(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】グラフェン放熱膜コイル材の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
C01B 32/182 20170101AFI20240920BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C01B32/182
C09K5/14 E ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518764
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 CN2022137424
(87)【国際公開番号】W WO2023165204
(87)【国際公開日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】202210209571.0
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524112935
【氏名又は名称】浙江道明超導科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG DAOMING SUPERCONDUCTOR TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Floor 4,No.1 Yingbin Avenue,No.3 Xiangzhu Industrial Zone,Xiangzhu Town,Yongkang City Jinhua,Zhejiang 321300,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 洪春
(72)【発明者】
【氏名】張 澤▲フイ▼
(72)【発明者】
【氏名】胡 鋒
(72)【発明者】
【氏名】呉 立考
(72)【発明者】
【氏名】許 佩
(72)【発明者】
【氏名】劉 壮
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC26A
4G146AC26B
4G146AD20
(57)【要約】
グラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスであって、酸化グラフェンケーキを用いて、酸化グラフェン分散液を調製するステップS1と、均質化、脱泡処理を行うステップS2と、コータで酸化グラフェンスラリーを基材上に塗布し、次に、剥離、スリット処理を行い、前処理グラフェン膜を得、これを巻き取って緊密な前処理グラフェン膜タイトコイル材(1)を得るステップS3と、前処理グラフェン膜タイトコイル材(1)を巻き戻し機構に入れて巻き戻し処理を行い、前処理グラフェン膜ルースコイル材(2)を得るステップS4と、前処理グラフェン膜ルースコイル材(2)に低温処理、炭化処理、黒鉛化処理を行って、グラフェン発泡膜コイル材を得るステップS5と、グラフェン発泡膜コイル材に単層ロールプレス又は多層ロールプレスを行って、グラフェン放熱コイル材を得るステップS6と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスであって、
酸化グラフェンケーキを脱イオン水に分散させ、3重量%~6重量%の酸化グラフェン分散液を調製するステップS1と、
前記酸化グラフェン分散液のPH値が6~10となるまで前記酸化グラフェン分散液にアンモニア水をゆっくりと注入し、その後、均質化、脱泡処理を行い、粒子径が0.5μm~3μmの範囲に制御された粘度15000~60000Pa/sの酸化グラフェンスラリーを得るステップS2と、
基材を準備し、塗布厚さを0.1~0.5mmに制御しながら、コータで前記酸化グラフェンスラリーを前記基材上に塗布し、その後、40~85℃の環境で乾燥し、次に、剥離、スリット処理を行い、前処理グラフェン膜を得、巻き取り回転数を0.5~2.5m/min、巻き取り張力を20~200Nに制御して巻き取り機構で巻き取り、緊密な前処理グラフェン膜タイトコイル材(1)を形成するステップS3と、
前記前処理グラフェン膜タイトコイル材(1)を巻き戻し機構に入れて、前記巻き戻し機構の回転数を30m/min未満、巻き取り張力を30N以下に制御して巻き戻し処理を行い、所定の緊張度を有する前処理グラフェン膜ルースコイル材(2)を得るステップS4と、
前記前処理グラフェン膜ルースコイル材(2)を200℃~450℃の環境で12~200h低温処理し、次に、1400℃以下の環境で10~50h炭化処理し、最後に3200℃以下の環境で10~50h黒鉛化処理し、グラフェン発泡膜コイル材を得るステップS5と、
圧力1T~5Tの押圧ロールの作用によって前記グラフェン発泡膜コイル材に単層ロールプレス又は多層ロールプレスを施し、熱伝導率800~2000w・m/Kのグラフェン放熱コイル材を得るステップS6と、を含むことを特徴とするグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセス。
【請求項2】
ステップS4では、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材(1)に対して巻き戻し処理を行う前に、予備積層機構(3)を用いて塗布予備積層処理を行い、前記予備積層機構(3)は、繰出しロール群(31)、接着剤収容管群(32)、巻き取りロール(33)を含み、前記塗布予備積層処理ステップは、複数の前処理グラフェン膜タイトコイル材(1)を前記繰出しロール群(31)に取り付け、前記繰出しロール群(31)の回転数を1~5m/minに設定し、前記巻き取りロール(33)の回転数を1~5m/minに設定し、巻き取り張力を5~500Nに制御するステップS4-1と、
接着剤を接着剤収容管群(32)に入れて、前記接着剤収容管群(32)で前記接着剤を前記前処理グラフェン膜タイトコイル材(1)の表面に均一に塗布し、粘着層を形成し、続いて、20~60℃の環境で3~48min乾燥し、前記粘着層の乾燥厚さを2~20μmにするステップS4-2と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセス。
【請求項3】
前記接着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレングリコール水性樹脂、ポリウレタン樹脂のうちの1種又は複数種を含むことを特徴とする請求項2に記載のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセス。
【請求項4】
塗布予備積層処理後の前処理グラフェン膜タイトコイル材(1)に孔開け処理を施し、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材(1)に孔径10~500μmの微小孔を2000~100000個/m
2の分布密度で開けることを特徴とする請求項2に記載のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセス。
【請求項5】
孔開け処理を受けた前処理グラフェン膜タイトコイル材(1)を50℃~150℃の環境で3~10h養生することを特徴とする請求項4に記載のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセス。
【請求項6】
ステップS6では、多層ロールプレスには後積層ロールプレス機構(4)が使用され、前記後積層ロールプレス機構(4)は、2~5個の牽引ロール(41)、巻き取り丸ロール(42)を含み、前記牽引ロール(41)の回転数が1~5m/minに設定され、前記巻き取り丸ロール(42)の回転数が1~5m/minに設定され、巻き取り張力が5~200Nに制御されることを特徴とする請求項1に記載のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセス。
【請求項7】
前記前処理グラフェン膜タイトコイル材(1)は、幅が10cm~70cm、長さが30m~200mであることを特徴とする請求項1に記載のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセス。
【請求項8】
前記前処理グラフェン膜ルースコイル材(2)における隣接する膜層のギャップDが、膜層厚さの2~9倍であることを特徴とする請求項1に記載のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセス。
【請求項9】
ステップS2の均質化処理において、均質化圧力は30~150MPaであり、温度は10℃~50℃に制御され、脱泡処理において、真空度は1KPa~10KPaに保持されることを特徴とする請求項1に記載のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセス。
【請求項10】
ステップS6では、多層ロールプレスは、繰出しセクション、第1精密プレスセクション、第2精密プレスセクション、第3精密プレスセクション、第4精密プレスセクション、巻き取りセクションを含み、前記繰出しセクション、巻き取りセクションにいずれも張力制御ユニットと張力アンプが設けられ、前記第1精密プレスセクション、第2精密プレスセクション、第3精密プレスセクション、第4精密プレスセクションにいずれも圧力制御ユニット、圧力センサ、線速度制御ユニット、速度計が設けられ、前記張力制御ユニット、圧力制御ユニット、線速度制御ユニットは、すべてPLC中央処理装置に接続されることを特徴とする請求項1に記載のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンの技術分野に関し、特にグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導性放熱膜は、現在の電子、通信、航空、国防・軍需産業などの多くの分野で広く使用されており、その中でも、グラフェン放熱膜は、高い熱伝導率、軽量、小型などの優位性から広く使用され、迅速に従来の材料に代替されている。
【0003】
現在のグラフェン放熱膜の主流の製造方法には、塗布熱処理法がある。塗布熱処理法のプロセスの流れは、スラリーの調製、塗布、異物除去、熱処理、圧延などの工程を含み、シート状に切断してから、後続の処理を行う。しかし、このような製造プロセスは連続式ではなく、グラフェンシートしか製造できないため、後続の型抜きコストが高く、生産工程が煩雑で、人件費が高く、工業自動化生産の需要を満たすことができず、グラフェン放熱膜の普及に不利である。
【0004】
上記の現状に基づいて、工業化生産に適するグラフェン放熱膜の連続製造プロセスは最適化される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、グラフェン放熱膜製造プロセスがグラフェンシートしか製造できないため、後続の型抜きコストが高く、生産工程が煩雑で、人件費が高く、工業化オートマトン生産の需要を満たすことができないなど、従来技術に存在している欠陥に対して、新しいグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、以下の技術的解決手段によって達成させる。
【0007】
グラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスであって、
酸化グラフェンケーキを脱イオン水に分散させ、3重量%~6重量%の酸化グラフェン分散液を調製するステップS1と、
前記酸化グラフェン分散液のPH値が6~10となるまで前記酸化グラフェン分散液にアンモニア水をゆっくりと注入し、その後、均質化、脱泡処理を行い、粒子径が0.5μm~3μmの範囲に制御された粘度15000~60000Pa/sの酸化グラフェンスラリーを得るステップS2と、
基材を準備し、塗布厚さを0.1~0.5mmに制御しながら、コータで前記酸化グラフェンスラリーを前記基材上に塗布し、その後、40~85℃の環境で乾燥し、次に、剥離、スリット処理を行い、前処理グラフェン膜を得、巻き取り回転数を0.5~2.5m/min、巻き取り張力を20~200Nに制御して巻き取り機構で巻き取り、緊密な前処理グラフェン膜タイトコイル材を形成するステップS3と、
前記前処理グラフェン膜タイトコイル材を巻き戻し機構に入れて、前記巻き戻し機構の回転数を30m/min未満、巻き取り張力を30N以下に制御して巻き戻し処理を行い、所定の緊張度を有する前処理グラフェン膜ルースコイル材を得るステップS4と、
前記前処理グラフェン膜ルースコイル材を200℃~450℃の環境で12~200h低温処理し、次に、1400℃以下の環境で10~50h炭化処理し、最後に3200℃以下の環境で10~50h黒鉛化処理し、グラフェン発泡膜コイル材を得るステップS5と、
圧力1T~5Tの押圧ロールの作用によって前記グラフェン発泡膜コイル材に単層ロールプレス又は多層ロールプレスを施し、熱伝導率800~2000w・m/Kのグラフェン放熱コイル材を得るステップS6と、を含む。
【0008】
ステップS1では、酸化グラフェン分散液の重量百分率は後続の粘度を制御し易くするために制御される。
【0009】
ステップS2では、酸化グラフェン分散液のPH値が11を超えると、酸化グラフェンGOは還元されやすく、その結果、凝集が起こり、したがって、本発明では、アンモニア水を加えることでPH値を6~10の範囲に調整することにより、酸化グラフェンに負の電荷を帯電させ、また、均質化、脱泡処理を組み合わせることによって、酸化グラフェン分散液の分散効果を効果的に高めることができる。
【0010】
また、均質化処理により、酸化グラフェン分散液中の大粒子が小粒子に粉砕され、粒子径が均一で分散効果が良好な酸化グラフェン分散液が得られるとともに、製品の安定性の向上にも有利である。
【0011】
ステップS4では、グラフェン膜は、高温処理中に膨張しながら放熱し、大量のガスを放出するが、巻き戻し処理により、前処理グラフェン膜ルースコイル材の隣接する膜層の間に適切なギャップが生じ、それにより、放熱性や通気性の向上に有利である。
【0012】
ステップS5では、低温処理は、水やほとんどの酸素含有官能基を除去し、爆発を防止することができ、炭化及び黒鉛化は、熱伝導性(熱拡散係数)を向上させることができる。
【0013】
ステップS6では、ロールプレスは、グラフェン放熱コイル材の密度を高め、熱伝導率を向上させることができる。
【0014】
本発明の製造プロセスは、連続した分散が安定的なグラフェン放熱膜コイル材を製造することができ、しかも、プロセスの安定性が良好で、生産効率が顕著に向上し、コストが低下する。
【0015】
好ましくは、上記のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスにおいて、ステップS4では、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材に対して巻き戻し処理を行う前に、予備積層機構を用いて塗布予備積層処理を行い、前記予備積層機構は、繰出しロール群、接着剤収容管群、巻き取りロールを含み、前記塗布予備積層処理ステップは、複数の前処理グラフェン膜タイトコイル材を前記繰出しロール群に取り付け、前記繰出しロール群の回転数を1~5m/minに設定し、前記巻き取りロールの回転数を1~5m/minに設定し、巻き取り張力を5~500Nに制御するステップS4-1と、
接着剤を接着剤収容管群に入れて、前記接着剤収容管群で前記接着剤を前記前処理グラフェン膜タイトコイル材の表面に均一に塗布し、粘着層を形成し、続いて、20~60℃の環境で3~48min乾燥し、前記粘着層の乾燥厚さを2~20μmにするステップS4-2と、を含む。
【0016】
より厚いグラフェンコイル材を製造するとともに、圧延中の層分離現象を回避するために、
ステップS4-1では、予備積層機構は複数の前処理グラフェン膜タイトコイル材を積層することで、コイル材の厚さを迅速に増加させることができる。
【0017】
ステップS4-2では、接着剤により、複数の前処理グラフェン膜タイトコイル材を粘着することで、厚さを増加させるとともに、層分離を回避することができる。
【0018】
好ましくは、上記のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスにおいて、前記接着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレングリコール水性樹脂、ポリウレタン樹脂のうちの1種又は複数種を含む。
【0019】
本発明では、上記の材料を用いて製造された接着剤は、粘着効果に優れ、前処理グラフェン膜タイトコイル材の粘着効果を確保する。
【0020】
好ましくは、上記のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスにおいて、塗布予備積層処理後の前処理グラフェン膜タイトコイル材に孔開け処理を施し、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材に孔径10~500μmの微小孔を2000~100000個/m2の分布密度で開ける。
【0021】
前処理グラフェン膜タイトコイル材に対する孔開け処理は、高温処理の時に水や二酸化炭素などのガスを放出しやすくし、膜材を均一に発泡させ、後続の圧延による脱気を容易にするためである。
【0022】
好ましくは、上記のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスにおいて、孔開け処理を受けた前処理グラフェン膜タイトコイル材を50℃~150℃の環境で3~10h養生する。
【0023】
養生のプロセスは、予備積層接着剤を十分に乾燥させるとともに、一部の水や酸素含有官能基を除去し、高温処理中の爆発を防止することができる。
【0024】
好ましくは、上記のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスにおいて、ステップS6では、多層ロールプレスには後積層ロールプレス機構が使用され、前記後積層ロールプレス機構は、2~5個の牽引ロール、巻き取り丸ロールを含み、前記牽引ロールの回転数が1~5m/minに設定され、前記巻き取り丸ロールの回転数が1~5m/minに設定され、巻き取り張力が5~200Nに制御される。
【0025】
後積層ロールプレスは、多層のグラフェン膜を圧延して一体化することで、様々な厚さのグラフェン熱伝導膜を製造することができる。
【0026】
好ましくは、上記のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスにおいて、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材は、幅が10cm~70cm、長さが30m~200mである。
【0027】
好ましくは、上記のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスにおいて、前記前処理グラフェン膜ルースコイル材における隣接する膜層のギャップDが、膜層厚さの2~9倍である。
【0028】
前処理グラフェン膜ルースコイル材では、ギャップDが小さすぎると、放熱やガスの放出が困難になり、爆発が起こりやすく、ギャップDが大きすぎると、高温での炉詰め量が大幅に低下し、コストが上昇し、したがって、本発明で使用される上記のパラメータは工業の量産に適している。
【0029】
好ましくは、上記のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスにおいて、ステップS2の均質化処理において、均質化圧力は30~150MPaであり、温度は10℃~50℃に制御され、脱泡処理において、真空度は1KPa~10KPaに保持される。
【0030】
本発明に係る均質化処理に使用される上記の均質化圧力及び温度のパラメータでは、酸化グラフェンスラリーの粒子径の均一さがより確実に制御され、粒子径0.5μm~3μmの酸化グラフェンスラリーが得られ、最終的に製造された製品に最適な熱伝導性を付与するのに有利である。
【0031】
好ましくは、上記のグラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスにおいて、ステップS6では、多層ロールプレスは、繰出しセクション、第1精密プレスセクション、第2精密プレスセクション、第3精密プレスセクション、第4精密プレスセクション、巻き取りセクションを含み、前記繰出しセクションと巻き取りセクションにいずれも張力制御ユニットと張力アンプが設けられ、前記第1精密プレスセクション、第2精密プレスセクション、第3精密プレスセクション、第4精密プレスセクションにいずれも圧力制御ユニット、圧力センサ、線速度制御ユニット、速度計が設けられ、前記張力制御ユニット、圧力制御ユニット、線速度制御ユニットは、すべてPLC中央処理装置に接続される。
【0032】
多層ロールプレスは、様々な厚さのグラフェン放熱膜コイル材を製造することができ、さらに極厚(25μm以上)のグラフェン放熱膜コイル材も製造可能であるが、コイル材が厚いほど、ロールプレスの圧力及び速度が重要になり、コイル材の品質を左右する。
【0033】
多層ロールプレスは、第1精密プレスセクション、第2精密プレスセクション、第3精密プレスセクション、第4精密プレスセクションに分けられ、グラフェン発泡膜コイル材を十分に脱気するだけではなく、コイル材の密度を効果的に向上させ、熱伝導率を顕著に高める。多段ロールプレスは、自動化効率を高め、連続生産を容易にし、効率を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明における前処理グラフェン膜タイトコイル材の構造概略図である。
【
図2】本発明における前処理グラフェン膜ルースコイル材の構造概略図である。
【
図3】本発明における予備積層機構の構造概略図である。
【
図4】本発明における後積層ロールプレス機構の構造概略図である。
【
図5】本発明における多層ロールプレスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、
図1~5及び具体的な実施形態を参照して本発明についてさらに詳細に説明するが、これらは本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0036】
グラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスは、以下のS1~S6を含む。
【0037】
S1:酸化グラフェンケーキを脱イオン水に分散させ、3重量%の酸化グラフェン分散液を調製する。
【0038】
S2:前記酸化グラフェン分散液のPH値が6となるまで前記酸化グラフェン分散液にアンモニア水をゆっくりと注入し、その後、均質化、脱泡処理を行い、粒子径が0.5μm~3μmの範囲に制御された粘度15000Pa/sの酸化グラフェンスラリーを得る。
【0039】
S3:基材を準備し、塗布厚さ0.1mmに制御しながらコータで前記酸化グラフェンスラリーを前記基材上に塗布し、その後、40℃の環境で乾燥し、次に、剥離、スリット処理を行い、前処理グラフェン膜を得、巻き取り回転数を0.5m/min、巻き取り張力を20Nに制御して巻き取り機構で巻き取り、緊密な前処理グラフェン膜タイトコイル材1を形成する。
【0040】
S4:前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1を巻き戻し機構に入れて、前記巻き戻し機構の回転数を30m/min未満、巻き取り張力を30N以下に制御して巻き戻し処理を行い、所定の緊張度を有する前処理グラフェン膜ルースコイル材2を得る。
【0041】
S5:前記前処理グラフェン膜ルースコイル材2を200℃の環境で12h低温処理し、次に、1400℃以下の環境で10h炭化処理し、最後に、3200℃以下の環境で10h黒鉛化処理し、グラフェン発泡膜コイル材を得る。
【0042】
S6:圧力1Tの押圧ロールの作用によって前記グラフェン発泡膜コイル材に単層ロールプレス又は多層ロールプレスを施し、熱伝導率800w・m/Kのグラフェン放熱コイル材を得る。
【0043】
好ましくは、ステップS4では、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1に対して巻き戻し処理を行う前に、予備積層機構3を用いて塗布予備積層処理を行い、前記予備積層機構3は、繰出しロール群31、接着剤収容管群32、巻き取りロール33を含み、前記塗布予備積層処理ステップは、以下のS4-1とS4-2を含む。
【0044】
S4-1:複数の前処理グラフェン膜タイトコイル材1を前記繰出しロール群31に取り付け、前記繰出しロール群31の回転数を1m/minに設定し、前記巻き取りロール33の回転数を1m/minに設定し、巻き取り張力を5Nに制御する。
【0045】
S4-2:接着剤を接着剤収容管群32に入れて、前記接着剤収容管群32で前記接着剤を前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1の表面に均一に塗布し、粘着層を形成し、続いて、20℃の環境で3min乾燥し、前記粘着層の乾燥厚さを2μmにする。
【0046】
好ましくは、前記接着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレングリコール水性樹脂、ポリウレタン樹脂のうちの1種又は複数種を含む。
【0047】
好ましくは、塗布予備積層処理後の前処理グラフェン膜タイトコイル材1に孔開け処理を施し、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1に孔径10μmの微小孔を2000個/m2の分布密度で開ける。
【0048】
好ましくは、孔開け処理を受けた前処理グラフェン膜タイトコイル材1を50℃の環境で3h養生する。
【0049】
好ましくは、ステップS6では、多層ロールプレスには後積層ロールプレス機構4が使用され、前記後積層ロールプレス機構4は、2個の牽引ロール41、巻き取り丸ロール42を含み、前記牽引ロール41の回転数が1m/minに設定され、前記巻き取り丸ロール42の回転数が1m/minに設定され、巻き取り張力が5Nに制御される。
【0050】
好ましくは、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1は、幅が10cm、長さが30mである。
【0051】
好ましくは、前記前処理グラフェン膜ルースコイル材2における隣接する膜層のギャップDが、膜層厚さの2倍である。
【0052】
好ましくは、ステップS2の均質化処理において、均質化圧力は30MPaであり、温度は10℃に制御され、脱泡処理において、真空度は1KPaに保持される。
【0053】
好ましくは、ステップS6では、多層ロールプレスは、繰出しセクション、第1精密プレスセクション、第2精密プレスセクション、第3精密プレスセクション、第4精密プレスセクション、巻き取りセクションを含み、前記繰出しセクションと巻き取りセクションにいずれも張力制御ユニットと張力アンプが設けられ、前記第1精密プレスセクション、第2精密プレスセクション、第3精密プレスセクション、第4精密プレスセクションにいずれも圧力制御ユニット、圧力センサ、線速度制御ユニット、速度計が設けられ、前記張力制御ユニット、圧力制御ユニット、線速度制御ユニットは、すべてPLC中央処理装置に接続される。
【実施例2】
【0054】
グラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスは、以下のS1~S6を含む。
【0055】
S1:酸化グラフェンケーキを脱イオン水に分散させ、6重量%の酸化グラフェン分散液を調製する。
【0056】
S2:前記酸化グラフェン分散液のPH値が10となるまで前記酸化グラフェン分散液にアンモニア水をゆっくりと注入し、その後、均質化、脱泡処理を行い、粒子径が0.5μm~3μmの範囲に制御された粘度60000Pa/sの酸化グラフェンスラリーを得る。
【0057】
S3:基材を準備し、塗布厚さを0.5mmに制御しながらコータで前記酸化グラフェンスラリーを前記基材上に塗布し、その後、85℃の環境で乾燥し、次に、剥離、スリット処理を行い、前処理グラフェン膜を得、巻き取り回転数を2.5m/min、巻き取り張力を200Nに制御して巻き取り機構で巻き取り、緊密な前処理グラフェン膜タイトコイル材1を形成する。
【0058】
S4:前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1を巻き戻し機構に入れて、前記巻き戻し機構の回転数を30m/min未満、巻き取り張力を30N以下に制御して巻き戻し処理を行い、所定の緊張度を有する前処理グラフェン膜ルースコイル材2を得る。
【0059】
S5:前記前処理グラフェン膜ルースコイル材2を450℃の環境で200h低温処理し、次に、1400℃以下の環境で50h炭化処理し、最後に、3200℃以下の環境で50h黒鉛化処理し、グラフェン発泡膜コイル材を得る。
【0060】
S6:圧力5Tの押圧ロールの作用によって前記グラフェン発泡膜コイル材に単層ロールプレス又は多層ロールプレスを施し、熱伝導率2000w・m/Kのグラフェン放熱コイル材を得る。
【0061】
好ましくは、ステップS4では、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1に対して巻き戻し処理を行う前に、予備積層機構3を用いて塗布予備積層処理を行い、前記予備積層機構3は、繰出しロール群31、接着剤収容管群32、巻き取りロール33を含み、前記塗布予備積層処理ステップは、以下のS4-1とS4-1を含む。
【0062】
S4-1:複数の前処理グラフェン膜タイトコイル材1を前記繰出しロール群31に取り付け、前記繰出しロール群31の回転数を5m/minに設定し、前記巻き取りロール33の回転数を5m/minに設定し、巻き取り張力を500Nに制御する。
【0063】
S4-2:接着剤を接着剤収容管群32に入れて、前記接着剤収容管群32で前記接着剤を前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1の表面に均一に塗布し、粘着層を形成し、続いて、60℃の環境で48min乾燥し、前記粘着層の乾燥厚さを20μmにする。
【0064】
好ましくは、前記接着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレングリコール水性樹脂、ポリウレタン樹脂のうちの1種又は複数種を含む。
【0065】
好ましくは、塗布予備積層処理後の前処理グラフェン膜タイトコイル材1に孔開け処理を施し、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1に孔径500μmの微小孔を100000個/m2の分布密度で開ける。
【0066】
好ましくは、孔開け処理を受けた前処理グラフェン膜タイトコイル材1を150℃の環境で10h養生する。
【0067】
好ましくは、ステップS6では、多層ロールプレスには後積層ロールプレス機構4が使用され、前記後積層ロールプレス機構4は、5個の牽引ロール41、巻き取り丸ロール42を含み、前記牽引ロール41の回転数が5m/minに設定され、前記巻き取り丸ロール42の回転数が5m/minに設定され、巻き取り張力が200Nに制御される。
【0068】
好ましくは、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1は、幅が70cm、長さが200mである。
【0069】
好ましくは、前記前処理グラフェン膜ルースコイル材2における隣接する膜層のギャップDが、膜層厚さの9倍である。
【0070】
好ましくは、ステップS2の均質化処理において、均質化圧力は150MPaであり、温度は50℃に制御され、脱泡処理において、真空度は10KPaに保持される。
【0071】
好ましくは、ステップS6では、多層ロールプレスは、繰出しセクション、第1精密プレスセクション、第2精密プレスセクション、第3精密プレスセクション、第4精密プレスセクション、巻き取りセクションを含み、前記繰出しセクションと巻き取りセクションにいずれも張力制御ユニットと張力アンプが設けられ、前記第1精密プレスセクション、第2精密プレスセクション、第3精密プレスセクション、第4精密プレスセクションにいずれも圧力制御ユニット、圧力センサ、線速度制御ユニット、速度計が設けられ、前記張力制御ユニット、圧力制御ユニット、線速度制御ユニットは、すべてPLC中央処理装置に接続される。
【実施例3】
【0072】
グラフェン放熱膜コイル材の製造プロセスは、以下のS1~S6を含む。
【0073】
S1:酸化グラフェンケーキを脱イオン水に分散させ、4重量%の酸化グラフェン分散液を調製する。
【0074】
S2:前記酸化グラフェン分散液のPH値が8となるまで前記酸化グラフェン分散液にアンモニア水をゆっくりと注入し、その後、均質化、脱泡処理を行い、粒子径が0.5μm~3μmの範囲に制御された粘度35000Pa/sの酸化グラフェンスラリーを得る。
【0075】
S3:基材を準備し、塗布厚さを0.3mmに制御しながらコータで前記酸化グラフェンスラリーを前記基材上に塗布し、その後、65℃の環境で乾燥し、次に、剥離、スリット処理を行い、前処理グラフェン膜を得、巻き取り回転数を1.5m/min、巻き取り張力を100Nに制御して巻き取り機構で巻き取り、緊密な前処理グラフェン膜タイトコイル材1を形成する。
【0076】
S4:前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1を巻き戻し機構に入れて、前記巻き戻し機構の回転数を30m/min未満、巻き取り張力を30N以下に制御して巻き戻し処理を行い、所定の緊張度を有する前処理グラフェン膜ルースコイル材2を得る。
【0077】
S5:前記前処理グラフェン膜ルースコイル材2を350℃の環境で100h低温処理し、次に、1400℃以下の環境で30h炭化処理し、最後に、3200℃以下の環境で30h黒鉛化処理し、グラフェン発泡膜コイル材を得る。
【0078】
S6:圧力3Tの押圧ロールの作用によって前記グラフェン発泡膜コイル材に単層ロールプレス又は多層ロールプレスを施し、熱伝導率1400w・m/Kのグラフェン放熱コイル材を得る。
【0079】
好ましくは、ステップS4では、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1に対して巻き戻し処理を行う前に、予備積層機構3を用いて塗布予備積層処理を行い、前記予備積層機構3は、繰出しロール群31、接着剤収容管群32、巻き取りロール33を含み、前記塗布予備積層処理ステップは、以下のS4-1とS4-2を含む。
【0080】
S4-1:複数の前処理グラフェン膜タイトコイル材1を前記繰出しロール群31に取り付け、前記繰出しロール群31の回転数を3m/minに設定し、前記巻き取りロール33の回転数を3m/minに設定し、巻き取り張力を250Nに制御する。
【0081】
S4-2:接着剤を接着剤収容管群32に入れて、前記接着剤収容管群32で前記接着剤を前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1の表面に均一に塗布し、粘着層を形成し、続いて、40℃の環境で30min乾燥し、前記粘着層の乾燥厚さを10μmにする。
【0082】
好ましくは、前記接着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレングリコール水性樹脂、ポリウレタン樹脂のうちの1種又は複数種を含む。
【0083】
好ましくは、塗布予備積層処理後の前処理グラフェン膜タイトコイル材1に孔開け処理を施し、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1に孔径300μmの微小孔を50000個/m2の分布密度で開ける。
【0084】
好ましくは、孔開け処理を受けた前処理グラフェン膜タイトコイル材1を100℃の環境で6h養生する。
【0085】
好ましくは、ステップS6では、多層ロールプレスには後積層ロールプレス機構4が使用され、前記後積層ロールプレス機構4は、3個の牽引ロール41、巻き取り丸ロール42を含み、前記牽引ロール41の回転数が3m/minに設定され、前記巻き取り丸ロール42の回転数が3m/minに設定され、巻き取り張力が100Nに制御される。
【0086】
好ましくは、前記前処理グラフェン膜タイトコイル材1は、幅が40cm、長さが100mである。
【0087】
好ましくは、前記前処理グラフェン膜ルースコイル材2における隣接する膜層のギャップDが、膜層厚さの5倍である。
【0088】
好ましくは、ステップS2の均質化処理において、均質化圧力は90MPaであり、温度は30℃に制御され、脱泡処理において、真空度は5KPaに保持される。
【0089】
好ましくは、ステップS6では、多層ロールプレスは、繰出しセクション、第1精密プレスセクション、第2精密プレスセクション、第3精密プレスセクション、第4精密プレスセクション、巻き取りセクションを含み、前記繰出しセクションと巻き取りセクションにいずれも張力制御ユニットと張力アンプが設けられ、前記第1精密プレスセクション、第2精密プレスセクション、第3精密プレスセクション、第4精密プレスセクションにいずれも圧力制御ユニット、圧力センサ、線速度制御ユニット、速度計が設けられ、前記張力制御ユニット、圧力制御ユニット、線速度制御ユニットは、すべてPLC中央処理装置に接続される。
【0090】
要するに、以上のものは本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明の特許出願の範囲に基づいてなされた均等な変更及び修飾は、本発明の範囲に含まれるべきである。
【国際調査報告】