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特表2024-535310GH型液晶保護メガネおよびカバー構造フレーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】GH型液晶保護メガネおよびカバー構造フレーム
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/10 20060101AFI20240920BHJP
   G02C 1/00 20060101ALI20240920BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20240920BHJP
   G02C 5/06 20060101ALI20240920BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240920BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20240920BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G02C7/10
G02C1/00
G02C11/00
G02C5/06
G02F1/13 505
G02F1/1333
G02F1/133 580
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517495
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 IB2022058863
(87)【国際公開番号】W WO2023047271
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102021000024203
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522281305
【氏名又は名称】アウト・オブ・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】OUT OF S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】リーギ,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】リーギ,ロベルト
【テーマコード(参考)】
2H006
2H088
2H189
2H193
【Fターム(参考)】
2H006BE03
2H006CA00
2H088EA35
2H088HA05
2H088HA06
2H088HA07
2H088HA24
2H088JA06
2H088MA20
2H189AA52
2H189AA70
2H189CA13
2H189HA16
2H189JA06
2H189LA09
2H189LA16
2H189MA15
2H193ZA27
2H193ZH04
2H193ZH07
2H193ZH37
2H193ZH52
2H193ZP14
2H193ZQ07
2H193ZR16
(57)【要約】
本発明に係る保護メガネ(1)および/またはサングラスは、プラスチック材料により形成される構造レンズ(8)と、構造レンズ(8)の内側に配置され、エネルギー源によって給電される電子基板(5)によって制御される、GH液晶を有する少なくとも1つのLCフィルム(9)とを備えるレンズアセンブリ(6)を支持するように適合されたフレーム(2)を備える。メガネ(1)は、構造レンズ(8)がLCフィルム(9)の外形を越えて延びる自由端(11)を有し、この自由端でレンズアセンブリ(6)がフレーム(2)に固定されることを特徴とする。さらに、フレーム(2)とLCフィルム(9)との間には自由空間(111)がある。フレーム(2)には、自由端(11)と自由空間(111)とを覆う垂直に突出したリブ(21)が設けられている。有利なことに、リブ(21)はレンズアセンブリの変形を抑えるだけでなく、快適な視界を損なうLCフィルムの周囲への光の浸入を防ぐ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズアセンブリ(6)を支持するよう適合されたフレーム(2)と、
少なくとも部分的に前記フレームによって囲まれるレンズアセンブリ(6)であって、プラスチック材料で形成された少なくとも1つの構造レンズ(8)と前記構造レンズ(8)の内側に配置されエネルギー源により電力を供給される電子基板(5)によって制御される少なくとも1つのGHタイプの液晶LCフィルム(9)とを有する、少なくとも1つの構造レンズ(8)と、
を備え、
前記構造レンズ(8)は、前記LCフィルム(9)の外形を越えて延びる自由端(11)を有し、前記レンズアセンブリ(6)は、前記自由端(11)で前記フレーム(2)に固定され、
前記フレーム(2)と前記LCフィルム(9)との間には自由空間(111)が存在し、
前記フレーム(2)には、前記構造レンズの前記自由端(11)および前記LCフィルム(9)の前記自由空間(111)を覆う垂直突出リブ(21)が設けられている、
保護メガネおよび/またはサングラス(1)。
【請求項2】
前記電子基板(5)は、光閾値(131)に達するまで前記LCフィルム(9)が実質的に前記最大透明度状態を維持し、その後、前記LCフィルム(9)が周囲光の増加に従い透明度を低下させ始めるよう、周囲光レベルの関数として、最大透明度状態を有する前記LCフィルム(9)の活性化を制御する、
請求項1に記載の保護メガネおよび/またはサングラス(1)。
【請求項3】
前記光閾値(131)は、7500ルクスに設定された最適レベルの知覚光を、25%の許容誤差を有するレンズアセンブリ(6)の最大可視光透過率(VLT)レベルで割ることによって計算される、
請求項2に記載の保護メガネおよび/またはサングラス(1)。
【請求項4】
前記光閾値(131)は、30秒から5分の間の時間間隔で測定される平均周囲光に関連して可変である、
請求項2に記載の保護メガネおよび/またはサングラス(1)。
【請求項5】
前記電子基板(5)は、ユーザーの視野の前部および/または下部に向けられた感度コーン(15)内で測定された周囲光に主に反応し、
そのような感度コーン(15)は、90度から10度の間の開き角度(α)を有する、
請求項2に記載の保護メガネおよび/またはサングラス(1)。
【請求項6】
前記LCフィルム(9)は、その最小透明度状態で25%未満の、および、その最大透明度状態で60%を超える最大可視光透過率(VLT)を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の保護メガネおよび/サングラス(1)。
【請求項7】
前記電子基板(5)の電源は、太陽電池(51)であり、
前記感度コーン(15)の開き角度(α)の制御装置は、前記太陽電池(51)の前に配置された薄板状(lamellar)構造(14)、または前記太陽電池(51)の前方および上方に前記フレーム(2)から突出したバイザー(17)の形式で存在する、
請求項5に記載の保護メガネおよび/サングラス(1)。
【請求項8】
前記フレーム(2)にヒンジで取り付けられた一対のテンプル(3)を備え、
前記テンプル(3)は、前記フレーム(2)を形成する材料の弾性率の半分以下の弾性率を有する材料により形成される、
請求項1から7のいずれか1項に記載の保護メガネおよび/またはサングラス(1)。
【請求項9】
前記電子基板(5)は、エネルギー源により電力を供給され、
前記エネルギー源は、1つまたは複数の太陽電池(51)からなる、および/または
前記エネルギー源は、前記構造レンズ(8)の後方かつ前記LCフィルム(9)の外周の外側に位置する、および/または
前記エネルギー源は、メガネの上部中央のLCフィルム(9)の外周の外側に位置する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の保護メガネおよび/またはサングラス(1)。
【請求項10】
プラスチック材料で形成された少なくとも1つの構造レンズ(8)と、
前記構造レンズ(8)の内側に配置されエネルギー源により電力を供給される電子基板(5)によって制御される少なくとも1つのGHタイプの液晶LCフィルム(9)と、
を備え、
前記電子基板(5)は、光閾値(131)に達するまで前記LCフィルム(9)が実質的に前記最大透明度状態を維持し、その後、前記LCフィルム(9)が周囲光の増加に従い透明度を低下させ始めるよう、周囲光レベルの関数として、最大透明度状態を有する前記LCフィルム(9)の活性化を制御する、
保護および/またはサン(sun)レンズアセンブリ(6)。
【請求項11】
保護および/またはサンレンズアセンブリ(6)の透明度のレベルを制御する方法であって、
前記レンズアセンブリ(6)は、プラスチック材料で形成された構造レンズ(8)と、前記構造レンズ(8)の内側に配置され太陽電池(51)により電力を供給される電子基板(5)により制御されるGHタイプの液晶LCフィルム(9)と、を備え、
前記方法は、以下のように、前記電子基板(5)により、周囲光レベルの関数として、最大可視光透過率レベル(最大VLTレベル)の状態を有する前記LCフィルム(9)の活性化を制御する、
光閾値(131)に達するまで、前記LCフィルム(9)を実質的に最大VLTレベルの状態に維持する、
前記光閾値(131)を超えると、周囲光が増加するにつれてVLTレベルを低下させる、
方法。
【請求項12】
前記光閾値(131)は固定され、7500ルクスに設定された最適レベルの知覚光を、25%の許容誤差を有する前記レンズアセンブリ(6)の最大可視光透過率(VLT)レベルで割ることによって計算される、または
前記光閾値(131)は、30秒から5分の間の時間間隔で測定される平均周囲光に関連して可変である、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、スポーツ活動の練習または交通手段の使用のための保護メガネである。
【背景技術】
【0002】
スポーツの練習中、多くの場合、風、粒子、過度の光などから目を保護するためにメガネを使用する必要がある。
【0003】
従来の自転車および電動自転車、スクーター、またはスケートボードなど、オープンな交通手段を使用する場合も同じことが要求される。
【0004】
現在市販されているメガネは、風および粒子からユーザーの目を保護する能力が非常に高い。
【0005】
光からの保護に関しては、ユーザーの目に届く光の量を減らす多くの種類のフィルターがあり、これらのフィルターはそれぞれ特定の光条件に適している。例えば、現在のヨーロッパの法律では、光学フィルターを5つのカテゴリーに分け、それぞれのカテゴリーについて、最適な視界を確保しつつどのような条件下でこれらのフィルターが使用者の目を保護するのに適しているかを説明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、スポーツ中および交通手段を使用する場合、周囲光(ambient light)の条件が大幅かつ急速に変化することがある。たとえば、道路のトンネルに入る場合を考慮するだけで十分である。したがって、この種のアクティビティでは、単一のレンズの使用が最適ではないだけでなく、周囲の明るさ条件の変化に応じてレンズの種類を変更することもできない。
【0007】
この問題に対応するため、化学反応を利用して光照射への曝露の結果として、レンズの透明度を低下させるフォトクロミックレンズ(photochromic lenses)が開発された。しかし、フォトクロミックレンズは特に透過率を上げるのに時間がかかるため、完全に移行するには数分を要する。
【0008】
さらに、フィルターの透明度を下げるために化学反応を使用すると、レンズの活性化曲線(activation curve)の制御が不十分になり、入射光量の関数としてのフィルター透過率の制御も不十分になる。例えば、このタイプのレンズは、光レベルが最適よりも低い状況では部分的に暗くなることが多く、状況を悪化させることさえある。この第2の側面は、紫外線に対するフィルターの高い感度によって悪化する。実際、紫外線は光が不十分な条件下でも十分な量で存在することが多く、その結果、光が不十分な条件下でもフォトクロミックレンズがむしろ暗くなることがある。
【0009】
これだけでは不十分であるかのように、これらの側面はすべて低温の存在下でさらに悪化し、フォトクロミックレンズは常に部分的に見えなくなる傾向がある。
【0010】
磁場を印加すると光学特性が変化するポリマーを一般的に使用するエレクトロクロミックレンズも知られている。このレンズはフォトクロミックレンズよりは速いが、それでもかなり遅い。さらに、状態の変化を達成するために必要な電力が大きいため、可能な変化の最大数が制限され、このタイプのレンズは、かさばる電池が存在する場合にのみ、周囲光に自動的に適応するよう機能する。
【0011】
最後に、液晶の層を使用したレンズが知られており、周囲光の変化に迅速に反応できる唯一のレンズである。しかし、このタイプのレンズは、フィルターの最大輝度が低い、不要な偏光の存在、他の透明要素との干渉、および機械的応力に対する望ましくない反応を含む多くの問題が根強く残っているため、一般的に使用される製品ではまだ実質的に使用されていない。これらの理由から、このレンズは、TN(ツイストネマチック)平面液晶LCスクリーンが広く使用されている溶接用保護装置の分野で実際に使用されている。しかしながら、このスクリーンは、実際には最大透過率状態では暗すぎ、視野が非常に狭いため、通常の条件下では太陽光から保護するのには適していない。
【0012】
また、GH(ゲストホスト)液晶を使用したデバイス応用技術も知られている。このタイプの液晶は偏光フィルターを使用しないため、50%を超える透明度を実現することができ、通常の条件下では太陽光保護デバイスでの使用により適している可能性がある。しかし、このタイプのレンズでも一連の問題があり、そのためこの方法で製造されたデバイスは現在市場に流通していない。この技術に関連する問題点を以下に挙げる。
【0013】
(1)GH液晶層は機械的応力の影響を受け、LCフィルム(LC film)の局所的な透明度レベルが強く変化する。サングラスはその構造上、レンズにかかる機械的応力が大きすぎてGHタイプのLCフィルムを使用することができない。
【0014】
(2)上述の機械的応力を軽減するために、考えられる解決策は、LCフィルムがレンズの変形に比較的依存しないように、LCフィルムを構造レンズ(structural lens)に適用することである。しかし、この構成では、LCフィルムの外周からの迷惑な光の浸入(infiltration)が発生し、光学的品質が低下する。
【0015】
(3)保護メガネを製造するための最も一般的なレンズは、射出成形によって得られる。この技術にはかなりの利点があるが、メガネレンズに適用するとレンズ内部に内部張力が生じ、GH液晶フィルム(GH LC film)と相まって迷惑な「虹(rainbow)」効果を生み出す。この問題を解決するには、熱成形レンズを使用することが考えられる。しかし、このタイプのレンズは光学的品質および精度がかなり劣る。さらに、この技術では光学的に「正しい」レンズを形成することはできない。
【0016】
(4)現在までに販売されているすべてのダイナミックレンズ(dynamic lenses)には、活性化曲線の、または周囲光レベル(ambient lighting level)と可視光の透過率の低下との間の関数(function)の適切な制御が欠けている。このような活性化曲線の正確な制御がない場合、広い範囲の周囲光レベルにわたって、ユーザーが知覚する最適な光レベルを維持するのに真に効果的なデバイスを得ることは実質的に不可能である。この問題は未だ解決されていない。
【0017】
本発明の目的は、常に快適で効果的な視界(vision)を確保しながら、最も一般的な光の条件下だけでなく、そのような条件の急激な変化に対しても、最適な光からの保護を実際に提供することができるメガネを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、請求項1にかかるメガネ、請求項10にかかるレンズアセンブリ、および請求項11にかかるレンズアセンブリの透明度のレベルの制御方法によって達成される。従属請求項には、本発明のさらに有利な実施形態が開示されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるメガネの特徴および利点は、添付の図面に従って非限定的な例として与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態における本発明による保護メガネの斜視図
図2図1に示す保護メガネの分解図
図3図1の保護メガネのレンズアセンブリの分解図
図4図1の保護メガネの断面図
図5図4の詳細を示す図
図6】30%のVLT(可視光透過率、visible light transmission)を有する従来のスタティックレンズ(static lens)における、周囲光と知覚光との関係を示す図
図7】フォトクロミックレンズを使用した、周囲光と知覚光との関係を示す図
図8】本発明の例示的な実施形態における周囲光とレンズのVLT(可視光透過率)との関係を示す図
図9】本発明の例示的な実施形態における周囲光と知覚光との関係を示す図
図10】さらなる実施形態における、本発明による保護メガネの縦断面の詳細を示す図
図11】さらに別の実施形態における、本発明による保護メガネの縦断面の詳細を示す図
図12】本発明によるメガネに適用される感度コーンの使用時の動作を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図を参照して、符号1は、スポーツ活動の練習のためまたは電動車両(motorized vehicles)の使用のための本発明による保護メガネを総称するために使用されている。特に、保護メガネ1はサングラスでもある。
【0022】
メガネ1は、レンズアセンブリ6を支持するように適合されたフレーム2を備える。図1に示すように、フレーム2はレンズアセンブリ6の外周に完全に沿っている。
【0023】
図6に示すように、レンズアセンブリ6は、構造レンズ8と、電子基板(electronic board)5によって制御される少なくとも1つの液晶フィルム9(以下、LCフィルム)とを備える。
【0024】
好ましくは、フレーム2は、ポリマーマトリックス複合材料、例えばナイロン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、またはポリエステルで形成される。好ましくは、フレーム2は、ポリマーマトリックス複合材料で形成され、例えばガラス繊維または炭素繊維、ガラス微小球(glass microspheres)、またはグラフェンなどの補強材が使われている。
【0025】
代替的な実施形態では、フレーム2は、アルミニウム合金、チタン、またはマグネシウムなどの軽金属材料で形成されている。
【0026】
選択された材料に応じて、フレーム2は、射出成形、あるいは鍛造、ダイカスト、または板金成形(metal molding)によって得られる。
【0027】
有利なことに、上に挙げた材料は、使用中のレンズアセンブリ6の変形を避けるために、フレーム2に十分な剛性を持たせることを可能にし、この変形は、LCフィルム9に伝達され、それによってその光学的均一性が損なわれる。
【0028】
好ましくは、メガネ1は、フレームにヒンジで取り付けられ、使用しないときにメガネのサイズを小さくするために互いに折り返すことができる一対のテンプル3を備える。
【0029】
テンプル3のフレームへの組み立てには貫通ピンの使用を必要としないことが好ましい。実際、それぞれのテンプル3は、フレーム2のテンプルシート(temple seat)31と連結することによってフレームに取り付けられており、このシートは、半球状で互いに対向する一対の突起または凹部(concavities)32の間に画定されているため、テンプル3が移動限度(end of travel)を超えて強制的に回転しても破損には至らず、単にフレーム2から分解されるだけである。
【0030】
図2に示すように、テンプル3は、人間工学に基づいた形状を有し、実質的にS字形、すなわち波形の湾曲を特徴とし、この湾曲は、テンプルの末端部ではユーザーの頭部の湾曲に沿うが、ヒンジポイントに近い部分では、ユーザーの頭部から離れてフレームに取り付けられる。有利なことに、この波状の形状は、ユーザーの頭部との接触面を増やし、快適さと保持力を向上させる。また、ヘルメット、ヘッドギア、帽子、またはバンドなどの下でメガネを快適に使用することも可能になる。
【0031】
好ましくは、テンプル3は、フレーム2に選択された材料の弾性率の半分以下の弾性率を有する材料で形成される。有利なことに、この構成により、ユーザーの顔に位置決めするために必要なメガネ1の変形は、主にテンプル3に作用し、それによりフレーム2の過度の変形が回避される。このようにして、構造レンズ8に作用する変形および応力、ひいてはLCフィルム9に作用する変形および応力も抑制される。
【0032】
好ましくは、フレーム2は、連結して(interlockingly)組み立てられ、ユーザーの鼻でのメガネ1の保持を容易にするゴム製のノーズピース7を備えている。
【0033】
フレーム2には、少なくとも1つのエネルギー源、例えば太陽電池51、または太陽電池51を含む電子基板5全体が収容される座部(seat)またはくぼみ(recess)4が設けられている。
【0034】
有利には、くぼみ4は、ユーザーの視野を妨げないように、図2に示すように、フレーム2の前方上側中央部分に配置される。
【0035】
一実施形態において、くぼみ4はエネルギー源、例えば太陽電池51のみを収容し、電子基板5は、例えばフレーム2の側面、またはテンプル3の内部、あるいは特定の用途に最適な別の位置に設けられた別の座部に配置される。
【0036】
好ましくは、太陽電池51は、センサーとして、および、LCフィルム9を作動させるためのエネルギー源として、同時に機能する。有利なことに、この構成により、電池の使用を回避することが可能となり、コストを削減し、メガネ1の信頼性を高めることができる。
【0037】
一実施形態では、太陽電池51は柔軟である、および/または構造レンズ8の曲率に追従する。
【0038】
電子基板5は防水加工が施されており、コーティング、ポッティング(potting)または他の形式の防水保護処理により保護されている。
【0039】
上述したように、フレーム2は、好ましくはプラスチック材料、例えばポリカーボネートで形成された構造レンズ8を含むレンズアセンブリ6を取り囲んでいる。
【0040】
好ましくは、構造レンズ8は、前部で電子基板5を保護し、この基板は、後部でフレーム2に位置するくぼみ4の壁によって保護される。有利なことに、この構成は電子基板5を機械的および化学的に保護する。また、構造レンズ8の吸収を除いて、ユーザーの目に届く光がフィルタリングされるのと同じように、太陽電池51に届く光もフィルタリングされる。このようにして、電子基板5の入力信号は、ユーザーの知覚に対して正しく調整される。例えば、紫外線はすでに構造レンズ8によって遮断されているため、実際にそうあるべきであるように、電子基板5の入力信号は紫外線の影響を受けない。
【0041】
構造レンズ8は、好ましくは射出成形によって製造される。他の例示的な実施形態では、構造レンズは、熱成形、ステレオリソグラフィ、または他の積層造形技術によって製造される。
【0042】
例示的な一実施形態において、構造レンズ8には、鏡面処理、反射防止処理、傷防止処理、疎水化処理、または撥油化処理、または特定の用途に適したその他の処理が施されている。
【0043】
例示的な一実施形態において、構造レンズ8には、多層で不透明な鏡面処理も施されている。このような実施例の変形例において、構造レンズ8の異なる領域内で鏡面処理の特性が異なる。
【0044】
レンズアセンブリ6では、LCフィルム9は、構造レンズ8に対して内側に(internally)配置されている。好ましくは、LCフィルム9は、構造レンズ8の内面に、好ましくは光学接着剤(optical blue)によって積層される。
【0045】
好ましくは、LCフィルム9はGH液晶フィルムである。このタイプのLCフィルムでは、二色性色素(dichroic pigments)が液晶のマトリックス内に分散されており、磁場が液晶の配向を示し、液晶が色素の配向を示す。通常、「活性(active)」状態では、結晶はらせん構造をとり、顔料はフィルムの表面に平行な平面に配置されるが、「不活性(inactive)」状態では、結晶および色素はフィルムの表面に垂直に配置される。
【0046】
好ましくは、LCフィルム9は、その最も透明な状態で少なくとも60%の可視光透過率(VLT)を有し、その最も不透明な状態で最大25%の可視光透過率(VLT)を有する。例えば、LCフィルムは、その最も不透明な状態で約15%のVLTを有し、その最も透明な状態で約65%のVLTを有していてもよい。
【0047】
好ましくは、図4および図5に示すように、LCフィルム9の外形は構造レンズ8の外形内に含まれる。構造レンズ8の外形のうち、LCフィルム9の外形によって占められていない部分は、構造レンズ8をフレーム2に取り付ける自由端11を画定する。さらに、空間または隙間111が設けられているため、フレーム2はLCフィルム9と直接接触していない。
【0048】
好ましくは、図5に示すように、フレーム2は、実質的にL字形の断面を有し、このことは、フレーム2が、自由端11および隙間111を覆う垂直リブ21を内部に有することを意味する。有利なことに、この構成は、快適な視界を損なうような光のLCフィルム9周辺への浸入を防ぐ。さらに、フレームのリブ21により、レンズアセンブリ6の変形を抑えることができる。
【0049】
LCフィルム9は、好ましくはフレキシブルプリント基板(FPC)91によって接続される電子基板5によって制御される。
【0050】
保護メガネ1は、非線形活性化曲線に従って、周囲光レベルの関数としてLCフィルム9の活性化(activation)を制御する電子基板5を備えている。活性化曲線は、ある光閾値131に達するまで、LCフィルム9が実質的に最大透明度の状態を維持し、その後、周囲光が増加するにつれて、LCフィルム9が透明度を低下させ始めることを決定する。
【0051】
図3に示すように、好ましくは構造レンズ8とLCフィルム9との間に、偏光解消層(depolarizing layer)10が積層される。偏光解消層10の偏光解消効果は、好ましくは、1500nmを超える2つの光軸間の波長位相シフト(wave phase shift)を特徴とする複屈折フィルムによって得られる。
【0052】
図6図7および図9は、メガネに使用されるレンズに応じて、周囲光(単位:ルクス)と知覚光(perceived lighting)(単位:ルクス)との関係を表すグラフである。グラフには次の内容も示されている。
・スポーツ活動の練習に最適な光レベル(optimum lighting level)(7500ルクス)を示す水平線
・分析対象レンズの最適使用範囲を示すグレーの領域
【0053】
図6は、30%のVLT(可視光透過率)を有する従来のレンズを使用した場合の、周囲光と知覚光との関係を示している。この場合、レンズは特定の光条件(グラフの非常に小さいグレーの領域)に適しているため、最適な使用範囲が限られていることに注意すべきである。
【0054】
図7は、一般的なフォトクロミックレンズを使用した場合の、周囲光と知覚光との関係を示している。フォトクロミックレンズの目的はどのような状況でも適切な透明度を保つことだが、現実には色素の活性化曲線はうまく制御できない。たとえば、フィルターの透明度は通常、最適な光レベルに達するかなり前から低下し始める。実際、フォトクロミックレンズも従来のレンズと同様に、最適使用範囲が限られている(グラフのグレーの領域で強調されている)。
【0055】
図8は、周囲光と本発明によるレンズアセンブリ6の可視光透過レベル(VLT=可視光透過率)との関係を表し、電子基板5は、図8において参照符号13で示される低光域(lighting range)内で、LCフィルム9を制御して、その非活性化(deactivated)状態(最大可視光透過率)に維持する。
【0056】
範囲13の振幅(amplitude)は、図8において参照符号131で示される閾値レベルによって上部に定義される。
【0057】
例示的な一実施形態において、閾値レベル131は固定され、スポーツ活動の練習または交通手段の使用のために7500ルクスに設定された最適な知覚光レベルを、25%の許容誤差を有するレンズアセンブリ6の最大可視光透過率、すなわち最大透明度で割ることによって計算される。
【0058】
閾値レベル131は周囲光レベルに相当し、その下では最大可視光透過率でレンズアセンブリ6を介してユーザーが知覚する光レベルが最適レベルよりも低く、したがってLCフィルム9は完全に非活性化されたままであり、したがってその最大透明度の状態にすることが適切である。
【0059】
周囲光レベルが閾値レベル131を上回ると、電子基板5は、特定の制御関数に従って、周囲光レベルが増加するにつれて、LCフィルム9の最小透明度レベル、すなわち最小可視光透過率に達するまで、可視光透過率、したがってLCフィルム9の透明度を減少させることによって制御する。
【0060】
低光域13内では、LCフィルム9の可視光透過率VLTレベルの値は、以下のように定義される制御関数によって決定される。
VLT=7500Lux/(t・la)
ここで、「t」は構造レンズ8の可視光透過率であり、「la」はルクスで表される周囲光レベルである。
【0061】
図9のグラフは、周囲光と本発明に従って保護メガネ1を装着したユーザーにより知覚された光との関係を示している。グラフ上の大きなグレーの領域からわかるように、保護メガネ1は、周囲の明るさの広い範囲にわたって最適な知覚光を提供する。したがって、本発明による保護メガネ1は、特定の光の状況に適しているのではなく、かなり広い光域にわたって最適な視界を確保することができる。
【0062】
さらに例示的な実施形態において、閾値レベル131は、特定の時間間隔、例えば30秒から5分の間の平均周囲光レベルに応じて可変である。有利なことに、保護メガネ1は、周囲光の変化にゆっくりと適応する人間の目の能力を利用することで、周囲光レベルの急激な変化による知覚光の変化を排除ことが可能になる。
【0063】
図10図12に示すさらなる例示的な実施形態において、回路基板5は、入力として、例えば感度コーン(ensitivity cone)15のような、ユーザーの視野の予め定義された領域の周囲光レベルを受信する。好ましくは、感度コーン15は、図12に示すように、90度から10度の間の開き角度αを有し、ユーザーの前部/下部に向けられる。
【0064】
保護メガネ1は、感度コーン15の開き角度αを制御する装置を備えている。
【0065】
図10の例では、感度コーン15の開度を制御する装置は、くぼみ4の内部であって、太陽電池51の前に配置されたスラット(slats)14によって画定される。
【0066】
図11の例では、感度コーン15の開度を制御する装置は、フレーム2から前方に突出し、太陽電池51が収容されているくぼみ4の上方にあるバイザー(visor)17によって画定される。
【0067】
さらなる実施形態において、同様の結果を得るために、感度コーン15の開度はレンズまたはミラーによって画定される。
【0068】
別の例示的な実施形態において、保護メガネ1は、くぼみ4の内部であって、太陽電池51の隣に配置されるセンサーを備える。このようにして、電子基板5の適切に適応させることにより、スラット14またはバイザー17のような面倒な物理的装置がなくても、感度コーンの開度の定義を得ることができる。この例では、電子基板5は、太陽電池51を唯一のエネルギー源として使用し、センサーは、補償される周囲光の値を決定する。
【0069】
有利なことに、感度コーン15での検出により、レンズアセンブリ6は、地面の一部と、ユーザーが途中でまもなく遭遇する物体に対して感度を有する。このようにして、ほとんどの一般的な使用状況において、その補正が実質的に予測可能な保護メガネ1を得ることができる。
【0070】
図12は、保護メガネ1を、トンネルを通過する準備をしているサイクリストが使用する場合を示している。この状況では、感度コーン15の大部分は、光の不十分な領域(poorly lit area)(数字16で示す)で占められている。この状況では、サイクリストがまだ太陽に照らされているにもかかわらず、電子基板5の入力信号が減少し、レンズアセンブリ6、あるいはむしろLCフィルム9がより透明な状態となる。したがって、有利なことに、サイクリストは、光のレベルが急に変化したとしても、光の不十分な領域16内の地面を最適に見ることができ、その領域に到達する前でも、穴、停止している車、岩などの障害物または危険を回避またはそれらに反応することができる。
【0071】
本発明の一実施形態において、感度コーン15の開き角度αは固定されており、保護メガネ1がそれに対して設計される特定の活動の典型的な速度に関連している。実際、ユーザーの典型的な移動速度が高いほど、開口部が小さくなる感度コーンが望ましい。有利なことに、この構成により、ユーザーは、反応時間と同等の時間で到達する対象物に注意を集中することができる。
【0072】
本発明のさらなる実施形態において、感度コーン15の開き角度αは、可変であり、例えばGPSセンサー、加速度センサーシステム、または例えばスペックル(speckle)に基づく光学センサーに基づくシステムなどの速度センサーから受信した入力信号に応じて、使用中に常に調整される。
【0073】
本発明のさらなる実施形態において、保護メガネ1をより特定の用途に適合させることができるように、感度コーン15の開度を決定する装置、ユーザーは例えばスラット14を交換することができる。
【0074】
当業者であれば、付随するニーズを満たすために、上述した装置に修正を加えることが可能であり、そのすべてが以下の特許請求の範囲によって定義される保護範囲に含まれることが理解される。
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【国際調査報告】