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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ターボ分子真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F04D19/04 E
F04D19/04 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518275
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2022076154
(87)【国際公開番号】W WO2023046712
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】2110064
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511148259
【氏名又は名称】ファイファー バキユーム
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピエール‐エマニュエル カヴァレック
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ ニール
(72)【発明者】
【氏名】ロマン クリアド
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ ロジェ
(72)【発明者】
【氏名】エリク デュラク
【テーマコード(参考)】
3H131
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131BA09
3H131CA31
3H131CA35
3H131CA41
(57)【要約】
【課題】ターボ分子真空ポンプのロータの完全性を損なうことなく、反応生成物の蒸発又は分解を行うことのできる加熱手段を設ける。
【解決手段】ロータ(3)のホルベックスカート(13)に面する前記ステータ(2)の高圧ステータ部(19)に配置された螺旋溝(14)を有するターボ分子真空ポンプ(1)において、少なくとも1つの保持部(20a)と、通電した際のジュール効果を利用する加熱部分(20b)とを有する少なくとも1つの加熱ロッド(20)を備え、前記保持部(20a)は、前記加熱部分(20b)への給電線用のシースを形成しており、少なくとも1つの接続ダクト(21)が、前記保持部(20a)の通過用に、前記高圧ステータ部(19)内に少なくとも部分的に配置されており、前記加熱部分(20b)は、前記螺旋溝(14)に沿って収容されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(2)と、前記ステータ(2)内で回転するように構成されたロータ(3)とを備え、前記ロータ(3)のホルベックスカート(13)に面する前記ステータ(2)の高圧ステータ部(19)に配置された螺旋溝(14)を有するターボ分子真空ポンプ(1)において、
少なくとも1つの保持部(20a)と、加熱ロッド(20)に電力が供給されたときにジュール効果を利用する加熱部分(20b)とを有する少なくとも1つの前記加熱ロッド(20)を備えており、
前記保持部(20a)は前記加熱部分(20b)への給電線のシースを形成し、
前記高圧ステータ部(19)内に、前記保持部(20a)を通過させるための少なくとも1つの接続ダクト(21)が少なくとも部分的に配置されており、
前記加熱部分(20b)は、前記高圧ステータ部(19)の少なくとも1つの前記螺旋溝(14)に沿って収容されていることを特徴とするターボ分子真空ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の真空ポンプ(1)において、
前記高圧ステータ部(19)の複数の前記螺旋溝(14)と少なくとも同数の前記加熱ロッド(20)を備え、
前記各加熱部分(20b)が、夫々関連する前記螺旋溝(14)内に収容されていることを特徴とするターボ分子真空ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載の真空ポンプ(1)において、
前記加熱部分(20b)は、少なくとも2本の前記螺旋溝(14)に沿って収容されていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載の真空ポンプ(1)において、
前記加熱部分(20b)は、前記高圧ステータ部(19)の前記螺旋溝(14)を越えて、前記高圧ステータ部(19)の出口と前記真空ポンプ(1)の逆流オリフィス(7)の間に位置する環状逆流空間(34)内に、及び/又は前記真空ポンプ(1)のターボ分子ステージ(4)へ延びていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載の真空ポンプ(1)において、
前記加熱部分(20b)を受け入れるためのチャネル(22)が前記螺旋溝(14)の基部に配置されていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項6】
請求項1に記載の真空ポンプ(1)において、
前記加熱ロッド(20)が、前記接続ダクト(21)及び関連する前記螺旋溝(14)の形状に合わせて予備成形されていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項7】
請求項1に記載の真空ポンプ(1)において、
前記ステータ(2)は、前記接続ダクト(21)を閉じて前記保持部(20a)を保持するために、前記接続ダクト(21)が少なくとも部分的に配置される前記高圧ステータ部(19)の端部に固定された、第1の環状固定板(23)を備えていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項8】
請求項7に記載の真空ポンプ(1)において、
前記ステータ(2)は、前記加熱部分(20b)又は前記保持部(20a)の端部を保持するために、前記高圧ステータ部(19)の反対側の端部に固定された、第2の環状固定板(24)を備えていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項9】
請求項1に記載の真空ポンプ(1)において、
前記加熱部分(20b)は前記高圧ステータ部(19)の前記螺旋溝(14)内に非接触で保持されることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項10】
請求項1に記載の真空ポンプ(1)において、
前記螺旋溝(14)内に配置された断熱スペーサ(35)を備えることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項11】
請求項9に記載の真空ポンプ(1)において、
前記加熱部分(20b)は、前記螺旋溝(14)の側壁(14a)に配置された2つのオリフィスを介して前記螺旋溝(14)内に保持されていることを特徴とする真空ポンプ(1)。
【請求項12】
請求項1に記載の真空ポンプ(1)において、
前記接続ダクト(21)内にパージガスを注入するように設計されたパージガス入力部(27)を備えていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項13】
請求項12に記載の真空ポンプ(1)において、
前記パージガス入力部(27)が、前記接続ダクト(21)と連通している前記高圧ステータ部(19)を取り囲む環状空間(27b)と連通する共通ダクト(27a)を備えることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項14】
請求項13に記載の真空ポンプ(1)において、
前記高圧ステータ部(19)を取り囲む前記環状空間(27b)は、前記高圧ステータ部(19)及び前記ステータ(2)の高圧ケーシング(29)の間に介在する環状チャネル(28)に連結され、前記高圧ケーシング(29)は前記高圧ステータ部(19)を取り囲み、前記高圧ステータ部(19)を前記真空ポンプ(1)の逆流オリフィス(7)に接続していることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項15】
請求項13に記載の真空ポンプ(1)であって、
前記パージガス入力部(27)は、前記環状空間(27b)を、シール接手(33)を受ける前記ステータ(2)のシールチャネル(30;36)と連通させる追加のダクト(32)を備えていることを特徴とする真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ分子真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
筐体内に高真空を生成するには、ステータと、その内部で高速回転、例えば毎分9万回転を超える回転で駆動されるロータとで構成される、ターボ分子真空ポンプの使用が必要である。
【0003】
半導体又はLEDの製造プロセスなど、ターボ分子真空ポンプが使用される特定のプロセスでは、真空ポンプ内に堆積層が形成されることがある。
【0004】
真空ポンプ内での反応生成物の凝縮を防止するために、外部加熱ベルトを用いてステータを加熱することが知られている。しかし、新世代のプロセスでは、より多くの凝縮可能な副生成物が生成される。
特定のケースでは、従来の加熱では副生成物の生成を防ぐのに十分ではなくなり、アルミニウム製のロータを機械的に弱める危険を冒さずに、ステータの温度をさらに高めることは不可能である。このとき、高圧圧縮ステージ又はホルベックステージのステータ上に反応生成物による堆積物が発生することがある。この場合、ステータとロータとの機能上の隙間は、数十分の1ミリメートルと比較的小さく、回転することにより反応生成物の付着が防止されるロータの露出が少ない。
予防保全を行わないと、ロータの回転速度と運動エネルギーが高くなり、反応生成物の堆積物が厚くなり、ロータとステータの間で接触が発生する可能性があり、ロータの回転速度とその運動エネルギーが速いため、ポンプが直ちに故障する可能性もある。半導体製造過程における真空ポンプのこのような破壊は、ポンプの完全な破壊だけでなく、製造中のチップのバッチの破壊や製造装置の数日間の停止につながる可能性があり、その経済的損失は相当額になる可能性がある。
【0005】
これらの重要な隙間内に、反応生成物の堆積物が蓄積するリスクを制限するための解決策の1つは、ホルベック圧縮ステージを200°Cを超える温度、例えば300°C又は400°Cまで、ポンプ本体全体が加熱されないように急速に加熱する、つまり2分以内に急速に加熱し、ホルベック圧縮ステージにおけるコールドゾーンの形成を回避することである。
【0006】
特許文献1によれば、真空ポンプ内の加熱装置をより適切に配置するために、ポンプ搬送されるガスの経路に真空加熱装置を配置することが提案されている。この加熱装置は、加熱抵抗器と、ホルベックステータと加熱抵抗器との間に介在する絶縁層とを備えている。この加熱抵抗器は、例えば500°Cになるまで、ロータが過熱しないように、短時間、例えば1秒間通電することができる。
加熱要素のこれらの高温により、ロータを加熱することなく、加熱要素の上又はその近くに堆積した固体の反応生成物を蒸発さ又は分解することが可能になる。しかし、この技術、特にステータ上に絶縁層を堆積する必要のある技術は、実装が複雑であり、従ってコストがかかる可能性がある。
また、ターボ分子真空ポンプのガス流路内の真空に配置された加熱要素への給電も、実装が困難である可能性がある。実際、電気ケーブルのシース、はんだの錫、さらには、はんだの保護樹脂さえも、加熱要素によって発生する真空下での赤外線加熱によって、損傷する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】FR3101115A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の1つは、従来技術の欠点を少なくとも部分的に解決するターボ分子真空ポンプを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、ステータと、前記ステータ内で回転するように構成されたロータとを備え、前記ロータのホルベックスカートに面する前記ステータの高圧ステータ部に配置された螺旋溝を有するターボ分子真空ポンプにおいて、
前記ターボ分子真空ポンプは、少なくとも1つの保持部と、加熱ロッドに電力が供給されたときにジュール効果を利用する加熱部分とを有する少なくとも1つの前記加熱ロッドを備えており、前記保持部は前記加熱部分への給電線のシースを形成し、
前記高圧ステータ部内に、前記保持部を通過させるための少なくとも1つの接続ダクトが少なくとも部分的に配置されており、前記加熱部分は、前記高圧ステータ部の少なくとも1つの前記螺旋溝に沿って収容されていることを特徴とする。
【0010】
動作中、加熱部分は、電力が供給されたとき、ガスのポンプ搬送経路に、200℃以上の温度の赤外線を放射する。
ポンプ搬送されるガスの経路にある真空ポンプの内面は一般に反射性であり、堆積物が存在しない場合は放射熱を反射するが、堆積物(通常は有機材料であり、放射率が0.5を超える)は熱を吸収する。
従って、堆積物はより多くの熱を吸収し、その温度は真空ポンプの壁の温度よりも上昇する。真空ポンプの内壁で反射した熱は、加熱ロッドの加熱部分や堆積物にも到達する。
高温に加熱された堆積物は蒸発し、ロータやステータの内壁を過熱することなく、ガス状で出口オリフィスに向かって移動する。堆積物の厚さが十分に小さくなり、赤外線を吸収できなくなるとすぐに、赤外線は真空ポンプの壁によって反射される。
従って、加熱の制御やサイクルを行わないと高温のままになる可能性のある堆積物は、自動的に除去される。加熱はさらに的を絞ったものであるため、ロータ3の完全性を損なうことなく、効果的である。
【0011】
螺旋状の溝内に加熱ロッドの加熱部分を配置することにより、高圧ステータ部が加熱されるよりも十分に前に、輻射による堆積物の加熱およびそれらの蒸発が可能になる。
加熱ロッドの加熱部分も、真空ポンプのステータのガス循環方向の高圧側、つまり圧力が最も高く、堆積の危険性がより高い場所に配置されている。この加熱部分は螺旋溝の中でほとんどスペースをとらず、螺旋溝の曲率に沿っているため、分子のポンピングを妨げない。
ポンプ搬送されるガスが循環する領域では、加熱部分のみが発熱する。接続ダクト内に収容された保持部品は加熱されないため、高温による給電線の溶断や損傷が起こりにくくなる。
これにより、高圧ステータ部の良好な機械的強度と、加熱ロッドの温度が上昇してポンプ搬送されるガスの流路内に放熱するのに十分な断熱性を保証することが可能になる。
【0012】
ターボ分子真空ポンプは、以下に説明する特性のうちの1つ以上を単独で、又は組み合わせて備えることもできる。
【0013】
真空ポンプは、例えば1本~12本の加熱ロッドを備えている。
各加熱ロッドは、一端が加熱部分に取り付けられた少なくとも1つの保持部から形成されている。保持部分は「非加熱」である。つまり、加熱ロッドが電力を供給されている場合、温度が150°C未満になるように設計されている。加熱部分は、加熱ロッドに電力が供給されたときに表面温度が200°C以上になるように設計された電気抵抗器を備えている。
【0014】
加熱ロッドは、例えば、ステンレス鋼又はニッケルシースのような合金シースなど、潜在的に腐食性のポンプ搬送されるガスに対して耐性のある材料で作られたシースを含んでいる。
【0015】
給電線は、加熱ロッドの保持部側の片側にのみ取り付けられていてもよい。加熱部分の端は自由なまま、つまり電気的に接続されず、電気抵抗器が保持部分の側の給電線に接続されたシース内にループを形成する。
【0016】
代替の解決策では、給電線は加熱ロッドの両側に接続され、加熱ロッドの各端は保持部を備えることができる。この場合、中央の加熱部分のみが赤外線によってその周囲を効果的に加熱することができる。
【0017】
接続ダクトは、例えば高圧ステータ部の端部や、例えば高圧ステータ部の平らな環状円周上や、例えばポンプ搬送されるガスの入口となる高圧ステータ部の入口側に、配置される。
接続ダクトが複数ある場合、それらは、例えば、高圧ステータ部の端部の周囲に規則的に分散される。
【0018】
例示的な実施形態では、真空ポンプは、高圧ステータ部が螺旋溝を備えるのと少なくとも同数の加熱ロッドを備え、少なくとも1つの加熱部分が夫々関連する螺旋溝に収容されている。
【0019】
別の例示的な実施形態では、加熱部分は少なくとも2つの螺旋溝に沿って収容されている。
【0020】
この加熱部分は、好ましくは、高圧ステータ部の螺旋溝を越えて、この高圧ステータ部の出口と真空ポンプの逆流(出口)オリフィスとの間に位置する環状逆流空間内、及び/又は真空ポンプのターボ分子ステージ内に延在することが好ましい。
この加熱部分は、さらに、放射加熱によって環状逆流空間及び/又はターボ分子ステージを加熱することも可能である。
【0021】
真空ポンプはまた、少なくとも1つの保持部と、追加の加熱ロッドに電力が供給されるときにジュール効果を利用する加熱部分とを有する少なくとも1つの追加の加熱ロッドを備えることができ、保持部は、加熱部分の給電線のシースを形成している。
この少なくとも1つの追加ロッドの保持部分は、少なくとも1つの接続ダクト内に位置し、加熱部分は、高圧ステータ部の出口と真空ポンプの逆流オリフィスとの間、及び/又は真空ポンプのターボ分子ステージ内に位置する環状逆流空間内に収容されている。
例えば、少なくとも1つの加熱ロッドと少なくとも1つの追加の加熱ロッドの保持部分が、同じ接続ダクト内に収容されている。
【0022】
螺旋溝の底部には、加熱部分を収容するためのチャネルが設けられていてもよい。
【0023】
加熱ロッドは、接続ダクト及び関連する螺旋溝の形状に予備成形することができる。加熱ロッドは、例えば冷間成形可能な抵抗器を備えている。従って、加熱ロッドは高圧ステータ部に取り付けるための少数(2つ又は3つ)の領域を介してのみ接続できるため、伝導によって伝達される熱はほとんどなく、熱の大部分は赤外線によって伝達される。
【0024】
ステータはまた、接続ダクトを閉じて保持部品を保持するために、接続ダクトが少なくとも部分的に配置される高圧ステータ部の端部に固定される第1の環状固定板を備えていてもよい。この接続ダクトは、第1の固定板によって閉じられる高圧ステータ部の端部、および/または第1の固定板内に配置される。
【0025】
ステータは、加熱部分又は別の保持部品の端部を保持するために、高圧ステータ部の反対側の端部に固定される第2の環状固定板を備えることもできる。もう一方の保持部が設けられている場合には、それは、加熱ロッドの他端に位置する。
【0026】
別の例によれば、接続ダクトは、ステータのブレードステージに面する高圧ステータ部の端部に少なくとも部分的に配置され、この接続ダクトは、ブレードステージの1つのリングによって閉じられ、このリング内および/または高圧ステータ部の端部に配置される。
【0027】
加熱部分は、主として高圧ステータ部の螺旋溝内に非接触で保持されることが好ましい。
【0028】
そのために、真空ポンプは、螺旋溝内に配置された断熱スペーサを備えていてもよい。
【0029】
代替的又は追加的に、加熱部分は、螺旋状溝の側壁に配置された2つのオリフィスを介して螺旋状溝内に保持されてもよい。
【0030】
例示的な一実施形態によれば、真空ポンプは、接続ダクト内にパージガスを注入するように設計されたパージガス入力部も備えている。
パージガスは、接続ダクト内において高圧ステータ部の内部に比べて高圧下にあるため、ポンプ搬送されるガスに対して動的バリアが形成される。
このように、接続ダクトは、潜在的に攻撃的なポンプ搬送されるガスが通過する領域と常に真空下にある領域の間に位置し、それ自体は密閉されていないが、機械的及び熱的に堅牢であり、パージガススの掃気流によって潜在的に腐食性のポンプ搬送されるガスから保護されている。従って、加熱ロッドの保持部分は、ポンプ搬送されるガスや赤外線から保護されている。
【0031】
真空ポンプは、非常に高温な領域から離れて配置された従来型の、密閉コネクタを備えることができる。これにより、加熱ロッドの周囲に密閉通路が形成されることが回避される。そのためには、シール接手として、加熱ロッドの近くで最大200°Cまでの高温に耐えることができ、加熱ロッドと高圧ステータ部の間の熱膨張差に耐えることができ、場合によっては非常に腐食性が高いガスの攻撃にも耐えることができる材料を使用する必要がある。
ポンプ搬送されるガスの侵入を防ぎながら、接続全体をパージできる。
【0032】
パージガス入力は、例えば、接続ダクトと連通する高圧ステータ部を取り囲む環状空間と連通する、共通ダクトを備えている。
【0033】
また、高圧ステータ部を取り囲む環状空間は、この高圧ステータ部とステータの高圧ケーシングとの間に介在する環状チャネルに接続されてもよい。この高圧ケーシングは高圧ステータ部を取り囲み、高圧ステータ部を逆流オリフィスに接続する。
環状チャネルにより、2つの部品の全周にわたるパージ ガスの通過が可能になる。
接続ダクトと同様に、環状チャネルに注入されるパージ ガスは環状逆流スペースに比べて高圧であるため、ポンプ搬送されるガスに対して動的バリアを形成し、環状チャネル内でシール接手を使用することを回避できる。
【0034】
パージガス入力部は、環状空間を、シール接手を受け入れるステータのシールチャネルと連通させる、追加のダクトを備えることができる。
環状空間は、高圧ステータ部と高圧ケーシングの間の全周にわたるパージガスの供給を可能にするだけでなく、パージガスを、追加のダクトやシールチャネルに入れることができる。従って、シール接手を低コストで腐食性ガスから保護することができ、耐薬品性が低く、従ってより安価なシール接手の材料の使用が可能になる。
【0035】
また、ポンプ搬送されるガスと連通するように意図されたステータの内壁及びロータの壁は、例えば、低放射率として知られる0.2以下の放射率を有する。それらは、例えば金属製であり、アルミニウム又はステンレス鋼材料で作られているか、又はニッケルを含むなどの低放射率のコーティングを有している。壁は磨いてもよい。これらの低放射率の表面には、赤外線を反射するという利点があり、これにより、第一に、ポンプ搬送されるガスと連通するステータの内壁およびロータの壁の加熱を回避することができ、第二に、堆積物上に熱を集中できる。これらの堆積物は一般に、低放射率の表面の放射率よりも高い放射率を有する有機堆積物である。
これは、ポンプ搬送されるガスと連通し、アルミニウム、ステンレス鋼材料、またはコーティングされた鋼鉄またはアルミニウムで作られたステータおよびロータの壁が、特に耐食性を可能にする低放射率の材料で作られているという事実を利用する。これらの低放射率の特性は、望ましくない堆積物の加熱を促進しながら、真空ポンプの加熱を回避するのに役立つ。
【0036】
ターボ分子真空ポンプは、ステータを基準温度、例えば80℃より高い、例えば100℃まで加熱するための、加熱抵抗ベルトなどのステータの外部加熱装置を備えることもできる。加熱ロッドによる加熱は、ステーター外部加熱装置を補完する。
【0037】
ターボ分子真空ポンプは、特にターボ分子ステージの第1ブレードステージを冷却するための冷却装置を備えることもできる。この冷却装置は、例えば、周囲温度の水の循環によって、温度を75℃以下、例えば70℃に制御することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1の実施形態による、ターボ分子真空ポンプの軸方向の断面図である。
図2図1のターボ分子真空ポンプの要素の、2つの半径方向の平面に沿った、断面図であり、第1の固定板を点線で示している。
図3A図2の要素の軸方向の断面図である。
図3B図3Aの一部拡大詳細図である。
図4図2に示した要素の分解図である。
図5A図1の真空ポンプの一部の詳細を示す段軸方向断面図である。
図5B図5Aの円で囲まれた「A」部分の拡大詳細図である。
図5C図5Aの円で囲まれた「B」部分の拡大詳細図である。
図6】本発明の第2の実施形態に関する図3Aと同様の図である。
図7】本発明の第3の実施形態のターボ分子真空ポンプの各部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明のさらなる利点及び特徴は、決して限定的ではない本発明の特定の実施形態に関する以下の説明を読むこと、及び添付の図面から明らかになるであろう。図面上では、同一の要素には同一の参照符号が付されている。
【0040】
以下の実施形態は例示的なものである。この説明では1つ以上の実施形態について言及しているが、これは必ずしも各参考符号が同じ実施形態に関すること、又は特徴が単一の実施形態にのみ適用されることを意味するものではない。他の実施形態を提供するために、異なる実施形態の個々の特徴を組み合わせたり交換したりすることもできる。
【0041】
「上流」という用語は、ポンプ搬送されるガスの循環方向F1に対して他の要素の前に配置される要素を指す。対照的に、「下流」という用語は、ポンプ搬送されるガスの循環方向F1に対して他の要素の後ろに配置された要素を指す。
【0042】
図1は、ターボ分子真空ポンプ1の実施例の軸方向断面を示している。
【0043】
この真空ポンプ1は、その内部で、ロータ3が高い軸回転速度、例えば毎分9万回転を超える回転速度で回転するように構成された、ステータ2を備えている。
【0044】
ガスは、吸気オリフィス6を介して真空ポンプ1内に入り、最初にターボ分子ステージ4、次に分子ステージ5を通過し、次に、一次ポンプに接続するための逆流オリフィス7に向かって排気される。真空ポンプ1を減圧対象の筐体に接続するために、例えば環状の、入口フランジ8が吸気オリフィス6を取り囲んでいる。動作中、ガスは、吸気オリフィス6から逆流オリフィス7まで、ガスの循環方向F1にポンプ搬送される。
【0045】
ターボ分子ステージ4では、ロータ3は少なくとも2段のベーンステージ9を備えており、ステータは少なくとも1段のブレードステージ10を備えている。ベーンステージ9及びブレードステージ10は、ロータの回転軸I-Iに沿って軸方向に連続して配置されている。ロータ3は、例えば4~12個のベーンステージ9など、4段を超えるベーンステージ9を備えている。
【0046】
ロータ3の各ベーンステージ9は、ロータ3のハブ11から実質的に半径方向に延びる角度付きベーンを備えており、ハブ11は、例えば、ねじ嵌めによって、真空ポンプ1の駆動軸12に固定されている。複数のベーンが、ハブ11の周囲に規則的に配置されている。
【0047】
ステータ2の各ブレードステージ10は、1つのリングを備えており、このリングの内周の周りに規則的に分布した傾斜ブレードがこのリングから実質的に半径方向に延びている。ステータ2のブレードステージ10の複数のブレードは、ロータ3の2つの連続するベーンステージ9のベーンの間に係合している。ロータ3のベーンステージ9及びステータ2のブレードステージ10は、ポンプ搬送されるガスの分子を分子ステージ5に導くように、角度が付けられている。
【0048】
分子ステージ5では、ロータ3は、少なくとも2段のベーンステージ9の下流にあり、ホルベックステータ又は高圧ステータ部19(図2図3A照)として知られるステータ2の一部に配置された螺旋溝14に対して回転する滑らかなシリンダによって形成されるホルベックスカート13を備えている。
高圧ステータ部19は、上下に配置された複数の螺旋溝14を備えておりこの螺旋溝14は、例えば、3本~10本、例えば6本ある。この高圧ステータ部19は、例えばアルミニウム材料製であり、放射率の低いニッケルタイプのコーティングを有していてもよい。
この高圧ステータ部19は、いわゆる中圧用の真空ポンプ1の圧縮率を高めるように設計されている。螺旋溝14は、ポンプ搬送されるガスを圧縮し、逆流オリフィス7に向かって案内する。
【0049】
ロータ3は、真空ポンプ1の内部のモータ16によってステータ2内で回転駆動されるように設計されている。モータ16は、例えばステータ2のベルハウジング17内に配置される。このステータ2自体は、ロータ3の内部ボウル15の下に配置されており、ロータ3の駆動軸12は、ステータ2のベルハウジング17を貫通している。
【0050】
ロータ3は、ロータ3の駆動軸12を支持しステータ2内に位置する、軸受18又は機械的ころ軸受によって、横方向及び軸方向に案内されている。
【0051】
真空ポンプ1は、ステータ2内、例えばベルハウジング17内、に収容されるか、又はベルハウジング17と熱的に接触する、流体回路などの、冷却装置を備えることができる。この冷却装置は、ベルハウジング17とそれに含まれる要素、特に軸受18、モータ16、および他の電気又は電子部品を継続的に冷却してそれらの機能を維持するため、および/又はターボ分子ステージ4の第1ブレードステージ10を冷却するためのものである。
この冷却装置は、例えば周囲温度の水を循環させることによって、例えば温度を75℃以下、例えば70℃に制御することを可能にする。
【0052】
真空ポンプ1はまた、パージガス入力部27を備えるパージ装置25を備えることもできる。このパージ装置は、ステータ2のベルハウジング17とロータ3の内部ボウル15との間のギャップにパージガスを導入するために、パージガス源に接続されるように設計されている。このパージガスの循環は、図1の矢印f2によって概略的に示されている。パージガスは、空気又は窒素であることが好ましいが、ヘリウム又はアルゴンなどの他の不活性ガスであってもよい。このパージガスの流量は微量である。
【0053】
真空ポンプ1はまた、少なくとも1つの加熱ロッド20、例えば1個~12個の加熱ロッド20、ここでは6個の加熱ロッド20を備えている(図4参照)。各加熱ロッド20は、少なくとも1つの保持部20aと、加熱ロッド20に電力が供給されるときにジュール効果を利用する加熱部分20bとを備えている。
【0054】
各加熱ロッド20は、一端に加熱部分20bが取り付けられた少なくとも1つの保持部20aによって形成されている。この保持部20aは「非加熱」、すなわち、加熱ロッド20が電力を供給されたときに150℃未満の温度を有するように設計されている。また、加熱部分20bは、加熱ロッド20に電力が供給されたときに200℃以上の温度を有するように設計された電気抵抗器を備えている。
【0055】
この加熱ロッド20は、例えば、ステンレス鋼又はニッケルシースなどの合金シースなど、潜在的に腐食性のポンプ搬送されるガスに耐性のある材料で作られたシースを含んでいる。
真空下で400℃に近い加熱部分20bの表面温度を得るために、加熱ロッド20には例えば140Vの電力が供給され、許容可能な耐用年数を維持しながら赤外線による周囲の環境の加熱が可能になる。
【0056】
複数の加熱ロッド20は、電気的に互いに直列又は並列に接続することができる。全ての加熱ロッド20、又は少なくとも1つのグループの加熱ロッド20に同期して、電力を供給することができる。あるいは、加熱ロッド20は、グループ毎に、又は個別に、非同期的に電力が供給されてもよい。加熱ロッド20は、連続的に、又は周期的に、すなわち通電期間と非通電期間が交互に行われる方式で、電力が供給されてもよい。
電力が供給される1サイクルの長さはさまざまであり、1サイクルの期間は数ミリ秒から数分の間になる。電力制御システムは、加熱ロッド20の温度、高圧ステータ部19の温度、ロータ3の温度、モータ16のトルク、又は、真空ポンプ1の他のセンサ、例えばガスの流路に配置された堆積物センサや圧力センサからの信号を考慮して制御する。
【0057】
加熱ロッド20の断面は、円形、楕円形、正方形、長方形、又は平坦であってもよい。加熱ロッド20は、例えば、2mm~5mm、例えば3.7mmの直径の円形断面を有する。保持部20aは、例えば100mmよりも長い、例えば150mmの長さを有する。この保持部20aは、加熱ロッド20の給電線のシースを形成する。
【0058】
給電線は、加熱ロッド20の保持部20a側の片側のみに接続されていてもよい。加熱部分20bの端部は自由端である、すなわち電気的に接続されず、電気抵抗器がシース内にループを形成し、保持部20a側の給電線に接続される。
【0059】
あるいは、給電線は加熱ロッド20の両側に接続されてもよく、加熱ロッド20の各端は保持部20aを備えている。この場合は、中央の加熱部分20bだけが赤外線によってその周囲を効果的に加熱する。
【0060】
少なくとも1つの接続ダクト21が、保持部20aを通すために、高圧ステータ部19内に少なくとも部分的に配置される(図4参照)。
この接続ダクト21は、例えば、少なくとも部分的に高圧ステータ部19の端部に、あるいは、高圧ステータ部19の平坦な環状外周上に、あるいは、ポンプ搬送されるガスの入口における高圧ステータ部19への入口側に、配置される。これらの接続ダクト21は、例えば、高圧ステータ部19の端部の周囲に規則的に分布している。
これらの接続ダクトは、以下に示すように、特にパージガスの流出を制限する低いコンダクタンスを形成するために、夫々、加熱ロッド20の断面より実質的に大きい断面を有し、例えば、直径3.7mmの加熱ロッド20の場合、4mm×4mmである。
【0061】
加熱部分20bは、例えば200mmを超える長さ、例えば250mm~1700mmの長さを有する。
【0062】
加熱部分20bは、高圧ステータ部19の少なくとも1つの螺旋溝14に沿って、例えば螺旋溝14の中央に(図2図3A参照)、又は、螺旋溝14の側壁14aの近くに収容されている(図7参照)。
【0063】
加熱部分20bを受け入れるために、加熱ロッド20の寸法よりわずかに大きい寸法を有するチャネル22を、螺旋状の溝14の基部、各溝14内、例えば溝14の中央に配置してもよい(図3B参照)。
チャネル22の断面形状は、正方形、長方形、円形、またはその他の機械加工可能な形状であってもよい。チャネル22は、溝14の中心に配置されてもよいし、中心から側壁の1つに向かってオフセットされてもよい。
【0064】
真空ポンプ1は、例えば、高圧ステータ部19が螺旋溝14を有し、従って接続ダクト21を有するのと同数の加熱ロッド20を備え、少なくとも1つの加熱部分20bが、関連する夫々の螺旋溝14内に収容されている。
【0065】
真空ポンプ1は、高圧ステータ部19が螺旋溝14を有するよりも多くの加熱ロッド20を備えていてもよい。特に、真空ポンプ1は、各螺旋溝14に2つ以上の加熱ロッド20、例えば2つの加熱ロッドを備えていてもよい。
【0066】
螺旋溝14は、高圧ステータ部19に沿って一端から他端まで延びている。これらの螺旋溝は、まず、高圧ステータ部19の一端で接続ダクト21に開口し、次に、反対端にある高圧ステータ部19の出口と逆流オリフィス7との間に位置する環状逆流空間34に開口する。接続ダクト21は、例えば直線状であり、関連する螺旋溝14によって与えられる角度が連続するように配向されている。
【0067】
加熱ロッド20の加熱部分20bは、高圧ステータ部19の螺旋溝14を越えて、例えば環状逆流空間34内に、又は逆流オリフィス7を越えて、及び/又はターボ分子ステージ内にさえ延びることができる。この場合、環状逆流空間34及び/又はターボ分子ステージ4を輻射熱によって加熱することも可能である。
【0068】
真空ポンプ1が複数の加熱ロッド20を備える場合、加熱部分20bの幾つかの端部が高圧ステータ部19の周囲の環状逆流空間34内に突出してもよい。
例えば、加熱部分20bの6つの端部が、環状逆流空間34内に突出し、高圧ステータ部19の周りに規則的に分布している(図2参照)。
【0069】
加熱部分20bは、伝導によるステータ2の加熱を避けるために、高圧ステータ部19の螺旋溝14内、又は螺旋溝14が設けられている場合にはそのチャネル22内に主に非接触で保持されることが好ましい。
加熱ロッド20は高圧ステータ部19といくつかの点接触を有する可能性があるが、一次真空下での伝導によって伝達される熱は非常に低いままである。
【0070】
このため、加熱ロッド20は、接続ダクト21の形状及び関連する螺旋溝14の形状に従って、高圧ステータ部19に取り付ける前に予備成形、すなわち予め成形することができる。
加熱ロッド20は、例えば冷間成形可能な抵抗器を備えている。従って、加熱ロッド20は、高圧ステータ部19に取り付けるための少数の領域(2つ又は3つ)によってのみ接続できるため、伝導によって伝達される熱はほとんどなく、熱の大部分は赤外線によって伝達される。
【0071】
ステータ2はまた、例えば、ねじ嵌めによって、高圧ステータ部19の端部に固定された環状の第1の固定板23を備えていてもよく、接続ダクト21は高圧ステータ部19の端部及び/又は第1の固定板23内に配置され、第1の環状固定板23は接続ダクト21を閉じて接続ダクト21内に保持部20aを保持する(図2及び図4参照)。
【0072】
ステータ2はまた、第2の環状固定板24を備えることもできる。この固定板は、ここでは幾つかのセグメントからなり、加熱部分20bの端部や、加熱ロッド20が各端部に保持部20aを備える場合には、加熱ロッド20の他端に位置する保持部20aを保持するために、例えば、ねじ嵌めによって、高圧ステータ部19の反対側の端部に固定される。
これらの固定板23、24は、特に予め形成された加熱ロッドの場合、加熱ロッド20を螺旋溝14内に保持するのに役立つ。
【0073】
別の例では、接続ダクト21は、ステータ2のブレードステージ10に面する高圧ステータ部19の端部に少なくとも部分的に配置され、この接続ダクト21は、ブレードステージ10のリングによって閉じられ、そして、このリング内および/又は高圧ステータ部19の端部内に配置される。
【0074】
図6および図7を参照して、主に非接触で加熱部分20bを螺旋溝14内に保持できる、他の例示的な実施形態について、以下に説明する。
【0075】
動作中、加熱部分20bは、電力が供給されたときのガスのポンプ搬送経路に、200℃以上、例えば300℃、例えば700℃未満の温度の赤外線を放射する。
ポンプ搬送されるガスの経路にある真空ポンプ1の内面は、一般に反射性であり、堆積物が存在しない場合には放射熱を反射するが、堆積物(これらは一般に有機材料製であり、0.5を超える高い放射率を有する)は、熱を吸収する。従って、堆積物はより多くの熱を吸収し、真空ポンプ1の壁よりも温度が上昇する。
真空ポンプ1の内壁で反射した熱は、加熱ロッド20の加熱部分20bや堆積物にも到達する。
高温に加熱された堆積物は蒸発し、ロータ3やステータ2の内壁を過熱することなく、ガス状で出口(逆流)オリフィスオリフィス7に向かって移動することができる。
堆積物の厚さが十分に薄くなり、赤外線を吸収できなくなるとすぐに、この赤外線は真空ポンプ1の壁によって反射される。従って、加熱の制御やサイクルを行わないと高温のままになる可能性のある堆積物は、自動的に除去される。加熱はさらに的を絞ったものであるため、ロータ3の完全性を損なうことなく、効果的である。
【0076】
ポンプ搬送されるガスと連通するように意図されたステータ2の内壁及びロータ3の壁は、例えば、低放射率として知られる0.2以下の放射率を有する。
ステータ2の内壁およびロータ3の壁は、ポンプ搬送されるガスと連通するように意図されており、放射率が低く、例えば金属製で、アルミニウム、又はステンレス鋼材料で作られているか、ニッケルを含むような低放射率のコーティングが施されている。壁は磨いたものでもよい。
これらの低放射率の表面には、赤外線を反射するという利点があり、これにより、第一に、ポンプ搬送されるガスと連通するステータ2の内壁及びロータ3の壁の加熱を回避することができ、第二に、堆積物上への熱の集中ができる。この堆積物は一般に、低放射率の表面の放射率よりも高い放射率を有する有機堆積物である。
これは、ポンプ搬送されるガスと連通する、ステータ2及びロータ3の壁が、放射率が低く、特に耐食性が高い、アルミニウム、ステンレス鋼材、又はコーティングされた鋼材又はアルミニウムの材料で作られているという事実を利用している。
これらの低放射率の特性は、真空ポンプ1の加熱を回避し、同時に、望ましくない堆積物の加熱を促進するのに役立つ。
【0077】
螺旋溝14内への加熱ロッド20の加熱部分20bの配置は、高圧ステータ部19の加熱より十分前に、放射線による堆積物の再加熱とそれらの蒸発を可能にする。
加熱ロッド20の加熱部分20bは、真空ポンプ1のステータ2のガス循環方向の高圧側、すなわち最もガスの圧力が高い箇所、あるいは堆積物の危険性が高い箇所に配置されている。
加熱部分20bは、螺旋溝14の曲率に追従するため、螺旋溝14内でほとんどスペースをとらず、分子ポンピングを妨げない。
圧送ガスが循環する領域では、加熱部分20bのみが発熱する。
接続ダクト21内に収容された保持部20aは加熱されないため、高温による給電線の溶断や損傷が生じにくい。
これにより、高圧ステータ部19の優れた機械的強度と、加熱ロッド20の温度上昇を可能にするのに十分な断熱材と、ポンプ搬送されるガスの流路内への放熱とを保証することが可能となる。
【0078】
ターボ分子真空ポンプ1は、ステータ2を基準温度、例えば80℃より高い、例えば100℃まで加熱するための、加熱抵抗ベルトなどのステータ2の外部加熱装置を備えることもできる。加熱ロッド20による加熱は、ステータ2の外部加熱装置を補完する。
【0079】
例示的な実施形態によれば、真空ポンプ1は、接続ダクト21内にパージガスを注入するように設計された、パージガス入力部27を備えている。このパージガス入力部27は、例えば、真空ポンプ1のパージ装置25の入口ダクト26を接続ダクト21に接続する。
別の例によれば、パージガス入力部27は、追加のパージガス入口ダクトを接続ダクト21に接続し、この追加の入口ダクトは、パージ装置25の入口ダクト26から独立している。
【0080】
パージガス入力部27は、例えば、それ自体が接続ダクト21と連通している高圧ステータ部19を囲む環状空間27bと連通する、共通ダクト27aを備えている。この共通ダクト27aは、例えば、パージ装置25の入口ダクト26と連通するか、又は補助入口ダクトと連通する。
このパージガス入力部27は、例えば、高圧ステータ部19を取り囲んだステータ2の高圧ケーシング29内に配置され、高圧ステータ部19を逆流オリフィス7に接続し、これにより、高圧ステータ部19から出るポンプ搬送されたガスを逆流オリフィス7へ導く。
【0081】
動作中、パージガスは、パージガス入力部27に流入し、次に共通ダクト27aに流入し、次に環状空間27bに流入する。このパージガスは、高圧ステータ部19を取り囲む環状空間27bに入り、その後、第1の環状固定板23によって閉鎖された接続ダクト21内に移動し、この接続ダクト21を通過し、ポンプ搬送されるガスとともに逆流オリフィス7に向かって駆動される。
パージガスは、接続ダクト21内では高圧ステータ部19の内部に比べて高圧下にあるため、ポンプ搬送されるガスに対する動的障壁を形成する。
【0082】
従って、接続ダクト21は、潜在的に攻撃的なポンプ搬送されるガスが通過する領域と常に真空下にある領域との間に位置し、それ自体は密封されていないが、機械的及び熱的に堅牢であり、パージガスの掃気流により、潜在的に腐食性のあるポンプ搬送されるガスから保護されている。従って、加熱ロッド20の保持部20aは、ポンプ搬送されるガス及び赤外線放射から保護される。
この場合、真空ポンプ1は、非常に高温な領域から離れて配置された従来型の密閉コネクタを備えることができる。
これにより、加熱ロッド20の周囲に、加熱ロッド20付近で最大200℃の高温に耐えることができる材料をシール接手に使用する必要がある耐熱性の通路を形成することを回避でき、加熱ロッド20と高圧ステータ部19の間の異なる熱膨張に耐えることができ、場合によっては非常に腐食性が高いガスの攻撃性にも耐えることができる。
これにより、全体の接続をパージすることができ、他方で、ポンプ搬送されるガスの侵入を防ぐことができる。
【0083】
例示的な実施形態によれば、高圧ステータ部19を取り囲む環状空間27bは、高圧ステータ部19とステータ2の高圧ケーシング29との間に介在された環状チャネル28に接続されている(詳細は、図5A図5B参照)。この環状チャネル28は、高圧ケーシング29又は高圧ステータ部19内に配置することもできる。
【0084】
動作中、パージガスは、パージガス入力部27、共通ダクト27aに入り、次いで、環状空間27b、接続ダクト21、及び、高圧ステータ部19と高圧ケーシング29の間の環状チャネル28に流入する。
環状チャネル28は、その両方の部分の全周にわたって、パージガスの通過を可能にする。環状チャネル28に注入されるパージガスは、接続ダクト21の場合と同様に、環状逆流空間34に比べて高圧下にあり、従って、ポンプ搬送されるガスに対する動的障壁を形成し、環状チャネル28内でのシール接手の使用を回避する。
【0085】
例示的な実施形態によれば、パージガス入力部27は、環状空間27bを、シール接手33を受け入れるステータ2のシールチャネル30と連通させる、追加のダクト32を備えている。
【0086】
例えば、追加のダクト32は、環状チャネル28又は環状空間27bを、ステータ2の逆流接続部31のシールチャネル30と連通させる(詳細は図5A図5C参照)。
このシールチャネル30は、逆流接続部31と、パージガス入力部27が配置される高圧ケーシング29の本体との間に配置されている。逆流接続部31は、真空ポンプ1の逆流オリフィス7に接続するためのチューブ及びフランジを備えており、これらは真空用の標準的なものである。
【0087】
動作中、パージガスは、パージガス入力部27、共通ダクト27a、次いで環状空間27b、接続ダクト21および追加のダクト32を通ってシールチャネル30まで流入し、従って、潜在的に攻撃的なポンプ搬送されるガスからシール接手33を保護する。
高圧ステータ部19と高圧ケーシング29との間の全周に亘ってパージガスを導入できるとともに、環状空間27bにより、パージガスがシールチャネル30まで下降する追加のダクト32に移送されることが可能になる。
これにより、シール接手33を腐食性ガスから低コストで保護することができ、シール接手33の材質として耐薬品性が低く安価なものを使用することができる。
【0088】
別の例によれば、追加のダクト(図示せず)は、環状チャネル28又は環状空間27bを、真空ポンプの高圧ケーシング29と低圧ケーシング37との間に位置するシールチャネル36と連通させる。
この低圧ケーシング37は、ステータ2のブレードステージ10のリングを担持している(図1参照)。これにより、前の例で説明したように、パージガスにより、シールチャネル36内に収容されるシール接手33に特殊な材料を使用することを回避できる。
【0089】
加熱ロッド20については、他の実施形態も可能である。
【0090】
特に、加熱ロッド20の加熱部分20bは、少なくとも2つの螺旋溝14に沿って収容することが出来る。この加熱部分20bは、例えば第1螺旋溝14に沿って下降し、隣接する第2螺旋溝14に沿って上昇する。
この場合、真空ポンプ1は、高圧ステータ部19が備えている螺旋溝14をよりも少ない数の加熱ロッド20を備えることができ、1つの同じ加熱ロッド20が、2つ以上の螺旋溝14を連続して通過する加熱部分20bを有する。
【0091】
幾つかの螺旋溝14内に延びる加熱ロッド20の加熱部分20bは、高圧ステータ部19の螺旋溝14を越えて延びてもよい。例えば、環状逆流空間34内へ延び、及び/又は、逆流オリフィス7を越えてターボ分子ステージ4内まで延びてもよい。
【0092】
真空ポンプ1は、全ての螺旋溝14内に延びる単一の加熱ロッド20を備えることができ、この加熱ロッド20は、全ての螺旋溝14(図示せず)を最初に上昇し、次に下降しながら連続的に通過する。この構成は、電気的接続のための2つの保持部20aを加熱部分20bの各側に1つずつ備える、1つの加熱ロッド20において、特に適している。
【0093】
図6は、本発明の第2の例示的な実施形態を示す。
【0094】
この例では、ターボ分子真空ポンプ1は、各螺旋溝14内に配置された、例えば2つ又は3つの断熱スペーサ35を備えている。これらの断熱スペーサ35は、加熱ロッド20を高圧ステータ部19から離間して保持している。例えば、少なくとも1つのスペーサ35が螺旋溝14への入口に配置され、他の1つのスペーサ35が螺旋溝14からの出口に配置されている。
これらのスペーサ35は、例えばセラミック材料で作られ、加熱ロッド20の断面と相補的な円筒形のオリフィスを有する。これにより、加熱ロッド20の加熱部分20bと高圧ステータ部19との間の熱接触が制限され、従ってステータ2の加熱が制限される。
【0095】
スペーサ35には幾つかの形状が可能である。スペーサ35は、例えば、ブロック形状(図6参照)を有していてもよいし、リング等の形状を有していてもよい。スペーサは、例えば、レールなどの螺旋溝14の相補的な形状と協働する形状を有していてもよい。
【0096】
この第2の実施形態のその他の特徴は、第1の実施形態と同様である。
【0097】
図7は、本発明の第3の例示的な実施形態を示している。
【0098】
この例では、加熱部分20bは、主に、螺旋溝14の側壁14aに配置された2つのオリフィスを介して、高圧ステータ部19の螺旋溝14内に非接触で保持されている。例えば、ガス流通方向において、1つのオリフィスが、螺旋溝14の入口側の側壁14aに配置され、1つのオリフィスが、螺旋溝14の出口側の側壁14aに配置されている。
ここで、加熱部分20bを螺旋溝14内の所定の位置に保持するのは、主として螺旋溝14と非接触の他の螺旋溝14である。
【0099】
この例の他の特徴は、最初の2つの例示的な実施形態の特徴と同様である。
【符号の説明】
【0100】
1 ターボ分子真空ポンプ
2 ステータ
3 ロータ
4 ターボ分子ステージ
5 分子ステージ
6 吸気オリフィス
7 逆流オリフィス
13 ホルベックスカート
14 螺旋溝
19 高圧ステータ部
20 加熱ロッド
20a 保持部
20b 加熱部分
21 接続ダクト
22 チャネル
23 第1の環状固定板
24 第2の環状固定板
27 パージガス入力部
27b 環状空間
30 シールチャネル
33 シール接手
34 環状逆流空間
35 断熱スペーサ
36 シールチャネル
37 低圧ケーシング
F1 ガスの循環方向
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
【国際調査報告】