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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】能動輻射制御窓
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/061 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G02F1/061
G02F1/061 501
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516971
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 KR2022012293
(87)【国際公開番号】W WO2023106550
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0176479
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516149457
【氏名又は名称】韓国機械研究院
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF MACHINERY & MATERIALS
【住所又は居所原語表記】156, Gajeongbuk-ro Yuseong-gu Daejeon 34103 (KR)
(71)【出願人】
【識別番号】518438933
【氏名又は名称】センター フォー アドバンスト メタ-マテリアルズ
【氏名又は名称原語表記】CENTER FOR ADVANCED META-MATERIALS
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】リン ミギョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンドン
(72)【発明者】
【氏名】キム ワンソプ
(72)【発明者】
【氏名】イ ハクジュ
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA02
2K102BA05
2K102BB01
2K102BC04
2K102DD01
2K102EA02
2K102EA12
2K102EA16
(57)【要約】
可視光の総合透過度は、維持され、近赤外線光の総合反射度は、制御される能動輻射制御窓を提供する。ここで、能動輻射制御窓は、調節層と、フィルタ層と、共振層とを含む。調節層は、印加される電圧によって、近赤外線光の透過度又は吸収度が調節される。フィルタ層は、調節層の下側に形成され、可視光は、透過させ、近赤外線光は、反射させる。共振層は、調節層とフィルタ層の間に形成され、誘電体で形成される。 印加される電圧が変化すると、可視光の総合透過度は、維持され、近赤外線光の総合反射度は制御される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加される電圧によって、近赤外線光の透過度又は吸収度が調節される調節層と、
前記調節層の下側に形成され、可視光は、透過させ、近赤外線光は、反射させるフィルタ層と、
前記調節層と前記フィルタ層の間に形成され、誘電体で形成される共振層とを含み、
印加される電圧が変化すると、可視光の総合透過度は、維持され、近赤外線光の総合反射度は制御されることを特徴とする能動輻射制御窓。
【請求項2】
前記調節層は、
第1の電圧が印加される時の近赤外線光の透過度は、前記第1の電圧と異なる第2の電圧が印加されるときの近赤外線光の透過度よりも高くようにし、
前記第1の電圧が印加されるときの近赤外線光の吸収度は、前記第2の電圧が印加されるときの近赤外線光の吸収度よりも低くようにし、
前記第1の電圧及び前記第2の電圧が印加されると、可視光の透過度及び吸収度は、一定に維持されるようにすることを特徴とする請求項1に記載の能動輻射制御窓。
【請求項3】
前記調節層は、積層される複数のグラフェン層で形成されることを特徴とする請求項2に記載の能動輻射制御窓。
【請求項4】
前記フィルタ層は、交互に配置される誘電体層と金属層を有することを特徴とする請求項1に記載の能動輻射制御窓。
【請求項5】
前記誘電体層は、可視光及び近赤外線光に対して、光透過性素材で形成されることを特徴とする請求項4に記載の能動輻射制御窓。
【請求項6】
前記フィルタ層は、少なくとも1つ以上の誘電体層が積層して構成されることを特徴とする請求項1に記載の能動輻射制御窓。
【請求項7】
前記誘電体層のそれぞれは、相対的に高い屈折率を有する誘電物質と、相対的に低い屈折率を有する誘電物質が交互に積層されることを特徴とする請求項6に記載の能動輻射制御窓。
【請求項8】
前記共振層は、
第1の電圧が印加されるときの前記近赤外線光の総合反射度と、第2の電圧が印加されるときの前記近赤外線光の総合反射度の差を増幅させ、
前記第2の電圧が印加されるときの前記近赤外線光の総合吸収度と、前記第1の電圧が印加されるときの前記近赤外線光の総合吸収度の差を増幅させることを特徴とする請求項1に記載の能動輻射制御窓。
【請求項9】
前記共振層は、前記第1の電圧及び前記第2の電圧が印加される場合、前記可視光の総合吸収度を減少させることを特徴とする請求項8に記載の能動輻射制御窓。
【請求項10】
前記共振層は、一定の厚さで形成されることを特徴とする請求項1に記載の能動輻射制御窓。
【請求項11】
更に、前記調節層の上部に光透過性素材で形成される保護層を含むことを特徴とする請求項1に記載の能動輻射制御窓。
【請求項12】
前記保護層は、透明電極を含み、
前記透明電極は、反射防止効果により、前記可視光の総合透過度を増加させることを特徴とする請求項11に記載の能動輻射制御窓。
【請求項13】
更に、前記保護層と前記調節層の間に形成され、前記保護層と前記調節層を電気的に絶縁させる絶縁層を含むことを特徴とする請求項11に記載の能動輻射制御窓。
【請求項14】
更に、前記共振層の上側及び前記調節層の側部に配置され、前記共振層に電場を印加するための電源が供給される電極層を含むことを特徴とする請求項1に記載の能動輻射制御窓。
【請求項15】
更に、前記調節層の上部に配置され、所定の接着力を有する粘着層を含むことを特徴とする請求項1に記載の能動輻射制御窓。
【請求項16】
前記フィルタ層は、基板上に形成され、
更に、前記基板の下部に配置され、所定の接着力を有する粘着層を含むことを特徴とする請求項1に記載の能動輻射制御窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動輻射制御窓に関し、より詳しくは、可視光の総合透過度は維持され、近赤外線光の総合反射度は制御される能動輻射制御窓に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電気自動車の開発及び商用化が活発となっており、電気自動車メーカーは、電気自動車の走行距離を増やすために、多くの投資をしている。
【0003】
車両には、一般に、ガラスなどの透明材料を用いて製造される窓が装着され、夏季には、窓を通じた近赤外線の流入で、車両の内部温度が上昇して、クーラーの稼動に多くの電力が使われなければならないため、バッテリー消耗が多くなる。また、冬季には、車両暖房のために多くの電力が使用されるため、バッテリー消耗が多くなり、このような冷房及び暖房に要する電力消耗は、電気自動車の走行距離延在を難しくしている。
【0004】
一方、スマート窓は、光の透過量を自由に調節して、エネルギー効率を向上させるので、注目されている。スマート窓の類型には、外部の電圧(EC、Electrochromic)、光の波長(PC、Photochromic)、温度(TC、Thermochromic)の変化によって可逆的に色変化を誘導する変色方式(CD、Chromic Display)、分極粒子配向型素子技術(SPD、Suspended Particle Device)、高分子分散型液晶技術(PDLC、Polymer Dispersed Liquid Crystal)などがある。
【0005】
しかし、分極粒子配向型素子技術(SPD)、高分子分散型液晶技術(PDLC)、及び電圧(EC)変化による変色方式(CD)は、可視光の透明度が制御されて、車両用窓に適用するには不適であるという限界があり、窓に適用する場合、光の透過と吸収を制御して、システムに入射するエネルギーの総量は、類似しているという限界がある。そして、温度(TC)変化による変色方式(CD)は、高い活性化温度が必要であるという問題点がある。
【0006】
このような問題点は、スマート窓が車両だけでなく、建築物に適用される場合にも、同じく発生する問題点である。
【0007】
これに関連する先行技術文献としては、大韓民国公開特許公報第2016-0117326号(2016.10.10.公開)がある。
【発明の概要】
【解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされており、その目的は、可視光の総合透過度は維持され、近赤外線光の総合反射度は制御される能動輻射制御窓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、印加される電圧によって、近赤外線光の透過度又は吸収度が調節される調節層と、前記調節層の下側に形成され、可視光は、透過させ、近赤外線光は、反射させるフィルタ層と、前記調節層と前記フィルタ層の間に形成され、誘電体で形成される共振層とを含み、印加される電圧が変化すると、可視光の総合透過度は、維持され、近赤外線光の総合反射度は制御されることを特徴とする。
【0010】
前記調節層は、第1の電圧が印加される時の近赤外線光の透過度は、前記第1の電圧と異なる第2の電圧が印加されるときの近赤外線光の透過度よりも高くようにし、前記第1の電圧が印加されるときの近赤外線光の吸収度は、前記第2の電圧が印加されるときの近赤外線光の吸収度よりも低くようにし、前記第1の電圧及び前記第2の電圧が印加されると、可視光の透過度及び吸収度は、一定に維持される。
【0011】
前記調節層は、積層される複数のグラフェン層で形成される。
【0012】
前記フィルタ層は、交互に配置される誘電体層と金属層を有する。
【0013】
前記誘電体層は、可視光及び近赤外線光に対して、光透過性素材で形成される。
【0014】
前記フィルタ層は、少なくとも1つ以上の誘電体層が積層して構成される。
【0015】
前記誘電体層のそれぞれは、相対的に高い屈折率を有する誘電物質と、相対的に低い屈折率を有する誘電物質が交互に積層される。
【0016】
前記共振層は、第1の電圧が印加されるときの前記近赤外線光の総合反射度と、第2の電圧が印加されるときの前記近赤外線光の総合反射度の差を増幅させ、前記第2の電圧が印加されるときの前記近赤外線光の総合吸収度と、前記第1の電圧が印加されるときの前記近赤外線光の総合吸収度の差を増幅させる。
【0017】
前記共振層は、前記第1の電圧及び前記第2の電圧が印加される場合、前記可視光の総合吸収度を減少させる。
【0018】
前記共振層は、一定の厚さで形成される。
【0019】
更に、前記調節層の上部に光透過性素材で形成される保護層を含む。
【0020】
前記保護層は、透明電極を含み、前記透明電極は、反射防止効果により、前記可視光の総合透過度を増加させる。
【0021】
更に、前記保護層と前記調節層の間に形成され、前記保護層と前記調節層を電気的に絶縁させる絶縁層を含む。
【0022】
更に、前記共振層の上側及び前記調節層の側部に配置され、前記共振層に電場を印加するための電源が供給される電極層を含む。
【0023】
更に、前記調節層の上部に配置され、所定の接着力を有する粘着層を含む。
【0024】
前記フィルタ層は、基板上に形成され、更に、前記基板の下部に配置され、所定の接着力を有する粘着層を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、印加される電圧が変化すると、可視光の総合透過度は維持され、近赤外線光の総合反射度は、制御されることができる。そこで、夏季には、調節層に高い電圧を印加して、調節層の近赤外線光の吸収度を下げ、同時に、調節層の透過度を高めて、透過された近赤外線光がフィルター層より反射されるようにすることで、近赤外線光が内部に流入しないようにする高い反射効果を具現することができる。また、冬季には、調節層に低い電圧を印加して、調節層の近赤外線光吸収度を高め、これを共振層で増幅して、吸収された近赤外線光が熱の形態で内部によく流入するようにすることができる。これを活用すると、夏季の車両冷房又は冬季の車両暖房のためのバッテリー消耗を減らすことができ、これにより、車両の走行距離延在に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る能動輻射制御窓を示す断面図である。
図2図2a乃至図2cは、図1の能動輻射制御窓の調節層による性能を説明するためのグラフである。
図3図3は、図1の能動輻射制御窓のフィルタ層の一例を示す断面図である。
図4図4a及び図4bは、図3の能動輻射制御窓のフィルタ層による性能を説明するためのグラフである。
図5図5は、図1の能動輻射制御窓のフィルタ層の他の例を示す断面図である。
図6図6a乃至図6cは、図5の能動放射エネルギー窓のフィルタ層による性能を説明するためのグラフである。
図7図7a乃至図7cは、図1の能動輻射制御窓において、共振層のない場合の性能を示すグラフである。
図8図8a乃至図8cは、図1の能動輻射制御窓において、共振層による性能を説明するためのグラフである。
図9図9は、本発明の第2の実施形態に係る能動輻射制御窓を示す断面図である。
図10図10は、図9の能動輻射制御窓の他の例を示す断面図である。
図11図11a及び図11bは、図10の能動輻射制御窓を示す平面図である。
図12図12は、図9の能動輻射制御窓の更に他の例を示す断面図である。
図13図13a乃至図13cは、図12の能動輻射制御窓を示す平面図である。
図14図14は、本発明の第3の実施形態に係る能動輻射制御窓を示す断面図である。
図15図15a及び図15bは、本発明の第4の実施形態に係る能動輻射制御窓を示す断面図である。
【発明を実施するための具体的な内容】
【0027】
以下では、添付の図面を参照して、本発明を説明することにする。しかし、本発明は、各種の異なる形態で具現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。また、図面で本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略しており、明細書全体に亘り、類似した部分に対しては、類似した図面符号を付している。
【0028】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続、接触、結合)」されているとすると、これは、「直接的に連結」されている場合だけではなく、その中間に別の部材を挟んで「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とすると、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をも備えることができるということを意味する。
【0029】
本明細書で使用した用語は、単に、特定の実施形態を説明するために使われており、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なることを意図しない限り、複数の表現をも含む。本明細書において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたことが存在することを指定しようとすることであり、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないことと理解すべきである。
【0030】
以下、添付の図面を参考して、本発明の実施形態を詳しく説明する。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る能動輻射制御窓を示す断面図である。
【0032】
図1に示しているように、能動輻射制御窓1は、調節層100と、フィルタ層200と、共振層300とを含む。
【0033】
まず、フィルタ層200は、基板400上に設けられ、フィルタ層200の上部には、共振層300が設けられ、共振層300の上部には、調節層100が設けられる。
【0034】
能動輻射制御窓1が車両の窓に用いられる場合、基板400は、車両のガラスであり、能動輻射制御窓が建築物の窓に用いられる場合、基板400は、建築物の窓ガラスである。しかし、基板400がガラスに限定されるものではなく、車両又は建築物の他の構成であってもよい。
【0035】
例えば、基板400は、車両窓又は建築物窓に取り付けられるフィルムでもあり、PET(polyethylene terephthalate)、PE(Polyethylene)などで形成される。
【0036】
これとは異なり、基板400は、上部に形成される層を支持するベースを形成し、前記基板400が含まれる能動輻射制御窓1が、車両のガラス、建築物の窓などのような他の構造体上に取り付けられる。
【0037】
調節層100は、能動輻射制御窓1の最も外側で外部10に露出される。そこで、外部10の可視光30及び近赤外線光40は、最初に調節層100に流入される。
【0038】
調節層100は、電気的に光学特性が調節可能な物質からなる。望ましくは、調節層100は、複数のグラフェン層110で形成され、グラフェン層110は、積層して設けられる。
【0039】
調節層100は、印加される電圧によって、近赤外線光40の透過度又は吸収度を調節する。
【0040】
図2a乃至図2cは、図1の能動輻射制御窓の調節層による性能を説明するためのグラフである。
【0041】
図2aに示しているように、調節層に0.9eVの第1の電圧が印加されたとき、可視光(350~700nm)は、低い反射度(Reflectivity)を示すことに対して、近赤外線光(700nm~2.5um)の反射度は、増加することが分かる。
【0042】
一方、0.1eVの第2の電圧が調節層に印加されたときは、可視光及び近赤外線光の反射度が低く、反射度が一定に維持されることが分かる。
【0043】
また、図2bに示しているように、0.1eVの第2の電圧が調節層に印加されたときは、可視光及び近赤外線光の透過度(Transmissivity)は、一定であるが、調節層に0.9eVの第1の電圧が印加されたときは、近赤外線光の透過度は、急激に増加することが分かる。第1の電圧から第2の電圧の間の電圧を適切に印加すると、近赤外線光の透過度は、約30%の調節が可能であることが分かる。
【0044】
また、図2cに示しているように、0.1eVの第2の電圧が調節層に印加されたときは、可視光及び近赤外線光の吸収度(Absorptivity)は、一定であるが、調節層に0.9eVの第1の電圧が印加されたときは、近赤外線光の吸収度は、急激に減少することが分かる。第1の電圧から第2の電圧の間の電圧を適切に印加すると、近赤外線光の吸収度は、約30%の調節が可能であることが分かる。
【0045】
すなわち、調節層100は、第1の電圧が印加されるときの近赤外線光の透過度が、第2の電圧が印加されるときの近赤外線光の透過度よりも高くするか、第1の電圧が印加されるときの近赤外線光の吸収度が、第2の電圧が印加されるときの近赤外線光の吸収度よりも低くし、第1の電圧及び第2の電圧が印加される場合、可視光の透過度及び吸収度は、一定に維持されるようにすることができる。
【0046】
このように、調節層100のフェルミ準位(Fermi-Level)を、0.1-0.9eVに調節すると、可視光特性は維持させ、近赤外線光特性を大きく変化させることができる。換言すると、印加される電圧が変化すると、可視光の総合透過度は維持され、近赤外線光の総合反射度は、制御されることができる。
【0047】
そこで、夏季には、調節層に高い電圧を印加して、調節層の近赤外線光の吸収度を下げ、同時に調節層の透過度を高めて、透過された近赤外線光がフィルタ層200から反射されるようにすることで、近赤外線光が内部20に流入しないようにする高い反射効果を具現することができる。
【0048】
また、冬季には、調節層に低い電圧を印加して、調節層の近赤外線透過度を下げ、吸収度を高め、後述する共振層300により増幅されるようにすることで、吸収された近赤外線光が熱の形態で内部20によく流入するようにすることができる。これを活用すると、夏季の車両冷房又は冬季の車両暖房のためのバッテリー消耗を減らすことができ、これにより、車両の走行距離延在に寄与することができる。
【0049】
一方、フィルタ層200は、調節層100の下側に形成され、可視光は透過させ、近赤外線光は反射させる。
【0050】
図3は、図1の能動輻射制御窓のフィルタ層の一例を示す断面図である。図4a及び図4bは、図1の能動輻射制御窓のフィルタ層による性能を説明するためのグラフである。
【0051】
まず、図3に示しているように、フィルタ層200は、誘電体層210及び金属層220を有し、誘電体層210及び金属層220は、交互に配置される。
【0052】
フィルタ層200は、複数の誘電体層210及び金属層220を有し、誘電体層210/金属層220が繰り返す形態であるか、又は、誘電体層210/金属層220/誘電体層210の形態で、フィルタ層200の最上部及び最下部に誘電体層210が配置される形態であるなど、これに限定されるものではない。
【0053】
誘電体層210は、可視光及び近赤外線光に対して、光透過性素材からなり、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)である。また、金属層220としては、銀(Ag)が用いられる。
【0054】
図4aに示しているように、フィルタ層が5nm厚さの銀(Ag)のみからなる場合、可視光の反射度は低いが、近赤外線光の反射度も0.7以内で低い。また、フィルタ層が20nmの銀(Ag)のみなる場合は、近赤外線光の反射度が0.9を超えるが、可視光の反射度も高いという問題点がある。
【0055】
しかし、本実施形態でのように、フィルタ層200がITOからなる誘電体層210と、20nmの銀(Ag)からなる金属層220が交互に配置される形態である場合は、可視光の反射度が低いが、近赤外線光の反射度は、急激に増加することが分かる。特に、本実施形態でのように、フィルタ層は、5nm厚さの銀(Ag)のみからなるフィルタ層と同様な可視光反射度を示し、20nmの銀(Ag)のみからなるフィルタ層と同様な近赤外線光反射度を示していることが分かる。
【0056】
また、図4bに示しているように、フィルタ層が5nm厚さの銀(Ag)のみからなる場合は、可視光の透過度は高いが、近赤外線光の透過度も0.2以上である。そして、フィルタ層が20nmの銀(Ag)のみからなる場合は、近赤外線光の透過度は、低いが、可視光の透過度も0.7以下と低い問題点がある。
【0057】
しかし、本実施形態でのように、フィルタ層200がITOからなる誘電体層210と、20nmの銀(Ag)からなる金属層220が交互に配置される形態である場合は、可視光の透過度が高く、近赤外線光の透過度は急激に減少することが分かる。特に、本実施形態でのように、フィルタ層は、5nm厚さの銀(Ag)のみからなるフィルタ層と同様な可視光透過度を示し、20nmの銀(Ag)のみからなるフィルタ層と同様な近赤外線光透過度を示していることが分かる。
【0058】
フィルタ層200が、誘電体層210及び金属層220が交互に配置される形態であると、可視光及び近赤外線光境界波長での勾配をより一層大きくすることができる。換言すると、可視光及び近赤外線光境界が急激に変わることができるので、可視光透過度と、近赤外線光反射度を効果的に高めることができる。
【0059】
図5は、図1の能動輻射制御窓のフィルタ層の他の例を示す断面図である。図6a乃至図6cは、図5の能動放射エネルギー窓のフィルタ層による性能を説明するためのグラフである。
【0060】
これとは異なり、図5でのように、フィルタ層200は、複数の誘電体層211、212、213が積層して形成されることもできる。
【0061】
この場合、前記複数の誘電体層211、212、213の少なくとも1つの層(例えば、211)は、相対的に高い屈折率を持つ誘電物質と、相対的に低い屈折率を持つ誘電物質が交互に積層される構造を有し、特定の近赤外線領域で相対的に高い反射度を持つように設計される。
【0062】
すなわち、前記少なくとも1つの誘電体層211を構成する相対的に高い屈折率の誘電物質と、相対的に低い屈折率の誘電物質はそれぞれ、可視光領域と近い近赤外線領域の所定の波長(第1の波長、例えば、λ=860nm)において、1/4波長に該当する厚さを持つように四分の一波長積層(quarter-wave stack)を形成することができ、この場合、前記所定の波長で高い反射度を示す。
【0063】
同様に、前記複数の誘電体層211、212、213のうち、前記少なくとも1つの層(例えば、211)を除く他の誘電体層(例えば、212及び213)は、近赤外線領域の他の所定の波長(第2の波長及び第3の波長、例えば、λ>1000nm)で高い反射度を持つように設計され、それぞれの層に3つ以上の屈折率を持つ誘電物質が積層されて、可視光領域で低い反射度を具現することができる。
【0064】
この場合、前記積層される誘電体層の数は、2つ以上であれば十分であり、その数は、制限されない。
【0065】
以上のように、前記誘電体層が互いに積層されてフィルタ層200を構成すると、赤外線で急激な反射度を具現することができる。
【0066】
図6a~図6cに示しているように、図6aでのように、1つの誘電体層からなるフィルタ層と異なり、図6bでのような2つの誘電体層が積層されたフィルタ層、又は、図6cでのように、3つの誘電体層が積層されたフィルタ層の場合、相対的に広い赤外線領域で高い反射度を具現することができる。
【0067】
一方、共振層300は、調節層100及びフィルタ層200の間に形成される。
【0068】
共振層300は、一定の厚さで形成され、誘電体で形成される。共振層300を形成する誘電体としては、二酸化珪素(SiO2)、PMMA(polymethylmethacrylate)、イオンゲル(ion gel)などが使用可能である。
【0069】
共振層300は、印加される電圧が変化すると、近赤外線光の総合反射度の差を増幅させ、近赤外線光の総合吸収度の差を増幅させる。
【0070】
図7a~図7cは、図1の能動輻射制御窓において、共振層のない場合の性能を示すグラフである。
【0071】
万が一、本実施形態による能動輻射制御窓1が共振層を含まないと、調節層100及びフィルタ層200の間で、グラフェン変調(Modulation)効果が十分に得られにくい。
【0072】
そこで、図7aに示しているように、第1の電圧(0.9eV)が印加されたときの近赤外線光の総合反射度は、約70%であり、第2の電圧(0.1eV)が印加されたときの近赤外線光の総合反射度は、約59%であって、その差は、約11%であり、大きくないことが分かる。
【0073】
また、図7bに示しているように、第1の電圧(0.9eV)が印加されたときの近赤外線光の総合透過度と、第2の電圧(0.1eV)が印加されたときの近赤外線光の総合透過度の差が、ほとんど無いことが分かる。
【0074】
また、図7cに示しているように、第1の電圧(0.9eV)が印加されたときの近赤外線光の総合吸収度は、約20%であり、第2の電圧(0.1eV)が印加されたときの近赤外線光の総合吸収度は、約6%であって、その差は、約14%であり、大きくないことが分かり、総合してみると、全体の太陽エネルギーの4%程度だけ制御が可能である。
【0075】
図8a乃至図8cは、図1の能動輻射制御窓において、共振層による性能を説明するためのグラフである。
【0076】
本実施形態による能動輻射制御窓1が共振層を含むと、図8aから見るように、第1の電圧(0.9eV)が印加されたときの近赤外線光の総合反射度は、58%であり、第2の電圧(0.1eV)が印加されたときの近赤外線光の総合反射度は、17%であって、その差が41%で、増幅されることが分かる。
【0077】
また、図8bに示しているように、第1の電圧(0.9eV)が印加されたときの近赤外線光の総合透過度と、第2の電圧(0.1eV)が印加されたときの近赤外線光の総合透過度の差も、前記図7bと比較すると、更に増幅したことが分かる。
【0078】
また、図8cに示しているように、第1の電圧(0.9eV)が印加されたときの近赤外線光の総合吸収度は、約56%であり、第2の電圧(0.1eV)が印加されたときの近赤外線光の総合吸収度は、約9%であって、その差は、約47%で、増幅されることが分かり、総合してみると、全体の太陽エネルギーの22%程度の制御が可能である。
【0079】
このように、共振層300が設けられると、調節層100及びフィルタ層200の間でグラフェン変調効果が十分得られる。
【0080】
また、共振層300は、第1の電圧が印加されるときの近赤外線光の総合反射度と、第2の電圧が印加されるときの近赤外線光の総合反射度の差を増幅させ、第2の電圧が印加されるときの近赤外線光の総合吸収度と、第1の電圧が印加されるときの近赤外線光の総合吸収度の差を増幅させることができる。
【0081】
また、共振層300が設けられると、調節層100及びフィルタ層200の間で多重反射(Multiple Reflection)効果により、可視光吸収度が減少し、そこで、共振層300は、第1の電圧及び第2の電圧が印加される場合、可視光の総合吸収度を減少することができる(図8c参照)。これを活用すると、冬季には、第2の電圧(0.1eV)が印加されるようにして、近赤外線光の反射度が大きく減少され、近赤外線光の吸収度が大きく増加するようにして、暖房によるバッテリー消耗を減らすことができる。
【0082】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る能動輻射制御窓を示す断面図である。
【0083】
本実施形態における能動輻射制御窓2は、保護層を更に含むことを除くと、図1で説明した能動輻射制御窓1と同様であるので、同一の構成要素に対しては、同一の図面符号を付し、重複する説明は省略する。
【0084】
すなわち、図9に示しているようにに、本実施形態による能動輻射制御窓2は、更に、保護層500を含む。
【0085】
保護層500は、調節層100の上部に設けられ、光透過性素材からなる。
【0086】
前記保護層500は、前記調節層100の上部において、下部に位置する前記調節層100、共振層300、及びフィルタ層200を覆って保護する機能をし、外部10から提供される光がそのまま通過するように、光透過性素材を含む。
【0087】
一方、前記保護層500は、例えば、透明電極である。すなわち、フィルタ層200及び保護層500に電圧が印加されると、共振層300に電場が形成されて、調節層100が変調される。
【0088】
かくして、前記保護層500は、透明電極として、可視光が反射防止(Antireflection)されるようにし、このような反射防止効果により、可視光の総合透過度が増加することになる。
【0089】
前記保護層500が透明電極である場合、前記透明電極は、図9における構造の他に、他の構造に形成されることもでき、これについて説明すると、下記の通りである。
【0090】
図10は、図9の能動輻射制御窓の他の例を示す断面図である。図11a及び図11bは、図10の能動輻射制御窓を示す平面図である。図12は、図9の能動輻射制御窓の更に他の例を示す断面図である。図13a~図13cは、図12の能動輻射制御窓を示す平面図である。
【0091】
まず、図10に示しているように、前記能動輻射制御窓3において、電極層500aは、共振層300の上側及び調節層100の側部に配置される。
【0092】
電極層500aは、可視光及び近赤外線で透明であり、グラフェンで形成されることもできる。
【0093】
電極層500aには、共振層300に電場を印加するための電源が供給される。
【0094】
また、図11aに示しているように、電極層500aは、調節層100と離隔して形成され、共振層300の上部の一側枠に沿って、形成される。
【0095】
これとは異なり、図11bに示しているように、調節層100は、溝部120を有するように形成され、電極層500aは、溝部120の間に挟まる突出部510を有するように形成される。
【0096】
一方、前記電極層500aがグラフェンではなく、他の素材の透明電極である場合は、図12における能動輻射制御窓4でのように、調節層100の上部に電極層500bが更に設けられる。
【0097】
調節層100の上部に設けられる電極層500bは、調節層100の上部一側枠に沿って設けられる形態(図13a参照)、又は、調節層100の上部一部分を覆うように形成される突出延長部520を有する形態(図13b参照)、又は、調節層100の上部枠に沿って形成される形態(図13c参照)に形成される。
【0098】
この場合、前記電極層500a、500bは、金属を含むが、実施形態によって、透明な材質の電極で構成されることもできる。
【0099】
図14は、本発明の第3の実施形態に係る能動輻射制御窓を示す断面図である。
【0100】
本実施形態における能動輻射制御窓5は、更に、絶縁層600を含み、他の構成は、図9で説明した内容と同様である。
【0101】
すなわち、図14に示しているように、本実施形態による能動輻射制御窓5は、更に、絶縁層600を含む。
【0102】
絶縁層600は、保護層500と調節層100の間に形成され、保護層500と調節層100を電気的に絶縁させる。絶縁層600は、例えば、イオンゲル(ion gel)のような誘電体で形成される。
【0103】
保護層500は、前述したように、透明電極であり、この場合、絶縁層600の反対側電極の役割を果たす。かくして、調節層100と保護層500に電圧が印加されると、絶縁層600には、電場が形成され、調節層100は、変調される。
【0104】
一方、本実施形態による前記能動輻射制御窓5においても、図10図13cで説明したように、前記共振層300と前記絶縁層600の間に、前記調節層100及び前記電極層500aが同時に形成される。さらには、前記共振層300と前記絶縁層600の間に、前記電極層500bも更に形成される。
【0105】
すなわち、図10乃至図13cで説明したように、前記調節層100と前記電極層500aは、前記共振層300の上面上に所定の距離離隔して形成され、前記調節層100と前記電極層500aの上面上に、前記絶縁層600が形成される。
【0106】
さらには、図12で説明したように、前記電極層500bも更に形成され、前記調節層100と前記電極層500a、500bの上面上に、前記絶縁層600が形成されることもできる。
【0107】
図15a及び図15bは、本発明の第4の実施形態に係る能動輻射制御窓を示す断面図である。
【0108】
まず、図15aに示しているように、本実施形態における前記能動輻射制御窓6は、更に、調節層100の上部に形成される粘着層700を含む。
【0109】
粘着層700は、所定の粘着力を有する物質を含み、これにより、前記能動輻射制御窓6は、窓(window)のような外部構造体上に取り付けられる。ここで、前記粘着層700の上面が所定の粘着力を持つように形成され、これに前記粘着層700の上面が、外部構造体上に取り付けられる。
【0110】
一方、図15aでは、図1の能動輻射制御窓1の最上層を形成する調節層100の上部に粘着層700が取り付けられることを例示したが、図9乃至図12て説明した能動輻射制御窓2、3、4の最上層を形成する保護層500又は電極層500a、500bの上部は勿論のこと、図14で説明した能動輻射制御窓5の最上層を形成する保護層500の上部にも形成されることができる。
【0111】
これとは異なり、図15bに示しているように、本実施形態における前記能動輻射制御窓7は、更に、基板400の下部に形成される粘着層700を含む。
【0112】
粘着層700は、所定の粘着力を有する物質を含み、これにより、前記能動輻射制御窓6は、窓(window)のような外部構造体上に取り付けられることは、前述した通りである。ここで、前記粘着層700の下面が所定の粘着力を持つように形成され、これに前記粘着層700の下面が、外部構造体上に取り付けられる。
【0113】
以上で説明した実施形態によると、印加される電圧が変化すると、可視光の総合、透過度は維持され、近赤外線光の総合反射度は、制御される。そこで、夏季には、調節層に高い電圧を印加して、調節層の近赤外線光の吸収度を下げ、同時に、調節層の透過度を高めて、透過された近赤外線光がフィルタ層より反射されるようにすることで、近赤外線光が内部に流入しないようにする高い反射効果を具現することができる。また、冬季には、調節層に低い電圧を印加して、調節層の近赤外線光吸収度を高め、これを共振層で増幅して、吸収された近赤外線光が熱の形態で内部によく流入するようにすることができる。 これを活用すると、夏季の車両冷房又は冬季の車両暖房のためのバッテリー消耗を減らすことができ、これにより、車両の走行距離延在に寄与することができる。
【0114】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更せず、他の具体的な形態に容易に変形できるということを理解するだろう。そのため、以上で記述した実施形態は、すべての面で例示であり、限定的ではないことと理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は、分散して実施することもでき、同様に、分散したことと説明されている構成要素も、結合された形態に実施されることができる。本発明の範囲は、後述する請求範囲により示され、請求範囲の意味及び範囲、そして、その均等概念から導出される全ての変更又は変形した形態が、本発明の範囲に含まれることと解析すべきである
【符号の説明】
【0115】
1、2、3、4、5、6、7 : 能動輻射制御窓
100: 調節層 110: グラフェン層
200: フィルタ層 210: 誘電体層
220: 金属層 300: 共振層
400: 基板 500 : 保護層
500a、500b: 電極層 600: 絶縁層
700: 粘着層
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
【国際調査報告】