(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ビフェニル化合物と免疫チェックポイント分子制御因子を用いたがんの併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/40 20060101AFI20240920BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240920BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240920BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K31/40
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518857
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2022036343
(87)【国際公開番号】W WO2023054547
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2021161733
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501170688
【氏名又は名称】アステックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 敏博
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
(57)【要約】
副作用が少なく、極めて優れた抗腫瘍効果を示す新規ながん治療方法を提供する。抗腫瘍剤は、がんを有する被験者の治療に使用するためのビフェニル化合物を含む。免疫チェックポイント分子調節剤を被験者に投与することを含む治療法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を含む、がんを有する被験者の治療に用いる抗腫瘍剤であって、
前記治療が、免疫チェックポイント分子調節剤を被験者に投与することを含む、抗腫瘍剤。
【請求項2】
前記免疫チェックポイント分子調節剤が、PD-1経路アンタゴニスト及びCTLA-4経路アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1種以上である、請求項1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項3】
前記免疫チェックポイント分子調節剤がPD-1経路アンタゴニストである、請求項1又は2に記載の抗腫瘍剤。
【請求項4】
前記PD-1経路アンタゴニストが、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体及び抗PD-L2抗体からなる群より選択される少なくとも1種以上である、請求項2又は3に記載の抗腫瘍剤。
【請求項5】
前記PD-1経路アンタゴニストが、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である、請求項2又は3に記載の抗腫瘍剤。
【請求項6】
前記PD-1経路アンタゴニストが、抗PD-1抗体である、請求項2又は3に記載の抗腫瘍剤。
【請求項7】
前記CTLA-4経路アンタゴニストが、抗CTLA-4抗体である、請求項2に記載の抗腫瘍剤。
【請求項8】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を有効成分として含む、免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果増強剤。
【請求項9】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を含む、免疫チェックポイント分子調節剤が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤。
【請求項10】
免疫チェックポイント分子調節剤を含む、 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤。
【請求項11】
免疫チェックポイント調節剤との併用による腫瘍の治療に使用するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩。
【請求項12】
免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果の増強に使用するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩。
【請求項13】
免疫チェックポイント分子調節剤を投与されたがん患者の腫瘍の治療に使用するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩。
【請求項14】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を投与されたがん患者の腫瘍の治療に使用するための、免疫チェックポイント分子調節剤。
【請求項15】
腫瘍の治療に使用するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩及び免疫チェックポイント分子調節剤の組み合わせ。
【請求項16】
免疫チェックポイント分子調節剤と組み合わせて投与される抗腫瘍剤を製造するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩の使用。
【請求項17】
免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を増強するための抗腫瘍効果増強剤を製造するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩の使用。
【請求項18】
免疫チェックポイント分子調節剤が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤を製造するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩の使用。
【請求項19】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤を製造するための、免疫チェックポイント分子調節剤の使用。
【請求項20】
抗腫瘍剤を製造するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩と、免疫チェックポイント分子調節剤との使用。
【請求項21】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩と、免疫チェックポイント分子調節剤とを組み合わせて、腫瘍の治療を必要としている被験者に投与することを含む、腫瘍の治療方法。
【請求項22】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を、免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果の増強を必要としている被験者に投与することを含む、免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を増強する方法。
【請求項23】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を、腫瘍の治療を必要としている被験者に投与することを含む、免疫チェックポイント分子調節剤を投与されているがん患者の腫瘍を治療する方法。
【請求項24】
免疫チェックポイント分子調節剤を、腫瘍の治療を必要としている被験者に投与することを含む、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を投与されているがん患者の腫瘍を治療する方法。
【請求項25】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩と、免疫チェックポイント分子調節剤との組み合わせを、腫瘍の治療を必要としている被験者に投与することを含む、腫瘍の治療方法。
【請求項26】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩、及び免疫チェックポイント分子調節剤を含む、腫瘍の予防及び/又は治療のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビフェニル化合物又はその塩と免疫チェックポイント分子調節剤とを組み合わせてなる抗腫瘍剤、並びに、抗腫瘍効果増強剤、及びキット製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リジン特異的脱メチル化酵素1(LSD1)は、ヒストンH3タンパク質の4番目リジン(H3K4)及びヒストンH3タンパク質の9番目リジン(H3K9)をモノメチル化又はジメチル化するエピジェネティック酵素である。LSD1は、エピジェネティックな制御因子としての機能に加えて、DNMT1、p53、STAT3、E2F1等の非ヒストン基質も制御している(非特許文献1)。また、LSD1は、様々な多タンパク質複合体の構成要素であり、様々な遺伝子制御タンパク質との関連性が示されている(非特許文献2)。多くの研究により、LSD1は、幹細胞の制御、分化、細胞運動、上皮間葉転換等、正常細胞及びがん細胞におけるいくつかの細胞プロセスにおいて極めて重要な役割を担っていることが明らかにされている(非特許文献3)。
【0003】
LSD1は、多くのがんで高発現し、予後不良と関連している(非特許文献4)。がんの発生、進行、転移、治療後の再発等、がんの様々なステージにLSD1が関与している。近年、LSD1を標的とする手法が、がん治療に有望であると認識されている。がん治療を対象として、数種類のLSD1阻害剤の臨床試験が進行中である(非特許文献1)。
【0004】
一方、免疫系は、生体内の要因によって 引き起こされる様々な疾患に対する自己防衛のために重要である。免疫系の機能低下は、細菌やウイルスによる感染症の発症、腫瘍の発生、けがや病気からの回復の遅れ等、病的な悪影響を及ぼす。したがって、免疫系を活性化することは、様々な疾患の予防や治療にとって非常に重要である。また、がんの新たな治療法として、がん免疫療法が開発されている。
【0005】
適応免疫反応の活性化は、抗原ペプチド-MHC複合体がT細胞受容体(TCR)に結合することにより開始される。そして、この結合は、共刺激分子であるB7ファミリーと、B7ファミリーの受容体であるCD28ファミリーとの結合による共刺激や共抑制によって制御される。すなわち、T細胞が抗原特異的に活性化されるためには、2つの特徴的なシグナル伝達イベントが必要であり、B7ファミリーからの共刺激を受けず、抗原刺激のみを受けたT細胞は無応答状態(アネルギー)となることから、T細胞には免疫寛容が誘導されるのである。
【0006】
この仕組みを利用して、がん細胞は抗原特異的T細胞の活性化を抑制し、免疫監視機構から逃れ、増殖を続ける。そこで、がん治療においては、共刺激の増強と共抑制の阻害により、がん患者の生体内で抗腫瘍免疫反応を誘導し、腫瘍の免疫逃避を制御することが有効と考えられ、共刺激分子(刺激性共刺激分子)あるいは共抑制分子(抑制性共刺激分子)を標的とした種々のがん免疫治療が提案されている(特許文献6)。例えば、PD-1とそのリガンド(PD-L1、PD-L2)の結合を阻害してT細胞を活性化する免疫チェックポイント分子制御薬として、ニボルマブ(ヒト型PD-1に対するIgG4モノクローナル抗体)が悪性黒色腫等に用いられている(特許文献1及び非特許文献5)。
【0007】
下記式(I)で表されるビフェニル化合物である4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル、又はその塩は、LSD1阻害剤として知られており(特許文献2)、該LSD1阻害剤と他の抗腫瘍剤との併用がこれまでに報告されている(特許文献3)。
【0008】
しかしながら、式(I)で表されるビフェニル化合物と免疫チェックポイント分子調節剤とは、未だ併用されたことはない。また、式(I)で表されるビフェニル化合物の免疫賦活作用は不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2004/004771号公報
【特許文献2】国際公開第2017/090756号公報
【特許文献3】国際公開第2018/216795号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.Hematol.Oncol, 12:129 (2019)
【非特許文献2】Cancers(Basel), 11:324 (2019)
【非特許文献3】Crit.RevEukaryot.Gene Expr,22:53-59 (2012)
【非特許文献4】Pharmacol.Res,164:105335 (2020)
【非特許文献5】N.Engl.J.Med.,366:2443-2454 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の目的は、副作用が少なく、極めて優れた抗腫瘍効果を発揮する新規ながん治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル(以下、化合物A)又はその塩と免疫チェックポイント分子調節剤との併用について検討し、またその抗腫瘍効果について検討した。その結果、単剤を用いた場合と比較して、重篤な副作用を生じることなく、抗腫瘍効果がより顕著に増強されることを見出した。
【0013】
具体的には、一実施形態において、本開示は以下の[1]~[26]の態様を提供する。
[1] 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を含む、がんを有する被験者の治療に用いる抗腫瘍剤であって、
前記治療が、免疫チェックポイント分子調節剤を被験者に投与することを含む、抗腫瘍剤。
[2] 前記免疫チェックポイント分子調節剤が、PD-1経路アンタゴニスト及びCTLA-4経路アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1種以上である、[1]に記載の抗腫瘍剤。
[3] 前記免疫チェックポイント分子調節剤がPD-1経路アンタゴニストである、[1]又は[2]に記載の抗腫瘍剤。
[4] 前記PD-1経路アンタゴニストが、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体及び抗PD-L2抗体からなる群より選択される少なくとも1種以上である、[2]又は[3]に記載の抗腫瘍剤。
[5] 前記PD-1経路アンタゴニストが、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である、[2]又は[3]に記載の抗腫瘍剤。
[6] 前記PD-1経路アンタゴニストが、抗PD-1抗体である、[2]又は[3]に記載の抗腫瘍剤。
[7] 前記CTLA-4経路アンタゴニストが、抗CTLA-4抗体である、[2]に記載の抗腫瘍剤。
[8] 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を有効成分として含む、免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果増強剤。
[9] 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を含む、免疫チェックポイント分子調節剤が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤。
[10] 免疫チェックポイント分子調節剤を含む、 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤。
[11] 免疫チェックポイント分子調節剤との併用による腫瘍の治療に使用するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩。
[12] 免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果の増強に使用するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩。
[13] 免疫チェックポイント分子調節剤を投与されたがん患者の腫瘍の治療に使用するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩。
[14] 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を投与されたがん患者の腫瘍の治療に使用するための、免疫チェックポイント分子調節剤。
[15] 腫瘍の治療に使用するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩と免疫チェックポイント分子調節剤との組み合わせ。
[16] 免疫チェックポイント分子調節剤と組み合わせて投与される抗腫瘍剤を製造するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩の使用。
[17] 免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を増強するための抗腫瘍効果増強剤を製造するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩の使用。
[18] 免疫チェックポイント分子調節剤が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤を製造するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩の使用。
[19] 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤を製造するための、免疫チェックポイント分子調節剤の使用。
[20] 抗腫瘍剤を製造するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩と、免疫チェックポイント分子調節剤との使用。
[21] 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩と、免疫チェックポイント分子調節剤とを組み合わせて、腫瘍の治療を必要としている被験者に投与することを含む、腫瘍の治療方法。
[22] 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を、免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果の増強を必要としている被験者に投与することを含む、免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を増強する方法。
[23] 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を、腫瘍の治療を必要としている被験者に投与することを含む、免疫チェックポイント分子調節剤を投与されているがん患者の腫瘍を治療する方法。
[24] 免疫チェックポイント分子調節剤を、腫瘍の治療を必要としている被験者に投与することを含む、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を投与されているがん患者の腫瘍を治療する方法。
[25] 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩と、免疫チェックポイント分子調節剤との組み合わせを、腫瘍の治療を必要としている被験者に投与することを含む、腫瘍の治療方法。
[26] 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩、及び免疫チェックポイント分子調節剤を含む、腫瘍の予防及び/又は治療のための医薬組成物。
【0014】
さらに、他の実施形態において、本開示は以下の態様を包含する。
・4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩と、免疫チェックポイント分子調節剤とを、組み合わせて投与する態様で含む、抗腫瘍剤。
・4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩、及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤を含む抗腫瘍剤を、単剤療法又は併用療法として使用する、gMDSCレベルが高いがん患者の治療方法。
・がん患者から採取した試料中の顆粒球系骨髄由来抑制細胞(gMDSC)の量に基づいて、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩、及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤を含む抗腫瘍剤を、がん患者に用いた場合の化学療法の効果を予想すること、及び
前記抗ガン剤を用いた化学療法が有効であると予想されるがん患者に対して前記抗腫瘍剤を投与すること、を含む、がんの治療方法。
・がん患者から採取した試料中の顆粒球系骨髄由来抑制細胞(gMDSC)の量に基づいて、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩、及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤を含む抗腫瘍剤を、がん患者に用いた場合の化学療法の効果を予想すること、を含む、がん治療のための化学療法の効果の予測方法。
【発明の効果】
【0015】
本開示の抗腫瘍剤によれば、副作用の発現を抑制しつつ、高い抗腫瘍効果を有するがん治療を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】腫瘍浸潤白血球中の顆粒球系骨髄由来抑制細胞(gMDSC、多形核MDSCと同じ)の比率を示す。
【
図1B】腫瘍浸潤白血球中のCD8陽性T細胞の比率を示す。
【
図2A】マウス大腸がん細胞株MC38を移植した野生型(免疫が成熟している)マウスモデルにおける化合物Aの抗腫瘍効果を示す。
【
図2B】マウス大腸がん細胞株MC38を移植した免疫不全マウスモデルにおける化合物Aの抗腫瘍効果を示す。
【
図3】マウス大腸がん細胞株MC38を移植した野生型マウスモデルにおける化合物Aと抗マウスPD-1抗体との併用効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリルは、下記の構造で示される。
【化1】
【0018】
本開示において、上記化合物を「化合物A」と記載する。化合物Aは国際公開第2017/090756号公報の実施例化合物37として記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。化合物Aは、当該技術分野に公知の方法により製造することができ、製造方法は特に制限されないが、例えば、国際公開第2017/090756号公報や国際公開第2021/095835号公報に記載の方法により製造することができ、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0019】
本開示は、化合物A又はその塩と免疫チェックポイント分子調節剤(特に、抗PD-1抗体)とを組み合わせて投与する抗腫瘍剤(「腫瘍治療薬」と互換可能)、抗腫瘍効果増強剤、及びキット製剤;その使用;腫瘍治療方法;及び抗腫瘍効果増強方法に関するものである。
【0020】
本開示で用いられる化合物A又はその塩は、結晶の形態であってもよい。化合物A又はその塩の範囲として、単結晶、及び多形結晶の混合物が含まれる。このような結晶は、当該技術分野で公知の晶析法に従って晶析することにより製造できる。化合物A又はその塩は、溶媒和物(例えば、水和物)であってもよく、非溶媒和物であってもよい。このような形態のいずれもが、本開示の化合物又はその塩の範囲に含まれる。
【0021】
同位体(例えば、3H、14C、35S、125I)で標識された化合物Aも、本開示で用いられる化合物A又はその塩の範囲に含まれる。
【0022】
本開示で用いられる化合物Aの塩は、有機化学の分野で用いられる一般的な塩を指す。そのような塩の例には、カウンターイオンがカチオンである塩、及びカウンターイオンがアニオンである塩が含まれる。化合物Aの塩は、好ましくは、薬学的に許容される塩である。
【0023】
カウンターイオンがカチオンである塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、プロカイン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩等の有機アミン塩が挙げられる。
【0024】
カウンターイオンがアニオンである塩の例としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、ギ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩等の有機酸塩;メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩が挙げられる。
【0025】
化合物Aの塩の一例として、安息香酸塩が挙げられる。他の一例としては、ソルビン酸塩、コハク酸塩、L-酒石酸塩、又はヒドロクロル酸塩が挙げられる。その他の一例としては、ヘミフマル酸塩、モノシュウ酸塩、メシル酸塩、エシル酸塩、マレイン酸塩、モノフマル酸塩、又はヘミシュウ酸塩が挙げられる。
【0026】
本開示における免疫チェックポイント分子調節剤は、免疫チェックポイント分子に直接作用するため、がん患者においてin vivoで抗腫瘍免疫反応を誘導し、腫瘍の免疫逃避を制御することができる。
【0027】
免疫チェックポイント分子調節剤としては、例えば、共刺激分子の機能を促進する物質(刺激性コスティミュラトリ-分子)、又は、共抑制分子の機能を抑制する物質(抑制性コスティミュラトリー分子)が挙げられる。免疫チェックポイント分子としては、例えば、B7ファミリー(B7-1、B7-2、PD-L1、PD-L2等)、CD28ファミリー(CTLA-4、PD-1等)、TNFスーパーファミリー(4-1BBL、OX40L)、TNF受容体スーパーファミリー(4-1BB、OX40)分子、TIGIT経路分子(TIGIT等)、LAG-3経路分子(LAG-3等)が挙げられる。免疫チェックポイント分子調節剤として、免疫チェックポイント分子の1種以上を標的とした物質を用いることができる。このような物質の例としては、PD-1経路アンタゴニスト、ICOS経路アゴニスト、CTLA-4経路アンタゴニスト、CD28経路アゴニスト、BTLA経路アンタゴニスト、4-1BB経路アゴニスト、TIGIT経路アンタゴニスト、LAG-3経路アンタゴニストが挙げられる。
【0028】
本開示において、免疫チェックポイント分子調節剤は、副作用抑制の観点から、PD-1経路アンタゴニスト、ICOS経路アゴニスト、CTLA-4経路アンタゴニスト及びCD28経路アゴニストからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましく、PD-1経路アンタゴニスト及びCTLA-4経路アゴニストからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることがより好ましく、PD-1経路アンタゴニストがさらに好ましい。
【0029】
PD-1経路アンタゴニストは、T細胞に発現するPD-1からの免疫抑制性シグナルを阻害するものである。PD-L1又はPD-L2は、PD-1のリガンドであり、PD-1経路アンタゴニストの例としては、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、PD-1細胞外ドメイン、PD-L1細胞外ドメイン、PD-L2細胞外ドメイン、PD-1-Ig(PD-1細胞外ドメインと免疫グロブリン(Ig)のFC領域との融合タンパク質)、PD-L1-Ig、PD-L2-Ig、PD-1 siRNA、PD-L1 siRNA、PD-L2 siRNAが挙げられる。PD-1経路アンタゴニストは、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗PD-L2抗体であることが好ましく、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体であることがより好ましく、抗PD-1抗体であることが特に好ましい。
【0030】
CTLA-4経路アンタゴニストは、T細胞に発現するCTLA-4からの免疫抑制性シグナルを抑制するものである。CTLA-4のリガンドとして、B7-1(CD80)又はB7-2(CD86)が挙げられる。CTLA-4経路アンタゴニストは、抗CTLA-4抗体、CTLA-4細胞外ドメイン、CTLA-4-Ig、抗B7-1(CD80)抗体又は抗B7-2(CD86)抗体であることが好ましく、抗CTLA-4抗体又はCTLA-Igであることがより好ましく、抗CTLA-4抗体であることが特に好ましい。
【0031】
一実施形態において、免疫チェックポイント分子調節剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体及び抗CTLA-4抗体からなる群より選択される少なくとも1種以上であることが好ましく、抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体からなる群より選択される少なくとも1種以上であることがより好ましく、抗PD-1抗体であることが特に好ましい。
【0032】
抗体としては、例えば、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgY等)、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、一本鎖抗体フラグメント(scFv)、シングルドメイン抗体、ダイアボディ(Nat.Rev.Immunol.,6:343-357, 2006)が挙げられる。これらの抗体には、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体、ラマ抗体、ニワトリ抗体等のモノクローナル抗体やポリクロ-ナル抗体が含まれる。
【0033】
ヒト化IgGモノクローナル抗体又はヒトIgGモノクローナル抗体が好ましい。
【0034】
本開示において、抗PD-1抗体としては、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ジンベレリマブ、セミスリマブ、スパルタリズマブ、ブディガリマブ、カムレリズマブ、セトレリマブ、ドスタ-リマブ、エザベンリマブ、ランブロリズマブ、ペンプリマブ、ピミバリマブ、プコテンリマブ、ササンリマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ等が挙げられ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ジンベレリマブが好ましい。
【0035】
本開示において、抗PD-L1抗体としては、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、ガリブリマブ、ロダポリマブ、コシベリマブ、ソカゾリマブ等が挙げられ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブが好ましく、アテゾリズマブがより好ましい。
【0036】
本開示において、抗CTLA-4抗体としては、イピリムマブ、トレメリムマブ、クアボンリマブ、ザリフリムマブ等が挙げられ、イピリムマブが好ましい。
【0037】
本開示において、CTLA-4-Igとしては、アバタセプト等が挙げられ、アバタセプトが好ましい。
【0038】
本開示において、抗TIGIT抗体としては、ビボストリマブ、オシペリマブ、ドンバナリマブ、チラゴルマブ等が挙げられる。
【0039】
本開示において、抗LAG-3抗体としては、リラトリマブ、ファベゼリマブ、フィアンリマブ等が挙げられる。
【0040】
これらの抗体は、公知の抗体の調製方法によって製造することができる。 さらに、市販の抗体を用いることもできる。
【0041】
本開示において、2以上の免疫チェックポイント分子調節剤を用いる場合、例えば、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体、又は抗PD-1抗体と抗LAG-3抗体を併用してもよいし、PD-1とCTLA-4の両方、又はPD-1とLAG-3の両方に結合できる二重特異性抗体を用いてもよい。二重特異性抗体の例としては、XmAb20717(PD-1×CTLA-4)、テボテリマブ(PD-1×LAG-3)等が挙げられる。
【0042】
本開示において、化合物A又はその塩の1日当たりの投与量は、化合物Aによる免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果の増強の観点から、化合物A又はその塩の単独投与の推奨用量の50~200%であることが好ましく、75~150%であることがより好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0043】
化合物A又はその塩の典型的な1日投与量は、体重1キログラム当たり100ピコグラム~100ミリグラムの範囲であり、より典型的には体重1キログラム当たり10ナノグラム~25ミリグラムの範囲であり得る。さらに典型的には、化合物A又はその塩の1日用量は、体重1キログラム当たり100ナノグラム~20ミリグラムの範囲であり得るが、必要に応じてより多い又はより少ない投与量であっても良い。例えば、1日の投与量は、体重1キログラムあたり1マイクログラム~20ミリグラム、より典型的には体重1キログラムあたり10マイクログラム~20ミリグラム、さらに典型的には体重1キログラムあたり100マイクログラム~20ミリグラムとすることができる。
【0044】
投与量は、患者の体表面積に対する薬物の投与量(mg/m2)として表すこともできる。化合物A又はその塩の典型的な1日投与量は、3700 pg/m2~3700 mg/m2の範囲であり得るが、必要に応じてより多い又はより少ない投与量であっても良い。例えば、1日の投与量は、370 ng/m2~925 mg/m2、より典型的に 3700 ng/m2~740 mg/m2であってよいが、必要に応じてより多い又はより少ない投与量であっても良い。例えば、37 μg/m2~740 mg/m2、より典型的には370 μg /m2~740 mg/m2、又は3700 μg/m2~740 mg/m2でありうる。
【0045】
本開示の化合物A又はその塩は、例えば0.05~3000mgの範囲の単回用量で経口投与されてもよい。典型的には、10~1000mgの範囲であってよい。典型的な用量の例としては、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900及び1000mgが挙げられる。投与量は、上記範囲(0.05~3000mg)の任意の投与量から、例えば、1mg、5mg、10mg、20mg、50mgの単位で段階的に増減させることができる。
【0046】
本開示において、免疫チェックポイント分子調節剤の1日あたりの投与量は、化合物Aによる免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果の増強作用の観点から、免疫チェックポイント分子調節剤の単独投与時の推奨用量の50~200%であることが好ましく、75~150%であることがより好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0047】
ニボルマブ単剤投与時の推奨用量の典型的な例としては、1回あたり2mg/kg(体重)又は3mg/kg(体重)が挙げられる。
【0048】
ペムブロリズマブ単剤投与時の推奨用量の典型的な例としては、1回あたり2mg/kg(体重)又は1回あたり200mgが挙げられる。
【0049】
アテゾリズマブ単剤投与の推奨用量の典型的な例としては、1回あたり1200mgが挙げられる。
【0050】
アベルマブ又はデュルバルマブの単剤投与における推奨用量の典型的な例としては、1回あたり10mg/kg(体重)が挙げられる。
【0051】
イピリムマブ単剤投与時の推奨用量の典型的な例としては、1回あたり3mg/kg(体重)が挙げられる。
【0052】
本明細書において、「推奨用量」とは、臨床試験等を通じて決定され、重篤な副作用の発現がなく安全な使用が確保されつつ、最大の治療効果が得られる用量のことである。 具体的には、「推奨用量」は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)等の公的機関又は法人が承認、推奨又は示唆し、添付文書、問診票、治療ガイドライン等に記載する用量であり、PMDA、FDA及びEMAからなる群から選択される公的機関が承認する用量であることが好ましい。
【0053】
本開示における抗腫瘍剤の投与スケジュールは、がんの種類、病期等に応じて適切に選択できる。
【0054】
化合物A又はその塩の投与スケジュールは、1週間又は2週間の連続投与後、1週間の休薬期間を含む限り、特に限定されない。1週間(7日間)の連続投与後、1週間(7日間)の休薬期間を含む2週間(14日間)の投与スケジュールを1サイクルとした場合、疾患又は障害を治療するためにそのサイクルを1回行ってもよく、2回以上繰り返して行っても良い。すなわち、1サイクル、又は1サイクル以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10サイクル又はそれ以上の特定の投与スケジュールで投与することができる。いくつかの実施形態において、複数のサイクルからなる長周期で投与することができる。例えば、約13~15サイクルの治療又は投与で6ヶ月間;約25又は26サイクルの治療で1年間;約75~100サイクルの治療で3年間又はそれ以上の期間の投与スケジュールとすることができる。また、2週間(14日間)の投与後、1週間(7日間)の休薬期間を設けた3週間(21日間)の投与スケジュールを1サイクルとした場合、そのサイクルは1回でもよいし、2回以上繰り返してもよい。すなわち、投与スケジュールを1サイクル、又は1サイクルよりも多いサイクル、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10サイクル、又はそれ以上のサイクルで投与することができる。場合によっては、より多くのサイクルで投与してもよい。例えば、約10サイクルで6ヶ月間、約20サイクルで1年間、約50~60サイクルで3年間、又はより多くのサイクルでより長期間の投与スケジュールとしても良い。
【0055】
また、化合物Aの投与スケジュールにおいて、1週間又は2週間の連続投与後、1週間の休薬期間を設けるスケジュールで投与を継続する限り、その後投与を停止してもよく、一定期間の休薬日(無投与)を経て投与を再開してもよい。さらに、投与スケジュールは、複数の休薬日を有するスケジュールを含んでもよい。休薬日を有する投与スケジュールの一実施形態において、休薬日前の投与期間及び休薬日後の投与期間で「1週間又は2週間の連続投与後、1週間の休薬期間」という条件が満たされていればよい。休薬日を2回有する投与スケジュールの別の実施形態では、「1週間又は2週間の連続投与後、1週間の休薬期間」という条件が、第1期間の休薬日の前の投与期間、休薬日の2つの期間の間の投与期間、及び第2期間の休薬日の後の投与期間で満たされていれば十分である。休薬日を2回以上有する投与スケジュールの別の実施形態では、最初の休薬日前の投与期間、隣接する2つの休薬日の間の投与期間、及び最後の休薬日の後の投与期間において、「1週間又は2週間の連続投与後に1週間の休止期間」の条件を満たせば十分である。休薬日は、特に限定されるものではなく、患者の状態等に応じて好適に設定することができる。例えば、休薬日は、1日~35日の範囲内とすることができる。あるいは、休薬日は、1~12ヶ月の範囲内とすることができる。
【0056】
また、免疫チェックポイント分子調節剤の投与スケジュールも、一定の間隔で投与される限り、特に限定されない。一実施形態において、免疫チェックポイント分子調節剤は、1~3週間の間隔で投与される。
【0057】
ニボルマブは、2週間又は3週間の間隔で投与を行う投与スケジュールが好ましい。
【0058】
ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、又はイピリムマブは、3週間の間隔で投与を行う投与スケジュールであることが好ましい。
【0059】
アベルマブ又はデュルバルマブは、2週間間隔で投与を行う投与スケジュールであることが好ましい。
【0060】
本開示の抗腫瘍剤の1日当たりの投与回数は、がんの種類、病期等に応じて適宜選択される。
【0061】
化合物A又はその塩の1日あたりの投与回数は、1又は2回が好ましく、1回がより好ましい。ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ又はイピリムマブの1日あたりの投与回数は、1回が好ましい。
【0062】
本開示の化合物A又はその塩と免疫チェックポイント分子調節剤の投与順序は、がんの種類、病期等に応じて適宜選択することができ、これらの薬剤は任意の順序で投与してもよく、併用する場合には並行して投与してもよい。
【0063】
「併用」は、薬剤を投与する治療が行われている被験者に対し、別の薬剤も使用することを意味する。
【0064】
ここで、化合物A又はその塩と免疫チェックポイント分子調節剤を並行して投与しない場合、両剤の投与間隔は、抗腫瘍効果が増強される限り適宜選択でき、好ましくは1~14日、より好ましくは1~7日、さらに好ましくは1~5日、特に好ましくは1~3日である。
【0065】
本開示において、対象とする腫瘍は、抗腫瘍効果が増強される限り特に限定されず、好ましくは化合物A又はその塩が抗腫瘍効果を示す腫瘍であり、より好ましくはLSD1が関与する悪性腫瘍である。
【0066】
化合物A又はその塩の治療対象となる悪性腫瘍の種類は特に限定されない。例えば、腺腫瘍、カルチノイド腫瘍、未分化癌、血管肉腫、腺癌、胃腸癌(例えば、結腸癌及び直腸癌を含む結腸直腸癌(「CRC」)、胆嚢癌及び胆管癌を含む胆道癌、肛門癌、食道癌、胃癌、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍(「GIST」)、肝臓癌、十二指腸癌、小腸癌)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、扁平上皮肺癌、大細胞肺癌、小細胞肺癌、浸潤性粘液性腺癌、中皮腫、及び気管支腫瘍や胸膜肺芽腫等の他の肺癌)、泌尿器癌(例えば、腎臓がん、腎臓の移行細胞がん(「TCC」)、腎盂・尿管のTCC(「PDQ」)、膀胱がん、尿道がん、前立腺がん)、頭頸部がん(例えば、眼がん、網膜芽細胞腫、眼内黒色腫、下咽頭がん、咽頭がん、喉頭がん、喉頭乳頭腫症、原発不明転移性扁平上皮がん、副鼻腔扁平上皮がん (SNSCC) 、口腔がん、口唇がん、咽頭がん、中咽頭がん、エステシオネーロブラストーマ、鼻腔及び副鼻腔がん、上咽頭がん、唾液腺がん)、内分泌がん(例えば、甲状腺がん、副甲状腺がん、多発性内分泌腫瘍症候群、胸腺腫及び胸腺がん、膵管腺がん(「PDAC」)、膵神経内分泌腫瘍及び膵島細胞腫瘍等の膵臓がん)、乳がん(例えば、非浸潤性乳管癌(「DCIS」)、非浸潤性小葉癌(「LCIS」)、トリプルネガティブ乳がん、炎症性乳がん)、男性及び女性生殖器がん(例えば、子宮頸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、子宮がん、膣がん、外陰がん、妊娠性絨毛腫瘍(「GTD」)、角層外胚細胞腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、胚細胞腫瘍、精巣がん、陰茎がん)、脳・神経系がん(例えば、星細胞腫、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、膠芽腫(GBM)、頭蓋咽頭腫、中枢神経系(「CNS」)癌、脊索腫、上衣腫、胚性腫瘍、神経芽腫、傍神経節腫、異型奇形腫、オリゴデンドロサイトーマ、オリゴデンドログリオーマ、未分化オリゴデンドロサイトーマ、ガングリオグマ、中枢神経細胞腫、髄芽腫、胚芽腫、髄膜腫、神経鞘腫、GH分泌下垂体腺腫、PRL分泌下垂体腺腫、ACTH分泌下垂体腺腫、非機能性下垂体腺腫、血管芽腫、表皮腫)、皮膚癌(例えば、基底細胞癌(「BCC」)、扁平上皮癌(「SCC」)、メルケル細胞癌、メラノーマ)、組織及び骨の癌(例えば、軟部肉腫、横紋筋肉腫、骨繊維性組織球腫、ユーイング肉腫、骨悪性繊維性組織球腫(「MFH」)、骨肉腫、軟骨肉腫)、心血管癌(例えば、心臓がん、心臓腫瘍)、虫垂がん、小児及び思春期がん(例えば、小児副腎皮質がん、正中線がん、肝細胞がん(HCC)、肝芽腫、ウィルムス腫瘍)、ウイルス性がん(例えば、HHV-8関連がん(カポジ肉腫)、HIV/AIDS関連がん)が挙げられる。
【0067】
本開示の治療に適した腫瘍としては、多発性骨髄腫、白血病及びリンパ腫、骨髄異形成症候群及び骨髄増殖性障害等の血液及び形質細胞の悪性腫瘍(例えば、血液、骨髄及び/又はリンパ節を冒すがん)が含まれるが、これらに限定されるものではない。白血病としては、特に限定されないが、急性リンパ芽球性白血病(「ALL」)、急性骨髄性myeloid)白血病(「AML」)、慢性リンパ性白血病(「CLL」)、慢性骨髄性白血病(「CML」)、急性単球性白血病(「AMoL」)、ヘアリーセル白血病、及び/又は他の白血病が挙げられる。リンパ腫としては、特に限定されないが、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫(「NHL」)が挙げられる。いくつかの実施形態において、NHLは、B細胞リンパ腫及び/又はT細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、NHLは、特に限定されないが、びまん性大B細胞リンパ腫(「DLBCL」)、小リンパ球性リンパ腫(「SLL」)、慢性リンパ球性白血病(「CLL」)、マントル細胞リンパ腫(「MCL」)、バーキットリンパ腫、菌状息肉症やセザリ-症候群を含む皮膚T細胞リンパ腫、エイズ関連リンパ腫、濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫(ワルデンストーム・マクログロブリン血症(「WM」))、中枢神経系原発リンパ腫、中枢神経系悪性リンパ腫、及び/又は他のリンパ腫である。
【0068】
より好ましくは、肺がん(非小細胞肺がん、小細胞肺がん等)及び白血病を例示することができる。さらに好ましくは、小細胞肺癌(SCLC)及び急性骨髄性白血病(AML)を例示することができる。
【0069】
後述の実施例に示すように、化合物A又はその塩は、免疫賦活作用を有する。本明細書において、「免疫賦活作用」とは、細胞障害性T細胞やマクロファ-ジ等の免疫細胞を活性化する作用、及び/又は制御性T細胞、骨髄由来抑制細胞(MDSC)等による免疫応答の抑制を阻害する作用を意味する。特に、化合物A又はその塩は、細胞傷害性T細胞を増加させる作用、及び/又は顆粒球系骨髄由来抑制細胞(gMDSC)による免疫反応の抑制を阻害する作用を有する。
【0070】
本開示において、gMDSCは、当業者に従来から知られているマ-カ-によって同定することができる。マ-カ-の例としては、CD33+CD11b+HLA-DR-CD15+CD14-、CD33+CD11b+HLA-DRlowCD15+CD14-、CD33+CD11b+Lin-CD15+CD14-、CD33+CD11b+HLA-DR-Lin-CD15+CD14-、CD33+CD11b+HLA-DRlowLin-CD15+CD14-が挙げられる。
【0071】
本開示において、有効成分である化合物A又はその塩と免疫チェックポイント分子調節剤は、有効成分の剤型又は投与スケジュールに応じて複数の剤型に分けて製剤化してもよいし、統合して一つの剤型に製剤化(すなわち、配合製剤として製剤化)してもよい。また、これらの製剤は、併用投与に適した1つのパッケ-ジで製造・販売されてもよいし、別々のパッケ-ジで製造・販売されてもよい。
【0072】
本開示において、抗腫瘍剤の剤型は特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択することができる。例えば、経口剤(錠剤、コーティング錠、粉末、顆粒、カプセル、溶液等)、注射剤、座剤、貼付剤、軟膏剤等が挙げられる。
【0073】
化合物A又はその塩の場合、経口剤が好ましい。
【0074】
抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体の場合、上記の剤型が用いられ、注射剤が好ましい。
【0075】
化合物A又はその塩及び免疫チェックポイント分子調節剤のいずれについても、本開示の抗腫瘍剤は、その剤型に応じて、1又は2以上の医薬として許容される担体を用いて、公知の方法により調製することができる。 担体の例としては、一般的な医薬剤に通常用いられる各種担体、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、可溶化剤、懸濁化剤、強壮剤、pH調整剤、緩衝剤、安定剤、着色剤、風味改良剤、臭気改良剤が挙げられる。
【0076】
本開示の抗腫瘍剤によれば、副作用の発現を抑制しつつ、高い抗腫瘍効果を有するがん治療を行うことが可能となる。いくつかの実施形態において、高い抗腫瘍効果には、腫瘍増殖遅延効果及び/又は腫瘍縮小効果が含まれる。したがって、本開示の抗腫瘍剤をがん患者に投与した場合、患者の寿命を延ばすことができる。
【0077】
また、本開示は、免疫チェックポイント分子調節剤のがん患者に対する抗腫瘍効果を増強するための抗腫瘍効果増強剤であって、化合物A又はその塩を有効成分として含有する抗腫瘍効果増強剤に関する。本開示の抗腫瘍効果増強剤は、上記の抗腫瘍剤と同一の製剤形態を有する。
【0078】
また、本開示は、化合物A又はその塩のがん患者に対する抗腫瘍効果を増強するための抗腫瘍効果増強剤であって、免疫チェックポイント分子調節剤を有効成分として含有する抗腫瘍効果増強剤に関する。本開示の抗腫瘍効果増強剤は、上記の抗腫瘍剤と同一の製剤形態を有する。
【0079】
また、本開示は、免疫チェックポイント分子調節剤が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤であって、化合物A又はその塩を含有する抗腫瘍剤に関する。抗腫瘍剤は、上記の製剤形態を有する。
【0080】
また、本開示は、化合物A又はその塩を投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤であって、免疫チェックポイント分子調節剤を含有する抗腫瘍剤に関する。抗腫瘍剤は、上記の製剤形態を有する。
【0081】
「治療」には、腫瘍摘出手術後に再発防止のために行う術後補助化学療法と、腫瘍摘出手術前に行う術前補助化学療法が含まれる。
【0082】
また、本開示は、がん患者に対して免疫チェックポイント分子調節剤と併用される、化合物A又はその塩を含有する抗腫瘍剤に関する。抗腫瘍剤は、上記の製剤形態を有する。
【0083】
また、本開示は、がん患者に対して、化合物A又はその塩を含む抗腫瘍剤と併用される、免疫チェックポイント分子調節剤を含む抗腫瘍剤に関する。抗腫瘍剤は、上記の製剤形態を有する。
【0084】
また、本開示は、化合物A又はその塩を含む抗腫瘍剤;及び化合物A又はその塩と免疫チェックポイント分子調節剤とを組み合わせてがん患者に投与することを記載した説明書を含むキット製剤に関する。
【0085】
ここで、「説明書」は、上記の投与量が特定されている限り、特に限定されない。説明書は、法的拘束力があってもなくてもよいが、上記の投与量が推奨されるものであることが好ましい。説明書としては、例えば、添付文書やパンフレット等が挙げられる。説明書を含むキット製剤は、キット製剤のパッケ-ジに説明書が印刷又は添付されているものであってもよいし、キット製剤のパッケ-ジに抗腫瘍剤とともに説明書が封入されているものであってもよい。
【0086】
本開示は、上記の抗腫瘍剤以外の1以上の抗がん剤と組み合わせて用いても良い。このような抗がん剤としては、例えば、化学療法剤(例えば、細胞毒性剤)、免疫療法剤、ホルモン剤及び抗ホルモン剤、標的治療剤、抗血管新生剤が挙げられる。多くの抗がん剤が、上記の少なくともいずれかに分類される。本明細書においては、特定の抗がん剤を特定のグル-プ又はサブグル-プに分類したが、これらの薬剤の多くは、当技術分野で公知であるように、1つ又は複数の他のグル-プ又はサブグル-プに分類することも可能である。抗がん剤としては、特に限定されないが、例えば、化学療法剤、有糸分裂阻害剤、植物アルカロイド、アルキル化剤、代謝拮抗剤、白金アナログ、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、レチノイド、アジリジン、抗生物質、ホルモン剤、抗ホルモン剤、抗エストロゲン、抗アンドロゲン、抗副腎、アンドロゲン、標的治療剤、免疫療法剤、生体応答修飾剤、サイトカイン阻害剤、腫瘍ワクチン、モノクローナル抗体、コロニ-刺激因子、抗LAGl剤、抗OX40剤が挙げられる。
【0087】
化学療法剤の非限定的な例としては、有糸分裂阻害剤、植物アルカロイド、アルキル化剤、代謝拮抗剤、白金アナログ、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、レチノイド、アジリジン、抗生物質が挙げられる。
【0088】
有糸分裂阻害剤及び植物アルカロイドの非限定的な例としては、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、及びテセタキセル等のタキサン類;デメコルシン;エポチロン;エリブリン;エトポシド(VP-16);リン酸エトポシド;ナベルビン;ノスカピン;テニポシド;タリブラスチン;ビンブラスチン;ビンクリスチン;ビンデシン;ビンフルニン;ビノ-ルミンが挙げられる。
【0089】
アルキル化剤の非限定的な例としては、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、サイトホスファン、エストラムスチン、イホスファミド、マンノムスチン、メクロレタミン、塩酸マクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビシン、フェネスタリン、プレドニムスチン、トリス(2-クロロエチル)アミン、トロホスファミド、ウラシルマスタ-ド等のナイトロジェンマスタ-ド;ブスルファン、インプロスルファン、ピボスルファン等のアルキルスルホン酸塩;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ストレプトゾトシン、TA-07等のニトロソウレア;アルトレタミン、チオテパ、トリエチルエネメラミン、トリエチルエンチオホスファオラミド、トリエチルエンホスファオラミド、トリメチルオロメラミン等のエチレンイミン及びメチルメラミン;アンバムスチン;ベンダムスチン;ダカルバジン;シクロホスファミド;エトグルシド;イロフルベン;マホスファミド;ミトバロニトル;ミトラクト-ル;ピコブローマン;プロカルバジン;テモゾロミド;トレオスルファン;及びトリアジコンが挙げられる。
【0090】
代謝拮抗剤の非限定的な例としては、アミノプテリン、デノプテリン、エダトレキサ-ト、メトトレキサ-ト、プテロプテリン、ラルティトレキサ-ト、トリメトレキサ-ト等の葉酸アナログ;6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビン、フォロデシン、チアミプリン、チオグアニン等のプリンアナログ;5-フルオロウラシル(5-FU)、テガフ-ル/ギメラシル/オテラシルカリウム、テガフ-ル/ウラシル、トリフルリジン、トリフルリジン/塩酸チピラシル、6-アザウリジン、アンシタビン、アザシタビン、カペシタビン、カルモフ-ル、シタラビン、デシタビン、ジデオキシウリジン、ドキシフィウリジン、ドキシフルリジン、エノキタビン、フロクスウリジン、ガロシタビン、ゲムシタビン、サパシタビン等のピリミジンアナログ;3-アミノピリジン-2-カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン;ブロクスリジン;クラドリビン;シクロホスファミド;シタラビン;エミテフ-ル;ヒドロキシ尿素;メルカプトプリン;ネララビン;ペメトレキセド;ペントスタチン;テガフ-ル;トロキサシタビンが挙げられる。
【0091】
白金アナログの非限定的な例としては、カルボプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ヘプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、トリプラチン四硝酸塩が挙げられる。
【0092】
酵素の非限定的な例としては、アスパラギナーゼ、ペガスパガーゼが挙げられる。
【0093】
トポイソメラーゼ阻害剤の非限定的な例としては、アクリジンカルボキサミド、アモナフィド、アンサクリン、ベロテカン、酢酸エリプチニウム、エクサテカン、インドロカルバゾール、イリノテカン、ルルトテカン、ミトコキサントン、ラゾキサン、ルビテカン、SN-38、ソブゾキサン、トポテカンが挙げられる。
【0094】
レチノイドの非限定的な例としては、アリトレチノイン、ベキサロテン、フェンレチニド、イソトレチノイン、リヤゾレ、RIIレチンアミド、トレチノインが挙げられる。
【0095】
アジリジンの非限定的な例としては、ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、ウレドパが挙げられる。
【0096】
抗生物質の非限定的な例としては、インタ-カレ-ト抗生物質;アントラセンジオン;アクラルビシン、アムルビシン、ダウノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、メノガリル、ノガマイシン、ピラルビシン、バルビシン等のアントラサイクリン抗生物質;6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン;アクラシノミシン;アクチノマイシン;オートラマイシン;アザセリン;ブレオマイシン;カクチノマイシン;カリシアマイシン;カラビシンカルミノマイシン;カルジノフィリン;クロモマイシン;ダクチノマイシン;デトルビシン;エソルビシン;エスペラミシン;ゲルダナマシン;マ-セロマイシン;マイトマイシン類;マイトマイシンC;マイコフェノール酸;オリボマイシン;ノバントロンペプロマイシン;ポルフィロマイシン;ポットフィロマイシン;プロマイシン;ケラマイシン;レベッカマイシン;ロドルビシン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;タネスピマイシン;ツベルシジン;ウベニメックス;ジノスタチン;ジノスタチンスチラマー;ゾルビジンが挙げられる。
【0097】
ホルモン剤及び抗ホルモン剤の非限定的な例としては、アビラテロン、アパルタミド、ビカルタミド、ダロルタミド、エンザルタミド、フルタミド、ゴセレリン、リュ-プロリド、ニルタミド等の抗アンドロゲン剤;4-ヒドロキシタモキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、EM-800、フォスフェストロール、フルベストラント、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフェン、トリオキシフェン等の抗エストロゲン剤;アミノグルテチミド、デキサミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗アドレナリン剤;カルスステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノ-ル、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アバレリックス;アナストロゾ-ル;セトロレリックス;デスロレリン;エキセメスタン;ファドロゾ-ル;フィナステリド;ホルミスタン;ヒストレリン(RL0903);ヒト絨毛性ゴ等トロピン;ランレオチド;LDI 200(ミルクハウス);レトロゾ-ル;リュ-プロレリン;ミフェプリストン;ナファレリン;ナホキシジン;オサテロン;プレドニゾン;チロトロピンアルファ;トリプトアリンが挙げられる。
【0098】
免疫療法剤(すなわち、免疫療法)の非限定的な例としては、生物学的反応修飾剤、サイトカイン阻害剤、腫瘍ワクチン、モノクローナル抗体、コロニ-刺激因子、免疫調節剤が挙げられる。
【0099】
インターフェロンやインターロイキン等のサイトカイン阻害剤(サイトカイン)を含む生体応答修飾剤の非限定的な例としては、インターフェロンα-2、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-nl、インターフェロンα-n3、インターフェロンアルファコン-1、ペグインターフェロンα-2a、ペグインターフェロンα-2b、白血球アルファインターフェロン等のインターフェロンアルファ/インターフェロンアルファ;インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b等のインターフェロンβ;天然インターフェロンγ-1a、インターフェロンγ-1b等のインターフェロンγ;アルデスロイキン;インターフェロン1β;インターフェロン2;オプレルベキン;ソナーミン;タソナーミン;ビリズンが挙げられる。
【0100】
腫瘍ワクチンの非限定的な例としては、APC8015、AVICINE、膀胱癌ワクチン、癌ワクチン(Biomira)、ガストリン17免疫原、丸山ワクチン、メラノーマ溶解液ワクチン、メラノーマオンコライザ-ワクチン(ニューヨーク医科大学).メラノーマワクチン(ニューヨーク大学)、メラノーマワクチン(スローンケタリング研究所)、TICE(登録商標)BCG(Bacillus Calmette-Guerin)、ウイルス性メラノーマ細胞溶解ワクチン(ロイヤルニューキャッスル病院)が挙げられる。
【0101】
モノクローナル抗体の非限定的な例としては、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフリベルセプト、アレムツズマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ・ベドチン、CA125MAb(バイオミラ)、がんMAb(日本医薬開発)、ダクリツマブ、ダルツズマブ、デノズマブ、エトレコロマブ、ジェムツマブ・ゾガマイシン、HER-2及びFc MAb(メダレックス)、イブリツモマブ・チウキセタン、イディオタイプ105AD7 MAb(CRCテクノロジ-)、イディオタイプCEA MAb(トライレックス)、リントズマブ、LYM-1-ヨウ素131 MAb(テクニ-クロ-ン)、マイツモマブ、モクセットモマブ、オクタムマブ、多形上皮ムチンイットリウム90 MAb(アンチソーマ)、ラニビズマブ、リツキマブ、ベルツズマブ、トラストツズマブが挙げられる。
【0102】
コロニ-刺激因子の非限定的な例としては、ダルベポエチンアルファ、エポエチンアルファ、エポエチンベ-タ、フィルグラスチム、顆粒球マクロファ-ジコロニ-刺激因子、レノグラスチム、レリジスティム、ミリモスティム、モルグラモスチム、ナルトグラスチム、ペグフィルグラスチム及びサルグラモスチムが挙げられる。
【0103】
他の免疫療法剤の非限定的な例としては、BiTE、CAR-T細胞、GITRアゴニスト、イミキモド、免疫調節イミド(ImiDs)、ミスマッチ二本鎖RNA(Ampligen)、レジキモド、SRL172、チマルファシンが挙げられる。
【0104】
標的治療薬には、例えば、モノクローナル抗体や低分子薬剤が含まれる。標的治療薬の非限定的な例としては、シグナル伝達阻害剤、成長因子阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、EGFR阻害剤、HER2阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、細胞周期阻害剤、血管新生阻害剤、マトリックス-メタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤、肝細胞増殖因子阻害剤、TOR阻害剤、KDR阻害剤、VEGF阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤、RAF阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤、MCL-1阻害剤、BCL-2阻害剤、SHP2阻害剤、BRAF阻害剤、RAS阻害剤、遺伝子発現制御剤、オートファジー阻害剤、アポト-シス誘導剤、抗増殖剤、解糖阻害剤が挙げられる。
【0105】
シグナル伝達阻害剤の非限定的な例としては、チロシンキナーゼ阻害剤、マルチキナーゼ阻害剤、アンロチニブ、アバプリチニブ、アキシチニブ、ダサチニブ、ドビチニブ、イマチニブ 、レンバチニブ、ロニダミン、ニロチニブ、ニンテダニブ、パズパニブ、ペグビゾマン、ポナチニブ、バンデタニブ、EGFR及び/又はHER2阻害剤が挙げられる。
【0106】
EGFR阻害剤の非限定的な例としては、アファチニブ、ブリガチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、バンデタニブ、オシメルチニブ等のEGFRの低分子アンタゴニスト;天然リガンドによるEGFR活性化を部分的又は完全に遮断することができる任意の抗EGFR抗体又は抗体フラグメントを含む抗体ベースのEGFR阻害剤が挙げられる。抗体ベ-スのEGFR阻害剤としては、例えば、Modjtahedi,H., et al.,1993、Br.J.Cancer 67:247-253、Teramoto, T., et al., 1996, Cancer 77:639-645、Goldstein et al., 1995, Clin.Cancer Res.1:1311-1318、Huang,S.M., et al., 1999,Cancer Res.15:59(8):1935-40、及びYang,X.,etc,1999, Cancer Res.59:1236-1243に記載のEGFR阻害剤;モノクローナル抗体Mab E7.6.3(Yang, 1999前掲); Mab C225 (ATCC Accession No.HB-8508)、又はその結合特異性を有する抗体又は抗体断片; 特定のアンチセンスヌクレオチド又はsiRNA;アファチニブ、セツキシマブ、マツズマブ、ネシツマブ、ニモツズマブ、パニツムマブ、ザルツムマブを挙げることができる。
【0107】
HER2阻害剤の非限定的な例としては、アファチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、ツカチニブ等のHER2チロシンキナーゼ阻害剤;トラスツズマブ、トラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1)、パーツズマブ、マルゲツキマブ、トラスツズマブ・デルクステカン(DS-8201a)、トラスツズマブ・デュカルマジン等の抗HER2抗体又はその薬剤コンジュゲ-トが挙げられる。
【0108】
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の非限定的な例としては、ベリノスタット、パノビノスタット、ロミデプシン、ボリノスタットが挙げられる。
【0109】
プロテアソーム阻害剤の非限定的な例としては、ボルテゾミブ、カ-フィルゾミブ、イキサゾミブ、マリゾミブ(サリノスポラミドa)、オプロゾミブが挙げられる。
【0110】
CDK阻害剤を含む細胞周期阻害剤の非限定的な例としては、アベマシクリブ、アルボシジブ、パルボシクリブ、リボシクリブが挙げられる。
【0111】
抗血管新生剤(又は血管新生阻害剤)の非限定的な例としては、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤;VEGF阻害剤;EGFR阻害剤;エベロリムス、テムシロリムス等のTOR阻害剤;クレノラニブ等のPDGFRキナーゼ阻害剤;PX478等のHIF-1α阻害剤;ベルズティファンやWO2015/035223に記載のHIF-2α阻害剤;B-FGFやRG13577等の線維芽細胞増殖因子(FGF)又はFGFR阻害剤;肝細胞増殖因子阻害剤;KDR阻害剤;抗Ang1剤及び抗Ang2剤;抗Tie2キナーゼ阻害剤;Tekアンタゴニスト(米国特許出願公開第2003/0162712号;米国特許第6,413,932号);抗TWEAK剤(米国特許第6,727,225号);インテグリンのリガンドへの結合に拮抗するADAMジステグリン領域(米国特許出願公開第2002/0042368号);抗エフェレセプタ-及び/又は抗エフェリン抗体又は抗原結合領域(米国特許第5,981,245号; 米国特許第5,728,813号; 米国特許第5,969,110号; 米国特許第6,596,852号; 米国特許第6,232,447号;米国特許第6,057,124号);抗PDGF-BBアンタゴニスト、ならびにPDGF-BBリガンドと特異的に結合する抗体又は抗原結合領域が挙げられる。
【0112】
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤の非限定的な例としては、MMP-2(マトリックスメタロプロテアーゼ2)阻害剤、MMP-9(マトリックスメタロプロテアーゼ9)阻害剤、プリノマスタット、RO32-3555、RS13-0830が挙げられる。有用なマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤の例は、例えば、国際公開第96/33172号、国際公開第96/27583号、欧州特許出願公開第1004578号、国際公開第98/07697号、国際公開第98/03516号、国際公開第98/34918号、国際公開第98/34915号、国際公開第98/33768号、国際公開第98/30566号、欧州特許出願公開第0606046号、欧州特許出願公開第0931788号、国際公開第90/05719号、国際公開第99/52910号、国際公開第99/52889号、国際公開第99/29667号、国際公開第1999/007675号 、欧州特許出願公開第1786785号、欧州特許出願公開第1181017号、米国特許出願公開第2009/0012085号、米国特許出願公開第5,863,949号、米国特許出願公開第5,861,510号、欧州特許出願公開第0780386号に記載されている。MMP-2及びMMP-9阻害剤は、MMP-1を阻害する活性をほとんど又は全く有さないものであることが好ましい。他のマトリックス-メタロプロテアーゼ(すなわち、MAP-1、MMP-3、MMP-4、MMP-5、MMP-6、MMP-7、MMP-8、MMP-10、MMP-11、MMP-12、及びMMP-13)に対して、MMP-2及び/又はMMP-9を選択的に阻害するものであることがより好ましい。
【0113】
VEGFおよびVEGFR阻害剤の非限定的の非限定的な例としては、ベバシズマブ、セジラニブ、CEP7055、CP547632、KRN633、オランティニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ペガプタニブ・オクタソジウム、セマキサニブ、ソラフェニブ、スニティニブ、VEGFアンタゴニスト(Borean、デンマーク)、 VEGF-TRAP(登録商標)が挙げられる。
【0114】
他の抗血管新生剤の非限定的な例としては、2-メトキシエストラジオ-ル、AE 941、アレムツズマブ、α-D148Mab(Amgen、米国)、アルファスタチン、アネコルタベアセテ-ト、アンジオサイジン、血管新生阻害剤(SUGEN、米国)、アンジオスタチン、抗Vn Mab(Crucell、オランダ)、アチプリモド、アキシチニブ、AZD9935、BAY RES 2690(Bayer、ドイツ)、BC1(Genoa Institute of Cancer Research、イタリア)、ベロランイブ、ベネフィン(Lane Labs、米国)、カボザンチニブ、CDP791 (Celltech Group、英国)、コンドロイチナーゼ AC、シレンギチド、コンブレタスタチンA4プロドラッグ、CP564959 (OSI、米国), CV247、CYC381 (ハーバード大学、米国)、E7820、EHT0101、エンドスタチン、塩酸エンザスタウリン、ER-68203-00 (IVAX、米国)、フィブリノーゲンEフラグメント、Flk-1(ImClone Systems、米国)、FLT1のいくつかの形式(VEGFR1)、FR-111142、GCS-100、GW2286(GlaxoSmithKline、英国)、IL-8、イロマスタット、IM-862、イルソグラジン、KM-2550(協和発酵、日本)、レナリドマイド、レンバチニブ、MAb α5β3インテグリン第二世代(Applied Molecular Evolution、米国、及びMedImmune、米国)、MAb VEGF(Xenova、英国)、マリマスタット、マスピン(Sosei、日本)、メタスタチン、モツポラミンC、M-PGA、オンブラブリン、OXI 4503、PI 88、血小板因子4、PPI2458、ラムシルマブ、rBPI 21及びBPI由来の血管新生(XOMA、米国)、レゴラフェニブ、SC-236、SD-7784(Pfizer、米国)、SDX 103(カリフォルニア大学サンディエゴ校、米国)、SG292(Telios、米国)、SU-0879(Pfizer、米国)、TAN-1120、TBC-1635、テセバチニブ、テトラチオモリブデート、サリドマイド、トロンボスポンジン1阻害剤、タイ2リガンド(Regeneron、米国)、組織因子経路阻害剤(EntreMed、米国)、腫瘍壊死因子-α阻害剤、ツムスタチン、TZ 93、ウロキナーゼプラスミノ-ゲンアクチベ-タ-阻害剤、バジメザン、バンデタニブ、バソスタチン、バタラニブ、VE-カドヘリン2アンタゴニスト、キサンホリゾ-ル、XL 784(Exelixis、米国)、ジブアフリベルセプト、ZD6126が挙げられる。
【0115】
化合物Aと併用し得る抗がん剤は、RAS-RAF-ERKシグナル伝達経路又はPI3K-ACT-TORシグナル伝達経路を阻害する活性剤であってよい。このような抗がん剤の例の非限定的な例としては、RAF阻害剤、EGFR阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤、TOR阻害剤、MCL-1阻害剤、BCL-2阻害剤、SHP2阻害剤、プロテアソ-ム阻害剤、又はモノクローナル抗体、免疫調節イミド(IMiD)、抗LAGl、抗OX40剤等の免疫療法、GITRアゴニスト、CAR-T細胞、BiTEが挙げられる。
【0116】
RAF阻害剤の非限定的な例としては、ダブラフェニブ、エンコラフェニブ、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、ベムラフェニブが挙げられる。
【0117】
MEK阻害剤の非限定的な例としては、ビニメチニブ、CI-1040、コビメチニブ、PD318088、PD325901、PD334581、PD98059、リファメチニブ、セルメチニブ、トラメチニブが挙げられる。
【0118】
ERK阻害剤の非限定的な例としては、LY3214996、LTT462、MK-8353、SCH772984、ラボキサチニブ、ウリキサチニブ、ASTX029が挙げられる。
【0119】
PI3K阻害剤の非限定的な例としては、17-ヒドロキシウォ-トマンニンアナログ(例えば、国際公開第06/044453号);AEZS-136;アルペリシブ;AS-252424;ブパリシブ;CAL263;コパンリシブ;CUDC-907;ダクトリシブ(国際公開第06/122806号);デメトキシビリジン;デュベリシブ;GNE-477;GSK1059615;IC87114;イデラリシブ;INK1117;LY294002;Palomid 529;パキサリシブ;ペリフォシン;PI-103;PI-103塩酸塩;ピクチリシブ(例えば、国際公開第09/036,082号; 国際公開第09/055,730号);PIK90;PWT33597;SF1126; ソノリシブ;TGI00-115;TGX-221;XL-147;XL-765;ワートマニン;タセリシブ(GDC-0032); ZSTK474が挙げられる。
【0120】
AKT阻害剤の非限定的な例としては、Akt-1-1(Aktlを阻害する)(Barnett et al.(2005)Biochem.J.,385(Pt.2), 399-408); Akt-1-1,2 (Barnett et al.(2005)Biochem.J.385 (Pt.2), 399-408); API-59CJ-Ome(例えば、Jin et al. (2004)Br.J.Cancer 91, 1808-12);1-H-イミダソ[4,5-c]ピリジニル化合物 (例えば、国際公開第05011700号);インド-ル-3-カルビノール及びその誘導体(例えば、米国特許第6,656,963号;Sarkar and Li(2004)J Nutr.134(12 Suppl),3493S-3498S);ペリフォシン,Dasmahapatra et al.(2004)Clin.Cancer Res. 10(15), 5242-52, 2004;ホスファチジルイノシト-ルエーテル脂質類似体(例えば、Gills and Dennis(2004)Expert.Opin.Investig.Drugs13, 787-97);トリシリビン(Yang et al.(2004) Cancer Res.64, 4394-9);トランス-3-アミノ-1-メチル-3-[4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1,2-c]ピリド[3,4-e][1,3]オキサジン-2-イル)フェニル]-シクロブタノ-ルヒドロクロライド(国際公開第2012/137870号)等のイミダゾキサゾン類;アフレセルティブ;カピバセルティブ;8-[4-(1-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-1,2,4-トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン(MK2206)及びその薬学的に許容される塩;AZD5363;トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1,2-c]ピリド[3,4-e][1,3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール(TAS117)及びその薬学的に許容される塩;パタセルティブが挙げられる。
【0121】
TOR阻害剤の非限定的な例としては、デフォロリムス;PI-103、PP242、PP30、及びトーリン1を含むATP競合型TORC1/TORC2阻害剤;FKBP12エンハンサ-のTOR阻害剤;テムシロリムス、エベロリムス、国際公開第9409010等のラパマイシン及びその誘導体;国際公開第98/02441号及び国際公開第01/14387号に開示されるラパログ、例えば、AP23573、AP23464、AP23841;40-(2-ヒドロキシエチル)ラパマイシン、40-[3-ヒドロキシ(ヒドロキシメチル)メチルプロパン酸]-ラパマイシン;40-エピ-(テトラゾリル)-ラパマイシン(ABT578ともいう);AZD8055;32-デオキサパマイシン;16-ペンチニロキシ-32(S)-ジヒドラパマイシン及び他の国際公開第05/005434号に開示される誘導体;米国特許第5,258,389号、国際公開第94/090101号、国際公開第92/05179号、米国特許第5,118,677号、米国特許第5,118,678号、米国特許第5,100,883号、米国特許第5,151,413号、米国特許第5,120,842、国際公開第93/111130、国際公開第94/021336、国際公開第94/02485号、国際公開第95/14023号、国際公開第94/0213号、国際公開第95/16691号、国際公開第96/41807号、国際公開第96/41807号、米国特許第5,256,790 豪に開示される誘導体;リンを含有するラパマイシン誘導体(例えば、国際公開第05/016252号)が挙げられる。
【0122】
MCL-1阻害剤の非限定的な例としては、AMG-176、MIK665、S63845が挙げられる。
【0123】
SHP2阻害剤の非限定的な例としては、JAB-3068、RMC-4630、TNO155、SHP-099、RMC-4550、及び国際公開第2019/167000号、国際公開第2020/022323号及び国際公開第2021/033153号に記載のSHP2阻害剤が挙げられる。
【0124】
RAS阻害剤の非限定的な例としては、AMG510(sotorasib)、MRTX849、LY3499446、JNJ-74699157(ARS-3248)、ARS-1620、ARS-853、RM-007、RM-008が挙げられる。
【0125】
使用に適した追加の非限定的な抗がん剤としては、例えば、2-エチルヒドラジド、2,2’,2"-トリクロロトリエチルアミン、ABVD、アセグラトン、アセマンナン、アルドホスファミド配糖体、アルファラジン、アミフォスチン、アミノレブリン酸、アナグレリド、ANCER、アンセスチム、抗CD22免疫毒素、抗腫瘍性ハ-ブ、アパジコン、アルグラビン、三酸化ヒ素、アザチオプリン、BAM002(ノベロス)、bcl-2(ジェンタ)、ベストラブシル、ビリコダル、ビサントレン、ブロモクリプチン、ブロスタリシン、ブリオスタチン、ブチオニンスルホキシミン、カリンクリン、細胞周期非特異的抗悪性腫瘍剤、セルモロイキン、クロドロネ-ト、クロトリマゾ-ル、シタラビンオクフォスフェ-ト、DA3030(東亜)、デフォファミン、デニ-ルキン・ディフトックス、デクスラゾキサン、ジアジコン、ジクロロ酢酸、ジラゼップ、ディスコ-デルモライド、ドコサノ-ル、ドキセルシフェロ-ル、エデルホシン、エフルニチン、EL532(エラン)、エルコマイシン、エルサミトル-セン、エニルウラシル、エタニダゾ-ル、エクシスリンド、フェルギノ-ル、フロリン酸等の葉酸補充剤、ガチトシン、硝酸ガリウム、ギメラシル/オテラシル/テガフ-ル配合剤(S-1)、グリコピン、二塩酸ヒスタミン、HITジクロフェナク、HLA-B7遺伝子治療(Vical)、ヒト胎児αフェト蛋白、イバンドロナ-ト、イバンドロン酸、ICE化学療法レジメン、イメキソン、イオベンゲン、IT-101(CRLX101)、ラニキダ-、LC9018(ヤクルト)、レフルノミド、レンチナン、レバミソ-ル+フルオロウラシル、ロバスタチン、ルカントン、マソプロコ-ル、メラルスポロール、メトクロプラミド、ミルテフォシン、ミプロキフェン、ミトバゾン、ミトロミド、モピダモ-ル、モテクサ-フィン・ガドリニウム、MX6(Galderma)、ナロキソン+ペンタゾシン、ニトラクリン、ノラトレキッド、NSC631570オクトレオチド(Ukrain)、オラパリブ、P-30タンパク質、PAC-1、パリフェルミン、パミドロナ-ト、パミドロン酸、ペントサン多硫酸ナトリウム、フェナメット、ピキバニル、ピキサントロン、プラチナ、ポドフィリン酸、ポルフィマ-ナトリウム、PSK(ポリサッカライド-K)、ウサギ抗胸腺細胞ポリクローナル抗体、ラスブリムボディメント、レチノイン酸、レニウムRe186エチドロネ-ト、ロムルチド、サマリウム(153Sm)レキシドロナム、シゾフィラン、フェニル酢酸ナトリウム、スパーホジック酸、スピログルマニウム、塩化ストロンチウム-89、スラミン、スワノニン、タラポフィン、タリキダー、タザロチン、テガフール・ウラシル、テモポルフィン、テヌアゾン酸、テトラクロロデカオキシド、トロンボポエチン、スズエチルエチオプリン、チラパザミン、TLC ELL-12、トシツモマブ・ヨウ素131、トリフルリジン・チピラシル配合、トロポニンI(ハーバード大、米国)、ウレタン、バルスポード、ヴァルテポルフィン、ゾレドロン酸、ゾスキュダールが挙げられる。
【実施例】
【0126】
以下、本開示を実施例によりさらに説明するが、本開示はこれに限定されるものではなく、当業者は本明細書に記載の技術的思想の範囲内で変更を行うことができる。
【0127】
実施例1:ビフェニル化合物の大腸癌細胞移植モデルにおける免疫賦活作用
【0128】
マウス大腸がん細胞株MC38は、早川芳弘博士(富山大学、富山県、日本)より入手した。MC38細胞株は、10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地で培養した後、37℃、5%CO2存在下、インキュベ-タ-で週1~2回の頻度で継代培養を行った。
【0129】
MC38細胞懸濁液を1.5 × 106 cells/0.1 mlで6週齢のC57BL/6JJclマウス(CLEA Japan,Inc.)の右胸部に皮下移植した。
【0130】
移植後、腫瘍体積(TV)が80~230mm3になるまで腫瘍を成長させた。腫瘍径の測定にはデジマチックキャリパを使用した。腫瘍の大径と小径を測定し、以下の式からTVを算出した。
TV(mm3) = 長径 (mm) × 短径 (mm) × 短径 (mm) /2
【0131】
TVを指標とした層別ランダム割付法により、各群に5匹ずつ割付けた。 グル-プ分け(n=5)を行った日を0日目とした。
【0132】
ヒプロメロース濃度を0.5w/v%に調整するために日本薬局方記載の注射用水を適量添加し、スタ-ラ-で撹拌してヒプロメロースを完全に溶解させ、0.5%ヒプロメロース水溶液を調製した。化合物Aの安息香酸塩(実施例では、化合物Aの安息香酸塩を使用した。したがって、以下、「化合物A」とは、化合物Aの安息香酸塩を指す)をメノウ乳鉢で粉砕した後、0.5%ヒプロメロース水溶液で所定濃度に懸濁し、超音波処理を行い、均一な懸濁液とした。化合物Aを含む懸濁液を25 mg/kg/日の用量で1日1回、6日間連日経口投与した。なお、投与量は化合物Aのフリー体を基準とした。
【0133】
抗マウスPD-1抗体(抗mPD-1Ab)は、投与直前に 抗PD-1、CD279(PD-1)モノクローナル抗体(クローン: RMP1-14, Thermo Fisher Scientific)をダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(nacalai tesque,INC)で所定濃度に希釈し、調製した。投与初日(1日目)に、この希釈品を抗マウスPD-1抗体0.05mg/bodyの用量として腹腔内投与した。
【0134】
免疫関連因子の発現を検出するために、免疫学的モニタリングのためのフロ-サイトメトリ-分析を行った。7日目に腫瘍を採取し、Tumor Dissociation Kit, mouse(Miltenyi Biotec)を用いて、腫瘍浸潤リンパ球を調製した。その後、分離したリンパ球を下記の抗体で染色し、フロ-サイトメ-タ-FACS Verse(BD Bioscience社製)を用いて解析した。染色には、CD45モノクローナル抗体(30-F11)eFluor450、eBioscience(登録商標)(Thermo Fisher Scientific)、Brilliant Violet 510(登録商標)抗マウスCD90.2抗体(30-H2)(BioLegend)、CD11b モノクローナル抗体 (M1/70) PE、eBioscience(登録商標)(Thermo Fisher Scientific)、Ly-6G抗体抗マウス(REA526),REAfinity(登録商標)(Miltenyi Biotec)、CD8aモノクローナル抗体(53-6.7) FITC, eBioscience(登録商標)(Thermo Fisher Scientific) を使用した。
【0135】
【0136】
7日目の各群の白血球(CD45陽性細胞)中のgMDSC(CD45陽性、CD90.2陰性、CD11b陽性、Ly6G陽性細胞)の比率をDunnett検定により解析した結果、7日目の化合物A投与群は対照群と比較して、白血球中のgMDSCの比率が著しく低いことが示された。7日目の各群の白血球中のCD8陽性細胞(CD45陽性、CD90.2陽性、CD8陽性細胞)の比率をDunnett検定により解析した結果、7日目の化合物Aと抗マウスPD-1抗体との併用投与群は、対照群と比較して白血球中のCD8陽性細胞の比率が有意に高いことが示された。
【0137】
以上の結果より、化合物Aは免疫賦活作用を示すことがわかった。
【0138】
実施例2:大腸癌細胞移植モデルにおけるビフェニル化合物の効果
【0139】
MC38細胞懸濁液を6週齢のC57BL/6JJclマウス(日本クレア株式会社)又はCB17/Icr-Prkdc[scid]/CrlCrlj(日本チャールズリバー株式会社)の右胸に2.0×106cells/0.1 mlで皮下移植した。なお、CB17/Icr-Prkdc[scid]/CrlCrljマウスは、末梢血中のT細胞及びB細胞の欠乏による免疫不全のマウスである。
【0140】
移植後、腫瘍体積(TV)が50~300mm3になるまで腫瘍を成長させた。腫瘍径の測定にはデジマチックキャリパを使用した。腫瘍の大径と小径を測定し、以下の式からTVを算出した。
TV(mm3 ) = 長径 (mm) × 短径 (mm) × 短径 (mm) /2
【0141】
TVを指標とした層別ランダム割付法により、C57BL/6JJclマウスを各群10匹、CB17/Icr-Prkdc[scid]/CrlCrljマウスを各群5匹に割付けた。グループ分けを行った日を0日目とした。
【0142】
体重測定には、動物用電子天秤を使用した。n日目の体重(BWn)から、以下の式に従って、n日目の体重変化率(BWCn)を算出した。
体重変化率 BWCn(%)=(BWn-BW0)/BW0× 100
【0143】
ヒプロメロース濃度を0.5w/v%に調整するために日本薬局方記載の注射用水を適量加え、スタ-ラ-で攪拌してヒプロメロースを完全に溶解させ、0.5%ヒプロメロース水溶液を調製した。化合物Aの安息香酸塩をメノウ乳鉢で粉砕し、0.5%ヒプロメロース水溶液と所定の濃度になるように懸濁し、超音波処理を行い、均一な懸濁液とした。この化合物Aを含む懸濁液を25 mg/kg/日の用量で1日1回、21日間連続経口投与した。なお、投与量は化合物Aのフリ-体を基準とした。
結果を
図2A、
図2B、表1、表2に示す。
【0144】
【0145】
【0146】
22日目の各群のTVをAspin-Welchのt検定で解析した結果、野生型マウスモデルの化合物A投与群は対照群に比べ有意に低いTVで抗腫瘍効果を示した。一方、免疫不全マウスモデルの化合物A投与群は、対照群に比べ抗腫瘍効果を示さなかった。
【0147】
実施例3:大腸癌細胞移植モデルにおけるビフェニル化合物と免疫チェックポイント分子調節剤の併用効果
【0148】
MC38細胞懸濁液を6週齢のC57BL/6JJclマウス(日本クレア株式会社)の右胸に2.0 × 106 cells/0.1 mlで皮下移植した。
【0149】
移植後、腫瘍体積(TV)が50~300mm3になるまで腫瘍を成長させた。腫瘍径の測定にはデジマチックキャリパを使用した。腫瘍の大径と小径を測定し、以下の式からTVを算出した。
TV(mm3 ) = 長径 (mm) × 短径 (mm) × 短径 (mm) /2
【0150】
TVを指標とした層別ランダム割付法により、各群に10匹のマウスを割付けた。グル-プ分けを行った日を0日目とした。
【0151】
体重測定には、動物用電子天秤を使用した。n日目の体重(BWn)から、以下の式に従って、n日目の体重変化率(BWCn)を算出した。
体重変化率 BWCn(%)=(BWn-BW0)/BW0× 100
【0152】
ヒプロメロース濃度を0.5w/v%に調整するために日本薬局方記載の注射用水を適量加え、スタ-ラ-で攪拌してヒプロメロースを完全に溶解させ、0.5%ヒプロメロース水溶液を調製した。化合物Aの安息香酸塩をメノウ乳鉢で粉砕し、0.5%ヒプロメロース水溶液と所定の濃度になるように懸濁し、超音波処理を行い、均一な懸濁液とした。この化合物Aを含む懸濁液を25 mg/kg/日の用量で1日1回、21日間連続経口投与した。なお、投与量は化合物Aのフリ-体を基準とした。
【0153】
抗マウスPD-1抗体(抗mPD-1 Ab)は、投与直前に 抗PD-1, CD279 (PD-1)モノクローナル抗体(クローン: RMP1-14,Bio X cell)を生理食塩水(Otsuka Pharmaceutical Factory Inc.)で所定濃度に希釈して調製した。投与初日(1日目)に、この希釈品を抗マウスPD-1抗体0.05mg/bodyの用量として腹腔内投与した。
【0154】
【0155】
【0156】
22日目における各群のTVをAspin-Welchのt検定により解析した結果、化合物A群又は抗マウスPD-1抗体を投与した単剤投与群及び化合物A+抗マウスPD-1抗体を投与した併用投与群はいずれも対照群と比較して有意に低いTVで抗腫瘍効果を示した。 さらに、化合物A+抗マウスPD-1抗体を投与した併用投与群は、化合物A又は抗マウスPD-1抗体を投与した単剤投与群と比較して、有意に低いTVを示し、高い抗腫瘍効果を示すことがわかった。
【0157】
併用投与群の平均体重変化率の結果から、化合物A又は抗マウスPD-1抗体のみを投与した単剤投与群と比較して、毒性の増強は認められなかった。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を含む、がんを有する被験者の治療に用いる抗腫瘍剤であって、
前記治療が、免疫チェックポイント分子制御剤を被験者に投与することを含む、抗腫瘍剤。
【請求項2】
前記免疫チェックポイント分子制御剤が、PD-1経路アンタゴニスト及びCTLA-4経路アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1種以上である、請求項1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項3】
前記免疫チェックポイント分子制御剤がPD-1経路アンタゴニストである、請求項
1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項4】
前記PD-1経路アンタゴニストが、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体及び抗PD-L2抗体からなる群より選択される少なくとも1種以上である、請求項2又は3に記載の抗腫瘍剤。
【請求項5】
前記PD-1経路アンタゴニストが、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である、請求項2又は3に記載の抗腫瘍剤。
【請求項6】
前記PD-1経路アンタゴニストが、抗PD-1抗体である、請求項2又は3に記載の抗腫瘍剤。
【請求項7】
前記CTLA-4経路アンタゴニストが、抗CTLA-4抗体である、請求項2に記載の抗腫瘍剤。
【請求項8】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を有効成分として含む、免疫チェックポイント分子制御剤の抗腫瘍効果増強剤。
【請求項9】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を含む、免疫チェックポイント分子制御剤が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤。
【請求項10】
免疫チェックポイント分子制御剤を含む、 4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤。
【請求項11】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩を投与されたがん患者の腫瘍の治療に使用するための、免疫チェックポイント分子制御剤。
【請求項12】
腫瘍の治療に使用するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩及び免疫チェックポイント分子制御剤の組み合わせ
医薬。
【請求項13】
免疫チェックポイント分子制御剤と組み合わせて投与される抗腫瘍剤を製造するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩の使用。
【請求項14】
免疫チェックポイント分子制御剤の抗腫瘍効果を増強するための抗腫瘍効果増強剤を製造するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩の使用。
【請求項15】
免疫チェックポイント分子制御剤が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤を製造するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩の使用。
【請求項16】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩が投与されたがん患者を治療するための抗腫瘍剤を製造するための、免疫チェックポイント分子制御剤の使用。
【請求項17】
抗腫瘍剤を製造するための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩と、免疫チェックポイント分子制御剤との使用。
【請求項18】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[(2-フルオロ-4-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロベンゾニトリル又はその塩、及び免疫チェックポイント分子制御剤を含む、腫瘍の予防及び/又は治療のための医薬組成物。
【国際調査報告】