いられる有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。
【0071】
このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、酸化防止剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0073】
本発明のもう一つの形態は、上記の硬化性樹脂組成物を樹脂層として有する積層体を提供する。例えば、第1フィルム(支持体)と、該第1フィルム上に形成された上記硬化性樹脂組成物からなる層とを備えた積層体の形態としてもよい。
【0074】
積層体化に際しては、本発明の硬化性樹脂組成物を前記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で第1フィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して、乾燥塗膜としての樹脂層とすることができる。樹脂層の膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10~150μm、好ましくは20~60μmの範囲で適宜選択される。
【0075】
第1フィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。第1フィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10~150μmの範囲で適宜選択される。
【0076】
この場合、第1フィルム上に樹脂層を形成した後、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面にさらに、剥離可能な第2フィルムを積層することが好ましい。剥離可能な第2フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、第2フィルムを剥離する際に、樹脂層と第2フィルムとの接着力が、樹脂層と第1フィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0077】
本発明のもう一つの形態は、前記の硬化性樹脂組成物又はその積層体から得られる硬化物を提供する。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて塗布方法に適した粘度に調整し、これを例えば、回路形成されたプリント配線板にスクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の方法により塗布し、必要に応じて例えば60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。その後、得られた塗膜又は前記積層体の樹脂層を、必要に応じて、所定の露光パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線照射により露光し、未露光部を現像液により現像してレジストパターンを形成する。さらに、例えば140~180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、高反射率で優れた変色耐性や耐熱性、柔軟性を有する硬化物が電子部品における絶縁膜として得られる。
【0079】
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥や、熱硬化のための加熱は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法及びノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0080】
本発明のもう一つの形態は、前記の硬化物を有する電子部品を提供する。このような電子部品は、例えば携帯端末、パソコン、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライト、LED等の発光素子に使用される。
【実施例】
【0081】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0082】
実施例1~11および比較例1~3の硬化性樹脂組成物を、表2~3に示した各成分を、そこに示す配合比(質量基準、希釈溶媒を含む)で混合することにより得た。
【0083】
【0084】
【0085】
備考:
A-1 合成例1のカルボキシル基含有樹脂溶液(固形分39%)
A-2 合成例2のカルボキシル基含有樹脂溶液(固形分64%)
B-1 CR-97、石原産業社、酸化チタン(固形分100%)
B-2 SiO2(固形分100%)アドマテックス社製 SO-E2
B-3 BaSO4(固形分100%)堺化学工業社製バリエースB-30
C-1 NPEL-128E、Nan Ya Plastics社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形分100%)
C-2 N-770-75EA、DIC社製、フェノールノボラック型の多官能エポキシ樹脂(固形分75%)
D-1 合成例3の光重合開始剤、表1のPI-3の構造で表される3官能以上のアシルフォスフィンオキサイド型、室温で液体状の光重合開始剤
D-2 合成例4の光重合開始剤、表1のPI-4の構造で表される3官能以上のアシルフォスフィンオキサイド型、室温で液体状の光重合開始剤
D-3 2-Hydroxy-2-methyl-1-phenylpropanone、室温で液体状の光重合開始剤
D-4 1-hydroxycyclohexyl-phenyl ketone、室温で固体状の光重合開始剤
D-5 Omnirad 369、2-Benzyl-2-(dimethylamino)-1-[4-(4-morpholinyl)phenyl]-1-butanone、室温で固体状の光重合開始剤、IGM RESINS B.V.社製
D-6 Omnirad 819、phenylbis(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphine oxide、室温で固体状の光重合開始剤、IGM RESINS B.V.社製
【0086】
合成例1(フェノール骨格を有さないカルボキシル基含有樹脂の合成)
温度計、撹拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル900.0部を110℃まで加熱し、メタクリル酸174.0部、ε-カプロラクトン変性メタクリル酸(平均分子量314)174.0部、メタクリル酸メチル77.0部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル222.0部、および重合触媒としてt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日本油脂社製パーブチルO)12.0部の混合物を、3時間かけて滴下し、さらに110℃で3時間攪拌し、重合触媒を失活させて、樹脂溶液を得た。
この樹脂溶液を冷却後、ダイセル社製サイクロマーA200(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート)を289.0部、トリフェニルホスフィン3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.3部を加え、100℃に昇温し、攪拌することによってエポキシ基の開環付加反応を行い、フェノール骨格を有さないカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
このようにして得られた樹脂溶液は、重量平均分子量(Mw)が15,000で、かつ、固形分が39%、固形物の酸価が79.8mgKOH/gであった。
なお、得られたカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、島津製作所社製ポンプLC-6ADと、昭和電工社製カラムShodex(登録商標)KF-804、KF-803、KF-802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0087】
合成例2(フェノール骨格を有するカルボキシル基含有樹脂の合成)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート600gにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔DIC株式会社製、EPICLON N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6〕1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。
次いで、トリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に、芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415g、テトラヒドロ無水フタル酸456.0g(3.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却し、フェノール骨格を有するカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
このようにして得られた樹脂溶液の固形分は64%、固形分の酸価は89mgKOH/gであった。
【0088】
合成例3(PI-3の光重合開始剤の合成)
150mlのジクロロメタン、3.49gのトリエチルアミン、及び5.31gのフェニル(2、4、6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンクロライドから成る溶液を、窒素雰囲気下、50℃に加熱した。1.5gのAionico GL/609(エトキシ化グリセロール、Lamberti S.p.A)を添加し、溶液を2時間攪拌した。得た反応混合物を、室温に冷却し、10mlの脱イオン水を添加した。有機相を分離し、NaHCO3の飽和水溶液100mlで3回洗浄し、100mlの水で2回洗浄し、Na2SO4の上で乾燥した。減圧下で溶媒を除去し、粘ちょう液体の光重合開始剤2.99gを得た。
【0089】
合成例4(PI-4の光重合開始剤の合成)
70mlのトルエン、2.44gのトリエチルアミン、及び3.5gのフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンクロライドから成る溶液を、窒素雰囲気下、50℃に加熱した。3gのSorbilene RE/20(エトキシ化ソルビトールソエ、Lamberti S.p.A)を添加し、溶液を1時間攪拌した。得た反応混合物を、室温に冷却し、50mlの脱イオン水を添加した。有機相を分離し、NaHCO3の飽和水溶液50mlで1回洗浄し、500mlの水で2回洗浄し、最後に、Na2SO4の上で乾燥した。減圧下で溶媒を除去し、粘ちょう液体の光重合開始剤2.1gを得た。
【0090】
特性試験
評価基板Aの作製
上記実施例および比較例の硬化性樹脂組成物を、バフ研磨により前処理した銅張積層板上に、スクリーン印刷で全面塗布し、80℃で30分間乾燥し、室温まで冷却し、厚さ40μmの樹脂層を形成した。樹脂層に対し、LED光源搭載のDI露光機(SCREEN社製 Ledia6)を用いて、385nm光源出力100%で1000mJ/cm2の露光量で全面露光し、30℃の1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、スプレー圧0.15MPaの条件で50秒間現像を行った。その後、150℃に調整された熱風循環式乾燥炉にて樹脂層を60分間硬化させ(ポストキュア)、評価基板Aを得た。
【0091】
評価基板Bの作成
上記実施例および比較例の硬化性樹脂組成物を、バフ研磨により前処理したFR-4基板上に、スクリーン印刷で全面塗布し、熱風循環式乾燥炉にて80℃で30分間乾燥し、室温まで冷却し、厚さ40μmの樹脂層を形成した。樹脂層にの表面を、ライン/スペース(L/S)が30μm/30μm 、40μm/40μm、50μm/50μm、60μm/60μm、70μm/70μm、80μm/80μm、90μm/90μm、100μm/100μm、200μm/200μmのパターンが形成されたネガフィルムで被覆し、LED露光機(SCREEN社製 Ledia6)を用いて385nm光源出力100%で1000mJ/cm2の露光量にてネガフィルムを介して樹脂層を露光した。その後、30℃の1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、スプレー圧0.15MPaの条件で50秒間現像を行った。その後、150℃に調整された熱風循環式乾燥炉にて樹脂層を60分間硬化させ(ポストキュア)、評価基板Bを得た。
【0092】
(1)泡抜け性評価
銅厚105μm、L/Sが40μm/300μm、回路長さが2cmの直線パターンを有する両面プリント基板の一方の表面に、前処理としてバフ研磨を行った後、水洗し十分に水を乾燥させた。
次に、上記実施例および比較例の硬化性樹脂組成物を、スクリーン印刷法により、乾燥後の両面プリント基板の前処理を行った面の全面に、硬化後の膜厚が120μmとなるように、パターンと平行な方向に塗布した。30分間室温で静置した後、熱風循環式乾燥炉にて80℃で30分乾燥させ、泡抜け性評価基板を作成した。泡抜け性評価基板を20倍の光学顕微鏡で観察し、回路と回路の間の気泡の数を数え、気泡の数により、以下のように泡抜け性を評価した。
◎:100μm以上の気泡が5個以下
〇:100μm以上の気泡が5個超10個以下
【0093】
(2)表面状態評価
評価基板Aの樹脂表面を光学顕微鏡を用いて40倍の倍率で観測し、10cm×10cmの範囲内に存在する表面の傷や現像食われの有無を確認した。評価基準は下記の通り。
◎:傷や現像食われは発生しなかった。
〇:現像食われは発生しないが、10個未満の傷が確認された。
×:現像食われが発生、または10個以上の傷が確認された。
表面状態評価の結果が優れる硬化性樹脂組成物は、表面硬化性に優れる。
【0094】
(3)解像性評価
評価基板Bについて、基板に残存している最小設計ライン幅を目視確認し、これにより以下の基準にて解像性の評価を行った。
◎:最小設計ライン幅70μm以下までラインが残っている
〇:最小設計ライン70μm超、90μm以下までラインが残っている
×:設計ライン幅90μm超の場合でも、ラインが全く残っていない
【0095】
(4)耐熱変色性評価
上記評価基板Aについてコニカミノルタ社製分光測色計CM-2600dを用いて硬化塗膜のL*a*b*を測定した。その後200℃で加熱処理(すなわち加速劣化)を1時間行い、同様の方法でL*a*b*を測定した。測定した値から下記の式によりΔE*abを算出した。
ΔE*ab=((L*
2-L*
1)2+(a*
2-a*
1)2+(b*
2-b*
1)2)0.5
(式中、L*
1、a*
1、b*
1は、各々加熱処理前のL*、a*、b*の値を表し、L*
2、a*
2、b*
2は、各々加熱処理後のL*、a*、b*の値を表す。)
ここで、ΔE*abは、L*a*b*表色系において初期値と加速劣化後の差を算出したもので、数値が大きいほど、変色が起こりやすく、耐熱変色性が低いことを示す。
評価基準は以下の通り
◎:ΔE*abが2未満
〇:ΔE*abが2以上4未満
×:ΔE*abが4以上
【0096】
(5)深部硬化性
評価基板Bについて、基板に残存しているライン幅200μmの断面を光学顕微鏡にて観測し、その開口Topの幅とBottomの幅の差異から下記の評価基準にて開口形状を評価した。
◎:(開口Bottom幅)-(開口Top幅)が80μm未満
〇:(開口Bottom値)-(開口Top値)が80μm以上100μm未満
×:(開口Bottom値)-(開口Top値)が100μm以上
開口Top値の幅とBottomの幅の差異が小さいほど深部硬化性に優れた硬化性樹脂組成物であることを表す。なお比較例1、3においては200μmのラインが残存していないため、深部硬化性は評価できず、×評価とした。
【0097】
(6)はんだ耐熱性
評価基板Aについて、ロジン系フラックスを硬化物表面へ塗布した後、260℃のはんだ槽へ20秒間、数回浸漬させた。浸漬後、基板が室温になるまで放冷し、再度はんだ槽へ浸漬した。浸漬を複数回行った後、変性アルコールにより、フラックスを洗浄した後の外観を目視により観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:はんだ槽への浸漬を4回以上おこなっても、硬化物の剥離が観察されなかった。
〇:はんだ槽への浸漬を2回おこなっても、硬化物の剥離が観察されなかったが、4回行うと硬化物の剥離が観察される。
×:はんだ槽への浸漬を2回おこなうと、硬化物の剥離が観察された。
【0098】
(7)アウトガス
評価基板Aについて、形成した硬化物より粉末サンプルを採取し、ゲステル社製加熱脱着装置(TDU)に入れた後、260℃の熱抽出温度で10分間加熱し、発生したアウトガス成分を液体窒素を用いて-60℃で捕集した。捕集されたアウトガス成分はアジレントテクノロジー社製ガスクロマトグラフィー質量分析装置(6890N/5973N)で分離分析を行い、n-ドデカン換算で定量し、実施例1のアウトガス量を100質量%として、以下の基準で評価した。
◎:アウトガス成分が150質量%以下
〇:アウトガス成分が150質量%超、250質量%以下。
×:アウトガス成分が250質量%超
【0099】
(8)絶縁信頼性
L/S=100μm/100μmのクシ型電極が形成された基板をバフ研磨により前処理した後に、前記実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷した後、熱風循環式乾燥炉にて80℃で30分乾燥し、厚さ40μmの樹脂層を形成した。熱風循環式乾燥炉にて150℃で60分間加熱して、樹脂層の硬化物を形成し、絶縁信頼性評価基板を作成した。評価基板を、85℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、電圧3.5Vを印可し、槽内絶縁信頼性試験を行った。硬化物の種々の時間経過時の槽内絶縁抵抗値を下記の判断基準に従い評価した。
◎:800時間経過後、107Ω以上
〇:500時間経過後、107Ω以上だが、800時間経過時、107Ω未満
×:500時間経過時、107Ω未満
【0100】
(9)反射率
評価基板Aについて、得られた硬化物の450nmにおける反射率をコニカミノルタ株式会社製、分光測色計CM-2600dを用いて測定し、下記の判断基準に従い評価した。
◎:反射率75%以上
〇:反射率70%以上、75%未満
×:反射率70%未満
【0101】
前記各評価試験の結果を上記の表2~3にまとめて示す。
【0102】
表2~3から明らかなように、(D)光重合開始剤として(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を使用した実施例1~11のいずれも、泡抜け性、解像性、深部硬化性、アウトガス、絶縁信頼性、反射率の評価が優れた結果となった。なお、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤のみを使用した実施例3と比べて、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤と(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤との両方を使用した実施例1~2、10は、絶縁信頼性、反射率の評価がより一層優れた結果となった。そのうち、液体状の(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤とともに、固体状の(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤を使用した実施例10と比べて、液体状の(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤を使用した実施例1~2は、表面状態の評価がより一層優れた結果となった。
【0103】
それに対して、(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤とともに、アシルフォスフィン系ではない光重合開始剤を使用した比較例1は、表面状態、解像性、深部硬化性、はんだ耐熱性、アウトガス、絶縁信頼性、反射率、耐熱変色性が不良となった。(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤のみを使用した比較例2は、表面状態、解像性、深部硬化性が不良となり、評価基板が作製できなかった。(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤とともに、2官能のアシルフォスフィン系の光重合開始剤を使用した比較例3は、解像性、深部硬化性、アウトガス、絶縁信頼性、反射率が不良となった。
【0104】
それらの結果から、本発明の硬化性樹脂組成物は、深部硬化性に優れ、アウトガスの発生が抑制され、かつ絶縁信頼性、耐熱変色性といった物性にも優れることが判明した。本発明の硬化性樹脂組成物、それを使用した積層体、それらの硬化物は、電子部品のプリント配線板に用いられる絶縁材料に好適に使用される。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)無機充填剤、(C)熱硬化性樹脂、(D)光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(D)光重合開始剤として、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含むことを特徴とした硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)光重合開始剤が、(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤の配合量が、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤の配合量に対して、3質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)光重合開始剤が、室温で液体状の光重合開始剤のみからなることを特徴とする請求項
1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)カルボキシル基含有樹脂が、フェノール骨格を有さないものであることを特徴とする請求項
1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)無機充填剤の配合量が、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して40質量%以上、55質量%以下であることを特徴とした請求項
1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を樹脂層として有することを特徴とする積層体。
【請求項8】
請求項1~6に記載の硬化性樹脂組成
物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項9】
請求項7に記載の積層体の樹脂層を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化物を備える電子部品。
【請求項11】
請求項9に記載の硬化物を備える電子部品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
そのほかの光重合開始剤として、例えば、モノアシルフォスフィン系光重合開始剤、ビスアシルフォスフィン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、N,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヘラーケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等などが挙げられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
実施例1~12および比較例1~3の硬化性樹脂組成物を、表2~3に示した各成分を、そこに示す配合比(質量基準、希釈溶媒を含む)で混合することにより得た。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
表2~3から明らかなように、(D)光重合開始剤として(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を使用した実施例1~12のいずれも、泡抜け性、解像性、深部硬化性、アウトガス、絶縁信頼性、反射率の評価が優れた結果となった。なお、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤のみを使用した実施例3と比べて、(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤と(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤との両方を使用した実施例1~2、10は、絶縁信頼性、反射率の評価がより一層優れた結果となった。そのうち、液体状の(D-a)3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤とともに、固体状の(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤を使用した実施例10と比べて、液体状の(D-b)ヒドロキシケトン系光重合開始剤を使用した実施例1~2は、表面状態の評価がより一層優れた結果となった。
【国際調査報告】