IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ポリマーフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/12 20060101AFI20240920BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240920BHJP
   B29C 48/16 20190101ALI20240920BHJP
   B29C 55/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B32B3/12 B
B29C48/305
B29C48/16
B29C55/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517384
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 IB2022058380
(87)【国際公開番号】W WO2023047223
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/246,840
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,スティーブン エー.
(72)【発明者】
【氏名】フェイ,ウィリアム ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,アシーン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,ブライアン アール.
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
4F210
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK09A
4F100AK09B
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AL02A
4F100AL02B
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DC25C
4F100DD21C
4F100EH20
4F100EJ37
4F100JN18A
4F100JN18B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F207AG01
4F207AG03
4F207AJ08
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB22
4F207KL62
4F207KL84
4F207KW26
4F210AG01
4F210AG03
4F210AR20
4F210QA02
4F210QC03
4F210QG01
4F210QG18
(57)【要約】
ポリマーフィルムは、直交する長さ、幅及び厚さを有する。ポリマーフィルムは、厚さに沿って離間した第1の基材及び第2の基材と、第1の基材と第2の基材との間に長さに沿って延びる複数の皺寄り要素と、を含む。皺寄り要素は、長さに沿って第1の基材及び第2の基材と実質的に同一の広がりをもち、幅に沿って離間している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交する長さ、幅、及び厚さを有するポリマーフィルムであって
前記厚さに沿って離間した第1の基材及び第2の基材と、
前記第1の基材と前記第2の基材との間に前記長さに沿って延びる複数の皺寄り要素であって、前記長さに沿って前記第1の基材及び前記第2の基材と実質的に同一の広がりをもち、前記幅に沿って離間している、複数の皺寄り要素と、
を備える、ポリマーフィルム。
【請求項2】
前記皺寄り要素の少なくとも大部分のうちの各皺寄り要素が、前記第1の基材及び前記第2の基材のうち少なくとも1つに直接付着した第1の皺寄り部分と、前記第1の部分に隣り合う第2の皺寄り部分とを備え、前記第1の皺寄り部分及び前記第2の皺寄り部分が互いに実質的に同一の広がりをもち、それぞれ異なる第1の組成物及び第2の組成物を有する、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
前記第1の基材が前記第1の組成物を備える、請求項2に記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
前記第2の基材が前記第2の組成物を備える、請求項2又は3に記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
内部に前記長さに沿って延びる複数の貫通チャネルを画定し、前記複数の貫通チャネルのうち隣り合う貫通チャネルが、前記複数の皺寄り要素のうち1つの皺寄り要素によって隔てられている、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
前記第1の基材及び前記第2の基材のうち少なくとも1つが複屈折性である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
前記第1の基材と前記第2の基材との間の前記厚さに沿った平均間隔が、前記第1の基材の平均厚さ及び前記第2の基材の平均厚さの各々の10倍超である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
隣り合う皺寄り要素間の前記幅に沿った平均間隔が、前記第1の基材の平均厚さ及び前記第2の基材の平均厚さの各々の10倍超である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマーフィルム。
【請求項9】
直交する長さ、幅及び厚さを有する一体形成ポリマーフィルムであって、前記厚さに沿って離間した第1の部分及び第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分との間に前記長さに沿って延び、前記幅に沿って離間した、前記一体形成ポリマーフィルムと実質的に同一の広がりをもって延びる複数の貫通チャネルを画定する複数の要素と、を含み、前記第1の部分及び前記第2の部分の少なくとも一方が複屈折性である、一体形成ポリマーフィルム。
【請求項10】
前記第1の部分及び前記第2の部分の少なくとも1つが、少なくとも0.05の実質的に一様な複屈折を有する、請求項9に記載の一体形成ポリマーフィルム。
【請求項11】
前記第1の部分及び前記第2の部分のうち前記少なくとも1つが、主に前記幅に沿って配向されている、請求項9又は10に記載の一体形成ポリマーフィルム。
【請求項12】
前記要素が皺寄り要素を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の一体形成ポリマーフィルム。
【請求項13】
前記皺寄り要素の少なくとも大部分のうちの各皺寄り要素が、前記一体形成ポリマーフィルムの前記第1の部分及び前記第2の部分のうち少なくとも1つに直接付着した第1の皺寄り部分と、前記第1の皺寄り部分に隣り合う第2の皺寄り部分とを備え、前記第1の皺寄り部分及び前記第2の皺寄り部分が互いに実質的に同一の広がりをもち、それぞれ異なる第1の組成物及び第2の組成物を有する、請求項12に記載の一体形成ポリマーフィルム。
【請求項14】
ポリマーフィルムを作製するための方法であって、前記ポリマーフィルムは長さ方向に沿って延び、前記長さ方向に直交する、前記ポリマーフィルムの幅方向に沿った幅を有し、前記ポリマーフィルムが内部に複数のチャネルを画定し、前記チャネルが前記長さ方向に沿って延び、前記幅方向に沿って配列されており、前記方法が、
第1の樹脂及び第2の樹脂を、スロットプレート内の第1の複数のスロット及び第2の複数のスロットのそれぞれを通して押し出して、交互になった第1の延長要素及び第2の延長要素のそれぞれから構成される溶融積層体を形成することであって、前記第1の複数のスロット及び前記第2の複数のスロットの各々が、前記長さ方向及び前記幅方向によって画定される第1の平面に対して角度をなす流れ方向を有し、前記第1の延長要素及び前記第2の延長要素が前記長さ方向に沿って延び、前記長さ方向に直交する第2の平面内で傾斜している、形成することと、
第1のスキン層及び第2のスキン層を、前記溶融積層体の両側の第1の側及び第2の側のそれぞれに押し出して、溶融フィルムを形成することと、
前記溶融フィルムを少なくとも、前記長さ方向及び前記幅方向に直交する厚さ方向に圧縮することと、
前記溶融フィルムを冷却して第1のフィルムを形成することと、
前記第1のフィルムを少なくとも前記幅方向に沿って延伸して、前記ポリマーフィルムを形成することと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記第1のフィルムを少なくとも幅方向に沿って延伸することが、前記第1のフィルムを、幅方向に引き伸ばし比率DR1で、かつ長さ方向に引き伸ばし比率DR2で引き伸ばすことを含み、2≦DR1≦10かつDR2≦0.5DR1である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
いくつかの態様において、本明細書は直交する長さ、幅、及び厚さを有するポリマーフィルムを提供する。ポリマーフィルムは、厚さに沿って離間した第1の基材及び第2の基材と、第1の基材と第2の基材との間に長さに沿って延びる複数の皺寄り要素と、を含む。皺寄り要素は、長さに沿って第1の基材及び第2の基材と実質的に同一の広がりをもち、幅に沿って離間している。
【0002】
いくつかの態様では、本明細書は内部に複数の貫通チャネルを画定する一体形成ポリマーフィルムを提供する。チャネルは一体形成ポリマーフィルムの長さ方向に沿って延び、長さ方向に直交する、一体形成ポリマーフィルムの幅方向に沿って配列されている。複数のチャネルは、一体形成ポリマーフィルムの第1の部分と第2の部分との間に配置されている。第1の部分及び第2の部分は、長さ方向及び幅方向に沿って一体形成ポリマーフィルムと実質的に同一の広がりをもって延びる。第1の部分及び第2の部分の少なくとも一方は複屈折性である。
【0003】
いくつかの態様において、本明細書は直交する長さ、幅、及び厚さを有する一体形成ポリマーフィルムを提供する。一体形成ポリマーフィルムは、厚さに沿って離間した第1の部分及び第2の部分と、第1の部分と第2の部分との間に長さに沿って延び、幅に沿って離間して一体形成ポリマーフィルムと実質的に同一の広がりをもって延びる複数の貫通チャネルを画定する複数の要素とを含む。第1の部分及び第2の部分の少なくとも一方は複屈折性である。
【0004】
いくつかの態様では、本明細書は、内部に複数の貫通チャネルを画定するポリマーフィルムを含む、熱管理システムを提供する。
【0005】
いくつかの態様では、本明細書はポリマーフィルムを作製する方法を提供し、このポリマーフィルムはポリマーフィルムの長さ方向に沿って延び、長さ方向に直交する、ポリマーフィルムの幅方向に沿った幅を有する。ポリマーフィルムは、内部に複数のチャネルを画定する。チャネルは、長さ方向に沿って延び、幅方向に沿って配列されている。方法は、第1の樹脂及び第2の樹脂を、スロットプレート内の第1の複数のスロット及び第2の複数のそれぞれのスロットを通して押し出して、交互になった第1の延長要素及び第2の延長要素のそれぞれから構成される溶融積層体を形成することを含む。第1の複数のスロット及び第2の複数のスロットの各々は、長さ方向及び幅方向によって画定される第1の平面に対して角度をなす流れ方向を有する。第1の延長要素及び第2の延長要素は長さ方向に沿って延び、長さ方向に直交する第2の平面内で傾斜している。方法は、第1のスキン層及び第2のスキン層を、溶融積層体の両側の第1の側及び第2の側のそれぞれに押し出して、溶融フィルムを形成することと、溶融フィルムを少なくとも、長さ方向及び幅方向に直交する厚さ方向に圧縮することと、溶融フィルムを冷却して第1のフィルムを形成することと、第1のフィルムを少なくとも幅方向に沿って延伸して、ポリマーフィルムを形成することと、を含む。
【0006】
これら及び他の態様は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、いかなる場合も、この簡潔な概要は、特許請求の範囲の主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】いくつかの実施形態による、ポリマーフィルムの概略断面図である。
図2】いくつかの実施形態による、ポリマーフィルムの概略断面図である。
図3A】例示的なポリマーフィルムの端面画像である。
図3B】例示的なポリマーフィルムの上面画像である。
図4】いくつかの実施形態による、複数の皺寄り要素の概略上面図である。
図5A】いくつかの実施形態による、複数の皺寄り要素の概略上面図である。
図5B】いくつかの実施形態による、複数の皺寄り要素の概略上面図である。
図5C】いくつかの実施形態による、皺寄り要素を示したポリマーフィルムの概略断面図である。
図5D】いくつかの実施形態による、皺寄り要素を示したポリマーフィルムの概略断面図である。
図6】いくつかの実施形態による、ポリマーフィルムを押し出すためのダイスの概略平面図である。
図7A】いくつかの実施形態による、スロットプレートの概略断面図である。
図7B】いくつかの実施形態による、スロットプレートの概略断面図である。
図7C】いくつかの実施形態による、スロットプレートの概略断面図である。
図8A】いくつかの実施形態による、溶融フィルムの概略断面図である。
図8B】圧縮された後の図8Aの溶融フィルムに相当し得る、いくつかの実施形態によるフィルムの概略断面図である。
図9】いくつかの実施形態による、ポリマーフィルムの製造方法の概略図である。
図10】いくつかの実施形態による、少なくとも幅方向に沿ったフィルムの延伸の概略図である。
図11】いくつかの実施形態による、スロットプレートの概略端面図である。
図12】いくつかの実施形態による、スロットプレートを通るポリマー流路の概略図である。
図13】いくつかの実施形態による、スキンプレートの概略端面図である。
図14】いくつかの実施形態による、配向前のフィルムの底面画像である。
図15】いくつかの実施形態による、熱管理システムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、本明細書の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付図面が参照される。図面は、必ずしも正確な比率の縮尺ではない。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想到され、実施可能である点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されない。
【0009】
本明細書のいくつかの実施形態によれば、ポリマーフィルムが提供され、このポリマーフィルムは、フィルムの長さにわたって延びる複数のチャネルを提供する。チャネルは第1の基材と第2の基材との間に形成され得、隣り合うチャネルは、フィルムの長さに沿って延びる要素によって隔てられ得る。基材(単数又は複数)は基材部分(単数又は複数)と称されることもあり、フィルムの、実質的に一定の厚さを有する部分(単数又は複数)であってもよい。基材(単数又は複数)は、隣り合うチャネルを隔てる要素と共に一体形成され得る。その要素は、皺寄り要素であってもよく、又は皺寄り要素を含んでもよい。皺寄り要素とは、その要素を作製するプロセスにかかわらず、皺寄せされて見える要素である。例えば、皺寄り要素は、典型的には要素の長さに沿って不規則に皺寄せされている。フィルムは、押出、及び/又は一体形成されたフィルムであり得る。フィルムが一体形成されているとは、フィルムの様々な部分が別々に製造されてから接合されるのではなく、一緒に製造される場合である。いくつかの実施形態によれば、2つのスキン層の間に配置された複数の傾斜した延長要素を含むウェブを共押出し、次いで共押出されたウェブを延伸することによって、一体形成されたフィルム内にチャネルを提供できることがわかった。このようなフィルムは、例えば、フィルムの長さに沿ってフィルムを通して材料及び/又はエネルギーを輸送するのに有用であることがわかった。例えば、チャネルを使用して、フィルムを通して流体を輸送することができ、ここで流体を加熱又は冷却して、例えばフィルムを熱交換器として使用することもできる。そのようなフィルムは、例えばバッテリ冷却に有用であり得る。ポリマー熱交換器フィルムを使用して冷却されるバッテリシステムは、例えば、国際出願公開第2021/044345号(Bartlingら)に記載されている。いくつかの実施形態によれば、フィルムは、あるいは、又は、加えて、包装フィルムとして利用されてもよい。
【0010】
図1及び図2はそれぞれ、いくつかの実施形態による、ポリマーフィルム100及び200の概略断面図である。図3A及び図3Bはそれぞれ、例示的なポリマーフィルム300の端面図及び上面図である。ポリマーフィルム100、200、300は、直交する長さ、幅、及び厚さを有する。すなわち、長さ、幅及び厚さは、互いに直交する長さ方向、幅及び厚さ方向にそれぞれ沿っている。ポリマーフィルム100、200、300は内部にチャネル230を画定し、チャネル230は長さに沿って(ポリマーフィルムの長さ方向(z方向)に沿って)延び、幅に沿って(長さ方向に直交するポリマーフィルムの幅方向(x方向)に沿って)配列されている。チャネル230は貫通チャネルであってもよい。すなわち、チャネル230は、フィルムの第1の側から第1の側の反対側にあるフィルムの第2の側まで長さに沿って連続的な通路を画定してもよい(例えば、図3B及び図4を参照)。
【0011】
チャネル230は、ポリマーフィルム100、200、300の長さと同一の広がりをもつ連続的なチャネルであってもよい。複数のチャネル230は、ポリマーフィルムの第1の部分211と第2の部分212との間に配置され、それぞれが長さ及び幅に沿ってポリマーフィルムと実質的に同一の広がりをもって延びる。いくつかの実施形態では、第1の部分211及び第2の部分212のうち少なくとも1つは、本明細書の他の箇所で更に説明するように、複屈折性である。いくつかの実施形態では、複数の貫通チャネル230のうち隣り合うチャネルは、第1の部分211と第2の部分212との間に長さに沿って延びる要素120、220によって隔てられる。要素は、皺寄り要素220であってもよい。本明細書の他の箇所で更に説明するように、皺寄り要素220は、第1の部分211と第2の部分212との間に長さに沿って延びる、隣り合う第1の皺寄り部分及び第2の皺寄り部分を含んでもよい。図示する実施形態では、複数のチャネル230のうち隣り合うチャネルは、第1の部分211と第2の部分212との間に長さに沿って延びる要素120、220によって隔てられる。
【0012】
ポリマーフィルム100、200、300は、第1の部分211及び第2の部分212を含み、これらは、第1の基材及び第2の基材と称されることもある。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルム200、300は、厚さに沿って離間した第1の基材211及び第2の基材212と、第1の基材211と第2の基材212との間に長さ方向に沿って延びる複数の皺寄り要素220とを含む。いくつかの実施形態では、皺寄り要素220は、長さに沿って第1の基材211及び第2の基材212と実質的に同一の広がりをもち、幅に沿って離間している。皺寄り要素は、互いに実質的に同一の広がりをもつ第1の皺寄り部分221及び第2の皺寄り部分222を含み得る。ポリマーフィルム200、300は、内部に長さに沿って延びる複数の貫通チャネル230を画定し、複数の貫通チャネルのうち隣り合う貫通チャネルは、複数の皺寄り要素220のうち1つの皺寄り要素によって隔てられる。ポリマーフィルム100、200、300は、一体形成ポリマーフィルムであってもよく、かつ/又は、押出ポリマーフィルムであってもよい。
【0013】
層又は要素は、各層又は要素の面積で少なくとも約60%が、他方の各層又は要素の面積で少なくとも約60%と同一の広がりをもつ場合に、互いに実質的に同一の広がりをもつとして記載され得る。いくつかの実施形態においては、互いに実質的に同一の広がりをもつとして記載される層又は要素では、各層又は要素の面積で少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%が、他方の各層又は要素の面積で少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%と同一の広がりをもつ。層又は要素は、各層又は要素の長さ及び/又は幅の少なくとも約60%が他方の各層又は要素の長さ及び/又は幅の少なくとも約60%と同一の広がりをもつ場合に、長さ及び幅において互いに実質的に同一の広がりをもつとして記載され得る。いくつかの実施形態において、長さ及び/又は幅において互いに実質的に同一の広がりをもつとして記載される層又は要素では、各層又は要素の少なくとも約80%又は少なくとも約90%が、他方の各層又は要素の長さ及び/又は幅の少なくとも約80%又は少なくとも約90%と長さ及び/又は幅において同一の広がりをもつ。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の基材と第2の基材との間の厚さに沿った平均間隔s1は、第1の基材211の平均厚さt1及び第2の基材212の平均厚さt2の各々の10倍、50倍、100倍、300倍、又は500倍より大きい。いくつかの実施形態では、s1は、最大2000t、又は更に最大10,000tであり得、ここでtは、t1とt2のうち大きい方である。いくつかの実施形態では、隣り合う皺寄り要素間の幅に沿った平均間隔s2は、第1の基材211の平均厚さt1及び第2の基材212の平均厚さt2の各々の10倍、50倍、100倍、300倍、又は500倍よりも大きい。いくつかの実施形態では、s2は、最大2000t、又は更に最大10,000tであり得、ここで、tは、t1とt2のうち大きい方である。いくつかの実施形態では、チャネル230は、一体形成ポリマーフィルムの厚さTの少なくとも80%、90%、95%、98%、99%、又は99.5%の、厚さに沿った平均高さs1を有する。いくつかの実施形態では、チャネル230は、一体形成ポリマーフィルムの厚さTの少なくとも0.8、1、1.2、又は1.5倍の、幅に沿った平均幅s2を有する。平均幅s2は、例えば厚さTの最大10倍、最大8倍、又は最大6倍であり得る。
【0015】
図4は、いくつかの実施形態による、複数の皺寄り要素220の概略上面図である。皺寄り要素220、及び隣り合う皺寄り要素間のチャネル230は、長さ方向(z方向)に沿って延びる。図5A及び図5Bは、それぞれ、いくつかの実施形態による、皺寄り要素220a及び皺寄り要素220bの概略上面図である。図5C及び図5Dは、それぞれ、いくつかの実施形態による、皺寄り要素220c及び皺寄り要素220dを示したポリマーフィルムの一部分の概略断面図である。皺寄り要素220a、220b、220c、及び220dは、互いに実質的に同一の広がりをもつ第1の皺寄り部分221及び第2の皺寄り部分222を含む。第1の皺寄り部分221及び第2の皺寄り部分222は、図5Bに概略的に示すように、互いに実質的に合致してもよく(例えば、名目上合致するか、又は面積で90%を超えて、若しくは95%を超えて合致する)、又は図5Aに概略的に示すように、皺寄り要素の有意な長さ部分に沿って、第1の皺寄り部分221と第2の皺寄り部分222との間に分離があってもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、皺寄り要素220の少なくとも大部分のうちの各皺寄り要素は、第1の基材及び第2の基材のうち少なくとも1つに直接付着した第1の皺寄り部分221と、第1の部分に隣り合う第2の皺寄り部分222とを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは一体形成ポリマーフィルムであり、皺寄り要素の少なくとも大部分のうちの各皺寄り要素は、一体形成ポリマーフィルムの第1の部分221及び第2の部分222のうち少なくとも1つに直接付着した第1の皺寄り部分221と、第1の皺寄り部分221に隣り合う第2の皺寄り部分222とを含み、第1の皺寄り部分211及び第2の皺寄り部分212は互いに実質的に同一の広がりをもつ。要素は、互いに共押出された結果として互いに付着していてもよい。介在層(接着剤層など)なしで互いに付着している要素は、互いに直接付着している、又は互いに直接結合していると説明され得る。図5Cでは、第1の皺寄り部分221は、第1の基材211に直接結合しているが第2の基材212には結合しておらず、一方、図5Dでは、第1の皺寄り部分221は、第1の基材211及び第2の基材212の各々に直接結合している。いくつかの実施形態では、皺寄り要素の少なくとも大部分のうち各皺寄り要素について、皺寄り要素の第1の皺寄り部分221及び第2の皺寄り部分222は、皺寄り要素の長さの少なくとも一部分に沿って互いに直接結合している。いくつかの実施形態では、皺寄り要素の少なくとも大部分のうち各皺寄り要素について、皺寄り要素の第2の皺寄り部分222は、第1の基材211及び第2の基材212のうち少なくとも1つに直接結合していない。例えば、図5Cでは、第2の皺寄り部分222は、第1の基材212に結合しているが第2の基材211に直接結合しておらず、一方、図5Dでは、第2の皺寄り部分222は、第1の基材211及び第2の基材212のいずれにも直接結合しておらず、第1の皺寄り部分221に直接結合している。他の実施形態では、例えば、図2に概略的に示すように、第1の皺寄り部分221及び第2の皺寄り部分222の各々は、第1の基材211及び第2の基材212の各々に直接結合している。
【0017】
第1の皺寄り部分221及び第2の皺寄り部分222の、第1の基材211との結合及び第2の基材222との結合は、皺寄り部分及び基材に使用されるポリマーに依存し得る。例えば、類似のモノマー単位を有するポリマーは互いに良好に結合する傾向があり、一方、表面エネルギーの低いポリマーは、類似のモノマー単位を有さない他のポリマーと弱く結合する傾向がある。結合を調整するために、異なるモノマー単位を有する、ポリマー又はコポリマーのブレンドを使用してもよい。いくつかの実施形態では、基材211及び基材212並びに第1の皺寄り部分221は、互いに良好に結合する、同じ又は異なるポリエステル組成物(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、又はそれらのコポリマー)から形成され得、第2の皺寄り部分は、基材の一方又は両方と比較的不十分に結合する、オレフィン組成物(例えば、ポリプロピレン)、スチレン組成物(例えば、スチレンブロックコポリマー)、又はそれらのブレンド若しくは混合物から形成され得る。次いでフィルムを延伸すると、第2の皺寄り部分222が基材の一方又は両方から離れることがあるが、一方で、第2の皺寄り部分222は、例えば皺寄り部分間の接触面積が寄り部分が結合を維持できるほどに十分に大きいことに起因して、第1の皺寄り部分221との結合を維持し得る(例えば、図5D参照)。いくつかの実施形態では、第1の基材211及び第1の皺寄り部分221は同じ又は異なるポリエステル組成物から形成され得、第2の基材212及び第2の皺寄り部分222は同じ又は異なるオレフィン又はスチレン組成物から形成され得ることから、第1の皺寄り部分221は第1の基材211に直接結合し、第2の皺寄り部分222は第2の基材212に直接結合する(例えば、図5C参照)。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の皺寄り部分221及び第2の皺寄り部分222は、異なる第1の組成物及び第2の組成物(例えば、図8Aに概略的に図示される組成物545及び546に相当する)をそれぞれ有する。いくつかの実施形態では、第1の基材211は第1の組成物を含む(例えば、第1の基材211は組成物545を含み得る)。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、第2の基材212は、第2の組成物を含む(例えば、第2の基材212は、組成物546を含み得る)。いくつかの実施形態では、第1の組成物は第1のポリエステル組成物であり、第1の基材211は第2のポリエステル組成物を含む。いくつかのそのような実施形態、又は他の実施形態では、第2の組成物は、オレフィン組成物及びスチレン系組成物のうち少なくとも1つを含む。いくつかのそのような実施形態、又は他の実施形態では、第2の基材212は、オレフィン組成物及びスチレン系組成物のうち少なくとも1つを含む。第1のポリエステル組成物と第2のポリエステル組成物は異なっていてもよく、又は同じポリエステル組成物であってもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、第1の皺寄り部分221と第2の皺寄り部分222とが、例えば、少なくとも10%、15%、又は20%だけ互いに異なる表面張力を有するように選択される。表面張力は、例えば、最大約130%、約100%、又は約80%だけ異なってもよい。フィルムに使用されるポリマーの表面張力は、当業者には理解されるとおり、多くの場合、表面張力の標準的な表で見つけることができる。表面張力は、例えば、ASTM D7490-13「Standard Test Method for Measurement of the Surface Tension of Solid Coatings,Substrates and Pigments using Contact Angle Measurements」に記載のとおりの接触角測定を使用して測定し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、組成物は、容易に押出可能かつ加工可能であるように選択され得る、熱可塑性ポリマーを含む。例えば、熱可塑性ポリマーは、押出性に適した範囲内の分子量及び/又は固有粘度及び/又はメルトフローインデックス(MFI)を有するように選択され得る。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、20,000ダルトン超、又は35,000ダルトン超、又は50,000ダルトン超の重量平均分子量Mwを有する。重量平均分子量Mwは、例えば、最大1,000,000ダルトン、最大400,000ダルトン、最大200,000ダルトン、最大150,000ダルトンであってもよい。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、60重量パーセントのo-クロロベンゼン及び40重量パーセントのフェノールを含む溶媒ブレンド中で測定した場合に、0.3dl/g~1.2dl/g又は0.4dl/g~1.0dl/gの範囲の固有粘度を有する。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、5g/10分超、又は10g/10分超、又は20g/10分超のメルトフローインデックスを有する。メルトフローインデックスは、例えば、最大300g/10分、又は最大200g/10分、又は最大100g/10分であってもよい。重量平均分子量Mwは、例えばゲル浸透クロマトグラフィを使用して測定され得る。固有粘度は、例えば毛細管粘度計を用いて測定され得る。メルトフローインデックスはメルトフローレートと称されることもあり、例えばASTM D1238-20に従って押出可塑度計を用いて測定され得る。
【0020】
本明細書のフィルムの様々な部分に好適な材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、coPEN(コポリエチレンナフタレートテレフタレートコポリマー)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヘキシルエチレンナフタレートコポリマー(PHEN)、グリコール変性PET(PETG)、グリコール変性PEN(PENG)、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)、THV(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのターポリマー)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、coPMMA(メチルメタクリレートとエチルアクリレートとのコポリマー)、スチレンブロックコポリマー(スチレンブロックを含むブロックコポリマー)、例えばスチレン及びエチレン/ブチレン(例えばスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)コポリマー)に基づく直鎖状トリブロックコポリマー、アクリルブロックコポリマー(アクリレート又はメタクリレートブロックを含むブロックコポリマー)、例えば、メチルメタクリレート及びn-ブチルアクリレートに基づく直鎖状トリブロックコポリマー、無水物変性エチレンビニルアセテートポリマー、ケトンエチレンエステルターポリマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレンとエチレンのコポリマーなどのコポリプロピレン(coPP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などのウレタン、又はこれらのブレンドが挙げられる。
【0021】
アタクチックポリスチレン(aPS)は、任意選択的に、得られる層の屈折率を調整するために、及び/又は層のヘイズを低減するために(例えば、層の結晶化度を低減することによって)、sPS(例えば、約5~約30重量パーセントのaPS)とブレンドすることができる。好適なTHVポリマーは、例えば、米国特許出願公開第2019/0369314号(Hebrinkら)に記載されており、3M Company(St.Paul,MN)からDYNEON THVの商品名で入手可能なものが挙げられる。いくつかの実施形態では、THVは、約35~約75モルパーセントのテトラフルオロエチレン、約5~約20モルパーセントのヘキサフルオロプロピレン、及び約15~約55モルパーセントのフッ化ビニリデンを含有することができる。好適なスチレンブロックコポリマーとしては、KRATON Polymers(Houston,TX)から入手可能なKRATON G1645及びKRATON G1657が挙げられる。好適なアクリルブロックコポリマーとしては、Kuraray Co.,Ltd.(Tokyo,JP)からKURARITYの商品名で入手可能なものが挙げられる。PETGは、ポリマーのグリコール単位の一部が異なるモノマー単位、典型的にはシクロヘキサンジメタノールから誘導されるモノマー単位で置換されたPETとして説明することができる。PETGは、例えば、ポリエステルを製造するエステル交換反応において使用されるエチレングリコールの一部分をシクロヘキサンジメタノールで置き換えることによって製造することができる。好適なPETGコポリエステルとしては、Eastman Chemical Company(Kingsport,TN)から入手可能なGN071が挙げられる。PEN及びcoPENは、例えば、米国特許第10,001,587号(Liu)に記載されているように製造することができる。低融点PENは、総カルボキシレート基に基づいて約90モルパーセントのナフタレンジカルボキシレート基を含むcoPENであり、coPEN 90/10としても知られている。別の有用なcoPENは、総カルボキシレート基に基づいて約70モルパーセントのナフタレンジカルボキシレート基及び約30モルパーセントのテレフタレートジカルボキシレート基を含むcoPEN 70/30である。より一般的には、coPEN Z/100-Zが総カルボキシレート基に基づいてZモルパーセントのナフタレンジカルボキシレート基(典型的には、50モルパーセントを超え、かつ約90モルパーセント以下)及び100-Zモルパーセントのテレフタレートジカルボキシレート基を含む場合、coPEN Z/100-Zが使用されてもよい。グリコール変性ポリエチレンナフタレート(PENG)は、ポリマーのグリコール単位の一部が異なるモノマー単位で置換されたPENとして説明することができ、例えば、ポリエステルを製造するエステル交換反応で使用されるエチレングリコールの一部分をシクロヘキサンジメタノールで置き換えることによって製造することができる。PHENは、エステル交換反応において使用されるエチレングリコールの一部分(例えば、約40モルパーセント)がヘキサンジオールで置き換えられることを除いて、例えば、米国特許第10,001,587号(Liu)にPENについて記載されているように製造することができる。好適なPETは、例えば、Nan Ya Plastics Corporation,America(Lake City,SC)から入手することができる。好適なsPSは、例えば、Idemitsu Kosan Co.,Ltd.(Tokyo,Japan)から入手することができる。好適なPMMAは、例えば、Arkema Inc.(Philadelphia,PA)から入手することができる。好適な無水物変性エチレンビニルアセテートポリマーとしては、例えば、Dow Chemical(Midland,MI)からBYNELの商品名で入手可能なものが挙げられる。好適なケトンエチレンエステルターポリマーとしては、例えば、Dow Chemical(Midland,MI)からBYNELの商品名で入手可能なものが挙げられる。好適なポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、Mitsui Chemicals(Tokyo,Japan)からADMERの商品名で入手可能なものが挙げられる。好適なcoPPとしては、Total Petrochemicals,Inc.(Houston,TX)から入手可能なPP8650(プロピレンとエチレンとのランダムコポリマー)が挙げられる。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1の基材211及び第2の基材212のうち少なくとも一方は複屈折性である。いくつかの実施形態では、第1の部分及び第2の部分のうち少なくとも1つは、主に幅に沿って配向されている(すなわち、他のいずれの方向よりも幅方向に沿って、より多くの配向があり得る)。例えば、フィルムは、横(幅)方向に長手(長さ)方向より多く(例えば、少なくとも2倍)引き伸ばされ得る。いくつかの実施形態では、第1の基材211部分及び第2の基材212部分のうち一方は複屈折性であるが、他方はそうではない。いくつかの実施形態では、第1の基材及び第2の基材の一方は主に幅(x方向)に沿って複屈折性であるが、他方はそうではない。いくつかの実施形態では、第1の基材及び第2の基材のうち一方は一軸複屈折性であり、幅方向(x方向)に沿って一軸配向され得るが、他方はそうではない。いくつかの実施形態では、第1の基材及び第2の基材の少なくとも1つは、0.05、0.08、0.1、0.12、0.14、0.16、又は0.18を超える平均複屈折を有する。平均複屈折は、例えば、最大で0.3又は0.26であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の部分211及び第2の部分212のうち少なくとも1つは複屈折性であり、少なくとも0.05、又は本明細書に記載されるいずれかの範囲の実質的に一様な複屈折(例えば、幅方向に沿って一軸配向された)を有し得る。平均複屈折は、層の複数の場所にわたる平均(重み付けなしの平均)の複屈折である。ある場所における複屈折は、その場所における最大屈折率と最小屈折率の差である。別段の指示のない限り、屈折率は550nmの波長で評価されると理解され得る。複屈折は実質的に一様であってもよい。実質的に一様な複屈折は、複屈折の大きさにおいて、例えば平均複屈折の約15、10、又は5パーセント未満の標準偏差を有してもよく、同じ主軸(例えば速軸又は遅軸)の配向は、例えば、約10、5、又は3度未満の標準偏差を有してもよい。
【0023】
図6は、いくつかの実施形態による、ポリマーフィルムを押し出すためのダイス444の概略平面図である。ダイス444は、スロットプレート431、スキンブロック432、及び圧縮区間433を含む。圧縮区間433は、押し出されたウェブを厚さ方向(y方向)に圧縮し、また、任意選択としてウェブを幅方向(x方向)に圧縮してもよい。ダイス444は、当業者には理解されるとおり、図示されていないが、押出ダイスにおいて一般的に使用される他の要素を含んでもよい。
【0024】
図7A図7Cは、いくつかの実施形態による、スロットプレート431の概略断面図である。図7Aはスロットプレート431の入力側に隣接した断面図、図7Cはスロットプレート431の出力側に隣接した断面図、図7B図7A図7Cとの間における断面図である。スロットは、図7A図7Cでは長方形スロットとして概略的に示されているが、あるいは他の形状を有してもよい(例えば、特定の領域への流れを促進するため)。例えば、スロットは、丸みを帯びた縁部を有してもよく、又は概ね台形の形状を有してもよい。スロットプレート431は他の特徴を含んでもよく、例えば、流れを促進し、複数のスロット410、420の側部の角領域に材料を充填するチャネルを提供するための、複数のスロット410、420の両側の孔などである。また、複数のスロット410の片側又は両側に追加のスロット、及び、複数のスロット420の片側又は両側に追加のスロットが、互いに交錯(interlace)せずに存在してもよい。追加の孔(単数又は複数)及び/又は交錯しないスロット(単数又は複数)は、押し出されたウェブを安定させるために役立ち得る。実施例に更に記載するとおり、図11は、いくつかの実施形態による、孔772、772’、及び交錯しないスロット771、771’を示すスロットプレートの概略端面図である。図12は、図11のスロットプレートによって生成されるポリマー流の概略図であり、図13は、スキンプレートに隣接した図11のスロットプレートを概略的に示す。スロットプレート431及び他のダイス要素は、ワイヤ放電加工(EDM)などの従来の機械加工技術を使用して作製され得る。
【0025】
図8Aは、いくつかの実施形態による、溶融フィルム250の概略断面図である。溶融フィルム250は、圧縮区間433で圧縮される前の、スロットプレート431及びスキンブロック432によって形成された溶融フィルムに相当し得る。溶融フィルム250は、第1のスキン層320と第2のスキン層325との間に配置された、交互になった第1の延長要素245及び第2の延長要素246から構成される溶融積層体240を含む。第1の延長要素245及び第2の延長要素246は、異なる第1の組成物545及び第2の組成物546を有し、第1のスキン層320及び第2のスキン層325は第3の組成物520及び第4の組成物525を有し、それらは同じであっても異なっていてもよい。例えば、第3の組成物520と第4の組成物525は同じ組成物であってもよく、それは第1の組成物545及び第2の組成物546のうち1つと同じであってもよい。
【0026】
図8Bは、いくつかの実施形態による、第1のフィルム260の概略断面図である。第1のフィルム260は、圧縮区間433で圧縮され、任意選択として冷却された後の、溶融フィルム250に相当し得る。第1のフィルム260は、第1のスキン層620と第2のスキン層625との間に配置された、複数の交互になった第1の延長要素111及び第2の延長要素112を含むとして説明され得る。第1の延長要素111及び第2の延長要素112は、溶融フィルム250が圧縮及び冷却されて第1のフィルム260を形成した後の、第1の延長要素245及び第2の延長要素246であってもよい。同様に、第1のスキン層620及び第2のスキン層625は、溶融フィルム250が圧縮及び冷却されて第1のフィルム260を形成した後の、第1のスキン層320及び第2のスキン層325であってもよい。
【0027】
図9は、いくつかの実施形態による、ポリマーフィルムの製造方法の概略図である。樹脂P1及びP2、並びに、任意選択としてP3及びP4の一方又は両方を押出ダイス344(例えば、ダイス444に相当する)を通して押し出して押出ウェブ350を形成し、この押出ウェブをキャスティングホイール346(チルロールとも称される)にキャスティングすることによって冷却してキャストウェブ351を形成し、これは第1のフィルム260に相当し得る。当業者には理解されるとおり、任意選択的なローラ347が含まれてもよく、また、任意選択として追加のローラ(図示せず)が含まれてもよい。第1の延長要素245及び第2の延長要素246は、第1の樹脂P1及び第2の樹脂P2から形成されてもよい。第1のスキン層320及び第2のスキン層325は、P1及びP2から、又はP1~P4のいずれかから形成され得る。キャストウェブをテンター348で延伸してポリマーフィルム600を得てもよく、これは例えばポリマーフィルム100、200、又は300に相当してもよい。
【0028】
図10は、いくつかの実施形態による、第1のフィルム260を少なくとも幅方向に沿って延伸してポリマーフィルム700を形成する様子の概略図で、このポリマーフィルムは、ポリマーフィルム100、200、300、又は600のいずれかに相当してもよい。第1のフィルム260は、幅方向に第1の引き伸ばし比率DR1=W1/W0で引き伸ばされ、長さ方向に第2の引き伸ばし比率DR2=L1/L0で引き伸ばされる。幅方向に有意な引き伸ばし比率(例えば、DR1≧2、3、4、又は5)で延伸を行うと、本明細書の他の箇所で更に説明するように、皺寄り部分によって隔てられたチャネルがもたらされることがわかった。比較的低い引き延ばし比率DR2での延伸(収縮)は、チャネルを隔てる部分の皺を増加させ得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムの長さ方向(z方向)に沿って延び、長さ方向に直交するポリマーフィルムの幅方向(x方向)に沿って幅Wを有するポリマーフィルム100、200、300、600、700を作製するための方法が提供され、ポリマーフィルムは内部に複数のチャネル230を画定し、チャネル230は長さ方向に沿って延び、幅方向に沿って配列されている。方法は、スロットプレート431内の第1の複数のスロット410及び第2の複数のスロット420をそれぞれ通して第1の樹脂P1及び第2の樹脂P2を押し出して、交互になった第1(245)の延長要素245及び第2(246)のそれぞれから構成される延長要素246の溶融積層体240を形成することであって、第1の複数のスロット及び第2の複数のスロットの各々が、長さ方向及び幅方向によって画定される第1の平面(455又はxz平面)に対して角度(θ1、θ2)をなす流れ方向158、159を有し、第1の延長要素及び第2の延長要素が長さ方向に沿って延び、長さ方向に直交する第2の平面(yx平面)内で傾斜している、形成することと、第1のスキン層320及び第2のスキン層325を、溶融積層体240の両側の第1の側部241及び第2の側部242のそれぞれに(例えば、スキンブロック432を介して)押し出して、溶融フィルム250を形成することと、溶融フィルムを少なくとも、長さ方向及び幅方向に直交する厚さ方向(y方向)に(例えば圧縮区間433で)圧縮することと、溶融フィルムを冷却(例えば、キャスティングホイール346を介して)して第1のフィルム260を形成することと、第1のフィルムを少なくとも幅方向に沿って延伸(例えば、テンター348を介して)して、ポリマーフィルムを形成することと、を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1のフィルムを少なくとも幅方向に沿って延伸することは、第1のフィルムを、幅方向に引き伸ばし比率DR1で、かつ長さ方向に引き伸ばし比率DR2で引き伸ばすことを含み、2≦DR1≦10かつDR2≦0.5DR1である。いくつかのそのような実施形態、又は他の実施形態では、DR1は、DR2の3倍以上、又はDR2の4倍以上である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、DR1は3、4、又は5以上である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、DR1は9、8、又は7以下である。DR1は、例えば約6であり得、これはフィルムの幅の約500%の増大に相当する(例えば、W1は、W0よりも約500%大きいことがある)。いくつかの実施形態では、0.4≦DR2≦3である。DR2は、例えば、約1、又は0.4~1の範囲、又は1~3の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、延伸は実質的には、長手方向と、長手方向及び横方向に直交する厚さとの各々に沿うように制約はされない。制約されない延伸では、フィルムは、横方向に延伸されている間に、長手方向及び厚さ方向に収縮することが可能になる。制約されない延伸は、例えば、米国特許第6,949,212号(Merrillら)に記載のとおりのパラボリックテンターを使用して行われ得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1の複数のスロット及び第2の複数のスロットの各々の流れ方向158、159は、第1の平面に対して5度~85度、又は10度~90度、20度~80度、30度~60度、又は40度~50度の範囲内の角度θ1、θ2をなす。角度θ1、θ2の各々は、例えば約45°であってもよい。
【0032】
得られたポリマーフィルムは、本明細書の他の箇所で更に説明するように、内部に複数のチャネル230を画定し得る。チャネル230は、ポリマーフィルムの厚さTの少なくとも80%の、厚さ方向の平均高さs1を有し得る。チャネル230は、ポリマーフィルムの厚さの少なくとも0.8倍の、幅方向の平均幅s2を有し得る。s1及びs2は、本明細書の他の箇所に記載されるそれぞれの範囲のいずれかであり得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1の樹脂P1はポリエステルを含み、第2の樹脂P2はオレフィンを含む。他の好適なポリマーについては、本明細書の他の箇所で更に説明する。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルム内の第1の延長要素及び第2の延長要素(例えば、ポリマーフィルム200内の部分221及び222に相当する)は、少なくとも10%又は本明細書の他の箇所に記載される別の範囲で互いに異なる表面張力を有する。
【0034】
図15は、いくつかの実施形態による、熱管理システム1000の概略断面図である。熱管理システム1000は、例えばポリマーフィルム100又は200に相当し得る、フィルム800のチャネルを通して流体900を循環させるためのポンプ973を含む。フィルム800は、冷却又は加熱されることが所望される物体又はデバイス830上に配置され得る。フィルムを物体又はデバイスに結合するために、フィルム800と物体又はデバイス830との間に接着剤が配置されてもよい。あるいは、フィルム800は、物体又はデバイス830に結合するための接着剤を含んでもよい。接着剤は熱伝導性接着剤であってもよい(例えば、接着剤は熱伝導性充填剤を含んでもよい)。流体900は、冷却流体(例えば、デバイスの所定の動作温度より低い温度に維持される)又は加熱流体(例えば、物体の所定の温度より高い温度に維持される)であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルム100、200(例えば、図1及び図2参照)と、ポリマーフィルムのチャネル230を実質的に充填する液体900とを含む、フィルム800が提供される。
【実施例
【0035】
延長要素(例えば、皺寄り要素)を有するフィルムを調製した。物理的特性を評価した。それを、以下の実施例に示す。
【0036】
これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書の実施例及び他の箇所における全ての部、百分率、比などは、別途指示がない限り、重量に基づくものである。本明細書では、以下の略語を使用する。ミル=千分の1インチ、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、℃=摂氏、sec=秒、%=パーセント、in=インチ、IV=固有粘度、MFI=メルトフローインデックス。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例E1~E3及び比較例C1
基材部分及び複数の延長要素を有するフィルムを形成するためのハードウェアでは、各マニホールドがスロットプレートに切り込まれた一連のスロットに供給を行う、デュアルマニホールドダイスを利用した。スロットは、長さが0.687インチ(17.45mm)で、幅は広い方の端部で0.033インチ(0.84mm)、狭い方の端部で0.022インチ(0.56mm)であった(台形形状)。スロットを、出口側の中央に0.066インチ(1.68mm)の間隔で配置した。スロットは、yz平面内でマニホールドからダイスの中心線まで角度をなし、図3に示すように、交錯してABAB...というパターンを形成していた。スロットはまた、図11に示すように、xy平面(例えば、図7A図7C参照)内で45度傾いていた。スロットプレートの各縁部には、いくつかのスロット771、771’があり、これらのスロットは反対側のスロットの入口端部が供給マニホールドを越えているので交錯しなかった。マニホールド内の流れを促進し、ルーバー積層体の角を「充填する」ために、yz平面内で角度をなす孔772、772’を、スロットプレートの各端部に穿孔した。出力されたフィルムは、一方の縁部にA樹脂の中実帯を有し、他方の縁部にB樹脂の中実帯を有する。
【0039】
図12は、結果として生じた、スロットプレートを通るポリマー流路を示す。AB交錯パターンと、スロット771及び孔772にそれぞれ対応するポリマーフロー871及び872とが示されている。
【0040】
ルーバー積層体を形成した後、図13に示すとおりのスキンプレートに樹脂を流し込んだ。スキンプレートは、チャネル781及び782のそれぞれを通して積層体の上部及び底部にスキン層を施用した。スキン層は、ルーバーの一方若しくは両方と同じ樹脂であってもよいし、又は、1つの樹脂若しくは2つの異なる樹脂であってもよい。特に関心があったのは、上部スキン層がルーバー樹脂Aに一致し、下部スキン層がルーバー樹脂Bに一致する場合であった。
【0041】
ルーバー積層体とスキンを合わせたものをダイス出口に流し、0.50インチ(1.3cm)の高さから約0.050インチ(0.13cm)にy方向へ圧縮した。x方向の幅は、スロットプレートからダイス出口まで一定を維持した。
【0042】
実施例の調製
上記の構成を利用して、以下の装置設定を用いて一連のフィルムを製造した。冷却ロール(ホイール)側スキン層への供給は、18mmのLeistritz製TSE(二軸押出機)を真空下で運転して、260~271℃の8/0温度を有する漸進的温度プロファイルを利用して行った。関連するギアポンプ及びネックチューブも260~271℃に加熱した。空気側スキン層への供給は、27mmのLeistritz(Leistritz Extrusion Technologies,Nurnberg,Germany)製TSEを真空下で運転して、ここでも260~271℃で8/0温度を有する漸進的温度プロファイルを利用して行った。関連するギアポンプ及びネックチューブも260~271℃に加熱した。不連続な傾斜した層から構成される各セットへの供給は、27mmのLeistritz製TSEを真空下で運転して、260~271℃で8/0温度を有する漸進的温度プロファイルを利用して行った。関連するギアポンプ及びネックチューブも260~271℃に加熱した。上記で詳細に説明したダイスを、ウェブ急速冷却のために、関連する静電ピンニングと共に27℃の回転する冷却ロールの真上に配置した。この装置で上記の基材を、厚さ24ミル(0.61mm)のキャストウェブ厚さで製造した。
【0043】
表2は、製造されたキャストウェブ(フィルム)の材料組成物の詳細を示す。
【0044】
【表2】
【0045】
実施例E2から得られたキャストウェブフィルムを、KARO IV(Bruckner Maschinenbua GmbH and Co.,Siegsdorf Germany)バッチオリエンタ(batch orienter)上で、60秒のヒートソーク時間、100℃の配向温度、及び10%/秒の配向速度で、様々な延伸比を用いて配向した。長さ方向及び幅方向の延伸比を表3に示す。比較例C1では、長さ方向に延伸された実施例2のキャストウェブを使用した。得られたフィルムを、チャネル、皺の形成について観察し、延伸されたフィルムの厚さを測定した。Mitutoyo America Co.(Aurora,IL)から入手可能なMitutoyo Absolute Digital Caliperゲージを使用して、フィルムの厚さを測定した。得られたフィルムの特性を表3に提示する。長さ方向又は長手方向(MD)の延伸比及び、幅方向又は横方向(TD)の延伸比が示されている。表は、隣り合う拡張要素間にチャネル(間隙)が形成されていたか、及びフィンが皺寄せされていたかを示す。実施例E2のフィルムの試料を、2A~2Fとラベル付けする。
【0046】
【表3】
【0047】
実施例2Eの冷却ロール側スキンの屈折率を、Metricon 2100を用いて633nmで測定した。TD/MD/厚み方向の屈折率は、1.671/1.586/1.527であった。
【0048】
図14は、配向前の実施例E2の底面画像である。上面画像は底面画像と類似した外観であった。図3A及び図3Bは、それぞれ、横方向の一軸配向(長手方向に制約されない)後の、実施例E2Cの端面画像及び上面画像である。
【0049】
「約(about)」などの用語は、これらが本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者によって理解されよう。特徴部のサイズ、量、及び物理的特性を表す量に適用される「約」の使用が、本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者にとって別途明らかではない場合、「約」とは、特定の値の10パーセント以内を意味すると理解されよう。特定の値の約として与えられる量は、正確に特定の値であり得る。例えば、それが本明細書で使用及び記載されている文脈において当業者にとって別途明らかではない場合には、約1の値を有する量とは、その量が0.9~1.1の値を有すること、及び、その値が1である場合もあることを意味する。
【0050】
上記において参照された参照文献、特許、又は特許出願の全ては、それらの全体が参照により本明細書に一貫して組み込まれている。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。
【0051】
図面中の要素の説明は、別段の指示がない限り、他の図面中の対応する要素に等しく適用されるものと理解されたい。特定の実施形態が本明細書において図示及び説明されているが、図示及び記載されている特定の実施形態は、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な代替的実装態様及び/又は等価の実装態様によって置き換えられ得ることが、当業者には理解されよう。本出願は、本明細書で論じられた特定の実施形態のあらゆる適応例、又は変形例、又は組み合わせを包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】