(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】少なくとも1つの医療製品をモニタするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G16H 40/40 20180101AFI20240920BHJP
A61B 90/98 20160101ALI20240920BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G16H40/40
A61B90/98
G06K7/10 240
G06K7/10 264
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517499
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2022075973
(87)【国際公開番号】W WO2023041785
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021124194.4
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク レンツェンヒューバー
(72)【発明者】
【氏名】ローランド-アロイス ヒューゲル
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの医療装置(2、6)をモニタするためのシステムであって、システムは少なくとも2つのモニタ機器(27から36)を備え、少なくとも2つのモニタ機器(27から36)は、モニタネットワークにおいてデータ伝送のために相互接続されているかまたは相互接続可能であり、各々が、医療装置(2、6)のトランスポンダ(4、8)が、関連するモニタ機器(27から36)の周りに延在する検知領域(39から48)に配置されているかどうか検知可能なように設計された検知装置を有しており、少なくとも2つのモニタ機器(27から36)は、少なくとも2つのモニタ機器(27から36)の検知領域(27から48)が重なるように配置されているか、または配置することができる。システムはまた、データ伝送のためにモニタネットワークを介して少なくとも2つのモニタ機器(27から36)に接続されまたは接続可能な、および、モニタ機器(27から36)によるトランスポンダ(4、8)の検知の時点を保存可能なように設計されたデータ処理機器(38)を備える。データ処理機器(38)は、トランスポンダ(4、8)が少なくとも2つのモニタ機器(27から36)の検知領域(39から48)の1つにのみ位置する時間帯を計算可能なように、および/または、少なくとも2つのモニタ機器(27から36)が検知領域(39から48)においてトランスポンダ(4、8)を検知するシーケンスを登録可能なように設計されている。本発明はまた、手術環境において少なくとも1つの医療装置をモニタするための方法に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの医療製品(2、6)をモニタするためのシステムであって、
モニタネットワークにおいてデータ伝送方式で互いに接続されているまたは接続可能である少なくとも2つのモニタ装置(27から36)であって、それぞれの前記モニタ装置は、前記医療製品(2、6)のトランスポンダ(4、8)がそれぞれの前記モニタ装置(27から36)の周りに延在する検知領域(39から48)に位置するか否かを検知可能なように構成された検知装置を備えており、少なくとも2つの前記モニタ装置(27から36)は、少なくとも2つの前記モニタ装置(27から36)の前記検知領域(39から48)が重なるように、配置されているまたは配置可能である、少なくとも2つの前記モニタ装置(27から36)と、
前記モニタネットワークを介して少なくとも2つの前記モニタ装置(27から36)とデータ伝送方式で接続されているまたは接続可能であり、前記モニタ装置(27から36)による前記トランスポンダ(4、8)の検知の時点を保存可能なように構成されたデータ処理装置(38)と、を備え、
前記データ処理装置(38)は、
前記トランスポンダ(4、8)が少なくとも2つの前記モニタ装置(27から36)の前記検知領域(39から48)のうちの1つにだけ位置する時間帯を計算可能なように、および/または、
少なくとも2つの前記モニタ装置(27から36)が前記検知領域(39から48)で前記トランスポンダ(4、8)を検知するシーケンスを登録可能なように構成されていることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記医療製品(2、6)は、再使用可能であり、および/または手術器具であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも2つの前記モニタ装置(27から36)は、関連する前記検知領域(39から48)のサイズがそれぞれ異なるように構成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
少なくとも2つの前記検知装置のうちの少なくとも1つは、前記医療製品の前記トランスポンダが、それぞれの前記モニタ装置の周りに延在し、対応する前記検知領域に比べて小さい近接検知領域に位置するか否かを検知可能なように構成され、および/または、前記医療製品の前記トランスポンダが、それぞれの前記モニタ装置の周りに延在し、対応する前記検知領域に比べて大きい遠隔検知領域に位置するか否かを検知可能なように構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記データ処理装置は、前記トランスポンダが少なくとも1つの前記近接検知領域に位置する時間帯および/または少なくとも1つの前記遠隔検知領域に位置する時間帯を計算可能なように構成されていることを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記データ処理装置は、前記トランスポンダが少なくとも1つの前記近接検知領域にない時間帯および/または少なくとも1つの前記遠隔検知領域にない時間帯を計算可能なように構成されていることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記検知装置の少なくとも1つが、前記トランスポンダ(4、8)を検知するための第1の周波数帯域の電磁波を発し、前記電磁波を前記トランスポンダ(4、8)から受信可能なように構成されており、および、
前記検知装置の少なくとも1つが、前記トランスポンダ(4、8)を検知するための第2の周波数帯域の電磁波を発し、前記電磁波を前記トランスポンダ(4、8)から受信可能なように構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記検知装置の少なくとも1つが、前記トランスポンダ(4、8)を検知するための第1の伝送規格に従って電磁波を発し、前記電磁波を前記トランスポンダ(4、8)から受信するように構成されており、および、
前記検知装置の少なくとも1つが、前記トランスポンダ(4、8)を検知するための第2の伝送規格に従って電磁波を発し、前記電磁波を前記トランスポンダ(4、8)から受信するように構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記モニタネットワークは、第3の伝送規格に従って運用されるように構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記モニタネットワークが部分的または完全にメッシュ状であることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、目標時間帯および/または目標シーケンスが保存された記憶装置を有し、
前記データ処理装置は、計算された時間帯と対応する目標時間帯と、および/または登録されたシーケンスと目標シーケンスとを比較可能なように、および、目標時間帯を超えたとき、および/または目標シーケンスが逸脱したときに、対応するアラーム信号を出力可能なように構成されることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
少なくとも1つの前記モニタ装置(28;30)が滅菌物品容器(24;26)内に配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
少なくとも1つの前記モニタ装置(27)が手術環境の保管領域に配置され、
少なくとも1つの前記モニタ装置(32、34)が、手術台(10)の近傍のサイドテーブル(20、22)の滅菌領域(12)において前記手術環境に配置され、および、
少なくとも1つのモニタ装置(36)が、前記手術台(10)上の前記滅菌領域(12)において前記手術環境に配置されることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
少なくとも2つの前記モニタ装置(27から36)の相対位置を検知および/または登録可能なように構成された位置決めシステムを備えることを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
手術環境において少なくとも1つの医療製品(2、6)をモニタするための方法であって、モニタネットワークにおいてデータ伝送方式で互いに接続されているまたは接続可能な少なくとも2つのモニタ装置(27から36)が、それぞれの前記モニタ装置(27から36)の周りに延在する少なくとも2つの前記モニタ装置(27から36)の検知領域(39から48)が重なるように、配置されるかまたは配置可能であり、前記医療製品(2、6)が特に再使用可能であり、および/または手術器具であり、前記方法は、
前記医療製品(2、6)のトランスポンダ(4、8)が前記検知領域(39から48)のうちの1つに位置するかどうかを検知するステップと、
前記トランスポンダ(4、8)の検知の時点を保存するステップと、
前記トランスポンダ(4、8)が少なくとも2つの前記モニタ装置(27から36)の前記検知領域(39から48)のうち1つにのみ位置する時間帯を計算する、および/または少なくとも2つの前記モニタ装置(27から36)が前記検知領域(39から48)で前記トランスポンダ(4、8)を検知するシーケンスを登録するステップ、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の少なくとも1つの医療製品をモニタするためのシステムに関し、特に、少なくとも1つの、特に再使用可能な、医療製品、特に手術器具、および/または手術用ブランチ器具をモニタするためのシステムであって、当該システムは、モニタネットワークにおいてデータ伝送方式、特にワイヤレス方式で互いに接続されているまたは接続可能な少なくとも2つのモニタ装置であって、各モニタ装置は、医療製品のトランスポンダがそれぞれのモニタ装置の周りに延在する検知領域に位置するか否かを検知するように構成された検知装置を備えており、少なくとも2つのモニタ装置は、少なくとも2つのモニタ装置の検知領域が重なるように、配置されているまたは配置可能である、少なくとも2つのモニタ装置と、モニタネットワークを介して、特にワイヤレスで、少なくとも2つのモニタ装置とデータ伝送方式で接続されているまたは接続可能であり、および、モニタ装置によるトランスポンダの検知の時点を保存可能なように構成されたデータ処理装置と、を備える。本発明はさらに、手術環境において少なくとも1つの医療製品をモニタする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療製品をモニタするための一般的なシステムは、例えばUS 10 709 521 B2に開示されている。US 10 709 521 B2によるシステムでは、医療製品はそれぞれ2つのトランスポンダを具備している。識別トランスポンダは、入力信号に応答して識別信号を返すように構成されている。簡易トランスポンダは、入力信号に応答して識別情報を含まない簡易信号を返すように構成されている。治療に使用された後、医療製品はUS 10 709 521 B2によると、遮蔽された容器に入れられる。治療中は、識別トランスポンダから応答を引き出すために特定の位相で信号が発せられ、簡易トランスポンダから応答を引き出すために特定の位相で信号が発せられる。トランスポンダからの応答がそれらの位相で登録された場合、医療製品はまだ遮蔽された容器に入れられておらず、例えば手術中の被治療者の体に入ったままであることを意味する。
【0003】
US 10 709 521 B2によるシステムの問題点は、個々の医療製品のモニタが不十分にしか可能でないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本開示の目的は、少なくとも1つの医療製品をモニタするためのシステムを提供することであり、これにより、特に、さまざまな異なる用途および/または保管領域に関して、医療製品のモニタ行為を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴によって解決される。有利なさらなる実施形態は、従属請求項の主題である。
【0006】
少なくとも1つの医療製品をモニタするための本開示によるシステムは、少なくとも2つのモニタ装置を備える。少なくとも2つのモニタ装置は、データ伝送方式、ワイヤレス方式または有線でない方式、特に無線方式、または有線方式で、モニタネットワークにおいて互いに接続されているまたは接続可能である。特に、少なくとも2つのモニタ装置は、通電方式で互いに接続されているまたは接続可能であってもよい。少なくとも2つのモニタ装置はそれぞれ、医療製品のトランスポンダがそれぞれのモニタ装置の周りに延在する検知領域内にあるかどうかを検知可能なように構成された検知装置を有する。少なくとも2つのモニタ装置は、少なくとも2つのモニタ装置の検知領域が重なるように、すなわち、少なくとも2つのモニタ装置の近傍に、少なくとも2つのモニタ装置のうちの一方の検知領域と、少なくとも2つのモニタ装置のうちの他方の検知領域との両方に位置する点または領域が存在し得るように、配置または配置可能である。本開示によるシステムは、データ伝送方式で、モニタネットワークを介して少なくとも2つのモニタ装置に、ワイヤレスで、または有線でなく、特に無線で、または有線で接続されているまたは接続可能であるデータ処理装置を備える。特に、データ処理装置は、少なくとも2つのモニタ装置に通電方式で接続されているまたは接続可能であってもよい。データ処理装置は、モニタ装置によるトランスポンダの検知の時点を保存可能なように構成されている。つまり、少なくとも2つのモニタ装置の1つがトランスポンダを検知するための信号を送信し、トランスポンダから対応する応答信号を受信するたびに、データ処理装置はこのプロセスのタイムスタンプを保存するように構成されている。特に、データ処理装置はタイムスタンプに、モニタ装置の識別情報、トランスポンダの識別情報、および応答信号を受信した時点を保存する。
【0007】
本開示によれば、データ処理装置は、トランスポンダが少なくとも2つのモニタ装置の検知領域の1つだけに位置する時間帯を、保存された時点に基づいて計算するように、または計算可能なように構成される。つまり、データ処理装置は、特に、少なくとも2つのモニタ装置によるトランスポンダまたは特定のトランスポンダの個々の検知または検知プロセスの時点またはタイムスタンプをマッチングさせ、トランスポンダまたは特定のトランスポンダが少なくとも2つのモニタ装置の1つによってのみ検知されるこれらの時点またはタイムスタンプを分離し、または分離可能なように構成される。データ処理装置はさらに、特に、これらの分離された時点またはタイムスタンプから、トランスポンダまたは特定のトランスポンダが少なくとも2つのモニタ装置のうちの1つの検知領域にのみ位置する時間帯を表す連続する時点またはタイムスタンプを選別するように、または選別可能なように構成される。データ処理装置は、特に、最新の時点またはタイムスタンプから最も古い時点またはタイムスタンプを減算することによって、連続する時点またはタイムスタンプの時間帯を計算する、または計算可能なように構成されている。
【0008】
追加的または代替的に、データ処理装置は、少なくとも2つのモニタ装置が検知領域でトランスポンダを検知するシーケンスを登録可能なように構成される。特に、データ処理装置は、少なくとも2つのモニタ装置からのデータを比較することによって、トランスポンダが、第1のタイプの事象のコンテキストにおいて検知領域のうちの1つのみに位置するか、または第2のタイプの事象のコンテキストにおいて検知領域のうちの幾つかに同時に位置するかを検知可能なように、および第1のタイプの少なくとも1つの事象および第2のタイプの少なくとも1つの事象をリストに保存可能なように構成されてもよい。特に、複数の事象は、事象が時系列に配列されるように、関連する時間データとともに保存されることができる。
【0009】
時間帯を計算したり、シーケンスを登録することにより、医療製品のモニタ行為をより首尾一貫して行うことができる。トランスポンダが1つの検知領域のみに位置する時間帯を計算することにより、モニタ行為が特に重要である、トランスポンダの占有領域または医療製品の占有領域を、それに応じてモニタ装置を配置することにより、より正確にまたはより近くに絞り込むことができる。
【0010】
それぞれの検知領域の境界は、使用される検知技術の範囲、物理的な境界(例えば容器の壁)、または幾何学的な定義(例えば検知装置からの距離)によって定められてもよい。
【0011】
本開示の一態様によれば、医療製品は、再使用可能であり、および/または手術器具であってもよい。特に、医療製品は、非通電性の手術器具であってもよく、または、それ自体の駆動ユニットを有しない手術器具であってもよい。
【0012】
本開示の一態様によれば、少なくとも2つのモニタ装置は、関連する検知領域のサイズがそれぞれ異なるように構成されてもよい。
【0013】
異なるサイズの検知領域を有する複数のモニタ装置を提供することにより、医療製品のさまざまに制限された占有領域に有利にモニタ行為を適合させることができる。例えば、医療製品が容器の領域にある場合、比較的小さな検知領域を有するモニタ装置をその容器に取り付けることにより、本態様によるシステムを使用して医療製品が容器の内側にあるか外側にあるかを効率的に検知することができる。
【0014】
本開示の一態様によれば、少なくとも2つの検知装置のうちの少なくとも1つは、医療製品のトランスポンダが、それぞれのモニタ装置の周りに延在し、対応する検知領域に比べて小さい近接検知領域に位置するか否かを検知可能か、または検知するように構成されてもよく、および/または、医療製品のトランスポンダが、それぞれのモニタ装置の周りに延在し、対応する検知領域に比べて大きい遠隔検知領域に位置するか否かを検知可能か、または検知するように構成されてもよい。換言すれば、少なくとも2つの検知装置のうちの少なくとも1つは、それぞれの検知装置の近傍に位置する異なる遠隔領域を割り当て可能なように構成されてもよい。特に、少なくとも2つの検知装置のうちの1つは、トランスポンダを検知するために検知装置が発する、または発することが可能な信号の強度を、特に周期的に変化させることが可能なように構成されてもよい。
【0015】
本開示の一態様によれば、データ処理装置は、トランスポンダが少なくとも1つの近接検知領域に位置する時間帯および/または少なくとも1つの遠隔検知領域に位置する時間帯を計算するように、または計算可能なように構成されてもよく、近接検知領域における検知の保存された時点またはタイムスタンプに基づいて、および遠隔検知領域における検知の保存された時点またタイムスタンプに従って、計算するように、または計算可能なように構成されてもよい。
【0016】
本開示の一態様によれば、データ処理装置は、トランスポンダが少なくとも1つの近接検知領域にない時間帯および/または少なくとも1つの遠隔検知領域にない時間帯を計算するように構成されるか、または計算可能なように構成されてもよく、近接検知領域における検知の保存された時点またはタイムスタンプに基づいて、および遠隔検知領域における検知の保存された時点またはタイムスタンプに従って、計算するように構成されるか、または計算可能なように構成されてもよい。
【0017】
追加の近接検知領域および/または追加の遠隔検知領域を提供し、対応する時間帯を計算することにより、モニタ行為の空間分解能を有利に向上させることができる。
【0018】
本開示の一態様によれば、検知装置の少なくとも1つは、トランスポンダを検知するための第1の周波数帯域、特に860MHzと950MHzとの間の周波数、または2.45GHzと6GHzとの間の周波数、特に2.45GHzと5.8GHzとの間の周波数、の電磁波、特に電波を発することが可能なようにまたは発するように、およびそれらをトランスポンダから受信可能なようにまたは受信するように構成されてもよく、および検知装置の少なくとも1つは、トランスポンダを検知するための第2の周波数帯域、特に13.56MHzの電磁波、特に電波を発することが可能なようにまたは発するように、およびそれらをトランスポンダから受信可能なようにまたは受信するように構成されてもよい。特に、検知装置の1つは第1の周波数帯域で動作するように構成されてもよく、別の検知装置は第2の周波数帯域で動作するように構成されてもよい。本開示によれば、検知装置は、第1の周波数帯域と第2の周波数帯域の両方で動作するように構成されてもよい。特に、それぞれがそれぞれの周波数帯域で動作するように構成された複数の検知装置が提供されてもよい。
【0019】
検知装置を第1の周波数帯域および/または第2の周波数帯域に同調させることにより、本開示によるシステムは、有利なことに、異なる環境条件、したがって異なる減衰に適合させてもよい。
【0020】
本開示の一態様によれば、検知装置のうちの少なくとも1つ、特に、遠隔検知領域においてトランスポンダを検知するように構成された少なくとも1つの検知装置は、特に、対応する検知領域においてトランスポンダを検知するための第1の伝送規格、特に近距離無線通信規格に従って、電磁波、特に、電波を発することが可能なまたは発するように構成されてもよく、およびトランスポンダからそれらを受信可能なまたは受信するように構成されてもよく、および、検知装置の少なくとも1つ、特に、遠隔検知領域においてトランスポンダを検知するように構成された少なくとも1つの検知装置は、特に、対応する遠隔検知領域においてトランスポンダを検知するための第2の伝送規格、特にRFID伝送規格に従って、電磁波、特に電波を発することが可能なまたは発するように構成されてもよく、およびトランスポンダからそれらを受信可能なまたは受信するように構成されてもよい。特に、検知装置の1つは、第1の伝送規格で動作するように構成されてもよく、別の検知装置は、第2の伝送規格で動作するように構成され、したがって、特に異なるサイズの検知領域で実現するように構成されてもよい。本開示によれば、検知装置、特に、遠隔検知領域でトランスポンダを検知するように構成された少なくとも1つの検知装置は、第1の伝送規格と第2の伝送規格の両方で動作するように構成されてもよい。特に、検知装置は、第1の伝送規格に基づいて検知領域でトランスポンダまたはあるトランスポンダを検知し、第2の伝送規格に基づいて近接検知領域および/または遠隔検知領域でそれを検知するように構成されてもよい。
【0021】
検知装置が既知の伝送規格に従って動作する場合、従来の読み取り装置を本開示によるシステムに統合することが有利に可能である。例えば、スマートフォンは、近距離無線通信規格を使用してトランスポンダを検知するようにそれをプログラミングすることによって、本開示による検知装置に変換され、または本開示によるモニタ装置に変換されてもよい。
【0022】
本開示の一態様によれば、モニタネットワークは、第3の伝送規格、特に、IEEE802.11に従ったWLAN規格、またはBluetooth(登録商標)などのIEEE802.15に従ったWPAN規格、またはBluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)に従って運用されるように構成されてもよい。
【0023】
トランスポンダを検知するための規格とは異なる規格でモニタネットワークが運用される場合、相互干渉は有利な方法で防止されるか、少なくとも低減される。
【0024】
本開示の一態様によれば、モニタネットワークは、部分的にまたは完全にメッシュ状であってもよい。特に、複数のモニタ装置はそれぞれ、データ処理装置を備えてもよく、データ処理装置のそれぞれは、データ処理装置によって計算された時間帯をデータ処理装置から受信し、保存してもよい。
【0025】
メッシュ状のモニタネットワークは、モニタ装置や接続に障害が発生しても、データ通信を別経路に切り替えることで通信を継続させることを可能にする。
【0026】
本開示の一態様によれば、システムは、目標時間帯および/または目標シーケンスが保存された記憶装置を備えてもよく、データ処理装置は、計算された時間帯と対応する目標時間帯と、および/または登録されたシーケンスと目標シーケンスとを比較可能なように、および、目標時間帯を超えたとき、および/または目標シーケンスが逸脱したときに、対応するアラーム信号を出力可能なように構成されてもよい。
【0027】
計算された時間帯を目標時間帯と比較することにより、医療製品が所定の耐用年数を超えて使用される確率を有利に低減することができる。
【0028】
本開示の一態様によれば、少なくとも1つのモニタ装置は、滅菌物品容器内に配置されてもよく、または、本開示によるシステムは、モニタ装置を備える少なくとも1つの滅菌物品容器を備えてもよい。
【0029】
本開示の一態様によれば、少なくとも1つのモニタ装置が手術環境の保管領域に配置されてもよく、少なくとも1つのモニタ装置が、手術台の近傍のサイドテーブルの滅菌領域において手術環境に配置されてもよく、少なくとも1つのモニタ装置が手術台における滅菌領域において手術環境に配置されてもよい。保管領域は、特に、サイドテーブルよりも手術台から離れている。滅菌領域は特に手術台の周りに延在する領域であり、その境界は手術台から少なくとも1メートル離れている。
【0030】
モニタ装置を滅菌容器内および/または医療製品の使用中に通過する領域に配置することにより、改善された、特にシームレスなモニタ行為が可能となる。
【0031】
本開示の一態様によれば、本開示によるシステムは、少なくとも2つのモニタ装置の相対位置を検知および/または登録可能なように構成された位置決めシステムを備えてもよい。特に、位置決めシステムは、少なくとも2つのモニタ装置の位置を検知することができるセンサを備えてもよい。代替的または追加的に、モニタ装置は、NAVSTAR GPSまたはGalileoのようなグローバルナビゲーション衛星システムへのインタフェースを有していてもよく、それを介して、それぞれのモニタ装置は、自身の位置を決定することができ、モニタ装置は、その位置を位置決めシステムに送信可能なように構成されていてもよく、位置決めシステムは、モニタ装置の位置からモニタ装置の相対位置を計算し、登録可能なように構成されていてもよい。代替的または追加的に、位置決めシステムは、タッチパネル、キーボード、マウスなどの入力装置により、少なくとも2つのモニタ装置の相対位置を入力し、位置決めシステムに登録されることが可能なように構成されてもよい。
【0032】
モニタ装置の相対的な位置関係を考慮すれば、たとえモニタ装置の検知領域が重なっていなくても、一定の確率で医療製品がどこにあるか、医療製品の不検知が致命的か否かを推定することができる。
【0033】
本開示はさらに、手術環境(例えば手術室)において少なくとも1つの医療製品をモニタするための方法に関する。モニタネットワークにおいてデータ伝送方式で互いに接続されているまたは接続可能な少なくとも2つのモニタ装置が、それぞれのモニタ装置の周りに延在する少なくとも2つのモニタ装置の検知領域が重なるように、手術環境内に配置または配置可能である。医療製品は、特に、再使用可能な、および/または、手術器具である。本方法は、以下のステップ、すなわち、
-医療製品のトランスポンダが検知領域のうちの1つに位置しているかどうかを検知するステップと、
-トランスポンダの検知の時点を保存するステップと、
-トランスポンダが少なくとも2つのモニタ装置の検知領域のうち1つにのみ位置する時間帯を計算する、および/または、少なくとも2つのモニタ装置が検知領域でトランスポンダを検知するシーケンスを登録するステップ、を備える。
【0034】
検知するステップは、特に、それぞれの検知領域に関連するモニタ装置の検知装置によって実行される。それぞれの検知領域の境界は、使用される検知技術の範囲、物理的な境界(例えば容器の壁)、または幾何学的な定義(例えば検知装置からの距離)によって定めることができる。保存するステップおよび/または計算するステップは、特に、データ伝送方式でモニタネットワークを介して少なくとも2つのモニタ装置に接続されているまたは接続可能なデータ処理装置によって実行される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本開示は、好ましい構成例により、添付図面を参照して以下により詳細に説明される。以下のように図示する。
【
図1】トランスポンダを備えた手術用マイクロモータ器具の形態の医療製品の斜視図。
【
図2】トランスポンダを備えたニードルホルダの形態の医療製品の斜視図。
【
図3】医療製品が滅菌領域から離れた保管テーブル上の滅菌物品容器に保管されている状態における、本開示によるシステムの模式図。
【
図4】滅菌物品容器の1つが保管領域外にあり、部分的に滅菌領域外にある状態における、
図3によるシステムの模式図。
【
図5】滅菌物品容器の1つが滅菌領域内のサイドテーブル上に一時的に保管され、滅菌物品容器の1つが保管領域外かつ滅菌領域外に位置している状態における、
図3によるシステムの模式図。
【
図6】滅菌領域外に位置する滅菌物品容器から取り出される医療製品が、滅菌領域外または領域内どちらかに位置する状態における、
図3によるシステムの模式図。
【
図7】滅菌領域内の医療製品の1つがサイドテーブルから取り出され、手術領域外にある状態における、
図3によるシステムの模式図。
【
図8】滅菌領域内の医療製品の1つがサイドテーブルから取り出され、手術領域に近接している状態における、
図3によるシステムの模式図。
【
図9】医療製品の1つが手術領域内に配置されている状態における、
図3によるシステムの模式図。
【
図10】複数の検知領域を重ねて形成されたモニタ領域の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、トランスポンダ4を備えた手術用マイクロモータ器具2の形態の医療製品の斜視図である。トランスポンダ4は、マイクロモータ器具2の近位端のコネクタに取り付けられている。
【0037】
図2は、トランスポンダ8を備えたニードルホルダ6の形態の医療製品の斜視図である。トランスポンダ8は、ニードルホルダ6のハンドル開口部のリングに取り付けられている。
【0038】
トランスポンダ4および8は、それぞれ、近距離通信規格に従った信号を受信するとき、対応する応答信号を発し、(異なる)RFID規格に従った信号を受信するときには対応する(異なる)応答信号を発するように構成されている。トランスポンダ4および8は、このようにハイブリッドなタグとして構成される。トランスポンダ4および8はそれぞれ、それ自体のエネルギ貯蔵部を持たず、受動的に構成されている。トランスポンダ4および8は、所定の信号を受信した場合にのみ、対応する応答信号を送信する。応答信号はそれぞれ、応答信号を対応するトランスポンダ4または8に、したがって対応する医療製品2または6に一意に割り当てる情報を含む。
【0039】
図3は、本開示によるシステムを具備する手術室の模式的な上面図である。手術室は、そのまわりに滅菌領域12が延在する手術台10を有する。滅菌領域12内では、外科医14、助手16およびスクラブナース(器械出し看護師)18が手術台10の周りに立っている。手術台10の一方の端に立つスクラブナース18の両側には、2つのサイドテーブル20および22が配置されている。手術室において、滅菌領域12から離れて保管テーブル23が配置されている。保管テーブル23上には、マイクロモータ器具2が滅菌物品容器24内に収納され、ニードルホルダ6が滅菌物品容器26内に収納されている。
【0040】
保管テーブル23上にモニタ装置27が設けられている。モニタ装置28が、滅菌物品容器24上または滅菌物品容器24内に設けられる。モニタ装置30が、滅菌物品容器26上または滅菌物品容器26内に設けられる。モニタ装置32が器具テーブル20上に設けられている。モニタ装置34が器具テーブル22上に設けられている。モニタ装置36が手術台10上に設けられている。モニタ装置27から36はそれぞれ、Bluetooth(登録商標)ネットワークやBLEネットワークなどの標準的なWLANネットワークを介して、データ処理装置38と非配線方式で互いに接続されている。
【0041】
検知領域39、40、42、44、46、48は、モニタ装置27から36それぞれの周りに延在している。
【0042】
モニタ装置27は、モニタ装置27の検知領域39の境界が少なくとも実質的に保管テーブル23の輪郭と一致するように構成されている。モニタ装置27は、近距離無線通信信号を介してトランスポンダ4または8を検知するように構成されている。モニタ装置28の検知領域40およびモニタ装置30の検知領域42はそれぞれ、マイクロモータ器具2またはニードルホルダ6が収納されている対応する滅菌物品容器24または26によって制限されている。モニタ装置28および30は、近距離無線通信信号を介してトランスポンダ4または8を検知するように構成されている。
【0043】
モニタ装置32および34は、RFID信号を介してトランスポンダ4または8を検知するように構成されている。したがって、モニタ装置32の検知領域44およびモニタ装置34の検知領域46は、検知領域40および42よりも大きい。
【0044】
モニタ装置36も、RFID信号を介してトランスポンダ4またはそれぞれ8を検知するように構成されている。しかし、モニタ装置36のRFID信号の強度は、モニタ装置32および34のRFID信号の強度よりも低い。したがって、モニタ装置36の検知領域48は、モニタ装置32および34の検知領域44および46よりも小さい。
【0045】
図4は、滅菌物品容器24が保管テーブル23から取り出され(矢印A参照)、滅菌物品容器24が保管テーブル23によって画定された保管領域外であって部分的に滅菌領域12内に位置している状態における、
図3によるシステムの模式図を示す。
図4に示す状態では、トランスポンダ4は、滅菌物品容器24の検知領域40とサイドテーブル20のモニタ装置32の検知領域44の両方に位置している。モニタ装置28とモニタ装置32の両方がトランスポンダ4を検知するので、システムまたはデータ処理装置38は、マイクロモータ器具2がまだ滅菌物品容器24内にあり、滅菌物品容器24が少なくとも部分的に検知領域44内にあり、したがって少なくとも部分的に滅菌領域12内にあることを検知することができる。滅菌物品容器24が検知領域44の端からサイドテーブル20の方向に移動されると(矢印B参照)、そのような移動の間、モニタ装置28および32はトランスポンダを検知し続けるだけなので、システムまたはそれぞれデータ処理装置38は、いかなる状態変化も登録しない。
【0046】
図4に示す状態では、マイクロモータ器具2と滅菌物品容器24は、もはや保管テーブル23上にはない。したがって、トランスポンダ4は、もはや検知領域39にはなく、検知領域44にある。トランスポンダ4がモニタ装置27によって検知されなくなり、したがって、トランスポンダ4が検知領域39に存在しなくなり始めた時点が、モニタ装置27からデータ処理装置38に報告される。同様に、トランスポンダ4がモニタ装置32によって検知され、したがってトランスポンダが検知領域44に位置し始めた時点が、モニタ装置32によってデータ処理装置38に報告される。
【0047】
図5に示す状態において、マイクロモータ器具2を有する滅菌物品容器24はサイドテーブル20上に配置されている。図示の実施形態によれば、データ処理装置38は、
図5に示すマイクロモータ器具2または滅菌物品容器24の状態を、
図4に示す状態と区別することができない。モニタ行為を改善するために、モニタ装置32は、あるトランスポンダまたはトランスポンダ4が、検知領域44よりも小さく、特に実質的にサイドテーブル20のレイアウトに従って延在する、モニタ装置32の周りに延在する近接検知領域内に位置するか否かを検知可能なように構成されてもよい。
【0048】
図5に示す状態において、滅菌物品容器26は保管テーブル23から取り出され(矢印C参照)、滅菌物品容器26は、ニードルホルダ6およびトランスポンダ8とともに、保管テーブル23によって画定される保管領域外であって、滅菌領域12外に位置する。この状態でニードルホルダ6が滅菌物品容器26から取り出されると(
図6の矢印DおよびE参照)、滅菌物品容器26のモニタ装置30は、トランスポンダ8を検知しなくなったことをデータ処理装置38に報告し、データ処理装置38は対応する時点を登録する。他のモニタ装置27、28、34および36から受信したデータと照合することにより、データ処理装置38は、ニードルホルダ6が、保管領域外および滅菌領域外に配置された滅菌物品容器から取り出されている間、または取り出された直後、モニタ装置27から36のいずれによっても検知されないことを検知する。実施形態によるデータ処理装置38は、既に検知されたトランスポンダ8が、検知領域39から48から、このように消失した場合に、アラームおよび/または警告を出力するように構成されている。トランスポンダ8が検知領域42から消えた後(
図6の矢印E参照)、しばらくして別のモニタ装置、例えばサイドテーブル22のモニタ装置34によって検知されるかどうかは関係ない。
【0049】
図7に示す状態において、マイクロモータ器具2は、サイドテーブル20上に載置された滅菌物品容器24から取り出され(矢印F参照)、マイクロモータ器具2またはトランスポンダ4は、サイドテーブル20のモニタ装置32の検知領域44内だけに位置する。サイドテーブル20のモニタ装置32の検知領域44は、滅菌領域12内だけに延在するように構成されているので、検知領域44内でマイクロモータ器具2が取り出されても、データ処理装置38によるアラームおよび/または警告メッセージは発せられない。
【0050】
図8に示す状態では、マイクロモータ器具2が手術台10の方向に移動しており(矢印G参照)、マイクロモータ器具2のトランスポンダ4は、サイドテーブル20のモニタ装置32の検知領域44と手術台10上のモニタ装置36の検知領域48との重複領域に位置している。マイクロモータ器具2を手術台10の方向に移動させる際にトランスポンダ4が検知領域48に到達し、モニタ装置36によって検知されると直ちに、モニタ装置36は対応する時点をデータ処理装置38に報告する。
【0051】
図9に示す状態において、マイクロモータ器具2は手術台10の方向にさらに移動され(矢印H参照)、マイクロモータ器具2のトランスポンダ4は、現在、手術台10のモニタ装置36の検知領域48にだけ位置している。トランスポンダ4がモニタ装置32によって検知されなくなり、したがってトランスポンダ4が検知領域44に位置しなくなった時点が、モニタ装置32によってデータ処理装置38に報告される。
【0052】
データ処理装置38は、モニタ装置27、28、32および36からデータ処理装置38に報告された検知領域39、40、44および48におけるトランスポンダ4の検知の時点または検知しなくなった時点に基づいて、トランスポンダ4がそれぞれの検知領域39、40、44および48に位置する時間帯を計算することができる。マイクロモータ器具2が手術台10から保管テーブル23に逆の順序で再び移動されると、これに応じてトランスポンダの検知の時点がモニタ装置によってデータ処理装置38に報告され、データ処理装置38はトランスポンダ4がそれぞれの検知領域39、40、44、48に位置する時間帯を再び計算する。
【0053】
図3から
図9に示す開示によるシステムにより、個々の検知領域39、40、44、48におけるマイクロモータ器具2の総滞在時間帯を計算可能になり、その結果、マイクロモータ器具2の一貫したモニタ行為を実現することができる。
【0054】
ニードルホルダ6もマイクロモータ器具2と同様の方法でモニタすることができる。
【0055】
データ処理装置38には、少なくとも1つの所定の手術過程が保存されてもよく、そこからその手術に使用される少なくとも2つの器具のシーケンスを導き出すことができる。例えば、マイクロモータ器具2とニードルホルダ6とが手術中に最初に使用されなければならない場合、所定の過程からの逸脱があった場合、例えば、ニードルホルダ6がマイクロモータ器具2よりも先に手術台10のモニタ装置36によって検知された場合などに、データ処理装置38は、手術中に対応するアシスタントメッセージおよび/またはアラームまたは警告メッセージを出力することができる。データ処理装置38はまた、手術終了時に、器具2および6、特に再使用可能な器具が、対応する滅菌物品容器24および26内のモニタ装置28および30によって検知されない場合、および/または保管テーブル23上のモニタ装置27によって検知されない場合に、アラームまたは警告メッセージを発するように構成されてもよい。
【0056】
トランスポンダをハイブリッドタグの形態とすることで、サイズが互いに異なる検知領域を設けることが容易となり、モニタ領域の形状を柔軟に設計することができる。また、1つのモニタ装置だけがトランスポンダを検知している状態のみを考慮して時間帯を計算すれば、異なるモニタ装置の検知領域を複数重ねることで、複雑な形状の領域をモニタすることができる。
【0057】
図10は、複数の検知領域50、52、54、56、58を重ね合わせて形成されたモニタ領域60を示す模式図である。例えば、外部に配置されたモニタ装置62、64、66、68の検知領域50、52、54、56と、中央に配置されたモニタ装置70の検知領域58との重なりが、中央に配置されたモニタ装置70の検知領域58のうち、他の検知領域と重ならない部分を区切るように、中央のモニタ装置70の周りに4つのモニタ装置62、64、66、68が配置されている。中央配置のモニタ装置70の検知領域58のうち、他の検知領域と重ならない部分は、本開示に従ってトランスポンダの所在の時間帯を計算することができるモニタ領域60を構成する。
【符号の説明】
【0058】
2:マイクロモータ器具
4:トランスポンダ
6:ニードルホルダ
8:トランスポンダ
10:手術台
12:滅菌領域
14:外科医
16:アシスタント
18:スクラブナース
20、22:サイドテーブル
23:保管テーブル
24、26:滅菌物品容器
27から36:モニタ装置
38:データ処理装置
39から48:検知領域
50から58:検知領域
60:モニタ領域
62から70:モニタ装置
【手続補正書】
【提出日】2024-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの医療製
品をモニタするためのシステムであって、
モニタネットワークにおいてデータ伝送方式で互いに接続されているまたは接続可能である少なくとも2つのモニタ装
置であって、それぞれの前記モニタ装置は、前記医療製
品のトランスポン
ダがそれぞれの前記モニタ装
置の周りに延在する検知領
域に位置するか否かを検知
するように構成された検知装置を備えており、少なくとも2つの前記モニタ装
置は、少なくとも2つの前記モニタ装
置の前記検知領
域が重なるように、配置されてい
る、少なくとも2つの前記モニタ装
置と、
前記モニタネットワークを介して少なくとも2つの前記モニタ装
置とデータ伝送方式で接続されているまたは接続可能であり、前記モニタ装
置による前記トランスポン
ダの検知の時点を保存
するように構成されたデータ処理装
置と、
記憶装置と、を備え、
前記データ処理装
置は、
前記トランスポン
ダが少なくとも2つの前記モニタ装
置の前記検知領
域のうちの1つにだけ位置する時間帯を計算
し、計算された時間帯を前記記憶装置に保存された対応する目標時間帯と比較し、目標時間帯を超えたとき、対応するアラーム信号を出力するように、および/または、
少なくとも2つの前記モニタ装
置が前記検知領
域で前記トランスポン
ダを検知するシーケンスを登録
し、登録されたシーケンスを前記記憶装置に保存された目標シーケンスと比較し、目標シーケンスを逸脱したとき、対応するアラーム信号を出力するように、構成されていることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記医療製
品は、再使用可能であり、および/または手術器具であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも2つの前記モニタ装
置は、関連する前記検知領
域のサイズがそれぞれ異なるように構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載のシステム。
【請求項4】
少なくとも2つの前記検知装置のうちの少なくとも1つは、前記医療製品の前記トランスポンダが、それぞれの前記モニタ装置の周りに延在し、対応する前記検知領域に比べて小さい近接検知領域に位置するか否かを検知可能なように構成され、およ
び、前記医療製品の前記トランスポンダが、それぞれの前記モニタ装置の周りに延在し、対応する前記検知領域に比べて大きい遠隔検知領域に位置するか否かを検知可能なように構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載のシステム。
【請求項5】
前記データ処理装置は、前記トランスポンダが少なくとも1つの前記近接検知領域に位置する時間帯およ
び少なくとも1つの前記遠隔検知領域に位置する時間帯を計算可能なように構成されていることを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記データ処理装置は、前記トランスポンダが少なくとも1つの前記近接検知領域にない時間帯およ
び少なくとも1つの前記遠隔検知領域にない時間帯を計算可能なように構成されていることを特徴とする、請求項
4に記載のシステム。
【請求項7】
前記検知装置の少なくとも1つが、前記トランスポン
ダを検知するための第1の周波数帯域の電磁波を発し、前記電磁波を前記トランスポン
ダから受信可能なように構成されており、および、
前記検知装置の少なくとも1つが、前記トランスポン
ダを検知するための第2の周波数帯域の電磁波を発し、前記電磁波を前記トランスポン
ダから受信可能なように構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載のシステム。
【請求項8】
前記検知装置の少なくとも1つが、前記トランスポン
ダを検知するための第1の伝送規格に従って電磁波を発し、前記電磁波を前記トランスポン
ダから受信するように構成されており、および、
前記検知装置の少なくとも1つが、前記トランスポン
ダを検知するための第2の伝送規格に従って電磁波を発し、前記電磁波を前記トランスポン
ダから受信するように構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載のシステム。
【請求項9】
前記モニタネットワークは、第3の伝送規格に従って運用されるように構成されていることを特徴とする、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
前記モニタネットワークが部分的または完全にメッシュ状であることを特徴とする、請求項
1に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1つの前記モニタ装
置が滅菌物品容
器内に配置されていることを特徴とする、請求項
1に記載のシステム。
【請求項12】
少なくとも1つの前記モニタ装
置が手術環境の保管領域に配置され、
少なくとも1つの前記モニタ装
置が、手術
台の近傍のサイドテーブ
ルの滅菌領
域において前記手術環境に配置され、および、
少なくとも1つのモニタ装
置が、前記手術
台上の前記滅菌領
域において前記手術環境に配置されることを特徴とする、請求項
1に記載のシステム。
【請求項13】
少なくとも2つの前記モニタ装
置の相対位置を検知およ
び登録可能なように構成された位置決めシステムを備えることを特徴とする、請求項
1に記載のシステム。
【請求項14】
手術環境において少なくとも1つの医療製
品をモニタするための方法であって、モニタネットワークにおいてデータ伝送方式で互いに接続されているまたは接続可能な少なくとも2つのモニタ装
置が、それぞれの前記モニタ装
置の周りに延在する少なくとも2つの前記モニタ装
置の検知領
域が重なるように、配置されるかまたは配置可能であり、前記医療製
品が特に再使用可能であり、および/または手術器具であり、前記方法は、
前記医療製
品のトランスポン
ダが前記検知領
域のうちの1つに位置するかどうかを検知するステップと、
前記トランスポン
ダの検知の時点を保存するステップと、
を備え、
前記トランスポン
ダが少なくとも2つの前記モニタ装
置の前記検知領
域のうち1つにのみ位置する時間帯を計算
し、計算された時間帯を対応する保存された目標時間帯と比較し、目標時間帯を超えたとき、対応するアラーム信号を出力するステップ、および/または
、
少なくとも2つの前記モニタ装
置が前記検知領
域で前記トランスポン
ダを検知するシーケンスを登録
し、登録されたシーケンスを対応する保存された目標シーケンスと比較し、目標シーケンスから逸脱した場合に、対応するアラーム信号を出力するステップ、を備える
ことを特徴とする方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
US 10 709 521 B2によるシステムの問題点は、個々の医療製品のモニタが不十分にしか可能でないことである。
US 2019/0 151 044 A1は、臨床治療中にRFIDアンテナを使用した医療機器の登録を開示する。
RFIDアンテナを使用して医療機器を登録するためのさらなるシステムは、例えば、EP 3 207 491 B1およびUS 2020/0 043 603 A1に開示されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
それぞれの検知領域の境界は、使用される検知技術の範囲、物理的な境界(例えば容器の壁)、または幾何学的な定義(例えば検知装置からの距離)によって定められてもよい。
システムは、目標時間帯および/または目標シーケンスが保存された記憶装置を備え、データ処理装置は、計算された時間帯と対応する目標時間帯と、および/または登録されたシーケンスと目標シーケンスとを比較し、および、目標時間帯を超えたとき、および/または目標シーケンスが逸脱したときに、対応するアラーム信号を出力するように、構成されている。
計算された時間帯を目標時間帯と比較することにより、医療製品が所定の耐用年数を超えて使用される確率を有利に低減することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
本開示はさらに、手術環境(例えば手術室)において少なくとも1つの医療製品をモニタするための方法に関する。モニタネットワークにおいてデータ伝送方式で互いに接続されているまたは接続可能な少なくとも2つのモニタ装置が、それぞれのモニタ装置の周りに延在する少なくとも2つのモニタ装置の検知領域が重なるように、手術環境内に配置または配置可能である。医療製品は、特に、再使用可能な、および/または、手術器具である。本方法は、以下のステップ、すなわち、
-医療製品のトランスポンダが検知領域のうちの1つに位置しているかどうかを検知するステップと、
-トランスポンダの検知の時点を保存するステップと、
-トランスポンダが少なくとも2つのモニタ装置の検知領域のうち1つにのみ位置する時間帯を計算し、計算された時間帯を対応する保存された目標時間帯と比較し、目標時間帯を超えたとき、対応するアラーム信号を出力するステップ、および/または、
-少なくとも2つのモニタ装置が検知領域でトランスポンダを検知するシーケンスを登録し、登録されたシーケンスを対応する保存された目標シーケンスと比較し、目標シーケンスから逸脱した場合に、対応するアラーム信号を出力するステップ、を備える。
【国際調査報告】