(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】プロピレンコポリマーを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C08F 210/06 20060101AFI20240920BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08F210/06
C08F4/6592
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518427
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2022075697
(87)【国際公開番号】W WO2023046573
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】レスキネン,パウリ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジンボォ
(72)【発明者】
【氏名】ガーライトナー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ベルンライトナー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】クパレヴァ,アントニーナ
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02S
4J100AA03P
4J100AA04Q
4J100AA04R
4J100AA04S
4J100AA07Q
4J100AA07R
4J100AA07S
4J100AA16Q
4J100AA16R
4J100AA16S
4J100AA19Q
4J100AA19R
4J100AA19S
4J100CA03
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA22
4J100FA28
4J100FA29
4J100FA35
4J100FA41
4J100FA43
4J100FA47
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA00B
4J128BA03A
4J128BB00B
4J128BB03A
4J128BC12A
4J128BC25A
4J128CA28A
4J128DA02
4J128EA02
4J128EB02
4J128EB05
4J128EC04
4J128EF04
4J128FA04
4J128GA05
4J128GB01
(57)【要約】
ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、第1反応器(R1)において、プロピレンと、C4~C8α-オレフィンから選択されるコモノマー(C1a)とを、第1メタロセン触媒(MC1)の存在下で重合させ、第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)を得る工程であって、前記プロピレンの供給量に対する前記コモノマー(C1a)の供給量の比は、1~100mol/kmolの範囲であり、前記第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)のMFR2は、0.01~100g/10分の範囲である工程;前記第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)を第2反応器(R2)に移す工程;前記第2反応器(R2)において、前記第1ポリプロピレン(PP1)、プロピレン、C4~C8α-オレフィンから選択されるコモノマー(C1b)、および第2メタロセン触媒(MC2)の存在下で重合させ、第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)を得る工程であって、前記プロピレンの供給量に対する前記コモノマー(C1b)の供給量の比は、40~150mol/kmolの範囲であり、前記第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)のMFR2は、0.01~100g/10分の範囲である工程;前記第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)および第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)を含む前記ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)を第2反応器(R2)から取り出す工程を含み、ここで、前記第1メタロセン触媒(MC1)および/または第2メタロセン触媒(MC2)は、メタロセン錯体を含むメタロセン触媒(MC)であり、前記メタロセン触媒(MC)は、シリカを含む担体を含む、プロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、
a)第1反応器(R1)において、プロピレンと、C
4-C
8α-オレフィンから選択されるコモノマー(C1a)とを、第1メタロセン触媒(MC1)の存在下で重合させ、第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)を得る工程であって、
プロピレンの供給量に対するコモノマー(C1a)の供給量の比は、1~100mol/kmolの範囲であり、第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)のMFR
2は、0.01~100g/10分の範囲である工程、
b)第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)を第2反応器(R2)に移す工程、
c)第2反応器(R2)において、第1ポリプロピレン(PP1)、プロピレン、C
4-C
8α-オレフィンから選択されるコモノマー(C1b)、および第2メタロセン触媒(MC2)の存在下で重合させ、第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)を得る工程であって、
プロピレンの供給量に対するコモノマー(C1b)の供給量の比は、40~150mol/kmolの範囲であり、第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)のMFR
2は、0.01~100g/10分の範囲である工程、
d)第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)および第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)を含むポリプロピレンランダムコポリマー(PP)を第2反応器(R2)から取り出す工程
を含み、
ここで、第1メタロセン触媒(MC1)および/または第2メタロセン触媒(MC2)は、メタロセン錯体を含むメタロセン触媒(MC)であり、
メタロセン触媒(MC)は、シリカを含む担体を含み、
担体は、10~80μmの間のD50を有する、プロセス。
【請求項2】
第1メタロセン触媒(MC1)および/または第2メタロセン触媒(MC2)は、式(I):
【化1】
[式中、
各Xは、独立して、シグマ供与性配位子であり、
Lは、-R’
2C-、-R’
2C-CR’
2-、-R’
2Si-、-R’
2Si-SiR’
2-、-R’
2Ge-から選択される二価の架橋であり、各R’は、独立して、水素原子、または周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子またはフッ素原子を任意に含むC
1-C
20-ヒドロカルビル基、または任意に2つのR’基が一緒になって環を形成してよく、
各R
1は、独立して、同一または異なっていてもよく、水素、直鎖または分枝鎖のC
1-C
6-アルキル基、C
7-20-アリールアルキル、C
7-20-アルキルアリール基、またはC
6-20-アリール基、またはOY基であり、YはC
1-10-ヒドロカルビル基であり、任意に2つの隣接するR
1基は、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよく、
各R
2は、独立して、同一または異なっていてもよく、CH
2-R
8基であり、R
8はH、または直鎖または分枝鎖のC
1-6-アルキル基、C
3-8-シクロアルキル基、C
6-10-アリール基であり、
R
3は、直鎖または分枝鎖のC
1-C
6-アルキル基、C
7-20-アリールアルキル、C
7-20-アルキルアリール基またはC
6-C
20-アリール基であり、
R
4は、C(R
9)
3基であり、R
9は直鎖または分岐鎖のC
1-C
6-アルキル基であり、
R
5は、水素、または周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C
1-C
20-ヒドロカルビル基であり、
R
6は、水素、または周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C
1-C
20-ヒドロカルビル基であるか;または
R
5およびR
6は、一緒になって5員の飽和炭素環を形成でき、これはn個の基R
10で任意に置換されていてもよく、nは0~4であり、
各R
10は、同一または異なっており、C
1-C
20-ヒドロカルビル基、または周期表の14~16族に属する1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC
1-C
20-ヒドロカルビル基であってよく、
R
7は、H、または直鎖もしくは分枝鎖のC
1-C
6-アルキル基、または1~3個の基R
11によって任意に置換された、6~20個の炭素原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であり、
各R
11は、独立して、同一または異なっていてもよく、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC
1-C
6-アルキル基、C
7-20-アリールアルキル、C
7-20-アルキルアリール基、またはC
6-20-アリール基、またはOY基であり、YはC
1-10-ヒドロカルビル基である]
の錯体を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
担体は、15~80μm、好ましくは18~50μmの平均粒径を有する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
担体は、10~100nmの平均細孔径を有する、請求項1~3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
コモノマー(C1a)および/またはコモノマー(C1b)は、C
4およびC
6α-オレフィンからなる群から選択され、好ましくは1-ブテンである、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
コモノマー(C1a)およびコモノマー(C1b)が同一である、請求項1~5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)はターポリマーであり、工程a)は、エチレンおよびC
4-C
8α-オレフィンからなる群から選択される第2コモノマー(C2)の存在下で行われ、第2コモノマー(C2)は、コモノマー(C1a/C1b)とは異なり、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、5~60mol/kmolの範囲であり、工程c)は、第2コモノマー(C2)の存在下で行われ、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、50~150mol/kmolの範囲である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
第2コモノマー(C2)はエチレンである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
工程a)は、スラリー相重合工程として実施される、および/または第1反応器(RK1)はループ反応器である、請求項1~8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
工程a)において、プロピレンの供給量に対するコモノマー(C1a)の供給量の比は、30~50mol/kmol、好ましくは35~45mol/kmolの範囲である、請求項1~9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
工程a)において、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、10~20mol/kmol、好ましくは13~18mol/kmolの範囲である、請求項3~9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
工程c)は気相重合工程として実施される、および/または第2反応器(RK2)は気相反応器である、好ましくは工程c)は流動床気相重合工程として実施される、および/または第2反応器(2)は流動床気相反応器である、請求項1~11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
工程c)において、プロピレンの供給量に対するコモノマー(C1b)の供給量の比は、40~60mol/kmol、好ましくは45~50mol/kmolの範囲である、請求項1~12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
工程c)において、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、90~130mol/kmol、好ましくは105~115mol/kmolの範囲である、請求項7~13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)は、6.5ppm未満、好ましくは5ppm未満、最も好ましくは4ppm未満のコモノマー(C1a)およびコモノマー(C1b)の合計残留含有量を有する、請求項1~14のいずれかに記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタロセン触媒の存在下で、C4~C8α-オレフィンから選択されるコモノマーでプロピレンコポリマーを製造するためのプロセスに関する。特に、本発明は、プロセスにおけるコモノマー転化率が改善され、最終生成物中の残留コモノマー含量が低いプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン-エチレンコポリマーなどのポリプロピレン系コポリマーは、高い剛性および衝撃強度などの良好な機械的特性と光学的特性との組み合わせが必要な、薄肉包装用途などの成形用途で広く使用されている。
【0003】
したがって、そのようなポリプロピレンコポリマーの重合プロセスの効率を改善することに一般的な関心がある。従来技術で知られているポリプロピレンの重合プロセスでは、コモノマーの反応性および転化率は一般に悪い。
【0004】
その結果、そのようなプロセスで製造された製品には、一般に炭化水素残留物が多く含まれる。このような残留物は、包装材料から包装された材内に移動できるため、食品および医薬品の包装分野では問題になる。
【0005】
さらに、最適な製品領域が操作ウィンドウの境界上にあるため、ターゲット領域での重合プロセスの操作性が信頼できないという結果になる。
【0006】
ポリマー鎖中の特定のコモノマー含量を達成するには、より多量のコモノマーが必要であるため、コモノマー回収セクションなどの追加の設備も重合反応器の下流に設ける必要がある。より多量のコモノマーのさらなる欠点は、重合プロセス全体にわたるコモノマーの損失もより大きいことである。
【0007】
これらすべての課題により、生産率を工場の通常の能力の約50%に制限しなければならない状況につながり得る。したがって、一般に、従来技術で知られているプロピレンコポリマーの重合プロセスは効率が低く、それにより製造コストが高くなるだけでなく、最適な特性プロファイルがあまり得られない製品が生じる。
【0008】
WO2020/099566 A1では、1.0~20.0g/10分のメルトフローレート(MFR2)および1.5~8.0重量%のブテン含量を有するマルチモーダルプロピレンブテンランダムコポリマーを得るためのプロセスによってこれらの問題を解決しようとしており、前記コポリマーは、シングルサイト触媒を使用して調製され、前記コポリマーは:(i)0.5~20.0g/10分のMFR2および0.5~10.0重量%のブテン含量を有する30~70重量%のプロピレンブテンコポリマー(A);および(ii)0.5~20.0g/10分のMFR2および1.0~8.0重量%のブテン含量を有する70~30重量%のプロピレンブテンコポリマー(B)を含み;コポリマー(A)と(B)とは異なる。
【0009】
WO2020/099563 A1では、1.0~20.0g/10分のメルトフローレート(MFR2)および5.0~20.0重量%のブテン含量を有するマルチモーダルプロピレンブテンランダムコポリマーを得るためのプロセスによってこれらの問題を解決しようとしており、前記コポリマーは、シングルサイト触媒を使用して調製され、前記コポリマーは:(i)0.5~20.0g/10分のMFR2および2.0~10.0重量%のブテン含量を有する30~70重量%のプロピレンブテンコポリマー(A);および(ii)0.5~20.0g/10分のMFR2および4.0~20.0重量%のブテン含量を有する70~30重量%のプロピレンブテンコポリマー(B)を含み;コポリマー(A)と(B)とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2020/099566号
【特許文献2】国際公開第2020/099563号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これらの従来技術のプロセスは、高いコモノマー転化率を達成できるが、最終製品中のコモノマー含量が一部の食品または医療用途で必要とされるほど低くないという欠点がある。
【0012】
したがって、最終生成物中の揮発性物質の量を減らすという観点から、マルチモーダルプロプレンランダムコポリマーの重合プロセスをさらに改良する必要性が常に存在する。
【0013】
本発明の目的
したがって、本発明の目的は、前述の要件を満たす、例えば、生成物の機械的特性と光学的特性とのバランスの取れた組み合わせ、ならびに高いコモノマー転化率を達成する、プロピレンランダムコポリマーの重合プロセスを提供することであり、これにより最終製品中の揮発性物質の量が改善された、つまり減少した製品が得られる。
【0014】
定義
本明細書で使用する「[モノマー]のコポリマー」という用語は、重量の大部分が[モノマー]単位に由来する(すなわち、コポリマーの総重量に対して少なくとも50重量%[モノマー])ポリマーを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
驚くべきことに、上記の目的は、以下の工程:
a)第1反応器(R1)において、プロピレンと、C4-C8α-オレフィンから選択されるコモノマー(C1a)とを、第1メタロセン触媒(MC1)の存在下で重合させ、第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)を得る工程であって、
前記プロピレンの供給量に対する前記コモノマー(C1a)の供給量の比は、1~100mol/kmolの範囲であり、前記第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)のMFR2は、0.01~100g/10分の範囲である工程、
b)前記第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)を第2反応器(R2)に移す工程、
c)前記第2反応器(R2)において、前記第1ポリプロピレン(PP1)、プロピレン、C4-C8α-オレフィンから選択されるコモノマー(C1b)、および第2メタロセン触媒(MC2)の存在下で重合させ、第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)を得る工程であって、
前記プロピレンの供給量に対する前記コモノマー(C1b)の供給量の比は、40~150mol/kmolの範囲であり、前記第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)のMFR2は、0.01~100g/10分の範囲である工程、
d)前記第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)および第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)を含む前記ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)を第2反応器(R2)から取り出す工程
を含み、
ここで、前記第1メタロセン触媒(MC1)および/または第2メタロセン触媒(MC2)は、メタロセン錯体を含むメタロセン触媒(MC)であり、
前記メタロセン触媒(MC)は、シリカを含む担体を含む
ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)を製造するためのプロセスによって達成できることが判明した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましくは、本発明によるプロセスにおいて、前記コモノマー(C1a)および/または前記コモノマー(C1b)は、C4およびC6α-オレフィンからなる群から選択され、好ましくは1-ブテンである。
【0017】
さらに、本発明によるプロセスにおいて、前記コモノマー(C1a)および前記コモノマー(C1b)は同一である。
【0018】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明のプロセスにおいて、前記ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)はターポリマーである。このようなプロセスでは、工程a)は、エチレンおよびC4-C8α-オレフィンからなる群から選択される第2コモノマー(C2)の存在下で実施され、前記第2コモノマー(C2)はコモノマー(C1a/C1b)とは異なり、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、5~60mol/kmolの範囲であり、工程c)は、第2コモノマー(C2)の存在下で行われ、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、50~150mol/kmolの範囲である。好ましくは、この特に好ましい実施形態では、第2コモノマー(C2)はエチレンである。
【0019】
工程a)で使用される温度は、典型的には60~100℃、好ましくは60~90℃である。好ましくは、工程a)は、60~80℃、より好ましくは65~75℃、最も好ましくは68~70℃の温度で行われる。ポリマーが希釈剤中に部分的に溶解し、反応器が汚れるのを防ぐために、過度に高い温度は避けるべきである。工程a)で使用される圧力は、好ましくは1~150bar、より好ましくは35~60bar、さらにより好ましくは40~55bar、最も好ましくは43~52barである。
【0020】
工程a)において、コモノマー(C1a)の供給量のプロピレンの供給量に対する比は、好ましくは30~70mol/kmolの範囲、より好ましくは35~65mol/kmolの範囲である。本発明の好ましい実施形態において、工程a)における第2コモノマー(C2)の供給量のプロピレンの供給量に対する比は、10~20mol/kmol、好ましくは13~18.5mol/kmolの範囲である。
【0021】
工程a)で製造される第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)は、好ましくは0.1~10g/10分、より好ましくは2~8g/10分、最も好ましくは3~5g/10分の範囲のMFR2を有する。さらに、第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)は、好ましくは1.5重量%未満、より好ましくは1.2重量%未満、最も好ましくは1.0重量%未満のキシレン可溶分(XCS)を有する。典型的には、第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)のキシレン可溶分(XCS)は0.1重量%より高い。
【0022】
工程a)は、好ましくはスラリー重合工程である。スラリー重合は通常、不活性希釈剤、典型的にはメタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど、またはそれらの混合物などの炭化水素希釈剤中で行われる。好ましくは、希釈剤は、1~4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素、またはそのような炭化水素の混合物である。特に好ましい希釈剤はプロパンであり、少量のメタン、エタンおよび/またはブタンを含み得る。スラリー重合は、スラリー重合に使用される任意の既知の反応器中で行ってよい。このような反応器には、連続撹拌槽反応器およびループ反応器が含まれる。ループ反応器内で重合を行うことが特に好ましい。このような反応器では、スラリーは循環ポンプを使用して閉じたパイプに沿って高速で循環する。ループ反応器は当技術分野で一般に知られており、例えばUS-A-4582816、US-A-3405109、US-A-3324093、EP-A-479186およびUS-A-5391654に例が示されている。したがって、第1重合段階をループ反応器内でスラリー重合として行うことが好ましい。
【0023】
前記スラリーは反応器から連続的にまたは断続的に抜き出してよい。断続的に抜き出す好ましい方法は、反応器から濃縮スラリーのバッチを抜き出す前にスラリーを濃縮させる沈殿レッグ(settling legs)の使用である。沈殿レッグの使用は、とりわけ、US-A-3374211、UA-A-3242150およびEP-A-1310295に開示されている。連続抜き出しは、とりわけ、EP-A-891990、EP-A-1415999、EP-A-1591460およびWO-A-2007/025640に開示されている。連続抜き出しは、EP-A-1310295およびEP-A-1591460に開示されているように、適切な濃縮方法と有利に組み合わせられる。スラリーを第1重合段階から連続的に抜き出すことが好ましい。
【0024】
水素は通常、第1プロピレンコポリマー(PP1)のMFR2を制御するために第1重合段階に導入される。当業者には理解されるように、所望のMFR2に到達するために必要な水素の量は、使用される触媒および重合条件に依存する。
【0025】
第1重合段階における平均滞留時間は、典型的には20~120分、好ましくは30~80分である。当技術分野でよく知られているように、平均滞留時間τは、以下の式(1):
【数1】
[式中、
V
Rは、反応空間(ループ反応器の場合は反応器の体積、流動床反応器の場合は流動床の体積)の体積であり、
Q
oは、生成物ストリーム(ポリマー生成物および流体反応混合物を含む)の体積流量(volumetric flow rate)である]
から計算できる。
【0026】
製造速度は触媒供給速度により適切に制御される。モノマー濃度を適切に選択することによって、製造速度に影響を与えることも可能である。次いで、プロピレン供給速度を適切に調整することによって、所望のモノマー濃度を達成できる。
【0027】
工程c)は、好ましくは気相重合工程、すなわち気相反応器中で実施される。流動床気相反応器など、当技術分野で知られている任意の適切な気相反応器を使用してよい。
【0028】
気相反応器の場合、使用される反応温度は一般に30~90℃の範囲であり、反応器圧力は一般に10~40barの範囲であり、滞留時間は一般に1~8時間である。使用されるガスは、通常、窒素などの非反応性ガス、またはモノマー(エチレンなど)と合わせたプロパンなどの低沸点炭化水素である。好ましくは、工程c)の温度は60~88℃、より好ましくは75~85℃の範囲である。それぞれ、工程c)は、好ましくは15~26bar、より好ましくは20~25barの範囲の圧力で実施される。
【0029】
工程c)において、コモノマー(C1b)の供給量のプロピレンの供給量に対する比は、好ましくは40~60mol/kmol、より好ましくは45~51mol/kmolの範囲である。さらに、第2コモノマー(C2)の供給量のプロピレンの供給量に対する比は、好ましくは70~130mol/kmol、より好ましくは75~115mol/kmolの範囲である。
【0030】
さらに、工程c)で製造される第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)のMFR2は、好ましくは0.01~10g/10分、より好ましくは2~8g/10分、最も好ましくは4~7g/10分の範囲である。
【0031】
連鎖移動剤(例えば水素)は、典型的には、工程c)に添加される。
【0032】
好ましくは、工程a)およびc)におけるコモノマー(C1a、C1b)の総転化率は、12%より高く、好ましくは15%より高く、より好ましくは19%より高く、さらにより好ましくは22%より高く、特により好ましくは28%より高く、最も好ましくは40%より高い。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、第1メタロセン触媒(MC1)および第2メタロセン触媒(MC2)は同一である。
【0034】
好ましくは、ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)は、コモノマー(C1a)とコモノマー(C1b)との合計残留含量が6.5重量%以下、好ましくは5重量%以下、最も好ましくは4重量%以下である。(合計した)残留コモノマー含量は、静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによって検出され得る。
【0035】
本発明のさらに好ましい実施形態では、重合プロセスは、コモノマー(C1a)またはコモノマー(C1b)を回収する工程を含まない。
【0036】
工程a)の第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)と工程c)の第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)との間の製造分配(production split)は、好ましくは30:70~70:30、より好ましくは35:65および65:35、最も好ましくは40:50および60:50の範囲である。
【0037】
好ましいプロセスは、Borealisによって開発され、Borstar(登録商標)技術として知られているような、上で特定したスラリー気相プロセスである。この点に関しては、欧州特許出願EP 0887379 A1およびEP 0517868 A1を参照されたい。
【0038】
上述の重合工程の前に予備重合工程を行ってよい。したがって、本発明による方法は、工程a)の前に以下:
a’)第1メタロセン触媒(MC1)の存在下でプロピレンを予備重合する工程
をさらに含むことが好ましい。
【0039】
予備重合の目的は、低温および/または低モノマー濃度において触媒上で少量のポリマーを重合させることである。予備重合により、スラリー中の触媒の性能の改善および/または最終ポリマーの特性の変更が可能である。予備重合工程は通常、スラリー中で行われる。
【0040】
したがって、予備重合工程はループ反応器内で実施してよい。次いで、予備重合は、好ましくは不活性希釈剤、典型的にはメタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど、またはそれらの混合物などの炭化水素希釈剤中で行われる。好ましくは、希釈剤は、1~4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素、またはそのような炭化水素の混合物である。
【0041】
予備重合工程の温度は、典型的には0~90℃、好ましくは20~80℃である。圧力は重要ではないが、典型的には1~150bar、好ましくは40~80barである。
【0042】
モノマーの量は、典型的には、固体触媒成分1グラム当たり0.1~1000gのモノマーが予備重合工程で重合されるような量である。当業者には知られているように、連続予備重合反応器から回収される触媒粒子は、すべてが同じ量のプレポリマーを含有するわけではない。代わりに、各粒子は、予備重合反応器内でのその粒子の滞留時間に依存する独自の特性量を有している。一部の粒子は比較的長時間反応器内に留まり、一部の粒子は比較的短時間留まるため、粒子ごとにプレポリマーの量も異なり、個々の粒子によっては上記の制限を超える量のプレポリマーが含まれる場合がある。しかしながら、触媒上のプレポリマーの平均量は、典型的には上で特定した制限内である。
【0043】
プレポリマーの分子量は、当技術分野で知られているように、水素によって制御され得る。さらに、WO-A-96/19503およびWO-A-96/32420に開示されているように、粒子が相互に、または反応器の壁に付着するのを防ぐために帯電防止添加剤を使用してよい。
【0044】
予備重合工程が存在する場合、触媒成分はすべて予備重合工程に導入されることが好ましい。しかしながら、固体触媒成分と助触媒とを別々に供給できる場合、助触媒の一部のみを予備重合段階に導入し、残りの部分を後続の重合段階に導入することが可能である。この場合も、そこで十分な重合反応が得られる量の助触媒を予備重合段階に導入する必要がある。
【0045】
本発明の範囲内では、予備重合で製造されるポリマーの量は、典型的にはプロピレンランダムコポリマー(PP)に対して1.0~5.0重量%の範囲内にあることが理解される。
【0046】
プロピレンランダムコポリマー(PP)は、少なくとも1つのメタロセン触媒の存在下で調製される。メタロセン触媒は、典型的には、最大内部細孔容積で多孔質支持体に含浸されたメタロセン/活性剤反応生成物を含む。触媒錯体は、典型的には架橋されている配位子、IVa~VIa族の遷移金属、および有機アルミニウム化合物を含む。触媒金属化合物は、典型的には金属ハロゲン化物である。
【0047】
本発明によるメタロセン触媒は、アイソタクチックポリプロピレンの製造に適した任意の担持メタロセン触媒であってよい。
【0048】
シングルサイト触媒(SSC)は、メタロセン錯体、ホウ素含有助触媒および/またはアルミノキサン助触媒を含む助触媒系、およびシリカ担体を含むことが好ましい。
【0049】
好ましくは、第1および/または第2メタロセン触媒は、式(I):
【化1】
[式中、
各Xは、独立して、シグマ供与性配位子であり、
Lは、-R’
2C-、-R’
2C-CR’
2-、-R’
2Si-、-R’
2Si-SiR’
2-、-R’
2Ge-から選択される二価の架橋であり、各R’は、独立して、水素原子、または周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子またはフッ素原子を任意に含むC
1-C
20-ヒドロカルビル基、または任意に2つのR’基が一緒になって環を形成してもよく、
各R
1は、独立して、同一または異なっていてもよく、水素、直鎖または分枝鎖のC
1-C
6-アルキル基、C
7-20-アリールアルキル、C
7-20-アルキルアリール基、またはC
6-20-アリール基、またはOY基であり、YはC
1-10-ヒドロカルビル基であり、任意に2つの隣接するR
1基は、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよく、
各R
2は、独立して、同一または異なっていてもよく、CH
2-R
8基であり、R
8はH、または直鎖もしくは分枝鎖のC
1-6-アルキル基、C
3-8-シクロアルキル基、C
6-10-アリール基であり、
R
3は、直鎖または分枝鎖のC
1-C
6-アルキル基、C
7-20-アリールアルキル、C
7-20-アルキルアリール基またはC
6-C
20-アリール基であり、
R
4は、C(R
9)
3基であり、R
9は直鎖または分岐鎖のC
1-C
6-アルキル基であり、
R
5は、水素、または周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C
1-C
20-ヒドロカルビル基であり、
R
6は、水素、または周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C
1-C
20-ヒドロカルビル基であるか;または
R
5およびR
6は、一緒になって5員の飽和炭素環を形成でき、これはn個の基R
10で任意に置換されていてもよく、nは0~4であり、
各R
10は、同一または異なっており、C
1-C
20-ヒドロカルビル基、または周期表の14~16族に属する1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC
1-C
20-ヒドロカルビル基であってよく、
R
7は、H、または直鎖もしくは分枝鎖のC
1-C
6-アルキル基、または1~3個の基R
11によって任意に置換された、6~20個の炭素原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であり、
各R
11は、独立して、同一または異なっていてもよく、水素、直鎖または分枝鎖のC
1-C
6-アルキル基、C
7-20-アリールアルキル、C
7-20-アルキルアリール基、またはC
6-20-アリール基、またはOY基であり、YはC
1-10-ヒドロカルビル基である]
の錯体を含む触媒である。
【0050】
「シグマ供与性配位子」という用語は、当業者にはよく理解されており、すなわち、シグマ結合を介して金属に結合した基である。したがって、アニオン性配位子「X」は、独立してハロゲンであるか、またはR’、OR’、SiR’3、OSiR’3、OSO2CF3、OCOR’、SR’、NR’2もしくはPR’2基からなる群から選択され得、R’は、独立して、水素、直鎖状もしくは分枝鎖状、環状もしくは非環式、C1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、C2~C20アルキニル、C3~C12シクロアルキル、C6~C20アリール、C7~C20アリールアルキル、C7~C20アルキルアリール、C8~C20アリールアルケニルであり、R’基は場合により、14~16族に属する1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。好ましい実施形態では、アニオン性配位子「X」は同一であり、Clのようなハロゲン、またはメチルもしくはベンジルのいずれかである。
【0051】
好ましい一価のアニオン性配位子はハロゲン、特に塩素(Cl)である。
【0052】
特にそのような触媒の調製に関するさらなる情報は、例えばWO2013/007650 A1に見出すことができる。
【0053】
メタロセン触媒の好ましい錯体には以下が含まれる:
rac-ジメチルシランジイルビス[2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4’-tert-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-(4’-tert-ブチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4’-tert-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3’,5’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-シンダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(4’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-シンダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-5 ジtert-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド。
【0054】
特に好ましいのは、rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-sインダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリドである。
【0055】
また、特に好ましくは、第1および/または第2メタロセン触媒は、式(II):
【化2】
[式中、
各R
1は、独立して、同一または異なっていてもよく、水素または直鎖もしくは分枝鎖のC
1-C
6アルキル基であり、フェニル基当たり少なくとも1つのR
1は水素ではなく、
R’は、C
1-C
10ヒドロカルビル基、好ましくはC
1-C
4ヒドロカルビル基、より好ましくはメチル基であり、Xは、独立して水素原子、ハロゲン原子、C
1-C
6アルコキシ基、C
1-C
6アルキル基、フェニルまたはベンジル基である]
の錯体を含む触媒である。
【0056】
最も好ましくは、Xは塩素、ベンジルまたはメチル基である。好ましくは、両方のX基は同一である。最も好ましい選択肢は、2つの塩化物、2つのメチル基または2つのベンジル基、特に2つの塩化物である。
【0057】
本発明の特に好ましいメタロセン触媒には以下が含まれる:
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(4’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-シンダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-5インダセン-1-イル][2-メチル-[4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-シンダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジtert-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
またはそれらの対応するジルコニウムジメチル類似体。
【0058】
特に好ましいのは、式(III):
【化3】
による、rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロs-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリドである。
【0059】
本発明の錯体、ひいては触媒を形成するのに必要な配位子は、任意のプロセスによって合成することができ、熟練した有機化学者は、必要な配位子材料を製造するための様々な合成プロトコルを考案できるであろう。例えば、WO2007/116034は、必要な化学を開示している。合成プロトコルは一般に、WO2002/02576、WO2011/135004、WO2012/084961、WO2012/001052、WO2011/076780、WO2015/158790およびWO2018/122134にも見出すことができる。特に、本発明の最も好ましい触媒が記載されているWO2019/179959を参照されたい。
【0060】
活性触媒種を形成するには、当技術分野でよく知られているように、通常、助触媒を使用する必要がある。
【0061】
本発明によれば、ホウ素含有助触媒および/またはアルミノキサン助触媒を含む助触媒系が、上記で定義されたメタロセン触媒錯体と組み合わせて使用される。
【0062】
前記アルミノキサン助触媒は、式(IV):
【化4】
の1つであり得、式中、nは、通常6~20であり、Rは以下の意味を有する。
【0063】
アルミノキサンは、有機アルミニウム化合物、例えば式AlR3、AlR2YおよびAl2R3Y3などの部分加水分解により形成される(式中、Rは、例えば、C1-C10アルキル、好ましくはC1-C5アルキル、またはC3-C10シクロアルキル、C7-C12アリールアルキルまたはアルキルアリール、および/またはフェニルもしくはナフチルであり得、Yは水素、ハロゲン、好ましくは塩素または臭素、またはC1-C10アルコキシ、好ましくはメトキシまたはエトキシであり得る)。得られる酸素含有アルミノキサンは、一般に純粋な化合物ではなく、式(III)のオリゴマーの混合物である。
【0064】
好ましいアルミノキサンはメチルアルミノキサン(MAO)である。本発明に従って助触媒として使用されるアルミノキサンは、その製造方法により純粋な化合物ではないため、以下のアルミノキサン溶液のモル濃度はそれらのアルミニウム含有量に基づく。
【0065】
本発明によれば、アルミノキサン助触媒の代わりにホウ素含有助触媒を使用することもでき、またはアルミノキサン助触媒をホウ素含有助触媒と組み合わせて使用することもできる。
【0066】
ホウ素系助触媒が使用される場合、錯体をTIBAなどのアルミニウムアルキル化合物と反応させることによって予めアルキル化するのが通常であることは、当業者には理解されよう。この手順はよく知られており、任意の適切なアルミニウムアルキル、例えばAl(C1-C6アルキル)3を使用することができる。好ましいアルミニウムアルキル化合物は、トリエチルアルミニウム、トリ-イソブチルアルミニウム、トリ-イソヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムおよびトリ-イソオクチルアルミニウムである。
【0067】
あるいは、ホウ酸塩助触媒が使用される場合、メタロセン触媒錯体はそのアルキル化バージョンであり、すなわち、例えばジメチルまたはジベンジルメタロセン触媒錯体を使用することができる。
【0068】
対象のホウ素系助触媒には、式(V):
BY3 (V)
のものが含まれ、式中、Yは、同一または異なっており、水素原子、炭素原子数1~約8のアルキル基、炭素原子数6~約15のアリール基、それぞれアルキル基中に1~10の炭素原子とアリール基中に6~20の炭素原子を有するアルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキルまたはハロアリール、またはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。Yの好ましい例は、メチル、プロピル、イソプロピル、イソブチルまたはトリフルオロメチル、フェニル、トリル、ベンジル基、p-フルオロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、3,4,5-トリフルオロフェニルおよび3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルなどのアリールまたはハロアリールなどの不飽和基である。好ましい選択肢は、トリフルオロボラン、トリフェニルボラン、トリス(4-フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(トリル)ボラン、トリス(3,5-ジメチル-フェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボランおよび/またはトリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボランである。
【0069】
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが特に好ましい。
【0070】
しかしながら、ホウ酸塩、すなわちホウ酸塩3+イオンを含有する化合物を使用することが好ましい。
【0071】
このようなイオン性助触媒は、好ましくは、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびテトラフェニルボレートなどの非配位アニオンを含む。適切な対イオンは、メチルアンモニウム、アニリニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、N-メチルアニリニウム、ジフェニルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ-n-ブチルアンモニウム、メチルジフェニルアンモニウム、ピリジニウム、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリニウムまたはp-ニトロ-N,N-ジメチルアニリニウムなどのプロトン化されたアミンまたはアニリン誘導体である。
【0072】
本発明に従って使用することができる好ましいイオン性化合物には、以下が含まれる:
トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、
トリメチルアンモニウムテトラ(トリル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(トリル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリプロピルアンモニウムテトラ(ジメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(4-フルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート、
N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
【0073】
N,N-ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキスト(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリエチルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
ジフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
または、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0074】
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはN,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0075】
驚くべきことに、特定のホウ素助触媒が特に好ましいことが見出された。
【0076】
したがって、本発明での使用に好ましいホウ酸塩はトリチルイオンを含む。したがって、N,N-ジメチルアンモニウム-テトラキスペンタフルオロフェニルボレートおよびPh3CB(PhF5)4およびその類似体の使用が特に好ましい。
【0077】
本発明によれば、好ましい助触媒はアルミノキサン、より好ましくはメチルアルミノキサン、アルミノキサンとAl-アルキル、ホウ素またはホウ酸塩助触媒との組み合わせ、、およびアルミノキサンとホウ素系助触媒との組み合わせである。
【0078】
助触媒の適切な量は、当業者にはよく知られている。
【0079】
ホウ素とメタロセンの金属イオンとのモル比は、0.5:1~35 10:1mol/mol、好ましくは1:1~10:1mol/mol、特に1:1~5:1mol/molの範囲であってよい。
【0080】
アルミノキサン中のAlとメタロセンの金属イオンとのモル比は、1:1~2000:1mol/mol、好ましくは10:1~1000:1mol/mol、より好ましくは50:1~500:1mol/molの範囲であってよい。
【0081】
本発明の重合プロセスで使用される触媒は、担持された形態で使用される。使用される粒子状担体材料はシリカを含み、好ましくはシリカからなる。当業者は、メタロセン触媒を担持するために必要な手順を知っている。
【0082】
特に好ましくは、担体は多孔質材料であり、その結果、複合体が担体の細孔に装填されてよく、例えばWO94/14856(Mobil)、WO95/12622(Borealis)およびOW2006/097497に記載されているプロセスと類似のプロセスを使用する。
【0083】
シリカ担体の平均粒径は、典型的には10~100μmであり得る。しかしながら、担体の平均粒径が15~80μm、好ましくは18~50μmであれば特別な利点が得られることが判明した。
【0084】
シリカ担体の粒度分布を以下に示す。シリカ担体は、好ましくは10~80μm、好ましくは18~50μmの間のD50を有する。さらに、シリカ担体は、5~30μmの間のD10および30~90μmの間のD90を有することが好ましい。好ましくは、シリカ担体は0.1~0.7、好ましくは0.2~0.6のSPAN値を有する。
【0085】
シリカ担体の平均細孔径は10~100nm、好ましくは20~50nmの範囲であり、細孔容積は1~3ml/g、好ましくは2~2.5ml/gであり得る。平均細孔径は、窒素ガスを使用するBET(Brunauer-Emmett-Teller)法などの従来の方法によって測定されてよい。適切な担体材料の例は、例えば、PQ Corporationによって製造および販売されるES757、Graceによって製造および販売されるSylopol 948、またはAGC Si-Tech Co.によって製造されるSUNSPERA DM-L-303シリカである。担体は、最適なシラノール基含有量に到達するために、触媒調製において使用前に任意に焼成することができる。
【0086】
準備工程のすべてまたは一部は連続的に行うことができる。乳化/固化法によって調製される固体触媒タイプのそのような連続的または半連続的調製方法の原理を記載するWO2006/069733を参照されたい。形成された触媒は、好ましくは、反応寿命の点で良好な安定性/反応速度を有し、高活性であり、触媒は低灰分含量を可能にする。
【0087】
不均一の非担持触媒(すなわち「自己担持」触媒)の使用には、欠点として、重合媒体にある程度溶解する傾向がある。すなわち、一部の活性触媒成分がスラリー重合中に触媒粒子から浸出し得、それによって触媒本来の良好な形態が失われる可能性がある。これらの浸出した触媒成分は非常に活性が高く、重合中に問題を引き起こす可能性がある。したがって、浸出する成分の量は最小限に抑える必要がある。つまり、すべての触媒成分を不均一な形態に保つ必要がある。
【0088】
さらに、自己担持触媒は、触媒系中に多量の触媒活性種が存在するため、重合の開始時に高温を発生し、それが生成材料の溶融を引き起こし得る。両方の影響、すなわち触媒系の部分的な溶解と発熱により、ポリマー材料の形態の汚れ、シート化、および劣化が生じる可能性がある。
【0089】
高活性または浸出に関連して起こり得る問題を最小限に抑えるために、触媒を重合プロセスで使用する前に触媒を「予備重合」することが好ましい。この点での予備重合は触媒調製プロセスの一部であり、固体触媒が形成された後に実行される工程であることに留意する必要がある。この触媒予備重合工程は実際の重合構成の一部ではなく、従来のプロセスの予備重合工程も同様に含み得る。触媒予備重合工程の後、固体触媒が得られ、重合に使用される。
【0090】
触媒の「予備重合」は、前述の液-液エマルジョンプロセスの固化工程に続いて起こる。予備重合は、WO2010/052263、WO2010/052260またはWO2010/052264に記載されているような当該技術分野で記載されている既知の方法によって行ってよい。触媒予備重合工程を使用すると、触媒成分の浸出を最小限に抑え、したがって局所的な過熱を最小限に抑えることができる。
【0091】
本発明のプロセスで使用される溶媒は、オレフィン重合での使用に適した任意の溶媒であってよく、典型的には炭化水素の混合物である。このような溶媒は当技術分野でよく知られている。溶媒の例としては、ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、C8、C9イソパラフィン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0092】
一実施形態では、重合は水素の存在下で行われる。水素は通常、ポリマー分子量などのポリマー特性の制御を助けるために使用される。別の実施形態では、工程a)またはc)において水素は添加されない。しかしながら、当業者であれば、重合プロセス中に水素が発生し得ることを理解するであろう。したがって、プロセスの工程a)またはc)で形成される重合反応混合物中に存在する水素は、反応物として添加された水素および/または重合中に副生成物として生成される水素に由来し得る。
【0093】
プロピレンポリマーが標準的なポリマー添加剤を含有してもよいことが理解されるであろう。これらは、典型的にはポリマー材料の5.0重量%未満、例えば2.0重量%未満を形成する。したがって、酸化防止剤、亜リン酸塩、粘着添加剤、顔料、着色剤、充填剤、帯電防止剤、加工助剤、透明剤などの添加剤を重合プロセス中に添加してよい。これらの添加剤は業界ではよく知られており、その使用は当業者にはよく知られている。存在する任意の添加剤は、単離された原料として、または担体ポリマーとの混合物として、すなわちいわゆるマスターバッチとして添加してよい。
【0094】
本発明の一実施形態において、マルチモーダルプロピレンブテンコポリマーを調製するための方法は、ビスブレーキング(visbreaking)工程をさらに含んでもよい。「ビスブレーキング」という用語は当業者にはよく知られており、ポリマー鎖の制御された破壊をもたらし、レオロジー変化、典型的にはMFR2の増加をもたらすプロセスに関する。したがって、本発明のマルチモーダルポリマーは、所望に応じて、そのレオロジープロファイルを微調整するためにビスブレーキングを受けてもよい。ビスブレーキングは、熱分解、電離放射線または酸化剤への曝露など、当技術分野で周知のいくつかの方法によって行われてよい。本発明の文脈において、ビスブレーキングは典型的には過酸化物を使用して実施される。
【実施例】
【0095】
実験パート
測定方法
本発明の詳細な説明において上述したパラメータはいずれも、以下に示す試験に従って測定される。
【0096】
a)メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)はISO 1133に従って測定され、g/10分で示される。MFRはポリマーの溶融粘度の指標である。MFRは、PEは190℃、PPは230℃で測定される。メルトフローレートを決定する際の荷重は、通常、下付き文字として示され、例えばMFR2は2.16kgの荷重下で測定される(条件D)。
【0097】
第2反応器で製造される第2プロピレンコポリマー(PP2)のMFR
2は、式(2):
【数2】
[式中、
MFR(PP)はプロピレンランダムコポリマー(PP)のMFR
2であり、
w(PP1)およびw(PP2)は、プロピレンランダムコポリマー(PP)中の第1プロピレンコポリマー(PP1)および第2プロピレンコポリマー(PP2)の重量分率であり、
MFR(PP1)は、第1反応器で製造された第1プロピレンコポリマー(PP1)のMFR
2である]
に従って決定される。
【0098】
b)粒子サイズと粒子サイズ分布
粒子サイズ分布は、Coulter LS 200によるレーザー回折測定を使用して決定した。粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、粒子のサイズの尺度である。D-値(D10(またはd10)、D50(またはd50)、およびD90(またはd90))は、サンプルの累積質量の10%、50%、および90%の切片(intercepts)を表す。D-値は、粒子が質量の昇順に配置されている場合に、サンプルの質量を指定されたパーセンテージに分ける球の直径と考えることができる。例えば、D10は、サンプルの質量の10%がこの値より小さい直径の粒子で構成される直径である。D50は、サンプルの質量の50%がこの値より小さく、サンプルの質量の50%がこの値より大きい粒子の直径である。D90は、サンプルの質量の90%がこの値より小さい直径の粒子で構成される直径である。D50値は中央粒子径とも呼ばれる。ISO 13320に準拠したレーザー回折測定から、体積分布に基づいて体積D-値が得られる。
【0099】
粒子サイズ分布の分布幅またはスパンは、式(3):
スパン=(D90-D10)/D50 式(3)
に従って、D-値、D10、D50、およびD90から計算される。
【0100】
c)密度
ポリマーの密度はISO 1183/1872-2Bに従って測定された。本発明の目的のために、ブレンドの密度は、以下に従って成分の密度から計算することができる。
【数3】
[式中、
ρ
bはブレンドの密度であり、
w
iはブレンド内の成分「i」の重量分率であり、
ρ
iは成分「i」の密度である。]
【0101】
d)示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)分析、融解温度(Tm)および融解エンタルピー(Hm)、結晶化温度(Tc)、および結晶化熱(Hc、Hcr)は、TA Instrument Q200示差走査熱量測定(DSC)を使用して、5~7mgのサンプルで測定した。DSCは、ISO 11357/パート3/方法C2に従って、-30~+225℃の温度範囲で10℃/分のスキャン速度で加熱/冷却/加熱サイクルで実行される。
【0102】
結晶化温度(Tc)と結晶化熱(Hc)は冷却ステップから決定され、融解温度(Tm)と融解エンタルピー(Hm)は2番目の加熱ステップから決定される。
【0103】
この特許全体を通じて、Tcまたは(Tcr)という用語は、10K/分(すなわち、0.16K/秒)の冷却速度でDSCによって測定される結晶化のピーク温度として理解される。
【0104】
e)NMR分光法による微細構造の定量化
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、ポリマーのコモノマー含量を定量した。定量的13C{1H}NMRスペクトルは、Bruker Avance III 500 NMR分光計を、1Hと13Cに対してそれぞれ500.13MHzと125.76MHzで操作して、溶融状態で記録した。すべてのスペクトルは、すべての空気圧に窒素ガスを使用し、13Cに最適化された7mmマジック アングル スピニング (MAS)プローブヘッドを180℃で使用して記録した。約200mgの材料を外径7mmのジルコニアMASローターに入れ、4kHzで回転させた。この設定は主に、迅速な同定と正確な定量に必要な高感度のために選択された。標準的なシングルパルス励起は、短いリサイクル遅延でのNOEとRS-HEPTデカップリングスキームを利用して採用した。3秒のリサイクル遅延を使用して、スペクトルごとに合計1024(1k)のトランジェントが取得された。
【0105】
定量的な13C{1H}NMRスペクトルを処理、積分し、関連する定量的特性を積分値から決定した。すべての化学シフトは、21.85ppmのメチルアイソタクチックペンタッド(mmmm)を内部参照する。
【0106】
基本的なコモノマー含有量法スペクトル分析法:
【0107】
1-ブテンの組み込みに対応する特徴的なシグナルが観察され、コモノマー含量が以下の方法で定量化された。
【0108】
PPBPP単離配列に組み込まれた1-ブテンの量は、コモノマーあたりのレポート部位の数を表す43.6ppmのαB2サイトの積分を使用して定量された。
【数4】
【0109】
PPBBPP二重連続配列に組み込まれた1-ブテンの量は、コモノマーあたりのレポート部位の数を表す40.5ppmのααB2B2サイトの積分を使用して定量された。
【数5】
【0110】
二重連続取り込みが観察された場合、43.9ppmでのシグナルαB2とαB2B2の重複により、PPBPP単離配列に取り込まれた1-ブテンの量を補正する必要があった。
【数6】
【0111】
総1-ブテン含量は、単離および連続的に取り込まれた1-ブテンの合計に基づいて計算された。
【数7】
【0112】
プロペンの量は、46.7ppmの主要なSααメチレンサイトに基づいて定量され、考慮されていないプロペンのαB2およびαB2B2メチレン単位の相対量を補正した(BおよびBBは、配列の数ではなく配列あたりのブテンモノマーの数をカウントしていることに注意):
【数8】
【0113】
ポリマー中の1-ブテンの総モル分率は次のように計算された。
【数9】
【0114】
ポリマー中の1-ブテンのモル分率の完全な積分方程式は次の通りである。
【数10】
【0115】
【0116】
モルパーセントで表した1-ブテンの総組み込み量は、通常の方法でモル分率から計算された。
【数12】
【0117】
重量パーセントで表した1-ブテンの総組み込み量は、標準的な方法でモル分率から計算された。
【数13】
【0118】
これらの手順の詳細は、Katja Klimke, Matthew Parkinson, Christian Piel, Walter Kaminsky Hans Wolfgang Spiess, Manfred Wilhelm, Macromol. Chem. Phys. 2006, 207, 382; Matthew Parkinson, Katja Klimke, Hans Wolfgang Spiess, Manfred Wilhelm, Macromol. Chem. Phys. 2007, 208, 2128; Patrice Castignolles, Robert Graf, Matthew Parkinson, Manfred Wilhelm, Marianne Gaborieau:, Polymer 2009, 50, 2373; M. Pollard, K. Klimke, R. Graf, H. W. Spiess, M. Wilhelm, O. Sperber, C. Piel, W. Kaminsky, Macromolecules 2004, 37, 813; Xenia Filip, Carmen Tripon, Claudiu Filip, J. Magn. Reson. 2005, 176, 239; John M. Griffin, Carmen Tripon, Ago Samoson, Claudiu Filip, Steven P. Brown, Mag. Res. in Chem. 2007, 45(S1), S198; J. Randall Rev. Macromol. Chem. Phys. 1989, C29, 201に見出すことができる。
【0119】
f)キシレン可溶性画分
キシレン可溶性画分(XCS)は、ISO 16152に従って25℃で測定する。
【0120】
g)残留モノマー含量
ペレット中のブテン(C4)の残留は、静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィーで検出した。ガスクロマトグラフとして、水素炎イオン化型検出器(FID)を備えたAgilent 6890を使用する。
【0121】
詳細は以下の通りである。
温度:200℃
セプタムパージ:2ml/分
総流量:30ml/分
検出器タイプ:FID、温度250℃
流量、キャリアガス:ヘリウム3ml/分
カラムタイプ:25m×0.32mm×2.5μm
充填材:SE-30
カラムの条件:最高温度250℃
サンプルフィーダー:Agilent G1888ヘッドスペースサンプルフィーダー
オーブン:120℃
トランスファーライン:130℃
ループ:125℃
GCサイクル時間:40.0分
バイアルEQ時間:60.0分
加圧時間:0.05分
ループ充填時間:0.15分
ループEQ時間:0.05分
注入時間:0.40分
キャリアヘリウム:0.81bar
【0122】
各測定では、2000±20mgのサンプルが使用される。情報システムは、正しい時間間隔でピークを検出すると、計算データに応じたパラメータを使用してガスクロマトグラフの分析を自動的に計算する。サンプル中の揮発性化合物(mg/kg)は次の式で計算される。
【数14】
【0123】
材料
以下の触媒を、表1に記載の比較例および本発明の実施例によるプロセスで使用した。
【0124】
ZNC1
使用した化学物質:
ブチルエチルマグネシウム(Mg(Bu)(Et)、BEM)の20%トルエン溶液、Chemturaより提供
2-エチルヘキサノール、Amphochemより提供
3-ブトキシ-2-プロパノール-(DOWANOL(商標)PnB)、Dowより提供
ビス(2-エチルヘキシル)シトラコネート、SynphaBaseより提供
TiCl4s、Millenium Chemicalsより提供
トルエン、Aspokemより提供
Viscoplex(登録商標)1-254、Evonikより提供
ヘプタン、Chevronより提供
【0125】
Mgアルコキシ化合物の調製
Mgアルコキシド溶液は、撹拌(70rpm)しながら、ブチルエチルマグネシウム(Mg(Bu)(Et))の20重量%トルエン溶液 11kgに、2-エチルヘキサノール 4.7kgとブトキシプロパノール 1.2kgを20リットルのステンレススチール反応器中に添加することで調製した。添加中、反応器の内容物は45℃未満に維持された。添加が完了した後、反応混合物の混合(70rpm)を60℃で30分間続けた。室温まで冷却した後、温度を25℃未満に保ちながら、2.3kg/gのドナービス(2-エチルヘキシル)シトラコネートをMg-アルコキシド溶液に添加した。撹拌(70rpm)下で混合を15分間続けた。
【0126】
固体触媒成分の調製
20.3kgのTiCl4および1.1kgのトルエンを20リットルのステンレススチール反応器に加えた。350rpmで混合し、温度を0℃に保ちながら、例1で調製したMgアルコキシ化合物 14.5kgを1.5時間かけて添加した。1.7リットルのViscoplex(登録商標)1-254および7.5kgのヘプタンを添加し、0℃で1時間混合した後、形成されたエマルジョンの温度を1時間以内に90℃まで上昇させた。30分後、混合を停止し、触媒液滴を凝固させ、形成された触媒粒子を沈降させた。沈降後(1時間)、上澄み液を吸い取った。次いで、触媒粒子を45kgのトルエンで90℃で20分間洗浄し、続いてヘプタンで2回洗浄した(30kg、15分)。最初のヘプタンでの洗浄中に温度を50℃に下げ、2回目の洗浄中に室温に下げた。
【0127】
このようにして得られた触媒ZNC1を、共触媒としてのトリエチルアルミニウム(TEAL)および供与体としてのジシクロペンチルジメトキシシラン(D-供与体)とともに使用した。
【0128】
SSC1
メタロセン錯体1(rac-アンチ-ジメチルシランジイル(2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチル-インデニル)(2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)インデニル)ジルコニウムジクロリド)は、WO2013/007650に記載されているように合成された。
【0129】
触媒は、界面活性剤が2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)-1-プロパノールであることを条件として、メタロセン錯体1と、MAOおよびWO2015/11135の触媒3によるトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの触媒系を使用して調製した。
【0130】
SSC2
以下:
【化5】
のメタロセン錯体2は、WO2019/179959 A1に記載されているように使用された。
【0131】
メカニカルスターラーとフィルターネットを備えたスチール製反応器に窒素を流し、反応器温度を20℃に設定した。次に、600℃で予備焼成したAGC Si-Tech CoのシリカグレードDM-L-303(5.0kg)を供給ドラムから添加し、続いて手動バルブを使用して窒素で注意深く加圧および減圧した。次いで、トルエン(22kg)を加えた。混合物を15分間撹拌した。次に、Lanxessからのトルエン(9.0kg)中MAOの30重量%溶液を、反応器の上部の供給ラインを介して70分以内に添加した。次いで、反応混合物を90℃まで加熱し、90℃でさらに2時間撹拌した。スラリーを沈降させ、母液を濾別した。触媒を90℃でトルエン(22kg)で2回洗浄し、続いて沈降および濾過した。反応器を60℃まで冷却し、固体をヘプタン(22.2kg)で洗浄した。最後に、MAO処理したSiO2を窒素流下60℃で2時間乾燥させ、次に真空下(-0.5barg)で撹拌しながら5時間乾燥させた。MAO処理された担体は、自由流動性の白色粉末として収集され、重量で12.2%のAlを含有することが分かった。
【0132】
トルエン中の30重量%MAO(0.7kg)を、20℃でビュレットを介してスチール製窒素ブランク反応器に加えた。次いで、トルエン(5.4kg)を撹拌しながら加えた。上述のメタロセン錯体MC1(93g)を金属シリンダーから添加し、続いて1kgのトルエンを流した。混合物を20℃で60分間撹拌した。次いで、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(91g)を金属シリンダーから加え、続いて1kgのトルエンを流した。混合物を室温で1時間撹拌した。得られた溶液を、上記のように調製したMAO-シリカ担体の撹拌ケーキに1時間かけて加えた。ケーキを12時間放置し、その後、N2流下、60℃で2時間乾燥させ、さらに撹拌しながら真空下(-0.5barg)で5時間乾燥させた。
【0133】
実施例
以下の実施例は、予備重合反応器、ループ反応器、および気相反応器(GPR1)からなる一連の反応器を含むBorstarパイロットプラントで実施した。プロセスと特性を表1に示す。
【0134】
ベースポリマーの粉末のペレット化は、スクリュー直径18mmの二軸押出機で、溶融温度240℃、処理量7kg/hで行われる。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
実施例から、チーグラー・ナッタ触媒を使用するプロセス、すなわち比較例CE1およびCE2は、総コモノマー転化率が非常に低いことが分かる。したがって、本発明のプロセスは、エネルギー消費と材料消費の両方の点でより効率的である。
【0139】
さらに、比較例CE3およびCE4で使用されるような従来技術から公知の非シリカ担持メタロセン触媒は、同様のコモノマー転化率を達成しながらも、製造されたポリマー中に非常に高い残留コモノマーを示し、その結果、生成物中に多量の揮発性物質が含まれることが分かる。さらに、そのような触媒は、より大きな粒径をもたらす粒子分布を有する粉末を生成し、それによって生成物中のC4残留含量がより高くなるということも分かる。
【0140】
最後に、本発明の実施例IE1~IE3から、本発明は両方のタイプのコポリマー、すなわちバイポリマーとターポリマーとに対して良好に機能することが分かる。C4転化率が高く、生成物中のC4残留率が低くなる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、
a)第1反応器(R1)において、プロピレンと、C
4-C
8α-オレフィンから選択されるコモノマー(C1a)とを、第1メタロセン触媒(MC1)の存在下で重合させ、第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)を得る工程であって、
プロピレンの供給量に対するコモノマー(C1a)の供給量の比は、1~100mol/kmolの範囲であり、第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)のMFR
2は、0.01~100g/10分の範囲である工程、
b)第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)を第2反応器(R2)に移す工程、
c)第2反応器(R2)において、第1ポリプロピレン(PP1)、プロピレン、C
4-C
8α-オレフィンから選択されるコモノマー(C1b)、および第2メタロセン触媒(MC2)の存在下で重合させ、第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)を得る工程であって、
プロピレンの供給量に対するコモノマー(C1b)の供給量の比は、40~150mol/kmolの範囲であり、第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)のMFR
2は、0.01~100g/10分の範囲である工程、
d)第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)および第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)を含むポリプロピレンランダムコポリマー(PP)を第2反応器(R2)から取り出す工程
を含み、
ここで、第1メタロセン触媒(MC1)および/または第2メタロセン触媒(MC2)は、メタロセン錯体を含むメタロセン触媒(MC)であり、
メタロセン触媒(MC)は、シリカを含む担体を含み、
担体は、10~80μmの間のD50を有する、プロセス。
【請求項2】
第1メタロセン触媒(MC1)および/または第2メタロセン触媒(MC2)は、式(I):
【化1】
[式中、
各Xは、独立して、シグマ供与性配位子であり、
Lは、-R’
2C-、-R’
2C-CR’
2-、-R’
2Si-、-R’
2Si-SiR’
2-、-R’
2Ge-から選択される二価の架橋であり、各R’は、独立して、水素原子、または周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子またはフッ素原子を任意に含むC
1-C
20-ヒドロカルビル基、または任意に2つのR’基が一緒になって環を形成してよく、
各R
1は、独立して、同一または異なっていてもよく、水素、直鎖または分枝鎖のC
1-C
6-アルキル基、C
7-20-アリールアルキル、C
7-20-アルキルアリール基、またはC
6-20-アリール基、またはOY基であり、YはC
1-10-ヒドロカルビル基であり、任意に2つの隣接するR
1基は、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよく、
各R
2は、独立して、同一または異なっていてもよく、CH
2-R
8基であり、R
8はH、または直鎖または分枝鎖のC
1-6-アルキル基、C
3-8-シクロアルキル基、C
6-10-アリール基であり、
R
3は、直鎖または分枝鎖のC
1-C
6-アルキル基、C
7-20-アリールアルキル、C
7-20-アルキルアリール基またはC
6-C
20-アリール基であり、
R
4は、C(R
9)
3基であり、R
9は直鎖または分岐鎖のC
1-C
6-アルキル基であり、
R
5は、水素、または周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C
1-C
20-ヒドロカルビル基であり、
R
6は、水素、または周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C
1-C
20-ヒドロカルビル基であるか;または
R
5およびR
6は、一緒になって5員の飽和炭素環を形成でき、これはn個の基R
10で任意に置換されていてもよく、nは0~4であり、
各R
10は、同一または異なっており、C
1-C
20-ヒドロカルビル基、または周期表の14~16族に属する1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC
1-C
20-ヒドロカルビル基であってよく、
R
7は、H、または直鎖もしくは分枝鎖のC
1-C
6-アルキル基、または1~3個の基R
11によって任意に置換された、6~20個の炭素原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であり、
各R
11は、独立して、同一または異なっていてもよく、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC
1-C
6-アルキル基、C
7-20-アリールアルキル、C
7-20-アルキルアリール基、またはC
6-20-アリール基、またはOY基であり、YはC
1-10-ヒドロカルビル基である]
の錯体を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
担体は、15~80μm、好ましくは18~50μmの平均粒径を有する、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項4】
担体は、10~100nmの平均細孔径を有する、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項5】
コモノマー(C1a)および/またはコモノマー(C1b)は、C
4およびC
6α-オレフィンからなる群から選択され、好ましくは1-ブテンである、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項6】
コモノマー(C1a)およびコモノマー(C1b)が同一である、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項7】
ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)はターポリマーであり、工程a)は、エチレンおよびC
4-C
8α-オレフィンからなる群から選択される第2コモノマー(C2)の存在下で行われ、第2コモノマー(C2)は、コモノマー(C1a/C1b)とは異なり、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、5~60mol/kmolの範囲であり、工程c)は、第2コモノマー(C2)の存在下で行われ、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、50~150mol/kmolの範囲である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
第2コモノマー(C2)はエチレンである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
工程a)は、スラリー相重合工程として実施される、および/または第1反応器(RK1)はループ反応器である、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項10】
工程a)において、プロピレンの供給量に対するコモノマー(C1a)の供給量の比は、30~50mol/kmol、好ましくは35~45mol/kmolの範囲である、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項11】
工程a)において、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、10~20mol/kmol、好ましくは13~18mol/kmolの範囲である、請求項
3に記載のプロセス。
【請求項12】
工程c)は気相重合工程として実施される、および/または第2反応器(RK2)は気相反応器である、好ましくは工程c)は流動床気相重合工程として実施される、および/または第2反応器(2)は流動床気相反応器である、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項13】
工程c)において、プロピレンの供給量に対するコモノマー(C1b)の供給量の比は、40~60mol/kmol、好ましくは45~50mol/kmolの範囲である、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項14】
工程c)において、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、90~130mol/kmol、好ましくは105~115mol/kmolの範囲である、請求項
7に記載のプロセス。
【請求項15】
ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)は、6.5ppm未満、好ましくは5ppm未満、最も好ましくは4ppm未満のコモノマー(C1a)およびコモノマー(C1b)の合計残留含有量を有する、請求項
1に記載のプロセス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
最後に、本発明の実施例IE1~IE3から、本発明は両方のタイプのコポリマー、すなわちバイポリマーとターポリマーとに対して良好に機能することが分かる。C4転化率が高く、生成物中のC4残留率が低くなる。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
[1] ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、
a)第1反応器(R1)において、プロピレンと、C
4
-C
8
α-オレフィンから選択されるコモノマー(C1a)とを、第1メタロセン触媒(MC1)の存在下で重合させ、第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)を得る工程であって、
プロピレンの供給量に対するコモノマー(C1a)の供給量の比は、1~100mol/kmolの範囲であり、第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)のMFR
2
は、0.01~100g/10分の範囲である工程、
b)第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)を第2反応器(R2)に移す工程、
c)第2反応器(R2)において、第1ポリプロピレン(PP1)、プロピレン、C
4
-C
8
α-オレフィンから選択されるコモノマー(C1b)、および第2メタロセン触媒(MC2)の存在下で重合させ、第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)を得る工程であって、
プロピレンの供給量に対するコモノマー(C1b)の供給量の比は、40~150mol/kmolの範囲であり、第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)のMFR
2
は、0.01~100g/10分の範囲である工程、
d)第1ポリプロピレンコポリマー(PP1)および第2ポリプロピレンコポリマー(PP2)を含むポリプロピレンランダムコポリマー(PP)を第2反応器(R2)から取り出す工程
を含み、
ここで、第1メタロセン触媒(MC1)および/または第2メタロセン触媒(MC2)は、メタロセン錯体を含むメタロセン触媒(MC)であり、
メタロセン触媒(MC)は、シリカを含む担体を含み、
担体は、10~80μmの間のD50を有する、プロセス。
[2] 第1メタロセン触媒(MC1)および/または第2メタロセン触媒(MC2)は、式(I):
[式中、
各Xは、独立して、シグマ供与性配位子であり、
Lは、-R’
2
C-、-R’
2
C-CR’
2
-、-R’
2
Si-、-R’
2
Si-SiR’
2
-、-R’
2
Ge-から選択される二価の架橋であり、各R’は、独立して、水素原子、または周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子またはフッ素原子を任意に含むC
1
-C
20
-ヒドロカルビル基、または任意に2つのR’基が一緒になって環を形成してよく、
各R
1
は、独立して、同一または異なっていてもよく、水素、直鎖または分枝鎖のC
1
-C
6
-アルキル基、C
7-20
-アリールアルキル、C
7-20
-アルキルアリール基、またはC
6-20
-アリール基、またはOY基であり、YはC
1-10
-ヒドロカルビル基であり、任意に2つの隣接するR
1
基は、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよく、
各R
2
は、独立して、同一または異なっていてもよく、CH
2
-R
8
基であり、R
8
はH、または直鎖または分枝鎖のC
1-6
-アルキル基、C
3-8
-シクロアルキル基、C
6-10
-アリール基であり、
R
3
は、直鎖または分枝鎖のC
1
-C
6
-アルキル基、C
7-20
-アリールアルキル、C
7-20
-アルキルアリール基またはC
6
-C
20
-アリール基であり、
R
4
は、C(R
9
)
3
基であり、R
9
は直鎖または分岐鎖のC
1
-C
6
-アルキル基であり、
R
5
は、水素、または周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C
1
-C
20
-ヒドロカルビル基であり、
R
6
は、水素、または周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C
1
-C
20
-ヒドロカルビル基であるか;または
R
5
およびR
6
は、一緒になって5員の飽和炭素環を形成でき、これはn個の基R
10
で任意に置換されていてもよく、nは0~4であり、
各R
10
は、同一または異なっており、C
1
-C
20
-ヒドロカルビル基、または周期表の14~16族に属する1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC
1
-C
20
-ヒドロカルビル基であってよく、
R
7
は、H、または直鎖もしくは分枝鎖のC
1
-C
6
-アルキル基、または1~3個の基R
11
によって任意に置換された、6~20個の炭素原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であり、
各R
11
は、独立して、同一または異なっていてもよく、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC
1
-C
6
-アルキル基、C
7-20
-アリールアルキル、C
7-20
-アルキルアリール基、またはC
6-20
-アリール基、またはOY基であり、YはC
1-10
-ヒドロカルビル基である]
の錯体を含む、[1]に記載のプロセス。
[3] 担体は、15~80μm、好ましくは18~50μmの平均粒径を有する、[1]または[2]に記載のプロセス。
[4] 担体は、10~100nmの平均細孔径を有する、[1]~[3]のいずれかに記載のプロセス。
[5] コモノマー(C1a)および/またはコモノマー(C1b)は、C
4
およびC
6
α-オレフィンからなる群から選択され、好ましくは1-ブテンである、[1]~[4]のいずれかに記載のプロセス。
[6] コモノマー(C1a)およびコモノマー(C1b)が同一である、[1]~[5]のいずれかに記載のプロセス。
[7] ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)はターポリマーであり、工程a)は、エチレンおよびC
4
-C
8
α-オレフィンからなる群から選択される第2コモノマー(C2)の存在下で行われ、第2コモノマー(C2)は、コモノマー(C1a/C1b)とは異なり、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、5~60mol/kmolの範囲であり、工程c)は、第2コモノマー(C2)の存在下で行われ、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、50~150mol/kmolの範囲である、[6]に記載のプロセス。
[8] 第2コモノマー(C2)はエチレンである、[7]に記載のプロセス。
[9] 工程a)は、スラリー相重合工程として実施される、および/または第1反応器(RK1)はループ反応器である、[1]~[8]のいずれかに記載のプロセス。
[10] 工程a)において、プロピレンの供給量に対するコモノマー(C1a)の供給量の比は、30~50mol/kmol、好ましくは35~45mol/kmolの範囲である、[1]~[9]のいずれかに記載のプロセス。
[11] 工程a)において、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、10~20mol/kmol、好ましくは13~18mol/kmolの範囲である、[3]~[9]のいずれかに記載のプロセス。
[12] 工程c)は気相重合工程として実施される、および/または第2反応器(RK2)は気相反応器である、好ましくは工程c)は流動床気相重合工程として実施される、および/または第2反応器(2)は流動床気相反応器である、[1]~[11]のいずれかに記載のプロセス。
[13] 工程c)において、プロピレンの供給量に対するコモノマー(C1b)の供給量の比は、40~60mol/kmol、好ましくは45~50mol/kmolの範囲である、[1]~[12]のいずれかに記載のプロセス。
[14] 工程c)において、プロピレンの供給量に対する第2コモノマー(C2)の供給量の比は、90~130mol/kmol、好ましくは105~115mol/kmolの範囲である、[7]~[13]のいずれかに記載のプロセス。
[15] ポリプロピレンランダムコポリマー(PP)は、6.5ppm未満、好ましくは5ppm未満、最も好ましくは4ppm未満のコモノマー(C1a)およびコモノマー(C1b)の合計残留含有量を有する、[1]~[14]のいずれかに記載のプロセス。
【国際調査報告】