(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】生分解性積層フィルム及びそれから製造された容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240920BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240920BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240920BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240920BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240920BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240920BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20240920BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/40
B32B27/30 Z
B32B27/00 M
C08L67/02
B65D65/40 D
B65D65/46
C08L101/16 ZBP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518200
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2022075722
(87)【国際公開番号】W WO2023052144
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ノルドクビスト, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ドレアック, フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】クロワジエ, エマニュエル
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
3E086AA23
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4J200EA21
(57)【要約】
層構造A/Bを有する生分解性積層フィルムであって、厚さ0.5~7μmの層Aがポリウレタン又はアクリレート接着剤を含み、厚さ5~150μmの層Bが脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルを含み、脂肪族-芳香族ポリエステルが以下のように構成される、生分解性積層フィルム:b1-i)成分b1-i及びb1-iiに基づいて、30~70モル%のC6~C18脂肪族ジカルボン酸;b1-ii)成分b1-i及びb1-iiに基づいて、30~70モル%の芳香族ジカルボン酸;b1-iii)成分b1-i及びb1-iiに基づいて、98~100モル%の1,3-プロパンジオール又は1,4-ブタンジオール;b1-iv)成分b1-i~b1-iiiに基づいて、0~2重量%の鎖延長剤及び/又は分岐剤。基材と生分解性積層フィルムコーティングとを含む、食品及び/又は飲料容器。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層構造A/Bを有する生分解性積層フィルムであって、厚さ0.5~7μmの層Aがポリウレタン又はアクリレート接着剤を含み、厚さ5~150μmの層Bが脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルを含み、前記脂肪族-芳香族ポリエステルが以下のように構成される、生分解性積層フィルム:
b1-i)成分b1-i及びb1-iiに基づいて、30~70モル%のC6~C18脂肪族ジカルボン酸;
b1-ii)成分b1-i及びb1-iiに基づいて、30~70モル%の芳香族ジカルボン酸;
b1-iii)成分b1-i及びb1-iiに基づいて、98~100モル%の1,3-プロパンジオール又は1,4-ブタンジオール;
b1-iv)成分b1-i~b1-iiiに基づいて、0~2重量%の鎖延長剤及び/又は分岐剤。
【請求項2】
層Bが、
b1)60~100重量%の、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート、ポリブチレンアゼレート-co-テレフタレート及びポリブチレンセバケート-co-テレフタレートからなる群から選択される脂肪族-芳香族ポリエステル;
b2)0~15重量%、好ましくは3~12重量%のポリヒドロキシアルカノエート、好ましくはポリ乳酸;
b3)0~25重量%、好ましくは3~20重量%の無機充填剤
から構成される、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
層Aが、水性ポリウレタン分散体から形成され、前記ポリウレタンの少なくとも60重量%が、
a1)少なくとも1種のジイソシアネート;
a2)少なくとも1種のポリエステロール;
a3)ジヒドロキシカルボン酸及びジアミノカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種の二官能性カルボン酸;
から構成され、
前記ポリウレタンのガラス転移温度が20℃未満である、又は前記ポリウレタンの融点が20℃を超えず、10J/G未満の融解エンタルピーを有する、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
層Bが、10~50μmの層厚を有し、層Bの総重量に基づいて、0.05~0.3重量%のエルカ酸アミド、又は好ましくはステアリン酸アミドを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
層構造A/B/C/Bを有する生分解性積層フィルムであって、層A及びBが請求項1~4に記載の意味を有し、層Cが、ポリグリコール酸、エチレンビニルアルコール又は好ましくはポリビニルアルコールからなるバリア層である、生分解性積層フィルム。
【請求項6】
前記バリア層が、個別の層C’/C/C’からなり、層Cがポリビニルアルコールから構成され、C’が接着促進剤層である、請求項5に記載の積層フィルム。
【請求項7】
層構造A/B/C/B’を有する生分解性積層フィルムであって、前記層A、B及びB’が請求項1~4に記載の意味を有し、層B’が10~100μmの層厚を有し、層B’の総重量に基づいて0.2~0.5重量%のエルカ酸アミド、ステアリン酸アミド又は好ましくはベヘン酸アミドを含有する、生分解性積層フィルム。
【請求項8】
生分解性フィルム、金属フィルム、金属化フィルム、セロファン、又は好ましくは紙若しくは厚紙からなる群から選択される基材の複合フィルム積層のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層フィルムの使用。
【請求項9】
基材と生分解性積層フィルムコーティングとを含む食品及び/又は飲料容器であって、前記生分解性積層フィルムが請求項1~7のいずれか一項に記載のものである、食品及び/又は飲料容器。
【請求項10】
前記基材が紙又は厚紙であり、前記容器が内部にコーヒー又はティー製品を含む、請求項9に記載の食品及び/又は飲料容器。
【請求項11】
カプセル、ポッド、パウチ、カートリッジなどとして構成された、請求項9又は10に記載の食品及び/又は飲料容器。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、層構造A/Bを有する生分解性積層フィルムであって、厚さ0.5~7μmの層Aがポリウレタン又はアクリレート接着剤を含み、厚さ5~150μmの層Bが脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルを含み、脂肪族-芳香族ポリエステルが以下のように構成される、生分解性積層フィルムに関する:
b1-i)成分b1-i及びb1-iiに基づいて、30~70モル%のC6~C18ジカルボン酸;
b1-ii)成分b1-i及びb1-iiに基づいて、30~70モル%のテレフタル酸;
b1-iii)成分b1-i及びb1-iiに基づいて、98~100モル%の1,3-プロパンジオール又は1,4-ブタンジオール;
b1-iv)成分b1-i及びb1-iiiに基づいて、0~2重量%の鎖延長剤及び/又は分岐剤。
【0002】
更に、本発明は、特に紙又は厚紙などの基材をコーティングするための、上記積層フィルムの使用に関する。
【0003】
具体的には、本発明は、食品又は飲料容器を構成するための、基材上へのフィルムの使用に関する。容器は、剛性、半剛性又は可撓性であり得る。
【0004】
包装は、特に食品及び飲料産業で使用されている。それらは、多くの場合、好適な接着剤によって一つに接合された複合フィルムからなり、接合されたフィルムの少なくとも1つはポリマーフィルムである。使用後に堆肥化によって処分することができる生分解性複合フィルム包装に対して、高い需要がある。
【0005】
これまでの文献で、様々なアプローチが取られている。
【0006】
国際公開第2010/034712号には、紙を生分解性ポリマーと共に押出コーティングする方法が記載されている。一般に、この方法では、接着剤は使用されない。国際公開第2010/034712号に記載されている方法によって入手可能なコート紙は、紙に対する限られた接着性、機械的特性、バリア特性、及び紙複合材の生分解性から、全ての用途に適しているわけではない。
【0007】
国際公開第2012/013506号は、部分的に工業的に堆肥化可能である複合フィルムの製造のための、水性ポリウレタン分散接着剤の使用を記載している。工業的堆肥化プラントにおける分解は、高湿度下、特定の微生物の存在下、及び約55℃の温度で起こる。可撓性包装への要求は、その生分解性に関して高まり続けており、その結果、現在、家庭内堆肥化可能性に対する要求は、多くの用途に対して高頻度で要求されている。国際公開第2012/013506号に記載されている複合フィルムは、この基準を十分に満たしておらず、また、その機械的特性及びバリア特性に関して全ての可撓性包装用途に適しているわけではない。
【0008】
したがって、本発明の目的は、生分解性に関して改善され、好ましくは家庭内堆肥化可能であり、基材、好ましくは紙に対して良好な接着性を有し、また他の要件も満たす積層フィルムを提供することであった。
【0009】
驚くべきことに、本書の最初に記載された積層フィルムは、これらの基準を満たす。
【0010】
本発明を以下により詳細に説明する。
【0011】
層Aは、接着剤層と呼ぶこともでき、層Bと基材との間の接合をもたらす。層Aは、0.5~7μmの厚さを有し、ポリウレタン又はアクリレート接着剤を含有する。
【0012】
好ましくは、層A中の接着剤は、国際公開第2012/013506号に詳細に記載されているように、ポリマー結合剤として水中に分散された少なくとも1種のポリウレタンと、任意選択で充填剤、増粘剤、消泡剤などの添加剤とから本質的になる。明示的に参照されている国際公開第2012/013506号に記載されているポリウレタン接着剤の必須の特徴を以下に列挙する。
【0013】
ポリマー結合剤は、好ましくは分散体として水中に存在し、又は水と好ましくは150℃(1バール)未満の沸点を有する水溶性有機溶媒との混合物中にも存在する。水は、単一溶媒として特に好ましい。水又は他の溶媒は、接着剤の組成物の重量データに含まれない。
【0014】
好ましくは、ポリウレタン分散接着剤は生分解性である。本出願の意味の範囲内の生分解性は、例えば、使用材料の総炭素含有量に対するCO2の形態で放出されるガス状炭素の比率が、ISO 14855(2005)規格に従って測定して、20日後に少なくとも30%、好ましくは少なくとも60%、又は少なくとも80%である場合に得られる。
【0015】
ポリウレタンは、好ましくは、一方では主にポリイソシアネート、特にジイソシアネートを含み、他方では反応物としてポリエステルジオール及び二官能性カルボン酸を含む。好ましくは、ポリウレタンは、少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、非常に特に好ましくは少なくとも80重量%のジイソシアネート、ポリエステルジオール及び二官能性カルボン酸から構成される。
【0016】
ポリウレタンは、非晶質であっても半結晶性であってもよい。ポリウレタンが半結晶性である場合、融点は、好ましくは80℃未満である。好ましくは、ポリウレタンは、この目的のために、ポリウレタンに基づいて、10重量%超、50重量%超又は少なくとも80重量%の量でポリエステルジオールを含有する。特に適しているのは、商品名Epotal(登録商標)で市販されているBASF SEのポリウレタン分散体である。
【0017】
全体として、ポリウレタンは、好ましくは以下から構成される:
a)ジイソシアネート、
b)ジオールであって、そのうち
b1)ジオール(b)の総量に基づいて、10~100モル%がポリエステルジオールであり、500~5000g/モルの分子量を有する、
b2)ジオール(b)の総量に基づいて、0~90モル%が、60~500g/モルの分子量を有する、ジオール、
c)ジヒドロキシカルボン酸及びジアミノカルボン酸から選択される少なくとも1種の二官能性カルボン酸、
d)任意選択で、アルコール性ヒドロキシル基、第一級若しくは第二級アミノ基、又はイソシアネート基である反応性基を含有する、モノマー(a)~(c)とは異なる更なる多価化合物、並びに
e)任意選択で、アルコール性ヒドロキシル基、第一級若しくは第二級アミノ基、又はイソシアネート基である反応性基を有する、モノマー(a)~(d)とは異なる一価化合物。
【0018】
特に、国際出願PCT/EP2021/054570号に記載されているような層A中の家庭内堆肥化可能な接着剤が好ましい。本明細書で明示的に参照されている国際出願PCT/EP2021/054570号に記載されているポリウレタン接着剤の必須の特徴を以下に列挙する。
【0019】
国際出願PCT/EP2021/054570号の水性ポリウレタン分散接着剤は、家庭内堆肥化条件(25±5℃)下で生分解性である複合フィルムを作製するのに適しており、少なくとも1つの層Bと第2の基材とは、ポリウレタン分散接着剤Aを使用して接合されており、
基材の少なくとも1つが、家庭内堆肥化条件下で生分解性であるポリマーフィルムであり、ポリウレタンの少なくとも60重量%が、
(a)少なくとも1種のジイソシアネート
(b)少なくとも1種のポリエステルジオール、並びに
(c)ジヒドロキシカルボン酸及びジアミノカルボン酸から選択される少なくとも1種の二官能性カルボン酸;
からなり、
ポリウレタンが、20℃未満のガラス転移温度を有しており、20℃を超える融点を有していないか、又は10J/g未満の融解エンタルピーで20℃を超える融点を有するか、のいずれかであり、
好ましくは、ポリウレタン接着剤の層Aは、家庭内堆肥化条件下、CO2及び水の中で、360日以内に90重量%超まで分解し、好ましくは、ポリウレタン接着剤の層Aは家庭内堆肥化可能であり、
好ましくは、上記から製造される積層フィルムA/Bは、25±5℃で最大180日の期間の好気性堆肥化後に、材料の当初の乾燥重量の多くとも10%が>2mmのふるい画分に存在する場合、家庭内堆肥化条件下で生分解性である。
【0020】
好ましくは、ポリウレタン接着剤、層B、及び/若しくは基材を含むフィルム、並びに/又は複合フィルムは、家庭内堆肥化可能である。
【0021】
特に適しているのは、商品名Epotal(登録商標)Ecoで市販されているBASF SE製のポリウレタン分散体である。
【0022】
本発明による層Bは、5~150μmの層厚を有し、脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルを含み、脂肪族-芳香族ポリエステルは、以下のように構成される:
b1-i)成分b1-i及びb1-iiに基づいて、30~70モル%のC6~C18ジカルボン酸;
b1-ii)成分b1-i及びb1-iiに基づいて、30~70モル%のテレフタル酸;
b1-iii)成分b1-i及びb1-iiに基づいて、98~100モル%の1,3-プロパンジオール又は1,4-ブタンジオール;
b1-iv)成分b1-i及びb1-iiiに基づいて、0~2重量%の鎖延長剤及び/又は分岐剤。
【0023】
脂肪族ポリエステルは、例えば、本明細書で明示的に参照される国際公開第2010/034711号に更に詳細に記載されているポリエステルを意味すると理解される。
【0024】
国際公開第2010/034711号のポリエステル(i)は、概して以下のように構造化される:
i-a)成分i-a~i-bに基づいて、80~100モル%のコハク酸;
i-b)成分i-a~i-bに基づいて、0~20モル%の1種以上のC6~C20ジカルボン酸;
i-c)成分i-a~i-bに基づいて、99~102モル%、好ましくは99~100モル%の1,3-プロパンジオール又は1,4-ブタンジオール;
i-d)成分i-a~i-cに基づいて、0~1重量%の鎖延長剤又は分岐;
【0025】
国際公開第2010/034711号のポリエステルiの合成は、好ましくは、個別の成分の直接重縮合反応で行われる。この場合、ジカルボン酸誘導体を、エステル交換触媒の存在下でジオールと直接反応させて、高分子量の重縮合物を形成する。他方で、コポリエステルは、ジオールの存在下でのポリブチレンサクシネート(PBS)とC6~C20ジカルボン酸とのエステル交換によっても得ることができる。亜鉛触媒、アルミニウム触媒、特にチタン触媒が、触媒として一般的に使用される。テトラ(イソプロピル)オルトチタネートなどのチタン触媒、特にテトライソブトキシチタネート(TBOT)は、文献で頻繁に使用されているジオクタン酸スズなどのスズ、アンチモン、コバルト及び鉛触媒と比べて、生成物中に残留する残留量の触媒、又は触媒の下流生成物の毒性が低いという利点を有する。生分解性ポリエステルは環境中に直接放出されるので、この状況はそれらの場合に特に重要である。
【0026】
更に、言及されたポリエステルは、特開2008-45117号及び欧州特許出願公開第488617(A)号に記載されている方法によって調製することができる。最初に成分a~cを反応させて50~100mL/g、好ましくは60~80mL/gのVZを有するプレポリエステルを形成し、次いでこれを、鎖延長反応において、鎖延長剤i-d、例えばジイソシアネート又はエポキシド含有ポリメタクリレートと反応させて、100~450mL/g、好ましくは150~300mL/gのVZを有するポリエステルiを形成することが有利であることが判明した。
【0027】
使用される酸成分i-aは、酸成分a及びbに基づいて、80~100モル%、好ましくは90~99モル%、より好ましくは92~98モル%のコハク酸である。コハク酸は、石油化学的手段によって、好ましくは、例えば欧州特許出願公開第2185682(A)号に記載されているような再生可能原料から、入手可能である。欧州特許出願公開第2185682(A)号は、パスツレラ(Pasteurellaceae)目の微生物を用いて、異なる炭水化物から出発してコハク酸と1,4-ブタンジオールとを製造するための生物工学的プロセスを開示している。
【0028】
酸成分i-bは、酸成分i-a及びi-bに基づいて、0~20モル%、好ましくは1~10モル%、より好ましくは2~8モル%で使用される。
【0029】
C6~C20ジカルボン酸i-bは、特にアジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、及び/又はC18ジカルボン酸を意味する。コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、及び/又はブラシル酸が好ましい。上記の酸は、再生可能原料から入手可能である。例えば、セバシン酸はヒマシ油から入手可能である。このようなポリエステルは、優れた生分解挙動を特徴とする[文献:Polym.Degr.Stab.2004,85,855-863]。
【0030】
ジカルボン酸i-a及びi-bは、遊離酸として、又はエステル形成誘導体の形態のいずれかで、使用できる。特に、ジ-C1~C6-アルキルエステル、例えばジメチル、ジエチル、ジ-n-プロピル、ジ-イソプロピル、ジ-n-ブチル、ジ-イソブチル、ジ-t-ブチル、ジ-n-ペンチル、ジ-イソペンチル、又はジ-n-ヘキシルエステルをエステル形成誘導体として挙げることができる。ジカルボン酸の無水物も使用できる。ジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体は、個別に又は混合物として使用できる。
【0031】
ジオールである1,3-プロパンジオール及び1,4-ブタンジオールも、再生可能原料から入手可能である。2種のジオールの混合物も使用できる。形成されるコポリマーの溶融温度がより高く、結晶化により優れることから、1,4-ブタンジオールがジオールとして好ましい。
【0032】
通常、重合開始時に、ジオール(成分i-c)は、ジオール対二酸の比が1.0:1~2.5:1、好ましくは1.3:1~2.2:1となるように酸(成分i-a及びi-b)に対して調整される。過剰のジオール量を重合中に取り出して、重合終了時にほぼ等モル比が得られるようにする。ほぼ等モルとは、0.98~1.00の二酸/ジオール比を意味する。
【0033】
一実施形態では、成分i-a~i-bの総重量に基づいて、0~1重量%、好ましくは0.1~0.9重量%、より好ましくは0.1~0.8重量%の分岐剤i-d及び/又は鎖延長剤i-d’が使用され、多官能性イソシアネート、イソシアヌレート、オキサゾリン、無水マレイン酸などのカルボン酸無水物、エポキシド(特にエポキシド含有ポリ(メタ)アクリレート)、少なくとも三官能性のアルコール又は少なくとも三官能性のカルボン酸からなる群から選択される。一般に、分岐剤は使用されず、鎖延長剤のみが使用される。
【0034】
好適な二官能性鎖延長剤としては、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート若しくはキシリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はメチレン-ビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)が挙げられる。イソホロンジイソシアネートと、特に、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートとが特に好ましい。
【0035】
脂肪族ポリエステルiは、特に、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート-co-アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート-co-セバケート(PBSSe)、ポリブチレンサクシネート-co-アゼレート(PBSAz)、又はポリブチレンサクシネート-co-ブラシレート(PBSBr)などのポリエステルを指す。脂肪族ポリエステルPBS及びPBSAは、例えば、BioPBS(登録商標)の名称でMitsubishiによって市販されている。より最近の開発は、国際公開第2010/034711号に記載されている。
【0036】
ポリエステルiは、概ね、5000~100000g/モルの範囲、特に10000~75000g/モルの範囲、好ましくは15000~50000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)、30000~300000g/モル、好ましくは60000~200000g/モルの重量平均分子量(Mw)、及び1~6、好ましくは2~4のMw/Mn比を有する。粘度数は30~450g/mL、好ましくは100~400g/mLの範囲である(o-ジクロロベンゼン/フェノール(重量比50/50)中で測定)。融点は85~130℃の範囲、好ましくは95~120℃の範囲である。DIN EN 1133-1によるMVR範囲は、8~50cm3/10分、特に15~40cm3/10分(190℃、2.16kg)の範囲である。
【0037】
層Bの脂肪族ポリエステルとしてはまた、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート(P(3HB)-co-P(3HV))、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート(P(3HB)-co-P(4HB))及びポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート(P(3HB)-co-P(3HH))などのポリヒドロキシアルカノエートが挙げられ、特にポリ乳酸(PLA)が使用される。
【0038】
以下の特性プロファイルを有するポリ乳酸b2が好ましい:
メルトボリュームレート(ISO 1133-1 ENによる190℃及び2.16kgにおけるMVRが0.5~100cm3/10分、特に5~50cm3/10分)
240℃未満の融点;
55℃を超えるガラス転移点(Tg)
1000ppm未満の含水量
0.3%未満の残留モノマー含有量(ラクチド)
80000ダルトンを超える分子量。
【0039】
好ましいポリ乳酸は、Ingeo(登録商標)6201D、6202D、6251D、3051D、及び3251D、特に4043D及び4044DなどのNatureWorks製の結晶性ポリ乳酸型、並びにLuminy(登録商標)L175及びLX175 CorbionなどのTotal Corbion製のポリ乳酸、並びにRevode(登録商標)190又は110などのHisun製のポリ乳酸である。Luminy(登録商標)L175及びLX175 CorbionなどのTotal Corbion、並びにRevode(登録商標)190又は110などのHisun製のポリ乳酸だけでなく、NatureWorks製のIngeo(登録商標)4060Dなどの非晶質ポリ乳酸グレードも好適となり得る。
【0040】
層B中の脂肪族-芳香族ポリエステルb1は、例えば、明示的に参照される国際公開第96/15173~15176号又は国際公開第98/12242号に記載されているような、直鎖の鎖延長されたポリエステル、及び任意選択で分岐鎖の鎖延長されたポリエステルであると理解される。異なる部分芳香族ポリエステルのブレンドも考慮される。興味深い最近の開発は、再生可能原料をベースとする(国際公開第2010/034689号を参照されたい)。特に、ポリエステルb1としては、ecoflex(登録商標)(BASF SE)などの製品が挙げられる。
【0041】
好ましいポリエステルb1としては、必須成分として以下を含有するポリエステルが挙げられる。
b1-i)成分b1-i)及びb1-ii)に基づいて、30~70モル%、好ましくは40~60モル%、より好ましくは50~60モル%の、好ましくは以下に記載される脂肪族ジカルボン酸又はその混合物:アジピン酸、特にアゼライン酸、セバシン酸及びブラシル酸、
b1-ii)成分b1-i)及びb1-ii)に基づいて、30~70モル%、好ましくは40~60モル%、より好ましくは40~50モル%の、好ましくは以下に記載される芳香族ジカルボン酸又はその混合物:テレフタル酸、
b1-iii)成分b1-i)及びb1-ii)に基づいて、98~100モル%の1,4-ブタンジオール及び1,3-プロパンジオール;並びに
b1-iv)成分b1-i)~b1-iii)に基づいて、0~2重量%、好ましくは0.1~1重量%の鎖延長剤、特に二官能性又は多官能性イソシアネート、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート、及び任意選択で分岐剤、好ましくはトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール及び特にグリセロール。
【0042】
脂肪族二酸及び対応する誘導体b1-iは、概ね、6~18個の炭素原子、好ましくは9~14個の炭素原子を有するものである。それらは、直鎖及び分岐鎖のいずれでもあり得る。
【0043】
例は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸及びスベリン酸(コルク酸)である。ジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体は、個別に又はこれらの2種以上の混合物として使用できる。
【0044】
好ましくは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、又はこれらのそれぞれのエステル形成誘導体若しくはこれらの混合物が使用される。アゼライン酸若しくはセバシン酸又はこれらのそれぞれのエステル形成誘導体若しくはこれらの混合物が特に好ましい。
【0045】
特に、以下の脂肪族-芳香族ポリエステルが好ましい:ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(PBAT)、ポリブチレンアジペート-co-アゼレート-テレフタレート(PBAAzT)、ポリブチレンアジペート-co-セバケート-テレフタレート(PBASeT)、ポリブチレンアゼレート-co-テレフタレート(PBAzT)及びポリブチレンセバケート-co-テレフタレート(PBSEt)、並びにこれらのポリエステルの混合物。
【0046】
オーストラリア規格AS5810-2010及びISO14855-1(2012)による家庭内堆肥化可能性がよい良好であることから、ポリブチレンアジペート-co-アゼレート-テレフタレート(PBAAzT)、ポリブチレンアジペート-co-セバケート-テレフタレート(PBASeT)、ポリブチレンアゼレート-co-テレフタレート(PBAzT)及びポリブチレンセバケート-co-テレフタレート(PBSeT)、並びにポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(PBAT)とポリブチレンアゼレート-co-テレフタレート(PBAzT)及びポリブチレンセバケート-co-テレフタレート(PBSeT)とのブレンドが特に好ましい。
【0047】
芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体b1-iiは、個別に又はこれらの2種以上の混合物として使用できる。テレフタル酸又はそのエステル形成誘導体、例えばジメチルテレフタレートが特に好ましい。
【0048】
ジオールb1-iiiの1,4-ブタンジオール及び1,3-プロパンジオールは、再生可能原料として入手可能である。上記ジオールの混合物も使用できる。
【0049】
一般に、ポリエステルの総重量に基づいて0~1重量%、好ましくは0.1~1.0重量%、より好ましくは0.1~0.3重量%の分岐剤、及び/又はポリエステルの総重量に基づいて0~1重量%、好ましくは0.1~1.0重量%の鎖延長剤(b1-vi)が使用される。好ましくは、二官能性又は多官能性イソシアネート、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートが鎖延長剤として使用され、好ましくはトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールなどのポリオール、特にグリセロールが分岐剤として使用される。
【0050】
ポリエステルb1は、概ね、5000~100000g/モルの範囲、特に10000~75000g/モルの範囲、好ましくは15000~38000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)、30000~300000g/モル、好ましくは60000~200000g/モルの重量平均分子量(Mw)、及び1~6、好ましくは2~4のMw/Mn比を有する。粘度数は、50~450g/mL、好ましくは80~250g/mLの範囲である(o-ジクロロベンゼン/フェノール(重量比50/50)中で測定)。融点は、85~15℃の範囲、好ましくは95~140℃の範囲である。
【0051】
ポリエステルb1のEN ISO1133-1 EN(190℃、2.16kg荷重)によるMVR(メルトボリュームレート)は、概ね0.5~20cm3/10分、好ましくは5~15cm3/10分である。DIN EN12634による酸価は、概ね0.01~1.2mgKOH/g、好ましくは0.01~1.0mgKOH/g、特に好ましくは0.01~0.7mgKOH/gである。
【0052】
一般に、層Bの総重量に基づいて、少なくとも1種の無機充填剤は、0~25重量%、特に3~20重量%の、チョーク、グラファイト、石膏、伝導性カーボンブラック、酸化鉄、硫酸カルシウム、ドロマイト、カオリン、二酸化ケイ素(石英)、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、ケイ酸塩、ワラストナイト、雲母、モンモリロナイト及びタルクからなる群から選択される。好ましい無機充填剤は、シリカ、カオリン及び硫酸カルシウムであり、特に好ましいのは、炭酸カルシウム及びタルクである。
【0053】
層Bの好ましい実施形態は、以下を含む:
b1)ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート、ポリブチレンアゼレート-co-テレフタレート及びポリブチレンセバケート-co-テレフタレートからなる群から選択される60~100重量%の脂肪族-芳香族ポリエステル;
b2)0~15重量%、好ましくは3~12重量%のポリヒドロキシアルカノエート、好ましくはポリ乳酸;
b3)0~25重量%、好ましくは3~20重量%の無機充填剤。
【0054】
一実施形態において、層Bは、潤滑剤も剥離剤も全く含有しない。この実施形態は、最大150μmの層厚で層Aとの非常に良好な適合性を示し、それによって、基材、例えば特に紙又は板紙への積層フィルムの接着は非常に良好になる。これは、フィルムを紙又は板紙から再び剥がそうとすると、繊維の断裂が起こるという事実によって示される。
【0055】
更なる実施形態において、層Bは、層Bの総重量に基づいて、0.05~0.3重量%の潤滑剤又は剥離剤、例えば、エルカ酸アミド、又は好ましくはステアリン酸アミドを含有する。この実施形態は、最大50μmの層厚で層Aと非常に良好な適合性を示し、それによって、基材、例えば特に紙又は板紙への積層フィルムの接着は非常に良好になる。これは、フィルムを紙又は板紙から再び剥がそうとすると、繊維の断裂が起こるという事実によって示される。一方、ベヘン酸アミドなどの潤滑剤又は剥離剤を層Bに使用した場合、層Aとの適合性が低いことが観察される。
【0056】
更に、本発明による成分i~vの化合物は、当業者に公知の他の添加剤を含有してもよい。例えば、プラスチック技術において通例の添加剤、例えば安定化剤;既に上述した無機充填剤b3又は更に結晶性ポリ乳酸などの核形成剤;ステアリン酸塩(特にステアリン酸カルシウム)などの離型剤;クエン酸エステル(特にアセチルトリブチルシトレート)、トリアセチルグリセロール又はエチレングリコール誘導体といったグリセリン酸エステルなどの可塑剤、ポリソルベート、パルミテート又はラウレートなどの界面活性剤;帯電防止剤、UV吸収剤;UV安定化剤;防曇剤、顔料又は好ましくはFa.BASF SEの生分解性染料Sicoversal(登録商標)である。添加剤は、層Bに基づいて、0~2重量%、特に0.1~2重量%の濃度で使用される。可塑剤は、本発明による層B中に0.1~10重量%で存在してもよい。
【0057】
食品産業における食品及び/又は飲料の大部分は、酸素バリア又はアロマバリアに対して高い要件を課している。ここで、追加のバリア層Cを有する層状構造が有利であることが証明された。好適な層構造は、例えば、A/B/C/Bであり、層A及びBは前述の意味を有し、層Cはポリグリコール酸(PGA)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、又は好ましくはポリビニルアルコール(PVOH)からなるバリア層である。
【0058】
バリア層Cは、通常、2~10μmの厚さを有し、好ましくはポリビニルアルコールからなる。好適なPVOHは、例えば、三菱ケミカル製のGポリマー、特にGポリマーBVE8049である。PVOHはバイオポリマー層Bに十分に接着しないことから、バリア層は、好ましくは個別の層C’/C/C’から構成され、層C’は接着促進剤層を表す。好適な接着促進剤は、例えば、三菱ケミカル製のコポリマーBTR-8002Pである。接着促進剤層は、通常、2~6μmの厚さを有する。この場合、積層フィルムは、例えば、A/B/C’/C/C’/B又はB’の全体的層構造を有する。
【0059】
別の好適な層構造は、A/B/C/B’であり、層A、B及びCは上記の意味を有し、層B’は10~100μmの層厚を有し、層Bについて述べた成分に加えて、層B’の総重量に基づいて、0.2~0.5重量%のエルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、又は好ましくはベヘン酸アミドを潤滑剤又は離型剤として含有する。
【0060】
本発明による積層フィルムは、生分解性フィルム、金属フィルム、金属化フィルム、セロファン又は好ましくは紙製品の群から選択される基材の複合フィルム積層のために使用される。
【0061】
本発明の目的で、「紙製品」という用語は、全てのタイプの紙及び板紙を含む。
【0062】
上記紙製品の製造に適した繊維としては、全ての一般的に使用されるタイプ、例えば、メカニカルパルプ、漂白及び未漂白化学パルプ、任意の一年生作物及び古紙(コート又は非コートのいずれかの損紙の形態を含む)からの紙パルプが含まれる。上記繊維は、パルプを製造するために単独で又はこれらの任意の混合物としてのいずれで使用されてもよく、当該パルプから紙製品が製造される。例えば、木材パルプという用語は、砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、圧縮木材パルプ、セミケミカルパルプ、高収率ケミカルパルプ、及びリファイナーパルプ(RMP)を含む。例示的なケミカルパルプ(化学パルプ)としては、硫酸パルプ、亜硫酸(サルファイト)パルプ、及びソーダパルプが挙げられる。パルプ製造に好適な一年生植物の例としては、イネ、コムギ、サトウキビ、及びケナフが挙げられる。
【0063】
各場合において、紙乾燥物質の固形分に基づいて、0.01~3重量%、好ましくは0.05~1重量%の量のサイジング剤が、通常はパルプに添加され、この量は仕上げる紙の所望のサイジング度に従って変動する。紙はまた、他の物質、例えば、デンプン、顔料、染料、蛍光増白剤、殺生物剤、紙力増強剤、定着剤、消泡剤、保留剤及び/又は脱水助剤を含有してもよい。
【0064】
製造される複合フィルムは、好ましくは以下の構造を有する:
(i)30~600g/m2、好ましくは40~400g/m2、より好ましくは50~150g/m2の坪量を有する紙、
ii)5.5~300μm、好ましくは10~150μm、特に好ましくは15~100μmの全厚を有する本発明による積層フィルム。
【0065】
紙層には、例えば、白色又は褐色のクラフトライナー、パルプ、古紙、段ボール又はスクリーニングといった多種多様な材料を使用することができる。
【0066】
紙-フィルム複合体の全厚は、通常は31~1000g/m2である。80~500μmの紙-フィルム複合体は、好ましくは、積層によって製造することができ、50~300μmの紙-フィルム複合体は、特に好ましくは押出コーティングによって製造することができる。
【0067】
本発明による積層されたフィルム内で、基材(例えば、紙)は、鉱油及び他のタイプのの油に対して保護され、並びに油脂及び水分に対して保護され、これは積層フィルムが対応するバリア効果を発揮するからである。他方、積層されたフィルムが食品包装に使用される場合、食品製品は、例えば古紙中に存在する鉱油及び無機物質から保護され、これは積層フィルムがこのバリア効果を発揮するからである。更に、積層されたフィルムは、当該フィルム自体、並びに紙、厚紙、セロファン及び金属にシールすることができるので、例えば、コーヒーカップ、飲料カートン又は冷凍製品用カートンの製造を可能にする。食品及び/又は飲料容器に特に適しているのは、カプセル、ポッド、パウチ、カートリッジなどであり、好ましくはコーヒー及び/又はティーを入れる。
【0068】
複合フィルムは、乾燥食品用、例えばコーヒー、ティー、スープ粉末、ソース粉末用紙袋;液体用;管状積層体;アイスクリーム、菓子(例えばチョコレート及びシリアルバー)、及び紙テープ用の紙製手提げ袋、紙積層材及び共押出物;紙コップ、ヨーグルトポット;調理済み食品用トレイ;包装された板紙(缶、ドラム)、外装用の湿潤強力カートン(ワインボトル、食料品);コーティングされた板紙製の果物箱;ファストフードプレート;ステープルトレイ;飲料カートン、並びに洗剤及び洗浄製品などの液体用カートン、冷凍製品用カートン、アイスクリーム包装(例えば、アイスクリームカップ、包装材料)、例えばアイスクリームカップ、円錐形アイスクリームコーン用包装材料);紙ラベル;フラワーポット及びプラントポットの製造に特に適している。
【0069】
本発明に従って製造された複合フィルムは、包装、特に食品包装の製造に特に適している。
【0070】
したがって、本発明は、生分解性である、又は好ましくは家庭内堆肥化条件下で生分解性である、複合フィルムの製造における、本明細書に記載の積層フィルムの使用を提供し、複合フィルムは家庭内堆肥化可能な可撓性包装の一部である。
【0071】
本発明の利点は、本発明に従って使用される積層フィルムが、基材及び層Bなどの異なる物質の互いに良好な接着接合を可能にし、接合された複合体に高い強度を与えることである。更に、本発明に従って製造された積層されたフィルムは、良好な生分解性、特に家庭内堆肥化可能性を示す。
【0072】
本発明の目的で、特徴的な「生分解性」は、物質又は物質の混合物について、この物質又は物質の混合物がDIN EN13432に従って180日後に少なくとも90%の生分解度の百分率を有する場合に満たされる。
【0073】
概して、生分解により、妥当かつ検出可能な時間で分解するポリエステル(ブレンド)を生じる。分解は、酵素的、加水分解的、酸化的、及び/又はUV放射線などの電磁放射線への曝露によるものであってもよく、通常は、主に、細菌、酵母、真菌、及び藻類などの微生物の作用によって引き起こされる。生分解性は、例えば、ポリエステルを堆肥と混合し、それをある一定時間貯蔵することによって定量できる。例えば、DIN EN13432(ISO14855を参照)によれば、堆肥化中にCO2フリーの空気を成熟堆肥内に流し、これを規定の温度プログラムに供する。ここで、生分解性は、試料の正味のCO2放出量(試料を含まない堆肥によるCO2放出量を差し引いた後の量)の、試料の最大CO2放出量(試料の炭素含有量から計算される量)に対する比によって、生分解度の百分率として定義される。生分解性ポリエステル(ブレンド)は、通常、堆肥化のわずか数日後に、真菌増殖、亀裂、及び点食などの明らかな分解の徴候を示す。
【0074】
生分解性を測定する他の方法は、例えば、ASTM D 5338及びASTM D 6400-4に記載されている。
【0075】
本発明は、好ましくは、家庭内堆肥化条件(25±5℃)下で生分解性である積層フィルム、又はこれらの積層フィルムを含む積層されたフィルムを提供する。家庭内堆肥化条件とは、積層フィルム又は複合フィルムが、CO2及び水中で360日以内に90重量%超まで分解されることを意味する。
【0076】
家庭内堆肥化可能性は、オーストラリア規格AS 5810-2010又はフランス規格NFT 51-800又はISO 14855-1(2012)「Determination of ultimate aerobic biodegradability of plastics under controlled composting conditions-Method by analysis of evolved carbon dioxide」に従って、ISO規格14855-1(2012)に記載されている58℃の温度の代わりに、家庭内堆肥化条件をシミュレートするための周囲温度(28±2℃)において試験される。
【0077】
特徴:
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(ASTM D 3418-08、第2の加熱曲線の「中点温度」、加熱速度20K/分)によって求めた。
【0078】
融点及び融解エンタルピーは、DIN 53765(1994)(融点=ピーク温度)に従って、ポリウレタンフィルムを120℃に加熱した後に20K/分で加熱し、20K/分で23℃まで冷却し、そこで20時間アニーリングすることによって求める。
【0079】
原材料
層A)の成分
a-1)BASF SE製のEpotal(登録商標)Eco 3702、水性ポリウレタン分散体(国際出願PCT/EP2021/054570号参照)
a-2)BASF SE製のEpotal(登録商標)P 100eco、水性ポリウレタン分散体(国際公開2010/034712号参照)
【0080】
層B)の成分
成分b1):
b1-1)ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート:BASF SE製のecoflex(登録商標)F C1200(2.5~4.5cm3/10分(190℃、2.16kg)のMVR)
b1-2)ポリブチレンセバケート-co-テレフタレート:BASF SE製のecoflex(登録商標)FS C2200(3~5cm3/10分(190℃、5kg)のMVR)
【0081】
成分b2)
b2-1)ポリ乳酸:(PLA)NatureWorks製のIngeo(登録商標)4044 D(1.5~3.5cm3/10分(190℃、2.16kg)のMVR)
【0082】
成分b3)
b3-1)company Elementis製のPlustalc H05C
b3-2)company Omya製の炭酸カルシウム
【0083】
成分b4)
b4-1)エルカ酸アミド:Croda International製のCrodamide(商標)ER
b4-2)company Croda製のステアリン酸アミドCrodamide SRV
b4-3)company Croda製のベヘン酸アミドCrodamide BR
【0084】
成分b5)
b5-1)Joncryl(登録商標)ADR 4468、BASF SE製のグリシジルメタクリレート
【0085】
層C)の成分
c-1(C’)三菱ケミカル製のBTR-8002P接着促進剤
c-2 三菱ケミカル製のGポリマーBVE8049 PvOH
【0086】
層Bの配合
表1に列挙した化合物は、Coperion MC 40押出機で製造した。出口温度は250℃に設定した。次いで、押出物を水中でペレット化した。ペレット化に続いて、ペレットを60℃で乾燥した。
【0087】
【0088】
【表2】
*基材(紙)への積層フィルムの接着は以下のように求めた。
【0089】
ベースフィルムBを、コロナ前処理側を上にして実験用コーティングテーブル上に固定し、試験する接着剤を、スキージーを使用してフィルム上に直接コーティングした。接着剤Aを熱風送風機で2分間乾燥させ、次いで、積層フィルムをハンドローラーで適用し、ローラー積層台において、50gsm~130gsmの異なる厚さの紙上に、70℃、5m/分のローラー速度及び6.5バールの積層圧力でプレスした。次いで、切断テンプレートを使用して、積層体を15ミリメートル幅のストリップに切断し、様々な貯蔵サイクルに供した。貯蔵後、積層ストリップを引張試験機上で引き離し、それを行うのに要した力を記録した。試験は、引張試験機上で、90度の角度、100mm/分の引き離し速度で実施した。試験ストリップを片側で分割し、ここで緩んだ端部の一方を引張試験機の上部クランプに固定し、他方を下部クランプに固定し、試験を開始した。
表2の最後の欄に示された評点(+)は、繊維の断裂が観察されたことを意味する。
最後の欄に示された評点(-)は、繊維の断裂が観察されなかったことを意味する。
【0090】
表2に示された試験は、層中に剥離剤b4を含有しない積層フィルムが、最大約150μmの積層フィルムの全層厚で、基材紙への非常に良好な接着を示すことを示す。エルカ酸アミドb4-1又はステアリン酸アミドb4-2を剥離剤として最大0.3重量%の濃度で使用する場合、最大約50~60μmの積層フィルムの全層厚で、基材紙への非常に良好な接着を達成することができる。一方、ベヘン酸アミドb4-3を剥離剤として0.2~0.3重量%の濃度で使用した場合、紙への接着は、17μmの積層フィルム厚さで既に不十分である。
【0091】
家庭内堆肥化試験
家庭内堆肥化可能性は、フランス規格NFT 51-800又はISO 14855-1(2012)「Determination of ultimate aerobic biodegradability of plastics under controlled composting conditions-Method by analysis of evolved carbon dioxide」に従って、記載された58℃の温度の代わりに、家庭内堆肥化条件をシミュレートするための周囲温度(28±2℃)において試験される。
【0092】
実施例4及び12の約60μm厚の積層フィルムの家庭内堆肥化可能性を上記条件下で調査した。フィルムの完全な(>90%)分解が、それぞれ116日後及び157日後に観察された。したがって、これらのフィルムは、オーストラリア規格AS 5810-2010及びISO 14855-1(2012)による家庭内堆肥化可能性の基準を満たす。したがって、層構造A/B、及び層Bの組成:I、V~VIII(表1参照)を有する、より薄いフィルムも家庭内堆肥化可能であると想定できる。
【国際調査報告】