(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】モバイルデータ収集エージェントの管理
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G08G1/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518756
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 SE2022050842
(87)【国際公開番号】W WO2023055271
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524112854
【氏名又は名称】ユナイヴィルセス アーベー
【氏名又は名称原語表記】UNIVRSES AB
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セルビー,ヨナタン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルゲソン,スヴェン,オーケ
(72)【発明者】
【氏名】ピエロパン,アレッサンドロ
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB19
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF05
5H181MC02
5H181MC12
5H181MC16
5H181MC19
5H181MC27
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、物理的環境における物理的特徴のマップを生成する技術を実装し使用する方法および装置に関する。特徴データセットは、複数のモバイルエージェントから受信する。特徴データセットは、検出された物理的特徴、この特徴の地理的位置、検出された時間を表すタイムスタンプを記述するデータを含む。様々な特徴データセットの地理的位置のデータは、物理的環境のマップに統合され、ユーザに対して表示される。マップ上で、1つ以上の関心領域が特定される。関心領域には、特徴データセットが収集されない、または、収集された特徴データセットの数が不十分な地理的領域が含まれる。関心領域が特定された場合に、その関心領域の補足的特徴データセットを収集するよう、1つ以上のモバイルエージェントに指示が与えられる。特定された関心領域の補足的特徴データセットを用いて、マップが更新される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的環境における物理的特徴のマップを生成する方法であって、
物理的特徴を検出するように構成された複数のモバイルエージェントから、検出された物理的特徴、前記物理的特徴の地理的位置、および前記物理的特徴が検出された時間を表すタイムスタンプを記述する特徴データセットを受信するステップと、
様々な前記特徴データセットの地理的位置のデータを前記マップに統合し、統合した前記地理的位置のデータと共に前記マップをユーザに対して表示するステップと、
前記マップ上で、前記特徴データセットが収集されない、または、収集された前記特徴データセットの数が不十分な地理的領域を含む、1つ以上の関心領域を特定するステップと、
前記1つ以上の関心領域が特定された場合に、特定された前記関心領域の補足的特徴データセットを収集するよう、1つ以上の前記モバイルエージェントに指示するステップと、
特定された前記関心領域の前記補足的特徴データセットを用いて、前記マップを更新するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記補足的特徴データセットについて、統合し、特定し、指示し、更新する前記ステップを、終了条件に達するまで繰り返すステップ、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マップは都市環境を表すとともに、1つ以上の道路を含み、
前記物理的特徴は、前記道路の状況、前記道路に関する標識、前記道路内またはその周辺における歩行者または車両の交通のうち、1つまたは複数を含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記特徴データセットは、前記物理的特徴の画像をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上のモバイルエージェントは、携帯電話のカメラまたは車載カメラと、前記携帯電話のカメラまたは前記車載カメラが撮影した画像内の前記物理的特徴の1つ以上のカテゴリを検出するようにトレーニングされたニューラルネットワークとを含む、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上のモバイルエージェントには、前記特徴データセット、前記モバイルエージェントの位置、およびメタデータのうちの1つまたは複数をクラウドサービスに通信すると共に、派遣指示を受信するための無線通信デバイスがさらに設けられる、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
2つ以上の前記モバイルエージェントから受信した2つ以上の前記特徴データセットが、同じ物理的特徴に属するかを判定するステップと、
前記2つ以上の特徴データセットが前記同じ物理的特徴に属すると判定した場合に、前記2つ以上の特徴データセットを、単一の特徴データセットに統合するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
同じ地理的位置を共有すると共に、異なるタイムスタンプを有する特徴データセットから生成される物理的特徴の履歴を、ユーザに対して表示するステップ、
をさらに含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記補足的特徴データセットを収集するよう前記1つ以上のモバイルエージェントに指令する前記ステップにおいて、
前記補足的特徴データセットの収集を開始する前に、前記1つ以上のモバイルエージェント上で1つ以上の収集パラメータを変更すること、
を特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
選択された前記関心領域に1つまたは複数の前記モバイルエージェントを指示する前記ステップにおいて、
特定された前記関心領域を訪問して前記補足的特徴データセットを収集することに対するインセンティブを、前記モバイルエージェントに提供すること、
を特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記補足的特徴データセットを収集するよう、前記1つ以上のモバイルエージェントに指示する前記ステップにおいて、
前記関心領域について、重複した前記補足的特徴データセットの収集を回避するために、所与の関心領域内のモバイルエージェントの数を最適化すること、
を特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記モバイルエージェントは、地上のモバイルエージェントであること、
を特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記モバイルエージェントは、自律走行車両であること、
を特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記特徴データセット内の情報に基づいて、検出された前記物理的特徴に関する問題を特定するステップと、
特定された前記問題に対処するための改善措置を提供するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記マップは、前記モバイルエージェントによって収集されないサードパーティデータをさらに含むこと、
を特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
物理的環境における物理的特徴のマップを生成するためのコンピュータプログラム製品であって、
前記コンピュータプログラム製品は、その中に具現化されたプログラム指示を有するコンピュータ可読記憶媒体を備え、
前記プログラム指示は、プロセッサによって実行されることで、前記プロセッサに対して、
物理的特徴を検出するように構成された複数のモバイルエージェントから、検出された物理的特徴、前記物理的特徴の地理的位置、および前記物理的特徴が検出された時間を表すタイムスタンプを記述する特徴データセットを受信する動作と、
様々な前記特徴データセットの地理的位置のデータを前記マップに統合し、統合した前記地理的位置のデータと共に前記マップをユーザに対して表示する動作と、
前記マップ上で、前記特徴データセットが収集されない、または、収集された前記特徴データセットの数が不十分な地理的領域を含む、1つ以上の関心領域を特定する動作と、
前記1つ以上の関心領域が特定された場合に、特定された前記関心領域の補足的特徴データセットを収集するよう、1つ以上の前記モバイルエージェントに指示する動作と、
特定された前記関心領域の前記補足的特徴データセットを用いて、前記マップを更新する動作と、
を行わせることを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
物理的環境における物理的特徴のマップを生成するためのシステムであって、
物理的環境における物理的特徴を検出するように構成された1つ以上のモバイルエージェントと、
前記1つ以上のモバイルエージェントが収集したデータを記憶するデータストアと、
前記1つ以上のモバイルエージェントが収集したデータを含む前記マップを生成するマップジェネレータと、
生成された前記マップをユーザに対して表示し、前記ユーザから指示を受信する演算装置と、
高レベルのユーザ指示を受信し、受信した前記指示を、前記1つ以上のエージェント用の低レベルの指示に変換するオーケストレータ・コンポーネントと、
前記1つ以上のエージェントが使用する構成データおよび設定を保管するエージェント構成データリポジトリと、
プロセッサと、
メモリと、
を備え、
前記メモリは指示を記憶し、前記指示は、前記プロセッサによって実行されることにより、前記プロセッサに対して、
物理的特徴を検出するように構成された複数のモバイルエージェントから、検出された物理的特徴、前記物理的特徴の地理的位置、および前記物理的特徴が検出された時間を表すタイムスタンプを記述する特徴データセットを受信する動作と、
様々な前記特徴データセットの地理的位置のデータを前記マップに統合し、統合した前記地理的位置のデータと共に前記マップをユーザに対して表示する動作と、
前記マップ上で、前記特徴データセットが収集されない、または、収集された前記特徴データセットの数が不十分な地理的領域を含む、1つ以上の関心領域を特定する動作と、
前記1つ以上の関心領域が特定された場合に、特定された前記関心領域の補足的特徴データセットを収集するよう、1つ以上の前記モバイルエージェントに指示する動作と、
特定された前記関心領域の前記補足的特徴データセットを用いて、前記マップを更新する動作と、
を行わせることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公共のインフラストラクチャや民間のインフラストラクチャについての特徴または異常の検出に関する。より具体的には、複数のモバイルデータ収集エージェントを編成して、様々な関心領域において特徴または異常を検査、監視、判定する認知システムおよび関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公共の場でも私的な場でも、インフラの監視の維持には、多くの場合、多大な時間、資源、コストが必要とされる。問題に適切かつ早期に対処することで、民間の主体にとっても社会全体にとっても、多額の資金を節約することが可能となる。例えば、スウェーデンでは、道路の質の劣化に起因する自動車の損傷に関し、民間の自動車所有者において年間約1億米ドルに相当するコストが発生している。多くの都市で、市民からの報告が、利用可能な道路被害のデータの唯一の情報源となっている。市民から報告を受けると、検査官は、損傷の検査に赴くが、都市環境では、市民からの報告書に記載された位置が不正確であるか、または報告された位置がないことが起こり得るため、損傷が発生している位置を容易に発見できない場合がある。道路の損傷を発見すると、手作業により検査を行い、路面を主観的に評価する。都市が受け取る報告は限られた人数に基づくものであることから、都市の道路全体の状況を示す概要はなく、したがって、道路網の責任者が、修理に際しどの場所を優先するかを決定することは困難であった。
【0003】
上述したような問題は、道路の損傷に限って起こるものではない。ヨーロッパ全域で、交通標識の保守に関する対応の必要性が増している。例えば、ドイツでは、交通標識の33%が読みにくくなっていると考えられており、また、フランスでは、交通標識の40~50%が、見込まれる性能寿命を超過している。交通標識の損傷の発見もやはり、多くの場合、市民の関与に依存している。道路損傷の報告と同様に、都市が受け取る交通標識に関する報告の件数は限られることが多い。さらに、人員に限りのある検査官が、都市内の全ての道路をカバーすることは本質的に不可能である。このように、現状では、すべての交通標識の位置と状態の概要を得ることは困難である。
【0004】
さらに、道路工事に関係する問題が挙げられる。典型的には、毎週、道路作業の検査官は、都市部を移動しながら実施中の道路作業の検査を行う。道路作業の検査官は、道路工事の現場が安全であること、道路工事がスケジュール通りに進んでいること、また、道路周辺の交通に影響がないかどうかを確認する。しかし、道路工事の現場を発見できないことがある。これは、作業の実施日程についての請負業者との合意が大まかに決定される(例えば、3ヶ月以内)ためである。ところが、多くの場合、実際の作業はより短い期間で行われる。そのため、都市側は、その日にどこで道路工事が行われているのかがはっきりと把握できず、結果として、道路作業の検査官は、その時点で道路工事が行われていない現場を巡回してしまうことがあった。これらの不必要な移動に、年間で何千時間もの無駄な労働時間が費やされると、都市にとって不必要なコストが生じる。さらに、検査が行われないことにより、コンプライアンスが不十分となり、交通渋滞の増加や、安全性の低下につながるリスクがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した問題は一部に過ぎず、いずれの場合も、都市内のある一日において発生する事象について、より大きな規模の概要を得ること、また、可能な限り最良の方法でこれらの問題に対処することが困難であることを示している。例えば、静止監視カメラによって記録された画像を使用するか、または、Google Street Viewなどのオンラインデータベースに記憶された画像を使用することによって、これらの問題を軽減しようとする試みがなされている。しかしながら、そのようなデータは、往々にして古く(すなわち、現況を表すものではなく)、したがって、意思決定のために用いるには非常に限定されるものであり、また、時間、お金、人生などを失う可能性につながる不正確な行動を引き起こすリスクもある。したがって、特徴および異常についての現在のデータを収集し、特定された問題をどのように対処するかについての意思決定プロセスにおいて、収集されたデータを効率的に使用できるように処理するための、より良い方法およびシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概して、一態様では、本発明の様々な実施形態は、物理的環境における物理的特徴のマップを生成するためのコンピュータプログラム製品を含む、方法および装置を提供する。特徴データセットは、複数のモバイルエージェントから受信する。特徴データセットは、検出された物理的特徴、この物理的特徴の地理的位置、検出された時間を表すタイムスタンプを記述するデータを含む。様々な特徴データセットの地理的位置のデータは、物理的環境のマップに統合され、ユーザに対して表示される。マップ上で、1つ以上の関心領域が特定される。関心領域には、特徴データセットが収集されない、または、収集された特徴データセットの数が不十分な地理的領域が含まれる。関心領域が特定された場合に、その関心領域の補足的特徴データセットを収集するよう、1つ以上のモバイルエージェントに指示が与えられる。特定された関心領域の補足的特徴データセットを用いて、マップが更新される。
【0007】
本発明の様々な実施形態は、以下に記載の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。補足的データ特徴について、統合し、特定し、指示し、更新するステップは、終了条件に達するまで繰り返してもよい。マップは都市環境を表すとともに、1つ以上の道路を含み、物理的特徴は、道路の状況、道路に関する標識、道路内またはその周辺における歩行者または車両の交通を含んでもよい。特徴データセットは、特徴の画像をさらに含んでもよい。モバイルエージェントは、携帯電話のカメラまたは車載カメラと、携帯電話のカメラまたは車載カメラが撮影した画像内の物理的特徴の1つ以上のカテゴリを検出するようにトレーニングされたニューラルネットワークとを含む。1つ以上のモバイルエージェントには、特徴データセット、モバイル収集エージェントの位置、メタデータをクラウドサービスに通信すると共に、派遣指示を受信するための無線通信デバイスがさらに設けられてもよい。
【0008】
2つ以上のモバイルエージェントから受信した2つ以上の特徴データセットが、同じ物理的特徴に属するかを判定し、2つ以上の特徴データセットが同じ物理的特徴に属すると判定した場合に、2つ以上の特徴データセットを、単一の特徴データセットに統合してもよい。物理的特徴の履歴を、ユーザに対して表示してもよい。この履歴は、同じ地理的位置を共有すると共に、異なるタイムスタンプを有する特徴データセットから生成される。補足的特徴データセットを収集するよう、1つ以上のモバイルエージェントに指令するステップにおいて、補足的特徴データセットの収集を開始する前に、1つ以上のモバイルエージェント上で1つ以上の収集パラメータを変更してもよい。
【0009】
選択された関心領域に1つまたは複数のモバイルエージェントを指示するステップにおいて、特定された関心領域を訪問して補足的特徴データセットを収集することに対するインセンティブを、モバイルエージェントに提供してもよい。補足的特徴データセットを収集するよう、1つ以上のモバイルエージェントに指示するステップにおいて、関心領域について、重複した補足的特徴データセットの収集を回避するために、所与の関心領域内のモバイルエージェントの数を最適化してもよい。モバイルエージェントは、地上のモバイルエージェントであってもよい。モバイルエージェントは、自律走行車両であってもよい。特徴データセット内の情報に基づいて、検出された物理的特徴に関する問題を特定し、特定された問題に対処するための改善措置を提供してもよい。マップは、モバイルエージェントによって収集されないサードパーティデータをさらに含んでもよい。
【0010】
概して、別の態様では、本発明の様々な実施形態は、物理的環境における物理的特徴のマップを生成するためのシステムを提供する。このシステムは、物理的環境における物理的特徴を検出するように構成された1つ以上のモバイルエージェントと、1つ以上のモバイルエージェントが収集したデータを記憶するデータストアと、1つ以上のモバイルエージェントが収集したデータを含む物理的環境のマップを生成するマップジェネレータと、生成されたマップをユーザに対して表示し、ユーザから指示を受信する演算装置と、高レベルのユーザ指示を受信し、受信した指示を、1つ以上のエージェント用の低レベルの指示に変換するオーケストレータ・コンポーネントと、1つ以上のエージェントが使用する構成データおよび設定を保管するエージェント構成データリポジトリと、プロセッサと、メモリと、を備える。
【0011】
メモリは指示を記憶し、この指示は、プロセッサによって実行されることにより、プロッセサに対して以下の動作を行わせる。
・物理的特徴を検出するように構成された複数のモバイルエージェントから、検出された物理的特徴、物理的特徴の地理的位置、および物理的特徴が検出された時間を表すタイムスタンプを記述する特徴データセットを受信する動作と、
・様々な特徴データセットの地理的位置のデータを物理的環境のマップに統合し、統合した地理的位置のデータと共に物理的マップをユーザに対して表示する動作と、
・マップ上で、特徴データセットが収集されない、または、収集された特徴データセットの数が不十分な地理的領域を含む、1つ以上の関心領域を特定する動作と、
・1つ以上の関心領域が特定された場合に、特定された関心領域の補足的特徴データセットを収集するよう、1つ以上のモバイルエージェントに指示する動作と、
・特定された関心領域の補足的特徴データセットを用いて、マップを更新する動作。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る、物理的環境における物理的特徴のマップを生成するためのシステムの概略図を示す。
【
図2】一実施形態に係る、物理的環境における物理的特徴のマップを生成するための方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面および以下において、本発明の1つ以上の実施形態の詳細を説明する。本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明、図面、特許請求の範囲の記載の通りである。
【0014】
図面において、同じ要素には共通の参照記号を付している。
【0015】
[概要]
本発明の様々な実施形態は、都市または近隣などの物理的環境内の物理的特徴のマップを生成するための技術に関し、生成したマップにより、現在の情報と、物理的環境内で発生している様々な問題に関する全体的な概要とを提供するものである。このマップは、物理的環境の責任者であるユーザが、検出された問題の是正措置を開始するためのツールとして使用する。例えば、都市のマップでは、路面の窪みなどの道路損傷が発見された場所、損傷した道路標識の場所、または、進行中の道路作業が交通渋滞を引き起こす可能性がある場所が示される。これらの問題が発生している場所には、マップ上において、問題の「重大度」を示すインジケータを付随してもよく、このように構成することで、ユーザは、問題への対策を講じるにあたり優先順位をつけやすくなり、対策のためのリソースを適切に配備することが可能になる。
【0016】
特に、複数のモバイルエージェント(以下、単に「エージェント」と呼ぶ)は、物理的環境のデータを収集するために協働する。収集されたデータは、ユーザに対して表示するマップに(場合によっては、追加されるサードパーティデータと共に)統合される。マップに含まれる情報に基づいて、ユーザは、検出された問題について最良の対策を決定することができる。エージェントによるデータ収集を効率的に行うために、オーケストレータ・コンポーネントを使用する。オーケストレータ・コンポーネント(以下、単に「オーケストレータ」と呼ぶ)は、ユーザから、例えば、「少なくとも週に1回、都市道路の損傷を監視する」などの「高レベルの目標」を受け取ると、この高レベルの目標を解釈し、エージェント用に低レベルのデータ収集タスクを作成する。例えば、オーケストレータは、タスクやルートを作成して、個々のエージェントがより低いレベルの目的にしたがってデータを収集できるようにする。より低いレベルのデータ収集タスクは、ルートや報酬をエージェントに提供し、特定の時間内に特定の地理的エリアをカバーしたり、特定のエージェントにおいてセンシング技術を適応させ、特定の種類のデータを収集させたりするように構成してもよい。これらの操作は、3D位置決め(3D Positioning)、3Dマッピング(3D Mapping)、3D位置特定(3D Localization)、空間のディープラーニング(Spatial Deep Learning)、Visual-inertial SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)、LIDAR(Light Detection And Ranging) SLAM、ビジュアルオードメトリ(Visual Odometry)、物体検出(Object Detection)、追跡(Tracking)などの様々な技術により、すべて高度に自動化される。詳細は後述する。
【0017】
データ収集およびユーザへの視覚化を上述のように構成することで、ユーザまたは物理的環境の管理者は、発見された問題への対策をより良好かつより迅速に決定することができる。したがって、本明細書の背景技術において言及した問題に対し、有益な効果を奏することができる。
【0018】
[システムアーキテクチャ]
図1は、一実装形態に係る、物理的環境における特徴や異常を検出するためのシステム100の概略図を示す。
図1に示す通り、システム100は、物理環境のデータを収集する複数のエージェント102と、エージェント102が収集したデータを格納するデータストア104と、外部データを格納する任意の外部データストア106と、マップジェネレータ108と、演算装置110と、オーケストレータ・コンポーネント112と、エージェント構成データリポジトリ114とを含む。これらすべての構成要素は、当業者に知られる従来の通信プロトコルを使用し、有線または無線通信ネットワークの組み合わせによるネットワーク116を介して通信する。
【0019】
エージェント102は、地上または空中を移動し、画像および位置データを記録する撮像センサおよびモーションセンサを備える車両である。エージェント102は、例えば、自動車、航空機、自転車、ドローンなどの有人または無人車両である。撮像センサは、エージェントに恒久的にまたは一時的に取り付けられ、様々な種類のカメラ、例えば、携帯電話カメラまたはモノのインターネット(loT)デバイスに配置されたカメラなどである。エージェント102の位置情報は、例えば、エージェント102に恒久的または一時的に搭載された全地球航法衛星システムに関連するセンサによって判定され、様々な種類のカメラ、例えば、携帯電話カメラまたはモノのインターネット(IoT)デバイス内の位置センサからの入力を含んで構成される。
【0020】
図示した実施形態では、エージェント102は、演算装置またはプロセッサ、ならびに、4Gまたは5Gセルラー接続などのデータリンクを備える。これにより、エージェント102が、データをデータストア104に送信する前に、データリンクを介して、収集された画像および位置データを前処理することが可能になる。前処理を行うことで、エージェント102からデータストア104に送信するデータの量を大幅に減らすことができるため、送信がより効率的になり、データストア104に保持されるデータの量を抑えることができる。また、エージェント102は、エージェント構成データリポジトリ114と通信して、エージェントが収集し前処理することが期待されるデータの特定の種類に合わせて調整された、画像処理やニューラルネットワークソフトウェアなどの特定の設定およびソフトウェアを取得することができる。一般的には、エージェント102の前処理では、エージェント構成データリポジトリ114から取得した設定にしたがって撮影された画像を分析し「有用である」情報を抽出して、その情報を絞り込み、位置情報とともにデータストア104に送信する。詳細については、
図2を参照して後述する。
【0021】
データストア104は、エージェント102によって記録、前処理されたデータを保管する。データストア104は、クラウド上のプラットフォーム、例えば、プライベートクラウドのプラットフォーム、パブリッククラウドのプラットフォーム、または、これらのハイブリッドのプラットフォーム上に実装される。データストア104にデータを記憶することに加えて、クラウド上のプラットフォームでは、データが記憶される前に、データをさらに処理することも可能である。例えば、匿名化したり、位置決めに関するデータを精緻化したり、クラスタリング(すなわち、検出されたものが実際に新しいものであるか、または、以前に検出されたものであるかを判定)したり、あるエリアについて、新たに受信したデータを既存のデータと比較し、インベントリを更新またはデータストア104内のデータと現実世界との間の不一致を特定したりする。
【0022】
実装形態によっては、外部データストア106が設けられる。外部データストア106は、データストア104内のデータと組み合わせ可能なサードパーティデータを保管し、データストア104内のデータの汎用性を高めるように構成される。例えば、外部データストア106は、気象、様々な道路区画における道路規制(例えば、速度制限)、道路脇に設置されている資産(例えば、交通標識)の目録、一時的な変更事項(例えば、道路工事)、駐車スペースのマップに関する情報を保管する。データストア104と同様に、外部データストア106は、クラウド上のプラットフォーム、例えば、プライベートクラウドのプラットフォーム、パブリッククラウドのプラットフォーム、または、これらのハイブリッドのプラットフォーム上に実装される。
【0023】
マップジェネレータ108は、データストア104、および任意で設けられる外部データストア106からデータを取得し、物理的環境のマップにデータを重ね合わせる。このとき使用するマップは市販のマップである。マップジェネレータ108は、コンピュータデバイス上でローカルに実装してもよいし、または、クラウドアプリケーションとして実装してもよい。
【0024】
演算装置110は、生成したマップをユーザに対して表示するために使用される。ここで、ユーザとは、一般的には、都市またはその一部の物理的環境などに特定の責任を有する管理者である。マップは、演算装置110に組み込まれた(たとえば、演算装置110が携帯電話、タブレット、ラップトップ、または同様のデバイスの場合)ディスプレイ上に、または演算装置110の外部にあるディスプレイ(たとえば、1つ以上の別個のコンピュータモニタ)上に表示される。演算装置110は、ユーザからの指示を受信するためのキーボード、マウス、タッチスクリーン、音声入力などの入力部、ならびに、マップを変更または修正するためのプログラム指示のインポートを可能にすると共に、オーケストレータ112に指示を与えるためのインターフェース(例えば、USBポートまたはCD-ROMなどの無線または電気・機械的接続)をさらに含む。
【0025】
マップは、ウェブ上のユーザインターフェースにおいてディスプレイ上に表示されてもよいし、または、ローカルに実装される独立型のアプリケーションにおいて演算装置110上で表示されてもよい。一般的には、マップ用ユーザインターフェースは、ユーザによるズームイン、ズームアウト、パンなどの制御、ならびに、表示する「レイヤ」の選択制御が行えるように構成される。このように構成することで、例えば、ユーザは、渋滞、道路の種類、速度制限、道路工事、駐車場の空きなどの情報の表示を選択することができる。ユーザは、表示された情報を検討すると、演算装置110を使用して、オーケストレータ112に高レベル目標として指示を提供する。実装形態によっては、ユーザはまた、履歴データにアクセスすることができるため、例えば、道路作業の進行期間、または、都市の特定のエリア内の路面の窪みの総数が過去数ヶ月にわたってどのように変化したか、などを確認することができる。
【0026】
オーケストレータ112は、ユーザから高レベル目標を受信すると、受信した目標をより小さなタスクに分解する。分解したタスクは、エージェント構成データリポジトリ114からの必要な構成設定(または、エージェント102自体が構成設定を取得する方法についての指示)と共に、エージェント102に提供される。例えば、高レベルの目標は、「都市のあるエリアで開始された、ある新しい道路工事についての情報を週単位で提供する」、または「冬の間は毎日路面の窪みを監視するが、夏の間は週単位でのみ監視する」などである。オーケストレータ112は、特定のエージェント102に向けて明示的に指示するスケジュールを設定し、特定の期間において特定のデータを収集するために、都市において特定の区画に赴くようにさせる。このように構成することで、自動運転車両などの自律エージェント102をうまく機能させることができるが、一方で、エージェント102が人間、たとえばタクシーまたはバスの運転手によって操作されるものである場合には、あまりうまく機能しないことがある。そのような状況では、
図2を参照して以下でさらに詳細に説明する通り、代わりに、何らかのインセンティブをドライバに提供することがより好ましい。
【0027】
エージェント構成リポジトリ114は、エージェント102に送信されたり、または、エージェント102によって取り出されたりするデータを保管している。一般的には、構成データは、上述のように、エージェント102が収集すべきデータはどのようなものであるか、および、データストア104に送信される前のデータをエージェント102上でどのように処理されるべきかに関する。構成リポジトリ114内のデータは、収集するべきターゲットデータ、データストア104に送信すべきデータ、データストア104にデータを送信する頻度などに基づいて、エージェント102によって使用される様々な畳み込みニューラルネットワークまたは画像処理ソフトウェアなどである。
【0028】
[実施例:道路の損傷]
ここで、一実施形態による、物理的環境における物理的特徴のマップを生成する方法200のフローチャートを示す
図2を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。具体的には、
図2に示す例は、都市のある区間における道路被害の総合評価を表示するマップの生成に関する。しかしながら、この例は限定を意図するものではなく、例えば、交通標識、道路工事、駐車場の空き状況、交通渋滞、道路障害物など、他の特徴に対しても同様の原理を適用することができる。したがって、ここで説明される技術についての多くの変形例は、当業者にとって容易に利用可能なものである。
【0029】
図2に示す通り、エージェント102が収集した特徴データセットを受信すると、方法200が開始する(ステップ200)。上述のように、エージェント102は、地上または空中を移動し、画像および位置データを記録する撮像センサおよびモーションセンサを備える車両である。実装に応じて、エージェント102は、都市全体を、独立して、すなわち、多かれ少なかれランダムに、または、上述のように、一般的にはオーケストレータ112からの指示により制御されて移動する。エージェント102の最終的な目的は、ユーザにより定義されたより高いレベルの目標を満たすことである。
【0030】
エージェント102が収集するデータの種類は実装毎に異なる。この例では、ユーザは都市内の道路損傷状況の概要を作成することに関心があるため、エージェント102は、異なるタイプのセンサを単独または組み合わせて使用し、道路損傷の位置を判定する。ここで使用する適切なセンサは、全地球航法衛星システム(例えば、GPS、GEONASS、Baiduなど)を伴うセンサ、撮像センサ、慣性センサなどである。これらのセンサによって取得された情報を用いて三角測量をすることで、エージェント102が検出した特徴(例えば、道路損傷)の正確な位置を提供することができる。画像センサは、道路損傷の画像を撮影するために使用され、ニューラルネットワークなどの画像解析ソフトウェアは、路面の窪みの状態を評価するために使用される。実装によっては、これらの動作の全ては、例えば、自動車のダッシュボードや、自動二輪車もしくは自転車のハンドルバーなどに一時的に取り付け可能な携帯電話などの単一のデバイス上で行われる。
【0031】
一般的に、エージェント102によって使用されるソフトウェアは、エージェント102がアクティブになる前に、エージェント構成データリポジトリ114からエージェント102にダウンロードされる。例えば、スマートフォンをエージェント102として使用する場合、ユーザは、関心のある特徴を検出するために使用する設定やCNNについて指示する構成ファイルを含むアプリ(オンラインの標準的なアプリストアから取得することができる)をインストールする。エージェント102は、データを収集する前に、エージェントデータリポジトリ114からこれらの設定やCNNを取り出すことができる。エージェント102がコネクテッドカーである実装形態では、アプリは、車の特定の種類に合わせてカスタマイズされてもよい。エージェント102にソフトウェアをダウンロードできるようにすることで、エージェント102は、様々な目的に合わせて再構成されるようになる。例えば、エージェント102を、午前中は路面の窪みを検出し、同じ日の午後には道路標識を検出するように構成してもよい。このように構成することにより、各エージェント102が単一で専用の目的を持って構成される場合と比較して、システム100は、はるかに柔軟かつ効率的なものとなる。アプリのユーザインターフェースは、様々な度合いのコンフィギュアビリティとすることができるが、一般的には、可能な限りシンプルに構成して、特別な技術的スキルを必要とすることなく、様々な人々によって使用可能なようにすることが望ましい。例えば、ある実施形態では、ユーザインターフェースは、電話への基本的な搭載に関する指示、データ収集を開始および停止させるための制御、電話の画面上のグラフィックを用いた、検出された特徴の表示、データ収集セッション中に検出された特徴の概要を取得するための制御などからなる。
【0032】
画像データのサイズは非常に大きくなることがあるため、エージェント102上のソフトウェアは、データ量を減らすこと、および、データストア104に多数の画像を送信するのではなく、送信する特徴データセットを少なくなるよう作成することが求められる。このように構成する方法は複数あるが、いずれの方法も、個別の状況に応じるものである。例えば、道路被害に関するデータを収集する場合、エージェントは、都市の道路に沿って移動する際に位置情報および画像を取得する。ある実装形態では、この道路を、本明細書では「ビン」と呼ばれるより小さいセクションに分割する。「ビン」とは、いずれも当業者によく知られている技術である、WGS-84などのグローバル基準フレーム、または、OSGB36などのローカル直交投影に関して定義される。一般的には、ビンは、道路の約5~7メートルの区間に対応する。エージェント102がビンを横断する間に撮影した画像は、エージェント構成データリポジトリ114から取得したCNNによってエージェント102上で分析される。道路損傷の特定の事例の検出(例えば、路面の窪み、亀裂、パッチなど)が行われ、その損傷の特性が評価される(例えば、大きさ、長さ、ロケーションコンテキストなど)。分析は、ビン内の道路区間の品質を表す「スコア」を用いて出力される。例えば、0~5の範囲のスコアにおいて、「0」は新たに路面が修繕された道路の品質を、「5」は重大な損傷を表すようにする。ビンには、スコア、ビン位置座標、および、オプションとして1枚の確認画像とともに、特徴データセットを形成する識別子が割り当てられ、上述のように、エージェント102とデータストア104との間の無線リンクまたは他の種類の接続を使用して、データストア104に送信される。
【0033】
上述のように、実施形態によっては、データストア104は、クラウドコンピューティングプラットフォーム上で実装される。特徴セットをデータストア104に記憶する前に、クラウドコンピューティングプラットフォームにおいて、さらなる処理が施されるように構成してもよい。例えば、特徴データセットを匿名化する、他のエージェント102が収集した重複する特徴データセットを特定して統合する、位置(または、特徴が配置されているビン)を精緻化する、特徴の変化の状態を判定するために、以前の検出と比較する、局所領域における複数の検出を組み合わせる(例えば、平均化)などの処理を行ってもよい。これらはすべて、その時々の状況に応じた様々な種類の処理であり、当業者であれば実現可能なものである。
【0034】
方法において、特徴データセットの受信ステップが完了すると、マップを作成してユーザに表示するステップ204に進む。マップは、例えば、Googleマップ、Appleマップなどの様々なマップサービスプロバイダによって使用されるマップと同様の、電子フォーマットの従来の地理的マップを利用し、収集した特徴データセットをジオリファレンスデータ型フォーマット(例えば、GeoJsonオープン標準フォーマット)で記憶し、収集した特徴データセットをこのマップに追加することによって作成することができる。実装形態によっては、天候、様々な道路区画における道路規制(例えば、速度制限)、道路脇に設置されている資産(例えば、交通標識)の目録、一時的な変更事項(例えば、道路工事)、駐車スペースのマップに関する情報など、様々な種類のサードパーティデータをマップに追加してもよい。
【0035】
作成されたマップは、演算装置110のユーザインターフェース上でユーザに対して表示される。図示した実施形態では、ユーザインターフェースは、ウェブ上のユーザインターフェースであり、ユーザは、マップに含める情報の種類を選択することができる。例えば、エージェント102が収集したデータから関連する結論を引き出せるように、道路損傷、道路標識、速度制限などに関する情報を任意の組み合わせで表示させることができる。
【0036】
マップを確認すると、ユーザ(または、実装形態によっては演算装置110自体)は、ステップ206において、補足的データセットを収集するためにエージェント102を派遣する関心領域を特定する。例えば、ユーザまたは演算装置110は、マップの特定のエリアについて、道路状態を評価、および、路面の窪みなどの損傷の修復方針を決定するにあたり、十分な情報を含んでいないと判定することがある。例えば、エージェント102が多かれ少なかれ恣意的に移動している都市において、交通量の多い道路では大量のデータが収集されるが、交通量の少ない脇道ではほとんどデータが収集されないことがある。ユーザは、演算装置110を用いて、これらの関心領域について、補足的データセットを収集するようオーケストレータ112に指示することができる。
【0037】
オーケストレータ112への指示は、例えば、「午後3時までにグリーンストリートの道路損傷について追加のデータを収集する」、または、「2週間ごとに都市のセクタAにおいて、主要道路の少なくとも80%の道路損傷データを更新する」など、より明確な内容であってよい。オーケストレータ112は、これらの指示を受信すると、どのエージェント102および構成オプションが利用可能であるかを評価し、エージェント102に、必要となる補足的データを収集するように指示する。
【0038】
一例として、都市管理者が、ある時間内に特定の頻度で、都市内の各道路からデータを要求するシナリオについて説明する。例えば、保守管理者が、毎月1回の頻度で、都市内の路面の窪みなどの損傷について、各道路を調査することを希望したとする。これは、管理者の経験に基づいて作成された目標であり、時間とともに進行する道路損傷についての知見に対応している。目標(何を検出するか)は、頻度(1日に1回、1ヶ月に2回)と同様に変わることがある。また、目標は、道路の種類(主要道路では1日1回、小さな道路では1週間に1回)や立地(都市内の道路では1日1回、農村の道路では1週間に1回)、その時々の目的(都市管理者が、具体的な事象についての報告を受け、確認するためのデータを必要としている)によって異なることがある。
【0039】
オーケストレータ112は、エージェント102によって、都市内の各道路が最後に調査されたときと、そのときに調査されたものとの両方を観測することができる。都市管理者が設定した目標を達成するために、オーケストレータ112は、ルートを生成し(または、エージェントのルートに影響を及ぼす報酬を生成し)、エージェント102が各道路を移動する際に正しいデータが収集されるよう、位置および時間に基づいてエージェントのデータ収集機器(例えば、スマートフォン)を構成する。
【0040】
前回の調査から経過した時間と、都市管理者が設定した目的が達成されない可能性とが増すにつれて、特定の道路の再調査に重点が置かれるようになる。例えば、実施形態によっては、(例えば、何らかの報酬システムを介した)優先度の増加は、時間に対して線形となる。または、優先度の増加は非線形であり、例えば、エージェント102がランダムに通りを移動して再調査することで、その道路の「時計」をリセットしてもよい。最後の調査から経過した時間が、都市管理者によって設定された期限に近づくにつれて、エージェント102が特定の道路をランダムに移動する機会が減少するため、その特定の道路を再調査するために、エージェント102に「影響を与える」必要性が増す。よって、エージェント102に提供される報酬のレベルは、最後の調査から経過した時間が、都市管理者によって設定された高レベル目標が達成されない時間点に達するまで、時間内にさらなる調査が実行されない場合、実質的に増加する。
【0041】
このようにして、オーケストレータ112は、エージェント102が解釈することができる低レベルの指示にしたがってデータを収集するように、エージェント102に
指令を出すことができる。一方で、その指令は、個々のエージェントの行動が、都市管理者の設定した高レベル目標を達成するデータを生成するように作成されている。
【0042】
上述した通り、エージェント102が自立走行車両である実装形態では、オーケストレータ112は、必要に応じて、場合によっては構成設定を修正して、補足的データセットを収集するために同じエージェント102を再度派遣するか、または補足的データセットを収集するために他のエージェント102を派遣するだけで、低レベルの指示を作成することができる。他の実装形態において、オーケストレータ112のエージェント102に対する制御があまり直接的でない場合には、オーケストレータ112は、そのエージェントに対してインセンティブを提供してもよい。例えば、特定のエリアの道路の80%がカバーされている場合、タクシー運転手に、残り20%の道路を優先して走行することに対する報酬を提供してもよい。例えば、タクシー運転手に対して、次の数分/数時間/数日内に、これらの場所のうちの1つ以上を通過すると、特定のガソリンスタンドでのガソリン価格の割引を受ける資格があることを知らせる通知(例えば、道路のリストまたはマップ)を、携帯電話上で受け取ることができるようにする。特定のタスクを実行するように人々にインセンティブを与える方法は非常に多くあることは当業者に広く知られており、これらの方法についての完全なリストを本明細書において提供することは不可能である。ここでは、エージェント102に対して補足的データセットを収集するようにインセンティブを与えるための方法は複数あると言及するのみに留める。
【0043】
最後に、ステップ208において、補足的データセットによりマップが更新される。これにより、方法200が終了する。マップの更新は、ステップ204における初期データセットについて上述したものと同様の方法で行うことができる。道路損傷に対処する方法を決定するために利用可能な情報がまだ十分でないとユーザが判断した場合は、マップに含まれる情報にユーザが満足できる程度に十分な数の補足的データセットが収集されるまで、ステップ206と208を繰り返してもよい。このようにして、ユーザは、道路損傷の問題に対処するための行動を開始することができる。これらの行動がどのようなもので、どのように実行されるかは、この発明の範囲には含まれない。
【0044】
実施形態によっては、フィードバックループを備えてもよい。このフィードバックループでは、特定の事象、例えば、路面の窪みが修理作業員によって修理されたこと、が示されると、オーケストレータ112は、道路が十分な状態であることを確認するためにその場所に赴くようエージェント102を動機付ける。その結果によって、道路の損傷の修理作業が、自動的に「完了」ステータスに更新される。
【0045】
上述した例示的な実施形態では、主に道路状況に関する問題に焦点を当ててきたが、同様の技術を他の状況に適用することも可能である。例えば、都市において、路上駐車場の管理はしばしば問題となる。稼働率は、合意目標よりも高いことが多い。利用可能なスペースと関連する稼働率を監視するための既存の方法は、時間とコストを要する上に非効率的で、また、一年のうち特定の時期にしか行われないこともある。得られたデータはすぐに古くなり、限られたスペースしかカバーすることができない。このように、路上駐車場を適切なレベルで提供することは困難であり、また、ドライバにとっても、都市内で駐車場を見つけることは難しく、ストレスとなることが多い。さらに、交通セクタからの排出量のかなりの部分が、駐車スペースを探す行動に起因している。特別な指定を受けた駐車スペース(例えば、荷物の積み下ろし専用の駐車スペースや、身体障害者用の駐車スペース)の現在の位置に関するデータがないことも、特定の問題につながる可能性がある。
【0046】
そこで、本明細書で説明した技術を使用して、路上駐車スペースの最近の空き状況をマッピングすることにより、都市による管理を改善することができる。障害物、一時的な駐車、道路工事などの最近の変化をより容易に検出することができる。また、このデータをドライバと共有することで、ドライバを最も近い空きのある駐車スペースに誘導できるため、駐車スペースを探すドライバの数が減る。このように、渋滞や排気ガスにも有益な影響を与え、概して安全な都市環境作りに貢献することができる。
【0047】
上述の原理について都市環境を例に用いて説明したが、様々な民間の環境においても適用することができる。例えば、大型倉庫においてフォークリフトにカメラを装備し、人(安全上の危険)、損傷、パレット、事故の記録などを検出するモバイルエージェントとして機能させてもよい。こうして記録された特徴や事象を、倉庫の管理者に「倉庫マップ」として提供することで、管理者は、ある時点において倉庫内で起こっている事象についての概要を把握できるため、問題に対処するための適切な行動をとることが可能になる。
【0048】
同様に上述の原理が適用できる他の環境として、空港の駐機場が挙げられる。空港の駐機場においては、検出されない事象または危険がもたらす結果は、都市環境と比較してより一層重大であり、より一層迅速に対処する必要がある。駐機場を横断する各種車両にカメラを装備してエージェントとして動作させ、得られた結果をマップ上に表示して管理者に提示する。管理者は、特定された懸念事項に対処するために必要な行動について決定を行う。以上に述べた2つの適用ケースは例示に過ぎず、鉄道や地下鉄の駅など、上記の技術を適用することができる領域は他にも多数存在することは、当業者であれば理解可能である。
【0049】
実装形態によっては、上述したオーケストレーションの技術を、より小さいスケールで使用することもできる。例えば、都市における給水または下水システムの定期的な検査の実施や、建物管理者による大規模オフィスビルなどのエアダクトの検査の実施などが挙げられる。エージェント102をこれらの特殊環境に合わせて適切に構成し、エージェントをどのように横断させるかについて、上述の原理を適用することができる。
【0050】
さらに、上述した実施形態では、カメラなどの画像センサを使用したが、光学センサ、赤外線撮像センサ、紫外線撮像センサ、光検出および測距(LIDAR)センサ、合成開口レーダ(SAR)センサ、電磁気(EM)・音響センサ、または、物理的環境において物理的特徴の1つ以上の画像を生成することが可能な他のセンサなど、他の種類のセンサを使用してもよい。
【0051】
本発明は、可能な技術的詳細レベルの統合における、システム、方法、コンピュータプログラム製品であってもよい。コンピュータプログラム製品は、本発明の態様をプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読プログラム指示を有するコンピュータ可読記憶媒体(または複数の媒体)を含んでもよい。
【0052】
コンピュータ可読記憶媒体は、指示実行デバイスが使用する指示を保持および記憶する有形デバイスであってもよい。コンピュータ可読記憶媒体は、たとえば、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光記憶デバイス、電磁記憶デバイス、半導体記憶デバイス、またはこれらの適切な組合せであってもよく、一方で、これらに限定されるものではない。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例の非網羅的なリストには、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ポータブルコンパクトディスク読取り専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、メモリスティック、フロッピーディスク、パンチカードまたは指示が記録された溝内の隆起構造などの機械的に符号化されたデバイス、およびこれらの適切な組合せが含まれる。本明細書で使用されるコンピュータ可読記憶媒体は、電波または他の自由に伝播する電磁波、導波管または他の伝送媒体(たとえば、光ファイバケーブルを通過する光パルス)を通って伝播する電磁波、またはワイヤを通して送信される電気信号などの一過性の信号そのものであると解釈されるものではない。
【0053】
本明細書で説明するコンピュータ可読プログラム指示は、コンピュータ可読記憶媒体から、各演算・処理デバイスに、またはネットワーク、例えば、インターネット、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、ワイヤレスネットワークを介して外部コンピュータまたは外部記憶装置に、ダウンロードすることができる。ネットワークは、銅線伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイコンピュータ、エッジサーバから構成されていてもよい。各演算・処理デバイス内のネットワークアダプタカードまたはネットワークインターフェースは、ネットワークからコンピュータ可読プログラム指示を受信し、各演算・処理デバイス内のコンピュータ可読記憶媒体に記憶するために、コンピュータ可読プログラム指示を転送する。
【0054】
本発明の動作を実行するためのコンピュータ可読プログラム指示は、アセンブラ指示、指示セットアーキテクチャ(ISA)指示、マシン指示、マシン依存指示、マイクロコード、ファームウェア指示、状態設定データ、集積回路用構成データ、またはSmalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語などの手続き型プログラミング言語を含む、1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組合せで書かれたソースコードもしくはオブジェクトコードのいずれかであってもよい。コンピュータ可読プログラム指示は、ユーザのコンピュータ上で完全に実行してもよいし、独立型のソフトウェアパッケージとしてユーザのコンピュータ上で部分的に実行してもよいし、リモートコンピュータ上で部分的に実行してもよいし、リモートコンピュータまたはサーバ上で完全に実行してもよい。後者の場合、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを介してユーザのコンピュータに接続されてもよいし、(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを介して)外部コンピュータに接続されてもよい。実施形態によっては、例えば、プログラマブル論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはプログラマブル論理アレイ(PLA)を含む電子回路は、本発明の態様を実行するために、コンピュータ可読プログラム指示の状態情報を利用して、コンピュータ可読プログラムを実行し、電子回路を個々に最適化することができる。
【0055】
本明細書では、本発明の態様が、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャート図やブロック図を参照して説明される。フローチャート図やブロック図の各ブロック、ならびにフローチャート図やブロック図のブロックの組合せは、コンピュータ可読プログラム指示によって実施される。
【0056】
これらのコンピュータ可読プログラム指示は、コンピュータのプロセッサ、または他のプログラマブルデータ処理装置に提供され、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行される指示が、フローチャートやブロック図のブロックまたはブロックで指定された機能や動作を実施するための手段を作成するように、機械を生成することができる。また、これらのコンピュータ可読プログラム指示は、コンピュータ、プログラマブルデータ処理装置、他のデバイスに特定の方法で機能するように指示することができるコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよく、その結果、その中に記憶された指示を有するコンピュータ可読記憶媒体は、フローチャートやブロック図のブロックまたはブロックにて指定された機能や動作の態様を実施する指示を含む製造品を構成する。
【0057】
コンピュータ可読プログラム指示は、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、または他のデバイスにロードされ、コンピュータ、他のプログラマブル装置、または他の装置上で実行される指示が、フローチャートやブロック図のブロック、またはブロックで指定された機能や動作を実施するように、コンピュータ実装プロセスを生成するための一連の動作ステップをコンピュータ、他のプログラマブル装置、または他の装置上で実行させてもよい。
【0058】
図中のフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、コンピュータプログラム製品について、実装しうるアーキテクチャ、機能、および動作を示している。これに関して、フローチャートまたはブロック図中の各ブロックは、指定された論理機能を実装するための1つまたは複数の実行可能指示を備える、モジュール、セグメント、または指示の一部を表すことがある。代替的な実装形態によっては、ブロック中に示された機能は、図中に示した順序から外れて起こる場合がある。例えば、連続して示した2つのブロックが、実際には、1つのステップとして達成されたり、同時に、実質的に同時に、部分的にまたは全体的に時間的に重複して実行されたりする場合があり、または、ブロックが、関係する機能に応じて、逆の順序で実行される場合がある。ブロック図やフローチャート図の各ブロック、ならびにブロック図やフローチャート図のブロックの組合せは、指定された機能もしくは行為を実行するか、または専用ハードウェアとコンピュータ指示との組合せを実行する専用ハードウェア上のシステムによって実装されることもある。
【国際調査報告】