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特表2024-535332眼科用組成物およびそれを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】眼科用組成物およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20240920BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240920BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240920BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20240920BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K38/08
A61P31/04
A61K31/14
A61P43/00 121
A61K9/08
A61P27/02
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/42
A61K47/10
A61P29/00
A61P27/04
C07K7/06 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518172
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 IL2022051018
(87)【国際公開番号】W WO2023047403
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/247,404
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520150201
【氏名又は名称】ターシア ファーマ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Tarsier Pharma Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ミルマン-レビンソン,ゾハル
(72)【発明者】
【氏名】ハイム-ラングフォード,ダフネ
(72)【発明者】
【氏名】ディファート,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076CC32
4C076EE06G
4C076EE09
4C076EE11G
4C076EE16G
4C076EE23G
4C076EE30
4C076EE31G
4C076EE32
4C076EE32G
4C076EE36
4C076EE37
4C076EE42
4C076FF17
4C076FF39
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA23
4C084BA33
4C084DA03
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA58
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZB11
4C084ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA41
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA78
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA33
4C206ZB35
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA50
4H045EA22
4H045EA28
(57)【要約】
本明細書では、(i)薬学的有効量のホスホリルコリン-タフトシン複合体と、(ii)0.1~5%重量/重量(w/w)の粘度増強剤と、(iii)0.1~5%w/wの粘膜付着性ポリマーとを含む水溶液を含む眼科用組成物が提供される。本明細書では、ホスホリルコリン-タフトシン複合体およびBAKを含む相乗的防腐組成物が提供される。さらに、有効量の防腐組成物を含む医薬組成物(例えば眼科用組成物)も提供される。それを必要とする対象における眼の炎症を治療または予防するためなどに本眼科用組成物を使用する方法も提供される。さらに、対象におけるホスホリルコリン-タフトシン複合体の眼の生物学的利用能を高めるためなどに本眼科用組成物を使用する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1(配列番号2):
【化1】
のホスホリルコリン-タフトシン複合体(PC)(その任意の塩を含む)と、第四級アンモニウムカチオン(その任意の塩を含む)とを含む防腐剤であって、前記防腐剤中の前記PCおよび前記第四級アンモニウムカチオンのw/w比は約1000:1~1:1であり、前記防腐剤は、0.18mg/ml以下の前記第四級アンモニウムカチオンの濃度に対応する有効濃度における水性組成物中での相乗的な抗菌活性を特徴とする防腐剤。
【請求項2】
前記相乗的な抗菌活性は、USP<51>に準拠する防腐効力試験(PET)によって決定される防腐効力である、請求項1に記載の防腐剤。
【請求項3】
前記第四級アンモニウムカチオンは、ベンザルコニウム(BAK)(その任意の塩を含む)であるかそれを含む、請求項1または2に記載の防腐剤。
【請求項4】
前記第四級アンモニウムカチオンの濃度は0.01~0.18mg/mlである、請求項1~3のいずれか1項に記載の防腐剤。
【請求項5】
有効量の請求項1~4のいずれか1項に記載の防腐剤を含む医薬組成物であって、前記有効量は、前記医薬組成物中に0.18mg/ml以下の前記第四級アンモニウムカチオンの濃度に対応している医薬組成物。
【請求項6】
前記有効量は、前記医薬組成物中に0.01~0.18mg/mlの前記第四級アンモニウムカチオンの濃度に対応している、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記有効量はさらに、前記医薬組成物中に1~50mg/mlの前記PCの濃度に対応している、請求項5または6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物は眼科用組成物である、請求項5~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
(i)薬学的有効量のホスホリルコリン-タフトシン複合体(PC)と、(ii)0.1~5%重量/重量(w/w)の粘度増強剤と、(iii)0.1~5%w/wの粘膜付着性ポリマーとを含む水溶液を含む眼科用組成物。
【請求項10】
前記眼科用組成物は、前記PCを含まない同様の組成物中の前記第四級アンモニウムカチオンの防腐有効濃度以下の防腐有効濃度の第四級アンモニウムカチオンをさらに含む、請求項9に記載の眼科用組成物。
【請求項11】
前記第四級アンモニウムカチオンは、ベンザルコニウム(BAK)(その任意の塩を含む)であるかそれを含む、請求項10に記載の眼科用組成物。
【請求項12】
前記眼科用組成物中の前記第四級アンモニウムカチオンの前記防腐有効濃度は0.01~0.18mg/mlである、請求項10または11に記載の眼科用組成物。
【請求項13】
前記眼科用組成物中の前記PCおよび前記第四級アンモニウムカチオンのw/w比は約1000:1~1:1である、請求項10~12のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項14】
前記粘膜付着性ポリマー:前記粘度増強剤のw/w比は1:1~10:1である、請求項9~13のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項15】
前記薬学的有効量は0.01~10%w/wの前記ホスホリルコリン-タフトシン複合体である、請求項9~14のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項16】
前記ホスホリルコリン-タフトシン複合体は、スペーサーを介して共有結合的に結合された少なくとも1つのホスホリルコリン部分またはその誘導体およびタフトシンまたはその誘導体を含む、請求項9~15のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項17】
前記スペーサーは少なくとも2つのアミノ酸を含む、請求項16に記載の眼科用組成物。
【請求項18】
前記ホスホリルコリン部分またはその誘導体は、ジアゾ基を介して前記スペーサーに共有結合的に結合されている、請求項16~17のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項19】
前記ホスホリルコリン-タフトシン複合体は、式1(配列番号2):
【化2】
によって表される、請求項9~18のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項20】
前記粘膜付着性ポリマーはイオン性粘膜付着性ポリマーを含む、請求項9~19のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項21】
前記イオン性粘膜付着性ポリマーは、アルギン酸、キトサン、ポリアクリレート、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチンおよびゼラチン(それらの任意の塩、任意のコポリマーまたは任意の組み合わせを含む)からなる群から選択される、請求項20に記載の眼科用組成物。
【請求項22】
前記粘度増強剤は、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)およびポリビニルアルコール(それらの任意の塩、任意のコポリマーまたは任意の組み合わせを含む)を含む、請求項9~21のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項23】
前記水溶液は薬学的に許容される塩を含む、請求項9~22のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項24】
最大5%w/wの張度調整剤をさらに含む、請求項9~23のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項25】
眼投与のために製剤化された点眼製剤の形態である、請求項9~24のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項26】
それを必要とする対象における眼の疾患または障害を治療または予防するための方法であって、有効量の請求項9~25のいずれか1項に記載の眼科用組成物を前記対象の眼に投与する工程を含む方法。
【請求項27】
前記眼の疾患または障害は眼の炎症を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記眼の炎症はブドウ膜炎であるか、ドライアイ、乾燥黄斑変性症および術後炎症のうちのいずれか1つに関連する状態である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
眼の疾患または障害に罹患している対象におけるホスホリルコリン-タフトシン複合体(PC)の眼の生物学的利用能を高めるための方法であって、請求項9~25のいずれか1項に記載の眼科用組成物を前記対象の眼に投与し、それにより前記眼における前記PCの濃度を高めることを含む方法。
【請求項30】
前記眼の生物学的利用能を高めることは対照と比較して少なくとも10%高めることである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記眼の生物学的利用能を高めることは、前記眼の眼房水中の前記ホスホリルコリン-タフトシン複合体の濃度を増加させることを含む、請求項29~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記投与することは、前記減少した用量の前記PCを対象に投与し、それにより前記眼において治療的有効濃度の前記PCを得ることを含み、ここでは前記治療的有効濃度は前記眼の疾患または障害に関連する少なくとも1つの症状を減少させるために十分であり、かつ減少した用量は対照と比較して少なくとも10%減少した量の前記PCを含む、請求項26~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記方法は前記投与する工程の前に予備工程を含み、前記予備工程は前記PCによる治療に適した対象を決定することを含み、かつ前記対象はヒト対象および動物対象から選択される、請求項32に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年9月23日に出願された米国仮特許出願第63/247,404号の優先権の利益を主張するものであり、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、眼科用組成物ならびに治療的活性薬剤のカプセル化および眼送達などのためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
眼の炎症、すなわち眼のあらゆる部分の炎症は、最も一般的な眼の疾患の1つである。眼の炎症とは眼の広範囲の炎症性疾患を指し、それらのうちの1つはブドウ膜炎である。これらの疾患は全ての年齢群において広まっており、クローン病、ベーチェット病および若年性特発性関節炎などの全身性疾患に関連している場合がある。当該炎症は、ドライアイおよび乾燥黄斑変性症などの他の一般的な眼の症状に関連している可能性もある。いくつかの薬物は、ブドウ膜炎および/またはドライアイを引き起こすという公知の副作用を有する。眼の炎症のための最も一般的な治療はステロイドであり、具体的にはコルチコステロイドである。しかしこれらの治療薬は、いくつかの公知であって時として深刻な副作用を有する。
【0004】
タフトシン-ホスホリルコリン(TPC)は、免疫調節活性を有する二重特異性小分子である。タフトシン(Thr-Lys-Pro-Arg、配列番号1)は、脾臓においてIgGの重鎖のFcドメインの酵素切断によって産生される天然の免疫調節ペプチドである。ホスホリルコリンは蠕虫によって分泌される小さい双性イオン性分子であり、これにより蠕虫は免疫寛容の状況を誘導する宿主の中ならびにいくつかの細菌およびアポトーシス細胞の表面で生存することが可能になる。
【0005】
眼の炎症を治療する方法が大いに必要とされている。さらに、眼への直接投与のためのタフトシン-ホスホリルコリンの製剤が大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様では、(i)薬学的有効量のホスホリルコリン-タフトシン複合体と、(ii)0.1~5%重量/重量(w/w)の粘度増強剤と、(iii)0.1~5%w/wの粘膜付着性ポリマーとを含む水溶液を含む眼科用組成物が提供される。
【0007】
一実施形態では、粘膜付着性ポリマー:粘度増強剤のw/w比は1:1~10:1である。
【0008】
一実施形態では、薬学的有効量は0.01~10%w/wのホスホリルコリン-タフトシン複合体である。
【0009】
一実施形態では、ホスホリルコリン-タフトシン複合体は、スペーサーを介して共有結合的に結合された少なくとも1つのホスホリルコリン部分またはその誘導体およびタフトシンまたはその誘導体を含む。
【0010】
一実施形態では、スペーサーは少なくとも2つのアミノ酸を含む。
【0011】
一実施形態では、ホスホリルコリン部分またはその誘導体はジアゾ基を介してスペーサーに共有結合的に結合されている。
【0012】
一実施形態では、ホスホリルコリン-タフトシン複合体(その任意の塩を含む)は、式1(配列番号2):
【化1】
によって表される。
【0013】
一実施形態では、粘膜付着性ポリマーはイオン性粘膜付着性ポリマーを含む。
【0014】
一実施形態では、イオン性粘膜付着性ポリマーは、アルギネート、キトサン、ポリアクリレート、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチンおよびゼラチン(それらの任意の塩または任意の組み合わせを含む)からなる群から選択される。
【0015】
一実施形態では、粘度増強剤は、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)およびポリビニルアルコールまたはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0016】
一実施形態では、当該水溶液は薬学的に許容される塩を含む。
【0017】
一実施形態では、本眼科用組成物は最大5%w/wの防腐剤および張度調整剤のうちのいずれか1つをさらに含む。
【0018】
一実施形態では、本眼科用組成物は点眼製剤の形態である。
【0019】
別の態様では、それを必要とする対象における眼の炎症を治療または予防するための方法であって、有効量の本発明の眼科用組成物を対象の眼に投与する工程を含む方法が提供される。
【0020】
一実施形態では、眼の炎症はブドウ膜炎であるか、ドライアイ、乾燥黄斑変性症および術後炎症のうちのいずれか1つに関連している。
【0021】
別の態様では、対象においてホスホリルコリン-タフトシン複合体の眼の生物学的利用能を高めるための方法であって、本発明の眼科用組成物を対象の眼に投与する工程を含む方法が提供される。
【0022】
一実施形態では、眼の生物学的利用能を高めることは、対照と比較して少なくとも10%高めることである。
【0023】
一実施形態では、眼の生物学的利用能を高めることは、眼の眼房水中のホスホリルコリン-タフトシン複合体の濃度を増加させることを含む。
【0024】
一実施形態では、当該対象はヒト対象および動物対象から選択される。
【0025】
特に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料が以下に記載されている。矛盾する場合は定義を含む本特許明細書が優先される。また材料、方法および実施例は単に例示であり、必ずしも限定的であることを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明はそのいくつかの実施形態では、ホスホリルコリン-タフトシン複合体(PC)を含む眼科用組成物、および本組成物をそれを必要とする対象に投与することにより病状を治療するための方法に関する。本発明はそのさらなる実施形態では、眼投与のための眼科用組成物、およびそれを必要とする対象における眼の炎症に関連する病状の治療におけるその使用に関する。
【0027】
本発明はそのいくつかの実施形態では、PCおよび第四級アンモニウムカチオンおよび/またはその任意の塩を含む防腐組成物に関し、ここでは防腐剤中のPC:第四級アンモニウムカチオンのw/w比は少なくとも約1000:1であり、かつ防腐剤は、PCを含まない同水性組成物中の第四級アンモニウムカチオンの有効濃度に対して少なくとも10%減少した第四級アンモニウムカチオンの濃度に対応する有効濃度における水性組成物中の抗菌活性を特徴とする。
【0028】
本発明はそのいくつかの実施形態では、同粒子内に様々な疎水性および親水性ドメインを含む両親媒性ポリマーの中に活性薬剤をカプセル化するための方法論に関する。当該ポリマーはナノサイズもしくはサブミクロンサイズの構造を有していてもよい。この方法論を用いて、薬物をカプセル化するポリマー構造体を調製して特性評価した。例示的な組成物は当該薬物のインビボでの生物学的利用能を有意に高めた。
【0029】
本発明の少なくとも一実施形態について詳細に説明する前に、本発明はその用途において、必ずしも以下の説明に記載されているまたは実施例によって例示されている詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、様々な方法で実行または実施することができる。
【0030】
組成物
本発明の一態様では、(i)ホスホリルコリン-タフトシン複合体を含む水溶液と、(ii)0.1~5%重量/重量(w/w)の粘度増強剤と、(iii)0.1~5%w/wの粘膜付着性ポリマーとを含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は液体組成物である。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は眼投与のために製剤化されている。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は眼科用組成物である。いくつかの実施形態では、「眼科用組成物」および「医薬組成物」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0031】
いくつかの実施形態では、本眼科用もしくは医薬組成物は-5~95℃の温度で液体である。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は生理条件下(例えば20~40℃の温度、2~8のpHなど)で液体である。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は水性組成物である。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は溶液(例えば水溶液)である。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物の成分は当該溶液に実質的に可溶性である。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物はどんな粒子状物質も実質的に含んでいない。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm超(それらの間の任意の範囲または値を含む)の粒径を有する粒子を実質的に含んでいない。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は透明な溶液である。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は不透明な溶液である。
【0032】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は80%超、85%超、90%超、95%超、97%超、99%超の透過率を特徴とし、ここでは透過率は200nm~1000nmの範囲の波長で測定される。当業者であれば、透過率は本眼科用組成物(例えば溶液の形態)の光学的透明度の指標であることを理解するであろう。
【0033】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は着色溶液である。いくつかの実施形態では、着色溶液は黄色~赤色がかっていることを特徴とする。
【0034】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は溶媒を含む。いくつかの実施形態では、当該溶媒は水性溶媒である。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は50~99%、50~60%、60~70%、70~80%、80~85%、85~90%、90~95%、90~92%、92~95%、95~97%、97~99%w/w(それらの間の任意の範囲または値を含む)の溶媒を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は水溶液である。いくつかの実施形態では、当該水溶液は緩衝液である。いくつかの実施形態では、当該水溶液は薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、当該緩衝液はリン酸緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、当該水溶液は当該技術分野でよく知られている注射用水を含む。
【0036】
当該水溶液に用いることができる好適な緩衝成分または緩衝剤としては、眼科用組成物において従来から使用されているものが挙げられる。いくつかの実施形態では、緩衝液中の薬学的に許容される塩としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属および/またはアンモニウム塩、クエン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩および乳酸塩などの塩ならびにそれらの混合物が挙げられる。またグッド緩衝液などの従来の有機緩衝液を用いてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は治療的有効量のホスホリルコリン-タフトシン複合体を含む。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物はホスホリルコリン-タフトシン複合体、薬学的に許容されるそれらの塩または両方を含む。
【0038】
「治療的有効量」という用語は、哺乳類における疾患または障害を治療するのに有効な複合体の量を指す。「治療的有効量」という用語は、所望の治療もしくは予防結果を達成するために必要な投与量および期間において有効な量を指す。正確な剤形および治療計画は患者の状態に従って医師によって決定される。いくつかの実施形態では、「治療的有効量」という用語および「薬学的有効量」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0039】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物中のホスホリルコリン-タフトシン複合体の重量/重量(w/w)濃度は0.01~10%、0.01~0.03%、0.03~0.5%、0.5~0.7%、0.7~0.8%、0.8~1%、1~1.5%、1.5~2%、2~2.5%、2.5~3%、3~4%、4~5%、5~7%、7~10%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物中の薬学的有効量のホスホリルコリン-タフトシン複合体は0.01~10重量%、0.1~1重量%、1~5重量%である。
【0040】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は本眼科用組成物の総乾燥重量に対して0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、20%、30%または約40%(それらの間の任意の値もしくは範囲を含む)のホスホリルコリン-タフトシン複合体を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は、唯一の薬学的活性成分としてホスホリルコリン-タフトシン複合体を含む。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は、どんなさらなる薬学的活性成分も実質的に含んでいない。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物はどんなさらなる抗炎症剤も実質的に含んでいない。
【0042】
いくつかの実施形態では、ホスホリルコリン-タフトシン複合体は、スペーサーを介して共有結合的に結合された少なくとも1つのホスホリルコリン部分またはその誘導体およびタフトシンまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは少なくとも2つのアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ホスホリルコリン部分またはその誘導体はジアゾ基を介してスペーサーに共有結合的に結合されている。
【0043】
本明細書で使用される「ホスホリルコリン(PC)複合体」という用語は、任意にスペーサーを介してタフトシン(T)に結合されたホスホリルコリン部分またはその誘導体を指す。
【0044】
本明細書で使用される「タフトシン」という用語は、テトラペプチド(トレオニン-リジン-プロリン-アルギニン、TKPR;配列番号1)を指す。タフトシンは化学的に合成されていてもよい。タフトシンはその食作用刺激活性ならびにインビトロおよびインビボでのマクロファージの抗原提示能力の増強について知られている。いくつかの実施形態によれば、タフトシンを免疫調節分子とみなしてもよい。
【0045】
本明細書で使用される「ホスホリルコリンの誘導体」という用語は、ホスホリルコリンをベースとする任意の化合物を指す。本明細書で使用される「タフトシンの誘導体」という用語は、TKPRをベースとする任意のポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、当該誘導体は、ホスホリルコリンおよび/またはタフトシンの免疫調節効果を保持している。いくつかの実施形態では、当該誘導体はホスホリルコリンを含む誘導体である。いくつかの実施形態では、当該誘導体はTKPRを含む誘導体である。誘導体は単にポリペプチドの断片ではなく、置換または除去されたアミノ酸(類似体)も有さず、それどころか翻訳後修飾などのポリペプチドになされるさらなる修正を有していてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、ホスホリルコリンの誘導体は、特に4-アミノ-フェニル-ホスホコリン、4-ジアゾニオ-フェニル-ホスホリルコリン、4-ニトロ-フェニル-ホスホコリンおよび12-(3-ヨードフェニル)ドデシル-ホスホコリンから選択される。各可能性は本発明の別個の実施形態である。
【0047】
「タフトシン誘導体」、「TD」および「タフトシン由来担体部分」という用語は互換可能であり、独立して選択される少なくとも2つのさらなるアミノ酸に結合したタフトシン(TKPR、配列番号1)を指す。非天然アミノ酸、好ましくはβ-アラニン-6-アミノヘキサン酸および5-アミノペンタン酸などの非帯電および非極性の非天然アミノ酸もタフトシン誘導体に含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、タフトシン誘導体はトレオニン-リジン-プロリン-アルギニン-グリシン-チロシン(TKPRGY、配列番号2)である。
【0048】
本明細書で使用される「部分」という用語は、対応する分子と比較して1つ以上の原子を欠いている分子の一部を指す。本明細書で使用される「部分」という用語はさらに、下部構造として官能基全体または官能基の一部のいずれかを含み得る分子の一部に関する。「部分」という用語はさらに、対応する分子と同様の化学的および/または薬理学的特性の特定のセットを示す分子の一部を意味する。
【0049】
本明細書で使用される「結合した(linked)」または「結合した(attached)」という用語は、それらが単一の分子であるような少なくとも2つの分子または部分間の結合を指す。いくつかの実施形態では、当該結合は化学結合である。いくつかの実施形態では、当該結合は共有結合である。本発明の原理によれば、タフトシン誘導体に含まれている天然および非天然アミノ酸は互いに隣接または結合しており、少なくとも1つのホスホリルコリン誘導体は、直接的またはスペーサーを介して間接的に少なくとも1つのタフトシン誘導体に結合している。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのホスホリルコリンまたはその誘導体は、少なくとも1つのタフトシンまたはその誘導体のN末端に結合している。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのホスホリルコリンまたはその誘導体は少なくとも1つのタフトシンまたはその誘導体のC末端に結合している。
【0050】
本明細書で使用される「スペーサー」という用語は、典型的にそこに化学的方法または生物学的手段によって結合されるタフトシン誘導体とホスホリルコリン誘導体との接続またはそうでなければ架橋要素を指す。スペーサーの非限定的な例としては、特にアミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭化水素およびポリマーが挙げられる。各可能性は本発明の別個の実施形態である。いくつかの実施形態では、スペーサーは少なくとも2つのアミノ酸である。いくつかの実施形態では、スペーサーはグリシン-チロシンである。いくつかの実施形態では、スペーサーはTKPRのC末端に結合している。いくつかの実施形態では、スペーサーはTKPRのN末端に結合している。
【0051】
いくつかの実施形態では、上に記載されているホスホリルコリン-タフトシン複合体は、1つのタフトシン誘導体に結合した1つのホスホリルコリン誘導体を含む。特定の実施形態では、上に記載されているホスホリルコリン-タフトシン複合体は、複数のタフトシン誘導体に結合した複数のホスホリルコリン誘導体を含む。特定の実施形態では、上に記載されているホスホリルコリン-タフトシン複合体は、1つのホスホリルコリン誘導体に結合した複数のタフトシン誘導体を含む。特定の実施形態では、上に記載されているホスホリルコリン-タフトシン複合体は、1つのタフトシン誘導体に結合した複数のホスホリルコリン誘導体を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、上に記載されているホスホリルコリン-タフトシン複合体は、スペーサーによって分離された少なくとも1つのホスホリルコリンまたはその誘導体および少なくとも1つのタフトシンまたはその誘導体を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、配列番号2のタフトシン誘導体を含むホスホリルコリン-タフトシン複合体は、式1:
【化2】
によって表される。いくつかの実施形態では、ホスホリルコリン-タフトシン複合体は対イオンを含む塩の形態である。いくつかの実施形態では、当該対イオンは薬学的に許容されるイオンである。いくつかの実施形態では、当該対イオンは塩化物、酢酸およびトリフルオロ酢酸またはそれらの任意の組み合わせのいずれかである。
【0054】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物は粘度増強剤を含む。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は複数の粘度増強剤を含む。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は少なくとも2種の粘度増強剤を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物中の粘度増強剤のw/w濃度は0.1~5%、0.1~0.2%、0.2~0.3%、0.3~0.5%、0.4~0.6%、0.5~0.7%、0.7~0.8%、0.8~1%、1~2%、2~3%、3~5%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。いくつかの実施形態では、本医薬組成物中の粘度増強剤のw/w濃度は0.4~0.6%である。
【0056】
本明細書で使用される「粘度増強剤」とは、眼に投与される溶液の粘度を増加させる任意の物質を指す。いくつかの実施形態では、粘度増強剤は水溶液の粘度を増加させる。
【0057】
粘度増強剤の非限定的な例としては、限定されるものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース、ポリアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリレート、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)およびポリビニルアルコールまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0058】
ポロキサマー、ガラクトマンナン、加水分解ガラクトマンナン、グルコマンナン、加水分解グルコマンナン、グアーガム、キサンタンガム、ナノ結晶セルロース、シクロデキストリン、ポリ(シクロデキストリン)、デキストラン、デキストリン、澱粉、ヘパリン、β-グルカン、マンナンおよびレバンまたはそれらの任意の組み合わせなどのさらなる粘度増強剤が当該技術分野でよく知られている。
【0059】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物は粘膜付着性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、本医薬組成物中の粘膜付着性ポリマーのw/w濃度は0.1~5%、0.1~0.2%、0.2~0.3%、0.3~0.5%、0.4~0.6%、0.5~0.7%、0.7~0.8%、0.8~1%、1~2%、2~3%、3~5%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。いくつかの実施形態では、本医薬組成物中の粘膜付着性ポリマーのw/w濃度は1~1.5%である。
【0060】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性ポリマーはイオン性粘膜付着性ポリマーである。いくつかの実施形態では、粘膜付着性ポリマーはカチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーまたは両方である。
【0061】
粘膜付着性ポリマーの非限定的な例としては、限定されるものではないが、アルギン酸、キトサン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、フコイダン、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリカルボフィル-システイン、ポリオキシエチレングリコールエステル、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸およびゼラチン(それらの任意の塩、任意のコポリマーまたは任意の組み合わせを含む)が挙げられる。
【0062】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性ポリマーはアルギン酸(またはアルギネート)および/またはそれらの塩である。
【0063】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物中の粘膜付着性ポリマー:粘度増強剤のw/w比は1:1~10:1、1:1~2:1、2:1~4:1、2:1~3:1、3:1~5:1、3:1~4:1、5:1~7:1、7:1~10:1(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0064】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物中の粘膜付着性ポリマー:ホスホリルコリン-タフトシン複合体のw/w比は5:1~1:5、5:1~3:1、3:1~2:1、2:1~1:1、1:1~1:2、1:2~1:4、1:4~1:5(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0065】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は最大0.1~10%w/wの張度調整剤を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は有効量の防腐剤を含む。いくつかの実施形態では、当該有効量は防腐有効量である。いくつかの実施形態では、当該有効量は抗菌有効量である。いくつかの実施形態では、本発明の眼科用組成物中の防腐有効量は、防腐剤のラベルクレーム(すなわち、関連する規制当局によって規定されている特定の防腐剤の有効濃度)に対して減少している。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明の眼科用組成物中の防腐有効量は、少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍または約2~約20倍、約2~約15倍、約2~約10倍、約5~約20倍、約5~約15倍(それらの間の任意の範囲または値を含む)減少しており、ここでの「減少」は防腐剤のラベルクレームに対する減少である。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は減少した量の防腐剤を含み、ここでの「減少」は、PCを含まない(またはPCではない活性薬剤を含む)同様の組成物中の防腐有効量に対する減少である。
【0068】
いくつかの実施形態では、防腐有効量は、USP<51>に準拠するPET試験または任意の他のPET試験に基づいて決定される。
【0069】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は、0.001~1%w/w(それらの間の任意の範囲を含む)の防腐剤を含む。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は、少なくとも0.001%w/wであってラベルクレーム以下の防腐剤を含み、ここではラベルクレーム以下は、防腐剤のラベルクレームに対して少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍または約2~約20倍、約2~約15倍、約2~約10倍、約5~約20倍、約5~約15倍(それらの間の任意の範囲または値を含む)で減少した濃度の防腐剤を包含する。
【0070】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物中の防腐剤のw/w濃度は0.001~1%、0.001~0.1%、0.001~0.01%、0.001~0.02%、0.001~0.018%、0.001~0.015%、0.002~0.018%、0.002~0.015%、0.003~0.018%、0.003~0.015%、0.05~0.1%、0.1~0.2%、0.2~0.3%、0.3~0.4%、0.4~0.5%、0.5~0.7%、0.7~1%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。いくつかの実施形態では、防腐剤は眼科用組成物に使用するのに適している。いくつかの実施形態では、防腐剤は、ベンザルコニウム(BAK)(その任意の塩を含む)などの第四級アンモニウムカチオン、例えば塩化ベンザルコニウムであるかそれを含む。いくつかの実施形態では、第四級アンモニウムカチオンは薬学的に許容される化合物である。いくつかの実施形態では、第四級アンモニウムカチオンは薬学的に許容される対アニオンを含む。
【0071】
本発明者ら驚くべきことに、本発明の本組成物中に十分な防腐活性のために必要な眼科用製剤中のラベルクレーム(0.02%w/w)のBAKに対して有意に減少した濃度のBAKが得られる、PC(具体的には、式1(配列番号2)のホスホリルコリン-タフトシン複合体)およびBAKの相乗的防腐活性を見出した。
【0072】
いくつかの実施形態では、第四級アンモニウムカチオンは式NR によって表され、式中、各Rはアルキル基、アリール基、アルキルアリール基から独立して選択され、かつアルキル基、アリール基およびアルキルアリール基はそれぞれ、-NO、-CN、-OH、オキソ、イミノ、-CONH、-CONR’、-CNNR’、-CSNR’、-CONH-OH、-CONH-NH、-NHCOR’、-NHCSR’、-NHCNR’、-NC(=O)OR’、-NC(=O)NR’、-NC(=S)OR’、-NC(=S)NR’、-SOR’、-SOR’、-SR’、-SOOR’、-SON(R’)、-NHNR’、-NNR’、C~Cハロアルキル、任意に置換されたC~Cアルキル、-NH、-NR’-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C~Cアルキル)、ヒドロキシ(C~Cアルコキシ)、アルコキシ(C~Cアルキル)、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、C~Cアルキル-NR’、C~Cアルキル-SR’、-CONH(C~Cアルキル)、-CON(C~Cアルキル)、-COH、-COR’、-OCOR、-OCOR’、-OC(=O)OR’、-OC(=O)NR’、-OC(=S)OR’、-OC(=S)NR’またはそれらの組み合わせからそれぞれ独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されており、式中、各R’は独立して水素を表すか、あるいは任意に置換されたC~C10アルキル、任意に置換されたC~C10シクロアルキル、任意に置換されたC~C10ヘテロシクリル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアリール、ヒドロキシ、アミノ、-NH、-NR’-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C~Cアルキル)、ヒドロキシ(C~Cアルコキシ)、アルコキシ(C~Cアルキル)、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、C~Cアルキル-NR’、C~Cアルキル-SR’またはそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0073】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖および分岐鎖状の基を含む脂肪族炭化水素を表す。アルキル基は1~50個の炭素原子、1~30個の炭素原子または1~20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1~30」が本明細書に記載されている場合は常に、それは当該基(この場合アルキル基)が1、2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子、6個の炭素原子、7個の炭素原子、10個の炭素原子、15個の炭素原子、20個の炭素原子などであって最大30個の炭素原子を含み得ることを意味する。いくつかの実施形態では、アルキル基は1~10個または1~6個(それらの間の任意の範囲を含む)の炭素原子を含む短いアルキルである。いくつかの実施形態では、アルキル基は少なくとも10個の炭素原子または10~30個(それらの間の任意の範囲を含む)の炭素原子を有する長いアルキルである。アルキルは本明細書に定義されているように置換されていても置換されていなくてもよい。
【0074】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は飽和もしくは不飽和炭化水素も包含し、故にこの用語はアルケニルおよびアルキニルをさらに包含する。
【0075】
「アルケニル」という用語は、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する本明細書に定義されている不飽和アルキルを表す。アルケニルは、本明細書の上に記載されているように1つ以上の置換基によって置換されていても置換されていなくてもよい。
【0076】
本明細書に定義されている「アルキニル」という用語は、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する不飽和アルキルである。アルキニルは、本明細書の上に記載されているように1つ以上の置換基によって置換されていても置換されていなくてもよい。
【0077】
「シクロアルキル」という用語は、当該環の1つ以上が完全な共役π電子系を有しない全炭素単環または縮合環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を表す。シクロアルキル基は、本明細書に示されているように置換されていても置換されていなくてもよい。
【0078】
「アリール」という用語は、完全な共役π電子系を有する全炭素単環または縮合多環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を表す。アリール基は、本明細書に示されているように置換されていても置換されていなくてもよい。本明細書で使用されるアリール基はヘテロアリールも包含する。
【0079】
「ヘテロアリール」という用語は、当該環に例えば窒素、酸素および硫黄などの1つ以上の原子を有し、かつ完全な共役π電子系をさらに有する単環または縮合環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)の基を表す。本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、芳香族環を形成している少なくとも1つの原子がヘテロ原子である芳香族環を指す。ヘテロアリール環は3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個および10個以上の原子によって形成されていてもよい。ヘテロアリール基は任意に置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例としては、限定されるものではないが、1つの酸素もしくは硫黄原子、または2つの酸素原子、または2つの硫黄原子、または最大4つの窒素原子、あるいは1つの酸素もしくは硫黄原子と最大2つの窒素原子との組み合わせを含む芳香族C3~8複素環基、およびそれらの置換されたものならびに例えば当該環を形成している炭素原子の1つを介して結合したベンゾおよびピリド縮合された誘導体が挙げられる。特定の実施形態では、ヘテロアリールはオキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジナル(pyrimidinal)、ピラジニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニルまたはキノキサリニルの中から選択される。
【0080】
いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基はピロリル、フラニル(フリル)、チオフェニル(チエニル)、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,3-オキサゾリル(オキサゾリル)、1,2-オキサゾリル(イソオキサゾリル)、オキサジアゾリル、1,3-チアゾリル(チアゾリル)、1,2-チアゾリル(イソチアゾリル)、テトラゾリル、ピリジニル(ピリジル)、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,2,3-トリアジニル、1,2,4-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、1,2,4,5-テトラジニル、インダゾリル、インドリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾジオキソリル、アクリジニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、チエノチオフェニル、1,8-ナフチリジニル、他のナフチリジニル、プテリジニルまたはフェノチアジニルの中から選択される。ヘテロアリール基が2つ以上の環を含む場合、各さらなる環は飽和形態(ペルヒドロ形態)または部分不飽和形態(例えば、ジヒドロ形態またはテトラヒドロ形態)あるいは最大不飽和(非芳香族)形態である。従ってヘテロアリールという用語は、2つの環が芳香族である二環式ラジカルおよび1つのみの環が芳香族である二環式ラジカルを含む。ヘテロアリールのそのような例としては、3H-インドリニル、2(1H)-キノリノニル、4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリニル、2H-1-オキソイソキノリル、1,2-ジヒドロキノリニル、(2H)キノリニルN-オキシド、3,4-ジヒドロキノリニル、1,2-ジヒドロイソキノリニル、3,4-ジヒドロ-イソキノリニル、クロモニル、3,4-ジヒドロイソキノキサリニル、4-(3H)キナゾリノニル、4H-クロメニル、4-クロマノニル、オキシインドリル、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリニル、1H-2,3-ジヒドロイソインドリル、2,3-ジヒドロベンゾ[f]イソインドリル、1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ-[g]イソキノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-ベンゾ[g]イソキノリニル、クロマニル、イソクロマノニル、2,3-ジヒドロクロモニル、1,4-ベンゾ-ジオキサニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-キノキサリニル、5,6-ジヒドロ-キノリル、5,6-ジヒドロイソ-キノリル、5,6-ジヒドロキノキサリニル、5,6-ジヒドロキナゾリニル、4,5-ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾリル、4,5-ジヒドロ-ベンゾオキサゾリル、1,4-ナフトキノリル、5,6,7,8-テトラヒドロ-キノリニル、5,6,7,8-テトラヒドロ-イソキノリル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリニル、5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリル、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンゾイミダゾリル、4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾオキサゾリル、1H-4-オキサ-1,5-ジアザ-ナフタレン-2-オニル、1,3-ジヒドロイミジゾロ-[4,5]-ピリジン-2-オニル、2,3-ジヒドロ-1,4-ジナフト-キノリル、2,3-ジヒドロ-1H-ピロール[3,4-b]キノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[b]-[1,7]ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロベンズ[b][1,6]-ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-9H-ピリド[3,4-b]インドリル、1,2,3,4-テトラヒドロ-9H-ピリド[4,3-b]インドリル、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ-[3,4-b]インドリル、1H-2,3,4,5-テトラヒドロ-アゼピノ[3,4-b]インドリル、1H-2,3,4,5-テトラヒドロアゼピノ-[4,3-b]インドリル、1H-2,3,4,5-テトラヒドロ-アゼピノ[4,5-b]インドリル、5,6,7,8-テトラヒドロ[1,7]ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-[2,7]-ナフチリジル、2,3-ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジル、2,3-ジヒドロ[1,4]-ジオキシノ[2,3-b]ピリジル、3,4-ジヒドロ-2H-1-オキサ[4,6]ジアザナフタレニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イミダゾ-[4,5-c]ピリジル、6,7-ジヒドロ[5,8]ジアザナフタレニル、1,2,3,4-テトラヒドロ[1,5]-ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ[1,6]ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ[1,7]ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-[1,8]ナフチリジニルまたは1,2,3,4-テトラヒドロ[2,6]ナフチリジニルが挙げられる。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は任意に置換されている。一実施形態では、1つ以上の置換基はそれぞれ独立して、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルキルアミド、アシル、C1~6-アルキル、C1~6-ハロアルキル、C1~6-ヒドロキシアルキル、C1~6-アミノアルキル、C1~6-アルキルアミノ、アルキルスルフェニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイルまたはトリフルオロメチルの中から選択される。
【0081】
ヘテロアリール基の例としては、限定されるものではないが、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、ピリジン、インドール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、インダゾール、テトラゾール、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、ピリミジン、プリンおよびピラジン、フラザン、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、プテリジン、フェンオキサゾール、オキサジアゾール、ベンゾピラゾール、キノリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリンおよびキノキサリンの非置換および一もしくは二置換誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態では、当該置換基はハロ、ヒドロキシ、シアノ、O-C1~6アルキル、C1~6アルキル、ヒドロキシ-C1~6アルキルおよびアミノ-C1~6アルキルである。
【0082】
「アルキルアリール」という用語は、本明細書に記載されているようにアリールによって置換されている本明細書に定義されているアルキルを表す。例示的なアルキルアリールはC1~6アルキル-アリール、例えばベンジルである。
【0083】
いくつかの実施形態では、第四級アンモニウムは、以下の式:
【化3】
(式中、各Rは独立して本明細書の上に開示されているとおりであり、かつ波形結合はポリマー骨格への結合点を表す)の1つ以上の第四級アンモニウムカチオンを含むポリマーである。例示的なポリマーの第四級アンモニウムカチオンとしては、限定されるものではないが、ポリクオタニウム(例えば、ポリクオタニウム-2、ポリクオタニウム-80、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-52、ポリクオタニウム-17など)が挙げられる。
【0084】
いくつかの実施形態では、第四級アンモニウムカチオンおよび/またはそれらの塩は、限定されるものではないが、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、コカミドプロピルPGジモニウムクロリドリン酸Na(Cola Lipid C)、ラウルジモニウムヒドロキシプロピルデシルグルコシドクロリド(SugaQuat L-1010)、ベルベリン、ベルベルビン、セイヨウメギ根抽出物、イソプロピルベンジルブチルノルベルベリンヨージド、パルマチン、ジャトロリジン、コプチシン、ウンゲレミン、エピベルベリン、擬ベルベリン、ステファラニン、シナピンおよびそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0085】
さらなる防腐剤が当該技術分野でよく知られている。防腐剤の非限定的な例としては、限定されるものではないが、クロロブタノール、過ホウ酸ナトリウムおよび安定化オキシクロロ複合体(SOC)またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている防腐剤は本発明の眼科用組成物中の唯一の防腐剤である。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物中の防腐剤は、ベンザルコニウム(その任意の塩および任意の誘導体を含む)である。
【0087】
いくつかの実施形態では、「誘導体」という用語は、上に開示されている化合物の立体異性体(例えば、鏡像異性体および/またはジアステレオマー)および/または構造異性体(例えば、アルキル化、アミノ化(animated)、ヒドロキシル化、カルボキシル化誘導体)、エステル、互変異性体および/または任意のプロドラッグまたは前駆体を指す。いくつかの実施形態では、「誘導体」という用語は同様の(または高められた)抗菌活性を有する構造的誘導体を指す。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明の眼科用組成物は、0.02%w/w以下、0.019%w/w以下または0.018%w/w以下のBAKまたはBAKの任意の誘導体を含む。いくつかの実施形態では、本発明の眼科用組成物は、0.001~0.018%、0.001~0.015%、0.001~0.01%、0.001~0.02%、0.001~0.018%、0.001~0.015%、0.002~0.018%、0.002~0.015%、0.003~0.018%、0.003~0.015%w/w(それらの間の任意の範囲または値を含む)を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は、1~10%、1~3%、3~5%、5~7%、4~6%、7~10%w/w(それらの間の任意の範囲または値を含む)の張度調整剤を含む。
【0090】
張度調整剤の非限定的な例としては、限定されるものではないが、マンニトール、エリスリトール、イノシトール、キシリトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、デキストロース、グリセリンおよびプロピレングリコールまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は約4%w/wのマンニトールを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は、水溶液(例えば緩衝水溶液)、0.1~5w/w、0.1~2w/w、0.1~3w/w、0.1~1.5w/wのホスホリルコリン-タフトシン複合体、0.5~1.5%w/wの粘膜付着性ポリマー(例えばアルギネート)、0.3~0.8%w/wの粘度増強剤(例えばHPMC)、約4%w/wの張度調整剤(例えばマンニトール)、および有効量の防腐剤(例えばBAK)を含むか本質的にそれらからなる。例示的な組成物は本明細書の下に記載されているとおりである。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は、水溶液(例えば緩衝水溶液)、0.1~1.5w/wのホスホリルコリン-タフトシン複合体、0.5~1.5%w/wの粘膜付着性ポリマー(例えばアルギン酸)、0.3~0.8%w/wの粘度増強剤(例えばHPMC)、約4%w/wの張度調整剤(例えばマンニトール)および0.001~0.019%w/wの防腐剤(例えばBAK)を含むか本質的にそれらからなる。例示的な組成物は本明細書の下に記載されている。
【0093】
本発明の別の態様では、水溶液(例えば緩衝水溶液)、0.5~1.5%w/wの粘膜付着性ポリマー(例えばアルギン酸)、0.3~0.8%w/wの粘度増強剤(例えばHPMC)、約4%w/wの張度調整剤(例えばマンニトール)、および有効量の本発明の防腐剤、(すなわち、BAKなどの第四級アンモニウムカチオンとホスホリルコリン-タフトシン複合体との組み合わせ)を含むか本質的にそれらからなる眼科用組成物が提供される。いくつかの実施形態では、防腐有効量(本明細書では「防腐有効濃度としても使用される」)は、PCを含んでいない同様の組成物中の第四級アンモニウムカチオンの防腐有効濃度と比較して減少しており、ここでの「減少」は本明細書の上に記載されているとおりである。
【0094】
いくつかの実施形態では、本発明の眼科用組成物中の防腐有効量は、0.01~0.19mg/ml、0.01~0.18mg/ml、0.01~0.15mg/ml、0.01~0.1mg/ml、0.02~0.18mg/ml、0.02~0.15mg/ml、0.015~0.18mg/ml、0.015~0.15mg/ml、0.03~0.18mg/ml、0.03~0.15mg/ml(それらの間の任意の範囲を含む)以内の第四級アンモニウムカチオンの濃度に対応している。いくつかの実施形態では、本発明の眼科用組成物中の防腐有効量はPCをさらに含み、ここではPC:第四級アンモニウムカチオンのw/w比は本明細書に記載されているとおりである。いくつかの実施形態では、「~に対応している」という用語は、第四級アンモニウムの濃度に関する場合にPCの濃度が異なってもよいことを意味しているが、本発明の眼科用組成物中のPC:第四級アンモニウムカチオンのw/w比は本明細書の上に記載されているとおりである。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明の眼科用組成物中の防腐有効量は、前記眼科用組成物中に約1000:1~1:1、約500:1~1:1、約700:1~1:1、約100:1~1:1、約50:1~1:1、約1000:1~10:1、約100:1~10:1、約500:1~10:1、約100:1~20:1、約50:1~10:1、約50:1~20:1、約10:1~5:1、約10:1~1:1(それらの間の任意の範囲を含む)のw/w比のPCおよび第四級アンモニウムカチオンをさらに含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、本発明の眼科用組成物中の防腐有効量は0.1~5w/w、0.1~2w/w、0.1~3w/w、0.1~1.5w/w(それらの間の任意の範囲を含む)のホスホリルコリン-タフトシン複合体を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は本質的に医薬品グレード成分からなる。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物の成分全体が医薬品グレード化合物である。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は無菌である。いくつかの実施形態では、本発明の眼科用組成物中の防腐有効量は、非無菌状態(例えば、1種以上の微生物を含む周囲雰囲気)へのその曝露時に本眼科用組成物の無菌性を維持するために十分であり、ここでの維持は1日~2ヶ月間、1日~1ヶ月、1~20日間、1~60日間、1~50日間、10~60日間、1~10日間、10~50日間、10~40日間、10~30日間(それらの間の任意の範囲を含む)の範囲の期間にわたる維持である。本明細書で使用される「無菌性」という用語は、特に米国薬局方または欧州薬局方においてそれぞれ記録されている無菌性要件に従う組成物(例えば本発明の眼科用組成物)または物品の微生物負荷を指す。
【0098】
微生物細胞の出現レベルを決定するための方法が当該技術分野で知られている。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている眼科用組成物のpHは6~8、6~6.5、6.5~7、7~7.5、7.5~8(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0100】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は30~150cps、50~120cps、1~5cps、5~10cps、10~15cps、15~20cps、20~30cps、30~40cps、40~50cps、50~60cps、60~70cps、70~80cps、80~90cps、90~100cps、100~110cps、110~120cps(それらの間の任意の範囲または値を含む)の粘度を特徴とする。
【0101】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は200~600mOsmols/kg、200~500mOsmols/kg、200~300mOsmols/kg、300~350mOsmols/kg、350~400mOsmols/kg、400~450mOsmols/kg、450~500mOsmols/kg、500~550mOsmols/kg、550~600mOsmols/kg(それらの間の任意の範囲または値を含む)の張度を特徴とする。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は250~450mOsmols/kgの張度を特徴とする。
【0102】
他の実施形態によれば、本眼科用組成物は長時間作用型、制御放出、持続放出もしくは徐放製剤である(PCの放出を延長するか、所定の放出速度でPCの放出を誘導するように構成されている)。各可能性は本発明の別個の実施形態である。
【0103】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は、限定されるものではないが、緩衝成分、pH調整剤および電解質ならびにそれらの任意の混合物を含む添加剤を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は点眼製剤の形態である。
【0105】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は、それを必要とする対象において眼の炎症に関連する疾患の予防または治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は、対象においてホスホリルコリン-タフトシン複合体の眼の生物学的利用能を高めるために使用するためのものである。
【0106】
防腐剤
別の態様では、本明細書に記載されているホスホリルコリン-タフトシン複合体(PC)(その任意の塩を含む)と、本明細書に記載されている第四級アンモニウムカチオン(その任意の塩を含む)とを含む防腐剤が提供され、ここでは防腐剤中のPC:第四級アンモニウムカチオンのw/w比(本明細書では「相乗的に有効な比」ともいう)は約1000:1~約1:1、約500:1~1:1、約700:1~1:1、約100:1~1:1、約50:1~1:1、約1000:1~10:1、約100:1~10:1、約500:1~10:1、約100:1~20:1、約50:1~10:1、約50:1~20:1、約10:1~5:1、約10:1~1:1(それらの間の任意の範囲を含む)である。いくつかの実施形態では、防腐剤は医薬もしくは化粧品組成物に適用した場合に、そのラベルクレーム以下である医薬もしくは化粧品組成物中の第四級アンモニウムカチオンの濃度に対応する相乗的な抗菌活性を特徴とする。いくつかの実施形態では、相乗的な抗菌活性とは、第四級アンモニウムカチオンの減少した有効な防腐もしくは抗菌濃度における水性組成物中の防腐もしくは抗菌活性を指し、ここでの「減少」は本明細書に記載されているとおりである。
【0107】
いくつかの実施形態では、第四級アンモニウムカチオンはBAKである。いくつかの実施形態では、相乗的な抗菌活性とは0.2mg/ml以下、0.18mg/ml以下、0.15mg/ml以下、0.01~0.19mg/ml、0.01~0.18mg/ml、0.01~0.15mg/ml、0.01~0.1mg/ml、0.02~0.18mg/ml、0.02~0.15mg/ml、0.015~0.18mg/ml、0.015~0.15mg/ml、0.03~0.18mg/ml、0.03~0.15mg/ml(それらの間の任意の範囲を含む)の有効量のBAKにおける水性組成物(例えば医薬もしくは化粧品組成物)中の防腐もしくは抗菌活性を指す。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明の防腐組成物はキットの形態である。いくつかの実施形態では、当該成分は当該キット中で相乗的に有効な比を有し、ここでは相乗的有効量は本明細書に記載されているとおりである。いくつかの実施形態では、当該キットは、1種以上の第四級アンモニウムカチオンと唯一の有効成分として1種以上のPC(その任意の塩を含む)とを含み、ここでは有効成分の少なくとも1つまたは全てが別個の容器またはパッケージに貯蔵されている。
【0109】
いくつかの実施形態では、当該キットは、本明細書の上に開示されている添加剤をさらに含み、ここでは本発明のキット中のさらなる薬剤:有効成分のw/w比は約0.1:1~1:1、約0.2:1~1:1、約0.2:1~0.5:1、約0.1:1~0.5:1(それらの間の任意の範囲を含む)であり、任意に(iii)は別個の容器に貯蔵されている。
【0110】
いくつかの実施形態では、当該キットは抗菌、消毒、滅菌もしくは防腐キットである。いくつかの実施形態では、当該キットは1つ以上の区画(例えば、第1の区画、第2の区画および任意に第3の区画)を含み、ここでは区画のそれぞれが、本明細書に開示されている当該キットの1つ以上の成分を含む。いくつかの実施形態では、当該キットは別個の区画に貯蔵された担体(例えば水性担体)をさらに含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、当該キットは、本明細書に開示されている予め定められた比(例えば相乗的有効量)で当該キットの成分を含む組成物を得るために第1の区画、第2の区画および任意に第3の区画を混合するための説明書を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、当該キットは、有効濃度の有効成分を含む液体組成物を得るために十分な量での当該キットの成分の希釈(例えば、水溶液などの適当な担体を用いる)のための説明書を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、当該キットは、所定量の当該キットを所定量の液体組成物(例えば医薬組成物または化粧品組成物)に施用または接触させて本液体組成物中に有効量の防腐剤を得るための説明書を含み、ここでは当該有効量は本明細書の上に記載されているとおりである。いくつかの実施形態では、当該キットは、所定量の当該キットを所定量の液体組成物に施用または接触させて、本液体組成物中の減少した濃度の第四級アンモニウムカチオンに対応する有効量の防腐剤を本液体組成物中に得るための説明書を含み、ここでの「減少」は本明細書に記載されているとおりである。いくつかの実施形態では、第四級アンモニウムカチオンはBAKであり(任意にここでは、PCは式1(配列番号2)の化合物であるかそれを含む)、防腐有効量は、0.2mg/ml以下、0.18mg/ml以下、0.15mg/ml以下、0.01mg/ml以上(それらの間の任意の範囲を含む)の本液体組成物中のBAK濃度に対応している。
【0114】
いくつかの実施形態では、当該キットは0.01~0.19mg/ml、0.01~0.18mg/ml、0.01~0.15mg/ml、0.01~0.1mg/ml、0.02~0.18mg/ml、0.02~0.15mg/ml、0.015~0.18mg/ml、0.015~0.15mg/ml、0.03~0.18mg/ml、0.03~0.15mg/ml(それらの間の任意の範囲を含む)の本液体組成物中のBAK濃度を得るために、所定量の当該キットを所定量の液体組成物に施用または接触させるための説明書を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、防腐剤は組成物(すなわち防腐組成物)であり、ここではPCおよび第四級アンモニウムカチオンは本組成物中の唯一の防腐成分である。いくつかの実施形態では、防腐組成物はさらなる防腐剤を実質的に含んでおらず、すなわちPCと第四級アンモニウムカチオンとの組み合わせではない。
【0116】
いくつかの実施形態では、本発明は減少した量の第四級アンモニウムカチオン(例えばBAK)により、減少した毒性を有する防腐組成物を提供し、ここでの「減少」は第四級アンモニウムカチオンのラベルクレームに対する減少である。
【0117】
いくつかの実施形態では、防腐組成物は粉末状組成物である。いくつかの実施形態では、防腐組成物は固体組成物である。いくつかの実施形態では、防腐組成物は乾燥状態にある。いくつかの実施形態では、防腐組成物は固体の抗菌剤組成物である。いくつかの実施形態では、防腐組成物は-50℃の温度と当該成分のいずれかの分解点以下(例えば50または60℃以下)との間で固体である。
【0118】
本明細書全体を通して、本明細書において互換的に使用される「組成物」または「防腐組成物」もさらに製剤を指すことが意図されている。本明細書で使用される「製剤」という用語は、任意に生理学的に許容される担体および/または賦形剤と、任意に美容的、化粧品的または薬学的に活性な薬剤(例えば薬物)などの他の化学成分とをさらに含む溶液、乳濁液、ローション、クリーム、ゲルなどの形態の媒体組成物を指す。当該製剤は任意に担体と、任意にさらなる活性薬剤および/または添加剤とをさらに含んでいてもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、防腐組成物は5~95℃の温度で半固体またはゲルである。いくつかの実施形態では、防腐組成物は流動性組成物である。いくつかの実施形態では、防腐組成物は液体もしくは流動性組成物である。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明の防腐組成物は、本明細書の上に記載されている有効(または抗菌)成分を含み、かつ担体をさらに含む。いくつかの実施形態では、担体は薬学的に許容される担体、化粧品的に許容される担体、食品グレードの担体またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、本発明の防腐組成物は水性組成物である。いくつかの実施形態では、水性組成物は溶液、乳濁液、懸濁液または分散液の形態である。
【0121】
いくつかの実施形態では、防腐組成物中の許容される担体のw/w濃度は50~99%、60~99%、70~99%、80~99%、90~99%、50~70%、70~90%(それらの間の任意の範囲を含む)である。
【0122】
いくつかの実施形態では、本発明の防腐組成物はその中に実質的もしくは完全に溶解された有効(または抗菌)成分を含む水溶液である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物はすぐに使用できる組成物すなわち希釈可能な濃縮物の形態である。いくつかの実施形態では、当該製剤中の成分は相乗的に作用する。
【0123】
いくつかの実施形態では、相乗作用という用語またはその任意の文法上の派生語は、組み合わせの総合的な生物活性(例えば防腐効力および/または抗菌活性)が個々の成分の合計よりも大きい2種以上の化合物の同時作用として定められる。
【0124】
いくつかの実施形態では、本発明の防腐組成物は、好適な条件(1分間~14日間の期間にわたって10~40℃(それらの間の任意の範囲を含む)の温度(それらの間の任意の範囲を含む)など)下で防腐有効量の防腐組成物を液体組成物または表面と接触させた際の、液体組成物(本明細書の上に開示されている水性医薬品もしくは化粧品組成物など)中、あるいは表面における滅菌もしくは防腐活性を特徴とする。いくつかの実施形態では、防腐活性とは、USP<51>に準拠する防腐効力試験(PET)によって決定される防腐効力を指す。
【0125】
いくつかの実施形態では、液体組成物および/または表面とは、微生物感染が生じやすい液体組成物または表面(少なくとも10%、少なくとも50%または10~99%、20~90%、20~80%、30~99%(それらの間の任意の範囲を含む)の水分を含む物品など)を指す。
【0126】
いくつかの実施形態では、本発明の防腐組成物またはキットは、微生物増殖が生じやすい液体組成物または表面に防腐剤として使用するために製剤化されている。いくつかの実施形態では、本液体組成物は化粧品物品、医薬品物品および/または食品グレード物品から選択される。
【0127】
本発明の別の態様では、有効濃度の本発明の防腐剤を含む医薬組成物が提供され、ここでは有効濃度は本明細書に記載されているとおりである。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は眼科用組成物である。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は微生物感染しやすい。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は液体、流動性組成物、半固体、半液体、フォームまたはゲルである。「有効濃度」および「有効量」という用語は本明細書では互換的に使用され、本発明の防腐剤の防腐もしくは抗菌有効濃度を指す。
【0128】
いくつかの実施形態では、当該有効濃度は防腐有効量である。いくつかの実施形態では、防腐有効量は、本医薬組成物中の減少した濃度の第四級アンモニウムカチオンに対応しており、ここでの「減少」は本明細書の上に記載されているとおりである。いくつかの実施形態では、当該有効濃度は本医薬組成物中に0.18mg/ml以下の第四級アンモニウムカチオンの濃度に対応している。いくつかの実施形態では、当該有効濃度は0.01~0.19mg/ml、0.01~0.18mg/ml、0.01~0.15mg/ml、0.01~0.1mg/ml、0.02~0.18mg/ml、0.02~0.15mg/ml、0.015~0.18mg/ml、0.015~0.15mg/ml、0.03~0.18mg/ml、0.03~0.15mg/ml(それらの間の任意の範囲を含む)の第四級アンモニウムカチオン(例えばBAK)の濃度に対応している。
【0129】
いくつかの実施形態では、当該有効濃度は0.01~0.19mg/ml、0.01~0.18mg/ml、0.01~0.15mg/ml、0.01~0.1mg/ml、0.02~0.18mg/ml、0.02~0.15mg/ml、0.015~0.18mg/ml、0.015~0.15mg/ml、0.03~0.18mg/ml、0.03~0.15mg/ml(それらの間の任意の範囲を含む)の濃度の第四級アンモニウムカチオン(例えばBAK)を含み、かつPCをさらに含み、ここではPC:第四級アンモニウムカチオン(例えばBAK)の比は、本明細書の上に記載されているとおりである(すなわち、約1000:1~約1:1(それらの間の任意の範囲を含む))。
【0130】
いくつかの実施形態では、当該有効濃度は、本明細書の上に記載されている濃度の第四級アンモニウムカチオンおよび1~50mg/ml(それらの間の任意の範囲を含む)の濃度のPCを含む。
【0131】
「抗菌剤」という用語は、微生物の増殖を防止すること、増殖を阻害することおよび/または増殖を制御することができる組成物または化合物を指し、抗菌化合物としては殺菌剤、静菌剤、殺真菌剤、静真菌剤、殺藻剤および静藻剤が挙げられる。「抗菌剤」という用語は防腐剤および滅菌剤を包含する。
【0132】
いくつかの実施形態では、「抗菌活性」という用語は、懸濁液または湿性環境中での細菌増殖、真菌増殖、バイオフィルム形成を阻害(防止)、減少または遅延させるか、あるいは生きた細菌細胞もしくはそれらの胞子、真菌細胞またはウイルスを根絶する能力を指す。
【0133】
本明細書では、微生物負荷の形成を阻害、減少または遅延させるとは、微生物の増殖を阻害、減少または遅延させること、および/または既存の微生物集団の一部または全てを根絶することを指す。従って本明細書に記載されている製剤は、物品の上または中での微生物の形成を減少させること、および物品または生体組織の中または上にいる微生物を死滅させることの両方に使用することができる。
【0134】
微生物は、例えば単細胞微生物(原核生物、古細菌、細菌、真核生物、原生生物、真菌、藻類、カビ、酵母、ミドリムシ、原生動物、渦鞭毛藻類、アピコンプレクサ、トリパノソーマおよびアメーバなど)または多細胞微生物であってもよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、当該微生物は、例えばグラム陽性およびグラム陰性細菌などの細菌の細菌細胞を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、グラム陽性細菌は黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌およびセレウス菌である。
【0137】
いくつかの実施形態では、グラム陰性細菌は大腸菌、緑膿菌およびセパシア菌である。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態では、真菌はカンジダ・アルビカンスである。
【0139】
いくつかの実施形態では、カビはアスペルギルス・ブラシリエンシスである。
【0140】
本明細書で使用される「バイオフィルム」という用語は、互いに付着し、かつ/またはコロニーとして表面に固定化される生きた細胞の集合体を指す。当該細胞は、核酸、タンパク質および多糖の高分子粘着性混合物である「粘液」ともいう細胞外高分子物質(EPS)の自己分泌されたマトリックス内に埋め込まれていることが多い。
【0141】
本実施形態の文脈では、バイオフィルムを形成する生きた細胞は、単細胞微生物(原核生物、古細菌、細菌、真核生物、原生生物、真菌、藻類、ミドリムシ、原生動物、渦鞭毛藻類、アピコンプレクサ、トリパノソーマおよびアメーバなど)の細胞または多細胞生物の細胞であってもよく、後者の場合、そのバイオフィルムを細胞のコロニー(単細胞生物の場合と同様)またはより下等な形態の組織とみなすことができる。
【0142】
本実施形態の文脈では細胞は微生物由来であり、バイオフィルムは細菌および真菌などの微生物のバイオフィルムである。バイオフィルム中で増殖している微生物の細胞は同じ生物の「プランクトン形態」の細胞とは生理学的に異なってもよく、後者は対照的に、液体媒体中を浮遊または遊泳することができる単細胞である。バイオフィルムは、初期の付着、不可逆的な付着、1つ以上の成熟段階および分散を含むいくつかのライフサイクル工程を経ることができる。
【0143】
「抗バイオフィルム」という用語は、細菌、真菌および/または他の細胞のバイオフィルムの形成を妨害し、かつ/または基板の表面への細菌、真菌および/または他の細胞のバイオフィルムの蓄積率の減少に影響を与える物質の能力を指す。
【0144】
本明細書で使用される「防止する」という用語は、抗菌剤または防腐剤の文脈では微生物細胞の増殖率を本質的に無効にするか、本発明の防腐剤またはそれを含有する物品が存在しない比較可能な状況において微生物の出現を少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%(それらの間のあらゆる値を含む)減少させることを表す。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。あるいは「防止する」は、防腐剤が存在しない比較可能な状況(例えば水性組成物)の中での微生物細胞の出現の少なくとも15%、10%または5%の減少を意味する。
【0145】
本明細書で使用される「減少させる」という用語は、防腐活性もしくは効力の文脈では、本発明の防腐剤を含んでいない同様の物品と比較して微生物(その胞子、細胞またはバイオフィルムを含む)の増殖率(および/またはCFUまたはCFU/mlで表される微生物負荷)を本質的に減少させることを示す。いくつかの実施形態では、「本質的に減少した」という用語は、本発明の防腐剤を含んでいない同様の組成物のCFU/ml含有量(本明細書では初期微生物負荷ともいう)と比較した場合に、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、少なくとも10,000倍、少なくとも100,000倍、少なくとも1,000,000倍、10~1,000,000倍、100~1,000,000倍、1000~10,000,000倍、1000~1,000,000倍、10,000~1,000,000倍(それらの間の任意の範囲を含む)のCFU/mlの減少を含む。いくつかの実施形態では、防腐剤は物品の微生物感染を実質的に防止する。いくつかの実施形態では、本発明の防腐組成物を含む物品は、その非無菌状態(例えば1種以上の微生物を含む周囲雰囲気)への曝露時にその無菌性を1日~2ヶ月間、1日~1ヶ月間、1~20日間、1~60日間、1~50日間、10~60日間、1~10日間、10~50日間、10~40日間、10~30日間(それらの間の任意の範囲を含む)の期間にわたって維持する。
【0146】
方法
別の態様では、それを必要とする対象における眼の疾患または障害を治療または予防するための方法であって、有効量の本発明の眼科用組成物を対象の眼に投与する工程を含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、眼の疾患は眼の炎症を含む。それは自己免疫疾患である。
【0147】
別の態様では、眼の疾患または障害に罹患している対象においてホスホリルコリン-タフトシン複合体(PC)の眼の生物学的利用能を高める方法であって、有効量の本発明の眼科用組成物を対象の眼に投与し、それにより前記眼における前記PCの濃度を高めることを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、有効量の本眼科用組成物とは治療的有効量のPCを指す。治療的有効量(または1日投与量)については本明細書の下にさらに記載されている。
【0148】
いくつかの実施形態では、投与する工程は対象に減少した用量のPCを投与することを含み、ここでの「減少」は本明細書の下に記載されているとおりである。いくつかの実施形態では、減少した用量のPCは、対象の眼において治療的有効濃度のPCを得るまたは誘導するために十分である。いくつかの実施形態では、治療的有効濃度のPCは、眼の疾患または障害に関連する少なくとも1つの症状を減少させるのに十分である。
【0149】
いくつかの実施形態では、当該対象は炎症に罹患している。いくつかの実施形態では、当該炎症は眼の炎症である。いくつかの実施形態では、当該対象はドライアイ、乾燥黄斑変性症、糖尿病性黄斑浮腫および術後炎症から選択される疾患または障害に罹患している。いくつかの実施形態では、眼の炎症はブドウ膜炎である。
【0150】
いくつかの実施形態では、本方法は眼の炎症に関連する疾患または障害を治療または予防するためのものである。
【0151】
本明細書で使用される「眼の炎症」という用語は、眼のあらゆる部分のあらゆる炎症を指す。いくつかの実施形態では、当該炎症は眼の中間層の炎症である。いくつかの実施形態では、当該炎症はブドウ膜炎である。いくつかの実施形態では、眼の炎症はドライアイまたは乾燥黄斑変性症を含む。いくつかの実施形態では、眼の炎症は別の疾患に関連している。
【0152】
眼の炎症を引き起こす可能性がある全身性疾患(および/または自己免疫疾患)の非限定的な例はクローン病、ベーチェット病および若年性特発性関節炎である。いくつかの実施形態では、眼の炎症は薬物または環境要因に対する有害反応に関連している。そのような薬物の非限定的な例としてはリファブチン、キノロン、ワクチンおよびアレルゲンが挙げられる。いくつかの実施形態では、眼の炎症は術後炎症に関連している。そのような炎症の非限定的な例としては白内障手術、レーザー眼手術および角膜移植後炎症が挙げられる。
【0153】
本明細書で使用される「ブドウ膜炎」という用語は、ブドウ膜すなわち網膜と強膜と角膜との間にある色素性内層の炎症を指す。当該炎症は虹彩、毛様体、脈絡膜すなわちブドウ膜のあらゆる部分で生じる可能性がある。ブドウ膜炎は前部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎および汎ブドウ膜炎のうちのいずれか1つを指すことができる。
【0154】
本明細書で使用されるように、眼の炎症の「治療」または眼の炎症を「治療する」という用語は、その少なくとも1つの症状の軽減、その重症度の低下またはその進行の阻害を包含する。治療は疾患、障害または状態が完全に治癒されることを意味する必要はない。有効な治療であるために、本明細書において有用な組成物は疾患、障害または状態の重症度を低下させること、それに関連する症状の重症度を低下させること、あるいは患者または対象の生活の質の向上を与えることのみを必要とする。いくつかの実施形態では、眼の炎症を治療することは、眼の炎症の発症を防止すること、眼の炎症の進行を減弱させること、眼の炎症の進行を阻害することの少なくとも1つを含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、治療することは炎症を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、治療することは異常な炎症を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、治療することは対象の眼における炎症を減少させることを含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、治療することは少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの分泌を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、治療することは哺乳類の免疫調節活性を刺激することを含む。当業者に知られている様々なモデルを使用して本発明の眼科用組成物の治療有効性を確立してもよい。細胞培養を使用して細胞増殖、サイトカインプロファイル、免疫寛容原性樹状細胞の発達およびT調節性細胞の発達に対するホスホリルコリン-タフトシン複合体の効果を試験してもよい。例えば限定されるものではないが、IL-1、IL-2、IFNγ、IL-4、IL-10、IL-15、IL-17およびTNFαを含む炎症誘発性および抗炎症性サイトカインを追跡するための市販のキットを使用してもよい。当業者に知られており、かつ本明細書の下に例示されているような動物モデルを使用して自己免疫疾患を治療する、防止する、あるいはその進行を低下させる際の本発明の眼科用組成物の活性を試験してもよい。
【0157】
いくつかの実施形態では、本方法は投与する工程の前に予備工程を含み、ここでの予備工程は、PCおよび/または本発明の眼科用組成物による治療に適した対象を決定することを含む。いくつかの実施形態では、決定することは、炎症性疾患(例えばブドウ膜炎などの本明細書に開示されている眼の炎症および/または自己免疫疾患)に罹患している対象を決定すること、(ii)当該炎症性疾患に罹患している対象を選択することを含む。いくつかの実施形態では、決定することは、対象から得られた試料において炎症バイオマーカー(例えば、限定されるものではないがIL-1、IL-2、IFNγ、IL-4、IL-10、IL-15、IL-17およびTNFαなどの炎症誘発性サイトカイン)の存在および/または濃度を分析することによる。いくつかの実施形態では、当該炎症バイオマーカーの濃度の増加(健康な対象における濃度よりも少なくとも10%の増加)は、当該対象が本発明の組成物による治療に適していることを示している。
【0158】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、(i)炎症性疾患に罹患している対象を決定または特定する工程と、(ii)当該炎症性疾患に罹患している対象を選択する工程と、(iii)当該炎症性疾患に罹患している対象を本発明の眼科用組成物で治療する工程とを含む。
【0159】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、(i)自己免疫疾患のリスクがあるか自己免疫疾患に罹患している対象を特定する工程と、(iii)当該対象を本発明の眼科用組成物で治療する工程とを含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、減少させることは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の減少を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。各サイトカインを同じ量だけ減少させることを必要としないことは当業者によって理解されるであろう。いくつかのサイトカインをその他のサイトカインよりも多く減少させてもよい。
【0161】
本発明の別の態様では、対象においてホスホリルコリン-タフトシン複合体の眼の生物学的利用能を高めるための方法であって、本発明の眼科用組成物を対象の眼に投与する工程を含む方法が提供される。
【0162】
いくつかの実施形態では、眼の生物学的利用能を高めることは対照と比較して少なくとも10%高めることである。いくつかの実施形態では、高めることは少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも5000%、少なくとも10,000%、少なくとも100,000%(それらの間の任意の範囲または値を含む)高めることである。
【0163】
いくつかの実施形態では、本方法は、ホスホリルコリン-タフトシン複合体の眼(例えば角膜および/または眼房水)の上または中での滞留時間を延長させるためのものである。いくつかの実施形態では、延長させることは10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、80分間、100分間、2時間、3時間、4時間、5時間(それらの間のあらゆる値を含む)の期間にわたって延長させることである。
【0164】
いくつかの実施形態では、当該対照または当該対照溶液は、本発明の組成物とほぼ同じホスホリルコリン-タフトシン複合体の濃度を有するホスホリルコリン-タフトシン複合体の水溶液である。いくつかの実施形態では、当該対照溶液は粘膜付着性ポリマーおよび粘度増強剤を含んでいない。
【0165】
いくつかの実施形態では、眼の生物学的利用能を高めることは、眼の眼房水中のホスホリルコリン-タフトシン複合体の濃度を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、増加させることは少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも5000%、少なくとも10,000%、少なくとも100,000%(それらの間の任意の範囲または値を含む)増加させることである。本明細書の下に例示されているように(実施例1)、本発明の組成物に入れて投与されるホスホリルコリン-タフトシン複合体は、眼房水内でのインビボ蓄積の向上を示した。
【0166】
いくつかの実施形態では、当該対象はヒト対象および動物対象から選択される。
【0167】
本明細書で使用される「投与する」および「投与」という用語および同様の用語は、適切な医療行為において、治療効果を与えるような方法で活性薬剤を含有する組成物を対象に送達するあらゆる方法を指す。いくつかの実施形態では、投与することは眼または眼内投与である。
【0168】
投与する工程は、そのような眼に有効な潤滑を与えるために必要に応じて繰り返してもよい。本組成物の投与様式は本組成物の形態によって決まる。例えば本組成物が溶液である場合、本組成物の液滴を例えば従来の点眼器から眼に塗布してもよい。一般に、従来の眼科用組成物を塗布するのと実質的に同じ方法で、本組成物を眼の表面に塗布してもよい。
【0169】
当業者であれば、特に点眼薬は炎症部位に完璧に到達しないことを認識するであろう。従って投与様式を補償するために、当業者によって決定された用量を増減させる必要がある。
【0170】
いくつかの実施形態では、投与される組成物の量(用量)は当然ながら、治療されている対象、治療されている病状、病気の重症度、投与様式、処方医師の判断などによって決まる。
【0171】
いくつかの実施形態では、1日用量(すなわち、1日当たりのホスホリルコリン-タフトシン複合体の量)は、50~2000μg、200~2000μg、50~100μg、100~200μg、200~300μg、300~400μg、400~500μg、500~600μg、600~700μg、700~800μg、800~900μg、900~1000μg、1000~1100μg、1100~1300μg、1300~1500μg、1500~1800μg、1800~2000μg(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0172】
いくつかの実施形態では、本組成物を1日1、2、3、4、5、6、8、9、10回(それらの間の任意の範囲を含む)投与する。
【0173】
本医薬組成物は、限定されるものではないが、抗菌剤、抗酸化剤、緩衝剤、増量剤、界面活性薬剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、化学療法剤および抗ヒスタミンなどのさらなる薬学的に活性もしくは不活性な薬剤をさらに含んでいてもよい。
【0174】
本発明の一実施形態によれば、本明細書の上に記載されている医薬組成物は包装材料で包装されており、本明細書に記載されている疾患または障害の治療に使用するために包装材料の中または上にある印刷で識別される。
【0175】
本発明の別の実施形態によれば、本医薬組成物は包装材料で包装されており、本明細書に記載されている疾患または障害を監視するのに使用するために包装材料の中または上にある印刷で識別される。
【0176】
本発明の製品は、所望であれば、米国食品医薬品局(FDA)に認可されたキットなどのパックまたはディスペンサー装置に入れて提供されてもよく、これは本開示の組成物を含有する1つ以上の単位剤形を含んでいてもよい。当該パックは、例えばブリスターパックなどの金属もしくはプラスチック箔を含んでもよい。当該パックもしくはディスペンサー装置には投与のための説明書が添付されていてもよい。また当該パックもしくはディスペンサーは、製造、医薬品の使用または販売を規制している政府機関によって規定された形態で容器に関連づけられた通知が添付されていてもよく、この通知は本組成物またはヒトもしくは獣医学的投与の形態に関する当該機関による認可を反映している。そのような通知は、例えば処方薬物についてFDAによって認可されているラベルまたは認可されている製品添付文書であってもよい。
【0177】
いくつかの実施形態では、当該キットは本開示の組成物の1日用量を含む単一剤形を含む。いくつかの実施形態では、当該キットは複数の剤形を含む。いくつかの実施形態では、当該キットは本開示の組成物の1日用量に相当する複数の剤形を含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物は粘膜組織(例えば角膜)に付着するものとして特徴づけられる。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は眼の上または中での滞留時間の増加を特徴とする。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は眼の中または眼の上(例えば角膜の上)でのホスホリルコリン-タフトシン複合体の滞留時間を延長させる。いくつかの実施形態では、本医薬組成物はホスホリルコリン-タフトシン複合体の角膜浸透を高める。
【0179】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物は生理条件下(例えば、角膜との相互作用時および/または眼房水内)でのホスホリルコリン-タフトシン複合体の化学的安定性を高める。
【0180】
本明細書で使用される「粘膜付着性」という用語またはその任意の文法上の派生語は、粘膜上皮(例えば角膜)に塗布された物質が通常は新しい界面を作り出し、粘液層に付着する現象を指す。
【0181】
いくつかの実施形態では、本方法はホスホリルコリン-タフトシン複合体の眼の上または中での放出期間を延長させるためのものである。いくつかの実施形態では、ホスホリルコリン-タフトシン複合体はゆっくりと放出される。いくつかの実施形態では、ホスホリルコリン-タフトシン複合体は制御された方法で放出される。
【0182】
この文脈では、「制御された方法」という用語は、当該薬物が実質的に絶えず放出されることを示す。本明細書における「絶えず」という用語は、例えば約10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、80分間、100分間、2時間、3時間、4時間、5時間(それらの間のあらゆる値を含む)の期間を指してもよい。
【0183】
当然のことながら、本発明の組成物は他の抗炎症性薬物などの他の薬物と共に投与してもよい。
【0184】
一般事項
【0185】
「シクロアルキル」という用語は、当該環の1つ以上が完全な共役π電子系を有しない、全炭素単環または縮合環(すなわち隣接する炭素原子対を共有する環)の基を表す。シクロアルキル基は、本明細書に示されているように置換されていても置換されていなくてもよい。
【0186】
「アリール」という用語は、完全な共役π電子系を有する全炭素単環または縮合多環(すなわち隣接する炭素原子対を共有する環)の基を表す。アリール基は、本明細書に示されているように置換されていても置換されていなくてもよい。
【0187】
「アルコキシ」という用語は、本明細書に定義されているO-アルキルおよび-O-シクロアルキル基の両方を表す。「アリールオキシ」という用語は本明細書に定義されている-O-アリールを表す。
【0188】
本明細書における一般式中のアルキル、シクロアルキルおよびアリール基はそれぞれ1つ以上の置換基によって置換されていてもよく、ここでの各置換基は独立して分子中の置換された基およびその位置に応じて、例えばハロゲン化物、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、チオアルコキシ、カルボキシ、アミド、アリールおよびアリールオキシであってもよい。さらなる置換基も考えられる。
【0189】
「ハロゲン化物」、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す。「ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハロゲン化物によってさらに置換された本明細書に定義されているアルキル基を表す。「ハロアルコキシ」という用語は、1つ以上のハロゲン化物によってさらに置換された本明細書に定義されているアルコキシ基を表す。「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」という用語は-OH基を表す。「メルカプト」または「チオール」という用語は-SH群を表す。「チオアルコキシ」という用語は、本明細書に定義されている-S-アルキル基および-S-シクロアルキル基の両方を表す。「チオアリールオキシ」という用語は、本明細書に定義されている-S-アリールおよび-S-ヘテロアリール基の両方を表す。「アミノ」という用語は、-NR’R’’基またはそれらの塩を表し、式中、R’およびR’’は本明細書に記載されているとおりである。
【0190】
「ヘテロシクリル」という用語は、環中に窒素、酸素および硫黄などの1つ以上の原子を有する単環または縮合環の基を表す。当該環は1つ以上の二重結合も有していてもよい。但し、当該環は完全な共役π電子系を有しない。代表的な例はピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランおよびモルホリノなどである。
【0191】
「カルボキシ」という用語は-C(O)OR’基またはそのカルボン酸塩を表し、式中、R’は水素、本明細書に定義されているアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール(環炭素により結合されている)またはヘテロシクリル(環炭素により結合されている)である。または「カルボキシレート」である。
【0192】
「カルボニル」という用語は-C(O)R’基を表し、式中、R’は本明細書の上に定義されているとおりである。上記用語はそのチオ誘導体(チオカルボキシおよびチオカルボニル)も包含する。
【0193】
「チオカルボニル」という用語は-C(S)R’基を表し、式中、R’は本明細書の上に定義されているとおりである。「チオカルボキシ」基は-C(S)OR’基を表し、式中、R’は本明細書に定義されているとおりである。「スルフィニル」基は-S(O)R’基を表し、式中、R’は本明細書に定義されているとおりである。「スルホニル」または「スルホネート」基は-S(O)2R’基を表し、式中、R’は本明細書に定義されているとおりである。
【0194】
「カルバミル」または「カルバメート」基は-OC(O)NR’R’’基を表し、式中、R’は本明細書に定義されているとおりであり、R’’はR’について定義されているとおりである。「ニトロ」基は-NO2基を指す。本明細書で使用される「アミド」という用語は、C-アミドおよびN-アミドを包含する。「C-アミド」という用語は-C(O)NR’R’’末端基または-C(O)NR’-結合基を表し、これらの語句は本明細書の上に定義されているとおりであり、式中、R’およびR’’は本明細書に定義されているとおりである。「N-アミド」という用語は、-NR’’C(O)R’末端基または-NR’C(O)-結合基を表し、これらの語句は本明細書の上に定義されているとおりであり、式中、R’およびR’’は本明細書に定義されているとおりである。
【0195】
「シアノ」または「ニトリル」基は-CN基を指す。「アゾ」または「ジアゾ」という用語は、-N=NR’末端基または-N=N-結合基を表し、これらの語句は本明細書の上に定義されているとおりであり、式中、R’は本明細書の上に定義されているとおりである。「グアニジン」という用語は、-R’NC(N)NR’’R’’’末端基または-R’NC(N)NR’’-結合基を表し、これらの語句は本明細書の上に定義されているとおりであり、式中、R’、R’’およびR’’’は本明細書に定義されているとおりである。本明細書で使用される「アジド」という用語は-N3基を指す。「スルホンアミド」という用語は-S(O)2NR’R’’基を指し、式中、R’およびR’’は本明細書の上に定義されているとおりである。
【0196】
「ホスホニル」または「ホスホネート」という用語は、-OP(O)-(OR’)2基を表し、式中、R’は本明細書の上に定義されているとおりである。「ホスフィニル」という用語は-PR’R’’基を表し、式中、R’およびR’’は本明細書に定義されているとおりである。
【0197】
いくつかの実施形態では、当該置換基はハロ、ヒドロキシ、シアノ、O-C1~6アルキル、C1~6アルキル、ヒドロキシ-C1~6アルキルおよびアミノ-C1~6アルキルである。
【0198】
本明細書で使用される「ハロ」および「ハロゲン化物」という用語は、本明細書では互換的に言及されているが、本明細書ではフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物ともいうフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であるハロゲンの原子を表す。
【0199】
本明細書で使用される「約」という用語は、±10%または±20%を指す。さらに、本明細書に開示されている数値全体が近似値であり、本開示の値からの±10%または±20%の変動も包含する。本明細書に開示されている全ての数値は「約」という用語の後にくることを理解されたい。
【0200】
「~を含む(comprises)」、「~を含む(comprising)」、「~を含む(includes)」、「~を含む(including)」、「~を有する(having)」という用語およびそれらの活用形は、「限定されるものではないが~を含む」を意味する。
【0201】
「~からなる(consisting of)」という用語は「~を含み、かつそれらに限定される」を意味する。
【0202】
「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、本組成物、方法または物品(例えば本発明の繊維またはそこから加工された物品)がさらなる成分、工程および/または部分を含んでもよいが、さらなる成分、工程および/または部分が請求項に係る組成物、方法または物品の基本的および新規な特性を実質的に変えない場合にのみそうであることを意味する。さらに「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語を使用して、記載されている要素を含むが物品または本組成物に対して本質的な意義を有し得る他の要素を排除する物品または組成物を定める。
【0203】
「例示的」という単語は本明細書では、「一例、実例または例示として機能すること」を意味するように使用される。「例示的」なものとして記載されている任意の実施形態は必ずしも、他の実施形態よりも好ましいか有利であるもの、および/または他の実施形態からの特徴の組み込みを排除するものとして解釈されるべきではない。
【0204】
「任意に」という単語は本明細書では、「いくつかの実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味するために使用される。本発明の任意の特定の実施形態は、そのような特徴が矛盾しない限り複数の「任意の」特徴を含んでいてもよい。
【0205】
本明細書で使用される単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「前記(その)(the)」は、その文脈が明らかにそうでないことを示していない限り複数の指示対象を含む。例えば「化合物」または「少なくとも1種の化合物」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含んでもよい。
【0206】
本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態は範囲形式で示されている場合がある。当然のことながら範囲形式での記載は単に便宜および簡潔性のためのものであり、本発明の範囲に対する変更の余地がない限界として解釈されるべきではない。従って、範囲の記載は具体的に開示されている全ての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を有するように解釈されるべきである。例えば1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示されている部分範囲ならびにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5および6を有するように解釈されるべきできある。これはその範囲の幅に関わらず当てはまる。
【0207】
数の範囲が本明細書に示されている場合は常に、示されている範囲内の任意の列挙されている数(分数または整数)を含むことが意図されている。「第1の指示数と第2の指示数との間の範囲の(範囲にある)」という語句および「第1の指示数~第2の指示数の範囲の(範囲にある)」は本明細書では互換的に使用され、第1および第2の指示数およびそれらの間の全ての分数および整数を含むことが意図されている。
【0208】
本明細書で使用される「方法」という用語は、限定されるものではないが化学、薬理学、生物学、生化学および医学分野の実施者に知られているか当該実施者によって公知の様式、手段、技術および手順から容易に開発される様式、手段、技術および手順を含む、所与の作業を達成するための様式、手段、技術および手順を指す。
【0209】
明確性のために、別個の実施形態の文脈に記載されている本発明の特定の特徴が単一の実施形態において組み合わせで提供される場合もあることが理解される。逆に簡潔のために、単一の実施形態の文脈に記載されている本発明の様々な特徴は別々に、あるいは任意の好適な部分的組み合わせとして提供される場合もある。本発明に関連する実施形態の全ての組み合わせは本発明によって明確に包含され、かつ各および全ての組み合わせがあたかも個々に、かつ明示的に開示されているかのように本明細書に開示されている。さらに、様々な実施形態の全ての部分的組み合わせおよびそれらの要素も特に本発明によって包含され、かつ各および全てのそのような部分的組み合わせが個々に、かつ明示的に開示されているかのように本明細書に開示されている。
【0210】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、限定的であることが意図されていない以下の実施例を考察すれば当業者には明らかになるであろう。さらに、本明細書の上に詳述されており、かつ以下の特許請求の範囲の箇所で特許請求されている本発明の様々な実施形態および態様はそれぞれ、以下の実施例において実験的支持を得ている。
【0211】
本明細書の上に詳述されており、かつ以下の特許請求の範囲の箇所で特許請求されている本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的支持を得ている。
【実施例
【0212】
材料
試験する眼科用溶液の製造に使用した材料は、TRS(原薬、研究グレード)、一塩基性リン酸ナトリウム、二水和物(緩衝剤、USP/NF)、二塩基性リン酸ナトリウム二水和物(緩衝剤、USP/NF)、塩化ベンザルコニウム(防腐剤、USP/NF)、アルギン酸ナトリウム(粘膜付着剤、Ph Eur)、ヒプロメロース(粘度増強剤、USP/NF)、水酸化ナトリウムおよび/または塩酸(pH調整剤、USP/NF)、注射用水(溶媒、USP/NF)、マンニトール(張度調整剤、USP)である。
【0213】
商業的に入手可能なLipicare(登録商標)(すぐに使用できる製剤)は受け取った状態のまま使用した。
【0214】
原薬[TRS]は、式1(配列番号2)(本明細書に示されている)によって表されるホスホリルコリン-タフトシン複合体のトリフルオロ酢酸[TFA]塩である。分子式:C43H68N13O13P、外観:黄色~橙黄色の固体。溶解性:水に>40mg/ml。
【0215】
本眼科用組成物の包装:HDPEスクリューキャップ付きの使い捨てメディアボトル(PETG)。充填後に、閉鎖部分を不正開封防止ラベルで密閉する。ボトルおよび閉鎖部分は放射線滅菌され、かつ非発熱性のものとして購入した。貯蔵条件:-20℃±5℃。-20℃±5℃における[TRS]の長期安定性研究および+5℃±3℃における安定性加速研究を36ヶ月にわたって最近開始した。-20℃±5℃での入手可能な安定性データから、これらの条件下で貯蔵した場合に原薬が6ヶ月間にわたって安定であることが分かった。
【0216】
方法
0、30、150または300μgの目標投与量を、0%、0.1%、0.5%および1%w/vのTRS眼科用溶液の30μLの局所眼科用液滴で送達し、これらはそれぞれ、TRS製剤を30μLの液滴(10個の液滴から測定した平均液滴体積が30.6μLであった)における臨床的投与量強度と相関する。
【0217】
開発プロセス中に3つの主要製剤プロトタイプ(表1を参照)を評価した。各主要製剤は当該薬物の生物学的利用能を高めるために、防腐剤、浸透圧調整剤、粘度増強剤および賦形剤のうちのいくつかまたは全てを含んでいた。アルビノウサギにおいて単回眼局所投与を用いて各製剤を試験して刺激特性を評価し、存在すればTRSの眼の生物学的利用能を得た。
【0218】
インビボ実験を以下のように行った。
【0219】
50μlの液滴投与後30分、60分および120分の時点ごとに、9匹の雄のニュージーランドホワイトウサギを3匹の動物からなる3つグループにランダムに分けた。
【0220】
各時点における各グループの各動物の両眼からの眼房水(AH)を試料採取し、重量を測り、瞬間凍結し、-80°±15℃で貯蔵した。
【0221】
試料の調製:1:5の比(V/V)の内部標準(プロプラノロール、100nM)を含有する氷冷アセトニトリル/メタノール(50:50)溶液で眼房水を抽出した。遠心分離(12000rpm、10’、4℃)後、LC-MS/MS分析のために上澄みをマトリックス管の中に移した。
【0222】
LC-MS(LC-MS/MS Acquity I-Class-Xevo TQS、Waters社)を用いて眼房水試料を以下のように分析した。
・カラム:Waters(登録商標)Acquity BEH C18、50*2.1mm、1.7μm(40℃)。移動相:A:ギ酸アンモニウム5mM、pH3.75、B:CH3CN+ギ酸アンモニウム5mM、pH3.75、5%水溶液。注射体積:0.2μL。流量:600μL/分。
【表1】
【表2】
【表3】
【0223】
例示的な製剤3を以下のように特性評価した。
【0224】
眼科用溶液は水溶性合成分子[TRS]の無菌粘性溶液である。当該製剤は、生理pH[6.5~7.5]前後の範囲を目標としてリン酸ナトリウム塩で緩衝し、マンニトール[250~400mOsm]で等張性にする。塩化ベンザルコニウムを防腐剤として添加する。アルギン酸ナトリウムおよびヒプロメロース(HPMC)を添加して当該溶液の粘度を増加させ、眼の保持時間を延長させ、眼の中へのTRS01の浸透を高めた。WFIは溶媒である。
【0225】
実施例1
均質性について製剤3を試験し、均質であることが分かった。NZWウサギおよびビーグル犬において製剤3を用いて28日間のGLP眼忍容性研究を行い、両方の動物モデルにおいて安全であり、かつ忍容性が高いことが分かった。
【0226】
アルビノウサギにおける単回局所眼投与後に、全ての製剤が高い忍容性を有し、点眼後30分にTRSのCmaxを示した。製剤2はTRSの最も低い眼の浸透を示した。最も高いTRS濃度を有していた製剤1については生物学的利用能の利点は認められなかった。イオン性粘膜付着性ポリマー(アルギン酸ナトリウム)および粘度増強剤の両方を有する製剤3は、製剤1および製剤2と比較してインビボにおいてTRSの生物学的利用能を有意に高めた。
【0227】
実施例2
本発明者らは、TRS(式1)および塩化ベンザルコニウムの組み合わせの相乗的防腐活性を評価した。簡単に言えば、様々な濃度の塩化ベンザルコニウムを含む製剤3の成分をベースとする1.0%w/wのTRS製剤を調製した。その後に、これらの溶液をUSP<51>に準拠する防腐効力試験(PET)に供した。
【0228】
0.003%w/wの塩化ベンザルコニウム(15%のラベルクレームに対応する)のみを含んでいたTRS製剤は、PET試験に合格した。さらに、0.001%(5%ラベルクレームに対応する)のさらにより低い濃度の塩化ベンザルコニウムを含むTRS製剤は、固体の相乗的抗菌効果を示した。塩化ベンザルコニウムを含んでいない同様の製剤は、どんな有意な抗菌効果も示さず、これは本発明の防腐組成物中の塩化ベンザルコニウムおよびTRS両方の相乗効果を示している。
【0229】
本発明についてその具体的な実施形態と共に説明してきたが、多くの代替、修飾および変形が当業者には明らかであることは明白である。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲に含まれる全てのそのような代替、修飾および変形を包含することが意図されている。
【0230】
本明細書において言及されている全ての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的に、かつ個々に示されているかのように同程度にそれら全体が参照により本明細書に組み込まれる。また本出願における任意の参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が先行技術として本発明に利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用されている限り、それらは必ずしも限定的なものとして解釈されるべきではない。
【配列表】
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【国際調査報告】