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特表2024-5352872次元粒子、導電性膜、導電性ペーストおよび2次元粒子の製造方法
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  • 特表-2次元粒子、導電性膜、導電性ペーストおよび2次元粒子の製造方法 図1
  • 特表-2次元粒子、導電性膜、導電性ペーストおよび2次元粒子の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】2次元粒子、導電性膜、導電性ペーストおよび2次元粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/00 20060101AFI20240920BHJP
   H01B 1/04 20060101ALI20240920BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20240920BHJP
   C01B 32/921 20170101ALI20240920BHJP
【FI】
H01B1/00 Z
H01B1/04
H01B1/24 A
C01B32/921
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517153
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2022034785
(87)【国際公開番号】W WO2023048087
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/247,973
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(71)【出願人】
【識別番号】515015252
【氏名又は名称】ドレクセル ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100206324
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】シェヒレフ,ミハイル
(72)【発明者】
【氏名】シャック,クリストファー ユジーン
(72)【発明者】
【氏名】ゴゴツィ,ユーリ
(72)【発明者】
【氏名】小河 佑介
(72)【発明者】
【氏名】小柳 雅史
【テーマコード(参考)】
4G146
5G301
【Fターム(参考)】
4G146MA09
4G146MA19
4G146MB02
4G146MB13
4G146MB27
4G146NA02
4G146NA04
4G146NA07
4G146NA21
4G146NA25
4G146NB02
4G146NB08
4G146NB16
4G146NB18
4G146PA07
4G146PA11
4G146PA13
4G146PA15
5G301BA01
5G301DA18
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】本発明は、高湿条件下であっても高い導電率を維持しうる導電性膜を提供可能な2次元粒子の実現を目的とする。また、本発明は、かかる2次元粒子の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の2次元粒子は、1つまたは複数の層を有する2次元粒子であって、
金属カチオンと塩素原子とを含み、
上記層が、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
上記金属カチオンは、NaおよびKからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンを含み、
Liの含有率は、0.002質量%未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の層を有する2次元粒子であって、
金属カチオンを含み、
前記層が、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
前記修飾または終端Tは、塩素原子を含み、
前記金属カチオンは、NaおよびKからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンを含み、
Liの含有率は、0.002質量%未満である、2次元粒子。
【請求項2】
燃焼イオンクロマトグラフィにより測定される塩素原子の含有率が、前記層および前記金属カチオンの合計中、3質量%以上である、請求項1に記載の2次元粒子。
【請求項3】
NaおよびKの合計の含有率は、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1または2に記載の2次元粒子。
【請求項4】
2次元面の長径の平均値は、1μm以上20μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の2次元粒子。
【請求項5】
平均厚さは、1nm以上10nm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の2次元粒子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の2次元粒子を含む、導電性膜。
【請求項7】
導電率は、2,000S/cm以上である、請求項6に記載の導電性膜。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の2次元粒子と分散媒とを含む、導電性ペースト。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の2次元粒子と樹脂とを含む、導電性複合材料。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の2次元粒子を含む、電磁シールド。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載の2次元粒子を含む、吸着材。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項に記載の2次元粒子を含む、生体電極。
【請求項13】
(a)以下の式:
AX
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される前駆体を準備すること、
(b)エッチング液を用いて、上記前駆体から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行うこと、
(c)上記エッチング処理により得られたエッチング処理物を、水洗浄する工程を含む、水洗浄処理を行うこと、
(d)上記水洗浄により得られた水洗浄処理物と、金属含有化合物とを混合する工程を含む、インターカレーション処理を行うこと、
(e)上記インターカレーション処理して得られたインターカレーション処理物を撹拌する工程を含む、デラミネーション処理を行うこと、
(f)デラミネーション処理して得られたデラミネーション処理物を、水で洗浄して2次元粒子を得ること
を含み、
上記エッチング液における塩素原子の濃度は、10mol/L以上であり、
上記金属含有化合物は、NaおよびKからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、2次元粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元粒子、導電性膜、導電性ペースト2次元粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高い導電性を有する新規材料としてMXeneが注目されている。MXeneは、いわゆる2次元材料の1種であり、後述するように、1つまたは複数の層の形態を有する層状材料である。一般的に、MXeneは、かかる層状材料の粒子(粉末、フレーク、ナノシート等を含みうる)や、配列構造(フィルム、ファイバー、コーティング、組成物等)の形態を有する。
【0003】
現在、種々の電気デバイスへのMXeneの応用に向けて様々な研究がなされている。上記応用に向け、MXeneを含む材料の導電性をより高めることが求められている。その検討の一環として、インターカレーションされた多層化物或いは単一層の薄片化されたコロイドとして得られるMXeneのデラミネーション処理法について検討されている。
【0004】
非特許文献1には、Liを用いたインターカレーションにより得られた懸濁液に、塩酸等を添加してpHを約2.9に調整することで、MXene層間のLi量をコントロールできることが示されている。
【0005】
非特許文献2には、TMAOH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用い、ハンドシェイクすることで、多層MXeneのデラミネーション処理を行ったことが示されている。
【0006】
また非特許文献3には、化学エッチングする際に使用したLiClに由来して、MXeneの層間スペースにLiカチオンが存在すること、および、Liカチオンを他の金属イオンと交換することにより、粉末の構造変化が生じることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hongwu chen et al., "Pristine Titanium Carbide MXene Films with Environmentally Stable Conductivity and Superior Mechanical Strength" Adv. Funct. Mater. 2020, 30, 1906996
【非特許文献2】Mohamed Alhabeb et al., "Guidelines for Synthesis and Processing of Two-Dimensional Titanium Carbide (Ti3C2Tx MXene)" Chem. Mater. 2017, 29, 7633-7644
【非特許文献3】Michael Ghidiu et al., "Ion-Exchange and Cation Solvation Reactions in Ti3C2 MXene" Chem. Mater. 2016, 28, 10, 3507-3514
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に記載のMXeneは、Liが完全に除去されていないため、高湿条件下で導電率が低下する。非特許文献2に記載のMXeneでは、多層MXeneのデラミネーション処理に用いたTMAOHが残存しており、導電率が低く、また吸湿により導電率がさらに低下するため信頼性が十分に満足できるものではなかった。また、非特許文献3に記載のMXeneでは、Liカチオンが他の金属イオンに交換されているものの、該MXeneは、多層MXeneのまま存在しているため、導電率が低く、また、多層MXeneであるため導電性膜を形成するのが容易でない。
【0009】
本発明は、高湿条件下であっても高い導電率を維持しうる導電性膜を提供可能な2次元粒子の実現を目的とする。また、本発明は、かかる2次元粒子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]1つまたは複数の層を有する2次元粒子であって、
金属カチオンを含み、
上記層が、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
上記修飾または終端Tは、塩素原子を含み、
上記金属カチオンは、NaおよびKからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンを含み、
Liの含有率は、0.002質量%未満である、2次元粒子。
[2]燃焼イオンクロマトグラフィにより測定される塩素原子の含有率が、前記層および金属カチオンの合計中、3質量%以上である、[1]に記載の2次元粒子。
[3]NaおよびKの合計の含有率は、0.1質量%以上10質量%以下である、[1]または[2]に記載の2次元粒子。
[4]2次元面の長径の平均値は、1μm以上20μm以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の2次元粒子。
[5]平均厚さは、1nm以上10nm以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の2次元粒子。
[6][1]~[5]のいずれか1つに記載の2次元粒子を含む、導電性膜。
[7]導電率は、2,000S/cm以上である、[6]に記載の導電性膜。
[8][1]~[5]のいずれか1つに記載の2次元粒子と分散媒とを含む、導電性ペースト。
[9][1]~[5]のいずれか1つに記載の2次元粒子と樹脂とを含む、導電性複合材料。
[10][1]~[5]のいずれか1つに記載の2次元粒子を含む、電磁シールド。
[11][1]~[5]のいずれか1つに記載の2次元粒子を含む、吸着材。
[12][1]~[5]のいずれか1つに記載の2次元粒子を含む、生体電極。
[13](a)以下の式:
AX
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される前駆体を準備すること、
(b)エッチング液を用いて、上記前駆体から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行うこと、
(c)上記エッチング処理により得られたエッチング処理物を、水洗浄する工程を含む、水洗浄処理を行うこと、
(d)上記水洗浄により得られた水洗浄処理物と、金属含有化合物とを混合する工程を含む、インターカレーション処理を行うこと、
(e)上記インターカレーション処理して得られたインターカレーション処理物を撹拌する工程を含む、デラミネーション処理を行うこと、
(f)デラミネーション処理して得られたデラミネーション処理物を、水で洗浄して2次元粒子を得ること
を含み、
上記エッチング液における塩素原子の濃度は、10mol/L以上であり、
上記金属含有化合物は、NaおよびKからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、2次元粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高湿条件下であっても高い導電率を維持しうる2次元粒子を実現できる。また、本発明によれば、かかる2次元粒子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の1つの実施形態における層状材料のMXene粒子を示す概略模式断面図であって、(a)は単層MXene粒子を示し、(b)は多層(例示的に二層)MXene粒子を示す。
図2】本発明の1つの実施形態における導電性膜を示す概略模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1:2次元粒子)
以下、本発明の1つの実施形態における2次元粒子について詳述するが、本発明はかかる実施形態に限定されない。
【0014】
本実施形態における2次元粒子は、1つまたは複数の層を有する層状材料の2次元粒子であって、金属カチオンを含む。
【0015】
上記層は、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体(該層本体は、各XがMの八面体アレイ内に位置する結晶格子を有しうる)と、該層本体の表面(より詳細には、該層本体の互いに対向する2つの表面の少なくとも一方)に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、前記修飾または終端Tは、少なくとも塩素原子を含む。
【0016】
上記層状材料は、層状化合物として理解され得、「M」とも表され、sは任意の数であり、従来、sに代えてxまたはzが使用されることもある。代表的には、nは、1、2、3または4でありうるが、これに限定されない。
Tは、好ましくは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種であり得る。
【0017】
MXeneの上記式中、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Sc、Y、WおよびMnからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびMnからなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましく、Ti、V、CrおよびMoからなる群より選択される少なくとも1つであることがさらに好ましい。
【0018】
MXeneは、上記の式:Mが、以下のように表現されるものが知られている。
ScC、TiC、TiN、ZrC、ZrN、HfC、HfN、VC、VN、NbC、TaC、CrC、CrN、MoC、Mo1.3C、Cr1.3C、(Ti,V)C、(Ti,Nb)C、WC、W1.3C、MoN、Nb1.3C、Mo1.30.6C(上記式中、「1.3」および「0.6」は、それぞれ約1.3(=4/3)および約0.6(=2/3)を意味する。)、
Ti、Ti、Ti(CN)、Zr、(Ti,V)、(TiNb)C、(TiTa)C、(TiMn)C、Hf、(HfV)C、(HfMn)C、(VTi)C、(CrTi)C、(CrV)C、(CrNb)C、(CrTa)C、(MoSc)C、(MoTi)C、(MoZr)C、(MoHf)C、(MoV)C、(MoNb)C、(MoTa)C、(WTi)C、(WZr)C、(WHf)C
Ti、V、Nb、Ta、(Ti,Nb)、(Nb,Zr)、(TiNb)C、(TiTa)C、(VTi)C、(VNb)C、(VTa)C、(NbTa)C、(CrTi)C、(Cr)C、(CrNb)C、(CrTa)C、(MoTi)C、(MoZr)C、(MoHf)C、(Mo,V)C、(MoNb)C、(MoTa)C、(WTi)C、(WZr)C、(WHf)C、(Mo2.71.3)C(上記式中、「2.7」および「1.3」は、それぞれ約2.7(=8/3)および約1.3(=4/3)を意味する。)、
(Mo,V)
【0019】
代表的には、上記の式において、Mがチタンまたはバナジウムであり、Xが炭素原子、窒素原子又はその両方でありうる。例えば、MAX相は、TiAlCであり、MXeneは、Tiである(換言すれば、MがTiであり、XがCであり、nが2であり、mが3である)。
【0020】
なお、本発明において、MXeneは、前駆体のMAX相に由来するA原子を比較的少量、例えば元のA原子に対して10質量%以下で含んでいてもよい。A原子の残留量は、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下でありうる。しかしながら、A原子の残留量は、10質量%を超えていたとしても、2次元粒子の用途や使用条件によっては問題がない場合もありうる。
【0021】
本明細書において、上記層をMXene層という場合があり、上記2次元粒子をMXene2次元粒子またはMXene粒子という場合がある。
【0022】
本実施形態の2次元粒子は、図1(a)に模式的に例示する1つの層のMXeneの粒子(以下、単に「MXene粒子」という)10a(単層MXene粒子)を含む集合物である。MXene粒子10aは、より詳細には、Mで表される層本体(M層)1aと、層本体1aの表面(より詳細には、各層にて互いに対向する2つの表面の少なくとも一方)に存在する修飾または終端T3a、5aとを有するMXene層7aである。よって、MXene層7aは、「M」とも表され、sは任意の数である。なお図1(a)において、金属カチオンは図示していない。
【0023】
本実施形態の2次元粒子は、1つまたは複数の層を含みうる。複数の層のMXene粒子(多層MXene粒子)として、図1(b)に模式的に示す通り、2つの層のMXene粒子10bが挙げられるが、これらの例に限定されない。図1(b)中の、1b、3b、5b、7bは、前述の図1(a)の1a、3a、5a、7aと同じである。多層MXene粒子の、隣接する2つのMXene層(例えば7aと7b)は、必ずしも完全に離間していなくてもよく、部分的に接触していてもよい。上記MXene粒子10aは、上記多層MXene粒子10bが個々に分離されて1つの層で存在するものであり、分離されていない多層MXene粒子10bが残存し、上記単層MXene粒子10aと多層MXene粒子10bの混合物である場合がある。なお図1(b)において、金属カチオンは図示していない。
【0024】
本実施形態を限定するものではないが、MXene粒子に含まれる各層(上記のMXene層7a、7bに相当する)の厚さは、例えば0.8nm以上5nm以下、特に0.8nm以上3nm以下である(主に、各層に含まれるM原子層の数により異なりうる)。含まれうる多層MXene粒子の、個々の積層体について、層間距離(または空隙寸法、図1(b)中にΔdにて示す)は、例えば0.8nm以上10nm以下、特に0.8nm以上5nm以下、より特に約1nmであり、層の総数は、2以上、20,000以下でありうる。
【0025】
本実施形態の2次元粒子は、上記含みうる多層MXene粒子が、デラミネーション処理を経て得られた、層数の少ないMXene粒子であることが好ましい。上記「層数が少ない」とは、例えばMXene層の積層数が6層以下であることをいう。また、層数の少ない多層MXene粒子の積層方向の厚さは、15nm以内であることが好ましく、さらに10nm以下であることが好ましい。以下、この「層数の少ない多層MXene粒子」を「少層MXene粒子」ということがある。また、単層MXene粒子と少層MXene粒子を併せて「単層・少層MXene粒子」ということがある。
【0026】
本実施形態の2次元粒子は、好ましくは、単層MXene粒子と少層MXene粒子、すなわち単層・少層MXene粒子を含む。本実施形態の2次元粒子は、厚さが15nm以下である単層・少層MXene粒子の割合は、90体積%以上であることが好ましく、より好ましくは95体積%以上である。
【0027】
上記金属カチオンは、後述する2次元粒子の製造方法で用いる、金属含有化合物に由来し、NaおよびKからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンを含む。
【0028】
上記金属カチオンは、Liカチオンを含まないことが好ましい。金属カチオンがLiカチオンを含まないとは、Liカチオンの濃度が、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)で測定したときに、金属カチオンの全量中20質量ppm未満であることをいう。
【0029】
上記金属カチオンは、代表的には、上記層上に存在している。すなわち、上記層に接していてもよく、上記層上に他の元素を介して存在していてもよい。
【0030】
上記2次元粒子(例えば、上記層および上記金属カチオンの合計)における、上記金属カチオンの含有率は、例えば20質量%以下、さらに10質量%以下、とりわけ5質量%以下、特に3質量%以下であってよく、例えば0.1質量%以上、さらに0.2質量%以上であってよい。
【0031】
上記金属カチオンの含有率は、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等により測定可能である。
【0032】
上記2次元粒子には、上記修飾または終端Tとして存在する塩素原子以外の塩素原子が存在していてもよい。
【0033】
上記層および上記金属カチオンの合計における、塩素原子の含有率は、上記層および上記金属カチオンの合計中、3質量%以上であり、好ましくは3.3質量%以上、さらに好ましくは3.5質量%以上であり、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4.5質量%以下である。なお、上記2次元粒子における塩素原子の含有率は、上記層および上記金属カチオンに含まれる塩素原子の含有率であり、上記2次元粒子とそれ以外の材料とを混合した場合においても、上記層および上記金属カチオン以外の成分に含まれる塩素原子は上記含有率に算入されない。
【0034】
2次元粒子に含まれる塩素原子の含有率は、燃焼イオンクロマトグラフィにより測定できる。
【0035】
なお本明細書において、ある元素について「原子」という場合、その元素の酸化数は0に限られず、その元素の取りうる酸化数の範囲内において、任意の数でありうる。
【0036】
上記2次元粒子では、Liの含有率が抑制されている。上記2次元粒子を用いた場合、高湿条件下、例えば相対湿度99%の条件下であっても、高い導電率を維持可能な導電性膜を提供できる。上記2次元粒子(例えば、上記層および上記金属カチオンの合計)におけるLiの含有率は、0.002質量%未満であり、好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0001質量%以下である。
【0037】
Liの含有率は、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等により測定可能である。なおICP-AESにより測定されるLiの検出限界は、0.0001質量%である。
【0038】
なお、本実施形態の2次元粒子は、アミンを含まない。非特許文献2に記載されるように、TMAOHを用いてMXeneのデラミネーション処理を行った場合、単層MXeneは得られるが、洗浄してもTMAOHがMXene層表面に残存し、それが原因で導電率が低くなる。TMAOHは、250℃以上500℃以下の高温状態で除去可能であるが、該高温状態では、MXeneが酸化、分解するおそれがある。それに対して本実施形態の2次元粒子は、MXeneのデラミネーション処理にTMAOHを使用したものでなく、アミンを含まない。なお、本明細書における「アミンを含まない」とは、ガスクロマトグラフィ質量分析(GC-MS)装置を用いて測定したときに、TMAOH由来のトリエチルアミン(m/z=42,53,54)が10質量ppm以下であることをいう。
【0039】
本明細書において、2次元粒子とは、(2次元粒子の2次元面の長径の平均値)/(2次元粒子の厚さの平均値)の比率が1.2以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上の粒子をいう。上記2次元粒子の2次元面の長径の平均値と、上記2次元粒子の厚さの平均値は、後述する方法で求めればよい。
【0040】
(2次元粒子の2次元面の長径の平均値)
本実施形態の2次元粒子は、2次元面の長径の平均値が、1μm以上、20μm以下である。以下、2次元面の長径の平均値を「平均フレークサイズ」ということがある。
【0041】
上記平均フレークサイズが大きいほど、導電性膜の導電率は大きくなる。本実施形態の2次元粒子は、平均フレークサイズが1.0μm以上であり大きいため、この2次元粒子を用いて形成された膜、例えばこの2次元粒子を積層させて得られる膜は、2000S/cm以上の導電率を達成できる。2次元面の長径の平均値は、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.5μm以上である。非特許文献3では、MXeneに超音波処理を施すことでMXeneのデラミネーションを行っているが、超音波処理により大部分のMXeneが長径で約数百nmに小径化するため、非特許文献3で得られた単層MXeneで形成される膜は導電率が低いと考えられる。
【0042】
2次元面の長径の平均値は、溶液中の分散性の観点から、20μm以下であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0043】
上記2次元面の長径は、後記の実施例に示す通り、電子顕微鏡写真において、各MXene粒子を楕円形状に近似したときの長径をいい、上記2次元面の長径の平均値は、80粒子以上の上記長径の個数平均をいう。電子顕微鏡として、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)写真を用いることができる。
【0044】
本実施形態の2次元粒子の長径の平均値は、該2次元粒子を含む導電性膜を溶媒に溶解させ、上記2次元粒子を該溶媒に分散させて測定してもよい。または、上記導電性膜のSEM画像から測定してもよい。
【0045】
(2次元粒子の厚さの平均値)
本実施形態の2次元粒子の厚さの平均値は、1nm以上、10nm以下であることが好ましい。上記厚さは、好ましくは7nm以下であり、より好ましくは5nm以下である。一方、単層MXene粒子の厚さを考慮すると、2次元粒子の厚さの下限は1nmとなりうる。
【0046】
上記2次元粒子の厚さの平均値は、原子間力顕微鏡(AFM)写真または透過型電子顕微鏡(TEM)写真に基づく数平均寸法(例えば少なくとも40個の数平均)として求められる。
【0047】
(実施形態2:2次元粒子の製造方法)
以下、本発明の1つの実施形態における2次元粒子の製造方法について詳述するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0048】
本実施形態の2次元粒子の製造方法は、
(a)以下の式:
AX
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される前駆体を準備すること、
(b)エッチング液を用いて、上記前駆体から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行うこと、
(c)上記エッチング処理により得られたエッチング処理物を、水洗浄する工程を含む、水洗浄処理を行うこと、
(d)上記水洗浄により得られた水洗浄処理物と、金属含有化合物とを混合する工程を含む、インターカレーション処理を行うこと、
(e)上記インターカレーション処理して得られたインターカレーション処理物を撹拌する工程を含む、デラミネーション処理を行うこと、
(f)デラミネーション処理して得られたデラミネーション処理物を、水で洗浄して2次元粒子を得ること
を含み、
上記エッチング液における塩素原子の濃度は、10mol/L以上であり、
上記金属含有化合物は、NaおよびKからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0049】
通常、周期表の第3周期から第5周期の金属のカチオンを含む金属含有化合物を用いてインターカレーション処理を行った場合、これらの金属カチオンの水和エンタルピーはLiイオンよりも低いためデラミネーションがほとんど進行しない。しかしながら、本発明者らの検討によれば、Liイオン以外の金属カチオンを含む金属化合物を用いた場合でも、エッチング液における塩素原子の濃度を10mol/L以上とすることで、層間に水が浸入しやすくなり、デラミネーションが十分に進行しうる。特定の理論に限定されないが、エッチング液中において、塩素原子の立体効果が十分に発揮されるためと考えられる。
【0050】
以下、各工程について詳述する。
【0051】
・工程(a)
まず、所定の前駆体を準備する。本実施形態において使用可能な所定の前駆体は、MXeneの前駆体であるMAX相であり、
以下の式:
AX
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される。
【0052】
上記M、X、nおよびmは、第1実施形態で説明した通りである。Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、通常はA族元素、代表的にはIIIA族およびIVA族であり、より詳細にはAl、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、SおよびCdからなる群より選択される少なくとも1種を含み得、好ましくはAlである。
【0053】
MAX相は、Mで表される2つの層(各XがMの八面体アレイ内に位置する結晶格子を有しうる)の間に、A原子により構成される層が位置した結晶構造を有する。MAX相は、代表的にm=n+1の場合、n+1層のM原子の層の各間にX原子の層が1層ずつ配置され(これらを合わせて「M層」とも称する)、n+1番目のM原子の層の次の層としてA原子の層(「A原子層」)が配置された繰り返し単位を有するが、これに限定されない。
【0054】
上記MAX相は、既知の方法で製造することができる。例えばTiC粉末、Ti粉末およびAl粉末を、ボールミルで混合し、得られた混合粉末をAr雰囲気下で焼成し、焼成体(ブロック状のMAX相)を得る。その後、得られた焼成体をエンドミルで粉砕して次工程用の粉末状MAX相を得ることができる。
【0055】
同様の層状構造を有する粒子をMAX相として用いることもできる。このような材料としては、ZrAl、ZrAl、Zr(AlC、ZrAl、ZrAl、ZrAl及びZrAlが挙げられる。
【0056】
・工程(b)
工程(b)では、エッチング液を用いて、上記前駆体から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行う。
【0057】
上記エッチング液は、塩素原子を含む。エッチング液における塩素原子の濃度は、10mol/L以上であり、好ましくは10.5mol/L以上であり、例えば20mol/L以下、さらに15mol/L以下であってよい。
【0058】
上記エッチング液は、HClを含むことが好ましく、HFをさらに含んでいてもよい。エッチング液におけるHClの濃度は、10mol/L以上であり、好ましくは10.5mol/L以上であり、例えば20mol/L以下、さらに15mol/L以下であってよい。また、エッチング液におけるHFの濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下であり、0質量%以上であり、例えば1質量%以上、さらに3質量%以上であってもよい。
【0059】
上記エッチング液は、リチウム原子を含まないことが好ましい。なお、エッチング液の「Li原子を含まない」とは、エッチング液中のLi濃度が、例えば燃焼-イオンクロマトグラフィで測定したときに20質量ppm未満であることをいう。
【0060】
上記エッチング液を用いたエッチングの操作およびその他の条件には、従来実施されている条件を採用できる。
【0061】
・工程(c)
上記エッチング処理により得られたエッチング処理物を、水洗浄する。水洗浄を行うことによって、上記エッチング処理で用いた酸等を十分に除去できる。エッチング処理物と混合させる水の量や洗浄方法は特に限定されない。例えば水を加えて撹拌、遠心分離等を行うことが挙げられる。撹拌方法として、ハンドシェイク、オートマチックシェーカー、シェアミキサー、ポットミル等を用いた撹拌が挙げられる。撹拌速度、撹拌時間等の撹拌の程度は、処理対象となる酸処理物の量や濃度等に応じて調整すればよい。上記水での洗浄は1回以上行えばよい。好ましくは水での洗浄を複数回行うことである。例えば具体的に、(i)(エッチング処理物または下記(iii)で得られた残りの沈殿物に)水を加えて撹拌、(ii)撹拌物を遠心分離する、(iii)遠心分離後に上澄み液を廃棄する、の工程(i)~(iii)を2回以上、例えば15回以下の範囲内で行うことが挙げられる。
【0062】
・工程(d)
上記水洗浄により得られた水洗浄処理物と、金属カチオンを含む金属含有化合物とを混合する工程を含む、インターカレーション処理を行う。これにより、金属カチオンが層間にインターカレートされる。
【0063】
上記金属カチオンは、NaカチオンおよびKカチオンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0064】
上記金属カチオンを含む金属含有化合物として、上記金属カチオンと陽イオン、陰イオンが結合したイオン性化合物が挙げられる。例えば上記金属カチオンの、ヨウ化物、リン酸塩、硫酸塩を含む硫化物塩、硝酸塩、酢酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。
【0065】
金属含有化合物を含むインターカレーション処理用配合物における、金属含有化合物の含有率は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。一方、溶液中の分散性の観点からは、インターカレーション処理用配合物における、金属含有化合物の含有率は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0066】
上記インターカレーション処理用配合物は、リチウム原子を含まないことが好ましい。なお、インターカレーション処理用配合物の「Li原子を含まない」とは、インターカレーション処理用配合物中のLi濃度が、例えば燃焼-イオンクロマトグラフィで測定したときに20質量ppm未満であることをいう。
【0067】
インターカレーション処理の具体的な方法は特に限定されず、例えば、上記水洗浄処理物に対して、金属含有化合物を混合し、撹拌を行ってもよいし、静置してもよい。例えば室温で撹拌することが挙げられる。上記撹拌の方法は、例えば、スターラー等の撹拌子を用いる方法、撹拌翼を用いる方法、ミキサーを用いる方法、および遠心装置を用いる方法等が挙げられ、撹拌時間は、単層・少層MXene粒子の製造規模に応じて設定することができ、例えば12~24時間の間で設定できる。
【0068】
・工程(e)
工程(e)では、インターカレーション処理を行って得られたインターカレーション処理物を撹拌する工程を含む、デラミネーション処理を行う。このデラミネーション処理により、MXene粒子の単層・少層化を図ることができる。
【0069】
デラミネーション処理の条件は特に限定されず、既知の方法で行うことができる。例えば撹拌方法として、超音波処理、ハンドシェイク、オートマチックシェーカー等を用いた撹拌が挙げられる。撹拌速度、撹拌時間等の撹拌の程度は、処理対象となる処理物の量や濃度等に応じて調整すればよい。例えば、上記インターカレーション後のスラリーを、遠心分離して上澄み液を廃棄した後に、残りの沈殿物に純水添加-例えばハンドシェイクまたはオートマチックシェーカーによる撹拌を行って層分離を行うことが挙げられる。未剥離物の除去は、遠心分離して上澄みを廃棄後、残りの沈殿物を水で洗浄する工程が挙げられる。例えば、(i)上澄み廃棄後の残りの沈殿物に、純水を追加して撹拌、(ii)遠心分離し、(iii)上澄み液を回収する。この(i)~(iii)の操作を、1回以上、好ましくは2回以上、10回以下繰り返して、デラミネーション処理物として、単層・少層MXene粒子を含む上澄み液を得ることが挙げられる。または、この上澄み液を遠心分離して、遠心分離後の上澄み液を廃棄し、デラミネーション処理物として、単層・少層MXene粒子を含むクレイを得てもよい。
【0070】
本実施形態の製造方法では、デラミネーションとして超音波処理を行わなくともよい。超音波処理を行わない場合、粒子破壊が生じ難く、粒子の層に平行な平面、すなわち2次元面の大きい単層・少層MXene粒子を得ることが容易となる。
【0071】
撹拌して得られたデラミネーション処理物は、そのまま単層・少層MXene粒子を含む2次元粒子として用いることができ、必要に応じ水で洗浄してもよい。
【0072】
(実施形態3:導電性膜)
本実施形態の2次元粒子の用途として、2次元粒子を含有する導電性膜が挙げられる。図2を参照して、本実施形態の導電性膜を説明する。図2では2次元粒子10のみが積層して得られた導電性膜30を例示しているが、これに限定されない。導電性膜は、必要に応じて、膜形成時に添加されるバインダー等の添加物が含まれていてもよい。上記添加物は、導電性膜(乾燥時)に占める割合で好ましくは30体積%以下、更に好ましくは10体積%以下、より更に好ましくは5体積%以下であり、最も好ましくは0体積%である。
【0073】
上記バインダー等を使用せずに導電性膜を作製する方法として、上記デラミネーションにて得られた、2次元粒子を含む上澄み液を、吸引ろ過すること、または、2次元粒子を分散媒と混合し適度な濃度のスラリーとした形態でスプレーした後に分散媒を乾燥等により除去する工程を1回もしくは複数回行うことで、導電性膜を作製できる。上記スプレーの方法は、例えば、エアレススプレー法またはエアースプレー法であってよく、具体的には、1流体ノズル、2流体ノズル、エアブラシ等のノズルを用いてスプレーする方法が挙げられる。スラリーに含まれうる分散媒としては、水;N-メチルピロリドン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、酢酸等の有機系媒体等が挙げられる。
【0074】
上記バインダーとしては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ乳酸等が挙げられる。
【0075】
上記導電性膜の導電率は、好ましくは2,000S/cm以上、より好ましくは5,000S/m以上であり、例えば100,000S/cm以下、さらには50,000S/cm以下であってよい。
【0076】
本実施形態の導電性膜の導電率は、導電性膜の厚さと、4探針法で測定した導電性膜の表面抵抗率を下記式に代入して求められる。
導電率[S/cm]=1/(導電性膜の厚さ[cm]×導電性膜の表面抵抗率[Ω/□])
【0077】
本実施形態の2次元粒子を用いたその他の用途として、上記2次元粒子を含有する導電性ペースト、上記2次元粒子と樹脂を含有する導電性複合材料が挙げられる。これらも高導電率や、高湿条件下であっても導電率低下がないことが求められる用途に適している。
【0078】
上記導電性ペースト、導電性複合材料に含まれうる樹脂としては、導電性膜に含まれうる樹脂と同様の樹脂が挙げられる。また、導電性ペーストに含まれうる分散媒としては、水;N-メチルピロリドン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、酢酸等の有機系媒体等が挙げられる。
【0079】
本実施形態の導電性膜は、任意の適切な用途に利用されうる。例えば、任意の適切な電気デバイスにおける電極や電磁シールド(EMIシールド)等、高湿条件下であっても高い導電率を維持できることが求められるような用途に利用されうる。
【0080】
電極は、特に限定されないが、例えばキャパシタ用電極、バッテリ用電極、生体電極、センサ用電極、アンテナ用電極等でありうる。本実施形態の導電性膜を使用することにより、より小さい容積(装置占有体積)でも、大容量のキャパシタおよびバッテリ、低インピーダンスの生体電極、高感度のセンサおよびアンテナを得ることができる。
【0081】
キャパシタは、電気化学キャパシタでありうる。電気化学キャパシタは、電極(電極活物質)と電解液中のイオン(電解質イオン)との間での物理化学反応に起因して発現する容量を利用したキャパシタであり、電気エネルギーを蓄えるデバイス(蓄電デバイス)として使用可能である。バッテリは、繰り返し充放電可能な化学電池でありうる。バッテリは、例えばリチウムイオンバッテリ、マグネシウムイオンバッテリ、リチウム硫黄バッテリ、ナトリウムイオンバッテリ等でありうるが、これらに限定されない。
【0082】
生体電極は、生体信号を取得するための電極(生体信号センシング電極)である。生体電極は、例えばEEG(脳波)、ECG(心電図)、EMG(筋電図)、EIT(電気インピーダンストモグラフィ)を測定するための電極でありうるが、これらに限定されない。
【0083】
センサ用電極は、目的の物質、状態、異常等を検知するための電極である。センサは、例えばガスセンサ、バイオセンサ(生体起源の分子認識機構を利用した化学センサ)等でありうるが、これらに限定されない。
【0084】
アンテナ用電極は、空間に電磁波を放射する、および/または、空間中の電磁波を受信するための電極である。
【0085】
(実施形態4:吸着材)
本実施形態の2次元粒子の用途として、2次元粒子を含有する吸着材が挙げられる。上記2次元粒子は、Liの含有量が抑制されているため、人工透析機器における分離膜のように、生体適合性の求められる用途にも採用できる。
【0086】
上記吸着材は、2次元粒子のみで構成されてもよく、必要に応じて、セラミックス、金属および樹脂材料等のうちの1以上をさらに含んでいてもよい。本実施形態の2次元粒子と、セラミックス、金属および樹脂のうちの1以上の材料との複合材料(コンポジット)とすることにより、吸着性能、例えば尿素の吸着性能を安定して発揮する吸着材を実現することができる。セラミックス、金属および樹脂は、吸着材製造時に導入できる。
【0087】
上記セラミックスとして、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、酸化セリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム系、ヘキサフェライト、ムライト等の金属酸化物;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ホウ素、ホウ化チタン等の非酸化物セラミックスが挙げられる。上記金属として、鉄、チタン、マグネシウム、アルミニウムと、これらを基とする合金が挙げられる。
【0088】
上記樹脂として、セルロース樹脂および合成樹脂が挙げられる。また、上記樹脂は、親水性を有する樹脂であることが好ましい。親水性樹脂は、疎水性樹脂(親水性を有しない樹脂)に親水性助剤を配合すること、あるいは疎水性ポリマーを親水化処理することにより調製できる。上記樹脂(好ましくは親水性樹脂)としては、ポリスルホン、セルロースアセテート、再生セルロース、ポリエーテルスルホン、水溶性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アクリル酸系水溶性ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアニリンスルホン酸、およびナイロンからなる群より選択される1以上をより好ましくは含むことが挙げられる。
【0089】
上記親水性樹脂としては、例えば、極性基を有する親水性ポリマーであって、上記極性基が、上記層の修飾または終端Tと水素結合を形成する基であるものが好ましい。該親水性樹脂としては、水溶性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アクリル酸系水溶性ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアニリンスルホン酸、ナイロンが挙げられ、水溶性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウムがより好ましく、水溶性ポリウレタンがさらに好ましい。
【0090】
また、上記親水性樹脂は、生体適合性を有することが好ましい。生体適合性を有する樹脂として、例えば、血液透析、血液濾過用の樹脂が挙げられる。具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、セルロース、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、あるいはポリビニルアルコールとエチレンの共重合体のようなビニルアルコール共重合体が挙げられる。生体適合性を有する樹脂としては、好ましくはポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、および酢酸セルロースが挙げられ、より好ましくは、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレートが挙げられる。
【0091】
複合材料に含まれる上記樹脂の含有率は、用途に応じて適宜設定でき、吸着材(乾燥時)に占める割合で、0体積%超であって、例えば80体積%以下、さらに50体積%以下、とりわけ30体積%以下、特に10体積%以下、よりさらに5体積%以下であってよい。
【0092】
上記複合材料で形成された吸着材を製造する方法は特に限定されない。一実施態様として、樹脂を含むシート状の吸着材は、2次元粒子と樹脂とを混合してスラリーとし、該スラリーを基材(例えば基板)に塗布して塗膜を形成し、必要に応じて乾燥および/または硬化することで製造できる。
【0093】
2次元粒子は、そのまま単独で樹脂と混合してもよく、分散媒に分散させて分散体としたうえで樹脂と混合してもよい。上記分散媒は、代表的には水であり、場合により、比較的少量の他の液状物質をさらに含んでいてもよい。上記他の液状物質の含有率は、分散媒中、例えば30質量%以下であってよく、20質量%以下であってよい。
【0094】
2次元粒子と樹脂との混合は、ホモジナイザー、プロペラ撹拌機、薄膜旋回型撹拌機、プラネタリーミキサー、機械式振とう機、ボルテックスミキサー等の分散装置を用いて行うことができる。
【0095】
上記スラリーを基材に塗布する方法としては、限定されないが、例えば、エアレススプレー、エアースプレー等のスプレー塗布、具体的には、1流体ノズル、2流体ノズル、エアブラシ等のノズルを用いて、スプレー塗布を行う方法;テーブルコーター、コンマコーター、バーコーターを用いたスリットコート;スクリーン印刷、メタルマスク印刷等の印刷法;スピンコート;浸漬;滴下;刷毛;ローラー;ロールコーター;カーテンフローコーター;ローラーカーテンコーター;ダイコーター;静電塗装による塗布方法が挙げられる。
【0096】
乾燥および/又は硬化は、例えば、常圧オーブンあるいは真空オーブンを用いて400度以下の温度で行ってもよい。
【0097】
上記塗布および乾燥は、所望の厚さのシート(膜)が得られるまで、必要に応じて複数回繰り返し行ってもよい。
【0098】
別の実施態様として、セラミックスまたは金属を含む吸着材は、例えば2次元粒子と、例えば粒子状のセラミックスまたは金属とを混合し、2次元粒子の組成が維持可能な低温で加熱することにより製造できる。
【0099】
本実施形態の吸着材の形状に限定されない。該吸着材の形状は、上記フィルム等のシート状の形態を有する場合以外に、厚さを有するもの、直方体、球体、多角形体等であってもよい。
【0100】
(吸着シート)
本実施形態の吸着材の好ましい実施形態として吸着シートが挙げられる。吸着シートは、本実施形態の吸着材、すなわち2次元粒子、またはこれを含む複合材料で形成された吸着シートの他、本実施形態の吸着材が基板表面に形成されたものであってもよい。上記基板は、前述のセラミックス、金属、および樹脂材料のうちの1以上の材料で形成されていてよい。その中でも、上記基板は、前述の樹脂で形成された基板に本実施形態の吸着材が形成された吸着シートが好ましい。吸着剤は、上記基板の表面の一部に形成されていてもよく、基板一面に形成されていてもよい。上記基板への吸着材の形成方法としては、上記スラリーを基材に塗布する方法として説明した方法が挙げられる。
【0101】
(吸着材の用途)
本実施形態の吸着材は、例えば、極性有機化合物の吸着に用いることができる。極性有機化合物とは、極性を有する有機化合物、具体的には極性基を有する有機化合物の総称である。極性基としては、水酸基(OH基)、NO基、アミノ基(NH基、NH基)、COOH基等が挙げられ、これらの極性基は、水分子に含まれる水素原子との間で水素結合を形成しうる。極性有機化合物の中でも、吸着対象としては、水酸基を有するアルコール等の極性溶媒、アミノ基を有する化合物、アンモニア等が挙げられ、とりわけ、水酸基とアミノ基のうちの1以上を有する化合物、およびアンモニアが挙げられる。
【0102】
上記水酸基とアミノ基のうちの1以上を有する化合物のうち、水酸基を有する化合物としては、例えば、炭素数1~22の1価アルコール;多価フェノール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;キシロース、グルコース等の糖等が挙げられる。アミノ基を有する化合物としては、メチルアミン、ジメチルアミン等のモノアミン;エチレンジアミン等のジアミン;ジエチレントリアミン等のポリアミン;アニリン等の芳香族アミン;バリン、ロイシン等のアミノ酸、尿素、尿酸、尿酸塩、クレアチニン等が挙げられる。水酸基とアミノ基とを有する化合物としては、エタノールアミン、ジエタノールアミンが挙げられる。
【0103】
本実施形態の吸着材は、例えば、尿素、尿酸、クレアチニン等を含む尿毒素を吸着するために用いられることが好ましい。本実施形態の吸着材は、特に尿素を吸着するために最適に用いられうる。
【0104】
本実施形態の吸着材は、血液透析、血液ろ過、血液透析ろ過、腹腔透析等において、尿素等の老廃物の吸着除去に用いることができる。また、本実施形態の吸着材は、上記血液透析、血液ろ過、血液透析ろ過、腹腔透析等を行うための人工透析機器に用いることができる。上記吸着材の形態は、特に限定されず、例えば多孔質型、中空繊維型、平膜積層型でありうる。
【0105】
以上、本発明の1つの実施形態における2次元粒子について詳述したが、種々の改変が可能である。なお、本発明の2次元粒子は、上述の実施形態における製造方法とは異なる方法によって製造されてもよく、また、本発明の2次元粒子の製造方法は、上述の実施形態における2次元粒子を提供するもののみに限定されないことに留意されたい。
【実施例
【0106】
[実施例1~4、比較例1]
実施例1~4、比較例1では、以下に詳述する、(1)前駆体(MAX)の準備、(2)前駆体のエッチング、(3)洗浄、(4)金属カチオンのインターカレーション、(5)デラミネーション、(6)水洗浄を順に実施して、2次元粒子を得た。
【0107】
(1)前駆体(MAX)の準備
TiC粉末、Ti粉末およびAl粉末(いずれも株式会社高純度化学研究所製)を2:1:1のモル比で、ジルコニアボールを入れたボールミルに投入して24時間混合した。得られた混合粉末をAr雰囲気下にて1350℃で2時間焼成した。得られた焼成体(ブロック)をエンドミルで最大寸法40μm以下まで粉砕した。これにより、前駆体(MAX)としてTiAlC粒子を得た。
【0108】
(2)前駆体のエッチング
上記方法で調製したTiAlC粒子(粉末)を用い、下記エッチング条件でエッチングを行って、TiAlC粉末に由来する固体成分を含む固液混合物(スラリー)を得た。
(エッチング条件)
・前駆体:TiAlC(目開き45μmふるい通し)
・エッチング液組成は表1参照
・前駆体投入量:3.0g
・エッチング容器:100mLアイボーイ
・エッチング温度:35℃
・エッチング時間:24時間
・スターラー回転数:400rpm
【0109】
(3)洗浄
上記スラリーを2分割して、50mL遠沈管2本にそれぞれ挿入し、遠心分離機を用いて3500Gの条件で遠心分離を行った後、上澄み液を廃棄した。各遠沈管に純水40mLを追加し、再度3500Gで5分間遠心分離を行って上澄み液を分離除去する操作を11回繰り返した。最終遠心分離後に、上澄み液を廃棄し、Ti-水分媒体クレイを得た。
【0110】
(4)金属カチオンのインターカレーション
上記方法で調製したTi-水分媒体クレイに対し、表1に示す金属含有化合物を添加し、20℃以上25℃以下で10時間撹拌して、金属カチオンをインターカレーターとするインターカレーションを行った。インターカレーションの詳細な条件は以下の通りである。
(インターカレーションの条件)
・Ti-水分媒体クレイ(洗浄後MXene):固形分0.75g
・金属含有化合物と添加量は表1参照。
・インターカレーション容器:100mLアイボーイ
・温度:20℃以上25℃以下(室温)
・時間:10時間
・スターラー回転数:800rpm
【0111】
(5)デラミネーション
インターカレーションを行って得られたスラリーを、50mL遠沈管に投入し、純水を20mL追加した後、遠心分離機を用いて3500Gの条件で遠心分離を行った後、上澄み液を廃棄した。次いで、純水40mLを追加してからシェーカーで15分間撹拌後に、3500Gで遠心分離し、上澄み液を単層MXene粒子含有液として回収する操作を、4回繰り返して、単層MXene粒子含有上澄み液を得た。さらに、この上澄み液に対し、遠心分離機を用いて4300G、2時間の条件で遠心分離を行った後、上澄み液を廃棄し、2次元粒子(単層MXene粒子クレイ)を得た。
【0112】
【表1】
【0113】
(導電性膜作製方法)
実施例1~4、比較例1で得られたクレイを吸引ろ過した。ろ過後は80℃で24時間の真空乾燥を行って2次元粒子を含む導電性膜を作製した。吸引ろ過のフィルターには、メンブレンフィルター(メルク株式会社製、デュラポア、孔径0.45μm)を用いた。上記上澄み液中には、2次元粒子の固形分で0.05g、純水40mLが含まれていた。
【0114】
(導電性膜の密度の測定)
導電性膜をパンチで直径12mmの円盤状に打ち抜き、電子天秤で質量を測定し、ハイトゲージで厚みを測定した。そしてこれらの測定値から導電性膜の密度を算出した。その結果を表1に示す。
【0115】
(導電性膜の導電率測定方法)
得られた2次元粒子を含む導電性膜の導電率を求めた。導電率は、1サンプルにつき3箇所で、抵抗率(Ω)および厚さ(μm)を測定して、これら測定値から導電率(S/cm)を算出し、これにより得られた3つの導電率の平均値を採用した。抵抗率測定には、簡易型低抵抗率計(株式会社三菱ケミカルアナリティック製、ロレスタAX MCP-T370)を用いて導電性膜の表面抵抗を4端子法にて測定した。厚さ測定には、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製、MDH-25MB)を用いた。そして、得られた表面抵抗と導電性膜の厚さから体積抵抗率を求め、その値の逆数を取ることで導電率を求め、Eとした。
【0116】
(耐吸湿試験)
得られた導電性膜を相対湿度99%、温度25℃の恒温恒湿槽内に設置し、所定の時間ごとに取り出して、導電率を測定し、Eとした。EをEで除することで、導電率変化率を算出した。
【0117】
(2次元粒子中の塩素濃度の測定)
実施例1~4、比較例1で得られた2次元粒子中の塩素濃度を、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の燃焼イオンクロマトグラフィ装置(Dionex ICS-5000)を用いて測定した。
【0118】
(層表面の元素の検出方法)
得られた2次元粒子を含む導電性膜をX線光電子分光法(XPS)により測定し、2次元粒子に含まれる有機低分子化合物および層表面の元素を検出した。XPS測定には、アルバック・ファイ社製Quantum2000を使用した。
【0119】
(金属カチオンの検出方法)
得られた2次元粒子をアルカリ溶融法により溶液化して得られた溶液を、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)により測定し、2次元粒子に含まれる金属カチオンを検出した。ICP-AES測定には、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のiCAP7400を使用した。
【0120】
(2次元粒子の2次元面の長径の平均値の測定)
アルミナポーラス基板に2次元粒子を水に分散させたスラリーを塗布して乾燥させ、走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影して測定を行った。拡大倍率を2,000倍とし、1視野サイズが45μm×45μmの1つまたは複数のSEM画像の視野(おおよそ1視野~3視野)において、目視で確認できる80粒子以上の2次元粒子(MXene粒子)を対象とした。各2次元粒子(MXene粒子)の2次元面の形状(各2次元粒子の層に直交する方向からみた形状)を楕円形状に近似して、その長径を測定した。対象とした2次元粒子(MXene粒子)について測定した長径の平均値を2次元粒子の2次元面の長径の平均値とした。楕円形状の近似には、SEM画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)を用いた。なお、基板にポーラス基板を用いた場合、顕微鏡写真における微細な黒点は基板由来である場合がある。そのため、画像解析の前に、必要に応じバックグラウンドのポーラスの部分を画像処理で消す処理を行った。
【0121】
これらの測定結果を表2に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
本実施形態で得られたMXene2次元粒子は、上記表2の結果から、Liを含まず、高湿条件に長期間置かれた場合でも、導電率の低下が抑制されていた。また、本実施形態で得られたMXene2次元粒子は、2次元面の長径の平均値が1μm以上であり、かつ厚さの平均値が10nm以下であった。そのため、また、本実施形態で得られたMXene2次元粒子を用い、バインダーを添加することなくハンドリングが可能なフィルム(導電性膜)を作製できる。
【0124】
それに対して、比較例1は、Liをインターカレーターとしているため、高湿条件におかれた場合、導電率が大きく低下した。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の2次元粒子、導電性膜および導電性ペーストは、任意の適切な用途に利用され得、例えば電気デバイスにおける電極として特に好ましく使用され得る。
【符号の説明】
【0126】
1a、1b 層本体(M層)
3a、5a、3b、5b 修飾または終端T
7a、7b MXene層
10、10a、10b MXene粒子(層状材料の粒子)
30 導電性膜
図1
図2
【国際調査報告】