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特表2024-535414バッテリーパック、並びに当該バッテリーパックを含むESS及び自動車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】バッテリーパック、並びに当該バッテリーパックを含むESS及び自動車
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/35 20210101AFI20240920BHJP
   H01M 50/30 20210101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M50/35 201
H01M50/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518903
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 KR2022021125
(87)【国際公開番号】W WO2023128474
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0188646
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0188747
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スン-ゴン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】スン-ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-フ・オ
(72)【発明者】
【氏名】スン-ミン・オク
(72)【発明者】
【氏名】サン-ヒョン・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-ボム・チョ
【テーマコード(参考)】
5H012
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB08
5H012CC03
5H012CC09
(57)【要約】
本発明の一実施形態によるバッテリーパックは、第1方向に沿って配置される複数のバッテリーモジュールを含むモジュール集合体と、前記第1方向に沿って延び、前記モジュール集合体の一側をカバーするように構成されるパックカバーと、前記モジュール集合体と前記パックカバーとの間に形成される空間内で前記第1方向に沿って互いに離隔して配置され、前記第1方向に沿って移動する流体の流れを遅延させるように構成される複数の遅延部材と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って配置される複数のバッテリーモジュールを含むモジュール集合体と、
前記第1方向に沿って延び、前記モジュール集合体の一側をカバーするように構成されるパックカバーと、
前記モジュール集合体と前記パックカバーとの間に形成される空間内で前記第1方向に沿って互いに離隔して配置された遅延部材であって、前記第1方向に沿って移動する流体の流れを遅延させるように構成される複数の前記遅延部材と、
を含む、バッテリーパック。
【請求項2】
複数の前記遅延部材は、
複数の前記バッテリーモジュールの少なくとも一部で発生した熱イベントによって排出されるベントガス及びスパーク物質の流れを遅延させるように構成することを特徴とする、請求項1に記載のバッテリーパック。
【請求項3】
複数の前記遅延部材は、
複数の前記バッテリーモジュールの少なくとも一部で発生した熱イベントによって排出されるベントガス及びスパーク物質のうち、前記ベントガスの前記第1方向に沿う移動は許容し、前記スパーク物質の前記第1方向に沿う移動は少なくとも部分的に遮断するように構成することを特徴とする、請求項1に記載のバッテリーパック。
【請求項4】
複数の前記バッテリーモジュールのそれぞれは、
前記パックカバーと対向する一側に形成され、熱イベントによって発生するベントガス及びスパーク物質が排出されるように構成される排出部を備えることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリーパック。
【請求項5】
前記バッテリーパックは、
前記モジュール集合体と前記パックカバーとの間に形成される空間を、前記バッテリーパックの前記第1方向の端部で外部と連通するように構成される開放部を備えることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリーパック。
【請求項6】
複数の前記遅延部材のうちの少なくとも1つは、
前記排出部と対応する位置に備えることを特徴とする、請求項4に記載のバッテリーパック。
【請求項7】
複数の前記遅延部材のうちの少なくとも1つは、
前記第1方向に沿って互いに離隔する一対の遅延プレートを含むことを特徴とする、請求項6に記載のバッテリーパック。
【請求項8】
前記一対の遅延プレートは、
前記一対の遅延プレートの間に形成される流路が前記排出部から前記パックカバーに向かう方向に沿って徐々に広がるように互いに反対方向に傾いた形状を有することを特徴とする、請求項7に記載のバッテリーパック。
【請求項9】
前記一対の遅延プレートは、
前記一対の遅延プレートの間に形成される流路が前記第1方向に向かうように、同一の方向に傾いた形状を有することを特徴とする、請求項7に記載のバッテリーパック。
【請求項10】
前記一対の遅延プレートのそれぞれは、
前記パックカバーに向かう一端部と前記パックカバーとの間、及び前記モジュール集合体に向かう他端部と前記モジュール集合体との間の両方が開放されるように構成することを特徴とする、請求項7に記載のバッテリーパック。
【請求項11】
前記一対の遅延プレートのそれぞれは、
前記パックカバーに向かう一端部と前記パックカバーとの間、及び前記モジュール集合体に向かう他端部と前記モジュール集合体との間のうち、一方は閉鎖され他方は開放されるように構成することを特徴とする、請求項7に記載のバッテリーパック。
【請求項12】
前記一対の遅延プレートのそれぞれは、
前記一端部が前記パックカバーから離隔するように構成することを特徴とする、請求項11に記載のバッテリーパック。
【請求項13】
前記一対の遅延プレートのうち一方の遅延プレートは、前記一端部と前記パックカバーとの間が閉鎖されるように構成され、前記一対の遅延プレートのうち他方の遅延プレートは、前記他端部と前記モジュール集合体との間が閉鎖されるように構成することを特徴とする、請求項11に記載のバッテリーパック。
【請求項14】
前記バッテリーパックは、
前記開放部をカバーするように構成され、メッシュ構造を有する開放部カバーを含むことを特徴とする、請求項5に記載のバッテリーパック。
【請求項15】
複数の前記遅延部材の少なくとも一部は、
少なくとも部分的にメッシュ構造を有するフィルタであることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリーパック。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のバッテリーパックを含む、ESS。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載のバッテリーパックを含む、自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーパック、並びに当該バッテリーパックを含むESS(energy storage system)及び自動車に関する。
【0002】
本出願は、2021年12月27日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0188646号、及び2021年12月27日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0188747に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ESS、電気自動車などのようなデバイスに適用されるバッテリーパックは、高出力及び高容量の実現が可能なリチウム二次電池が適用されたバッテリーモジュールを複数含む形態で製造することができる。電気自動車が要求するバッテリーパックの出力特性を満たし、高容量を実現するためには、1つのバッテリーモジュールに含まれるリチウム二次電池の数を増やすことができ、1つのバッテリーパックに含まれるバッテリーモジュールの数を増やすことができる。
【0004】
しかし、このように多くの数のリチウム二次電池を含むバッテリーパックの場合、火災及び爆発が発生すると、その被害がさらに大きくなるのは必至である。
【0005】
バッテリーパックで発生する火災は、バッテリーモジュールの内部に配置されたリチウム二次電池の異常温度上昇と内部ガス発生から始まる。リチウム二次電池の温度が異常上昇し、内部ガスの発生によってリチウム二次電池の内圧が一定レベル以上に上昇すると、リチウム二次電池にベント(venting)が発生し、これによりリチウム二次電池の外部に高温のガスが噴出され、また電極活物質とアルミニウム粒子などを含む高温のスパークが噴出される。
【0006】
バッテリーパックの使用上の安定性を確保するためには、イベント発生時にバッテリーパックの内圧がそれ以上上昇しないように、ベントガス(venting gas)をバッテリーパックの外部に迅速に排出しなければならない。しかし、ベントガスとともに高温のスパークがバッテリーパックの外部に排出される場合、ベントガス、高温のスパーク及び酸素が接触して火災が発生するおそれがある。
【0007】
したがって、バッテリーセルの内部のショートなどの異常現象によって熱イベント(thermal event)が発生しても、ベントガスをバッテリーパックの外部に迅速に排出させ、電極活物質及びアルミニウム粒子などを含む高温のスパークが外部に流出することは効果的に防止できる構造を有するバッテリーパックの開発が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、バッテリーパック内で熱イベントが発生したときに、ベントガスをバッテリーパックの外部に迅速に排出させることができ、また高温のスパーク物質が外部に流出することを効果的に防止できるように構成されたバッテリーパックを提供することを一目的とする。
【0009】
ただし、本発明が解決しようとする技術的課題は上記課題に限定されず、言及されていない他の課題については、以下に記載された発明の説明から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態によるバッテリーパックは、第1方向に沿って配置される複数のバッテリーモジュールを含むモジュール集合体と、前記第1方向に沿って延び、前記モジュール集合体の一側をカバーするように構成されるパックカバーと、前記モジュール集合体と前記パックカバーとの間に形成される空間内で前記第1方向に沿って互いに離隔して配置され、前記第1方向に沿って移動する流体の流れを遅延させるように構成される複数の遅延部材と、を含む。
【0011】
複数の前記遅延部材は、複数の前記バッテリーモジュールの少なくとも一部で発生した熱イベントによって排出されるベントガス及びスパーク物質の流れを遅延させるように構成され得る。
【0012】
複数の前記遅延部材は、複数の前記バッテリーモジュールの少なくとも一部で発生した熱イベントによって排出されるベントガス及びスパーク物質のうち、前記ベントガスの前記第1方向に沿う移動は許容し、前記スパーク物質の前記第1方向に沿う移動は少なくとも部分的に遮断するように構成され得る。
【0013】
複数の前記バッテリーモジュールのそれぞれは、前記パックカバーと対向する一側に形成され、熱イベントによって発生するベントガス及びスパーク物質が排出されるように構成される排出部を備えることができる。
【0014】
前記バッテリーパックは、前記モジュール集合体と前記パックカバーとの間に形成される空間を、前記バッテリーパックの前記第1方向の端部で外部と連通するように構成される開放部を備えることができる。
【0015】
複数の前記遅延部材のうちの少なくとも1つは、前記排出部と対応する位置に備えられ得る。
【0016】
複数の前記遅延部材のうちの少なくとも1つは、前記第1方向に沿って互いに離隔する一対の遅延プレートを含むことができる。
【0017】
前記一対の遅延プレートは、前記一対の遅延プレートの間に形成される流路が前記排出部から前記パックカバーに向かう方向に沿って徐々に広がるように互いに反対方向に傾いた形状を有することができる。
【0018】
前記一対の遅延プレートは、前記一対の遅延プレートの間に形成される流路が前記第1方向に向かうように、同一の方向に傾いた形状を有することができる。
【0019】
前記一対の遅延プレートのそれぞれは、前記パックカバーに向かう一端部と前記パックカバーとの間、及び前記モジュール集合体に向かう他端部と前記モジュール集合体との間の両方が開放されるように構成され得る。
【0020】
前記一対の遅延プレートのそれぞれは、前記パックカバーに向かう一端部と前記パックカバーとの間、及び前記モジュール集合体に向かう他端部と前記モジュール集合体との間のうち、一方は閉鎖され他方は開放されるように構成され得る。
【0021】
前記一対の遅延プレートのそれぞれは、前記一端部が前記パックカバーから離隔するように構成され得る。
【0022】
前記一対の遅延プレートのうち一方の遅延プレートは、前記一端部と前記パックカバーとの間が閉鎖されるように構成され、前記一対の遅延プレートのうち他方の遅延プレートは、前記他端部と前記モジュール集合体との間が閉鎖されるように構成され得る。
【0023】
前記バッテリーパックは、前記開放部をカバーするように構成され、メッシュ構造を有する開放部カバーを含むことができる。
【0024】
複数の前記遅延部材の少なくとも一部は、少なくとも部分的にメッシュ構造を有するフィルタであり得る。
【0025】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態によるESSは、上述したような本発明のバッテリーパックを含む。
【0026】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態による自動車は、上述したような本発明のバッテリーパックを含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によると、バッテリーパックの内部で熱イベントが発生したときに、ベントガスをバッテリーパックの外部に迅速に排出させることができ、また高温のスパーク物質がバッテリーパックの外部に流出することを効果的に防止することができる。
【0028】
ただし、本発明を通じて導き出される有利な効果は上述した効果に限定されず、言及されていない他の有利な効果は、以下に記載された発明の説明から当業者に明確に理解されるであろう。
【0029】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態によるバッテリーパックを示す。
図2図1に示されたバッテリーパックの内部構造を示す。
図3】本発明のバッテリーパックにおいて、熱イベントが発生したバッテリーモジュールから排出されたベントガスの流れを説明するための概念図である。
図4図1に示されたバッテリーパックにおいて、パックカバー及び遅延部材を除去した状態を示す。
図5図1に示されたバッテリーパックにおいて、モジュール集合体とパックカバーとの間における流体の流れを示す。
図6】本発明の一実施形態によるバッテリーモジュールを示す。
図7】本発明のバッテリーパックに形成される開放部を示す。
図8】本発明の遅延部材の配置位置及び配置角度を示す。
図9】本発明の遅延部材の配置位置及び配置角度を示す。
図10】本発明の遅延部材の配置位置及び配置角度を示す。
図11】本発明の開放部の形成位置及び遅延部材の配置形態を例示的に示す概念図である。
図12】本発明の遅延部材の配置による流路の形成位置を説明するための図である。
図13】本発明の遅延部材の配置による流路の形成位置を説明するための図である。
図14】本発明の遅延部材の配置による流路の形成位置を説明するための図である。
図15】本発明の開放部カバーの例示的な形態を示す。
図16】本発明の遅延部材がメッシュ構造を有するフィルタである場合を示す。
図17】本発明の一実施形態によるESSを示す。
図18】本発明の一実施形態による自動車を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲において使用される用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されるものではなく、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応じた意味及び概念で解釈されるものである。したがって、本明細書に記載された実施形態に示された構成は、本発明の最も望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを表すものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解されたい。
【0032】
図1から図3を参照すると、本発明の一実施形態によるバッテリーパック1は、モジュール集合体、パックカバー20及び複数の遅延部材30を含むことができる。前記モジュール集合体は、第1方向(X軸に平行な方向)に沿って配置される複数のバッテリーモジュール10を含むことができる。前記パックカバー20は、前記第1方向に沿って延び得る。前記パックカバー20は、モジュール集合体の一側をカバーするように構成され得る。複数の前記遅延部材30は、モジュール集合体とパックカバー20との間に形成される空間S(図3を参照)内に配置され得る。複数の前記遅延部材30は、前記空間S内で前記第1方向に沿って互いに離隔して配置され得る。複数の前記遅延部材30は、前記第1方向に沿って移動する流体の流れを遅延させるように構成され得る。
【0033】
上述したように構成された本発明のバッテリーパック1によると、複数のバッテリーモジュール10のうち少なくとも一部で発生した熱イベントによって、前記空間Sに排出される流体の移動を遅延することができる。これによって、隣接するバッテリーモジュール10に熱イベントが拡散することを遅延又は防止することができる。
【0034】
熱イベントによって排出される流体の排出圧力は非常に高いことがある。よって、熱イベントの発生によって排出される流体の移動速度を遅らせることができない場合、短い時間内に排出物質がバッテリーパックの外部にほとんど流出し、これによりバッテリーパック1の内部に外部の酸素が急速に流入することがある。このようにバッテリーパック1の内部に酸素が急速に供給される場合、バッテリーパック1の内部に残っていた高温の物質と酸素が接触して火災が発生するおそれがある。本発明のバッテリーパック1の構成によると、このように内部圧力の急激な低下を防止することができ、これによって酸素の逆流入による内部火災の発生を防止することができる。
【0035】
複数の前記遅延部材30は、複数のバッテリーモジュール10のうち少なくとも一部で発生した熱イベントによって排出されるベントガス及びスパーク物質の流れを遅延させるように構成され得る。前記スパーク物質は、二次電池内部の電極活物質及び金属(例:アルミニウム)を含むことができる。
【0036】
バッテリーパック1の内部で熱イベントが発生したときに生成され得る高温のベントガス及び高温のスパーク物質を含む流体が酸素と接触すると、発火の条件が満たされることがある。よって、このような熱イベントによって排出される流体の流れを遅延させることによって、熱イベントが拡散することを遅延又は防止することができる。
【0037】
複数の前記遅延部材30は、複数のバッテリーモジュール10のうち少なくとも一部で発生した熱イベントによって排出されるベントガス及びスパーク物質のうち、ベントガスの前記第1方向に沿う移動は許容し、スパーク物質の前記第1方向に沿う移動は少なくとも部分的に遮断するように構成され得る。
【0038】
バッテリーパック1の内部で熱イベントが発生するときに生成され得る高温のベントガス及び高温のスパーク物質のうち、ベントガスは気体であるためベントガスが外部に排出されることでバッテリーパック1の内圧が減少し得る。特に、前記ベントガスが外部に排出される時間が遅延されると、ベントガスの温度が下がり、これによってベントガスの排出による危険も低減することができる。一方、高温のスパーク物質は固相の物質であるため、遅延部材30の存在によってバッテリーパック1の外部への排出を大きく抑制することができる。これによって、バッテリーパック1の外部で高温のベントガスと高温のスパーク物質、及び十分な量の酸素が接触して火災を起こすことを防止することができる。
【0039】
図4及び図5を参照すると、複数の前記バッテリーモジュール10のそれぞれは、熱イベントが発生したときにベントガス及びスパーク物質が排出されるように構成される排出部P1を備えることができる。前記バッテリーモジュール10において、排出部P1は、パックカバー20と対向する一側に形成され得る。
【0040】
本発明の図面においては、前記バッテリーモジュール10の一側に形成された排出部P1のみを示しているが、これにより本発明が限定されるものではない。前記排出部P1は、バッテリーモジュール10の一側及び他側の両方に備えることもできる。このように前記排出部P1がバッテリーモジュール10の一側及びそれと反対側の他側の両方に備えられると、熱イベント時に排出部P1から排出される流体が移動できる空間Sを形成するために、パックカバー20もモジュール集合体の一側及び他側の両方に備えられ得る。
【0041】
前記バッテリーモジュール10の内部空間は、排出部P1を介してバッテリーモジュール10とパックカバー20との間に形成される前記空間Sと連通することができる。この場合、前記排出部P1を介してバッテリーモジュール10の外部に排出されたベントガスを、前記空間Sを介してバッテリーパック1の外部に迅速に排出することができる。
【0042】
一方、前記排出部P1は、熱イベント時にベントガスを排出させるためにバッテリーモジュール10に意図的に形成させるものであるか、又はバッテリーモジュール10の構造上不可避的に形成されたものであり得る。
【0043】
図6には、本発明のバッテリーモジュール10の例示的な形態が示されている。図5及び図6を参照すると、前記バッテリーモジュール10は、バッテリーセル100及びモジュールハウジング200を含むことができる。前記バッテリーセル100は複数備えられ得る。前記バッテリーセル100は、内部の電極組立体(図示せず)と電気的に接続する電極リード110を備えることができる。前記電極リード110は、例えば電極組立体から前記空間Sに向かう方向に延び得る。前記電極リード110は、一対で備えることができ、一対の電極リード110は、同一の方向又は互いに反対方向に延び得る。
【0044】
前記モジュールハウジング200は、少なくとも1つのバッテリーセル100を収容するように構成され得る。前記モジュールハウジング200は、少なくとも一側が開放された形状を有することができる。前記モジュールハウジング200の開放された一側を介して、モジュールハウジング200の内部空間は、バッテリーモジュール10とパックカバー20との間に形成される空間Sと連通することができる。前記モジュールハウジング200の開放された領域は、上述した排出部P1として機能することができる。
【0045】
前記バッテリーモジュール10は、モジュールハウジング200に形成された開放領域をカバーするように構成されるカバーフレーム300を含むことができる。前記カバーフレーム300は、バッテリーセル100に備えられた電極リード110が通過できるように構成されたリード通過部を備えることができる。前記バッテリーセル100が複数備えられる場合、互いに隣接するバッテリーセル100のそれぞれの電極リード110は、1つのリード通過部又はそれぞれ互いに異なるリード通過部を通過することができる。前記リード通過部を通過した複数の電極リード110は、互いに電気的に接続することができる。このような電極リード110の間の電気的接続は、例えば電極リード110の間の溶接又は別途のバスバー(busbar)により行うことができる。
【0046】
本発明のバッテリーモジュール10が上述したようにカバーフレーム300を備える場合、本発明の排出部P1は、カバーフレーム300に形成されたリード通過部と電極リード110との間に形成される間隙を含むことができる。すなわち、1つ又は複数のバッテリーセル100のベントによって排出されたベントガス及びスパーク物質は、前記間隙を介して前記空間Sに流入し得る。一方、バッテリーモジュール10の内部で熱イベントによる高温のベントガス及びスパーク物質が発生した場合、カバーフレーム300が損傷することがある。この場合、ベントガス及びスパーク物質が排出される空間が拡張され得る。
【0047】
図5及び図7を参照すると、前記バッテリーパック1は、モジュール集合体とパックカバー20との間に形成される空間Sをバッテリーパック1の第1方向(X軸に平行な方向)の端部で外部と連通するように構成される開放部P2を備えることができる。前記開放部P2は、パックカバー20の延長方向(X軸に平行な方向)の一側にのみ形成されるか、又は両側に形成されることもできる。
【0048】
本発明のバッテリーパック1は、少なくとも1つの前記開放部P2を備えることにより、モジュール集合体に含まれる複数のバッテリーモジュール10のうち少なくとも一部で発生した熱イベントによって前記空間S内に流入したベントガスを前記空間Sの延長方向に沿って迅速に排出することができる。
【0049】
前記開放部P2は、図7に示されたように、パックカバー20の一面上に形成される複数の孔を含むことができる。ただし、本発明がこれに限定されるのではなく、モジュール集合体とパックカバー20との間の空間Sに流入したベントガスが空間Sの延長方向(X軸に平行な方向)に沿って移動し、バッテリーパック1の外部に排出されるように構成されたものでれば本発明の開放部P2として機能することができる。
【0050】
図5及び図8を参照すると、複数の前記遅延部材30のうち少なくとも1つは、バッテリーモジュール10に備えられた排出部P1と対応する位置に備えられ得る。前記遅延部材30が排出部P1と対応する位置に備えられる場合、バッテリーモジュール10から排出される流体の移動方向及び排出速度を制御することができる。複数の前記遅延部材30のうち少なくともいずれか1つは、第1方向(X軸に平行な方向)に沿って互いに離隔する一対の遅延プレート31を含むことができる。前記一対の遅延プレート31は、それぞれ排出部P1の一側及び他側に位置し得る。
【0051】
本発明の図8においては、平面(X-Y平面と平行な面)上で遅延プレート31がバッテリーモジュール10及びパックカバー20の両方に接する場合のみを示しているが、本発明がこれに限定されるのでない。前記遅延プレート31は、バッテリーモジュール10及び/又はパックカバー20と接することもでき、離隔することもできる。
【0052】
また、前記遅延プレート31が、平面(X-Y平面)上で見るときにバッテリーパック1及びパックカバー20の両方と接していても、モジュール集合体とパックカバー20との間に形成される空間S(図5を参照)内で第1方向(X軸に平行な方向)に沿ってベントガスが移動できる通路が形成されていれば、本発明の最低限の目的は達成可能である。例えば、このようなベントガスの移動通路は、遅延プレート31自体に形成された孔及び/又はスリットなどであり得る。それ以外にも、前記ベントガスの移動通路は、前記空間Sの天井と遅延プレート31との間、及び/又は前記空間Sの底と遅延プレート31との間にも形成可能である。
【0053】
図5及び図9を参照すると、前記一対の遅延プレート31は、平面(X-Y平面と平行な面)上で見るとき、互いに反対方向に傾いた形状を有することができる。例えば、前記一対の遅延プレート31は、一対の遅延プレート31の間に形成される流路が排出部P1からパックカバー20に向かう方向に沿って徐々に広がるように互いに反対方向に傾いた形状を有することができる。前記遅延部材30がこのように構成された場合、排出部P1から排出される流体の流速が減少することができる。一方、本発明において、遅延プレート31が傾いた形状を有するとは、排出部P1からパックカバー20に向かう方向(Y軸に平行な方向)を基準として所定の角度で傾いた形状を有することを意味し得る。
【0054】
図5及び図10を参照すると、前記一対の遅延プレート31は、互いに同一の方向に傾いた形状を有することができる。例えば、前記一対の遅延プレート31は、一対の遅延プレート31の間に形成される流路が第1方向(X軸に平行な方向)に向かうように同一の方向に傾いた形状を有することができる。この場合、排出部P1から排出される流体の流れが開放部P2に向かうか、又は開放部P2の反対方向に向かうように制御でき、これにより、必要に応じてベントガスの排出円滑性の向上効果、及び/又はスパーク物質の排出抑制効果を最大限に高めることができる。
【0055】
次いで、図5図10、及び図11を参照すると、本発明の開放部P2は、モジュール集合体の一側とパックカバー20との間に形成された空間S(以下、第1空間という)の延長方向の一側、及びモジュール集合体の他側とパックカバー20との間に形成された空間S(以下、第2空間という)の延長方向の他側のそれぞれに備えられ得る。この場合、第1空間Sと直接連通する開放部P2(以下、第1開放部という)、及び第2空間Sと直接連通する開放部P2(以下、第2開放部という)のいずれか一方は、バッテリーパック1の冷却のための冷却流体(例えば、冷却空気)の流入のための通路として機能することができ、他方は冷却流体の流出のための通路として機能することができる。例えば、冷却ファン(図示せず)の駆動に応じて第1開放部P2から第2開放部P2に向かう方向又はその反対方向に空気の流れを形成することができ、これによって冷却空気がバッテリーパック1の内部に流入され、内部のモジュール集合体と熱交換された後に外部に流出することができる。しかし、正常な使用状態でなく熱イベントが発生した状況では、冷却のための装置の駆動を止めることができ、この場合、第1開放部P2及び第2開放部P2の両方はベントガスの排出のための通路として機能することができる。よって、前記第1空間S内に配置される遅延部材30を第1開放部P2に向かう方向に傾いた形状に配置し、第2空間S内に配置される遅延部材30を第2開放部P2に向かう方向に傾いた形状に配置することで、ベントガスの排出をさらに円滑にすることができる。これとは反対に、前記第1空間S内に配置される遅延部材30を第1開放部P2の反対方向に向かって傾いた形状に配置し、第2空間S内に配置される遅延部材30を第2開放部P2の反対方向に向かって傾いた形状に配置することで、ベントガスの流れを遅延し、スパーク物質の排出を抑制することも可能である。
【0056】
次いで、図12を参照すると、前記一対の遅延部材30のそれぞれは、パックカバー20に向かう一端部とパックカバー20との間、及びモジュール集合体に向かう他端部とモジュール集合体との間の両方が開放されるように構成され得る。
【0057】
これとは異なり、前記一対の遅延プレート31のそれぞれは、パックカバー20に向かう一端部とパックカバー20との間、及びモジュール集合体に向かう他端部とモジュール集合体との間のうち、一方は閉鎖され他方は開放されるように構成することもできる。図13を参照すると、前記一対の遅延プレート31のそれぞれは、特にパックカバー20に向かう一端部がパックカバー20から離隔するように構成され得る。この場合、排出部P1を介して排出される流体の前記第1方向(X軸に平行な方向)に沿う流れがパックカバー20に隣接する領域で生じられ、これにより熱イベントが発生したバッテリーモジュール10から排出された高温のベントガス及びスパーク物質が移動する過程で他のバッテリーモジュール10に及ぼす影響を最小化することができる。
【0058】
図14を参照すると、1つの遅延部材30に含まれる一対の遅延プレート31のいずれか一方は、その一端部とパックカバー20との間は閉鎖され、その他端部とモジュール集合体との間は開放されるように構成され、いずれか他方は、その一端部とパックカバー20との間は開放され、その他端部とモジュール集合体との間は閉鎖されるように構成され得る。この場合、前記第1方向(X軸に平行な方向)に沿う流体の流れにおける移動距離の増大効果を最大限に高めることができる。このような流体の移動距離の増大は、流体の排出遅延による外部酸素の流入抑制効果、並びにベントガス及びスパーク物質の温度減少効果を最大限に高めることができる。
【0059】
図15を参照すると、前記バッテリーパック1は、開放部P2をカバーするように構成される開放部カバー40を含むことができる。前記開放部カバー40は、例えばメッシュ(mesh)構造を有することができる。前記メッシュ構造は、ベントガスは通過でき、スパーク物質に含まれた粒子は通過できないように構成され得る。前記開放部カバー40がこのようにメッシュ構造を有する場合、空間S内で一次的にフィルタリングされたスパーク物質が開放部P2で二次的にフィルタリングされ、バッテリーパック1の外部に流出するスパーク物質の低減効果を最大限に高めることができる。このように開放部カバー40のメッシュ構造によってスパーク物質がフィルタリングされる場合、メッシュ構造を形成する個々の小さな孔がスパーク物質により詰まり、これにより外部からの酸素流入遮断効果がさらに向上することができる。一方、気体のベントガスの移動速度はスパーク物質の移動速度と比較してさらに速いため、上述したようにメッシュ構造を形成する孔がスパーク物質により詰まる時点は、ベントガスの排出によって内部圧力が十分に減少した時点後であり得る。
【0060】
図16を参照すると、複数の遅延部材30のうち少なくとも一部は、少なくとも部分的にメッシュ構造を有するフィルタであり得る。例えば、前記遅延部材30に含まれる一対の遅延プレート31のうち少なくとも一方は、上述したようなメッシュ構造を有するフィルタであり得る。前記遅延部材30がこのように構成される場合、スパーク物質のフィルタリング効果をさらに高めることができ、これによって、バッテリーパック1の外部に高温のスパーク物質が排出されて火災が発生する危険をさらに低減することができる。
【0061】
図17を参照すると、本発明の一実施形態によるESS3は、本発明によるバッテリーパック1を含む。前記ESS3は、例えば複数のバッテリーパック1、及び内部に複数のバッテリーパック1を積層できるように構成されたラックハウジング2を含むバッテリーシステムを含むことができる。前記ESS3は、このようなバッテリーシステムを1つ又は複数含むことができる。
【0062】
図18を参照すると、本発明の一実施形態による自動車5は、本発明によるバッテリーパック1を含む。前記自動車5は、1つ又は複数のバッテリーパック1によって電力を受けて駆動されるように構成され得る。前記自動車5は、例えば電気自動車(EV)又はハイブリッド電気自動車(HEV)であり得る。
【0063】
以上で本発明を限定された実施形態及び図面によって説明したが、本発明はこれによって限定されず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって、本発明の技術思想と以下に記載される特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1:バッテリーパック
2:ラックハウジング
3:ESS(Energy storage system)
5:自動車
10:バッテリーモジュール
P1:排出部
100:バッテリーセル
110:電極リード
200:モジュールハウジング
300:カバーフレーム
20:パックカバー
P2:開放部
30:遅延部材
31:遅延プレート
40:開放部カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】