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特表2024-535361TPO模倣融合タンパク質および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】TPO模倣融合タンパク質および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240920BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240920BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20240920BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240920BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240920BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240920BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C07K19/00
A61K38/17
A61K48/00
A61P7/04
A61P1/16
A61P35/00
A61P37/06
C07K16/24 ZNA
C07K14/47
C07K16/46
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N7/01
C12P21/08
C12P21/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518407
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 CN2022120948
(87)【国際公開番号】W WO2023046085
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/120388
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522480621
【氏名又は名称】シチュアン クロバー バイオファーマシューティカルズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ペン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA31
4C084BA35
4C084BA41
4C084DA25
4C084DA45
4C084MA13
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
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4C084MA66
4C084MA67
4C084NA14
4C084ZA53
4C084ZA75
4C084ZB02
4C084ZB08
4C084ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、いくつかの態様において、TPO受容体(TPOR)アゴニストとしてのトロンボポエチン模倣ペプチドのような、トロンボポエチン(TPO)活性を有する組換えペプチドおよびタンパク質に関する。いくつかの態様において、前記組換えペプチドまたはタンパク質は、IgG1 Fc断片を介して連結した組換えヒトp75 TNF受容体およびTPO模倣ペプチドを含む。いくつかの態様において、前記組換えペプチドは、Fc領域の鎖間ジスルフィド結合を通じてホモ二量体を形成し、C末端の六つのTPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインを含む。いくつかの態様において、本発明によって提供される組換えペプチドまたはタンパク質は、血小板減少症の治療のような、血小板数を増加させるために使用されることができる。本発明は、前記組換えペプチドおよびタンパク質を産生するための方法、製剤および治療方法をさらに提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍壊死因子(TNF)結合および/または阻害部分、ならびにトロンボポエチン受容体(TPOR)結合および/または活性化部分を含む、ポリペプチド。
【請求項2】
前記TNF結合および/または阻害部分は、TNF-αに結合したTNFR部分または抗TNF-α抗体またはその抗原結合断片であり、ここで、前記TPOR結合および/または活性化部分は、TPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインを含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記TNF結合および/または阻害部分は、ヒトTNFR2(p75)もしくはその機能的断片もしくは変異体またはヒトTNFR1(p55)もしくはその機能的断片もしくは変異体を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記TNF結合および/または阻害部分は、ヒトTNFR2の細胞外部分であることを特徴とする、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記TNF結合および/または阻害部分は、インフリキシマブ(例えば、Remicade(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片、ゴリムマブ(例えば、Simponi(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片、アダリムマブ(例えば、Humira(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片、および/またはセルトリズマブ(例えば、Cimzia(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片であるか、または含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記TPOR結合および/または活性化部分は、一つ、二つ、三つまたはそれ以上のTPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
二つのTPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメイン間の一つまたは複数のスペーサーを含むことを特徴とする、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記TPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインは、ヒトトロンボポエチン(TPO)に由来することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記TPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインは、ヒトトロンボポエチン模倣(TPM)ペプチドを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記TNF結合および/または阻害部分は、免疫グロブリンFc部分を介して前記TPOR結合および/または活性化部分に連結されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記免疫グロブリンFc部分は、IgG、IgM、IgD、IgAもしくはIgEのFc領域またはその断片または変異体を含むことを特徴とする、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記免疫グロブリンFc部分は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4のFc領域またはその断片または変異体を含むことを特徴とする、請求項10または11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記TNF結合および/または阻害部分は、前記免疫グロブリンFc部分に融合され、前記免疫グロブリンFc部分は、前記TPOR結合および/または活性化部分にさらに融合されることを特徴とする、請求項10~12のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記TNF結合および/または阻害部分のC末端は、前記免疫グロブリンFc部分のN末端に融合され、前記免疫グロブリンFc部分のC末端は、前記TPOR結合および/または活性化部分のN末端に融合されることを特徴とする、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
以下の分子式の配列を含み、
TNFR-Fc-(S)m-TPORBD-(S)n-TPORBD-(S)p-TPORBD
ここで、
TNFRは、腫瘍壊死因子受容体またはその断片または変異体であり、
Fcは、免疫グロブリンFc領域またはその断片または変異体であり、
TPORBD、TPORBDおよびTPORBDは、同じまたは異なるTPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインであり、
、SおよびSは、同じまたは異なるスペーサーであり、
m、nおよびpは、0以上であり、互いに独立した整数であることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記TNFRは、SEQ ID NO:4に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことを特徴とする、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記Fcは、SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことを特徴とする、請求項14~16のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
野生型ヒトFcと比較して、前記Fcは、少なくとも一つのN-グリコシル化部位突然変異を含み、選択可能で、前記N-グリコシル化部位突然変異は、SEQ ID NO:2のN317に対応するKabat番号付けN314(EU番号付けN297)に位置することを特徴とする、請求項14~17のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
m、nおよびpは、1~10から独立して選択されることを特徴とする、請求項14~18のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
、SおよびSは、それぞれペプチドリンカーであることを特徴とする、請求項14~19のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項21】
、SおよびSは、それぞれ、複数のグリシン、アラニン、セリンおよび/またはロイシン残基を含むことを特徴とする、請求項14~20のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
、SおよびSは、それぞれ、少なくとも五つの連続したグリシン残基を含むことを特徴とする、請求項14~21のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項23】
TPORBD、TPORBDおよびTPORBDは、それぞれ、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことを特徴とする、請求項14~22のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
(S)m-TPORBD-(S)n-TPORBD-(S)p-TPORBDは、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことを特徴とする、請求項14~23のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことを特徴とする、請求項14~24のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
シグナルペプチドをさらに含むことを特徴とする、請求項14~25のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項27】
前記シグナルペプチドは、SEQ ID NO:3に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことを特徴とする、請求項26に記載のポリペプチド。
【請求項28】
前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことを特徴とする、請求項14~27のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項29】
前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に従って番号付けされたC18-C31、C32-C45、C35-C53、C56-C71、C78-C88、C78-C96、C98-C104、C112-C121、C115-C139、C142-C157、C163-C178、C281-C341およびC387-C445の少なくとも一つ、少なくとも二つまたはすべてのポリペプチド内ジスルフィド結合対を含むことを特徴とする、請求項14~28のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項30】
前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に従って番号付けされたC240、C246および/またはC249でポリペプチド間ジスルフィド結合を形成することができることを特徴とする、請求項14~29のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか1項に記載のポリペプチドの二量体を含む錯体。
【請求項32】
二つのポリペプチド分子間の一つまたは複数のポリペプチド間ジスルフィド結合を通じて前記二量体を形成することを特徴とする、請求項31に記載の錯体。
【請求項33】
前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10に示される配列を含み、前記錯体は、C18-C31、C32-C45、C35-C53、C56-C71、C78-C88、C78-C96、C98-C104、C112-C121、C115-C139、C142-C157、C163-C178、C281-C341およびC387-C445のうちの一つまたは複数のポリペプチド内ジスルフィド結合を含み、前記錯体は、SEQ ID NO:2に従って番号付けされたC240-C240、C246-C246およびC249-C249のうちの一つまたは複数のポリペプチド間ジスルフィド結合を含むことを特徴とする、請求項31または32に記載の錯体。
【請求項34】
請求項1~30のいずれか1項に記載のポリペプチドおよび/または請求項31~33のいずれか1項に記載の錯体、ならびに薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項35】
請求項34に記載の医薬組成物、および前記医薬組成物を使用して疾患または病症を治療する説明書を含むキット。
【請求項36】
請求項1~30のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする、および/または請求項31~33のいずれか1項に記載の錯体を産生するために示される、単離された核酸。
【請求項37】
TNF結合および/または阻害部分をコードする第1の核酸配列および免疫グロブリンFc部分をコードする第2の核酸配列は、インフレームに位置し、前記第2の核酸配列およびTPOR結合および/または活性化部分をコードする第3の核酸配列は、インフレームに位置することを特徴とする、請求項36に記載の単離された核酸。
【請求項38】
前記単離された核酸は、プロモーター配列に作動可能に連結されることを特徴とする、請求項36または37に記載の単離された核酸。
【請求項39】
前記単離された核酸は、DNA分子であることを特徴とする、請求項36~38のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項40】
前記単離された核酸は、RNA分子であり、選択可能に、ヌクレオシド修飾mRNA、非増幅mRNA、自己増幅mRNAまたはトランス増幅mRNAのようなmRNA分子であることを特徴とする、請求項36~38のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項41】
請求項36~40のいずれか1項に記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項42】
請求項36~40のいずれか1項に記載の単離された核酸および/または請求項41に記載のベクターを含み、選択可能で、前記細胞は、哺乳動物細胞であり、選択可能で、前記哺乳動物細胞は、CHO細胞である、顆粒、ウイルス、ウイルス様構造、細胞または細胞様構造。
【請求項43】
前記組換え融合タンパク質を産生するのに適した条件下で請求項42に記載の細胞を培養することを含む、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10に示されるポリペプチド配列を含む組換え融合タンパク質を産生するための方法。
【請求項44】
必要とする被験者の疾患または症状の治療に使用される、請求項1~30のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項31~33のいずれか1項に記載の錯体、請求項34に記載の医薬組成物、請求項35に記載のキット、請求項36~40のいずれか1項に記載の単離された核酸、請求項41に記載のベクターおよび/または請求項42に記載の顆粒、ウイルス、ウイルス様構造、細胞または細胞様構造の用途。
【請求項45】
必要とする被験者の疾患または病症を治療するための薬物の生産における、請求項1~30のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項31~33のいずれか1項に記載の錯体、請求項34に記載の医薬組成物、請求項35に記載のキット、請求項36~40のいずれか1項に記載の単離された核酸、請求項41に記載のベクターおよび/または請求項42に記載の顆粒、ウイルス、ウイルス様構造、細胞または細胞様構造の用途。
【請求項46】
被験者に有効量の請求項1~30のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項31~33のいずれか1項に記載の錯体、請求項34に記載の医薬組成物、請求項35に記載のキット、請求項36~40のいずれか1項に記載の単離された核酸、請求項41に記載のベクターおよび/または請求項42に記載の顆粒、ウイルス、ウイルス様構造、細胞または細胞様構造を投与することを含む、必要とする被験者の疾患または病症を治療するための方法。
【請求項47】
SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含む有効量の組換え融合タンパク質を被験者に投与することを含む、必要とする被験者を治療するための方法。
【請求項48】
前記組換え融合タンパク質は、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:10に示される配列を有するポリペプチドの二量体を含むことを特徴とする、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記被験者の巨核球および/または血小板のレベルは、投与後に増加されることを特徴とする、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
投与前、参照レベルと比較して、前記被験者は、より低い巨核球および/または血小板のレベルを有するか、有する傾向があるか、または有すると予想されることを特徴とする、請求項47~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
投与前、前記被験者は、血小板減少症を患っていることを特徴とする、請求項47~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記血小板減少症は、免疫性疾患、肝臓の炎症および/または損傷、薬物療法、放射線療法および/または手術によって引き起こされ、および/またはそれに関連して生じることを特徴とする、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記血小板減少症は、肝線維症、脂肪肝、肝炎(例えば、B型肝炎およびC型肝炎)または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)によって引き起こされ、および/またはそれに関しることを特徴とする、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記血小板減少症は、免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、ITP)によって引き起こされ、および/またはそれに関し生じ、選択可能で、前記ITPは、慢性ITPであることを特徴とする、請求項51または52に記載の方法。
【請求項55】
前記血小板減少症は、化学療法、免疫腫瘍学療法または化学療法と免疫腫瘍学療法との組み合わせによって引き起こされ、および/またはそれに関し、選択可能で、前記免疫腫瘍学療法は、免疫チェックポイント阻害剤療法であることを特徴とする、請求項51~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記血小板減少症は、化学療法誘発性血小板減少症(CIT)であることを特徴とする、請求項51~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記血小板減少症は、カルボプラチン、および/またはニボルマブ、ペンブロリズマブ、ドスタルリマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブまたはセミプリマブまたはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片の薬物の治療によって引き起こされ、および/またはそれに関しることを特徴とする、請求項51~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記組換え融合タンパク質は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、埋め込み、吸入、くも膜下腔内、心室内または鼻腔内経路によって投与されることを特徴とする、請求項47~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記組換え融合タンパク質は、単回投与されるか、または一つまたは複数の間隔で複数回投与されることを特徴とする、請求項47~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記組換え融合タンパク質は、週に1回投与されることを特徴とする、請求項47~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記組換え融合タンパク質は、週に2回投与されることを特徴とする、請求項47~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記組換え融合タンパク質は、2週間ごとに、またはそれ以上の間隔で1回投与されることを特徴とする、請求項47~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記組換え融合タンパク質は、化学療法、免疫腫瘍学療法または化学療法と免疫腫瘍学療法との組み合わせの最初の投与から24時間以内に投与されることを特徴とする、請求項47~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記組換え融合タンパク質は、体重に基づいて0.01μg/kg~100mg/kgの用量で投与されることを特徴とする、請求項47~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記組換え融合タンパク質は、体重に基づいて0.1μg/kg~10mg/kgの用量で投与されることを特徴とする、請求項47~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記被験者は、癌、腫瘍および/または自己免疫性疾患を患っていることを特徴とする、請求項44~64のいずれか1項に記載の用途または方法。
【請求項67】
前記被験者の血小板産生は、刺激され、前記被験者体内において、巨核球を攻撃する細胞の増殖および/または活性は、下方制御されることを特徴とする、請求項44~66のいずれか1項に記載の用途または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ASCIIテキストファイルとしての配列表の提出
【0002】
ASCIIテキストファイル提出の内容は、その全体が参照により組み込まれ、本発明の一部となる:配列表のコンピューター可読形態(CRF)(ファイル名:165762001240SEQLIST.TXT、記録日:2021年9月24日、大きさ:23KB)。
【0003】
本開示は、いくつかの態様において、トロンボポエチン(TPO)活性(例えば、トロンボポエチン受容体アゴニストおよび/またはトロンボポエチン模倣ペプチド)および腫瘍壊死因子α(TNF-α)受容体活性を有する融合ペプチドおよびタンパク質、ならびにそのような組換えペプチドおよびタンパク質を使用して血小板および/またはその前駆体の産生を増加させるための、血小板減少症を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
血小板減少症には、自己免疫性疾患(例えば、慢性免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病(ITP))、化学療法(例えば、化学療法誘発性血小板減少症(CIT))、免疫腫瘍学療法および肝臓の炎症または損傷を含む様々な病因がある。血小板輸血で重度の血小板減少症を改善することができる。しかしながら、血小板輸血を繰り返すと重篤な副作用が生じ、さらに血小板減少症が悪化する可能性がある。さらに、血小板の供給には限界がある。さらに、現在血小板減少症に使用できる薬物は、安全性のリスクによって制限されるか、または非常に頻繁な投与を必要とする。従って、血小板減少症の治療に対するニーズは、依然として満たされていない。腫瘍患者は、治療体験および生活の質を向上させるために、より安全、より効率的、より経済的、より便利な血小板減少症の治療法を必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施例において、本発明は、腫瘍壊死因子(TNF)結合および/または阻害部分、ならびにトロンボポエチン受容体(TPOR)結合および/または活性化部分を含むポリペプチドを開示する。いくつかの実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分は、TNF-αに結合したTNF受容体(TNFR)部分または抗TNF-α抗体またはその抗原結合断片であり、ここで、前記TPOR結合および/または活性化部分可は、TPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインを含む。
【0006】
本発明の任意の実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分は、ヒトTNFR2(p75)もしくはその機能的断片もしくは変異体またはヒトTNFR1(p55)もしくはその機能的断片もしくは変異体を含むことができる。本発明の任意の実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分(例えば、TNFR部分)は、ヒトTNFR2の細胞外部分であり得る。本発明の任意の実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分は、インフリキシマブ(例えば、Remicade(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、ゴリムマブ(例えば、Simponi(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、アダリムマブ(例えば、Humira(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、セルトリズマブ(例えば、Cimzia(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片を含む。
【0007】
本発明の任意の実施例において、前記TPOR結合および/または活性化部分は、一つ、二つ、三つまたはそれ以上のTPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインを含むことができる。本発明の任意の実施例において、前記ポリペプチドは、二つのTPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメイン間の一つまたは複数のスペーサーを含むことができる。本発明の任意の実施例において、前記TPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインは、ヒトトロンボポエチン(TPO)に由来することができる。本発明の任意の実施例において、前記TPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインは、ヒトトロンボポエチン模倣(TPM)ペプチドを含むことができる。
【0008】
本発明の任意の実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分および前記TPOR結合および/または活性化部分は、免疫グロブリンFc部分を介して連結されることができる。本発明の任意の実施例において、前記免疫グロブリンFc部分は、IgG、IgM、IgD、IgAもしくはIgEのFc領域またはその断片または変異体を含むことができる。本発明の任意の実施例において、前記免疫グロブリンFc部分は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4のFc領域またはその断片または変異体を含むことができる。
【0009】
本発明の任意の実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分は、前記免疫グロブリンFc部分に融合されることができ、前記免疫グロブリンFc部分は、前記TPOR結合および/または活性化部分にさらに融合されることができる。本発明の任意の実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分のC末端は、前記免疫グロブリンFc部分のN末端に融合されることができ、并且前記免疫グロブリンFc部分のC末端は、前記TPOR結合および/または活性化部分のN末端に融合されることができる。
【0010】
いくつかの実施例において、本発明は、以下の分子式の配列を含むポリペプチドを開示し、TNFR-Fc-(S)m-TPORBD-(S)n-TPORBD-(S)p-TPORBD、ここで、TNFRは、腫瘍壊死因子受容体またはその断片または変異体であり、Fcは、免疫グロブリンFc領域またはその断片または変異体であり、TPORBD、TPORBDおよびTPORBDは、同じまたは異なるトロンボポエチン受容体(TPOR)結合ドメインおよび/または活性化ドメインであり、S、SおよびSは、同じまたは異なるスペーサーであり、m、nおよびpは、0以上であり、互いに独立した整数である。
【0011】
本発明の任意の実施例において、前記TNFRは、SEQ ID NO:4に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0012】
本発明の任意の実施例において、前記Fcは、SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことができる。本発明の任意の実施例において、野生型ヒトFcと比較して、前記Fcは、少なくとも一つのN-グリコシル化部位突然変異を含むことができ、選択可能で、前記N-グリコシル化部位突然変異は、Kabat番号付けN314(EU番号付けN297)に位置する。
【0013】
本発明の任意の実施例において、m、nおよびpは、1~10から独立して選択されることができる。本発明の任意の実施例において、S、SおよびSは、それぞれ、ペプチドリンカーを含むことができる。本発明の任意の実施例において、S、SおよびSは、それぞれ、複数のグリシン、アラニン、セリンおよび/またはロイシン残基を含むことができる。本発明の任意の実施例において、S、SおよびSは、それぞれ、約五つ~約八つの連続したグリシン残基を含むことができる。本発明の任意の実施例において、S、SおよびSの一つまたは複数は、少なくとも五つの連続したグリシン残基を含むことができる。本発明の任意の実施例において、TPORBD、TPORBDおよびTPORBDは、それぞれ、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことができる。本発明の任意の実施例において、(S)m-TPORBD-(S)n-TPORBD-(S)p-TPORBDは、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0014】
本発明の任意の実施例において、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことができる。本発明の任意の実施例において、前記ポリペプチドは、シグナルペプチドを含むことができる。本発明の任意の実施例において、前記シグナルペプチドは、SEQ ID NO:3に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことができる。本発明の任意の実施例において、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0015】
本発明の任意の実施例において、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に従って番号付けされたC18-C31、C32-C45、C35-C53、C56-C71、C78-C88、C78-C96、C98-C104、C112-C121、C115-C139、C142-C157、C163-C178、C281-C341およびC387-C445の少なくとも一つ、少なくとも二つまたはすべてのポリペプチド内ジスルフィド結合対を含むことができる。本発明の任意の実施例において、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に従って番号付けされたC240、C246および/またはC249でポリペプチド間ジスルフィド結合を形成することができる。
【0016】
いくつかの実施例において、本発明は、本開示の任意の実施例に記載のポリペプチドの二量体を含む錯体を開示する。いくつかの実施例において、二つのポリペプチド分子間の一つまたは複数のポリペプチド間ジスルフィド結合を通じて前記二量体を形成する。本発明の任意の実施例において、前記錯体内のポリペプチドは、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10に示される配列を含むことができ、前記錯体は、SEQ ID NO:2に従って番号付けされたC18-C31、C32-C45、C35-C53、C56-C71、C78-C88、C78-C96、C98-C104、C112-C121、C115-C139、C142-C157、C163-C178、C281-C341およびC387-C445のうちの一つまたは複数のポリペプチド内ジスルフィド結合を含むことができる。本発明の任意の実施例において、前記錯体内のポリペプチドは、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10に示される配列を含むことができ、前記錯体は、SEQ ID NO:2に従って番号付けされたC18-C31、C32-C45、C35-C53、C56-C71、C78-C88、C78-C96、C98-C115、C104-C112、C121-C139、C142-C157、C163-C178、C281-C341およびC387-C445のうちの一つまたは複数のポリペプチド内ジスルフィド結合を含むことができる。本発明の任意の実施例において、前記錯体は、SEQ ID NO:2に従って番号付けされたC240-C240、C246-C246およびC249-C249のうちの一つまたは複数のポリペプチド間ジスルフィド結合を含むことができる。本発明の任意の実施例において、前記錯体は、組換え融合タンパク質を含むことができる。
【0017】
いくつかの実施例において、本発明は、本開示の任意の実施例に記載のポリペプチドおよび/または錯体、ならびに薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、医薬組成物を開示する。
【0018】
いくつかの実施例において、本発明は、本開示の任意の実施例に記載の医薬組成物、および前記医薬組成物を使用して疾患または病症を治療する説明書を含む、キットを開示する。
【0019】
いくつかの実施例において、本発明は、本開示の任意の実施例に記載のポリペプチドをコードする、および/または本開示の任意の実施例に記載の錯体を産生するために使用される、ポリヌクレオチドまたは単離された核酸を開示する。前記ポリヌクレオチドまたは単離された核酸のいくつかの実施例において、TNF結合および/または阻害部分(例えば、TNFR部分)をコードする第1の核酸配列および免疫グロブリンFc部分をコードする第2の核酸配列は、インフレームに位置することができ、前記第2の核酸配列およびTPOR結合および/または活性化部分をコードする第3の核酸配列は、インフレームに位置することができる。本発明の任意の実施例において、前記単離された核酸は、プロモーター配列に作動可能に連結されることができる。本発明の任意の実施例において、前記単離された核酸は、DNA分子またはRNA分子であり得る。本発明の任意の実施例において、前記単離された核酸は、ヌクレオシド修飾mRNA、非増幅mRNA、自己増幅mRNAまたはトランス増幅mRNAのようなmRNA分子を含むことができる。
【0020】
いくつかの実施例において、本発明は、本開示の任意の実施例に記載の単離された核酸を含む、ベクターを開示する。いくつかの実施例において、本発明は、前記単離された核酸および/またはベクターを含む、顆粒、ウイルス、ウイルス様構造、細胞または細胞様構造を開示する。本発明の任意の実施例において、前記細胞は、哺乳動物細胞であり得、前記哺乳動物細胞は、CHO細胞であり得る。
【0021】
いくつかの実施例において、本発明は、前記組換え融合タンパク質を産生するのに適した条件下で細胞を培養することを含む、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10に示されるポリペプチド配列を含む組換え融合タンパク質を産生するための方法を開示する。
【0022】
いくつかの実施例において、本発明は、必要とする被験者の疾患または病症の治療に使用される、および/または前記疾患または病症を治療するための薬物を調製する、前記ポリペプチド、錯体、医薬組成物、キット、単離された核酸、ベクターおよび/または顆粒、ウイルス、ウイルス様構造、細胞または細胞様構造を開示する。
【0023】
いくつかの実施例において、本発明は、必要とする被験者の疾患または病症の治療に使用される、前記ポリペプチド、錯体、医薬組成物、キット、単離された核酸、ベクターおよび/または顆粒、ウイルス、ウイルス様構造、細胞または細胞様構造の用途を開示する。
【0024】
いくつかの実施例において、本発明は、必要とする被験者の疾患または病症を治療するための薬物の生産における、前記ポリペプチド、錯体、医薬組成物、キット、単離された核酸、ベクターおよび/または顆粒、ウイルス、ウイルス様構造、細胞または細胞様構造の用途を開示する。
【0025】
いくつかの実施例において、本発明は、被験者に有効量の前記ポリペプチド、錯体、医薬組成物、キット、単離された核酸、ベクターおよび/または顆粒、ウイルス、ウイルス様構造、細胞または細胞様構造を投与することを含む、必要とする被験者の疾患または病症を治療するための方法を開示する。
【0026】
いくつかの実施例において、本発明は、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含む有効量の組換え融合タンパク質を被験者に投与することを含む、必要とする被験者を治療するための方法を開示する。
【0027】
本発明の任意の実施例において、前記組換え融合タンパク質は、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10またはSEQ ID NO:1に示される配列を有するポリペプチドの二量体を含む。
【0028】
本発明の任意の実施例において、前記被験者の巨核球および/または血小板のレベルは、前記ポリペプチド、錯体(例えば、組換え融合タンパク質)、医薬組成物、キット、単離された核酸、ベクターおよび/または顆粒、ウイルス、ウイルス様構造、細胞または細胞様構造の投与後に増加される。
【0029】
本発明の任意の実施例において、投与前、参照レベルと比較して、前記被験者は、より低い巨核球および/または血小板のレベルを有するか、有する傾向があるか、または有すると予想されることができる。本発明の任意の実施例において、投与前、前記被験者は、血小板減少症を患っている可能性がある。いくつかの実施例において、前記血小板減少症は、免疫性疾患、肝臓の炎症および/または損傷、薬物療法、放射線療法および/または手術によって引き起こされ、および/またはそれに関連する。
【0030】
本発明の任意の実施例において、前記血小板減少症は、肝線維症、脂肪肝、肝炎(例えば、B型肝炎およびC型肝炎)または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)によって引き起こされ、および/またはそれに関する可能性がある。本発明の任意の実施例において、前記血小板減少症は、免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、ITP)によって引き起こされ、および/またはそれに関しる可能性がある。いくつかの実施例において、前記ITPは、慢性ITPである。本発明の任意の実施例において、前記血小板減少症は、化学療法、免疫腫瘍学療法または化学療法と免疫腫瘍学療法との組み合わせによって引き起こされ、および/またはそれに関しる可能性があり、選択可能で、前記免疫腫瘍学療法は、免疫チェックポイント阻害剤療法である。本発明の任意の実施例において、前記血小板減少症は、化学療法誘発性血小板減少症(CIT)であり得る。本発明の任意の実施例において、前記血小板減少症は、カルボプラチン、および/またはニボルマブ、ペンブロリズマブ、ドスタルリマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブまたはセミプリマブまたはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片の薬物の治療によって引き起こされ、および/またはそれに関しる可能性がある。
【0031】
本発明の任意の実施例において、前記ポリペプチド、錯体(例えば、組換え融合タンパク質)、医薬組成物、単離された核酸、ベクターおよび/または顆粒、ウイルス、ウイルス様構造、細胞または細胞様構造は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、埋め込み、吸入、くも膜下腔内、心室内または鼻腔内経路によって投与されることができる。本発明の任意の実施例において、前記組換え融合タンパク質は、単回投与されるか、または一つまたは複数の間隔で複数回投与されることができる。本発明の任意の実施例において、前記組換え融合タンパク質は、週に1回投与されることができる。本発明の任意の実施例において、前記組換え融合タンパク質は、週に2回投与されることができる。本発明の任意の実施例において、前記組換え融合タンパク質は、2週間ごとに、またはそれ以上の間隔で1回投与される。本発明の任意の実施例において、前記組換え融合タンパク質は、化学療法、免疫腫瘍学療法または化学療法と免疫腫瘍学療法との組み合わせの最初の投与から24時間以内に投与されることができる。本発明の任意の実施例において、前記組換え融合タンパク質は、体重に基づいて0.01μg/kg~100mg/kgの用量で投与されることができる。本発明の任意の実施例において、前記組換え融合タンパク質は、体重に基づいて0.1μg/kg~10mg/kgの用量で投与されることができる。本発明の任意の実施例において、前記被験者は、癌、腫瘍および/または自己免疫性疾患を患う可能性がある。本発明の任意の実施例において、前記被験者の血小板産生を刺激することができ、前記被験者体内において巨核球を攻撃する細胞の増殖および/または活性は、下方制御されることができる。本発明の任意の実施例において、前記被験者体内における制御性T細胞の増殖および/または活性は、下方制御されることができる。本発明の任意の実施例において、前記被験者体内における巨核球を攻撃する細胞傷害性T細胞の増殖および/または活性は、下方制御されることができる。
【0032】
本発明の任意の実施例において、前記ポリペプチドのTNF結合および/または阻害部分は、TNF-αに結合したTNFR部分(例えば、TNFR2部分、例えば、ヒトTNFR2の細胞外部分)および/またはその抗体または抗原結合断片を含むことができ、ここで、前記ポリペプチドのトロンボポエチン受容体(TPOR)結合および/または活性化部分は、一つ、二つ、三つまたはそれ以上のTPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメイン、例えば、二つ、三つまたはそれ以上のヒトトロンボポエチン模倣(TPM)ペプチド配列(例えば、SEQ ID NO:7に示される配列)を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)部分およびトロンボポエチン受容体(TPO受容体またはTPOR)結合部分を含む例示的な融合ポリペプチドの概略図を示す。N末端からC末端まで、前記融合ポリペプチドrhTNFR2-Fc-TPMは、組換えヒトTNFR2部分、Fc部分、トロンボポエチン受容体結合ドメインと中間スペーサーとを含むTPO模倣(TPM)部分を含む。
図2】rhTNFR2-Fc-TPM(ストック溶液または精製生成物)またはNplate(登録商標)の存在下でのBaF3/c-Mpl細胞成長曲線を示す。y軸は、CCK-8検出方法によって分析された細胞成長を表わし、x軸は、様々な化合物の濃度を表わす。
図3】0.5mg/mlのrhTNFR2-Fc-TPM、0.5mg/mlのNplate(登録商標)または陰性対照品で処理したBaF3/c-Mpl細胞におけるTPORおよびSTAT3リン酸化の分析を示す。
図4】皮下注射(「s.c」)または静脈内注射(「iv」)を介して、5、10、50、100または200μg/kgのrhTNFR2-Fc-TPMの単回用量で治療された健康なBalb/cマウスにおける体重変化を示す。50μg/kgのNplate(登録商標)を陽性対照品として使用し、PBS溶液を陰性対照品(「対照」)として使用する。
図5A】rhTNFR2-Fc-TPMの単回用量で治療された健康なBalb/cマウスおよびSDラットにおける血小板数の変化を示す。皮下注射(「s.c」)または静脈内注射(「iv」)を介して、5、10、50、100または200μg/kgのrhTNFR2-Fc-TPMの単回用量で治療された健康なBalb/cマウスにおける血小板数の変化を示す。50μg/kgのNplate(登録商標)を陽性対照品として使用し、PBS溶液を陰性対照品(「対照」)として使用する。
図5B】rhTNFR2-Fc-TPMの単回用量で治療された健康なBalb/cマウスおよびSDラットにおける血小板数の変化を示す。Nplate(登録商標)または溶媒対照品と比較して、rhTNFR2-Fc-TPMの単回用量で治療された健康なSDラットにおける血小板数の変化を示す。
図6】皮下注射を介して100、200または400μg/kgのrhTNFR2-Fc-TPMの単回用量で治療されたカルボプラチン誘発性CIT Balb/cマウスモデルにおける体重変化を示す。100μg/kgのNplate(登録商標)を陽性対照品として使用し、0.9% NaClを陰性対照品として使用する。
図7A】rhTNFR2-Fc-TPMの単回用量で治療された健康なBalb/cマウスおよびSDラットにおける血小板数の変化を示す。皮下注射を介して100、200または400μg/kgのrhTNFR2-Fc-TPMの単回用量で治療されたカルボプラチン誘発性CIT Balb/cマウスモデルにおける血小板数の変化を示す。100μg/kgのNplate(登録商標)を陽性対照品として使用し、0.9% NaClを陰性対照品として使用する。
図7B】rhTNFR2-Fc-TPMの単回用量で治療された健康なBalb/cマウスおよびSDラットにおける血小板数の変化を示す。Nplate(登録商標)または溶媒対照品と比較して、rhTNFR2-Fc-TPMの単回用量で治療されたCITマウスモデルにおける血小板数の変化を示す。
図8A】0.02mg/kg(低用量)、0.06mg/kg(中用量)または0.2mg/kg(高用量)で皮下投与されるか、または0.2mg/kgで静脈内投与されたrhTNFR2-Fc-TPMの単回用量後のSDラット体内におけるrhTNFR2-Fc-TPMの血清濃度を示す。rhTNFR2-Fc-TPMの単回用量投与後のSDラット体内におけるrhTNFR2-Fc-TPMの血清濃度を示す。
図8B】0.02mg/kg(低用量)、0.06mg/kg(中用量)または0.2mg/kg(高用量)で皮下投与されるか、または0.2mg/kgで静脈内投与されたrhTNFR2-Fc-TPMの単回用量後のカニクイザル体内におけるrhTNFR2-Fc-TPMの血清濃度を示す。rhTNFR2-Fc-TPMの単回用量投与後のカニクイザル体内におけるrhTNFR2-Fc-TPMの血清濃度を示す。
図9】0.02mg/kg(低用量)、0.06mg/kg(中用量)または0.2mg/kg(高用量)で皮下投与されるか、または0.2mg/kgで静脈内投与されたrhTNFR2-Fc-TPMの単回用量後のカニクイザルにおける血小板数の変化を示す。
図10】単回用量投与後の125I標識rhTNFR2-Fc-TPMの組織分布および排泄を示す。
図11A】患者1および患者2にrhTNFR2-Fc-TPMを単回用量で投与した後の薬力学曲線を示す。
図11B】患者1および患者2にrhTNFR2-Fc-TPMを単回用量で投与した後の薬力学曲線を示す。
図12】それぞれ患者1および患者2にrhTNFR2-Fc-TPMを単回用量で投与した後の薬物動態曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、融合ペプチドまたはタンパク質組成物、方法、並びに血小板減少症の治療、例えば、化学療法誘発性血小板減少症(CIT)、慢性免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病(ITP)、免疫腫瘍学療法による血小板減少症および肝臓の炎症または損傷に随伴する血小板減少症の治療に使用される、融合ペプチドまたはタンパク質の用途を提供する。いくつかの実施例において、本発明は、共有結合した二量体形態でCHO細胞から発現される融合タンパク質の組成物および使用方法を開示する。いくつかの実施例において、得られた融合タンパク質は、より安定した構造を有するジスルフィド結合ホモ二量体として分泌されるため、血小板減少症の治療においてTPOと比較してより長い半減期(例えば、血清半減期)を有する可能性がある。
【0035】
ロミプロスチム(Nplate(登録商標))は、慢性ITPの治療に適したTPO受容体(TPOR)アゴニストである。血小板減少性紫斑病(ITP)は、自己免疫性疾患に属し、通常、ステロイドタイプのホルモンで治療して、過剰に活性な免疫系を阻害する。研究では、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))等の抗TNF生物学的製剤がITPを効果的に治療できることを示す(McMinn JR Jr et al., Complete recovery from refractory immune thrombocytopenic purpura in three patients treated with etanercept. Am J Hematol. 2003 Jun;73(2):135-40)。いくつかの態様において、本発明は、一つまたは複数のTNF結合および/またはアンタゴニスト機能ドメイン(過剰に活性な免疫系を阻害できる)と一つまたは複数のTPOR結合および/またはアゴニストドメイン(ヒトTPO受容体に結合し、且つ活性化することにより、血小板数を増加させることができる)とを組み合わせた二重特異性組成物を提供する。
【0036】
免疫腫瘍学(IO)薬物(例えば、キイトルーダ(Keytruda)(登録商標)、オプジーボ(Opdivo)(登録商標)等の抗PD-1抗体療法、抗PD-L1抗体療法、抗CTLA-4抗体療法、および/または抗CD47抗体療法)も、血小板数の減少を引き起こす可能性がある。例えば、チェックポイント阻害剤療法の治療を受けた患者では、10%以上の患者で血小板数が減少し、1%の患者で重症度がグレード3~4に達する(Shiuan E et al., Thrombocytopenia in patients with melanoma receiving immune checkpoint inhibitor therapy. J Immunother Cancer. 2017 Feb 21;5:8; accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2021/125514s096lbl.pdf; and Calvo R. Hematological Side Effects of Immune Checkpoint Inhibitors: The Example of Immune-Related Thrombocytopenia. Front Pharmacol. 2019;10:454)。さらに、研究では、CD47がITPにおいて調節不全であることを示す(Catani L et al., The CD47 pathway is deregulated in human immune thrombocytopenia. Exp Hematol. 2011 Apr;39(4):486-94)。癌患者が化学療法、免疫療法または化学療法と免疫療法との組み合わせで治療されることができるため、本発明に開示される二重特異性組成物は、血小板数を増加させ、CITおよび/またはITPを治療するのに特に有用である。
【0037】
血小板数の減少は、肝硬変、肝線維症、脂肪肝、肝炎(例えば、B型肝炎およびC型肝炎)または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)等肝臓の炎症および/または損傷によって引き起こされ、および/またはそれに関しる可能性がある(Ramadori P et al., Platelets in chronic liver disease, from bench to bedside. JHEP Rep. 2019 Oct 25;1(6):448-459)。本発明は、TNF結合機能ドメインとトロンボポエチン(TPO)受容体結合ドメインとを組み合わせる融合ペプチドまたはタンパク質組成物を提供し、前記融合ペプチドまたはタンパク質組成物は、血小板数を増加させ、肝臓の炎症および/または損傷の症状を治療するために使用されることができる。
【0038】
いくつかの態様において、本発明は、組換えDNA技術を通じてCHO細胞によって産生される融合タンパク質を提供する。いくつかの実施例において、前記融合タンパク質は、ヒト腫瘍壊死因子(TNF)結合部分とヒトIgG1 Fc断片のN末端とを融合してから、Fc断片のC末端と、三つのトロンボポエチン(TPO)受容体結合ドメインを含む模倣ペプチドとを融合することによって産生されたホモ二量体糖タンパク質である。いくつかの実施例において、前記N末端のTNF結合および/または阻害部分は、TNF-αに結合することにより、自己免疫性疾患による血小板減少症を阻害する。いくつかの実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分は、TNF-αに結合および/または阻害できる化学的化合物である。いくつかの実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分は、レナリドマイドまたはポマリドマイド等のサリドマイドまたはその誘導体である。いくつかの実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分は、ペントキシフィリンまたはブプロピオン等のキサンチンまたはその誘導体である。いくつかの実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分は、(R)-DOI、TCB-2、LSDまたはLA-SS-Az等の5-HT2Aアゴニスト幻覚剤である。
【0039】
いくつかの実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分は、TNF-αに結合した抗TNF-α抗体(例えば、インフリキシマブ(例えば、Remicade(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片、ゴリムマブ(例えば、Simponi(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片、アダリムマブ(例えば、Humira(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片、および/またはセルトリズマブ(例えば、Cimzia(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片)またはその抗原結合断片である。いくつかの実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分は、TNF-αに結合したTNF-α受容体部分である。いくつかの実施例において、前記TNF-α受容体部分は、TNFR2部分である(図1)。
【0040】
いくつかの実施例において、前記C末端の模倣ペプチドは、TPO受容体に結合し、内因性TPOの生物学的効果を誘導することができ、例えば、前駆体細胞の増幅および倍数体巨核球の発育および成熟を含む巨核球発育の様々な段階を刺激することにより、血小板数を増加する。いくつかの実施例において、本発明に開示される融合タンパク質は、二機能性トロンボポエチンとして機能する。一態様において、本発明に開示される融合タンパク質は、巨核球上のTPO受容体に結合することによって、血小板産生を直接刺激することができる。別の態様において、本発明に開示される融合タンパク質は、制御性T細胞(Treg)の増殖および/または活性を誘導すること、および/または巨核球を攻撃する細胞傷害性T細胞の増殖および/または活性を下方制御することによって、血小板産生を間接的に刺激することができる。さらに別の態様において、本発明に開示される融合タンパク質は、遅いクリアランス、長い半減期および/または限られた組織分布等の方式を提供することによって、融合タンパク質の薬物動態および/または薬力学を改善するFc領域を含む。いくつかの態様において、例えば、小分子と比較して、前記長い半減期は、患者への投与頻度がより低いという利点を有する。改善された薬物動態および/または薬力学は、TPO受容体アゴニストとしての本発明に開示される融合タンパク質の効力をさらに増加する可能性がある。従って、本発明に開示される融合タンパク質は、二重のメカニズムを通じて血小板数を効果的に増加させるだけでなく、患者の都合の良い投与解決策にも寄与する。
【0041】
いくつかの態様において、本発明は、CHO細胞から発現および分泌されたトロンボポエチン模倣タンパク質の革新的な解決策を提供する。いくつかの実施例において、本発明によって提供される解決策は、大腸菌による不溶性タンパク質の産生を防ぎ、その後の後続の複雑で、非効率的なタンパク質変性プロセス、複雑な再構成プロセスおよび時代遅れのCMC精製プロセスを回避し、それにより生成物の純度および生成物の品質の安定性を大幅に向上させる。
【0042】
いくつかの態様において、本発明は、二機能性特徴を有するトロンボポエチン模倣融合タンパク質を提供する。いくつかの実施例において、本発明によって提供されるトロンボポエチン模倣融合タンパク質は、そのC末端に効率的なトロンボポエチン機能を有し、さらに、そのN末端TNF結合および/または阻害部分は、炎症因子TNF-αに結合し、且つTNF-αの生物学的機能をブロッキングすることができる。
【0043】
いくつかの実施例において、本発明によって提供されるトロンボポエチン模倣融合タンパク質は、内因性TPOと配列相同性を共有しないため、例えば、TPIAO(登録商標)(組換えヒトトロンボポエチン、rHuTPO)と比較して、自己免疫応答または中和抗体の産生を誘発するりすくは、低くなる。いくつかの実施例において、前記トロンボポエチン模倣融合タンパク質は、長期投与に適している。いくつかの実施例において、前記トロンボポエチン模倣融合タンパク質は、TPOよりも長い半減期を有し、週に1回投与されることができる。いくつかの実施例において、毎日の投与を必要とするTPIAO(登録商標)と比較して、本発明によって提供されるトロンボポエチン模倣融合タンパク質は、週に1回投与されるため、患者の治療時の痛みを軽減し、治療費を削減することができる。
【0044】
いくつかの態様において、本発明は、IgG1 Fc断片を介して連結した二重作用単位のホモ二量体を含む、トロンボポエチン模倣融合タンパク質を提供する。いくつかの実施例において、前記トロンボポエチン模倣融合タンパク質のC末端は、三つの同一の単鎖ユニットを含むTPO模倣ペプチドに連結される。いくつかの実施例において、前記トロンボポエチン模倣融合タンパク質のN末端は、組換えヒトp75 TNF受容体の細胞外部分に連結される。いくつかの実施例において、前記C末端のTPO模倣ペプチドは、合成六つのトロンボポエチン受容体(TPO受容体、c-MPLとも呼ばれる)結合ドメイン(SEQ ID NO:7)を含む。
【0045】
いくつかの態様において、本発明は、ヒト腫瘍壊死因子α(TNF-α)に結合する化合物、ならびにヒトトロンボポエチン受容体(TPOR)を提供し、ここで、前記化合物は、TNFR-Fc-(S)m-TPORBD-(S)n-TPORBD-(S)p-TPORBDの構造を含み、ここで、TNFRは、ヒト腫瘍壊死因子受容体またはその断片または変異体であり、Fcは、ヒト免疫グロブリンのFc領域またはその断片または変異体であり、TPORBD、TPORBDおよびTPORBDは、同じまたは異なるトロンボポエチン受容体(TPOR)結合ドメインおよび/または活性化ドメインであり、S、SおよびSは、スペーサーである。本発明の任意の実施例において、S、SおよびS等の前記スペーサーの長さ(例えば、アミノ酸配列の長さ)は、互いに独立していてもよい。本発明の任意の実施例において、S、SおよびS等の前記スペーサーの長さは、0~40個のアミノ酸残基、例えば、0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸残基から選択されることができる。
【0046】
いくつかの実施例において、前記TNFRは、組換えヒトp75 TNF受容体またはその断片または変異体であり得る。いくつかの実施例において、前記TNFRは、組換えヒトp75 TNF受容体またはその断片または変異体の細胞外部分であり得る。いくつかの実施例において、前記NFRは、SEQ ID NO:4に示される配列を含むことができる。いくつかの実施例において、前記TPORBDは、ヒトトロンボポエチン受容体(TPOR)に結合することができる。
【0047】
いくつかの実施例において、前記TPORBD、TPORBDおよびTPORBDは、それぞれ、TPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインまたはその断片を含むことができる。いくつかの実施例において、前記TPORBD、TPORBDおよびTPORBDは、異なる配列を含むことができる。いくつかの実施例において、前記TPORBD、TPORBDおよびTPORBDは、SEQ ID NO:7に示される同じ配列を含むことができる。
【0048】
いくつかの実施例において、前記Fcは、ヒトIgG1のFc領域またはその断片または変異体であり得る。いくつかの実施例において、前記Fcは、SEQ ID NO:5に示される配列を含むことができる。いくつかの実施例において、前記S、SおよびSは、異なる配列を含むことができる。いくつかの実施例において、前記S、SおよびSは、一つまたは複数のグリシン残基を含むことができる。
【0049】
いくつかの実施例において、前記化合物は、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10に示される配列を含むことができる。いくつかの実施例において、前記化合物は、C18-C31、C32-C45、C35-C53、C56-C71、C78-C88、C78-C96、C98-C104、C112-C121、C115-C139、C142-C157、C163-C178、C281-C341およびC387-C445の少なくとも一つのポリペプチド内ジスルフィド結合対を含むことができる。
【0050】
いくつかの態様において、本発明は、組換えポリペプチドの二量体を含む錯体を提供し、ここで、前記ポリペプチドは、TNFR-Fc-(S)m-TPORBD-(S)n-TPORBD-(S)p-TPORBDの構造を含み、ここで、TNFRは、腫瘍壊死因子受容体またはその断片または変異体であり、Fcは、免疫グロブリンFc領域またはその断片または変異体であり、TPORBD、TPORBDおよびTPORBDは、同じまたは異なるトロンボポエチン受容体(TPOR)結合ドメインおよび/または活性化ドメインであり、S、SおよびSは、同じまたは異なるスペーサーであり、m、nおよびpは、0以上であり、且つそれぞれ独立した整数であり、ここで、ポリペプチド間ジスルフィド結合を介して、前記組換えポリペプチドを二量体化することにより、二量体を形成する。
【0051】
いくつかの実施例において、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:2もしくはSEQ ID NO:10を含むか、またはそれらから構成されることができる。いくつかの実施例において、C18-C31、C32-C45、C35-C53、C56-C71、C78-C88、C78-C96、C98-C104、C112-C121、C115-C139、C142-C157、C163-C178、C281-C341およびC387-C445等のポリペプチド内ジスルフィド結合の少なくとも一つを介して、前記組換えポリペプチドを二量体化する。
【0052】
いくつかの態様において、本発明は、トロンボポエチン模倣融合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0053】
いくつかの実施例において、本発明は、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10を含むトロンボポエチン模倣融合タンパク質の有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者体内において巨核球または血小板を増加するための方法を提供する。いくつかの実施例において、本発明は、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10を含むトロンボポエチン模倣融合タンパク質の有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者の血小板減少症を治療するための方法を提供する。
【0054】
いくつかの実施例において、前記血小板減少症は、自己免疫性疾患、肝臓の炎症および/または損傷によって引き起こされるか、または薬物療法、放射線療法または手術によって引き起こされる。いくつかの実施例において、前記自己免疫性疾患によって誘発される血小板減少症は、慢性免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病(ITP)であり得る。いくつかの実施例において、前記CD47経路は、ITPにおいて調節不全である。いくつかの実施例において、前記肝臓の炎症および/または損傷は、肝硬変、肝線維症、脂肪肝、肝炎(例えば、B型肝炎およびC型肝炎)または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)であり得る。いくつかの実施例において、前記薬物療法は、化学療法であり得る。いくつかの実施例において、前記化学療法は、カルボプラチンであり得、ここで、前記血小板減少症は、カルボプラチンによって誘発される可能性がある。いくつかの実施例において、前記薬物療法によって誘発される血小板減少症は、化学療法誘発性血小板減少症(CIT)であり得る。いくつかの実施例において、前記薬物療法は、免疫腫瘍学療法であり得る。いくつかの実施例において、前記免疫腫瘍学療法は、免疫チェックポイント阻害剤療法であり得る。いくつかの実施例において、前記免疫チェックポイント阻害剤療法は、CD47、CTLA-4、PD-1および/またはPD-L1(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ドスタルリマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブまたはセミプリマブまたはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片)を阻害することができる。いくつかの実施例において、前記免疫チェックポイント阻害剤療法は、化学療法および/または放射線療法と組み合わせることができる。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、皮下注射によって投与されることができる。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、静脈内注射によって投与されることができる。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、単回投与されるか、または週に1回もしくは週に2回の間隔に分割されて複数回投与されることができる。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の投与量は、0.1μg/kg~100mg/kgであり得る。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の投与量は、1μg/kg~100mg/kgであり得る。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、週に1回投与されることができる。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、週に2回投与されることができる。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の最初の投与は、化学療法の最初の投与から24時間以内に実行されることができる。
【0055】
いくつかの態様において、本発明は、SEQ ID NO:1~7および9のいずれかの配列に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの態様において、本発明は、SEQ ID NO:1~7および9のいずれかの配列に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0056】
いくつかの態様において、本発明は、ベクターを含む宿主細胞を提供し、前記ベクターは、SEQ ID NO:1~7および9のいずれかの配列に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施例において、前記宿主細胞は、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物または哺乳動物細胞から選択されることができる。いくつかの実施例において、前記宿主細胞は、哺乳動物細胞であり得る。いくつかの実施例において、前記宿主細胞は、CHO細胞であり得る。
【0057】
いくつかの実施例において、本発明は、rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質を産生するのに適した条件下で、SEQ ID NO:1~7および9のいずれかの配列に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養することを含む、rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質を調製するための方法を提供する。
【0058】
本発明は、前記タンパク質を含むトロンボポエチン活性を有する組成物、前記融合タンパク質を産生する方法、前記融合タンパク質および組成物を使用して被験者を治療する方法およびキットをさらに提供する。
【0059】
いろんな態様において、特許文献、科学論文およびデータベースを含む、本出願に言及されるすべての出版物は、その全体が参照により組み込まれ、各個別の出版物が参照により個別に組み込まれるのと同じ範囲で参照により組み込まれる。本発明に記載の定義が参照により本発明に組み込まれる特許、出願、公開出願および他の出版物に記載の定義に反するか、または矛盾する場合、本発明に記載の定義は、参照により組み込まれる定義より優先する。本発明で使用されるセクションの見出しは、整理のみを目的としており、説明されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0060】
I.TNF-α結合ドメイン
本発明によって提供されるタンパク質は、炎症因子である腫瘍壊死因子α(TNF-α)に結合し、且つTNF-αの生物学的機能をブロッキングするN末端ドメインを含むことができる。いくつかの実施例において、前記TNF-α結合部分は、化学的化合物である。いくつかの実施例において、前記TNF-α結合部分は、TNF-αに結合した抗TNF-α抗体(例えば、インフリキシマブ(例えば、Remicade(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片、ゴリムマブ(例えば、Simponi(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片、アダリムマブ(例えば、Humira(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片、および/またはセルトリズマブ(例えば、Cimzia(登録商標))またはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片)またはその抗原結合断片である。いくつかの実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分は、TNF-αに結合したTNF-α受容体部分である。いくつかの実施例において、前記TNF-α受容体部分は、TNFR2部分である。いくつかの実施例において、TNF-αの生物学的機能をブロッキングすることによって、慢性免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病(ITP)を治療または軽減することができる。
【0061】
TNF-αは、急性炎症中にマクロファージ/単球によって産生される炎症性サイトカインであり、壊死またはアポトーシスを引き起こす様々な細胞内シグナル伝達イベントに関与する。タンパク質は、感染および癌に抵抗するのにも重要である。TNF-αは、TNFR1(55kDa細胞膜受容体)またはTNFR2(75kDa細胞膜受容体)に三量体として結合することにより、様々な効果を発揮する。
【0062】
ITPは、自己免疫オプソニン作用および血小板の早期破壊による血液疾患である。Th1応答後に炎症誘発性サイトカインIL-2、TNF-αおよびIFN-γを分泌し、慢性ITP患者体内で増加する。TNF-αは、食細胞の活性を上方制御することができ、ITPを引き起こす可能性がある(Wajant H and Siegmund D (2019) TNFR1 and TNFR2 in the Control of the Life and Death Balance of Macrophages. Front. Cell Dev. Biol. 7:91)。従って、アポトーシス経路およびTNF-α受容体を識別して正常化することは、ITPの潜在的な治療法である。
【0063】
最近の臨床研究の結果では、TNF-αを阻害することによって、血小板の増加を促進できる可能性があり、耐性も良好であることを示す。従って、化学療法誘発性血小板減少症(CIT)の場合、rhTNFR2-Fc-TPMのデュアルターゲット設計は、治療法開発において大きな期待を持っている。
【0064】
いくつかの場合によっては、前記融合ペプチドまたはタンパク質のN末端ドメインは、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)またはその一部である。いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のN末端ドメインは、TNFR2またはその一部である。いくつかの実施例において、ヒト天然TNFR2と比較して、前記融合ペプチドまたはタンパク質のN末端ドメインは、N末端切断を含む。
【0065】
いくつかの場合によっては、前記融合ペプチドまたはタンパク質のN末端ドメインは、ヒトTNFR2を含むTNFR2ドメインまたはその断片または変異体である。いくつかの実施例において、前記TNFR2ドメインは、天然のヒトTNFR2のシグナルペプチドを含まない。いくつかの実施例において、前記TNFR2ドメインは、天然のヒトTNFR2の膜貫通ドメインを含まない。いくつかの実施例において、前記TNFR2ドメインは、天然のヒトTNFR2の細胞質ドメインを含まない。いくつかの実施例において、前記TNFR2ドメインは、組換えヒトTNFR2受容体の細胞外部分である。
【0066】
いくつかの場合によっては、天然のヒトTNFR配列と比較して、前記融合タンパク質のTNFR2ドメインは、一つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む。いくつかの実施例において、天然のヒトTNFR配列と比較して、前記融合タンパク質のTNFR2ドメインは、一つまたは複数のアミノ酸位置の置換を含む。いくつかの実施例において、前記アミノ酸の置換、欠失または挿入により、ペプチドまたはタンパク質の発現、精製または安定性プロフィールが改善される。いくつかの実施例において、前記アミノ酸の置換、欠失または挿入により、ペプチドまたはタンパク質の結合親和性および特異性プロフィールが改善されることができる。
【0067】
いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のTNFR2ドメインは、SEQ ID NO:4に示される配列を含む。いくつかの実施例において、前記TNFRペプチドは、以下に示されるSEQ ID NO:4に対して少なくとももしくは約80%、85%、90%、92%、95%または97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0068】
SEQ ID NO:4:LPAQVAFTPYAPEPGSTCRLREYYDQTAQMCCSKCSPGQHAKVFCTKTSDTVCDSCEDSTYTQLWNWVPECLSCGSRCSSDQVETQACTREQNRICTCRPGWYCALSKQEGCRLCAPLRKCRPGFGVARPGTETSDVVCKPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGD
【0069】
いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のTNFR2ドメインは、CRRPGFGVARPとは異なる配列を含む。いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のTNFR2ドメインは、CRPGFGVARPの代わりにVLNCTARTELを含む。
【0070】
いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のTNFR2ドメインは、C18-C31、C32-C45、C35-C53、C56-C71、C78-C88、C78-C96、C98-C104、C112-C121、C115-C139、C142-C157およびC163-C178(SEQ ID NO:4に従って番号付けられる)のうちの一つまたは複数のポリペプチド内ジスルフィド結合を含む。
【0071】
II.TPO模倣ドメイン
幹細胞、巨核球および巨核球前駆体の表面にトロンボポエチン受容体(TPOR、C-MPLとも呼ばれる)を発現する。TPORを刺激することによって、Janus活性化キナーゼ2/シグナルトランスデューサーおよび転写活性化因子5(JAK2/STAT5)シグナル伝達経路を活性化し、且つ遺伝子発現レベルを変化し、従って、幹細胞の巨核球経路への分化を促進し、ヒト骨髄前駆細胞の増幅および分化を促進し、成熟巨核球レベルを増加させ、最終的に血小板の形成および末梢循環への放出を促進することができる。
【0072】
いくつかの場合によっては、前記融合ペプチドまたはタンパク質のC末端ドメインは、トロンボポエチン模倣(TPM)ドメインを含む。いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のC末端ドメインは、二つまたはそれ以上のTPMドメインを含む。いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のC末端ドメインは、三つのTPMドメインを含む。いくつかの実施例において、前記二つまたはそれ以上のTPMドメインは、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施例において、前記二つまたはそれ以上のTPMドメインは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施例において、前記TPMドメインは、天然のヒトTPOに対して配列相同性を有さない。
【0073】
いくつかの実施例において、前記TPMドメインは、SEQ ID NO:7に示される配列を含む。いくつかの実施例において、前記TPMドメインは、以下に示されるSEQ ID NO:7に対して少なくとももしくは約80%、85%、90%、92%、95%または97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0074】
SEQ ID NO:7:IEGPTLRQWLAARA
【0075】
いくつかの場合によっては、前記融合ペプチドまたはタンパク質のTPMドメインは、複数のTPMドメインおよび中間スペーサーを含む。いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のTPMドメインは、SEQ ID NO:6に示される配列を含む。いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のTPMドメインは、以下に示されるSEQ ID NO:6に対して少なくとももしくは約80%、85%、90%、92%、95%または97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0076】
SEQ ID NO:6:GGGGGIEGPTLRQWLAARAGGGGGGGGIEGPTLRQWLAARAGGGGGGGGIEGPTLRQWLAARA
【0077】
いくつかの場合によっては、二つまたはそれ以上のTPMドメインは、スペーサー配列によって単離される。いくつかの実施例において、前記スペーサー配列は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸を含む。いくつかの実施例において、前記スペーサー配列は、少なくとも一つのグリシン残基を含む。いくつかの実施例において、前記スペーサー配列は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のグリシン残基を含む。いくつかの実施例において、前記それぞれのTPMドメイン間のスペーサーの長さは、異なる。いくつかの実施例において、前記それぞれのTPMドメイン間のスペーサーの長さは、同じである。いくつかの実施例において、前記それぞれのTPMドメイン間のスペーサーのアミノ酸配列は、異なる。いくつかの実施例において、前記それぞれのTPMドメイン間のスペーサーのアミノ酸配列は、同じである。
【0078】
「スペーサー」という用語は、二つの要素(例えば、ペプチドまたはタンパク質ドメイン)の間に存在し、且つ前記二つの要素間に空間および/または柔軟性を提供する部分(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー)またはアミノ酸配列(例えば、1~200個のアミノ酸からなる配列)を指す。アミノ酸スペーサーは、ポリペプチドの一次配列の一部である(例えば、ポリペプチド主鎖を介して間隔ペプチドに融合する)。例えば、Fcドメインを形成する二つのヒンジ領域間のジスルフィド結合の形成は、リンカーに属さない。
【0079】
いくつかの実施例において、前記アミノ酸スペーサーは、GG、GGG、GGGG、GGGGG、GGGGGG、GGGGGGGG、GGGA、GGGG、GGGAG、GGGAGG、GGGAGGG、GGGS、GGGGA、GGGGS、GGAG、GGSG、AGGG、SGGG、GAGA、GSGS、GAGAGA、GSGSGS、GAGAGAGA、GSGSGSGS、GAGAGAGAGA、GSGSGSGSGS、GAGAGAGAGAGA、GSGSGSGSGSGS、GGAGGA、GGSGGS、GGAGGAGGA、GGSGGSGGS、GGAGGAGGAGGA、GGSGGSGGSGGS、GGAGGGAG、GGSGGGSG、GGAGGGAGGGAG、GGSGGGSGGGSG、GGGGAGGGGAGGGGA、GGGGSGGGGSGGGGS、AAAL、AAAK、AAAR、EGKSSGSGSESKST、GSAGSAAGSGEF、AEAAAKEAAAKA、KESGSVSSEQLAQFRSLD、GENLYFQSGG、SACYCELS、RSIAT、RPACKIPNDLKQKVMNH、GGSAGGSGSGSSGGSSGASGTGTAGGTGSGSGTGSG、AAANSSIDLISVPVDSR、GGSGGGSEGGGSEGGGSEGGGSEGGGSEGGGSGGGS、EAAAKおよびPAPAPから独立して選択される。
【0080】
III.Fcドメイン
いくつかの実施例において、本発明に記載のポリペプチドは、ポリペプチドの血清半減期を延長するために、免疫グロブリンのFcドメイン単量体またはFcドメインの断片を含むことができる。本発明に記載のポリペプチドは、二つのFcドメイン単量体間の相互作用を通じて二量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成することができ、前記Fcドメイン単量体は、二量体でFcドメインを形成する。当技術分野で一般に知られているように、Fcドメインは、免疫グロブリンのC末端にみられるタンパク質構造である。Fcドメインは、CH3抗体定常ドメイン間の相互作用を通じて二量体化する二つのFcドメイン単量体を含む。野生型Fcドメインは、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、FcγRIV等のFc受容体に結合する最小構造を形成する。いくつかの実施例において、「死亡」Fcドメインを代表とするFcドメインは、突然変異後にエフェクター機能を欠く可能性がある。例えば、Fcドメインは、FcドメインとFcγ受容体との間の相互作用を最小限に抑えることが知られている特定的アミノ酸置換を含むことができる。いくつかの実施例において、前記Fcドメインは、IgG1抗体に由来し、アミノ酸置換L234A、L235AおよびG237Aを含む。いくつかの実施例において、前記Fcドメインは、IgG1抗体に由来し、アミノ酸置換D265A、K322AおよびN434Aを含む。Kabat(Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))に従って前述のアミノ酸の位置を定義する。特定の抗体について、「標準的な」Kabat番号付け配列と相同性のある抗体配列の領域と比較することによって、アミノ酸残基のKabat番号付けを決定することができる。さらに、いくつかの実施例において、前記Fcドメインは、いかなる免疫系関連応答を誘導しない。例えば、前記ポリペプチド二量体におけるFcドメインは、修飾によりFcドメインとFcγ受容体との間の相互作用または結合を減少することができる。
【0081】
いくつかの場合によっては、前記融合ペプチドまたはタンパク質のTNF-α結合ドメインおよびTPO模倣ドメインは、ヒト免疫グロブリンFc領域またはその断片または変異体を含むFcドメインによって連結される。いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のFcドメインは、ヒトIgG1のFcドメインまたはその断片または変異体である。いくつかの実施例において、天然のヒト免疫グロブリンFc領域と比較して、前記融合ペプチドまたはタンパク質のFcドメインは、N末端切断を有する。いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のFcドメインは、天然のヒト免疫グロブリンFc領域のCH1ドメインを含まない。
【0082】
いくつかの場合によっては、天然のヒトIgG1配列と比較して、前記融合ペプチドまたはタンパク質のFcドメインは、一つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む。いくつかの実施例において、前記融合タンパク質のFcドメインは、C2ドメインにおける一つまたは複数のアミノ酸位置の置換を含む。いくつかの実施例において、前記融合タンパク質のFcドメインは、DEターンにおける一つまたは複数のアミノ酸位置の置換を含む。いくつかの実施例において、前記融合タンパク質のFcドメインは、297位置の天然のアミノ酸置換を含み、ここで、前記置換により、297位置のグリコシル化を検出可能に減少および/または除去する。特定の実施例において、前記融合タンパク質のFcドメインは、抗体重鎖の297位置のアスパラギンに対するシステインの置換を含む。他の実施例において、前記融合タンパク質のFcドメインは、297位置のグリコシル化を欠く。いくつかの実施例において、前記融合タンパク質のFcドメインは、SEQ ID NO:2のN317に対応するN297Q置換を含む。上記の各実施例において、定常領域の番号付けシステムは、Kabatに記載のEUインデックスの番号付けシステムである。
【0083】
いくつかの実施例において、前記アミノ酸の置換、欠失または挿入は、融合ペプチドまたはタンパク質の発現、精製または安定性プロフィールを改善する可能性がある。いくつかの実施例において、前記アミノ酸の置換、欠失または挿入は、融合ペプチドまたはタンパク質の結合親和性および特異性プロフィールを改選する可能性がある。
【0084】
いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のFcドメインは、SEQ ID NO:5に示される配列を含む。いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のFcドメインは、以下に示されるSEQ ID NO:5に対して少なくとももしくは約80%、85%、90%、92%、95%または97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0085】
SEQ ID NO:5:EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0086】
いくつかの場合によっては、前記融合ペプチドまたはタンパク質のFcドメインは、一つまたは複数のジスルフィド結合を含む。いくつかの実施例において、前記融合ペプチドまたはタンパク質のFcドメインは、以下の鎖内ジスルフィド結合:C281~C341およびC387~C445(SEQ ID NO:2に従って番号付けられる)のうちの一つまたは複数を含む。いくつかの実施例において、二つの前記融合ペプチドは、以下の鎖間ジスルフィド結合:C240~C240、C246~C246およびC249~C249(SEQ ID NO:2に従って番号付けられる)のうちの一つまたは複数を含む二量体を形成する。
【0087】
IV.融合ペプチドおよびタンパク質
本発明において、「融合」という用語は、化学的共役、組換えおよび化学結合(例えば、アミド結合)等の方式を介した、二つまたはそれ以上の要素、成分またはタンパク質ドメイン(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)の組み合わせまたは連結を表わすために使用される。例えば、二つの直列単一ペプチドは、化学的共役、化学結合、ペプチドリンカーまたは任意の他の共有結合方式によって融合されて、ポリペプチドのうちの一つの連続タンパク質構造を形成することができる。本発明に記載のポリペプチドのいくつかの実施例において、前記TNF結合および/または阻害部分(例えば、TNF-αに結合できる化学的化合物、抗TNF-α抗体またはその抗原結合断片または細胞外TNFR2配列)は、リンカーまたは化学結合(例えば、ペプチド結合)介して部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメインまたはアミノ酸置換含有Fcドメイン)のN末端に融合されることができる。本発明に記載のポリペプチドのいくつかの実施例において、前記部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメインまたはアミノ酸置換含有Fcドメイン)は、リンカーまたは化学結合(例えば、ペプチド結合)を介してTPO模倣ペプチドのN末端に融合される。
【0088】
いくつかの実施例において、本発明は、アミノ基末端からカルボキシ基末端まで、a)ヒトTNFR2受容体またはその断片または変異体をふくむ第1の領域、b)ヒトIgG Fc領域またはその断片または変異体を含む第2の領域、c)TPO模倣ペプチドを含む、融合ペプチドを提供する。いくつかの実施例において、前記TPO模倣ペプチドは、一つ以上のTPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインを含む。いくつかの実施例において、前記複数のTPOR結合ドメインおよび/または活性化ドメインは、一つまたは複数のペプチドリンカーを介して相互に連結され、且つFc領域に連結される。いくつかの実施例において、前記ペプチドリンカーは、五つのアミノ酸からなるグリシンペプチドリンカー等のグリシンリンカーである。
【0089】
いくつかの実施例において、前記組換えポリペプチドは、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10に示される配列であるか、またはそれらを含む。いくつかの実施例において、前記組換えポリペプチドは、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:10に対して少なくとももしくは約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であるか、またはそれらを含む。
【0090】
いくつかの実施例において、上記の融合ポリペプチドは、SEQ ID NO:3で提供されるN末端シグナルペプチドを含むことができる。いくつかの実施例において、前記組換えポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示される配列であるか、またはそれらを含む。いくつかの実施例において、前記組換えポリペプチドは、SEQ ID NO:1に対して少なくとももしくは約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であるか、またはそれらを含む。
【0091】
いくつかの実施例において、前記融合ポリペプチドのN末端TNFR2ドメインは、ポリペプチド間ジスルフィド結合を形成する。いくつかの実施例において、前記融合ポリペプチドのFcドメインは、ポリペプチド間ジスルフィド結合を形成する。いくつかの実施例において、前記ポリペプチド内のジスルフィド結合は、任意の適切な組み合わせでC18~C31、C32~C45、C35~C53、C56~C71、C78~C88、C78~C96、C98~C104、C112~C121、C115~C139、C142~C157、C163~C178、C281~C341およびC387~C445の一つまたは複数またはすべてを含むことができる。
【0092】
いくつかの実施例において、本発明は、二つの融合ポリペプチドを含む融合二量体タンパク質を提供し、各融合ポリペプチドは、アミノ基末端からカルボキシ基末端まで、a)ヒトTNFR2受容体またはその断片または変異体を含む第1の領域、b)ヒトIgG Fc領域またはその断片または変異体を含む第2の領域、c)TPO模倣ペプチドを含み、ここで、前記融合ポリペプチドのFcは、ポリペプチド間ジスルフィド結合を形成する。いくつかの実施例において、前記ポリペプチド間ジスルフィド結合は、任意の適切な組み合わせでC240~C240、C246~C246およびC249~249の一つまたは複数またはすべてを含むことができる。
【0093】
いくつかの実施例において、例えば、N149およびN171(SEQ ID NO:2に従って番号付けられる)の一つまたは二つの位置において、前記二量体の融合ポリペプチドは、一つまたは複数のグリコシル化部位(例えば、N-グリコシル化)を含むことができる。N-結合グリコシル化は、オリゴ糖(グリカンと呼ばれることもある)と窒素原子(例えば、タンパク質アスパラギン(Asn、N)残基のアミド窒素)との連結である。いくつかの実施例において、ヒトIgG Fc媒介ADCCにおけるN317(SEQ ID NO:2に従って番号付けられる)でのN-結合グリコシル化の任意の可能性を回避するために、N317を例えばグルタミン(Gln、Q)に突然変異させることができる。いくつかの実施例において、グリカンを含まない宿主細胞(例えば、大腸菌)において本発明に記載の融合ポリペプチドを産生することができる。いくつかの実施例において、例えば、Q82、Q109、N306、Q317およびQ524(SEQ ID NO:2に従って番号付けられる)の一つまたは複数の位置において、前記二量体の融合ポリペプチドは、任意の適切な組み合わせで一つまたは複数の脱アミノ修飾部位を含むことができる。いくつかの実施例において、例えば、M30およびM272(SEQ ID NO:2に従って番号付けられる)の一つまたは二つの位置において、前記二量体の融合ポリペプチドは、一つまたは複数の酸化修飾部位を含むことができる。いくつかの実施例において、例えば、D300(SEQ ID NO:2に従って番号付けられる)において、前記二量体の融合ポリペプチドは、アスパラギン酸異性化修飾部位を含むことができる。いくつかの実施例において、本発明に記載の融合ポリペプチドは、任意の適切な組み合わせで本発明に開示される任意のアミノ酸残基を含むことができる。
【0094】
V.ポリヌクレオチド、ベクター、ならびに組換えペプチドおよびタンパク質を調製する方法
本発明は、本発明に記載の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(核酸分子)、このような融合ポリペプチドを発現する遺伝子操作された細胞ベクター、およびポリヌクレオチドまたはこのような融合ポリペプチドを発現する遺伝子操作された細胞ベクターを含む宿主細胞をさらに提供する。
【0095】
いくつかの実施例において、本発明は、本発明に記載の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの態様において、前記ポリヌクレオチドは、融合ポリペプチドをコードする核酸配列等の単一の核酸配列を含む。いくつかの実施例において、前記融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、融合ポリペプチドの発現を制御するために、作動可能に連結された少なくとも一つのプロモーターを含む。
【0096】
一態様において、本開示は、本開示に記載の融合ペプチドアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子を提供する。ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、TNFR2ドメイン、Fcドメイン、TPMドメイン、全長融合ペプチド等の本発明に記載の融合タンパク質の任意の部分であってもよく、またはN末端シグナルペプチドを有する全長融合ペプチドであってもよい。本開示に記載の核酸は、DNAまたはRNAなどであり得、且つイントロン配列を含んでいても含んでいなくてもよい。通常、前記核酸は、cDNA分子である。
【0097】
他の実施例において、前記核酸分子は、SEQ ID NO:1~7および9のいずれか1項に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むか、またはそれらからなる。
【0098】
本開示は、本開示に記載の核酸分子を含む、ベクターをさらに提供する。核酸分子は、TNFR2ドメイン、Fcドメイン、TPMドメイン、全長融合ペプチド等の本発明に記載の融合タンパク質の任意の部分をコードしてもよく、またはN末端シグナルペプチドを有する全長融合ペプチドであってもよい。
【0099】
本開示に記載の融合タンパク質を発現させるために、融合タンパク質をコードするDNAを発現ベクターに挿入して、DNA分子が転写および翻訳制御配列に作動可能に連結される。この場合、「作動可能に連結される」という用語は、ベクター内の転写および翻訳制御配列がDNA分子の転写および翻訳を調節するという意図された機能を実行できるように、融合ペプチドをコードするDNA分子をベクターに連結されることを指す。使用される発現宿主細胞と互換性のある発現ベクターおよび発現制御配列を選択する。任意の適切な方法(例えば、融合ペプチドおよびベクターをコードするDNA分子上の相補的制限部位の連結、または相同組換えに基づくDNA連結)によって、融合ペプチドをコードするDNA分子を、発現ベクターに挿入する。さらにまたは代わりに、前記組換え発現ベクターは、宿主細胞における融合ペプチドの分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子をベクターにクローニングして、シグナルペプチドと融合ペプチドをコードするDNA分子のアミノ基末端とをインフレームで連結されることができる。いくつかの実施例において、前記シグナルペプチドをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0100】
融合ペプチドをコードする核酸配列に加えて、本開示に記載の発現ベクターは、通常、宿主細胞における融合ペプチドをコードする核酸配列の発現を制御する調節配列を保有する。「調節配列」という用語は、融合ペプチドをコードする核酸配列の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを指す。例えば、このような調節配列は、Goeddelに記載されたとおりである(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990))。当業者は、調節配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベル等の要因に依存することができることを理解するであろう。哺乳動物宿主細胞発現に使用される調節配列の例としては、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマウイルス由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー等の哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素を含む。代わりに、ユビキチンプロモーターまたはβ-グロビンプロモーター等の非ウイルス調節配列を使用することができる。さらに、調節要素は、様々なソースからの配列で構成され、例えば、SRプロモーターシステムは、SV40初期プロモーターに由来する配列およびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端反復配列を含む(Takebe, Y. et al. (1988) Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。
【0101】
融合ペプチドをコードする核酸配列および調節配列に加えて、前記発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子等のさらなる配列をさらに保有することができる。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択に有益である(see, e.g., U.S. Pat. Nos. 4,399,216, 4,634,665 and 5,179,017, all by Axel et al.)。例えば、選択マーカー遺伝子は、ベクターに導入された宿主細胞にG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサート等の薬物に対する耐性を与えることがよくある。選択マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(dhfr宿主細胞およびメトトレキサートの選択/増幅に使用される)およびneo遺伝子(G418の選択に使用される)を含む。
【0102】
融合ペプチドを発現させるために、任意の適切な技術によって、融合ペプチドをコードする発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクションする。「トランスフェクション」という用語の様々な形態は、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション等の外因性DNAを原核生物または真核生物の宿主細胞に導入するために一般的に使用される様々な技術を網羅することを意図している。原核生物または真核生物の宿主細胞で本開示に記載の融合ペプチドを発現させることができるが、最も典型的には真核細胞で、通常、哺乳動物の宿主細胞で抗体を発現する。
【0103】
本開示は、本開示に記載の核酸分子を含む、宿主細胞をさらに提供する。前記宿主細胞は、発現ベクターが使用できる、ほとんどすべての細胞であり得る。例えば、それは、高等真核宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)および下等真核宿主細胞(例えば、酵母細胞)、または原核細胞(例えば、細菌細胞)であり得る。リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE、デキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーションまたはファージ感染によって、組換え核酸構築体を宿主細胞に導入することができる。
【0104】
形質転換に使用される適切な原核宿主としては、大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌、ならびにシュードモナス属、ストレプトミセス属およびブドウ球菌属内の様々な種を含む。
【0105】
本開示に記載の融合ペプチドを発現するために使用される哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(including dhfr-CHO cells, described in Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220 (1980))、DHFR選択マーカーと組み合わせて使用され(例えば、Kaufman and Sharp, J. Mol. Biol. 159:601-621 (1982)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞およびSp2細胞を参照する)等を含む。具体的には、NS0骨髄腫またはCHO細胞と組み合わせて使用される場合、別の発現システムは、WO87/04462、WO89/01036およびEP338841に開示されたGS(グルタミンシンテターゼ)遺伝子発現システムである。融合ペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクターを哺乳動物の宿主細胞に導入する場合、宿主細胞を一定期間培養することによって、融合ペプチドを産生し、前記時間は、宿主細胞での融合ペプチドの発現、または宿主細胞成長培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な時間である。任意の適切なタンパク質精製方法を使用して、培地から融合ペプチドを回収することができる。
【0106】
VI.トロンボポエチン活性を有する組成物および製剤
いくつかの実施例において、本発明は、SEQ ID NO:2に示される配列を有するrhTNFR2-Fc-TPM融合ペプチドの二量体を含む、医薬組成物を提供する。いくつかの実施例において、本発明は、SEQ ID NO:10に示される配列を有するrhTNFR2-Fc-TPM融合ペプチドの二量体を含む、医薬組成物を提供する。いくつかの実施例において、前記医薬組成物は、本発明によって提供される二量体化融合ポリペプチドを含み、選択可能に、薬学的に許容される担体を含む。
【0107】
「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、製剤中の結合分子を送達する際の使用に適した任意の不活性物質を指す。ベクターは、固着防止剤、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤または希釈剤、防腐剤(例えば、抗酸化剤、抗菌剤または抗真菌剤)、甘味剤、吸収遅延剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝液等であり得る。適切な薬学的に許容される担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、ポリソルベート20、デキストロース、植物油(例えば、オリーブ油)、生理食塩水、緩衝液、緩衝食塩水および等張剤(例えば、糖、ポリオール、ソルビトールおよび塩化ナトリウム)。
【0108】
前記組成物は、液体、半固体および固体の剤形等の任意の適切な形態であり得る。液体剤形の例としては、溶液(例えば、注射用および注入用溶液)、マイクロエマルション、リポソーム、分散体または懸濁液を含む。固体剤形の例としては、錠剤、丸剤、カプセル、マイクロカプセルおよび粉末を含む。結合分子の送達に適した組成物の具体的な形態は、溶液、懸濁液または分散体などの注射用または注入用滅菌液体である。所望の量のrhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質を適切なベクターにドーピングし、滅菌し、精密ろかして、滅菌溶液を調製することができる。通常、rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質を基本的な分散媒体および他のベクターを含む滅菌溶媒にドーピングして、分散体を調製する。滅菌粉末を滅菌液体の調製に使用する場合、調製方法は、活性成分ならびに事前に滅菌ろ過した溶液から任意のさらなる必要とする成分の粉末を調製するための、真空乾燥および凍結乾燥(凍結乾燥)を含む。当技術分野で知られている従来の技術によって、組成物の様々な剤形を調製することができる。
【0109】
組成物中に含まれるrhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の相対量は、使用されるベクター、剤形、ならびに所望の放出および薬力学特徴等の様々な要因に応じて変化する。単一剤形rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の量は、通常、治療効果を生み出す量であるが、より少ない量であってもよい。通常、剤形の総重量に対して、前記量の範囲は、約0.01%~約99%、約0.1%~約70%または約1%~約30%である。
【0110】
いくつかの実施例において、前記トロンボポエチン活性を有する組成物は、溶媒、充填剤、緩衝剤、張性調節剤および防腐剤等を含む薬学的に許容される担体を含む(Pramanick et al., Pharma Times, 45:65-77, 2013)。幾つかの実施例において、前記トロンボポエチン活性を有する組成物は、溶媒、充填剤、緩衝剤および張性調節剤のうちの一種または複数種としてのベクターを含むことができる(例えば、塩化ナトリウム生理食塩水を水性溶媒および張性調節剤として使用できる)。
【0111】
いくつかの実施例において、前記トロンボポエチン活性を有する組成物は、溶媒としての水性溶媒を含む。適切な溶媒は、滅菌水、生理食塩水、リン酸塩緩衝食塩水およびリンゲル液等を含む。いくつかの実施例において、前記組成物は、等張性である。
【0112】
前記トロンボポエチン活性を有する組成物は、緩衝剤を含むことができる。緩衝剤は、pHを制御し、それにより加工中および保存中、選択可能に再構成中で活性剤の分解を阻害する。適切な緩衝液は、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩または硫酸塩等を含む塩等を含む。他の適切な緩衝液は、アルギニン、グリシン、ヒスチジンおよびリジン等のアミノ酸等、またはその薬学的に許容される塩を含む。前記緩衝剤は、塩酸または水酸化ナトリウムをさらに含むことができる。いくつかの実施例において、前記緩衝剤は、組成物のpHを5~8の範囲内に維持する。いくつかの実施例において、前記pHは、5または6(下限)より大きい。いくつかの実施例において、前記pHは、8または7(上限)より小さい。即ち、前記pHの範囲は、約5~8であり、ここで、下限は、上限よりも小さい。
【0113】
前記トロンボポエチン活性を有する組成物は、張性調節剤を含むことができる。適切な張性調節剤は、デキストロース、スクロース、グリセロール、塩化ナトリウム、グリセリンおよびマンニトール等を含む。
【0114】
前記トロンボポエチン活性を有する組成物は、充填剤を含むことができる。充填剤は、医薬組成物を投与前に凍結乾燥した場合に特に有用である。いくつかの実施例において、前記充填剤は、凍結乾燥または噴霧乾燥および/または保存中において活性剤の安定化を助け、且つその分解を防止する保護剤である。適切な充填剤は、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、グルコースおよびラフィノース等の糖(単糖、二糖および多糖)である。
【0115】
前記トロンボポエチン活性を有する組成物は、防腐剤を含むことができる。適切な防腐剤は、抗酸化剤および抗微生物剤等を含む。しかし、好ましい実施例において、前記トロンボポエチン活性を有する組成物は、滅菌条件下で調製され、且つ使い捨て容器に保存されるため、防腐剤を含む必要はない。
【0116】
いくつかの実施例において、前記組成物は、滅菌組成物として提供されてもよい。前記医薬組成物は、通常、有効量の開示された融合タンパク質を含み、従来技術によって調製されることができる。通常、免疫原性組成物の用量当たりの融合タンパク質の量は、重大な有害な副作用なしに血小板数の増加を誘導するように選択される。いくつかの実施例において、前記組成物は、被験者の血小板数の増加を誘導するための単位剤形で提供されることができる。単位剤形は、被験者に投与するための適切な単一の予め選択された用量、または標識または測定された適切な倍数、即ち、二つまたはそれ以上の予め選択された用量、および/または単位用量またはその倍数を投与するための計量メカニズムを含む。
【0117】
VII.血小板減少症を治療する方法
いくつかの実施例において、本発明は、患者にSEQ ID NO:2を含む有効量のrhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質を投与することを含む、血小板減少症を治療する方法を提供する。いくつかの実施例において、本発明は、患者にSEQ ID NO:10を含む有効量のrhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質を投与することを含む、血小板減少症を治療する方法を提供する。
【0118】
いくつかの実施例において、前記血小板減少症は、自己免疫性疾患、肝臓の炎症および/または損傷によって引き起こされるか、または薬物療法、放射線療法または手術によって誘導される可能性がある。いくつかの実施例において、前記自己免疫性疾患によって誘発される血小板減少症は、慢性免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病(ITP)であり得る。いくつかの実施例において、前記CD47経路は、ITPにおいて調節不全である。いくつかの実施例において、前記肝臓の炎症および/または損傷は、肝硬変、肝線維症、脂肪肝、肝炎(例えば、B型肝炎およびC型肝炎)または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)であり得る。いくつかの実施例において、前記薬物療法は、化学療法であり得る。いくつかの実施例において、前記化学療法は、カルボプラチンであり得、ここで、前記血小板減少症は、カルボプラチンによって誘発される可能性がある。いくつかの実施例において、前記薬物療法によって誘発される血小板減少症は、化学療法誘発性血小板減少症(CIT)であり得る。いくつかの実施例において、前記薬物療法は、免疫腫瘍学療法であり得る。いくつかの実施例において、前記免疫腫瘍学療法は、免疫チェックポイント阻害剤療法であり得る。いくつかの実施例において、前記免疫チェックポイント阻害剤療法は、CD47、CTLA-4、PD-1および/またはPD-L1(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ドスタルリマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブまたはセミプリマブまたはそのバイオシミラー、生物学的同等薬または生物学的改良薬、またはその抗原結合断片)を阻害することができる。いくつかの実施例において、前記免疫チェックポイント阻害剤療法は、化学療法および/または放射線療法と組み合わせることができる。
【0119】
いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、皮下注射によって投与される。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、静脈内注射によって投与される。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、単回投与されるか、または週に1回、週に2回、2週間に1回、1週間半に1回の間隔またはそれ以上の間隔で複数回投与される。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、週に1回投与される。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、週に2回投与される。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、2週間に1回または1週間半に1回投与されるか、またはそれ以上の間隔で投与される。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、1週間半に1回、2週間に1回、2週間半に1回、または3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10または10.5週間に1回投与される。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、2週間に1回投与される。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、3週間に1回投与される。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、4週間に1回投与される。
【0120】
いくつかの態様において、前記融合ペプチドまたはタンパク質の投与は、被験者が受けている可能性のある化学療法または免疫腫瘍学療法のサイクルと調整される。いくつかの実施例において、化学療法または免疫腫瘍学療法の最初の投与から24時間以内に前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の最初の投与を実行する。いくつかの実施例において、化学療法または免疫腫瘍学療法の最初の投与から48時間以内に前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の最初の投与を実行する。いくつかの実施例において、化学療法または免疫腫瘍学療法サイクル中に血小板最小値が観察される12日前に前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の最初の投与を実行する。いくつかの実施例において、最初の投与後毎週に前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の追加投与を1回実行する。いくつかの実施例において、最初の投与後に前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の追加投与を週に2回実行する。いくつかの実施例において、最初の投与後に前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の追加投与を2週間に1回またはそれ以上の間隔で実行する。いくつかの実施例において、前記週に1回、週に2回、2週間に1回、3週間に1回または4週間に1回もしくは複数回投与される用量は、同じである。いくつかの実施例において、前記週に1回、週に2回、2週間に1回、3週間に1回または4週間に1回もしくは複数回投与される用量は、異なる。いくつかの実施例において、前記薬物は、最初の化学療法サイクル中に最初に投与される。いくつかの実施例において、前記薬物は、2回目の化学療法サイクル中における化学療法または免疫腫瘍学療法の投与後24または48時間以内に最初に投与される。いくつかの実施例において、前記薬物は、3回目の化学療法サイクルにおける化学療法または免疫腫瘍学療法の投与後24または48時間以内に最初に投与される。
【0121】
いくつかの態様において、被験者の血小板数または他の症状の観察に関する標準的な研究を通じて、融合ペプチドまたはタンパク質を投与するかどうかを決定する。いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、患者の血小板数が400×10、300×10、200×10、100×10、50×10、40×10、30×10、20×10または10×10/L未満の場合に投与される。
【0122】
いくつかの実施例において、他の治療方法に反応しなかった患者に前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質を投与する。いくつかの実施例において、前記患者は、TPIAO(登録商標)(組換えヒトトロンボポエチン、rHuTPO)に対して無反応である。いくつかの実施例において、前記患者は、コルチコステロイド、免疫グロブリンに対して反応性がないか、または脾臓摘出術に対して不十分な反応を示す。いくつかの実施例において、前記患者は、Enbrel(登録商標)またはエタネルセプトに対して反応性がない。いくつかの実施例において、前記患者は、Nplate(登録商標)またはロミプロスチムに対して反応性がない。
【0123】
患者体内の巨核球または血小板を効果的に増加させる量で本発明に記載のrhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質を被験者に提供する。開示されたrhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の実際の用量は、疾患の適応症および被験者の具体的な状態(例えば、被験者の年齢、体型、健康な状況、症状の重症度、感受性要因等)、投与の時間および経路、同時に投与される他の薬物または治療、ならびに被験者体内において所望の活性または生物学的反応を誘発するために使用される組成物の特定の薬理学等の要因に応じて変化する。投与計画を調整して、最適な治療反応を提供することができる。
【0124】
いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の投与量は、0.1μg/kg~100mg/kg、例えば約1μg/kg~約50mg/kg、例えば約1μg/kg、約2μg/kg、約3μg/kg、約6μg/kg、約8μg/kg、約10μg/kg、約13μg/kg、約15μg/kg、約20μg/kg、約25μg/kg、約30μg/kg、約40μg/kg、約50μg/kg、約100μg/kg、約200μg/kg、約300μg/kg、約600μg/kg、約800μg/kg、約1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kgまたは約50mg/kgである。
【0125】
被験者集団(例えば、乳児または高齢者)に基づいて、rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の量を決定する。被験者における血清濃度、血小板数および他の反応の観察に関する標準的にな研究を通じて、特定の組成の最適量を決定することができる。被験者の血清濃度、血小板数および他の反応の観察、ならびに被験者が受ける他の治療(例えば、化学療法または免疫腫瘍学療法)に基づいて、本発明に記載のrhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の治療有効量を調整することを理解されたい。
【0126】
いくつかの実施例において、少なくとも部分的には血小板数に基づいて、個体に投与される治療 の量を変更するかどうかを決定することができる。血小板数は、血小板数を含む全血球数(CBC)に基づくことができる。各投与前、毎週または毎月に全血球数を実行することができる。全血球数および/または血小板数の結果に基づいて、投与されるrhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質の量を調整することができる。
【0127】
方法が効果的であると見なされるには、血小板数が健康な個体の正常な血小板数に達する必要ない。例えば、本発明に記載のrhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質を投与して血小板生成を誘導することによって、血小板数を所望のレベル、例えば10×10、20×10、30×10、40×10、50×10、100×10、200×10、300×10または400×10/Lを超えるレベルまで増加させることができる。いくつかの実施例において、本発明に記載のrhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、臨床的に重要な出血を回避するのに十分なレベルまで血小板数を増加させることができる。
【0128】
いくつかの実施例において、癌患者に前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質を投与することができる。いくつかの実施例において、前記癌は、血液がんまたはリンパ造血系悪性腫瘍等の液体がんであり得る。いくつかの実施例において、前記癌は、固形がんである。いくつかの実施例において、前記癌は、固形腫瘍、血液がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、結腸がん、胃がん、神経膠腫、頭部がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、骨髄腫、頸部がん、卵巣がん、黒色腫、膵臓がん、腎臓がん、唾液腺がん、胃がん、胸腺上皮がんおよび甲状腺がんから選択されることができる。いくつかの実施例において、前記癌は、アジュバント治療環境にある。いくつかの実施例において、前記癌は、ネオアジュバント治療環境にあり得る。いくつかの実施例において、前記癌は、進行がんであり得る。いくつかの実施例において、前記癌は、転移性がんであり得る。
【0129】
いくつかの実施例において、前記癌のタイプは、固形がんのタイプまたは血液悪性がんのタイプであり得る。いくつかの実施例において、前記癌のタイプは、再発性または難治性の癌のタイプである。いくつかの実施例において、前記癌のタイプは、急性骨髄性白血病(LAMLまたはAML)、急性リンパ性白血病(ALL)、副腎皮質がん(ACC)、膀胱尿路上皮がん(BLCA)、脳幹神経膠腫、脳低悪性度神経膠腫(LGG)、 腫瘍、乳がん(BRCA)、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、原発部位不明の癌、カルチノイド腫瘍、原発部位不明の癌、中枢神経系の非定型奇形種/ラブドイド腫瘍、中枢神経系の胎児性腫瘍、子宮頸部扁平上皮がん、子宮頸部内膜腺がん(CESC)、小児がん、胆管がん(CHOL)、脊索腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸(腺がん)がん(COAD)、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、内分泌膵島細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣芽腫、上衣腫、食道がん(ESCA)、感覚神経芽腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、胆嚢がん、胃がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質細胞腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛腫瘍、多形神経膠芽腫(GBM)、有毛細胞白血病、頭頚部がん(HNSD)、心臓がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓がん、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、口唇がん、肝臓がん、リンパ系腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、悪性線維性組織球腫、骨がん、髄芽腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞がん、メルケル細胞皮膚がん、中皮腫(MESO)、潜在的原発転移性扁平上皮がん、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、鼻腔がん、上咽頭がん、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚がん、非小細胞肺がん、中咽頭がん、骨肉腫、他の脳および脊髄腫瘍、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、悪性度の低い卵巣腫瘍、膵臓がん、乳頭腫症、副鼻腔がん、副甲状腺がん、骨盤がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫および傍神経節腫(PCPG)、中分化型松果体実質腫瘍、松果芽腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発性肝細胞がん、前立腺がん(PRAD)等の前立腺がん、直腸がん、腎細胞(腎臓)がん、腎細胞がん、呼吸器がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(SARC)、セザリー症候群、皮膚黒色腫(SKCM)、小細胞肺がん、小腸がん、軟部肉腫、扁平上皮がん、子宮頸部扁平上皮がん、胃がん、テント上原始神経外胚葉腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣がん、精巣胚細胞腫瘍(TGCT)、喉頭がん、胸腺がん、胸腺腫(THYM)、甲状腺がん(THCA)、移行上皮がん、腎盂および尿管移行上皮がん、トロホブラスティック腫瘍、尿管がん、尿道がん、子宮がん、ブドウ膜黒色腫(UVM)、膣がん、外陰がん、ワルデンシュトロームマクログロブリン血症または腎芽腫を含むことができる。いくつかの実施例において、前記癌のタイプは、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、膀胱がん、乳がん、脳がん、 頸部がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、消化器がん、神経膠腫、神経膠芽腫、頭頚部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、リンパ系腫瘍、黒色腫、骨髓腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、褐色細胞腫および傍神経節腫、前立腺がん、直腸がん、扁平上皮がん、精巣がん、胃がんまたは甲状腺がんを含むことができる。
【0130】
いくつかの実施例において、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質は、任意の適切な経腸経路または非経腸経路を介して投与されることができる。「経腸経路」投与という用語は、胃腸管の任意の部分を通る投与を指す。経腸経路の例としては、経口、舌下、粘膜、頬側および直腸経路または胃内経路を含む。「非経腸経路」投与とは、経腸経路以外の投与経路を指す。非経口投与経路の例としては、静脈内、筋肉内、皮内、経皮、腹腔内、腫瘍内、膀胱内、動脈内、くも膜下腔内、 内、眼窩内、骨内、腎臓内、経粘膜、経気管、経気管、硝子体内、関節内、関節周囲、網膜下、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内、皮下または局所投与を含む。
【0131】
いくつかの実施例において、任意の適切な方法、例えば、経口投与、経鼻胃チューブ、胃瘻造設チューブ、注射、注入、埋め込み型注入ポンプおよび浸透圧ポンプを通じて、前記rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質を投与することができる。適切な投与経路および方法は、使用される特定の抗体、所望の吸収速度、使用される特定の製剤または剤形、治療される疾患のタイプまたは重症度、特定の作用部位、ならびに患者の状况等の様々な要因に応じて変化することができ、当業者であれば容易に選択されることができる。いくつかの実施例において、本開示に記載のTPO模倣融合タンパク質および組成物は、皮下注射によって投与される。いくつかの実施例において、本開示に記載のTPO模倣融合タンパク質および組成物は、静脈内注射によって投与される。
【0132】
VIII.製品
本発明は、前記組換えポリペプチドおよびタンパク質組成物を含む製品またはキットをさらに提供する。前記製品は、容器と、その上のまたはそれに付随するラベルまたは薬品説明書とを含むことができる。適切な容器は、ボトル、バイアル、注射器、試験管、IV溶液バッグ等を含む。前記容器は、ガラスまたはパラスチック等の様々な材料で作られることができる。いくつかの実施例において、前記容器は、滅菌アクセスポートを有する。例示的な容器は、注射針で突き刺すことができるストッパーを有する容器を含む、静脈内溶液バッグおよびバイアルを含む。前記製品またはキットは、組成物が本発明に記載の病症(例えば、CITまたはITP)等の特定の病症を治療するために使用できる薬品説明書をさらに含むことができる。代わりにまたはさらに、前記製品またはキットは、薬学的に許容される緩衝液を含む、異なるまたは同じ容器をさらに含むことができる。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針および/または注射器等の他の材料をさらに含むことができる。
【0133】
前記ラベルまたは薬品説明書には、組成物が個体のCITの治療に使用されることが記載されている可能性がある。前記ラベルまたは薬品説明書には、組成物が個体のITPの治療に使用されることが記載されている可能性がある。容器の上の、またはそれに付随するラベルまたは薬品説明書には、製剤の再構成および/または使用に関する指示が記載されている可能性がある。前記ラベルまたは薬品説明書には、さらに、製剤が皮下、静脈内または他の投与方式による個体のCITまたはITPの治療に使用されることが記載されている可能性がある。
【0134】
いくつかの実施例における前記容器は、組成物を保持し、前記組成物は、単独で、または別の組成物と一緒になって、病症を共同に効果的に治療、予防および/または診断する。前記製品またはキットは、(a)融合ペプチドまたはそのタンパク質を含む組成物(第1の薬物)を保持する第1の容器と、(b)別の治療剤等のさらなる薬剤を含む組成物(第2の薬物)を保持する第2の容器とを含むことができ、前記製品またはキットは、被験者を治療するために有効量の第2の薬物を使用するためのラベルまたは薬品説明書をさらに含む。
【0135】
ー用語ー
特に定義しない限り、本発明で使用されるすべての技術用語、記号および他の技術的および科学的用語または専門用語は、保護主題が属する当業者に知られているのと同じ意味を有する。いくつかの場合によっては、明確化および/または参照の容易化のために、本発明は、一般に理解される意味を有する用語を定義し、本発明にそのような定義が含まれることは、これらの定義が当該技術分野で一般に理解される定義と大きく異なることを必ずしも意味するものではないことを理解されたい。
【0136】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小の長さに限定されない。ポリペプチド(提供される受容体、および例えばリンカーまたはペプチド等の他のポリペプチドを含む)は、アミノ酸残基(天然および/または非天然のアミノ酸残基を含む)を含むことができる。当該用語は、グリコシル化、シアル化、アセチル化およびリン酸化等のポリペプチドの発現後修飾をさらに含む。いくつかの態様において、天然または自然の配列と比較して、前記ポリペプチドは、タンパク質が所望の活性保持している限り、修飾を含むことができる。これらの修飾は、部位特異的突然変異形成等の意図的な修飾である場合もあれば、またはタンパク質を産生する宿主における突然変異またはPCR増幅によってエラーを引き起こした後の形成等の非意図的な修飾である場合もある。
【0137】
本発明で使用される「Fc領域」とは、抗体の重鎖定常領域(第1の定常領域免疫グロブリンドメインを含まない)を含むポリペプチドを指す。IgGの場合、Fc領域は、免疫グロブリンドメインC2およびC3、ならびにC1とC2との間のヒンジを含むことができる。Fcドメインは、少なくともC2ドメインとC3ドメインとを含むヒトFcドメインに対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%または100%の配列同一性)を有することができる。Fcドメイン単量体は、第2および第3の抗体定常ドメイン(C2およびC3)を含む。いくつかの実施例において、前記Fcドメイン単量体は、ヒンジドメインをさらに含む。Fcドメインは、可変ドメインまたは相補性決定領域(CDR)等の抗原識別領域として機能できる免疫グロブリンの任意の部分を含まない。野生型Fcドメインにおいて、二つのCH3抗体定常ドメイン間の相互作用、および二つの二量体化Fcドメイン単量体のヒンジドメイン間で形成された一つまたは複数のジスルフィド結合を通じて、二つのFcドメイン単量体は、二量体化される。いくつかの実施例において、「死亡」Fcドメインで表されるFcドメインは、突然変異後にエフェクター機能を欠く可能性がある。特定の実施例において、前記Fcドメインにおける各Fcドメイン単量体は、FcドメインとFcγ受容体との間の相互作用または結合を減少させるC2ドメイン中のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施例において、前記Fcドメインは、Fcドメイン二量体化を減少または阻害しない一つまたは複数のアミノ酸置換を含む。Fcドメインは、IgG、IgE、IgM、IgAまたはIgDを含む、任意の免疫グロブリン抗体アイソタイプであり得る。さらに、Fcドメインは、IgGサブタイプ(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3またはIgG4)であり得る。Fcドメインは、組換えFcドメイン等の非天然Fcドメインであることもできる。
【0138】
本発明において、二つのポリペプチド配列間の「配列同一性」は、配列間の同一アミノ酸のパーセンテージを表わす。通常、Bestfit、FASTAまたはBLAST等の既知のコンピュータプログラムプログラムを使用して、ポリペプチドのアミノ酸配列同一性を決定することができる(例えば、Pearson, Methods Enzymol. 183:63-98 (1990); Pearson, Methods Mol. Biol. 132:185-219 (2000); Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990); Altschul et al., Nucelic Acids Res. 25:3389-3402 (1997)を参照する)。Bestfitまたは任意の他の配列アライメントプログラムを使用して特定の配列が参照アミノ酸配列に対して95%の同一性を有するかどうかを決定する場合、参照アミノ酸配列の全長にわたって同一性パーセンテージを計算し、相同性が参照配列のアミノ酸残基の総数の5%を占めるように、パラメーターを設定する。前述のポリペプチド間の同一性パーセンテージを決定する方法は、本発明に開示されるすべてのタンパク質、断片またはその変異体に適用されることができる。
【0139】
「宿主細胞」という用語は、目的タンパク質、タンパク質断片またはペプチドを産生するように操作された細胞株を指す。宿主細胞としては、例えば、CHO、BHK、NSO、SP2/0、YB2/0等のげっ歯類動物(ラット、マウス、モルモットまたはハムスター)に由来する哺乳動物培養細胞等の培養細胞、またはヒト組織もしくはハイブリドーマ細胞、酵母細胞および昆虫細胞、ならびにトランスジェニック動物または培養組織に含まれる細胞を含むが、これらに限定されない。当該用語は、特定の被験者細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も含む。突然変異または環境の影響により子孫に特定の修飾が生じる可能性があるため、そのような子孫は、親細胞と統一ではない可能性があるが、依然として「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0140】
「単離された核酸」という用語は、天然の核酸源の他の核酸分子から単離されたゲノム、cDNAもしくは合成起源またはその組み合わせの核酸分子を指す。例えば、ゲノムDNAの場合、「単離」という用語は、ゲノムDNAに天然に結合している染色体的に単離された核酸分子を含む。好ましくは、「単離された」核酸は、核酸の両端に天然に位置する配列(標的核酸5´末端および3´末端に位置する配列)を有さない。
【0141】
本発明で使用される「被験者」という用語は、ヒトまたは他の動物、通常はヒト等の哺乳動物である。いくつかの実施例において、前記一種または複数種の薬剤、細胞、細胞集団または組成物が投与された被験者(例えば、患者)は、哺乳動物、通常はヒト等の霊長類動物である。いくつかの実施例において、前記霊長類動物は、サルまたは類人猿である。前記被験者は、男性でも女性でもよく、幼児、青少年、青年、成人、および老人の被験者を含む任意の適切な年齢であり得る。いくつかの実施例において、前記被験者は、げっ歯類動物等の非霊長類哺乳動物である。
【0142】
本発明で使用される「治療」(およびその文法的変形)とは、疾患、病症、障害、症状、副作用または結果またはその関連用言型の完全にまたは部分的に改善または軽減を指す。治療の望ましい効果は、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的影響の減少、転移の予防、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または軽減、ならびに疾患状態の緩和または予後の改善を含むが、これらに限定されない。当該用語は、疾患の完全な治癒や任意の症状の完全な除去、またはすべての症状や結果に対する影響を意味するものではない。
【0143】
薬剤(例えば、薬物製剤、細胞または組成物)の「有効量」とは、必要な期間内で一定の用量/量で所望の結果(例えば、治療または予防の結果)を達成するための有効な量を指す。
【0144】
試薬(例えば、薬物製剤または細胞)の「治療有効量」とは、必要な期間内で一定の用量で所望の治療結果(例えば、疾患、病症または障害を治療するために使用される)を達成するための、および/または薬物動態学的もしくは薬力学的治療効果を達成するための有効な量を指す。治療有効量は、被験者の疾患状態、年齢、性別、体重、および投与される細胞集団等の要因に応じて変化する可能性がある。いくつかの実施例において、提供される方法は、細胞および/または組成物を有効量(例えば、治療有効量)で投与することに関する。
【0145】
本発明で使用される「血清半減期」という用語は、被験者に治療性タンパク質を投与する場合に、被験者体内におけるタンパク質の血漿濃度が半分に減少するのに必要な時間を指す。タンパク質を再分配するか、または血流から除去したり、タンパク質加水分解等の方法によってタンパク質を分解したりすることができる。
【0146】
特に明記しない限り、融合タンパク質は、少なくとも二つの無関係なタンパク質のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質であり、前記無関係なタンパク質は、ペプチド結合によって連結されて、単一のタンパク質を形成する。無関係なアミノ酸配列は、直接互いに連結されるか、またはリンカー配列を介して連結されることができる。本発明において、タンパク質のアミノ酸配列が自然環境(例えば、細胞内)でペプチド結合によって通常連結しない場合、タンパク質は、無関係である。例えば、ウイルス抗原のアミノ酸配列およびコラーゲンまたはプロコラーゲンのアミノ酸配列は、通常、ペプチド結合によって連結されない。
【0147】
配列間の同一性または類似性とは、二つまたはそれ以上の核酸配列または二つまたはそれ以上のアミノ酸配列間の配列の同一性または類似性を意味する。パーセンテージ同一性を使用して配列同一性を測することができ、パーセンテージが高いほど、配列同一性が高くなる。以下に説明する配列比較アルゴリズムの一つを使用するか、または手動アラインメントおよび目視検査によって比較ウィンドウまたは測定された指定領域内で最大の一致を求めで比較およびアラインメントする場合、二つの配列が指定のパーセンテージの同一アミノ酸残基またはヌクレオチドを有する場合(例えば、指定領域で、または指定されていない場合は配列全体で、60%の同一性を有し、選択可能で、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する)、二つの配列は、「実質的に同一」である。選択可能で、同一性は、少なくとも約50個のヌクレオチド(または10個のアミノ酸)の長さの領域、より好ましくは、100個~500個または1000個またはそれ以上のポリヌクレオチド(または20個、50個、200個またはそれ以上のアミノ酸)の長さの領域に存在する。
【0148】
本発明で使用される「約」という用語は、当業者には容易に知られる各個値の一般的な誤差範囲を指す。本発明において特定の値またはパラメーターに「約」が言及される場合、当該値またはパラメーター自体を対象とする実施例を含む(および説明する)。
【0149】
本発明において、文脈上特に明記しない限り、単数形「1個(a)」、「1個(an)」および「前記」は、複数の指示対象も含む。例えば、「1個」とは、「少なくとも一つ」または「一つまたは複数」を表わす。
【0150】
本開示全体は、範囲形式で特許請求される主題の様々な態様が提示される。範囲形式での説明は、便宜および簡潔さのためにのみ提供され、特許請求される主題の範囲に対する厳密な制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。従って、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲、および当該範囲内の各値を具体的に開示するものと見なされるべきである。例えば、値の範囲が提供される場合、特許請求される主題は、当該範囲の上限と下限との間の各中間値、および当該指定範囲内の任意の他の指定値または中間値をカバーすることを理解されたい。これらの小さな範囲の上限および下限は、独立して小さな範囲に含まれる同時に特許請求される主題の範囲内に含まれるが、指定範囲内で明示的に除外される任意の制限値に制限される。指定範囲に一つまたは二つの制限値が含まれる場合、特許請求される主題には、含まれる制限値のいずれか一つまたは二つを除く範囲も含まれる。上記の説明は、範囲の広さに関係なくすべて適用される。
【0151】
本発明で使用される「組成物」とは、2種またはそれ以上の生成物、物質または化合物(細胞を含む)の任意の混合物を指す。それは、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水相、非水相またはその任意の組み合わせであり得る。
【0152】
本発明で使用される「ベクター」という用語は、それが結合している別の核酸を伝達できる核酸分子を指す。当該用語は、自己複製する核酸構造としてのベクター、および導入される宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターを含む。特定のベクターは、それらが作動可能に連結される核酸の発現を指示することができる。本発明において、このようなベクターは、「発現ベクター」と呼ばれる。
【実施例
【0153】
以下の実施例は、説明のみを目的としており、本開示の範囲を制限することを意図するものではない。
【0154】
実施例1:rhTNFR2-Fc-TPMの構築、発現、精製および調製
rhTNFR2-Fc-TPM真核生物発現ベクターの構築
rhTNFR2-Fc-TPM発現ベクターは、rhTNFR2-Fc-TPM融合タンパク質およびジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の発現をそれぞれ促進するCMVおよびSV40プロモーターを含む。DHFRは、メトトレキサート(MTX)選択によって高発現細胞株を選択するための発現ベクターの選択標識として使用される。
発現ベクターのコード領域は、N末端からC末端まで、シグナルペプチド(SEQ ID NO:3)、TNFR2領域(SEQ ID NO:4)、Fc領域(SEQ ID NO:5)および機能ペプチド断片反復配列(SEQ ID NO:6)を含む、ペプチド(SEQ ID NO:1)に翻訳されることができる。
【0155】
遺伝子操作されたrhTNFR2-Fc-TPM細胞株の構築
rhTNFR2-Fc-TPM発現ベクターは、GH-CHO(dhfr-/-)細胞に安定にトランスフェクションされる。MTX選択下で、モノクローナルスクリーニングによって、二つの高発現リードクローン1F2B11および1F2E5を選択する。
【0156】
発現および調製
タンパク質IEF、加速試験および高温試験のデータに基づいて配合を決定する。最終生成物は、1.00g/LのrhTNFR2-Fc-TPMタンパク質、2.60g/Lのリン酸水素ナトリウム一水和物、1.13g/Lのリン酸水素二ナトリウム二水和物、5.80g/Lの塩化ナトリウム、10.00g/Lのスクロース、5.30g/LのL-アルギニン塩酸塩、0.042g/Lのポリソルベート20を含む、pH6.30±0.30の滅菌溶液に調製される。
【0157】
ジスルフィド結合の分布:
rhTNFR2-Fc-TPMは、16対のジスルフィド結合を有する二量体糖タンパク質である。3対のジスルフィド結合は、C240-C240、C246-C246、C249-249のポリペプチド鎖間ジスルフィド結合であり、13対のジスルフィド結合は、C18-C31、C32-C45、C35-C53、C56-C71、C78-C88、C78-C96、C98-C104、C112-C121、C115-C139、C142-C157、C163-C178、C281-C341およびC387-C445(SEQ ID NO:2に従って番号付けられる)のポリペプチド内ジスルフィド結合である。
【0158】
N-グリコシル化修飾:
酵素消化およびクロマトグラフィー分析によって、二つのN-グリコシル化修飾部位、即ちN149およびN171がrhTNFR2-Fc-TPM(SEQ ID NO:2に従って番号付けられる)で検出され、これは、理論上の修飾部位と一致する。
【0159】
翻訳後修飾:
酵素消化およびクロマトグラフィー分析によって、M30およびM272の酸化修飾部位を含む二つのペプチドが検出され、Q82、Q109、N306、Q317およびQ524の脱アミノ修飾部位を含む五つのペプチドが検出され、D300(SEQ ID NO:2に従って番号付けられる)のアスパラギン酸異性化修飾部位を含むペプチドが検出される。
【0160】
実施例2:ロミプロスチムとの比較
BaF3/c-Mpl細胞は、ヒトTPORを発現する修飾マウスB細胞株である。その受容体は、ヒトTPO、およびTPO活性を有する関連物質に結合し、c-Mpl-JAK-STATシグナルのチロシンリン酸化を誘導し、細胞c-Mpl-JAK-STATのシグナル伝達経路を活性化し、細胞増殖を刺激することができる。従って、rhTNFR2-Fc-TPM、ロミプロスチム(Nplate(登録商標))またはTPOの存在下且つIL-3の非存在下で、BaF3/c-Mpl細胞は、増殖できる。
【0161】
様々な濃度のrhTNFR2-Fc-TPMストック溶液、調製CB-219MまたはNplate(登録商標)でBaF3/c-Mpl細胞を処理する。CCK-8検出方法によってBaF3/c-Mpl細胞の成長を分析する。表1に示されるように、rhTNFR2-Fc-TPMのEC50は、より低い。さらに、Nplate(登録商標)で処理したBaF3/c-Mpl細胞と比較して、rhTNFR2-Fc-TPMで処理したBaF3/c-Mpl細胞の濃度曲線は、より優れた均一性および勾配(図2)を有し、これは、rhTNFR2-Fc-TPMがNplate(登録商標)より優れた構造、受容体結合機能および質量均一性を有することを示す。
【0162】
【表1】
【0163】
実施例3:インビトロ治療効果研究
BaF3/c-Mpl細胞におけるc-Mpl-JAK-STATシグナル伝達経路に対するrhTNFR2-Fc-TPMの影響を研究する
0.5mg/mlのrhTNFR2-Fc-TPMまたは0.5mg/mlのNplate(登録商標)でBaF3/c-Mpl細胞を処理する。処理後、遠心分離によって細胞を収集し、且つ超音波処理によって細胞を溶解する。リン特異的抗体を使用して、ウェスタン免疫ブロッティングによってサンプルを分析する。
【0164】
図3に示されるように、rhTNFR2-Fc-TPMで処理した細胞およびNplate(登録商標)で処理した細胞でリン酸化TPORおよびリン酸化STAT3が検出され、これは、rhTNFR2-Fc-TPMおよびNplate(登録商標)がすべてTPOR-JAK-STAT3シグナル伝達経路を活性化できることを証明する。上記の結果は、rhTNFR2-Fc-TPMおよびNplate(登録商標)の作用メカニズムが同じであることを示す。
【0165】
実施例4:インビトロ治療効果研究
健康なBalb/cマウス血小板生成に対するrhTNFR2-Fc-TPMの影響を研究する
異なる投与経路を介して、rhTNFR2-Fc-TPMの単回用量で6~8週齢の雌Balb/cマウスを治療する。Nplate(登録商標)を陽性対照品として使用し、PBS溶液を陰性対照品として使用する。研究デザインの詳細な情報は、表2に示されたとおりである。




































【0166】
【表2】
【0167】
-1、3、4、5、6、7、9および11日目に、各グループのマウスの体重を測定し、眼窩静脈叢から血液サンプルを採取する。2因子ANOVA分析方法を使用して、GraphPad Prism 7ソフトウェアによって体重および血小板数を分析する。
【0168】
図4に示されるように、各グループのマウスの体重に有意な変化はなく、0および11日目に、すべての治療群の体重に有意な差はない(p>0.05)。図5Aに示されるように、すべての三つの用量レベル(50、100および200μg/kg)におけるrhTNFR2-Fc-TPMによる治療は、雌Balb/cマウスの血小板数を増加させ、投与経路間に有意差はない。血小板数の増加量は、rhTNFR2-Fc-TPMの用量と正の相関があり、低用量と比較して、高用量かで血小板数のピーク値が遅延され、投与9~11日後に、各治療群の血小板数は、正常レベルに戻る(図5A)。rhTNFR2-Fc-TPMで治療した健康なSDラットにおいても、同様の結果が観察されない(図5B)。
【0169】
カルボプラチン誘発性CITマウスモデルに対するrhTNFR2-Fc-TPMの影響を研究する
投与前、マウスに125mg/kgのカルボプラチンを腹腔内注射することによって、CITマウスモデルを確立する。研究デザインの詳細な情報は、表3に示されたとおりである。
【0170】
【表3】























【0171】
-1、3、5、8、11、14、16、19および22日目に、各グループのマウスの体重を測定し、眼窩静脈叢から血液サンプルを採取する。2因子ANOVA分析方法を使用して、GraphPad Prism 7ソフトウェアによって体重および血小板数を分析する。
【0172】
図6に示されるように、各治療群では体重異常が観察されず、各治療群の平均体重に有意差はない(p>0.05)。図7Aに示されるように、rhTNFR2-Fc-TPMは、すべての三つの用量レベル(100、200および400μg/kg)で、マウスのカルボプラチン誘発CITに対して良好な治療効果を有する。血小板数の増加量は、rhTNFR2-Fc-TPMの用量と正の相関がある(図7A)。rhTNFR2-Fc-TPMで治療したカルボプラチン誘発性CIT SDラットでは、同様の結果が観察されない(図7B)。
【0173】
効果的なインビボ研究では、rhTNFR2-Fc-TPMの単回用量で皮下注射してマウスの血小板数の増加を誘導できることを示し、有効用量は、>10μg/kgである。rhTNFR2-Fc-TPMは、カルボプラチン誘発性CITモデルにおいて良好な治療効果を有し、血小板数の増加量は、用量と正の相関がある。rhTNFR2-Fc-TPMの耐性が良好であり、その有効性は、投与経路間で優位はない。
【0174】
実施例5:インビボ薬力学研究
SDラットに、単回用量のrhTNFR2-Fc-TPMを0.02mg/kg(低用量)、0.06mg/kg(中用量)または0.2mg/kg(高用量)で皮下投与するか、または0.2mg/kgで静脈内投与する。皮下投与の場合、投与前および投与後2、8、12、14、24時間、2、3、4、5、7日目に血液サンプルを採取し、静脈内投与の場合、3分間、2、8、12、14、24時間、2、3、4、5、7日目に血液サンプルを採取する。カニクイザルに、単回用量のrhTNFR2-Fc-TPMを0.02mg/kg(低用量)、0.06mg/kg(中用量)または0.2mg/kg(高用量)で皮下投与するか、または0.2mg/kgで静脈内投与する。皮下投与の場合、投与前および投与後2、8、12、24時間、2、3、6、8、11、15日目に血液サンプルを採取し、静脈内投与の場合、5分間、2、8、12、24時間、2、3、6、8、11、15日目に血液サンプルを採取する。ELISA法によって血清中のrhTNFR2-Fc-TPMの濃度を分析し、ノンコンパートメントモデルを使用してWinNonlin8.0によって薬力学を分析する。
【0175】
図8A~8Bに示されるように、血清薬物濃度は、投与量と正の相関がある。被験された雄動物および雌動物の血清薬物濃度の変化の経口は、同じである(データは示されない)。SDラットの半減期は、22.2~32.7時間であり(図8A)、カニクイザルの半減期は、26.9~29.5時間であり(図8B)、SDラットまたはカニクイザルの薬物の血清半減期は、投与量とは関係ない(図8A~8B)。薬力学分析により、SDラットおよびカニクイザルにおけるAUCおよびCmaxは、すべて薬物用量の増加とともに増加することを示す(表4および表5)。







【0176】
【表4A】










【0177】
【表4B】














【0178】
【表4C】






























【0179】
【表5A】















【0180】
【表5B】
【0181】
図9に示されるように、すべての用量レベルおよび投与経路は、カニクイザルの血小板数の有意な増加を誘導し、増加レベルは、投与量と正の相関がある。
単回用量の125I標識rhTNFR2-Fc-TPMの研究では、rhTNFR2-Fc-TPMが血清中で最も多く分布され、rhTNFR2-Fc-TPMが主に尿液を通じて排泄される(図10)ことを示す。投与後12日目に94.91±1.53%の125I標識が尿液および糞便によって排泄され、rhTNFR2-Fc-TPMは、体内で蓄積されることが観察されない(データは示されない)。
【0182】
実施例6:インビボでの安全性および毒理学の研究
安全性研究
50、200または1000μg/kgで単回用量のrhTNFR2-Fc-TPMを皮下投与したSDラットは、中枢神経系機能に有意な変化を示さなかった。カニクイザルに、300、1000、3000μg/kgでrhTNFR2-Fc-TPMを週に2回、4週間投与し、rhTNFR2-Fc-TPM投与に関連するECGパラメーターおよび波形、呼吸頻度および1回換気量または血圧における有意な変化は観察されない(p>0.05)。
【0183】
急性毒理学研究
SDラットに、100、300または1000μg/kgで単回用量のrhTNFR2-Fc-TPMを皮下投与し、カニクイザルに、500、1500または5000μ
g/kgで単回用量のrhTNFR2-Fc-TPMを皮下投与する。rhTNFR2-Fc-TPMの投与後、動物を2週間観察する。体重、体温、ECGまたは臨床病理学(血液学、血液生化学、凝固および尿検査)に有意な変化はない。rhTNFR2-Fc-TPM投与15日後に動物を屠殺し、解剖する。有意な異常な病理学的変化は観察されない。
【0184】
長期にわたる毒理学研究
SDラットにおいて20、60、200μg/kgで、カニクイザルにおいて300、1000、3000μg/kgで週に2回、連続4週間rhTNFR2-Fc-TPMを投与し、その後4週間回復させる。
【0185】
治療期間中に、20μg/kg以上のrhTNFR2-Fc-TPMで治療したSDラットにおける血小板、IL-2、IL-6、TNF-αが増加し、ヘモグロビンが減少する。さらに、60μg/kg以上のrhTNFR2-Fc-TPMで治療したSDラットにおける白血球、好中球、リンパ球、単球および好塩基球が増加する。これらの変化は、回復中に復元される。臨床観察、体重、摂食、体温、眼科検査、尿検査、凝固機能、血液生化学、Tリンパ球サブセット、肉眼的解剖学または組織病理学において、投与に関連する異常は観察されない。SDラットにおける副作用のない用量(NOAEL)は、200μg/kgである。
【0186】
治療期間中に、300、1000および3000μg/kgのrhTNFR2-Fc-TPMで治療したカニクイザルでは、わずかから軽度の皮膚および/または皮下炎症性細胞浸 が発生し、血小板およびK+レベルが増加し、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリットおよび平均赤血球ヘモグロビン濃度が減少する。さらに、1000および3000μg/kgのrhTNFR2-Fc-TPMで治療したカニクイザルにおける網赤血球数が増加する。これらの変化は、回復中に復元される。臨床観察、体重、摂食、体温、眼科検査、尿検査、凝固機能、リンパ球サブセット、肉眼的解剖学または組織病理学において、投与に関連する異常は観察されない。カニクイザルにおけるNOAELは、3000μg/kgである。
【0187】
SDラットおよびカニクイザルのAUCおよびCmaxは、すべて投与量と正の相関があり、SDラットまたはカニクイザルにおいて、rhTNFR2-Fc-TPMの蓄積が観察されない。
【0188】
インビトロ溶血研究
2%赤血球生理食塩水懸濁液を0.1~0.5mlビ配合rhTNFR2-Fc-TPM(2.00mg/mlのrhTNFR2-Fc-TPMを含む)と37℃で3時間インキュベートする。赤血球の溶血または凝固は観察されない。
【0189】
実施例7:第I相臨床研究
第I相臨床研究は、用量漸増段階および用量拡大段階の二つの相を含む。用量漸増段階を研究する場合、各患者に単回投与し、用量拡大段階を研究する場合、各患者に複数回投与する。
【0190】
用量漸増段階
用量漸増段階を研究する主な目的は、皮下投与時のrhTNFR2-Fc-TPMの単回漸増用量(SAD)の安全性、耐性および免疫原性を評価し、rhTNFR2-Fc-TPMの最大耐量(MTD)および生物学的有効量(BED)を調べることである。
用量漸増段階を研究する第2の目的は、単回投与後の血清中のrhTNFR2-Fc-TPMの薬力学(PK)特徴を評価し、rhTNFR2-Fc-TPMの単回投与後の化学療法サイクル中の血小板数の変化を評価することである。
Balb/cマウス、SDラットおよびカニクイザルにおける治療効果、薬力学、安全性および毒理学研究に基づいて、用量漸増段階の開始用量は、2μg/kgであり、最大用量は、15μg/kgである。選択された患者は、2、6、10および15μg/kgの四つのグループに分けられる。各患者は、最初の化学療法サイクルの初回投与6~24時間後に、所在するグループの用量でrhTNFR2-Fc-TPMの腹部の皮下注射を1回受ける。
【0191】
用量拡大段階
用量拡大段階を研究する主な目的は、週に1回皮下投与時のrhTNFR2-Fc-TPM MTDまたはBEDの用量の安全性、耐性および免疫原性を評価することである。
用量拡大段階を研究する第2の目的は、週に1回皮下投与時の血清中のrhTNFR2-Fc-TPMの薬力学(PK)特徴を評価し、rhTNFR2-Fc-TPMの皮下投与を週に2回と週に1回との安全性および予備的治療効果を比較し、グレード3または4のCIT管理において、rhTNFR2-Fc-TPMの投与を週に2回と週に1回との予備的治療効果を比較し、最後のサイクルの血小板の最小値に基づいて、rhTNFR2-Fc-TPMを使用してグレード3または4の血小板減少症を予防する予備的治療効果を評価することである。
【0192】
選択された患者は、三つのグループに分けられる。
【0193】
グループA:
最初のサイクル(C1)において、最初の化学療法サイクルの初日(C1D1)から6~24時間後に、rhTNFR2-Fc-TPMを腹部皮下注射によって投与される。開始用量は、用量漸増段階によって決定されたBEDであり、その後、週に1回投与し(血小板数に基づいて後続の用量を調整する)、当該サイクル内の後続の投与日は、C1D8およびD15を含む。
【0194】
第2サイクル(C2)では投与しない。当該サイクルの血小板の最小値を評価し、C2で血小板の最小値が得られた日付をDmin(例えば、D14)として記録する。
【0195】
第3サイクル(C3)において、Dmin≦D12の場合、D1化学療法後に投与され、Dmin>12の場合、Dmin-12で投与し(Dminが18である場合、C3D6で投与する(適用される場合、化学療法後に投与する))、C3の最初の投与時間をDx日目として記録し、その後、当該サイクルが完了するまで(C3D21を含まない)、7日ごとに(Dx+7)1回投与する。
【0196】
グループB:
最初のサイクル(C1)では投与されない。
【0197】
第2サイクル(C2)において、第2化学療法サイクルの初日(C2D1)から6~24時間後に、rhTNFR2-Fc-TPMを腹部皮下注射によって投与する。開始用量は、用量漸増段階によって決定されたBEDであり、その後週に1回投与し(血小板数に基づいて後続の用量を調整する)、当該サイクル中の後続の投与日は、C2D8およびD15を含む。
【0198】
第3サイクルでは、グループAの第3サイクルと同じ投与スケジュールを使用する。
【0199】
グループC:
最初のサイクル(C1)において、最初の化学療法サイクルの初日(C1D1)から6~24時間後に、rhTNFR2-Fc-TPMを腹部皮下注射によって投与する。開始用量は、用量漸増段階によって決定されたBEDであり、その後週に2回投与し(PLT数に基づいて後続の用量を調整する)、当該サイクル中の後続の投与日は、C1D4/D8/D11/D15/D18を含む。
【0200】
第2サイクル(C2)では投与されない。
【0201】
第3サイクル(C3)において、DxでC3の最初の投与を実行し(グループAのC3におけるDxの測定を参照する)、その後、当該サイクルが完了するまで(C3D21を含まない)3日ごとに(Dx+3)1回投与する。
【0202】
実施例8:第I相臨床研究における薬力学研究
図11Aおよび図11Bは、単回用量のrhTNFR2-Fc-TPM投与後の、化学療法によるCITを患う患者1および患者2の血清中のrhTNFR2-Fc-TPMの薬力学的曲線を示す。腹部皮下注射により、患者1に2μg/KgのrhTNFR2-Fc-TPMを投与し、患者2に6μg/KgのrhTNFR2-Fc-TPMを投与する。
【0203】
図11Aおよび図11Bでは、二つの患者のPLT数が、rhTNFR2-Fc-TPM投与前の化学療法サイクル中にCIT臨界線以下(PLT=75)に低下したことが観察される。患者に投与されたrhTNFR2-Fc-TPMが後続の二つの化学療法サイクル中のPLT数を増加することができることも観察される。
発熱、悪寒、全身倦怠感、疲労、膝痛、頭痛、めまいおよび血圧等の副作用に関して、候補薬物投与後のD1~D21に用量限制毒性(DLT)を評価し、低用量および中用量では、すべて良好な安全性を有する。
【0204】
実施例9:第I相臨床研究における薬物動態研究
図12は、それぞれ患者1および患者2に単回用量のrhTNFR2-Fc-TPMを投与した後の血清中のrhTNFR2-Fc-TPMの薬物動態曲線を示す。
【0205】
血漿濃度(Cmax)は、投与量に比例し、半減期(t1/2)は、約2週間であり、これは、実施例8で論じた薬力学的研究と一致する。患者1に2μg/Kgを投与し、得られたCmaxは、1390pg/mLであり、t1/2は、368時間(15.3日)であるが、患者2に6μg/Kgを投与し、得られたCmaxは、2530pg/mLであり、t1/2は、約300時間(12.5日)である。従って、単回用量のrhTNFR2-Fc-TPMを受けた最初の二つのCIT患者は、後続の2サイクルまたはそれ以上の化学療法中で、血小板のレベルが維持され、血漿濃度(Cmax)は、投与量に比例して明らかな傾向を示し、これは、2週間に1回またはそれ以上の間隔(例えば、2.5、3、3.5、4、4.5週間ごとに1回)の投与頻度に基礎を提供する。このように、連続14日間毎日来院する必要があるTPIAO(登録商標)(rHuTPO)等の既存のCIT治療薬物と比較して、rhTNFR2-Fc-TPMは、来院の必要性が大幅に減少し、患者の治療および経済的負担において明らかな利点があり、患者の痛みおよび経済的コストを軽減することができる。
【0206】
具体的に開示された実施例は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、単に本開示の様々な態様を説明することを目的とするものである。本発明の説明および教示に従って、前記組成物および方法に対して様々な修正を容易に行うことができる。本開示の実際の範囲および精神から逸脱することなく、このような変更を行うことができ、これらの変更は、本開示の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
【配列表】
2024535361000001.xml
【国際調査報告】