(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】医療器具および医療器具セット
(51)【国際特許分類】
A61B 17/28 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A61B17/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518428
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2022076377
(87)【国際公開番号】W WO2023046833
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102021124786.1
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521389815
【氏名又は名称】エースクラップ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Aesculap AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】バルテルメス,スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】モラレス,ペドロ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG02
4C160GG05
4C160GG08
4C160GG40
(57)【要約】
洗浄しやすく改良された医療器具が提案される。医療器具は、第1器具部と少なくとも1つの第2器具部とを備え、前記第1器具部と前記少なくとも1つの第2器具部とは、旋回軸を中心として旋回可能であるように互いに取り付けられ、且つ、接続要素を介して互いに結合されており、前記接続要素の長手方向軸は前記旋回軸を画定し、前記接続要素は、前記第1器具部の頭部凹部内に少なくとも部分的に収容される頭部を有し、前記頭部凹部は、前記少なくとも1つの第2器具部から遠ざかる方向に向かって開放するように前記第1器具部に設けられ、前記頭部は、前記長手方向軸から遠ざかる方向に向けられた少なくとも1つの内蔵型の第1環状面を有し、前記頭部凹部は、前記長手方向軸に近づく方向に向けられた少なくとも1つの内蔵型の第2環状面を有し、前記少なくとも1つの第1環状面と前記少なくとも1つの第2環状面とは、前記長手方向軸に垂直な径方向において、環状ギャップを介して互いから離されている。本発明では、前記環状ギャップにシール要素が配置され、前記シール要素は、前記少なくとも1つの第1環状面と前記少なくとも1つの第2環状面とに接触することが提案される。また、形状、種類、及び/又は大きさが異なる少なくとも2つの医療器具を備える改良された医療器具セットが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1器具部(12)と少なくとも1つの第2器具部(14)とを備える医療器具(10)であって、
前記第1器具部(12)と前記少なくとも1つの第2器具部(14)とは、旋回軸(16)を中心として旋回可能であるように互いに取り付けられ、且つ、接続要素(18)を介して互いに結合されており、
前記接続要素(18)の長手方向軸(36)は前記旋回軸(16)を画定し、
前記接続要素(18)は、前記第1器具部(12)の頭部凹部(34)内に少なくとも部分的に収容される頭部(32)を有し、
前記頭部凹部(34)は、前記少なくとも1つの第2器具部(14)から遠ざかる方向に向かって開放するように前記第1器具部(12)に設けられ、
前記頭部(32)は、前記長手方向軸(36)から遠ざかる方向に向けられた少なくとも1つの内蔵型の第1環状面(38)を有し、
前記頭部凹部(34)は、前記長手方向軸(36)に近づく方向に向けられた少なくとも1つの内蔵型の第2環状面(40)を有し、
前記少なくとも1つの第1環状面(38)と前記少なくとも1つの第2環状面(40)とは、前記長手方向軸(36)に垂直な径方向において、環状ギャップ(42)を介して互いから離されており、
前記環状ギャップ(42)にシール要素(44)が配置されており、
前記シール要素(44)は、前記少なくとも1つの第1環状面(38)と前記少なくとも1つの第2環状面(40)とに接触していることを特徴とする、
医療器具。
【請求項2】
前記シール要素(44)と前記環状ギャップ(42)とが締り嵌めを形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
(a)前記第1環状面(38)及び/又は前記第2環状面(40)に対して前記シール要素(44)が係合されていない基本位置において、前記シール要素(44)は、第1のシール要素形状を画定し、前記環状ギャップ(42)に前記シール要素(44)が配置された組み立て位置において、前記シール要素(44)は、前記第1のシール要素形状とは異なる第2のシール要素形状を画定し、且つ/又は、
(b)前記シール要素(44)は、特に前記接続要素(18)と前記第1器具部(12)とに取り外し可能に接続されるような、独立した構成要素として構成されており、且つ/又は、
(c)前記シール要素(44)は、特にクランプ接続またはスナップ接続によって、強制ロック式および/またはポジティブロック式で前記接続要素(18)に接続される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医療器具。
【請求項4】
前記接続要素(18)は、前記長手方向軸(36)に対して、特に組み立て位置において、前記シール要素(44)が係合するアンダーカット部(140)を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項5】
前記シール要素(44)は、特にオーバーモールディング、接着結合、又は加硫によって、前記少なくとも1つの第1環状面(38)又は前記少なくとも1つの第2環状面(40)に成形されるか、又は、前記少なくとも1つの第1環状面(38)又は前記少なくとも1つの第2環状面(40)に物質的に結合される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項6】
前記第2環状面(40)に向かって開放した前記第1環状面(38)の凹部(84)、及び、前記第1環状面(38)に向かって開放した前記第2環状面(40)の凹部(85)のうち、少なくとも1つの凹部(84,85)が形成されており、
前記シール要素(44)は、組み立て位置において、前記少なくとも1つの凹部(84,85)に少なくとも部分的に、特に完全に係合し、
特に、
(a)前記少なくとも1つの凹部(84)は、前記長手方向軸(36)に対する円周状の形態、特に環状溝(86)の形態であり、且つ/又は、
(b)前記シール要素(44)は、組み立て位置において前記少なくとも1つの凹部(84,85)に、特にポジティブロック式で係合する少なくとも1つの突出部(150,151)を備え、
特に、前記少なくとも1つの突出部(150,151)は、前記第1環状面(38)又は前記第2環状面(40)のうちの少なくとも一方に向かって方向付けられた環状フランジの形態で構成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項7】
(a)前記シール要素(44)は、特に基本位置において、前記少なくとも1つの第2器具部(14)に向かって特に円錐状に先細になる少なくとも1つの外側環状面(154)を画定し、且つ/又は、
(b)前記シール要素(44)は、特に基本位置において、長手方向断面図において、前記長手方向軸(36)から遠ざかる方向を向いて凸状に湾曲している少なくとも1つの外側環状面(116)を画定し、且つ/又は、
(c)前記シール要素(44)は、特に基本位置において、前記長手方向軸(36)から遠ざかる方向を向いた少なくとも1つの円筒状の外側環状面(152)を画定し、且つ/又は、
(d)前記シール要素(44)の外径(118)は、特に基本位置において、前記少なくとも1つの第2器具部(14)から遠ざかる方向を向く端部での外径に比べて、前記少なくとも1つの第2器具部(14)に近づく方向を向く端部での外径の方が小さい、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項8】
前記第1器具部(12)に、貫通孔(58)が前記長手方向軸(36)と同心に形成されており、
前記頭部凹部(34)は、前記貫通孔(58)の内径を拡張させてなる受容部(64)の形態で構成されており、
前記頭部凹部(34)は、前記少なくとも1つの第2器具部(14)から遠ざかる方向を向いている前記貫通孔(58)の第1の端部(60)から、前記少なくとも1つの第2器具部(14)に近づく方向へ延びている、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項9】
(a)前記受容部(64)は、第1の中空円筒状穴部(68)を形成しており、且つ/又は、
(b)前記貫通孔(58)は、前記少なくとも1つの第2器具部(14)に近づく方向において前記受容部(64)に隣接して特に円錐状に先細になる穴部(70)を備え、且つ/又は、
(c)前記頭部凹部(58)には、前記第1の端部(60)から凹入する皿穴(134)が、特に、前記少なくとも1つの第2器具部(14)から遠ざかる方向に向かって円錐状に拡径する皿穴部(138)の形態で、形成されており、且つ/又は、
(d)前記貫通孔(58)は、前記少なくとも1つの第2器具部(14)に近づく方向に向けられた第2の端部(62)から、前記第1の端部(60)に近づく方向に延びる第2の中空円筒状穴部(72)を備え、特に、前記第1の中空円筒状穴部(68)の第1内径(74)は、前記第2の中空円筒状穴部(72)の第2内径(76)よりも大きく、且つ/又は、
(e)組立位置における前記シール要素(44)は、少なくとも前記貫通孔(58)の前記第1の端部(60)まで延在している、
ことを特徴とする請求項8に記載の医療器具。
【請求項10】
前記接続要素(18)は、ねじ(46)の形態またはリベット(158)の形態で構成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項11】
前記頭部(32)は、環状ストッパ面(82)を備え、
前記環状ストッパ面(82)は、前記長手方向軸(36)を取り囲み、前記長手方向軸(36)に対して横方向に延在し、且つ、前記少なくとも1つの第2器具部(14)から遠ざかる方向を向いており、
特に、組立位置にある前記シール要素(44)は、前記環状ストッパ面(82)に接触している、
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第2器具部(14)から遠ざかる方向を向いた前記シール要素(44)の端部は、組み立て位置において、前記第1器具部(12)の外面(122)と面一である、
ことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項13】
前記第1器具部(12)と前記少なくとも1つの第2器具部(14)との間に、前記長手方向軸(36)を取り囲む内蔵型の第2のシール要素(124)が配置または形成され、
前記第2のシール要素(124)は、前記第1器具部(12)と前記少なくとも1つの第2器具部(14)とに接触しており、特に、前記第1器具部(12)及び前記少なくとも1つの第2器具部(14)における互いに対向する側面(106,108)に接触している、
ことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項14】
(a)前記第1器具部(12)および/または前記第2器具部(14)は、前記第2のシール要素(124)のためのシール要素受入部(126)を備え、特に、前記シール要素受入部(124)は、前記長手方向軸(36)を同心円状に取り囲み、前記第2器具部(14)に向かって開放するように前記第1器具部(12)に設けられるか又は前記第1器具部(12)に向かって開放するように前記第2器具部(14)に設けられた環状溝(128)の形態で構成され、且つ/又は、
(b)前記第2のシール要素(124)と前記シール要素受入部(126)とは、締り嵌めを形成しており、且つ/又は、
(c)前記第2のシール要素(124)は、内蔵型のシールリング(130)の形態で構成されている、
ことを特徴とする請求項13に記載の医療器具。
【請求項15】
前記接続要素(18)は、前記頭部(32)から、前記少なくとも1つの第2器具部(14)に近づく方向に向けて突出した接続部(48)を備え、
特に、前記少なくとも1つの第2器具部(14)に、組立位置において強制ロック式および/またはポジティブロック式で前記接続部(48)に係合される接続部受入部(52)が、特に接続孔(54)の形態で形成され、
特に、前記接続部(48)には雄ねじ(50)が形成され、前記接続部受入部(52)には、前記雄ねじ(50)に対応する雌ねじ(56)が形成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項16】
前記シール要素(44)は、弾性変形可能および/または塑性変形可能な樹脂材料で作られ、特に、
(a)前記樹脂材料は、天然ゴム、弾性プラスチック、又はエラストマーであるか、又は、天然ゴム、弾性プラスチック、又はエラストマーを含み、特に、前記樹脂材料は、熱可塑性エラストマーを含み、特に、前記樹脂材料は、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリレートゴム、エチレンアクリレートゴム、フッ素ゴム、パーフルオロゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム、及び、ポリイソプレンゴムのうちの少なくとも1つを含み、且つ/又は、
(b)前記樹脂材料は、過熱蒸気で滅菌可能である、
ことを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項17】
前記シール要素(44,124)は、一体的に形成され、特にモノシリックに形成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項18】
形状、種類、及び/又は大きさが異なる少なくとも2つの医療器具(10)を備える医療器具セットであって、
前記少なくとも2つの医療器具(10)は、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の医療器具(10)の形態で構成されており、
特に、前記少なくとも2つの異なる医療器具(10)の前記シール要素(44)は、互いに異なる色、特に、青色、赤色、黄色、緑色、黒色、白色、灰色、又は茶色に着色されている、
ことを特徴とする医療器具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1器具部と少なくとも1つの第2器具部とを備える医療器具に関し、前記第1器具部と前記少なくとも1つの第2器具部とは、旋回軸を中心として旋回可能であるように互いに取り付けられ、且つ、接続要素を介して互いに結合されており、前記接続要素の長手方向軸は前記旋回軸を画定し、前記接続要素は、前記第1器具部の頭部凹部内に少なくとも部分的に収容される頭部を有し、前記頭部凹部は、前記少なくとも1つの第2器具部から遠ざかる方向に向かって開放するように前記第1器具部に設けられ、前記頭部は、前記長手方向軸から遠ざかる方向に向けられた少なくとも1つの内蔵型の第1環状面を有し、前記頭部凹部は、前記長手方向軸に近づく方向に向けられた少なくとも1つの第2環状面を有し、前記少なくとも1つの第1環状面と前記少なくとも1つの内蔵型の第2環状面とは、前記長手方向軸に垂直な径方向において、環状ギャップを介して互いから離されている。
【0002】
さらに、本発明は、形状、種類、及び/又は大きさが異なる少なくとも2つの医療器具を備える医療器具セットに関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭で説明された種類の医療器具は、さまざまな形態で知られており、例えば、はさみ、クランプ、又は持針器として構成され得る。
【0004】
このような医療器具の問題は、特に、接続要素の頭部と頭部凹部との間の環状ギャップ(環状の間隙)に組織残存物、汚れ、及び体液が集まり、付着し得ることである。この問題は、使い捨ての器具には関係ない。ただし、このような医療器具が複数回使用される場合には、再処理が必要になる。通常、上記のような医療器具は、食器洗い機で洗浄され、その後、過熱蒸気滅菌プロセスが施される。医療器具の部品同士を相互に接続可能にするためには環状ギャップが必ず設けなければならないため、医療器具の処理中に、環状ギャップから汚染物質が完全に除去されない危険性がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、冒頭で説明された種類の医療器具および医療器具セットを、洗浄しやすくなるように改良することである。
【発明の概要】
【0006】
この目的は、本発明に係る医療器具によって達成される。本発明は、冒頭で説明された種類の医療器具において、前記環状ギャップにシール要素が配置されており、前記シール要素は、前記少なくとも1つの第1環状面と前記少なくとも1つの第2環状面とに接触していることを特徴とする。
【0007】
本発明で提案される医療器具によれば、環状ギャップ内に配置されて両方の環状面に接触するシール要素が設けられることにより、特に、環状ギャップを、例えば完全に充填するようにシール(密閉)することが可能になる。これにより、体液や処置中に使用される洗浄液が毛細管現象により環状ギャップ(特に、隣接する器具部における相互に対向する側面間)に浸入することが防止され得る。したがって、シール要素を用いて、当該環状ギャップを少なくとも部分的に(特に完全に)充填するようにシールすることで、汚染物質の侵入を防止することが可能になる。
【0008】
環状ギャップの永続的に良好なシールを達成するためには、シール要素と環状ギャップとが締り嵌めを形成することが好ましい。したがって、シール要素は、環状ギャップに挿入される前の状態において、環状ギャップよりも大きいことが好ましい。
【0009】
好ましくは、前記第1環状面及び/又は前記第2環状面に対して前記シール要素が係合されていない基本位置において、前記シール要素は、第1のシール要素形状を画定し、前記環状ギャップに前記シール要素が配置された組み立て位置において、前記シール要素は、前記第1のシール要素形状とは異なる第2のシール要素形状を画定する。このようなシール要素の構成により、特に、環状ギャップの永久的かつ信頼性の高いシールまたは充填が可能になる。特に、この目的のために、シール要素は弾性変形可能および/または塑性変形可能であってもよい。これにより、特に、環状ギャップとシール要素の両方の製造公差が簡単に補正され得る。特に、シール要素の当該構成により、相互に対向する環状面の間におけるシール要素の寸法が、環状ギャップを最適に充填およびシールするように適宜変更され得る。
【0010】
シール要素は、独立した構成要素(構成部品)として構成されると有利である。特に、これにより、医療器具の製造プロセスが簡素化される。医療器具の組み立ての際、シール要素は、環状ギャップに挿入されるだけでよい。したがって、シール要素は、例えば、射出成形部品として簡単な方法で構成され得る。特に、シール要素は、接続要素および第1器具部に対して取り外し可能に接続可能であれば好ましい。これにより、特に、損傷し得るシール要素の交換が可能になる。例えば、弾性を有するシール要素は、複数回再処理された後には、所望の態様で完全または部分的に環状ギャップを充填およびシールするのに必要な弾性を失うことが考えられる。この構成によれば、シール要素を簡単に交換することが可能になる。
【0011】
好ましくは、シール要素は、強制ロック式および/またはポジティブロック式で接続要素に接続される。このような接続は、特にクランプ接続またはスナップ接続によって実現され得る。接続要素に対するシール要素の強制ロック接続および/またはポジティブロック接続は、特に、追加の工具なしで実現可能であり、これにより、医療器具の製造プロセスが簡素化される。
【0012】
接続要素が長手方向軸に対してアンダーカット部を有し、該アンダーカット部にシール要素が係合すると有利である。このことは、特に組み立て位置において当てはまり得る。アンダーカット部に関する構成により、特に、第1器具部と第2器具部とが互いに相対回転しているときでも環状ギャップ内にシール要素を永久的かつ確実に保持するために、シール要素と接続要素との間にポジティブロック接続を形成することが可能になる。
【0013】
好ましくは、前記シール要素は、前記少なくとも1つの第1環状面又は前記少なくとも1つの第2環状面に成形されるか、又は、前記少なくとも1つの第1環状面又は前記少なくとも1つの第2環状面に物質的に結合される。このことは、特に、オーバーモールディング、接着結合、又は加硫によって実現され得る。このような構成により、特に、医療器具の組立てを簡素化することが可能となる。なぜなら、第1器具部と第2器具部とが接続要素を用いて互いに接続されるときには、既に第1器具部上または接続要素上にシール要素が配置されているためである。
【0014】
さらに好ましい実施形態によれば、前記第2環状面に向かって開放した前記第1環状面の凹部、及び、前記第1環状面に向かって開放した前記第2環状面の凹部のうち、少なくとも1つの凹部が形成されており、前記シール要素は、組み立て位置において、前記少なくとも1つの凹部に少なくとも部分的に(特に完全に)係合する。これにより、特に、接続要素および/または第1器具部に対するシール要素の良好な接続が確立され得る。したがって、特に、部分的または完全なポジティブロック係合が可能になる。これにより、環状ギャップ内の所望の位置にシール要素が簡単かつ確実に保持され得る。
【0015】
シール要素の組み立てを簡略化するために、前記少なくとも1つの凹部は、前記長手方向軸に対する円周状の形態であれば有利である。特に、前記少なくとも1つの凹部は、環状溝の形態であってもよい。
【0016】
前記シール要素は、組み立て位置において前記少なくとも1つの凹部に係合する少なくとも1つの突出部を備えると有利である。特に、当該係合は、ポジティブロック式であってもよい。これにより、特に、シール要素と接続要素および/または第1器具部との永久的かつ確実な接続が可能になる。特に、締り嵌めの場合、環状ギャップにシール要素を導入するだけで、シール要素の変形によって、前記少なくとも1つの凹部にシール要素の一部が入り込むか又は押し込まれるように、前記少なくとも1つの突出部がシール要素に形成されてもよい。
【0017】
前記少なくとも1つの突出部が、前記第1環状面又は前記第2環状面のうちの少なくとも一方に向かって方向付けられた環状フランジの形態で構成されると、簡単な態様でシール要素が形成され得る。
【0018】
好ましくは、前記シール要素は、前記少なくとも1つの第2器具部に向かって先細になる少なくとも1つの外側環状面を画定する。この先細の外側環状面は、特に、基本位置において設けられてもよい。これにより、接続要素を用いて第1器具部と第2器具部とを互いに接続する際、干渉を伴う環状ギャップへのシール要素の挿入が容易になる。前記先細の外側環状面は、特に、円錐形であってもよい。
【0019】
前記シール要素は、長手方向断面図において、前記長手方向軸から遠ざかる方向(径方向外側)を向いて凸状に湾曲している少なくとも1つの外側環状面を画すると有利である。特に、前記外側環状面は、上述のような基本位置において、形成されてもよい。このような外側環状面により、シール要素は、特に、第1器具部の第2環状面の凹部に収まり込むことが可能になる。
【0020】
前記シール要素は、前記長手方向軸から遠ざかる方向(径方向外側)を向いた少なくとも1つの円筒状の外側環状面を画定すると有利である。特に、基本位置において、前記シール要素はそのような外側環状面を有してもよい。このような外側環状面は簡単な方法で製造され得る。特に、当該外側環状面は、前記少なくとも1つの第2器具部から遠ざかる方向を向いたシール要素の端部まで延在すると有利である。これにより、シール要素は、特に、少なくとも1つの第2器具部から遠ざかる方向を向いた第1器具部の側面まで、環状ギャップを完全に充填し得る。
【0021】
医療器具の組み立ての際に環状ギャップへのシール要素の挿入を簡素化するために、前記シール要素の外径は、特に基本位置において、前記少なくとも1つの第2器具部から遠ざかる方向を向く端部での外径に比べて、前記少なくとも1つの第2器具部に近づく方向を向く端部での外径の方が小さいと有利である。
【0022】
さらに好ましい実施形態によれば、前記第1器具部に、貫通孔が前記長手方向軸と同心に形成されており、前記頭部凹部は、前記貫通孔の内径を拡張させてなる受容部の形態で構成されており、前記頭部凹部は、前記少なくとも1つの第2器具部から遠ざかる方向を向いている前記貫通孔の第1の端部から、前記少なくとも1つの第2器具部に近づく方向へ延びている。このようにして、第1器具部は、頭部凹部に接続要素(特にその頭部)を受け入れやすくなっている。
【0023】
前記受容部が第1の中空円筒状穴部を形成する場合、頭部凹部は簡単な方法で形成され得る。例えば、円筒形の外面を画定するツイストドリルを使用することなどによって、簡単な方法で頭部凹部が形成され得る。
【0024】
前記貫通孔が、前記少なくとも1つの第2器具部に近づく方向において前記受容部に隣接して先細になる穴部を備える場合、接続要素の頭部のためのストッパが第1器具部上に簡単な方法で形成され得る。特に、前記貫通孔は円錐状に先細りになっていてもよい。前記貫通孔は、例えば皿穴ドリルなどを使用することで簡単に形成され得る。
【0025】
前記頭部凹部には、前記第1の端部から凹入する皿穴が形成されていることが好ましい。前記皿穴は、特に、前記少なくとも1つの第2器具部から遠ざかる方向に向かって円錐状に拡径する皿穴部の形態で構成されてもよい。このような皿穴部は、皿穴ドリルを用いることで簡単に形成され得る。特に、皿穴が設けられていることによって、医療器具の組み立て中において環状ギャップへのシール要素の挿入が容易になる。
【0026】
好ましくは、前記貫通孔は、前記少なくとも1つの第2器具部に近づく方向に向けられた第2の端部から、前記第1の端部に近づく方向に延びる第2の中空円筒状穴部を備える。第2の中空円筒状穴部は、特に、接続要素の接続部を少なくとも1つの第2器具部に係合させるために前記接続部を通過させるのに役立ち得る。また、第2の中空円筒状穴部は、円筒状のドリルを用いることで簡単に形成され得る。
【0027】
好ましくは、前記第1の中空円筒状穴部の第1内径は、前記第2の中空円筒状穴部の第2内径よりも大きい。このようにして、特に、接続要素の頭部が貫通孔を通過してしまうことが規制され得る。
【0028】
組立位置における前記シール要素は、少なくとも前記貫通孔の前記第1の端部まで延在していることが好ましい。これにより、特に、シール要素を環状ギャップに面一に取り付けることが可能となり、この結果、医療器具のきれいな外観が表現される。さらに、環状ギャップの領域におけるシール要素の突出エッジが第1器具部の外面から突出することが回避され得る。
【0029】
前記接続要素がねじの形態またはリベットの形態で構成される場合、第1器具部と第2器具部とは、簡単な方法で互いに接続され得る。
【0030】
前記少なくとも1つの第2器具部に近づく方向におけるシール要素の移動を制限するために、前記頭部が環状ストッパ面を備え、前記環状ストッパ面は、前記長手方向軸を取り囲み、前記長手方向軸に対して横方向に延在し、且つ、前記少なくとも1つの第2器具部から遠ざかる方向を向いていると有利である。
【0031】
環状ギャップを良好にシールするためには、シール要素が組立位置において環状ストッパ面に接触していることが好ましい。
【0032】
特に、前記少なくとも1つの第2器具部から遠ざかる方向を向いた前記シール要素の端部が、組み立て位置において、前記第1器具部の外面と面一である場合、医療器具の良好な触覚が達成され得る。この場合、第1器具部の外面は、接続要素の頭部およびシール要素によって満たされる貫通孔の領域においても、完全に滑らかで平坦に形成され得る。
【0033】
さらに好ましい実施形態によれば、前記第1器具部と前記少なくとも1つの第2器具部との間に、前記長手方向軸を取り囲む内蔵型の第2のシール要素が配置または形成され、前記第2のシール要素は、前記第1器具部と前記少なくとも1つの第2器具部とに接触しており、特に、前記第1器具部及び前記少なくとも1つの第2器具部における互いに対向する側面に接触している。このように第2のシール要素が配置および形成されることにより、特に、第1器具部および第2器具部における相互に対向する側面間に浸透する体液または洗浄液が、例えば、少なくとも1つの第2器具部に近づく方向を向いた貫通孔の端部から、毛細管現象によって環状ギャップ内に移動することが防止され得る。さらに、環状ギャップに挿入されたシール要素と連動して、環状ギャップが完全に閉じられることで、より簡単かつ確実な態様で医療器具が洗浄され得る。
【0034】
好ましくは、前記第1器具部および/または前記第2器具部は、前記第2のシール要素のためのシール要素受入部を備える。これにより、第2のシール要素は、第1器具部および/または前記第2器具部において規定の態様で位置付けられ得る。
【0035】
前記シール要素受入部は、前記長手方向軸を同心円状に取り囲み、前記第2器具部に向かって開放するように前記第1器具部に設けられるか又は前記第1器具部に向かって開放するように前記第2器具部に設けられた環状溝の形態で構成される場合、簡単な方法で形成され得る。例えば、そのような環状溝に環状シールが挿入されてもよい。
【0036】
確実なシールを達成するためには、前記第2のシール要素と前記シール要素受入部とは、締り嵌めを形成することが有利である。
【0037】
特に、前記第2のシール要素は、内蔵型のシールリングの形態で構成されている場合、簡単な方法での医療器具の製造および組み立てが可能になる。特に、シールリングは、基本位置において円形の断面を有してもよい。
【0038】
前記接続要素が、前記頭部から、前記少なくとも1つの第2器具部に近づく方向に向けて突出した接続部を備える場合、第1器具部と第2器具部とが簡単な態様で互いに結合され得る。このような接続部は、例えば、少なくとも1つの第2器具部との強制ロック式および/またはポジティブロック式の係合が可能になり、これにより、医療器具の第1器具部と第2器具部とが、所望の態様で動くことができるように互いに結合され得る。
【0039】
前記少なくとも1つの第2器具部に、組立位置において強制ロック式および/またはポジティブロック式で前記接続部に係合される接続部受入部が形成される場合、有利である。このような接続部受入部は、特に、接続要素の接続部への簡単な接続を可能にする。接続部受入部は、特に、接続孔の形態で構成されてもよい。第1器具部と第2器具部とがリベットで接続される場合、接続部受入部には必ずしも雌ねじが設けられる必要はない。
【0040】
前記接続部に雄ねじが形成され、前記接続部受入部に、前記雄ねじに対応する雌ねじが形成されると有利である。これにより、特に、接続部を備えたねじの形態の接続要素を接続部受入部にねじ込むことが可能になる。この結果、第1器具部は、動くことができるように、接続要素の頭部と少なくとも1つの第2器具部との間に保持される。
【0041】
好ましくは、前記シール要素は、弾性変形可能および/または塑性変形可能な樹脂材料で作られる。このことは、第2のシール要素にも当てはまる。特に、このような樹脂材料を使用することで、環状ギャップを確実かつ永久的にシールまたは充填するために、締り嵌めが簡単な態様で実現され得る。
【0042】
前記樹脂材料は、天然ゴム、弾性プラスチック、又はエラストマーであるか、又は、天然ゴム、弾性プラスチック、又はエラストマーを含んでもよい。特に、前記樹脂材料は、熱可塑性エラストマーであるか、又は、熱可塑性エラストマーを含んでもよい。特に、前記樹脂材料は、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリレートゴム、エチレンアクリレートゴム、フッ素ゴム、パーフルオロゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム、及び、ポリイソプレンゴムのうちの少なくとも1つを含んでもよい。このような樹脂材料は、環状ギャップのシール(密封)に使用するのに必要な特性を有する。
【0043】
好ましくは、前記樹脂材料は、過熱蒸気で滅菌可能である。この利点は、医療器具が所望の態様で再処理され得る点にある。
【0044】
確実かつ永久的なシール効果を達成するためには、シール要素が一体的に、特にモノリシックに形成されることが好ましい。
【0045】
冒頭で述べた目的は、本発明に係る医療器具セットによっても達成される。本発明は、冒頭で述べた種類の医療器具セットにおいて、少なくとも2つの医療器具が上述の医療器具のうちの1つの形態で構成されることを特徴とする。
【0046】
この場合、医療器具セットは、好ましい実施形態に係る医療器具に関連して既述された利点を有する。
【0047】
少なくとも2つの異なる医療器具のシール要素は、互いに異なる色で着色されると有利である。これにより、このようなシール要素が、環状ギャップを少なくとも部分的に埋めるだけで、複数の医療器具を簡単に色分けすることができる。医療器具の形状や種類などの種々の特性が、対応する色によってコード化され得る。例えば、シール要素の色は、青色、赤色、黄色、緑色、黒色、白色、灰色、又は茶色であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
更なる説明のために、以下の添付図面と併せて、本発明の好ましい実施形態が説明される。
【0049】
【
図1】一実施形態に係る医療器具の概略全体斜視図を示す。
【
図4】環状ギャップにシール要素が挿入された状態における
図3と同様の断面図を示す。
【
図5】別の実施形態における
図3と同様の断面図を示す。
【
図6】さらに別の実施形態における
図3と同様の断面図を示す。
【
図7】接続要素と異なる色で着色されたシール要素との概略図を示す。
【
図8】さらに別の実施形態における
図3と同様の断面図を示す。
【
図9】別の実施形態に係るシール要素の断面図を示す。
【
図10】さらに別の実施形態に係るシール要素の断面図を示す。
【
図11】別の実施形態に係る接続要素の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1に、一実施形態に係る医療器具10が概略的に示されている。医療器具10は、第1器具部12と第2器具部14とを備える。第1器具部12と第2器具部14とは、旋回軸16を中心に旋回可能であるように互いに取り付けられており、接続要素18によって互いに結合されている。
【0051】
第1器具部12と第2器具部14とは、それぞれ細長い枝状に構成されており、それぞれの近位端には指リング20,22が配置されている。第1器具部12と第2器具部14のそれぞれにおいて、旋回軸16の遠位側には、互いに協働するツール要素24,26が配置または形成されている。
図1の実施形態において、ツール要素24,26は、相互に対面するクランプ面28を有し、これにより、医療器具10がクランプ(締め具)として使用され得る。
【0052】
図2に概略的に示される実施形態において、接続要素18は、接続ねじ30の形態で構成され、頭部32を備える。頭部32は、第1器具部12の頭部凹部34に収容される。頭部凹部34は、第2器具部14から遠ざかる方向に向かって開放するように第1器具部12に設けられている。
【0053】
頭部32は、接続要素18の長手方向軸36から遠ざかる方向(径方向外側)を向いた内蔵型の第1環状面38を、外周に有する。さらに、頭部凹部34は、長手方向軸36に近づく方向(径方向内側)を向いた内蔵型の第2環状面40を、内周に有する。第1環状面38と第2環状面40とは、環状ギャップ(環状の間隙)42を空けて、長手方向軸36に垂直な径方向において互いに離間している。
【0054】
環状ギャップ42内には、シール要素44が配置される。
図4に概略的に示されているように、組み立て位置において、シール要素44は、第1環状面38と第2環状面40との両方に接触している。
【0055】
以下、
図2~
図4に概略的に示した本実施形態に係る医療器具10の接続領域の構造について詳細に説明される。
【0056】
この実施形態において、接続要素18は、既述のように、ねじ46の形態で構成される。接続部48は、第2器具部14に近づく方向に向けて、接続要素18の頭部32から突出する。前記接続部48には、雄ねじ50が設けられている。
【0057】
第2器具部14には、接続部受入部52が、例えば接続孔54の形態で形成されている。接続部受入部52には、雄ねじ50に対応する雌ねじ56が形成されている。
【0058】
接続要素18の説明された構成により、接続部48が接続部受入部52にねじ込まれ得る。これにより、接続部48と接続部受入部52とは、組み立て位置において、強制ロック式および/またはポジティブロック式で係合する。この状態において、第1器具部12と第2器具部14とは、接続要素18によって互いに移動可能に結合される。
【0059】
さらに、第1器具部12には、旋回軸16を画定する長手方向軸36と同心に貫通孔58が形成されている。貫通孔58は、第1の端部60と第2の端部62とを有する。第1の端部60は、第2器具部14から遠ざかる方向を向いている。第2の端部62は、第2器具部14に近づく方向を向いている。
【0060】
頭部凹部34は、貫通孔58における受容部64の形態で、貫通孔58における内径が拡大された部分で構成されている。受容部64は、第1の端部60から第2器具部14に近づく方向へ、長手方向軸36に沿って、第1器具部12の厚さ66の約半分に亘って延びている。受容部64は、第1の中空円筒状穴部68によって形成されている。
【0061】
受容部64には、第2器具部14に近づく方向において、円錐テーパ状穴部70が隣接している。
【0062】
貫通孔58はさらに、第2の中空円筒状穴部72を備える。第2の中空円筒状穴部72は、円錐テーパ状穴部70から第2の端部62まで延びている。第1の中空円筒状穴部68の内径(第1内径)74は、第2の中空円筒状穴部72の内径(第2内径)76よりも大きく、例えば、1.5倍よりもわずかに大きい。
【0063】
接続要素18の頭部は、接続部48から短尺円筒部80にかけて、円錐状に拡径しながら長手方向軸36の方向に延びる円錐状拡径部78を有する。第1環状面38は、短尺円筒部80に対して、長手方向軸36に近づく方向(径方向内側)に若干オフセットされており、これにより、第2器具部14から遠ざかる方向を向いた環状ストッパ面82が形成されている。頭部32における環状ストッパ面82は、長手方向軸36を取り囲み、長手方向軸36から横方向(例えば、垂直方向)に延びている。
【0064】
第1環状面38には、第2環状面40に向かって開放した凹部84が形成されている。凹部84は、長手方向軸36の周りに延びる円周状の形態、すなわち、環状溝86の形態を有する。長手方向断面図において、凹部84は、長手方向軸36から遠ざかる方向(径方向外側)に開放するように凹状に湾曲している。
【0065】
図2及び
図3において、シール要素44は、接続要素18から完全に離された基本位置で概略的に示されている。シール要素44は、製造後に前記基本位置をとる。シール要素44は、接続要素18とは別に形成される。
【0066】
シール要素44は、長手方向軸36の方向に延びる短いスリーブの形態で構成されている。シール要素44は、第1環状面38の領域における頭部32の外径90に一致(対応)する内径88を画定する。長手方向軸36に近づく方向(径方向内側)を向いているシール要素44の内壁面92は、中空円筒状壁面の形態で構成されている。
【0067】
長手方向軸36から遠ざかる方向(径方向外側)を向いたシール要素44の外面94は、凸状に湾曲している。第2器具部14に向かう端部の領域における外面94の接線96は、長手方向軸36に対して角度98が付けられており、この角度98は、20°以上40°以下の範囲内である。
【0068】
第2器具部14に近づく方向を向いているシール要素44の第1の端面100は、長手方向軸36に対して垂直に延びる平らな環状面の形態で構成されている。シール要素44の第2の端面102は、第2器具部14から遠ざかる方向を向いており、長手方向軸36に対して垂直に延びる平らな環状面の形態で構成されている。
【0069】
シール要素44の最大外径104は、受容部64の第1内径74よりもわずかに大きい。シール要素44は、弾性のある樹脂材料で作られている。これにより、シール要素44は、例えば、第1の端面100が環状ストッパ面82に突き当たるまで、頭部32を覆うように押し込まれることが可能になり、内壁面92が第1環状面38に当接し得る。
【0070】
このように医療器具10を組み立てるために準備された接続要素18は、このように医療器具10を組み立てるために準備された接続要素18は、接続部48を貫通孔58の第1の端部60、接続部受入部52に順に導きながら、円錐状拡径部78と円錐テーパ状穴部70とが当接するまで、ねじ込まれ得る。接続要素18が第2器具部14にさらにねじ込まれると、前記接続要素18は、第1器具部12に近づく方向を向いた側面106と共に、第2器具部14に近づく方向を向いた第1器具部12の側面108に対して引き込まれる。
【0071】
接続要素18をねじ込むとき、湾曲した外面94により、シール要素44を環状ギャップ42に挿入しやすくなっている。これにより、シール要素44はわずかに圧縮される。基本位置における元の厚さ110に比べて、組み立て位置では、第1環状面38と第2環状面40との距離114に一致する厚さ112までシール要素44が圧縮される。これにより、シール要素44と環状ギャップ42との間に締り嵌めが形成される。
【0072】
上述したシール要素44の圧縮により、次のような結果が得られる。まず、第1環状面38及び第2環状面40との係合から外れた基本位置において、シール要素44は、第1のシール要素形状を画定し、環状ギャップ42内に配置される組み立て位置において、シール要素44は、第1のシール要素形状とは異なる第2のシール要素形状を画定する。
【0073】
この実施形態において、シール要素44は、上述のように、独立型の構成要素として構成され、接続要素18と第1器具部12とに着脱可能に接続される。さらに、上述のように、シール要素44は、強制ロック式および/またはポジティブロック式で(例えば、
図3及び
図4の実施形態の場合にはクランプ接続によって)、接続要素18に接続される。
【0074】
すなわち、シール要素44は、
図3に概略的に示される長手方向断面図において、長手方向軸36から遠ざかる方向(径方向外側)を向いた凸状湾曲外側環状面116を有し、凸状湾曲外側環状面116は、基本位置において外面94によって画定される。さらに、基本位置におけるシール要素44の外径に関して、(外面94から)第1の端面100への移行部における外径118は、(外面94から)第2の端面102への移行部における外径120よりも小さい。
【0075】
図4に概略的に示される組み立て位置において、シール要素44の第2の端面102は、第1器具部12の外面122と面一である。
【0076】
図3及び
図4の実施形態は、第2のシール要素124を備える。ただし、第2のシール要素124は、省略されてもよい。
【0077】
第2のシール要素124は、第1器具部12と第2器具部14との間に配置され、内蔵型であり、長手方向軸36を取り囲む。第2のシール要素124は、第1器具部12と第2器具部14との両方に接触しており、具体的には、これらの互いに対向する側面106,108に接触している。
【0078】
図3及び
図4の実施形態では、第2のシール要素124のためのシール要素受入部126が第1器具部12に形成されている。シール要素受入部126は、長手方向軸36を同心円状に取り囲み、第2器具部14に近づく方向を向いて開放した環状溝128の形態で構成されている。
【0079】
第2のシール要素124は、断面円形の内蔵型のシールリング130の形態で構成されている。第1器具部12と第2器具部14との間で良好なシールを達成するために、第2のシール要素124とシール要素受入部126との間にも締り嵌めが形成される。換言すれば、第2のシール要素124は、一方ではシール要素受入部126内に収まりつつ、他方では第2器具部14の側面106に面接触するように、医療器具10の組み立て中に変形する。
【0080】
シール要素44,124のそれぞれは、一体的(モノリシック)に形成されている。
【0081】
図5には、別の実施形態に係る医療器具10の断面図が概略的に示されている。
図5に示す医療器具10は、その大部分が
図3に示された構成に対応しており、
図2~
図4の実施形態と同一または機能的に同様の構成要素に対して、同じ参照符号が使用される。
【0082】
図3(
図2~
図4)の実施形態との第1の相違点は、シール要素44の構成にある。
図5の実施形態では、シール要素44の2つの端面100,102が同一であり、第1の端面100が第2の端面102よりも狭くなっている
図3の実施形態とは異なっている。ただし、
図5の実施形態においても、外面94は、長手方向軸36から遠ざかる方向(径方向外側)を向いて凸状に湾曲している。
【0083】
この実施形態においても、基本位置におけるシール要素44の最大外径104と受容部64の第1内径74との差の半分の締め代132が存在する。
【0084】
頭部32上にシール要素44が配置された接続要素18を頭部凹部34内に挿入しやすくするために、第1器具部12の外面122から凹入するように皿穴134が形成されている。皿穴134によって、第2器具部14に近づく方向へ円錐状に先細になった皿穴表面138は画定されている。皿穴表面138と長手方向軸36との間に形成される皿穴角度136は、約20°以上約30°以下の範囲にある。
【0085】
皿穴134は、(
図3の実施形態と同様に外面94の接線96と長手方向軸36との間に角度98を画定している)凸状に湾曲した外面94と協働して、基本位置で締め代132を有するシール要素44の変形を容易にしている。
【0086】
図5の実施形態においても、第2のシール要素124が設けられている。ただし、この実施形態においても、第2のシール要素124は任意に省略され得る。
【0087】
図6に、さらに別の実施形態に係る医療器具10が、
図3と同様の断面図として概略的に示されている。
図6の医療器具10は、
図3の構成と比べて、シール要素44の構成および接続要素18の頭部32の構成が異なっている。以下では、
図3の実施形態との相違点のみが説明される。他のすべての点では、
図3に示される実施形態の説明が参照される。
【0088】
頭部32において、第1環状面38には、環状ストッパ面82に隣接するアンダーカット部140が設けられている。アンダーカット部140は、長手方向軸36に近づく方向(径方向内側)に突出するようにシール要素44に設けられた環状フランジ142をポジティブロック式で収容するように機能する。環状フランジ142は、一方では第1の端面100によって境界が定められ、他方では、第1の端面100に平行に延在し且つ第2器具部14から遠ざかる方向を向いている環状面144によって境界が定められている。
【0089】
環状フランジ142の前縁(径方向内側のエッジ面)146は、環状面144から第1の端面100に向かって円錐状に先細になっている。これに合わせて、アンダーカット部140には、対応する円錐面148が形成されている。したがって、
図6に示す実施形態において、シール要素44は、クランプ接続またはスナップ接続によって、強制ロック式および/またはポジティブロック式で接続要素18に接続され得る。
【0090】
シール要素44は、医療器具10を識別するために使用されてもよい。種類又は大きさが異なる医療器具10は、例えば、異なる色のシール要素44を用いることでコード化され得る。
【0091】
図7は、異なる色で着色された3つの異なるシール要素44を示す。これらのシール要素44は、任意選択的に接続要素18に接続され得る。
【0092】
もちろん、上述の実施形態のシール要素44は、所望の態様で対応する医療器具10を識別またはコード化するために、任意の色で提供され得る。
【0093】
図8は、更に別の実施形態に係る医療器具10を、
図3と同様の断面図で概略的に示す。ここでも、
図3の実施形態との相違点のみが以下に説明される。
【0094】
図8の実施形態では、第2のシール要素124は設けられていない。なお、既述のように、第2のシール要素124は、原則として、前述の実施形態においても省略可能である。
【0095】
シール要素44は、円筒状のスリーブ形状を有する。内壁面92と外面94とは同心円状に形成されている。内壁面92から長手方向軸36に近づく方向(径方向内側)に突出部150が突出している。突出部150は、内蔵型の環状形態を有する。同様の態様で、外面94から突出部151が突出している。突出部151は、長手方向軸36から遠ざかる方向(径方向外側)を向いており、また、内蔵型の環状形態を有する。
【0096】
突出部150は、接続要素18の頭部32における凹部84に対応して形成されている。凹部84の反対側には、突出部151に対応する凹部85が第2環状面40に形成されている。凹部84,85は、締め代132が形成されたシール要素44が環状ギャップ42内に収容されるときに突出部150,151がポジティブロック式で凹部84,85に受け入れられるような寸法を有する。
【0097】
この実施形態において、シール要素44は、長手方向軸36から遠ざかる方向(径方向外側)を向いた円筒形の外側環状面を、例えば外面94によって画定している。
【0098】
図9に、さらに別の実施形態に係るシール要素44が概略的に示されている。内壁面92は、長手方向軸36と同心円状に延びている。円筒状の外側環状面152を画定する外面94の部分は、第2の端面102から始まり、第1の端面100に近づく方向に延びている。この円筒状の外側環状面152に対して、第1の端面100に近づく方向には、円錐テーパ状の外側環状面154が隣接している。
【0099】
図10に、さらに別の実施形態に係るシール要素44が概略的に示されている。
図10のシール要素44は、円筒状の外側環状面152の代わりに、長手方向軸36から遠ざかる方向(径方向外側)を向いて凸状に湾曲した外側環状面116が形成されている点で、
図9の実施形態と異なる。
【0100】
図9及び
図10に示されるシール要素の実施形態は、特に、既述の全ての接続要素18と組み合わされ得る。
【0101】
さらに、
図9及び
図10に示されるシール要素の実施形態は、
図11に概略的に示される接続要素18と組み合わされてもよい。
図11の接続要素18は、接続部48から遠ざかる方向を向いた平坦な端面156を有する。接続部48には、接続部48から円錐状に拡径する円錐状拡径部78が隣接しており、さらに、円錐状拡径部78から短尺円筒部80に移行する。短尺円筒部80には、接続部48及び円錐状拡径部78から遠ざかる方向を向いた環状ストッパ面82が隣接している。上述の実施形態とは異なり、第1環状面38は、凹部84が形成されることなく構成されている。
【0102】
図11に概略的に示される実施形態において、接続要素18は、リベット158として構成されている。
【0103】
図11の構成に概ね対応する変形例では、接続要素18がねじ46として使用可能なように、接続部48に雄ねじ50が形成されてもよい。
【0104】
図示しない実施形態において、上述のシール要素44は、例えば外側被覆、オーバーモールディング、接着結合、又は加硫によって、第1環状面38上に成形されてもよいし、物質的に第1環状面38に結合されてもよい。
【0105】
さらなる実施形態において、同様のシール要素44が、例えば外側被覆、オーバーモールディング、接着結合、又は加硫によって、第2環状面40上に成形されてもよいし、物質的に第2環状面40に結合されてもよい。
【0106】
いずれにしても、一方ではシール要素44と接続要素18との確実な接続、他方ではシール要素44と第1器具部12との確実な接続が確立され得る。
【0107】
既述のように、上述の全てのシール要素44は、弾性変形可能、且つ/又は、塑性変形可能な樹脂材料で作られている。
【0108】
当該樹脂材料は、天然ゴム、弾性プラスチック、エラストマー(特に、熱可塑性エラストマー)からなるか、又はこれらを含む。特に、前記樹脂材料は、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリレートゴム、エチレンアクリレートゴム、フッ素ゴム、パーフルオロゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム、又は、ポリイソプレンゴムであってもよい。
【0109】
食器洗い機および過熱蒸気滅菌器での医療器具10の処理を可能にするために、シール要素44の形成に使用される前記樹脂材料は、過熱蒸気で滅菌可能である。
【0110】
上述の実施形態に係る医療器具10は、接続要素18の頭部32と受容部64との間の環状ギャップ42にシール要素44が挿入されていることにより、環状ギャップ42への洗浄液、体液、又は他の汚染物質の侵入を防止する。これにより、環状ギャップ42の汚染の危険性が大幅に低減されるため、医療器具10の洗浄性が改善され得る。
【符号の説明】
【0111】
10 医療器具
12 第1器具部
14 第2器具部
16 旋回軸
18 接続要素
20 指リング
22 指リング
24 ツール要素
26 ツール要素
28 クランプ面
30 接続ねじ
32 頭部
34 頭部凹部
36 長手方向軸
38 第1環状面
40 第2環状面
42 環状ギャップ
44 シール要素
46 ねじ
48 接続部
50 雄ねじ
52 接続部受入部
54 接続孔
56 雌ねじ
58 貫通孔
60 第1の端部
62 第2の端部
64 受容部
66 厚さ
68 第1の中空円筒状穴部
70 円錐テーパ状穴部
72 第1の中空円筒状穴部
74 第1内径
76 第2内径
78 円錐状拡径部
80 短尺円筒部
82 環状ストッパ面
84 凹部
85 凹部
86 環状溝
88 内径
90 外径
92 内壁面
94 外面
96 稜線
98 角度
100 第1の端面
102 第2の端面
104 外径
106 側面
108 側面
110 厚さ
112 厚さ
114 距離
116 凸状湾曲外側環状面
118 外径
120 外径
122 外面
124 第2のシール要素
126 シール要素受入部
128 環状溝
130 シールリング
132 締め代
134 皿穴
136 皿穴角度
138 皿穴表面
140 アンダーカット部
142 環状フランジ
144 環状面
146 前縁
148 円錐面
150 突出部
151 突出部
152 外側環状面
154 外側環状面
156 端面
158 リベット
【国際調査報告】