(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】構造物にサービス作業するための装置
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20240920BHJP
F03D 80/50 20160101ALN20240920BHJP
【FI】
E02B3/06
F03D80/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517168
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 GB2022052179
(87)【国際公開番号】W WO2023041894
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521193968
【氏名又は名称】ロトテック ピーティーイー エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】ROTOTECH PTE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】ハルトフ、サイモン
【テーマコード(参考)】
2D118
3H178
【Fターム(参考)】
2D118AA30
2D118FA08
2D118GA07
3H178AA20
3H178AA22
3H178BB79
3H178CC23
(57)【要約】
構造物にサービス作業するための装置は、一連の浮力室と該浮力室の第1のものに接続された気体供給源とを備え、該浮力室は相互接続されていて、気体が該浮力室の第1のものに供給され、その浮力室が気体で充満する時、当該気体は一連の浮力室の次の1つにこの次の1つが気体で充満する迄逃げ込み始め、該一連の浮力室が気体で充満する迄繰り返すように構成されている。気体の供給は所望の浮力レベルに達するように制御可能である。気体は外部の気体供給源から、又は該装置によって運ばれるシリンダから供給することが出来る。
【選択図】
図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い水中構造物にサービス作業するための装置であって、
該構造物の周りに配置され、該構造物にサービス作業するよう及び/又は該構造物沿った搬送用に構成された、少なくとも1つのモジュールを有していて、
前記装置は気体入口を有する第1の浮力室を有しており、該第1の浮力室は該気体入口からの気体が該第1の浮力室から水を移動させるように配置されている、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
気体ラインにより第1の浮力室に直接若しくは間接的に連続して接続された第2の浮力室を有し、気体を該第1の浮力室から第2の浮力室へ通すことが出来、そのことにより第2の浮力室から水を移動することが出来るよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、それぞれ第1及び第2の浮力室を有している、少なくとも第1及び第2のモジュールを有している、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のモジュールは、該構造物に沿って取り外し可能に一緒に接続可能であり、該気体ラインは第1及び第2の浮力室の間に取り外し可能に接続可能である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
第2の浮力室が第1の浮力室の上方に配置されている、請求項2乃至4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
該若しくは各前記浮力室は、下端若しくはその付近で開いていて前記気体により水を移動させうる、前記請求項の何れかに一項に記載の装置。
【請求項7】
前記気体入口を通る気体の供給を制御するように配置された弁を有する、前記請求項の何れかに一項に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの前記モジュールに設けられた気体供給源を有する、前記請求項の何れか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライザー、コンダクター、ケーソンパイルのような、マリーンサポート(海洋支持)構造物、マリーンプラットフォーム、桟橋若しくは埠頭用の橋脚、又はパイプ、及び風力タービンタワーのような、陸上若しくは洋上構造物を含むがこれらに限定されない、支持構造物のような構造物にサービス作業するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マリーンサポート(海洋支持)構造物は、典型的には、例えば潮の満ち引き、波の作用及び/若しくは跳ねかかりの結果として、周期的に水に晒されたり、露出したりする構造物の部分である「水が跳ねかかるゾーン」において特に経年変化したり劣化したりする。経年変化は波の作用や衝撃を原因とする腐食や物理的損傷を含みうる。劣化は海藻や甲殻類動物等が堆積することを含んでいる。
【0003】
従って、マリーンサポート(海洋支持)構造物は、例えば、洗浄、点検、及び塗装若しくはペンキ塗り等によるサービス作業をして、長持ちさせたり、寿命を延ばす必要がある。従来、点検整備保守等のサービス作業はダイバーが行っているが、これは非常に困難な作業で特に水が跳ねかかるゾーンにおいては、危険であり、時々は十分には効果的でない。
【0004】
特許文献1(WO-A-2020/096529)は、構造物にサービス作業するための装置を開示しており、この装置はケージ若しくはフレームを有していて、該構造物に沿って該フレーム及び/若しくは構造物にサービス作業するためのツールを駆動する駆動輪若しくはローラを支持している。フレームはヒンジ結合された少なくとも2つの部品を含み、その結果サービス作業を受ける構造物の周囲に嵌合するよう開き、そして構造物の周りにフレーム即ちケージをしっかり取り付けるべく閉じることが出来る。複数の、そのようなフレーム即ちケージを構造物の周りに連続して結合できる。
【0005】
特許文献1(WO-A-2020/096529)に開示されたフレーム若しくはケージは、比較的重さが軽いがこの装置及び類似の装置の重さをさらに減らす必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の説明】
【0007】
本発明の態様は添付の請求項により定義される。
【0008】
本発明の一態様によれば、
一連の浮力室と該浮力室の第1のものに接続された気体供給源とを備え、該浮力室は相互接続されていて、気体が該浮力室の第1のものに供給され、その浮力室が気体で充満する時、当該気体は一連の浮力室の次の1つにこの次の1つが気体で充満する迄逃げ込み始め、該一連の浮力室が気体で充満する迄これを繰り返すように構成されている可変浮力装置体を有する、上述の構造物にサービス作業するための装置が提供される。気体の供給は所望の浮力レベルを達成すべく制御することが出来る。気体は外部の気体供給源から、又は該装置によって運ばれるシリンダから供給することが出来る。
【0009】
前記サービス作業するための装置は、連続して一緒に接続された一連のモジュールを備え、各モジュールは構造物にサービス作業し、及び/若しくは該構造物に沿ってモジュールを駆動するように構成され、そして各モジュールは少なくとも1つの前記浮力室を有している。
各モジュールはそれ自身の浮力室を備えており、1つのモジュールに複数の浮力室を設けることが出来る。浮力室は相互に接続されるモジュールに対して所望レベルの浮力(例えば中間的な浮力)を与えるべく計算された容量とすることが出来る。
【0010】
モジュール列間は、浮力室のポートに取り外し可能に接続された気体ラインを使って、接続することが出来る。この接続には、気体漏れを防ぐために、例えば。O-リングを用いてシールしても良い。
【0011】
浮力室は一端若しくはその付近で開にして、モジュールが下降する時、浮力室から気体が逃げて、積極的なベントコントロールをしなくてよいように出来る。
実質的に垂直な構造物に対しサービスサービス作業するために複数モジュールが配置される場合、浮力室からの気体漏れを減らすか、最小にして、その結果非常に少ない気体量をもって、必要な浮力レベルを達成できる。
【0012】
上述の装置体は、水中でモジュールの浮力を制御する簡単な方法を提供する。この装置体は実質的に垂直な水中構造物に対してサービス作業するために特に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面を参照して本発明の特定の実施形態について説明する。
図1は第一例における装置を上から見た斜視図である。
図2は第一例の装置の第1側立面図である。
図3は第一例の装置の第2側立面図であり、第1側立面図に直角である。
図4は
図2の面A-Aの断面図であり、支持構造物の位置を示している、
図5は第一例の装置の頂部の図である。
図6は第二例の装置を上から見た透視図である。
図7は第二例の装置を下から見た透視図である。
図8は第二例の装置の第1側立面図である。
図9は第二例の装置の第2側立面図であり、第1側立面図に直角である。
図10は
図9の面A-Aの断面図である。
図11は
図9の面B-Bの断面図である。
図12は第二例の装置の頂部の図である。
図13は第一又は第二例による装置を形成する組立用の部品キットの図である。
図14は当該例における装置の作動のダイアグラム図である。
図15は当該例における装置の流体圧システムの部分ダイアグラム図である。
図16は当該例における装置を操作するためのリモートコントロールシステムを例示するダイアグラム図である。
図17は第三例における装置の第1側立面図である。
図18は第三例における装置の第2側立面図であり、第1側立面図に直角である。
図19は第三例の装置を上から見た透視図である。
図20は第三例の装置の底面図である。
図21は第三例の装置の頂部を示す図である。
図22は
図21の面A-Aにおける部分横断面図である。
図23は追加のモジュールと共に、トラクションモジュールとしての第三例の異なる構成(複数)を示すダイアグラムである。
図24は、
図23の構成におけるモジュール間の連結システムの詳細図である。
図25は第四例における装置の側立面図である。
図26は、本発明の第1実施形態の模式図である。
図27は、本発明の第2実施形態の模式図である。
実施形態の詳細な説明
【0014】
以下の説明において、装置は、垂直(鉛直)に延びる支持構造物30を取巻いて組立てられるものとして説明される。「周方向」及び「接線方向」は仮想中央垂直(鉛直)軸線周りの周についてであり、「径方向」は当該軸線に直角な方向である。
【0015】
図面に寸法が示される場合、これらはミリメートル(mm)についてであるが、これら寸法は特定実施形態の大きさについて限定するものではなく、純粋に例示的なものである。
【0016】
明瞭化のために、或る特定部分の全ての場合ではないが、図面中参照符号を付して示してある。図面を見れば、全体としてどの部分が言及されているか理解されるであろう。異なる実施形態間の類似の部分については、同じ参照符号を付している。
【0017】
本発明の一実施形態は、第一特許文献であるWO-A-2020/096529 に開示されたような構造物にサービス作業するためものであり、その例が以下に述べられる。しかしながら本発明は、これらに限定されるものではない。
【0018】
以下に、
図1~
図5を参照して、本発明の第一例について説明する。ケージ即ちフレーム1はケージ即ちフレームのセグメント即ちセクション1a,1b,1cであって、例えば取外し可能なピンを使ってフレーム結合点2a,2b,2cにおいて取り外し可能に結合されているものを含む。使用に際し、フレームセグメント1a,1b,1cは、サービス作業対象となる支持構造物30の周りに組立てられる。フレームセグメント1a,1b,1cは、これらフレームセグメント1a,1b,1cを所望位置に持ち上げ、及び/若しくは使用後にそれらを回収するための、ケーブル等の取付け用のリフティングポイント23を含んでいる。好ましくは、フレームセグメント1a,1b,1cの各々は、手で所望位置に持ち上げられる程に十分に軽いものである。
【0019】
フレーム1は、複数支柱5により接続された、上支持体3と下支持体4とを含む。この例において、上下支持体3,4は円形で同軸である。支柱5は上下支持体3,4間を概ね垂直に延在している。上支持体3、下支持体4と支柱5は好ましくは実質的に剛体であり、互いに結合されて、組立てられた際、フレーム1は実質的に剛体になっている。
【0020】
複数対(本例の場合3対)の上下アーム6,7が異なる周方向位置で、好ましくは、上支持体3の周りに周方向に等間隔、例えば本実施例においては、120°離間して、上支持体3に結合されている。
【0021】
各アーム6,7は、接線方向、水平方向の枢軸線周りに、例えば、それぞれの軸即ちスピンドルによって、上支持体3に枢動可能に支持されている。本例において、アーム6,7は上支持体3の上側と下側でそれぞれの軸線の周りに枢動可能であるが、これに代えて同じ軸線周りに枢動可能にしても良い。上及び下アーム6,7は互いに反対方向に枢動可能であり、その結果これらは同時に支持構造物30に向かう方向に又は支持構造物30から離れる方向に移動することが出来る。上下アーム6,7は互いに独立して枢動可能であり上下アーム6,7間の角度が変わるようにすることが出来る。
【0022】
各アーム6,7は、支持構造物30に接触するように配置されたそれぞれのホイール、ローラ、若しくは他の回転部材8,9を備えている。ホイール8,9は支持構造物30に対してトラクションを高め、そして/若しくはホイール8,9への摩耗を減らすように配設された接触面を有すると良い。ホイール8,9の各対は、対応するアーム対6,7に支持されて、互いに独立して回転可能であると良い。
【0023】
複数対のアーム6,7の少なくとも1つは支持構造物30に向かい、及びそれから離れる方向に枢動するように往復駆動可能であり、その結果対応ホイール8,9がそれぞれ支持構造物30を締付けたり釈放したりすることが出来る。好ましくは、アーム6,7のこの対はそれぞれの流体圧シリンダ10,11により駆動される。流体圧シリンダ10,11の制御は、相互接続されてアーム対が同期して駆動されるようにできる。流体圧シリンダ10,11は、ホースクランプ24に取り付けられる流体圧用ホース(図示無し)それぞれにより駆動される。
【0024】
アーム6,7の他の対は、例えば長さ調節可能な棒若しくはボトルねじ12,13によって、サービス作業を受ける支持構造物30の径に応じて、枢動位置に調節可能に保持される。
【0025】
下アーム7は支柱5の間を通って対応するホイール9が支持構造物30に接触できるようになっている。
【0026】
ホイール8,9の少なくとも1つは反対方向(即ち、前進方向及び後退方向)の何れの方向にも往復駆動可能で、装置を支持構造物30の上及び下にそれぞれ動かすことが出来る。 好ましくは、駆動可能なホイール8,9は往復駆動可能なアーム6,7上に設けられる。他のホイール8,9は駆動を受けないで、好ましくは互いに独立に、自由に回転して、支持構造物30の上及び下への装置の移動の案内として作用するようにすることが出来る。
【0027】
下支持体4はフレーム1の下方部分周りを周方向にキャリッジ15を案内するためのガイドレール14を支持している。キャリッジ15は駆動ギア16を有し、この駆動ギアはフレーム1の下方部分周りに周方向及び水平方向に配置されたギアトラック17に係合している。駆動ギア16は、キャリッジ15がガイドレール14の周方向周りに動くように駆動される。キャリッジ15は周方向に略360度にわたり駆動可能であるが、キャリッジ15の移動は、
図4に示すように、ガイドレール14付近に設けられたキャリッジストッパ18によって完全な1回転に制限されることが好ましい。
【0028】
キャリッジ15は、支持構造物30上の蓄積物がキャリッジ15の進行の妨げになり得るので、支持構造体30に接触しないことが好ましい。その代わりに、キャリッジ15はガイドレール14の内側に接触する1対の内部ローラ19と、ガイドレール14の外側に接触する1対の外部ローラ20とにより支持される。内部ローラ19は、キャリッジ15のいずれの側にも水平方向に延びるキャリッジアーム21上にそれぞれ装着されていて安定性を改良している。
【0029】
代替例においては、ガイドレール14とギアトラック17との機能を結合することが出来る。例えば、ギアトラック17とドライブギア16を省略し、内部若しくは外部ローラ19,20の1つ若しくは複数を駆動してキャリッジ15をガイドレール14の周りに駆動しても良い。これに代えて、ガイドレール14を省略してギアトラック17を変形してガイド機能を持たせるようにしても良い。ギア/ギアトラック又はラックアンドピニオン装置に代えて、ローラピニオン又は摩擦駆動のような、リニア駆動装置で代替しても良い。
【0030】
キャリッジ15は支持構造物30にサービス作業するために1つ若しくは複数のツール22を支持し運ぶよう構成されている。駆動可能なホイール8,9を使用しフレーム1を支持構造物30の上下に動かすことにより、そして支持構造物30の周方向周りにキャリッジ15を動かすことにより、少なくともスプラッシュ領域内で流体圧ライン等により何らかの制限を受けて、ツール22は支持構造物30の外側表面の実質上どの部分にも到達できる。
【0031】
ツール22は、キャリッジ15に可動に装着されておりキャリッジ15に対してツール22を動かすことができるようになっている。例えば、ツール22(単数若しくは複数)は、支持構造物30に向かって及びそれから離れる方向に、例えば径方向に往復動可能に駆動可能である。
【0032】
ツールは単数若しくは複数でキャリッジ15に装着できるが、交換可能であり、
― 支持構造物30の表面洗浄用の高圧水ノズル、
― 例えば超音波を使って、支持構造物30の壁厚測定用の壁厚測定プローブ、
― サービス作業サイト点検用のビデオカメラ27,
― 支持構造物の表面からのクリアランス検知用のクリアランスセンサー、
― 支持構造物30の表面塗装用の、塗装ローラやブラシのような、塗装用ツール、
― 支持構造物30に保護用ラッピングを付けるためのラッピングツール、
― 例えば、高圧摩耗切断を使って、支持構造物30の一部を切断するための切断具、等の例がある。
【0033】
第2例において、キャリッジ15は、クリーニングツール22に加えて、ビデオカメラのようなカメラ27を支持し運ぶ。
【0034】
装置は1つ若しくは複数の距離センサーを有して、支持構造物30に沿って移動した距離を測定できる。距離センサーは、例えばホイール8,9の回転数を、例えば1つ若しくは複数の光学若しくは磁気角度位置センサーを使って、決定するようにできる。
【0035】
キャリッジ15は、1つ若しくは複数の回転位置センサー(例えば、光学若しくは磁気センサー)を有して、フレーム1に対するキャリッジ15の絶対的若しくは相対的周方向位置を、例えばガイドレール14若しくはギアトラック17に付した基準位置マークを検出することにより、決定するようにすれば良い。
【0036】
距離センサー及び/若しくは回転位置センサーを使って支持構造物30上の、ツール22、キャリッジ15若しくは装置の他の部品の位置を決めることが出来る。これは、例えば異常や矛盾が検知された場合に、装置を所定の絶対的位置に移動し、又は以前に通った位置に戻すことを可能にする。
【0037】
装置を支持構造物30上の基準マークの1つ若しくは複数に整列させて基準マークに対して以前通った位置に戻すように出来る。一例として、1つの水平及び/若しくは垂直な可視マークを、支持構造物30上に、上支持体3の垂直位置及び支柱5の所定の1つの周方向位置のような、装置の1つの部品若しくは複数部品の初期位置に対応して、例えば目立つペイントマーキングのようなマーキングにより識別させて、作る。距離センサーはゼロにセットする。キャリッジ15は(時計方向若しくは反時計方向の何れかで)最大周方向位置にあるようにし、回転位置センサーはゼロにセットする。装置が支持構造物30に沿って移動する時、距離センサーと回転位置センサーは軸方向及び周方向に初期位置に対して移動した距離を測定する。このようにして、支持構造物30上の異常若しくは矛盾位置のマップを作り、必要な場合、戻すようにできる。
【0038】
第1例は、22~36インチ(0.56~0.91メートル)の範囲の径を有する支持構造物30に対してサービス作業するように設計されている。異なる大きさ及び/若しくは数のフレームセグメント1a,1b,1cの別の例は、他の径の支持構造物に対してサービス作業するようにすることが出来る。例えば、
図6~
図12は第2例を示しており、これは構造においては第1例と同様であるが、95/8~22インチ(0.24~0.56メートル)の範囲の径を有する支持構造物30に対してサービス作業するように設計された、より小さな径のフレーム1を有している。このフレーム1は2つのフレームセグメント1a、1bから成り、これらは半筒状体であり、組み合わされて筒状フレーム1を形成する。
【0039】
第2例は、第1例同様、3対の上、下アーム6,7を、上支持体3の周りに等間隔配置で有している。他の例、特により大きな径の支持構造物に対してサービス作業するためには、3対よりも多い対のアーム6,7を有するようにすると良い。
【0040】
アーム6,7は、ホイール8,9、流体圧シリンダ10,11、および長さ調節可能なバー12,13とともに、フレームセグメント1a,1b,1cに取り外し可能に取り付けることが出来る。これらの要素は第1例のフレームセグメント1a,1b,1c及び第2例のフレームセグメント1a,1bとともに交換して使うことが出来る。第1及び第2例用に、曲率半径が異なるために、異なるキャリッジ15が必要とされうる。又は、単一の調節可能なキャリッジ15を、第1及び第2例との間で、例えば調節可能なキャリッジアーム21を備えて、交換して使っても良い。
【0041】
図17~
図22は、第3例における装置を示しており、この装置は第1及び第2例とは異なり、ケージ即ちフレーム1が中間支持体33を有しており、この中間支持体にホイール8,9を対応して有する2対の上及び下アーム6,7が連結されている。したがって、ケージ1は3つの環状の水平部片(下支持体3と中間支持体33と上支持体4)を有していて、これらは垂直に延びる複数の支柱5により接続されて概ね筒状の構造体を形成している。したがって、第3の例は、中間支持体33が第1及び第2例の上支持体4と類似の機能を演じる第1及び第2例の発展した形態とも考えることが出来、そして第3例の上支持体4は上アーム6を超えて延長している追加の構造部分である。
【0042】
ケージ1は、2つの半筒状セクション1a,1bを含み、これらセクションは連結点2a,2bで一緒にヒンジ結合されていて、第2例同様、一緒にロック可能である。この例においてケージは、22~36インチ(0.56~0.91メートル)の範囲の径を有する構造物30の周囲に取り付けるためのより大きなバージョンに設計するか、又は8~22インチ(0.20~0.56メートル)の範囲の径を有する構造物30用のより小さいバージョンに設計しても良い。
【0043】
1対のアーム6,7は対応して対をなす駆動シリンダ10,11を有しており、他方他の対のアームは対応して対をなす長さ調節可能なバー12,13を有している。少なくとも1対のアーム6,7のホイール8,9は、装置が構造物30上を上下に動く様に往復駆動可能である。
【0044】
この例において、装置にはツール22を支持し運ぶための、ガイドレール14又はキャリッジ15が無い。したがって、重心(COG)は
図17,
図18に示すように、ケージ1の幾何学的中心に近い。
図23,
図24に示すように、装置は、トラクション用のモジュールとして構成され、例えばクリーニング用のモジュール、NDT(非破壊試験)用のモジュール及び/若しくは切断用のモジュールのようなサービス作業用のモジュール34の1つ若しくは複数に、構造物30に沿ってかつその周りに並んで接続されている。追加のモジュールの各々は、トラクション用のモジュールの構造と類似の構造をしているケージ若しくはフレームを有しており、2つ若しくはもっと多くの対のアーム6,7と対応したホイール8,9を有しているが、追加モジュールのホイール8,9はどれも非駆動であることが異なっている。サービス作業用のモジュール34は、牽引即ちトラクション用のモジュールにより構造物30に沿って駆動される。これとは異なり、1つ若しくは複数のサービス作業用のモジュールを、構造物30若しくはプラットフォームに取付けた1つ若しくは複数のウインチのような他の手段によって、構造物30に沿って動かすようにしても良い。
【0045】
構造物30に沿って動いた距離は、フレーム1に、例えば中間支持体33により、支持されていて、構造物30に接触するよう枢動可能な測定用ホイール43により測定される。測定用ホイールは、光学的及び/若しくは電気的に移動距離を測定できるエンコーダホイールとすると良い。
【0046】
図24に示すように、隣り合う第1と第2のモジュールは、第1のモジュール上の1つ若しくは複数の第1の合体部品を第2のモジュール上の対応する1つ若しくは複数の合体部品により互いに結合することが出来、例えば、第1の合体部品は1つ若しくは複数の雄合体プローブ35を有し、第2の合体部品は1つ若しくは複数の受容体36として、対応する雄合体プローブ35が嵌合するようにすることが出来る。この結合は雄合体プローブと受容体とを通る迅速に緩めることが出来るクイックレリースボルト37のようなロック手段により確保できる。これとは異なる合体及び/若しくは固定機構を用いても良い。
【0047】
トラクション用のモジュールは下支持体4に取り付けられた複数の足42を有すると良い。足42は、トラクション用モジュールの下に追加のモジュールを接合できるように取り外し可能であることが好ましい。
【0048】
トラクション用のモジュールはマスターコントローラ38を有しており、このマスターコントローラはリード線40によって1つ若しくは複数の追加のモジュール上の1つ若しくは複数の対応するスレーブコントローラ39に取り外しできるように接合可能である。マスターコントローラ38は、リモートコントロールユニット25によって地表から制御され、通信信号及び/若しくは電力をスレーブコントローラ39に通す。
【0049】
これらの例についての構成要素は、部品キットとして提供することが出来る。
図13は、第1もしくは第2例の何れもの装置が組み立てられるように提供される部品キットを示しており、少なくとも、第1例のフレームセグメント1a,1b,1cと、第2例のフレームセグメント1a,1bと、アーム6,7と、これと共にホイール8,9、流体圧シリンダ10,11、長さ調節可能なバー12,13と(ここでは第2例のフレームセグメント1a,1bに取付けられて図示されている)、第1及び第2例用のキャリッジ15と、流体用のホース29のセットと、流体動力供給源28とを有している。この例において、部品キットは作業台31を含む運搬可能なコンテナ32の形で提供されて、支持構造物30の周りに組み立てる前に装置の部分的組み立てをやり易くしている。
【0050】
直径が1つのみ、あるいは直径範囲が小さい複数直径の支持構造物30用に設計された例において、駆動を受けない、アーム6,7とホイール8,9の幾つかの対は、固定半径位置のローラ若しくはホイールのような、他のタイプのガイドにより置き換えることが出来る。
【0051】
図14は、上述した例のような、装置の駆動可能な機能の例を示している:
i 駆動可能枢動可能な上下アーム6,7を駆動して径方向外向き/内向きそれぞれに枢動するように締付を開閉する;
ii 支持構造物30の表面に接触して駆動可能ホイール8,9を前進/後退方向それぞれに駆動して上下動させる;
iii 駆動ギア16を前進/後退方向それぞれに駆動してキャリッジを時計方向/反時計方向に回転させる;
iv キャリッジ15に関して、径方向前進/後退方向それぞれにツール22を駆動して前進/後退方向のツールの調整をする。
【0052】
駆動可能機能は、装置に接続された流体用ホース及び/若しくは電気ケーブルにより、流体圧源若しくは電源により各々動力付与され、及び/若しくは制御することが出来る。流体圧式動力が、少なくとも幾つかの用途に、例えば、装置の重量を減らし、及び/若しくはマリーン環境において電気の使用を避けるために、好ましい。流体圧式動力ユニットはプラットフォーム上に載置して可撓性の流体圧ホースにより装置に接続すると良い。
【0053】
装置用の流体圧駆動システムの一例が、
図15に示されており、この装置においてアーム6,7の対の1つの枢動、対応するホイール8,9の回転、及び第1及び第2例の場合における駆動ギア16の回転とツール22の往復駆動は流体動力源ユニット(図示無し)に接続された別の流体圧ラインにより駆動される。
【0054】
例えば
図16に示されるように、装置はリモートコントロールユニット25により制御するのが好ましく、このユニットにおいては上述した機能の幾つか若しくは全ての機能の制御を、好ましくは対応するユーザ作動可能な制御により行うことが出来る。リモートコントロールユニット25は、上述の機能のコントローラ26にワイヤ若しくはワイヤレスにより接続することが出来る。諸機能駆動用の動力は、コントローラ26の制御の下にある動力源28により供給することが出来る。
【0055】
ホイール8,9と駆動ギア16との駆動速度は必要とするサービス作業用に独立して制御可能にすることが好ましい。これとは別に、若しくは追加的に、リモートコントロールユニット25若しくはコントローラ26は、異なる機能を統一的に制御することにより、任意的には距離センサーにより検出される移動距離及び/若しくは周方向位置センサーにより検出したキャリッジ15の周方向位置に応答して、或る特定の作業を行うためにプログラム可能であるか若しくはプログラムすることが出来る。こうして支持構造物30の所定位置にサービス作業することを可能にする。
【0056】
アーム6,7の枢動角は、例えば装置がスロープのある若しくはカーブした支持部材を上下に駆動されるように、使用中に変えることが出来る。
【0057】
動力を与えるホイール8,9の数は、装置により運ばれる負荷に応じて、あるいは装置の作動条件に応じて、変えることが出来る。必要とされる調節可能性若しくは締付力に応じて、アーム6,7の複数対の枢動に動力付与することが出来る。
【0058】
本例は、装置が支持構造物を上下動する際に径を調節するようアーム6,7の枢動の度合い変えることによりテーパのついた支持構造物にサービス作業するために使用することが出来る。
【0059】
代替例において、アーム6,7を下支持体4上に装着し、ガイドレール14を上支持体3上に装着しても良い。
【0060】
フレームセグメント1a,1b,1cはアルミニウムチューブで作り軽量化することが好ましい。例えば、装置の質量は、流体圧若しくは電気ラインを除いて、200~300kgの範囲とすると良い。
【0061】
より大きな例の場合、取外し可能なピンにより閉じる方法に代えて、流体圧式に閉じる方法にすることも出来る。この場合、ケージ若しくはフレームセグメント1a,1b,1cの2つ若しくはそれ以上を、例えば
図17に示したような流体圧式ラム若しくはシリンダ41により作動されるヒンジ結合により結合する。セグメント1a,1b,1cは、例えば足42により支持されて、浮遊式ポンツーンやはしけのような適切な面上で結合することが出来る。ヒンジ結合を開いてケージ若しくはフレーム1がサービス作業すべき支持構造物30の周りに嵌合するように開き、次いでフレーム1を構造物30周りに固定するように閉じることが出来る。セグメント1a,1b,1cは、流体圧式に作動される1つ若しくは複数のロック機構、例えばロックシリンダ44によりしっかり固定することが出来る。
【0062】
上記例はパイルのような円筒状の支持構造物30にサービス作業するために設計されており、従ってフレーム1は支持構造物30の直径よりも僅かに大きい内径を有する略円筒状である。別の例では、支持構造物30のタイプに合わせて別の形状とサイズを持つようにしてサービス作業する構造物にあわせて設計するようにしても良い。例えば、正方形若しくは長方形の筒状支持構造物30に作業するように設計された例においては、正方形若しくは長方形状の筒状フレーム1を、好ましくは4側面の各面に1対のアーム5,6を備えて、使うことが出来る。
【0063】
上記例は海の若しくは水の跳ねかかる地域、あるいは水面下、10メートルほどの、浅い深さで使用すると良い。10メートルを超える深さで作業するには、例えば適切な流体圧式のシールを用いることにより、変形することが出来る。上記例は、パイプ状構造物の点検整備保守等のサービス作業用に、パイプ状構造物の支持体により妨げられない限り、使用することが出来る。
【0064】
別の例としては、海のものではない、すなわち、風力タービン若しくは無線マストのような、陸上の支持構造物に使用することが出来る。これらの適用に対しては、フレームセグメント1a,1b,1cには、フレームセグメントが地面に沿って支持構造物の周りを移動させられるようにするため、取り外し可能若しくは永久的に取り付けた1つ若しくは複数のホイールあるいは運搬部材を設けると良い。例えば、フレームセグメント1a,1b,1cの各々には各側に取り付けた1つ若しくは複数のホイールを備え、フレーム1上とフレームの外側との2つのホイールで形成される三角形の頂点のトラスに追加の取り外し可能なホイールを設けると良い。次いで、セグメント1a,1b,1cを、例えば取外し可能なピン若しくは上述した油圧式ラムにより支持構造物30の周りに組付けあるいは閉じることが出来る。
【0065】
図25は、第4例における装置を示しており、この第4例は第3例におけるように、上下支持体3,4と中間支持体33とを備えたフレーム1を有していて、中間支持体33上の上下アーム6,7はホイール8,9をそれぞれ支持している。上下アーム6,7は隣り合う支柱間に位置していて、該支柱間を通ってホイール8,9は構造物に接触することが出来る。
【0066】
第3例におけるように、上及び下アーム6,7を中間支持体33に取り付けることは上及び下支持体3,4を空き状態にする。このことにより、ツールキャリッジ15を支持し運ぶガイドレール14とギアトラック15とが、第1及び第2例と同様に、上及び下支持体3,4の各々に取り付けられるようにする。この配置の仕方は単一のモジュールにツール(複数)を支持し運ぶようにする能力を増大する。
【0067】
第4例の装置は、風力タービンのタワーに対してサービス作業するために特に好適である。上及び下アーム6,7の位置はテーパーのついたタワーに適合すべく独立に制御することが出来る。
【0068】
次に、
図26を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図26は、内部に設けられ互いに連続して配置された複数の浮力室52,53,54を有している、トラクションモジュール1若しくはサービス作業用のモジュール34のような、上述したモジュールを概略して示している。浮力室52,53,54の各々は、下端であるいはその付近で少なくとも部分的に開いていて、水若しくは気体が逃げるのを許す。第1の、最も下の浮力室52には入口ポート52aに取り外し可能に取付けられたホース若しくは気体ライン50を介して気体(例えば、空気)が供給される。気体は離れたポンプから、又はモジュール1,34により支持し運ばれるシリンダ若しくは他の形態の気体タンクから供給できる。気体の供給は例えば入口ポート52a内の弁により制御することが出来る。
【0069】
気体は第1の浮力室52内の水を、浮力室52が気体で実質的に充満する迄、移動させるが、充満すると気体は出口ポート52bおよび気体ライン55を介して中間の浮力室53の入口ポート53aに逃げ、次いでそこから出口ポート53bに到達して気体ライン56を経て第3の最も上の浮力室54へと水を移動する。
【0070】
気体ライン55,56を介しての気体の供給は、例えば1つ若しくは複数のポート52b、53,53bにおける、更なる弁により制御できるが、これは必須ではない。簡単にするには、入口ポート52aへ気体が入ることのみを制御しても良い。
【0071】
このようにして、浮力室52、53,54を気体で満たし、浮力室52、53、54を合わせた体積分の移動に実質的に対応する浮力レベルを作り出すことが出来る。
(例えば、実質的に垂直な水中構造物に対して下降させることにより)モジュール1の深さが深くなると、水圧が増大するので浮力室52、53、54内の気体が圧縮して体積が減り、浮力室がそれらの下端若しくはその付近で開いていることにより、気体圧が水圧と等しくなる。これに反して、より多くの気体を気体ライン50を介して供給できるが、この際余分な気体は浮力室52、53、54の開いた下端部から漏れ出すので過剰圧力の危険はない。(例えば、実質的に垂直な水中構造物に沿って上昇させることにより)モジュール1の深さが浅くなると。浮力室52、53、54内の気体は減圧し体積を増やす。余分な気体は浮力室52、53,54の下端部から逃げ出す。
【0072】
浮力室52、53、54は、実質的に剛体とし、例えばガラス繊維、プラスチック、アルミニウムで作ることが出来る。これらはモジュール1,34内の、モジュール1,34の作動の妨げにならない、支柱5の間内の利用可能なスペース内に、設けることが出来る。
【0073】
図27においては、浮力室52、53,54は、例えば
図23と
図24で示したような実質的に垂直な構造物30に沿って連続して接続されたそれぞれ異なるモジュール1、34上に設けられていることを除いて、第1実施形態と同様な第2実施形態が示されている。気体ライン55,56は、例えばO-リングのシールを有する取外し可能なコネクタを使用してそれぞれのポート52b、53a及び53b、53a間に取り外し可能に接続することが出来る。各浮力室52、53、54はモジュール1、34の浮力を必要レベルにすべく移動量を計算することが出来る。このようにして、一連のモジュール1、34を全体として必要とされる浮力レベルに接続することが出来る。
【0074】
第1実施形態と第1実施形態との態様は、組合わせても良い、例えば第2実施形態におけるモジュール1,34の1つ若しくは複数に第1実施形態における複数の浮力室を設けても良いが、この場合下方となるモジュール1,34の最も上の浮力室は隣の上方となるモジュール1、34の最も下の浮力室に気体ラインにより接続される。
【0075】
本明細書を読むことにより当業者に明らかとなる、本発明の代替実施形態は、特許請求の範囲に定義された発明の範囲内にある。
【国際調査報告】