(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ヒト扁桃幹細胞由来の小胞体を有効成分として含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20240920BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240920BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240920BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240920BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240920BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K35/28
C12N5/071
C07K14/705
A61P17/00
A61Q19/08
A61K8/98
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518676
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 KR2021017840
(87)【国際公開番号】W WO2023048339
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0126659
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年6月22日にApplied Sciences誌で公開された論文
(71)【出願人】
【識別番号】522110430
【氏名又は名称】プルコスキン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PLCOSKIN CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペク,ウーヨル
(72)【発明者】
【氏名】シム,ギュシク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドヒョン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C083
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065CA44
4B065CA50
4C083AA071
4C083AA072
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4H045AA10
4H045AA30
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4H045CA40
4H045DA50
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA60
(57)【要約】
本発明は、ヒト扁桃幹細胞に由来する小胞体を有効成分として含む組成物に関する。前記組成物は、老化が誘導された線維芽細胞の皮膚再生および抗酸化関連遺伝子の発現を促進し、線維芽細胞の老化を抑制する効果を示す。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト扁桃幹細胞由来の小胞体を有効成分として含む皮膚再生および老化防止用組成物。
【請求項2】
前記小胞体は、細胞外小胞体、マイクロベシクルおよびナノベシクルの中から選択された1種である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒト扁桃幹細胞は、ヒト扁桃中間葉幹細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒト扁桃幹細胞は、CD146ポジティブである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ナノベシクルは、直径が50nm~250nmである、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記小胞体は、CD14、CD34、CD45、CD73、CD90、およびCD146の中から選択された1種以上の免疫抗原を追加的に含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ヒト扁桃幹細胞は、
ヒト扁桃腺組織をコラゲナーゼタイプ1およびDNase1に分解するステップと、
前記分解された生成物を濾過および遠心分離して上澄液を除去して細胞ペレットを得るステップと、
前記細胞ペレットから得た細胞を培養してヒト扁桃幹細胞を得るステップとを含む方法で製造されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ナノベシクルは、
継代培養されたヒト扁桃幹細胞を培養培地に懸濁した後、遠心分離して上澄液を除去するステップと、
前記上澄液を除去した細胞ペレットを再懸濁した後、押出機で2つ以上のポアサイズの異なるフィルタを連続的に通過させるステップとを含む方法で製造されるものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記2つ以上のポアサイズの異なるフィルタは、ポアサイズの大きいフィルタからポアサイズの小さいフィルタの順に用いられるものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記2つ以上のポアサイズの異なるフィルタは、ポアサイズが10μm、5μmおよび0.4μmのフィルタの順に用いられるものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記得られたヒト扁桃幹細胞をFcRブロッキング試薬(FcR Blocking Reagent)で処理した後、CD146マイクロビーズ(CD146 MicroBeads)処理後に反応させるステップと、
反応後、磁気活性細胞分離法(magnetic-activated cell sorting、MACS)用緩衝液で処理した後、遠心分離して上澄液を除去するステップと、
MACSセパレータおよびカラムを介してCD146ポジティブとネガティブとを分離するステップとをさらに含むものである、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、薬学的組成物または化粧料組成物である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト扁桃幹細胞由来の小胞体を有効成分として含む組成物、特に、皮膚再生および老化防止用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
老化は、有機体の機能および再生特性が時間依存的に損失することを特徴とする。皮膚の老化に関連する要因は細胞を損傷させて、細胞老化として知られた皮膚再生および細胞増殖の遅延をもたらす。細胞老化は、細胞周期の不可逆的停止および局所付着性細胞骨格(focal adhesive cytoskeletone)の変更を特徴とする。
【0003】
皮膚組織の細胞老化は、酸化性ストレス、ミトコンドリア機能障害、紫外線照射のような多様な要因によって誘導される。
【0004】
ここ数十年間、多くの研究者がこれを克服するための研究を行ってきた。
【0005】
最近は、細胞老化を克服するために、エキソソームの組織再生の可能性について多くの研究が集中している。
【0006】
細胞内経路(endocytic pathway)によって生成された細胞において原形質膜を横切って分泌するナノサイズの生体模倣体として知られたエキソソームは、miRNA、mRNAおよびタンパク質を含む様々な成分を含有している。また、エキソソームは、皮膚の若返りおよび老化防止アプローチ法のために研究された。
【0007】
しかし、治療目的のためのエキソソームの潜在力にもかかわらず、低い効率性、長い手続き時間および高い技術専門性といった、いくつかの不都合がある。
【0008】
このような不都合を克服するために、多くの研究者が体細胞からエキソソーム模倣ナノベシクルを直接生産するのに集中してきた。このような生体模倣ナノベシクルは、超音波処理および/または押出により所望の細胞から直接分離することができ、エキソソームと類似の特性を共有することが報告された。類似の特性を勘案する時、細胞由来の生体模倣ナノベシクルは、薬物伝達、組織再生、および癌標的化に活用できる。特に、ヒト扁桃由来の中間葉幹細胞(tonsil-derived mesenchymal stem cell、TMSC)に由来するナノベシクルは、肝線維化症および炎症を弱化させると報告された。また、ヒト扁桃幹細胞に由来するナノ小胞体を含む抗癌用薬学的組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2020-0141868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は、ヒト扁桃幹細胞由来の小胞体を含む皮膚再生および皮膚老化防止用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、ヒト扁桃幹細胞由来の小胞体を有効成分として含む皮膚再生および皮膚老化防止用組成物が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態による組成物は、皮膚再生および皮膚老化防止効果を有し、効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、製造例1で製造したヒト扁桃中間葉幹細胞のモルフォロジーを示す図である(スケールバー=200μm)。
【
図1B】
図1Bは、製造例1で製造したヒト扁桃中間葉幹細胞の表面マーカーの発現を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、ヒト扁桃中間葉幹細胞から製造したナノベシクル(nanovesicles from tonsil-derived mesenchymal stem cell、TMSC-NV)のタンパク質発現およびSEMイメージを示す図である。
【
図2B】
図2Bは、製造例1で製造したヒト扁桃中間葉幹細胞から製造したナノベシクルの動的光散乱分析の結果を示す図である。
【
図3A】
図3は、継代関連老化モデルにおけるTMSC-NV処理による増殖および老化の調節に関するものであって、
図3Aは、ヒト皮膚線維芽細胞(human dermal fibroblast、HDF)における形態学的変化を示す図である(スケールバー=200μm)。
【
図3B】
図3Bは、TMSC-NV処理後の継代関連老化HDFの増殖を示す図である。
【
図3C】
図3Cは、老化関連β-ガラクトシダーゼ分析の結果を示す図である(スケールバー=200μm)。
【
図3D】
図3Dは、SA-β-ガラクトシダーゼ分析の定量的解析を示す図である。
【
図3E】
図3Eは、HDFの局所付着におけるビンキュリン(vinculin)の発現を示す図である。
【
図3F】
図3Fは、局所付着におけるビンキュリン発現の定量的データを示す図である。
【
図4A】
図4は、継代関連老化モデルにおいてTMSC-NVで処理した細胞外マトリックスおよびHDFにおける抗酸化遺伝子の調節に関する図であって、
図4Aは、継代関連老化HDFにおけるCOL1、ELASTIN、SOD2、およびHMOX1のmRNA発現を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、継代関連老化HDFのコラーゲンタイプ1の免疫蛍光分析の結果を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、免疫蛍光分析の定量的データを示す図である。
【
図5A】
図5は、UV誘導老化モデルにおけるTMSC-NV処理による増殖および老化の調節に関する図であって、
図5Aは、処理によるHDFにおける形態学的変化を示す図である(スケールバー=200μm)。
【
図5B】
図5Bは、TMSC-NV処理後のUV誘導HDFの増殖試験を示す図である。
【
図5C】
図5Cは、TMSC-NV処理後のUV誘導老化HDFのSA-β-ガラクトシダーゼ分析を示す図である(スケールバー=200μm)。
【
図5D】
図5Dは、SA-β-ガラクトシダーゼ分析の定量的データを示す図である。
【
図5E】
図5Eは、HDFの局所付着におけるビンキュリンの発現を示す図である。
【
図5F】
図5Fは、局所付着におけるビンキュリン発現の定量的データを示す図である。
【
図6A】
図6は、UV誘導老化モデルにおけるTMSC-NV処理による細胞外マトリックスおよび抗酸化遺伝子の制御に関する図であって、
図6Aは、UV誘導老化HDFにおけるCOL1、ELASTIN、SOD2、およびHMOX1のm-RNA発現を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、UV誘導老化HDFのコラーゲンタイプ1の免疫蛍光分析の結果を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、免疫蛍光分析の定量的データを示す図である。
【
図7A】
図7は、継代関連老化モデルにおけるCD146+ TMSC-NV処理による増殖および老化の調節に関するものであって、
図7Aは、老化HDFにおけるCOL1およびHMOX1のm-RNA発現を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、老化関連β-ガラクトシダーゼ分析の結果を示す図である(スケールバー=200μm)。
【
図7C】
図7Cは、SA-β-ガラクトシダーゼ分析の定量的解析を示す図である。
【
図8A】
図8は、人体皮膚組織に紫外線B(ultraviolet B、UVB)を照射した皮膚老化モデルにCD146+ TMSC-NV処理後、免疫染色法により確認した結果に関するものであって、
図8Aは、コラーゲンタイプ1、コラーゲンタイプ3、インボルクリンおよびフィラグリンの免疫染色法による結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
本発明の一態様による皮膚再生および皮膚老化防止用組成物は、ヒト扁桃幹細胞由来の小胞体を有効成分として含む。
【0016】
本明細書において、「幹細胞(stem cell)」は、未分化細胞であって、自己複製能力を有しかつ、2つ以上の互いに異なる種類の細胞に分化する能力を有する細胞をいう。
【0017】
本明細書において、「有効成分」は、単独で目的とする活性を示すか、またはそれ自体は活性のない担体などと共に目的とする活性を示すことができる成分を意味する。
【0018】
本明細書において、「ナノベシクル」は、成体幹細胞から得たナノサイズのベシクルを意味するものであって、細胞外小嚢であるエキソソームと類似のナノサイズを有するベシクルを意味する。
【0019】
また、ナノベシクルは、生体膜の基本構造であるリン脂質を用いて外部と区分された脂質膜形態をなす。ナノベシクルは、内部に水溶性分子(DNAを含む)または薬物を担持できるだけでなく、脂溶性薬物を付けるか、または正電荷および負電荷物質を結合させることができる。リン脂質は、両親媒性(amphipathic)物質であって、陰イオン性または両性イオンの極性分子団と炭化水素16個前後の多様な不飽和度を有する2つの非極性脂溶性鎖を有する分子構造であるため、リン脂質が水に分散して自発的にベシクルを形成する。
【0020】
応用科学分野において、ナノベシクルは、化粧品産業、薬物伝達、および生体外(in vitro)で培養中の細胞に遺伝物質を伝達するモデルとして用いており、現在はナノベシクル内に水溶性および脂溶性物質をすべて捕獲することができ、特定の組織に標的が容易であり、大きさおよび変形が容易であり、リン脂質の使用で毒性の問題点がほとんどなく、捕獲させる薬物を他の薬物運搬体よりも多く捕獲することができる。
【0021】
本明細書において、小胞体とは、主に細胞外小胞体を意味するもので、細胞外小胞体は、すべての細胞が外部環境に分泌する脂質二重層に取り囲まれた小胞体を意味することができる。
【0022】
細胞外小胞体は、起源と分泌機序、大きさなどを基準として、エキソソーム(exosomes)、マイクロベシクル(microvesicles)、エクトソーム(ectosomes)、マイクロパーティクル(microparticles)、膜小胞体(membrane vesicles)、ナノベシクル(nanovesicles)、外膜小胞体(outer membrane vesicles)などの多様な名称で呼ばれる。
【0023】
前記小胞体は、細胞外小胞体、マイクロベシクルおよびナノベシクルの中から選択された1種であってもよい。特に、ナノベシクルであってもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、ヒト扁桃幹細胞由来のナノベシクルは、エキソソームで特異的に発現する細胞の表面マーカーを発現する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、前記ヒト扁桃幹細胞は、ヒト扁桃中間葉幹細胞であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0026】
本発明の他の実施形態によれば、前記ヒト扁桃幹細胞は、CD146ポジティブであってもよい。
【0027】
前記ナノベシクルは、直径が50nm~250nm、30nm~200nmであってもよい。
【0028】
さらに具体的には、前記ナノベシクルは、30nm以上、32nm以上、34nm以上、36nm以上、38nm以上、40nm以上、42nm以上、44nm以上、46nm以上、48nm以上または50nm以上でかつ、200nm以下、190nm以下、180nm以下、170nm以下、160nm以下、150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下、110nm以下、100nm以下、95nm以下、90nm以下、85nm以下、80nm以下、75nm以下または70nm以下の直径を有するものであってもよい。例えば、前記ナノベシクルは、30~100nm、40~80nm、50~100nm、または50~80nmの直径を有するものであってもよい。
【0029】
一実施形態によれば、前記ナノベシクルは、40~55nmの直径を有するものであってもよい。さらに具体的には、前記ナノベシクルは、40nm以上、42nm以上、44nm以上、46nm以上、48nm以上または50nm以上でかつ、55nm以下、54nm以下、53nm以下、52nm以下、51nm以下または50nm以下の平均直径を有するものであってもよい。例えば、前記ナノベシクルは、42~53nm、46~52nm、48~52nm、または50nmの平均直径を有するものであってもよい。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、前記小胞体は、CD14、CD34、CD45、CD73、CD90、およびCD146の中から選択された1種以上の免疫抗原を追加的に含むことができる。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、前記ヒト扁桃幹細胞は、ヒト扁桃腺組織をコラゲナーゼタイプ1およびDNase1に分解するステップと、前記分解された生成物を濾過および遠心分離して上澄液を除去して細胞ペレットを得るステップと、前記細胞ペレットから得た細胞を培養してヒト扁桃幹細胞を得るステップとを含む方法で製造できる。一実施形態において、前記ヒト扁桃腺組織をコラゲナーゼタイプ1およびDNase1に分解するステップは、低ブドウ糖のダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium、DMEM)で行われる。前記細胞ペレットから得た細胞を培養するステップは、10%ウシ胎児血清、抗生剤および抗真菌剤を含むDEMEで培養することができる。
【0032】
前記ナノベシクルは、継代培養されたヒト扁桃中間葉幹細胞を培養培地に懸濁した後、遠心分離して上澄液を除去するステップと、前記上澄液を除去した細胞ペレットを再懸濁した後、押出機で2つ以上のポアサイズの異なるフィルタを連続的に通過させるステップとを含む方法で製造できる。
【0033】
前記2つ以上のポアサイズの異なるフィルタは、ポアサイズの大きいフィルタからポアサイズの小さいフィルタの順に用いられるものであってもよい。例えば、前記2つ以上のポアサイズの異なるフィルタは、8~12μmのポアサイズを有するフィルタ、3~7μmのポアサイズを有するフィルタ、および0.2~0.6μmのポアサイズを有するフィルタで構成されてもよい。例えば、前記2つ以上のポアサイズの異なるフィルタは、ポアサイズが10μm、5μmおよび0.4μmのフィルタの順に用いられるものであってもよい。
【0034】
一方、CD146ポジティブの小胞体を得る方法は、前記得られたヒト扁桃幹細胞をFcRブロッキング試薬(FcR Blocking Reagent)で処理した後、CD146マイクロビーズ処理後に反応させるステップと、反応後、磁気活性細胞分離法(magnetic-activated cell sorting、MACS)用緩衝液で処理した後、遠心分離して上澄液を除去するステップと、MACSセパレータおよびカラム、例えば、LSカラムを介してCD146ポジティブとネガティブとを分離するステップとをさらに含むことができる。一実施形態によれば、前記CD246マイクロビーズ処理後に反応させるステップは、光遮断状態で行われる。
【0035】
あるいは、前記CD146ポジティブの小胞体を得る方法は、前記得られたヒト扁桃幹細胞を抗CD146抗体または蛍光物質が連結された抗CD146抗体で処理して反応させるステップと、反応後、フローサイトメトリー(flow cytometry)を用いてCD146ポジティブとネガティブとを分離するステップとをさらに含むことができる。また、あるいは、抗CD146抗体が導入された表面に細胞を捕捉して分離するステップをさらに含むことができる。前記抗CD146抗体が導入された表面は、抗体が付けられる表面であれば、いかなる表面でも可能であり、具体的には、プラスチック板、金属板、金属合金板、高分子ナノ粒子、金属ナノ粒子などがある。
【0036】
また、ヒト扁桃幹細胞由来のCD146ポジティブナノベシクルは、CD146細胞表面マーカーとして選別された細胞からCD146ポジティブヒト扁桃幹細胞由来のナノベシクルを生産するステップを含む方法で製造できるが、ナノベシクルを生産するステップは、前記ヒト扁桃幹細胞からナノベシクルを製造する方法と同様の方法で製造することができる。
【0037】
一実施形態によれば、前記皮膚再生および老化防止用組成物は、薬学的組成物または化粧料組成物であってもよい。
【0038】
一実施形態によれば、前記組成物は、薬学組成物であってもよい。
【0039】
前記薬学組成物は、小胞体のほか、防腐剤、安定化剤、水和剤または乳化促進剤、浸透圧調節のための塩および/または緩衝剤などの薬剤学的補助剤およびその他治療的に有用な物質を追加的に含むことができ、通常の方法により多様な経口投与剤または非経口投与剤の形態に剤形化することができる。
【0040】
前記経口投与剤は、例えば、錠剤、丸剤、硬質および軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、シロップ剤、粉剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、ペレット剤などがあり、これらの剤形は、有効成分のほか、界面活性剤、希釈剤(例:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよびグリシン)、滑沢剤(例:シリカ、タルク、ステアリン酸およびそのマグネシウムまたはカルシウム塩およびポリエチレングリコール)を含むことができる。錠剤はまた、マグネシウムアルミニウムシリケート、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ソジウムカルボキシメチルセルロースおよびポリビニルピロリジンのような結合剤を含むことができ、場合によっては、デンプン、寒天、アルギン酸またはそのソジウム塩のような崩壊剤、吸収剤、着色剤、香味剤、および甘味剤などの薬剤学的添加剤を含むことができる。前記錠剤は、通常の混合、顆粒化またはコーティング方法により製造できる。
【0041】
また、前記非経口投与形態としては、経皮投与型剤形であってもよいし、例えば、注射剤、点滴剤、軟膏、ローション、ゲル、クリーム、スプレー、懸濁剤、乳剤、坐剤、パッチなどの剤形であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0042】
本発明の薬学的組成物は、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体および/または賦形剤を用いて製剤化することにより、単位用量形態に製造されるか、または多用量容器内に入れて製造される。この時、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液形態であるか、エキス剤、散剤、坐剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤形態であってもよいし、分散剤または安定化剤を追加的に含むことができる。
【0043】
本発明の薬学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分のほか、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加的に含むことができる。好適な薬剤学的に許容される担体および製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.、1995)に詳しく記載されている。
【0044】
本発明の薬学的組成物は、経口および非経口投与可能であり、例えば、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与、硬膜内投与、眼球投与、皮膚投与および経皮投与などで投与してもよい。
【0045】
本発明の薬学的組成物の好適な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様であり、通常熟練した医師は所望の治療または予防に効果的な投与量を容易に決定および処方可能である。
【0046】
前記有効成分の投与量の決定は、通常の技術者の水準内にあり、薬物の1日投与用量は、投与しようとする対象の進行程度、発病時期、年齢、健康状態、合併症などの多様な要因によって異なるが、成人を基準として、一態様において、前記組成物1μg/kg~200mg/kg、他の態様において、50μg/kg~50mg/kgを1日1~3回分割して投与することができ、前記投与量はいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、前記組成物は、化粧料組成物であってもよい。例えば、前記化粧料組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファウンデーション、乳濁液ファウンデーション、ワックスファウンデーション、リーブオン(leave-on)型、ミストおよびスプレーなどに剤形化できるが、これに限定されるものではない。より詳しくは、シャンプー、リンス、ボディクレンザーなどの洗浄剤、ヘアトニック、ジェルまたはムースなどの整髪剤、毛髪栄養化粧水、ヘアエッセンス、ヘアセラムスカルプトリートメント、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー、ヘアシャンプー、ヘアローション、養毛剤または染毛剤などの毛髪用化粧料組成物、水中油(O/W)型、油中水(O/W)型などの基礎化粧料に剤形化可能である。
【0048】
また、前記組成物は、それぞれの剤形において、前記必須成分のほか、他の成分はその他の外用剤の種類または使用目的などによって当業者が困難なく好適に選定して配合可能である。例えば、紫外線遮断剤、ヘアコンディショニング剤、香料などをさらに含むことができる。
【0049】
前記化粧料組成物は、化粧品学的に許容可能な媒質または基剤を含むことができる。これは局所適用に適したすべての剤形で、例えば、溶液、ゲル、固体または練り無水生成物、水相に油相を分散させて得られたエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球またはイオン型(リポソーム)および/または非イオン型の小嚢分散剤の形態で、またはクリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレーまたはコンシールスティックの形態で提供される。これらの組成物は、当該分野の通常の方法により製造可能である。
【0050】
本発明の剤形が溶液または乳濁液の場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が用いられ、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0051】
本発明の剤形が懸濁液の場合には、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステルおよびポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラカントなどが用いられる。
【0052】
本発明の剤形がペースト、クリームまたはゲルの場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが用いられる。
【0053】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーの場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーが用いられ、特に、スプレーの場合には、追加的にクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進体を含むことができる。
【0054】
本発明の一実施形態において、前記化粧料組成物に追加的に増粘剤を含むことができる。前記化粧料組成物に含まれる増粘剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシグアニン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリクオタニウム、セテアリルアルコール、ステアリン酸、カラギーナンなどを使用することができ、好ましくは、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリクオタニウムのうちの1種以上を使用することができ、最も好ましくは、カルボキシビニルポリマーになってもよい。
【0055】
本発明の一実施形態において、前記化粧料組成物は、必要に応じて適切な各種の基剤と添加剤を含むことができ、これら成分の種類と量は発明者によって容易に選定可能である。必要に応じて許容可能な添加剤を含むことができ、例えば、当業界における通常の防腐剤、色素、添加剤などの成分を追加的に含むことができる。
【0056】
前記防腐剤は、具体的には、フェノキシエタノール(Phenoxyethanol)または1,2-ヘキサンジオール(1,2-Hexanediol)などになってもよく、香料は、人工香料などになってもよい。
【0057】
そして、本発明の一実施形態において、化粧料組成物は、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質および海草エキスからなる群より選択された組成物を含むことができる。その他添加しても良い配合成分としては、乳脂成分、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、有機および無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水などが挙げられる。
【0058】
また、その他添加しても良い配合成分はこれに限定されるものではなく、また、前記いずれの成分も本発明の目的および効果を損なわない範囲内で配合可能である。
【0059】
以下、本発明の理解のために実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明の内容を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0060】
製造例1:ヒト扁桃中間葉幹細胞(TMSC)の抽出および培養
扁桃腺切除術で得られたヒト扁桃腺組織から扁桃中間葉幹細胞(TMSC)を次のような方法で分離した。
【0061】
まず、ヒト扁桃腺組織を2%抗生剤-抗真菌剤(Gibco、New York、NY、USA)を含むリン酸塩緩衝食塩水(PBS;phosphate-buffered saline、Welgene、Seoul、South Korea)で洗浄した。その後、組織を細かく切り、低ブドウ糖のダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Gibco、New York、NY、USA)で210U/mLのコラゲナーゼタイプ1(Gibco、New York、NY、USA)および4KU/mLのDNase1(Sigma、St.Louis、MO、USA)を用いて37℃で1時間30分間分解させた。分解した生成物を低ブドウ糖のダルベッコ培地(DMEM/low glucose)で10%ウシ胎児血清および1%抗生剤が添加された幹細胞培養液で処理した後、40μmのストレーナー(strainer)を通して濾過し、3分間1,300rpmで3分間遠心分離した。
【0062】
得られたペレットを新しいDMEMで2回洗浄した。洗浄後に得た細胞を10%ウシ胎児血清(Gibco、New York、NY、USA)と1%抗生剤および抗真菌剤(Gibco、New York、NY、USA)を含むDMEMで37℃および5%CO2の環境で培養した。培地を2日ごとに取り替えた。すべての中間葉幹細胞は、5-6日間隔でTrypLE express(Gibco、New York、NY、USA)により継代培養された。
【0063】
図1Aは、前記製造例1で製造したヒト扁桃幹細胞の光学顕微鏡(スケールバー=200μm.LSM700、ZEISS)分析による細胞形態を示す図である。
【0064】
図1Aに示すように、TMSCは、従来知られた中間葉幹細胞と類似して線維芽細胞形態を有していた。
【0065】
一方、抗-CD90、抗-CD105および抗-CD73抗体(Biolegend、San Diego、CA、USA)を用いたフローサイトメトリー(flow cytometry、FACSVerse II、BD Biosciences)を用いてTMSCを特性化した。
【0066】
図1Bは、製造例1で製造したヒト扁桃中間葉幹細胞の表面マーカーの発現を示す図である。
図1Bに示すように、フローサイトメトリーデータは、TMSCがCD90、CD105およびCD73を含む一般的なTMSCの表面マーカーに対して陽性(>90%)であることを示した。
【0067】
製造例2:ヒト扁桃中間葉幹細胞内CD146発現する細胞(CD146+ TMSC)の選別
ヒトCD146マイクロビーズキット(human CD146 MicroBead Kit;130-093-596、Miltenyi Biotec、Auburn、USA)を用いて、ヒト扁桃中間葉幹細胞からCD146-ポジティブ扁桃中間葉幹細胞を選別した。
【0068】
より詳しくは、製造例1で培養されたヒト扁桃中間葉幹細胞をリン酸塩緩衝液(PBS)で1回洗浄した後、TrypLE expressで3分間処理して細胞を分離した。分離された細胞に10%ウシ胎児血清(Gibco、New York、NY、USA)と1%抗生剤および抗真菌剤(Gibco、New York、NY、USA)を含むDMEMを添加し、1,300rpmで3分間遠心分離した。上澄液を除去し、PBSに再懸濁して、同一の条件で遠心分離した。上澄液を除去した後、0.5%ウシ胎児血清および2mM EDTAが添加されたPBSを60μL/107細胞数だけ処理して細胞ペレットを解離した。前記細胞ペレットから得た細胞を培養して得られたヒト扁桃幹細胞を20μL/107細胞数のFcRブロッキング試薬(FcR Blocking Reagent、BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ、USA)で処理し、20μL/107細胞数のCD146マイクロビーズで処理した後、光を遮断し、4℃で15分間反応させた。反応後、1mLのMACS緩衝液で処理し、1,300rpmで3分間遠心分離し、上澄液を除去した。以後、MACSセパレータおよびLSカラム(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)を介してCD146-ポジティブ扁桃中間葉幹細胞(CD146+ TMSC)とCD146-ネガティブ扁桃中間葉幹細胞(CD146-TMSC)とを分離した。
【0069】
製造例3:TMSCに由来するナノベシクル(TMSC-NV)の製造
TMSC由来のナノベシクルの製造のために、前記製造例1で得られたTMSCをTrypLE express溶液(Gibco、New York、NY、USA)で37℃で3分間処理して分離した。分離された細胞を10%ウシ胎児血清(Gibco、New York、NY、USA)と1%抗生剤および抗真菌剤(Gibco、New York、NY、USA)を含むDMEMに懸濁し、1300rpmで2分間遠心分離した。上澄液を除去し、得られた細胞ペレットをPBSで2回洗浄し、10℃でPBS中に1×106細胞/mLの密度で再懸濁させた。
【0070】
再懸濁された細胞を、ミニ押出機(Avanti○R Polar Lipids Mini Extruder、Alabaster、AL、USA)を用いて、(リテーナおよび押出機の間に挟んだ)10μm、5μmおよび0.4μmのポアサイズを有する(多孔性ポリカーボネート)濾紙に順次に各3回ずつ通過させてナノベシクルを製造した。
【0071】
製造例4:CD146+ TMSCに由来するナノベシクル(CD146+ TMSC-NV)の製造
前記製造例1で製造したTMSCの代わりに、前記製造例2で製造したCD146+ TMSCを用いることを除けば、前記製造例3と同様の方法でナノベシクルを製造した。
【0072】
前記製造例3および製造例4で得られたナノベシクルの大きさと形状は、それぞれ動的光散乱(DLS)および透過電子顕微鏡分析(TEM)によって決定した。
1)透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy;TEM)
グロー放電炭素コーティング銅グリッド(glow-discharged carbon-coated copper grids)(Electron Microscopy Sciences、Fort Washington、PA)に精製されたナノベシクルを加えた。ナノベシクルを1時間グリッド上に吸収されるようにした後、グリッドを4%パラホルムアルデヒドで10分間固定させ、脱イオン水の水滴で洗浄した後、2%ウラニルアセテート(Ted Pella、Redding、CA)で陰性染色(negative stain)した。電子顕微鏡写真は100kVの加速電圧でJEM 1011 microscope(JEOL、Tokyo、Japan)で記録した。
2)動的光散乱(Dynamic light scattering;DLS)
ナノベシクルの大きさ分布をZetasizer Nano ZS(Malvern Instrument Ltd.、Malvern、U.K.)で測定した。
【0073】
また、Micro BCATM Protein Assay Kit(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を用いて、ナノベシクルの濃度を測定した。
【0074】
一方、ナノベシクルのタンパク質発現を測定するために、ウェスタンブロッティング方法を使用した。
3)ウェスタンブロッティング
TMSCおよびTMSC-NVをRadioimmunoprecipitation assay(RIPA)緩衝液(Sigma、St.Louis、MO、USA)で収獲および溶解した。細胞破片の除去のために、20分間13,000rpmで溶解物を遠心分離した。上澄液に入っているタンパク質の量は、Micro BCATM Protein Assay Kitを用いて測定した。20μgの量の総タンパク質をローディングし、10%SDS-PAGEゲルで分離した。ローディング後に分離されたタンパク質を30分間5%BSA溶液でブロッキングされたメンブレンに移した。免疫ブロッティングの場合、ウサギ抗-CD9(1:2000)、抗-CD63(1:2000)および抗ベータアクチン(1:5000)一次抗体(Abcam、Cambridge、UK)を4℃で一晩適用した。
【0075】
タンパク質の化学発光検出のためのhorseradish peroxidase(HRP)コンジュゲートヤギ抗-ウサギIgG(H+L)(1:5,000)二次抗体(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を室温で2時間適用し、AmershamTM ECL SelectTM(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を検出に用いた。
【0076】
図2Aは、TMSC-NVのタンパク質発現およびTEM(JEM 1011 microscope(JEOL、Tokyo、Japan)イメージを示す図である。タンパク質レベルはβ-アクチンによって正規化された。
【0077】
図2Bは、TMSC-NVの動的光散乱分析の結果を示す図である。
【0078】
図2AからTMSC-NVはCD9およびCD63のようなエキソソームマーカーを発現することを確認した。一方、TMSC-NVは球形状を有し、
図2BからTMSC-NVの直径は2つのピーク(88.5および228.3nm)で表示された。このような結果は、TMSC-NVがエキソソームと類似の特性を有することを示す。
【0079】
製造例5:脂肪幹細胞に由来するナノベシクルの製造
前記製造例1で製造したTMSCの代わりに、脂肪幹細胞を用いることを除けば、前記製造例3と同様の方法でナノベシクルを製造した。
【0080】
製造例6:骨髄幹細胞に由来するナノベシクルの製造
前記製造例1で製造したTMSCの代わりに、骨髄幹細胞を用いることを除けば、前記製造例3と同様の方法でナノベシクルを製造した。
【0081】
実験例
細胞の培養
ヒト皮膚線維芽細胞(human dermal fibroblast、HDF)は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA、米国)から購入した。この細胞を10%ウシ胎児血清(Gibco、New York、NY、USA)と1%抗生剤-抗真菌剤(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を含むDMEMで37℃および5%CO2雰囲気で培養した。培地は2日ごとに取り替えた。固有の複製老化細胞は繰り返し継代によって生成された。継代3と継代15の細胞はそれぞれ「幼若」状態と「老化」状態として識別した。外因性老化細胞は200mJ/cm2のUV照射によって処理した。
【0082】
実験例1:細胞増殖能の比較
細胞増殖はCell Counting Kit-8 assay(CCK-8、Dojindo、Japan)で確認し、ATCCから購入したHDFを12ウェルプレートに5,000細胞数/cm2で分注し、幹細胞培養液(10%ウシ胎児血清(Gibco、New York、NY、USA)と1%抗生剤および抗真菌剤(Gibco、New York、NY、USA)を含むDMEM)で培養した。HDFを分注し、24時間後に、前記製造例3および製造例4のナノベシクルをそれぞれタンパク質濃度基準50μg/mLでHDFに1回処理した後、6日間培養した。細胞増殖を比較するために、幹細胞培養液をCCK-8と1:10の比率で混合して各ウェルに処理した。1時間30分間37℃で反応させた後、450nmの波長における吸光度を測定して細胞増殖程度を比較した。
【0083】
実験例2:免疫染色分析
免疫染色分析を行うために、前記製造例3および製造例4の細胞を4%パラホルムアルデヒドで30分間固定した。その後、固定された細胞を0.05%Triton X-100(Sigma、St.Louis、MO、USA)で15分間透過化(permeablization)した。
【0084】
透過化後、細胞を1%ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma、St.Louis、MO、USA)で室温で30分間遮断した後、抗-ビンキュリン(anti-vinculine)(1:200)で室温で1時間培養した。PBSで洗浄後、ヤギ抗-ウサギIgG H&L Alexa Fluor488二次抗体(1:200)およびテトラメチルローダミンコンジュゲーテッドファロイジン(phalloidin)(1:200)を暗中で1時間適用した。ECMの生産を確認するために、細胞を固定、遮断および抗-コラーゲン1一次抗体(1:200)で1時間培養し、ヤギ抗ウサギIgG H&L Alexa Fluor488(1:200)で培養した。免疫細胞化学分析に使用されるすべての抗体はAbcam(Cambridge、MA、USA)から購入した。免疫細胞化学分析は、DAPI核染色で対照染色し、ZEISS LSM700共焦点顕微鏡(Zeiss、Oberkochen、Germany)で検査した。
【0085】
実験例3:定量的リアルタイム重合酵素連鎖反応(qPCR)
定量的リアルタイム重合酵素連鎖反応(qPCR)のために、製造例3および製造例4のナノベシクルを老化線維芽細胞に6日間処理し、この細胞を6ウェルプレートに培養した。
【0086】
各ウェルを1mLのPBSで洗浄して、Trizol試薬500μLを処理した後、1.75mLのチューブに得た。
【0087】
試薬をクロロホルム200μLと共に処理し、氷上で10分間置いた。混合物を13,000rpmで15分間遠心分離し、水性上澄液を注意深く収集し、同量のイソプロパノールを混合して、氷上で10分間インキュベーションした。
【0088】
RNAサンプルを13,000rpmで15分間遠心分離して上澄液を除去し、RNAペレットを得た。RNAペレットを75%EtOHで洗浄し、乾燥させた。
【0089】
透明なRNAペレットをヌクレアーゼフリーウォーター(nuclease-free water)で希釈し、Nanodrop2000でRNA濃度を確認し、1μgのRNAでcDNAを合成した。
【0090】
cDNAはPrimeScript RT Reagent kit(TAKARA、Japan)を用いて合成し、ΔΔCT値をStep-One plus qPCR machine(ThermoFisher Scientific、USA)で確認した。
【0091】
実験例4:老化関連ベータ-ガラクトシダーゼ分析(SA-β-ガラクトシダーゼ分析)
老化関連ベータ-ガラクトシダーゼは、ガラクトシドの単糖類への加水分解に触媒作用をする酵素である。老化細胞と組織では、pH4.0ではないpH6.0でのみ検出可能である。細胞老化のバイオマーカーとして、不溶性青色化合物に転換される5-ブロモ-4-クロロ-3-インドイル-D-ガラクトピラノシド(X-gal)を使用する発色分析を用いてそれの活性を検出することができる。
【0092】
ここで、SA-β-ガラクトシダーゼ分析は、細胞老化染色キット(cell senescence staining kit、Cell Biolabs、San Diego、CA、USA)を用いて行った。
【0093】
細胞の老化程度を比較するために、Cellular Senescence Staining Kit(CBA-230、Cell biolabs、USA)により細胞のSA-β-galactosidaseの活性度を測定した。
【0094】
より詳しくは、HDFに製造例3~製造例6のナノベシクルをそれぞれ処理した後、6日後にHDFをPBSで1回洗浄した後、10%グリセロールで常温で5分間処理して細胞を固定した。上澄液を除去し、PBSで3回洗浄した後、Cellular Senescence Staining Kitにより37℃で14時間染色させた。反応後、上澄液を除去し、PBSで3回洗浄した後、顕微鏡により写真撮影および定量分析した。定量的データは老化細胞の着色比率の記録によって測定した。
【0095】
実験例5:Ex vivo組織再生能力の確認(免疫染色法)
供与された人体皮膚組織の脂肪を除去し、PBSで3回洗浄した後、1cm×1cmに切断して準備した。皮膚組織をsemi-agarose DMEM培地環境で37℃、5%CO2の条件で培養した。培養中の人体皮膚組織に300mJ/cm2に相当する紫外線B(ultravilolet B;UVB)を照射した後、CD146+ TMSC-NVをそれぞれ50μg/ml、100μg/mlの濃度で各20μL塗布し、24時間後、同一の条件でUVB照射とCD146+ TMSC-NV塗布を繰り返した。繰り返し処理後、人体皮膚組織を新しいsemi-agarose DMEM培地に移し、3回目のUVB照射およびCD146+ TMSC-NV塗布後、24時間培養した後、組織を固定して免疫染色を進行させた。
【0096】
免疫染色法により人体皮膚組織を構成するタンパク質であるコラーゲンタイプ1、コラーゲンタイプ3、インボルクリン(involucrin)およびフィラグリン(filaggrin)を染色した。
【0097】
図3は、継代関連老化モデルにおけるTMSC-NV処理による増殖および老化の調節に関するものであって、
図3Aは、HDFにおける形態学的変化を示す図であり(スケールバー=200μm)、
図3Bは、TMSC-NV処理後の継代関連老化HDFの増殖を示す図であり、
図3Cは、老化関連SA-β-ガラクトシダーゼ分析の結果を示す図であり(スケールバー=200μm)、
図3Dは、SA-β-ガラクトシダーゼ分析の定量的解析を示す図であり、
図3Eは、HDFの局所付着におけるビンキュリンの発現を示す図であり、
図3Fは、局所付着におけるビンキュリン発現の定量的データを示す図である(グループ間の有意な差は一方向ANOVAで測定した(ns>0.05、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【0098】
図3Aおよび3Bに示すように、TMSC-NV処理は、老化HDF細胞の増殖を増加させた。SA-β-ガラクトシダーゼ分析を行って、TMSC-NVの老化防止の役割を確認した。
図3Cに示すように、TMSC-NVで処理したものが老化HDFのβ-ガラクトシダーゼの活性を減少させたことを示した。
図3DのSA-β-ガラクトシダーゼ分析の定量的データは、TMSC-NV処理によって老化細胞の比率が減少することを示しており、これはTMSC-NV処理がHDFの老化水準を減少させることを裏付けた。
【0099】
また、TMSC-NVで処理した後の局所付着におけるビンキュリンのタンパク質発現とアクチン細胞骨格における形態学的変化を調べた。免疫蛍光分析の結果、
図3Eおよび
図3Fに示すように、老化HDFの局所接着力においてビンキュリンの献身度の増加を示し、これはTMSCNV処理によって減少した。
【0100】
このような結果は、TMSC-NVがHDFの増殖を増加させ、継代によって誘発される老化を減少させることを示す。
【0101】
分子生物学の面でTMSC-NVの老化防止特性を確認するために、TMSC-NV処理後に細胞外マトリックス(ECM)の生産および老化関連抗酸化遺伝子の遺伝子発現を調べた。
【0102】
図4は、継代関連老化モデルにおいてTMSC-NVで処理した細胞外マトリックスおよびHDFにおける抗酸化遺伝子の調節に関する図であって、
図4Aは、継代関連老化HDFにおけるCOL1、ELASTIN、SOD2、およびHMOX1のm-RNA発現を示す図であり、
図4Bは、継代関連老化HDFのコラーゲンタイプ1の免疫蛍光分析の結果を示す図であり、
図4Cは、免疫蛍光分析の定量的データを示す図である。グループ間の有意な差はone-way ANOVAで測定した(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【0103】
図4Aに示すように、コラーゲンタイプ1(COL1)とELASTINのmRNAレベルは、幼若HDFに比べて老化HDFで減少するが、TMSC-NVで処理すれば、ECMの生産が上方調節されることが明らかになった。
【0104】
類似して、抗酸化遺伝子であるSOD2およびHMOX1のmRNA発現は、老化HDFにおいてTMSC-NVで処理すれば増加した。また、COL1のタンパク質発現は、免疫蛍光法で調べた結果、
図4Bおよび
図4Cに示すように、TMSC-NVで処理すれば、継代関連老化HDFで著しく増加したECMの生成を示した。このような結果によれば、TMSC-NVで処理すれば、老化細胞でECMの生産および老化減少可能抗酸化遺伝子の回復をもたらすことが分かる。
【0105】
図5は、UV誘導老化モデルにおけるTMSC-NV処理による増殖および老化の調節に関するものであって、
図5Aは、HDFにおける形態学的変化を示す図であり(スケールバー=200μm)、
図5Bは、TMSC-NV処理後の継代関連老化HDFの増殖を示す図であり、
図5Cは、老化関連SA-β-ガラクトシダーゼ分析の結果を示す図であり(スケールバー=200μm)、
図5Dは、SA-β-ガラクトシダーゼ分析の定量的解析を示す図であり、
図5Eは、HDFの局所付着におけるビンキュリンの発現を示す図であり、
図5Fは、局所付着におけるビンキュリン発現の定量的データを示す図である(グループ間の有意な差は一方向ANOVAで測定した(ns>0.05、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【0106】
図5Aおよび5Bに示すように、TMSC-NV処理は、UV誘導老化HDF細胞の増殖を増加させた。SA-β-ガラクトシダーゼ分析を行って、TMSC-NVの老化防止の役割を確認した。
図5Cに示すように、TMSC-NVで処理したものがUV誘導老化HDFのβ-ガラクトシダーゼの活性を減少させたことを示した。
図5DのSA-β-ガラクトシダーゼ分析の定量的データは、TMSC-NV処理によって老化細胞の比率が減少することを示し、これはTMSC-NV処理がHDFの老化水準を減少させることを裏付けた。
【0107】
また、TMSC-NVで処理した後の局所付着におけるビンキュリンのタンパク質発現とアクチン細胞骨格における形態学的変化を調べた。免疫蛍光分析の結果、
図5Eおよび
図5Fに示すように、UV誘導老化HDFの局所接着力においてビンキュリンの献身度の増加を示し、これはTMSC-NV処理によって減少した。
【0108】
このような結果は、TMSC-NVがHDFの増殖を増加させ、継代によって誘発される老化を減少させることを示す。
【0109】
分子生物学的観点から、UV誘導老化モデルにおけるTMSC-NVの老化防止特性確認のために、老化関連ECMの生産および抗酸化遺伝子のmRNA発現をqPCRによって調べた。
【0110】
図6は、UV誘導老化モデルにおけるTMSC-NV処理による細胞外マトリックスおよび抗酸化遺伝子の制御に関する図であって、
図6Aは、UV誘導老化HDFにおけるCOL1、ELASTIN、SOD2、およびHMOX1のm-RNA発現を示す図であり、
図6Bは、UV誘導老化HDFコラーゲンタイプ1の免疫蛍光分析の結果を示す図であり、
図6Cは、免疫蛍光分析の定量的データを示す図である。
【0111】
図6Aに示すように、qPCRの結果は、COL1およびELASTINはUV照射後に減少し、TMSC-NV処理の結果著しく増加したCOL1を示した。しかし、ELASTINは増加しなかった。抗酸化遺伝子であるSOD2およびHMOX1はUV照射によって減少し、TMSC-NV処理によって増加した。また、
図6Bおよび
図6Cに示すように、免疫蛍光分析の結果、UV-誘導老化HDFにおけるコラーゲンタイプ1の発現減少を示し、これはTMSC-NVで処理すれば増加した。この結果は、TMSC-NVHがECMの生産および老化減少抗酸化遺伝子を増加させることを示す。
【0112】
分子生物学の面でCD16+ TMSC-NVの老化防止特性を確認するために、CD146+ TMSC-NV処理後に細胞外マトリックス(ECM)の生産および老化関連抗酸化遺伝子の遺伝子発現を調べた。
【0113】
図7は、継代関連老化モデルにおけるCD146+ TMSC-NV処理による増殖および老化の調節に関するものであって、
図7Aは、老化HDFにおけるCOL1およびHMOX1のm-RNA発現を示す図である。
【0114】
図7Aを参照すれば、CD146+ TMSC-NVを6日間処理した時、脂肪幹細胞ナノベシクル(ASC-NV)、骨髄幹細胞ナノベシクル(BMMSC-NV)で処理した時より、皮膚再生関連マーカーであるコラーゲンタイプ1のmRNA発現量が上昇し、抗酸化関連マーカーであるHMOX1の発現量が最も高く上昇することを確認した。
【0115】
図7Bは、老化関連β-ガラクトシダーゼ分析の結果を示す図であり(スケールバー=200μm)、
図7Cは、SA-β-ガラクトシダーゼ分析の定量的解析を示す図である。
【0116】
図7Bおよび
図7Cに示すように、CD146+ TMSC-NVで処理した老化線維芽細胞およびTMSC-NVで処理した老化線維芽細胞が比較的低い継代数の線維芽細胞とほぼ類似の程度に染色されることを確認した。
【0117】
前記結果に基づき、CD146+ TMSC-NVは、抗老化効能および皮膚再生効能が高いことが確認された。
【0118】
図8Aおよび
図8Bは、人体皮膚組織に紫外線B(ultraviolet B、UVB)を照射して皮膚老化モデルを作製し、CD146+ TMSC-NVを処理した後、人体皮膚組織を構成するコラーゲンタイプ1、コラーゲンタイプ3、インボルクリンおよびフィラグリンを免疫染色法により確認した結果である。
【0119】
前記結果に基づき、CD146+ TMSC-NVを処理した時、紫外線による人体皮膚組織の損傷が回復することを確認した。
【図】
【国際調査報告】