(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】標的生体分子へのメチルトランスフェラーゼによる転移のための活性基を有するS-及びSE-アデノシル-L-メチオニン類似体
(51)【国際特許分類】
C07H 19/167 20060101AFI20240920BHJP
A61K 38/45 20060101ALI20240920BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240920BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240920BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20240920BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240920BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240920BHJP
C07K 1/13 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C07H19/167 CSP
A61K38/45
A61K47/64
A61P43/00 121
A61K31/7076
A61K48/00
C12N15/11 Z
C07K1/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518889
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 GB2022052438
(87)【国際公開番号】W WO2023047141
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524191804
【氏名又は名称】タゴミクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ニーリー
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・ユビッチ
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ・フェルナンデス-トリッロ
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057LL30
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA13
4C084DC25
4C084NA14
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA18
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC75
4H045AA20
4H045BA54
4H045FA52
(57)【要約】
S-アデノシル-L-メチオニンの類似体、その調製方法、並びに類似体を含む複合体及びキットがここで提供される。前記類似体は、核酸等の標的分子を修飾、標識及び分析することに用途を見出す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、
XはS又はSeであり、
R
1は構造式[R
5]
q-[L
1]
p-[HM]
n-[L
2]
m-U-CH
2-を有し、
R
2はHであり、R
3は(C
1~C
4)アルキル、(C
2~C
4)アルケニル若しくは(C
2~C
4)アルキニルであり、但しR
3はプロパルギルではなく、任意選択で、R
3は1個若しくは複数のR
4で置換されているか、又は
R
2及びR
3は、これらが結合している窒素と一緒になって、1個若しくは複数のR
4で任意選択で置換されている5若しくは6員ヘテロシクリル環を形成し、
R
4は、-NR
aR
b、-OH、-SH、-CN、-C(O)OR
6、-C(O)R
6、C(O)NR
aR
b、N
3、及びハロ(F、Cl、Br又はI)からなる群から選択され、
R
6は、H又は非置換C
1~C
4アルキルであり、
R
a及びR
bは、H及び非置換C
1~C
4アルキルから独立して選択され、
L
1は結合又はリンカーであり、
HMは加水分解性部分であり、
L
2はリンカーであり、
Uは、アルケン、アルキン、芳香族基(例えばアリール)、カルボニル基及び1又は2個のS=O結合を含む硫黄原子から選択される不飽和基を含み、
m、n、p及びqは0及び1から各々独立して選択され、
R
5は、X線回折データの位相整合に好適な重原子又は重原子クラスター、放射性の若しくは安定な希少同位体、フルオロフォア、蛍光消光剤、アフィニティタグ、架橋剤、核酸切断試薬、スピンラベル、発色団、任意選択で修飾されていてもよいタンパク質、ペプチド若しくはアミノ酸、任意選択で修飾されていてもよいヌクレオチド、ヌクレオシド若しくは核酸、炭水化物、脂質、トランスフェクション試薬、挿入剤、ナノ粒子若しくはビーズ、又は官能基を含み、
官能基は、アミノ基(保護アミノを含む)、チオール基、1,2-ジオール基、ヒドラジノ基、ヒドロキシアミノ基、ハロアセトアミド基、マレイミド基、シアン化物基、環式炭化水素(架橋環式炭化水素(例えばノルボルネン)又はシクロアルキル基(例えばC
3~6シクロアルキル)等)、ハロ基(例えば-F、-Cl、-Br、-I)、アルデヒド基、ケトン基、1,2-アミノチオール基、アジド基、イソチオシアネート又はチオシアネート基、末端アルケン等のアルケン基、末端アルキン基等のアルキン基、1,3-ジエン官能基、ジエノフィル官能基(例えば活性化炭素-炭素二重結合)、ハロゲン化アリール基、アリールボロン酸基、末端ハロアルキン基、末端シリルアルキン基、-N=C=O、-N=C=S、-O-C(O)NH
2、保護アミノ、立体的にひずんだアルキン又はアルケン(ノルボルネン又はDBCO等)を含む基、ニトロン、テトラジン、テトラゾール及び1,2-アミノチオール基からなる群から選択される]
のAdoMet類似体。
【請求項2】
R
5がハロ(-F、-Cl、-Br、-I)、-C=C、-C≡C、-N
3、-N=C=O、-N=C=S、-O-C(O)NH
2、-SH、エポキシド、-NH
2、-C≡N、ニトロン、テトラジン、テトラゾール又は立体的にひずんだアルキン若しくはアルケンを含む基からなる群から選択される、請求項1に記載のAdoMet類似体。
【請求項3】
L
1が1~50個の原子(例えば炭素、酸素及び/又は窒素原子)の直鎖を含むリンカーであり、任意選択で、L
1が炭化水素(例えばアルキル)及び/又はポリエーテル鎖を含む、請求項1又は2に記載のAdoMet類似体。
【請求項4】
L
1が最大15個のエチレングリコールモノマー、例えば15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個のエチレングリコールモノマーを含むポリエチレングリコール鎖を含む、請求項3に記載のAdoMet類似体。
【請求項5】
L
1が、構造式:
【化2】
(式中、wは1~15、例えば1~10又は1~5の整数であり、任意選択で、wは2又は3である)
を有する、請求項4に記載のAdoMet類似体。
【請求項6】
加水分解性部分HMが
【化3】
(式中、Rxは水素原子、重水素原子及び非置換C
1~C
4アルキルから選択され、任意選択で、加水分解性部分HMが構造式:
【化4】
を有する)
からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項7】
L
2が1~20個の原子(例えば炭素、酸素及び/又は窒素原子)の直鎖を含み、任意選択で、L
2が直鎖C
1~C
10アルキル鎖、例えばC
2~C
8又はC
4~C
6アルキル鎖を含み、更に任意選択で、アルキル鎖が非置換である、請求項1から6のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項8】
R
1が構造式:
【化5】
を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項9】
L
1が直鎖C
1~C
10アルキル鎖、例えばC
2~C
8又はC
4~C
6アルキル鎖を含み、任意選択で、アルキル鎖が非置換である、請求項1から3並びに請求項1から3のいずれか一項に従属する請求項6及び7のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項10】
R
1が構造式:
【化6】
を有する、請求項9に記載のAdoMet類似体。
【請求項11】
R
5がN
3であり、及び/又はUが-C≡C-である、請求項1から10のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項12】
R
1が構造式:
R
5-L
1-U-
(式中、R
5、L
1及びUが上に定義した通りである)
を有する、請求項1から5及び8から11のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項13】
R
1が構造式:
【化7】
を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項14】
R
2がHであり、R
3が1個又は複数のR
4で置換されている(C
1~C
4)アルキルである、請求項1から13のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項15】
R
2がHであり、R
3が1個又は複数のR
4で置換されているC
2アルキルである、請求項15に記載のAdoMet類似体。
【請求項16】
R
4が-NR
aR
b、-OH、-SH、-C(O)OR
6、-C(O)R
6、及びC(O)NR
aR
bから選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項17】
R
2がHであり、R
3が
【化8】
から選択されるか、又はR
2及びR
3が、これらが結合している窒素と一緒になって、構造式:
【化9】
を形成し、任意選択で、構造式が
【化10】
である、請求項1から16のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項18】
R
4が-OHである、請求項1から17のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項19】
R
4が-C(O)OHである、請求項1から16のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項20】
XがSである、請求項1から19のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項21】
化合物が、
【化11A】
【化11B】
【化11C】
から選択される、請求項1から20のいずれか一項に記載のAdoMet類似体。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載のAdoMet類似体を含む、組成物。
【請求項23】
請求項1から21のいずれか一項に記載のAdoMet類似体とメチルトランスフェラーゼとの複合体。
【請求項24】
請求項1から21のいずれか一項に記載のAdoMet類似体又は請求項22に記載の組成物を含むキットであって、任意選択で、メチルトランスフェラーゼを更に含む、キット。
【請求項25】
核酸等の標的分子を修飾する、標識する及び/又は分析する方法における、請求項1から21のいずれか一項に記載のAdoMet類似体の使用。
【請求項26】
標的分子を修飾する方法であって、標的分子を請求項1から21のいずれか一項に記載のAdoMet類似体及びメチルトランスフェラーゼとインキュベートすることにより、前記化合物の一部を標的分子に転移させる工程を含む、方法。
【請求項27】
請求項1に記載のAdoMet類似体を調製する方法であって、
(a)式(II)
【化12】
(式中、Z
1はF、Cl、I又はBrである)
の化合物をハロゲン供与体と反応させて式(III)
【化13】
(式中、Z
1及びZ
2はF、I、Br及びClから独立して選択される)
の化合物を形成する工程と、
(b)前記式(III)の化合物をNHR
2R
3(式中、R
2及びR
3は上に定義した通りである)と反応させて式(IV)
【化14】
(式中、Z
2は上に定義した通りである)
の化合物を形成する工程と、
(c)前記式(IV)の化合物をホモシステイン(例えばL-ホモシステイン)又はセレノホモシステイン(例えばL-セレノホモシステイン)と反応させて式V
【化15】
(式中、XはSe又はSである)
の化合物を形成する工程と、
(d)前記式(V)の化合物をR
1-LG(式中、LGは脱離基である)と反応させて式(I)の化合物を形成する工程と
を含み、一部の実施形態において、前記脱離基がハロ(例えばF、Cl、Br又はI)又はスルホニル基(例えばトシル、ブロシル、ノシル、メシル、トリフリル、トレシル)から選択される、方法。
【請求項28】
式(III):
【化16】
(式中、Z
1及びZ
2はF、I、Br及びClから独立して選択される)
の中間体化合物。
【請求項29】
式(IV)
【化17】
(式中、
Z
2はF、I、Br及びClから選択され、
R
2はHであり、R
3は
【化18】
から選択されるか、
又はR
2及びR
3は、これらが結合している窒素と一緒になって、構造式
【化19】
を形成し、任意選択で、構造式は
【化20】
であり、
任意選択で、R
2がHであり、R
3が
【化21】
である)
の中間体化合物。
【請求項30】
R
1分子が結合した生体分子(例えばDNA若しくはRNA分子、又はその塩基若しくは断片、又はそのタンパク質若しくはアミノ酸若しくはペプチド若しくはポリペプチド)であって、
R
1が、
構造式[R
5]
q-[L
1]
p-[HM]
n-[L
2]
m-U-CH
2-
(式中、
L
1は結合又はリンカーであり、
HMは加水分解性部分であり、
L
2はリンカーであり、
Uは、アルケン、アルキン、芳香族基(例えばアリール)、カルボニル基及び1又は2個のS=O結合を含む硫黄原子から選択される不飽和基を含み、
m、n、p及びqは0及び1から各々独立して選択され、
R
5は、X線回折データの位相整合に好適な重原子又は重原子クラスター、放射性の若しくは安定な希少同位体、フルオロフォア、蛍光消光剤、アフィニティタグ、架橋剤、核酸切断試薬、スピンラベル、発色団、任意選択で修飾されていてもよいタンパク質、ペプチド若しくはアミノ酸、任意選択で修飾されていてもよいヌクレオチド、ヌクレオシド若しくは核酸、炭水化物、脂質、トランスフェクション試薬、挿入剤、ナノ粒子若しくはビーズ、又は官能基を含み、
官能基は、アミノ基(保護アミノを含む)、チオール基、1,2-ジオール基、ヒドラジノ基、ヒドロキシアミノ基、ハロアセトアミド基、マレイミド基、シアン化物基、環式炭化水素(架橋環式炭化水素(例えばノルボルネン)又はシクロアルキル基(例えばC
3~6シクロアルキル)等)、ハロ基(例えば-F、-Cl、-Br、-I)、アルデヒド基、ケトン基、1,2-アミノチオール基、アジド基、イソチオシアネート又はチオシアネート基、末端アルケン等のアルケン基、末端アルキン基等のアルキン基、1,3-ジエン官能基、ジエノフィル官能基(例えば活性化炭素-炭素二重結合)、ハロゲン化アリール基、アリールボロン酸基、末端ハロアルキン基、末端シリルアルキン基、-N=C=O、-N=C=S、-O-C(O)NH
2、保護アミノ、立体的にひずんだアルキン又はアルケン(ノルボルネン又はDBCO等)を含む基、ニトロン、テトラジン、テトラゾール及び1,2-アミノチオール基からなる群から選択される)
を有する、生体分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はS-アデノシル-L-メチオニンの類似体、及び前記類似体を合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
S-アデノシル-L-メチオニン(AdoMet、SAMとしても知られる)は、ATPに次いでヒト細胞に2番目に多く偏在する補因子である。S-アデノシル-L-メチオニンは、多くの酵素により基質として用いられ、その酵素の中にはメチルトランスフェラーゼファミリーがある。メチルトランスフェラーゼは、AdoMet補因子からのメチル基を用いてその標的分子(DNA、RNA、タンパク質又は小分子)をメチル化するエピジェネティック調節因子である。これらのクラスの標的分子へのメチル基の導入は、遺伝子発現及び正常な細胞機能を調節する一助となる。そのため、これらの生体分子のメチル化プロファイルの異常な変化は有害な影響を及ぼす可能性があり、したがって疾患の指標として使用され得る。
【0003】
メチルトランスフェラーゼ(MTアーゼ)は、DNA、RNA及びタンパク質の部位選択的修飾の重要な手段として台頭しつつある。メチルトランスフェラーゼにより誘導される活性基の転移(「mTAG」)の標識において、S-アデノシル-L-メチオニン補因子類似体が利用され、天然のS-アデノシル-L-メチオニン補因子のメチル基は別の部分と交換される。次いで、メチルトランスフェラーゼ酵素が、修飾された補因子を用いて標的生体分子を別の部分で官能化するために用いられ得る。自然発生のS-アデノシル-L-メチオニン補因子の化学構造を操作することにより、この標識プロセスを生体分子への官能基及び標識の共有結合的導入方法として使用することが可能である。mTAG標識は細胞ライセートからの標的生体分子を精製及び分析する能力も提供する。
【0004】
しかし、ヒト細胞には200個超のメチラーゼがあり、その多くは任意の所与のAdoMet類似体と相互作用し、この類似体を使用してこれらの生物学的標的分子を修飾する可能性がある。そのため、治療又は診断で使用できるAdoMet類似体を提供することは有益である。特に、治療又は診断のための選択性を高めるために特定のメチルトランスフェラーゼ又はメチルトランスフェラーゼ酵素の一部の基質として作用するように調節することができるAdoMet類似体を提供することは有用である。
【0005】
AdoMet類似体を合成する現在の方法は、アデニン環へのベンジル基等の不活性な修飾基の導入を可能にした。反応性官能基を導入するためには、保護基が必要とされ、これは収率を低下させ得、合成工程数を増加させ得、導入できる官能基を制限し得る。酵素触媒合成法を用いたAdoMet類似体の生成も公知である。しかし、この方式は、酵素と導入されている官能基との適合性に依存する。この方式の別の欠点は、限られた反応規模(μmol規模)であり、これは化学合成より約1000倍低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Advanced Organic Chemistry」、第4章、第4版、J. March、John Wiley and Sons、New York、2001
【非特許文献2】E. L. Eliel及びS. H. Wilen(Wiley、1994)による「Stereochemistry of Organic Compounds」
【非特許文献3】Wojciechowski等、Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Jan 2;110(1):105~110頁
【非特許文献4】Darii等、Molecular Biology 41、110~117頁(2007)
【非特許文献5】Kumar等、Biochemistry(1992)、31(36)、8648~8653頁
【非特許文献6】Hulz等、Nucleic Acids Res. 26、1076~1083頁(1998)
【非特許文献7】Lukinavicius等、Nucleic Acids Research、40、22(2012)、11594~11602頁
【非特許文献8】Wilkinson A. A.等、ACS Cent. Sci.、2020
【非特許文献9】Deen,J.、Sempels,W.、De Dier,R.、Vermant,J.、Dedecker,P.、Hofkens,J.及びNeely,R.K.(2015)Combing of Genomic DNA from Droplets Containing Picograms of Material. ACS Nano、9、809~816頁
【非特許文献10】Angew. Chem. Ind. 2017 (56) 5182~5200頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、AdoMet類似体の調製のより効率的な合成方法が必要とされている。
【0008】
本開示は、これらの問題を考慮して考案された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、式(I)
【0010】
【0011】
[式中、
XはS又はSeであり、
R1は構造式[R5]q-[L1]p-[HM]n-[L2]m-U-CH2-を有し、
R2はHであり、R3は(C1~C4)アルキル、(C2~C4)アルケニル若しくは(C2~C4)アルキニルであり、但しR3はプロパルギルではなく、任意選択で、R3は1個若しくは複数のR4で置換されているか、又は
R2及びR3は、これらが結合している窒素と一緒になって、1個若しくは複数のR4で任意選択で置換されている5若しくは6員ヘテロシクリル環を形成し、
R4は-NRaRb、-OH、-SH、-CN、-C(O)OR6、-C(O)R6、C(O)NRaRb、N3、及びハロ(F、Cl、Br又はI)からなる群から選択され、
R6はH又は非置換C1~4アルキルであり、
Ra及びRbは、H及び非置換(C1~C4)アルキルから独立して選択され、
L1は結合又はリンカーであり、
HMは加水分解性部分であり、
L2はリンカーであり、
Uはアルケン、アルキン、芳香族基(例えばアリール)、カルボニル基及び1又は2個のS=O結合を含む硫黄原子から選択される不飽和基を含み、
m、n、p及びqは0及び1から各々独立して選択され、
R5はX線回折データの位相整合に好適な重原子又は重原子クラスター、放射性の若しくは安定な希少同位体、フルオロフォア、蛍光消光剤、アフィニティタグ、架橋剤、核酸切断試薬、スピンラベル、発色団、任意選択で修飾されていてもよいタンパク質、ペプチド若しくはアミノ酸、任意選択で修飾されていてもよいヌクレオチド、ヌクレオシド若しくは核酸、炭水化物、脂質、トランスフェクション試薬、挿入剤、ナノ粒子若しくはビーズ、又は官能基を含み、
官能基はアミノ基(保護アミノを含む)、チオール基、1,2-ジオール基、ヒドラジノ基、ヒドロキシアミノ基、ハロアセトアミド基、マレイミド基、シアン化物基、環式炭化水素(架橋環式炭化水素(例えばノルボルネン)又はシクロアルキル基(例えばC3~6シクロアルキル)等)、ハロ基(例えば-F、-Cl、-Br、-I)、アルデヒド基、ケトン基、1,2-アミノチオール基、アジド基、イソチオシアネート又はチオシアネート基、末端アルケン等のアルケン基、末端アルキン基等のアルキン基、1,3-ジエン官能基、ジエノフィル官能基(例えば活性化炭素-炭素二重結合)、ハロゲン化アリール基、アリールボロン酸基、末端ハロアルキン基、末端シリルアルキン基、-N=C=O、-N=C=S、-O-C(O)NH2、保護アミノ、立体的にひずんだアルキン又はアルケン(ノルボルネン又はDBCO等)を含む基、ニトロン、テトラジン、テトラゾール及び1,2-アミノチオール基からなる群から選択される]
の化合物が開示される。
【0012】
式(I)の化合物を調製する方法であって、
(a)式(II)
【0013】
【0014】
(式中、Z1はF、Cl、I又はBrである)
の化合物をハロゲン供与体と反応させて式(III)
【0015】
【0016】
(式中、Z1及びZ2はF、I、Br及びClから独立して選択される)
の化合物を形成する工程と、
(b)式(III)の化合物をNHR2R3(式中、R2及びR3は本明細書に定義される通りである)と反応させて式(IV)
【0017】
【0018】
(式中、Z2は本明細書に定義される通りである)
の化合物を形成する工程と、
(c)式(IV)の化合物をホモシステイン(例えばL-ホモシステイン)又はセレノホモシステイン(例えばL-セレノホモシステイン)と反応させて式V
【0019】
【0020】
(式中、XはSe又はSである)
の化合物を形成する工程と、
(d)式(V)の化合物をR1-LG(式中、LGは脱離基である)と反応させて式(I)の化合物を形成する工程と
を含む、方法が更に開示される。
【0021】
第3の態様において、式(III)
【0022】
【0023】
(式中、Z1及びZ2はF、I、Br及びClから独立して選択される)
の中間体が開示される。
【0024】
式(IV)
【0025】
【0026】
(式中、R2、R3及びZ2は上に定義した通りである)
の中間体も提供される。好ましくは、Z2はIである。
【0027】
式(I)の化合物とメチルトランスフェラーゼとの複合体がまた更に開示される。メチルトランスフェラーゼは、補因子としてS-アデノシルメチオニンを使用することが可能であり得る。
【0028】
式(I)の化合物を含む組成物も開示される。
【0029】
式(I)の化合物又は前記化合物を含む組成物を含むキットも開示される。キットは、メチルトランスフェラーゼ、例えば補因子としてS-アデノシルメチオニンを使用することが可能なメチルトランスフェラーゼを更に含み得る。
【0030】
標的生体分子、例えば核酸を修飾する方法における式(I)の化合物の使用も開示される。
【0031】
標的生体分子を修飾する方法であって、標的生体分子を式(I)の化合物及びメチルトランスフェラーゼとインキュベートすることにより、式(I)の化合物の転移性基(即ちR1)を標的生体分子に転移させる工程を含む、方法がまた更に開示される。
【0032】
開示の更なる態様は、R1分子が結合した生体分子(例えばDNA若しくはRNA分子、又はその塩基若しくは断片、又はそのタンパク質若しくはアミノ酸若しくはペプチド若しくはポリペプチド)であって、
R1が、構造式
[R5]q-[L1]p-[HM]n-[L2]m-U-CH2-
(式中、
L1は結合又はリンカーであり、
HMは加水分解性部分であり、
L2はリンカーであり、
Uは、アルケン、アルキン、芳香族基(例えばアリール)、カルボニル基及び1又は2個のS=O結合を含む硫黄原子から選択される不飽和基を含み、
m、n、p及びqは0及び1から各々独立して選択され、
R5は、X線回折データの位相整合に好適な重原子又は重原子クラスター、放射性の若しくは安定な希少同位体、フルオロフォア、蛍光消光剤、アフィニティタグ、架橋剤、核酸切断試薬、スピンラベル、発色団、任意選択で修飾されていてもよいタンパク質、ペプチド若しくはアミノ酸、任意選択で修飾されていてもよいヌクレオチド、ヌクレオシド若しくは核酸、炭水化物、脂質、トランスフェクション試薬、挿入剤、ナノ粒子若しくはビーズ、又は官能基を含み、
官能基は、アミノ基(保護アミノを含む)、チオール基、1,2-ジオール基、ヒドラジノ基、ヒドロキシアミノ基、ハロアセトアミド基、マレイミド基、シアン化物基、環式炭化水素(架橋環式炭化水素(例えばノルボルネン)又はシクロアルキル基(例えばC3~6シクロアルキル)等)、ハロ基(例えば-F、-Cl、-Br、-I)、アルデヒド基、ケトン基、1,2-アミノチオール基、アジド基、イソチオシアネート又はチオシアネート基、末端アルケン等のアルケン基、末端アルキン基等のアルキン基、1,3-ジエン官能基、ジエノフィル官能基(例えば活性化炭素-炭素二重結合)、ハロゲン化アリール基、アリールボロン酸基、末端ハロアルキン基、末端シリルアルキン基、-N=C=O、-N=C=S、-O-C(O)NH2、保護アミノ、立体的にひずんだアルキン又はアルケン(ノルボルネン又はDBCO等)を含む基、ニトロン、テトラジン、テトラゾール及び1,2-アミノチオール基からなる群から選択される]
を有する、生体分子を含む。
【0033】
次に例として添付の図面を参照しながら本開示を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】M.MpeIに結合したAdoHycの結晶構造を用いて生成した、M.MpeIに結合したAdoHcy-ETA補因子類似体のモデルを示す図である。破線「H」は、補因子のヒドロキシ基の酸素とLYS-115のアンモニウム基との水素結合を示す。
【
図2】本発明の実施形態に従ってM.Mpel及び補因子とインキュベートした後のpUC19の制限アッセイ後にアガロースゲル上に得られたバンドを示すグラフである。
【
図3】本発明の更なる実施形態に従ってM.Mpel及び補因子とインキュベートした後のpUC19の制限アッセイ後にアガロースゲル上に得られたバンドを示すグラフである。
【
図4】本発明の別の実施形態に従ってM.Mpel及び補因子とインキュベートした後のpUC19の制限アッセイ後にアガロースゲル上に得られたバンドを示すグラフである。
【
図5】M.MpeIに結合したAdoHycの結晶構造を用いて生成した、b-Ala-AdoHcy-6-アジド補因子類似体とM.MpeIタンパク質の残基との間の相互作用を示すモデルを示す図である。破線は、補因子類似体と周囲のタンパク質アミノ酸との潜在的な水素結合相互作用を示す。ARG-154とb-Ala-AdoHcy-6-アジド補因子類似体に付加したカルボン酸基との好ましい静電相互作用が予測される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
定義
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用する以下の用語は、以下に示す以下の意味を有する。
【0036】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体にわたって、用語「含む」及び「含有する」並びにこれらの用語の変形は、「含むが限定されない」を意味し、これらは他の部分、添加剤、成分、整数又は工程を除外すること(及び除外しないこと)が意図されない。本明細書の説明及び特許請求の範囲全体にわたって、特に文脈が必要としない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が用いられる場合、特に文脈が必要としない限り、明細書は、複数並びに単数を企図すると理解されるべきである。
【0037】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、周期表17族のハロゲンのうちの1つを指す。特に、該用語はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0038】
用語「(C1~C4)アルキル」は、1、2、3又は4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルを指す。「C1~6アルキル」及び「C1~10アルキル」は同様にそれぞれ最大6個又は最大10個の炭素原子を含むこのような基を指す。アルキレン基は二価のアルキル基であり、同様に直鎖状であっても、分枝状であってもよく、分子の残部に2個の結合点を有する。更に、アルキレン基は、例えば、この段落に列挙したこれらのアルキル基のうちの1つに対応し得る。例えば、C1~4アルキレンは-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2CH2CH2-又は-CH2CH(CH3)CH2-であってもよい。アルキル及びアルキレン基は非置換であっても、1個又は複数の置換基で置換されていてもよい。可能な置換基は本明細書に記載される。
【0039】
用語「(C2~C4)アルケニル」は、少なくとも1個の二重結合を含み、2、3又は4個の炭素原子を有する分枝状又は直鎖状炭化水素鎖を指す。二重結合は、E又はZ異性体として存在し得る。二重結合は炭化水素鎖の任意の可能な位置にあり得る。例えば、「(C2~C4)アルケニル」はエテニル、プロペニル、ブテニル又はブタジエニルであってもよい。アルケニレン基は二価のアルケニル基であり、同様に直鎖状であっても、分枝状であってもよく、分子の残部に2個の結合点を有する。更に、アルケニレン基は、例えばこの段落に列挙したこれらのアルケニル基のうちの1つに対応し得る。例えば、アルケニレンは-CH=CH-、-CH2CH=CH-、-CH(CH3)CH=CH-又は-CH2CH=CH-であってもよい。アルケニル及びアルケニレン基は非置換であっても、1個又は複数の置換基で置換されていてもよい。可能な置換基は本明細書に記載される。
【0040】
用語「(C2~C4)アルキニル」は少なくとも1個の三重結合を含み、2、3又は4個の炭素原子を有する分枝状又は直鎖状炭化水素鎖を含む。三重結合は炭化水素鎖の任意の可能な位置にあってもよい。例えば、「(C2~C4)アルキニル」はエチニル、プロピニル又はであってもよい。アルキニレン基は二価のアルキニル基であり、同様に直鎖状であっても、分枝状であってもよく、分子の残部に2個の結合点を有する。更に、アルキニレン基は、例えばこの段落に列挙したこれらのアルキニル基のうちの1つに対応し得る。例えば、アルキニレンは-C≡C-、-CH2C≡C-又は-CH2C≡CCH2-であってもよい。アルキニル及びアルキニレン基は非置換であっても、1個又は複数の置換基で置換されていてもよい。可能な置換基は本明細書に記載される。例えば、置換基はアルキル基の置換基として上記したものであってもよい。
【0041】
本明細書で使用する5又は6員「ヘテロシクリル」、「複素環式」又は「複素環」基は、非芳香族飽和又は部分飽和単環式系を含む。単環式複素環式環は、環を分子の残部に結合させる窒素を含んで、又はこれに加えて、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1、2又は3個のヘテロ原子を環に含み得る。部分飽和とは、環が1又は2個の二重結合を含み得ることを意味する。二重結合は典型的には2個の炭素原子間にあるが、炭素原子と窒素原子との間にあってもよい。少なくとも1個の窒素を含む複素環としては、例えばピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラゾリル、テトラヒドロピリジニル等が挙げられる。当業者であれば、任意の複素環が炭素又は窒素原子を介して等、任意の好適な原子を介して別の基に連結し得ることを理解するであろう。
【0042】
用語「芳香族」は全体として置換基に適用される場合、環内又は環系内の共役π系に4n+2個の電子を有する単一の環又は多環式環系を含み、共役π系に寄与する全ての原子は同じ平面内にある。
【0043】
用語「アリール」は芳香族炭化水素環系を含む。環系は環内の共役π系に4n+2個の電子を有し、共役π系に寄与する全ての原子は同じ平面内にある。例えば、「アリール」はフェニル及びナフチルであってもよい。アリール系自体が他の基で置換されていてもよい。
【0044】
用語「カルボニル」は、酸素原子への二重結合を有する炭素原子を含む官能基を指す。該基としてはアルデヒド(-C(O)H)、ケトン(-C(O)R)、カルボン酸(-C(O)OH)、エステル(-C(O)OR)、アミド(-C(O)NR'R'')、エノン(-C(O)C(R)CR'R'')、ハロゲン化アシル(-C(O)X)、酸無水物(-C(O)OC(O)R)及びイミド(-C(O)N(R)C(O)R')が挙げられる。
【0045】
「
【0046】
【0047】
」又は「*」で終わる結合は、結合が構造に示されていない別の原子に接続されていることを表す。環式構造の内部で終わり、環構造の原子で終わらない結合は、原子価が許せば、結合が環構造の原子のいずれかに接続され得ることを表す。
【0048】
本発明の特定の態様、実施形態又は例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分又は基は、これらと矛盾しない限り、本明細書に記載される任意の他の態様、実施形態又は例に適用可能であることが理解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示される全ての特徴及び/又はそのように開示される任意の方法若しくはプロセスの全ての工程は、このような特徴及び/又は工程の少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き任意の組合せで組み合わされ得る。本発明は、任意の上述の実施形態の詳細に制限されない。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示される特徴の任意の新規なもの若しくはその任意の新規な組合せ、又はそのように開示される任意の方法若しくはプロセスの工程の任意の新規なもの若しくはその任意の新規な組合せに及ぶ。
【0049】
同じ分子式を有するが、空間内のそれらの原子の結合の性質若しくは配列又はそれらの原子の配置が異なる化合物は「異性体」と呼ばれる。空間内のそれらの原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。互いの鏡像ではない立体異性体は「ジアステレオマー」と呼ばれ、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は「エナンチオマー」と呼ばれる。化合物が不斉中心を有する場合、例えば化合物が4個の異なる基に結合している場合、1対のエナンチオマーが可能である。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対配置によって特徴付けられ得、Cahn and PrelogのR及びS順位則によって又は分子が偏光面を回転させる様式によって記載され、右旋性又は左旋性として(即ちそれぞれ(+)又は(-)異性体として)指定される。キラル化合物は、個々のエナンチオマーとして又はその混合物としてのいずれかで存在し得る。等しい割合のエナンチオマーを含有する混合物は「ラセミ混合物」と呼ばれる。本発明の化合物が2つ以上の立体中心を有する場合、(R)及び(S)立体異性体の任意の組合せが企図される。(R)及び(S)立体異性体の組合せはジアステレオマー混合物又は単一のジアステレオマーをもたらし得る。本発明の化合物は、単一の立体異性体として存在してもよく、立体異性体の混合物、例えばラセミ混合物及び他のエナンチオマー混合物、並びにジアステレオマー混合物であってもよい。混合物がエナンチオマーの混合物である場合、エナンチオマー過剰は上に開示したもののいずれかであってもよい。化合物が単一の立体異性体である場合、化合物は不純物として他のジアステレオ異性体又はエナンチオマーを更に含有していてもよい。したがって、単一の立体異性体は必ずしも100%のエナンチオマー過剰(e.e.)又はジアステレオマー過剰(d.e.)を有するわけではないが、少なくとも約85%、例えば少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のe.e.又はd.e.を有し得る。
【0050】
本開示の化合物は、1個又は複数の不斉中心を有し得、したがってこのような化合物は個々の(R)若しくは(S)立体異性体として又はこれらの混合物として生成され得る。特に断りのない限り、本明細書及び特許請求の範囲における特定の化合物の説明又は命名は、両方の個々のエナンチオマー及びこれらの混合物、ラセミ体又はその他を含むことが意図される。例えば光学活性出発物質からの合成によるか、又はラセミ体の分割による立体化学の決定及び立体異性体の分離方法は当技術分野で周知である(「Advanced Organic Chemistry」、第4章、第4版、J. March、John Wiley and Sons、New York、2001の考察を参照のこと)。本発明の化合物の一部は、幾何異性中心(E及びZ異性体)を有し得る。本発明は、MASTL阻害活性を有する全ての光学、ジアステレオ異性体及び幾何異性体、並びにこれらの混合物を包含することが理解されるべきである。
【0051】
Z/E(例えばシス/トランス)異性体は、当業者に周知の従来の技術、例えばクロマトグラフィー及び分別結晶化によって分離され得る。
【0052】
個々のエナンチオマーの調製/単離のための従来の技術は、必要に応じて、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、又は例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたラセミ体(又は塩若しくは誘導体のラセミ体)の分割を含む。したがって、本発明のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)は、炭化水素、典型的にはヘプタン又はヘキサンからなり、0~50質量%のイソプロパノール、典型的には2%~20質量%及び具体的な例としては0~5質量%のアルキルアミン、例えば0.1%のジエチルアミンを含有する移動相を有する非対称樹脂に対するクロマトグラフィー、典型的にはHPLCを用いてエナンチオマー富化形態で得られ得る。溶出液の濃縮は富化混合物をもたらす。
【0053】
代替的には、ラセミ体(又はラセミ前駆体)を、好適な光学活性化合物、例えばアルコール、又は本発明の化合物が酸性又は塩基性部分を含む場合、1-フェニルエチルアミン若しくは酒石酸等の塩基若しくは酸と反応させ得る。得られたジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶化によって分離され得、ジアステレオマーの一方又は両方が、当業者に周知の手段によって対応する純粋なエナンチオマーに変換される。
【0054】
任意のラセミ体が結晶化する場合、2つの異なる種類の結晶が可能である。第1の種類は、上に言及したラセミ化合物(真のラセミ体)であり、両方のエナンチオマーを等モル量で含有する1つの均質な形態の結晶が生成される。第2の種類はラセミ混合物又は集合体であり、単一のエナンチオマーを各々含む2つの形態の結晶が等モル量で生成される。
【0055】
ラセミ混合物中に存在する結晶形態の両方が同一の物理的特性を有するが、これらは真のラセミ体と比較して異なる物理的特性を有し得る。ラセミ混合物は当業者に公知の従来の技術によって分離され得る。例えばE. L. Eliel及びS. H. Wilen(Wiley、1994)による「Stereochemistry of Organic Compounds」を参照のこと。
【0056】
本明細書に記載の化合物及び塩は、同位体標識(又は「放射性標識」)されていてもよい。したがって、1個又は複数の原子は、典型的には自然界で見出される原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子に置き換えられる。取り込まれ得る放射性核種の例としては2H(重水素の場合「D」とも記される)、3H(トリチウムの場合「T」とも記される)、11C、13C、14C、15O、17O、18O、13N、15N、18F、36Cl、123I、25I、32P、35S等が挙げられる。用いられる放射性核種は、放射性標識誘導体の具体的な用途により決まる。例えば、インビトロ競合アッセイでは、3H又は14Cがしばしば有用である。放射性イメージング用途では、11C又は18Fがしばしば有用である。一部の実施形態において、放射性核種は3Hである。一部の実施形態において、放射性核種は14Cである。一部の実施形態において、放射性核種は11Cである。一部の実施形態において、放射性核種は18Fである。
【0057】
同位体標識化合物は、当業者に公知の従来の技術によって、又は以前に利用された非標識試薬の代わりに適当な同位体標識試薬を用いる、記載されたものに類似する方法によって一般に調製され得る。
【0058】
化合物
本開示は式(I)
【0059】
【0060】
[式中、
XはS又はSeであり、
R1は構造式[R5]q-[L1]p-[HM]n-[L2]m-U-CH2-を有し、
R2はHであり、R3は(C1~C4)アルキル、(C2~C4)アルケニル若しくは(C2~C4)アルキニルであり、但しR3はプロパルギルではなく、任意選択で、R3は1個若しくは複数のR4で置換されているか、又は
R2及びR3は、これらが結合している窒素と一緒になって、1個若しくは複数のR4で任意選択で置換されている5若しくは6員ヘテロシクリル環を形成し、
R4は-NRaRb、-OH、-SH、-C(O)OR6、-C(O)R6、C(O)NRaRb、N3、及びハロ(F、Cl、Br又はI)からなる群から選択され、
Ra及びRbはH及び(C1~C4)アルキルから独立して選択され、
R6はH又はC1~4アルキルであり、
L1は結合又はリンカーであり、
HMは加水分解性部分であり、
L2はリンカーであり、
Uは、アルケン、アルキン、芳香族基(例えばアリール)、カルボニル基及び1又は2個のS=O結合を含む硫黄原子から選択される不飽和基を含み、
m、n、p及びqは0及び1から各々独立して選択され、
R5は、X線回折データの位相整合に好適な重原子又は重原子クラスター、放射性の若しくは安定な希少同位体、フルオロフォア、蛍光消光剤、アフィニティタグ、架橋剤、核酸切断試薬、スピンラベル、発色団、任意選択で修飾されていてもよいタンパク質、ペプチド若しくはアミノ酸、任意選択で修飾されていてもよいヌクレオチド、ヌクレオシド若しくは核酸、炭水化物、脂質、トランスフェクション試薬、挿入剤、ナノ粒子若しくはビーズ、又は官能基を含むか、又はこれらからなり、
官能基は、アミノ基(保護アミノ基を含む)、チオール基、1,2-ジオール基、ヒドラジノ基、ヒドロキシアミノ基、ハロアセトアミド基、マレイミド基、シアン化物基、環式炭化水素(架橋環式炭化水素又はシクロアルキル基(例えばC3~6シクロアルキル)等)、ハロ基(例えば-F、-Cl、-Br、-I)、アルデヒド基、ケトン基、1,2-アミノチオール基、アジド基、イソチオシアネート又はチオシアネート基、末端アルケン等のアルケン基、末端アルキン基等のアルキン基、1,3-ジエン官能基、ジエノフィル官能基(例えば活性化炭素-炭素二重結合)、ハロゲン化アリール基、アリールボロン酸基、末端ハロアルキン基、末端シリルアルキン基、-N=C=O、-N=C=S、-O-C(O)NH2、立体的にひずんだアルキン又はアルケン(ノルボルネン又はDBCO等)を含む基、ニトロン、テトラジン又はテトラアジドからなる群から選択される]
の化合物を提供する。
【0061】
一部の実施形態において、XはSeである。一部の実施形態において、XはSである。好ましくは、XはSである。
【0062】
一部の実施形態において、m及びnはいずれも1である。一部の実施形態において、mは1であり、nは0である。一部の実施形態において、mは0であり、nは1である。
【0063】
一部の実施形態において、pは1である。
【0064】
一部の実施形態において、qは1である。
【0065】
一部の実施形態において、m及びnはいずれも0である。一部の実施形態において、m及びnはいずれも0であり、p及びqはいずれも1である。一部の実施形態において、m、n及びpは全て0であり、qは1である。一部の実施形態において、m、n、p及びqは全て0である。一部の実施形態において、m、n、p及びqは全て1である。
【0066】
したがって、一部の実施形態において、R1は構造式:[R5]-[L1]-[HM]-[L2]-U-CH2-(式中、R5、L1、HM、L2及びUは本明細書に定義される通りである)を有する。
【0067】
一部の実施形態において、R1は構造式:R5-L1-U-CH2(式中、R5、L1及びUは本明細書に定義される通りである)を有する。
【0068】
一部の実施形態において、R1は構造式:R5-U-CH2(式中、R5及びUは本明細書に定義される通りである)を有する。
【0069】
一部の実施形態において、R1は構造式:U-CH2(式中、Uは本明細書に定義される通りである)を有する。
【0070】
一部の実施形態において、R5はX線回折データの位相整合に好適な重原子又は重原子クラスター、放射性の若しくは安定な希少同位体、フルオロフォア、蛍光消光剤、アフィニティタグ、架橋剤、核酸切断試薬、スピンラベル、発色団、任意選択で修飾されていてもよいタンパク質、ペプチド若しくはアミノ酸、任意選択で修飾されていてもよいヌクレオチド、ヌクレオシド若しくは核酸、炭水化物、脂質、トランスフェクション試薬、挿入剤、ナノ粒子若しくはビーズ、又は官能基を含む。
【0071】
一部の実施形態において、R5はX線回折データの位相整合に好適な重原子又は重原子クラスターを含む。X線回折データの位相整合に好適な重原子又は重原子クラスターは銅、亜鉛、セレン、臭素、ヨウ素、ルテニウム、パラジウム、カドミウム、タングステン、白金、金、水銀、ビスマス、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ウラニウム、Ta6Br14及びFe4S4から選択され得る。
【0072】
一部の実施形態において、R5は放射性の又は安定な希少同位体を含む。一部の実施形態において、放射性の希少同位体は19F又は127Iである。一部の実施形態において、安定な希少同位体は3H(T)、14C、32P、33P、35S、125I、131I、2H(D)、13C、15N、17O又は18Oである。
【0073】
一部の実施形態において、R5はフルオロフォアを含む。フルオロフォアはアレクサ、BODIPY、ビマン、クマリン、カスケードブルー、ダンシル、ダポキシル、フルオレセイン、マンシル、MANT、オレゴングリーン、ピレン、ローダミン、テキサスレッド、TNS、蛍光ナオ結晶(量子ドット)、オキサジン、Atto又はシアニンフルオロフォアであってもよい。
【0074】
一部の実施形態において、R5は蛍光消光剤を含む。好適な蛍光消光剤としてはダブシル、QSY及びBHQが挙げられる。
【0075】
一部の実施形態において、R5はアフィニティタグを含む。一部の実施形態において、アフィニティタグはペプチドタグ(例えばhis-タグ、strep-タグ、flag-タグ、c-myc-タグ、HA-タグ、エピトープ又はグルタチオン)、金属キレート基(例えばニトリル三酢酸、エチレンジアミン三酢酸(EDTA)、1,10-フェナントロリン、クラウンエーテル又はHiS4-8ペプチド)、同位体コード化アフィニティタグ、ビオチン、マルトース、マンノース、グルコース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルノイラミン酸、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、ジゴキシゲニン又はジニトロフェノールである。
【0076】
一部の実施形態において、R5は架橋剤を含む。好適な架橋剤としては一又は二官能白金(II)複合体、マレイミド、ヨードアセトアミド、アルデヒド、並びにアリールアジド、ジアゾ化合物、2-ニトロフェニル化合物、プソラレン及びベンゾフェノン化合物等の光架橋剤が挙げられる。
【0077】
一部の実施形態において、R5は核酸切断試薬を含む。好適な核酸切断試薬としては鉄-EDTA、銅-1,10-フェナントロリン、アクリジン又はその誘導体、エネジン化合物及びロジウム複合体が挙げられる。
【0078】
一部の実施形態において、R5はスピンラベルを含む。一部の実施形態において、スピンラベルは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル又は2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシルである。
【0079】
一部の実施形態において、R5は発色団を含む。
【0080】
一部の実施形態において、R5は任意選択で修飾されていてもよいタンパク質、ペプチド又はアミノ酸を含む。アミノ酸修飾体としてはβ及びγアミノ酸が挙げられる。一部の実施形態において、ペプチド修飾体はデプシペプチド、ビニロガスペプチド、過メチル化ペプチド、ペプトイド、アザペプチド(アザトイド)、オリゴカルバメート、オリゴ尿素、オリゴスルホン、オリゴスルホンアミド、オリゴスルフィンアミド、ピロールイミダゾールヒドロキシピロールポリアミド及びペプチド核酸(PNA)からなる群から選択される。
【0081】
一部の実施形態において、R5は任意選択で修飾されていてもよいヌクレオチド、ヌクレオシド又は核酸を含む。一部の実施形態において、R5はペプチド核酸(PNA)、ロックされた核酸(LNA)又はホスホロチオエート修飾核酸等の修飾核酸である。
【0082】
一部の実施形態において、R5は炭水化物又は脂質(例えばコレステロール)を含む。
【0083】
一部の実施形態において、R5はトランスフェクション試薬を含む。好適なトランスフェクション試薬としてはカチオン性脂質(例えばInvitrogen社、CA、USAから市販されているリポフェクタミン及び誘導体)、カチオン性ポリマー(例えばSigma社から市販されているポリエチレンイミン(PEI))及びポリカチオン性デンドリマーが挙げられる。
【0084】
一部の実施形態において、R5は挿入剤を含む。挿入剤は、二本鎖核酸の隣接する塩基対間を結合することができる典型的には平面又はほぼ平面の芳香族環系である。好適な挿入剤としてはエチジウム、チアゾールオレンジ、アクリジン又はその誘導体及びピレンが挙げられる。
【0085】
一部の実施形態において、R5はナノ粒子又はビーズを含む。好適なナノ粒子としては金及び銀クラスターが挙げられる。好適なビーズとしてはシリカビーズ、磁気ビーズ及びポリスチレン微粒子(例えばMolecular Probes社、OR、USAから市販されている)が挙げられる。
【0086】
一部の実施形態において、R5はアミノ基(保護アミノ基を含む)、チオール基、1,2-ジオール基、ヒドラジノ基、ヒドロキシアミノ基、ハロアセトアミド基、マレイミド基、シアン化物基、環式炭化水素(架橋環式炭化水素(例えばノルボルネン)又はシクロアルキル基(例えばC3~6シクロアルキル)等)、ハロ基(例えば-F、-Cl、-Br、-I)、アルデヒド基、ケトン基、1,2-アミノチオール基、アジド基、イソチオシアネート又はチオシアネート基、末端アルケン等のアルケン基、末端アルキン基等のアルキン基、1,3-ジエン官能基、ジエノフィル官能基(例えば活性化炭素-炭素二重結合)、ハロゲン化アリール基、アリールボロン酸基、末端ハロアルキン基、末端シリルアルキン基、-N=C=O、-N=C=S、-O-C(O)NH2、立体的にひずんだアルキン又はアルケン(ノルボルネン又はDBCO等)を含む基、ニトロン、テトラジン又はテトラゾールからなる群から選択される官能基を含むか、又はこれらからなる。
【0087】
一部の実施形態において、R5はハロ(例えば-F、-Cl、-Br、-I)、-C=C-、-C≡C-、-N3、-N=C=O、-N=C=S、-O-C(O)NH2、-SH、エポキシド、-NH2、-C≡N、ニトロン、テトラジン、テトラゾール又は立体的にひずんだアルキン若しくはアルケンを含む基を含むか、或いはこれらである。立体的にひずんだアルキン又はアルケンは、ノルボルネン、シクロオクチン(例えばジベンジルシクロオクチン(DBCO)、ジフルオロシクロオクチン、ビアリールアザシクロオクチノン)及び(トランス)シクロアルケン等の部分で見出される。一部の実施形態において、R5はノルボルネン又はシクロオクチンを含むか、又はこれらである。一部の実施形態において、R5はDBCOを含むか、又はDBCOである。
【0088】
一部の実施形態において、R5は-N3である。
【0089】
L1は1~50、2~40、3~30、4~20又は5~15個の原子、例えば炭素、酸素及び/又は窒素原子の直鎖を含むリンカーであってもよい。
【0090】
一部の実施形態において、L1は炭化水素(例えばアルキル)及び/又はポリエーテル鎖を含む。追加的に又は代替的に、L1はアリール部分、例えばC6H4アレーン環を含み得る。追加的に又は代替的に、L1は芳香族基、例えばC6H4(C=O)NH基を含み得る。
【0091】
一部の実施形態において、L1は直鎖C1~C10アルキル鎖、例えばC2~C8又はC3~C6アルキル鎖を含む。一部の実施形態において、アルキル鎖は非置換である。一部の実施形態において、L1はC3アルキレン基であり、好ましくは非置換である。
【0092】
一部の実施形態において、L1はポリエーテル鎖を含む。一部の実施形態において、L1はポリエチレングリコール鎖を含む。ポリエチレングリコール鎖は最大15個又は最大10個のエチレングリコールモノマー、例えば9、8、7、6、5、4、3、2又は1個のエチレングリコールモノマーを含み得る。一部の実施形態において、ポリエチレングリコール鎖は、1~5又は2~3個のエチレングリコールモノマーを含む。
【0093】
一部の実施形態において、L1は構造式:
【0094】
【0095】
(式中、wは1~15、例えば2~10又は3~5の整数である)
を有する。一部の実施形態において、wは2又は3である。
【0096】
一部の実施形態において、Uは-C≡C-又は-C=C-である。好ましくは、Uは-C≡C-である。
【0097】
L2は1~20個、2~15個、3~10個又は4~9個の原子(例えば炭素、酸素及び/又は窒素原子)の直鎖を含むリンカーであってもよい。リンカーは置換されていても、非置換であってもよい。一部の実施形態において、L2は炭化水素(例えばアルキル)鎖を含む。一部の実施形態において、L2は直鎖C1~C10アルキル鎖、例えばC2~C8又はC4~C6アルキル鎖を含む。一部の実施形態において、アルキル鎖は非置換である。一部の実施形態において、アルキル鎖は置換されている。一部の実施形態において、L2は直鎖、非置換C2、C3又はC4アルキル鎖、好ましくはC4アルキル鎖(即ち-CH2CH2CH2CH2-、ブチレン)である。
【0098】
加水分解性部分(HM)は:
【0099】
【0100】
(式中、Rxは水素原子、重水素原子及び非置換C1~C4アルキル(例えばCH3)から選択される)
からなる群から選択され得る。
【0101】
加水分解性部分はシッフ塩基、例えばイミン部分、オキシム部分及び/又はヒドラゾン部分であってもよい。
【0102】
一部の実施形態において、加水分解性部分はジスルフィド(S-S)結合を含む。
【0103】
一部の実施形態において、加水分解性部分は構造式:
【0104】
【0105】
(式中、Rxは上に定義した通りである)
を有する。
【0106】
一部の実施形態において、R1は構造式:
【0107】
【0108】
を有する。
【0109】
一部の実施形態において、R1は構造式:
【0110】
【0111】
を有する。
【0112】
一部の実施形態において、R1は構造式:
【0113】
【0114】
を有する。
【0115】
一部の実施形態において、R1は構造式:
【0116】
【0117】
を有する。
【0118】
一部の実施形態において、R1は構造式:
【0119】
【0120】
を有する。
【0121】
R3はC1~C4アルキル、C2~C4アルケニル又はC2~C4アルキニルであり、但しR3はプロパルギルではない。C1~C4アルキル、C2~C4アルケニル又はC2~C4アルキニル基は置換されていても、非置換であってもよい。一部の実施形態において、R3はC2~C4又はC2~C3アルケニルである。一部の実施形態において、R3はC1~C4アルキル又はC2~C3アルキルである。一部の実施形態において、R3は1個又は複数のR4で置換されている。一部の実施形態において、R3は1個のR4で置換されている。一部の実施形態において、R3は1個のR4で置換されているC1~C4アルキルである。一部の実施形態において、R3は非置換C1~C4又はC1~C2アルキルではない。一部の実施形態において、R3は非置換メチルではない。
【0122】
一部の実施形態において、R2はHであり、R3は1個又は複数のR4で置換されている(C1~C4)アルキルであり、任意選択で、R3は1個のR4で置換されている。一部の実施形態において、R2はHであり、R3は1個又は複数のR4で置換されているC2アルキルであり、任意選択で、R3は1個のR4で置換されている。
【0123】
R4は-NRaRb、-OH、-SH、-C(O)OR6、-C(O)R6、-C(O)CH3、-C(O)OCH3、C(O)NRaRb、N3、及びハロ(F、Cl、Br又はI)からなる群から選択され、Ra及びRbはH及び(C1~C4)アルキルから独立して選択され、R6はH又はC1~4アルキルである。一部の実施形態において、Ra及びRbはいずれもHである。一部の実施形態において、Ra及びRbの一方はHであり、他方はCH3である。一部の実施形態において、R6はHである。一部の実施形態において、R6はC1~4アルキルである。一部の実施形態において、R6はCH3である。
【0124】
一部の実施形態において、R4は-NH2、-OH-C(O)OH、N3、及びハロ(好ましくはCl又はF)からなる群から選択される。一部の実施形態において、R4は-NRaRb、-OH、-SH、-C(O)OR6、-C(O)R6、及びC(O)NRaRbから選択される。一部の実施形態において、R4は-OHである。一部の実施形態において、R4は-C(O)OHである。
【0125】
一部の実施形態において、R2はHであり、R3は:
【0126】
【0127】
から選択される。
【0128】
代替的には、R2及びR3は、これらが結合している窒素と一緒になって、1個又は複数のR4で任意選択で置換されている5又は6員ヘテロシクリル環を形成する。ヘテロシクリル環はピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラゾリル及びテトラヒドロピリジニルから選択され得る。一部の実施形態において、ヘテロシクリル環はピロリジニルである。
【0129】
一部の実施形態において、R2及びR3は、これらが結合している窒素と一緒になって、構造式:
【0130】
【0131】
を形成し得る。構造式は
【0132】
【0133】
であってもよい。一部の実施形態において、構造式は
【0134】
【0135】
である。
【0136】
一部の実施形態において、R2はHであり、R3は:
【0137】
【0138】
である。
【0139】
一部の実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、L1、L2、HM、U、m、n、p及びqは各々、以下の段落(1)~(22)のいずれかに定義される意味のいずれかを有する:
(1)R5はアジドである。
(2)Uはアルキンを含むか、又はアルキンであり、任意選択で、Uは-C≡C-である。
(3)Uはアルケンを含むか、又はアルケンであり、任意選択で、Uは-C=C-である。
(4)R5はアジドであり、Uは-C≡C-である。
(5)R5はアジドであり、Uは-C=C-である。
(6)L1は直鎖C1~10アルキル鎖を含み、任意選択で、直鎖C1~10アルキル鎖は非置換である。
(7)L1はポリエチレングリコール鎖を含み、任意選択で、ポリエチレングリコール鎖は最大15個又は最大10個のエチレングリコールモノマーを含む。
(8)R5及びUは上記段落(1)~(5)のいずれか1つに定義され、L1は直鎖C1~10アルキル鎖を含み、任意選択で、直鎖C1~10アルキル鎖は非置換である。
(9)R5及びUは上記段落(1)~(5)のいずれか1つに定義され、L1は、任意選択で非置換であるC3アルキル鎖を含む。
(10)R5及びUは上記段落(1)~(5)のいずれか1つに定義され、L1はポリエチレングリコール鎖を含み、任意選択で、ポリエチレングリコール鎖は、最大15個又は最大10個のエチレングリコールモノマーを含む。好ましくは、ポリエチレングリコール鎖は1~5個又は2~3個のエチレングリコールモノマーを含む。
(11)R5、U及びL1は、上記段落(1)~(10)のいずれか1つに定義され、L1はアリール部分、例えばC6H4アレーン環、又は芳香族基、例えばC6H4(C=O)NH基を更に含む。
(12)R5、U及びL1は上記段落(1)~(11)のいずれか1つに定義され、m及びnはいずれも1である。
(13)R5、U及びL1は上記段落(1)~(11)のいずれか1つに定義され、m及びnはいずれも0である
(14)HMは任意選択で構造式:
【0140】
【0141】
を有するシッフ塩基である。
(15)R5、U、L1、m及びnは上記段落(1)~(13)のいずれか1つに定義され、HMは上記段落(12)に定義される。
(16)HMは上記段落(14)によって定義され、L2は直鎖C1~10アルキル鎖、例えばC2~8又はC4~6アルキル鎖を含み、任意選択で、L2は直鎖、非置換C2、C3又はC4アルキル鎖である。
(17)R5、U、L1、m及びnは上記段落(1)~(13)のいずれか1つに定義され、HM及びL2は上記段落(16)に定義される。
(18)R2はHであり、R3は-NRaRb、-OH、-SH、-C(O)OH、-C(O)H、-C(O)CH3、-C(O)OCH3、C(O)NRaRb、N3、及びハロ(F、Cl、Br又はI)から選択される1個のR4で任意選択で置換されているC1~4アルキルであり、Ra及びRbは本明細書に定義される通りである。
(19)R2はHであり、R3は-NH2、-OH、-C(O)OH、N3、及びハロから選択される1個のR4で置換されているC1~4アルキルである。
(20)R5、U、L1、m、n、HM及びL2は上記段落(1)~(17)のいずれか1つに定義され、R2はHであり、R3は-NH2、-OH、-C(O)OH、N3、及びハロから選択される1個のR4で置換されているC1~4アルキルである。
(21)R5、U、L1、m、n、HM及びL2は、上記段落(1)~(17)のいずれか1つに定義され、R2はHであり、R3は1個のR4で置換されているC1~4アルキルであり、R4は-OHである。
(22)R5、U、L1、m、n、HM及びL2は、上記段落(1)~(17)のいずれか1つに定義され、R2及びR3は、これらが結合している窒素と一緒になって、構造式
【0142】
【0143】
を形成し、任意選択で、構造式は
【0144】
【0145】
である。
(23)R1、R2、R3、R4、R5、L1、L2、HM、U、m及びnは、上記段落(1)~(22)のいずれか1つに定義された意味のいずれかを有し、XはSeである。
(24)R1、R2、R3、R4、R5、L1、L2、HM、U、m及びnは、上記段落(1)~(22)のいずれか1つに定義された意味のいずれかを有し、XはSである。
【0146】
一部の実施形態において、化合物はTable 1(表1)に列挙されたものから選択される構造式を有する。
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
一部の実施形態において、化合物は構造式:
【0153】
【0154】
を有する。
【0155】
一部の実施形態において、化合物は構造式:
【0156】
【0157】
を有する。
【0158】
一部の実施形態において、化合物は構造式:
【0159】
【0160】
を有する。
【0161】
一部の実施形態において、化合物は構造式:
【0162】
【0163】
を有する。
【0164】
本明細書に記載する任意の実施形態において、式(I)の化合物は、対イオンと会合し得る。対イオンは炭酸アニオン(CO3
2-)、炭酸水素塩(HCO3
-)、テトラフルオロホウ酸アニオン(BF4
-)、ヘキサフルオロリン酸アニオン(PF6
-)、酢酸塩(OAc-)、トリフルオロ酢酸アニオン、ギ酸アニオン、ハロゲン化物(例えばF-、Cl-、Br-、I-)又は硫酸アニオンのうちの1つ又は複数であってもよい。
【0165】
本発明者等は、M.MpeIが、N
6修飾なしの対応物と比較してAdoMet類似体及びETA-AdoHcy-Hydrによって活性の増加を示すことを驚くべきことに見出した。理論に拘束されずに、アデノシン部分のN
6位でのヒドロキシ基の導入は、補因子類似体とM.MpeIとの結合相互作用を強化すると考えられる。DNA-M.MpeI-補因子の三元複合体の結晶構造は、補因子類似体が主として酵素の疎水性ポケットに位置するが、N
6修飾を収容する空間があることを示す(
図1)。結晶構造は、ヒドロキシ基の酸素とLYS-115のアンモニウム基との水素結合が、酵素への補因子類似体の結合を安定化させることも示唆する。酵素との、例えばLYS-115との水素結合を形成する可能性がある他の基は同様の結合安定化をもたらすと考えられる。
【0166】
本開示は、式(I)の化合物を含む組成物も提供する。組成物は、好適な溶媒、例えば水又は食塩水中の化合物の溶液、懸濁液又は分散液であってもよい。組成物は緩衝液、塩、粘度調整剤、安定剤又はpH調整剤から選択される1種又は複数の試薬を更に含み得る。好ましくは、組成物は生物学的又は薬学的に許容される。これにより、組成物の成分は、使用中に接触する可能性がある生物学的分子に何らかの有害な影響を与えないことが理解される。
【0167】
式(I)の化合物とメチルトランスフェラーゼとの複合体も提供される。
【0168】
式(I)の化合物又は前記化合物を含む組成物を含むキットが更に提供される。キットはメチルトランスフェラーゼを更に含み得る。
【0169】
一部の実施形態において、メチルトランスフェラーゼは、補因子としてS-アデノシルメチオニンを使用することが可能である。言い換えれば、メチルトランスフェラーゼはS-アデノシルメチオニン(例えばS-アデノシル-L-メチオニン)依存性メチルトランスフェラーゼであってもよい。一部の実施形態において、メチルトランスフェラーゼはDNAメチルトランスフェラーゼである。一部の実施形態において、メチルトランスフェラーゼはシトシン-5メチルトランスフェラーゼである。一部の実施形態において、メチルトランスフェラーゼはM.HhaI、M.SssI、M.MpeI、M.TaqI及びこれらの変異体から選択される。M.MpeIはWojciechowski等、Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Jan 2;110(1):105~110頁によって記載された方法を用いて得られ得る。M.SssIの調製はDarii等、Molecular Biology 41、110~117頁(2007)によって記載されている。M.HhaIの精製はKumar等、Biochemistry(1992)、31(36)、8648~8653頁によって記載されている。M.TaqIの調製はHulz等、Nucleic Acids Res. 26、1076~1083頁(1998)によって記載されている。一部の実施形態において、メチルトランスフェラーゼはM.MpeIである。一部の実施形態において、メチルトランスフェラーゼはM.MpeIの二重変異体(Q136A/N374A)である。これらの変異は、酵素による本明細書に記載されるもの等のAdoMet類似体の使用を促進する。当業者は、標準的な分子生物学技術及びLukinavicius等、Nucleic Acids Research、40、22(2012)、11594~11602頁の教示を用いてDNAの部位特異的標識のための更なるシトシン-5メチルトランスフェラーゼの改変が可能である。
【0170】
核酸等の標的生体分子を修飾する方法における式(I)の化合物の使用も開示される。
【0171】
標的生体分子を修飾する方法であって、標的生体分子を式(I)の化合物及びメチルトランスフェラーゼとインキュベートすることにより、式(I)の化合物の転移性基(即ちR1)を標的生体分子に転移させる工程を含む、方法が更に提供される。該方法は、官能化生体分子を形成するために用いられ得る。メチルトランスフェラーゼは本明細書に記載されるものであってもよい。
【0172】
方法は、細胞内(例えばインビトロ又はエクスビボ)又は細胞ライセート内の標的生体分子を修飾する工程を含み得る。一部の実施形態において、細胞又は細胞ライセートは1種又は複数のメチラーゼを含有する。一部の実施形態において、細胞又は細胞ライセートは複数、例えば少なくとも2、3、4、5又は10種のメチルトランスフェラーゼを含有する。該メチルトランスフェラーゼのうちの1種又は一部のみが、式(I)の化合物からの転移性基を標的分子生体分子に転移させることができる可能性がある。代替的には、該メチルトランスフェラーゼのうちの一種又は一部のみが、存在する他のメチルトランスフェラーゼと比較して、式(I)の化合物に対して向上した活性を有する可能性がある。
【0173】
標的生体分子はDNA、RNA等の核酸又はこれらの混合物を含み得る。核酸は一本鎖であっても、二本鎖であってもよい。一部の実施形態において、標的生体分子はDNA、例えばゲノムDNAであるか、又はこれらを含む。
【0174】
インキュベーションは、メチルトランスフェラーゼが式(I)の化合物からの転移性基を標的生体分子に転移させることを可能にする条件下で行われることが理解される。当業者は、所与のメチルトランスフェラーゼに好適な条件を決定することが可能である。一部の実施形態において、インキュベーションは10~60℃、15~50℃、20~40℃又は30~37℃の温度で行われる。一部の実施形態において、インキュベーションは、標的生体分子の全ての利用可能な部位への転移性基の転移を可能にするのに十分な時間行われる。インキュベーション時間は、酵素の種類、標的生体分子の濃度及び/又は式(I)の化合物の濃度等の因子で決まり得ることが理解される。例えば、インキュベーションは5分~5時間、10分~4時間、15分~3時間、30分~2時間又は1時間~1.5時間行われ得る。
【0175】
一部の実施形態において、方法は、標的生体分子を切断する工程を更に含み得る。例えば、DNA又はRNA標的生体分子は、断片に切断され得る。切断は、標的生体分子が式(I)の化合物及びメチルトランスフェラーゼとインキュベートされる前に行われても、その後に行われてもよい。したがって、方法の一部の実施形態において、標的生体分子はDNA又はRNA断片であってもよい。
【0176】
一部の実施形態において、標的生体分子に転移させる転移性基(即ち式(I)の化合物のR1部分)は、加水分解性部分を含む。一部の実施形態において、方法は、転移性基の加水分解性部分を加水分解する工程を更に含む。
【0177】
追加的に又は代替的に、転移性基は発色団、フルオロフォア、放射性の若しくは安定な希少同位体等の検出可能な標識を含み得る。
【0178】
追加的に又は代替的に、転移性基は、生体分子の更なる修飾を可能にする官能基を含み得る。方法は、官能基を更なる試薬と反応させて、例えば特定の官能性を提供する工程を含み得る。一部の実施形態において、官能基と更なる試薬との反応は、ひずみ促進アルキンアジド環化付加(SPAAC)等のクリック反応である。官能基はアジドを含むか、又はアジドからなり、更なる試薬は立体的にひずんだ(例えば環ひずみ)アルキン等のアルキンを含む可能性がある。代替的には、官能基はアルキン(例えば末端アルキン)を含むか、又はアルキンからなり、更なる試薬はアジドを含む可能性がある。
【0179】
一部の実施形態において、方法は、標識を官能基に結合させ、それにより標識生体分子を形成する工程を含む。一部の実施形態において、標識生体分子は、官能基を標識と直接又は標識を含む部分と反応させることにより形成される。代替的には、標識生体分子は、最初に官能基を更なる試薬と反応させて修飾官能基を形成し、次いで修飾官能基を標識又は標識を含む部分と反応させることにより形成され得る。例えば、転移性基は、フルオロフォア等の検出可能な標識に結合した、DBCO等の立体的にひずんだアルキンと反応して、トリアゾール連結を介して官能化生体分子を形成することができる末端アジドを含み得る。
【0180】
方法は、修飾、官能化又は標識生体分子を非修飾、非官能化又は非標識生体分子から分離する工程を更に含み得る。
【0181】
一部の実施形態において、方法は、修飾、官能化又は標識生体分子を捕獲する工程を含む。例えば、転移性基は、例えば好適なカラムを用いて修飾又は官能化生体分子の捕獲を可能にするアフィニティタグを含み得る。追加的に又は代替的に、転移性基は、標識又はリガンドと反応して標識生体分子を形成することが可能な官能基(即ちR5)を含む可能性がある。標識又はリガンドは生体分子の捕獲を可能にし得る。例えば、標識は、ビオチン部分又はタンパク質タグ(例えばCLIP-タグ、SNAP-タグ、又はマルトース結合タンパク質)を含み得るか、又はこれらからなり得る。
【0182】
一部の実施形態において、方法は、修飾又は官能化生体分子を検出する工程を更に含む。これは、例えば、標的生体分子に転移させた転移性基に存在する検出可能な標識の存在を検出することによって行われ得る。例えば蛍光標識は、所与のメチルトランスフェラーゼによって導入されるDNA又はRNA配列の標識パターンを視覚化するために用いられ得る。
【0183】
一部の実施形態において、方法は、修飾又は官能化生体分子を分析する工程を更に含み得る。分析方法としては顕微鏡法、配列決定、蛍光定量、イメージング、紫外可視吸収分光法、リアルタイム又は定量PCR(又は他の核酸増幅技術)、質量分析、クロマトグラフィー、電気泳動及びこれらの組合せを挙げることができる。
【0184】
そのため、本開示は、治療若しくは診断のための、及び/又は分析(例えば、核酸増幅並びにDNA及びRNA配列決定等)のための試料の調製における使用のためのAdoMet類似体(即ち式(I)のAdoMet類似体)の使用も提供する。本開示は、液体生検試料中で生体分子を分析する(例えば液体生検試料中の循環無細胞DNA、RNA又はタンパク質を分析する)ためのAdoMet類似体(式(I)のAdoMet類似体)の使用も提供し得る。
【0185】
したがって、分子R1に結合した生体分子(例えばDNA若しくはRNA分子、又はその塩基若しくは断片、又はそのタンパク質若しくはアミノ酸若しくはペプチド若しくはポリペプチド)であって、
R1が
構造式[R5]q-[L1]p-[HM]n-[L2]m-U-CH2-
(式中、
L1は結合又はリンカーであり、
HMは加水分解性部分であり、
L2はリンカーであり、
Uは、アルケン、アルキン、芳香族基(例えばアリール)、カルボニル基及び1又は2個のS=O結合を含む硫黄原子から選択される不飽和基を含み、
m、n、p及びqは0及び1から各々独立して選択され、
R5は、X線回折データの位相整合に好適な重原子又は重原子クラスター、放射性の若しくは安定な希少同位体、フルオロフォア、蛍光消光剤、アフィニティタグ、架橋剤、核酸切断試薬、スピンラベル、発色団、任意選択で修飾されていてもよいタンパク質、ペプチド若しくはアミノ酸、任意選択で修飾されていてもよいヌクレオチド、ヌクレオシド若しくは核酸、炭水化物、脂質、トランスフェクション試薬、挿入剤、ナノ粒子若しくはビーズ、又は官能基を含み、
官能基は、アミノ基(保護アミノを含む)、チオール基、1,2-ジオール基、ヒドラジノ基、ヒドロキシアミノ基、ハロアセトアミド基、マレイミド基、シアン化物基、環式炭化水素(架橋環式炭化水素(例えばノルボルネン)又はシクロアルキル基(例えばC3~6シクロアルキル)等)、ハロ基(例えば-F、-Cl、-Br、-I)、アルデヒド基、ケトン基、1,2-アミノチオール基、アジド基、イソチオシアネート又はチオシアネート基、末端アルケン等のアルケン基、末端アルキン基等のアルキン基、1,3-ジエン官能基、ジエノフィル官能基(例えば活性化炭素-炭素二重結合)、ハロゲン化アリール基、アリールボロン酸基、末端ハロアルキン基、末端シリルアルキン基、-N=C=O、-N=C=S、-O-C(O)NH2、保護アミノ、立体的にひずんだアルキン又はアルケン(ノルボルネン又はDBCO等)を含む基、ニトロン、テトラジン、テトラゾール及び1,2-アミノチオール基からなる群から選択される)
を有する、生体分子が更に提供され得る。
【0186】
生体分子は単離されてもよい。R1鎖の結合は、生体分子の単離及び/又は富化を可能にし得る。したがって、R1鎖が結合した生体分子(例えばDNA若しくはRNA分子、又はその塩基若しくは断片、又はそのタンパク質若しくはアミノ酸若しくはペプチド若しくはポリペプチド)の富化試料が更に開示される。
【0187】
式(I)のAdoMet類似体、メチルトランスフェラーゼ及び生体分子(例えばDNA若しくはRNA分子、又はその塩基若しくは断片、又はそのタンパク質若しくはアミノ酸若しくはペプチド若しくはポリペプチド)の触媒活性複合体が更に提供され得る。
【0188】
固相支持体への生体分子の結合における式(I)のAdoMet類似体の使用も開示される。結合は共有結合又は非共有結合的に生じ得る。
【0189】
標的生体分子の配列特異的メチル化を検出する方法であって、
a)標的生体分子を式(I)の化合物及びメチルトランスフェラーゼとインキュベートする工程と、
b)式(I)の化合物の転移性基(即ちR1)が標的生体分子の認識部位に転移されたかどうかを検出する工程と
を含む、方法も開示される。
【0190】
一部の実施形態において、転移性基による認識部位の修飾は、認識部位でのメチル化の欠如を示す。したがって、本発明は、ゲノムDNAのメチル化状態を決定することが可能である。これは、メチル化状態の変化に関連する疾患の検出を促進する。
【0191】
用語「認識部位」は、メチルトランスフェラーゼによって認識される標的生体分子内の特定の構造又は配列を指すと理解される。標的生体分子がDNA又はRNAである実施形態において、認識部位は2~20個、3~15個、4~12個又は5~10個のヌクレオチド又はヌクレオチド対の配列であり得る。
【0192】
一例において、本開示の方法は、DNAを分析する方法、例えばエピジェネティックプロファイリングの方法であってもよい。方法は、
- 標識DNA断片を、
(a)ゲノムDNAを切断又は断片化してDNA断片にする工程、
(b)DNAをDNAメチルトランスフェラーゼ及び式(I)の化合物とインキュベートすることにより、DNAに存在する非メチル化CpG部位を式(I)の転移性基(即ちR1)で選択的に官能化する工程であり、転移性基が加水分解性部分を含む工程、並びに
(c)標識を転移性部分に(例えば官能基R5を介して)結合させる工程
によって形成する工程と、
- 標識DNA断片を非標識DNA断片から分離する工程と、
- 標識DNA断片の転移性基の加水分解性部分を加水分解して、標識からDNA断片を放出する工程と、
- 放出されたDNA断片を配列決定する工程と
を含み得る。上記工程(a)、(b)及び(c)はいかなる順序で行われてもよいことが理解される。例えば、標識は、DNAがリンカーで官能化される前にリンカーに結合していてもよい。DNAは、DNAを切断する前にリンカーで官能化されてもよく、DNAを切断した後にリンカーで官能化さてもよい(標識はリンカーに既に結合していても、結合していなくてもよい)。したがって、工程(b)はゲノムDNA上で行われても、DNA断片上で行われてもよいことが理解される。
【0193】
本開示は、式(I)の化合物を調製する方法であって、
(a)式(II)
【0194】
【0195】
(式中、Z1はF、Cl、I又はBrである)
の化合物をハロゲン供与体と反応させて式(III)
【0196】
【0197】
(式中、Z1及びZ2はF、I、Br及びClから独立して選択される)
の化合物を形成する工程と、
(b)式(III)の化合物をNHR2R3(式中、R2及びR3は上に定義した通りである)と反応させて式(IV)
【0198】
【0199】
(式中、Z2は上に定義した通りである)
の化合物を形成する工程と、
(c)式(IV)の化合物をホモシステイン(例えばL-ホモシステイン)又はセレノホモシステイン(例えばL-セレノホモシステイン)と反応させて式V
【0200】
【0201】
(式中、XはSe又はSである)
の化合物を形成する工程と、
(d)式(V)の化合物をR1-LG(式中、LGは脱離基である)と反応させて式(I)の化合物を形成する工と
を含む、方法も提供する。一部の実施形態において、脱離基はハロ(例えばF、Cl、Br又はI)又はスルホニル(例えばトシル、ブロシル、ノシル、メシル、トリフリル、トレシル)から選択される。
【0202】
一部の実施形態において、ハロゲン供与体は、I2、Br2、Cl2、塩化チオニル、又はクロロジイイソプロピルアミンから選択される。一部の実施形態において、ハロゲン供与体はI2である。
【0203】
任意選択で、工程(a)は塩基、例えばイミダゾール、ピリジン又はN,N,N,N,N,N-ヘキサメチルリン酸トリアミドの存在下で行われる。
【0204】
一部の実施形態において、ハロゲン供与体がI2である場合等、工程(a)はトリフェニルホスフィン(PPh3)若しくはその誘導体、又は5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィンの存在下で行われる。
【0205】
一部の実施形態において、工程(a)は、溶媒、例えばアセトニトリル又はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の極性非プロトン性溶媒の存在下で行われる。一部の塩基、例えばN,N,N,N,N,N-ヘキサメチルリン酸トリアミドも溶媒として機能することができる。
【0206】
一部の実施形態において、工程(a)において、式(II)の化合物はPPh3(又はその誘導体)及び塩基の存在下でI2と反応し、任意選択で、塩基はイミダゾールである。
【0207】
一部の実施形態において、工程(b)は(更なる)塩基の存在下で行われ、任意選択で、塩基はピリジン又はNEt3である。一部の実施形態において、NHR2R3試薬自体が塩基として用いられる。
【0208】
一部の実施形態において、工程(c)は式(IV)の化合物をL-ホモシステインと反応させる工程を含む。
【0209】
代替的には、工程(c)は、式(IV)の化合物をL-ホモシステインとD-ホモシステインの混合物と反応させる工程を含み得る。この実施形態において、方法は、得られた異性体を分離する追加の工程を含み得る。異性体は工程(c)の後及び工程(d)の前に分離され得る。代替的には、所望の異性体の分離は工程(d)の後に行われ得る。
【0210】
一部の実施形態において、工程(d)は銀塩の存在下で行われる。好適な銀塩としてはAgClO4、AgNO3及びCF3SO2OAgが挙げられる。
【0211】
一部の実施形態において、工程(d)は酸の存在下で行われる。一部の実施形態において、酸は有機酸である。好適な酸としてはギ酸、エタン酸及びこれらの混合物が挙げられる。
【0212】
本開示は式(III)
【0213】
【0214】
(式中、Z1及びZ2はI、Br、F及びClから独立して選択される)
の中間体化合物も提供する。
【0215】
一部の実施形態において、Z1はClである。一部の実施形態において、Z2はIである。一部の実施形態において、Z1はClであり、Z2はIである。したがって、一部の実施形態において、式(III)の中間体は、
【0216】
【0217】
である。
【0218】
式(IV)
【0219】
【0220】
(式中、R2、R3及びZ2は上に定義した通りである)
の中間体も提供される。
【0221】
一部の実施形態において、Z2はIである。
【0222】
本開示の補因子は、蛍光DNA標識、ゲノムDNAの標的富化、エピジェネティック分析、構造バリアント分析及び光学マッピングを含むがこれらに限定されない、核酸を修飾する、標識する及び/又は分析する方法及びアッセイにおいて使用され得る。
【実施例】
【0223】
本開示を以下の非限定的な実施例によって更に例示する。
【0224】
(実施例1)
一般的な合成
以下のスキーム1は、本開示の実施形態による、本明細書に記載のN6置換AdoHyc/AdoMet類似体の合成のための反応スキームである。
【0225】
【0226】
一部の実施形態において、反応条件は以下の通りである:(a)I2、PPh3、イミダゾール、NMP、24時間、76%;(b)リンカー、NEt3、水/MeOH(収率46~95%);(c)L-ホモシステイン、1M NaOH、MeOH 100℃(収率35~98%);(d)CH3I、AgClO4、HCOOH/CH3COOH(1:1)、30℃(収率35~69%)。
【0227】
(実施例2)
補因子類似体の合成
(2R,3R,4S,5S)-2-(6-クロロ-9H-プリン-9-イル)-5-(クロロメチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール(5',6-diCl-Ade)の合成
【0228】
【0229】
アセトニトリル(10mL)中の6-クロロプリンリボシド(1g、3.5mmol)の冷懸濁液に、蒸留塩化チオニル(0.76mL、3当量)を添加した。次いで、ピリジン(0.56mL、2当量)を添加し、反応物を0℃で4時間及び室温で一晩撹拌した。次いで溶媒を減圧下で除去し、試料を20mLのMeOHに溶解した。1mLの水及び2mLの35%アンモニア水溶液を添加した。反応物を3時間撹拌した。1時間後、追加0.6mLのアンモニアを添加した。溶媒を減圧下で除去し、25mLの5%クエン酸を添加し、生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層をNaHCO3、塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、黄色固体(853.4mg、80%)を得た: 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.92 (s, 1H, 8-H), 8.83 (s, 1H, 2-H), 6.08 (d, J = 5.3 Hz, 1H, 1'-H), 5.72 (br. s, 1H, 2'-OH), 5.56 (br. s, 1H, 3'-OH), 4.80 - 4.73 (m, 1H, 2'-H), 4.31 - 4.23 (m, 1H, 3'-H), 4.16 (ddd, J = 6.3, 4.9, 4.2 Hz, 1H, 4'-H), 3.97 (dd, J = 11.7, 4.9 Hz, 1H, 5'-H), 3.88 (dd, J = 11.7, 6.3 Hz, 1H, 5''-H); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 151.92 (6-C), 151.65 (2-C), 149.48 (4-C), 146.10 (8-C), 131.44 (5-C), 88.17 (1'-C), 83.98 (4'-C), 72.93 (2'-C), 71.14 (3'-C), 44.71 (5'-C); TOF MS ES (-) m/z [M+Cl]- 計算値: 338.9818 実測値: 338.9815.
【0230】
(2R,3R,4S,5S)-2-(6-クロロ-9H-プリン-9-イル)-5-(ヨードメチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール(5'-I,6-Cl-Ade)の合成
【0231】
【0232】
NMP(3mL)中の6-クロロプリンリボシド(500mg、1.75mmol)の冷溶液に、イミダゾール(773.5mg、6.5当量)及びトリフェニルホスフィン(1516mg、3.3当量)を添加した。次いで、2mLのNMP中のヨウ素(1464mg、3.3当量)の溶液を滴下添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。次いで10mLの水を添加し、生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層を塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、得られた黄色油を冷蔵庫に一晩貯蔵した。結晶化したトリフェニルホスフィンオキシドを濾過除去し、粗生成物を分取RP-HPLC(60分にわたる水中50~100%MeOH)によって精製した。収集した断片を凍結乾燥し、白色固体(526.8mg、76%)を得た: 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.94 (s, 1H, 8-H), 8.84 (s, 1H, 2-H), 6.07 (d, J = 5.5 Hz, 1H, 1'-H), 5.69 (d, J = 5.7 Hz, 1H, 2'-OH), 5.55 (d, J = 5.2 Hz, 1H, 3'-OH), 4.82 (ddd, J = 5.7, 5.1 Hz, 1H, 2'-H), 4.21 (ddd, J = 5.2, 3.8 Hz, 1H, 3'-H), 4.04 (ddd, J = 7.0, 5.8, 3.8 Hz, 1H, 4'-H), 3.62 (dd, J = 10.5, 5.8 Hz, 1H, 5'-H), 3.49 (dd, J = 10.5, 7.0 Hz, 1H, 5''-H); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 151.64 (2-C), 145.99 (8-C), 87.91 (1'-C), 83.92 (4'-C), 72.84 (2'-C), 72.75 (3'-C), 7.23 (5'-C). TOF MS ES (+) [M+H]+ 計算値: 396.9559, 実測値: 396.9561
【0233】
4-((9-((2R,3R,4S,5S)-5-(クロロメチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)ブタン酸(5'-Cl,6-GABA-Ade)の合成
【0234】
【0235】
MeOH(3mL)中の5',6-diCl-Ade(300mg、0.99mmol)の溶液に、1mLの水中のGABA(305.91mg、3当量)を添加した。次いで、トリエチルアミン(821μL、6当量)を添加し、反応物を8時間撹拌した。MeOHを減圧下で除去し、pHを1M HClで3に調整した。沈殿物を収集し、冷水で洗浄し、P2O5上で乾燥して、オフホワイト固体を得、更に精製せずに次の工程で使用した(264.5mg、72%):1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.03 (s, 1H, COOH), 8.34 (s, 1H, 2-H), 8.22 (s, 1H, 8-H), 7.91 (s, 1H, NH), 5.94 (d, J = 5.6 Hz, 1H, 1'-H), 5.60 (s, 1H, 2'-OH), 5.46 (s, 1H, 3'-OH), 4.76 (dd, J = 5.9, 4.8 Hz, 1H, 2'-H), 4.23 (dd, J = 4.8, 3.9 Hz, 1H, 3'-H), 4.09 (ddd, J = 6.4, 5.1, 3.9 Hz, 1H, 4'-H), 3.95 (dd, J = 11.6, 5.1 Hz, 1H, 5'-H), 3.84 (dd, J = 11.6, 6.4 Hz, 1H, 5''-H), 3.49 (s, 2H, NHCH2CH2), 2.27 (t, J = 7.4 Hz, 2H, CH2CH2COOH), 1.82 (tt, J = 7.4, 7.2 Hz, 2H, CH2CH2CH2); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 152.40 (8-C), 139.29 (2-C), 87.22 (1'-C), 83.42 (4'-C), 72.40 (2'-C), 71.01 (3'-C), 44.56 (5'-C), 38.82 (NHCH2CH2), 30.90 (CH2CH2COOH), 24.27 (CH2CH2CH2). TOF MS ES (-) m/z [M-H]- 計算値: 370.0918 実測値: 370.0916.
【0236】
4-((9-((2R,3R,4S,5S)-5-(ヨードメチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)ブタン酸(5'-I,6-GABA-Ade)の合成
【0237】
【0238】
MeOH(1.5mL)中の5'-I,6-Cl-Ade(150mg、0.38mmol)の溶液に、200μLの水中のGABA(117mg、3当量)を添加した。次いで、トリエチルアミン(317μL、6当量)を添加し、反応物を8時間撹拌した。MeOHを減圧下で除去し、pHを1M HClで4~5に調整した。沈殿物を収集し、冷水で洗浄し、P2O5上で乾燥して、白色固体を得、更に精製せずに次の工程で使用した(129mg(純度95%、微量のGABA及びTEAを含む)、70%):1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.98 (s, 1H, COOH), 8.37 (s, 1H, 2-H), 8.22 (s, 1H, 8-H), 7.91 (s, 1H, NHCH2), 5.93 (d, J = 5.7 Hz, 1H, 1'-H), 5.72 - 5.33 (m, 2H, 2'-OH, 3'-OH), 4.81 (dd, J = 5.7, 5.1 Hz, 1H, 2'-H), 4.20 - 4.16 (m, 1H, 3'-H), 4.04 - 3.95 (m, 1H, 4'-H), 3.66 - 3.57 (m, 1H, 5'-H), 3.56 - 3.41 (m, 3H, 5''-H, NHCH2CH2), 2.28 (t, J = 7.3 Hz, 2H, CH2CH2COOH), 1.82 (tt, J = 7.3, 7.2 Hz, 2H, CH2CH2CH2). 13C NMR (101 MHz, DMSO-H6) δ 174.29 (COOH), 152.68 (8-C), 139.72 (2-C), 87.53 (1'-C), 83.91 (4'-C), 73.19 (3'-C), 72.78 (2'-C), 40.15 (5'-C, 5''-C, NHCH2, DMSOピーク下), 31.17 (CH2CH2COOH), 24.52 (CH2CH2CH2). TOF MS ES (-) m/z [M-H]- 計算値: 462.0274; 実測値: 462.0284.
【0239】
2-((9-((2R,3R,4S,5S)-3,4-ジヒドロキシ-5-(クロロメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)エタン-1-アミニウムホルメート(5'-Cl,6-EDA-Ade)の合成
【0240】
【0241】
MeOH(1.5mL)中の5'-I,6-Cl-Ade(150mg、0.38mmol)の溶液に、EDA(152μL、6当量)を添加し、反応物を2時間撹拌した。MeOHを減圧下で除去し、pHを1M HClで3に調整した。得られた溶液を分取RP-HPLC(60分にわたる20mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5中3~100%MeOH)によって精製した。収集した断片を凍結乾燥して、ギ酸塩として白色固体(168.8mg、95%)を得た: 1H NMR (400 MHz, D2O) δ 8.41 (s, 1H, HCOO-), 8.31 (s, 1H, 2-H), 8.25 (s, 1H, 8-H), 6.06 (d, J = 5.3 Hz, 1H, 1'-H), 4.46 (dd, J = 5.3, 4.7 Hz, 1H, 2'-H), 4.44 - 4.38 (m, 1H, 3'-H 溶媒ピーク下), 3.95 - 3.84 (m, 4H, 5'-H, 5''-), 3.33 - 3.28 (m, 2H, CH2CH2NH3
+); 13C NMR (101 MHz, D2O) δ 170.91, 154.63, 152.75, 148.40, 139.67, 119.11, 87.16, 83.37, 73.44, 70.67, 44.10, 39.27, 38.12; TOF MS ES (+) m/z [M+H]+ 計算値: 329.1129; 実測値: 329.1136.
【0242】
2-((9-((2R,3R,4S,5S)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヨードメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)エタン-1-アミニウムホルメート(5'-I,6-EDA-Ade,)の合成
【0243】
【0244】
MeOH(1.5mL)中の5'-I,6-Cl-Ade(150mg、0.38mmol)の溶液に、EDA(152μL、6当量)を添加し、反応物を2時間撹拌した。MeOHを減圧下で除去し、pHを1M HClで3に調整した。得られた溶液を分取RP-HPLC(60分にわたる20mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5中3~50%MeOH)によって精製した。収集した断片を凍結乾燥して、ギ酸塩として非晶質のオフホワイト固体(168.8mg、95%)を得た: 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.43 - 8.38 (m, 3H, 2-H, 2x HCOO-), 8.26 (s, 1H, 8-H), 7.98 (br. s, 1H, NHCH2CH2NH3
+), 5.93 (d, J = 5.8 Hz, 1H, 1'-H), 4.80 (dd, J = 5.4 Hz, 1H, 2'-H), 4.17 (dd, J = 5.1, 3.6 Hz, 1H, 3'-H), 4.02 - 3.95 (m, 1H, 4'-H), 3.75 - 3.57 (m, 3H, 5'-H, NHCH2CH2NH3
+), 3.46 (dd, J = 10.4, 7.0 Hz, 1H, 5''-H), 2.97 (t, J = 6.3 Hz, 2H, NHCH2CH2NH3
+); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 165.59, 152.56, 140.01, 129.38, 83.95, 79.20, 73.21, 72.88, 28.06, 7.97; TOF MS ES (+) m/z [M+H]+ 計算値: 421.0485; 実測値: 421.0496.
【0245】
3-((9-((2R,3R,4S,5S)-5-(クロロメチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)プロパン酸(5'-Cl,6-β-Ala-Ade)の合成
【0246】
【0247】
MeOH(3mL)中の5',6-diCl-Ade(300mg、0.987mmol)の溶液に、800μLの水中のβ-アラニン溶液(167mg、1.9当量)及びトリエチルアミン(520μL、3.8当量)を添加し、反応物を8時間撹拌した。pHを1M HClで3に調整した。得られたオフホワイトの沈殿物を冷MeOH及び水で洗浄し、更に精製せずに使用した(329mg、93%):1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.22 (br. s, 1H, -COOH), 8.37 (s, 1H, 2-H), 8.27 (s, 1H, 8-H), 7.84 (s, 1H, NHCH2), 5.95 (d, J = 5.6 Hz, 1H, 1'-H), 4.77 (dd, J = 5.6, 5.1 Hz, 1H, 2'-H), 4.25 (dd, J = 5.1, 3.5 Hz, 1H, 3'-H), 4.11 (ddd, J = 6.4, 5.1, 3.5 Hz, 1H, 4'-H), 3.96 (dd, J = 11.6, 5.1 Hz, 1H, 5'-H), 3.85 (dd, J = 11.6, 6.4 Hz, 1H, 5''-H), 3.78 - 3.61 (m, 2H, NHCH2CH2), 2.60 (t, J = 7.2 Hz, 2H, CH2CH2COOH); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 173.07, 154.43, 152.69 (8-C), 148.69, 139.77 (2-C), 119.63, 87.52 (1'-C), 83.72 (4'-C), 72.70 (2'-C), 71.29 (3'-C), 44.84 (5'-C), 36.07 (NHCH2CH2), 33.77 (CH2CH2COOH). TOF MS ES (-) m/z [M-H]- 計算値: 356.0762; 実測値: 356.0763.
【0248】
3-((9-((2R,3R,4S,5S)-5-(ヨードメチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)プロパン酸(5'-I,6-β-Ala-Ade)の合成
【0249】
【0250】
MeOH(3mL)中の5',6-diCl-Ade(300mg、0.987mmol)の溶液に、800μLの水中のβ-アラニン溶液(167mg、1.9当量)及びトリエチルアミン(520μL、3.8当量)を添加し、反応物を8時間撹拌した。pHを1M HClで3に調整した。得られたオフホワイト沈殿物を冷MeOH及び水で洗浄し、更に精製せずに使用した(329mg、93%):1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.38 (s, 1H, 2-H), 8.25 (s, 1H, 8-H), 7.81 (br. s, 1H, NHCH2CH2COOH), 5.93 (d, J = 5.7 Hz, 1H, 1'-H), 4.81 (dd, J = 5.5 Hz, 1H, 2'-H), 4.18 (dd, J = 4.3 Hz, 1H, 3'-H), 4.03 - 3.95 (m, 1H, 4'-H), 3.68 (br. s, 2H, NHCH2CH2COOH), 3.61 (dd, J = 10.5, 5.9 Hz, 1H, 5'-H), 3.47 (dd, J = 10.5, 6.9 Hz, 1H, 5''-H), 2.59 (t, J = 7.2 Hz, 2H, NHCH2CH2COOH); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 139.89, 83.91, 73.18, 72.79, 54.93, 45.53, 8.98, 7.82. TOF MS ES (-) m/z [M-H]- 計算値: 448.0118; 実測値: 448.0128.
【0251】
(9-((2R,3R,4S,5S)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヨードメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)-L-プロリン(5'-I,6-Pro-Ade)の合成
【0252】
【0253】
MeOH(1mL)及び水(100μL)中の5'-I,6-Cl-Ade(100mg、0.253mmol)の溶液に、L-プロリン*HCl(174.5mg、6当量)及びトリエチルアミン(211μL、6当量)を添加し、反応物を8時間撹拌した。得られた溶液を分取RP-HPLC(60分にわたる水中3~100%MeOH)によって精製した。収集した断片を凍結乾燥して、(55mg、46%)として白色固体を得た: 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.55 (br. s, 1H, -COOH), 8.45 - 8.19 (m, 2H, 2-H, 8-H), 6.00 - 5.92 (m, 1H, 1'-H), 5.61 (d, J = 6.0 Hz, 1H, 2'-OH), 5.52 - 5.44 (m, 1H, 3'-OH), 5.37 - 5.29 (m, Hα-旋光度1), 4.85 - 4.76 (m, 1H, 2'-H), 4.69 - 4.61 (m, Hα-旋光度2), 4.25 - 4.12 (m, 2H, 3'-OH, Hδ), 4.05 - 3.95 (m, 1H, 4'-H), 3.84 - 3.67 (m, 1H, Hδ), 3.66 - 3.56 (m, 1H, 5'-H), 3.52 - 3.44 (m, 1H, 5''-H), 2.43 - 1.72 (m, 3H, Hβ, Hγ,溶媒ピーク下H1個). 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 152.84, 152.50, 140.07, 139.83, 87.85, 84.35, 84.25, 73.65, 73.38, 73.14, 60.92, 60.06, 49.52, 47.94, 31.17, 29.18, 24.89, 22.42, 8.30; TOF MS ES (-) m/z [M-H]- 計算値: 474.0274; 実測値: 474.0270.
【0254】
(2R,3R,4S,5S)-2-(6-((2-ヒドロキシエチル)アミノ)-9H-プリン-9-イル)-5-(ヨードメチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール(5'-I,6-ETA-Ade)の合成
【0255】
【0256】
MeOH(1mL)中の5'-I,6-Cl-Ade(100mg、0.253mmol)の溶液に、エタノールアミン(91μL、6当量)及びトリエチルアミン(211μL、6当量)を添加し、反応物を8時間撹拌した。得られた溶液をセミ分取HPLC(60分にわたる水中3~100%MeOH)によって精製した。収集した断片を凍結乾燥して、(80mg、75%)として白色固体を得た: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.37 (s, 1H, 2-H), 8.23 (br. s, 1H, 8-H), 7.66 (br. s, 1H, NHCH2), 5.93 (d, J = 5.7 Hz, 1H, 1'-H), 5.57 (d, J = 6.0 Hz, 1H, 2'-OH), 5.46 (d, J = 5.0 Hz, 1H, 3'-OH), 4.85 - 4.79 (m, 1H, 2'-H), 4.76 (br. s, 1H, CH2OH), 4.21 - 4.15 (m, 1H, 3'-H), 4.02 - 3.96 (m, 1H, 4'-H), 3.65 - 3.50 (m, 5H, CH2CH2, 5'-H), 3.47 (dd, J = 10.4, 6.9 Hz, 1H, 5''-H); 13C NMR (126 MHz, DMSO) δ 154.67, 152.62, 148.71, 139.81, 119.58, 87.53, 83.89, 73.18, 72.77, 59.68, 42.46, 7.83; TOF MS ES (+) m/z [M+H]+ 計算値: 422.0325; 実測値: 422.0334
【0257】
(2R,3R,4S,5S)-2-(6-(アリルアミノ)-9H-プリン-9-イル)-5-(ヨードメチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール(5'-I,6-アリル-Ade)の合成
【0258】
【0259】
MeOH(1mL)中の5'-I,6-Cl-Ade(100mg、0.1mmol)の溶液に、アリルアミン(114μL、6当量)及びトリエチルアミン(211μL、6当量)を添加し、反応物を24時間撹拌した。次いで、沈殿物を濾過除去し、冷水、メタノールで洗浄し、P2O5上で乾燥して、白色固体(66mg、63%)を得、これを更に精製せずに次の工程で使用した: 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.39 (s, 1H, 2-H), 8.23 (br. s, 1H, 8-H), 8.04 (br. s, 1H, NHCH2), 6.02 - 5.89 (m, 2H, 1'-H, CH2CH=CH2), 5.60 (d, J = 6.1 Hz, 1H, 2'-OH), 5.48 (d, J = 5.1 Hz, 1H, 3'-OH), 5.20 - 5.11 (m, 1H, CH2CH=CHH), 5.08 - 5.02 (m, 1H, CH2CH=CHH), 4.87 - 4.79 (m, 1H, 2'-H), 4.22 - 4.06 (m, 3H, 3'-H, NHCH2CH=CH2), 4.00 (ddd, J = 7.0, 5.9, 3.5 Hz, 1H, 4'-H), 3.62 (dd, J = 10.4, 5.9 Hz, 1H, 5'-H), 3.48 (dd, J = 10.4, 7.0 Hz, 1H, 5''-H); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 154.89, 153.10, 140.29, 136.08, 119.96, 115.45, 87.95, 84.38, 73.64, 73.21, 42.40, 8.29; TOF MS ES (+) m/z [M+H]+ 計算値: 418.0376; 実測値: 418.0386
【0260】
(2R,3R,4S,5S)-2-(6-((3-アジドプロピル)アミノ)-9H-プリン-9-イル)-5-(ヨードメチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール(5'-I,6-PAA-Ade)の合成
【0261】
【0262】
MeOH(0.4mL)中の5'-I,6-Cl-Ade(40mg、0.1mmol)の溶液に、3-アジド-1-プロパンアミン(60.7mg、6当量)及びトリエチルアミン(84μL、6当量)を添加し、反応物を8時間撹拌した。得られた溶液を水/MeOH(1:1)で10倍希釈し、pHを1M HClで7に調整し、セミ分取HPLC(60分にわたる水中50~100%MeOH)によって精製した。収集した断片を凍結乾燥して、白色固体(28.7mg、62%)を得た: 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 8.26 (m, J = 2.6 Hz, 2H, 2-H, 8-H), 6.01 (d, J = 5.2 Hz, 1H, 1'-H), 4.89 - 4.82 (m, 1H, 2'-H 溶媒ピーク下), 4.30 (dd, J = 5.4, 4.1 Hz, 1H, 3'-H), 4.06 (td, J = 5.7, 4.1 Hz, 1H, 4'-H), 3.68 (br. s, 2H, NHCH2CH2), 3.62 (dd, J = 10.7, 5.8 Hz, 1H, 5'-H), 3.50 (dd, J = 10.7, 5.8 Hz, 1H, 5''-H), 3.44 (t, J = 6.7 Hz, 2H, CH2CH2N3), 1.94 (tt, J = 6.7 Hz, 2H, NHCH2CH2CH2N3); 13C NMR (101 MHz, MeOD) δ 153.99, 141.00, 90.14, 85.19, 74.92, 74.87, 50.13, 6.26. ESI MS (+) m/z [M+H]+ 計算値: 461.0541, 実測値: 461.0528
【0263】
S-(((2S,3S,4R,5R)-5-(6-((2-カルボキシエチル)アミノ)-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)-L-ホモシステイン(β-Ala-SAH)の合成
【0264】
【0265】
1M NaOH(200μL、3当量)中のL-ホモシステイン(18.5mg、2当量)の溶液をN2下で15分間脱気した後、300μLのMeOH中の5'-Cl,6-β-Ala-Ade(25mg、0.07mmol)又は5'-I,6-β-Ala-Ade(30mg、0.067mmol)の溶液を添加した。反応物を追加10分間脱気し、100℃まで加熱した。進捗をHPLCによって監視した。反応物を、1M HCLを添加してpH3~4にすることにより失活させた。反応物を分取RP-HPLC(60分にわたる20mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5中3~100%MeOH)で精製し、収集した断片を凍結乾燥して、白色固体としてβ-Ala-SAH(12.1mg、38%、24時間)及び(24.8mg、81%、4.5時間)をそれぞれ得た: 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.37 (s, 1H, 2-H), 8.25 (s, 1H, 8-H), 7.80 (s, 1H, NHCH2), 5.90 (d, J = 5.6 Hz, 1H, 1'-H), 4.79 - 4.67 (m, 1H, 2'-H), 4.20 - 4.12 (m, 1H, 3'-H), 4.09 - 3.97 (m, 1H, 4'-H), 3.68 (br. s, 2H, NHCH2CH2), 3.35 - 3.29 (m, 1H, Hα), 2.91 (dd, J = 13.8, 6.0 Hz, 1H, 5'-H), 2.80 (dd, J = 13.8, 6.9 Hz, 1H, 5''-H), 2.66 - 2.54 (m, 4H, 2Hγ, NHCH2CH2COOH), 2.05 - 1.91 (m, 1H, Hβ), 1.88 - 1.73 (m, 1H, Hβ); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 173.15, 170.14, 152.64, 139.81, 87.46, 83.68, 72.80, 72.65, 52.95, 33.85, 31.34, 28.10; ESI MS (+) m/z [M+H]+ 計算値: 457.1500, 実測値: 457.1519
【0266】
S-(((2S,3S,4R,5R)-5-(6-((3-カルボキシプロピル)アミノ)-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)-L-ホモシステイン(GABA-AdoHcy)の合成
【0267】
【0268】
1M NaOH(190μL、3当量)中のL-ホモシステイン(18mg、2当量)の溶液をN2下で15分間脱気した後、310μLのMeOH中の5'-Cl,6-GABA-Ade(25mg、0.067mmol)又は5'-I,6-GABA-Ade(30mg、0.065mmol)の溶液を添加した。反応物を追加10分間脱気し、100℃まで加熱した。進捗をHPLCによって監視した。反応物を、1M HCLを添加してpH3~4にすることにより失活させた。反応物を分取RP-HPLC(60分にわたる20mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5中3~100%MeOH)で精製し、収集した断片を凍結乾燥して、白色固体としてGABA-AdoHcy(11mg、35%、24時間)及び(22.6mg、74%、4.5時間)をそれぞれ得た: 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.36 (s, 1H, 2-H), 8.22 (s, 1H, 8-H), 7.94 (br. s, 1H, NHCH2), 5.89 (d, J = 5.6 Hz, 1H, 1'-H), 4.78 - 4.67 (m, 1H, 2'-H), 4.18 - 4.12 (m, 1H, 3;-H), 4.06 - 3.98 (m, 1H, 4'-H), 3.49 (br. s, 2H, NHCH2CH2), 3.36 - 3.28 (m, 1H, Hα), 2.91 (dd, J = 13.8, 5.9 Hz, 1H, 5'-H), 2.81 (dd, J = 13.8, 6.9 Hz, 1H, 5''-H), 2.63 (t, J = 7.7 Hz, 2H, Hγ), 2.26 (t, J = 7.4 Hz, 2H, NHCH2CH2CH2COOH), 2.05 - 1.92 (m, 1H, Hβ), 1.88 - 1.75 (m, 3H, Hβ, NHCH2CH2CH2COOH); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 174.61, 170.28, 152.68, 139.58, 87.45, 83.75, 72.85, 72.63, 52.97, 33.85, 31.69, 31.40, 28.16; MS ESI [M+H]+ 計算値: 471.1662, 実測値: 471.1666
【0269】
(S)-2-アンモニオ-4-((((2S,3S,4R,5R)-5-(6-((2-アンモニオエチル)アミノ)-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)チオ)ブタノエートホルメート(EDA-AdoHcy)の合成
【0270】
【0271】
1M NaOH(403μL、3当量)中のL-ホモシステイン(36.2mg、2当量)の溶液をN2下で15分間脱気した後、5'-Cl,6-EDA-Ade(50mg、0.134mmol)又は5'-I,6-EDA-Ade(62.5mg、0.134mmol)の溶液を添加した。反応物を追加10分間脱気し、100℃まで加熱した。進捗をHPLCによって監視した。反応物を、1M HCLを添加してpH3~4にすることにより失活させた。反応を分取RP-HPLC(60分にわたる20mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5中3~50%MeOH)で精製し、収集した断片を凍結乾燥して、白色固体としてEDA-AdoHcy(23.5mg、37%、5時間)及び(42.5mg、67%、10分)をそれぞれ得た: 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.43 - 8.39 (m, 3H, 2-H, 2xHCOO-), 8.26 (s, 1H, 8-H), 8.05 (s, 1H, NHCH2), 5.90 (d, J = 5.5 Hz, 1H, 1'-H), 4.71 (dd, J = 5.5, 5.0 Hz, 1H, 2'-H), 4.15 (dd, J = 5.0, 3.9 Hz, 1H, 3'-H), 4.03 (ddd, J = 6.9, 5.7, 3.9 Hz, 1H, 4'-H), 3.68 (br. s, J = 8.5 Hz, 2H, NHCH2CH2NH3
+), 3.32 (dd, J = 6.9, 5.3 Hz, 1H, Hα), 3.00 (t, J = 6.2 Hz, 2H, NHCH2CH2NH3
+), 2.90 (dd, J = 13.9, 5.7 Hz, 1H, 5'-H), 2.81 (dd, J = 13.9, 6.9 Hz, 1H, 5''-H), 2.62 (t, J = 7.7 Hz, 2H, Hγ), 2.03 - 1.89 (m, 1H, Hβ), 1.88 - 1.76 (m, 1H, Hβ); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 165.37, 152.29, 139.65, 87.23, 83.67, 72.66, 72.35, 52.66, 39.11, 38.78, 33.60, 31.21, 27.94. TOF MS ES (+) m/z [M+H]+ 計算値: 428.1716, 実測値: 428.1724.
【0272】
(S)-2-アンモニオ-4-((((2S,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(6-((2-ヒドロキシエチル)アミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル)チオ)ブタノエート(ETA-AdoHcy)の合成
【0273】
【0274】
1M NaOH(210μL、2.2当量)中のL-ホモシステイン(25.7mg、2当量)の溶液をN2下で15分間脱気した後、100μLのMeOH中の5'-I,6-ETA-Ade(40mg、0.095mmol)の溶液を添加した。反応物を追加10分間脱気し、100℃まで加熱した。進捗をHPLCによって監視した。反応物を、1M HCLを添加してpH3~4にすることにより失活させた。反応物を分取RP-HPLC(60分にわたる20mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5中3~100%MeOH)で精製し、収集した断片を凍結乾燥して、白色固体として(16.8mg、41.3%、4時間)を得た: 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.38 (s, 1H, 2-H), 8.23 (s, 1H, 8-H), 7.75 (br. s, 1H, NHCH2), 5.90 (d, J = 5.7 Hz, 1H, 1'-H), 4.75 - 4.66 (m, 1H, 2'-H), 4.19 - 4.10 (m, 1H, 3'-H), 4.09 - 3.99 (m, 1H, 4'-H), 3.63 - 3.49 (m, 4H, NHCH2CH2OH), 3.47 - 3.11 (m, 1H, Hα), 2.91 (dd, J = 13.8, 6.0 Hz, 1H, 5'-H), 2.81 (dd, J = 13.8, 7.0 Hz, 1H, 5''-H), 2.69 - 2.58 (m, 2H, Hγ), 2.08 - 1.93 (m, 1H, Hβ), 1.92 - 1.77 (m, 1H, Hβ); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 170.36, 154.64, 152.68, 148.71, 139.67, 119.50, 87.41, 83.72, 72.91, 72.64, 59.68, 53.02, 42.66, 33.91, 31.42, 28.12; TOF MS ES (+) m/z [M+H]+ 計算値: 429.1556, 実測値: 429.1564.
【0275】
(S)-2-アンモニオ-4-((((2S,3S,4R,5R)-5-(6-((S)-2-カルボキシピロリジン-1-イル)-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)チオ)ブタノエート(Pro-AdoHcy)の合成
【0276】
【0277】
1M NaOH(190μL、2当量)中のL-ホモシステイン(17.1mg、2当量)の溶液をN2下で30分間脱気した後、110μLのMeOH中の5'-I,6-Pro-Ade(30mg、0.063mmol)を添加した。反応物を追加10分間脱気し、100℃まで加熱した。進捗をHPLCによって監視した。反応物を、1M HCLを添加してpH3~4にすることにより失活させた。反応物を分取RP-HPLC(60分にわたる20mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5中3~100%MeOH)で精製し、収集した断片を凍結乾燥して、白色固体として(29.9mg、98.2%、3時間)を得た: 1H NMR (400 MHz, D2O+0.1% TFA) δ 8.32 - 8.07 (m, 2H, 2-H, 8-H), 6.04 (d, J = 4.8 Hz, 1H, 1'-H), 5.16 (dd, J = 8.9, 2.9 Hz, 1H, Ha 旋光度1), 4.79 (s, 3H, 2'-H, 溶媒ピーク下プロトン2個), 4.56 (dd, J = 8.3, 3.4 Hz, 1H, Ha 旋光度2), 4.44 - 4.34 (m, 1H, 3'-H), 4.34 - 4.26 (m, 1H, 4'-H), 4.25 - 4.00 (m, 1H), 3.87 - 3.76 (m, 1H), 3.74 - 3.61 (m, 1H), 3.08 - 2.88 (m, 2H, 5'-H, 5''-H), 2.72 - 2.57 (m, 2H), 2.48 - 1.85 (m, 4H); 13C NMR (101 MHz, D2O+0.1% TFA) δ 179.48, 174.01, 170.41, 151.45, 150.85, 149.86, 148.54, 139.20, 138.77, 119.86, 87.44, 83.34, 73.45, 73.25, 72.26, 64.27, 63.10, 53.67, 50.08, 48.90, 33.37, 31.29, 30.30, 29.65, 27.82, 24.33, 22.39. TOF MS ES (+) m/z [M+H]+ 計算値: 483.1662, 実測値: 483.1675
【0278】
(S)-4-((((2S,3S,4R,5R)-5-(6-(アリルアミノ)-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)チオ)-2-アンモニオブタノエート(アリル-AdoHcy)の合成
【0279】
【0280】
2M NaOH(84.6μL、2.9当量)中のL-ホモシステイン(15.8mg、2当量)の溶液をN2下で15分間脱気した後、60μLのDMF中の5'-I,6-アリル-Ade(25mg、0.060mmol)の溶液を添加した。反応物を追加10分間脱気し、100℃まで加熱した。進捗をHPLCによって監視した。反応物を、1M HCLを添加してpH3~4にすることにより失活させた。反応を分取RP-HPLC(60分にわたる20mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5中3~100%MeOH)で精製し、収集した断片を凍結乾燥して、白色固体として(24.7mg、97%、1時間30分)を得た: 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.38 (s, 1H, 2-H), 8.22 (s, 1H, 8-H), 8.03 (br. s, 1H, NHCH2CH=CH2), 6.01 - 5.87 (m, 2H, 1'-H, NHCH2CH=CH2), 5.19 - 5.10 (m, 1H, NHCH2CH=CHH), 5.08 - 5.02 (m, 1H, NHCH2CH=CHH), 4.74 (dd, J = 5.5 Hz, 1H, 2'-H), 4.19 - 4.06 (m, 3H, 3'-H, NHCH2CH=CH2), 4.05 - 3.97 (m, 1H, 4'-H), 3.31 (dd, J = 7.1, 5.2 Hz, 1H, Hα), 2.92 (dd, J = 13.7, 6.2 Hz, 1H, 5'-H), 2.80 (dd, J = 13.7, 6.9 Hz, 1H, 5''-H), 2.63 (t, J = 7.8 Hz, 2H, Hγ), 2.06 - 1.76 (m, 2H, 2xHβ); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 170.03, 163.92, 152.64, 139.77, 135.70, 115.00, 87.39, 83.60, 72.76, 72.64, 52.99, 33.87, 31.37, 28.09; TOF MS ES (+) m/z [M+H]+ 計算値: 425.1607, 実測値: 425.1618.
【0281】
(S)-2-アンモニオ-4-((((2S,3S,4R,5R)-5-(6-((3-アジドプロピル)アミノ)-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)チオ)ブタノエート(PAA-AdoHcy)の合成
【0282】
【0283】
1M NaOH(430μL、4当量)中のL-ホモシステイン(58.8mg、4当量)の溶液をN2下で30分間脱気した後、500μLのMeOH中の5'-I,6-PAA-Ade(50mg、0.108mmol)を添加した。反応物を追加10分間脱気し、100℃まで加熱した。進捗をHPLCによって監視した。反応物を、1M HCLを添加してpH3~4にすることにより失活させた。反応物を分取RP-HPLC(60分にわたる20mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5中3~100%MeOH)で精製し、収集した断片を凍結乾燥して、白色固体としてPAA-AdoHcy(32.9mg、65%、5時間)を得た: 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.37 (s, 1H, 2-H), 8.23 (s, 1H, 8-H), 7.96 (br. s, 1H, NHCH2), 5.89 (d, J = 5.8 Hz, 1H, 1'-H), 4.72 (dd, J = 5.8, 5.1 Hz, 1H, 2'-H), 4.14 (dd, J = 5.1, 3.6 Hz, 1H, 3'-H), 4.05 - 3.99 (m, 1H, 4'-H), 3.54 (br. s, 2H, NHCH2CH2), 3.42 (t, J = 6.7 Hz, 2H, NHCH2CH2CH2N3), 3.30 (dd, J = 7.1, 5.2 Hz, 1H, Hα), 2.91 (dd, J = 13.8, 6.2 Hz, 1H, 5'-H), 2.79 (dd, J = 13.8, 6.9 Hz, 1H, 5''-H), 2.62 (t, J = 7.8 Hz, 2H, Hγ), 2.05 - 1.93 (m, 1H, Hβ), 1.89 - 1.78 (m, 3H, Hβ, NHCH2CH2CH2N3); 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 170.20, 165.64, 154.62, 152.71, 139.73, 87.42, 83.66, 72.85, 72.66, 53.09, 48.59, 37.21, 33.92, 31.46, 28.44, 28.13; TOF MS ES (+) m/z [M+H]+ 計算値: 468.1778, 実測値: 468.1782
【0284】
(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)(((2S,3S,4R,5R)-5-(6-((2-アンモニオエチル)アミノ)-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)(8-(2-((Z)-4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)ベンジリデン)ヒドラジンイル)-8-オキソオクタ-2-イン-1-イル)スルホニウム(EDA-AdoHcy-Hydr)及び(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)(8-(2-((Z)-4-((2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)ベンジリデン)ヒドラジンイル)-8-オキソオクタ-2-イン-1-イル)(((2S,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(6-((2-ヒドロキシエチル)アミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロフラン-2-イル)メチル)スルホニウム(ETA-AdoHcy-Hydr)の合成
【0285】
【0286】
EDA-AdoHcy-Hydr及びETA-AdoHcy-Hydrを、AdoHcyの代わりにETA-AdoHcy(TOF MS ES(+)m/z [M+H]+計算値:429.1556、実測値:429.1564)及びEDA-AdoHcy(TOF MS ES(+)m/z [M+H]+計算値:428.1716、実測値:428.1724)類似体を用いてWilkinson A. A.等、ACS Cent. Sci.、2020に記載されるように合成した。
【0287】
AdoHcy-6-アジド補因子類似体の合成
HCOOH/CH3COOH(1:1)中のN6修飾AdoHcy類似体それぞれの溶液に、6-アジドヘキサ-2-イン-1-p-トルエンスルホネート(各種当量)を0℃でゆっくり添加した。反応混合物を28℃で一晩撹拌した。得られた混合物を水で5倍希釈し、過剰のリンカーをジエチルエーテルで抽出した。次いで、微量の有機溶媒を減圧下で除去した。溶液を分取RP-HPLC(45分にわたる20mMギ酸アンモニウム緩衝液pH3.5中3~43.5%MeOH、次いで15分にわたる43.5~100%)で精製し、収集した断片を凍結乾燥した。生成物を0.1%ギ酸溶液中-20℃で貯蔵した。
【0288】
ETA-AdoHcy-6-アジド:
【0289】
【0290】
異性体1 TOF MS ES(+)m/z M+ 計算値:550.2196、実測値:550.2211
異性体2 TOF MS ES(+)m/z M+ 計算値:550.2196、実測値:550.2202
【0291】
プロピル-AdoHcy-6-アジド:
【0292】
【0293】
TOF MS ES(+)m/z M+ 計算値:548.2404、実測値:548.2417
【0294】
EDA-AdoHcy-6-アジド:
【0295】
【0296】
異性体1 TOF MS ES(+)m/z M+ 計算値:549.2356、実測値:549.2341
異性体2 TOF MS ES(+)m/z M+ 計算値:549.2356、実測値:549.2367
【0297】
フルオロ-AdoHcy-6-アジド:
【0298】
【0299】
TOF MS ES(+)m/z M+ 計算値:552.2153、実測値:552.2162
【0300】
b-Ala-AdoHcy-6-アジド:
【0301】
【0302】
異性体1 TOF MS ES(+)m/z M+ 計算値:578.2145、実測値:578.2151
異性体2 TOF MS ES(+)m/z M+ 計算値:578.2145、実測値:578.2154
【0303】
(実施例3)
M.MpeI(Q136A、N374A)、pUC19及びAdoHcy-6-アジド類似体を用いた制限アッセイ
方法
M.MpeI及びAdoHcy-6-アジド類似体によるpUC19制限アッセイのために、20μlを添加した最初のものとは別に、総容量10μlでNEB Cutsmart緩衝液pH=8.5中1000ngのpUC19、138μg/mLのM.MpeI(Q136A、N374A)を含有するチューブを調製した。各チューブに対して、0.1%ギ酸中のAdoHcy-6-アジド類似体溶液を、所望の濃度に達するまで最初のチューブに添加し、次いで10μlを次のチューブに移し、補因子の所望の最低濃度に達するように希釈し続けた。AdoMet溶液を、アッセイで使用するAdoHcy-6-アジド類似体の最大濃度に一致するように2つの対照試料に添加した。3つの追加の対照(各10μL)を、対応する成分を省略した以外は同じ濃度で調製した:最大濃度のAdoHcy-6-アジド類似体の対照であってM.MpeIを省略したもの及びM.MpeIとAdoHcy-6-アジド類似体の両方を省略したもの。全ての試料を37℃で1時間インキュベートした。次いで、2μLのプロテイナーゼK溶液(20mg/mL)を各試料に添加し、次いで試料を50℃で1時間インキュベートした。試料を、製造業者のプロトコルに従ってZymo DNA Clean-up及び濃縮カラムを用いて精製し、20μLの水中に溶出し、50℃まで加熱した。20μLの各試料に、2μLのTango緩衝液(10倍)(Thermo Fisher社)及び0.3μLのHpaII(10U/μL)(Thermo Fisher社)を添加し、試料を37℃で1時間インキュベートした。次に0.3μLのプロテイナーゼK(20mg/mL)を全ての試料に添加し、試料を50℃で1時間インキュベートした。試料を1%アガロースゲルで泳動させた(40分間120V)。該方法を更にAdoHcy類似体で繰り返した。
【0304】
結果
図2は、M.MpeI酵素及びpUC19プラスミドDNAによるAdoHcy-6-アジド(異性体II)対ETA-AdoHcy-6-アジド(異性体II)の保護アッセイの結果を示す。AdoHcy-6-アジド及びETA-AdoHcy-6-アジドの濃度は250~31.25μMであった。レーン1~4:AdoHcy-6-アジドの連続希釈;レーン5:制限酵素の対照-pUC19はAdoHcy-6-アジド(250μM)の存在下で完全に消化された;レーン6~9:ETA-AdoHcy-6-アジドの連続希釈;レーン10:制限酵素の対照-pUC19はETA-AdoHcy-6-アジド(250μM)の存在下で完全に消化された;レーン11~12:陽性対照、AdoMetの完全な保護;レーン13:陰性対照、補因子なし;レーン14:陰性対照、酵素及び補因子なし。
【0305】
画像の上部近くに位置するバンドはより大きいDNA断片に対応するが、画像下部に向かって位置するバンドはより小さいDNA断片に対応しており、制限酵素による高い消化を示す。
【0306】
pUC19環状プラスミドをM.MpeI及びETA-AdoHcy-6-アジドにより処理した。反応が成功した時点で、CGモチーフ内のシトシン残基は修飾され、したがってアッセイの後続の工程で制限酵素から保護される。
【0307】
レーン6~9(ETA-AdoHcy-6-アジド異性体II)は、レーン1~4(AdoHcy-6-アジド異性体II)それぞれと比較して画像上部に向かってより多くのバンド(より大きいサイズのDNA)を示す。これは、AdoHcy-6-アジドと比較してETA-AdoHcy-6-アジドを使用した場合に、pUC19 DNAの保護の程度がより高い結果による。
【0308】
図3は、M.MpeI酵素及びpUC19プラスミドDNAによるb-Ala-AdoHcy-6-アジド(異性体I及びII)の保護アッセイの結果を示す。b-Ala-AdoHcy-6-アジドの濃度は250~31.25μMであった。レーン1~4:b-Ala-AdoHcy-6-アジド(異性体I)の連続希釈;レーン5:制限酵素の対照-pUC19はb-Ala-AdoHcy-6-アジド(異性体I)(250μM)の存在下で完全に消化された;レーン6~9:b-Ala-AdoHcy-6-アジド(異性体II)の連続希釈;レーン10:制限酵素の対照-pUC19はb-Ala-AdoHcy-6-アジド(異性体II)(250μM)の存在下で完全に消化された;レーン11~12:陽性対照、AdoMetの完全な保護;レーン13:陰性対照、補因子なし;レーン14:陰性対照、酵素及び補因子なし。
【0309】
レーン6~9(b-Ala-AdoHcy-6-アジド(異性体II))は、レーン1~4(b-Ala-AdoHcy-6-アジド(異性体I))と比較して画像上部に向かってより多くのバンド(より大きいサイズのDNA)を示しており、異性体IIがより高い程度のpUC19 DNAの修飾、したがって保護をもたらすことを示す。
【0310】
図4はM.MpeI酵素及びpUC19プラスミドDNAによるAdoHcy-6-アジド(異性体II)対b-Ala-AdoHcy-6-アジド(異性体II)の保護アッセイの結果を示す。AdoHcy-6-アジド及びb-Ala-AdoHcy-6-アジドの濃度は250~31.25μMであった。レーン1~4:AdoHcy-6-アジドの連続希釈;レーン5:制限酵素の対照-pUC19はAdoHcy-6-アジド(250μM)の存在下で完全に消化された;レーン6~9:b-Ala-AdoHcy-6-アジドの連続希釈;レーン10:制限酵素の対照-pUC19はb-Ala-AdoHcy-6-アジド(250μM)の存在下で完全に消化された;レーン11~12:陽性対照、AdoMetの完全な保護;レーン13:陰性対照、補因子なし;レーン14:陰性対照、酵素及び補因子なし。
【0311】
発明者等は驚くべきことに、R
3が、酵素の補因子結合ポケット内に位置し、電子豊富な水素結合受容基で終わる短くフレキシブルなアルキル鎖(C
1~C
4)である場合、酵素(M.MpeI)-補因子の対の活性が、非修飾(R
2=R
3=H)補因子類似体と比べて改善したことを見出した。実際に、R
3がC
2アルキルであり、R
4が-OHである場合(
図2)、発明者等はほぼ半量の補因子を用いてDNAアルキル化効率が同様であることを見出した。更に、DNAアルキル化の程度は、非修飾(R
2=R
3=H)補因子類似体で可能であるよりも全体的な効率が高い方向に向かい得る。R
3がC
2アルキルであり、R
4が-C(O)OHである場合(
図3、4)、全体的なDNAトランスアルキル化効率の同様の強化も認められた。結果として、所与のメチルトランフェラーゼ酵素の補因子結合ポケット内での利用可能なアミノ酸への水素結合を可能にする、R
2又はR
3での修飾を有する補因子から同様の挙動が見られることが期待される。このような基は典型的には、中性pHで水素結合受容体(例えばアルコール、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、チオール)として作用することができる短くフレキシブルなアルキル鎖及び小さい末端官能基を有する。
【0312】
(実施例4)
式(I)の化合物を利用する方法
ゲノムDNAの蛍光標識/光学マッピング
蛍光DNA標識は、所与のメチルトランスフェラーゼによって導入されたDNA配列の標識パターンを視覚化するために長い(最大数百キロの塩基対)ゲノムDNA分子の直線化と組み合わせられ得る。
【0313】
1倍のCutSmart緩衝液(NEB社)、10μgのゲノムDNA、0.9μgのTaqI DNAメチルトランスフェラーゼ(M.TaqI)及び750μMの補因子類似体を含有する200μLの溶液を調製し、50℃で1時間インキュベートした。その後、5μlの18mg/mlプロテイナーゼK(NEB社)/0.1%トリトンX-100(Sigma-Aldrich社)を添加し、これを50℃で1時間インキュベートした後、GenEluteバクテリア用ゲノムDNAキット(Sigma-Aldrich社)によって精製した。DNAを200μLのTE緩衝液(10mMトリス、1mM EDTA)中に溶出した。それと同時に、0.5倍のリン酸緩衝生理食塩水(Sigma-Aldrich社)、10μLのDMSO、1mMジベンジルシクロオクチンアミン(Sigma-Aldrich社)及び12.5mM Atto 647N-NHSエステル(Sigma-Aldrich社)を含有する20μLの溶液を4℃で1時間インキュベートした。DNA試料を30μlのアリコートに分割し、Atto 647Nを含有する10μlの混合物をアリコートに添加した。この混合物を室温で一晩インキュベートした後、GenEluteバクテリア用ゲノムDNAキットによって精製し、50μlのTE緩衝液(10mMトリス、1mM EDTA)中に溶出した。
【0314】
分子コーミング
DNAの分子コーミングをDeen等(Deen,J.、Sempels,W.、De Dier,R.、Vermant,J.、Dedecker,P.、Hofkens,J.及びNeely,R.K.(2015)Combing of Genomic DNA from Droplets Containing Picograms of Material. ACS Nano、9、809~816頁.)によって記載された手順に基づき行った。ガラスカバースリップ(ホウケイ酸ガラスNo.1、Thermo Fisher社)を清浄にして、炉オーブン中450℃で24時間のインキュベーションにより何らかの蛍光汚染物を除去した。炉から取り出し、冷却させた後、30μlのZeonex溶液(Zeon Chemicals社、クロロベンゼン中1.5%w/v溶液Zeonex 330R)をスピンコーター(Ossila社)上のカバースリップに堆積させ、その後3000rpmで90秒間回転させた。Zenoexでコーティングされたカバースリップを室温で一晩乾燥させ、デシケーターに貯蔵した。
【0315】
分子コーミングを行うために、2μlのAtto 647N-標識DNA(上記のように調製した)(1倍のTE中2ng/μl)を、1μlのDMSOを含有する17μlの100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.7)に懸濁した。この溶液の1.5μlの液滴をZenoexでコーティングされたカバースリップの表面に堆積させた。清浄なピペットチップを液滴と接触させ、該ピペットチップを使用して、液滴をカバースリップ全体にわたって約5mm/分の速度で動かした。
【0316】
蛍光顕微鏡法
堆積させたDNAを、Nikon 100倍TIRF対物レンズを備えたASI RAMM顕微鏡で撮像した。照明はクワッドバンドダイクロイックミラー(405/488/561/635)を介した100mW OBIS 640nm CWレーザーによるものであり、画像をクワッドバンド放出フィルター(Semrock社、432/515/595/730nm)を介したEvolve Delta EM-CCDカメラを用いて収集した。マイクロマネージャーを使用してシステムを制御し、試料(17)をスキャンした。
【0317】
DNAバーコード抽出、ペアワイズアラインメント及びコミュニティ検出
ソフトウェアを、顕微鏡像からのDNAバーコードの自動抽出、DNAバーコードのin silico生成及びアラインメント手順についてMATLAB(R2016b、The Mathworks, Inc.社、Natick, Massachusetts, United States of America)で書いた。
【0318】
上記実施例は、AdoMet類似体とプラスミドDNAとの相互作用を実証するが、他の生体分子(RNA、タンパク質、小分子等)を式(I)のAdoMet類似体及び適当なメチルトランスフェラーゼを用いてアルキル化することができることが理解されるであろう(例えば、Angew. Chem. Ind. 2017 (56) 5182~5200頁を参照のこと)。
【国際調査報告】