(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】流動性の増大をもたらす複合フィルター膜
(51)【国際特許分類】
B01D 69/12 20060101AFI20240920BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20240920BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/22 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/44 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/38 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/06 20060101ALI20240920BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D69/12
B01D69/10
B01D69/00
B01D71/22
B01D71/44
B01D71/38
B01D71/52
B01D71/06
C02F1/44 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519524
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022077248
(87)【国際公開番号】W WO2023052574
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510054027
【氏名又は名称】ヴィート エヌブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】モレンベルグス,バート
(72)【発明者】
【氏名】ブーマン,バート
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA16
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA12
4D006MA21
4D006MA31
4D006MA40
4D006MC18
4D006MC21
4D006MC24
4D006MC26
4D006MC27
4D006MC28
4D006MC29X
4D006MC36
4D006MC39
4D006MC40X
4D006MC47
4D006MC48
4D006MC49
4D006MC53
4D006MC54
4D006MC58
4D006MC59
4D006MC61
4D006MC62
4D006MC63
4D006MC81
4D006MC82
4D006NA05
4D006PA01
4D006PB08
4D006PC67
4D006PC80
(57)【要約】
本発明は、複合膜の分野に関する。より具体的には、本発明は、濾過層と、少なくとも1つの貫通孔を含む支持層と、上記濾過層と上記支持層との間に挟まれる中間層とを備える複合フィルター膜に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合フィルター膜(1)であって、
半透過性の第1のポリマー材料から作られた濾過層(2)と、
前記第1のポリマー材料とは異なる第2のポリマー材料から作られ、少なくとも1つの貫通孔(4)を含む支持層(3)と、
中間層(5)と、
を備え、
前記中間層(5)が、
前記第1のポリマー材料から作られ、前記濾過層(2)と前記支持層(3)との間に挟まれ、
前記支持層(3)に溶剤結合し、
前記支持層(3)の前記少なくとも1つの貫通孔(4)に接続した一連のダクト7を備え、前記一連のダクト(7)が、前記濾過層(2)及び前記中間層(5)を通過した液体流を、前記支持層(3)の前記少なくとも1つの貫通孔(4)を通して排出するように構成される、
複合フィルター膜。
【請求項2】
前記一連のダクト(7)が前記濾過層上に凹んでいる、請求項1に記載の複合フィルター膜。
【請求項3】
前記一連のダクト(7)が、前記濾過層(2)内に埋め込まれたダクト形成材料(12)を溶解することによって形成される、請求項1又は2に記載の複合フィルター膜。
【請求項4】
マルチマルチクレーム
前記一連のダクト(7)が前記支持層(3)に対して実質的に平行である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合フィルター膜。
【請求項5】
マルチマルチクレーム
前記支持層(3)が、前記支持層(3)の総面積に対する貫通孔の面積として定義され、前記支持層(3)の全面積の約0.01%~約10%、特に0.1%~5%の範囲のパーセンテージ値で表される開放表面積(OSA)を有する複数の貫通孔(4)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合フィルター膜(1)。
【請求項6】
マルチマルチクレーム
前記一連のダクト(7)のダクト(6)のダクトの円形断面の直径が約10 μm~約750 μm、特に約50 μm~約500 μm、より詳細には約100 μm~約350 μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合フィルター膜(1)。
【請求項7】
マルチマルチクレーム
前記濾過層(2)及び前記中間層(5)の合わせた厚さが約50 μm~1 mmの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合フィルター膜(1)。
【請求項8】
請求項1に記載の複合フィルター膜(1)の製造方法であって、
(a)少なくとも1つの貫通孔(4)を有する支持層(3)を設ける工程と、
(b)前記支持層(3)上に、前記支持層(3)の全表面を部分的に覆い、前記支持層(3)の前記少なくとも1つの貫通孔(4)を少なくとも覆う構成のダクト形成材料(12)の層を設ける工程と、
(c)工程(b)で設けられた前記ダクト形成材料(12)の層上に濾過層形成材料の層を設ける工程と、
(d)工程(a)で設けられた前記支持層(3)と工程(c)で設けられた前記濾過層形成材料の層とを第1の溶剤によって溶剤結合し、前記支持層(3)と前記濾過層形成材料の層との接着を引き起こし、それにより濾過層(2)を形成する工程と、
(e)工程(b)で設けられた前記ダクト形成材料(12)を第2の溶剤によって少なくとも部分的に溶解し、それにより一連のダクト(7)を有する中間層(5)を形成する工程と、
を含む、製造方法。
【請求項9】
工程(c)が、
(c1)前記ダクト形成材料(12)の層上に濾過層(2)のドープを供給する工程と、
(c2)工程(c1)で供給された前記濾過層(2)のドープを第3の溶剤によって硬直化し、それにより前記濾過層(2)を設ける工程と、
を含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
工程(c1)において、前記濾過層(2)のドープの溶剤含有量に対するポリマー含有量の比率が少なくとも0.15重量%、有利には少なくとも0.20重量%、有利には少なくとも0.25重量%であり、有利には0.50重量%を超えない、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
工程(b)において、前記ダクト形成材料(12)の層が、前記支持層(3)の約10%~75%を覆う、ヘリンボーンパターン又はチェッカーボードパターン等の規則的な幾何学パターン9を備える、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
マルチマルチクレーム
(c)好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びグリセロールの1つ又は組合せから選択される充填材料を含む濾過層形成材料の層を設ける工程と、
(f)前記濾過層(2)に含まれる前記充填材料を第4の溶剤によって溶解する工程と、
を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
マルチマルチクレーム
工程(d)及び工程(e)を共通の溶剤又は溶剤の混合物によって同時に行い、すなわち前記第1の溶剤及び前記第2の溶剤が同じである、請求項8~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
マルチマルチクレーム
工程(e)及び工程(f)を共通の溶剤又は溶剤の混合物によって行い、すなわち前記第2の溶剤及び前記第4の溶剤が同じである、請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
マルチマルチクレーム
工程(b)において、前記ダクト形成材料(12)の層が約10%~約75%、特に約20%~約50%の支持層の比被覆率で前記支持層(3)を覆うように設けられる、請求項8~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
マルチマルチクレーム
廃水処理産業における濾過膜、好ましくはMBR(膜バイオリアクター)における膜としての請求項1~7のいずれか一項に記載の複合フィルター膜(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合フィルター膜の分野における改良に関する。より具体的には、本発明は、一連のダクトを備える担持複合フィルター膜、その製造方法、及び上記複合フィルター膜の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフィルター膜は通例、支持層に担持され、これにより上記フィルター膜の濾過層が機械的に強化される。かかるフィルター膜の濾過層は、機械的強度が低いことが多い。これは薄い濾過層、すなわち200 μm未満の厚さを有する濾過層ではなおさらである。フィルター膜は通例、機械的固定によって支持体に接合される。この種の解決策は、特許文献1、特許文献2及び特許文献3から知られている。さらに、濾過層が支持層に化学的に結合したフィルター膜が特許文献4から知られている。
【0003】
特許文献4には、複数の孔を有する支持層と、支持層に化学的に結合した濾過層とを備える膜が記載されている。さらに、特許文献4に記載されている膜は、支持層の下に排出チャネルが存在することを特徴とする。上記チャネルの存在が、濾過された液体の排液の改善をもたらすにも関わらず、膜の流動性は、支持層上の上記複数の孔の寸法及び位置によって大いに制約を受け、上記液体の移動を妨げる。特許文献4に記載されている膜の欠点は、支持層が十分な流動性を可能にするために、少なくとも10%~最大60%の範囲の高い開放表面積(open surface area;OSA)を必要とすることである。これには支持層の構造的完全性が弱くなるという不利点がある。さらに、このことは、膜の逆洗性に必要とされる濾過層と支持層との接合に利用可能な表面にも影響を及ぼす。
【0004】
したがって、フィルター膜の分野における進歩により、改良された複合フィルター膜が提供されているにも関わらず、逆洗を可能にする可能性を保持しながら、より高い流動性を有する膜を提供し、従来技術の他の不利点を克服する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0662341号
【特許文献2】欧州特許第1462154号
【特許文献3】特開2009045559号
【特許文献4】国際公開第15140355号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくとも一部を回避するフィルター膜を提供することである。本発明の更なる目的は、改善された特性、例えばより高い流動性、改善された構造的完全性、及び逆洗性を可能にするフィルター膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様において、本発明は、複合フィルター膜であって、
半透過性の第1のポリマー材料から作られ、液体の流れを通過させる濾過層と、
第1のポリマー材料とは異なる第2のポリマー材料から作られ、液体の流れを排出するために設けられる少なくとも1つの貫通孔を含む支持層と、
中間層と、
を備え、
中間層は、第1のポリマー材料から作られ、濾過層と支持層との間に挟まれ、したがって支持層の上であるが、濾過層の下に配され、この中間層は、支持層に溶剤結合し、支持層の少なくとも1つ、好ましくはそれ以上の貫通孔に接続した一連のダクト(1つ以上のダクト)を備える、複合フィルター膜に関する。言い換えると、一連のダクトは、少なくとも1つの貫通孔の少なくとも1つの開口部に接続した1つ以上の開口部を備え、それにより液体の流れが上記一連のダクトを介して濾過層、中間層及び支持層を通過することを可能にする。言い換えると、一連のダクトは、液体の流れが半透過性の濾過層を出て、上記一連のダクト内に集められ、少なくとも1つの貫通孔に運ばれ、そこで流れが排出されることを可能にする。言い換えると、一連のダクトは、支持層の少なくとも1つの貫通孔に接続し、上記一連のダクトは、濾過層及び中間層を通過した液体流を、支持層の上記少なくとも1つの貫通孔を通して排出するように構成される。
【0008】
第2の態様において、本発明は、本発明に従う複合フィルター膜の製造方法であって、
(a)少なくとも1つの貫通孔4を有する支持層3を設ける工程と、(b)第2のポリマー材料から作られた支持層上に、例えば溶解により一連のダクトを形成するように適合された材料であるダクト形成材料の層を、支持層の全表面を部分的に覆い、上記支持層に存在する少なくとも1つの貫通孔を少なくとも覆う構成で(ダクトの少なくとも1つの開口部が、少なくとも1つの貫通孔に接続するように)設ける工程と、(c)工程(b)で設けられたダクト形成材料の層上に濾過層形成材料の層を設ける工程と、(d)支持層と工程(c)で設けられた濾過層形成材料の層とを第1の溶剤によって溶剤結合し、上記支持層と上記濾過層形成材料の層との接着を引き起こし、それにより濾過層2を形成する工程と、(e)第2の溶剤によってダクト形成材料を少なくとも部分的に溶解し、それにより、支持層に溶剤結合した、一連のダクトを有する第1のポリマー材料から作られた中間層を形成する工程とを含む、製造方法に関する。
【0009】
本発明の実施の形態によると、工程(b)は、
(c1)ダクト形成材料の層上に濾過層ドープを供給する工程と、(c2)工程(c1)で供給された濾過層ドープを、例えば第3の溶剤を用いた転相によって硬直化し、それにより濾過層を設ける工程とを含む。
【0010】
本発明の実施の形態によると、本方法は、(c)好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びグリセロールの1つ又は組合せから選択される充填材料を含む濾過層形成材料の層を設ける工程と、(f)濾過層に含まれる充填材料を第4の溶剤によって溶解する工程とを含む。
【0011】
本発明の実施の形態によると、工程(a)において、ダクト形成材料の層は、約10%~約75%、特に約20%~約50%の支持層の比被覆率で支持層を覆うように設けられる。
【0012】
第3の態様において、本発明は、廃水処理産業における濾過膜、好ましくはMBR(膜バイオリアクター)における膜としての本発明に従って規定される複合フィルター膜の使用に関する。
【0013】
これより図面を具体的に参照するが、示される記述は例示であり、本発明の種々の実施形態の説明的な論考のみを目的とすることが強調される。これらの図面は、本発明の原理及び概念的態様の最も有用かつ簡単な説明であると考えられるものを提供するために提示される。この点で、本発明の基礎的理解に必要とされるよりも詳細な本発明の構造細部を示そうとはしていない。この説明は、図面と共に本発明の幾つかの形態を実際に具体化し得る方法を当業者に明らかとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】図面1は
図1とも略記され、中間層に残る一連のダクトが露出するように濾過層を切断した複合フィルター膜の切断断面図である。
【
図2】図面2は
図2とも略記され、ダクト形成材料がPVAウェブであり、支持層の50%の比被覆率(specific coverage)をもたらす、本発明に従う可能なダクト形成材料を示す図である。
【
図3】図面3は
図3とも略記され、本発明に従う複合フィルター膜をロールツープレート製造ラインにおいて製造し得る方法を例示する図である。
【
図4】図面4は
図4とも略記され、本発明に従う複合フィルター膜の断面を示す図である。
【
図5】図面5Aは
図5Aとも略記され、
図4に示す複合フィルター膜の支持層の穿孔を示す図である。図面5Bは
図5Bとも略記され、隣接する各貫通孔が等間隔であり、グリッドパターンに従って上記支持層上に配置される、
図4に示す複合フィルター膜の支持層を示す図である。上記貫通孔の拡大図を提示する。
【
図6】図面6Aは
図6Aとも略記され、ダクト形成材料がPVAウェブであり、支持層の35%の比被覆率をもたらす、
図4に示す複合フィルター膜内のダクトの形成に利用されるダクト形成材料を示す図である。ウェブの拡大図を提示する。図面6Bは
図6Bとも略記され、
図6Aの下部に示される拡大図を更に拡大したものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
これより、本発明を更に説明する。以下の節では、本発明の種々の態様を更に詳細に規定する。そこで規定された各々の態様は、そうではないことが明確に示されていない限り、他の任意の態様(単数又は複数)と組み合わせてもよい。特に、好適又は有利であると示される任意の特徴を、好適又は有利であると示される他の任意の特徴(単数又は複数)と組み合わせてもよい。本発明の化合物を説明する場合、使用される用語は、文脈上他に指示がない限り、以下の定義に従って解釈されるものとする。本明細書において使用される、パラメーター、量、期間等の計測可能な値に言及する「約(about)」及び「およそ(approximately)」という用語は、規定値より±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは、±1%以下、そして更に好ましくは、±0.1%以下の変動を包含することを意味し、そのような変動であれば開示される本発明を実施するのに適切である。修飾語句「約」又は「およそ」が言及する値そのものも具体的にかつ好ましくは開示されることが理解される。本明細書及び添付した特許請求の範囲で使用される場合に、単数形「a」、「an」、及び「the」)は、文脈上特に明記されていない限り、複数の指示対象を含む。例として、「a compound」は、1つの化合物又は2つ以上の化合物を意味する。
【0016】
本発明の文脈において、「層」という用語により、その上又は下の物体又は平面又はシートとは、例えば物理的及び/又は化学的に異なる物体の平面又はシートに言及する。言い換えると、その上又は下の物質とは異なる物質のシートに言及する。
【0017】
本発明の文脈において、「濾過層」という用語により、物質の相を別の物質の相から除去/分離すること、例えば液体又は気体から固体を除去することが可能な層に言及する。したがって、本発明に従う濾過層は半透過性であり、それにより、例えば液体又は気体が濾過層の第1の側から第2の側へと通過することを可能にし、それにより、固液混合物の場合、固相と上記液相との少なくとも部分的な分離を可能にする。「濾過層形成材料の層」により、支持層との溶剤結合後に濾過層をもたらす材料から作られた層に言及する。濾過層形成材料は、第1のポリマー材料又は上記第1のポリマー材料に施される濾過層ドープから作られ、中間層もそれから作られる。
【0018】
本発明の文脈において、「支持層」という用語により、別の層を機械的に支持するために設けられる層に言及する。概して、支持層は、付着した層の変形に対抗するためにより硬い材料から作られる。
【0019】
本発明の文脈において、「中間層」という用語により、支持層と濾過層との間に位置する層に言及する。
【0020】
本発明の文脈において、「比被覆率」という用語により、ダクト形成材料、例えばメッシュ状のダクト形成材料が支持層と接触する場合のダクト形成材料による支持層の被覆率に言及し、比被覆率は、パーセンテージ値で表される。言い換えると、比被覆率は、濾過層、濾過層ドープ又は既に設けられた濾過層のいずれかが、支持層に到達することができず、それにより絡合が起こり得ない領域である。例えば、濾過層ドープが、支持層の上でダクト形成材料を覆うために使用される場合、比被覆率は、濾過層ドープによって濡らされず、したがって固体ダクト形成材料の下にある全支持層領域の面積のパーセンテージである。
【0021】
本発明の文脈において、「開放表面積」又はOSAという用語により、パーセンテージ値で表される、支持層(貫通孔を含む)の総面積に対する貫通孔の面積に言及する。
【0022】
本発明の文脈において、「貫通孔」という用語により、通常は物体の1つの表面からその物体の厚さ方向に延びる、物体中の開口部に言及する。本発明の文脈において、少なくとも1つの貫通孔が支持層に設けられ、すなわち、上記支持層の厚さ方向に延び、すなわち支持層の対向面を接続する、少なくとも1つの開口部が上記支持層に設けられる。支持層の対向面に対して直交して延びても、又は斜めに延びてもよい。
【0023】
本発明の文脈において、「一連のダクト」という用語により、1つのダクト、2つのダクト又は複数のダクト、例えば3つ以上のダクトに言及する。本発明の文脈において、「一連のダクトの、ダクトの直径」という用語により、ダクトの円形断面の直径に言及し、断面は上記ダクトの最長寸法に垂直に取られる。ダクトがダクト形成材料を浸出させることによって形成されるため、一連のダクトの、ダクトの最大直径は、ダクト形成材料が作られるワイヤの直径に等しいことが明らかである。本発明の文脈において、「交差ダクト」という用語により、上記ダクトの共通の空間をもたらすように交差する少なくとも2つのダクトに言及する。本発明の文脈において、「ダクト形成材料」という用語により、複合フィルター膜にダクトの形成をもたらす材料の層に言及する。
【0024】
本発明の文脈において、「パターン」又は「パターン構成」という用語により、任意の規則的に繰り返される配置、特に表面上の、例えば線、形状の繰返しから作られる設計に言及する。
【0025】
本発明の文脈において、「親水性充填材料」という用語により、水及び他の極性物質との相互作用が油又は他の疎水性若しくは無極性の溶剤との相互作用よりも熱力学的に有利な材料に言及する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に従う複合フィルター膜1を示す。
図1は、複合フィルター膜1であって、半透過性の第1のポリマー材料から作られた濾過層2と、第1のポリマー材料とは異なる第2のポリマー材料から作られ、少なくとも1つの貫通孔4を含む支持層3と、中間層5とを備え、中間層5が、第1のポリマー材料から作られ、濾過層2と支持層3との間に挟まれ、支持層3に溶剤結合し、支持層3の少なくとも1つの貫通孔4に接続した一連のダクト7を備え、上記一連のダクト7が、濾過層2及び中間層5を通過した液体流を、支持層3の少なくとも1つの貫通孔4を通して排出するように構成される、複合フィルター膜を示す。中間層5は、支持層3内にダクト7が存在するため、本質的に支持層3を部分的にしか覆わず、それにより上記ダクトの位置で支持層3の表面との接触の欠如をもたらす。
図1に示されるように、複数の貫通孔が存在する。好ましくは、2つ以上の貫通孔が支持層に含まれるが、少なくとも1つの貫通孔のみが必要とされる。さらに、
図1には、濾過層2と支持層3との間に存在する一連のダクト7も示される。本発明に従うと、一連のダクト7は、1つ以上のダクトを含み得る。
図1に示される一連のダクト7は、全て互いに平行な複数のダクトを含み、それらのダクトの少なくとも1つは、濾過層2と支持層3の少なくとも1つの貫通孔4とを接続し、すなわち、複合フィルター膜1によって濾過される相が、濾過層2を通過し、上記一連のダクト7によって排出され、上記一連のダクト7により、支持層3に存在する少なくとも1つの貫通孔に伝導されるように提供される。言い換えると、上記一連のダクトは、少なくとも1つの貫通孔4に接続し、それにより液体又は気体が本発明による複合膜の一方の側(例えば、濾過層2が露出する側)から膜の別の側(例えば、支持層3が露出する側)へと流れることを可能にする通路を形成することができ、逆もまた同様である。例えば、本発明による膜を固液混合物の分離に使用する場合、固液混合物は、濾過層2が露出する膜の側と接触し、濾過層2は半透過性であり、液体が初めに濾過層2を通って流れ、そこから中間層5内に存在するダクトを通って流れ、ダクト7から支持層3内に存在する少なくとも1つの貫通孔4を通って流れ、それにより支持層3が露出する複合膜1の側で流れが複合膜から出ることが可能となる。
図1においては、濾過層2は、半透過性の第1のポリマー材料から作られるが、支持層3は、第1のポリマー材料とは異なる第2のポリマー材料から作られ、この支持層3は、少なくとも1つの貫通孔4を含み、中間層5は、第1のポリマー材料(濾過層2と同じ材料)から作られる。
【0027】
一連のダクト7は、支持層3と濾過層2との間に挟まれたダクト形成材料12によって得ることができ、ダクト形成材料の材料は、少なくとも部分的に浸出し、上記ダクト形成材料12の位置で一連のダクト7が得られる。
【0028】
一連のダクトを含む中間層5を複合フィルター膜1に導入することにより、支持層3内の貫通孔4の数を減らすことが可能となり、これは幾つかの利点をもたらす。第一に、支持層内の貫通孔4の数を減らすことが可能であるため、支持層4(?貫通孔4)を設けるために必要とされる機械加工が少なくなり、製造時間及び関連コストの削減につながる。第二に、現行の技術水準のフィルター膜と同じ流動性をもたらすために支持層3上に存在させる必要がある貫通孔4がより少ないことから、膜の強度及び剛性を維持することができる。第三に、既存の濾過層2によって得られる流動性及び/又は圧力損失は、本発明による中間層5の使用によって改善することができる。言い換えると、同じ数の貫通孔4を用いる場合、濾過層2と支持層3との間に挟まれる一連のダクト7の存在は、上記一連のダクト7を有しない膜と比較して、より高い流動性及びより少ない圧力損失を可能にすることができる。第四に、好ましくは支持層3に平行な上記一連のダクト7の存在は、濾液の改善された水平流及び支持層3の上の濾液のより均一な分配をもたらし、これも達成される圧力損失及び/又は流動性に有益である。第五に、支持層内の貫通孔がより少ないと、より多くの結合表面が利用可能であるため、支持層と濾過層との間の結合をより強くすることができ、本発明による複合フィルター膜の逆洗能力が高まる。濾過層2、支持層3、中間層5及びダクト形成材料12、並びに本発明の他の実施形態及び態様について、ここで以下に更に説明する。
【0029】
濾過層
本明細書において言及される濾過層2は、連続的であり、1つ以上の成分がそれを通して選択的に輸送されることを可能にする構造を有する、第1のポリマー材料から作られた固体の層又はフィルムを指す。言い換えると、濾過層は半透過性である。濾過層2は、濾過膜であるのが好ましい。本明細書において使用される濾過層2は、液体又は気体であり得る供給物から1つ以上の化合物を分離し、濾過層2を通して、例えばそれらが収集され得る場所まで輸送することを可能にする。濾過層2は半透膜である。濾過層2は、1つ以上の化合物に対して所定の透過性を特徴とし得る。透過選択性は、あらゆる種類の分離機構、例えば、限定されるものではないが、濾過層2の特徴的な細孔径(例えば、マイクロポーラス濾過膜又はナノポーラス濾過膜)、又は特定の電荷タイプの特徴的な引力(例えば、イオン交換膜)によって決定することができる。
【0030】
本発明の具体的な実施形態において、濾過層2の厚さは、約5 μm~900 μmの範囲、好ましくは100 μm~500 μmの範囲である。
【0031】
本発明に従うと、濾過層2は、少なくとも第1のポリマー10を含む第1のポリマー材料から作られる。本発明の更なる実施形態において、第1のポリマー10は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、ポリクロロトリフルオロエテン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンスルフィド、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、これらのポリマーのいずれかのグラフト化された変種、及びこれらのポリマーのいずれかのコポリマーを含む群の1つ又は2つ以上のブレンドである化合物である。(乾燥)(最終)濾過層2中の第1のポリマー10の化合物の量は、有利には少なくとも5重量%、有利には少なくとも10重量%、有利には少なくとも25重量%、有利には少なくとも35重量%、有利には少なくとも50重量%である。
【0032】
濾過層2は、有利には高ポリマー含有量の膜であり、濾過層2のドープとも称される膜形成溶液を用いた相分離によって得られる濾過層2を指し、溶剤含有量に対するポリマー含有量の比率は、少なくとも0.15重量%、有利には少なくとも0.20重量%、有利には少なくとも0.25重量%であり、有利には0.50重量%を超えない。
【0033】
濾過層2及び中間層5の厚さは、広い範囲内で変化させることができ、通常は複合膜の使用が意図される用途の種類によって異なる。場合によっては、膜層の厚さは、可能な限り薄いことが望ましい。しかし、一部の用途、例えば高流束の膜においては、より厚い濾過層2が望ましい場合もある。高流束の膜を使用する場合、高い濾液排液能力が望ましい場合もある。これは、必要とされる容量に対応するのに十分に大きな一連のダクト7が中間層5に存在することで達成することができる。これを達成するために、ダクトの直径を増加させることができる。その際に、濾過層2の厚さも有利には増加させることになる。
【0034】
本発明による濾過層2は、ポリマー溶液を相分離プロセスに供することによって得ることができる。相分離は、転相とも称され、ポリマーと溶剤との間の脱混合が誘起される既知のプロセスである。脱混合の結果として、ポリマーが析出し、それにより所望の構造(細孔径、細孔構造等)を有する膜格子が形成される。溶剤を完全に除去し(例えば、場合によっては熱水浴中で洗浄する)、最終的な細孔構造を得る(例えば、漂白溶液中で洗浄することによって細孔形成剤を除去する)ために更なるプロセス工程を行うことができる。脱混合は、幾つかの技術に基づいて誘起することができる。可能性の1つは、熱誘起相分離(TIPS)であり、ポリマー溶液の界面における温度変化によって脱混合が誘起される。別の可能性は、ポリマー溶液中で化学反応を誘起し、脱混合を引き起こすことである。これは、反応誘起相分離(RIPS)と称される。しかしながら、非常に多くの場合に、脱混合は相拡散によって誘起される。ポリマー溶液を、ポリマーの非溶剤であるが、ポリマー溶液の溶剤と混和性の液体(液体誘起相分離又はLIPS)又は気体(蒸気、蒸気誘起相分離又はVIPSと称される)である別の相と接触させる。液体又は蒸気は、ポリマー溶液を通じて拡散し、ポリマー溶液の組成の局所的な変化を引き起こし、脱混合を誘起する。結果として、ポリマーが溶液から析出する。LIPSは浸漬析出とも称される。本明細書に記載されるような濾過層2を作製するために任意の相分離プロセスが適用され得ることに留意すると好都合である。本発明の本明細書において、「濾過層2のドープを硬直化する/硬直化すること」に言及する場合、溶剤を用いた相分離によるポリマーの析出によって膜を形成する行為自体が言及される。
【0035】
本発明の特定の実施形態に従うと、濾過層2は、少なくとも部分的に、硬直化する必要がある濾過層2のドープである第1のポリマー10から作られる。濾過層2のドープを、上記濾過層2のドープと接触させる必要がある溶剤を用いて硬直化する。特定の実施形態において、濾過層2は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びN-メチルピロリドン(NMP)又はN-エチルピロリドン(NEP)からなる濾過層2のドープであり、NMP又はNEPは、相分離プロセスで使用される溶剤である。
【0036】
濾過層2を相分離プロセスによって得る場合、液体状の濾過層2(濾過層2のドープ)をダクト形成材料12上に注ぐ。次いで濾過層2のドープと溶剤とを接触させ、ドープを硬直化することによって、相分離プロセスを開始させる。これは、ダクト形成材料12に使用される材料が相溶性であり、相分離プロセス、より詳細には上記プロセスに使用される溶剤を妨げないことを意味する。これには、少なくとも硬直化が行われる際に上記相分離プロセスに使用される溶剤とのダクト形成材料12の耐性が主に必要とされる。原則として、相分離プロセス中又は後処理工程中のいずれかで、支持層3及び濾過層2に実質的に悪影響を及ぼさない(例えば完全に溶解する)溶剤で溶解することができる限りにおいて、任意の相溶性ポリマー材料をダクト形成材料12として使用することができる。実際に、支持層3及び濾過層2は、ダクト形成材料12が溶解するのと同じ溶剤に溶解し得るが、これらの状況においては、濾過層2及び支持層3が機能を保持するのを可能にするためには、上記溶剤を使用する時間を慎重にモニタリングして、膜層の溶解又は実質的な形状変化を回避する必要がある。
【0037】
有利には、濾過層2は、濾過層2全体の透過選択性を決定する細孔を含む外層(以下、スキン又はスキン層とも称される)を含む。スキンの細孔は通例、濾過層2の内部の細孔よりも小さい。有利には、スキンは支持層3まで延び、すなわち、スキンは、濾過層2の周縁の少なくとも一部に沿って支持層3と接触する端部を形成する。有利には、スキンは、支持層3と接触する端部を形成し、端部が支持層3上で濾過層2を完全に包囲する又は取り囲む。スキンが端部(複数の場合もある)に沿って濾過層2を密封するため、追加の密封が必要とされないことが分かる。したがって、このスキン端部は密封端部であり、膜をポリマー溶液として支持層3上に直接キャスティングする場合に得ることができる。
【0038】
本発明の実施形態に従うと、第1のポリマー10の化合物は、膜のマトリックス又は格子を形成する有機結合剤とすることができ、その中に親水性充填材料を任意に分散させることができる。かかる充填材料は、本発明による複合膜の利用前に除去すべき細孔形成剤である。除去は後処理工程において、例えば漂白溶液(例えばPVP用)での洗浄によって行うことができる。充填材料は、有機ポリマーであってもよく、有利にはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びグリセロールを含む群からの1つ又は2つ以上のポリマーの組合せである。好ましくは、本発明の実施形態に従うと、濾過層2は、約0.5 nm~50 μm、好ましくは約5 nm~5 μm、最も好ましくは約0.05 μm~0.5 μmの範囲の細孔径を有する細孔を備える。使用前の濾過層内に分散可能な充填材料はアミン、例えば、限定されるものではないが、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、ポリエチレンイミン(PEI)、アミノプロピルトリメトキシシラン及びポリエチレンイミントリメトキシシランを含む群からの1つ又は2つ以上の濾材の組合せであり得る。充填材料は、アミド含有ポリマー又はアミン含有ポリマー、例えば、限定されるものではないが、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアミン(PVArm)及びメラミンの1つ又は組合せであり得る。
【0039】
本発明の更なる実施形態において、濾過層2は親水性充填材料12、有利にはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びグリセロールの群からの1つ又は2つ以上の組合せを更に含む。
【0040】
本発明の更なる実施形態において、濾過層2は、約1重量%~約15重量%の上記親水性充填材料12を含む。
【0041】
支持層
本発明に従うと、支持層3は、第1のポリマー材料とは異なる第2のポリマー材料から作られ、支持層3は、半透過性の濾過層2によって濾過された濾液の複合フィルター膜1を横切る排出を可能にする1つ以上の貫通孔4を含む。支持層3は、支持層3及び濾過層2と直接接触する中間層5に構造的支持を与え、所望の機械的強度を確実にする。言い換えると、支持層が構造的剛性及び濾液の排出をもたらす。特に、支持層3は複合フィルター膜2(?複合フィルター膜1 or 濾過層2)の剛性を改善し、それにより中間層5及び濾過層2の破断又は損傷のリスクを低減する。このことは、本発明の複合フィルター膜1を逆洗に供する場合に特に重要である。
【0042】
上記貫通孔4は、支持層3の一方の外表面から反対の外表面まで支持層の厚さ全体にわたって延びる。貫通孔は、支持層を斜角で、したがって90度よりも大きい又は小さい角度で貫通してもよいが、好ましくは支持層の両表面に垂直な方向に沿って延び、したがって支持層を約90度の角度で貫通する。支持層が幾つかの貫通孔を含む場合、これらの貫通孔は、有利には支持層3内で互いに繋がっていない。貫通孔4は、当業者が適切と考える任意の断面形状を有することができ、すなわち規則的な幾何学的図形の形状を有し、例えば円形、正方形、六角形等の多角形、星形若しくはスリット形の孔であってもよく、又は貫通孔4は、任意の他の好適な形状を有し得る。しかしながら、貫通孔4は、円形又は多角形の断面を有することが好ましい。更に好ましい実施形態によると、貫通孔4は、有利には実質的に円筒又は角柱の形状を有し、有利には支持層の外表面に垂直な軸を有する。
【0043】
支持層3は、有利には少なくとも0.01%の開放表面積(OSA)を示す。総面積を定義する際には、流体密封シールされ得る支持層3の周辺端部は無視される。支持層3のOSAは、有利には、一方では支持層3の面を通る十分な流束を与える必要があるため低すぎず、他方では支持層3の強度を損なわないように高すぎないことが望ましい。OSAが高いと、貫通孔4がより大きく、及び/又はより多くなり、これにより支持層3の剛性が低くなり、曲がりやすくなる。
【0044】
本発明の更なる実施形態において、支持層3は、複数の貫通孔4を有し、支持層3の全面積の約0.01%~約10%、特に0.1%~5%の範囲の開放表面積(OSA)を有する。特定の実施形態において、支持層3は、ポリカーボネート(PC)又はポリ塩化ビニル(PVC)からなり、約0.01%~約10%の範囲、特に約0.1%~5%の範囲のOSAを有する。貫通孔4の大きさは、約0.1 mm~約4.0 mm、特に約0.1 mm~約1.0 mmの範囲である。
【0045】
外周部を密封するために、支持層3は濾過層2よりも広いのが好ましい。
【0046】
支持層3は、単層材料であってもよく、又は多層構造であってもよく、連続する層は、金属等の非ポリマーを含む異なる材料から作られ得る。代替的には、支持層3は、異なる化合物で形成された構造で形成されていてもよく、濾過層2との界面を形成する支持層3の外表面で、第2のポリマー11の化合物が、第1のポリマー10の化合物との十分に強い相互作用を引き起こすのに十分な量で存在するように、構造全体にわたって1つ以上の化合物の勾配を有する。
【0047】
本発明に従うと、支持層3が作られる第2のポリマー材料は、少なくとも第2のポリマーを含む。第2のポリマー11の化合物は、広範な化合物から選択することができ、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、それらのグラフト化された変種、又はポリマーのいずれか1つのコポリマーであり得る。第2のポリマー11の化合物は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、それらのグラフト化された変種、又はポリマーのいずれか1つのコポリマーであり得る。第2のポリマー11の化合物は、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、それらのグラフト化された変種、又はポリマーのいずれか1つのコポリマーであり得る。第2のポリマー11の化合物は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)ファミリーのポリマー、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、これらのポリマーのいずれかのグラフト化された変種、例えばスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK-WC)、又はこれらのポリマーのいずれか1つのコポリマーであり得る。第2のポリマー11の化合物は、ポリクロロトリフルオロエテン(PCTFE)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリウレタン(PUR)、特に熱可塑性ポリウレタン、これらのポリマーのいずれかのグラフト化された変種、又はこれらのポリマーのいずれか1つのコポリマーであり得る。第2のポリマー11の化合物は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、セルロースアセテート(CA)、セルローストリアセテート(CTA)、これらのポリマーのいずれかのグラフト化された変種、又はこれらのポリマーのいずれかのコポリマーであり得る。第2のポリマー11の化合物は、ポリカーボネート(PC)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリフェニレンスルフィド(PPS)、これらのポリマーのいずれかのグラフト化された変種(アミノ化、スルホン化又はアクリル化等)、又はこれらのポリマーのいずれかのコポリマーであり得る。第2のポリマー11の化合物は、ポリエチレン(PE)、塩素化ポリエチレン(CPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、場合によっては共重合によって変性されたもの、例えばPET-G(グリコール変性)、非晶質PET(PET-A)又はPET-GAG(A-PETコアを有する多層PET-G箔)であり得る。上に示した化合物の組合せを支持層3の作製に使用することもできる。
【0048】
したがって、本発明の実施形態に従うと、支持層3は、第2のポリマー11を含み、第2のポリマー11の化合物は、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(メチルメタクリレート)、ナイロン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、ポリクロロトリフルオロエテン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンスルフィド、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、これらのポリマーのいずれかのグラフト化された変種、及びこれらのポリマーのいずれかのコポリマーから選択される1つ又は2つ以上のポリマーのブレンドである。
【0049】
支持層3中の第2のポリマー11の化合物の量は、支持層の重量に対して、有利には少なくとも5重量%、有利には少なくとも10重量%、有利には少なくとも25重量%、有利には少なくとも35重量%、有利には少なくとも50重量%である。支持層3は、ガラス繊維、玄武岩繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ及びガラスビーズ等の補強材料又は充填材料を含み得る。本発明の実施形態に従うと、中間層5及び濾過層2の両方によって覆われる支持層3の面積は、支持層上の利用可能な面積の好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも99.9%である。支持層の厚さは、広い範囲内で変化させることができるが、本発明によると、支持層3の好ましい厚さは、約50 μm~約1000 μmである。
【0050】
中間層
本発明に従うと、中間層5が支持層3と濾過層2との間に配置される。言い換えると、中間層5は、支持層3と濾過層2との間に挟まれる。中間層は、濾過層2によって、好ましくは完全に覆われたダクト形成材料12の部分(単数又は複数)の溶解によって形成される。ダクト形成材料の浸出後に一連のダクトが形成され、それが支持層3の貫通孔4を少なくとも部分的に覆い、そこへのアクセスをもたらす。このようにして、ダクト形成材料の溶解後に形成された一連のダクトは、少なくとも1つの貫通孔に接続し、それにより液体の流れが上記一連のダクト7を介して濾過層2、中間層5及び支持層3を通過することを可能にする。中間層5内のダクト7は、好ましくは支持層に対して実質的に平行であるが、支持層内に斜めに存在することもできる。したがって、本発明に従うと、中間層5は、支持層3と濾過層2との間に挟まれるダクト形成材料12の少なくとも部分的な溶解によって形成される。したがって、ダクト形成材料12は、本発明による複合フィルター膜1には実質的に存在せず、膜が意図された濾過目的に利用される前にのみ存在する。本発明に従うと、中間層5は、濾過層が作られるのと同じポリマー材料である第1のポリマー材料から作られる。
【0051】
本発明の実施形態に従うと、濾過層2の厚さと中間層5の厚さとを合わせた厚さは、約50 μm~1 mmの範囲である。本発明の実施形態に従うと、中間層の厚さは、濾過層2と中間層5とを合わせた厚さの約10%~90%であり、一実施形態においては、濾過層2の合わせた厚さの約20%~約60%、有利には上記合わせた厚さの33%である。
【0052】
本発明の一実施形態において、中間層5は、支持層3に平行な平面内にあり、上記支持層3を少なくとも部分的に覆う。本発明の更なる実施形態において、一連のダクト7のダクトは、約10 μm~約750 μm、有利には約100 μm~約350 μmの直径を有する。本発明の更なる実施形態において、一連のダクト7は、交差ダクト8を含む。交差ダクト8は、複合膜上への排出された液体の分配を可能にし、液体の排出を容易にする。したがって、一連のダクト7のダクト8は、互いにアクセスが可能であっても又はそうでなくてもよいが、互いにアクセスすることが好ましい。本発明の更なる実施形態において、ダクト7は、ヘリンボーン、チェッカーボード等から選択される規則的な幾何学パターン9に従って配置される。中間層内に存在する一連のダクト7がダクト形成材料12の浸出によって得られることから、一連のダクト7のパターンは、ダクト形成材料12のパターンから直接得られる。
【0053】
ダクト形成材料
本発明の実施形態に従うと、ダクト形成材料12は、濾過層2を適用する前、例えば濾過層2を支持層3の上に適用して製造する際に用いられる相分離プロセスの前にメッシュ等のパターンの形状で支持層3上に適用される。中間層5を支持層3上の所望の位置に適用することを可能にするために、ダクト形成材料12は、印刷技術を用いて適用するのが好ましい。
【0054】
ダクト形成材料12は、濾過層2の硬直化に使用される溶剤、すなわち第1の溶剤に対して耐性を有しない場合がある。第1の溶剤と接触すると、ダクト形成材料12は溶解し、しばらくすると形状が大なり小なり失われることがある。ダクト形成材料12の形状保持を確実にし、一連のダクトの形成を可能にするために、第1の溶剤との接触時間は、可能な限り短く保つことが好ましい。接触時間は、好ましくは10分以下、より好ましくは0.1秒~10分である。
【0055】
本発明の更なる好ましい実施形態において、ダクト形成材料12は、支持層の表面積に対して約10%~約75%、特に約20%~約50%の比被覆率で支持層3を覆う。
【0056】
ダクト形成材料12の適用は、種々の技術、例えば(i)スクリーン印刷、(ii)単層印刷技術(3D印刷)、(iii)エレクトロスピニング等、又は当業者が適切と考える任意の他の技術を用いて行うことができる。
【0057】
スクリーン印刷(i)は、ブロッキングステンシルによってインクが浸透しなくなった領域を除き、メッシュを用いてインクを基材に転写する印刷技術である。ブレード又はスキージを、スクリーンを横切って移動させ、開いたメッシュ開口部をインクで満たし、逆ストロークによってスクリーンを接触線に沿って瞬間的に基材に接触させる。これにより、インクが基材を濡らし、ブレードが通過した後にスクリーンが跳ね返る際にメッシュ開口部から引き出される。一度に1色が印刷されるため、幾つかのスクリーンを使用して多色の画像又はデザインを作成することができる。
【0058】
単層印刷技術(ii)は、3D印刷に似ているが、複数の層を構築する代わりに1つの層のみを構築するという違いがある。熱溶解積層印刷技術を用いることで、ノズルから押し出された熱可塑性材料の連続フィラメントを水平面、すなわち層として堆積させることができる。ノズルは三次元的に動かすことができ、動きはコンピューター制御される。このようにして、所定の形状を作り出すことができる。
【0059】
エレクトロスピニング(iii)は、電気力を用いてポリマー溶液又はポリマー融液の帯電した糸を数百ナノメートル程度の繊維径まで引き出す繊維製造法である。エレクトロスピニングは、エレクトロスプレー及び従来の繊維の溶液乾式紡糸との両方の特性を併せ持つ。このプロセスには、溶液から固体の糸を製造するために凝固化学又は高温の使用は必要とされない。このため、このプロセスは、大きく複雑な分子を使用する繊維の製造に特に適している。溶融した前駆体からのエレクトロスピニングも行われる。この方法は、溶剤が最終製品に持ち越され得ないことを確実にする。
【0060】
図2は、本発明に従うダクト形成材料12の一例を示し、ダクト形成材料は、PVAウェブであり、支持層の50%の比被覆率をもたらす。より具体的には、
図2は、支持層の50%の比被覆率をもたらす、高さが0.1 mm、ワイヤ幅が1 mm、正方形の各辺の長さが3.25 mmのPVAのウェブを示す。
図2に示すウェブは、円形ではない。ワイヤの高さは、ワイヤの断面について測定され、高さは支持層の平面に垂直な方向に沿って測定され、幅は支持層に平行な方向に沿って測定される。ウェブは、水溶性となるようにPVAから作られ、更なる工程で溶解し、支持層と濾過層との間に挟まれた中間層にダクトを残すことができる。PVAは、比較的冷たい水(25℃~40℃)で溶解する。
【0061】
ダクト形成材料12が濾過層2の硬直化に使用される溶剤に溶解しない場合、複数のダクトは、組み立てられた膜を中間層5に適切な溶剤に曝露することによって中間層5内に得られ、中間層5が浸出して、支持層3と濾過層2との間に配置された一連のダクト12(?7)が得られる。
【0062】
ダクト形成材料12のポリマーは、大抵の場合、溶剤(これにより溶剤結合が生じる)に可溶であるが、これは必須ではない。ポリマーは、濾過層2がその固体構造に達するまで、十分に長い時間にわたって構造を保持する必要がある。これは数秒から数分程度の接触時間である。ダクト形成材料12の層は、支持層3の表面全体にわたって中間層5に相互接続したダクトのパターン9をもたらし、上記パターン9は、複合フィルター膜1が組み立てられ、第1のポリマー10と第2のポリマー11とが結合した後にダクト形成材料12を浸出させることによって得られる。
【0063】
以上のことから、ダクト形成材料12の層が支持層3の表面全体にわたってその一部に適用されることが分かる。支持層の表面の一部は、ダクト形成材料によって覆われず、これらの位置で支持層3が濾過層2と接触し、これらの層の間に溶剤結合が確立され得る。したがって、ダクト形成材料12の層は、支持層3の約10%~75%を覆うヘリンボーンパターン又はチェッカーボードパターン等の規則的な幾何学パターン9に従って支持層上に適用することができる。
【0064】
好ましい実施形態において、ダクト形成材料12は、約10 μm~約750 μm、有利には約100 μm~約350 μmの直径(ダクト形成材料の断面が円形の断面を有する場合)又は高さを有する交差させたワイヤの使用によって形成されている。ワイヤは、必ずしも円形である必要はなく、限定されるものではないが、円形、楕円形、長方形、半円形等の様々な形状から選択することができる。ダクト形成材料12の層は、上記貫通孔4の位置で又はスポット溶接によって支持層3に付着させることができる。ダクト形成材料12の層がその後溶解するため、中間層5を支持層3の他の場所に接続させる必要はない。
【0065】
有利には、ダクト形成材料12は、濾過層2に存在する可能性がある充填材料と同じ材料から作られていてもよい。このようにして、濾過層2内の細孔の形成及び一連のダクト7を含む中間層5の形成を、単一の後処理工程で同時に達成することができる。ダクト形成材料12は、有機ポリマーから作られていてもよく、有利にはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びグリセロールの1つ又は組合せである。
【0066】
濾過される相を排出する能力が最も高い一連のダクト7を作り出し、したがって流動性を改善するために、ダクト形成材料12の層を適用し、支持層3内の貫通孔4の少なくとも一部、好ましくは全部を覆うことが望ましい。別の表現をすると、ダクト形成材料12の層を適用し、支持層3の開放表面積の少なくとも一部、特に少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、好ましくは全部を覆うことが望ましい。このようにして、ダクト形成材料12が溶解すると、一連のダクト7が支持層3上で貫通孔4と接続する。このようにして、一連のダクト7及び貫通孔4を通した濾液の排出が改善された流動性で達成される。複合フィルター膜1の製造においては、例えば、ダクト形成材料12を形成するゲル状物質が、上記支持層3内の貫通孔4全体にわたり、支持層3の外表面にパターン9に従って適用される。ゲル状物質は、それに応じて支持層3の貫通孔4を貫通するか又は覆う。ゲル状物質の固化後に、ダクト形成材料12の層が形成される。次いで、ダクト形成材料を濾過層形成材料の層で覆うことができる。
【0067】
本発明の実施形態に従うと、濾過層2は、第1のポリマー10の多孔質層であり、支持層3は、通常は複数の貫通孔4を含む第2のポリマー11のシートからなる。第1のポリマー10及び第2のポリマー11は、ポリマー絡合を得ることができるように選択される。通常は、第1のポリマー10及び第2のポリマー11に共通の溶剤を使用して、第1のポリマー10及び第2のポリマー11を少なくとも部分的に溶解することで、第1のポリマー10と第2のポリマー11との間にポリマー絡合による結合形成が起こるようにする。
【0068】
前述のように、中間層5と支持層3との結合は、溶剤結合によって実現される。このプロセスにおいては、支持層3の表層は、溶剤の作用により軟化又は(少なくとも部分的に)溶解する。有利には、溶剤結合をもたらす溶剤は、濾過層2の製造のための相分離プロセスに使用されるのと同じ溶剤である(濾過層2のドープを硬直化する溶剤を意味する)。これにより、支持層3のポリマー鎖は、濾過層形成材料の層のポリマー鎖と相互作用するのに十分に可動性となる。さらに、濾過層形成材料の層のポリマー及び支持層3のポリマーが相溶性である場合、限定されるものではないが、濾過層形成材料の層と支持層3との間の界面で起こる2つのポリマーの鎖間の(部分的な)相互貫入及び絡合等の十分に強い分子間相互作用を達成することができる。驚くべきことに、濾過層2のドープを硬直化するために相分離を行う場合、これらの分子間相互作用は消失せずに恒久的なものとなり、強い結合が生じる。
【0069】
支持層3と中間層5との間の結合を得るためには、中間層5と支持層3とが、第1のポリマー10の化合物(濾過層2及び濾過層形成材料の層に含まれる)が支持層3と分子レベルで相互作用し得る界面を共有する必要があることが理解されよう。したがって、形成される中間層5との界面を形成する支持層3の少なくとも外表面層、場合によっては支持層3全体が、濾過層2/濾過層形成材料の層/中間層5の第1のポリマー10と相互作用することができる第2のポリマー11の化合物を含むか、又はそれからなる。第1のポリマー10の化合物及び第2のポリマー11の化合物の両方が、界面に存在する必要があり、さらに、第1のポリマー10と第2のポリマー11との間の相互作用が起こるためには、第1のポリマー10及び第2のポリマー11の化合物が相溶性である必要があり、例えば同様のヒルデブラント溶解度パラメーターを有する。分子運動性及び第1のポリマー10と第2のポリマー11との間の相互作用により、有利には、第1のポリマー10の化合物のポリマー鎖は、中間層5と支持層3との間の界面で第2のポリマー11の化合物のポリマー鎖に貫入し、及び/又はそれと絡み合う。
【0070】
第2の態様において、本発明は、本発明に従って規定される複合フィルター膜1の製造方法であって、(a)少なくとも1つの貫通孔4を有する支持層3を設ける工程と、(b)上記支持層3上に、支持層3の全表面を部分的に覆い、上記支持層3の少なくとも1つの貫通孔4を少なくとも覆う構成のダクト形成材料12の層を設ける工程と、(c)工程(b)で設けられたダクト形成材料12の層上に濾過層形成材料の層を設け、それによりダクト形成材料12を覆う工程と、(d)支持層3と濾過層形成材料の層とを第1の溶剤によって溶剤結合し、上記支持層3と上記濾過層形成材料の層との接着を引き起こし、それにより濾過層2を形成する工程と、(e)工程(b)で設けられたダクト形成材料12を第2の溶剤によって少なくとも部分的に溶解し、それにより一連のダクト7を有する中間層5を形成する工程とを含む、製造方法を提供する。
【0071】
本発明の実施形態に従うと、工程(b)は、(c1)ダクト形成材料12の層上に濾過層2のドープを供給する工程と、(c2)工程(c1)で供給された濾過層2のドープを第3の溶剤によって硬直化し、それにより濾過層2を設ける工程とを含む。
【0072】
本発明の実施形態に従うと、方法は、(c)好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びグリセロールの1つ又は組合せから選択される充填材料を含む濾過層形成材料の層を設ける工程と、
(f)濾過層2に含まれる充填材料を第4の溶剤によって溶解する工程と、
を更に含む。
【0073】
本発明の実施形態に従うと、方法は、工程(d)及び工程(e)を共通の溶剤又は溶剤の混合物によって同時に(contemporary)行うことを更に含み、すなわち、第1の溶剤及び第2の溶剤は同じである。本発明の更なる実施形態に従うと、方法は、工程(e)及び工程(f)を共通の溶剤又は溶剤の混合物によって行うことを更に含み、すなわち、第2の溶剤及び第4の溶剤は同じである。
【0074】
本発明の実施形態に従うと、方法は、工程(a)(?b)において、ダクト形成材料12の層が約10%~約75%、特に約20%~約50%の支持層の比被覆率で支持層3を覆うように設けられる。
【0075】
図3は、本発明に従う複合フィルター膜1のロールツープレート製造ラインにおける製造を可能にする一連の工程を示す。以下、工程A~工程Jで、本発明による複合フィルター膜1を製造する一般的な方法を説明する。例えば、限定されるものではないが、一連の工程は、以下の連続する工程:工程A、未処理の支持材料を展開する工程;工程B、未処理の支持材料を穿孔し、貫通孔を設ける工程;工程C、穿孔した支持材料を洗浄し、それにより使用可能な支持層を得る工程;工程D、支持層の上にダクト形成材料の層を適用する工程;工程E、濾過層形成材料の層、例えば濾過層ドープを適用する工程;工程F、洗浄工程;工程G、後処理工程;工程H、調整及び乾燥の工程;工程I、得られた複合フィルター膜を切断する工程;工程J、得られた複合フィルター膜を積層する工程を含み得る。例えば濾過層ドープが必要とされず、濾過層をダクト形成材料の層上に直接配置することができるか、又は例えば後処理工程が必要とされない場合、
図3に記載する工程は、例えば濾過層を形成する技術に基づいて異なっていてもよい。上に挙げた工程を以下でより詳細に説明する。
【0076】
工程A:展開
未処理の支持材料を有するコイルは、コイルの軸が製造方向に垂直となるように水平に置かれる。このプロセスは、通常は「アンコイリング」と称されアキュムレータを用いて伸長することができる。アキュムレータは、製造を停止することなくコイルを交換する必要がある場合に実装され得る。コイルのアンコイリング及び位置決めのための装置は、あらゆる種類の製造業でよく知られている。
【0077】
工程B:穿孔
シート材料は、濾過された水を排出するための貫通孔4を備える。貫通孔4は、直径が例えば1 mmの円形であるのが好ましい。貫通孔4は、互いに明確に規定された距離をおいてピッチパターンで配置されるのが好ましい。最も明白なパターンは、正方形、三角形又は長方形である。他のパターンも可能である。貫通孔4は、必ずしも円形である必要はなく、例えば長方形の形状、三角形、楕円形等であってもよい。表面全体を穿孔する必要はない。穿孔領域を囲んで規定の余白(穿孔していない材料)を残す。
【0078】
貫通孔4を作り出すために種々の技術が提供され得る。シート材料を穿孔するための最も一般的な技術は、「型抜き」である。小さい表面には、平台穿孔機が適している。表面が大きくなると、回転穿孔機を検討する必要がある。
【0079】
工程C:洗浄
塵及び穿孔プロセスの残滓を除去するために、洗浄工程を行う必要がある。これは高空気流又は除塵装置で行うことができる。また、フィルム材料の脱脂も無視することができない。脱脂が適切に行われないと、濾過層2の接着が十分に効率的でなくなる。一方、潤滑剤を添加せずに穿孔工程を行う場合、脱脂工程を単純化することができる。材料の供給業者が製造現場で脱脂を行ってもよい。例えば、脱脂剤としてEtOH又はイソプロピルアルコールを使用することができる。大量に使用する場合、他の産業用薬剤がより適切であり得る。
【0080】
工程D:ダクト形成材料の層の適用
本工程Dでは、本発明に従う複合フィルター膜1の製造の第1の工程の特定の実施形態を説明し、支持層3上に、支持層3の全表面を部分的に覆い、上記支持層3に存在する少なくとも1つの貫通孔4を少なくとも覆う構成のダクト形成材料12の層を設ける工程(a)を行う。ダクト形成材料12の層は、支持層3に対して位置決めされ、互いに固定されているように適用する必要がある。このダクト形成材料12の層は、製造プロセスにおいて濾過層形成材料の層をキャスティングし、固化した後(濾過層形成材料の層が濾過層ドープである場合)、又は既成の濾過層が支持層上に配置された後に除去されるため、犠牲的である。ダクト形成材料12の除去後に、ダクト6が露出する。ダクト形成材料12の層の材料の選択は、例えば濾過層ドープ(膜ドープとも称される)が上にキャスティングされた場合、及び上記濾過層ドープの固化プロセスにおいて、互いに接続し、その形状を維持する細いワイヤを作り出す上記材料の能力によって決まる。ダクト形成材料12の層は、コーティングにより、又は既製のメッシュ材料としてラミネートすることにより適用することができる。スクリーン印刷プロセスは、支持層3の表面上にチェッカーパターン状に広がることができる液体溶液を使用することにより、ダクト形成材料12の層のコーティングに使用される興味深い工業プロセスであり得る。プロセスを数回行うことにより、2つ以上の層を適用し、必要とされる高さを作り出すことができる。液体溶液は、流れ出し、その形状が失われるのを回避するために粘性でなくてはならない。粘度は、製造の次の工程(濾過層2のコーティングプロセス)を行う前に、ほぼ固体の状態まで上昇させる必要がある。この場合、追加の工程(例えば、UV硬化又は熱による蒸発)が行われる可能性が最も高い。さらに、例えば3D印刷技術を用いて、ダクト形成材料12の層を作り出すことができる。ポリマーフィラメントを加熱押出ノズルに通すことにより、ポリマーが溶融し、より細いフィラメントに再形成され、これを担持層上に配置することができる。押出機を特定の経路で動かすことにより、メッシュ状のパターンを作り出す。ダクト形成材料12の層を浸出させることによって得られる中間層5は、有機物であってもよく、有利にはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びグリセロールの1つ又は組合せである。通常はメッシュ状であるダクト形成材料12の層は、複合フィルター膜1を組み立てた後、例えば水溶液(例えばPVPの場合)で洗浄して除去することもできる。ポリマーの除去により、中間層5内に一連のダクト7が残る。
【0081】
工程E:濾過層の適用
本工程では、本発明に従う複合フィルター膜1の製造の第2の工程の特定の実施形態を説明し、ダクト形成材料12の層上に濾過層形成材料の層を設ける工程(b)を行う。濾過層形成材料の層から得られる濾過層2は、多孔質又は非多孔質のポリマー層である。これは或るものを通過させ、他のものを阻止する。かかるものは分子、イオン又は小粒子であり得る。濾過層形成材料2の層は、熱力学的に安定したポリマー溶液、言い換えると濾過層ドープであっても、又は既に硬直化して設けられてもよい。最終組成のフィルター膜に濾過層2を作り出すためには、種々の技術を用いることができる。それぞれの技術は、特定のポリマー組成を必要とし、それにより別の結果(細孔径、化学的安定性等)が得られる。例えば、MBR(膜バイオリアクター)用途に適した多孔質膜を作り出すために、細孔径は0.03 μm~0.3 μmの範囲であるのが好ましい。使用することができる濾過層ドープは、NMPに溶解したPVDFポリマーをベースとした開発組成物である。追加のPVPを充填材料として添加することができる。濾過層ドープを非溶剤(H2O)に浸漬すると、液-液抽出により固化する。この手順により、濾過層2の厚さにわたって細孔の非対称構造が生じる。最も小さい細孔は、形成された濾過層2の外側(最初の接触で最も高い溶剤-非溶剤勾配)にあり、薄いスキン層を作り出す。より大きな細孔は、濾過層2の下部構造に形成される。したがって、本発明に従う更なる実施形態において、ダクト形成材料12の層上に濾過層2を設ける工程は、(c1)ダクト形成材料12の層上に濾過層2のドープを供給する工程と、(c2)工程(c1)の濾過層2のドープを第3の溶剤によって硬直化し、それにより濾過層2を設ける工程とを含む。本発明の実施形態に従うと、濾過層2は、支持層3の上にあるダクト形成材料12の層上にコーティングされる。適用される層の厚さは、その後の膜スキン層の欠陥を回避するために、ダクト形成材料12の層の厚さよりも厚くする必要がある。ダクト形成材料12の層の開放領域も濾過層ドープで充填される。濾過層ドープを固化するために、非溶剤として作用する水に構造体を浸漬する。最低限の滞留時間が膜構造体内の溶剤の希釈に必要とされる。次のプロセス工程を開始するためには、濾過層2を殆ど固化させる。濾過層2のドープ中に存在する溶剤は、支持層3と接触し、表面を部分的に溶解する。その時点でポリマー絡合が起こる。ポリマー絡合を達成することは、本発明による複合フィルター膜1を逆洗し得るように支持層3が濾過層2に接着するために重要である。支持層3が濾過層2に十分に強く接着していなければ、逆洗時に空気又は液体によって加えられる圧力により、濾過層2が支持層3から剥離する可能性がある。濾過層と支持層との間のこの結合は、使用する材料の組合せが適切に選ばれた場合にのみ可能である。より具体的には、濾過層形成材料の層及び支持層を構成する材料は、例えば濾過層ドープ溶液に使用され得る共通の溶剤の作用により軟化するか、又は少なくとも部分的に溶解することによって選ばれる。支持層3及び濾過層形成材料の層の両方をかかる共通の溶剤に曝露することによって、それにより形成された濾過層2と支持層3との間にポリマー絡合による強い結合が生じる。上記共通の溶剤は、通常はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び酢酸ジメチル(DMAc)等の非プロトン性溶剤である。かかる結合は、ポリカーボネート(PC)又はポリ塩化ビニル(PVC)からなる支持層と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びN-メチルピロリドン(NMP)又はN-エチルピロリドン(NEP)からなる濾過層ドープとによって達成することができる。さらに、ダクト形成材料12の層を構成する材料、例えば水溶性ポリマー材料は、ダクト形成材料12の層が、ポリマー絡合による濾過層形成材料2の層と支持層3との結合に使用される共通の溶剤によって急速に溶解しないようなものでなくてはならない。濾過層形成材料の層が共通の溶剤によって溶解し得る場合、共通の溶剤により、ダクト形成材料12の層の溶解によって形成されたダクト6がその形状を保持することができるようにプロセスを微調整することが必要である。本工程では、本発明に従う複合フィルター膜1を製造する第4の工程の特定の実施形態を説明し、ダクト形成材料12の層を少なくとも部分的に溶解し、それにより一連のダクト7を有する中間層5を形成する工程(e)が提供される。ダクト形成材料12に使用するポリマーによっては、ダクト形成材料12の層が、このプロセス工程後に既に完全/部分的に溶解していることもあり得る。加水分解性の低いPVAを使用する場合、確実にそのようになる。一方、ダクト形成材料12の層にPVPを使用する場合、後の製造工程、例えば工程Gでこれを除去する必要がある。
【0082】
工程F:洗浄
洗浄工程では、得られた濾過層2から残留する溶剤を全て洗い落とす。この工程は先の工程の延長である。洗浄工程は、濾過層ドープを固化するのに使用した溶剤と同じ溶剤、すなわち、濾過層ドープを使用した場合は、濾過層ドープに対する非溶剤を用いて行うことができる。さらに、より高い温度及び対流がプロセスを加速することが分かっている。
【0083】
工程G:後処理
後処理は、濾過層2からPVP等の添加剤を除去するための追加の洗浄工程である。通例、次亜塩素酸塩(NaOCl)を使用して、PVPを酸化し、鎖の切断を引き起こす。このようにして、残留するPVPを容易に洗い流すことができる。滞留時間を短縮するには、温度を僅かに上昇させることが有益であり得る。この時点で、ダクト形成材料12は、先の製造工程において未だ溶解していない場合、洗い流すこともできる。したがって、本発明に従う更なる実施形態において、方法は、
(f)濾過層2に含まれる充填材料を溶解すること、
を更に含む。
【0084】
工程H:調整及び乾燥
大抵の場合、複合フィルター膜1を輸送及び/又は保管の前に乾燥させる。複合フィルター膜1の乾燥は、制御された方法で行う必要がある。うまく行われない場合、濾過層2内の細孔が崩壊する可能性があり、再湿潤後に活性な細孔が少なくなる。また、乾燥させた崩壊していない細孔は、再湿潤させることが困難であり得る。より小さな細孔は最大許容圧力を超える高い液体侵入圧を必要とする。特に濾過層2の材料が温和又は非親水性である場合がそうである。上で特定した欠点を回避するために、複合フィルター膜1を調整する必要がある。複合フィルター膜1の調整とは、複合フィルター膜1を水中のグリセロールの含有量が高い(最大30%)温水浴内に一定時間浸漬することを意味する。乾燥が起こり得る前に細孔をこの高濃度グリセロール溶液で充填する必要がある。複合フィルター膜1の表面上を循環する加熱空気によって乾燥を行うことができる。水分が蒸発する間にグリセロール濃度が上昇する。特に、小さな細孔がゲル状のグリセロール物質で充填され、水の大半が蒸発した後に残る。複合フィルター膜1を再湿潤させようとする場合、膜を水に浸漬することでグリセロールが溶解し、その後容易に洗い流すことができる。
【0085】
工程I:切断
複合フィルター膜1のシートは、積層及び/又は包装の準備のために特定の幅及び長さに切断される。後の取扱いのために複合フィルター膜1の周りに最小限の余白を残しておく必要がある。切断はダイクロス切断機で容易に行うことができる。
【0086】
工程J:積層
複合フィルター膜1のシートを省スペースで保管するために、積層が推奨される。複合フィルター膜1の表面は、脆弱であり、慎重に取り扱う必要がある。各シート間の保護フィルム材料が必要な予防措置である。複合フィルター膜1の積層及び/又は包装のために、複数の機械が市販されている。第3の態様において、本発明は、その実施形態によって定義される複合フィルター膜1の使用に関する。例えば、複合フィルター膜1は、濾過複合膜として種々の技術分野及び種々の目的で使用することができる。本発明に従う複合フィルター膜1は、精密濾過プロセス又は限外濾過プロセスに使用するのに特に適している。さらに、本発明の複合フィルター膜1は、工業廃水処理における濾過膜として、より具体的には膜バイオリアクター(MBR)用の膜として特に適している。さらに、本発明による複合フィルター膜1は、逆洗され得る濾過膜として特に有用である。
【実施例】
【0087】
実験部
図4に示す複合フィルター膜1の製造を実施例1において説明する。
【0088】
図4は、本発明に従う複合フィルター膜の断面を示し、複合フィルター膜1は図の上部の濾過層2、図の下部の支持層3、及び上記濾過層2と上記支持層3との間に挟まれる中間層5を備え、上記中間層5は上記支持層3に溶剤結合し、図の中央の可視ダクト6を備える。上記ダクト6は、例えば液体をダクト6、続いて支持層3の少なくとも1つの貫通孔4を介して排出することを可能にする。貫通孔4は、複合フィルター膜1の断面の撮影方法に起因して、
図4では見えない。
図4に示す複合フィルター膜1は、以下の材料から作られている:支持層3、PVC;濾過層2、濾過層ドープは、PVPを充填材料としたPVDF/NMP混合物をベースとする;ダクト形成材料12の層、部分的に加水分解されたPVAのフィラメント。
図4に示す複合フィルター膜1の詳細な製造を実施例1において説明する。
【0089】
実施例1
図4に示す複合フィルター膜1の製造。支持層3を準備する工程、ダクト形成材料12の層を塗布する工程、濾過層形成材料の層(この場合は濾過層ドープ)を塗布し、それを硬直化する工程、残留溶剤を洗い流す工程、後処理、調整及び乾燥の工程を含む。
【0090】
支持層の準備
実施例1においては、支持層3の材料としてポリ塩化ビニル(PVC)を選択した。PVCは、世界中で最も一般的に使用されている熱可塑性ポリマーの1つである。PVCは、硬質及び軟質の大きく2つの分類で広く入手可能である。本発明者らの開発においては、硬質のものを選んだ。これはコイルで入手可能であり、依然として容易に展開するのに十分な柔軟性を有する。この材料は透明である。厚さは300 μmである。シートを幅210 mm及び長さ297 mmの寸法に切断した。
【0091】
図5Aは、
図4に示す複合フィルター膜1の支持層3の穿孔を示す。貫通孔4を作り出すためには、穿孔が好ましい選択であった。ピッチ13 mm、貫通孔4の直径1.0 mmの正方形ピッチパターンを選んだ。
図5Bを参照されたい。数cmの余白を端部に残した。この結果、合計280個の貫通孔4が穿孔された。
【0092】
図5Bは、
図4に示す複合フィルター膜1の支持層3を示し、隣接する各貫通孔4は等間隔であり、上記正方形ピッチパターンに従って上記支持層3上に配置される。上記貫通孔4の拡大図が提示される。
【0093】
得られた支持層3のシートを5枚重ねてCNCボール盤上に置き、厚さ3 mmのアルミニウムプレートで押し付けた。プレートは、PVCシートと同じ幅及び長さの寸法を有し、直径1.5 mmの貫通孔4が予め穿孔されていた。
【0094】
ダクト形成材料の層の適用
3Dプリンターを使用して、穿孔した支持層3上にダクト形成材料12を適用した。部分的に加水分解されたPVAのフィラメントを使用した。このタイプのフィラメントは通例、室温で水に溶解するように設計される。支持層3の位置決めは、印刷されたフィラメントで貫通孔4が確実に覆われるように確実に行う必要がある。数回の印刷を試みた後、約0.5 mmの層厚を達成することができた。
【0095】
図6Aは、
図4に示す複合フィルター膜1におけるダクト6の形成に利用されるダクト形成材料12の層を示し、ダクト形成材料12は、
図6Bに示されることから明らかなように、支持層3内の全ての貫通孔4が完全に覆われた、支持層3の35%の比被覆率をもたらすPVAウェブである。ウェブの拡大図が提示される。ウェブの高さは0.5 mm、幅は0.5 mm、正方形の各辺の長さは2.6 mmである。ウェブはPVAから作られるため、水溶性であり、更なる工程において溶解して、支持層3と濾過層2との間に挟まれる中間層5にチャネルを残すことができる。
【0096】
図6Bは、
図6Aの下部に示される拡大図を更に拡大したものを示す。
図6Bは、PVA材料のチェッカーパターンを示す。ダクト形成材料12の層の形状は、メッシュ状と表すことができる。チェッカーパターンの寸法は、ワイヤ直径(D)が0.5 mm、ワイヤの中心間(CTC)距離が2.6 mm、有効開口径(clear opening size;COS)が2.1 mmである。
【0097】
濾過層形成材料の層の適用及び硬直化
濾過層ドープは、膜工場で予め作製された。ドープは、PVPを充填材料としたPVDF/NMP混合物をベースとする。使用前にドープを熱風炉内で40℃に加熱した。キャスティングは、ドクターブレードを備えるElcometer 4340電動フィルムアプリケーターで行った。厚さは1.0 mmに設定した(固化前のウェット厚さである)。コーティングプロセス中に、早期のスキン形成を回避するために周囲空気の湿度を可能な限り低くする必要がある。したがって、アプリケーターを低湿コンパートメントに入れる。キャスティングプロセスを行ってから、得られた複合フィルター膜1のシートを第2のコンパートメントに移し、膜を40℃の温水浴の上に保持した。濾過層ドープを下に向けた。このようにして、水蒸気が濾過層ドープの表面に到達することができ、最初のスキン細孔が形成される。20秒後に複合フィルター膜1のシートを40℃の温水浴に浸漬した。この時点で固化が完了している。複合フィルター膜1のシートを熱水浴内で数時間放置し、濾過層2が完全に形成されるのを確実にした。
【0098】
残留溶剤の洗い流し
濾過層ドープの固化中に、濾過層ドープの溶剤が水浴内で希釈される。洗浄工程において、溶剤/水混合物を清浄な水に交換した。
【0099】
得られた製品の評価
この時点で、得られた複合フィルター膜1のシートからサンプルを採取した。驚くべきことに、ダクト形成材料12の層が既に溶解しており、開放ダクトが生じていた。研究結果をまとめると、ダクト形成材料12の層に使用したPVA材料は、洗浄工程後に完全に溶解し、形成された中間層内の開放ダクト6の寸法は、
図6Bに示されるダクト形成材料12の層のワイヤ直径の寸法に近かった。さらに、中間層5を下層から剥離しようとすると、中間層5は支持層3と強い結合を有していた。中間層5を2つに裂くと、残りが支持層3に付着したままであった。すなわち、中間層5の凝集力よりも強いポリマー絡合の付加力が存在していた。さらに、露出したダクト6は、濾過層2で完全に覆われており、スキン層の欠陥は生じなかった。
【0100】
後処理
この時点で、濾過層2の細孔は依然としてPVPポリマーで充填されている。水の流れが確実に生じ得るように細孔を開く後処理工程が必要とされる。この手順は、以下の通りである:45℃の温水浴を準備する。次亜塩素酸塩(NaOCl)を2000 ppmに達するまで添加する。pHをpH8.0に低下させるためにHClを添加する。複合フィルター膜1のシートを最低0.75時間かつ最大4時間、溶液に浸漬する。温かい真水で少なくとも3回膜をすすぐ。
【0101】
調整及び乾燥
後処理後に細孔は水で充填される。乾燥した複合フィルター膜1が必要とされる場合、調整及び乾燥の工程を行う必要がある。手順は以下の通りである。
【0102】
1. 50℃の温水/グリセロール混合物を準備する。濃度は20%超かつ50%未満でなければならない。過度に低い濃度では、乾燥後に残留するグリセロールが全ての細孔を充填するのに十分でない可能性がある。グリセロールの濃度が過度に高いと、粘度も過度に高くなる。この高い粘度は、最小の細孔に存在する真水との混合能力に悪影響を及ぼす。
【0103】
2. 膜シートを水/グリセロール混合物に浸漬する。滞留時間中に対流を使用することが強く推奨される。これにより細孔への混合物の浸透が促進される。これはエアレーターで行うことができる。
【0104】
3. 16時間後に、膜シートを水/グリセロール混合物から取り出すことができる。ここで水切り工程を行うことができる。膜の表面上に空気が流れるように送風機を配置することができる。周囲空気の湿度に応じて24時間~48時間後に、膜は乾燥し、貯蔵可能な状態であるはずである。乾燥手順を改善するために空気を加熱することができる。
【0105】
以下の表1は、本発明の実施に適した支持層3の材料、濾過層2の材料、結合溶剤、ダクト形成材料12、及びダクト形成材料12の層を溶解する溶剤の組合せを示す。本発明の明細書に提示される教示に基づき、材料及び溶剤の更なる組合せが当業者には明らかであろう。本発明に従う更なる例を表1に提示する。支持体材料の例として、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリカーボネート(PC)を調査した。これら2つの材料を結合溶剤NMP又はNEPと組み合わせると、膜層と支持層3との良好な接着が得られる。ダクト形成材料12としては、ポリビニルアルコール(PVA)がNMPにもNEPにもゆっくりと溶解し、H2Oでのすすぎ工程の後に殆ど溶解する。ポリビニルピロリドン(PVP)は、NMP(又はNEP)に更に遅く溶解し、NaOCl後処理工程において除去する必要がある。
【0106】
【符号の説明】
【0107】
1 複合フィルター膜
2 濾過層
3 支持層
4 貫通孔
5 中間層
6 ダクト
7 一連のダクト
8 交差ダクト
9 パターン
10 第1のポリマー
11 第2のポリマー
12 ダクト形成材料
【国際調査報告】