(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】シュープレスロールスリーブ
(51)【国際特許分類】
D21F 3/02 20060101AFI20240920BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240920BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240920BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20240920BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
D21F3/02 Z ZAB
C08G18/76 057
C08G18/48 054
C08G18/44
C08G18/32 006
C08G18/32 025
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519043
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2022075333
(87)【国際公開番号】W WO2023052120
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】102021125037.4
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーヌ デルマ
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ マトゥシュツィック
【テーマコード(参考)】
4J034
4L055
【Fターム(参考)】
4J034BA06
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CC03
4J034CC12
4J034CC61
4J034CC67
4J034CD13
4J034DF02
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB03
4J034QB14
4J034RA11
4L055CE79
4L055EA32
4L055FA30
(57)【要約】
本発明は、イソシアネートとしての4,4’-MDIと、少なくとも1つのポリオールと、少なくとも1つの架橋剤とから実質的に形成されているポリウレタンマトリックス材料を含む、紙ウェブ、厚紙ウェブまたは薄葉紙ウェブのような繊維質ウェブの製造および/または仕上げ加工用機械のシュープレスロールスリーブにおいて、ポリウレタンマトリックス材料の少なくとも20重量%がバイオベースであり、少なくとも1つのポリオールおよび少なくとも1つの架橋剤が、以下の組み合わせのうちの1つから選択される、シュープレスロールスリーブに関する:a)ポリオールとしてのPTMEG、および架橋剤としてのMCDEAとPTMEGとの混合物、ここで、ポリオールおよび架橋剤中のPTMEGは、バイオベースである;b)ポリオールとしてのポリカーボネート、および架橋剤としてのMCDEAとポリカーボネートポリオールとの混合物、ここで、架橋剤中のポリカーボネートポリオールは、バイオベースである;c)ポリオールとしてのポリカーボネートポリオールとPTMEGとの混合物、および架橋剤としての1,4-BDO、ここで、ポリオール中のポリカーボネートポリオールは、バイオベースである;d)ポリオールとしてのPTMEG、および架橋剤としてのPTMEGとMCDEAとの混合物、ここで、イソシアネート中の4,4’-MDIおよびポリオール中のPTMEGは、バイオベースである。さらに本発明は、該シュープレスロールスリーブを備えたシュープレス、ならびに該シュープレスを備えた繊維質ウェブの製造および/または仕上げ加工用機械に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネートとしての4,4’-MDIと、少なくとも1つのポリオールと、少なくとも1つの架橋剤とから実質的に形成されているポリウレタンマトリックス材料を含む、紙ウェブ、厚紙ウェブまたは薄葉紙ウェブのような繊維質ウェブの製造および/または仕上げ加工用機械のシュープレスロールスリーブにおいて、
前記ポリウレタンマトリックス材料の少なくとも20重量%がバイオベースであり、前記少なくとも1つのポリオールおよび前記少なくとも1つの架橋剤が、以下:
a)ポリオールとしてのPTMEG、および架橋剤としてのMCDEAとPTMEGとの混合物、ここで、前記ポリオールおよび前記架橋剤中の前記PTMEGは、バイオベースである;
b)ポリオールとしてのポリカーボネート、および架橋剤としてのMCDEAとポリカーボネートポリオールとの混合物、ここで、前記架橋剤中の前記ポリカーボネートポリオールは、バイオベースである;
c)ポリオールとしてのポリカーボネートポリオールとPTMEGとの混合物、および架橋剤としての1,4-BDO、ここで、前記ポリオール中の前記ポリカーボネートポリオールは、バイオベースである;
d)ポリオールとしてのPTMEG、および架橋剤としてのPTMEGとMCDEAとの混合物、ここで、前記イソシアネート中の前記4,4’-MDIおよび前記ポリオール中の前記PTMEGは、バイオベースである
の組み合わせのうちの1つから選択されることを特徴とする、シュープレスロールスリーブ。
【請求項2】
前記ポリウレタンマトリックス材料の少なくとも50重量%がバイオベースであることを特徴とする、請求項1記載のシュープレスロールスリーブ。
【請求項3】
前記ポリウレタンマトリックス材料中のイソシアネートとしての前記4,4’-MDIが、請求項1においてバイオベースと記載されていない場合に石油ベースであることを特徴とする、請求項1または2記載のシュープレスロールスリーブ。
【請求項4】
前記ポリウレタンマトリックス材料中の前記少なくとも1つのポリオールが、請求項1においてバイオベースと記載されていない場合に石油ベースであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のシュープレスロールスリーブ。
【請求項5】
前記ポリウレタンマトリックス材料中の前記少なくとも1つの架橋剤が、請求項1においてバイオベースと記載されていない場合に石油ベースであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のシュープレスロールスリーブ。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載のシュープレスロールスリーブを備えた、紙ウェブ、厚紙ウェブまたは薄葉紙ウェブのような繊維質ウェブの製造および/または仕上げ加工用機械のシュープレス。
【請求項7】
請求項6記載のシュープレスを備えた、紙ウェブ、厚紙ウェブまたは薄葉紙ウェブのような繊維質ウェブの製造および/または仕上げ加工用機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネートとしての4,4’-MDIと、少なくとも1つのポリオールと、少なくとも1つの架橋剤とから実質的に形成されているポリウレタンのマトリックス材料を含む、紙ウェブ、厚紙ウェブまたは薄葉紙ウェブのような繊維質ウェブの製造および/または仕上げ加工用機械のシュープレスロールスリーブに関する。本発明はまた、該シュープレスロールスリーブを備えたシュープレス、および該シュープレスを備えた繊維質ウェブの製造および/または仕上げ加工用機械に関する。
【0002】
こうしたタイプのシュープレスロールスリーブは、例えば欧州特許出願公開第2248944号明細書から公知である。
【0003】
この文脈において、「実質的に」という用語は、ポリウレタンマトリックス材料が、言及された出発材料に加えて、少なくとも1つの架橋剤のためのまたは少なくとも1つの架橋剤中の少量の触媒のような、少量の他の材料も含み得ることを意味する。しかし、これらの他の材料は、全出発材料の有利には8重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満、なおもさらに好ましくは2重量%未満を占める。
【0004】
シュープレスには、製紙産業において多くの用途がある。例えば、シュープレスは、薄葉紙ウェブをプレスフェルトからヤンキーシリンダーの表面に移すのに使用できる。シュープレスは、特にその拡張されたプレスニップを特徴とし、このプレスニップにより、通常であれば繊維質ウェブの厚さに悪影響を及ぼす大きなピーク圧力を繊維質ウェブにかけることなく、効率的に繊維質ウェブをプレスすることが可能となる。
【0005】
拡張されたプレスニップを達成可能にするためには、ロールに加えて、ロールに押し付けることができ、その表面がロールの曲率に適合した凹状の曲率を有するシューが必要である。通常の運転では、回転するシュープレスロールスリーブがシューの上方で案内される。これは連続チューブであり、回転時の凹状の曲率と凸状の曲率との間での一定の交互の曲げ負荷に耐え得るようにするために、十分に可撓性となるように形成されている必要がある。シュープレスロールスリーブは、通常の使用時に非常に高い応力に曝され、この応力により摩耗が生じるため、定期的な交換が必要となる。
【0006】
公知のシュープレスロールスリーブは、主にポリウレタン製であり、このポリウレタンは、通常、補強糸などが埋め込まれたマトリックス材料を形成している。このように消費されるポリウレタンの量はかなり多い。利用後、シュープレスロールスリーブは通常、熱利用されるかあるいは焼却される。これは環境保護の観点からは最善とはいえない。
【0007】
公知のシュープレススリーブをシュープレスロールスリーブのマトリックス材料としての使用にとって重要な様々な特性に関してさらに改良する努力もなされている。これは特に、以下の特性のうちの1つ以上であり得る:耐亀裂性(亀裂伝播性)、耐引裂伝播性、tanデルタ、加水分解後の10%伸長時の力、破断応力、破断伸度、耐摩耗性、および液体媒体中に保存した際の重量増加。
【0008】
したがって、本発明の課題は、上述の課題に対処すること、特に脱炭素に貢献することである。同時に、シュープレスロールスリーブの運転に関連する特性に悪影響を及ぼさず、有利にはさらにこれを改善することが望ましい。
【0009】
この課題は、冒頭に記載したタイプのシュープレスロールスリーブにおいて、ポリウレタンマトリックス材料の少なくとも20重量%がバイオベースであり、少なくとも1つのポリオールおよび少なくとも1つの架橋剤が、以下:
a)ポリオールとしてのPTMEG、および架橋剤としてのMCDEAとPTMEGとの混合物、ここで、ポリオールおよび架橋剤中のPTMEGは、バイオベースである;
b)ポリオールとしてのポリカーボネート、および架橋剤としてのMCDEAとポリカーボネートポリオールとの混合物、ここで、架橋剤中のポリカーボネートポリオールは、バイオベースである;
c)ポリオールとしてのポリカーボネートポリオールとPTMEGとの混合物、および架橋剤としての1,4-BDO、ここで、ポリオール中のポリカーボネートポリオールは、バイオベースである;
d)ポリオールとしてのPTMEG、および架橋剤としてのPTMEGとMCDEAとの混合物、ここで、イソシアネート中の4,4’-MDIおよびポリオール中のPTMEGは、バイオベースである
の組み合わせのうちの1つから選択されることにより解決される。
【0010】
ここで、「バイオベース」という用語は、材料が、石油ベースではなく再生可能な原料から製造されることを意味する。本発明による完成品は、材料に含まれる炭素の何パーセントが14C同位体タイプであるかを放射性炭素年代測定法によって決定することができるため、従来のシュープレススリーブと区別することができる。この炭素同位体は、放射性崩壊を起こすという点で不安定なものである。そのため、これは石油中にはほとんど存在しない。したがって、例えばASTM D6866に準拠した標準化試験法を用いて、材料中の炭素原子の全割合に対するバイオベースの炭素原子の割合を決定することは比較的容易に可能である。
【0011】
少なくとも部分的にバイオベースである出発材料からポリウレタンを製造すること自体は既に知られているが、このことは、シュープレスロールスリーブについて具体的に検討されたことはまだない。例えば、国際公開第2021/074492号には、ロールカバーが再生された出発材料から製造でき、選択的にバイオベースの出発材料からも製造できることが記載されている。驚くべきことに、本発明者らは、ポリウレタンマトリックスのバイオベースの出発材料に基づいて、従来の石油ベースの出発材料を用いた場合と同等あるいは同一の機械的特性を有するシュープレスロールスリーブを製造できるだけでなく、少なくともいくつかの特別な組成については、シュープレススリーブの機械的特性を改善もできることを見出した。この正確な理由はまだ明らかではないが、試験によってこれについて明らかな結果が得られている。
【0012】
このように、本発明は、シュープレスロールスリーブの焼却時に放出されるCO2が少なくとも部分的に植物によって再吸収され、それが次いで新たなシュープレスロールスリーブの製造に使用されるため、シュープレスロールスリーブの製造におけるCO2収支を改善することが可能になるだけでなく、本発明はさらに、本発明によるシュープレスロールスリーブの機械的特性に好影響を与えることができる可能性も提供する。
【0013】
有利には、ポリウレタンマトリックス材料の少なくとも50重量%がバイオベースである。さらに、シュープレススリーブを完全にバイオベースの出発材料から製造することも考えられる。
【0014】
この場合、ポリウレタンマトリックス材料中のイソシアネートとしての4,4’-MDIは、本発明によりバイオベースであると明示されない限り、石油ベースであることができる。
【0015】
また、ポリウレタンマトリックス材料中の少なくとも1つのポリオールも、本発明によりバイオベースであると明示されない限り、石油ベースであることができる。
【0016】
さらに、ポリウレタンマトリックス材料中の少なくとも1つの架橋剤も、本発明によりバイオベースであると明示されない限り、石油ベースであることができる。
【0017】
以下では、バイオベースであると明示されていない出発物質は、油ベースであるものとする。
【0018】
本発明によるシュープレススリーブのポリウレタンマトリックス組成物の第1の具体的な実施形態例では、ポリマーマトリックスのポリウレタンが、イソシアネートとしての4,4’-MDIと、ポリオールとしてのPTMEGと、架橋剤としてのMCDEAとPTMEGとの混合物とから形成されており、ポリオールおよび架橋剤中のPTMEGがバイオベースであることが提供される。ここで、MCDEAは、4,4’-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)を表す。
【0019】
以下では、この組成物(表1Aの最終行)を、純粋に石油をベースとする出発材料から構成された対応する組成物(表1Aの最後から2番目の行)と比較する。
【0020】
【0021】
対応するキャスティング試料の試験により、バイオベースの出発物質から製造されたポリウレタン(表1Bの最終行)が、シュープレスロールスリーブのマトリックス材料としての使用にとって重要な様々な特性に関して、石油ベースのマトリックス材料から製造された対応する比較材料(表1Bの最後から2番目の行)と有利に異なることが判明した。
【0022】
【0023】
「亀裂伝播性[mm]」という特性は、規格化された試料に狙いどおりに切り欠きを入れてから、その切り欠きの位置で試験装置を使用して100万回の曲げサイクルを行った試験の結果である。その後、亀裂が切り欠きの位置でどの程度拡大したかを測定する。この値が小さいほど、ポリウレタンはシュープレスロールスリーブのマトリックス材料としてより適している。第1の実施形態例では、バイオベースのポリウレタンでは亀裂がまったく伝播していないのに対し、石油ベースのポリウレタンでは0.6mm広がっていることがわかる。
【0024】
「引裂伝播抵抗性」とは、規格DIN 53515に記載されている試験の結果であり、この試験では、切れ目を入れた試料が引裂伝播に抵抗する力を測定する。この場合、また、エネルギーに相当する応力-ひずみ線図の曲線下の面積(または積分値)も求めることができる。それぞれの値が大きいほど、ポリウレタンはシュープレスロールスリーブのマトリックス材料としてより適している。第1の実施形態例では、バイオベースのポリウレタンから製造された試料の値が、石油ベースのポリウレタンから製造された比較試料の値よりも高いことがわかる。
【0025】
レオロジーにおける「tanデルタ」という特性は、損失係数であり、損失弾性率G’’(虚数部)と貯蔵弾性率G’(実数部)との比をtanデルタ=G’’/G’として表したものである。損失係数が高いほど、試料の挙動はニュートン流体挙動を持つ理想的な粘性液体の挙動に近づく。損失係数が低いほど、試料の挙動は理想的な弾性固体の挙動により一致する。後者は、シュープレスロールスリーブのマトリックス材料にとって望ましい。第1の実施形態例において、バイオベースポリウレタンでは、tanデルタの値が、20℃でも60℃でも、対応する石油ベースのポリウレタンよりも低いことがわかる。
【0026】
本発明によるシュープレススリーブのポリウレタンマトリックス組成物の第2の具体的な実施形態例では、ポリマーマトリックスのポリウレタンが、イソシアネートとしての4,4’-MDIと、ポリオールとしてのポリカーボネートと、架橋剤としてのMCDEAとポリカーボネートポリオールとの混合物とから形成されており、架橋剤中のポリカーボネートポリオールがバイオベースであることが提供される。
【0027】
以下では、この組成物(表2Aの最終行)を、純粋に石油をベースとする出発材料から構成された対応する組成物(表2Aの最後から2番目の行)と比較する。
【0028】
【0029】
対応するキャスティング試料の試験により、バイオベースの出発物質から製造されたポリウレタン(表2Bの最終行)が、シュープレスロールスリーブのマトリックス材料としての使用にとって重要な様々な特性に関して、石油ベースのマトリックス材料から製造された対応する比較材料(表2Bの最後から2番目の行)と有利に異なることが判明した。
【0030】
【0031】
第2の実施形態例でも、純粋に石油をベースとする成分から構成される対応する比較試料よりも、バイオベース成分を含むポリウレタン試料の方が、tanデルタの値が、20℃でも60℃でも低く、したがってより優れていることがわかる。
【0032】
「H2O膨潤度」および「H2O2膨潤度」という特性は、試料の材料を水または過酸化水素に長時間浸したときの重量増加率である。膨潤度が低いほど、ポリウレタンはシュープレスロールスリーブのマトリックス材料としてより適している。第2の実施形態例では、バイオベースのポリウレタンから製造された試料において、対応する値が、石油ベースのポリウレタンから製造された比較試料の値よりも低いことがわかる。
【0033】
応力-ひずみ線図における「加水分解後の10%伸長時の力」という特性とは、試料を加水分解に曝した後に、試料を10%伸長させるのに必要な力である。より正確には、例えば73%という値は、加水分解後の10%伸長に必要な力が、加水分解前に必要であった力の73%だけであることを意味する。この値が高いほど、ポリウレタンはシュープレスロールスリーブのマトリックス材料としてより適している。第2の実施形態例では、バイオベースのポリウレタンから製造された試料において、対応する値が、石油ベースのポリウレタンから製造された比較試料の値よりも高いことがわかる。
【0034】
「破断応力」および「破断伸度」という特性は、当業者に周知の、標準化された引張試験で得られる結果である。これらの値が高いほど、ポリウレタンはシュープレスロールスリーブのマトリックス材料としてより適している。第2の実施形態例では、バイオベースのポリウレタンから製造された試料において、対応する値が、石油ベースのポリウレタンから製造された比較試料の値よりも高いことがわかる。
【0035】
本発明によるシュープレススリーブのポリウレタンマトリックス組成物の第3の具体的な実施形態例では、ポリマーマトリックスのポリウレタンが、イソシアネートとしての4,4’-MDIと、ポリオールとしてのポリカーボネートポリオールとPTMEGとの混合物と、架橋剤としての1,4-BDOとから形成されており、ポリオール中のポリカーボネートポリオールがバイオベースであることが提供される。ここで、1,4-BDOは1,4-ブタンジオールを表す。
【0036】
以下では、この組成物(表3Aの最終行)を、純粋に石油をベースとする出発材料から製造された対応する組成物(表3Aの最後から2番目の行)と比較する。
【0037】
【0038】
対応するキャスティング試料の試験により、バイオベースの出発物質から製造されたポリウレタン(表3Bの最終行)が、シュープレスロールスリーブのマトリックス材料としての使用にとって重要な様々な特性に関して、石油ベースのマトリックス材料から製造された対応する比較材料(表3Bの最後から2番目の行)と有利に異なることが判明した。
【0039】
【0040】
第3の実施形態例では、バイオベースのポリウレタンから製造された試料において、H2O2膨潤度の値は、石油ベースのポリウレタンから製造された比較試料の値よりも低いが、他の値はすべて、比較試料の対応する値よりも高いことがわかる。したがって、亀裂伝播性を除いて、バイオベースのポリウレタンから製造された試料は、比較試料よりも、シュープレスロールスリーブのマトリックス材料としての使用に適している。
【0041】
本発明によるシュープレススリーブのポリウレタンマトリックス組成物の第4の具体的な実施形態例では、ポリマーマトリックスのポリウレタンが、イソシアネートとしての4,4’-MDIと、ポリオールとしてのPTMEGと、架橋剤としてのPTMEGとMCDEAとの混合物から形成されており、イソシアネート中の4,4’-MDIおよびポリオール中のPTMEGがバイオベースであることが提供される。
【0042】
以下では、この組成物(表4Aの最終行)を、純粋に石油をベースとする出発材料から製造された対応する組成物(表4Aの最後から2番目の行)と比較する。
【0043】
【0044】
対応するキャスティング試料の試験により、バイオベースの出発物質から製造されたポリウレタン(表4Bの最終行)が、シュープレスロールスリーブのマトリックス材料としての使用にとって重要な様々な特性に関して、石油ベースのマトリックス材料から製造された対応する比較材料(表4Bの最後から2番目の行)と有利に異なることが判明した。
【0045】
【0046】
第4の実施形態例では、バイオベースのポリウレタンから製造された試料において、破断応力の値は、石油ベースのポリウレタンから製造された比較試料の値よりも高いが、H2O2重量増加の値、H2O重量増加の値、ならびに20℃および60℃でのtanデルタの値は、比較試料の対応する値よりも低いことがわかる。したがって、バイオベースのポリウレタンから製造された試料は、これらすべての値に関して、シュープレスロールスリーブのマトリックス材料としての使用に、比較試料よりも適している。
【0047】
「摩耗値」という特性は、標準化された条件下で試料材料が受ける摩耗の程度を測定する試験の結果である。この値が低いほど、ポリウレタンはシュープレスロールスリーブのマトリックス材料としてより適している。第4の実施形態例では、バイオベースのポリウレタンから製造された試料において、摩耗値は、確かに石油ベースのポリウレタンから製造された比較試料の値よりも高いが、この値は、比較試料に比べて加水分解後の増加割合がはるかに少なく、好適であることがわかる。
【0048】
本発明のさらなる態様は、上記の本発明によるシュープレスロールスリーブを備えた、紙ウェブ、厚紙ウェブまたは薄葉紙ウェブのような繊維質ウェブの製造および/または仕上げ加工用機械、ならびに該シュープレスを備えた、紙ウェブ、厚紙ウェブまたは薄葉紙ウェブのような繊維質ウェブの製造および/または仕上げ加工用機械に関する。
【国際調査報告】