(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、積層体、硬化物、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/031 20060101AFI20240920BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240920BHJP
G03F 7/029 20060101ALI20240920BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20240920BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G03F7/031
G03F7/004 501
G03F7/029
G03F7/038 501
H05K1/03 610H
H05K1/03 610R
H01L21/312 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516593
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2022122716
(87)【国際公開番号】W WO2023051718
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111164481.6
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507149350
【氏名又は名称】太陽油墨(蘇州)有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAIYO INK(SUZHOU)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.26TaishanRoad,Suzhou New District,Suzhou City,Jiangsu 215129China
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】工藤 知哉
(72)【発明者】
【氏名】ジィァン ヂォン
(72)【発明者】
【氏名】リュ チュァン
(72)【発明者】
【氏名】シュ ホンジン
(72)【発明者】
【氏名】プー グゥォビン
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】リィゥ ホンビン
【テーマコード(参考)】
2H225
5F058
【Fターム(参考)】
2H225AC43
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC54
2H225AC58
2H225AD02
2H225AD06
2H225AD07
2H225AE14P
2H225AE15P
2H225AN34P
2H225AN36P
2H225AP09P
2H225AP10P
2H225AP11P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA12
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
5F058AA10
5F058AC07
5F058AC10
5F058AF04
5F058AG01
(57)【要約】
【課題】表面硬化性とアウトガスの抑制を両立し、絶縁信頼性、はんだ耐熱性といった諸特性も兼ね備えた硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)無機充填剤、(C)熱硬化性樹脂、(D)光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物であって、前記(D)光重合開始剤として、(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤と、(D-b)特定な構造を有する光重合開始剤と、を含み、前記(D-b)特定な構造を有する光重合開始剤の配合量が、前記(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤の配合量に対して0.1質量%以上、10質量%以下である硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)無機充填剤、(C)熱硬化性樹脂、(D)光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(D)光重合開始剤として、(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤と、(D-b)式1で示される光重合開始剤と、を含み
前記(D-b)式1で示される光重合開始剤の配合量が、前記(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤の配合量に対して0.1質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
(式1中、R
23は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基を表す。R
21、R
22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表す。
Arは、単結合、または、炭素数1~10のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ピリジレン基、ナフチレン基、アントリレン基、チエニレン基、フリレン基、2,5-ピロール-ジイル基、4,4’-スチルベン-ジイル基、4,2’-スチルベン-ジイル基を表す。nは0~1の数を表す。)
【請求項2】
前記(B)無機充填剤の配合量が、硬化性樹脂組成物の全固形分量に対して35質量%以上、55質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)無機充填剤として酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤として、3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)カルボキシル基含有樹脂が、フェノール骨格を有さないものであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を樹脂層として有することを特徴とする積層体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物、または、請求項6に記載の積層体の樹脂層を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物を備える電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を樹脂層として有する積層体、該積層体からなる硬化物、及び該硬化物を備える電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は小型化、高性能化の要求に伴い、搭載される半導体チップの高密度化、高機能化が進み、半導体チップを実装するプリント配線板も小型高密度化が要求されている。その結果、最近では、プリント配線板に用いられる絶縁材料にもさらなる微細化、高性能化が求められている。
このような絶縁材料としては、特許文献1に記載のようにカルボキシル基を有し感光性を有さない化合物、エポキシ樹脂、オキシムエステル系光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物などが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような感光性樹脂組成物は露光後の表面硬化性が十分ではなく、パターン露光後、熱硬化処理を行うまでの間に表面に傷が付き、十分な性能を発揮することができない恐れがある。また、用いる光重合開始剤の種類によっては高温での熱処理によりアウトガスが発生し、周囲を汚染するという問題が生じる。そのため、表面硬化性とアウトガスの抑制を両立した絶縁材料が求められている。
また、絶縁信頼性、はんだ耐熱性といった諸物性についても、従来の感光性樹脂組成物よりもさらに高いレベルの要求を満たすことが絶縁材料には求められている。
【0005】
本発明は、表面硬化性とアウトガスの抑制を両立することができ、かつ絶縁信頼性、はんだ耐熱性といった諸特性を兼ね備えた硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物または積層体を提供することを目的とする。
【0006】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、硬化性樹脂組成物に、光重合開始剤として、アシルフォスフィン系光重合開始剤と式(1)で示される特定な構造を有する光重合開始剤を同時に配合することにより、上記全ての課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記のとおりである。
【0008】
[項1]
(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)無機充填剤、(C)熱硬化性樹脂、(D)光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(D)光重合開始剤として、(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤と、(D-b)一般式(1)に記載の光重合開始剤と、を含み
前記(D-b)一般式(1)に記載の光重合開始剤の配合量が、前記(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤の配合量に対して0.1質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
(一般式(1)中、R
23は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基を表す。R
21、R
22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表す。
Arは、単結合、または、炭素数1~10のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ピリジレン基、ナフチレン基、アントリレン基、チエニレン基、フリレン基、2,5-ピロール-ジイル基、4,4’-スチルベン-ジイル基、4,2’-スチルベン-ジイル基を表す。nは0~1の数を表す。)
[項2]
前記(B)無機充填剤の配合量が、硬化性樹脂組成物の全固形分量に対して35質量%以上、55質量%以下であることを特徴とする項1に記載の硬化性樹脂組成物。
[項3]
前記(B)無機充填剤として酸化チタンを含むことを特徴とする項1に記載の硬化性樹脂組成物。
[項4]
前記(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤として、3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含むことを特徴とする項1に記載の硬化性樹脂組成物。
[項5]
(A)カルボキシル基含有樹脂が、フェノール骨格を有さないものであることを特徴とする項1~4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[項6]
項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を樹脂層として有することを特徴とする積層体。
[項7]
項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物、または、項6に記載の積層体の樹脂層を硬化させたことを特徴とする硬化物。
[項8]
項7に記載の硬化物を備える電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面硬化性とアウトガスの抑制を両立することができ、かつ絶縁信頼性、はんだ耐熱性といった諸特性を兼ね備えた硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物または積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)無機充填剤、(C)熱硬化性樹脂、(D)光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(D)光重合開始剤として、(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤と、(D-b)一般式(1)に記載の光重合開始剤と、を含み
前記(D-b)一般式(1)に記載の光重合開始剤の配合量が、前記(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤の配合量に対して0.1質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする。
(一般式(1)中、R
23は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基を表す。R
21、R
22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表す。
Arは、単結合、または、炭素数1~10のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ピリジレン基、ナフチレン基、アントリレン基、チエニレン基、フリレン基、2,5-ピロール-ジイル基、4,4’-スチルベン-ジイル基、4,2’-スチルベン-ジイル基を表す。nは0~1の数を表す。)
【0011】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物の各成分を詳しく説明する。
【0012】
(A)カルボキシル基含有樹脂
カルボキシル基含有樹脂は、カルボキシル基が含まれることによりアルカリ現像性とすることができる。(A)カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種カルボキシル基含有樹脂を使用できる。また、硬化性や耐現像性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを使用してもよい。
【0013】
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0014】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(7)多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
(8)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
(9)多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
(13)アミド構造およびイミド構造の少なくともいずれかを有するカルボキシル基含有樹脂。
(14)上記(1)~(13)等に記載のカルボキシル基含有樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有樹脂。
【0015】
(A)カルボキシル基含有樹脂は、分子中にカルボキシル基を有している樹脂であれば、樹脂骨格は特に限定されないが、絶縁信頼性、反射率をさらなる向上の点から、好ましくはフェノール骨格を有さないものである。フェノール骨格がカルボキシル基含有樹脂内に含まれない場合、熱劣化による着色が生じにくいため、反射率が向上する傾向がある。
フェノール骨格とは、芳香環に直接結合した1つまたは複数のヒドロキシ基を持つ芳香族類化合物由来の骨格である。
【0016】
上記カルボキシル基含有樹脂のうち、上記(1)、(7)、(8)、(10)、(11)、(14)に記載のカルボキシル基含有樹脂の少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。塩素低減が達成しやすく、更に絶縁信頼性が向上する観点から、上記(1)または(1)を用いた(14)に記載のカルボキシル基含有樹脂を含むことが特に好ましい。
(A)カルボキシル基含有樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせた混合物を用いてもよい。
【0017】
(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20~120mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、より好ましくは30~100mgKOH/gの範囲である。(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価を上記範囲とすることで、良好にアルカリ現像が可能となり、良好な硬化物のパターンを形成することができる。
【0018】
(A)カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上の場合、乾燥塗膜のタックフリー性、露光後の塗膜の耐湿性、解像性が良好である。一方、重量平均分子量が150,000以下の場合、現像性と、貯蔵安定性が良好である。より好ましくは5,000~100,000である。
【0019】
(A)カルボキシル基含有樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、5~80質量%の範囲が好ましく、10~70質量%の範囲がより好ましく、12~60質量%の範囲が特に好ましい。
【0020】
(B)無機充填剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、(B)無機充填剤を含む。(B)無機充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(B)無機充填剤の配合量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して20~65質量%の範囲が好ましく、25~60質量%の範囲がより好ましく、35~55質量%の範囲が特に好ましい。(B)無機充填剤の配合量が35質量%以上であれば、表面硬化性、反射率、はんだ耐熱性、絶縁信頼性に優れた硬化性樹脂組成物を得る傾向がある。(B)無機充填剤の配合量が55質量%以下であれば、泡抜け性、解像性に一層優れた硬化性樹脂組成物を得る傾向がある。
【0022】
(B)無機充填剤としては、例えば、酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、ノイブルグ珪土、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。中でも酸化チタン、シリカ、硫酸バリウムのうち少なくともいずれか1種を含むことが好ましく、硬化性樹脂組成物の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度、反射率などの特性を向上させることができる。そのうち、反射率を向上させる点から、少なくとも酸化チタンを含むことが特に好ましい
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物に使用しえる酸化チタンとしては、硫酸法、塩素法により製造されるものや、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、あるいは含水金属酸化物による表面処理、有機化合物による表面処理を施した酸化チタンを用いることができる。酸化チタンは結晶構造によりルチル型とアナターゼ型に分類される。それらのうち、ルチル型酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型と比較して白色度が高いためによく使用される。しかしながら、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒活性を有するために、硬化性樹脂組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型と比較して若干劣るものの、光活性を殆ど有さないために、安定した硬化物を得ることができる。
【0024】
(B)無機充填剤が酸化チタンを含む場合、酸化チタンによる反射率向上効果を果たす点や表面硬化性を向上させる点から、酸化チタンの配合量は、硬化性樹脂組成物の全固形分量に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、1.5質量%以上30質量%以下がより好ましく、2質量%以上25質量%以下が特に好ましい。
【0025】
(B)無機充填剤の平均粒子径は50μm以下であることが好ましく、平均粒子径0.1~25μmであることがより好ましく、平均粒子径0.2~10μmであることが特に好ましい。ここで平均粒子径とは、無機充填剤単体もしくは無機充填剤分散液の平均粒子径である。また一部平均粒子径100nm以下のナノフィラーも併用してもよい。ここで、本明細書において、無機充填剤の平均粒子径は、一次粒子の粒径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒径も含めた体積平均粒子径(D50)である。前記平均粒子径は、平均粒子径に合わせてマイクロトラック・ベル社製のMicrotrac MT3300EXIIなどのレーザー回折法による測定装置や、マイクロトラック・ベル社製のNanotrac Wave II UT151)などの動的光散乱法による測定装置を用いて測定することができる。
【0026】
また、(B)無機充填剤は、表面処理されたフィラー(表面処理フィラー)であってもよい。(B)無機充填剤の表面処理は特に限定されるものではなく、シラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコアルミネート系等のカップリング剤による表面処理や、アルミナ処理等の有機基を導入しない表面処理等、公知慣用の方法を用いることができる。
【0027】
(B)無機充填剤として、市販されているものを使用してもよい。酸化チタンの市販品として、
市販されているルチル型酸化チタンとしては、例えば、タイペークR-820、タイペークR-830、タイペークR-930、タイペークR-550、タイペークR-630、タイペークR-680、タイペークR-670、タイペークR-780、タイペークR-850、タイペークCR-50、タイペークCR-57、タイペークCR-Super70、タイペークCR-80、タイペークCR-90、タイペークCR-93、タイペークCR-95、タイペークCR-97、タイペークCR-60、タイペークCR-63、タイペークCR-67、タイペークCR-58、タイペークCR-85、タイペークUT771(石原産業株式会社製)、タイピュアR-100、タイピュアR-101、タイピュアR-102、タイピュアR-103、タイピュアR-104、タイピュアR-105、タイピュアR-108、タイピュアR-900、タイピュアR-902、タイピュアR-960、タイピュアR-706、タイピュアR-931(デュポン株式会社製)、R-25、R-21、R-32、R-7E、R-5N、R-61N、R-62N、R-42、R-45M、R-44、R-49S、GTR-100、GTR-300、D-918、TCR-29、TCR-52、FTR-700(堺化学工業株式会社製)等を使用することができる。
この中で塩素法により製造されたタイペークCR-50、タイペークCR-57、タイペークCR-80、タイペークCR-90、タイペークCR-93、タイペークCR-95、タイペークCR-97、タイペークCR-60、タイペークCR-63、タイペークCR-67、タイペークCR-58、タイペークCR-85、タイペークUT771(石原産業株式会社製)、タイピュアR-100、タイピュアR-101、タイピュアR-102、タイピュアR-103、タイピュアR-104、タイピュアR-105、タイピュアR-108、タイピュアR-900、タイピュアR-902、タイピュアR-960、タイピュアR-706、タイピュアR-931(デュポン株式会社製)がより好ましく使用され得る。
また、アナターゼ型酸化チタンとしては、公知のものを使用することができる。市販されているアナターゼ型酸化チタンとしては、TITON A-110、TITON TCA-123E、TITON A-190、TITON A-197、TITON SA-1、TITON SA-1L(堺化学工業株式会社製)、TA-100、TA-200、TA-300、TA-400、TA-500、TP-2(富士チタン工業株式会社製)、TITANIX JA-1、TITANIX JA-3、TITANIX JA-4、TITANIX JA-5、TITANIX JA-C(テイカ株式会社製)、KA-10、KA-15、KA-20、KA-30(チタン工業株式会社製)、タイペーク A-100、タイペークA-220、タイペークW-10(石原産業株式会社製)等を使用することができる。
硫酸バリウムの市販品としては、堺化学社製B-30、B-31、B-32、B-33、B-34、B-35、B-35T等が挙げられる。
シリカの市販品としては、SE-40(トクヤマ製)、MSV25G(龍森製)、MLV-2114(龍森製)、SO-E5(アドマテックス製)、SO-E2(アドマテックス製)等が挙げられる。
【0028】
(C)熱硬化性樹脂
本発明の硬化性樹脂組成物は、(C)熱硬化性樹脂を含む。(C)熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、メラミン誘導体などを使用することができる。(C)熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(C)熱硬化性樹脂としては、表面硬化性に優れ、アウトガスの発生が抑制され、かつ硬化物の絶縁信頼性、はんだ耐熱性といった物性にも優れる硬化性樹脂組成物を得る観点から、エポキシ樹脂を含有することが好適である。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、アミノフェノール型、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂等の公知慣用のエポキシ樹脂を好適に用いることができる。
【0030】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物においては、これらエポキシ樹脂を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。また、液体状エポキシ樹脂を用いてもよく、固形のエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0031】
(C)熱硬化性樹脂の市販品としては、例えば、三菱ケミカル(株)製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC(株)製のEPICLON840、EPICLON850、EPICLON1050、EPICLON2055、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のエポトートYD-011、YD-013、YD-127、YD-128、Nan Ya Plastics社製のNPEL-128E(何れも商品名)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のjERYL903、DIC(株)製のEPICLON152、EPICLON165、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のエポトートYDB-400、YDB-500(何れも商品名)等のブロム化エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のjER152、jER154、DIC(株)製のEPICLON N-730、EPICLON N-770、EPICLON N-865、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のエポトートYDCN-701、YDCN-704、日本化薬(株)製のEPPN-201、EOCN-1025、EOCN-100、EOCN-104S、RE-306(何れも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;DIC(株)製のEPICLON830、三菱ケミカル社製のjER807、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のエポトートYDF-170、YDF-175、YDF-2004(何れも商品名)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のエポトートST-2004、ST-2007、ST-3000(何れも商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のjER604、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のエポトートYH-434、住友化学(株)製のスミエポキシELM-120(何れも商品名)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;(株)ダイセル製のセロキサイド2021(商品名)等の脂環式エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のYL-933、日本化薬(株)製のEPPN-501、EPPN-502(何れも商品名)等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬(株)製のEBPS-200、(株)ADEKA製のEPX-30、DIC(株)製のEXA-1514(何れも商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル(株)製のjER YL-931(商品名)等のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学(株)製のTEPIC(商品名)等の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂(株)製のブレンマーDGT(商品名)等のジグリシジルフタレート樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のZX-1063(商品名)等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル(株)製のESN-190、ESN-360、DIC(株)製のHP-4032、EXA-4750、EXA-4700(何れも商品名)等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC(株)製のHP-7200、HP-7200H(何れも商品名)等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂(株)製のCP-50S、CP-50M(何れも商品名)等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂等が挙げられ、これらエポキシ化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
(C)熱硬化性樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して通常1~50質量%、より好ましくは5~35質量%である。
【0033】
(D)光重合開始剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤と(D-b)一般式(1)に記載の光重合開始剤を含む。(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤を配合することにより、解像性に優れ、その硬化物のはんだ耐熱性、アウトガス耐性と絶縁信頼性にも優れた硬化性樹脂組成物を得ることが出来る。
【0034】
(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤としては、例えば、モノアシルフォスフィン系光重合開始剤やビスアシルフォスフィン系光重合開始剤が挙げられる。具体的には、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-ペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0035】
(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤は、下記の式(2)で示される3つ以上のアシルフォスフィン骨格を有する光重合開始剤(3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤)を含むことが好ましい。
ここで、
Aは、相互に独立して、単結合、O、SまたはNR
3を表す;
Gは、多官能化合物(コア)G-(A-H)
m+nの残基、ここで、A-Hは,それぞれ、アルコール性水酸基またはアミノ基或いはチオール基を表す;
m及びnは、m+nが、3~10の間の数であることを満たし、
mは、3~8の間の数である;
R
1及びR
2は、それぞれ、独立して、C
1-C
18のアルキル基、C
6-C
12のアリール基及びC
5-C
12のシクロアルキル基であり、それぞれ、1個以上の酸素及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換又は非置換イミノ基が介在しているか、又は介在していない、又は酸素及び/又は窒素及び/又は硫黄原子を含む5員~6員複素環式基であっても良い。ただし、前記R
1及びR
2は、それぞれ、アリール、アルキル、アリルオキシ、アルコキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されていてもよい;
R
2は、R
1-(C=O)-でもよい;
Yは、O又はSである;
R
3は、水素又はC
1~C
4のアルキル基である;
ただし、式(2)の光重合開始剤は、光硬化性エチレン系不飽和基を含まない。
【0036】
好ましくは、式(2)において、m+nは、3~8の間の数で、より好ましくは3~6の間の数である。例えば、式(2)において、mは、3~6の間の数で、より好ましくは3~5の間の数である。
【0037】
式(2)において、Aが酸素の場合、G-(A-H)m+nは、多水酸基(ポリヒドロキシ)化合物であって、単量体、オリゴマー、及び高分子ポリオール、並びにそれらの混合物から成る群から選択される。Aが硫黄の場合、G-(A-H)m+nは、ポリチオール化合物である。Aが窒素の場合、G-(A-H)m+nは、線状又は分枝ポリアミンである。Aが、酸素及び/又は窒素原子及び/又は硫黄の混合の場合、G-(A-H)m+nは、異なる官能基、例えば、アミノ基及びヒドロキシ基を含む化合物である。Aが単結合の場合、G-は上記に列挙したG-(A-H)m+nから水酸基及び/又はアミノ基及び/又はチオール基を除いた残基である。
好ましくは、G-(A-H)m+nは、1500以下、より好ましくは800以下、更に好ましくは500以下の数平均分子量を有している。
【0038】
nがゼロでない場合、式(2)の化合物は、アルコール性水酸基及び/又はアミノ基及び/又はチオール基を有している。
【0039】
式(2)に包含される代表的な3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を表1に示す。これらのうち、PI-3、PI-4、PI-10、PI-11、PI-12、PI-14、PI-17が特に好ましい。このような3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含むことで、アウトガスが抑制され、絶縁信頼性にさらに優れる硬化物を得ることができる。
市販品としては、例えば、IGM RESINS B.V.社製のOmnipol TP等が挙げられ、これらアシルフォスフィン系光重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
【0041】
表1中のa、b、c及びdはそれぞれ独立した数であり、3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤の数平均分子量を所望の値とするために適宜選択される。
このような3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤は、例えば特許6599446号に記載の方法によって製造することができる。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物は前記(D)光重合開始剤として、(D-b)一般式(1)に記載の光重合開始剤をさらに含む。(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤と(D-b)一般式(1)に記載の光重合開始剤との組み合わせにより、表面硬化性、反射率、はんだ耐熱性と絶縁信頼性に優れた硬化性樹脂組成物を得ることが出来る。
(一般式(1)中、R
23は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基を表す。R
21、R
22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表す。
Arは、単結合、または、炭素数1~10のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ピリジレン基、ナフチレン基、アントリレン基、チエニレン基、フリレン基、2,5-ピロール-ジイル基、4,4’-スチルベン-ジイル基、4,2’-スチルベン-ジイル基を表す。nは0~1の数を表す。)
【0043】
R23により表されるアルキル基としては、炭素数1~17のアルキル基が好ましい。
R23により表されるアルコキシ基としては、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましい。
R23により表されるフェニル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~17)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~8)、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくはアルキル基の炭素数1~8)またはジアルキルアミノ基(好ましくはアルキル基の炭素数1~8)等が挙げられる。
R23により表されるナフチル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、R23により表されるフェニル基が有し得る上記置換基と同様の基が挙げられる。
【0044】
R21およびR22により表されるアルキル基としては、炭素数1~17のアルキル基が好ましい。
R21およびR22により表されるアルコキシ基としては、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましい。
R21およびR22により表されるフェニル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~17)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~8)、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくはアルキル基の炭素数1~8)またはジアルキルアミノ基(好ましくはアルキル基の炭素数1~8)等が挙げられる。
R21およびR22により表されるナフチル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、R21およびR22により表されるフェニル基が有し得る上記置換基と同様の基が挙げられる。
【0045】
さらに、一般式(1)中、R21、R23が、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基であり、R22はメチルまたはフェニルであり、Arは、単結合か、フェニレン基、ナフチレン基またはチエニレン基、nは0であることが好ましい。
【0046】
一般式(1)で表される化合物としては、下記式(2)または式(3)で表される化合物のいずれかがより好ましい。
【0047】
【0048】
(D-b)一般式(1)に記載の光重合開始剤の市販品として、例えば、日本化学工業所社製のTOE-04-A3等が挙げられる。
【0049】
(D-b)一般式(1)に記載の光重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
(D-b)一般式(1)に記載の光重合開始剤の配合量が、(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤の配合量に対して、0.1~10質量%の範囲にある。0.2~8質量%の範囲が好ましく、0.25~7.5質量%の範囲がより好ましい。(D-b)/(D-a)が上記範囲内にあると、硬化性樹脂組成物の表面硬化性と解像性が良好となり、その硬化膜の反射率、はんだ耐熱性と絶縁信頼性も向上する。
(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤と(D-b)一般式(1)に記載の光重合開始剤の合計の配合量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、0.5~30質量%の範囲が好ましく、1~20質量%の範囲がより好ましく、2~15質量%の範囲が特に好ましい。該配合量が上記範囲内にあると、硬化性樹脂組成物の表面硬化性と解像性が良好となり、その硬化膜の反射率、はんだ耐熱性と絶縁信頼性も向上する。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤と上記(D-b)一般式(1)に記載の光重合開始剤と異なる他の光重合開始剤をさらに含有してもよい。該他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、アミノアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、オキシムエーテル系、オキシムエステル系、ヒドロキシケトン系、チタノセン系等の公知慣用の化合物が挙げられる。
【0052】
市販品として、例えば、BASFジャパン社製のイルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、IGM RESINS B.V.社製のOmnirad907、Omnirad369、Omnirad379、ADEKA社製N-1919、NCI-831、常州強力電子新材料有限公司社製のTR―PBG-304等が挙げられる。
【0053】
(E)重合性モノマー
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに分子中にエチレン性不飽和基を有する(E)重合性モノマーを配合してもよい。
このような重合性モノマーとしては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートが使用でき、具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加体、プロピレンオキサイド付加体、もしくはε-カプロラクトン付加体などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加体もしくはプロピレンオキサイド付加体などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;上記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および上記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくとも何れか1種などを挙げることができる。
【0054】
重合性モノマーを含む場合には、その配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対し、5~40質量部の範囲が適当である。重合性モノマーの配合量が5質量部以上の場合、光硬化性付与効果がより良好となる。一方、40質量部以下の場合、塗膜の指触乾燥性が良好となる。
【0055】
添加剤
本発明の硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、着色用顔料、消泡剤、表面張力調整剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤、密着助剤、架橋剤等の公知の添加剤を添加してもよい。
【0056】
有機溶剤
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、上記(A)カルボキシル基含有樹脂の合成や硬化性樹脂組成物の調整のため、又は基板や第1フィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0057】
積層体
本発明の硬化性樹脂組成物は、第1フィルムと、この第1フィルム上に形成された上記硬化性樹脂組成物からなる樹脂層とを備えた積層体の形態とすることもできる。積層体化に際しては、本発明の硬化性樹脂組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で第1フィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して樹脂層を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の樹脂層の厚みが、1~150μm、好ましくは10~60μmの範囲となるように適宜選択される。
【0058】
第1フィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物の樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な第2フィルムを積層することが好ましい。剥離可能な第2フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、第2フィルムを剥離するときに樹脂層と第1フィルムとの接着力よりも樹脂層と第2フィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0059】
なお、本発明においては、上記第2フィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより樹脂層を形成して、その表面に第1フィルムを積層するものであってもよい。すなわち、本発明において積層体を製造する際に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布するフィルムとしては、第1フィルムおよび第2のフィルムのいずれを用いてもよい。
【0060】
硬化物
本発明の硬化物は、上記本発明の硬化性樹脂組成物、または、上記本発明の積層体の樹脂層を硬化して得られるものであり、はんだ耐熱性、アウトガス耐性と絶縁信頼性等諸特性を兼ね備える。
【0061】
プリント配線板
本発明のプリント配線板は、本発明の硬化性樹脂組成物または積層体の樹脂層から得られる硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、積層体の場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、第1フィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0062】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0064】
基材上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ナトリウム水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化(例えば、100~220℃)、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化膜を形成する。
【0065】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、LED光源ランプ、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載した紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直接描画装置の露光波長としては、380~450nmの範囲にあるものが好ましい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1500mJ/cm2、好ましくは20~1000mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0066】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0067】
本発明の硬化性樹脂組成物は、小型化、高性能化が要求される電子機器の電子部品に硬化膜を形成するために、特に小型高密度化が要求されるプリント配線板上に硬化膜を形成するために好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用され、さらに好適には、ソルダーレジスト、層間絶縁層、カバーレイを形成するために使用される。
【0068】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【実施例】
【0069】
<硬化性樹脂組成物の調製>
下記表2~3に示す処方にて各成分を配合、撹拌し、3本ロールミルにて混練分散して、実施例1~10および比較例1~4の硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表2、3の配合量はワニス換算の配合量を表す。
【0070】
【0071】
【表3】
*1 (D-a)、(D-b)の合計量、その他の光重合開始剤を含まない。
*2 (D-a)の含有量は0であるため、実際に(D-b)/(D-a)の結果は∞である。
【0072】
表2、表3に示した各成分の詳細は下記のとおりである。
A-1 合成例1のカルボキシル基含有樹脂溶液(固形分39%)
A-2 合成例2のカルボキシル基含有樹脂溶液(固形分64%)
B-1 CR-97、石原産業社、酸化チタン(固形分100%)
B-2 SiO2(固形分100%)アドマテックス社製 SO-E2
B-3 BaSO4(固形分100%)堺化学工業社製バリエースB-30
C-1 NPEL-128E、Nan Ya Plastics社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形分100%)
C-2 N-770-75EA、DIC社製、フェノールノボラック型の多官能エポキシ樹脂(固形分75%)
D-1 Omnipol TP、IGM RESINS B.V.社製、3官能以上のアシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤(上記表1のPI-3の構造)(固形分100%)
D-2 Omnirad 819、IGM RESINS B.V.社製、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(固形分100%)
D-3 TOE-04-A3、日本化学工業所社製、式(2)の光重合開始剤(固形分100%)
D-4 Omnirad 369、IGM RESINS B.V.社製、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤(固形分100%)
D-5 IRGACURE OXE02、BASFジャパン社製、オキシムエステル系光重合開始剤(固形分100%)
【0073】
合成例1(フェノール骨格を有さないカルボキシル基含有樹脂の合成)
温度計、撹拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル900.0部を110℃まで加熱し、メタクリル酸174.0部、ε-カプロラクトン変性メタクリル酸(平均分子量314)174.0部、メタクリル酸メチル77.0部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル222.0部、および重合触媒としてt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日本油脂社製パーブチルO)12.0部の混合物を、3時間かけて滴下し、さらに110℃で3時間攪拌し、重合触媒を失活させて、樹脂溶液を得た。
この樹脂溶液を冷却後、ダイセル社製サイクロマーA200(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート)を289.0部、トリフェニルホスフィン3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.3部を加え、100℃に昇温し、攪拌することによってエポキシ基の開環付加反応を行い、フェノール骨格を有さないカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
このようにして得られた樹脂溶液は、重量平均分子量(Mw)が15,000で、かつ、固形分が39%、固形物の酸価が79.8mgKOH/gであった。
【0074】
合成例2(フェノール骨格を有するカルボキシル基含有樹脂の合成)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート600gにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔DIC株式会社製、EPICLON N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6〕1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。
次いで、トリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に、芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415g、テトラヒドロ無水フタル酸456.0g(3.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却し、フェノール骨格を有するカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
このようにして得られた樹脂溶液の固形分は64%、固形分の酸価は89mgKOH/gであった。
【0075】
(評価基板の作成)
1.評価基板Aの作成
上記実施例および比較例の硬化性樹脂組成物を、バフ研磨により前処理した銅張積層板上に、スクリーン印刷で全面塗布し、熱風循環式乾燥炉にて80℃で30分間乾燥し、室温まで冷却し、厚さ40μmの樹脂層を形成した。樹脂層に対し、LED光源搭載のDI露光機(SCREEN社製 Ledia6)を用いて、385nm光源出力100%で1000mJ/cm2全面露光し、30℃の1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、スプレー圧0.15MPaの条件で50秒間現像を行った。その後、150℃に調整された熱風循環式乾燥炉にて樹脂層を60分間硬化させ(ポストキュア)、評価基板Aを得た。
【0076】
2.評価基板Bの作成
上記実施例および比較例の硬化性樹脂組成物を、バフ研磨により前処理したFR-4基板上に、スクリーン印刷で全面塗布し、80℃で30分間乾燥し、室温まで冷却し、厚さ40μmの樹脂層を形成した。樹脂層の表面を、ライン/スペース(L/S)が30μm/30μm 、40μm/40μm、50μm/50μm、60μm/60μm、70μm/70μm、80μm/80μm、90μm/90μm、100μm/100μm、200μm/200μmのパターンが形成されたネガフィルムで覆い、LED露光機(SCREEN社製 Ledia6)を用いて385nm光源出力100%で1000mJ/cm2にてネガフィルムを介して樹脂層を露光した。その後、30℃の1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、スプレー圧0.15MPaの条件で50秒間現像を行った。その後、150℃に調整された熱風循環式乾燥炉にて樹脂層を60分間硬化させ(ポストキュア)、評価基板Bを得た。
【0077】
特性試験
1)泡抜け性
銅厚105μm、L/Sが40μm/300μm、回路長さが2cmの直線パターンを有する両面プリント基板の一方の表面に、前処理としてバフ研磨を行った後、水洗し十分に水を乾燥させた。
次に、上記実施例および比較例の硬化性樹脂組成物を、スクリーン印刷法により、乾燥後の両面プリント基板の前処理を行った面の全面に、硬化後の膜厚が120μmとなるように、パターンと平行な方向に塗布した。30分間室温で静置した後、熱風循環式乾燥炉にて80℃で30分乾燥させ、泡抜け性評価基板を作成した。泡抜け性評価基板を20倍の光学顕微鏡で観察し、回路と回路の間の気泡の数を数え、気泡の数により、以下のように泡抜け性を評価した。
◎:100μm以上の気泡が5個以下
〇:100μm以上の気泡が5個超10個以下
【0078】
2)露光後の鉛筆硬度
上記実施例および比較例の硬化性樹脂組成物を、バフ研磨により前処理した銅張積層板上に、スクリーン印刷で全面塗布し、熱風循環式乾燥炉にて80℃で30分間乾燥し、室温まで冷却し、厚さ40μmの樹脂層を形成した。樹脂層に対し、LED光源搭載のDI露光機(SCREEN社製 Ledia6)を用いて、385nm光源出力100%で1000mJ/cm2にて全面露光し、30℃の1質量%の炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.15MPaの条件にて50秒間現像を行った。得られた樹脂層表面の鉛筆硬度を、JIS K 5600-5-4に準拠して測定を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:鉛筆硬度が4H以上
〇:鉛筆硬度が2H以上4H未満
×:鉛筆硬度が2H未満
パターン露光後の鉛筆硬度が高いほど、硬化性樹脂組成物が表面硬化性に優れることを意味する。
【0079】
3)熱硬化後の鉛筆硬度
評価基板Aの硬化物表面の鉛筆硬度を、JIS K 5600-5-4に準拠して測定を行った。実施例・比較例いずれの硬化物においても鉛筆硬度が6H以上であった(表2、3において◎と記載)
【0080】
4)解像性
評価基板Bについて、基板に残存している最小設計ライン幅を目視確認し、これにより以下の基準にて解像性の評価を行った。
◎:最小設計ライン幅70μm以下までラインが残っている
〇:最小設計ライン幅70μm超、90μm以下までラインが残っている
×:設計ライン幅90μm超の場合でも、ラインが全く残っていない
【0081】
5)反射率
評価基板Aについて、得られた硬化物の450nmの波長における反射率をコニカミノルタ株式会社製、分光測色計CM-2600dを用いて測定し、下記の判断基準に従い評価した。
◎ 反射率75%以上
○ 反射率70%以上、75%未満
× 反射率70%未満
【0082】
6)はんだ耐熱性
評価基板Aについて、ロジン系フラックスを硬化物表面へ塗布した後、260℃のはんだ槽へ20秒間、浸漬させた。浸漬後、基板が室温になるまで放冷し、再度はんだ槽へ浸漬した。浸漬を複数回行った後、変性アルコールにより、フラックスを洗浄した後の外観を目視により観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:はんだ槽への浸漬を4回以上おこなっても、硬化物の剥離が観察されなかった。
〇:はんだ槽への浸漬を2回おこなっても、硬化物の剥離が観察されなかったが、4回以上行うと樹脂層の剥離が観察された。
×:はんだ槽への浸漬を2回おこなうと、硬化物の剥離が観察された。
【0083】
7)アウトガス耐性
評価基板Aについて、形成した硬化物より粉末サンプルを採取し、ゲステル社製加熱脱着装置(TDU)に入れた後、260℃の熱抽出温度で10分間アウトガス成分を、それぞれ液体窒素を用いて-60℃で捕集した。捕集されたアウトガス成分はアジレントテクノロジー社製ガスクロマトグラフィー質量分析装置(6890N/5973N)で分離分析を行い、n-ドデカン換算で定量し、実施例1のアウトガス量を100質量%として以下の基準で評価した。
◎:アウトガス成分が150%質量以下
○:アウトガス成分が150質量%超、200質量%以下
×:アウトガス成分が200質量%超
【0084】
8)絶縁信頼性
L/S=100μm/100μmのクシ型電極が形成された基板をバフ研磨により前処理した後に、前記実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷にて全面塗布した後、熱風循環式乾燥炉にて80℃で30分乾燥し、厚さ40μmの樹脂層を形成した。次いで、熱風循環式乾燥炉にて150℃で60分間加熱して、樹脂層の硬化物を形成し、絶縁信頼性評価基板を作成した。評価基板を、85℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、電圧3.5Vを荷電し、槽内絶縁信頼性試験を行った。硬化物の種々の時間経過時の槽内絶縁抵抗値を下記の判断基準に従い評価した。
◎:800時間経過後、107Ω以上
○:500時間経過後、絶縁抵抗値が107Ω以上だが、800時間経過時絶縁抵抗値が107Ω未満
×:500時間経過時、絶縁抵抗値が107Ω未満
【0085】
表2、表3から明らかなように、(D―a)以外の光重合開始剤と(D-b)の光重合開始剤のみを含むの比較例1と比較すると、(D-a)の光重合開始剤と(D-b)の光重合開始剤両方を含む実施例1の解像性、はんだ耐熱性、アウトガス耐性と絶縁信頼性が大幅に改善された。(D-a)の光重合開始剤のみを含むの比較例2と比較すると、(D-a)の光重合開始剤と(D-b)の光重合開始剤両方を含む実施例1のパターン露光後の鉛筆硬度、反射率、はんだ耐熱性と絶縁信頼性が大幅に改善された。(D-a)の光重合開始剤と(D-b)以外の光重合開始剤のみを含むの比較例4と比較すると、(D-a)の光重合開始剤と(D-b)の光重合開始剤両方を含む実施例10のパターン露光後の鉛筆硬度、反射率、はんだ耐熱性と絶縁信頼性が大幅に改善された。(D-a)の光重合開始剤と(D-b)の光重合開始剤両方を含んでいるが、(D-b)/(D-a)が10質量%を超えた比較例3と比較すると、(D-b)/(D-a)が0.25%である実施例9の解像性、反射率、はんだ耐熱性と絶縁信頼性が大幅に改善された。
【0086】
また、(A)カルボキシル基含有樹脂はフェノール骨格を有さないカルボキシル基含有樹脂を含むと、反射率と絶縁信頼性がさらに向上する傾向がある(実施例1と実施例10)。無機充填剤の配合量が適切であると、パターン露光後の鉛筆硬度、反射率、はんだ耐熱性と絶縁信頼性をさらに向上する傾向がある(実施例1~3と実施例4、5)、或は泡抜け性、解像性をさらに向上する傾向がある(実施例1~3と実施例6、7)。酸化チタンを含むと、反射率をさらに向上する傾向がある(実施例1と実施例8)。(D-a)が3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含むと、泡抜け性、解像性、アウトガス耐性と絶縁信頼性をさらに向上する傾向がある(実施例1と実施例9)。
【0087】
それらの結果から、本発明の硬化性樹脂組成物は解像性、泡抜け性、表面硬化性等に優れ、アウトガスを抑制され、その硬化物の絶縁信頼性、はんだ耐熱性等にも優れることがわかる。該硬化性樹脂組成物によりさらに高いレベルの要求を満たす絶縁材料を効率良く製造することができ、小型化、高性能化が要求される電子機器に最適である。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)無機充填剤、(C)熱硬化性樹脂、(D)光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(D)光重合開始剤として、(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤と、(D-b)式1で示される光重合開始剤と、を含み
前記(D-b)式1で示される光重合開始剤の配合量が、前記(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤の配合量に対して0.1質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
(式1中、R
23は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基を表す。R
21、R
22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表す。
Arは、単結合、または、炭素数1~10のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ピリジレン基、ナフチレン基、アントリレン基、チエニレン基、フリレン基、2,5-ピロール-ジイル基、4,4’-スチルベン-ジイル基、4,2’-スチルベン-ジイル基を表す。nは0~1の数を表す。)
【請求項2】
前記(B)無機充填剤の配合量が、硬化性樹脂組成物の全固形分量に対して35質量%以上、55質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)無機充填剤として酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤として、3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)カルボキシル基含有樹脂が、フェノール骨格を有さないものであることを特徴とする請求項
1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を樹脂層として有することを特徴とする積層体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成
物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項6に記載の積層体の樹脂層を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項9】
請求項7に記載の硬化物を備える電子部品。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化物を備える電子部品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
(D-a)アシルフォスフィン系光重合開始剤は、下記の式
(I)で示される3つ以上のアシルフォスフィン骨格を有する光重合開始剤(3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤)を含むことが好ましい。
ここで、
Aは、相互に独立して、単結合、O、SまたはNR
3を表す;
Gは、多官能化合物(コア)G-(A-H)
m+nの残基、ここで、A-Hは,それぞれ、アルコール性水酸基またはアミノ基或いはチオール基を表す;
m及びnは、m+nが、3~10の間の数であることを満たし、
mは、3~8の間の数である;
R
1及びR
2は、それぞれ、独立して、C
1-C
18のアルキル基、C
6-C
12のアリール基及びC
5-C
12のシクロアルキル基であり、それぞれ、1個以上の酸素及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換又は非置換イミノ基が介在しているか、又は介在していない、又は酸素及び/又は窒素及び/又は硫黄原子を含む5員~6員複素環式基であっても良い。ただし、前記R
1及びR
2は、それぞれ、アリール、アルキル、アリルオキシ、アルコキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されていてもよい;
R
2は、R
1-(C=O)-でもよい;
Yは、O又はSである;
R
3は、水素又はC
1~C
4のアルキル基である;
ただし、式
(I)の光重合開始剤は、光硬化性エチレン系不飽和基を含まない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
好ましくは、式(I)において、m+nは、3~8の間の数で、より好ましくは3~6の間の数である。例えば、式(I)において、mは、3~6の間の数で、より好ましくは3~5の間の数である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
式(I)において、Aが酸素の場合、G-(A-H)m+nは、多水酸基(ポリヒドロキシ)化合物であって、単量体、オリゴマー、及び高分子ポリオール、並びにそれらの混合物から成る群から選択される。Aが硫黄の場合、G-(A-H)m+nは、ポリチオール化合物である。Aが窒素の場合、G-(A-H)m+nは、線状又は分枝ポリアミンである。Aが、酸素及び/又は窒素原子及び/又は硫黄の混合の場合、G-(A-H)m+nは、異なる官能基、例えば、アミノ基及びヒドロキシ基を含む化合物である。Aが単結合の場合、G-は上記に列挙したG-(A-H)m+nから水酸基及び/又はアミノ基及び/又はチオール基を除いた残基である。
好ましくは、G-(A-H)m+nは、1500以下、より好ましくは800以下、更に好ましくは500以下の数平均分子量を有している。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
nがゼロでない場合、式(I)の化合物は、アルコール性水酸基及び/又はアミノ基及び/又はチオール基を有している。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
式(I)に包含される代表的な3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を表1に示す。これらのうち、PI-3、PI-4、PI-10、PI-11、PI-12、PI-14、PI-17が特に好ましい。このような3官能以上のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含むことで、アウトガスが抑制され、絶縁信頼性にさらに優れる硬化物を得ることができる。
市販品としては、例えば、IGM RESINS B.V.社製のOmnipol TP等が挙げられ、これらアシルフォスフィン系光重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【国際調査報告】