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特表2024-535357医療用撮像システムのためのディテント方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】医療用撮像システムのためのディテント方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 3/12 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G05D3/12 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518393
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2022074716
(87)【国際公開番号】W WO2023046460
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/119795
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】21212726.0
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ シャン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ガン
【テーマコード(参考)】
5H303
【Fターム(参考)】
5H303AA20
5H303BB01
5H303BB11
5H303CC01
5H303DD24
5H303EE04
5H303FF04
5H303FF07
5H303GG04
5H303JJ01
5H303KK01
5H303LL03
(57)【要約】
医療用撮像システムのためのディテント方法。本方法は、構成要素にブレーキが適用されるときに医療用撮像システムの移動可能構成要素によって移動される距離Sと構成要素の速度Vとの間の制動関数F(S,V)を得るステップと、ブレーキが適用される前の構成要素の測定速度Vを得るステップとを有する。制動位置Pが、目標位置P、測定速度V、及び制動関数F(S,V)に基づいて求められ、ブレーキは、構成要素が制動位置Pに達したときに作動されるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用撮像システムのためのディテント方法であって、前記方法が、
構成要素にブレーキが適用されるときに前記医療用撮像システムの前記移動可能構成要素によって移動される距離Sと、前記構成要素の速度Vとの間の制動関数F(S,V)を得るステップと、
前記ブレーキが適用される前の前記構成要素の測定速度Vを得るステップと、
目標位置P、前記測定速度V、及び前記制動関数F(S,V)に基づいて制動位置Pを求めるステップであって、前記ブレーキは、前記構成要素が前記制動位置Pに達したときに作動される、ステップと、
前記構成要素が移動を停止した後に前記構成要素の測定位置Pを得るステップと、
制動関数再較正規則が誘発された場合、前記制動位置Pと前記測定位置Pとの間の距離Sと、前記測定速度Vとに基づいて前記制動関数F(S,V)を調節するステップとを有し、
前記制動関数再較正規則は、前記測定位置Pが前記目標位置Pに対するディテント窓内に収まらないことを含む、方法。
【請求項2】
前記制動関数再較正規則が偶発的データを除外する規則をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制動関数再較正規則が、前記測定位置Pが前記目標位置Pに対する前記ディテント窓内に収まることに2回連続で失敗することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記制動関数F(S,V)が、前記構成要素によって移動される前記距離Sと前記構成要素の前記速度Vとの間の二次関数S=KVであり、Kが較正定数であり、前記制動関数S=KVを調節することが前記較正定数Kの値を調節することを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記制動関数F(S,V)が、前記構成要素によって移動される前記距離Sと前記構成要素の前記速度Vとの間の二次関数S=aV+bV+cであり、a、b、及びcが較正定数であり、前記制動関数S=aV+bV+cを調節することが前記較正定数a、b、及びcのうちの1つ又は複数の値を調節することを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記制動位置Pを求めるステップが、
前記測定速度Vを前記制動関数F(S,V)へ適用することに基づいて制動距離Sを求めることと、
前記目標位置Pと前記制動距離Sとの差に基づいて前記制動位置Pを求めることとを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記制動関係F(S,V)を得るステップが、
前記ブレーキが作動されるときに前記構成要素により進まれる少なくとも2つの測定距離Sを得ることと、
前記少なくとも2つの測定距離Sのそれぞれに対する、制動が開始したときの前記構成要素の前記速度に対応する少なくとも2つの測定速度Vを得ることと、
前記少なくとも二対の[S,V]に対して前記関数F(S,V)を当てはめることとを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
処理システムを有する演算デバイスで実行されるときに、前記処理システムに請求項1から7のいずれか一項に記載の方法の全てのステップを行わせるコンピュータプログラムコードを備える、コンピュータプログラム。
【請求項9】
医療用撮像システムのためのディテント方法を行うためのシステムであって、前記システムが、
構成要素にブレーキが適用されるときに前記医療用撮像システムの前記移動可能構成要素によって移動される距離Sと前記構成要素の速度Vとの間の制動関数F(S,V)を得ることと、
前記ブレーキが適用される前の前記構成要素の測定速度Vを得ることと、
目標位置P、前記測定速度V、及び前記制動関数F(S,V)に基づいて制動位置Pを求めることであり、前記ブレーキが、前記構成要素が前記制動位置Pに達したときに作動されることと、
前記構成要素が移動を停止した後に前記構成要素の測定位置Pを得ることと、
制動関数再較正規則が誘発された場合、前記制動位置Pと前記測定位置Pとの間の距離Sと、前記測定速度Vとに基づいて前記制動関数F(S,V)を調節することとを行うプロセッサを備え、
前記制動関数再較正規則が、前記測定位置Pが前記目標位置Pに対するディテント窓内に収まらないことを含む、システム。
【請求項10】
前記制動関数再較正規則が偶発的データを除外する規則を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記制動関数再較正規則が、前記測定位置Pが前記目標位置Pに対する前記ディテント窓内に収まることに2回連続で失敗することを含む、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記制動関数F(S,V)が、前記構成要素によって移動される前記距離Sと前記構成要素の前記速度Vとの間の二次関数S=KVであり、Kが較正定数であり、前記プロセッサが前記較正定数Kの値を調節することによって前記制動関数S=KVを調節する、請求項9から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記制動関数F(S,V)が、前記構成要素によって移動される前記距離Sと前記構成要素の前記速度Vとの間の二次関数S=aV+bV+cであり、a、b、及びcが較正定数であり、前記プロセッサが前記較正定数a、b、及びcのうちの1つ又は複数の値を調節することによって前記制動関数S=aV+bV+cを調節する、請求項9から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
1つ又は複数の配置レールと、
前記配置レールに置かれる前記構成要素と、
前記構成要素を前記配置レールに沿って移動させる移動システムと、
前記構成要素の移動を停止する制動システムとをさらに備える、請求項9から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記構成要素の前記測定位置Pを得る位置センサと、
前記構成要素の前記測定速度Vを決定する速度センサと
のうちの1つ又は複数をさらに備える、請求項9から14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用撮像システムのためのディテント工程の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタルX線(DXR)天井吊り下げ(CS)システム及びチューブスタンドサブシステムは、自動ディテント工程を行うために機械的方法又は電気ブレーキを使用する。長い歴史の中で多数の異なるディテントの機械的構造及びそれらディテントの工業製品での使用法が存在してきたため、DXRシステムの殆どは機械的方法を使用している。
【0003】
DXRシステムについては、2つの標準的なシステム構造がある。壁スタンド及びテーブルシステムは被験者及びX線検出器を支持するために使用される。CS及びチューブスタンドサブシステムはX線源(管)を支持するために使用される。線源と検出器との間の距離はX線画像の品質に影響する。よく使用される距離の値がいくつか存在する(例えば110cm、150cm、及び180cm)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械的方法を使用する場合、機械部分(例えば限定ピン及び限定穴)が、システムを目標位置で停止するために起動される。いくつかのシステムでは電気ブレーキ方法を使用する。電気ブレーキ方法を使用する場合、CS/チューブスタンドが目標位置に達したときに電気ブレーキが起動され、CS/チューブスタンドは許容された距離を摺動した後、停止する。しかし、機械的方法及び電気ブレーキ方法はどちらも欠点を有する。
【0005】
機械的方法は比較的正確であり精密である。しかし、機械的方法は追加の部品(例えば限定ピン及び限定穴)の設置を必要とする。これにより、CS/チューブスタンドサブシステムの機械的構造はより複雑なものとなる。さらに、追加部品はシステムのコスト及び設置時間を増大させる。システムの運動エネルギーも、殆どがシステムの振動によって打ち消されるため、ユーザは不快な思いをする。
【0006】
電気ブレーキ方法は追加の機械部品を必要としないものの、欠点も有する。サブシステムの質量が比較的大きい場合、又は(ブレーキを作動させる前の)速度が比較的大きい場合、ディテントの位置の精密性は比較的大きな誤差を有する。特定の制動力には運動エネルギーを打ち消すためにより大きな制動距離が必要となる。しかし、殆どのCS/チューブスタンドサブシステム(特に高性能システム)は重い。次に、ブレーキは、CSシステムが目標位置に接近する際にあらかじめ起動されている必要があり、好適な制動時間を決定するのが難しい。制動力は、摩擦面の状態又は制動間隙の変化によっても変化する。
【0007】
さらに、制動力は操作者によって手動で加えられることがあり、従って力の値は予測しづらく操作者によって変動する。
【0008】
EP1157661は、オーバーシュート補正の計算手順を含む、X線管の配置における配置誤差を低減するためのディテント制御システムを導入した。しかし、その文献は、操作者により生じる誤差などのいくつかの因子を考慮できておらず、補正の有効性評価、又は制動動作工程中の補正のための再較正/調節状態も示していない。従って、改善されたディテント工程が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は特許請求の範囲によって定義される。
【0010】
本発明の一態様における例によれば、医療用撮像システムのためのディテント方法が提供され、上記方法は、
構成要素にブレーキが適用されるときに医療用撮像システムの移動可能構成要素によって移動される距離Sと、構成要素の速度Vとの間の制動関数F(S,V)を得るステップと、
ブレーキが適用される前の構成要素の測定速度Vを得るステップと、
目標位置P、測定速度V、及び制動関数F(S,V)に基づいて制動位置Pを求めるステップであって、ブレーキが、構成要素が制動位置Pに達したときに作動されるように構成されている、ステップとを有する。
【0011】
構成要素にブレーキが適用されるときに医療用撮像システムの移動可能構成要素によって移動される距離Sは、S=|P-P|のような制動位置Pと目標位置Pとの間の差として定義される。
【0012】
制動位置を求めるために制動関数を使用することで、ディテント方法は構成要素を目標位置で(又は少なくとも近傍で)停止させることが可能となる。制動位置は、構成要素を目標位置で停止させるために構成要素にブレーキが適用される必要がある位置を定義する。
【0013】
上記方法が、
構成要素が移動を停止した後に構成要素の測定位置Pを得るステップと、
測定位置Pが目標位置Pに対するディテント窓内に収まらない場合、
制動位置Pと測定位置Pとの間の距離Sと、
測定速度Vとに基づいて、制動関数F(S,V)を調節するステップとをさらに有する。
【0014】
この手法により、本方法は本質的に自動ディテント工程のための自動較正方法となる。ディテント工程は、構成要素が例えばレーリングシステムの特定の所定の目標位置に位置されることを可能にする。較正(すなわち制動関数の調節)は、構成要素が所定の目標位置から特定の「ディテント窓」内(例えば±1cm内)で停止することを保証する。構成要素がディテント窓の外で停止した場合、最新の移動データ(すなわち構成要素により移動された距離及び制動を開始する前の速度)がディテント工程を再較正するために使用される。
【0015】
ディテント工程は、ブレーキが適用されるときに構成要素が進んでいた速度に対して、構成要素にブレーキが適用されるときに構成要素がどこまで移動するかを定義する、制動関数に基づく。この関数は、経時的に(例えば制動システムの摩耗)又は外部のパラメータ(例えば温度)に基づいて変化する。
【0016】
従って、本発明者らは、構成要素の移動の後に関数が正しく働いているか(すなわち測定位置が目標位置と同様であるか)を確認して、もし正しく働いていない場合は最新の移動データに基づいて制動関数を調節することを提案する。
【0017】
本方法は、経時的に摩耗し構成要素(及び/又は構成要素の移動に関連するシステム)に設置される必要がある、複雑な機械部品の構成要素への追加を必要としない。さらに、機械的ディテント工程は通常、構成要素の運動エネルギーの急激な変化によって構成要素に振動を起こす。
【0018】
さらに、本方法では、(制動前の)測定速度が比較的高い場合でも、又は構成要素の質量が大きい場合でも、電気的ディテント工程で度々生じるようなより大きい誤差が出ない。
【0019】
構成要素は移動可能な構成要素である。構成要素はDXR天井吊り下げサブシステム又はチューブスタンドサブシステムなどの移動可能な医療用構成要素である。
【0020】
制動関数F(S,V)はS∝Vである二次関数である。本発明者らは、制動関数がエネルギー保存に基づいた二次関数に近似され得ることを認識した。構成要素の運動エネルギーは
【数1】
と等しく、ここでmは構成要素の質量であり、Vは構成要素の速度である。ブレーキによって吸収されるエネルギーはおよそfSであり、ここでfは構成要素に作用する(例えば制動力、摩擦による力、及び構成要素への操作力を含む)合力であり、Sは制動時に構成要素により進まれる距離である。
【0021】
操作力は操作者(すなわち構成要素を動かす操作者)によって手動で加えられてもよい。操作力の値は、他のいくつかの力と比較して著しく予測がしづらい。これは操作者の所作を予測することが難しいためである。例えば、操作者の所作が制動関数を最初に較正した作業者の所作と著しく異なる場合、制動関数はもはや正確性を保証することができなくなる。従って、構成要素の1回又は複数回の移動の後に制動関数を調節することが有利である。これにより、制動関数が操作者の特定の所作に確実に馴染むようになる。
【0022】
制動関数F(S,V)は、構成要素によって移動される距離Sと構成要素の速度Vとの間の二次関数S=KVであり、ここでKは較正定数であり、制動関数S=KVを調節することは較正定数Kの値を調節することを有する。
【0023】
制動関数は、エネルギー保存方程式に他の項が関係しないと想定される場合、
【数2】
として定義される。合力及び質量は一定であると想定されてもよく、従って制動関数は、1つの定数
【数3】
を有する二次方程式として定義されてもよい。定数Kはm及びFの推定値に基づいて推定される。代替的に、定数は測定値S及びVに基づいて計算される。
【0024】
方程式S=KVの使用は、制動関数をSとVとの間の線形関係にすることを可能にする。従って、較正される値Kを求めるためには、二対のS及びVの既知値のみが必要とされる。そのうち一対はS=0且つV=0であってもよい。
【0025】
制動関数F(S,V)は、構成要素によって移動される距離Sと構成要素の速度Vとの間の二次関数S=aV+bV+cであり、ここでa、b、及びcは較正定数であり、制動関数S=aV+bV+cを調節することは較正定数a、b、及びcのうちの1つ又は複数の値を調節することを有する。
【0026】
制動関数に影響する他の因子を考慮することも有益である。例えば、制動開始と構成要素が制動を開始する時間との間には時間遅延が存在する場合がある。これは、制動関数が
【数4】
になることを意味し、ここでΔtは制動開始と制動し始める構成要素との間の時間遅延であり、一定値に近似され得る。
【0027】
さらに、測定速度は精密でなくてもよく、又は速度を測定するために使用される速度センサは偏りを有していてもよい。従って、制動関数は
【数5】
となり、ここでΔVは速度測定における偏り又は誤差であり、一定値に近似され得る。
【0028】
従って、本発明者らは、制動関数が一般的二次関数S=aV+bV+cとしてより良好に近似されることを認識した。
【0029】
制動位置Pを求めることは、測定速度Vを制動関数F(S,V)へ適用することに基づいて制動距離Sを求めることと、目標位置Pと制動距離Sとの差に基づいて制動位置Pを求めることとを有する。
【0030】
制動関係F(S,V)を得ることは、ブレーキが作動されるときに構成要素により進まれる少なくとも2つの測定距離Sを得ることと、少なくとも2つの測定距離Sのそれぞれに対する、制動が開始したときの構成要素の速度に対応する少なくとも2つの測定速度Vを得ることと、少なくとも二対の[S,V]に対して関数F(S,V)を当てはめることと、を有する。
【0031】
本発明は、処理システムを有する演算デバイスで実行されるとき処理システムにディテント方法の全てのステップを行わせるコンピュータプログラムコードを備えるコンピュータプログラムも提供する。
【0032】
本発明は、医療用撮像システムのためのディテント方法を行うためのシステムも提供し、上記システムが、
構成要素にブレーキが適用されるときに医療用撮像システムの移動可能構成要素によって移動される距離Sと、構成要素の速度Vとの間の制動関数F(S,V)を得ることと、
ブレーキが適用される前の構成要素の測定速度Vを得ることと、
目標位置P、測定速度V、及び制動関数F(S,V)に基づいて制動位置Pを求めることとを行うように構成されたプロセッサを備え、ブレーキは、構成要素が制動位置Pに達したときに作動されるように構成されている。
【0033】
上記プロセッサは、構成要素の移動が停止した後に構成要素の測定位置Pを得て、測定位置Pが目標位置Pに対するディテント窓内に収まらない場合、制動位置Pと測定位置Pとの間の距離Sと、測定速度Vとに基づいて、制動関数F(S,V)を調節するように、さらに構成されている。
【0034】
制動関数F(S,V)はS∝Vである二次関数である。例えば、制動関数F(S,V)は、構成要素によって移動される距離Sと構成要素の速度Vとの間の二次関数S=KVであり、ここでKは較正定数であり、プロセッサは較正定数Kの値を調節することによって制動関数S=KVを調節するように構成されている。
【0035】
制動関数F(S,V)は、構成要素によって移動される距離Sと構成要素の速度Vとの間の二次関数S=aV+bV+cであり、ここでa、b、及びcは較正定数であり、プロセッサは較正定数a、b、及びcのうちの1つ又は複数の値を調節することによって制動関数S=aV+bV+cを調節するように構成されている。
【0036】
上記システムは、構成要素が配置レールに置かれる1つ又は複数の配置レールと、構成要素を配置レールに沿って移動させるように構成された移動システムと、構成要素の移動を停止するように構成された制動システムと、を備える。
【0037】
上記システムは、構成要素の測定位置Pを得るように構成された位置センサと、構成要素の測定速度Vを決定するように構成された速度センサとのうちの1つ又は複数をさらに備える。
【0038】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態への参照により明らかになり明瞭になるであろう。
【0039】
本発明のよりよい理解のために、且つ本発明がどのように実施されるかをより明確に示すために、以下より単なる例として添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】従来のDXR天井吊り下げシステムの図である。
図2】従来のチューブスタンドシステムの図である。
図3】特許請求の範囲によるディテント方法のフローチャートである。
図4】レール上を速度Vで移動する構成要素の図である。
図5】制動関数を調べるために使用される二次曲線である。
図6】制動距離Sと測定速度Vの二乗との間の例示的関係の図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は図面を参照して説明される。
【0042】
詳細な説明及び具体的な例は、装置、システム、及び方法の例示的実施形態を示している一方で、例示のみを目的とすることが意図され本発明の範囲を限定することは意図されないことを理解されたい。本発明の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるであろう。図面は単に概略的なものであり縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。また、図面全体を通して同一の参照符号は同一又は同様の部分を示すために使用されることも理解されたい。
【0043】
本発明は医療用撮像システムのためのディテント方法を提供する。本方法は、構成要素にブレーキが適用されるときに医療用撮像システムの移動可能構成要素によって移動される距離Sと構成要素の速度Vとの間の制動関数F(S,V)を得るステップと、ブレーキが適用される前の構成要素の測定速度Vを得るステップとを有する。制動位置Pが、目標位置P、測定速度V、及び制動関数F(S,V)に基づいて求められ、ブレーキは、構成要素が制動位置Pに達したときに作動されるように構成されている。
【0044】
システム
図1は従来のDXR天井吊り下げ(CS)システム100の図である。CSシステム100は、本発明が適用される、可能な医療用撮像システムの一例である。CSシステム100は、天井から吊り下げられており、レール108を介して移動可能なスキャナ102を備える。CSシステム100は、レール108を介して移動可能な壁スタンド104、及びテーブル106も備える。テーブルも移動可能であってもよい。本発明は、スキャナ102、壁スタンド104、及び/又はテーブル106を移動させるために使用される。
【0045】
図2は従来のチューブスタンドシステム200の図である。チューブスタンドシステム200は、本発明が適用される、可能な医療用撮像システムの他の例である。チューブスタンドシステム200は、レール108を介して鉛直方向に移動されるスキャナ102を備える。スキャナ102は、床上の追加のレールを介して水平方向に移動するようにも構成されていてもよい。チューブスタンドシステム200は、レール108を介して移動可能な壁スタンド104、及びテーブル106も備える。テーブルも移動可能であってもよい。本発明は、スキャナ102、壁スタンド104、及び/又はテーブル106を移動させるために使用される。
【0046】
移動する構成要素を備える他の医療用撮像システム(例えばX線スキャナ、超音波スキャナ、CTスキャナなど)も使用される。
【0047】
図3は特許請求の範囲によるディテント方法のフローチャートである。工場での手直し(debugging)中又は現場設置時の手直し中、制動距離Sとブレーキを作動させる前の測定速度Vとの間の初期関係F(S,V)を得るために、較正が行われる。
【0048】
(フローチャートによる)アルゴリズムは、リアルタイムで、ステップ302において、例えば位置センサ(例えば位置メータ(potential meter)若しくはアブソリュートエンコーダ(absolute encoder))又は速度センサのデータに基づいて移動可能構成要素の測定速度Vを決定する。ステップ304において、ユーザが構成要素を停止させたい位置を定義する目標位置P(すなわちディテント位置)も得られる。ステップ306において、速度Vが初期関係F(S,V)に入力され、必要とされる制動距離Sを計算し、従ってステップ308において、制動距離Sと目標位置Pとの間の差に基づいて制動位置Pが求められ得る。
【0049】
構成要素が制動位置Pにあることを検知された後、構成要素を停止させるためにステップ310でブレーキが作動される。構成要素は、ブレーキによって自然にゼロまで減速し、目標位置Pで停止することとなる。
【0050】
ステップ312において、構成要素が実際に停止した位置Pも測定される。ステップ314で測定位置Pが所定のディテント窓(例えば±1cm)の外側にある場合、ステップ316において、制動関数F(S,V)は測定速度V及び制動位置Pと測定位置Pとの間の制動距離Sに基づいて修正される必要がある。
【0051】
ステップ316における制動関数F(S,V)の調節は、再較正を誘発するための1つ又は複数の規則(例えばディテント窓内での停止の2回連続の失敗)に基づくことが好ましい。いくつかの場合において、構成要素の特定の動作は、偶発的なものであるか又は構成要素を(例えば動作の操作を誤った操作者が)手動で動かすことにより一般的ふるまいとは特に異なる。従って、再較正を誘発するステップ(すなわちボックス316)は、偶発的なデータに基づいて制動関数F(S,V)を調節することを避けるために、より複雑な規則の組を有する。1つの特定の規則は、2回の連続的な移動が所定のディテント窓の外に出た後にのみ制動関数F(S,V)を調節することである。
【0052】
制動関数F(S,V)の調節316は、本質的には、制動関数F(S,V)の再較正である。アルゴリズムが前述のチェックを構成要素の各動作で行うのならば、そのアルゴリズムは、本質的には、ディテントの精密性を保つ自動再較正アルゴリズムである。
【0053】
制動関数
以下より、どのように制動関数の形態が得られるかが説明される。まず、以下の変数の組が(図2に示されるチューブスタンドシステム200のための例示的値を伴って)定義される。
S- 制動距離、
- 測定速度(例えば25cm/s)、
- 制動力(例えば270N)、
M- 構成要素の質量(例えば390kg)、
- 摩擦力(例えば40N)、
- 操作力、及び
t- ブレーキを作動させてから構成要素が停止するまでの時間。
【0054】
エネルギーの保存に基づいて構成要素の運動エネルギーを構成要素に加えられる力のエネルギーと同一視することによって、最初の方程式が得られ得る。
【数6】
【0055】
ブレーキの作動とブレーキの働き始めとの間の時間遅延Δtを考慮することによって、最初の方程式が修正され得る。
【数7】
【0056】
制動力fが安定し最大値に達するために時間を要することを考慮することによって、最初の方程式がさらに修正され得る。従って、制動力fは平均制動力
【数8】
に修正され得る。
【数9】
【0057】
ここで、
【数10】
である。
【0058】
ユーザは操作力を頻繁に変更することもできる。操作力はユーザによって手動で加えられる力であり、典型的には予測困難である。一般的には、操作力は、特定のユーザ、ユーザの身体的状態(例えば怪我など)、又は時刻(例えばユーザは一日の終盤では疲弊しておりより小さい力を加える可能性がある)に基づいてすら変動する。
【0059】
従って、最初の方程式において、操作力fは平均操作力
【数11】
に修正され得る。
【数12】
【0060】
ここで、
【数13】
又は
【数14】
である。
【0061】
同様に、異なる位置では摩擦力も異なる。従って、摩擦力fは平均摩擦力
【数15】
に修正され得る。
【数16】
【0062】
ここで、
【数17】
又は
【数18】
である。
【0063】
さらに、測定速度は完全に正確ではなく、従って最初の方程式が
【数19】
に修正されるように、速度誤差(又は速度の偏り)ΔVが考慮される。
【0064】
従って、最初の方程式に対する上記の全ての可能な修正を考慮することによって、
【数20】
のような修正された方程式が構築される。
【0065】
ここでfは、構成要素に加えられる全ての(平均的な)力の合計である。この方程式は明らかに二次方程式である。制動距離Sは、目標位置Pと制動位置Pとの間の距離として定義され得る。従って、一般方程式は、
【数21】
で構築される。
【0066】
ここで、a、b、及びcは上述の修正された方程式に基づく定数である。
【0067】
図4はレール108上を速度Vで移動する構成要素402の図である。目標位置P及び対応する制動位置Pが示されている。また、ディテント窓404も示されている。ユーザは、ボタンを押してブレーキを無効化し、構成要素402を所定の位置(すなわち目標位置P)に手動で移動させる。その後、アルゴリズムが制動位置Pでブレーキを作動させ、構成要素402が停止した測定位置Pを記録する。構成要素402がディテント窓404内で停止する場合、制動関数を再較正する(例えば上述の一般方程式の定数a、b、及びcを調節する)必要はない。しかし、構成要素402がディテント窓404内で停止しない場合、方程式の正確性/精密性を改善するために方程式の定数が調節/再較正される必要がある。再較正は、一連の規則(例えば、2回の連続的な移動がディテント窓の外に出ること、2回の連続的な移動の間の間隔が1時間などの所定の時間未満であることなど)に基づく。
【0068】
移動は操作力によって開始されることが多い。多くの異なる因子に基づいて、操作力はブレーキが係合されるとき加えられ続ける場合があり、そうでない場合もある。最も重要な因子の1つは、異なるユーザ(すなわち操作者)の特定の所作/癖である。
【0069】
幾人かの操作者は構成要素402が完全に停止するまで操作力を加え続ける。この種の所作は、ディテントの正確性に自信があるユーザに典型的である。他の操作者はブレーキが最初に適用され次第すぐに力を加えるのを止め、それにより平均操作力が減じる。通常、操作力は構成要素402の質量に対して小さい。しかし、操作力のばらつきにより、制動関数は異なる操作者がシステムを使用するたびに調節(すなわち再較正)されなくてはならない。
【0070】
図4中の構成要素402は鉛直方向に移動するように示されている。しかし、構成要素402は水平方向に(又は必要であれば斜めにさえ)移動してもよいことを理解されたい。鉛直方向に移動するとき、重力による力に抗するために、構成要素402に一定の制動力が加えられる。
【0071】
図5は制動関数を調べるために使用される二次曲線502を示す。制動関数を最初に較正するために、目標位置Pでブレーキが起動される。その後、対応する速度V、及び構成要素が停止する目標位置Pからの距離Sが測定される。その後、これが3つの異なる速度で少なくとも3回繰り返される。その後、定数a、b、及びcを得るために、3つの較正測定値504がプロットされ二次曲線502に当てはめられてもよい。いくつかの場合において、定数b及び/又はcは無視可能とみなされ、従って2つのみの(又はたった1つの)測定値が必要となる。
【0072】
図6は制動距離Sと測定速度Vの二乗との間の例示的関係の図である。方程式8の定数b及びcを無視可能とみなすことによって、方程式(8)による複雑な関数の代わりに、SとVの二乗との間の線形関数が使用される。
【数22】
【0073】
定数Kの実数値は線602に示される。線604及び606は、Kの実数値に近い定数Kの代替値を伴う関数を示す。太線608は定数Kの2つの異なる値についてブレーキが適用される際の構成要素の速度の変化を示す。線604に対応する関数が制動関数として使用されるとき、対応する制動位置はPB1である。構成要素が制動位置PB1に到達するとすぐにブレーキが作動され、構成要素の速度は経時的に下がり始める。速度が下がり始める率はKの実数値に対応し、従って太線608は、Kの実数値に対応する線602に平行である。(線604に対応する)使用される制動関数は完全に正確ではないため、構成要素が完全に停止する位置Pm1は目標位置Pと全く同じ位置にはならない。しかし、測定位置Pm1はディテント窓404内に収まり、従って再較正する必要はない。
【0074】
線606に対応する関数が制動関数として使用されるときにも同様の状況が生じる。構成要素が制動位置PB2に到達すると、線402によって規定される率で速度が下がり始め、目標位置Pより少し後の位置Pm2で停止する。測定位置Pm2はディテント窓404内にあり、従って再較正は必要とされない。
【0075】
従って、制動関数の正確性が選択されるディテント窓404の大きさに依存することは明らかである。
【0076】
当業者は本明細書に記載される任意の方法を行うためのプロセッサを容易に開発することが可能である。従って、フローチャートの各ステップは、プロセッサによって行われる異なる行為を表し、プロセッサのそれぞれのモジュールによって行われる。
【0077】
上述のように、システムはデータ処理を行うためにプロセッサを使用する。プロセッサは、必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて多数の手法で実装され得る。プロセッサは、必要とされる機能を実行するために、ソフトウェア(例えばマイクロコード)を用いてプログラムされる1つ又は複数のマイクロプロセッサを典型的には採用している。プロセッサは、いくつかの機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するための1つ若しくは複数のプログラムされたマイクロプロセッサ並びに関連する回路との組み合わせとして実装される。
【0078】
本開示の様々な実施形態に採用される回路の例には、従来型のマイクロプロセッサ、特定用途用集積回路(ASIC)、及び現場プログラム可能ゲートアレイ(FPGA)が含まれるが、それらに限定されない。
【0079】
様々な実装形態において、プロセッサは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROMの(登録商標)ような揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなどの1つ又は複数の記憶媒体と関連付けられる。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又は制御装置で実行されるときに必要とされる機能を実行する1つ又は複数のプログラムにより符号化される。様々な記憶媒体は、それに記憶される1つ又は複数のプログラムがプロセッサにロードされ得るように、プロセッサ若しくは制御装置内に固定されているか又は可搬式である。
【0080】
開示される実施形態の変形形態が、図面、開示内容、及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求された発明を実施する当業者によって理解され得る。特許請求の範囲において、「備える」という語は他の要素又はステップを排除せず、単数形の要素は複数性を排除しない。
【0081】
単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に記載されるいくつかのアイテムの機能を果たす。
【0082】
特定の手段が相互に異なる従属項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0083】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又は一部として供給される光学記憶媒体又は固体媒体などの好適な媒体に記憶/分配されるが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介するような他の形態でも分配される。
【0084】
用語「適合される」が特許請求の範囲又は明細書で使用される場合、用語「適合される」は用語「構成される」と等価であることが意図されることに留意されたい。
【0085】
特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】