(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】血管奇形を治療するためのインプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/06 20130101AFI20240920BHJP
A61B 17/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61F2/06
A61B17/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518157
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2022077581
(87)【国際公開番号】W WO2023052651
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】102021125571.6
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508140512
【氏名又は名称】フェノックス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PHENOX GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ヘンケス,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】モンシュタット,ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】トレスケン,フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ハンネス,ラルフ
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC04
4C097DD10
4C160DD03
4C160DD53
4C160DD65
(57)【要約】
本発明は、フローダイバータ(1、2)および少なくとも1つのステント(3、4)を備えたコンビネーションインプラントに関し、フローダイバータ(1、2)およびステント(3、4)は機能ユニット(5、6)を形成し、ステント(3、4)の半径方向力はフローダイバータ(1、2)の半径方向力よりも大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローダイバータ(1、2)および少なくとも1つのステント(3、4)を備えるコンビネーションインプラントであって、前記フローダイバータ(1、2)および前記ステント(3、4)は機能ユニット(5、6)を形成し、前記ステント(3、4)の半径方向力は前記フローダイバータ(1、2)の半径方向力よりも大きいことを特徴とする、コンビネーションインプラント。
【請求項2】
前記ステント(3、4)は、前記フローダイバータ(1、2)の内腔内に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のコンビネーションインプラント。
【請求項3】
前記フローダイバータ(1、2)は、前記ステント(3、4)の内腔内に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のコンビネーションインプラント。
【請求項4】
前記フローダイバータ(1、2)は、32~128本のワイヤ、好ましくは48~64本のワイヤから編組されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンビネーションインプラント。
【請求項5】
前記ステント(3、4)は、自己拡張型またはバルーン拡張型に設けられていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンビネーションインプラント。
【請求項6】
前記フローダイバータ(1、2)および前記少なくとも1つのステント(3、4)は、互いに近位に接続されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンビネーションインプラント。
【請求項7】
前記フローダイバータ(1、2)および前記少なくとも1つのステント(3、4)は、互いに近位に溶接、接着、結び目、リベット留めまたははんだ付けされていることを特徴とする、請求項6に記載のコンビネーションインプラント。
【請求項8】
動脈瘤(A、A’)の治療に使用するためのインプラントシステムであって、請求項1~7のいずれか一項に記載の少なくとも2つのコンビネーションインプラント(5、6)を含み、前記第1のコンビネーションインプラント(5)の半径方向力Aおよび前記第2のコンビネーションインプラント(6)の半径方向力Bは、前記コンビネーションインプラント(5、6)の展開直径が同じである場合、少なくとも近位で同じ大きさであることを特徴とする、インプラントシステム。
【請求項9】
分岐動脈瘤(A,A’)の治療において請求項2に記載の2つのコンビネーションインプラント(5、6)を備えた請求項8に記載のインプラントシステムを配置する方法であって、
(A)それぞれ1つのマイクロカテーテル(MKA、MKB)を、近位から流入血管(ZG)を通ってそれぞれ1つの流出血管(AGA、AGB)に配置する工程;
(B)1つまたは複数のフローダイバータ(1、2)を連続的または並行的に埋め込む工程であって、それぞれの前記フローダイバータ(1、2)の近位端が前記流入血管(ZG)内に位置し、それぞれの前記フローダイバータ(1、2)の遠位端がそれぞれの流出血管(AGA、AGB)内に位置する、工程;
(C)1つまたは複数のステント(3、4)をそれぞれ対応するフローダイバータ(1、2)内に連続的または並行的に埋め込む工程であって、それぞれの前記ステント(3、4)の近位端は、それぞれの前記フローダイバータ(1、2)の近位端に近接し、それぞれの前記ステント(3、4)の遠位端は、それぞれの前記流出血管(AGA、AGB)内に位置する、工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
分岐動脈瘤(A,A’)の治療において請求項3に記載の2つのコンビネーションインプラント(5、6)を備えた請求項8に記載のインプラントシステムを配置する方法であって、
(AA)それぞれ1つのマイクロカテーテル(MKA、MKB)を、近位から流入血管(ZG)を通ってそれぞれ1つの流出血管(AGA、AGB)に配置する工程;
(BB)1つまたは複数のステント(3、4)を連続的または並行的に埋め込む工程であって、それぞれの前記ステント(3、4)の近位端が前記流入血管(ZG)内に位置し、それぞれの前記ステント(3、4)の遠位端がそれぞれの前記流出血管内に位置する、工程;
(CC)1つまたは複数のフローダイバータ(1、2)をそれぞれ対応するステント(3、4)内に連続的または並行的に埋め込む工程であって、それぞれの前記フローダイバータ(1、2)の近位端は、それぞれの前記ステント(3、4)の近位端に近接し、それぞれの前記フローダイバータ(1、2)の遠位端は、それぞれの流出血管(AGA、AGB)内に位置する、工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
分岐動脈瘤(A,A’)の治療において請求項6に記載の2つの接続型コンビネーションインプラント(5、6)を備えた請求項8に記載のインプラントシステムを配置する方法であって、
(AAA)それぞれ1つのマイクロカテーテル(MKA、MKB)を、近位から流入血管(ZG)を通ってそれぞれ1つの流出血管(AGA、AGB)に配置する工程;
(BBB)前記接続型コンビネーションインプラントを連続的または並行的に埋め込む工程であって、それぞれの前記コンビネーションインプラントの近位端が流入血管内に位置し、それぞれの前記コンビネーションインプラントの遠位端が流出血管内に位置する、工程
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管奇形を治療するための、特に脳動脈瘤を治療するためのフローダイバータと少なくとも1つのステントとを有するコンビネーションインプラント、ならびに、脳分岐動脈を治療するためのインプラントシステム、およびその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管奇形は、患者の健康を著しく損ない、死に至ることもある。このことは、特に脳領域で生じる場合に、このような奇形の一般的な形態としての動脈瘤に当てはまる。通常、インプラントを用いてこのような奇形を閉鎖することが試みられている。このようなインプラントは、通常、カテーテルを用いて血管内に配置される。
【0003】
治療のために特に困難な課題は、非常に曲がりくねった血管または血管分岐、いわゆる分岐部に形成される動脈瘤である。例えば、ワイドネック型動脈瘤は、好ましい治療方法の選択を制限する。例えば、ワイドネック型動脈瘤の場合、動脈瘤を閉鎖するために挿入されたコイルが、動脈瘤から完全にまたは部分的に流出し、血管閉塞をもたらす危険性がある。
【0004】
近年、このような問題のある動脈瘤の治療において、多くの場合、フローダイバータの使用が有効であることが実証されている。
【0005】
フローダイバータは、編組の、網目の細かい、管状またはホース状のインプラントである。初めはステントに類似しているが、ステントとは異なり、血管を再灌流するものではなく、動脈瘤頸部を覆って、その上および動脈瘤への血流を最小限に抑えることを目的とする。したがって、ステントとは異なり、フローダイバータは、半径方向力が弱いだけであり、本質的にフローダイバータを血管壁に押し付けるのに適していればよく、メッシュが非常に狭く、血流を確実に迂回させる。
【0006】
治療結果が良好であるため、フローダイバータは、現在では様々なタイプの動脈瘤において使用されている。
【0007】
フローダイバータを用いた今日までのポジティブな治療結果により、製品特有の欠点のためにこれまで不可能であった別の適応症においても使用できることが望まれる。
【0008】
この場合の欠点は、特に既知のフローダイバータは半径方向力が小さいため、望ましくない奇形、特に不利な拡張または狭窄を引き起こす可能性があることである。対応する拡張および狭窄は、例えば、結果として、血管内の血流の望ましくない閉塞をもたらし得る。
【0009】
分岐部におけるフローダイバータの使用も、これまで不可能であるか、または満足できる結果を伴っては不可能である。
【0010】
例えば分岐動脈瘤を治療するために、分岐部にフローダイバータを使用することの困難の1つは、動脈瘤への血流は減少するが、同時に排出血管の1つへの血流は減少しないことにある。しかしながら、フローダイバータを配置する場合、これは動脈瘤を橋渡しするために流入血管と流出血管の1つにおいて行われなければならないが、他方の流出血管が必然的にフローダイバータによって覆われる。したがって、フローダイバータは、動脈瘤および他方の流出血管の両方の周囲で血流を導く。
【0011】
解決手段として、流入血管から他方の流出血管に第2のフローダイバータを配置することができる。フローダイバータの半径方向力が小さく、拡張または収縮する傾向のために、このような配置によって通常は、時間の経過と共に、2つのフローダイバータのうちの1つが支配的になる。支配的なダイバータは、血流の大部分を、それが占める流出血管に導く。他方の流出血管およびそれに依存する構造は、抑制されたフローダイバータによってもはや十分に血液を供給されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、既知のフローダイバータの上述の欠点を有さないインプラントを提供することである。
【0013】
さらに、本発明の課題は、既知の欠点を有することなく、分岐動脈瘤の治療におけるフローダイバータの使用を可能にするインプラントシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、請求項1の特徴を有するコンビネーションインプラントおよび請求項8の特徴を有するインプラントシステムによって解決される。さらに、請求項9および10には、請求項8に記載のインプラントシステムを配置する方法が提案されている。有利な実施形態はそれぞれ従属請求項の対象である。請求項に個々に挙げられた特徴は、任意の技術的に有用な方法で互いに組み合わせることもでき、したがって本発明のさらなる実施形態を示すことに留意されたい。
【0015】
本発明によるコンビネーションインプラントは、フローダイバータと少なくとも1つのステントとを備え、フローダイバータおよびステントは、機能ユニットを形成し、ステントの半径方向力はフローダイバータの半径方向力よりも大きい。
【0016】
「機能ユニット」という用語は、ステントとフローダイバータとが互いに動作可能に接続されていることを意味すると理解されたい。特に、ステントおよびフローダイバータの拡張直径、長さおよび半径方向力は、以下でさらに詳細に説明するように、互いに調整されている。
【0017】
好ましくは、ステントの半径方向力は、フローダイバータの半径方向力がその結果生じるコンビネーションインプラントの半径方向力に対して無視できる程度まで、フローダイバータの半径方向力を超える。
【0018】
ステントは、自己拡張型またはバルーン拡張型でもよい。自己拡張型ステントのための好ましいステント材料は、ニチノール、コバルト-クロム合金および他の金属である。
【0019】
レーザカット型ステントは、オープンセル型およびクローズドセル型のバリエーションとして製造することができる。クローズドセル型バリエーションは、通常、より簡単に再配置することができる、またはインターベンション中に製品を完全に交換することも可能にする。他方、オープンセル型バリエーションは、血管解剖学的構造により良好に適合する。
【0020】
X線不透過性マーカーを、ステントの様々な位置に設けることができ、ユーザは、血管内のステントの位置および展開を特定することができる。
【0021】
ステントは、部分的に拡張された状態でストラット部分がステントの内腔内に突出せず、したがって血流を損なわないように設計される。
【0022】
多くのステント切断パターンが考えられ、例えば、近位から遠位に見て1つのストラットが2つのストラットに分岐する、または、2つのストラットが接近して1つのストラットに合流するまたは2つのストラットに再び分岐する。ステントには多くの他のステント設計が考えられる。
【0023】
したがって、本発明によるステントの構造は、既知の脳ステントに実質的に対応する。
【0024】
フローダイバータは、実質的に既知のフローダイバータに対応し、既知の材料から編組される。
【0025】
好ましくは、フローダイバータは、32~128本のワイヤから編組され、48~64本のワイヤから編組されることが好ましい。
【0026】
フローダイバータのためのワイヤとしては、ニチノール、コバルト-クロム-合金およびインプラントの自己拡張を可能にする他の金属製のワイヤが好ましい。X線可視コア(例えば白金製)を有するDFT(Drawn Filled Tubing)材料として入手可能なワイヤ材料も好ましい。
【0027】
任意選択的に、代替的にまたは追加的に、X線不透過性マーカーをフローダイバータに設け、ユーザが血管内のフローダイバータの位置および展開を確実に特定することを可能にすることができる。
【0028】
フローダイバータは、任意選択的にコーティングを有することができ、抗血栓性または内皮促進特性を有する親水性ポリマーコーティングおよび/または例えば金をベースとするX線不透過性コーティングが好ましい。
【0029】
フローダイバータには、血流の迂回を改善するためにおよび/または密封性を改善するために膜を備えてもよい。膜は、フローダイバータ全体または少なくともその実質的な部分を覆う。膜は、フローダイバータの内側および/または外側に設けることができる。特に、膜は、医療技術から知られているような生体適合性材料から作製されてもよい。好ましい実施形態では、膜は、エレクトロスピニングによって製造される。
【0030】
コンビネーションインプラントにおけるフローダイバータとステントとの組合せは、ステントがフローダイバータに欠けている半径方向力を補完し、追加の構造を提供するという利点を有する。
【0031】
ステントがフローダイバータを包囲する、すなわちフローダイバータがステントの内腔内に設けられるコンビネーションインプラントの実施形態と、フローダイバータがステントを包囲する、すなわちステントがフローダイバータの内腔内に設けられる実施形態との両方が考えられる。
【0032】
本発明によるフローダイバータおよびステントのこのような機能的配置では、フローダイバータおよびステントのそれぞれの(公称)拡張直径も、上述の配置が互いに本発明に従って有効に接続されるように、互いに調整されなければならないことが当業者に明らかである。
【0033】
コンビネーションインプラントのフローダイバータおよびステントは、非接続状態でおよび接続状態で提供され得る。フローダイバータとステントとが接続されていない場合、これは以下で非接続型コンビネーションインプラントと称される;フローダイバータとステントとが接続されている場合、これは以下で接続型コンビネーションインプラントと称される。
【0034】
したがって、非接続型コンビネーションインプラントとは、個々の要素、すなわちフローダイバータおよびステントが患者の体外で物理的に接続されていない状態で存在し、通常、インターベンション中にまず互いに別々に、すなわち連続的に配置されるコンビネーションインプラントを意味するものと理解されるべきである。非接続型コンビネーションインプラントの個々の要素は、特定の接続要素なしでも機能ユニットを形成する。
【0035】
フローダイバータおよび/またはステント上に、場合によっては相補的な接続要素を含み、患者の身体内に配置された後に接続を形成する、非接続型コンビネーションインプラントが考えられる。
【0036】
本発明によれば、接続型コンビネーションインプラントとは、個々の要素、すなわちフローダイバータおよびステントが患者の体外で既に物理的に接続されており、インターベンション中にユニットとして配置されるコンビネーションインプラントを意味するものと理解されるべきである。
【0037】
接続型コンビネーションインプラントの問題は、フローダイバータおよびステントが拡張中に異なる挙動を示すことである。特に、拡張中の長さの減少が異なり、これによって、血管内に配置する際に、フローダイバータとステントとの間に許容できない張力が不可避的に生じ得る。したがって、フローダイバータとステントとをそれらの共通の全長にわたって連続的に接続することは不可能である。
【0038】
この問題は、本発明によれば、以下のように解決される。
【0039】
接続型コンビネーションインプラントの好ましい実施形態では、フローダイバータおよびステントはそれぞれ近位領域でのみ互いに接続されている。ステントは、近位領域でフローダイバータからわずかに突出する。これは、フィッシュマウス効果、すなわちフローダイバータの近位の狭窄を防止するために有利である。ステントは、任意選択的に遠位領域でもフローダイバータを超えて突出することができる。
【0040】
この実施形態において重要なことは、ステントが分岐部での使用を意図されている場合、コンビネーションインプラントの少なくとも一部を覆い、この上で2つのコンビネーションインプラントが分岐部で移植される際に接触し、これによりフローダイバータの1つの所望でない拡張が防止されることである。これは通常、コンビネーションインプラントの近位始端から流出血管までの領域である。
【0041】
好ましくは、フローダイバータは、ステントの外側に設けられる、すなわち、ステントは、フローダイバータの内腔内に位置する。しかしながら、ステントがフローダイバータの外側に設けられる実施形態も考えられる。第2のケースでは、ステントとフローダイバータとの間の近位接続部を、コンビネーションインプラント内でのフィッシュマウス効果が生じないように設けることが有利である。この場合、ステントとフローダイバータとの間の接続は、フローダイバータの最も外側の近位端に位置することが好ましい。
【0042】
この第1の実施形態のバリエーションが考えられ、フローダイバータおよびステントが近位方向に互いに織り合わされている、すなわち接続部が一種のもつれ(entanglement)からなる。さらに、接着接続、溶接接続、結び目、リベット留め、はんだ付け、またはその他の接続も、すべての接続において考えられる。
【0043】
本発明のさらなる実施形態では、本発明によるインプラントシステムは、本発明による少なくとも2つのコンビネーションインプラントを備え、インプラントシステムの2つのコンビネーションインプラントの半径方向力は、コンビネーションインプラントの展開直径が同じ場合、同じ大きさであり、これにより、インプラントシステムのコンビネーションインプラントの少なくとも近位端において同じ大きさの展開直径が生じる。
【0044】
これにより、コンビネーションインプラントが他方によって支配されることはなく、直径が狭められることが確実になる。一方のコンビネーションインプラントが優位になり他方のコンビネーションインプラントが対応して狭窄することにより、対応する血管への供給が不均一になる。特に、これによって、狭窄されたコンビネーションインプラントによって供給される血管が供給不足になる、または閉塞に至る可能性がある。
【0045】
したがって、本発明によるインプラントシステムは、動脈瘤の治療に使用される本発明による少なくとも2つのコンビネーションインプラントを備え、第1のコンビネーションインプラントの半径方向力Aおよび第2のコンビネーションインプラントの半径方向力Bは、同じ大きさの展開直径で少なくとも近位で同じである。
【0046】
本発明によるインプラントシステムには、接続型コンビネーションインプラントおよび非接続型コンビネーションインプラントの両方が適しており、インプラントシステムは、好ましくは、接続型コンビネーションインプラントのみまたは非接続型コンビネーションインプラントのみを含む。しかしながら、個々のケースでは、必要に応じて、接続型および非接続型コンビネーションインプラントの組合せを含むインプラントシステムも有利であり得る。
【0047】
ステントがフローダイバータ内に設けられる、2つの非接続型コンビネーションインプラントを備えたインプラントシステムを分岐部に配置する方法は、以下の工程を含む:
(A)それぞれ1つのマイクロカテーテルを、近位から流入血管を通ってそれぞれ1つの流出血管に配置する工程;
(B)1つまたは複数のフローダイバータを連続的または並行的に埋め込む工程であって、それぞれのフローダイバータの近位端が流入血管内に位置し、それぞれのフローダイバータの遠位端がそれぞれの流出血管内に位置する工程。
【0048】
マイクロカテーテルは、工程(A)にしたがって、それぞれの血管にステントを続いて埋め込むために再び配置される。
(C)1つまたは複数のステントをそれぞれ対応するフローダイバータ内に連続的または並行的に埋め込む工程であって、それぞれのステントの近位端は、それぞれのフローダイバータの近位端に近接する。ステントの遠位端はそれぞれ流出血管内に位置する。
【0049】
ステントは、フローダイバータを超えて近位方向に突出する。これにより、フローダイバータの近位の収縮および血流の対応する閉塞が防止される。遠位では、ステントは、それぞれの流出血管内に延び、任意選択的に、遠位でもフローダイバータを超えて突出し得る。
【0050】
フローダイバータがステント内に設けられている、2つの非接続型コンビネーションインプラントを備えた代替インプラントシステムを配置するためのさらなる方法では、まずステントが埋め込まれる。埋め込み後、フローダイバータは、ステントの内側から並ぶ。ここでも、ステントは、フローダイバータを超えて近位に突出し、ステントは遠位にも流出血管内に伸長する。
【0051】
したがって、2つの非接続型コンビネーションインプラントを備えた代替インプラントシステムを分岐部に配置するためのさらなる方法は、以下の工程を含む:
(AA)それぞれ1つのマイクロカテーテルを、近位から流入血管を通ってそれぞれ1つの流出血管に配置する工程;
(BB)1つまたは複数のステントを連続的または並行的に埋め込む工程であって、それぞれのステントの近位端が流入血管内に位置し、それぞれのステントの遠位端がそれぞれの流出血管内に位置する工程。
【0052】
マイクロカテーテルは、工程(AA)にしたがって、それぞれの血管にフローダイバータの続いて埋め込むために再び配置される。
(CC)1つまたは複数のフローダイバータをそれぞれ対応するステント内に連続的または並行的に埋め込む工程であって、それぞれのフローダイバータの近位端は、それぞれのステントの近位端に近接し、それぞれのフローダイバータ(1、2)の遠位端は、それぞれの流出血管(AGA、AGB)内に位置する。
【0053】
分岐動脈瘤を治療するための2つの接続型コンビネーションインプラントを備えたインプラントシステムを配置する方法は、以下の工程を含む:
(AAA)それぞれ1つのマイクロカテーテル(MKA、MKB)を、近位から流入血管(ZG)を通ってそれぞれ1つの流出血管(AGA、AGB)に配置する工程;
(BBB)接続型コンビネーションインプラントを連続的または並行的に埋め込む工程であって、それぞれのコンビネーションインプラントの近位端が流入血管内に位置し、それぞれのコンビネーションインプラントの遠位端が流出血管内に位置する工程。
【0054】
本発明によるコンビネーションインプラント、インプラントシステム、およびそれらの配置方法は、特に脳分岐動脈瘤に適するが、身体の他の箇所で使用または適用することもできる。また、本発明によるコンビネーションインプラントは、特に説明してきたとしても、分岐動脈瘤の治療にのみ適しているわけではない。
【0055】
本発明によるコンビネーションインプラントは、コンビネーションインプラントとしてステントと組み合わされたフローダイバータが所望の領域において半径方向力が増大するという従来技術に対する利点を有する。同時に、ステントは、コンビネーションインプラント内のフローダイバータに追加の構造または構造的シース(sheath)を提供する。したがって、ステントは、対応する位置におけるフローダイバータの所望でない隆起またはくぼみの発生を防止する。
【0056】
本発明および技術的環境は、図面を参照して以下により詳細に説明される。図面は、本発明の特に好ましい実施形態を示すことに留意されたい。しかしながら、本発明は図示の実施形態に限定されるものではない。特に、本発明は、技術的に有意義である限り、特許請求の範囲に記載されているか、または明細書において本発明に関連するものとして記載されている技術的特徴の任意の組合せを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】流入血管および流出血管を有する分岐動脈瘤の概略図
【
図2】マイクロカテーテルが配置された
図1による分岐動脈瘤
【
図3】
図2に示すようにマイクロカテーテルが配置され、第1のフローダイバータが配置された、分岐動脈瘤
【
図4】第2のフローダイバータが配置された
図3による分岐動脈瘤
【
図5】フローダイバータ内にステントが配置された
図4による分岐動脈瘤
【
図7】ステントを備えた接続型コンビネーションインプラントの好ましい実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、流入血管ZGおよび2つの流出血管AGA、AGBを有する分岐部の概略図を示す。動脈瘤Aは、2つの流出血管AGA、AGBの間の分岐に位置する。
【0059】
図2は、
図1の分岐部を示し、2つのマイクロカテーテルMKA、MKBが、流入血管ZGを通って流出血管AGA、AGB内に配置される。1つのマイクロカテーテルMKA、MKBは、流出血管AGA、AGBの各々に配置されている。
【0060】
図3は、第1のフローダイバータ1がどのように配置されたかを示し、フローダイバータ1の近位端は流入血管ZG内に位置し、フローダイバータ1の遠位端は流出血管AGA内に位置している。フローダイバータ1の直径は、流出血管AGAの血管壁に当接するように選択されている。したがって、フローダイバータ1の直径は、流入血管ZGの直径よりも小さく、フローダイバータ1はそこでより強く拡張することができる。マイクロカテーテルMKA、MKBは血管内に留置されるか、または、マイクロカテーテルMKAは第1のフローダイバータ1の配置後に再挿入される。
【0061】
図4は、第2のフローダイバータ2がどのように配置されたかを示し、フローダイバータ2の近位端は流入血管ZG内に位置し、フローダイバータ2の遠位端は流出血管AGB内に位置している。フローダイバータ2の直径は、流出血管AGBの容器壁に当接するように選択されている。したがって、フローダイバータ2の直径は、流入血管ZGの直径よりも小さい。流入血管ZG内での第1のフローダイバータ1の近位部の支配的な拡張によって、第2のフローダイバータ2はもはやそこで十分に展開することができない。追加の手段無しでは、流出血管AGBがますます供給不足になる。マイクロカテーテルMKA、MKBは血管内に留置されるか、または、マイクロカテーテルMKBは第2のフローダイバータ2の配置後に再挿入される。
【0062】
あるいは、2つのフローダイバータ1、2の両方を、連続的ではなく、並行的にまたは同時に埋め込むことも考えられる。
【0063】
図5は、ステント3、4がフローダイバータ1、2の各々においてどのように配置されるかを示している。ステント3、4は、並行的にまたは同時に配置されることができるが、連続的にまたは順次配置されることもできる。ステント3、4の近位端はそれぞれ流入血管ZG内に位置し、ステント3、4の遠位端はそれぞれ流出血管AGA、AGB内に位置している。
【0064】
第1のフローダイバータ1および第1のステント3は、第1の機能ユニット、すなわち第1のコンビネーションインプラント5を形成し、第2のフローダイバータ2および第2のステント4は、第2の機能ユニット、すなわち第2のコンビネーションインプラント6を形成する。第1のコンビネーションインプラント5および第2のコンビネーションインプラント6を備えるインプラントシステムの発明にとって、両方のコンビネーションインプラント5、6が同じ展開直径で同じ半径方向力を形成することも重要である。ステント3、4の半径方向力は、有利には、ステント3、4の半径方向力がフローダイバータ1、2のフリーラジカル力に優先し、2つのコンビネーションインプラント5、6の半径方向力がステント3、4の半径方向力によって実質的に決定されるような大きさに選択されるべきである。これにより、インプラントシステムの2つのコンビネーションインプラント5、6は、ほぼ同じ大きさの近位展開直径を永続的に有する。
【0065】
図6は、分岐部における動脈瘤A’の代替位置を示し、動脈瘤A’は流出血管AGA、AGBの間ではなく、流入血管ZGと流出血管AGBとの間に位置している。このように配置された動脈瘤も、
図1~5に示されるように、本発明によるインプラントシステムを用いて同様に治療することができる。
【0066】
図7a)~d)は、接続型コンビネーションインプラントの好ましい実施形態のバリエーションを示す。本質的に別個のフローダイバータ1、2およびステント3、4から成り、したがって順次または並行的に埋め込むことができ、物理的に個々のインプラントとして存在する、
図1~5に示される非接続型コンビネーションインプラント5、6とは異なり、以下に示される接続型コンビネーションインプラントは、既に患者の体外で物理的に接続されたコンビネーションインプラントを表す。
【0067】
図7a)~d)は、フローダイバータおよびステントがそれぞれ近位領域で互いに接続されている接続型コンビネーションインプラントを示す。
【0068】
ステントは、近位領域でフローダイバータを超えてわずかに突出する。これは、フィッシュマウス効果、すなわち、フローダイバータの近位の狭窄を防止するために有利である。ステントは、任意選択的に、遠位領域b)、c)でもフローダイバータを超えて突出することができる。この実施形態において重要なことは、ステントが、少なくとも、埋込み時に2つのコンビネーションインプラントが分岐部で接触するコンビネーションインプラントの部分にわたって設けられることである。これは通常、インプラントの近位始端から流出血管内にまでの領域である。
【0069】
好ましくは、フローダイバータは、ステントa)、b)の外側に設けられるが、ステントがフローダイバータc)、d)の外側に設けられる実施形態も考えられる。第2のケースでは、ステントとフローダイバータとの間の接続を、コンビネーションインプラント内でのフィッシュマウス効果が生じないように設けることが有利である。この場合、接続部は、好ましくは、フローダイバータの最も外側の近位端に位置する。
【0070】
この実施形態のバリエーションが考えられ、フローダイバータおよびステントが近位方向に織り合わされる、すなわち、接続部は一種のもつれである。
【符号の説明】
【0071】
1 第1のフローダイバータ
2 第2のフローダイバータ
3 第1のステント
4 第2のステント
5 第1のコンビネーションインプラント
6 第2のコンビネーションインプラント
ZG 流入血管
AG 流出血管(AGA:第1の流出血管;AGB:第2の流出血管)
A、A’ 動脈瘤(分岐動脈瘤)
MK マイクロカテーテル(MKA:第1のマイクロカテーテル;MKB:第2のマイクロカテーテル)
D 遠位
P 近位
【国際調査報告】