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特表2024-535405フィルム押出組成物および関連する押出フィルム、金属化フィルム、ならびにキャパシタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】フィルム押出組成物および関連する押出フィルム、金属化フィルム、ならびにキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240920BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240920BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20240920BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 23/20 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240920BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L69/00
C08J5/18 CFD
B29C48/08
C08L83/04
C08K5/103
C08L23/06
C08L23/20
B32B15/08 Q
B32B27/36 102
H01G4/32 511L
H01G4/32 521G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518799
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 IB2022056121
(87)【国際公開番号】W WO2023047198
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】21199122.9
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピンギトーレ アンドリュー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マフード ジェームス アラン
(72)【発明者】
【氏名】ニーマイヤー マシュー フランク
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F207
4J002
5E082
【Fターム(参考)】
4F071AA50X
4F071AA67
4F071AA75X
4F071AC10
4F071AE11
4F071AF19
4F071AF39
4F071AH12
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4F071BC16
4F100AB01B
4F100AK45A
4F100AK52A
4F100AL01A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA19A
4F100CA23A
4F100EH17
4F100JG01B
4F100YY00A
4F207AA28
4F207AB07
4F207AG01
4F207KA01
4F207KA17
4F207KL84
4J002BB032
4J002BB172
4J002CG001
4J002CG011
4J002CG022
4J002CP032
4J002CP033
4J002CP172
4J002EH046
4J002EH056
4J002FD172
4J002FD176
4J002FD202
4J002FD206
4J002GF00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GQ01
5E082AB04
5E082BC38
5E082EE07
5E082EE23
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG06
5E082FG34
(57)【要約】
特定の量の、耐熱性コポリカルボナートと、スリップ剤と、特定の大きさの粒子を含む粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンとを含むフィルム押出組成物である。このフィルム押出組成物から調製した押出フィルムは、有益なバランスのテレスコープ、ブロッキング、および誘電特性を示す。この押出フィルムは、静電フィルムキャパシタの製造に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム押出組成物であって、
前記フィルム押出組成物が、フィルム押出組成物の総質量に対して、
50から99.35質量パーセント(質量%)のコポリカルボナートと、
0.1から6質量%のスリップ剤と、
0.55から0.8質量%の粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンと、
を含み、
前記コポリカルボナートが、コポリカルボナート中のカルボナート単位の合計を100モル%として、
20から60モル%の第1カルボナート単位と、
40から80モル%の第2カルボナート単位と、
0モル%の第3カルボナート単位と、
を含み、
前記第1カルボナート単位が次の構造式で示され、
【化1】
式中、RはC~C16二価芳香族基であり、
前記第2カルボナート単位が次の構造式で示され、
【化2】
式中、Rは次の構造式で示されるC17~C40二価芳香族基であって、
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】
、または
【化9】
式中、RおよびRはそれぞれ独立して出現毎に、C~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C12アルケニルであり、それぞれのRは水素であり、または2つのRが、それらの結合している炭素原子と共にカルボニル基を形成しており、出現毎のRは独立してC~Cアルキルであり、Rは、水素、C~Cアルキル、または、必要に応じて1、2、3、4、または5個のC~Cアルキル基で置換されたフェニルであり、Rは独立して出現毎にC~Cアルキルまたはフェニル、望ましくはメチルであり、Xは、C~C12アリーレン、C~C18シクロアルキレン、C~C18シクロアルキリデン、または-C(R)(R)-(式中、Rは、水素、C~C12アルキル、またはC~C12アリールであり、Rは、C~C10アルキル、C~Cシクロアルキル、またはC~C12アリール)であり、あるいはXは、-(Q-G-(Q-(式中、QおよびQはそれぞれ独立してC~Cアルキレンであり、GはC~C10シクロアルキレンであり、xは0または1であり、yは0または1)であり、j、m、およびnはそれぞれ独立して、0、1、2、3、または4であり、
それぞれの第3カルボナート単位が二価のカルボナート基と二価のポリシロキサン基とを含み、前記二価ポリシロキサン基が、5から60の、次の構造式で示されるジオルガノシロキサン単位を含み、
【化10】
式中、出現毎のRは独立してC~C13ヒドロカルビル基であり、
前記スリップ剤が、四ステアリン酸ペンタエリトリトール、六ステアリン酸ジペンタエリトリトール、三ステアリン酸グリセロール、高密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリ(カルボナート-シロキサン)、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれ、
前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンが、ISO 13319-1:2021に従った、電気検知ゾーン法による測定で、0.5から4マイクロメートル(μm)の数平均球相当径を持つことを特徴とするフィルム押出組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム押出組成物であって、比率(t60/(粒子の総数))が0.1から0.5%であり、式中、t60は60%における負荷/長さ比であって、%の単位で表され、JIS B0601(1994)に従って、次の式を用いて計算され、
60=((L+L+L+・・・L)/L)×100
式中、(L+L+L+・・・L)は、最大山高さ(highest peak height)(0%に相当)と、最大谷深さ(lowest trough bottom)(100%に相当)との間隔の60%の切断レベル(cut line level)における、測定長さLに沿って測定した、切断部分長さの和であり、粒子の総数は、1ナノグラム(ng)の押出フィルム中の架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子の数であって、1ngのフィルム押出組成物中の架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子の質量、粒子の密度、および粒子の数平均球相当径から計算されることを特徴とするフィルム押出組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルム押出組成物であって、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンが、前記フィルム押出組成物の総質量に対して0.55から0.7質量%の、1.5から2.5μmの数平均球相当径を持つ粒子を含むことを特徴とするフィルム押出組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載のフィルム押出組成物であって、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンが、前記フィルム押出組成物の総質量に対して、0.2から0.6質量%の、0.5から1μmの数平均球相当径を持つ第1粒子と、0.2から0.6質量%の、1.5から3μmの数平均球相当径を持つ第2粒子とを含むことを特徴とするフィルム押出組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載のフィルム押出組成物であって、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンが、前記フィルム押出組成物の総質量に対して、0.2から0.6質量%の、1.5から2.4μmの数平均球相当径を持つ第1粒子と、0.2から0.6質量%の、2.5から4μmの数平均球相当径を持つ第2粒子とを含むことを特徴とするフィルム押出組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のフィルム押出組成物であって、
前記スリップ剤が
四ステアリン酸ペンタエリトリトール、
ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体、および
四ステアリン酸ペンタエリトリトールとポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体との組み合わせ、
から成る群より選ばれ、
前記ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体が、ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体の質量に対して70から90質量%のビスフェノールAカルボナート単位と、ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体の質量に対して10から30質量%のジメチルシロキサン単位とを含むことを特徴とするフィルム押出組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のフィルム押出組成物であって、
前記フィルム押出組成物が、
90から99.25質量%の前記コポリカルボナートと、
0.2から5質量%の前記スリップ剤と、
0.55から0.7質量%の前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンと、
を含み、
前記コポリカルボナートが、
50から75モル%の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンビスフェノールカルボナート単位と、
25から50モル%のビスフェノールAカルボナート単位と、
を含むことを特徴とするフィルム押出組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のフィルム押出組成物であって、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンが、前記フィルム押出組成物の総質量に対して0.55から0.7質量%の、1.5から2.5μmの数平均球相当径を持つ粒子を含むことを特徴とするフィルム押出組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のフィルム押出組成物を含むことを特徴とする押出フィルム。
【請求項10】
請求項9に記載の押出フィルムであって、
前記フィルム押出組成物が、
90から99.25質量%の前記コポリカルボナートと、
0.2から5質量%の前記スリップ剤と、
0.55から0.7質量%の前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンと、
を含み、
前記コポリカルボナートが、
50から75モル%の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンビスフェノールカルボナート単位と、
25から50モル%のビスフェノールAカルボナート単位と、
を含むことを特徴とする押出フィルム。
【請求項11】
請求項10に記載の押出フィルムであって、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンが、前記フィルム押出組成物の総質量に対して0.55から0.7質量%の、1.5から2.5μmの数平均球相当径を持つ粒子を含むことを特徴とする押出フィルム。
【請求項12】
キャパシタであって、
前記キャパシタが、
請求項1~8のいずれかに記載のフィルム押出組成物を含む押出フィルムと、
前記押出フィルムに接している導電性金属層と、
を含むことを特徴とするキャパシタ。
【請求項13】
請求項12に記載のキャパシタであって、
前記フィルム押出組成物が、
90から99.25質量%の前記コポリカルボナートと、
0.2から5質量%の前記スリップ剤と、
0.55から0.7質量%の前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンと、
を含み、
前記コポリカルボナートが、
50から75モル%の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンビスフェノールカルボナート単位と、
25から50モル%のビスフェノールAカルボナート単位と、
を含むことを特徴とするキャパシタ。
【請求項14】
請求項13に記載のキャパシタであって、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンが、前記フィルム押出組成物の総質量に対して0.55から0.7質量%の、1.5から2.5μmの数平均球相当径を持つ粒子を含むことを特徴とするキャパシタ。
【請求項15】
金属化フィルムであって、
前記金属化フィルムが、
請求項1~8のいずれかに記載のフィルム押出組成物を含む押出フィルムと、
前記押出フィルムに接している導電性金属層と、
を含むことを特徴とする金属化フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年9月27日出願、欧州特許出願公開第21199122.9号の利益を主張するものであり、その内容は全て本願に引用して援用する。
【0002】
本願は、フィルム押出組成物、押出フィルムを製造するための組成物の使用、および、静電フィルムキャパシタを製造するためのフィルムの金属化に関する。
【背景技術】
【0003】
高い体積エネルギー密度、高い運転温度(operating temperature)、および長い寿命を備えた静電フィルムキャパシタは、パルスパワー、自動車、および産業用エレクトロニクスにおいて極めて重要な構成要素である。キャパシタは基本的に、電気絶縁性(誘電性)フィルムの薄層で隔てられた2枚の平行な伝導性プレートを備えた、エネルギー貯蔵装置である。プレート間に電圧をかけると、誘電体中の電界が電荷に置き換わってエネルギーが貯蔵される。キャパシタに貯蔵されるエネルギーの量は、フィルムの製造に使用する絶縁材料の誘電率および破壊電圧と、フィルムの容積(総面積および厚さ)に左右される。キャパシタに蓄積できるエネルギー量を最大にするには、フィルムの誘電率および破壊電圧を最大に、フィルムの厚さを最小にする。キャパシタ内の誘電材料の物理的特性はキャパシタの性能において決定的要素であるため、キャパシタ内の誘電材料の物理的特性の1つ以上を改善すると、キャパシタ構成要素の対応する性能が向上し、通常、それを組み込んだ電子装置または製品の性能を高め、寿命を伸ばすことができる。
【0004】
耐熱性ポリカルボナート共重合体は静電フィルムキャパシタの製造に用いられている。例えば、Mahoodほかによる、国際特許出願公開(International Patent Application)第2015/031627A1号、国際特許出願公開第2017/196922A1号、および国際特許出願公開第2020/102531A1号を参照されたい。耐熱性ポリカルボナートを材料とする組成物をフィルムキャパシタに変えるには、組成物を押出してフィルムとする、フィルムを金属化する、金属化したフィルムを裁断する、裁断した金属化フィルムを巻いてキャパシタとするといった、多くの工程が必要である。これらの工程には、多くの巻き取り(winding)および巻き出し(unwinding)ステップがある。巻き取りの際、元々は円筒形であったプラスチックフィルムのロールにアンバランスな力がかかると、外側のフィルム層がコアおよび内側フィルム層に対して左右にずれてしまう“テレスコープ(telescoping)”が生じる恐れがある。巻き出しの際は、フィルムの変形または破れを起こさずに層がロールから離れられない“ブロッキング(blocking)”の恐れがある。ポリカルボナート系押出組成物は、テレスコープが少なくなるように調整できるが、そのような改変はブロックキングを増大させることが多い。同様に、ブロッキングを減らすようポリカルボナート系押出組成物を改変すると、テレスコープが増大することが多く、しばしば、フィルムの誘電特性が著しく損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願公開第2015/031627号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願公開第2017/196922号パンフレット
【特許文献3】国際特許出願公開第2020/102531号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、テレスコープ、ブロッキング、および誘電特性のバランスが改善された、耐熱性ポリカルボナートを材料とする組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の1つはフィルム押出組成物であって、このフィルム押出組成物は、フィルム押出組成物の総質量に対して、50から99.35質量パーセント(質量%)のコポリカルボナートと、0.1から6質量%のスリップ剤と、0.55から0.8質量%の粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンとを含み、前記コポリカルボナートは、コポリカルボナート中のカルボナート単位の合計を100モル%として、20から60モル%の第1カルボナート単位と、40から80モル%の第2カルボナート単位と、0モル%の第3カルボナート単位とを含み、前記第1カルボナート単位は次の構造式で示され、
【化1】
式中、RはC~C16二価芳香族基であり、
前記第2カルボナート単位は次の構造式で示され、
【化2】
式中、Rは、次の構造式で示されるC17~C40二価芳香族基であって、
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】
、または
【化9】
式中、RおよびRはそれぞれ独立して出現毎に、C~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C12アルケニルであり、それぞれのRは水素であり、または、2つのRが、それらの結合している炭素原子と共にカルボニル基を形成しており、出現毎のRは独立してC~Cアルキルであり、Rは、水素、C~Cアルキル、または、必要に応じて1、2、3、4、または5個のC~Cアルキル基で置換されたフェニルであり、Rは独立して出現毎にC~Cアルキルまたはフェニル、望ましくはメチルであり、Xは、C~C12アリーレン、C~C18シクロアルキレン、C~C18シクロアルキリデン、または-C(R)(R)-(式中、Rは、水素、C~C12アルキル、またはC~C12アリールであり、Rは、C~C10アルキル、C~Cシクロアルキル、またはC~C12アリール)であり、あるいはXは、-(Q-G-(Q-(式中、QおよびQはそれぞれ独立してC~Cアルキレンであり、GはC~C10シクロアルキレンであり、xは0または1であり、yは0または1)であり、j、m、およびnはそれぞれ独立して、0、1、2、3、または4であり、それぞれの第3カルボナート単位は二価のカルボナート基と二価のポリシロキサン基とを含み、前記二価ポリシロキサン基は、5から60の、次の構造式で示されるジオルガノシロキサン単位を含み、
【化10】
式中、出現毎のRは独立してC~C13ヒドロカルビル基であり、前記スリップ剤は、四ステアリン酸ペンタエリトリトール、六ステアリン酸ジペンタエリトリトール、三ステアリン酸グリセロール、高密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリ(カルボナート-シロキサン)、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれ、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、ISO 13319-1:2021に従った、電気検知ゾーン法による測定で、0.5から4マイクロメートル(μm)の数平均球相当径(number-based mean equivalent spherical diameter)を持つ。
【0008】
もうひとつの実施形態は、文中に述べられている様々なフィルム押出組成物のいずれかを含む押出フィルムである。
【0009】
もうひとつの実施形態は、押出フィルムと、この押出フィルムに接している導電性金属層とを含むキャパシタである。
【0010】
もうひとつの実施形態は、押出フィルムと、この押出フィルムに接している導電性金属層とを含む金属化フィルムである。
【0011】
これらおよびその他の実施形態について以下で詳しく述べる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】t値(t27、t60など)の計算に使用する、表面粗さ特性値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の発明者は、特定の量の、耐熱性ポリカルボナートと、スリップ剤と、特定の粒径を持つ粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンとを含む押出フィルムによって、テレスコープ、ブロッキング、および誘電特性のバランスが改善することを明らかにした。
【0014】
即ち、実施形態の1つはフィルム押出組成物であって、このフィルム押出組成物は、フィルム押出組成物の総質量に対して、50から99.35質量%のコポリカルボナートと、0.1から6質量%のスリップ剤と、0.55から0.8質量%の粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンとを含み、前記コポリカルボナートは、コポリカルボナート中のカルボナート単位の合計を100モル%として、20から60モル%の第1カルボナート単位と、40から80モル%の第2カルボナート単位と、0モル%の第3カルボナート単位とを含み、前記第1カルボナート単位は次の構造式で示され、
【化11】
式中、RはC~C16二価芳香族基であり、
前記第2カルボナート単位は次の構造式で示され、
【化12】
式中、Rは、次の構造式で示されるC17~C40二価芳香族基であって、
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】
、または
【化19】
式中、RおよびRはそれぞれ独立して出現毎に、C~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C12アルケニルであり、それぞれのRは水素であり、または、2つのRが、それらの結合している炭素原子と共にカルボニル基を形成しており、出現毎のRは独立してC~Cアルキルであり、Rは、水素、C~Cアルキル、または、必要に応じて1、2、3、4、または5個のC~Cアルキル基で置換されたフェニルであり、Rは独立して出現毎にC~Cアルキルまたはフェニル、望ましくはメチルであり、Xは、C~C12アリーレン、C~C18シクロアルキレン、C~C18シクロアルキリデン、または-C(R)(R)-(式中、Rは、水素、C~C12アルキル、またはC~C12アリールであり、Rは、C~C10アルキル、C~Cシクロアルキル、またはC~C12アリール)であり、あるいはXは、-(Q-G-(Q-(式中、QおよびQはそれぞれ独立してC~Cアルキレンであり、GはC~C10シクロアルキレンであり、xは0または1であり、yは0または1)であり、j、m、およびnはそれぞれ独立して、0、1、2、3、または4であり、それぞれの第3カルボナート単位は二価のカルボナート基と二価のポリシロキサン基とを含み、前記二価ポリシロキサン基は、5から60の、次の構造式で示されるジオルガノシロキサン単位を含み、
【化20】
式中、出現毎のRは独立してC~C13ヒドロカルビル基であり、前記スリップ剤は、四ステアリン酸ペンタエリトリトール、六ステアリン酸ジペンタエリトリトール、三ステアリン酸グリセロール、高密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリ(カルボナート-シロキサン)、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれ、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、ISO 13319-1:2021に従った、電気検知ゾーン法による測定で、0.5から4μmの数平均球相当径を持つ。
【0015】
本フィルム押出組成物はコポリカルボナートを含む。このコポリカルボナートは、第1カルボナート単位と、第2カルボナート単位と、必要に応じて、第3カルボナート単位とを含む。第1カルボナート単位は次の構造式で示され、
【化21】
式中、RはC~C16二価芳香族基である。一部の実施形態において、第1カルボナート単位のホモポリマは、ASTM D3418-15に従った、示差走査熱量測定法による、20℃/分の昇温速度での測定で、135℃から155℃未満のガラス転移温度を持つ。
【0016】
一部の実施形態において、第1カルボナート単位は次の構造式で示され、
【化22】
式中、RおよびRはそれぞれ独立して、ハロゲン(即ち、F、Cl、Br、またはI)、C~Cアルキル、またはC~Cアルコキシであり、cは0または1であり、pおよびqはそれぞれ独立して0または1であり、Xは、単結合、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、-C(O)-、またはC~C二価ヒドロカルビレン基(環式または非環式、芳香族または非芳香族であって良く、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、およびリンより選ばれる1つ以上のヘテロ原子を更に含んでいても良い)である。文中で使用する用語“ヒドロカルビル”は、“置換されたヒドロカルビル”であると明確に指定されていない限り、単独で、あるいは、別の語の接頭辞、接尾辞、または一部として使用される場合であっても、炭素と水素だけを含む残基を指す。ヒドロカルビル残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝、飽和、または不飽和とすることができる。また、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝、飽和、および不飽和炭化水素基の組み合わせも含むことができる。ヒドロカルビル残基が置換されていると述べられている場合、炭素および水素に加えてヘテロ原子を含むことができる。一部の実施形態において、cは0である。別の実施形態において、cは1である。一部の実施形態において、cは1であり、Xは、C~Cシクロアルキレン(例えば、1,4-シクロヘキシレン)、C~Cシクロアルキリデン(例えば、シクロヘキシリデン)、式-C(R)(R)-(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、C~Cアルキル)で示されるC~Cアルキリデン、または、式-C(=R)-(式中、Rは二価C~C炭化水素基)で示される基より選ばれる。Xと、第1カルボナート単位のそれぞれの末端結合は、互いに、オルト、メタ、またはパラ(望ましくは、パラ)の位置に置くことができる。一部の実施形態において、pおよびqはそれぞれ0である。一部の実施形態において、cは1であり、pおよびqはそれぞれ1であり、RおよびRはそれぞれメチルであって、Xに対してメタ位置にある。第1カルボナート単位の生成に使用可能なジヒドロキシ化合物のいくつかの具体例は、Sunほかによる、米国特許出願公開第2014/0295363A1号、Chenほかによる、国際公開(International Patent Application Publication)第2013/175448A1号、および、Fernandezほかによる、国際公開第2014/072923A1号に記載されている。
【0017】
一部の実施形態において、第1カルボナート単位はビスフェノールAから誘導されたもので、次の構造式で示され、ビスフェノールAカルボナート単位と呼ばれる。
【化23】
【0018】
コポリカルボナートは、コポリカルボナート中のカルボナート単位の合計を100モル%として、20から60モル%の量の第1カルボナート単位を含む。この範囲内で、第1カルボナート単位の量は、25から55モル%または30から50モル%とすることができる。
【0019】
第1カルボナート単位に加えて、コポリカルボナートは、次の構造式で示される第2カルボナート単位を含み、
【化24】
式中、Rは、次の構造式で示されるC17~C40二価芳香族基であって、
【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】
、または
【化31】
式中、RおよびRはそれぞれ独立して出現毎に、C~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C12アルケニルであり、それぞれのRは水素であり、または、2つのRが、それらの結合している炭素原子と共にカルボニル基を形成しており、出現毎のRは独立してC~Cアルキルであり、Rは、水素、C~Cアルキル、または、必要に応じて1、2、3、4、または5個のC~Cアルキル基で置換されたフェニルであり、Rは独立して出現毎にC~Cアルキルまたはフェニル、望ましくはメチルであり、Xは、C~C12アリーレン、C~C18シクロアルキレン、C~C18シクロアルキリデン、または-C(R)(R)-(式中、Rは、水素、C~C12アルキル、またはC~C12アリールであり、Rは、C~C10アルキル、C~Cシクロアルキル、またはC~C12アリール)であり、あるいはXは、-(Q-G-(Q-(式中、QおよびQはそれぞれ独立してC~Cアルキレンであり、GはC~C10シクロアルキレンであり、xは0または1であり、yは0または1)であり、j、m、およびnはそれぞれ独立して、0、1、2、3、または4である。一部の実施形態において、第2カルボナート単位のホモポリマは、ASTM D3418-15に従った、示差走査熱量測定法による、20℃/分の昇温速度での測定で、155℃以上、または155から300℃のガラス転移温度を持つ。
【0020】
第2カルボナート単位の例として、次の構造式で示されるものが挙げられ、
【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】
、および
【化42】
式中、R、R、R、m、およびnは先に定義されており、Rは独立して出現毎に水素またはC~Cアルキルであり、gは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。一部の実施形態において、RおよびRはそれぞれ独立してC~CアルキルまたはC~Cアルコキシであり、それぞれのRはメチルであり、mおよびnはそれぞれ独立して0または1である。
【0021】
一部の実施形態において、第2カルボナート単位は、次の構造式で示されるもの、
【化43】

【化44】
、またはこれらの組み合わせであり、上記の先の構造のものは、2-フェニル-3,3’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジンカルボナート、またはPPPBPカルボナートと呼ばれ、上記の後の構造のものは、ビスフェノールイソホロンカルボナート、またはBPIカルボナートと呼ばれる。一部の実施形態において、第2カルボナート単位はビスフェノールイソホロンカルボナート単位を含む。
【0022】
コポリカルボナートは、コポリカルボナート中のカルボナート単位の合計を100モル%として、40から80モル%の量の第2カルボナート単位を含む。この範囲内で、第2カルボナート単位の量は、45から75モル%または50から70モル%とすることができる。
【0023】
第1カルボナート単位および第2カルボナート単位に加えて、コポリカルボナートは、必要に応じて、第3カルボナート単位を更に含むことができ、それぞれの第3カルボナート単位は二価のカルボナート基(-OC(O)O-)と二価のポリシロキサン基とを含み、二価ポリシロキサン基は、5から60の、次の構造式で示されるジオルガノシロキサン単位を含み、
【化45】
式中、出現毎のRは独立してC~C13ヒドロカルビル基である。C~C14ヒドロカルビル基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝、飽和、または不飽和とすることができる。また、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝、飽和、および不飽和炭化水素基の組み合わせも含むことができる。R基の例としては、C~C14アルキル、C~C14アルコキシ、C~C14アルケニル、C~C14アルケニルオキシ、C~C14アリール、C~C14アリールオキシル、C~C14アリールアルキル、およびC~C14アルキルアリールが挙げられる。一部の実施形態において、出現毎のRはメチルである。
【0024】
それぞれの第3カルボナート単位は、5から60のジオルガノシロキサン単位を含む。この範囲内で、ジオルガノシロキサン単位の数は、10から60、20から60、30から60、または35から55とすることができる。
【0025】
一部の実施形態において、第3カルボナート単位は次の構造式で示され、
【化46】
式中、Arは独立して出現毎に、必要に応じて、1、2、3、または4個の置換基で置換されたC~C24芳香族二価基であって、それぞれの置換基は独立して、ハロゲン(即ち、F、Cl、Br、またはI)、C~Cアルキル、およびC~Cアルコキシから成る群より選ばれ、Rは独立して出現毎にC~C二価脂肪族基であり、RおよびRは独立して出現毎にC~C12アルキルまたはC~C18アリールであり、m、n、およびqは独立して出現毎に0または1であり、pは(30-n-q)から(60-n-q)または(35-n-q)から(55-n-q)である。
【0026】
Ar基の例として、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、および2,2-ビス(4-フェニレニル)プロパンが挙げられる。出現毎のm、n、およびqが0である場合、出現毎のArは、C~C24ジヒドロキシアリーレン化合物、例えば、レゾルシノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパンなどから誘導することができる。
【0027】
基の例として、例えば、ジメチレン(-(CH-)、トリメチレン(-(CH-)、ヘキサメチレン(-(CH-)、および1,4-シクロヘキシレンが挙げられる。一部の実施形態において、出現毎のRはトリメチレンである。
【0028】
およびR基の例として、例えば、メチル、エチル、1-プロピル、シクロヘキシル、およびフェニルが挙げられる。一部の実施形態において、出現毎のRおよびRはメチルである。
【0029】
一部の実施形態において、出現毎のm、n、およびqは0である。別の実施形態において、出現毎のm、n、およびqは1である。一部の実施形態において、pは(35-n-q)から(55-n-q)である。
【0030】
一部の実施形態において、第3カルボナート単位は次の構造式で示され、
【化47】
式中、rは、5から60、5から60、10から60、20から60、30から60、または35から55である。
【0031】
別の実施形態において、第3カルボナート単位は次の構造式で示され、
【化48】
式中、rは、5から60、5から60、10から60、20から60、30から60、または35から55である。
【0032】
更に別の実施形態において、第3カルボナート単位は次の構造式で示され、
【化49】
式中、sは、3から58、8から58、18から58、28から58、または33から53である。sが43である場合、この構造のものはD45カルボナートと呼ばれる。
【0033】
コポリカルボナートは、コポリカルボナート中のカルボナート単位の合計を100モル%として、0モル%の第3カルボナート単位を含む(即ち、含まない)。
【0034】
ポリカルボナート-ポリシロキサンの、より具体的な実施形態において、第1カルボナート単位は次の構造式で示されるものであり、
【化50】
第2カルボナート単位は次の構造式で示されるもの、
【化51】

【化52】
、またはこれらの組み合わせであり、第3カルボナート単位は、存在するならば、次の構造式で示されるものであり、
【化53】
式中、Arは独立して出現毎に、必要に応じて、1、2、3、または4個の置換基で置換されたC~C24芳香族二価基であって、それぞれの置換基は独立して、ハロゲン、C~Cアルキル、およびC~Cアルコキシから成る群より選ばれ、Rは独立して出現毎にC~C二価脂肪族基であり、RおよびRは独立して出現毎にC~C12アルキルまたはC~C18アリールであり、m、n、およびqは独立して出現毎に0または1であり、pは(30-n-q)から(60-n-q)または(35-n-q)から(55-n-q)である。
【0035】
一部の実施形態において、コポリカルボナートは、ビスフェノールAポリカルボナート標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィによる測定で、10,000から50,000g/モルの質量平均分子量を持つ。この範囲内で、質量平均分子量は、15,000から40,000g/モルまたは20,000から30,000g/モルとすることができる。
【0036】
コポリカルボナートは公知の方法、例えば、Vaughnによる、米国特許第3,419,634号および米国特許第3,419,635号、Merrittほかによる、米国特許第3,821,325号、Merrittによる、米国特許第3,832,419号、およびHooverによる、米国特許第6,072,011号に記載されている方法などで調製することができる。
【0037】
本フィルム押出組成物は、フィルム押出組成物の総質量に対して50から99.35質量%のコポリカルボナートを含む。この範囲内で、コポリカルボナートの量は、70から99.35質量%、90から99.35質量%、または95から99.35質量%とすることができる。
【0038】
コポリカルボナートに加えて、本フィルム押出組成物はスリップ剤を含む。適当なスリップ剤として、例えば、四ステアリン酸ペンタエリトリトール、六ステアリン酸ジペンタエリトリトール、三ステアリン酸グリセロール、高密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリ(カルボナート-シロキサン)(ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体を含む)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態において、スリップ剤は、四ステアリン酸ペンタエリトリトール;ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体の質量に対して70から90質量%のビスフェノールAカルボナート単位と、ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体の質量に対して10から30質量%のジメチルシロキサン単位とを含む、ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体;および、四ステアリン酸ペンタエリトリトールとポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体との組み合わせから成る群より選ばれる。本フィルム押出組成物は、フィルム押出組成物の総質量に対して0.1から6質量%の量のスリップ剤を含む。この範囲内で、スリップ剤の量は、0.1から5質量%、0.1から4質量%、0.1から3質量%、0.1から2質量%、0.1から1質量%、または0.1から0.6質量%とすることができる。
【0039】
コポリカルボナートおよびスリップ剤に加えて、本フィルム押出組成物は粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含む。粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、例えば、Momentive Performance Chemicalsより、商標名TOSPEARL(商標)微小球として市販されている。架橋ポリメチルシルセスキオキサン(TOSPEARL(商標)微小球など)は球状で、柔軟性とゲル様の稠度を持つため、細かいフィルタを用いて加工することができる。例えば、フィルム押出組成物をメルトフィルタ(例えば、5μmのフィルタ)に通す場合、粗面化剤(roughening agent)がフィルタを詰まらせないため、無機微粒子を粗面化剤として使用する場合に起こる問題が避けられる。
【0040】
粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、ISO 13319-1:2021に従った、電気検知ゾーン法による測定で、0.5から4μmの数平均球相当径(ヘイウッド径としても知られる)を持つ。0.5から4μmの範囲内で、数平均球相当径は、0.5から3.5μm、1から3.5μm、または1から3μmとすることができる。
【0041】
本フィルム押出組成物は、フィルム押出組成物の総質量に対して、0.55から0.8質量%の量の粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含む。この範囲内で、粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンの量は、0.55から0.75質量%、0.55から0.7質量%、0.6から0.8質量%、0.6から0.75質量%、または0.6から0.7質量%とすることができる。
【0042】
一部の実施形態において、粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、フィルム押出組成物の総質量に対して0.55から0.7質量%の、1.5から2.5μmの数平均球相当径を持つ粒子を含む。粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、粒径の異なる2つ以上のものを含むことができる。例えば、一部の実施形態において、粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、フィルム押出組成物の総質量に対して、0.2から0.6質量%の、0.5から1μmの数平均球相当径を持つ第1粒子と、0.2から0.6質量%の、1.5から3μmの数平均球相当径を持つ第2粒子とを含む。別の実施形態において、粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、フィルム押出組成物の総質量に対して、0.2から0.6質量%の、1.5から2.4μmの数平均球相当径を持つ第1粒子と、0.2から0.6質量%の、2.5から4μmの数平均球相当径を持つ第2粒子とを含む。
【0043】
本フィルム押出組成物は、必要に応じて、フィルム押出組成物の総質量に対して49.35質量%までのビスフェノールAポリカルボナートを含むことができる。一部の実施形態において、本フィルム押出組成物は、1から49.35質量%、1から30質量%、1から20質量%、または1から10質量%の量のビスフェノールAポリカルボナートを含む。一部の実施形態において、本フィルム押出組成物は、ビスフェノールAポリカルボナートを含まない。
【0044】
本フィルム押出組成物は、必要に応じて、サーモプラスチック技術において知られている1つ以上の添加剤を含むことができる。添加剤として、例えば、安定剤、潤滑剤(前述のスリップ剤以外のもの)、加工助剤、ドリップ遅延剤(drip retardants)、核形成剤、紫外光吸収剤、着色剤(染料および顔料など)、酸化防止剤、帯電防止剤、金属不活性化剤、およびこれらの組み合わせが挙げられる。このような添加剤が存在する場合、その使用量は合計で、通常、本組成物の総質量に対して、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、または0.1質量%以下である。
【0045】
本フィルム押出組成物の、より具体的な実施形態において、本組成物は、90から99.25質量%のコポリカルボナートと、0.2から5質量%のスリップ剤と、0.55から0.7質量%の粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンとを含み、コポリカルボナートは、50から75モル%の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンビスフェノールカルボナート単位と、25から50モル%のビスフェノールAカルボナート単位とを含む。本フィルム押出組成物の、より具体的な実施形態のいくつかの変形において、スリップ剤は、四ステアリン酸ペンタエリトリトール;ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体の質量に対して、70から90質量%のビスフェノールAカルボナート単位と、ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体の質量に対して、10から30質量%のジメチルシロキサン単位とを含むポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体;および、四ステアリン酸ペンタエリトリトールとポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体との組み合わせから成る群より選ばれる。本フィルム押出組成物の、より具体的な実施形態のいくつかの変形において、粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、フィルム押出組成物の総質量に対して0.55から0.7質量%の、1.5から2.5μmの数平均球相当径を持つ粒子を含む。
【0046】
本フィルム押出組成物の一部の実施形態において、比率(t60/(粒子の総数))は0.1から0.5%であり、式中、t60は、60%における負荷/長さ比であって、%の単位で表され、JIS B0601(1994)に従って、次の式を用いて計算され、
60=((L+L+L+・・・L)/L)×100
式中、(L+L+L+・・・L)は、最大山高さ(highest peak height)(0%に相当)と、最大谷深さ(lowest trough bottom)(100%に相当)との間隔の60%の切断レベル(cut line level)における、測定長さLに沿って測定した、切断部分長さの和であり、粒子の総数は、1ナノグラム(ng)の押出フィルム中の架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子の数であって、1ngのフィルム押出組成物中の架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子の質量、粒子の密度、および粒子の数平均球相当径から次の式に従って計算され、
粒子の総数=[(1×10-9g)(PMSS質量分率)/(PMSS密度 g/μm)]/(1粒子の体積 μm
式中、“粒子の総数(total #particles)”は、1ngの押出フィルム中の架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子の数であり、“1×10-9g”は、1×10-9グラムであり、“PMSS質量分率”は、フィルム押出組成物中の架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子の質量分率であり、“PMSS密度 g/μm”は、グラム/マイクロメートルの単位で示した架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子の密度であり、“1粒子の体積 μm”は、マイクロメートルの単位で示した、1粒の架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子の体積であって、(4/3)π(d/2)(式中、dは架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子の数平均球相当径)として計算される。0.1から0.5%の範囲内で、比率(t60/(粒子の総数))は、0.2から0.4%または0.25から0.35%とすることができる。
【0047】
60(60%における負荷/長さ比)の計算に使用する表面粗さ特性値について図を用いて説明する。図中、1は、その上で断面曲線(surface profile)2を求める測定長さLであり、3は、断面曲線の中で最も高いピークであり、4は、最高ピークに接する水平線であって、0%の切断レベルに相当し、5は、断面曲線の中で最も深い谷であり、6は、最も深い谷に接する水平線であって、100%の切断レベルに相当し、7は、27%の切断レベルであり、8は、27%の切断レベルより上に突き出た、第1ピークの切断部分長さLであり、9は、27%の切断レベルより上に突き出た、第2ピークの切断部分長さLであり、10は、27%の切断レベルより上に突き出た、第3ピークの切断部分長さLであり、11は、27%の切断レベルより上に突き出た、最後のピークの切断部分長さLである。パラメータt27は、次の式に従って計算され、
27=((L+L+L+・・・L)/L)×100
式中、(L+L+L+・・・L)は、27%の切断レベルにおける、測定長さに沿った全ての切断部分長さの和であり、Lは測定長さである。パラメータt60は、切断レベルを27%から60%に変える以外は、同様にして計算する。一般に、Lの値は、L、L、L、・・・Lの個々の値よりもずっと大きくなるよう選ぶ。後の実施例では、0.71ミリメートル(mm)のL値を用いた。一部の実施形態において、Lは、0.2から5mmの値を持つ。
【0048】
本フィルム押出組成物は、組成物の成分を溶融混合して調製できる。溶融混合装置および条件の例については後の実施例で説明する。一部の実施形態では、溶融混合を単軸または2軸押出機中で行い、全ての成分を押出機の供給口に加える。一部の実施形態では、スリップ剤がポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体を含んでおり、ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体と粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンとを予め混合してマスターバッチを作り、次にこれを残りの成分と共に押出機の供給口に加える。別の実施形態では、コポリカルボナートの一部と粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンとを予め混合してマスターバッチを作り、次にこれを残りの成分と共に押出機の供給口に加える。
【0049】
別の実施形態は、前述の様々なフィルム押出組成物のいずれかを含む押出フィルムである。組成物は、熱可塑性組成物で従来から使われている押出機を使用し、フラットダイを用いて押し出すことができる。押出キャスト膜法は、押出機内で組成物を溶融する工程と、リップ幅の小さなフラットダイから、溶融した組成物を押し出す工程と、必要に応じて、相対的に速い巻き取り速度を用いてフィルムを引き延ばす工程と、フィルム生成組成物を冷却/固化して最終的なフィルムとする工程とを含むことができる。押出機は、単軸または2軸構造のものとすることができ、メルトポンプを使用して、ダイを通る一定した脈動しないポリマの流れを作ることができる。ダイのリップ幅は、100~200μm程度に小さくすることができ、巻き取りローラは、200メートル/分(m/分)までの速度で作動させることができる。この構造に、フィルムを焼き戻し/焼きなましして残留内部応力(frozen-in internal stresses)の発生を小さくするための、加熱したローラを追加しても良い。フィルムの端を切って整え、張力を制御した巻き取り装置を用いて、フィルムをロール上に巻き上げることができる。相対的に厚みの小さい押出フィルムの製造を成功させるには、ダイを通る溶融ポリマの一定かつ均一な流れを保つ精度、フィルムの製造に使用するポリマのレオロジー特性、ポリマと装置の両方の清浄度、および巻き取り装置の機械的特性が全て影響すると考えられる。一部の実施形態において、フィルムの厚さは2から15μm、2から10μm、2から8μm、または2から6μmである。
【0050】
本押出フィルムの、より具体的な実施形態において、フィルム押出組成物は、90から99.25質量%のコポリカルボナートと、0.2から5質量%のスリップ剤と、0.55から0.7質量%の粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンとを含み、前記コポリカルボナートは、50から75モル%の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンビスフェノールカルボナート単位と、25から50モル%のビスフェノールAカルボナート単位とを含む。本押出フィルムの、より具体的な実施形態のいくつかのバリエーションにおいて、スリップ剤は、四ステアリン酸ペンタエリトリトール;ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体の質量に対して70から90質量%のビスフェノールAカルボナート単位と、ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体の質量に対して10から30質量%のジメチルシロキサン単位とを含む、ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体;および、四ステアリン酸ペンタエリトリトールとポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体との組み合わせから成る群より選ばれる。本押出フィルムの、より具体的な実施形態のいくつかのバリエーションにおいて、粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、フィルム押出組成物の総質量に対して0.55から0.7質量%の、1.5から2.5μmの数平均球相当径を持つ粒子を含む。
【0051】
もうひとつの実施形態は、前述の様々なフィルム押出組成物のいずれかを含む押出フィルムと、この押出フィルムに接している導電性金属層とを含む金属化フィルム(例えば、フィルムキャパシタ)である。導電性金属層には、フィルムの用途に応じて様々な金属および金属合金が使用できる。一部の実施形態において、導電性金属層は、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、亜鉛、チタン、クロム、バナジウム、白金、タンタル、ニオブ、黄銅、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれる金属を含む。ポリマフィルムの金属化法は公知であり、例えば、真空金属蒸着、金属スパッタリング、プラズマ処理、電子線処理、化学酸化、または還元反応、更に、無電解湿式化学析出が挙げられる。押出フィルムは、従来の無電解めっき法で両側を金属化することができる。あるいは、例えば、インクジェット印刷法で、フィルム表面に模様のある金属層を形成することができる。導電性金属層の厚さは金属化フィルムの用途に応じて変わり、例えば、0.1から1000ナノメートル(nm)、0.5から500nm、または1から10nmとすることができる。
【0052】
本発明は、少なくとも以下の態様を含む。
【0053】
態様1:フィルム押出組成物であって、このフィルム押出組成物は、フィルム押出組成物の総質量に対して、50から99.35質量%のコポリカルボナートと、0.1から6質量%のスリップ剤と、0.55から0.8質量%の粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンとを含み、前記コポリカルボナートは、コポリカルボナート中のカルボナート単位の合計を100モル%として、20から60モル%の第1カルボナート単位と、40から80モル%の第2カルボナート単位と、0モル%の第3カルボナート単位とを含み、前記第1カルボナート単位は次の構造式で示され、
【化54】
式中、RはC~C16二価芳香族基であり、前記第2カルボナート単位は次の構造式で示され、
【化55】
式中、Rは次の構造式で示されるC17~C40二価芳香族基であって、
【化56】

【化57】

【化58】

【化59】

【化60】

【化61】
、または
【化62】
式中、RおよびRはそれぞれ独立して出現毎に、C~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C12アルケニルであり、それぞれのRは水素であり、または2つのRが、それらの結合している炭素原子と共にカルボニル基を形成しており、出現毎のRは独立してC~Cアルキルであり、Rは、水素、C~Cアルキル、または、必要に応じて、1、2、3、4、または5個のC~Cアルキル基で置換されたフェニルであり、Rは独立して出現毎にC~Cアルキルまたはフェニル、望ましくはメチルであり、Xは、C~C12アリーレン、C~C18シクロアルキレン、C~C18シクロアルキリデン、または-C(R)(R)-(式中、Rは、水素、C~C12アルキル、またはC~C12アリールであり、Rは、C~C10アルキル、C~Cシクロアルキル、またはC~C12アリール)であり、あるいはXは、-(Q-G-(Q-(式中、QおよびQはそれぞれ独立してC~Cアルキレンであり、GはC~C10シクロアルキレンであり、xは0または1であり、yは0または1)であり、j、m、およびnはそれぞれ独立して、0、1、2、3、または4であり、それぞれの第3カルボナート単位は二価のカルボナート基と二価のポリシロキサン基とを含み、前記二価ポリシロキサン基は、5から60の、次の構造式で示されるジオルガノシロキサン単位を含み、
【化63】
式中、出現毎のRは独立してC~C13ヒドロカルビル基であり、前記スリップ剤は、四ステアリン酸ペンタエリトリトール、六ステアリン酸ジペンタエリトリトール、三ステアリン酸グリセロール、高密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリ(カルボナート-シロキサン)、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれ、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、ISO 13319-1:2021に従った、電気検知ゾーン法による測定で、0.5から4μmの数平均球相当径を持つ。
【0054】
態様2:態様1のフィルム押出組成物であって、比率(t60/(粒子の総数))は0.1から0.5%であり、式中、t60は、60%における負荷/長さ比であって、%の単位で表され、JIS B0601(1994)に従って、次の式を用いて計算され、
60=((L+L+L+・・・L)/L)×100
式中、(L+L+L+・・・L)は、最大山高さ(0%に相当)と、最大谷深さ(100%に相当)との間隔の60%の切断レベルにおける、測定長さLに沿って測定した、切断部分長さの和であり、粒子の総数は、1ngの押出フィルム中の架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子の数であって、1ngのフィルム押出組成物中の架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子の質量、粒子の密度、および粒子の数平均球相当径から計算される。
【0055】
態様3:態様1または2のフィルム押出組成物であって、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、フィルム押出組成物の総質量に対して0.55から0.7質量%の、1.5から2.5μmの数平均球相当径を持つ粒子を含む。
【0056】
態様4:態様1または2のフィルム押出組成物であって、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、フィルム押出組成物の総質量に対して、0.2から0.6質量%の、0.5から1μmの数平均球相当径を持つ第1粒子と、0.2から0.6質量%の、1.5から3μmの数平均球相当径を持つ第2粒子とを含む。
【0057】
態様5:態様1または2のフィルム押出組成物であって、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、フィルム押出組成物の総質量に対して、0.2から0.6質量%の、1.5から2.4μmの数平均球相当径を持つ第1粒子と、0.2から0.6質量%の、2.5から4μmの数平均球相当径を持つ第2粒子とを含む。
【0058】
態様6:態様1から5のいずれかのフィルム押出組成物であって、前記スリップ剤は、四ステアリン酸ペンタエリトリトール、ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体、および四ステアリン酸ペンタエリトリトールとポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体との組み合わせから成る群より選ばれ、前記ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体は、ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体の質量に対して70から90質量%のビスフェノールAカルボナート単位と、ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体の質量に対して10から30質量%のジメチルシロキサン単位と、を含む。
【0059】
態様7:態様1から6のいずれかのフィルム押出組成物であって、前記フィルム押出組成物は、90から99.25質量%のコポリカルボナートと、0.2から5質量%のスリップ剤と、0.55から0.7質量%の粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンとを含み、前記コポリカルボナートは、50から75モル%の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンビスフェノールカルボナート単位と、25から50モル%のビスフェノールAカルボナート単位と、を含む。
【0060】
態様8:態様7のフィルム押出組成物であって、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、フィルム押出組成物の総質量に対して0.55から0.7質量%の、1.5から2.5μmの数平均球相当径を持つ粒子を含む。
【0061】
態様9:態様1~8のいずれかのフィルム押出組成物を含む押出フィルム。
【0062】
態様10:態様9の押出フィルムであって、前記フィルム押出組成物は、90から99.25質量%のコポリカルボナートと、0.2から5質量%のスリップ剤と、0.55から0.7質量%の粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンとを含み、前記コポリカルボナートは、50から75モル%の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンビスフェノールカルボナート単位と、25から50モル%のビスフェノールAカルボナート単位とを含む。
【0063】
態様11:態様10の押出フィルムであって、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、フィルム押出組成物の総質量に対して0.55から0.7質量%の、1.5から2.5μmの数平均球相当径を持つ粒子を含む。
【0064】
態様12:態様1~8のいずれかのフィルム押出組成物を含む押出フィルムと、前記押出フィルムに接している導電性金属層とを含むキャパシタ。
【0065】
態様13:態様12のキャパシタであって、前記フィルム押出組成物は、90から99.25質量%のコポリカルボナートと、0.2から5質量%のスリップ剤と、0.55から0.7質量%の粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンとを含み、前記コポリカルボナートは、50から75モル%の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンビスフェノールカルボナート単位と、25から50モル%のビスフェノールAカルボナート単位とを含む。
【0066】
態様14:態様13のキャパシタであって、前記粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、フィルム押出組成物の総質量に対して0.55から0.7質量%の、1.5から2.5μmの数平均球相当径を持つ粒子を含む。
【0067】
態様15:態様1~8のいずれかのフィルム押出組成物を含む押出フィルムと、前記押出フィルムに接している導電性金属層とを含む金属化フィルム。
【0068】
文中に開示されている全ての範囲はその終点を含み、終点は独立して互いに組み合わせることができる。文中に開示されているそれぞれの範囲は、開示された範囲内にある全ての点または部分的範囲を開示しているものとする。
【実施例
【0069】
本発明について、以下の非制限的な実施例で更に説明する。
【0070】
フィルム押出組成物の生成に使用する材料を表1にまとめた。
【0071】
【表1】
【0072】
フィルム押出組成物を、押し出したフィルムの特性と併せて表2にまとめた。成分の量は、組成物の総質量に対する質量%で示す。
【0073】
組成物は全て、ダイフェーズ付近に真空ポートを設けた、30:1の長さ/直径比を持つWerner & Pfleiderer共回転2軸押出機で混練した。混練は285~330℃の温度で行った。全ての成分を押出機の供給口に加えた。粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、ポリ(カルボナート-シロキサン)ブロック共重合体と予め混ぜ合わせたマスターバッチとして押出機に加えた。
【0074】
溶融物の流れが脈動しないよう、メルトポンプを使用しながら、25mmの単軸押出機を用いてフィルムを押し出した。330~360℃の温度でダイ内の溶融物圧力が最適となるよう、メルトポンプを調節した。ダイリップ間隔(die gap clearance)100~300μm、幅450mmの垂直Tダイから溶融物を押し出した。カーテン状溶融物を滑らかな冷却ロール上に放出し、5μmの厚さとなるよう流れ方向に引っ張った。メルトポンプの吐出量と下流の装置の巻き取り速度とを合わせ、均一で一定したフィルム厚さとなるようゲージを調節した。
【0075】
フィルム特性を表2にまとめた。“合計PMSS負荷(質量%)”は、組成物の総質量に対する粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンの合計質量%である。“全PMSSの平均ESD(μm)”は、ある特定の組成物中に含まれる全ての粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンの数平均球相当径(単位μm)であって、ある特定のフィルム押出組成物中に含まれる全ての粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンの数平均球相当径から計算する。“粒子の総数”(無単位)は、1ngのフィルム中の粒子の数であって、前述のように計算する。
【0076】
表面粗さはフィルムの重要な物理的特性であって、滑りに直接影響を与え、また、押出加工、フィルムの金属化、およびキャパシタの巻回工程の全般に亘るフィルムウェブの扱い易さにとって極めて重要な特性である。表面粗さが不適切であるとブロッキング(即ち、付着)が起き、また、押出しの際、マスターロールに連続的に巻き取られるフィルム層の間に空気が閉じ込められることがある。閉じ込められた気体は、金属化の際のテレスコープの主原因である。過剰な表面粗さは、巻回型キャパシタの能率(体積対エネルギー比)を落とし、フィルムの破壊強度を低下させる。表2の表面粗さ特性(全て、μmの単位を持つ)は、JIS B0601(1994)に従って求めた。“Ra”は算術平均粗さであり、“Ry”は最大高さであり、“Rz”は十点平均粗さ(cross point average height)であり、“S”は局部山頂の平均間隔(average local maximum interval)であり、“Sm”は凹凸の平均間隔(average irregularity interval)であり、“RMS”は二乗平均平方根粗さである。表2の表面粗さ特性値は、5個の試料の平均値を表している。表面粗さ特性は、Keyence共焦点顕微鏡を用いて求めた。Keyence VK-200で、50倍対物レンズを用いて一次粗さ(primary roughness)画像を撮影した。表面のずれを小さくするため、試料を平らなポリカルボナート板上に固定した。レーザ測定モードで、ステージ高さ調節装置を用いて、フィルムの上面に焦点を合わせた。手動で走査範囲を、フィルム上面の1μm上から、フィルム上面の1μm下に設定した。全走査範囲はフィルム厚さを超えなかった。データ収集の際、フィルムの底部側が画像に入らないよう、目標Z走査範囲を2~4μmとした。目標とする走査範囲内に視野全体が入らないときは、試料をXおよびY方向に動かしてフラットな画像が得られるようにした。走査範囲を設定したら、走査範囲全体が適度な明度およびコントラスト設定となるようオートゲインを作動させた。高精度設定で、ダブルスキャンオプションを使用した。Zステップ高さは0.1μmであった。このような条件下で50倍対物レンズを使用して測定を行い、280~300mm×200mmの視野についてデータ分析を行った。1枚が50mm×100mmの試料を使用し、様々な位置で個別に5回の測定を行った。それぞれの画像について、JIS B0601(1994)標準規格の計算に従って、表面粗さ測定を行った。マルチラインスキャン分析用テンプレートを用いて、5回の個別のスキャンそれぞれについて求めた平均値を計算および記録した。この分析には、それぞれの画像を流れ方向に横切る60本の線が含まれ、Ra(算術平均粗さ)、Ry(最大高さ)、Rz(十点平均粗さ)、およびRMS(二乗平均平方根粗さ)の平均を記録した。取得画像の前処理には、Keyenceの推奨に従って、オートティルト補正、オートノイズ除去、高さカットレベル、および、DCL/BCLレベルのステップが含まれる。ティルト補正した表面上で粗さ測定値を求めて、粗さ曲線補正:高さデータを発生させた。これにより、線粗さ断面曲線(line roughness cross section curve)から表面粗さを求めることができる。表面粗さでは、高さデータについて最小二乗法用いてベースラインを求め、そのベースラインからの各高さデータ点の距離を求めた。Ra計算では、基準面(reference surface)と測定面との高さの差の絶対値を求め、次に、粗さ曲面(roughness curve surface)上の各点と基準面との距離の平均を求めた。Ry計算では、基準面と粗さ曲面上の各点との距離を比較し、最大山高さ(height of the highest peak)(Yp)と、最大谷深さ(depth of the lowest valley)(Yv)の和を求めた。Rz値は、5個の最大山高さの絶対値の平均と、5個の最大谷深さの絶対値の平均との和から求めた。RMS計算では、基準面と粗さ曲面との差の二乗の和の平方根を示した。
【0077】
表2の特性、“t10(%)”、“t20(%)”、“t30(%)”、“t40(%)”、“t50(%)”、“t60(%)”、“t70(%)”、“t80(%)”、および“t90(%)”(それぞれ%の単位を持つ)は、指定された%値における負荷/長さ比を指し、先の図の説明の文で述べたように計算した。“粒子の総数”(単位なし)は、1ngのフィルム当たりの架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子の総数であって、前述のように計算した。“t60/粒子の総数”の値(それぞれ%の単位を持つ)は、t60値と粒子総数の値との比を指す。
【0078】
電気的特性は、連続式破壊強度試験(continuous breakdown strength test)を用いて求めた。連続式破壊強度試験は、特定の電圧、単位当たりの厚さで起こる、フィルムの破壊の数を測定する、連続式絶縁破壊試験法および装置である。それぞれの電圧レベルにおけるクリアリングカウント(clearing counts)が低いほど、フィルムの品質は良くなる(即ち、欠陥、かき傷、しわ、厚みの不均一性が低減する)。電気的クリアリングカウントは、150、200、250、300、350、および400ボルト/マイクロメートル(V/μm)で求めた。供試フィルムを、対極フィルム上の接地した金属化層と、滑らかなスチールローラとの間に挟んだ。供試フィルムと対応する接地金属化フィルム(対極)とを、10m/分で装置にかけ、ロールツーロール工程で巻き上げた。TREK 20/20C増幅器と繋いだ、BK Precision 1788B電力供給装置を用いて、高電位ローラの電位を制御した。Labviewソフトウェア制御インターフェースを、National Instruments NI-9223電圧入力モジュールと繋いで使用し、特定の電圧における電圧/電流スパイクを測定して破壊カウント数を求めた。それぞれの電圧で、1平方メートルのフィルムについて、破壊カウントの数と位置を記録した。表2のクリアリングカウント値は、試料毎に5回の試験の平均を示してある。
【0079】
表2の“テレスコープ”は、金属化されていないフィルムのロールを巻く際、元々は円筒形であったロールにアンバランスな力がかかることで、外側層がコアおよび内側フィルム層に対して左右に滑る程度の尺度である。これは目視検査で求めた。“不良(poor)”というテレスコープ評価は、巻き取りパラメータを調整してもテレスコープを直せなかったことを意味する。“良(better)”の評価は、巻き取りパラメータを大きく変えることでテレスコープを防げたことを意味する。“最良(best)”の評価は、通常の巻き取り条件下でテレスコープが起きなかったことを意味する。
【0080】
表2の“ブロッキング”は、金属化したフィルムのロールを巻き出す際、フィルムの変形や破れを起こさずに、フィルム層が互いに離れられない程度の尺度である。これは、巻き出し後の金属化フィルムの目視検査で求めた。“不良”というブロッキング評価は、層間接着により、層が貼り付いて裂けた、または、金属層がフィルムから剥がれたことを意味する。“良”の評価は、金属化および/または巻き取りパラメータを大きく変えることで付着を軽減できたことを意味する。“最良”の評価は、金属化または巻き取りパラメータを大きく変えずに付着を軽減できたことを意味する。
【0081】
表2の結果から、本発明の実施例1~5(平均で1.4から2.5μmの直径を持つ架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子を0.6から0.7質量%含む)が、全て、テレスコープおよびブロッキングについて“良”または“最良”値を示し、更に、“350V/μmにおけるクリアリングカウント(カウント/m)”が十分に低い値である(即ち、全ての値が59.4以下)ことから明らかなように、良好な誘電特性を示すことが分かる。実施例1および2では、際だった性能が示され、テレスコープおよびブロッキングでは“最良”値を、“350V/μmにおけるクリアリングカウント(カウント/m)”では18.6以下の値を示した。
【0082】
一方、それぞれの比較例では、テレスコープ、ブロッキング、および誘電特性のうち少なくとも1つが不足している。比較例1~5(直径2μmの架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子を0.3から0.45質量%含む)は、テレスコープおよびブロッキングで“良”評価を達成したが、実施例1および2(同じ架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子を0.6質量%含む)が示したテレスコープおよびブロッキングの“最良”評価よりもずっと悪かった。比較例6(0.2質量%の2μmの粒子と、0.2質量%の4.5μmの粒子との組み合わせを含む)は、ブロッキングで“良”評価(ブロッキング評価が“最良”である実施例1~4よりも劣っている)と、“350V/μmにおけるクリアリングカウント(カウント/m)”で16.5の値(実施例5の1.8の値よりも劣っている)を示した。比較例7~9(0.7μmの粒子を0.3から0.45質量%含む)は全て、テレスコープで“不良”評価を示した。比較例10~14(4.5μmの粒子を0.3から0.45質量%含む)は全て、ブロッキングで“不良”評価を示した。
【0083】
実施例はまた、パラメータ“t60/粒子の総数”が有用であり、不完全ながらも、テレスコープとブロッキングのバランスの改善の判断材料となることを示している。具体的には、テレスコープとブロッキングのバランスの改善を示した本発明の5つの実施例のうち3つが、0.1から0.5の“t60/粒子の総数”値を持つ(実施例1、2、および5)。このパラメータは、粒径、粒子数、および粒子間隔の影響を受ける。
【0084】
実施例は全体として、平均で0.5から4μmの直径を持つ架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子を0.55から0.8質量%含む押出フィルムによって、テレスコープ、ブロッキング、および誘電特性のバランスが改善することを示している。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【図
【国際調査報告】