(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ボイラ内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための装置、およびその方法
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20240920BHJP
F23L 15/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F23K5/00 307Z
F23K5/00 302
F23L15/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519390
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2022075926
(87)【国際公開番号】W WO2023057196
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーベン・マアク・セーレンセン
(72)【発明者】
【氏名】セレン・メルガード
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ビルク・クリステンセン
【テーマコード(参考)】
3K023
3K068
【Fターム(参考)】
3K023QA01
3K023QB11
3K068AA02
3K068AB23
3K068BB03
(57)【要約】
ボイラ(132)内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための装置(100)であって、第1の加熱媒体により液化アンモニアを気体アンモニアに気化させるように構成された蒸発器(111)と、蒸発器(111)の後ろに配置され、蒸発器(111)から気体アンモニアを受け取って第2の加熱媒体により気体アンモニアを予熱するように構成されたアンモニア加熱器(112)とを備えるアンモニア燃料供給システム(110)を具備する、装置(100)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための装置(100)、好ましくはボイラシステム(130)の炉または燃焼器(131)内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための装置(100)であって、
アンモニア燃料供給システム(110)であって、
第1の加熱媒体により液化アンモニアを気体アンモニアに気化させるように構成された蒸発器(111)、および、
前記蒸発器の後ろに配置されたアンモニア加熱器(112)であって、前記蒸発器から前記気体アンモニアを受け取り第2の加熱媒体によりまたは電気加熱器により前記気体アンモニアを予熱するように構成されたアンモニア加熱器(112)
を備える、アンモニア燃料供給システム(110)と、
前記アンモニア燃料供給システム(110)の後ろに配置された混合器(120)であって、前記アンモニア燃料供給システム(110)から前記予熱された気体アンモニアを受け取り、空気供給システム(140)から空気を受け取り、前記予熱された気体アンモニアと前記空気とを混合し、それにより前記気体アンモニア系燃料を用意してから前記ボイラシステム(130)に前記気体アンモニア系燃料を供給するように構成された、混合器(120)と
を具備する、装置(100)。
【請求項2】
前記空気供給システム(140)が、空気加熱器(142)を備え、前記空気加熱器(142)が、前記混合器(120)の前に配置され、前記第2の加熱媒体によりもしくは第3の加熱媒体により、好ましくは前記第2の加熱媒体により、または電気加熱器により前記空気を予熱して前記混合器(120)に前記予熱された空気を供給するように構成される、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記蒸発器(111)が、前記液化アンモニアを気体アンモニアに気化させて-33℃から+50℃の間の蒸発器出力温度にするように構成される、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記第1の加熱媒体が、海水、機関からの冷却水、空調システムからの冷媒、ならびに加熱器および/またはボイラからの熱流体からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記アンモニア加熱器(112)が、前記気体アンモニアを100℃から300℃の間のアンモニア加熱器出力温度まで予熱するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記第2の加熱媒体が、蒸気、熱流体、または排ガスからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記空気加熱器(142)が、前記空気を100℃から400℃の間の空気加熱器出力温度まで予熱するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記第3の加熱媒体が、蒸気、熱流体、または排ガスからなる群から選択される、請求項2から7のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記アンモニア燃料供給システム(110)が、ガス弁列(113)をさらに備え、前記ガス弁列(113)が、前記蒸発器(111)の後ろに配置され、前記ボイラシステム(130)の前記炉または燃焼器(131)に供給される前記気体アンモニアの流れを制御するように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項10】
蒸気を生成するために、熱を生成するために、水を加熱するために、および/または熱流体を加熱するために前記気体アンモニア系燃料を受け取って燃焼させるように構成されたボイラシステム(130)をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項11】
燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための方法(200)、好ましくはボイラシステム(130)の炉または燃焼器(131)内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための方法(200)であって、
蒸発器(111)に液化アンモニアを供給するステップと、
第1の加熱媒体により前記蒸発器(111)内で液化アンモニアを気体アンモニアに気化させるステップ(S204)と、
前記蒸発器(111)からアンモニア加熱器(112)に前記気体アンモニアを供給するステップ(S206)と、
第2の加熱媒体により前記アンモニア加熱器(112)内で前記気体アンモニアを予熱するステップ(S208)と
を含む、方法(200)。
【請求項12】
前記予熱された気体アンモニアと空気とを混合器(120)内で混合することにより前記気体アンモニア系燃料を提供するステップ(S212)をさらに含む、請求項11に記載の方法(200)。
【請求項13】
予熱された空気が前記混合器(120)に供給される前に前記第2の加熱媒体によりもしくは第3の加熱媒体により、好ましくは前記第2の加熱媒体により、または電気加熱器により空気加熱器(142)内で前記空気を予熱するステップ(S210)をさらに含む、請求項12に記載の方法(200)。
【請求項14】
ボイラシステム(130)の炉または燃焼器(131)内で前記気体アンモニア系燃料を燃焼させることにより前記ボイラシステム(130)内で蒸気を生成し、熱を生成し、水を加熱し、および/または熱流体を加熱するステップをさらに含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための装置に関する。
【0002】
本発明はまた、ボイラ内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
油または気体によって駆動される船舶用機関が、当技術分野においてよく知られている。船舶用蒸気生産のための油燃焼ボイラおよびガス燃焼ボイラも、当技術分野においてよく知られている。通常、ボイラの動作のための燃料の選択は、船舶用機関の動作のために選択される燃料に関連して行われる。したがって、船舶用機関が油によって駆動される場合、ボイラも同様に油によって駆動されることが多い。しかし、船舶用機関およびボイラは、様々な燃料によって駆動され得る。
【0004】
今日の船舶用機関の多くに関連する1つの欠点は、推進力を提供するときに船舶用機関から排出される船舶大気汚染、特に二酸化炭素(CO2)である。環境面の観点から、CO2排出量の他に他の温室効果ガス排出量も削減されなければならないことは、一般に合意されている。一解決策として、代替燃料が海洋産業において勢いを増している。代替燃料は、バイオ燃料、メタノール、水素、アンモニア、および液化天然ガス(LNG)のような燃料を含む。しかし、代替燃料を導入することにより、例えば代替燃料の保管の可能性といった他の問題が生じ得る。生じ得るさらなる問題は、代替燃料に点火し、発火した代替燃料を安定した燃焼炎として保つことの可能性である。
【0005】
この問題のある部分に対処するために、文献特開2020183854は、主燃料としてアンモニアを使用する熱機関を開示しており、この場合、液化アンモニアが、機関に供給される前に蒸発器内で蒸発される。この文献は、蒸発器から生成される低温が冷却媒体により冷却器に供給されて外部冷凍および冷却を可能にすることを、さらに開示している。
【0006】
しかし、以下で説明されるように、従来技術は、代替燃料の引火性を改善することの他に発火した代替燃料を安定した燃焼炎として保つことに関する一連の設計基準に適切に対応する、環境に優しい船舶用装置を開示しておらず、また特に、従来技術は、前述の一連の設計基準を満たすことに関して簡便な態様で長期間にわたって使用され得る全体的な装置を提供する方法を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の目的は、代替燃料の引火性を改善することの他に発火した代替燃料を安定した燃焼炎として保つことに関する一連の設計基準に適切に対応する、環境に優しい船舶用装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、好ましくはボイラシステムの炉または燃焼器内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための装置であって、第1の加熱媒体により液化アンモニアを気体アンモニアに気化させるように構成された蒸発器、および、蒸発器の後ろに配置され、蒸発器から気体アンモニアを受け取り第2の加熱媒体によりまたは電気加熱器により気体アンモニアを予熱するように構成されたアンモニア加熱器を備えるアンモニア燃料供給システムと、アンモニア燃料供給システムの後ろに配置され、アンモニア燃料供給システムから予熱された気体アンモニアを受け取り、空気供給システムから空気を受け取り、予熱された気体アンモニアと空気とを混合し、それにより気体アンモニア系燃料を用意してからボイラシステムに気体アンモニア系燃料を供給するように構成された、混合器と、を具備する装置によって達成された。
【0010】
本明細書において、「気体アンモニア系燃料(gaseous ammonia based fuel)」という用語は、アンモニアを含む気体燃料を意味する。気体アンモニア系燃料は、気体アンモニアのみを含むことがある。気体アンモニア系燃料はまた、他の気体燃料を含むことがある。気体アンモニア系燃料はまた、空気を含むことがある。したがって、気体アンモニア系燃料は、気体燃料の少なくとも一部が気体アンモニアである、気体燃料である。気体アンモニア系燃料に含まれるアンモニアの量は、気体アンモニア系燃料が燃焼されるボイラに依存し得る。
【0011】
そのような設計により、ボイラシステム内での気体アンモニア系燃料の効率的な燃焼を実現することが促進され、それにより、ボイラシステムの炉または燃焼器内での燃焼のためにより環境に優しい燃料を使用することが促進される。液化アンモニアは気体アンモニアと比較してあまり場所を取らず、したがって保管場所があまり必要とされないので、アンモニアは液化アンモニアとして保管されることが好ましい。ボイラシステムの炉または燃焼器は気体形態のアンモニア系燃料を燃焼させるように設計されているので、液化アンモニアは、ボイラに供給される前に気体アンモニアに変換されなければならない。この液化アンモニアから気体アンモニアへの変換は、本開示の蒸発器によって実現される。蒸発器を装置に導入することにより、アンモニアを液化アンモニアとして保管する可能性、および、アンモニアをボイラに供給される前に気体アンモニアに変換する可能性が実現される。蒸発器は、液化アンモニアを気化させるように構成された熱交換器であることが好ましい。熱交換器は、例えば平板熱交換器、または多管熱交換器であってもよい。蒸発器は、液化アンモニアを気化させるように構成されたボイラであってもよい。蒸発器は、液化アンモニアおよび気体アンモニアを取り扱うことができる耐久性材料で設計されることが好ましい。
【0012】
ボイラの出力はアンモニアの発熱量および火炎速度の両方にほとんど比例することになるので、アンモニアに点火してアンモニアを安定した燃焼炎として保つ可能性は、ボイラにとって極めて重要なパラメータである。発熱量は、アンモニアにおけるエネルギー含量のことを指しており、これは変更され得ない。したがって、液化アンモニアおよび気体アンモニアの両方が、18.6MJ/kgの同じ発熱量を有する。火炎速度は、火炎が未燃焼反応物の静止した均質混合物を伝播する速度を説明する。したがって、火炎速度は、基本的には、ある燃料がどの程度の速さで燃焼し得るかを説明する数字である。火炎速度は、改善され得る。したがって、たとえアンモニアと空気の混合物が低い発熱量を有するとしても、火炎速度が上昇されるのであれば、ボイラの出力は依然として増大され得る。液化アンモニアは、科学的情報源では、典型的には0.010~0.020m/sの火炎速度を有すると言われており、最良推定値は、約0.014~0.016m/sであるとしばしば言われている。気体アンモニアは、科学的情報源では、典型的には0.03~0.13m/sの火炎速度を有すると言われており、最良推定値は、約0.07~0.09m/sであるとしばしば言われている。実際の値は実際の状況に非常に左右され、したがって、様々な科学的情報源が、様々な値を示し得る。しかし、特定の値に関わりなく、液化アンモニアを気体アンモニアに気化することにより、火炎速度は上昇する。この上昇は、おおよそ0.015m/sから、おおよそ0.08m/sまでである。さらに、火炎速度は、気体アンモニアの温度上昇によってさらに上昇され得る。したがって、蒸発器は、アンモニアを液化アンモニアとして保管することができるという点だけでなく、アンモニアの火炎速度を改善するという点においても、有利である。
【0013】
蒸発器の後ろにアンモニア加熱器を導入することにより、気体アンモニアの温度をさらに上昇させることができ、それにより、気体アンモニアの火炎速度も上昇させることができる。アンモニア加熱器は、気体アンモニアを予熱するように構成された高温熱源であることが好ましい。気体アンモニアが有する温度が高ければ高いほど、気体アンモニアが有する火炎速度が高くなる。気体アンモニアの温度を上昇させ、それにより気体アンモニアの火炎速度も上昇させることにより、アンモニアが引火性になる火炎点火範囲も増大され得る。アンモニアの火炎点火範囲を増大させることにより、気体アンモニアの引火性が改善され得る。気体アンモニアの引火性を向上させかつ改善することにより、ボイラ内でより多くのアンモニアをより速く燃焼させるための手段が提供され得る。
【0014】
したがって、蒸発器が液化アンモニアを気化させるように構成されアンモニア加熱器が気化アンモニアを予熱するように構成される開示される設計により、アンモニアの火炎速度および火炎点火範囲が増大され得る。したがって、アンモニアの引火性強化は、増大されかつ改善される。したがって、ボイラ内で燃焼される、より効率的かつ引火性の燃料が得られる。
【0015】
この文脈において、「~の後ろに(after)」という用語は、必ずしもそうである必要があるわけではないが、アンモニア加熱器が物理的に蒸発器の後に位置することを意味することが、留意されるであろう。~の後ろに(after)は、アンモニアの流路に沿って見たときの位置を参照することを第1に意図されている。アンモニア加熱器に供給されるアンモニアは蒸発器をすでに通過した気体アンモニアであるので、アンモニア加熱器は、アンモニアの流れに沿って見たときに蒸発器の後ろに位置する。アンモニア加熱器が蒸発器とは物理的に別体のモジュールである場合、アンモニア加熱器は、例えば蒸発器と並んで位置し得る。
【0016】
最初に液体アンモニアを気体アンモニアに気化させ、その後で、蒸発器から気体アンモニアを受け取るアンモニア加熱器内で気体アンモニアを加熱することが、有利である。気化は、アンモニアを液体形態から気体形態に変換するためにかなりの量のエネルギーの提供を必要とするが、このエネルギーを供給する加熱媒体は、必ずしも高温媒体でなくてもよく、基本的に、アンモニアのための気化温度をわずかに上回るか、あるいは蒸発器からの気体アンモニアの所望の出力温度をわずかに上回れば十分である。気化に関する好ましい実施形態は、以下に示される。アンモニア加熱器における気体アンモニアの予熱は、他方では、相転位を伴わず、第2の加熱媒体によって提供される熱は、大部分は気体アンモニアの温度の上昇に直結する。したがって、加熱媒体に生じる十分に高い温度は、気化ステップにおけるのと比較してより重要なものである。気化および予熱のそれぞれにおけるアンモニアの一般的な物理的挙動のこれらの違いは、各ステップの状況を考慮してそのような各ステップが最適化され得るように、2つの異なるステップにおいてステップを実行することをより効率的にする。電気加熱器は、高温を迅速に提供するように設計されており、それにより始動手順中および/または連続運転中に気体アンモニアを加熱することができるので、上記のことは、電気加熱器をアンモニア加熱器として使用することを有用にする。
【0017】
気体アンモニアは、アンモニア燃料供給システムから出口気体アンモニア供給ラインを介して混合器に供給されることが好ましい。空気は、空気供給システムから出口空気供給ラインを介して混合器に供給されることが好ましい。それにより、気体アンモニアおよび空気は、別々に混合器に供給されて、混合器内で混合される。これは、気体アンモニアおよび空気の供給を別々に制御することを容易にするという点で、有利である。したがって、例えば、気体アンモニアの流れおよび空気の流れのそれぞれを別々に制御することが容易にされる。それにより、所望の量の気体アンモニアおよび空気をそれぞれ含む気体アンモニア燃料を提供することが可能である。
【0018】
気体アンモニアが空気と混合されてから混合気がボイラに供給されるそのような設計により、混合気がボイラの炉に入ると直ちに引火性混合気が利用可能であることが保証される。したがって、ボイラの炉内で燃焼される、より効率的かつ引火性の燃料が得られる。
【0019】
さらに、混合器の後ろに配置された送り管内で十分に高い流速を有することにより、逆火防止が保証され得る。引火性混合気の流速は、現状における最高火炎速度よりも高くあるべきである。この開示において論じられる条件によれば、流速は0.08m/sよりも高いことが考えられる。しかし、例えば温度が上昇した場合、火炎速度が上昇し、その結果、システムは、流速が依然として火炎速度よりも高いままであるように設計されるべきであることが、留意されるであろう。
【0020】
しかし、ボイラシステムが追加の空気を必要とする場合、空気供給システムから混合器によって受け取られる空気に加えて、追加の空気が混合器を介して供給されることなしにボイラシステムに追加され得ることが、留意されるべきである。したがって、追加の空気は、ボイラシステムに直接供給され得る。追加の空気は、空気供給システムから、または装置内に存在する任意のさらなる空気供給システムから、ボイラシステムによって受け取られ得る。したがって、空気供給システムから供給される空気の一部に混合器を迂回させることが可能である。空気供給システムは、空気加熱器を備えることができ、この空気加熱器は、混合器の前に配置され、第2の加熱媒体によりもしくは第3の加熱媒体により、好ましくは第2の加熱媒体により、または電気加熱器により空気を予熱して混合器に予熱された空気を供給するように構成される。
【0021】
空気は、外部からの周囲空気であるか、あるいは、例えば陸上の産業設備の機関室または船舶の機関室などの空気システムおよび/もしくはボイラが位置している内室からの周囲空気であってよい。空気加熱器は、基本的には、予熱された空気を混合器に供給する前に空気を実際的に可能な限り高温に予熱するように構成される。空気加熱器は、空気を予熱するように構成された高温熱源であることが好ましい。
【0022】
気体アンモニアおよび空気の両方が予熱されるそのような設計により、強力かつ安定した火炎の提供が促進される。したがって、気体アンモニア系燃料が有する温度が高ければ高いほど、気体アンモニア系燃料が有する火炎速度が高くなる。気体アンモニア系燃料の温度を上昇させ、それにより気体アンモニア系燃料の火炎速度を上昇させることにより、気体アンモニア系燃料中の気体アンモニアの量を示す火炎点火範囲も増大させることができ、この火炎点火範囲は、気体アンモニア系燃料が引火性になる範囲である。気体アンモニア系燃料の火炎点火範囲を増大させることにより、気体アンモニア系燃料の引火性が改善され得る。気体アンモニア系燃料の引火性を向上させかつ改善することにより、ボイラ内でより多くの燃料を燃焼させるための手段が提供され得る。
【0023】
気体アンモニア系燃料が25℃の温度を有する場合、気体アンモニア系燃料の16~28%の火炎点火範囲が引火性である。気体アンモニア系燃料が300℃の温度を有する場合、気体アンモニア系燃料の13~34%の火炎点火範囲が引火性である。気体アンモニア系燃料が400℃の温度を有する場合、気体アンモニア系燃料の11~37%の火炎点火範囲が引火性である。
【0024】
気体アンモニアおよび空気を別々に予熱し、その後で予熱されたアンモニアと予熱された空気とを混合することにより、柔軟な装置を有することの提供が実現される。したがって、気体アンモニア系燃料中の気体アンモニアおよび空気の量を別々に調整することが可能である。さらに、気体アンモニアおよび空気の温度を別々に調整することが可能である。例として、ボイラが5~25%の燃焼用空気余剰で動作することが可能であり得るように、気体アンモニア系燃料を調製することが可能である。
【0025】
これは、気流がモル流量に基づくと気体アンモニア気流よりもおおよそ4~5倍大きくなり、したがって全体的な燃焼プロセスにおいて利用可能な加熱空気がより多くなることが保証されるという点で、さらに有利であり得る。
【0026】
この文脈において、「~の前に(before)」という用語は、必ずしもそうである必要があるわけではないが、空気加熱器が物理的に混合器の前に位置することを意味することが、留意されるであろう。~の前に(before)は、空気の流路に沿って見たときの位置を参照することを第1に意図されている。混合器に供給される空気は空気加熱器をすでに通過した空気であるので、空気加熱器は、空気の流れに沿って見たときに混合器の前に位置する。空気加熱器が混合器とは物理的に別体のモジュールである場合、空気加熱器は、例えば混合器と並んで位置し得る。
【0027】
蒸発器は、液化アンモニアを気体アンモニアに気化させて-33℃から+50℃の間の蒸発器出力温度にするように構成され得る。
【0028】
蒸発器出力温度は、液化アンモニアの温度の他に、第1の加熱媒体の温度にも依存する。第1の加熱媒体の温度は、所望の蒸発器出力温度に応じて変更され得ることが好ましい。液化アンモニアは、蒸発器に供給されているときに-33℃をわずかに下回る温度を有し得ることが好ましい。アンモニアの沸点は標準大気圧において-33℃であり、また、アンモニアは液体状態において保管されるので、液体アンモニアの温度は、-33℃をわずかに下回るべきである。あるいは、または補足として、液体アンモニアは、加圧下で保管されてもよい。アンモニアの温度が-33℃の沸点を上回ると液化アンモニアが気化することになるので、蒸発器の温度要求は、比較的穏当であり得る。本明細書において、穏当な要求とは、アンモニアはかなり低い沸点を有するので相当に高い温度を有する加熱媒体を使用することは必須ではないことを意味する。したがって、加熱媒体に対する要求は、加熱媒体は液化アンモニアが気化することになるように液化アンモニアに熱を伝達することが可能であるべきであるということである。しかし、利用可能な第1の加熱媒体の種類に応じて、すでに蒸発器にアンモニアの温度をある程度上昇させることが有益であり得る。上述のように、蒸発器出力温度は、-33℃から+50℃の間であることが好ましい。
【0029】
第1の加熱媒体は、海水、機関からの冷却水、空調システムからの冷媒、ならびに加熱器および/またはボイラからの熱流体からなる群から選択される。
【0030】
第1の加熱媒体は、気化アンモニアが実際的に可能な限り高い温度を有することができるように、実際的に可能な限り高い温度を有し得る。しかし、上述のように、第1の加熱媒体は、液化アンモニアが気化することになるような温度を有するべきである。したがって、第1の加熱媒体の温度はアンモニアの沸点を上回りさえすればよいが、より高いことが好ましいので、海水、機関からの冷却水、空調システムからの冷媒、または加熱器および/もしくはボイラからの熱流体は、加熱媒体としてちょうど良いものであり得る。この文脈において、加熱器および/またはボイラからの熱流体は、典型的には加熱器またはボイラからの廃熱をアンモニアに伝達する熱流体を指すことが、留意されるであろう。これは、例えば、加熱器またはボイラからの熱流体が最初に主ユーザに伝達され、その後、熱流体が主目的のために再度加熱されるために加熱器またはボイラに戻される前に、熱流体中になおも存在する任意の熱がアンモニアを気化させるために使用されるように、熱流体が蒸発器に伝達されることであり得る。したがって、蒸発器は、液-液型、ガス-ガス型、または液-ガス型であってよい。どの蒸発器を選択すべきかは、典型的には、装置それ自体、および隣接システム、特に産業設備または船舶の加熱媒体を供給する隣接システムの両方を考慮して、どの蒸発器が最良の技術経済パフォーマンスを提供するかに依存する。
【0031】
第1の加熱媒体は、海水を第1の加熱媒体として装置に供給するのが容易であるように装置が海に、例えば船の上にまたは海の近くに配置される場合、海水であってよい。第1の加熱媒体は、機関からの冷却水、または空調システムからの冷媒であってもよい。第1の媒体は、加熱器および/またはボイラからの熱流体であってもよい。そのような場合、機関または空調システムは、好ましくは、冷却水または冷媒を装置に供給するのが容易であるように、装置の近くに配置されるべきである。これは、液化アンモニアを気化させることを可能にするために装置にまたは装置の近くに追加の媒体が供給される必要がないという点で、有利である。
【0032】
アンモニア加熱器は、気体アンモニアを100℃から300℃のアンモニア加熱器出力温度まで予熱するように構成され得る。
【0033】
アンモニア加熱器出力温度は、気体アンモニアの温度および第2の加熱媒体の温度に依存する。第2の加熱媒体の温度は、所望のアンモニア加熱器出力温度に応じて変更され得ることが好ましい。300℃を超えるアンモニア加熱器出力温度は第2の加熱媒体の温度および流量の要件を設定し始め、この要件は、アンモニア加熱器出力温度を300℃超に上昇させるための追加の労力がボイラの働きにおいて得られる利点と比較してあまりにも重荷となるという点において、装置を非生産的なものにし得ることが考えられる。
【0034】
第2の加熱媒体は、蒸気、熱流体、または排ガスからなる群から選択される。
【0035】
第2の加熱媒体は、予熱された気体アンモニアが実際的に可能な限り高い温度を有することになるように、実際的に可能な限り高い温度を有することが好ましい。蒸気は、ボイラエコノマイザから生じるものであってよい。排ガスは、主機関および/または補機関から生じる排ガスであってよい。第2の加熱媒体は、100℃から400℃の間の温度を有することが好ましい。アンモニア加熱器は、熱が気体アンモニアに伝達されるように蒸気、排ガス、または熱流体を送るように構成される。したがって、アンモニア加熱器は、ガス/ガス加熱器型、流体/ガス加熱器型、または蒸気/ガス加熱器型であってよい。
【0036】
ボイラエコノマイザ、主機関、または補機関は、好ましくは、装置に含まれるかまたは装置の近くに配置されるべきである。これは、気体アンモニアを予熱することを可能にするために装置にまたは装置の近くに追加の媒体が供給される必要がないという点で、有利である。
【0037】
空気加熱器は、空気を100℃から400℃間の空気加熱器出力温度まで予熱するように構成され得る。
【0038】
空気加熱器出力温度は、空気の温度および第2の加熱媒体または第3の加熱媒体の温度に依存する。第2の加熱媒体または第3の加熱媒体の温度は、所望の空気加熱器出力温度に応じて変更され得ることが好ましい。
【0039】
予熱された気体アンモニアおよび予熱された空気は、好ましくは、類似の温度まで予熱されるべきである。これは、それぞれのガスの温度が類似の温度であれば気体アンモニアと空気との混合がより効率的であり得るという点で、有利である。したがって、改善された混合プロセスが得られ得る。温度は、温度差が50℃未満であるのならば類似であると考えられる。
【0040】
第3の加熱媒体は、蒸気、熱流体、または排ガスからなる群から選択され得る。
【0041】
第3の加熱媒体は、予熱された気体アンモニアが実際的に可能な限り高い温度を有することになるように、実際的に可能な限り高い温度を有することが好ましい。蒸気は、ボイラエコノマイザから生じるものであってよい。排ガスは、主機関および/または補機関から生じる直接的な排ガスであってよい。第3の加熱媒体は、100℃から400℃の間の温度を有することが好ましい。アンモニア加熱器は、熱が気体アンモニアに伝達されるように蒸気、排ガス、または熱流体を送るように構成される。したがって、アンモニア加熱器は、ガス/ガス加熱器型、流体/ガス加熱器型、または蒸気/ガス加熱器型であってよい。
【0042】
ボイラエコノマイザ、主機関、または補機関は、好ましくは、装置に含まれるかまたは装置の近くに配置されるべきである。これは、気体アンモニアを予熱することを可能にするために装置にまたは装置の近くに追加の媒体が供給される必要がないという点で、有利である。第2の加熱媒体および第3の加熱媒体は、同じ種類の加熱媒体からなる群から選択され得るが、第2の加熱媒体としておよび第3の加熱媒体のそれぞれとして異なる加熱媒体が選択され得る。しかし、第2の加熱媒体および第3の加熱媒体の両方として同じ加熱媒体が選択されてもよい。
【0043】
アンモニア燃料供給システムは、蒸発器の後ろに配置され、ボイラシステムの炉または燃焼器に供給される気体アンモニアの流れを制御するように構成されたガス弁列をさらに備えることができる。
【0044】
そのような設計により、気体アンモニアの流れを制御することが促進される。ガス弁列は、アンモニア加熱器の前またはアンモニア加熱器の後ろに配置され得る。したがって、ガス弁列は、気体アンモニアまたは予熱された気体アンモニアの流れを制御するように構成され得る。
【0045】
装置は、蒸気を生成するために、熱を生成するために、水を加熱するために、および/または熱流体を加熱するために気体アンモニア系燃料を受け取って燃焼させるように構成されたボイラシステムをさらに備え得る。
【0046】
上述の目的はまた、好ましくはボイラシステムの炉または燃焼器内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための方法であって、液化アンモニアを蒸発器に供給するステップと、第1の加熱媒体により蒸発器内で液化アンモニアを気体アンモニアに気化させるステップと、気体アンモニアを蒸発器からアンモニア加熱器に供給するステップと、第2の加熱媒体によりアンモニア加熱器内で気体アンモニアを予熱するステップと、を含む方法によって達成された。
【0047】
方法は、予熱された気体アンモニアと空気とを混合器内で混合することにより気体アンモニア系燃料を提供するステップを、さらに含み得る。
【0048】
方法は、予熱された空気が混合器に供給される前に第2の加熱媒体によりもしくは第3の加熱媒体により、好ましくは第2の加熱媒体により、または電気加熱器により空気加熱器内で空気を予熱するステップを、さらに含み得る。
【0049】
方法は、ボイラシステムの炉または燃焼器内で気体アンモニア系燃料を燃焼させることによりボイラシステムにおいて蒸気を生成し、熱を生成し、水を加熱し、および/または熱流体を加熱するステップを、さらに含み得る。
【0050】
装置に関連して上述されたさらなる様々な好ましい実施形態は、方法にも等しく適用される。
【0051】
装置は、船などの船舶上に設置されることが好ましい。方法は、船などの船舶上で行われることが好ましい。しかし、装置も方法も船上で使用されることに限定されないことが、留意されるであろう。これは、例えば、船は別として、他の海洋用途における場合であり得る。これは、例えば、油またはガスのための掘削に使用される類いのプラットフォームなどのプラットフォームであり得る。装置および方法は、陸上用途にも有用であり得る。
【0052】
一般に、特許請求の範囲において使用される全ての用語は、そうでないことが本明細書に明示的に定められていない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。「a/an/the[要素、デバイス、構成要素、手段、ステップ、等]」への全ての言及は、そうでないことが明示的に述べられていない限り、前述の要素、デバイス、構成要素、手段、ステップ、等の少なくとも1つの例を指すとオープンに解釈されるべきである。本明細書において開示される任意の方法のステップは、明示的に述べられていない限り、開示される正確な順序で行われる必要はない。
【0053】
本開示の上記ならびに追加の目的、特徴、および利点は、同じ参照番号が類似の要素のために使用される添付の図面を参照するとともに、以下の本開示の好ましい実施形態の説明に役立つ非限定的な詳細説明を通じてより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】ボイラ内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための装置を開示する図である。
【
図2】ボイラ内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための方法を示す流れ図を開示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
次に、本開示の目下好ましい実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、本開示を以下でより詳細に説明する。しかし、この開示は、多くの異なる形態で具現化され得るものであり、本明細書において記述される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、徹底さおよび完全さのために提供されるものであり、また、本開示の範囲を当業者に完全に伝えるものである。示されていないが、装置は、関連する規則および法律ならびに標準的な造船の実践に従って追加の弁、制御信号送信機、流量計、循環ポンプ、および他の類似の構成要素を備えることができることも、留意されるべきである。そのような追加の構成要素の提供は、当業者にとってはありふれたことであり、全てのそのような構成要素を含むことは、概略図を不明瞭にするはずである。
【0056】
図1を参照すると、ボイラ132内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための装置100が開示されている。装置100は、アンモニア燃料供給システム110を備える。アンモニア燃料供給システム110は、蒸発器111およびアンモニア加熱器112を備える。
【0057】
蒸発器111は、第1の加熱媒体により液化アンモニアを気体アンモニアに気化させるように構成される。蒸発器111は、液化アンモニアを-33~50℃の間の蒸発器出力温度を有する気体アンモニアに気化させるように構成されてもよい。第1の加熱媒体は、海水、機関からの冷却水、空調システムからの冷媒、ならびに加熱器および/またはボイラからの熱流体からなる群から選択され得る。蒸発器111は、第1の加熱媒体を蒸発器111に供給するように構成された第1の加熱媒体入口111aを備え得る。蒸発器111は、熱が第1の加熱媒体から液化アンモニアに伝達された後で蒸発器111から第1の加熱媒体を供給するように構成された第1の加熱媒体出口111bを備え得る。
【0058】
アンモニア加熱器112は、蒸発器111の後ろに配置される。アンモニア加熱器112は、蒸発器111から気体アンモニアを受け取るように構成される。アンモニア加熱器112は、第2の加熱媒体により気体アンモニアを予熱するように構成され得る。あるいは、アンモニア加熱器112は、電気加熱器であってもよい。電気加熱器は、例えば、電気抵抗加熱素子(electrically resistive heating element)を備えることができ、この電気抵抗加熱素子を通して電流が供給されることにより、電気抵抗加熱素子は、電気抵抗加熱素子の内部電気抵抗に起因して加熱される。アンモニアは、電気抵抗加熱素子のそばを通るかまたは電気抵抗加熱素子を通過することにより電気抵抗加熱素子から熱を吸収するように、アンモニア加熱器112を通して供給される。アンモニア加熱器112は、気体アンモニアを100~300℃の間のアンモニア加熱器出力温度まで予熱するように構成され得る。第2の加熱媒体は、蒸気、熱流体、または排ガスからなる群から選択され得る。アンモニア加熱器112は、第2の加熱媒体をアンモニア加熱器112に供給するように構成された第2の加熱媒体入口112aを備え得る。アンモニア加熱器112は、熱が第2の加熱媒体から気体アンモニアに伝達された後でアンモニア加熱器112から第2の加熱媒体を供給するように構成された第2の加熱媒体出口112bを備え得る。
【0059】
アンモニア燃料供給システム110は、ガス弁列113を備え得る。ガス弁列113は、蒸発器111の後ろに配置され得る。ガス弁列113は、蒸発器111のすぐ後ろに配置され得る。ガス弁列は、アンモニア加熱器112の後ろに配置されてもよく、アンモニア加熱器112は、すでに論じられたように、蒸発器111の後ろに配置される。ガス弁列113は、ボイラ132に供給される気体アンモニアの流れを制御するように構成され得る。
【0060】
アンモニア燃料供給システム110は、液化アンモニア供給ライン114を備え得る。液化アンモニア供給ライン114は、液化アンモニアを保管することができる液化アンモニア槽(図示せず)に接続され得る。したがって、液化アンモニア供給ライン114は、液化アンモニア槽から蒸発器111に液化アンモニアを供給することができる。
【0061】
アンモニア燃料供給システム110は、気体アンモニア供給ライン115を備え得る。気体アンモニア供給ライン115は、蒸発器111からアンモニア加熱器112に気体アンモニアを供給するように構成され得る。アンモニア燃料供給システム110がアンモニア加熱器112の前に配置されたガス弁列113を備える場合、気体アンモニア供給ライン115は、ガス弁列113を介して蒸発器111からアンモニア加熱器112に気体アンモニアを供給するように構成される。したがって、気体アンモニア供給ライン115は、アンモニア燃料供給システム110に含まれる他の構成要素に蒸発器111から気体アンモニアを供給するように構成される。
【0062】
装置100は、混合器120をさらに備え得る。混合器120は、アンモニア燃料供給システム110の後ろに配置され得る。混合器120は、アンモニア燃料供給システム110から予熱された気体アンモニアを受け取るように構成され得る。混合器120は、空気供給システム140から空気を受け取るように構成され得る。混合器120は、気体アンモニアと空気とを混合することにより気体アンモニア系燃料を提供するように構成され得る。
【0063】
アンモニア燃料供給システム110は、出口気体アンモニア供給ライン110aをさらに備え得る。出口気体アンモニア供給ライン110aは、アンモニア燃料供給システム110から混合器120に予熱された気体アンモニアが供給され得るように、混合器120に接続され得る。
【0064】
空気供給システム140は、装置100内に含まれ得る。空気供給システム140は、空気加熱器142を備え得る。空気加熱器142は、混合器120の前に配置され得る。空気加熱器142は、第2の加熱媒体によりまたは第3の加熱媒体により、好ましくは第2の加熱媒体により、空気を予熱するように構成され得る。あるいは、空気加熱器142は、電気加熱器であってもよい。電気加熱器は、例えば、電気抵抗加熱素子を備えることができ、この電気抵抗加熱素子を通して電流が供給されることにより、電気抵抗加熱素子は、電気抵抗加熱素子の内部電気抵抗に起因して加熱される。空気は、電気抵抗加熱素子のそばを通るかまたは電気抵抗加熱素子を通過することにより電気抵抗加熱素子から熱を吸収するように、空気加熱器112を通して供給され得る。空気加熱器142は、予熱された空気を混合器120に供給するようにさらに構成され得る。空気加熱器142は、空気を100~400℃の間の空気加熱器出力温度まで予熱するように構成され得る。第3の加熱媒体は、蒸気、熱流体、または排ガスからなる群から選択され得る。したがって、第2の加熱媒体および第3の加熱媒体は同じ種類の加熱媒体からなる群から選択され得ることが、留意されるべきである。気体アンモニアを予熱するのに使用するために実際に選択される加熱媒体は、空気を予熱するのに使用するために実際に選択される加熱媒体とは異なってもよい。あるいは、気体アンモニアを予熱するのに使用するために実際に選択される加熱媒体は、空気を予熱するのに使用するために実際に選択される加熱媒体と同じであってもよい。
【0065】
空気加熱器142は、第2の加熱媒体または第3の加熱媒体を空気加熱器142に供給するように構成された加熱媒体入口142aを備え得る。空気加熱器142は、熱が第2のまたは第3の加熱媒体から空気に伝達された後で空気加熱器142から第2の加熱媒体または第3の加熱媒体を供給するように構成された加熱媒体出口142bを備え得る。
【0066】
空気供給システム140は、入口空気供給ライン144を備え得る。入口空気供給ライン144は、空気供給システム140に空気を供給するように構成され得る。空気は、外部からの周囲空気であるか、または、機関室などの内部からの空気であってよい。空気供給システム140は、出口空気供給ライン140aを備え得る。出口空気供給ライン140aは、空気が空気供給システム140から混合器120に供給され得るように、混合器120に接続され得る。空気供給システム140が空気加熱器142を備える場合、出口空気供給ライン140aは、空気供給システム140から混合器120に予熱された空気を供給するように構成される。
【0067】
装置100は、ボイラシステム130をさらに備え得る。ボイラシステム130は、燃焼器または炉131、およびボイラ132を備え得る。ボイラシステム130は、混合器120から気体アンモニア系燃料を受け取るように構成され得る。ボイラシステム130は、蒸気を生成するために、熱を生成するために、水を加熱するために、および/または熱流体を加熱するために、気体アンモニア系燃料を燃焼させるように構成され得る。
【0068】
装置100は、気体アンモニア系燃料供給ライン120aを備え得る。気体アンモニア系燃料供給ライン120aは、混合器120からボイラシステム130に気体アンモニア系燃料を供給するように構成され得る。混合器120が装置100から除外される場合、気体アンモニア系燃料供給ライン120aは、アンモニア燃料供給システム110からボイラシステム130の炉または燃焼器131に気体アンモニア系燃料を供給するように構成され得る。
【0069】
図2を参照すると、ボイラシステム130の炉または燃焼器131内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための方法200を示す流れ図が、例として示されている。
【0070】
一般に、方法200の第1のステップS202は、蒸発器111に液化アンモニアを供給することであり得る。第2のステップS204では、液化アンモニアは、第1の加熱媒体により蒸発器111内で気体アンモニアに気化され得る。その後、第3のステップS206では、気体アンモニアは、蒸発器111からアンモニア加熱器112に供給され得る。第4のステップS208では、気体アンモニアは、第2の加熱媒体によりまたは電気加熱器によりアンモニア加熱器内で予熱され得る。
【0071】
方法200は、第5のステップS212において、予熱された気体アンモニアと空気とを混合器内で混合することにより気体アンモニア系燃料を提供することをさらに含み得る。
【0072】
方法200は、第6のステップS210において、空気が混合器に供給される前に第2の加熱媒体によりもしくは第3の加熱媒体により、好ましくは第2の加熱媒体により、または電気加熱器により空気加熱器内で空気を予熱することをさらに含み得る。したがって、そのような場合、混合するステップS212は、予熱されたアンモニアと予熱された空気とを混合器120内で混合するステップになる。方法は第5のステップS212を含むことができること、および、空気を予熱することに関する第6のステップS210は省略されてもよいことが、留意されるべきである。しかし、第6のステップS210が存在する場合、第6のステップS210は、混合に関する第5のステップS212の前に行われることが好ましい。しかし、第5のステップS212における混合を行い、次いで加熱ステップS210に類似した予熱されたアンモニアと空気との混合気の加熱ステップを行うことも、考えられる。アンモニアが予熱される予熱ステップS208、および空気が予熱される予熱ステップS210を混合のステップS212の前に有し、その後で、混合器120からの混合気がボイラシステム130に移される前にさらに加熱される追加の加熱ステップが続くこともまた、考えられる。
【0073】
方法200は、第7のステップS214において、ボイラシステム130の炉または燃焼器131内で気体アンモニア系燃料を燃焼させることによりボイラシステム130内で蒸気を生成し、熱を生成し、水を加熱し、および/または熱流体を加熱することを、さらに含み得る。
【0074】
この文脈において、第1のステップから第7のステップまでのステップの番号付けは、諸ステップが必ずこの特定の連続した順序で行われるべきであることを意味するものではないことが、留意されるであろう。第1から第7までの番号付けは、種々のステップに言及するときに区別するのを容易にするためのラベルとして使用されることを主として意図されている。様々なステップの相互の順序は、装置の説明から明らかである。
【0075】
本明細書において説明された実施形態の多数の修正が存在するが、それらは添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲になおも含まれることが、意図されている。
【0076】
さらに、開示される実施形態に対する変形は、図面、本開示、および添付の特許請求の範囲を検討することから、特許請求される発明を実施する当業者によって理解されかつ達成され得る。特許請求の範囲において、「備えている、含んでいる(comprising)」という語は、他の要素またはステップを除外するものではなく、また、不定冠詞「a」または「an」は、複数性を除外するものではない。相互に異なる従属請求項において特定の手段が記載されているという単なる事実は、それらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【符号の説明】
【0077】
100 装置
110 アンモニア燃料供給システム
110a 出口気体アンモニア供給ライン
111 蒸発器
111a 第1の加熱媒体入口
111b 第1の加熱媒体出口
112 アンモニア加熱器
112a 第2の加熱媒体入口
112b 第2の加熱媒体出口
113 ガス弁列
114 液化アンモニア供給ライン
115 気体アンモニア供給ライン
120 混合器
120a 気体アンモニア系燃料供給ライン
130 ボイラシステム
131 燃焼器、炉
132 ボイラ
140 空気供給システム
140a 出口空気供給ライン
142 空気加熱器
142a 加熱媒体入口
142b 加熱媒体出口
144 入口空気供給ライン
200 方法
S202 第1のステップ
S204 第2のステップ
S206 第3のステップ
S208 第4のステップ
S210 第6のステップ
S212 第5のステップ
S214 第7のステップ
【手続補正書】
【提出日】2024-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための装置(100)、好ましくはボイラシステム(130)の炉または燃焼器(131)内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための装置(100)であって、
アンモニア燃料供給システム(110)であって、
第1の加熱媒体により液化アンモニアを気体アンモニアに気化させるように構成された蒸発器(111)、および、
前記蒸発器の後ろに配置されたアンモニア加熱器(112)であって、前記蒸発器から前記気体アンモニアを受け取り第2の加熱媒体によりまたは電気加熱器により前記気体アンモニアを予熱するように構成されたアンモニア加熱器(112)
を備える、アンモニア燃料供給システム(110)と、
前記アンモニア燃料供給システム(110)の後ろに配置された混合器(120)であって、前記アンモニア燃料供給システム(110)から前記予熱された気体アンモニアを受け取り、空気供給システム(140)から空気を受け取り、前記予熱された気体アンモニアと前記空気とを混合し、それにより前記気体アンモニア系燃料を用意してから前記ボイラシステム(130)に前記気体アンモニア系燃料を供給するように構成された、混合器(120)と
を具備する、装置(100)。
【請求項2】
前記空気供給システム(140)が、空気加熱器(142)を備え、前記空気加熱器(142)が、前記混合器(120)の前に配置され、前記第2の加熱媒体によりもしくは第3の加熱媒体により、好ましくは前記第2の加熱媒体により、または電気加熱器により前記空気を予熱して前記混合器(120)に前記予熱された空気を供給するように構成される、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記蒸発器(111)が、前記液化アンモニアを気体アンモニアに気化させて-33℃から+50℃の間の蒸発器出力温度にするように構成される、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記第1の加熱媒体が、海水、機関からの冷却水、空調システムからの冷媒、ならびに加熱器および/またはボイラからの熱流体からなる群から選択される、請求項
1または2に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記アンモニア加熱器(112)が、前記気体アンモニアを100℃から300℃の間のアンモニア加熱器出力温度まで予熱するように構成される、請求項
1または2に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記第2の加熱媒体が、蒸気、熱流体、または排ガスからなる群から選択される、請求項
1または2に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記空気加熱器(142)が、前記空気を100℃から400℃の間の空気加熱器出力温度まで予熱するように構成される、請求項
2に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記第3の加熱媒体が、蒸気、熱流体、または排ガスからなる群から選択される、請求項
2に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記アンモニア燃料供給システム(110)が、ガス弁列(113)をさらに備え、前記ガス弁列(113)が、前記蒸発器(111)の後ろに配置され、前記ボイラシステム(130)の前記炉または燃焼器(131)に供給される前記気体アンモニアの流れを制御するように構成される、請求項
1または2に記載の装置(100)。
【請求項10】
蒸気を生成するために、熱を生成するために、水を加熱するために、および/または熱流体を加熱するために前記気体アンモニア系燃料を受け取って燃焼させるように構成されたボイラシステム(130)をさらに備える、請求項
1または2に記載の装置(100)。
【請求項11】
燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための方法(200)、好ましくはボイラシステム(130)の炉または燃焼器(131)内で燃焼される気体アンモニア系燃料を用意するための方法(200)であって、
蒸発器(111)に液化アンモニアを供給するステップと、
第1の加熱媒体により前記蒸発器(111)内で液化アンモニアを気体アンモニアに気化させるステップ(S204)と、
前記蒸発器(111)からアンモニア加熱器(112)に前記気体アンモニアを供給するステップ(S206)と、
第2の加熱媒体により前記アンモニア加熱器(112)内で前記気体アンモニアを予熱するステップ(S208)と
を含む、方法(200)。
【請求項12】
前記予熱された気体アンモニアと空気とを混合器(120)内で混合することにより前記気体アンモニア系燃料を提供するステップ(S212)をさらに含む、請求項11に記載の方法(200)。
【請求項13】
予熱された空気が前記混合器(120)に供給される前に前記第2の加熱媒体によりもしくは第3の加熱媒体により、好ましくは前記第2の加熱媒体により、または電気加熱器により空気加熱器(142)内で前記空気を予熱するステップ(S210)をさらに含む、請求項12に記載の方法(200)。
【請求項14】
ボイラシステム(130)の炉または燃焼器(131)内で前記気体アンモニア系燃料を燃焼させることにより前記ボイラシステム(130)内で蒸気を生成し、熱を生成し、水を加熱し、および/または熱流体を加熱するステップをさらに含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法(200)。
【国際調査報告】