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特表2024-535383疾患および感染症の治療のためのハイグロマイシンA
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】疾患および感染症の治療のためのハイグロマイシンA
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7034 20060101AFI20240920BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K31/7034
A61P1/02
A61P31/04
A61P35/00
A61P1/00
A61P1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518603
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 US2022076947
(87)【国際公開番号】W WO2023049849
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/247,927
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/247,928
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/247,929
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524110850
【氏名又は名称】フライトパス バイオサイエンシズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ティンダル,マシュー,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,キム
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA58
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA67
4C086ZB35
4C086ZC20
(57)【要約】
本開示は、疾患の治療、阻止、または管理における使用のための、治療剤、例えばハイグロマイシンAを提供する。疾患は、FusobacteriumまたはTreponema種の微生物によって引き起こされ得る。本開示の治療剤は、本明細書に記載される微生物の成長を阻害するために使用され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象にハイグロマイシンAを投与する工程を含む、Treponema denticola、Fusobacterium nucleatum、Parvimonas micra、Porphyromonas gingivalisの口腔感染症を治療するための方法。
【請求項2】
ハイグロマイシンAは、Treponema denticola、Fusobacterium nucleatum、Parvimonas micra、Porphyromonas gingivalisの成長を阻害するまたは殺滅し、有益な口腔または腸内細菌の少なくとも1つの種の成長を阻害しないまたは殺滅しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハイグロマイシンAの濃度は約0.01μg/ml~約100μg/mlである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ハイグロマイシンAの濃度は約0.01μg/ml~約1.0μg/mlである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ハイグロマイシンAの濃度は0.05μg/mlである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ハイグロマイシンAの濃度は0.1μg/mlである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ハイグロマイシンAの濃度は0.2μg/mlである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ハイグロマイシンAの濃度は0.5μg/mlである、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
ハイグロマイシンAの濃度は1.0μg/mlである、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
ハイグロマイシンAの濃度は2μg/mlである、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
ハイグロマイシンAの濃度は5μg/mlである、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
対象は、口腔疾患、全身性疾患、がん、または獣医学的疾患を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
口腔疾患は歯周炎または歯肉炎である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
歯周炎は、限局型侵襲性歯周炎、広汎型侵襲性歯周炎、歯髄壊死、または根尖性歯周炎である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
がんは、結腸直腸がん、胃がん、または食道がんである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
ハイグロマイシンAは、経口経路または非経口経路によって対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
非経口経路は、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、経皮経路、眼球経路、または吸入経路である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
対象にハイグロマイシンAを投与する工程を含む、対象におけるFusobacterium nucleatum感染症を治療するための方法。
【請求項19】
ハイグロマイシンAは、Fusobacterium nucleatumの成長を阻害するまたは殺滅するが、有益な口腔または腸内細菌の少なくとも1つの種の成長を阻害しないまたは殺滅しない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ハイグロマイシンAの濃度は約1μg/ml~約100μg/mlである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ハイグロマイシンAの濃度は5μg/mlである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ハイグロマイシンAの濃度は10μg/mlである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
ハイグロマイシンAの濃度は20μg/mlである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ハイグロマイシンAの濃度は40μg/mlである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
F.nucleatumは、F.nucleatum animalis、F.nucleatum vincentii、F.nucleatum nucleatum、F.nucleatum polymorphum、F.nucleatum fusiforme、またはF.nucleatum periodonticumのうちの1種または複数である、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
ハイグロマイシンAは、経口経路または非経口経路によって対象に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
非経口経路は、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、経皮経路、眼球経路、または吸入経路である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
対象とハイグロマイシンAとを接触させる工程を含む、対象におけるがん、胃腸障害、または口腔疾患を治療するための方法。
【請求項29】
がん、胃腸障害、または口腔疾患は、F.nucleatum感染症と関連している、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
がんは結腸直腸がんまたは口腔がんである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
胃腸疾患は、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性結腸炎、または結腸直腸がんである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
口腔疾患は歯周疾患である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
歯周疾患は、慢性歯周炎、限局型侵襲性歯周炎、広汎型侵襲性歯周炎、歯髄壊死、または根尖性歯周炎である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ハイグロマイシンAは、約1μg/ml~約100μg/mlの濃度で投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
ハイグロマイシンAの濃度は5μg/mlである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ハイグロマイシンAの濃度は10μg/mlである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
ハイグロマイシンAの濃度は20μg/mlである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
ハイグロマイシンAの濃度は40μg/mlである、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
ハイグロマイシンAは、経口経路または非経口経路によって対象に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
非経口経路は、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、経皮経路、眼球経路、または吸入経路である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
対象にハイグロマイシンAを投与する工程を含む、対象におけるトレポネーマ症感染症を治療するための方法。
【請求項42】
トレポネーマ症感染症は、Treponema pallidumまたはTreponema carateum感染によって引き起こされる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ハイグロマイシンAは、Treponema pallidumまたはTreponema carateumの成長を阻害するまたは殺滅するが、有益な口腔または腸内細菌の少なくとも1つの種の成長を阻害しないまたは殺滅しない、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
トレポネーマ症は、梅毒、イチゴ腫、ベジェル、またはピンタである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ハイグロマイシンAの濃度は約0.01μg/ml~約100μg/mlである、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
ハイグロマイシンAの濃度は約0.01μg/ml~約10μg/mlである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ハイグロマイシンAの濃度は0.06μg/mlである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ハイグロマイシンAの濃度は0.12μg/mlである、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
ハイグロマイシンAの濃度は0.24μg/mlである、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
ハイグロマイシンAの濃度は0.48μg/mlである、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
ハイグロマイシンAの濃度は0.96μg/mlである、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
ハイグロマイシンAの濃度は1.92μg/mlである、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
ハイグロマイシンAの濃度は3.84μg/mlである、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
ハイグロマイシンAは、経口経路または非経口経路によって対象に投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項55】
非経口経路は、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、経皮経路、眼球経路、または吸入経路である、請求項54に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2021年9月24日に出願された米国仮出願第63/247,927号;2021年9月24日に出願された米国仮出願第63/247,928号;および2021年9月24日に出願された米国仮出願第63/247,929号に対する優先権の利益を主張するものであり、そのそれぞれについての内容は、参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
ハイグロマイシンA(ホモマイシン(homomycin)またはトトマイシン(totomycin)としても公知)は、Streptomyces hygroscopicusから単離された改変桂皮酸抗生物質である。初期調査は、ハイグロマイシンAが、グラム陽性およびグラム陰性細菌に対する広域の活性を有することを実証した。ハイグロマイシンは、リボソームペプチジルトランスフェラーゼ活性を阻害することによって作用する。ハイグロマイシンAは、リボソームへのクロラムフェニコールまたはリンコマイシンのいずれかの結合も遮断する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、微生物の成長を阻害するための治療剤を提供する。治療剤はハイグロマイシンAであり得る。微生物は、Treponema種、Streptococcus種、Fusobacterium種、Parvimonas種、またはPorphyromonas種であり得る。Treponema種は、Treponema denticola、Treponema pallidum、またはTreponema carateumであり得る。Treponema pallidumは、Treponema pallidum pallidum、Treponema pallidum pertenue、またはTreponema pallidum endemicumであり得る。Fusobacterium種は、F.nucleatum animalis、F.nucleatum vincentii、F.nucleatum nucleatum、F.nucleatum polymorphum、F.nucleatum fusiforme、またはF.nucleatum periodonticumを含めたFusobacterium nucleatumであり得る。Parvimonas種はParvimonas micraであり得る。Porphyromonas種はPorphyromonas gingivalisであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01μg/ml~約100μg/mlである。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01μg/ml~約1.0μg/mlである。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.05μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.1μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.2μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.5μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は1.0μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は2μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は5μg/mlであり得る。
【0004】
本開示は、口腔微生物に関係した治療剤および方法、ならびに口腔微生物と関連した疾患の治療、阻止、および/または管理を提供する。
【0005】
一部の実施形態において、本開示は、口腔微生物の成長を阻害するための方法を提供する。
【0006】
本開示は、対象における口腔微生物の成長を阻害するまたは低下させるための方法を提供する。そのような方法は、対象と、ハイグロマイシンA等であるがそれに限定されない少なくとも1種の治療剤とを接触させる工程を含み得る。
【0007】
本開示の方法は、口腔微生物と少なくとも1種の治療剤とを接触させる工程を含み得る。口腔微生物と治療剤とを接触させることは、口腔微生物の成長を阻害し得る。一部の実施形態において、治療剤はハイグロマイシンAであり得る。口腔微生物は、Treponema denticola、Fusobacterium nucleatum、Parvimonas micra、またはPorphyromonas gingivalisであり得る。
【0008】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01μg/ml~約100μg/mlである。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01μg/ml~約1.0μg/mlである。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.05μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.1μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.2μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.5μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は1.0μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は2μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は5μg/mlであり得る。
【0009】
対象における口腔微生物と関連した疾患を治療するまたは阻止するための方法も本明細書において提供される。疾患は、口腔疾患、全身性疾患、がん、または獣医学的疾患であり得る。一部の実施形態において、口腔疾患は、歯周炎または歯肉炎であり得る。一部の実施形態において、疾患は、がん、例えば結腸直腸がん、胃がん、または食道がんであり得る。
【0010】
本開示は、F.nucleatumに関係した治療剤および方法、ならびにF.nucleatumと関連した疾患の治療、阻止、および/または管理を提供する。
【0011】
一部の実施形態において、本開示は、Fusobacterium nucleatum(F.nucleatum)の成長を阻害するための方法を提供する。そのような方法は、F.nucleatumと、F.nucleatumの成長が阻害されるような少なくとも1種の治療剤とを接触させる工程を含み得る。治療剤はハイグロマイシンAであり得る。Fusobacterium nucleatumの成長を阻害するまたは低下させるための方法も本明細書において提供される。
【0012】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約1μg/ml~約100μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は5μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は10μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は20μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は40μg/mlであり得る。
【0013】
F.nucleatumは、F.nucleatum animalis、F.nucleatum vincentii、F.nucleatum nucleatum、F.nucleatum polymorphum、F.nucleatum fusiforme、またはF.nucleatum periodonticumを含めた、1種または複数の亜種であり得る。
【0014】
本開示は、対象における疾患を治療するまたは阻止するための方法であって、対象と少なくとも1種の治療剤とを接触させる工程を含む方法を提供する。一部の実施形態において、疾患は、がん、胃腸障害、または口腔疾患であり得る。
【0015】
一部の実施形態において、疾患は、F.nucleatum感染症と関連し得る。一部の実施形態において、疾患は、がん、例えば結腸直腸がんまたは口腔がんであり得る。一部の実施形態において、疾患は、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性結腸炎、または結腸直腸がん等の胃腸疾患であり得る。一部の実施形態において、疾患は、口腔疾患、例えば歯周疾患であり得る。歯周疾患は、限局型侵襲性歯周炎、広汎型侵襲性歯周炎、歯髄壊死、または根尖性歯周炎であり得る。一部の実施形態において、疾患は口腔がんであり得る。
【0016】
本開示は、トレポネーマ症に関係した治療剤および方法、ならびにTreponema pallidum感染症と関連した疾患の治療、阻止、および/または管理を提供する。
【0017】
Treponemaと少なくとも1種の治療剤とを接触させることによって、Treponemaの成長を阻害するための方法が本明細書において提供される。対象におけるTreponemaを低下させる方法も本明細書において提供される。対象のTreponemaとハイグロマイシンAとを接触させることは、Treponemaの成長を阻害し得る。一部の実施形態において、治療剤はハイグロマイシンAであり得る。Treponemaは、Treponema pallidumまたはTreponema carateumであり得る。
【0018】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01μg/ml~約100μg/mlであり得る。
【0019】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01μg/ml~約10μg/mlであり得る。
【0020】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.06μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.12μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.24μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.48μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.96μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は1.92μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は3.84μg/mlであり得る。
【0021】
Treponema pallidumは、Treponema pallidum pallidum、Treponema pallidum pertenue、またはTreponema pallidum endemicumであり得る。
【0022】
本開示は、対象におけるトレポネーマ症を治療するまたは阻止するための方法も提供する。そのような方法は、対象と少なくとも1種の治療剤とを接触させる工程を含み得る。治療剤はハイグロマイシンAであり得る。トレポネーマ症は、Treponema pallidumまたはTreponema carateum感染症と関連し得る。一部の実施形態において、トレポネーマ症は梅毒であり得る。一部の実施形態において、トレポネーマ症はイチゴ腫であり得る。一部の実施形態において、トレポネーマ症はベジェルであり得る。一部の実施形態において、トレポネーマ症はピンタであり得る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
I.序論
微生物検出技術の進歩とともに、ますます増加する以前は見過ごされていた微小生物が、ヒト疾患において重要な役割を果たすことが発見されている。健康および疾患における微生物叢の主要な役割を理解することにおいて、パラダイムシフトも起きている。
【0024】
ハイグロマイシンA
この20年間、腸内微生物叢に対する抗生物質の影響が調査されてきた。アンピシリン、ドキシサイクリン、アモキシシリン、およびセフトリアキソン等の広域抗生物質は、腸内微生物相に影響を与え、急速でかつ減退したレベルの微生物多様性および細菌の相対存在量の変化を引き起こし、腸内毒素症につながることが示されている。微生物叢は、発達の間に免疫系を形作り、健常な胃腸管を維持すること、ならびに心血管疾患、神経疾患、および自己免疫疾患を阻止することに寄与する。したがって、腸内微生物叢に対する最小限から無の影響を有する、細菌と関連した疾患に対する治療剤、ならびに新たな治療および/または阻止手段の必要性が当技術分野においてある。
【0025】
ハイグロマイシンAは、1953年にStreptomyces hygroscopicusから最初に単離された発酵由来の天然産物である。ハイグロマイシンAは、ある特定の抗酸性細菌ならびにある特定のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌に対して報告された活性に起因して、広域抗生物質と考えられた(米国特許第3,100,176号を参照されたい)。ハイグロマイシンAは、細菌に対する比較的小さい効果を示すのみであり、商業的には追求されなかった。
【0026】
本開示において、本発明者らは、ハイグロマイシンAが、ある特定の口腔トレポネーマFusobacterium種、およびトレポネーマ症を引き起こす生物に対して有効であり、一方で口腔および/または腸の有益な細菌に影響を及ぼさないことを実証する。口腔および/または腸において有益である細菌の例は、Streptococcus oralis、Streptococcus parasanguinis、Bifidobacterium longum、Bacteroides nordii、Bacteroides cellulosilyticus、Streptococcus sanguinis、Parabacteroides merdae、Lactobacillus reuteri、Bacteroides fragilis、Blautia producta、Bacteroides ovatus、Bacteroides vulgatus、Bacteroides eggerthii、Enterococcus faecalis、Enterobacter cloacae、および/またはBacteroides xylanisolvensを含むが、それらに限定されるわけではない。顕著には、口腔トレポネーマおよびFusobacteriumは、微生物叢の重要性が以前に実証されている口および胃腸管において、疾患を引き起こし得る。ゆえに、本開示は、微生物叢に影響を及ぼすことなく、疾患を引き起こす細菌を標的にする潜在性を有する治療剤を提供する。一実施形態において、ハイグロマイシンAは、疾患を引き起こす細菌の成長を阻害するまたは殺滅するが、有益な口腔または腸内細菌の少なくとも1つの種の成長を阻害しないまたは殺滅しない。
【0027】
口腔トレポネーマの概説
600種を超える他の細菌種とともに、口腔トレポネーマは、歯肉溝における歯表面に融合した多微生物性バイオフィルムの一部として存在する。トレポネーマは、慢性歯周炎を含む歯周疾患、急性壊死性潰瘍性歯肉炎、歯内感染症、および一部の急性歯膿瘍を含めた、ヒトのいくつかの慢性疾患の病因において役割を果たす。加えて、トレポネーマは、犬の歯周疾患、乳牛のウシ趾皮膚炎、および伝染性ヒツジ趾皮膚炎を含めた、家畜の慢性疾患の発症に関わっている。
【0028】
歯茎疾患とも呼ばれる歯周疾患は、口腔細菌成長によって引き起こされる成人の間でよく見られる病苦である。健康リスクをほとんどもたらさないまたはもたらさない健常な歯肉プラークには、複雑なミクロフローラが存在する一方で、重度でかつ難治性の歯周病態と関連しているタンパク質分解性グラム陰性嫌気性細菌およびスピロヘータによって、歯周病変が形成され得かつ独占され得る。スピロヘータは、進行した歯周疾患において、細胞間接合を分断し、下層組織に侵入し、破壊性宿主応答を生じさせる。Treponema属は、60種を上回るファイロタイプの口腔スピロヘータを含み、そのうち、Treponema denticolaは最も培養可能であり、歯周疾患の病因に関わる。歯周疾患に関わる感染症を含めた口腔感染症を治療するための、およびTreponema感染症を治療するための、新規の治療法および方法が必要とされる。
【0029】
トレポネーマの中でも、Treponema denticola(本明細書においてT.denticolaとも称される)は、最も広く調査された口腔微生物の1種である。Treponema denticolaは、グラム陰性で、偏性嫌気性で、運動性で、かつ高度にタンパク質分解性のスピロヘータ細菌である。それは、確実に培養され得る口腔スピロヘータの4種のうちの1種であり、他は、Treponema pectinovorum、Treponema socranskii、およびTreponema vincentiiである。T.denticolaは、口腔内で複雑でかつ多様な微生物群に生息し、この環境において生存するように高度に特化している。
【0030】
疾患における口腔微生物の幅広い役割を考慮すると、口腔微生物、特にTreponema denticolaを阻害し、低下させ、かつ/または殺滅する治療剤を開発する必要性が依然としてある。本開示は、口腔微生物と関連した疾患に対する、ハイグロマイシンA等であるがそれに限定されない治療剤を提供する。
【0031】
Fusobacterium nucleatumの概説
微生物検出技術の進歩とともに、ますます増加する以前は見過ごされていた微小生物が、ヒト疾患において重要な役割を果たすことが発見されている。健康および疾患における微生物叢の役割を理解することにおいて、パラダイムシフトも起きている。Fusobacterium nucleatum(本明細書においてF.nucleatumと称される)、グラム陰性嫌気性細菌、1種のそのような新たに出現した病原体。
【0032】
F.nucleatumは、口腔に遍在し、通常の条件下で身体の他の箇所に不在であるまたは稀に検出される。疾患条件下で、F.nucleatumは、口腔外部位において検出されている。F.nucleatumは、いくつかの提唱される亜種(ss)、すなわちss animalis、ss fusiforme、ss nucleatum、ss polymorphum、ss periodonticum、およびss vincentiiを有する不均一な種であり、疾患におけるその蔓延率は変動する。
【0033】
Fusobacterium nucleatum(F.nucleatum)は、口腔におけるグラム陰性偏性嫌気性細菌であり、歯周炎および歯肉炎を含めたいくつかの口腔疾患において役割を果たす。近年、いくつかの調査は、F.nucleatumのレベルが、近接する正常組織におけるものと比較して、ヒト結腸直腸腺癌および癌において有意に上昇することを報告している。結腸直腸がんの発病におけるF.nucleatumの因果的役割も実証されている。F.nucleatumを標的にする、および/またはF.nucleatum関連疾患の治療のための治療剤を特定する必要性が依然としてある。Fusobacterium nucleatumは、侵攻性で、接着性で、かつ炎症誘発性の嫌気性細菌である。それは歯垢によく見られ、F.nucleatumと歯周炎との間には十分に確立された関連性がある。個別の事例では、F.nucleatumは、脳膿瘍および心膜炎に関わっており、それは、血栓性静脈炎の稀少な形態であるレミエール症候群に関わるフソバクテリウム種の1種である。F.nucleatumを含めた様々なフソバクテリウムが急性虫垂炎に関わっており、それらは、疾患の重症度と正に相関する上皮および粘膜下浸潤物として免疫組織化学(IHC)によって見出されている。ヒト腸管生検材料から単離された場合、F.nucleatumは、健常対照よりも、胃腸(GI)疾患を有する患者からより容易に培養可能であることが見出されており、炎症を起こした生検組織から成長した系統は、より侵攻性の表現型を呈するように見えた。
【0034】
疾患におけるF.nucleatumの幅広い役割を考慮すると、F.nucleatumを阻害し、低下させ、かつ/または殺滅する治療剤を開発する必要性が依然としてある。本開示は、F.nucleatumと関連した疾患の治療のための、ハイグロマイシンA等であるがそれに限定されない治療剤を提供する。
【0035】
トレポネーマ症の概説
ヒトトレポネーマ症は、性病性梅毒、ならびにイチゴ腫、ベジェル、およびピンタを含めた風土性トレポネーマ症を含む。これらの疾患の病因作用物質は、Spirochaetales目、Spirochaetaceae科、およびTreponema属に属するグラム陰性細菌である。梅毒、イチゴ腫、およびベジェルスピロヘータは、もともとは別個の種として分類されたが、現在は、Treponema pallidumの亜種(それぞれ、T.pallidum亜種pallidum、T.pallidum亜種pertenue、およびT.pallidum亜種endemicum)であると考えられる。ピンタの作用物質の単離株を入手できないことにより、この生物の遺伝学的分析が不可能となっており、それは、その別個の名前T.carateumを保持する。
【0036】
すべてのヒトトレポネーマ症は、発病および自然経過において類似性を共有する。すべては、感染性病変との直接接触によって伝播し、皮膚に関する複数のステージに現れる慢性感染症である。ピンタを除くすべては、進行して、皮膚、骨、および軟骨の深刻でかつ破壊的な病変を引き起こし得る。性病性梅毒におけるように、風土性トレポネーマ症の臨床兆候は、一般に、初期ステージ(一次および二次兆候を包含する)および後期ステージに分けられる。初期ステージ病変は高度に感染性であり、出現後、数週間~数ヶ月間、またはさらに数年間存続し得る。病原体に対する宿主の免疫応答に起因して、初期兆候が自然発生的に退縮すると、患者は、多くの症例において一生続く、潜伏の状態に入る。しかしながら、比較的わずかな症例において、感染症は、潜伏から、組織の破壊によって特徴付けられる三次疾患に進行し得る。
【0037】
トレポネーマ症はまだ根絶されていない。取得の年齢、伝播の様態、および中枢神経系の侵攻の能力の観点から、独特の特質が特定されている。2012年、世界保健機関(WHO)は、トレポネーマ症を根絶する目標を定めた。根絶の成功は、原因となるTreponemaを標的にする治療ストラテジーを要する。本開示は、トレポネーマ症の治療、阻止、および/または管理のための治療剤を提供する。
【0038】
II.治療剤
一部の実施形態において、本開示は、口腔微生物関連疾患等であるがそれに限定されない疾患の治療のための治療剤を提供する。一部の実施形態において、対象における疾患の治療は、少なくとも1種の治療剤を投与する工程を伴い得る。一部の実施形態において、治療剤はハイグロマイシンAであり得る。
【0039】
ハイグロマイシンA(Hyg A)は、1953年に最初に単離されたStreptomyces hygroscopicusの産物である。それは、フラノース、桂皮酸、およびアミノシクリトール部分からなる固有の構造を有する。それは、比較的広い抗微生物スペクトルを有する。ハイグロマイシンAは、ここに示される構造を有する:
【0040】
【化1】
【0041】
組み合わせ
一部の実施形態において、治療剤の組み合わせが利用され得る。本開示は、組み合わせ形式での2種、3種、4種、5種、またはそれを上回る種類の治療剤を提供する。組み合わせは、並行して、逐次的に、かつ/または連続的に投与され得る。一部の実施形態において、組み合わせにおける各治療剤は、別個の医薬製剤として製剤化され得る。一部の実施形態において、組み合わせにおける治療剤は、単一の医薬製剤として調製され得る。
【0042】
本開示の目的上、「組み合わせで」とは、2種の治療剤が、併用療法の利益を得るように設計された適当な用量レジメンの一部として投与される、2種以上の治療剤を別個にまたは一緒に提供することを指す。ゆえに、2種の治療剤は、同じ医薬組成物の一部として、または別個の医薬組成物において投与され得る。第1の治療剤は、第2の治療剤の投与の前に、同時に、もしくは後に、またはその何らかの組み合わせで投与され得る。一方の治療剤が、例えば治療の標準的コースの間に、繰り返しの間隔で対象に投与される場合、第2の治療剤は、第1の治療剤の各投与の前に、同時に、もしくは後に、またはその何らかの組み合わせで、あるいは第1の治療剤を用いた療法との関係で異なる間隔で、あるいは第1の治療剤を用いた治療のコースの前に、その間の任意の時点で、もしくは後に単一用量で投与され得る。
【0043】
本開示の治療剤の組み合わせは、ハイグロマイシンAおよび第2の治療剤を含み得る。一部の実施形態において、第2の治療剤は、Fusobacterium nucleatum感染症を治療するために利用される治療剤であり得る。
【0044】
本開示の治療剤の組み合わせは、ハイグロマイシンA、ならびに慢性歯周感染性における炎症、結合組織、歯周靱帯、および歯槽骨吸収の破壊、ならびに究極的には歯の脱落を治療するために使用される第2の治療剤を含み得る。一部の実施形態において、第2の治療剤は、エノキサシンおよび/またはエノキサシンのビスホスホネート誘導体(ビス-エノキサシン)であり得る。
【0045】
本開示の治療剤の組み合わせは、ハイグロマイシンAおよび第2の治療剤を含み得る。一部の実施形態において、第2の治療剤は、トレポネーマ症を治療するために利用される治療剤であり得る。
【0046】
一部の実施形態において、治療剤は、梅毒の治療において使用される1種または複数の作用物質と組み合わせられ得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、ペニシリンと組み合わせられ得る。
【0047】
一部の実施形態において、治療剤は、イチゴ腫の治療において使用される1種または複数の作用物質と組み合わせられ得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、アジスロマイシンおよび/またはベンザチンベンジルペニシリンと組み合わせられ得る。
【0048】
一部の実施形態において、治療剤は、ベジェルまたはピンタの治療において使用される1種または複数の作用物質と組み合わせられ得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、ドキシサイクリンおよび/またはベンザチンベンジルペニシリンと組み合わせられ得る。
【0049】
III.使用の方法
本開示は、本明細書に記載される治療剤に関係した使用の方法を提供する。一部の実施形態において、方法は、細菌、例えば口腔微生物の成長を低下させる方法を含み得る。本明細書において使用するとき、「口腔微生物」という用語は、口腔に住む任意の微小生物に適用される。一部の実施形態において、口腔微生物は、健常な個体の口腔に存在し得る。一部の実施形態において、口腔における口腔微生物の存在は、疾患または病的状態と関連し得る。
【0050】
口腔および歯周疾患
本開示の治療剤は、口腔微生物に対する効能を呈し得、それゆえ、感染症を治療しかつ/もしくは阻止する、または口腔微生物を殺滅しかつ/もしくはその成長を阻害する潜在性を有する。一部の実施形態において、動物はヒトであり得る。一部の実施形態において、スピロヘータ感染症は、本開示の治療剤の経口投与を通じて治療され得かつ/もしくは阻止され得、あるいはスピロヘータは殺滅され得る、またはその成長は阻害される。非限定的な例として、スピロヘータ感染症は、本開示の治療剤の静脈内投与を通じて治療され得かつ/もしくは阻止され得、あるいはスピロヘータは殺滅され得る、またはその成長は阻害される。
【0051】
一部の実施形態において、口腔微生物は、Treponema種、Streptococcus種、Fusobacterium種、および/またはParvimonas種であり得る。
【0052】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、T.pallidum、T.denticola、T.vincentii、T.carateum、および/もしくはT.phagedenis、またはその臨床単離株もしくは系統等であるがそれらに限定されないTreponemaによって引き起こされる疾患を治療し、阻止し、それから保護し、かつ/または管理するために使用され得る。
【0053】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、口腔微生物、例えばT.pallidum、T.denticola、T.vincentii、T.carateum、および/もしくはT.phagedenis、またはその臨床単離株もしくは系統等であるがそれらに限定されないTreponemaによって引き起こされる疾患を治療し、阻止し、それから保護し、かつ/または管理するために使用され得る。
【0054】
一部の実施形態において、口腔微生物は、T.denticola(系統:ATCC35405)、T.denticola(系統:ATCC35404)、T.denticola(系統:ATCC33520)、T.denticola(系統:ATCC33521)、T.denticola(系統:OTK)、T.denticola(系統:H1-T)、T.denticola(系統:H-22)、T.denticola(系統:MYR-T)、T.denticola(系統:US-Trep)、T.denticola(系統:ASLM)、T.denticola(系統:AL-2)、T.denticola(系統:SP21)、T.denticola(系統:SP23)、T.denticola(系統:SP32)、T.denticola(系統:SP33)、T.denticola(系統:SP37)、および/またはT.denticola(系統:SP44)等、Treponema denticolaまたはその系統もしくは臨床単離株であり得る。
【0055】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatum(例えば、F.nucleatum animalisの任意の系統、ATCC 25586、ATCC5 51191、ATCC 10953、ATCC 23726、CTI-2、CTI-3、CTI-7、EAV0002、7-1、FA2+、7-33 C1)、Veillonella parvula(例えば、ATCC 10790)、Actinomyces odontolyticus(例えば、ATCC 17982)、Neisseria mucosa、Parvimonas micra(例えば、ATCC 33270)、Porphyromonas gingivalis(例えば、ATCC 33277)、Tannerella forsythia、Capnocytophaga、Peptostreptococcus、および/またはEikenella等であるがそれらに限定されない口腔微生物によって引き起こされるまたはそれと関連した疾患を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0056】
一部の実施形態において、口腔微生物は、Porphyromonas gingivalis、Fusobacterium nucleatum、Prevotella intermedia、Prevotella loescheii、Triponema denticola(Treponema denticola)、Porphyromonas endodontalis、Peptococcus anaerobius、Micros prevotii、Eubasterium limosum、Centipedia perio Centipedia periodontii、Selenomonas arterimidis、Fusobacterium periodonticum、Eubacterium種、Bacteroides種、Actinomyces viscosos、Streptococcus mutans、および/またはStreptococcus sobrinusを含み得る。
【0057】
一部の実施形態において、口腔微生物に感染したまたは口腔微生物によって引き起こされたもしくは悪化した/増悪した疾患を有する対象に、本明細書に記載される治療剤を投与することは、口腔微生物の複製を、本明細書に記載されるアッセイまたは当業者に公知の他のものを使用して決定して、陰性対照と比べて少なくとも20%~25%、少なくとも25%~30%、少なくとも30%~35%、少なくとも35%~40%、少なくとも40%~45%、少なくとも45%~50%、少なくとも50%~55%、少なくとも55%~60%、少なくとも60%~65%、少なくとも65%~70%、少なくとも70%~75%、少なくとも75%~80%、または最高少なくとも85%阻害するまたは低下させる。一部の実施形態において、口腔微生物に感染した対象(一部の実施形態では、動物モデル)に、本明細書に記載される治療剤を投与することは、感染性作用物質の複製を、本明細書に記載されるアッセイまたは当業者に公知の他のものを使用して決定して、陰性対照と比べて少なくとも1.5分の1、2分の1、2.5分の1、3分の1、4分の1、5分の1、8分の1、10分の1、15分の1、20分の1、または2~5分の1、2~10分の1、5~10分の1、もしくは5~20分の1に阻害するまたは低下させる。
【0058】
一部の態様において、治療剤は、歯周疾患を治療するまたは阻止するために使用され得る。歯周疾患は、主に、歯を取り囲みかつ支持する歯茎および骨の感染症および炎症の結果である。歯肉炎と呼ばれるその初期ステージにおいて、歯茎は腫れ上がり得、赤くなり得、それらは出血し得る。歯周炎と呼ばれるそのより深刻な形態において、歯茎は、歯から離れ得、骨は喪失し得、歯は緩み得るまたはさらに抜け落ち得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、歯肉炎を治療するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、歯周炎を治療するために使用され得る。
【0059】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、口臭または不快な味、赤いまたは腫れ上がった歯茎、弱いまたは出血性の歯茎、痛みを伴う咀嚼、緩んだ歯、敏感な歯、歯から離れている歯茎等であるがそれらに限定されない、歯周疾患と関連した1つまたは複数の症状を治療する、管理する、または阻止するために使用され得る。
【0060】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、慢性歯周炎を治療する、管理する、または阻止するために使用され得る。慢性歯周炎は、口腔微生物相の通常のメンバーである限定された数の細菌種の異常増殖により生じる多微生物性疾患である。Treponema denticola、Porphyromonas gingivalis、およびTannerella forsythiaは、慢性歯周炎の臨床的進行と強く関連している、しばしば「レッドコンプレックス」と称される細菌コンソーシアムを形成することが広く受け入れられている。レッドコンプレックス細菌の統一的特質は、それらの細胞外タンパク質分解活性、アミノ酸のそれらの複雑な嫌気的発酵、有毒代謝産物の産生、および外膜(または鞘)小胞である。
【0061】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、歯肉疾患を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、歯肉疾患は、口腔微生物による感染またはその存在によって引き起こされ得るまたはそれと相関し得る。
【0062】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、慢性歯周炎を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、慢性歯周炎は、口腔微生物による感染またはその存在によって引き起こされ得るまたはそれと相関し得る。
【0063】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、侵襲性歯周炎を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、侵襲性歯周炎は、口腔微生物による感染またはその存在によって引き起こされ得るまたはそれと相関し得る。
【0064】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、歯周組織の膿瘍を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、歯周組織の膿瘍は、口腔微生物による感染またはその存在によって引き起こされ得るまたはそれと相関し得る。
【0065】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、歯内病変と関連した歯周炎を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、歯周組織の歯内病変と関連した歯周炎は、口腔微生物による感染またはその存在によって引き起こされ得るまたはそれと相関し得る。
【0066】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、1~2mmの歯間の臨床的付着喪失によって特徴付けられる、ステージIの歯周炎を治療するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、3~4mmの歯間の臨床的付着喪失によって特徴付けられる、ステージIIの歯周炎を治療するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、>5mmの歯間の臨床的付着喪失によって特徴付けられる、ステージIIIまたはステージIVの歯周炎を治療するために使用され得る。
【0067】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μg/ml、またはそれを上回る濃度であり得る。
【0068】
Fusobacterium nucleatum関連疾患
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、対象におけるFusobacterium nucleatum関連口腔感染症を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0069】
F.nucleatumは、罹患したおよび健常な個体の両方における、口腔において最も豊富な種の1種である。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、歯肉炎、ならびに慢性歯周炎、限局型侵襲性歯周炎、および広汎型侵襲性歯周炎を含めた歯周炎の進行性不可逆的形態等であるがそれらに限定されない、Fusobacterium nucleatum関連歯周疾患を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。本開示の治療剤は、F.nucleatum感染症と高頻度に関連している歯髄壊死および根尖性歯周炎等の歯内感染症を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0070】
1つの実施形態において、口腔疾患は口腔がんである。
【0071】
F.nucleatumの蔓延率は、疾患の重症度、炎症の進行、およびポケット深度の増加と相関している。5種の亜種の中で、ss fusiformeおよびss vincentiiは健常な状態と、一方でss nucleatumは疾患状態とより高頻度に関連している。歯周部位に加えて、F.nucleatumは唾液において検出され、健常対照と比較して、歯肉炎および歯周炎を有する患者において数が増加する。F.nucleatumに対する血清抗体力価は、罹患患者において上昇することが報告されている。
【0072】
F.nucleatumは、急性口腔および胃腸感染症を引き起こす侵攻性細菌であり、炎症誘発剤として作用し得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatum関連疾患を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。本明細書において使用するとき、「Fusobacterium nucleatum関連疾患」という用語は、Fusobacterium nucleatumの1種または複数の種による感染よって引き起こされかつ/またはそれと関連している疾患または病態を指すために使用され得る。
【0073】
一部の実施形態において、F.nucleatum関連疾患は、副鼻腔炎、心内膜炎、敗血症性関節炎、扁桃炎、ならびに脳、皮膚、および/または肝臓の膿瘍等であるがそれらに限定されない炎症性病態であり得る。
【0074】
F.nucleatumの少なくとも6種の異なる亜種が記載されており、F.nucleatum animalis、F.nucleatum fusiforme、F.nucleatum nucleatum、F.nucleatum polymorphum、F.nucleatum periodonticum、およびF.nucleatum vincentiiを含む。一部の実施形態において、F.nucleatumは、疾患状態と関連した系統であり得る。一部の実施形態において、系統は、7/1(または7_1)、CRC 7/3JVN3C1(またはCRC 7_3JVN3C1)、および/または218A8等であるがそれらに限定されない、F.nucleatum animalis亜種系統であり得る。一部の実施形態において、系統は、215A9、CC53、および/または3/1/36A2(EAV018)等であるがそれらに限定されない、F.nucleatum vincentii亜種系統であり得る。一部の実施形態において、系統は、ATCC25586T、203L34、および/または2/3 FMU 1(2_3 FMU 1)等であるがそれらに限定されない、F.nucleatum nucleatum亜種系統であり得る。一部の実施形態において、系統は、203L28、203L29、および/または13/3C(13_3C EAV005またはEAVG 005)等であるがそれらに限定されない、F.nucleatum polymorphum系統であり得る。一部の実施形態において、系統は、203C15、203L25、および/または203L30等であるがそれらに限定されない、F.nucleatum fusiforme系統であり得る。一部の実施形態において、系統は、2/1/31または(2_1_31 EAV015またはEAVG 015)、3/1/7B(3_1_7BまたはEAVG 011)、および/または209B32等であるがそれらに限定されない、F.nucleatum periodonticum系統であり得る。
【0075】
一部の実施形態において、本開示は、Fusobacterium種、例えばFusobacterium nucleatumの成長を阻害するための方法を提供する。F.nucleatum種の成長は、インビトロで(例えば、細胞、または対象由来の組織サンプルにおいて)または対象におけるインビボで阻害され得る。一部の態様において、F.nucleatumの成長は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、および/または90%阻害され得る。一部の実施形態において、細菌の成長は、5~15%、10~20%、15~25%、20~30%、25~35%、30~40%、35~45%、40~50%、45~55%、50~60%、55~65%、60~70%、65~75%、70~80%、75~85%、および/または90~100%阻害される。
【0076】
一部の実施形態において、Fusobacteriumに感染したまたはFusobacteriumによって引き起こされたもしくは悪化した/増悪した疾患を有する対象に、本明細書に記載される治療剤を投与することは、Fusobacteriumの複製を、本明細書に記載されるアッセイまたは当業者に公知の他のものを使用して決定して、陰性対照と比べて少なくとも20%~25%、少なくとも25%~30%、少なくとも30%~35%、少なくとも35%~40%、少なくとも40%~45%、少なくとも45%~50%、少なくとも50%~55%、少なくとも55%~60%、少なくとも60%~65%、少なくとも65%~70%、少なくとも70%~75%、少なくとも75%~80%、または最高少なくとも85%阻害するまたは低下させる。一部の実施形態において、Fusobacteriumに感染した対象(一部の実施形態では、動物モデル)に、本明細書に記載される治療剤を投与することは、感染性作用物質の複製を、本明細書に記載されるアッセイまたは当業者に公知の他のものを使用して決定して、陰性対照と比べて少なくとも1.5分の1、2分の1、2.5分の1、3分の1、4分の1、5分の1、8分の1、10分の1、15分の1、20分の1、または2~5分の1、2~10分の1、5~10分の1、もしくは5~20分の1に阻害するまたは低下させる。
【0077】
本開示は、F.nucleatumに関係した治療剤および方法、ならびにF.nucleatumと関連した疾患の治療、阻止、および/または管理を提供する。
【0078】
一部の実施形態において、本開示は、Fusobacterium nucleatum(F.nucleatum)の成長を阻害するための方法を提供する。そのような方法は、F.nucleatumと、F.nucleatumの成長が阻害されるような少なくとも1種の治療剤とを接触させる工程を含み得る。治療剤はハイグロマイシンAであり得る。Fusobacterium nucleatumの成長を阻害するまたは低下させるための方法も本明細書において提供される。
【0079】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約1μg/ml~約100μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は5μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は10μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は20μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は40μg/mlであり得る。
【0080】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μg/ml、またはそれを上回る濃度であり得る。
【0081】
F.nucleatumは、F.nucleatum animalis、F.nucleatum vincentii、F.nucleatum nucleatum、F.nucleatum polymorphum、F.nucleatum fusiforme、またはF.nucleatum periodonticumを含めた、1種または複数の亜種であり得る。
【0082】
本開示は、対象における疾患を治療するまたは阻止するための方法であって、対象と少なくとも1種の治療剤とを接触させる工程を含む方法を提供する。一部の実施形態において、疾患は、がん、胃腸障害、または口腔疾患であり得る。
【0083】
一部の実施形態において、疾患は、F.nucleatum感染症と関連し得る。一部の実施形態において、疾患は、がん、例えば結腸直腸がんまたは口腔がんであり得る。一部の実施形態において、疾患は、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性結腸炎、または結腸直腸がん等の胃腸疾患であり得る。一部の実施形態において、疾患は、口腔疾患、例えば歯周疾患であり得る。歯周疾患は、限局型侵襲性歯周炎、広汎型侵襲性歯周炎、歯髄壊死、または根尖性歯周炎であり得る。一部の実施形態において、疾患は口腔がんであり得る。
【0084】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μg/ml、またはそれを上回る濃度であり得る。
【0085】
全身性疾患
口内における微生物およびそれらの代謝副産物の存在は、口腔の域を越えた免疫応答をモジュレートし得、ゆえに全身性病態の発症を促進する。増大する文献が、口腔微生物と全身性疾患との間につながりがあることを示唆する。
【0086】
本開示の治療剤は、心血管疾患、胃腸疾患、結腸直腸がん、糖尿病およびインスリン抵抗性、アルツハイマー病、ならびに呼吸器感染症および有害な妊娠転帰等であるがそれらに限定されない、口腔微生物と関連した全身性疾患を治療する、管理する、または阻止するために使用され得る。
【0087】
口腔病原体等の口腔微生物は、非口腔疾患の発症を直接的にまたは間接的に促進し得る。口腔における約30種の豊富な種、主にグラム陰性嫌気性細菌は、全身性疾患の直接的な一因となり得る内毒素を産生することが公知である。外科的処置の後等の一部の場合には、口腔病原体の血流への移動も生じ得る。歯科不衛生および/または環境因子に起因した歯における細菌蓄積は、宿主炎症応答を誘導し、それは歯周炎および骨喪失をもたらし得るが、生物に全身的にも害を及ぼし得る。
【0088】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、菌血症を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。組織外傷、フロッシング、歯科処置、またはさらに咀嚼は、口腔微生物を含有する歯垢の近位における血管の破損を誘導し得、それは、口腔微生物を全身血流に導入し得、菌血症をもたらす。
【0089】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、心血管疾患を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、心血管疾患は、口腔微生物による感染またはその存在によって引き起こされ得るまたはそれと相関し得る。Treponema denticola、Actinobacillus actinomycetemcomitans、Tannerella forsythia、Eikenella corrodens、Fusobacterium nucleatum、およびCampylobacter rectus等の種の細菌DNAが、手術によって採取されたアテローム性およびアテローム動脈硬化性プラークにおいて特定されている。
【0090】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、呼吸器感染症を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、呼吸器感染症は、口腔微生物による感染またはその存在によって引き起こされ得るまたはそれと相関し得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatumおよびFusobacterium necrophorumによって引き起こされ得るレミエール症候群を治療する、管理する、または阻止するために使用され得る。
【0091】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、肺炎を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、肺炎は、口腔微生物による感染またはその存在によって引き起こされ得るまたはそれと相関し得る。
【0092】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、糖尿病を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、糖尿病は、口腔微生物による感染またはその存在によって引き起こされ得るまたはそれと相関し得る。歯周炎の間の慢性感染症は、増悪したおよび調節不全の炎症応答につながり得、それは血糖の代謝制御不良およびインスリン必要量の増加をもたらし得る。逆に、糖尿病は、創傷治癒不良、網膜症、腎症、神経障害、大血管疾患、および歯周炎等の種々の合併症にもつながり得る。
【0093】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、アルツハイマー病を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、アルツハイマー病は、口腔微生物、例えばFusobacterium nucleatumによる感染またはその存在によって引き起こされ得るまたはそれと相関し得る。
【0094】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μg/ml、またはそれを上回る濃度であり得る。
【0095】
がん
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、がんを治療し、それから保護し、かつ/または管理するために使用される。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、1種または複数の口腔微生物と関連したがんを治療する、阻止する、または管理するために使用される。
【0096】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacteriumによって引き起こされたがんを治療する、阻止する、または管理するために使用される。一部の実施形態において、がんは、口腔、結腸直腸、または食道がんであり得る。非限定的な例として、結腸直腸または食道がんは、Fusobacterium種によって引き起こされ得る。
【0097】
対象は、がんを有し得る、がんを有すると疑われ得る、またはがんになりやすい素因を有し得る。治療剤またはその薬学的に許容される塩は、すべての患者において、がんに対する治療、および維持として対象に投与され得る。がん細胞の増殖に対する、本明細書に記載される治療剤または製剤の効果は、当技術分野において公知のルーチン的アッセイによって検出され得る。そのようなアッセイが実施され得るがん細胞株は、当業者に周知である。
【0098】
Fusobacterium nucleatum、Porphyromonas gingivalis、Treponema denticola、Aggregatibacter actinomycetemcomitans、およびTannerella forsythiaを含めた口腔微生物は、がん病因の文脈においてますます増加する関心を受けている。歯周病原体は、膵臓および口腔がんと関連し得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、がんと関連した1種または複数の口腔微生物の成長を阻害する、低下させる、または抑えるために使用され得る。口腔微生物は、アポトーシスの阻害、細胞増殖の活性化、細胞侵入の促進、慢性炎症の誘導、および発がん性物質の産生等、種々のメカニズムを介して発がんの一因となり得る。非限定的な例として、ハイグロマイシンAは、結腸直腸がんにおいて、TLR4依存的メカニズムを通じてマクロファージの極性化を促進することによって、Fusobacterium nucleatumの免疫抑制効果を阻害するために使用され得る。
【0099】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、結腸直腸がん、胃がん、および/または食道がんを治療する、管理する、または阻止するために使用され得る。
【0100】
本開示は、対象に、本明細書に記載される治療剤を投与する方法も提供する。対象は、がんを有し得る、がんを有すると疑われ得る、またはがんになりやすい素因を有し得る。化合物またはその薬学的に許容される塩は、すべての患者において、がんに対する治療、および維持として対象に投与される。がん細胞の増殖に対する、本明細書に記載される組成物の効果は、当技術分野において公知のルーチン的アッセイによって検出され得る。そのようなアッセイが実施され得るがん細胞株は、当業者に周知である。
【0101】
本明細書に記載される治療剤および方法を使用して治療され得る、保護され得る、または管理され得るがんおよび関連障害は、以下のもの:急性白血病、急性リンパ球性白血病、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病性白血病等の急性骨髄性白血病、および骨髄異形成症候群、慢性骨髄性(顆粒性)白血病および慢性リンパ球性白血病等であるがそれらに限定されない慢性白血病、有毛細胞白血病を含むがそれらに限定されない白血病;真性多血症;ホジキン病および非ホジキン病等であるがそれらに限定されないリンパ腫;くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、孤立性形質細胞腫、および髄外性形質細胞腫等であるがそれらに限定されない多発性骨髄腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;意義不明の単クローン性免疫グロブリン異常症;良性単クローン性免疫グロブリン異常症;重鎖病;骨の肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫瘍、骨の線維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma)(血管肉腫(hemangiosarcoma))、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、および滑膜肉腫等であるがそれらに限定されない、骨および結合組織肉腫;神経膠腫、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、乏突起膠腫、非神経膠腫瘍、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽細胞腫、および原発性脳リンパ腫を含むがそれらに限定されない脳腫瘍;腺癌、小葉(小細胞)癌、腺管内癌、髄様乳がん、粘液性乳がん、管状乳がん、乳頭乳がん、パジェット病、および炎症性乳がんを含むがそれらに限定されない乳がん;褐色細胞腫および副腎皮質癌を含むがそれらに限定されない副腎がん;乳頭性または濾胞性甲状腺がん、甲状腺髄様がん、および未分化甲状腺がん等であるがそれらに限定されない甲状腺がん;インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、およびカルチノイドまたは島細胞腫瘍を含むがそれらに限定されない膵臓がん;クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症、および尿崩症を含むがそれらに限定されない下垂体がん;虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、および毛様体黒色腫等の眼球黒色腫、ならびに網膜芽細胞腫を含むがそれらに限定されない目のがん;扁平上皮細胞癌、腺癌、および黒色腫を含むがそれらに限定されない膣がん;扁平上皮細胞癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、およびパジェット病を含むがそれらに限定されない外陰がん;扁平上皮細胞癌および腺癌を含むがそれらに限定されない子宮頸がん;子宮内膜癌および子宮肉腫を含むがそれらに限定されない子宮がん;上皮性卵巣癌、境界型腫瘍、胚細胞腫瘍、および間質腫瘍を含むがそれらに限定されない卵巣がん;扁平上皮がん、腺癌、腺様嚢胞癌、粘膜表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、疣状癌、および燕麦細胞(小細胞)癌を含むがそれらに限定されない食道がん;腺癌、菌状(ポリープ様)、潰瘍性、表在性拡大型、びまん性拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および癌肉腫を含むがそれらに限定されない胃のがん;結腸がん;直腸がん;肝細胞癌および肝芽腫を含むがそれらに限定されない肝臓がん;腺癌を含むがそれに限定されない胆嚢がん;乳頭性、結節性、およびびまん性を含むがそれらに限定されない胆管癌;非小細胞肺がん、扁平上皮細胞癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌、および小細胞肺がんを含むがそれらに限定されない肺がん;胚腫瘍、セミノーマ、未分化、胚性癌、奇形腫癌、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)を含むがそれらに限定されない精巣がん;腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫を含むがそれらに限定されない前立腺がん;陰茎(penal)がん;扁平上皮細胞癌を含むがそれに限定されない口腔がん;基底がん(basal cancer);腺癌、粘膜表皮癌、および腺様嚢胞癌を含むがそれらに限定されない唾液腺がん;扁平上皮細胞がんおよび疣状を含むがそれらに限定されない咽頭がん;基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、および黒色腫、ならびに表在性拡大型黒色腫、結節型黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端黒子型黒色腫を含むがそれらに限定されない皮膚がん;腎細胞がん、腎がん、腺癌、副腎腫、線維肉腫、および移行細胞がん(腎盂および/または尿管)を含むがそれらに限定されない腎臓がん;ウィルムス腫瘍;移行細胞癌、扁平上皮細胞がん、腺癌、および癌肉腫を含むがそれらに限定されない膀胱がんを含むが、それらに限定されるわけではない。加えて、がんは、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管内皮腫肉腫、中皮腫、滑液腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、および乳頭腺癌を含む。
【0102】
一部の実施形態において、がんは、良性、例えばポリープおよび良性病変である。他の実施形態において、がんは転移性である。本明細書に記載される組成物は、前悪性ならびに悪性病態の治療において使用され得る。前悪性病態は、過形成、化生、および異形成を含む。悪性病態の治療は、原発性ならびに転移性腫瘍の治療を含む。一部の実施形態において、がんは、黒色腫、結腸がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、子宮頸がん、脳のがん、膵臓がん、または腎がん、T細胞急性リンパ球性白血病(ALL)、B細胞急性リンパ球性白血病、リンパ芽球性白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病、またはB細胞非ホジキンリンパ腫、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、胃がん、肝がんである。
【0103】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μg/ml、またはそれを上回る濃度であり得る。
【0104】
胃腸疾患
一部の実施形態において、治療剤は、結腸直腸がん(CRC)、炎症性腸疾患(IBD)、および虫垂炎等であるがそれらに限定されない、Fusobacterium nucleatum関連胃腸疾患または障害を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0105】
胃腸管のがんは、すべてのがん関連死のかなりのパーセンテージを占め、胃がん、結腸直腸、および食道がんを含む。結腸直腸癌(CRC)は、世界中で1年あたりおよそ655,000件の死亡に関与する、2番目に多いがん死亡の原因である。CRCは、腺腫性病変(ポリープ)から侵攻性癌腫への進行と関連したがん遺伝子および腫瘍サプレッサー遺伝子上の特異的体細胞変異が特定されている、最初にかつ最もよく遺伝学的に特徴付けされたがんの1種でもある。炎症は、CRCのリスク因子として認識されている。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、結腸直腸がんを治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatum関連結腸直腸がんを治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。CRCは、F.nucleatum感染によって引き起こされ得るまたはそれとつながりがあり得る。
【0106】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、IBDを治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatum関連IBDを治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。IBDは、CRCのリスク因子として認識されている。IBD患者の炎症を起こした組織から単離されたF.nucleatum系統は、正常組織由来のものよりも侵攻性が高い。いくつかの調査は、虫垂炎におけるF.nucleatumの関連性を報告している。F.nucleatumと他の口腔分類群との同時発生が観察されている。
【0107】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、クローン病を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatum関連クローン病を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0108】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、潰瘍性結腸炎を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatum関連潰瘍性結腸炎を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0109】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μg/ml、またはそれを上回る濃度であり得る。
【0110】
獣医学的疾患
一部の実施形態において、治療剤は、動物における1種または複数の疾患(本明細書において獣医学的疾患とも称される)の治療、阻止、または管理において使用され得る。一部の実施形態において、獣医学的疾患は、Treponema、Fusobacterium、Bacteroides、Campylobacter、Mycoplasma、およびPorphyromonas等であるがそれらに限定されない細菌によって引き起こされ得る。
【0111】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、趾皮膚炎(DD)を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。DDは、畜牛において跛行を引き起こす足の疾患である。それは、指間裂の足底面に最もよく見られる趾皮膚の炎症性皮膚炎によって特徴付けられる。一部の実施形態において、治療剤は、DDと関連した細菌種の成長を阻害するために使用され得る。非限定的な例として、DDは、Treponema種によって引き起こされ得る。一部の実施形態において、Treponemaは、Treponema phagedenis、T.medium、およびT.pedisであり得る。
【0112】
一部の実施形態において、治療剤は、犬における1種または複数の歯周疾患の治療、阻止、または管理において使用され得る。
【0113】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Treponeme関連蹄病の治療、阻止、または管理において使用され得る。ヘラジカにおけるTreponeme関連蹄病(TAHD)は、ウシ趾皮膚炎および伝染性ヒツジ趾皮膚炎との多くの類似性を共有する、消耗性でかつ進行性の病態である。
【0114】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μg/ml、またはそれを上回る濃度であり得る。
【0115】
トレポネーマ症
本開示は、トレポネーマ症に関係した治療剤および方法、ならびにTreponema pallidum感染症と関連した疾患の治療、阻止、および/または管理を提供する。
【0116】
Treponemaと少なくとも1種の治療剤とを接触させることによって、Treponemaの成長を阻害するための方法が本明細書において提供される。対象におけるTreponemaを低下させる方法も本明細書において提供される。Treponemaまたは対象とハイグロマイシンAとを接触させることは、Treponemaの成長を阻害し得る。一部の実施形態において、治療剤はハイグロマイシンAであり得る。Treponemaは、Treponema pallidumまたはTreponema carateumであり得る。
【0117】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01μg/ml~約100μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μg/ml、またはそれを上回る濃度であり得る。
【0118】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01μg/ml~約10μg/mlであり得る。
【0119】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.06μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.12μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.24μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.48μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は0.96μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は1.92μg/mlであり得る。一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は3.84μg/mlであり得る。
【0120】
Treponema pallidumは、Treponema pallidum pallidum、Treponema pallidum pertenue、またはTreponema pallidum endemicumであり得る。
【0121】
本開示は、対象におけるトレポネーマ症を治療するまたは阻止するための方法も提供する。そのような方法は、対象と少なくとも1種の治療剤とを接触させる工程を含み得る。治療剤はハイグロマイシンAであり得る。トレポネーマ症は、Treponema pallidumまたはTreponema carateum感染症と関連し得る。一部の実施形態において、トレポネーマ症は梅毒であり得る。一部の実施形態において、トレポネーマ症はイチゴ腫であり得る。一部の実施形態において、トレポネーマ症はベジェルであり得る。一部の実施形態において、トレポネーマ症はピンタであり得る。
【0122】
本開示は、本明細書に記載される治療剤に関係した使用の方法を提供する。一部の実施形態において、方法は、Treponema pallidum等の細菌の成長を低下させる方法を含み得る。
【0123】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Treponema pallidumの1種または複数の亜種を殺滅するまたはその成長を阻害するために使用され得る。Treponemaの亜種は、Treponema pallidum pallidum、Treponema carateum、Treponema pallidum pertenue、およびTreponema pallidum endemicumを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0124】
一部の実施形態において、本開示は、Treponema pallidumの成長を阻害するための方法を提供する。T.pallidum種の成長は、インビトロで(例えば、細胞もしくは共培養システム、または対象由来の組織サンプルにおいて)または対象におけるインビボで阻害され得る。一部の態様において、T.pallidumの成長は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、および/または90%阻害され得る。一部の実施形態において、細菌の成長は、5~15%、10~20%、15~25%、20~30%、25~35%、30~40%、35~45%、40~50%、45~55%、50~60%、55~65%、60~70%、65~75%、70~80%、75~85%、および/または90~100%阻害され得る。
【0125】
一部の実施形態において、Treponema pallidumに感染したまたはTreponema pallidumによって引き起こされたもしくは悪化した/増悪した疾患を有する対象に、本明細書に記載される治療剤を投与することは、Treponema pallidumの複製を、本明細書に記載されるアッセイまたは当業者に公知の他のものを使用して決定して、陰性対照と比べて少なくとも20%~25%、少なくとも25%~30%、少なくとも30%~35%、少なくとも35%~40%、少なくとも40%~45%、少なくとも45%~50%、少なくとも50%~55%、少なくとも55%~60%、少なくとも60%~65%、少なくとも65%~70%、少なくとも70%~75%、少なくとも75%~80%、または最高少なくとも85%阻害するまたは低下させる。一部の実施形態において、Treponema pallidumに感染した対象(一部の実施形態では、動物モデル)に、本明細書に記載される治療剤を投与することは、感染性作用物質の複製を、本明細書に記載されるアッセイまたは当業者に公知の他のものを使用して決定して、陰性対照と比べて少なくとも1.5分の1、2分の1、2.5分の1、3分の1、4分の1、5分の1、8分の1、10分の1、15分の1、20分の1、または2~5分の1、2~10分の1、5~10分の1、もしくは5~20分の1に阻害するまたは低下させる。
【0126】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、性病性トレポネーマ症または梅毒を治療し、阻止し、かつ/または管理するために使用され得る。
【0127】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、風土性トレポネーマ症または非性病性トレポネーマ症を治療し、阻止し、かつ/または管理するために使用され得る。風土性トレポネーマ症と梅毒との間の重要な違いは、標的集団、伝播の様態、および全身性症候(systemic involvement)の傾向に関係する。風土性トレポネーマ症は、貧しい農村における子どもに主として影響を及ぼし、一方で梅毒は普遍的疾患である。風土性トレポネーマ症は、ベジェル、イチゴ腫、およびピンタを含み得る。
【0128】
梅毒
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、梅毒を治療するために使用され得る。梅毒は、T.pallidum pallidumによって引き起こされる全身性疾患である。該疾患は、治療および経過観察を導く、臨床所見に基づいてステージに分けられている。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、第1期梅毒を治療するために使用され得る。第1期梅毒は、古典的に、感染の部位において単発性無痛性潰瘍または下疳として現れるが、複数の、非定型の、または痛みを伴う病変も提示し得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、皮膚皮疹、粘膜皮膚病変、およびリンパ節腫脹によって特徴付けられる第2期梅毒を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、心臓症候、ゴム腫性病変、脊髄癆、および進行麻痺を提示し得る第3期梅毒を治療し、管理し、かつ/または阻止するために使用され得る。
【0129】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、潜伏感染を治療するために使用され得る。潜伏感染(すなわち、臨床兆候を欠くもの)は、血清学的試験によって検出される。前年のうちに得られた潜伏梅毒は、初期潜伏梅毒と称され;潜伏梅毒の他のすべての症例は、後期潜伏梅毒または継続期間不明の潜伏梅毒として分類される。
【0130】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、中枢神経系(CNS)関連症状梅毒を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。T.pallidumは、梅毒の任意のステージでCNSに感染し得、神経梅毒をもたらし得る。初期の神経学的臨床兆候または梅毒性髄膜炎(例えば、脳神経機能不全、髄膜炎、髄膜血管性梅毒、脳卒中、および急性に変更した精神状態)は、通常、感染の最初の数ヶ月または数年以内に現れる。後期の神経学的兆候(例えば、脊髄癆および進行麻痺)は、感染の10~>30年後に生じる。
【0131】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、眼梅毒または耳梅毒を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。視覚系(眼梅毒)または聴覚系(耳梅毒)の感染症は、梅毒の任意のステージで生じ得るが、初期ステージの間に一般に特定され、付加的なCNS症候を提示し得るまたは提示し得ない。眼梅毒は、全ブドウ膜炎としてしばしば現れるが、結膜炎、前部ブドウ膜炎、後部間質性角膜炎、視神経症、および網膜血管炎を含めた、目の前区および後区の両方において構造に影響を与え得る。眼梅毒は、永久的な視力喪失をもたらし得る。耳梅毒は、典型的に、耳鳴り、めまい、および感音性難聴を含めた、蝸牛-前庭症状を提示する。難聴は、片側性または両側性であり得、突然発症を有し得、急速に進行し得る。耳梅毒は、永久的な難聴をもたらし得る。
【0132】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μg/ml、またはそれを上回る濃度であり得る。
【0133】
イチゴ腫
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、イチゴ腫を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。T.pallidum亜種pertenueによって引き起こされるイチゴ腫の伝播は、感染性病変との直接的な皮膚接触によって生じ、外傷性のまたは他の病因(例えば、擦り傷または疥癬)の皮膚における裂け目によって促される。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、該疾患の1つまたは複数のステージを治療するために使用され得る。該疾患の第1ステージは、末梢伸展によってまたは衛星性丘疹と合体することによって、直径が2~5cmの乳頭腫に成長し得る孤立性紅斑性丘疹として、可変的インキュベーション期間(およそ21日間)の後に出現する。病変は痛みを伴わないが掻痒性であり得、それは、典型的に、隆起した暗色縁および紅斑性湿潤中心を有する潰瘍を隠す痂皮によって覆われ、ラズベリーに全体的に似ている(それゆえ、アフリカおよびフランス名)。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、下肢にしばしば見出される一次病変を治療し、阻止し、かつ/または管理するために使用され得る。病変は高度に伝染性であり、自然発生的に治癒する前に数週間または数ヶ月間存続し得、暗色境界によって区切られた脱色性のまたはくぼんだエリアをしばしば残す。このステージで、局所リンパ節腫脹および関節痛も生じ得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、イチゴ腫と関連したリンパ節腫脹および/または関節痛を治療するために使用され得る。大多数の症例において、一次病変は、その出現が初期感染の間の病原体の全身播種に起因するイチゴ腫の二次兆候の発生前に自然発生的に治癒する。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、イチゴ腫と関連した全身播種を治療するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、イチゴ腫と関連した二次兆候を治療する、管理する、または阻止するために使用され得る。二次兆候は、腋窩および鼠径部等の湿潤間隙における扁平コンジローマ、ならびに麻疹様発疹を含み得る。掌および足底での角化性プラークも、このステージでよく見られる。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、上肢および下肢の骨(脛骨、腓骨、および前腕)、ならびに手指および足指の基節骨に影響を及ぼし得、骨痛および趾の腫れをもたらす、骨膜炎および骨炎を治療するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、潜伏性疾患を治療するために使用され得る。二次病変は、数週間または数ヶ月以内に自然発生的に治癒し、患者は、血清学的試験によってのみ認識され得、治療されない限り一生続くであろう、感染症の潜伏ステージに入る。二次兆候の再発(一般的に1回または2回)は、10年後の再燃が報告されているものの、初回感染の最高5年後に見られ得る。
【0134】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、第3期イチゴ腫を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。未治療患者のおよそ10%が、皮下ゴム腫性結節、脛骨の明らかな湾曲(すなわちサーベル脛(saber shin))を引き起こし得る慢性骨膜炎、ならびに鞍鼻ならびに口蓋および鼻中隔の穿孔/決裂(すなわち、ガンゴサ)につながる破壊性過程によって特徴付けられる第3期イチゴ腫を発症するであろう。副鼻腔上顎骨および鼻梁の両側性肥厚性骨膜炎は、大鼻症(goundou)として公知の臨床兆候を引き起こす。
【0135】
ベジェル
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、ベジェルを治療するために使用され得る。ベジェルは、T.pallidum亜種endemicumによって引き起こされる風土性(または非性病性)梅毒に対するアラビア名である。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、乾燥した不毛の気候において2~15歳の子どもに観察される急性感染症を治療するために使用され得る。伝播の様態は充分に調査されていないものの、それは、粘膜および皮膚接触、または食器もしくは飲用容器の共有により生じると思われる。
【0136】
他のトレポネーマ症とは対照的に、ベジェルの一次病変は気づかれないことが多い。しかしながら、見られる場合、それは、口腔または鼻咽頭において発症する小さくかつ痛みを伴わない粘膜丘疹または潰瘍として出現する。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、ベジェルと関連した一次および/または二次病変を治療するために使用され得る。二次病変は、性病性梅毒のものと非常に類似しており、口腔粘膜、扁桃腺、舌、唇、および鼻咽頭に粘膜斑として現れ得る。唇交連における分裂性丘疹(イチゴ腫患者において見られる口角炎)、痒みのない皮膚発疹、全身性リンパ節腫脹、および喉頭炎は、よく見られる兆候である。二次皮膚病変は、イチゴ腫および梅毒におけるものに相当する、間擦疹性の身体エリアにおける扁平コンジローマを含む。斑丘疹性または丘疹鱗屑性病変、ならびに非掻痒性全身性丘疹状皮疹が、ベジェルを有する少数の患者において観察され得る。イチゴ腫におけるように、長骨および手の骨炎および骨膜炎が生じ得、夜行性骨痛を引き起こす。二次兆候は6~9ヶ月以内に治癒し、疾患は潜伏に入る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、ベジェルの第3ステージを治療するために使用され得る。第3ステージは、イチゴ腫に対するよりも早く現れ得る(6ヶ月~数年)が、イチゴ腫におけるように、破壊性潰瘍に進行し得る、皮膚、粘膜、および骨のゴム腫性病変によって特徴付けられる。皮膚病変はそのうち解消し、色素過剰によって取り囲まれた特徴的な脱色性瘢痕を残す。
【0137】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μg/ml、またはそれを上回る濃度であり得る。
【0138】
ピンタ
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、ピンタ(マル・デ・ピント(mal de pinto)、エンフェルメダード・アスル(enfermedad azul)、およびカラテ(carate)またはクテ(cute)としても公知)を治療し、阻止し、かつ/または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Treponema carateumによって引き起こされるピンタを治療するために使用され得、その病変が皮膚に限定され、全身性症候または垂直伝播の証拠がないという点において、最軽度のトレポネーマ症と見なされる。該疾患は、熱帯中央および南アメリカに局部的に見出される。この病原体の実験室系統は、現時点では調査に使用不能であるため、T.carateumは、ヒトトレポネーマ症の最も特徴付けされていない作用物質であり、その遺伝学的および抗原的関連性が実験的に実証されている他のT.pallidum亜種とは独立して今もなお分類される。繰り返しの皮膚と皮膚の接触が最も信憑性が高いように見えるものの、伝播のメカニズムは不明である。慢性皮膚病変を有する若年成人(≦15歳)は、該疾患の主たる保菌者であると考えられる。ピンタは、密接な接触によって幼児に彼らの母親から伝播されるようにも見える。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、ピンタの初期または後期ステージを治療するために使用され得る。一次病変は、1週間~2ヶ月間のインキュベーション期間の後、身体の露出部分での丘疹または紅斑性-鱗状プラークとして現れる。衛星性病変が存在し得る。時間とともに、丘疹はサイズが増加し、合体して、淡い中心部を有する斑を形成する。数ヶ月後、斑の多くは淡色になる、または病変の中心部でより目立つ色を伴って薄青色の/灰色を帯びた色素沈着を得る。初期病変は、治癒し得、わずかに色素沈着したもしくは淡色のエリアを残す、または数年間存続し、二次病変と区別できなくなり得る。局所リンパ節腫脹は、このステージでよく見られる。数ヶ月または数年後、小さな播種性の二次病変(ピンチド(pintid)と呼ばれる)が、乾癬状プラークにおいて再度拡大しかつ合体するであろう落屑性丘疹の形態で出現し得る。これらのプラークは、低または高色素性、ならびに紅斑性または剥離性になり得る。異なるタイプのピンチドが、同じ個体において同時に存在し得る。このステージは通常2~4年間続き、その間、一部の斑は治癒し、他は存続しかつ拡大するであろう。後期ステージは、通常、初期感染の2~4年後に発症し、色素変化、皮膚萎縮、および過角化の出現によって特徴付けられる。
【0139】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μg/ml、またはそれを上回る濃度であり得る。
【0140】
他の適応症
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、頭頸部(レミエール症候群、急性および慢性乳様突起炎、慢性耳炎および副鼻腔炎、扁桃炎、扁桃周囲および咽後膿瘍、扁桃炎後(postanginal)頸部リンパ節炎、歯周炎)、脳、肺、腹部、骨盤、骨、関節、および血液の感染症を含めた、Fusobacterium nucleatum関連感染症および膿瘍を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0141】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、心血管疾患を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。F.nucleatumは心血管疾患(CVD)に関わっている。それは、アテローム動脈硬化性プラークにおいて高頻度に検出され、破裂性脳動脈瘤において検出される最もよく見られる歯周病原体の1種でもある。
【0142】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、脳動脈瘤を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatum関連脳動脈瘤を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0143】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、レミエール症候群を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatum関連レミエール症候群を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0144】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、呼吸器感染症を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatum関連呼吸器感染症を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0145】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、臓器膿瘍を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatum関連臓器膿瘍を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0146】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、関節リウマチを治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatum関連関節リウマチを治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0147】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、アルツハイマー病を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、本開示の治療剤は、Fusobacterium nucleatum関連アルツハイマー病を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。
【0148】
共感染症および併存症
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、付加的な細菌感染症を有する対象を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。一部の実施形態において、対象は、Tannerella forsythia、Porphyromonas gingivalis、およびStreptococcusと関連した疾患を有し得る。
【0149】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、併存症を有する対象を治療する、阻止する、または管理するために使用され得る。非限定的な例として、併存症は、糖尿病(1型または2型)、心疾患、および/または高血圧、SARS-CoV-2感染症(例えば、COVID-19)であり得る。
【0150】
IV.製剤
一部の実施形態において、治療剤は、ヒト、ヒト患者または対象に投与され得る。本開示の目的上、「活性成分」という語句は、概して、本明細書に記載されるように送達される対象となる治療剤を指す。
【0151】
本明細書において提供される製剤の説明は、ヒトへの投与に適切である製剤を主として対象とするものの、そのような治療剤は、任意の他の動物への、例えば非ヒト動物、例えば非ヒト哺乳類への投与に一般的に適切であることが当業者によって理解されるであろう。治療剤を様々な動物への投与にとって適切にするための、ヒトへの投与に適切な製剤の改変は十分に理解されており、通常の技能を有する獣医薬理学者であれば、たとえあったとしても単に通常の実験を用いて、そのような改変を設計し得かつ/または実施し得る。製剤の投与が企図される対象は、ヒトおよび/もしくは他の霊長類;畜牛、豚、馬、羊、猫、犬、マウス、および/もしくはラット等の商業的に関連する哺乳類を含めた哺乳類;ならびに/または家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/もしくは七面鳥等の商業的に関連する鳥類を含めた鳥類を含むが、それらに限定されるわけではない。
【0152】
本明細書に記載される治療剤の製剤は、薬理学の分野において公知のまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般的に、そのような準備の方法は、活性成分を賦形剤および/または1種もしくは複数の他の補助的成分と会合させる工程、ならびに次いで、必要でかつ/または望ましい場合には、産物を所望の単一もしくは複数の用量単位に分割し、成形し、かつ/もしくはパッケージする工程を含む。
【0153】
本開示に従った製剤は、バルクで、単一単位用量として、および/または複数の単一単位用量として調製され得、パッケージされ得、かつ/または販売され得る。本明細書において使用するとき、「単位用量」とは、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、一般的に、対象に投与されるであろう活性成分の投薬量、および/または例えばそのような投薬量の2分の1もしくは3分の1等、そのような投薬量の好都合な分数に等しい。
【0154】
本開示に従った製剤における活性成分、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意の付加的な成分の相対量は、治療される対象の素性、サイズ、および/または条件に応じて、ならびに製剤が投与されることになる経路にさらに応じて変動するであろう。例として、製剤は、0.1%~100%、例えば.5~50%、1~30%、5~80%、または一部の実施形態では、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、もしくは少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0155】
本開示の治療剤は、(1)安定性を増加させる;(2)持続または遅延放出を可能にする;(3)生体内分布を変更する;(4)インビボにおける治療剤の放出プロファイルを変更するために、1種または複数の賦形剤を使用して製剤化され得る。賦形剤の非限定的な例は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁支援物質、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、および防腐剤を含む。本開示の賦形剤は、限定されることなく、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コア-シェル型ナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣体、およびその組み合わせも含み得る。
【0156】
一部の実施形態において、本開示の医薬組成物または製剤は、細胞、細胞の群、臓器または組織、動物またはヒトに1種または複数の治療剤の規定投薬量を送達するように適応し得る。医薬調製物に治療剤を組み入れる方法は、当技術分野において広く公知である。所望の生物学的成果を達成するために医薬製剤に含めるための、薬理学的活性化合物の適当な規定投薬量の決定は、当業者の技能のレベル内にある。医薬製剤は、限定されることなく、結合剤、コーティング、崩壊剤、充填剤、希釈剤、香味料、着色料、潤滑剤、滑剤、防腐剤、吸着剤、甘味料、共役リノール酸(CLA)、ゼラチン、蜜ろう、精製水、グリセロール、限定されることなく魚油または大豆油等を含めた任意のタイプの油等、賦形剤を含み得る。治療剤および/または医薬製剤は、適切な固形またはゲル相の担体または賦形剤を含み得る。そのような担体または賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、および例えばポリエチレングリコール等のポリマーを含むが、それらに限定されるわけではない。該用語は、2種以上の薬理学的活性化合物の混和物を含有するそうした治療剤および/または医薬製剤も包含し、そのような化合物は、例えば併用療法として投与されることが、当業者によってさらに解されるであろう。
【0157】
本開示に従った医薬製剤は、バルクで、単一単位用量として、および/または複数の単一単位用量として調製され得、パッケージされ得、かつ/または販売され得る。本明細書において使用するとき、「単位用量」とは、所定量の治療剤または他の化合物を含む医薬製剤の個別の量を指す。治療剤の量は、一般的に、対象に投与される治療剤の投薬量、および/またはそのような投薬量の2分の1もしくは3分の1を含むがそれらに限定されない、そのような投薬量の好都合な分数に等しくあり得る。
【0158】
一部の実施形態において、本開示の治療剤は、歯磨き粉、洗口液、歯茎マッサージクリーム、可食フィルム、またはデンタルフロスとして製剤化され得る。
【0159】
賦形剤
製剤は、本明細書において使用するとき、望まれる特定の剤形に適した、ありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁支援物質、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤、固形結合剤、潤滑剤等を含む薬学的に許容される賦形剤を付加的に含み得る。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy、第21編、A.R.Gennaro(Lippincott,Williams&Wilkins、Baltimore、MD、2006;参照によりその全体として本明細書に組み入れられる)は、医薬組成物を製剤化する際に使用される様々な賦形剤、およびその調製のための公知の技法を開示する。任意の望ましくない生物学的効果を生み出す、または医薬組成物の任意の他の構成要素と有害な様式で別様に相互作用する等によって、任意の従来の賦形剤媒体が物質またはその誘導体と不適合でない限り、その使用は、本開示の範囲内にあることが企図される。
【0160】
一部の実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%純粋である。一部の実施形態において、賦形剤は、ヒトにおける使用におよび獣医学的使用に承認される。一部の実施形態において、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認される。一部の実施形態において、賦形剤は薬学的グレードである。一部の実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、および/または国際薬局方の基準を満たす。
【0161】
医薬組成物の製造において使用される薬学的に許容される賦形剤は、不活性希釈剤、分散剤および/もしくは造粒剤、表面活性剤および/もしくは乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、潤滑剤、ならびに/または油を含むが、それらに限定されるわけではない。そのような賦形剤は、医薬組成物に任意選択で含まれ得る。
【0162】
例示的な希釈剤は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、トウモロコシデンプン、粉砂糖等、および/またはその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0163】
例示的な造粒剤および/または分散剤は、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、シトラスパルプ、寒天、ベントナイト、セルロースおよび木材産物、天然スポンジ、カチオン交換樹脂、炭酸カルシウム、シリケート、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニル-ピロリドン)(クロスポビドン)、ナトリウムカルボキシメチルデンプン(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(スターチ1500)、微結晶デンプン、非水溶性デンプン、カルシウムカルボキシメチルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(VEEGUM(登録商標))、ラウリル硫酸ナトリウム、第4級アンモニウム化合物等、ならびに/またはその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0164】
例示的な表面活性剤および/または乳化剤は、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、およびレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]およびVEEGUM(登録商標)[ケイ酸アルミニウムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン(triacetin monostearate)、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、およびモノステアリン酸プロピレングリコール、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、およびカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[TWEEN(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[TWEENn(登録商標)60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[TWEEN(登録商標)80]、ソルビタンモノパルミテート[SPAN(登録商標)40]、ソルビタンモノステアレート[SPAN(登録商標)60]、ソルビタントリステアレート[SPAN(登録商標)65]、グリセリルモノオレエート、ソルビタンモノオレエート[SPAN(登録商標)80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート[MYRJ(登録商標)45]、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシ化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、およびSOLUTOL(登録商標))、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、CREMOPHOR(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル、(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[BRIJ(登録商標)30])、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、PLUORINC(登録商標)F 68、POLOXAMER(登録商標)188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドクサートナトリウム等、および/またはその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0165】
例示的な結合剤は、デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびデンプン糊);ゼラチン;糖類(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然および合成ゴム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモスの抽出物、パンワル(panwar)ゴム、ガッチゴム、イサポール(isapol)外皮の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum(登録商標))、およびカラマツアラビノガラクタン(arabogalactan));アルギネート;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート;ワックス;水;アルコール;等;ならびにその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0166】
例示的な防腐剤は、抗酸化物質、キレート剤、抗微生物性防腐剤、抗真菌性防腐剤、アルコール防腐剤、酸性防腐剤、および/または他の防腐剤を含み得るが、それらに限定されるわけではない。例示的な抗酸化物質は、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および/または亜硫酸ナトリウムを含むが、それらに限定されるわけではない。例示的なキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、ナトリウムエデテート(sodium edetate)、酒石酸、および/またはエデト酸三ナトリウムを含む。例示的な抗微生物性防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、および/またはチメロサールを含むが、それらに限定されるわけではない。例示的な抗真菌性防腐剤は、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、および/またはソルビン酸を含むが、それらに限定されるわけではない。例示的なアルコール防腐剤は、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート、および/またはフェニルエチルアルコールを含むが、それらに限定されるわけではない。例示的な酸性防腐剤は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータ-カロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、および/またはフィチン酸を含むが、それらに限定されるわけではない。他の防腐剤は、トコフェロール、酢酸トコフェロール、デテロキシムメシレート(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(hydroxytoluened)(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、GLYDANT PLUS(登録商標)、PHENONIP(登録商標)、メチルパラベン、GERMALL(登録商標)115、GERMABEN(登録商標)II、NEOLONE(商標)、KATHON(商標)、および/またはEUXYL(登録商標)を含むが、それらに限定されるわけではない。
【0167】
例示的な緩衝剤は、クエン酸塩緩衝溶液、酢酸塩緩衝溶液、リン酸塩緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、リン酸水素カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、リン酸水酸化カルシウム(calcium hydroxide phosphate)、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱物質不含水、等張生理食塩水、リンゲル溶液、エチルアルコール等、および/またはその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0168】
例示的な潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、モルト、ベヘン酸グリセリル、水添植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム等、およびその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0169】
例示的な油は、アーモンド、アプリコットカーネル、アボカド、ババス、ベルガモット、ブラックカシス(current)種子、ルリジサ、杜松、カモミール、キャノーラ、キャラウェイ、カルナウバロウ、ヒマシ、桂皮、ココアバター、ココナッツ、タラ肝、コーヒー、トウモロコシ、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、アマニ、ゲラニオール、ウリ、ブドウ種子、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイナッツ、ラバンジン、ラベンダー、レモン、リツエアクベバ、マカダミア(macademia)ナッツ、ゼニアオイ、マンゴー種子、メドウフォーム種子、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィー、ヤシ、パーム核、トウニン、落花生、ケシの実、カボチャ種子、菜種、米ぬか、ローズマリー、サフラワー、ビャクダン、サスクアナ(sasquana)、セイボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、大豆、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、および小麦胚芽油を含むが、それらに限定されるわけではない。例示的な油は、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、および/またはその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0170】
考案者の判断に従って、ココアバターおよび座薬ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、ならびに/または芳香剤等の賦形剤が組成物に存在し得る。
【0171】
V.投薬および投与
一部の実施形態において、治療剤、および/または治療剤を含む医薬製剤は、1種または複数の投与経路に従って投与され得る。一部の実施形態において、投与は、腸内(腸の中へ)、経皮、静脈内ボーラス、病変内(限局性病変の中へ、または限局性病変に直接導入される)、肺内(肺またはその気管支の中へ)、診断的、眼内(目の中へ)、経鼓膜(鼓室を越えてまたは通じて)、膀胱内注入、舌下、経鼻胃(鼻を通じてかつ胃の中へ)、脊髄、軟骨内(軟骨の中へ)、通気(鼻から吸い込む)、直腸、血管内(1本または複数の血管の中へ)、頬側(頬へ向けた)、歯科的(1本または複数の歯へ)、精巣内(精巣の中へ)、鼓室内(中耳(aurus media)の中へ)、経皮的、胸腔内(胸部の中へ)、粘膜下、皮膚、皮表(皮膚上への適用)、歯冠内(dental intracornal)、髄内(骨の髄腔の中へ)、腹部内、硬膜外(硬膜へ)、筋肉内(筋肉へ)、リンパ管内(リンパ液の中へ)、イオントフォレシス(可溶性塩のイオンが身体の組織内に移動する電流による)、皮下(皮膚の下へ)、胃内(胃の中へ)、鼻腔投与(鼻を通じて)、経膣、静脈内点滴、洞内、前立腺内(前立腺の中へ)、軟部組織、硬膜内(硬膜の中または下へ)、結膜下、経口(口経由で)、硬膜周囲、非経口、十二指腸内(十二指腸の中へ)、嚢内(大槽小脳延髄(cisterna magna cerebellomedularis)の中へ)、歯周、関節周囲、胆管灌流、冠動脈内(冠動脈の中へ)、髄腔内(脳脊髄軸の任意のレベルで脳脊髄液の中へ)、髄膜内(髄膜の中へ)、海綿体内注射(病的腔の中へ)、腔内(陰茎の基部の中へ)、胆管内、クモ膜下、内包内(intrabursal)、尿管(尿管へ)、腱内(腱の中へ)、耳(耳においてまたは経由で)、心内(心臓の中へ)、浣腸、表皮内(表皮へ)、心室内(心室の中へ)、心筋内(心筋の中へ)、管内(臓器の細管の中へ)、膣、唇下、陰茎海綿体内(intracorporus cavernosum)(陰茎の海綿体(corporus cavernosa)の膨張性空間の中へ)、皮内(皮膚それ自体の中へ)、硝子体内(目を通じて)、神経周囲、心灌流、灌注(開放創または体腔を浸すまたは洗い流す)、点耳で、気管内、骨内注入(骨髄の中へ)、仙骨麻酔、子宮内、経気管(気管の壁を通じて)、関節内、角膜内(角膜の中へ)、頸管内、体外、脊髄内(脊柱の中へ)、経粘膜(粘膜を通じた拡散)、局所、フォトフェレーシス(photopheresis)、口腔咽頭(口および咽頭へ直接的に)、閉鎖包帯技法(局所経路投与、次いでそれは、エリアを閉鎖する包帯によって覆われる)、経胎盤(胎盤を通じてまたは越えて)、心膜内(心膜の中へ)、動脈内(動脈の中へ)、間質性、大脳内(大脳の中へ)、脳室内(脳室の中へ)、胸膜内(胸膜の中へ)、浸潤、気管支内、鼻内(鼻または眼窩周囲副鼻腔の中へ)、導管内(腺の導管の中へ)、尾骨内(馬尾の中へ)、神経ブロック、球後(橋の後方または眼球の後方)、静脈内(静脈の中へ)、羊膜内、結膜、滑液嚢内(関節の滑液腔の中へ)、胃腸、管腔内(管の内腔の中へ)、電気浸透、回腸内(小腸の遠位部の中へ)、食道内(食道へ)、羊膜外投与、血液透析、歯肉内(歯肉の中へ)、腫瘍内(腫瘍の中へ)、点眼(結膜の上へ)、喉頭(喉頭の上へ直接的に)、尿道(尿道へ)、膣内投与、腹腔内(腹膜への注入または注射)、呼吸性(限局性または全身性効果のために、経口でまたは鼻で吸入することによって気道の中へ)、椎間板内(椎間板の中へ)、眼科的(外眼部へ)、および/または卵巣内(卵巣の中へ)である。
【0172】
一部の実施形態において、治療剤、および/または治療剤を含む医薬製剤は、関節内投与、体外投与、気管支内投与、頸管内投与、副鼻腔内(endosinusial)投与、気管内投与、腸内投与、硬膜外投与、腹部内投与、胆管内投与、滑液包内投与、口腔咽頭投与、間質性投与、心内投与、軟骨内投与、尾骨内投与、海綿体内投与、大脳内投与、陰茎海綿体内、腔内投与、角膜内投与、嚢内投与、頭蓋投与、頭蓋内投与、皮内投与、病変内投与、鼓室内投与、歯肉内投与、眼内投与、椎間板内投与、導管内投与、十二指腸内投与、眼科的投与、硬膜内投与、表皮内投与、食道内投与、経鼻胃投与、鼻腔投与、喉頭投与、心室内投与、胃内投与、肝内投与、管腔内投与、硝子体内投与、小胞内投与、リンパ管内投与、乳房内投与、髄内投与、鼻内投与、髄膜内投与、節内投与、卵巣内投与、腹腔内投与、胸膜内投与、前立腺内投与、管腔内投与、脊髄内投与、滑液嚢内投与、腱内投与、精巣内投与、結膜下投与、脳室内投与、皮表投与、静脈内投与、球後投与、関節周囲投与、胸腔内投与、クモ膜下投与、管内投与、歯周投与、経鼓膜投与、経気管投与、腫瘍内投与、膣投与、尿道投与、子宮内投与、経口投与、胃腸投与、非経口投与、舌下投与、尿管投与、経皮的投与、硬膜周囲投与、経粘膜投与、神経周囲投与、経皮投与、直腸投与、軟部組織投与、動脈内投与、皮下投与、局所投与、羊膜外投与、点耳、または膀胱内注入によって投与され得る。
【0173】
本開示の治療剤および/または医薬製剤は、経口投与され得るが、本明細書に記載される化学的組成物の薬物の有効投薬量を対象に提供するために、任意の適切な投与の経路が採用され得る。例えば、経口、直腸、局所、非経口、眼、肺、鼻等が採用され得る。剤形は、錠剤、トローチ、分散体、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾル等を含む。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物は経口投与されることが有利であり得る。
【0174】
本開示の治療剤および/または医薬製剤は、それらが活性である任意の経路によって従来の様式で投与され得る。投与は、全身性、非経口、局所、または経口であり得る。例えば、投与は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、経口、頬側、もしくは眼の経路、または膣内に、吸入による、デポー注射による、もしくは埋め込みによるものであり得るが、それらに限定されるわけではない。ゆえに、本開示の組成物の投与の様態(単独での、または他の医薬品との組み合わせでの)は、舌下、注射物質(皮下にまたは筋肉内に注射される、短時間作用型、デポー、埋め込み、およびペレット形態を含む)、または膣クリーム、座薬、ペッサリー、膣リング、直腸座薬、子宮内デバイス、ならびにパッチおよびクリーム等の経皮形態の使用によるものであり得るが、それらに限定されるわけではない。
【0175】
吸入または鼻腔内による投与に関して、医薬製剤は、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾル噴霧提示の形態で送達され得る。化合物は、クリーム、液体、噴霧、粉末、または座薬の形態でも送達され得る。製剤の計量された用量は、製剤の貯蔵庫から提供され得る。加えて、所定投薬量が提供され得、例えば座薬形態は、所定投薬量を有する形で、鼻への挿入のために提供され得る。投薬量を投与するための調製された剤形および使用説明書が含まれるキットが提供され得る。
【0176】
本実施形態における使用のための適切な局所製剤は、経皮デバイス、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション、散粉剤、ゲル等も含み得る。
【0177】
投薬
本明細書に記載される治療剤および/または医薬製剤は、疾患、障害、および/または病態を治療するのに有効な任意の量および任意の投与の経路を使用して対象に投与され得る。要される正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、疾患の重症度、特定の製剤、その投与の様態、その活性の様態等に応じて、対象ごとに変動するであろう。
【0178】
一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、約0.01μg/ml~約100μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、治療剤は、約0.01~約0.05μg/ml、約0.05μg/ml~約1.0μg/ml、約1.0μg/ml~約10μg/ml、約10μg/ml~約50μg/ml、約50μg/ml~約100μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、約1μg/ml~約5μg/ml、約5μg/ml~約10μg/ml、約10μg/ml~約20μg/ml、約20μg/ml~約30μg/ml、約30μg/ml~約40μg/ml、約40μg/ml~約50μg/ml、約50μg/ml~約60μg/ml、約60μg/ml~約70μg/ml、約70μg/ml~約80μg/ml、約80μg/ml~約90μg/ml、約90μg/ml~約100μg/mlの濃度で対象に提供され得る。
【0179】
一部の実施形態において、ハイグロマイシンAの濃度は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μg/ml、またはそれを上回る濃度であり得る。
【0180】
一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、0.05μg/mlの濃度で対象に提供され得る。
【0181】
一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、0.06μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、0.12μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、0.24μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、0.48μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、0.96μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、1.92μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、3.84μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、0.1μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、0.2μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、0.5μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、1.0μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、2.0μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、5.0μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、10μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、20μg/mlの濃度で対象に提供され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される治療剤は、40μg/mlの濃度で対象に提供され得る。
【0182】
一部の実施形態において、本開示の治療剤および/または医薬製剤は、1種または複数の用量で提供され、対象に1回または複数の回数投与される。一部の治療剤および/または医薬製剤は、単回の投与のみで提供される。一部の治療剤および/または医薬製剤は、2回以上の投与を含む投薬スケジュールに従って投与される。各投与は、同じ用量であり得る、または以前のおよび/もしくは後続の用量とは異なり得る。一部の実施形態において、対象は、後続の用量よりも高い初回用量を提供される(本明細書において「負荷用量」と称される)。一部の実施形態において、用量は、投与のコースにわたって減少する。一部の実施形態において、投薬スケジュールは、約2時間ごと~約10時間ごと、約4時間ごと~約20時間ごと、約6時間ごと~約30時間ごと、約8時間ごと~約40時間ごと、約10時間ごと~約50時間ごと、約12時間ごと~約60時間ごと、約14時間ごと~約70時間ごと、約16時間ごと~約80時間ごと、約18時間ごと~約90時間ごと、約20時間ごと~約100時間ごと、約22時間ごと~約120時間ごと、約24時間ごと~約132時間ごと、約30時間ごと~約144時間ごと、約36時間ごと~約156時間ごと、約48時間ごと~約168時間ごと、約2日ごと~約10日ごと、約4日ごと~約15日ごと、約6日ごと~約20日ごと、約8日ごと~約25日ごと、約10日ごと~約30日ごと、約12日ごと~約35日ごと、約14日ごと~約40日ごと、約16日ごと~約45日ごと、約18日ごと~約50日ごと、約20日ごと~約55日ごと、約22日ごと~約60日ごと、約24日ごと~約65日ごと、約30日ごと~約70日ごと、約2週間ごと~約8週間ごと、約3週間ごと~約12週間ごと、約4週間ごと~約16週間ごと、約5週間ごと~約20週間ごと、約6週間ごと~約24週間ごと、約7週間ごと~約28週間ごと、約8週間ごと~約32週間ごと、約9週間ごと~約36週間ごと、約10週間ごと~約40週間ごと、約11週間ごと~約44週間ごと、約12週間ごと~約48週間ごと、約14週間ごと~約52週間ごと、約16週間ごと~約56週間ごと、約20週間ごと~約60週間ごと、約2ヶ月ごと~約6ヶ月ごと、約3ヶ月ごと~約12ヶ月ごと、約4ヶ月ごと~約18ヶ月ごと、約5ヶ月ごと~約24ヶ月ごと、約6ヶ月ごと~約30ヶ月ごと、約7ヶ月ごと~約36ヶ月ごと、約8ヶ月ごと~約42ヶ月ごと、約9ヶ月ごと~約48ヶ月ごと、約10ヶ月ごと~約54ヶ月ごと、約11ヶ月ごと~約60ヶ月ごと、約12ヶ月ごと~約66ヶ月ごと、約2年~約5年、約3年~約10年、約4年~約15年、約5年~約20年、約6年~約25年、約7年~約30年、約8年~約35年、約9年~約40年、約10年~約45年、約15年~約50年、または50年ごとを上回る間隔の医薬製剤投与を含む。
【0183】
所望の投薬量は、約5日間~365日間、約5日~300日、約5日~300日、約5日~250日、約5日~200日、約5日~100日、約5日~60日、約日~30日、約5日~14日、または約3日~7日、好ましくは約21日間~28日間の継続期間送達され得る。
【0184】
一部の実施形態において、本明細書に記載される製剤の所望の投薬量は、毎日1回または1日に複数回投与され得る。例えば、治療レジメンは、毎日2回10mg/kg体重、毎日2回20mg/kg体重、毎日1回50mg/kg体重、毎日3回10mg/kg体重、毎日4回20mg/kg体重、または毎日2回50mg/kg体重を送達するのに十分な投薬量レベルを投与する工程を含み得る。
【0185】
パルス投薬
一部の実施形態において、対象は、本開示の治療剤および/または医薬製剤のパルス投薬を投与され得る。本明細書において使用するとき、「パルス」とは、引き離された時間間隔での複数回の投薬を指す。一般的に、第1の投薬の投与があると、細菌の成長は阻害され得、遅滞し得、かつ/または細菌は殺滅され得る。第1の投薬の後、細菌レベルは増加し得;第2の投薬が開始され得る。それゆえ、細菌の根絶は、数ラウンドのパルス投薬によって達成され得る。非限定的な例として、パルス投薬スケジュールは、5日間の医薬製剤の投与を含む第1ラウンドの投薬、約24時間の回復の期間を配分すること、それに続く第2ラウンドの投薬を含み得る。それぞれ5日間の付加的ラウンドの投薬(例えば、第3および第4ラウンドの投薬)が、各ラウンドの投薬の間の24時間の回復期間の後に組み入れられ得る。一部の実施形態において、パルス投薬スケジュールは、約2時間ごと~約10時間ごと、約4時間ごと~約20時間ごと、約6時間ごと~約30時間ごと、約8時間ごと~約40時間ごと、約10時間ごと~約50時間ごと、約12時間ごと~約60時間ごと、約14時間ごと~約70時間ごと、約16時間ごと~約80時間ごと、約18時間ごと~約90時間ごと、約20時間ごと~約100時間ごと、約22時間ごと~約120時間ごと、約24時間ごと~約132時間ごと、約30時間ごと~約144時間ごと、約36時間ごと~約156時間ごと、約48時間ごと~約168時間ごと、約2日ごと~約10日ごと、約4日ごと~約15日ごと、約6日ごと~約20日ごと、約8日ごと~約25日ごと、約10日ごと~約30日ごと、約12日ごと~約35日ごと、約14日ごと~約40日ごとの医薬製剤投与を含む。
【0186】
VI.定義
投与する:「投与する」、「投与」、「投与すること」等の用語は、治療剤と併せて使用される場合、対象に治療剤を送達し、それによって治療剤がプラスの影響を与える、すなわち、それが標的にする対象または組織または臓器に対する治療効果を有することを意味する。本明細書に記載される治療剤は、単独でもしくは組み合わせで(並行してまたは連続的に)、かつ/または他の医薬品とともに投与され得る。例えば、治療剤は、ワクチン、抗生物質、抗ウイルス剤、抗がん剤、もしくは抗新生物剤との組み合わせで、または薬草療法、鍼療法、自然療法等の他の治療法との組み合わせで投与され得る。
【0187】
有効量:本明細書において使用される「有効量」という用語は、概して、疾患を減少させる、阻止する、または阻害するために投与される、治療剤の量を指す。量は、各化合物に対して、かつ治療剤が適用される品目または使用に関係した既知の因子次第で変動するであろう。
【0188】
モジュレーション:「モジュレーション」という用語は、応答の上方調節(すなわち、活性化または刺激)、下方調節(すなわち、阻害または抑制)、または組み合わせでのもしくは別々での二者を指す。
【0189】
薬学的に許容される:本明細書において使用される「薬学的に許容される」という用語は、米国食品医薬品局等の機関のガイドラインに従った、妥当な有益性/リスク比と釣り合う、過度の毒性、炎症、アレルギー応答、もしくは他の問題、または合併症のない、人間および動物の組織と接触した使用に適切な、健全な医学的判断の範囲内にある、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」とは、インビボにおける組成物の送達を促す医薬製剤のすべての構成要素を指す。薬学的に許容される担体は、希釈剤、防腐剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、膨張剤、充填剤、安定剤、およびその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0190】
対象:「対象」は、既存の疾患、障害、病態の治療、または疾患、障害、もしくは病態の発生を阻止するための予防のため等の医学的目的のためのヒト対象、あるいは医学、獣医学目的または開発目的のための動物対象を含み得る。適切な動物対象は、霊長類、例えばヒト、サル、類人猿、テナガザル、チンパンジー、オラウータン、マカク等;ウシ、例えば畜牛、雄牛等;ヒツジ、例えば羊等;ヤギ、例えば山羊等;ブタ、例えば豚、成豚等;ウマ科、例えば馬、ロバ、シマウマ等;野生のおよび家の猫を含めたネコ科;犬を含めたイヌ科;ウサギ、野ウサギ等を含めたウサギ目;ならびにマウス、ラット、モルモット等を含めた齧歯類を含むがそれらに限定されない哺乳類を含む。動物はトランスジェニック動物であり得る。一部の実施形態において、対象は、胎児、新生児、幼児、若年者、および成人対象を含むがそれらに限定されないヒトである。さらに、「対象」は、疾患、障害、または病態に罹患したまたは罹患する疑いのある患者を含み得る。ゆえに、「対象」および「患者」という用語は、本明細書において互換可能に使用される。対象は、動物疾患モデル(例えば、実験において使用されるラットまたはマウス等)も含む。
【0191】
治療剤:本明細書において使用するとき、「治療剤」という用語は、対象の健康および/もしくは幸福を元に戻すもしくは促進するために、ならびに/または疾患、障害、もしくは病態を治療する、阻止する、緩和する、治す、もしくは診断するために使用される任意の物質を指す。
【0192】
治療または治療すること:「治療」、「治療すること」等の用語は、障害の病理または症状を変更する意図をもって実施される介入を指す。一部の実施形態において、治療は療法的治療のためのものである。治療を必要とする者は、すでに障害を有する者を含み得る。一部の実施形態において、治療は実験的治療のためのものである。
【0193】
阻止すること:本明細書において使用される「阻止すること」という用語は、障害、疾患、もしくは病態、または障害、疾患、もしくは病態と関連した症状を得る機会を減少させるために実施される介入を指す。
【0194】
本開示の1つまたは複数の実施形態についての詳細は、下の添付の説明に明記される。本明細書に記載されるものと同様のまたは均等の任意の材料および方法が、本開示の実践または試験において使用され得るものの、好ましい材料および方法がここに記載される。本開示の他の特質、目的、および利点は、説明から明らかであろう。説明において、単数形形態は、文脈が別様にはっきりと指示しない限り、複数形も含む。別様に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、本説明が制御するであろう。
【0195】
本開示は、以下の非限定的な実施例によってさらに例示される。
【実施例
【0196】
実施例1 実験概要:ハイグロマイシンA(Hyg A)に対するTreponema denticola感度についてアッセイする
「実験室」および「臨床単離株」系統の両方を含めた、T.denticola系統の代表的な群についての最小阻害濃度(MIC)および最小殺細菌濃度(MBC)の両方によって決定されるHyg A感度。試験された系統は、相当な、から本質的に無し、まで変動する特徴付けのレベルを有する。対照および比較目的のために、口腔微生物叢に存在する広範囲の細菌門を代表するいくつかの口腔細菌種のHyg A感度を、並列に試験した。本質的にすべての口腔微生物は、天然に存在する「片利共生生物」であるが、数種は、特に、健常な状態に一般に見出されるものと比較して上昇したレベルで存在する場合、疾患(虫歯、歯肉炎、歯周炎)とより高度に関連している。本調査において、試験された系統は、Fusobacterium nucleatum(ATCC 25586)、Parvimonas micra(ATCC 33270)、およびPorphyromonas gingivalis(ATCC 33277)を含んだ。Treponema以外の選択された口腔細菌種に対するHyg AのMICおよびMBCを、下で文書化される改変を伴って、Wiegandら、2008(参照により本明細書に組み入れられる「Agar and broth dilution methods to determine the minimal inhibitory concentration(MIC) of antimicrobial substances.」Nat Protoc 3:163~75.10.1038/nprot.2007.521)によって記載される臨床・検査標準協会(Clinical and Laboratory Standards Institute)(CLSI)基準に従って決定した。これらの系統を、個々の種の成長に要される補給剤を有する標準的トリプトン酵母抽出物培地において、かつ適当な大気条件(嫌気性または5%CO2)の下で、37℃にて成長させた。
【0197】
Treponema denticola系統に対するハイグロマイシンA(Hyg A)の最小阻害濃度(MIC)および最小殺細菌濃度(MBC)を決定した。T.denticolaを、窒素、水素、および二酸化炭素(85:10:5比)からなる大気中で嫌気性チャンバー(Coy Laboratory Products、Grass Lake、MI)において37℃で成長させた。これらの条件下で、液体培地におけるT.denticola世代時間はおよそ12時間である。T.denticolaを、ポリスチレンチューブにおける成長と比較して、パラフィルムで密閉された蓋を有するディープ96ウェルポリスチレンプレート(ThermoScientific 278606;ウェル容積0.9ml)において成長させた。T.denticolaを、2.5%の熱失活した血清を含有するTYGVS培地において、嫌気性条件下で後期対数期まで成長させ(4日間)、次いで、広範なHyg A濃度を含有する5mlの新鮮な完全TYGVSにおいて1:20希釈し、嫌気性条件下で最高6日間モニターしてMICを決定した。0.01μg/ml~1.0μg/mlのHyg A濃度域を、初回調査に選択した。対照をすべての実験に含めた;具体的には、抗微生物薬なし(陰性対照)およびエリスロマイシン(40μg/ml;陽性対照)。すべての実験を三つ組サンプルを用いて行い、各実験を2回行った。
【0198】
実施例2 口腔微生物に対するハイグロマイシンAのMIC
本明細書において使用するとき、最小阻害濃度(MIC)とは、600nmにおける光学密度(OD600)の差(p≦0.05)によって示される、陰性対照と比較して目に見える成長を阻害する抗微生物薬の最低濃度を指す。
【0199】
フェノールレッドを使用して、T.denticola成長をモニターした。T.denticola培養物を、フェノールレッド(50μg/ml)および広範な濃度のHyg Aを含有するTYGVS培地において1:20希釈した。試験された初回濃度は、0、0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2、および5μg/mlであった。カナマイシン(100μg/ml)を陽性対照として含んだ。T.denticola 35405を用いた初回実験を、フェノールレッドの有無で二つ組で行って、ブロスにおける目に見える成長が、黄色から赤色へのフェノールレッド色変化と対応することを確認した(示されず)。アッセイを、ウェルあたり0.5mlの全容積/ウェルで96ウェルポリスチレンプレートにおいて行った。プレートを密閉して蒸発を阻止し、最高14日間嫌気的にインキュベートした。安定な結果を、7~10日間でTreponema系統に関して得た。インキュベーション条件および時間は、種に応じて変動した。例えば、S.salivariusを、24時間または4日間、5%CO2大気において成長させた。長期のインキュベーションは、10μg/mlから20μg/mlへの、この種に関するMICの増加をもたらした。
【0200】
インキュベーションの後、プレートを撮影した。結果を定量するために、0.1ml培養上清を平底96ウェルプレートに移し、Varioskan Flashプレートリーダー(Thermo Scientific)においてスキャンすることによって、A562/A630比を各ウェルに対して算出した。より高いA562/A630比の値ほど成長阻害を示す。
【0201】
抗生物質試験のための培養物の調製
T.denticola培養物を、TYGVSブロス培地において凍結ストックから成長させた。T.denticola以外の細菌を、ヘミンおよびビタミンK(ThermoScientific BD297848)を補給されたブルセラ血液寒天上で凍結ストックから成長させた。細胞完全性および形態学を、顕微鏡法(400×暗視野)によって検証した。OD600をすべての培養物に関して測定し、1/20容積ディープウェルプレート培養に要される培養容積を算出した(ウェルあたり900μl最終容積)。三つ組サンプルの各セットに関して、OD600 0.45培養物が最終容積の1/10であるように(すなわち、1.8mlのOD600=0.45培養物+16.2ml培地)、18ml最終容積の[培地+培養物]を調製し、適当に調整した。450μlの抗生物質含有指示培地(100μg/mlフェノールレッドを含有する)を、ディープ96ウェルプレートの適当なウェルに添加した。インキュベーションの後、吸光度をA562およびA630で測定した。
【0202】
P.gingivalisは酸性pHで成長することができず、ゆえにフェノールレッド色変化を検出し得なかった。それゆえ、成長をモニターし、OD600値の変化によっておよび暗視野顕微鏡法によって、ならびに接種時および数日間のインキュベーション後に細胞/視野を比較することの両方によって、MICを決定した。
【0203】
実施例3 T.denticolaおよび他の口腔微生物に対するハイグロマイシンAのMBCを決定する
MBCの決定に関しては、0.1mlの細菌サンプルを、MICと等価のおよびそれよりも高い抗微生物薬濃度を有するチューブから取り出し、TYGVSブロス培地において抗微生物薬の非存在下で培養した、または連続希釈し、TYGVS-ノーブル寒天プレート上にプレーティングした。個々のコロニーを単離しかつ/またはCFUを決定するために、T.denticolaを、低融点寒天調合物において適当な希釈でプレーティングし、表面下コロニーが形成されるまで1~2週間インキュベートした。MBCを、所与の時間内に細菌の少なくとも99.9%を殺滅するHyg Aの最低濃度として定義した。>4のMBC/MIC比は静細菌効果を示し、一方で<4のMBC/MIC比は、殺細菌効果を示す(Pankeyら、2004.Clin Infect Dis 38:864~70.10.1086/381972;その内容は、参照によりその全体として本明細書に組み入れられる、を参照されたい)。
【0204】
T denticolaに関しては、2ml/ウェルのTYGVS 0.8%ノーブル寒天+5%HIHS、リファンピシン4ug/ml、ホスホマイシン(fosfomicin)100μg/mlの補給剤を有する単一の24ウェルプレートを調製した。ディープ96ウェルMICプレートの各ウェルの底からの5μl培養物を、24ウェルプレートの固形培地に突き刺した。プレートを少なくとも1週間インキュベートし(37℃、嫌気性)、成長の存在または非存在を記録した。P.micra、S.salivarius、F.nucleatum、およびP.gingivalisに関しては、3~5μlの培養物を、MICの、MICを上回る、および/または下回る濃度で、各三つ組ウェルから、ブルセラ血液寒天プレート+ヘミンおよびビタミンK上にスポットした。培養物を37℃でインキュベートし(必要に応じて、嫌気性または5%CO2)、成長の存在または非存在を記録した。
【0205】
下の表1は、MICおよびMBC結果、ならびにMIC対MBCの比を要約する。
【0206】
【表1】
【0207】
この調査は、Treponema denticola系統に関するMIC値が、0.5μg/ml(0.2~1.0μg/ml)の域内でかなり一貫していることを明らかにした。タイプ系統(ATCC 35405)が、最も感度が高かった(MIC=0.2μg/ml)。別のATCC系統(35404)は、それほど感度が高くなかった(0.5~5μg/ml)。低継代の臨床単離株のHyg A感度は、0.2μg/ml(系統ASLM)から1μg/ml(系統SP44)まで変動した。確立された実験室系統と比較的低継代の臨床単離株との間に明らかなバイアスはなかった。興味深いことに、ATCC 35404は、Hyg Aの最も耐性が高い系統であった(MICおよびMBC=5μg/ml)。すべてのT.denticola系統に関するMBC/MICの比は、平均すると2.3であり、Hyg Aの効果が殺細菌性であることを示唆した。
【0208】
試験された他の口腔細菌種のほとんどは、Hyg Aの効果に対して、T.denticolaよりも著しく抵抗性が高かった。一般的に、グラム陽性系統は、グラム陰性よりもHyg Aについて耐性が高かった。Fusobacterium nucleatum ATCC 25586は、およそ1μg/ml(MICおよびMBC)で最も感度が高かった。全体として、Streptococcus salivarius ATCC13419は、10μg/ml(MICおよびMBC)で最も耐性が高かった。Parvimonas micra ATCC 33270は、2μg/mlという比較的低いMIC値を有したが、そのMBC値は>10μg/mlであった。このグラム陽性嫌気性生物の代謝に関しては、比較的ほとんど知られていない。これらのデータは、Hyg Aが、P.micraに対して静細菌性であり、試験された他の系統に対して殺細菌性であったことを示唆する。
【0209】
実施例4 Fusobacterium nucleatum系統に対するカービー・バウアー拡散アッセイ
合計18系統に対するFusobacterium nucleatum(F.nucleatum)の6種の亜種を代表する3種を、実験において試験した。亜種および系統は、表2に記載される。
【0210】
【表2】
【0211】
すべての系統を、使用前に16S V3/V6配列分析によって検証した。本明細書に記載される方法を、37℃で嫌気性チャンバーにおいて実施した。すべての培地およびプレートを、使用前に脱気した。
【0212】
蒸留水にハイグロマイシンA(Hyg A)を可溶化しかつ滅菌濾過することによって、Hyg Aディスクを調製した。クリンダマイシンを陽性対照として使用した。規定量のハイグロマイシンA(40、20、10、または5マイクログラム)、クリンダマイシン(2マイクログラム)、または滅菌蒸留水を、バイオセーフティーキャビネットにおいてカービー・バウアーディスクに吸収させた。
【0213】
一晩の培養物をウィルキンス・チャルグレン(WC)ブロスにおいて成長させ、新鮮なブロスにおいて1:10バック希釈した。OD600読み取りが0.5に達した時点で、300μLの対数期培養物をWC寒天プレート上にプレーティングした。プレートを四分円に区分し、規定量のハイグロマイシンAを含浸したカービー・バウアー(KB)ディスクを各四分円に置いた。プレートをこのようにして三つ組で調製し、4種の量のハイグロマイシンAは、40、20、10、および5マイクログラムであった。3つの陽性および3つの陰性対照のための6つの区分に区分された第4のプレート上に、同じ容積の培養物を広げた。水を有するKBディスクは陰性対照として働き、2マイクログラムのクリンダマイシンを含浸したKBディスクは陽性対照として働いた。プレートを24~48時間インキュベートし、成長の阻害のゾーンを測定した。系統の阻害が、測定するには大きすぎた(すなわち、プレートが可能とするであろうよりも大きい)場合、これらの複製物に42mmの最大値を割り当てた。表3、表4、表5、表6、表7、表8は、漸増濃度のハイグロマイシンAを使用して試験された亜種のそれぞれに関するゾーン阻害の平均的サイズを示しており、平均の標準誤差が括弧内に表される。
【0214】
【表3】
【0215】
【表4】
【0216】
【表5】
【0217】
【表6】
【0218】
【表7】
【0219】
【表8】
【0220】
ハイグロマイシンAの量を、試験された各系統に関する阻害のゾーンのサイズに対してプロットした。結果は表9に示される。表9において、N/Aは、R値が決定されなかった、完全抵抗性の系統を示す(CRC 7_3JVN3C1および215A9)。最良フィットの線を各プロットに適用した。次いで、データを最良フィットの線と比較するために使用される統計的手段である線形回帰を実施して、最良フィットの線およびR値を見出した。1という値は完璧なフィットを示し、より低い値ほど、完璧なフィットに満たないことを示す。算出された最も低いR値は0.72であり、ほとんどの値がそれよりかなり高かった。これらのデータは、ハイグロマイシンA抵抗性と系統感度との間の関係性が、ハイグロマイシンA濃度の域に対して線形であることを示している。
【0221】
【表9】
【0222】
3系統を各亜種から試験した。試験された系統の中で、他のF.nucleatum系統と比較して、F.nucleatum vincentii、F.nucleatum polymorphum、およびF.nucleatum periodonticumの系統が、ハイグロマイシンAに対してより抵抗性が高い傾向が観察された。一方で、F.nucleatum nucleatumおよびF.nucleatum fusiformeは、より感度が高い傾向を示した。試験されたすべての系統のうちのF.nucleatum animalis系統CRC 7_3JVN3C1およびF.nucleatum vincentii系統215A9の抵抗性は、実施例3に示されるハイグロマイシンAに対するF.nucleatum系統25586の感度を考慮すると予想外であった。
【0223】
実施例5 Treponema pallidum pallidumの感受性
Treponema pallidum pallidum系統に対するハイグロマイシンAの効力を、病原体とウサギ上皮細胞とを共培養することによって試験した。
【0224】
SS14、およびT.pallidumのシカゴ系統を、Baker-Zander S.A.ら(J Immunol.1988;141(12):4363~9;その内容は、参照によりその全体として本明細書に組み入れられる)によって以前に報告されたように、ニュージーランドホワイトウサギ(Oryctolagus cuniculus)における精巣内で(IT)繁殖したトレポネーマの凍結ストックから得た。
【0225】
T.pallidum培養システムをセットアップして感受性試験を実施し、Edmondsonら(mBio.2018;9(3).Epub 2018/06/28;その内容は、参照により本明細書に組み入れられる)によって以前に記載された培養システムから改変した。6ウェル培養プレート(Corning Inc、Corning、NY)においてトレポネーマを継代した後、細胞を2枚の96ウェル細胞培養プレートに継代培養して、試験される対象となる各抗生物質濃度に対して合計8個の複製物を配分した。接種の前日、3枚の96ウェル細胞培養プレートに、150μLの培養培地中、ウェルあたり3×10個のウサギSf1Ep細胞を播いた。次いで、プレートを、Hera Cell 150インキュベーター(Thermo Fisher Scientific)内で5%CO大気中にて一晩インキュベートして、プレート表面への細胞接着を促した。同日、TpCM-2培地を、Edmondsonら(mBio.2018;9(3).Epub 2018/06/28)によって記載されるように調製した。TpCM-2培地を、3気体インキュベーター(Hera Cell VIOS 160i、Thermo Fisher)において3気体ミックス(Praxair、Danbury、CT)として供給される1.5%O、3.5%CO、および95%Nからなる微好気性環境において、34℃で一晩平衡化した。翌日、細胞培養培地を96ウェルプレートから除去し、細胞を平衡化TpCM-2培地でリンスした。その後、各ウェルに150μLの平衡化TpCM-2培地を充填し、プレートを3気体インキュベーターに移して、少なくとも3時間微好気性大気において平衡化した。96ウェルプレート用のトレポネーマ接種源を調製するために、前の週にT.pallidumを接種されたSf1Ep細胞をトリプシン処理して、スピロヘータの放出および計数を可能にした。トレポネーマを、Leica DM2500 LED顕微鏡(Leica、Wetzlar、Germany)で暗視野顕微鏡法を使用してカウントし、TpCM-2において2.0×10個のT.pallidum個細胞/mlに希釈した。3×10個細胞のトレポネーマ接種源を得るために、150μLを96ウェルプレートの各ウェルに添加した。2種の抗生物質をこの調査において試験した:種々の濃度のハイグロマイシンA(0.03、0.06、0.12、0.24、0.48、0.96、1.92、3.84μg/mL)、および60ng/mlのペニシリンG(公知の殺トレポネーマ性抗生物質)。各濃度を8個の複製物において試験した。容積変動を最小限に抑えるために、各抗生物質溶液を100×濃縮ストックから添加して、試験されるべき最終濃度を達成した。抗生物質なしウェルならびに溶媒のみウェルも対照として含んだ。トレポネーマの播きおよび抗生物質の添加の後、培養プレートを3気体インキュベーターにおいて7日間34℃でインキュベートした。
【0226】
7日間のインキュベーション期間の後、4枚のうち2枚のプレートをDNA抽出のために処理し、一方で残り2枚のプレートを使用して、上で記載されるように前日に調製された抗生物質なし対照プレートを播いた。DNA抽出に関しては、プレートをインキュベーターから取り出し、培養培地を各ウェルからマルチチャネルピペットで取り出し、捨てた。細胞をトリプシン処理せずに、DNA抽出のための200μLのゲノム溶解緩衝液(Zymo Research、Irvine、CA)と直接混合し、室温で30分間インキュベートして細胞溶解を完了させた。細胞溶解の後、プレートを、抽出まで-20℃で凍結した。
【0227】
DNAを精製するために、96ウェルプレートを乾燥インキュベーターにおいて56℃で融解し、急速にスピンして、ウェル蓋の結露を取り戻した。DNAを、メーカーのプロトコールに従ってQuick DNA-96キット(Zymo Research)を使用して抽出した。DNAを100μlの分子グレード水(Sigma-Aldrich)に溶出し、増幅まで-20℃で保管した。他の2枚の96ウェルプレートを処理して、培養培地にSf1Ep細胞を含有するが抗生物質を含有しない新たなものに接種して、試験される各系統における試験薬物の殺トレポネーマ活性を確かめた。培養培地を第3の96ウェルプレートから取り出し、20μlのトリプシンを添加してSp1Epおよびトレポネーマを脱離させた。結果として生じた懸濁液の半分を、抗生物質なしの新たな96ウェルプレート(上で記載されるように調製された)に接種し、次いでそれをあと7日間インキュベートした。1週間後、抗生物質なしプレートを処理してDNAを抽出し、qPCRによってトレポネーマ負荷を評価した。
【0228】
DNA抽出の後、以前に記載された(Giacani L,ら、Infect Immun.2007;75(1):104~12;その内容は、参照によりその全体として本明細書に組み入れられる、を参照されたい)、tp0574遺伝子(T47とも呼ばれる)を標的にするqPCR手法を使用して、トレポネーマ負荷を三つ組で各サンプルに対して評価した。313bpアンプリコンを、89℃融点を用いたqPCRによって生成した。簡潔には、外部標準物質を使用した絶対定量プロトコールを使用して、サンプル収穫の時点におけるtp0574遺伝子コピー数を定量した。QuantStudio 5サーマルサイクラー(Thermo Fisher Scientific)で増幅をランし、機器ソフトウェアを使用して結果を分析した。データをPrism 8(GraphPad Software、San Diego、CA)にインポートした。
【0229】
細胞毒性アッセイを、Cell Proliferation Reagent WST-1プロトコール(付属;Roche、Basel、Switzerland)に従って実施した。試薬との1時間のインキュベーション後に、吸光度を測定した。抗生物質なしでインキュベートされた7日目の細胞と、漸増濃度のハイグロマイシンAとともにインキュベートされた7日目の細胞との間に有意な差は見出されなかった。WST-1アッセイは、ハイグロマイシンAが、試験されたいずれの濃度でもSF1Ep細胞に非毒性であることを示した。この結果は、感受性アッセイの成果が、トレポネーマ細胞に対する薬物の効果のみに起因するという結論を支持する。
【0230】
感受性アッセイは、ハイグロマイシンAが、最高120ng/ml(0.12μg/ml)までシカゴ系統に対して有効であったことを支持する。より高い濃度のハイグロマイシンAと比較した場合、有意により高い成長(p<0.05)が0.06μg/mlで検出された。0.12μg/mlとより高い濃度のハイグロマイシンAとの間に有意な差は見出されなかった。p<0.05に設定された有意性を用いたANOVAを使用して、分析を実施した。データは表10に示される。
【0231】
表11は、抗生物質なし対照プレート上に播かれたシカゴ系統に対するハイグロマイシンAの効果を示している。これらの調査は、0.12μg/ml以上のハイグロマイシンAの殺トレポネーマ活性を裏付けた。これらの濃度で、ハイグロマイシンAは、ペニシリンG(60ng/mlで殺トレポネーマ性)と同じくらい有効であった。予想どおり、表10に示される結果に基づき、0.06μg/mlで成長が検出された。表10および表11において、Ctrlは対照サンプルを意味し、avgは平均値を示し、Penはペニシリンを示す。
【0232】
【表10】
【0233】
【表11】
【0234】
SS14系統を使用した感受性アッセイも、最高1.92μg/mlまでSS14に対するハイグロマイシンAの効力を支持した。すべてのより低い濃度で、最小限ではあるものの、成長が検出された。1.92μg/mlとより高い濃度のハイグロマイシンAとの間に有意な差は見出されなかった。p<0.05に設定された有意性を用いたANOVAを使用して、分析を実施した。データは表12に示される。
【0235】
抗生物質なし対照プレート上に播かれたSS14系統は、0.12μg/ml以上のハイグロマイシンAの殺トレポネーマ活性を裏付けた。これらの濃度で、ハイグロマイシンAは、ペニシリンG(60ng/mlで殺トレポネーマ性)と同じくらい有効であった。結果は表13に示される。表12に示される結果に基づいて予想されるとおり、0.06μg/mlで成長が検出された。表12および表13において、Ctrlは対照サンプルを意味し、avgは平均値を示し、Penはペニシリンを示す。
【0236】
【表12】
【0237】
【表13】
【0238】
まとめると、これらのデータは、0.12μg/ml以上の濃度のハイグロマイシンAが殺トレポネーマ効果を有することを示している。
【0239】
均等物および範囲
当業者であれば、本明細書に記載される本開示に従った具体的な実施形態との多くの均等物を、ただのルーチン的実験を使用して認識するであろうまたは突き止め得るであろう。本開示の範囲は、上の説明に限定されることを意図されず、むしろ添付の特許請求の範囲に明記されるとおりである。
【0240】
特許請求の範囲において、「a」、「an」、および「the」等の冠詞は、文脈からそれとは反対に示されないまたは別様に明白でない限り、1つまたは1つよりも多い数を意味し得る。群メンバーの1員、1員を上回る、またはすべてが、所与の産物または過程に存在する、それにおいて採用される、またはそれに別様に関連する場合、文脈からそれとは反対に示されないまたは別様に明白でない限り、群の1員または複数のメンバーの間に「または」を含む請求項または説明は満たされると考えられる。本開示は、群の正確に1員のメンバーが、所与の産物または過程に存在する、それにおいて採用される、またはそれに別様に関連する実施形態を含む。本開示は、1員を上回るまたは全群メンバーが、所与の産物または過程に存在する、それにおいて採用される、またはそれに別様に関連する実施形態を含む。本明細書において使用するとき、「および/または」という用語は、関連して列挙される品目の1種または複数のありとあらゆる組み合わせを含む。本明細書における説明においておよび後に続く特許請求の範囲を通じて使用するとき、「a」、「an」、および「the」の意味は、文脈が別様にはっきりと指示しない限り、複数形の指示対象(reference)ならびに単数形の指示対象を含む。数値との関連での「約」という用語は、値が5%上または下に変動することを意味する。例えば、約100という値に関しては、95~105(または95~105の間の任意の値)を意味する。
【0241】
「含む(comprising)」という用語は、開かれていることを意図され、付加的な要素または工程の内包を許すが要しないことも留意される。「含む」という用語が本明細書において使用される場合、「からなる」という用語もゆえに包含されかつ開示される。本明細書におけるどこかで言及されるすべての特許、特許出願、および他の科学的または技術的文書は、本明細書における参照によりそれらの全体として組み入れられる。本明細書に例示的に記載される実施形態は、本明細書に具体的に開示されるまたは具体的に開示されない任意の1種または複数の要素、1つまたは複数の制限なしで適切に実践され得る。ゆえに、例えば、本明細書におけるどの場合でも、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」という用語のいずれも、それらの通常の意味を保持しながら、他の2つの用語のいずれかで置き換えられ得る。採用されている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用において、示されかつ記載される特質またはその一部分の任意の均等物を除外するという意図はなく、様々な改変が特許請求の範囲内で可能であることが認識される。ゆえに、本方法および組成物は、実施形態および任意選択の特質によって具体的に開示されているものの、本明細書に開示される概念の改変および変形が当業者によって用いられ得ること、ならびにそのような改変および変形は、本説明および添付の特許請求の範囲によって規定される組成物および方法の範囲内にあると考えられることが理解されるべきである。
【0242】
域が与えられる場合、終点が含まれる。さらに、別様に示されないまたは文脈および当業者の理解から別様に明白でない限り、域として表現される値は、文脈が別様にはっきりと指示しない限り、域の下限の単位の10分の1まで、本開示の種々の実施形態における記述される域内の任意の具体的な値または部分域を想定し得ることが理解されるべきである。
【0243】
加えて、先行技術の範囲内にある本開示の任意の特定の実施形態は、請求項の任意の1つまたは複数から明示的に除外され得ることが理解されるべきである。そのような実施形態は当業者に公知であると見なされることから、たとえ除外が本明細書に明示的に明記されないとしても、それらは除外され得る。本開示の組成物についての任意の特定の実施形態(例えば、任意の抗生物質、治療法、または活性成分;任意の産生の方法;任意の使用の方法等)は、先行技術の存在に関係するか否かにかかわらず、何らかの理由で、任意の1つまたは複数の請求項から除外され得る。
【0244】
使用されている単語は、限定ではなくむしろ説明の単語であること、ならびにそのより広い態様における本開示の真の範囲および精神のから逸脱することなく、添付の特許請求の範囲の権限内で変化が加えられ得ることが理解されるべきである。
【0245】
本開示は、いくつかの記載される実施形態に関して、ある長さでかつある程度詳細に記載されているが、それは、任意のそのような事項もしくは実施形態または任意の特定の実施形態に限定されるべきであることは意図されず、それは、先行技術を考慮してそのような請求項の最も広い考え得る解釈を提供するために、それゆえ本開示の意図される範囲を有効に包含するために、添付の請求項を参照して捉えられるべきである。
【0246】
組成物および方法は下でより詳細に記載され、本明細書に明記される実施例は、その中の数多くの改変および変形が当業者に明らかであろうことから、単なる例示として意図される。本明細書において使用される用語は、概して、本明細書に記載される組成物および方法の文脈内で、ならびに各用語が使用される具体的な文脈において、当技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。一部の用語は、組成物および方法の説明に関して、実践者に付加的な指針を提供するために、本明細書においてより具体的に定義されている。
【0247】
本明細書に記載される任意の単一の用語、単一の要素、単一の語句、用語の群、語句の群、または要素の群はそれぞれ、特許請求の範囲から具体的に除外され得る。
【0248】
本明細書において域、例えば温度域、時間域、組成、または濃度域が与えられる場合はいつでも、与えられる域に含まれるすべての中間域および部分域ならびにすべての個々の値は本開示に含まれることが意図される。本明細書における説明に含まれる任意の部分域、または域もしくは部分域における個々の値は、本明細書における態様から除外され得ることが理解されるであろう。本明細書における説明に含まれる任意の要素または工程は、請求される組成物または方法から除外され得ることが理解されるであろう。
【0249】
加えて、組成物および方法の特質または態様が、マーカッシュ群または選択肢の他の群化の観点で記載される場合、当業者であれば、それによって組成物および方法も、マーカッシュ群または他の群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの部分群の観点から記載されることを認識するであろう。
【0250】
以下は、単なる例示目的のために提供され、上で広い観点から記載される実施形態の範囲を限定することを意図されるわけではない。
【国際調査報告】